説明

N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートをベースとする水性ポリマーディスパージョン、その調製及び使用

本発明は、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートを含むモノマー混合物をフリーラジカルエマルジョン重合させることによる水性ポリマーディスパージョンの調製方法、そのような方法により得ることができるポリマーディスパージョン、及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートを含むモノマー混合物をフリーラジカルエマルジョン重合させることによる水性ポリマーディスパージョンの調製方法、そのような方法により得ることができるポリマーディスパージョン、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)には、胃の中で溶解するコーティング組成物で医薬剤形をコートするための方法が記載されている。この組成物は、20〜80%の少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アミノエステルと、80〜20%の、ホモポリマーとしては水不溶性ポリマーを生成するモノマーとのコポリマーを含むものである。適する重合可能なアミノエステルの言及されている具体的な例は、アクリル酸及び(メタ)アクリル酸と、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノプロパノール及びN−(ヒドロキシエチル)モルホリンとのエステルである。言及されている適するコモノマーは、エチルアクリラート、メチル、ブチル及びヘキシル(メタ)アクリラートのような、アクリル酸の、好ましくは(メタ)アクリル酸の低級エステルである。調製は有機溶媒中で溶液重合によって行われる。例としての実施形態は示されていない。
【0003】
(特許文献2)には、反芻動物の第一胃内液の作用から保護されている獣医薬活性成分調製物の調製方法が記載されている。そのような目的のために、この調製物は、共重合された単位としてのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリラート、アクリロニトリル及びビニル芳香族化合物から選択されるコモノマーとを含むコポリマーでコートされている。N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラートをベースとするコポリマーは、この文献によると、エステル基はアミド基とは対照的に塩基性媒体中では加水分解する傾向があるので、不利とされている。
【0004】
(特許文献3)には、水性ポリマーディスパージョンを含む医薬剤形用コーティング組成物が記載されており、ここではこのポリマーは、カルボキシル基及び/又はモノ−もしくはジ−アルキルアミノアルキルエステル基を有している10〜55重量%のモノマーから構成されている。数多くの他のモノマー以外に、ジエチルアミノエチルメタクリラート(DEAEMA)も適するモノマーとして言及されている。言及されている適するコモノマーは、(メタ)アクリル酸の低級エステル(好ましくはメチルメタクリラート)、(メタ)アクリロニトリル、ビニル芳香族化合物、塩化ビニル及び酢酸ビニルである。調製は、水性エマルジョン重合によって、好ましくはエマルジョンフィードプロセスによって行われる。DEAEMAをベースとする具体的なエマルジョンポリマーは開示されていない。
【0005】
(特許文献4)は、残留モノマー含有量が低い医薬コーティング用結着剤を提供するために、そのような医薬剤形用コーティング溶液を調製するためのポリマーディスパージョンをスプレー乾燥させることによって得られる粉体の使用を教示している。スプレー乾燥に用いられたディスパージョンについては、(特許文献1)、(特許文献2)及び(特許文献3)を参照されたい。
【0006】
(特許文献5)には、
a)pHが5.5以上である第一胃水性媒体中に24時間以内に溶解する、少なくとも1個の塩基性アミノ基を有し、窒素含有量が3〜14%である少なくとも1種のフィルム形成性ポリマー、及び
b)このポリマーに分散されていて、C12〜C32脂肪酸、そのような脂肪酸及び/又はポリカルボン酸のAl塩から選択される少なくとも1種の疎水性物質
からなる反芻動物のための経口投与剤形用コーティングが記載されている。
【0007】
このコーティングは、有機溶媒中の溶液を用いることで調製される。数多くの窒素含有ホモ−及びコ−ポリマーが適するポリマーとして言及されているが、それらを調製するための適する方法には踏み込んでいない。この関連では、40%N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートのコポリマーが実施例29に言及されているが、その調製方法は示されていない。
【0008】
(特許文献6)には、共重合された単位として
a)少なくとも1種のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラート、及び
b)ビニル芳香族化合物及びその誘導体、ビニルエステル、(メタ)アクリル酸のエステル及びアクリロニトリルから選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物
を含む反芻動物用経口投与剤形用コーティングポリマーが記載されている。
【0009】
適するモノマーa)として開示されているのは、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリラート(DMAEMA)及びtert−ブチルアミノエチルメタクリラート(TBAEMA)である。メチルメタクリラートは、特に、あまりにも脆いコーティングを形成する傾向があるので、コモノマーb)としては適していないとされている。適するとされている重合方法は、バルク重合、懸濁重合、溶液重合及びエマルジョン重合である。例示的な実施形態のコポリマーは、溶液重合によって調製されたものであった。
【0010】
(特許文献7)には、三級アンモニウム塩の側基を有する溶解されたポリマーを含むフィルム形成性液体コーティング剤のフィルムを塗布することによる医薬剤形のコーティング方法が記載されている。このポリマー溶液は、なかでも、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラートをベースとするコポリマーを水性無機又は有機酸でアンモニウム塩水性溶液に変換することによって調製され得るものである。
【0011】
(特許文献8)は、(特許文献4)の分割出願であり、熱硬化によってコーティングを生成させるための、さらに可塑剤を含む水性懸濁液の形態にある、後者の文献の教示に従ってスプレー乾燥させることによって得られる粉体の使用に関するものである。
【0012】
(特許文献9)には、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラートをベースとするエマルジョンポリマーを結着剤として含む、医薬剤形用の、胃液に溶解する又は膨潤するコーティング組成物が記載されているが、このN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラートにはアミノ基と(メタ)アクリラート基との間には直鎖中に少なくとも3個の炭素原子が分配されている分枝アルキレン又はアラルキレン基が位置している。
【0013】
(特許文献10)及び(特許文献11)には、pH依存膨潤/溶解特性を有するポリマー並びに医薬剤形でのその使用が記載されている。
【0014】
(特許文献12)は、三級アミノ基を有するモノマー残基を含む(メタ)アクリラートコポリマーを含んでいる医薬剤形用コーティング剤及び結着剤を提供することに関するものであるが、その意図するところは簡単な乾式又は水式のさらなる加工が可能になることである。この目的のために、この文献は、(a)(メタ)アクリル酸のC〜Cエステルと、三級アンモニウム基を含む(メタ)アクリラートモノマーとのコポリマー、(b)可塑剤、及び(c)HLBが少なくとも14の乳化剤を一緒にブレンドして、コーティング剤又は結着剤を、それから溶融、キャスト、延展又はスプレーすることにより調製する方法を教示しているが、ここではコポリマー(a)は、平均粒子サイズが1〜40μmの粉体形態で導入されている。このケースで達成された加工性は、コポリマー(a)を極めて小さい粒子サイズの粉体形態で提供したことによるものである。
【0015】
(特許文献13)は、水蒸気透過性が、(特許文献12)に記載されているものと比較して改善されているコーティング剤及び結着剤に関するものである。このケースでは、コーティング剤及び結着剤は、(a)平均粒子サイズが1〜40μmの粉体形態にある、(メタ)アクリル酸のC〜Cエステルと、官能性三級アンモニウム基を有しているさらなる(メタ)アクリラートモノマーとのコポリマー、(b)HLBが少なくとも14の乳化剤、及び(c)C12〜C18モノカルボン酸又はC12〜C18ヒドロキシル化合物を含む混合物で調製されている。
【0016】
(特許文献14)には、(特許文献12)及び(特許文献13)に記載されているコーティング剤及び結着剤に、その組成の点で一致しているコーティング剤及び結着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】独国特許第1090381号明細書
【特許文献2】独国特許第1219175号明細書
【特許文献3】独国特許第2135073号明細書
【特許文献4】独国特許第2512238号明細書
【特許文献5】独国特許第2838278号明細書
【特許文献6】英国特許第1324087号明細書
【特許文献7】独国特許第3426587号明細書
【特許文献8】独国特許第3049179号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0058765号明細書
【特許文献10】国際公開第2005/055986号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2005/056619号パンフレット
【特許文献12】国際公開第00/05307号パンフレット
【特許文献13】国際公開第02/067906号パンフレット
【特許文献14】国際公開第2004/019918号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、医薬投与剤形用のコーティング剤として適していて、可能な限り容易に調製及び/又は製剤化され得るポリマー並びにその調製方法を提供することを目的としている。この関連で、ポリマーは、以下の条件のできるだけ多くを満足する特性の幅を有していることが目論まれる。すなわち、そのようなポリマーのフィルムをベースとする医薬剤形用コーティングは、pH依存溶解度特性を呈すべきであり、水蒸気に対する良好なバリアー特性を特徴としているべきであり、及び/又は不快な風味がある活性成分をマスクするのに適しているべきであり;調製は、可能な限り容易であるべきであり;製剤化の際の複雑な乾燥及び/又は他の仕上げ工程は可能な限り回避されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この度、意外なことに、共重合された単位としてN,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート(DEAEMA)を含むポリマーディスパージョンが非常に優れた特性プロファイルを特徴としていることを見い出した。特に、このモノマーをベースとするディスパージョンは、一次ディスパージョンの形態でもポリマーフィルムに、特定的には医薬投与剤形用ポリマーフィルムに加工され得る。この関連では、意外なことに、極めて低粘度の一次ディスパージョンでもポリマーフィルムに加工することが可能である。
【0020】
本発明の第1の態様は、したがって、少なくともpH8である水性媒体中で
a)N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート、及び
b)α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とC〜Cアルカノールとのエステルから選択されるフリーラジカル重合可能な少なくとも1種の化合物
を含むモノマー混合物M)をフリーラジカルエマルジョン重合させることによる水性ポリマーディスパージョンPd)の調製方法である。
【0021】
本発明のさらなる態様は、そのような方法によって得ることができる水性ポリマーディスパージョンPd)である。
【0022】
本発明のさらなる態様は、そのような水性ポリマーディスパージョンPd)又はそれを乾燥させることによって得ることができるポリマー組成物を含んでいるコーティング組成物である。
【0023】
本発明のさらなる態様は、
A)そのようなポリマーディスパージョンを乾燥させることによって及び/又はそれのフィルムを形成させることによって得ることができるポリマー組成物、
B)少なくとも1種の薬学的に許容される活性成分、及び
C)適切であれば少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤
を含んでいる医薬組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特定の実施形態は、そのような水性ポリマーディスパージョンPd)又はそれを乾燥させることによって得ることができるポリマー組成物をベースとするコーティングを含む、経口投与剤形の形態にある医薬組成物である。
【0025】
このエマルジョン重合は、本発明によれば、少なくともpH8である水性媒体中で行われる。これは、重合混合物のpHが、モノマーを加えている間は、pH8以下には下げられないことを意味する。モノマーを加えた後は、例えば後重合の任意の間において、水性媒体のpHは8よりも低い値をとってもよいが、7.5より低くあってはならない。ポリマーディスパージョンPd)の調製の間の水性媒体のpH、並びに得られるポリマーディスパージョンPd)のpHは、好ましくは、少なくとも8である。水性媒体のpHは、好ましくは、8〜10(より好ましくは8.5〜9.5)の範囲内にある。pHを重合の間中上記の範囲内に維持するのが有利である。pHは、pH調節用物質、例えば塩基、酸又は緩衝剤を重合混合物に加えることによって調整され得る。いくつかの使用の分野にとっては、しかしながら、pH調節用物質を加えることは、望まれないことがある。つまり、塩又は塩形成性成分の使用によって、例えば、ディスパージョンから得られるフィルムが、その内部に封入される活性成分に対して、望まれないほどに高い透過性を有しているということが起こることがあるからである。これは、陰イオン性乳化剤、長鎖脂肪酸等のようなさらなる塩又は塩形成性成分にも当てはまることである。多くのケースでは、本発明に従って(適切であればさらなる陽イオン性モノマーc)及び適切であればイオン性基を有する乳化剤との組み合わせで)用いられるモノマーa)はpHが所望範囲内にあることをもたらすので、pH調節用物質の添加も必要ない。
【0026】
重合の間の、又はそれに続いてのpHの調整には、原理的には、すべての無機又は有機塩基及び酸、特に水に溶解するものが適している。適する塩基の例は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、及び一級、二級並びに三級のアミン例えばトリエチルアミン、さらにはアミノアルコール例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン又は2−アミノ−2−メチルプロパノールである。適する酸の例は、カルボン酸例えば乳酸、酢酸、クエン酸又は酒石酸や、無機酸例えばリン酸、二リン酸、硫酸又は塩酸である。重合混合物のpHは、重合の前及び間に、適する測定装置によって(例えば複合電極によって)測定され得る。
【0027】
用いられる重合媒体は、好ましくは、専ら水である。
【0028】
本発明の文脈では、アルキルという表記には、直鎖及び分枝のアルキル基が含まれる。適する短鎖アルキル基の例は、直鎖又は分枝C〜C−アルキル(好ましくはC〜C−アルキル、特に好ましくはC〜C−アルキル)基である。そのようなものとしては、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−オクチル、3−オクチル、2−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル等が挙げられる。
【0029】
好適な、より長鎖のC〜C30−アルキル又はC〜C30−アルケニル基は、直鎖及び分枝のアルキル又はアルケニル基である。この関連で、好ましいのは、適切であればさらにモノ−、ジ−又はポリ−不飽和であってもよい天然又は合成の脂肪酸及び脂肪アルコール、さらにはオキソアルコールでも見られる主に線状のアルキルラジカルである。そのようなものとしては、例えば、n−ノニル、n−ノネニル、n−デシル、n−デセニル、n−ウンデシル、n−ウンデセニル、n−ドデシル、n−ドデセニル、n−トリデシル、n−トリデセニル、n−テトラデシル、n−テトラデセニル、n−ペンタデシル、n−ペンタデセニル、n−ヘキサデシル、n−ヘキサデセニル、n−ヘプタデシル、n−ヘプタデセニル、n−オクタデシル、n−オクタデセニル、n−ノナデシル、n−ノナデセニル等が挙げられる。
【0030】
シクロアルキルは、好ましくは、C〜C−シクロアルキル例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルである。
【0031】
アリールには非置換及び置換のアリール基が含まれ、好ましくはフェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニルであり、特にはフェニル、トリル、キシリル又はメシチルである。
【0032】
アクリル酸及びメタクリル酸から誘導され得る化合物は、いくつかのケースでは、以下、アクリル酸から誘導される化合物に「(メタ)」の一語を挿入することで、一部が省略された形で呼ばれる。
【0033】
モノマーa)
【0034】
本発明によればN,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートがモノマーa)として用いられる。
【0035】
本発明の水性ポリマーディスパージョンPd)は、成分a)を、重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして、好ましくは25〜65重量%、特に好ましくは30〜60重量%、特には38〜48重量%、特定的には43〜47重量%の量で用いることによって調製される。
【0036】
モノマーb)
【0037】
成分b)は、α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とC〜C−アルカノールとのエステルから選択される。
【0038】
適する化合物b)は、メチル(メタ)アクリラート、メチルエタクリラート、エチル(メタ)アクリラート、エチルエタクリラート、n−プロピル(メタ)アクリラート、イソプロピル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、sec−ブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチルエタクリラート、n−ヘキシル(メタ)アクリラート、n−ヘプチル(メタ)アクリラート、n−オクチル(メタ)アクリラート、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリラート及びエチルヘキシル(メタ)アクリラートである。
【0039】
成分b)としてはメチルメタクリラート又はメチルメタクリラートを含むモノマー混合物を用いるのが特に好ましい。
【0040】
本発明の水性ポリマーディスパージョンPd)は、成分b)を、重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして、好ましくは35〜75重量%、特に好ましくは40〜70重量%、特には52〜62重量%、特定的には53〜57重量%の量で用いることによって調製される。
【0041】
モノマーc)
【0042】
ポリマーディスパージョンPd)を調製するのに用いられるモノマー混合物M)は、さらに、少なくとも1種のさらなるモノマーc)を含んでいてもよい。このさらなるモノマーc)は、好ましくは、α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とC〜C30−アルカノール及びC〜C30−アルカンジオールとのエステル、α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸と、一級又は二級アミノ基を有するC〜C30−アミノアルコールとのアミド、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の一級アミド並びにそのN−アルキル及びN,N−ジアルキル誘導体、N−ビニルラクタム、開鎖N−ビニルアミド化合物、ビニルアルコール及びアリルアルコールとC〜C30−モノカルボン酸とのエステル、ビニルエーテル、ビニル芳香族化合物、ビニルハロゲン化物、ビニリデンハロゲン化物、C〜C−モノオレフィン、不飽和ニトリル、少なくとも2つの共役二重結合を有している非芳香族炭化水素並びにこれらの混合物から選択される。
【0043】
適するさらなるモノマーc)は、n−ノニル(メタ)アクリラート、n−デシル(メタ)アクリラート、n−ウンデシル(メタ)アクリラート、トリデシル(メタ)アクリラート、ミリスチル(メタ)アクリラート、ペンタデシル(メタ)アクリラート、パルミチル(メタ)アクリラート、ヘプタデシル(メタ)アクリラート、ノナデシル(メタ)アクリラート、アラキニル(メタ)アクリラート、ベヘニル(メタ)アクリラート、リグノセリル(メタ)アクリラート、セロチニル(メタ)アクリラート、メリッシニル(メタ)アクリラート、パルミトレイニル(メタ)アクリラート、オレイル(メタ)アクリラート、リノリル(メタ)アクリラート、リノレニル(メタ)アクリラート、ステアリル(メタ)アクリラート、ラウリル(メタ)アクリラート並びにこれらの混合物のような、α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とC〜C30−アルカノールとのエステルである。
【0044】
さらに適するさらなるモノマーc)は、2−ヒドロキシエチルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルエタクリラート、2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、3−ヒドロキシプロピルアクリラート、3−ヒドロキシプロピルメタクリラート、3−ヒドロキシブチルアクリラート、3−ヒドロキシブチルメタクリラート、4−ヒドロキシブチルアクリラート、4−ヒドロキシブチルメタクリラート、6−ヒドロキシヘキシルアクリラート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリラート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルアクリラート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルメタクリラート等のような、α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とC〜C30−アルカンジオールとのエステルである。
【0045】
さらに適するさらなるモノマーc)は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(tert−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−オクチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)(メタ)アクリルアミド、N−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ノニル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−デシル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−ウンデシル)(メタ)アクリルアミド、N−トリデシル(メタ)アクリルアミド、N−ミリスチル(メタ)アクリルアミド、N−ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N−パルミチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘプタデシル(メタ)アクリルアミド、N−ノナデシル(メタ)アクリルアミド、N−アラキニル(メタ)アクリルアミド、N−ベヘニル(メタ)アクリルアミド、N−リグノセリル(メタ)アクリルアミド、N−セロチニル(メタ)アクリルアミド、N−メリッシニル(メタ)アクリルアミド、N−パルミトレイニル(メタ)アクリルアミド、N−オレイル(メタ)アクリルアミド、N−リノリル(メタ)アクリルアミド、N−リノレニル(メタ)アクリルアミド、N−ステアリル(メタ)アクリルアミド、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、モルホリニル(メタ)アクリルアミドのような、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の一級アミド並びにそのN−アルキル及びN,N−ジアルキル誘導体である。
【0046】
さらに適するさらなるモノマーc)は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等のような1個以上のC〜C−アルキル置換基を有していてもよいN−ビニルラクタム及びその誘導体である。そのようなものとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム等が挙げられる。N−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムが、好ましく用いられる。
【0047】
モノマーc)として適する開鎖N−ビニルアミド化合物の例は、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド及びN−ビニルブチルアミドである。
【0048】
さらに適するさらなるモノマーc)は、酢酸ビニル、ビニルプロピオナート、ビニルブチラート並びにこれらの混合物である。
【0049】
さらに適するさらなるモノマーc)は、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニルフルオリド、ビニリデンフルオリド並びにこれらの混合物である。
【0050】
上記したさらなるモノマーc)は、単一で又は任意の混合物の形態で用いられ得る。
【0051】
本発明の水性ポリマーディスパージョンPd)は、成分c)を、重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして、好ましくは0〜80重量%の量で用いることによって調製される。特定の実施形態は、共重合された単位としてさらなるモノマーc)を全く含まないポリマーディスパージョンPd)に関する。存在する場合は、成分c)は、重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして、好ましくは0.1〜70重量%、特に好ましくは1〜60重量%、特には5〜50重量%の量で用いられる。
【0052】
モノマーc)は全く用いないことが好ましい。
【0053】
モノマーd)
【0054】
ポリマーディスパージョンPd)を調製するのに用いられるモノマー混合物M)は、共重合される単位として、化合物a)に加えて、それとは異なり、1分子当たり1つのフリーラジカル重合可能なα,β−エチレン性不飽和二重結合及び少なくとも1個の陽イオン性基を有する少なくとも1種のさらなる化合物d)を含んでいてもよい。
【0055】
成分d)の陽イオン性基は、好ましくは、窒素含有基、例えば一級、二級並びに三級アミノ基、及び四級アンモニウム基である。窒素含有基は、好ましくは、三級アミノ基又は四級アンモニウム基である。荷電した陽イオン性基は、アミン窒素から、例えば、乳酸又は酒石酸のようなモノ塩基性又はポリ塩基性カルボン酸、又はリン酸、硫酸及び塩酸のような無機酸でプロトン化することによるか、又は、例えば、C〜C−アルキルハロゲン化物又はスルファートのようなアルキル化剤で四級化することにより発生され得る。そのようなアルキル化剤の例は、エチルクロリド、エチルブロミド、メチルクロリド、メチルブロミド、ジメチルスルファート及びジエチルスルファートである。
【0056】
適する化合物d)の例は、α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とアミノアルコールとのDEAEMAとは異なるエステルである。好ましいアミノアルコールは、アミン窒素がC〜C−モノ−又はジ−アルキル化されているC〜C12−アミノアルコールである。そのようなエステルの適する酸成分の例は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、モノブチルマレアート及びこれらの混合物である。アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物が、好ましくは、そのようなエステルの酸成分として用いられる。
【0057】
適するさらなる化合物d)は、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリラート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリラート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリラート及びN,N−ジメチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリラートである。
【0058】
さらに適するモノマーd)は、上記したα,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸と、少なくとも1個の一級又は二級アミノ基を有するジアミンとのアミドである。1個の三級アミノ基及び1個の一級又は二級アミノ基を有しているジアミンが好ましい。
【0059】
そのようなものとしては、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)−ブチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]メタクリルアミド等が挙げられる。
【0060】
さらに適するモノマーd)は、N,N−ジアリルアミン及びN,N−ジアリル−N−アルキルアミン並びにそれらの酸付加塩及び四級化生成物である。この関連でのアルキルは好ましくはC〜C24−アルキルである。N,N−ジアリル−N−メチルアミン化合物及びN,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム化合物(例えば、その塩化物や臭化物のような)が好ましい。
【0061】
さらに適するモノマーd)は、ビニル−及びアリル−置換窒素ヘテロ環(例えばN−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール)、ビニル−及びアリル−置換ヘテロ芳香族化合物例えば2−及び4−ビニルピリジン、2−及び4−アリルピリジン、並びにこれらの塩である。
【0062】
本発明の水性ポリマーディスパージョンPd)は、成分d)を、存在する場合は、成分a)の量+成分d)の量の合計が、重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして、好ましくは25〜65重量%、特に好ましくは30〜60重量%の範囲内にあるような量で用いることによって調製される。
【0063】
本発明の水性ポリマーディスパージョンPd)は、成分d)を、重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして、好ましくは0〜50重量%の量で用いることによって調製される。
【0064】
既に述べたように、意外なことに、本発明による、また本発明に従って用いられるDEAEMA(成分a))をベースとするポリマーディスパージョンPd)は特に優れた特性プロファイルを有していることが見出された。このプロファイルは、通常、陽イオン性基を有するさらなるモノマーを用いずとも達成され得るものである。特定の実施形態は、したがって、共重合された単位として、さらなるモノマーd)を全く含まないポリマーディスパージョンPd)に関する。
【0065】
存在する場合は、成分d)は、重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%、特には2〜25重量%の量で用いられる。
【0066】
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、
・ 重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして43〜47重量%のN,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)、及び
・ 重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして53〜57重量%の少なくとも1種の化合物b)(特にはメチルメタクリラート)、
から構成されるモノマー混合物M)が用いられる。
【0067】
調節剤
【0068】
モノマー混合物M)のフリーラジカル重合は、少なくとも1種の調節剤の存在下に行われ得る。調節剤は、重合させるために用いるモノマーの全体重量を基準にして、好ましくは0.0005〜5重量%、特に好ましくは0.001〜2.5重量%、特には0.01〜1.5重量%の量で用いられる。
【0069】
調節剤(重合調節剤)とは、一般には、高い移動定数を有する化合物のことをいう。調節剤は、連鎖移動反応を加速するものである、つまり、得られるポリマーの重合度の低下を、全体の反応速度に影響を及ぼすことなくもたらすものである。調節剤については、1又は複数の連鎖移動反応をもたらすことができるその分子中にある官能基の数に応じてモノ−、ビ−又はポリ−官能調節剤に分類することが可能である。適する調節剤は、例えば、K.C.Berger及びG.Brandrupによって、J. Brandrup, E. H. Immergut, Polymer Handbook, 3rd edition, John Wiley & Sons, New York, 1989, pages II/81 - II/141に詳細に述べられている。
【0070】
調節剤として好ましく用いられる化合物は、イオウを結合形態で含んでいる。
【0071】
適する重合調節剤は、なかでも、チオール(イオウをSH基の形態で含んでいる化合物で、メルカプタンとも呼ばれる)である。好ましい調節剤は、モノ−、ビ−及びポリ−官能メルカプタン、メルカプトアルコール及び/又はメルカプトカルボン酸である。そのような化合物の例は、アルキルチオグリコラート、エチルヘキシルチオグリコラート、システイン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール、4−メルカプト−1−ブタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、チオ酢酸、チオ尿素さらにはアルキルメルカプタンス例えばn−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン及びtert−ドデシルメルカプタンである。
【0072】
このような調節剤は、すべて単独で又は互いの組み合わせで用いられ得る。
【0073】
ポリマーは、フリーラジカルを生成する開始剤の助けを借りてモノマーを重合することによって調製され得る。
【0074】
フリーラジカル重合するのに用いられ得る開始剤は、この目的に慣用のペルオキソ及び/又はアゾ化合物、例えばアルカリ金属又はアンモニウムペルオキシジスルファート、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、スクシニルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾアート、tert−ブチルペルピバラート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルマレアート、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルバマート、ビス−(o−トルイル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルイソブチラート、tert−ブチルペルアセタート、ジ−tert−アミルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、アゾ−ビス−イソブチロニトリル、アゾ−ビス−(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド又は2,2’−アゾ−ビス−(2−メチルブチロニトリル)である。例えば、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ナトリウムペルオキソジスルファート、tert−ブチルヒドロペルオキシド/ナトリウムジスルファイト、tert−ブチルヒドロペルオキシド/ナトリウムヒドロキシメタンスルフィナート、H/CuIのような開始剤混合物又はレドックス開始剤系も適している。
【0075】
本発明の、また本発明に従って用いられる水性ポリマーディスパージョンPd)は、好ましくは、開始剤として少なくとも1種の無機ペルオキシドを用いることによって調製される。開始剤は、特に好ましくは、アンモニウムペルオキソジスルファート及びアルカリ金属ペルオキソジスルファートから選択される。ナトリウムペルオキソジスルファート又はカリウムペルオキソジスルファートが極めて好ましい。そのようなペルオキソジスルファートは、ペルオキソジスルファート濃度が、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは2〜10重量%の範囲内にある水性溶液の形態で用いられる。
【0076】
既に述べたように、重合は、アルカリ性のpHで行われる。この関連で、重合の間中、重合媒体を所望pH範囲内に可能な限り維持するだけでなく、開始剤フィードのpHを酸性過ぎないpHに調整するのが特に有利である。少なくとも1種の無機ペルオキシドの水性溶液が重合させるための開始剤として用いられる場合、そのpHは、好ましくは2より大きい、特に好ましくは3より大きい、特には4より大きい。好ましいペルオキソジスルファート濃度は、先に記載した濃度である。pHを調整するのに原理的に適しているのは、あらゆる無機又は有機塩基、特に、塩生成の可能性は別として、モノマーと反応しない塩基である。適する塩基の例は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物、三級アミン例えばトリエチルアミン、さらにはアミノアルコール例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン又はジメチルエタノールアミンである。pHを調整するのにはNaOH又はKOHが好ましく用いられる。別の態様としては、フリーラジカルエマルジョン重合させるための開始剤としてナトリウムペルオキソジスルファート水性溶液又はカリウムペルオキソジスルファート水性溶液が用いられ、重合に使用される直前に調製され、その結果pHが有利な範囲内にある。重合に使用される直前に調製されるとは、調製が、重合に使用される24時間未満前、好ましくは12時間未満前、特には6時間未満前に行われることを意味する。
【0077】
本発明の、また本発明に従って用いられる水性ポリマーディスパージョンPd)は、通常、少なくとも1種の界面活性化合物の存在下に調製される。
【0078】
適する界面活性化合物は、分散剤としてエマルジョン重合で通常用いられる保護コロイド及び乳化剤であり、例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Volume XIV/1, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, page 411 to 420に記載されているものである。乳化剤としては、陰イオン性乳化剤及び非イオン性乳化剤のいずれもが適している。好ましく用いられる界面活性物質は、相対分子量が標準的には2500g/mol以下の乳化剤である。
【0079】
有用な非イオン性乳化剤は、芳香族脂肪族又は脂肪族非イオン性乳化剤、例えばエトキシル化モノ−、ジ−及びトリ−アルキルフェノール(エトキシル化度:3〜50、アルキルラジカル:C〜C10)、長鎖アルコールのエトキシラート(エトキシル化度:3〜100、アルキルラジカル:C〜C36)及びポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドホモ−及びコ−ポリマーである。これらのものは、ランダムに分散された又はブロックの形態で重合されたアルキレンオキシド単位を含み得る。長鎖アルカノールのエトキシラート(アルキルラジカルC〜C30、平均エトキシル化度5〜100)[これらの中では、特に好ましくは、線状C12〜C20−アルキルラジカルを有し、平均エトキシル化度が10〜50のもの]及びエトキシル化モノアルキルフェノールが、好ましく用いられる。
【0080】
特に好ましい非イオン性乳化剤は、12〜30個の炭素原子を有するアルコールの脂肪アルコールアルコキシラートである。そのようなものは、好ましくは、10〜30個のエチレンオキシド単位を有している。特定の実施形態では、非イオン性乳化剤は、したがって、それぞれのケースで10〜30個のエチレンオキシド単位(例えば、20個のエチレンオキシド単位といった)を有しているセチルアルコール及び/又はステアリルアルコールのエトキシラートから選択される。
【0081】
適する陰イオン性乳化剤の例は、アルキルスルファート(アルキルラジカル:C〜C22)の、エトキシル化アルカノール(エトキシル化度:2〜50、アルキルラジカル:C12〜C18)及びエトキシル化アルキルフェノール(エトキシル化度:3〜50、アルキルラジカル:C〜C)のヘミスルファートの、アルキルスルホン酸(アルキルラジカル:C12〜C18)の、さらにはアルキルアリールスルホン酸(アルキルラジカル:C〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。さらなる適する乳化剤については、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Volume XIV/1, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, page 192-208を参照されたい。同様に、芳香族環の一方又は両方にC〜C24−アルキル基を有しているビス(フェニルスルホン酸)エーテル及びそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩も適する陰イオン性乳化剤である。これらの化合物は、一般には、例えば、米国特許第4,269,749号明細書から公知であり、例えばDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Company)のように、市販もされている。
【0082】
特に適する陰イオン性乳化剤は、ナトリウムラウリルスルファート、ナトリウム(セチル/ステアリル)スルファート等である。
【0083】
フリーラジカルエマルジョン重合は、好ましくは、少なくとも1種の非イオン性乳化剤の存在下、又は少なくとも1種の陰イオン性乳化剤及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤を含む乳化剤混合物の存在下に行われる。そのようなものとしては、例えば、ナトリウムラウリルスルファートと、上記した、12〜30個の炭素原子を有し、それぞれのケースで10〜30個のエチレンオキシド単位を有しているアルコールの脂肪アルコールアルコキシラートとの混合物が挙げられる。
【0084】
乳化剤の全体量は、重合されることになるモノマーの量を基準にして一般には約0.05〜6重量%、好ましくは1〜5重量%である。陰イオン性乳化剤対非イオン性乳化剤の比は、重量で好ましくは1:2〜2:1の範囲内にあり、特に好ましくは約1:1(例えば、1.3:1〜1:1.3といった)である。特定の実施形態では、非イオン性乳化剤の含有量は、重合されることになるモノマーの量を基準にして4重量%を超えることはない。ポリマーディスパージョンPd)の乳化剤含有量は、重合の後も変わり得る。つまり、例えば、ディスパージョンが限外濾過に付される場合は乳化剤含有量は低減され得る。このケースでは、乳化剤全体含有量が、モノマーの量を基準にして5重量%未満、特定的には4重量%未満、さらにより特定的には3重量%未満のディスパージョンが、その結果、得られ得る。
【0085】
ポリマーディスパージョンPd)は、さらに、上記した乳化剤とは異なる分散剤D)を用いることによっても調製され得る。そのようなものとしては、例えば、高分子分散剤が挙げられるが、これは、存在する場合は、重合されることになるモノマーの量を基準にして一般には0〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%の量で用いられる。好ましくは、上記した乳化剤とは異なる分散剤は、用いられない。
【0086】
さらに、ポリマーディスパージョンPd)には、慣用の賦形剤及び添加剤が加えられ得る。
【0087】
そのようなものとしては、例えば、pH調節用物質、還元剤及びブリーチ剤[例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸のアルカリ金属塩のような(例えばBASF Aktiengesellschaft社から販売のRongallit(登録商標)C)]、錯化剤、消臭剤、香味剤、付臭剤、消毒剤、防腐剤さらには粘度改変剤例えばアルコール類(例えばグリセリン、メタノール、エタノール、tert−ブタノール、グリコール、プロピレングリコール)や2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコール400等が挙げられる。
【0088】
適する防腐剤は、原理的には、7以上のpH範囲で効果がある物質すべてがそうである。このタイプの物質は、例えば、"Praxis der Sterilisation, Desinfektion - Konservierung", Karl Heinz Wallhauser, 5th revised edition, Georg Thieme Verlag Stuttgart, 1995, pages 465-652に掲載されている。特に適する物質は、ベンジルアルコール、2,4−ジクロロベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−フェノキシ−1−プロパノール、クロルフェネシン、プロピレングリコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、グリオキサール、グルタルアルデヒド、メチルp−ヒドロキシベンゾアート、エチルp−ヒドロキシベンゾアート、プロピルp−ヒドロキシベンゾアート、ブチルp−ヒドロキシベンゾアート、ベンジルp−ヒドロキシベンゾアート、フェノール、クロロフェノール、四級アンモニウム化合物[例えば、ベンザルコニウムクロリドやセチルピリジニウムクロリド等]、クオタニウム15、クレゾール、クロロクレゾール、銀及び銀塩、有機水銀化合物[例えば、酢酸フェニル水銀、チオメルサール等]、スルホメルチオラート、塩素、二酸化塩素、次亜塩素酸塩、ヨウ素、次亜ヨウ素酸塩、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、1,3−ジメチルオール−5,5−ジメチルヒダントイン、並びにこれらの混合物である。
【0089】
これらの賦形剤及び添加剤は、ポリマーディスパージョンには、最初の仕込みに、フィードの1つに、あるいは重合の完結後に加えられ得る。
【0090】
重合は、一般には0〜150℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは55〜95℃の範囲内にある温度で行われる。重合は好ましくは大気圧下で行われるが、高圧下、例えば重合させるために用いる成分の自己発生圧力下での重合も可能である。好ましい圧力範囲は、1〜5barである。好ましい実施形態では、重合は、例えば、窒素又はアルゴンのような少なくとも1種の不活性気体の存在下で行われる。この関連では、用いられる不活性気体は、好ましくは、無水である。
【0091】
重合は、フィードプロセスの形態で行われる。この関連で、個々のフィードは重合区画に連続的に、又は段階的行程で、あるいは勾配行程で導入され得る。1つのあり得る実施形態では、重合は、重合混合物の一部(但し好ましくはモノマーは含まない)が最初に仕込まれて、他の成分の全部又は一部が一緒に又は別々のフィードで最初の仕込みに回分的又は連続的に加えられるフィードプロセスとして行われる。
【0092】
好ましい実施形態では、各成分は、重合反応槽に下から(沈めて)加えられる。
【0093】
本発明の方法では、反応に用いられる重合区画にはモノマーが最初に仕込まれないのが好ましい。さらに、フリーラジカルエマルジョン重合は、好ましくは、シードラテックスの存在下では行わない。
【0094】
用いる乳化剤の一部及び水性媒体の少なくとも一部が重合区画に最初に仕込まれそして重合温度まで加熱されて、そのあと残りの重合混合物が1又は複数の空間的に離れたフィードを介して重合区画に導入されるのが好ましい。この関連で、モノマー及び/又は開始剤の導入は、それらが消費される速度で適宜行われる、すなわち重合が維持される。標準的には、そのケースでは、重合開始剤及びモノマーは、別々のフィードで加えられる。モノマーは、原理的には、単独で又は混合物の形態で導入され得る。
【0095】
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート(成分a))は、重合させるために用いるまでは実質的に無水状態下で好ましくは扱われる。このために、例えば、成分a)の保存及び/又は重合区画への導入は、実質的に、水を排除して行われる。同じことが、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートを含むモノマー混合物にも当てはまる。水分に敏感な物質を排出、保存、及び運搬するのに適している方法は、当業者には知られている。そのようなものとしては、例えば、成分a)を扱う時の水の排除、さらには成分a)と接触する装置表面の事前乾燥が挙げられる。「実質的に無水状態下で」という表現は、本発明の文脈では、例えば移動されている時に湿気と接触することにより起こるような、少量の水との接触は、通常、重要ではないことを意味している。
【0096】
本発明の方法の特定の実施形態では、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)は、それを重合させるために用いる直前に混合装置中で水と混合される。「それを重合させるために用いる直前に」という表現は、この関連では、水との混合が、重合させるために用いる1時間以内、好ましくは10分以内、特に好ましくは1分以内前に行われることを意味する。この目的のための混合は、また、好ましくは、反応区画への進入の空間的直前に行われる。N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)は、好ましくは、混合装置中で、水、少なくとも1種の乳化剤、及び適切であれば少なくとも1種のさらなるモノマーと混合されて、モノマーエマルジョンを生じる。
【0097】
本発明の方法はコポリマーを調製するのに役立つものであり、ここでは個々のコモノマーは、それぞれのケースで、単独で、又は任意の混合物の形態で、少なくとも1つの混合装置中で混合されて、エマルジョンを生じ得る。重合させるために用いるコモノマーは、好ましくは、混合装置中で混合されて、エマルジョンを生じる。複数のモノマーは、混合装置には、別々に、又は、例えば個々のフィードを共通の輸送管路中に一緒に合わせることにより作出され得る混合物で導入され得る。混合装置に入る前に少なくとも1種の界面活性物質(乳化剤)が加えられている、水を含むフィードは、好ましくは、混合装置に導入される。
【0098】
開始剤の添加は、別のフィードで(一般には水性相で)行われるが、モノマーフィードと開始剤フィードは、混合装置に入る前に合わせられ得る。別の態様として、開始剤は、モノマーフィードとは独立して、直接反応槽にも加えられ得る。
【0099】
反応区画には、本明細書以下でより詳細に定義されるさらなる成分は、適切であれば、水中又はそうでなければ適する溶媒中溶液として、相溶性にもよるが上記したフィードのうちの1つと一緒に又は混ぜ合わせられていない形態で別々に加えられ得る。
【0100】
本発明の方法における混合装置としては1以上のミキサーが用いられ得、ミキサーは同じ設計又は異なる設計のものであってよく、また、例えば、すべてのミキサーが直列で配置されたもの、平行配置と直列配置が組み合わされたもの、又はすべてのミキサーが平行に配置されたもののように、任意の配列、配置及び組み合わせで用いられる。複数のミキサーが用いられる場合は、直列の配置が好ましい。適するミキサーは、混合要素が可動部分を含む動的ミキサー、及び静的ミキサー、すなわち混合要素が内部に可動部分を含まないミキサーである。特に路内(インライン)原理により動作するミキサーが好ましい。適するミキサーは、例えば、A. Echte, Handbuch der technischen Polymerchemie, VCH Verlagsgesellschaft Weinheim, pages 104 et seq. (1993)に記載されている。
【0101】
本発明の方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つの動的ミキサーを含む混合装置が用いられる。
【0102】
適する動的インラインミキサーは、例えば、ZFL-Zeitschrift fur Lebensmitteltechnologie und -Verfahrenstechnik (1982) 33(3), pages 139 et seq.に記載されているKratz熱交換器、例えば、歯車式分散機(例えばKinematica社から販売のMegatron(登録商標)型のもの)、コロイドミル及びコランダムディスクミル、さらには高圧及び超音波式のホモジナイザーのように、回転子−静止子原理により動作するサイズ縮小器械である。
【0103】
適する静的インラインミキサーは、例えばZFL-Zeitschrift fur Lebensmitteltechnologie und -Verfahrenstechnik (1982) 33(3) pages 139 et seq.に記載されている、例えば、流体流れが抜き打ち穴がある内部器によって案内され、この内部器が流体流れを分割ストリームに分割し、この分割ストリームがこのあと横方向に変位され、別の配列で再度一緒に合わせられるRoss ISGミキサーのようなミキサーである。また、管路又は流路中に連続式に組み込まれている、それぞれのケースで例えば互い違いに配置されている複数の同じ又は異なる固定混合要素を含む静的ミキサーも適している。そのようなものとしては、例えば、Kenicsミキサー、Sulzer SMVミキサー及びSulzer SMXミキサーが挙げられる。
【0104】
さらなる適する静的インラインミキサーは、欧州特許第101,007号明細書に記載されている噴流式分散機(jet dispersers)のような剪断ミキサーである。
【0105】
膜や噴流式ミキサーのようなインライン乳化用装置もさらなる適するミキサーである。
【0106】
適する実施形態で用いられる混合装置は少なくとも1つのインラインミキサーであり、これは、都合よくは、反応容器の直前に取り付けられる。
【0107】
混合装置には動的ミキサー及び適切であれば静的ミキサーが含まれていることが特に好ましい。2つのミキサーが用いられる場合は、それらは、直列で配置される。この関連で好ましく用いられる動的ミキサーは、連続式管式ミキサー(continuous tube mixer)又は歯車式分散機(toothed-wheel disperser)である。
【0108】
エマルジョン重合に適する反応区画は、そのような目的に対して通常使われる反応槽型でよい。そのようなものとしては、例えば、撹拌槽が挙げられる。適する撹拌機型式の例には、プロペラ式撹拌機、羽根車式撹拌機、ディスク式撹拌機、パドル式撹拌機、錨式撹拌機、傾斜パドル式撹拌機、横桁式撹拌機、ヘリカルリボン羽根車、ネジ式撹拌機等が含まれる。
【0109】
水性ポリマーディスパージョンPd)と接触する装置の部分はすべて、好ましくは、フリーラジカルエマルジョン重合を始める前に塩基と接触させる。そのような目的に適するのは、冒頭で言及した塩基の水性溶液であり、好ましくはNaOH水溶液及びKOH水溶液である。希水性溶液(例えば2〜4重量%)が好ましくは用いられる。そのような目的に対しては、反応槽(すべての反応槽内部器、撹拌器、加熱/冷却装置等も含めて)並びに反応槽排出液と接触するあらゆる表面は、塩基水溶液でフラッシュする。
【0110】
重合で得られたディスパージョンは、重合工程の後、物理的又は化学的後処理に付され得る。そのような処理の例は、例えば、適する温度の重合開始剤又は複数重合開始剤混合物の添加による後処理、スチーム又は不活性ガスを用いたストリッピングによるポリマー溶液の後処理あるいは酸化試薬又は還元試薬による反応混合物の処理、選択された媒体(例えば活性炭等)への不純物の吸着のような吸着処理、あるいは限外濾過のような、残留モノマーを低減するための公知の方法である。好ましい実施形態では、得られるポリマーディスパージョンPd)は、限外濾過に付される。このようにして、特に医薬用途で必要とされている、残留モノマー含有量が低いディスパージョンが得られ得る。この関連では、特に限外濾過により、重合し得るモノマーの含有量が非常に低いディスパージョンPd)が得られ得る。
【0111】
ディスパージョンを限外濾過により精製するためには、すなわち分散媒体中に溶解されている低分子化合物を除去するためには、ディスパージョンは加圧下で膜と接触させられて、溶解した化合物を含むがポリマーは含まない透過液(濾液)が、フィード側よりも低い圧力にある膜反対側に排出される。限外濾過により除去され得る低分子量化合物は、前駆体、前駆体分解生成物、オリゴマー、塩、界面活性剤や、さらにはこれらの混合物から選択されるものである。溶解した化合物が低減している濃縮ポリマーディスパージョンが保持液として得られる。ポリマー濃度が高くなり過ぎるのを防ぐためには、除去された量の透過液は、保持液中に分散媒(水)によって連続的又は不連続的に置き換えられ得る。濾過が乾固までは行われず、除去された量の透過液が置き換えられる限外濾過はダイアフィルトレーションとも呼ばれる。一般には、ディスパージョンは、合成で生じる濃度(例えば水中20〜40%濃度)で限外濾過に付され得る。当然、ディスパージョンを限外濾過の前に水で希釈し、そのあとより低いポリマー濃度で限外濾過に付し(好ましくはダイアフィルトレーションに[このケースでは、除去された透過液は、保持液中に水を加えることによって置き換えられ、その結果ポリマー濃度は一定のままとなる])、適切であれば続いて所望ポリマー濃度まで濃縮することも同様に可能である。
【0112】
透過液流れの著しい低下をもたらす、膜表面へのポリマー粒子の堆積(カバー層のビルドアップ)を、例えば、ポンプによる循環によって、膜を機械的に動かすことによって、あるいは膜と膜との間に撹拌器を設けることによって防ぐ又は最小限にすることは可能である。このケースでは、膜とディスパージョン間には0.1〜20m/秒(コイル形状:0.1〜5m/秒、管形状:1〜6m/秒、回転式形状:2〜20m/秒)の範囲内の相対速度の発生があることが好ましい。本発明のポリマーディスパージョンは、意外なことに、そのような目的に対して十分な剪断安定性を示す。
【0113】
膜内径が1〜25mm(好ましくは2〜15mm)の管状膜形状の他には、好ましい形状は、剪断及び膜横断圧力が互いに独立して調節され得るモジュール形状であり、その理由は、このケースでは、管状膜で達成されるよりもより大きな透過液流れが達成され得るからである。
【0114】
適切なモジュールでは、一つには、膜を機械的に動かすことにより又は膜と膜との間に撹拌器を設けることにより膜と懸濁液間に2〜20m/秒の相対速度の発生があり、もう一つには、フィード、保持液又は透過液の量を調節することにより膜横断圧力の調節がある。
【0115】
ダイアフィルトレーション及び濃縮は、懸濁液を膜モジュールに数回通すことによる回分方式で、又は1以上のフィード工程及び直列に連結されたブリード(放出)工程に1回通すことによる連続方式で行われ得る。
【0116】
膜処理には、孔直径が、1nm(カットオフ分子量約1kD)〜1μm、好ましくは10nm(カットオフ分子量約20kD)〜400nm(カットオフ分子量約500kD)の膜分離性層が用いられ得る。分離性層は、有機ポリマー、セラミック、金属、炭素又はこれらの混合物から構成されているものであり得、濾過温度でのフィード媒体中で安定なものでなければならない。機械的な理由から、分離性層は、通常、同じ材料又はそうでなければ複数の異なる材料から作り出された、分離性層としての単層又は多層多孔質下部構造体に付けられる。あり得る材質組み合わせの例が以下の表に詳細に示されている:
【表1】

【0117】
特に好ましい分離性層は、例えば、金属、セラミック、再生セルロース、アクリロニトリル及び親水化アクリロニトリル、ポリスルホン及び親水化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及び親水化ポリエーテルスルホン、ポリエーテレテルケトン及び親水化ポリエーテレテルケトン、及び親水化PVDFのような親水性材料から構成されているものである。実施例は、再生セルロース(30kD)、親水化PVDF(30nm)及び親水化ポリエーテルスルホン(20kD)に流されている。
【0118】
膜は、原理的には、平坦形状、管形状、マルチチャネル要素形状、キャピラリー形状又はコイル形状で用いられ得、これらに対しては、保持液とその透過液との間の分離を可能にする適切な耐圧ケースが利用可能となっている。
【0119】
保持液と透過液との間の最適膜横断圧力は、実質的には、膜の孔直径、カバー層のビルドアップに影響を及ぼす水力学的条件、及び濾過温度での膜の機械的安定性に左右されるものであり、膜のタイプにもよるが、好ましくは0.2〜20barの範囲内、特に好ましくは0.3〜6barの範囲内にある。より高い膜横断圧力は、通常、より大きい透過液流れをもたらす。さらには、複数のモジュールが直列に配置されているケースでは、透過液圧力を上げることによって膜横断圧力は下げられ得るものであり、そのようにしてそれぞれのモジュールにも適応され得る。運転温度は、膜の安定性及びディスパージョンの熱安定性によって左右されるものである。限外濾過に適している温度範囲は、20〜80℃である。より高い温度は、通常、より大きい透過液流れをもたらす。達成され得る透過液流れは、用いる膜のタイプ及び膜形状に、処理条件に、フィード組成(実質的にはポリマー濃度)に、大きく左右されるものである。流れは、典型的には、5〜500kg/m/時の範囲内にあるものである。つまり、例えば、回転の速度にもよるが、15〜70kg/m/時の範囲内の透過液流れが、30%ポリマー含有量、40℃、及びカットオフが30kDの再生セルロース膜での膜横断圧力が1barの回転系で達せられる。このケースでは、透過液流れは、典型的には、限外濾過の開始から終了までに、約2の係数で増加する。水溶性構成成分の所望低減は、溶媒交換係数が5未満の(好ましくは3未満の)ダイアフィルトレーション工程によって一般には達成される。この関連では、溶媒交換係数とは、限外濾過の間にディスパージョンの溶媒が何回交換されるかを表わすものである。これは、溶媒交換係数がxとすると、ディスパージョンの各mに対してxmの透過液が除去され、同時に、xmの溶媒(水)がディスパージョンに導入されることを意味する。
【0120】
例えば、以下の膜が用いられ得る:
【表2】

【0121】
本発明のポリマーディスパージョンPd)が限外濾過に付された後は、本発明のポリマーディスパージョンは、分散媒体中に溶解した低分子化合物の残留含有量が非常に低いことを特徴としている。これは、モノマーa)及びb)からの望まれていない加水分解生成物に対して特に当てはまる。つまり、特に医薬投与剤形用コーティング組成物として適しているディスパージョンが提供され得る。
【0122】
本発明のポリマーディスパージョンPd)は、好ましくは2500重量ppmを越えない、特に好ましくは1000重量ppmを越えない、特には500重量ppmを越えない量でN,N−ジエチルアミノエタノールを含む。
【0123】
本発明のポリマーディスパージョンPd)は、好ましくは100重量ppmを越えない、特に好ましくは50重量ppmを越えない量でメタクリル酸を含む。
【0124】
本発明のポリマーディスパージョンPd)は、好ましくは500重量ppmを越えない、特に好ましくは250重量ppmを越えない、特には50重量ppmを越えない量でメタノールを含む。
【0125】
原理的には、本発明のポリマーディスパージョンPd)には、上記した添加剤又は賦形剤の少なくとも1つを限外濾過の間又は後に加えることは可能である。そのようなものとしては、例えば、緩衝剤、防腐剤又は抗酸化剤が挙げられる。
【0126】
さらに、さらなる処理工程、例えば適する乾燥処理が、後に続き得る。ポリマーディスパージョンPd)は、例えば、スプレー乾燥、流動スプレー乾燥、ドラム乾燥又は凍結乾燥等の各種乾燥処理によって粉体形態に変換され得る。スプレー乾燥が好ましくは用いられる。このようにして得られた乾燥ポリマー粉体は、有利なこととして、適するpHの水に再分散させることにより再度水性ディスパージョンに変換され得る。とはいえ、本発明の方法で得られたディスパージョンは、好ましくは、直接一次ディスパージョンとして市場に出され、及び/又はさらに加工される。
【0127】
本発明のディスパージョンは、意外なことに、優れた物理的及び化学的安定性がある。つまり、室温にて数年間保存しても本ディスパージョンは沈殿することも凝集することもない。特有の使用特性は、保存の後、変わっていない。アルカリ性のpH、及び通常は加水分解を触媒するアミノ基の存在にもかかわらず、あらゆる予想に反して、ポリマーのエステル基の少量の加水分解のみが起こる。
【0128】
本発明のディスパージョンPd)中に存在しているポリマーは、好ましくは30,000〜500,000、特に好ましくは60,000〜140,000、特には80,000〜120,000(g/mol)の範囲内の、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定される平均分子量Mを有している。
【0129】
GPCは、以下の方法で行われる:
溶離液: THF+0.02mol/lトリエチルアミン
カラム温度: 35℃
流量: 1ml/分
注入: 2[g/l]の溶液100μl。
【0130】
サンプル溶液は、Sartorius Minisart SRP 25(孔幅0.2[μm])に通して濾過した。
【0131】
分離用カラムの組み合わせ:
【表3】

【0132】
示されている流量での組み合わせトレイ数: 40,000
検出器: HP 1100示差屈折率計
キャリブレーション: キャリブレーションは、分子量がM=580〜M=7,500,000のPolymer Laboratories社から得た狭い分布を有するポリスチレン標準物質、及びヘキシルベンゼン(M=162)で行った。この範囲の外に位置していた溶離域については外挿により推定した。
【0133】
本発明のディスパージョンPd)中に存在しているポリマーは、好ましくは、40〜60の範囲内にあるK値(N−メチルピロリドン(NMP)中1%濃度溶液でFikentscher法により測定)を有している。
【0134】
K値を測定するための1%濃度溶液は、固形分含有量が約0.7gであるサンプル量を計り分け、計算された量の溶媒を加えることによって調製される。溶媒の量は以下の式により計算される:
【数1】

【0135】
式中の意味は、
VL= 計算された溶媒量[ml]
mS= サンプル重量[g]
SC= 固形分含有量[g/100g]
c= 意図される濃度[g/100ml]。
【0136】
この計算ではサンプルの密度は1g/mlであると仮定されている。全体量はおよそ70mlである。溶液は室温にて溶解され、0.40μm金属シーブに通して濾過される。粘度測定が、このあと、濾過した溶液、及び他のものを混ぜ合わせていない溶媒が、25℃(±0.05℃)の毛管式粘度計の中を流れる時間を測定することで行われる。
【0137】
ガラス転位温度T(DSCにより測定)は、好ましくは40〜70℃、特に好ましくは52〜62℃の範囲内にある。
【0138】
本発明のディスパージョンPd)中に存在しているポリマーは、実質的には、ランダムコポリマーである。
【0139】
ポリマーディスパージョンPd)中に存在しているポリマー粒子の平均粒子直径(分析用超遠心を用いて測定)は、好ましくは70〜200nm、特に好ましくは80〜150nm、特には90〜120nmの範囲内にある。粒子サイズ分布は、好ましくは、実質的に単一モードである。
【0140】
水中0.01%濃度の分散液で測定される(2.5cmキュベット、白色光)、本発明のディスパージョンPd)の光透過率は、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%である。光透過率の測定は、例えば、Dieter Distler, Wassrige Polymerdispersionen, Wiley-VCH (1999), page 40に記載されている。
【0141】
本発明のディスパージョンPd)の固形分含有量は、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。ディスパージョンが限外濾過により精製される場合、本発明のディスパージョンは、好ましくは、限外濾過の前も後もそのような範囲内にある固形分含有量を有している。当然、希ポリマーディスパージョンを限外濾過による濃縮に付すことも、同様に可能である。
【0142】
本発明のディスパージョンは、例えば、30重量%の固形分含有量でも、好ましくは50mPas未満、特に好ましくは25mPas未満、特には10mPas未満の、極めて低い粘度を示す(値は、20℃及び100s−1のBrookfield粘度計を用いて測定)。そのような低粘度は、多くの用途にとって、非常に貴重なものである。
【0143】
本発明のディスパージョンPd)中に存在しているポリマーの電荷はディスパージョンのpHに左右される。等電点は、好ましくは、約7.5〜8.5のpH範囲内にある。仕上がりディスパージョンは、好ましくは8〜10、特に好ましくは8.5〜9.5の範囲内にあるpHを有している(固形分含有量が30重量%で)。仕上がりディスパージョンのpHは、ディスパージョン中に存在しているポリマー粒子の解離又は膨潤が望まれていないかぎり、その等電点よりも高くなる(よりアルカリ性)よう選択されるのが有利である。本発明のディスパージョンは、したがって、好ましくは塩基性のディスパージョンである。
【0144】
本発明のポリマーディスパージョンPd)は、そのpH依存溶解性を特徴としている。酸性化したときにディスパージョンが溶解するpH範囲は、例えば、ポリマー中のN,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート(モノマーa)の量により、また、適切であれば、陽イオン基を有するさらなるモノマー(モノマーd)を用いることにより調節される。本発明のポリマーディスパージョンPd)中に存在しているポリマーは、好ましくは6.8以下のpHで、特に好ましくは5.5以下のpHで溶解する。
【0145】
本発明のさらなる態様は、したがって、pHを下げることによって溶解する水性ポリマーディスパージョンPd)であって、
・ 共重合された単位として
a)N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート、及び
b)α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とC〜C−アルカノールとのエステルから選択される、フリーラジカル重合可能な少なくとも1種の化合物、
を含む少なくとも1種のポリマー、
・ 陰イオン性乳化剤及び非イオン性乳化剤から選択される少なくとも1種の乳化剤、及び
・ 水
を含む水性ポリマーディスパージョンPd)である。
【0146】
好ましい実施形態では、コポリマー中のモノマーとして
・ 重合させるために用いる、モノマーの全体重量を基準にして43〜47重量%のN,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)、及び
・ 重合させるために用いる、モノマーの全体重量を基準にして53〜57重量%の少なくとも1種の化合物b)、
のみを含むポリマーを含んでいるポリマーディスパージョンが含まれている。
【0147】
上述したポリマーディスパージョンPd)は、医薬組成物を製造するのに特に適している。本発明で、初めて、塩基性アミノ基含有ポリマーの水性ディスパージョンが提供されるものであり、このディスパージョンは、製薬用途に適しており、適切な純度を有しており、十分な安定性も有している。さらには、例えば、高分子フィルム形成材として役立つものであり、特には医薬投与剤形用コーティング組成物を生成させるのに役立つ。
【0148】
本発明医薬投与剤形用コーティング組成物用製剤基剤は、少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される賦形剤を含み得る。薬学的に許容される賦形剤とは、製薬、食品生産及び周辺産業の分野で使用可能であると知られている賦形剤、特には関連する薬局方(例えば、欧州薬局方、米国薬局方、日本薬局方)に掲載されている賦形剤、並びに特性が生理学的使用を妨害するものではない他の賦形剤である。
【0149】
適する賦形剤として挙げられるのは、香味剤、風味改善物質、甘味剤(糖、糖アルコール、例えば、アスパルテーム、サッカリン−Na、ナトリウムシクラマートのような甘味剤)、潤滑剤、湿潤剤、離型剤、可塑剤、粘着防止剤、脱酸素剤、安定化剤、孔形成剤、中和剤、光沢剤、着色剤、顔料、消毒剤又は防腐剤、増粘剤等である。そのような物質は、例えば、Fiedler, H. P. Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete, 4th edition, Aulendorf: ECV-Editio-Cantor-Verlag, 1996に記載されている。
【0150】
賦形剤の通常の量は、それぞれのケースで、コーティング組成物の全体重量を基準にして0〜50重量%、好ましくは0〜20重量%、特には0.01〜10重量%の範囲内にある。
【0151】
コーティング組成物は、例えば、本発明のポリマーディスパージョン又はそれを乾燥処理することによって得られ得るポリマーと少なくとも1種の賦形剤とを緊密に混合することで調製され得る。特に好ましい実施形態では、本発明のポリマーディスパージョンは、コーティング組成物を生成させるのには、そのまま、前もって乾燥させることなく用いられる。しかしながら、先ず本発明のポリマーディスパージョンを乾燥に付し、そのようにして得られたポリマー組成物を用いてコーティング組成物を生成させることも可能である。コーティング組成物を生成させるのには、ポリマー組成物は、このあと、例えば、粉体形態で、溶融物として、溶液として、又は二次ディスパージョンとして用いられ得る。
【0152】
本発明のさらなる態様は、そのような水性ポリマーディスパージョンPd)又はそれを乾燥することにより得られ得るポリマー組成物を含むコーティング組成物である。
【0153】
本発明のさらなる態様は、
A)そのようなポリマーディスパージョンを乾燥させることにより及び/又はそのようなポリマーディスパージョンのフィルムを形成させることにより得られ得るポリマー組成物、
B)少なくとも1種の薬学的に許容される活性成分、及び
C)適切であれば少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤
を含む医薬組成物である。
【0154】
本発明のポリマーディスパージョンは、医薬組成物中で、例えば結着剤つまりコーティング組成物を生成させるのに用いられ得る。このケースでの機能的効果は、通常、コーティング組成物つまり結着剤を乾燥させることによって及び/又はそれのフィルムを形成させることによって生じる。この乾燥及び/又はフィルム形成は、塗布方法とは関係なく、エネルギーを入力することによって行われ得る。エネルギー入力は、対流(熱)、輻射(赤外又はマイクロ波)又は伝導によって行われ得る。塗布するために分散媒として用いられた水はこの間に蒸発し、また蒸発は、適切であれば、真空を使用することによっても促進され得る。
【0155】
本発明のコーティング組成物は、例えば、粉体形態で、溶融物として、又は水性エマルジョン形態で、顆粒化、キャスト、延展することで、又はスプレー塗布することで用いられ得る。ポリマーディスパージョンとしての使用、特定的には一次ディスパージョンとしての使用が好ましい。本発明のコーティング組成物は、さらに、少なくとも1種のさらなるポリマー成分を含み得る。さらに、少なくとも2種のディスパージョンの混合物、少なくとも1種のディスパージョンと少なくとも1種の溶液との混合物、少なくとも1種のディスパージョンと少なくとも1種の粉体との混合物、少なくとも2種の粉体の混合物等も用いられ得る。
【0156】
本発明の製剤は、原理的には、抗うつ薬、ベータ受容体ブロッカー、抗糖尿病薬、鎮痛薬、抗炎症剤、抗リウマチ薬、抗低血圧薬、高血圧治療薬、精神活性薬、精神安定剤、制吐剤、筋弛緩薬、グルココルチコイド、潰瘍性大腸炎又はクローン病の治療剤、抗アレルギー薬、抗生物質、抗てんかん薬、抗凝固剤、抗真菌薬、鎮咳薬、動脈硬化治療剤、利尿剤、酵素、酵素阻害剤、痛風治療剤、ホルモン剤及びその阻害剤、強心配糖体、免疫治療剤及びサイトカイン、下剤、脂質低下剤、胃腸治療剤、片頭痛治療剤、ミネラル製品、耳鼻治療剤、パーキンソン治療剤、甲状腺治療剤、鎮痙剤、血小板凝集抑制剤、ビタミン、細胞増殖静止剤及び転移抑制剤、植物性製剤、化学療法剤、機能性食品、ビタミン、カロテノイド、及びアミノ酸のような、好ましくは密封又は保護された形態で投与され得るいずれの活性医薬成分を投与するのにも適している。
【0157】
適する活性成分の例は、アカルボース、非ステロイド系抗リウマチ薬、強心配糖体、アセチルサリチル酸、静ウイルス薬、アクラルビシン、アシクロビル、シスプラチン、アクチノマイシン、アルファ−及びベータ−交換神経作用薬、アロプリノール、アロセトロン、アルプロスタジル、プロスタグランジン、アマンタジン、アンブロキソール、アムロジピン、メトトレキサート、5−アミノサリチル酸、アミトリプチリン、アムロジピン、アモキシシリン、アナストロゾール、アテノロール、アトルバスタチン、アザチオプリン、バルサラジド、ベクロメタソン、ベタヒスチン、ベザフィブラート、ビカルトアミド、ジアゼパム及びジアゼパム誘導体、ブデソニド、ブフェキサマク、ブプレノルフィン、メタドン、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カンデサルタン、カルバマゼピン、カプトプリル、セファロスポリン、セレトキシブ、セチリジン、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、テオフィリン及びテオフィリン誘導体、トリプシン、シメチジン、クラリトロマイシン、クラブラン酸、クリンダマイシン、クロブチノール、クロニジン、コトリモキサゾール、コデイン、カフェイン、ビタミンD及びビタミンDの誘導体、コレスチラミン、クロモグリク酸、クマリン及びクマリン誘導体、システイン、シタラビン、シクロホスフアミド、シクロスポリン、シプロテロン、シタラビン、ダピプラゾール、デソゲストレル、デソニド、ジヒドララジン、ジルチアゼム、エルゴートアルカロイド、ジメンヒドリナート、ジメチルスルホキシド、ジメチコン、ジピリダモール、ドンペリドン及びドンペリドン誘導体、ドネプジル、ドーパミン、ドキサゾシン、ドキソルビシン、ドキシルアミン、ダピプラゾール、ベンゾジアゼピン、ジクロフェナク、配糖体抗生物質、デシプラミン、エコナゾール、ACE阻害薬、エナラプリル、エフェドリン、エピネフリン、エポエチン及びエポエチン誘導体、モルヒナン、カルシウム拮抗薬、イリノテカン、モダフィニル、オルリスタト、ペプチド系抗生物質、フェニトイン、リルゾール、リセドロナート、シルデナフィル、トピルアマート、マクロライド系抗生物質、エソメプラゾール、エストロゲン及びエストロゲン誘導体、プロゲストゲン及びプロゲストゲン誘導体、テストステロン及びテストステロン誘導体、アンドロゲン及びアンドロゲン誘導体、エテンザミド、エトフェンアマート、エトフィブラート、フェノフィブラート、エトフィリン、エトポシド、ファムシクロビル、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブラート、フェンタニル、フェンチコナゾール、ギラーゼ阻害薬、フルコナゾール、フルダラビン、フルナリジン、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、フルトアミド、フルバスタチン、ホリトロピン、ホルモテロール、ホスホミシン、フロセミド、フシジン酸、ガランタミン、ガロパミル、ガンシクロビル、ゲンフィブロジル、ゲンタミシン、ギンクゴ、セントジョーンズワート、グリベンクルアミド、経口抗糖尿病薬としての尿素誘導体、グルカゴン、グルコサミン及びグルコサミン誘導体、グルタチオン、グリセリン及びグリセリン誘導体、視床下部ホルモン、ゴセレリン、グアネチジン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヘパリン及びヘパリン誘導体、ヒアルロン酸、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド及びヒドロクロロチアジド誘導体、サリチラート、ヒドロキシジン、イダルビシン、イホスフアミド、イミプラミン、インドメタシン、インドラミン、インスリン、インターフェロン、ヨウ素及びヨウ素誘導体、イソコナゾール、イソプレナリン、グルシトール及びグルシトール誘導体、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ケトチフェン、ラシジピン、ランソプラゾール、レボドパ、レボメタドン、甲状腺ホルモン、リポ酸及びリポ酸誘導体、リシノプリル、リスリド、ロフェプラミン、ロムスチン、ロペルアミド、ロラタジン、マプロチリン、メベンダゾール、メベベリン、メクロジン、メフェンアミド酸、メフロキン、メロキシカム、メピンドロール、メプロバマート、メロペネム、メサラジン、メスキスイミド、メタミゾール、メトホルミン、メトトレキサート、メチルフェニダート、メチルプレドニソロン、メチキセン、メトクロプルアミド、メトプロロール、メトロニダゾール、ミアンセリン、ミコナゾール、ミノサイクリン、ミノキシジル、ミソプロストール、マイトマイシン、ミゾラスチン、モエキシプリル、モルヒネ及びモルヒネ誘導体、イブニングプリムローズ、ナルブフィン、ナロキソン、チリジン、ナプロキセン、ナルコチン、ナタマイシン、ネオスチグミン、ニセルゴリン、ニセトアミド、ニフェジピン、ニフルム酸、ニモジピン、ニモラゾール、ニムスチン、ニソルジピン、アドレナリン、アドレナリン誘導体、ノルフロキサシン、ノバミンスルホン、ノスカピン、ニスタチン、オフロキサシン、オランザピン、オルサラジン、オメプラゾール、オモコナゾール、オンダンセトロン、オルリスタト、オセルタミビル、オキサセプロール、オキサシリン、オキシコナゾール、オキシメタゾリン、パントプラゾール、パルアセタモール、パロキセチン、ペンシクロビル、経口ペニシリン、ペンタゾシン、ペンチフィリン、ペントキシフィリン、ペルフェナジン、ペチジン、植物エキス、フェナゾン、フェニラミン、バルビツル酸誘導体、フェニルブタゾン、フェニトイン、ピモジド、ピンドロール、ピペラジン、ピルアセタム、ピレンゼピン、ピリベジル、ピロキシカム、プラミペキソール、プラバスタチン、プラゾシン、プロカイン、プロマジン、プロピベリン、プロプラノロール、プロピフェナゾン、プロスタグランジン、プロチオンアミド、プロキシフィリン、クェチアピン、キナプリル、キナプリラート、ラミプリル、ラニチジン、レプロテロール、レセルピン、リバビリン、リファンピシン、リスペリドン、リトナビル、ロピニロール、ロシグリタゾン、ロキサチジン、ロキシトロマイシン、ルスコゲニン、ルトシド及びルトシド誘導体、サバジラ、サルブタモール、サルメテロール、スコポラミン、セレギリン、セルタコナゾール、セルチンドール、セルトラリン、シリケート、シムバスタチン、シトステロール、ソタロール、スパグルム酸、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、スピラプリル、スピロノラクトン、スタブジン、ストレプトマイシン、スクラルファート、スフェントアニル、スルバクタム、スルホンアミド、スルファサラジン、スルピリド、スルタミシリン、スルチアム、スマトリプタン、スキサメトニウムクロリド、タクリン、タクロリムス、タリオロール、タモキシフェン、タウロリジン、タザロテン、テガセロド、テマゼパム、テニポシド、テノキシカム、テルアゾシン、テルビナフィン、テルブタリン、テルフェナジン、テルリプレッシン、テルタトロール、テトラサイクリン、テトリゾリン、テオブロミン、テオフィリン、ブチジン、チアマゾール、フェノチアジン、チオテパ、チアガビン、チアプリド、プロピオン酸誘導体、チクロピジン、チモロール、チニダゾール、チオコナゾール、チオグアニン、チオキソロン、チロプルアミド、チザニジン、トラゾリン、トルブトアミド、トルカポン、トルナフタート、トルペリソン、トポテカン、トラセミド、アンチエストロゲン、トラマドール、トラマゾリン、トランドラプリル、トラニルシプロミン、トラピジル、トラゾドン、トリアムシノロン及びトリアムシノロン誘導体、トリアムテレン、トリフルペリドール、トリフルリジン、トリメトプリム、トリミプラミン、トリペレンアミン、トリプロリジン、トリホスフアミド、トロマンタジン、トロメタモール、トロパルピン、トロキセルチン、ツロブテロール、チラミン、チロトリシン、ウラピジル、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、バラシクロビル、バルデコキシブ、バルプロ酸、バンコマイシン、ベクロニウムクロリド、ベンラファキシン、ベラパミル、ビダラビン、ビガバトリン、ビロキサジン、ビンブラスチン、ビンカミン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンポセチン、ビキジル、ワルファリン、キサンチノールニコチナート、キシプアミド、ザフィルルカスト、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾピクロン、ゾテピン等である。
【0158】
活性成分は、望まれる場合は、その薬学的に許容される塩又は誘導体の形態でも用いられ得、またキラルな活性成分のケースではいずれの光学活性異性体もラセミ体も又はジアステレオ異性体の混合物も用いられ得る。本発明の組成物は、望まれる場合は、2種以上の活性医薬成分を含み得る。
【0159】
本発明のディスパージョンは、好ましくは、タブレット、押出物、ミニタブレット、カプセル、ソフトカプセル、顆粒、ペレット、マイクロペレット、マイクロカプセル、結晶をコートするのに用いられる。コートした顆粒、ペレット、マイクロペレット、マイクロカプセル、結晶は、適する賦形剤と混合され、水中で迅速に崩壊して、コートした微細形状品を再度放出するタブレットに圧縮成形され得る。このようにして、いわゆるMUPS(multiple unit particulate systems;集合単位粒子状物質システム)剤形が製造され得る。これが、摂取の後に崩壊して、本発明のコーティング組成物でコートしたサブ単位を放出するタブレットである。この関連で特に重要なのがいわゆるオーラルディスパーシブル(oral dispersibles;口内可分散製剤)、すなわち、口の中で短い時間内に崩壊し、風味マスク微細形状品を放出するタブレットである。
【0160】
特定の変形実施形態では、本発明のディスパージョンは、活性成分を、適切であれば適切な賦形剤と共に、顆粒化するのに用いられて、顆粒はそのあとタブレットに圧縮成形される。
【0161】
本発明のディスパージョンは、活性成分経皮パッチ又はスプレーを製造するのにも用いられ得る。
【0162】
同様に、集塊をポリエチレングリコール又は脂質に組み込んで、座剤又は経膣医薬剤形を製造するのにも適している。
【0163】
多くの場合苦い風味を顕在化させることがある活性成分群及び物質であって、本発明のコーティング組成物及び結着剤で有利に製剤化され得るそのようなものは、例えば、
鎮痛剤及び抗リウマチ薬、例えばパルアセタモール、ジクロフェナク、アセクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルビプロフェン、アセチルサリチル酸、レブアセチルメタドール及びオキシコドン;
向精神薬例えばプロメタジン、ドネペジル、モダフィニル、ネファゾドン、レボキセチン、セルチンドール及びセルトラリン;
抗生物質、例えばエリスロマイシン、ロキシトロマイシン、クラリトロマイシン、グレパフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン及びネビラピン;
ベータブロッカー、例えばプロプラノロール、メトプロロール、ビソプロロール及びネビボロール;
抗糖尿病薬、例えばメトホルミン、ミグリトール及びレパグリニド;
抗ヒスタミン薬、例えばジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン及びミゾラスチン;
抗ヒスタミン薬、例えばシメチジン、ファモチジン、ロキサチジン、ニザチジン、チクロピジン、セチリジン及びラニチジン;
ビタミン、例えばチアミンニトラート、並びにキニジンスルファート、アミロプリロースHCl、プソイドエフェドリンHCl、シルデナフィル、トピルアマート、グラニセトロン、レバミピド、キニーネHCl等;
である。
【0164】
風味をマスクするのに特に適しているのは、本発明のポリマーが6以上のpH値では溶解しないことと6以下のpH値では迅速に溶解することから生じるものである。これは、対応して、コートした剤形は唾液中(pH7.2)では非常に長い時間安定であって、苦い医薬物質と口内粘膜との接触はないが、活性成分は1〜5のpH値にある胃では非常に迅速に放出されることを意味する。さらに、溶解は極めて迅速であるので、コートされていない剤形と比較しても作用の始まりに時間差はない。本発明ポリマーのフィルムコーティングは胃液中では5分以内に大体溶解するが、pH7.2のリン酸緩衝液中では2時間以上安定である。意外なこととして、本フィルムコーティングは、pH値が4.5の媒体中でも比較的迅速に溶解するものであり、その結果、それから製造される投与剤形は、無塩酸症の患者や制酸剤を処置された患者でも、迅速な作用を発揮する。
【0165】
本発明のコーティング組成物は、水蒸気及び酸素に対して低い透過性を呈するものであり、その結果、例えば、アセチルサリチル酸、エナラプリル、コルチゾンアセタート、オメプラゾール、カロテノイドのような、水蒸気に特に敏感であって酸素に敏感である医薬物質を製剤化して安定化させることを可能にするものである。このケースではコーティングは防護的な特性を有している。
【0166】
本発明のコーティング組成物は、さらに、1又は複数種の成分を包むことによって、投与剤形中の相溶性のない活性成分又は賦形剤を離す、つまり互いが接触するのを防ぐのにも用いられ得る。
【0167】
本発明のフィルムコーティングの意外なほど優れた特有の使用特性は、ポリマーディスパージョンの優れた均質なフィルム形成、フィルムの低粘着性、及びコーティングの良好な柔軟性又は弾力性によって実現されるものであり、その結果、フィルムコーティングは、タブレット又はペレットコアが膨潤してもクラックは生じない。この関連では、ポリマーは、通常、硬くて、すなわち柔軟性が低くて粘着性がないか、又は、軟らかいが、すなわち柔軟性があるが粘着性もあるかのどちらかであるので、高い柔軟性が極めて低い粘着性と組み合わされているということは、特に意外なことである。
【0168】
本ポリマーディスパージョンは粘度が低いので、スプレー懸濁液の高固形分濃度、及び極めて短いスプレー工程が実現され得る。スプレー懸濁液の固形分濃度は、通常10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、特には25〜40重量%である。本発明に従って用いられるアミノ基含有固体ポリマーをベースとする濃度は、通常5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特には20〜35重量%の範囲内にある。低粘度は、スプレーノズルでの非常に細かくて均一な霧化、タブレット又はペレット表面への非常に良好な広がり、及び迅速で均質なフィルム形成を確実なものにする。着色剤及び顔料の組み込みは通常の方法で行われるが、極めて簡単で、迅速で、溶媒なしである。ハンドリングが簡単なことは、本発明に従って用いられるアミノ基含有ポリマーディスパージョンは、顔料をスプレー懸濁液中に安定化させるという事実からもたらされる。このようなことで、スプレー準備完了懸濁液は、約10分以内に調製され得る。
【0169】
本発明の医薬組成物の製剤化基剤は、好ましくは、薬学的に許容される賦形剤を含んでいる。薬学的に許容される賦形剤とは、製薬、食品生産及び周辺産業の分野で使用可能であると知られている賦形剤、特には関連する薬局方(例えば、ドイツ薬局方、欧州薬局方、英国薬局方、米国薬局方、日本薬局方)に掲載されている賦形剤、並びに特性が生理学的使用を妨害するものではない他の賦形剤である。
【0170】
適する賦形剤は、滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、防腐剤、酸化防止剤、抗刺激剤、キレート剤、エマルジョン安定化剤、フィルム形成剤、ジェル形成剤、匂いマスク剤、レジン、親水コロイド、溶剤、可溶化剤、中和剤、浸透促進剤、顔料、着色剤、安定剤、崩壊剤、乾燥剤、乳白剤、増粘剤、ワックス、可塑剤、香味剤、甘味剤、透過性を低減させる賦形剤等であり得る。賦形剤についての列挙は、例えば、Fiedler, H. P. Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete, 4th edition, Aulendorf: ECV-Editio-Cantor-Verlag, 1996に記載されている、専門家の知識を基礎にしたものである。
【0171】
特に適する可塑剤の例は、トリエチルシトラート、トリブチルシトラート、トリアセチン、アセチルトリエチルシトラート、ラブラソール、グリコフロール、ポリプロピレングリコール400である。
【0172】
フィルムコーティングの透過性は、無機固形物(例えば、タルク、カオリン、二酸化チタンのような顔料)又は親油性有機固形物、例えば脂、ワックス、グリセリド、脂肪酸(例えば、ステアリン酸のような)、脂肪アルコール(例えば、ステアリルアルコールのような)を組み込むことによってさらに低減され得る。
【0173】
本発明の医薬組成物は、活性成分を適する賦形剤と混合することで又はそれで希釈することで製造され得る。賦形剤は、活性成分に対してビヒクル、担体又は媒体として機能することができる固体又は半固体材料であり得る。所望の場合は、さらなる賦形剤の混合は、当業者に知られている方法で行われる。
【0174】
同じ方法で、獣医薬投与剤形(特に反芻胃−安定剤形)や、ビタミン、カロテノイド、微量元素、栄養補助剤、アミノ酸及び栄養補助食品を含む投与剤形も製造され得る。栄養補助食品は食物製品又は補助食品ともみなされ得る。
【0175】
本発明のさらなる態様は、化粧品での、作物防護での、種子コートのための、食物製品での、動物栄養剤での、接着剤原材料としての、紙製造のための、皮革及び織物用の結着剤又は補助剤としての、殺菌剤表面コーティングとしての、不織布分野での、洗剤及び洗浄剤での、塗料製造のための、建築分野での膜を生成させるための先に定義した水性ポリマーディスパージョンPd)の使用である。
【0176】
本発明のさらなる態様は、化粧品、食物製品、動物栄養剤、織物、紙、印刷、皮革並びに接着剤工業用のコーティング組成物としての又はコーティング組成物中での使用である。
【実施例】
【0177】
以下の、非限定的実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0178】
(実施例1)
初期仕込み:
脱イオン水、481.75kg
約20個のエチレンオキシド単位を有するC16−/C18−アルキルポリグリコールエーテル、5.59kg(医薬品等級、10%濃度水溶液)
ラウリル硫酸ナトリウムGMP、4.58kg(15%濃度水溶液)
【0179】
添加1:
脱イオン水、14.60kg
過硫酸ナトリウム、0.38kg
【0180】
フィード1:
脱イオン水、248.52kg
約20個のエチレンオキシド単位を有するC16−/C18−アルキルポリグリコールエーテル、86.43kg(医薬品等級、10%濃度水溶液)
ラウリル硫酸ナトリウムGMP、71.38kg(15%濃度水溶液)
【0181】
フィード2:
ジエチルアミノエチルメタクリラート、172.00kg
メチルメタクリラート、258.00kg
【0182】
フィード3:
脱イオン水、153.09kg
過硫酸ナトリウム、3.92kg
【0183】
フィード容器(フィード2)には実質的に水がないことが適当な技術的手段(アセトンでフラッシュし及び/又は吹きつけて乾燥させる)により確実に行う。添加1及びフィード3は、重合の開始(固体過硫酸ナトリウムが脱イオン水に溶解される)の直前(すなわち1時間前)に新しく作り上げる。動的ミキサー(Megatron MT 3−61、Kinematica AG)には試験を開始する前に水を仕込む。
【0184】
ポリマーディスパージョンと接触する重合反応器(容器体積約2050l)及びすべての配管は試験を開始する前に3%濃度水酸化ナトリウム水溶液でフラッシュする。重合反応器にこのあと初期仕込みを仕込む。反応を開始させる前に、初期仕込みは、脱気し、5barの窒素で1回給気し、もう一度脱気して、窒素で大気圧力までもって行く。初期仕込みはこのあと撹拌しながら75℃の反応温度まで加熱する。70℃の内部温度が到達されたら、添加1を2分間で加える。
【0185】
フィード1及び2は、反応器に動的ミキサー(回転は5000rpmに設定)を介して計量投入し、フィード3は、動的ミキサーと重合反応器との間にある配管引き伸ばし部に位置している静的ミキサーを介して反応器に計量投入する。
【0186】
フィード1は、フィード2及び3の直前に開始する。フィード1の添加は1.75時間で、フィード2の添加は1.50時間で、フィード3の添加は3.75時間で行う。
【0187】
フィード3が完了した後、後重合を撹拌しながら75℃で2時間行う。反応混合物をこのあと室温まで冷却し、固形分含有量及びpHを測定する。実施例1及び後の実施例2〜6では、重合の間(より正確には、モノマーの添加の間)のpHは常に8.0より高かった。K値は、NMP中1%濃度溶液ですべての実施例に対して測定した。
【表4】

【0188】
ディスパージョンはこのあと限外濾過に付し、以下の特性を測定する:
【表5】

【0189】
(実施例2)
手順は実施例1にあるとおりであるが、フィード3ではたったの2.2kgの過硫酸ナトリウムを用い、フィード2には0.4kgのエチルヘキシルチオグリコラートも含まれている。
【表6】

【0190】
ディスパージョンはこのあと限外濾過に付し、以下の特性を測定する:
【表7】

【0191】
(実施例3)
手順は実施例1にあるとおりであるが、フィード2では193.5kgのジエチルアミノエチルメタクリラート及び236.5kgのメチルメタクリラートを用いる。
【表8】

【0192】
ディスパージョンはこのあと限外濾過に付し、以下の特性を測定する:
【表9】

【0193】
(実施例4)
初期仕込み:
脱イオン水、378.24kg
約20個のエチレンオキシド単位を有するC16−/C18−アルキルポリグリコールエーテル、5.59kg(医薬品等級、10%濃度水溶液)
ラウリル硫酸ナトリウムGMP、4.58kg(15%濃度水溶液)
【0194】
添加1:
脱イオン水、14.60kg
過硫酸ナトリウム、0.38kg
【0195】
フィード1:
脱イオン水、352.03kg
約20個のエチレンオキシド単位を有するC16−/C18−アルキルポリグリコールエーテル、86.43kg(医薬品等級、10%濃度水溶液)
ラウリル硫酸ナトリウムGMP、71.38kg(15%濃度水溶液)
【0196】
フィード2:
ジエチルアミノエチルメタクリラート、172.00kg
メチルメタクリラート、258.00kg
【0197】
フィード3:
脱イオン水、153.09kg
過硫酸ナトリウム、3.92kg
【0198】
ポリマーディスパージョンと接触する重合反応器(容器体積約2050l)及びすべての配管は試験を開始する前に3%濃度水酸化ナトリウム水溶液でフラッシュする。重合反応器にこのあと初期仕込みを仕込む。
【0199】
反応を開始させる前に、初期仕込みは、脱気し、5barの窒素で1回給気し、もう一度脱気して、窒素で大気圧力までもって行く。初期仕込みはこのあと撹拌しながら75℃の反応温度まで加熱する。70℃の内部温度が到達されたら、添加1を2分間で加える。
【0200】
フィード1及び2は、反応器に動的ミキサー(回転は5000rpmに設定)を介して計量投入し、フィード3は、動的ミキサーと重合反応器との間にある配管引き伸ばし部に位置している静的ミキサーを介して反応器に計量投入する。
【0201】
フィード1は、フィード2及び3の直前に開始する。フィード1の添加は1.75時間で、フィード2のは1.50時間で、フィード3のは3.75時間で行う。
【0202】
フィード3が完了した後、後重合を撹拌しながら75℃で2時間行う。反応混合物をこのあと室温まで冷却し、固形分含有量及びpHを測定する。
【表10】

【0203】
ディスパージョンはこのあと限外濾過に付し、以下の特性を測定する:
【表11】

【0204】
(実施例5)
手順は実施例4にあるとおりであるが、添加1及びフィード3では過硫酸ナトリウムに代えて過硫酸カリウムを用いる。
【表12】

【0205】
ディスパージョンはこのあと限外濾過に付し、以下の特性を測定する:
【表13】

【0206】
(実施例6)
手順は実施例4にあるとおりであるが、添加1及びフィード3では過硫酸ナトリウムに代えて過硫酸アンモニウムを用い、さらにはpHを、それぞれのケースで、NaOH水溶液でpH9に調節する。
【表14】

【0207】
ディスパージョンはこのあと限外濾過に付し、以下の特性を測定する:
【表15】

【0208】
上記で示した実施例の変形態様では、当然、30重量%とは異なる固形分含有量のディスパージョンも調製され得る。そのような目的のためには、例えば、脱イオン水が、
a)初期仕込みに、及び/又は
b)フィード1に、及び/又は
c)フィード3に
加えられ得る(より低い固形分含有量を目標とする場合)又は除去され得る(より高い固形分含有量を目標とする場合)。
【0209】
別の実施形態では、例えば、初期仕込みからの水をフィード1及び/又はフィード3に配分することが可能であり、このケースでは、固形分含有量は、結果として、変わらない。再配分は、しかしながら、初期仕込みから除去された水及び/又はフィード1及び/又はフィード3の全体又は一部が新フィード(「フィード4」)に配分されるようにも行うことができ、このケースでは、フィード4は、このあと、重合と並行して、重合に時間遅れをもって、あるいは重合後に、連続的に又は一度に全部が加えられ得る。これは、例えば、容器の利用可能なサイズに処方物を合わせて、例えば、一杯になり過ぎるのを回避するのに又はフィード1の補給を回避するのに役立ち得る。
【0210】
当然、この実施例で開示された初期仕込み及びフィード1への乳化剤配分が、初期仕込みからの陰イオン性及び/又は非イオン性乳化剤がフィード1に(又はその反対に)配分されるように変えられるのが有利であり得る。当然、初期仕込み及び/又はフィード1からの陰イオン性及び/又は非イオン性乳化剤がさらなるフィード4(上記を参照)に配分されることもあり得る。そのようないろいろな方策でも、乳化剤の全体量は、一定のままであるのが好ましい。
【0211】
当然、フィード1及び/又はフィード2及び/又はフィード3が一定の速度で計量投入するのではなく、一定でない速度で導入されるのも有利であり得る。例えば、開始剤フィードは、重合段階の間(すなわちフィード2の添加の間)は、フィード2の完了後よりもより速い速度で計量投入され得る。
【0212】
(フィルム生成の実施例)
実施例1からのジエチルアミノエチルメタクリラート−メチルメタクリラートコポリマーの30%濃度ディスパージョンを撹拌しながら15%トリエチルシトラート(固形分基準)と混合し、フィルム塗布器(Erichsen Coatmaster)上に延展し、45℃のプレート温度で乾燥させてフィルムにした。フィルム厚みは100μmであった。
【0213】
以下の特性が見出された:
破断点伸び: 93%
引っ張り強度: 9.8N/mm
DIN 53122による93%r.h.での水蒸気透過速度: 58g/(m/日)/100μmフィルム
0.1N HClへの溶解時間: 2分50秒
pH6.8のリン酸緩衝液への溶解時間: >120分
Hoessel法による20℃/80%r.h.での粘着性: 0.25(可塑剤としてトリエチルシトラートに代えてトリアセチンで)
Hoessel法による30℃/75%r.h.での粘着性: 0.25(可塑剤としてトリエチルシトラートに代えてトリアセチンで)
[方法は、Cosmetics and Toiletries, 111(8), 73 et seq. (1996)に記載;スケールは0(粘着性なし)から5(粘着性あり)まで、r.h.=相対湿度]。
【0214】
投与剤形のコーティングの実施例
【0215】
(コーティング実施例1:プロプラノロールHCl40mgフィルム−コートタブレット)
タブレットの組成
【表16】

【0216】
形態:9mm、コートタブレット剤形。
【0217】
スプレー処方物の組成
【表17】

【0218】
ポリマーディスパージョンにトリエチルシトラート可塑剤を加え、撹拌を続けた。タルク及び酸化鉄レッドを水にスラリー化し、高剪断ミキサーを用いてホモジナイズした。この2つの相を、このあと、顔料懸濁液をポリマーディスパージョンに加えることにより混合した。
【0219】
コーティングパラメータ:
コーティングにはManesty「Accela Cota 24」水平ドラム式コーターを使用した。
【0220】
以下の条件を設定した又はその設定から得た:
【表18】

【0221】
フィルム−コートタブレットの特性
【0222】
放出
パドル式、50rpm、37℃、1000ml
【表19】

【0223】
崩壊時間
Erweka型式ZT 74崩壊試験機、37℃、800ml
【表20】

【0224】
(コーティング実施例2:エナラプリル10mgフィルム−コートタブレット)
タブレットの組成
【表21】

【0225】
形態:7mm、コートタブレット剤形。
【0226】
スプレー処方物の組成
【表22】

【0227】
ポリマーディスパージョンにトリエチルシトラート可塑剤を加え、撹拌を続けた。タルク及び酸化チタンを水にスラリー化し、高剪断ミキサーを用いてホモジナイズした。水中でポリビニルアルコールを85℃に加熱し、溶解させた。冷却させたこの溶液をポリマーディスパージョンに撹拌投入した。顔料懸濁液をこのあと撹拌しながら加えた。
【0228】
コーティングパラメータ
コーティングにはManesty「Accela Cota 24」水平ドラム式コーターを使用した。
【0229】
以下の条件を設定した又はその設定から得た:
【表23】

【0230】
結果
放出:パドル式、50rpm、37℃、1000ml
【表24】

【0231】
崩壊時間:Erweka型式ZT74崩壊試験機、37℃
【表25】

【0232】
安定性:30℃/70%r.h.で1年間保存
【表26】

【0233】
(コーティング実施例3:コートイブプロフェンミニペレット)
ペレットの組成
【表27】

【0234】
ペレットサイズ200〜400μm。
【0235】
スプレー処方物の組成
【表28】

【0236】
ポリマーディスパージョンにトリアセチン可塑剤を加え、撹拌したままにしておいた。タルクを水にスラリー化し、高剪断ミキサーを用いてホモジナイズした。この2つの調製物をこのあと混合した。
【0237】
コーティングパラメータ
コーティングにはGlatt社から販売の「Glatt GPCG 3.1」流動床式造粒機を使用した。
【表29】

【0238】
MUPSタブレットへのタブレット化
上記で製造されたコートペレットをタイプ102の微結晶セルロースと混合・圧縮成形して、崩壊するとまたペレットに崩壊するタブレットを製造することができる。
【表30】

【0239】
形態:11mm、平坦、ベベル型。
【0240】
タブレット及びペレット特性:
放出、ペレット、パドル式、50rpm、37℃、1000ml、重量250mg
【表31】

【0241】
タブレット:
パドル式、50rpm、37℃、1000ml
【表32】

【0242】
タブレット崩壊:
Erweka型式ZT 74崩壊試験機、37℃
【表33】

【0243】
(コーティング実施例4:コートカフェインペレット)
ペレットの組成
【表34】

【0244】
スプレー処方物の組成
【表35】

【0245】
アセチルトリエチルシトラート可塑剤を直接陽イオン性ポリマーディスパージョンに加え、撹拌したままにしておいた。タルク及び酸化鉄イエローを水にスラリー化し、Ultraturraxを用いてホモジナイズした。この2つの相を、このあと、顔料懸濁液をポリマーディスパージョンに加えることにより混合した。
【0246】
コーティングパラメータ:
コーティングにはGlatt社から販売の「Glatt GPCG 3.1」流動床グラニュレーターを使用した。
【0247】
以下の条件を設定した又はその設定から得た:
【表36】

【0248】
放出:
パドル式、50rpm、37℃、1000ml、重量300mg
【表37】

【0249】
(コーティング実施例5:コートキニーネスルファートミニペレット)
ペレットの組成
【表38】

【0250】
スプレー処方物の組成
【表39】

【0251】
トリアセチン可塑剤を直接ポリマーディスパージョンに加え、撹拌したままにしておいた。タルク及びインディゴチン・レイクを水にスラリー化し、Ultraturraxを用いてホモジナイズした。この2つの調製物を、このあと、顔料懸濁液をポリマーディスパージョンに加えることにより混合した。
【0252】
コーティングパラメータ:
コーティングにはGlatt社から販売の「Glatt GPCG 3.1」流動床式グラニュレーターを使用した。
【0253】
以下の条件を設定した又はその設定から得た:
【表40】

【0254】
放出:
パドル式、50rpm、37℃、1000ml、重量1000mg
【表41】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともpH8の水性媒体中で
a)N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート、及び
b)α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とC〜Cアルカノールとのエステルから選択される少なくとも1種のフリーラジカル重合可能な化合物
を含むモノマー混合物M)をフリーラジカルエマルジョン重合させることによる、水性ポリマーディスパージョンPd)の調製方法。
【請求項2】
メチルメタクリラートが、成分b)として用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
・ 重合させるために用いる、モノマーの全体重量を基準にして25〜65重量%のN,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)、及び
・ 重合させるために用いる、モノマーの全体重量を基準にして35〜75重量%の少なくとも1種の化合物b)、
を含むモノマー混合物M)が用いられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
・ 重合させるために用いる、モノマーの全体重量を基準にして43〜47重量%のN,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)、及び
・ 重合させるために用いる、モノマーの全体重量を基準にして53〜57重量%の少なくとも1種の化合物b)、
から構成されるモノマー混合物M)が用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
フリーラジカルエマルジョン重合が、少なくとも1種の非イオン性乳化剤の存在下、又は少なくとも1種の陰イオン性乳化剤及び少なくとも1種の非イオン性乳化剤を含む乳化剤混合物の存在下で行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
非イオン性乳化剤が、少なくとも1種の、12〜30個の炭素原子を有するアルコールの脂肪アルコールアルコキシラートを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非イオン性乳化剤が、それぞれのケースで10〜30個のエチレンオキシド単位を有しているセチルアルコール及び/又はステアリルアルコールのエトキシラートから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の無機ペルオキシドが、フリーラジカルエマルジョン重合の開始剤として用いられる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
開始剤が、アンモニウムペルオキソジスルファート及びアルカリ金属ペルオキソジスルファートから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
pHが2より大きい、好ましくは3より大きい、特には4より大きい少なくとも1種の無機ペルオキシドの水性溶液が、フリーラジカルエマルジョン重合の開始剤として用いられる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
重合させるために用いる直前に調製される、又は、重合させるために用いる前に少なくとも1種の塩基を加えることによってpHが2より大きい、好ましくは3より大きい、特には4より大きい値に調整されているナトリウムペルオキソジスルファート水性溶液又はカリウムペルオキソジスルファート水性溶液が、フリーラジカルエマルジョン重合の開始剤として用いられる、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ペルオキソジスルファート濃度が0.5〜20重量%、特に好ましくは2〜10重量%の範囲内にあるペルオキソジスルファート水性溶液が、フリーラジカルエマルジョン重合の開始剤として用いられる、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
フリーラジカルエマルジョン重合を開始する前には、モノマーが重合区画に導入されない、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
フリーラジカルエマルジョン重合が、シードラテックスの存在下では行われない、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)が、それを重合させるために用いる直前に混合装置中で水と混合される、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)が、混合装置中で、水、少なくとも1種の乳化剤及び適切であれば少なくとも1種のさらなるモノマーと混合されて、モノマーエマルジョンが得られる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1個の動的ミキサーを含む混合装置が用いられる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
水性ポリマーディスパージョンPd)と接触するシステムのすべての部分を、フリーラジカルエマルジョン重合を開始する前に塩基と接触させる、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
得られるポリマーディスパージョンPd)が、限外濾過に付される、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに定義されている方法によって得ることができる水性ポリマーディスパージョンPd)。
【請求項21】
pHを下げることによって溶解する水性ポリマーディスパージョンPd)であって、
・ 共重合される単位として
a)N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート、及び
b)フリーラジカル重合ができ、α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジ−カルボン酸とC〜C−アルカノールとのエステルから選択される少なくとも1種の化合物
を含む少なくとも1種のポリマー、
・ 陰イオン性乳化剤及び非イオン性乳化剤から選択される少なくとも1種の乳化剤、及び
・ 水
を含む、前記水性ポリマーディスパージョンPd)。
【請求項22】
コポリマー中のモノマーとして
・ 重合させるために用いる、モノマーの全体重量を基準にして43〜47重量%のN,N−ジエチルアミノエチルメタクリラートa)、及び
・ 重合させるために用いる、モノマーの全体重量を基準にして53〜57重量%の少なくとも1種の化合物b)、
のみを含むポリマーを含んでいる、請求項20に記載のポリマーディスパージョン。
【請求項23】
2500重量ppmを越えない、特に好ましくは1000重量ppmを越えない、特には500重量ppmを越えない量でN,N−ジエチルアミノエタノールを含む、請求項20〜22のいずれかに記載のポリマーディスパージョン。
【請求項24】
100重量ppmを越えない、特に好ましくは50重量ppmを越えない量でメタクリル酸を含む、請求項20〜23のいずれかに記載のポリマーディスパージョン。
【請求項25】
500重量ppmを越えない、特に好ましくは250重量ppmを越えない、特には50重量ppmを越えない量でメタノールを含む、請求項20〜24のいずれかに記載のポリマーディスパージョン。
【請求項26】
請求項20〜25のいずれかに定義されている水性ポリマーディスパージョンPd)、又はそれを乾燥させることによって得ることができるポリマー組成物を含んでいるコーティング組成物。
【請求項27】
さらに、少なくとも1種のさらなるポリマー成分を含む、請求項26に記載のコーティング組成物。
【請求項28】
A)請求項20〜25のいずれかに定義されているポリマーディスパージョンを乾燥させることによって及び/又はそれのフィルムを形成することによって得ることができるポリマー組成物、
B)少なくとも1種の薬学的に許容される活性成分又は栄養補助物質、及び
C)適切であれば、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤又は食物製品分野で許容される補助剤
を含んでいる医薬組成物又は食物製品。
【請求項29】
請求項1〜18のいずれかに定義されている水性ポリマーディスパージョンPd)、又はそれを乾燥させることによって得ることができるポリマー組成物をベースとするコーティングを含んでいる、経口投与剤形の形態にある請求項28に記載の医薬組成物又は食物製品。
【請求項30】
コートしたタブレット、ペレット、マイクロカプセル、顆粒又は結晶の形態にある、請求項28に記載の医薬組成物又は食物製品。
【請求項31】
化粧品での、作物防護での、種子コーティングのための、食物製品での、獣医薬での、動物栄養剤での、接着剤原材料としての、紙製造のための、皮革及び織物用結着剤又は補助剤としての、殺菌剤表面コーティングとしての、不織布分野での、洗剤及び洗浄剤での、塗料製造のための、建築分野での膜を製造するための、請求項20〜25のいずれかに定義されている水性ポリマーディスパージョンPd)の使用。
【請求項32】
化粧品、食物製品、獣医薬、動物栄養剤、種子用、さらには織物、紙、印刷、皮革及び接着剤工業用のコーティング組成物としての、又はコーティング組成物中での、請求項20〜25のいずれかに定義されている水性ポリマーディスパージョンPd)の使用。

【公表番号】特表2010−535261(P2010−535261A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518692(P2010−518692)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060154
【国際公開番号】WO2009/016258
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】