説明

アクチュエータ装置

【課題】アクチュエータシステムの構成を簡易化させ得ると共に、性能を向上させながら容易に小型化させ得るアクチュエータ装置を実現し難かった。
【解決手段】アクチュエータ装置において、回転軸の回転を駆動手段を介して制御する制御手段をハウジング内に設けるようにした。またアクチュエータ装置において、回転軸の回転変位を検出する回転軸回転変位検出手段をハウジング内に設けるようにした。さらに本発明においては、アクチュエータ装置において、回転自在に枢支された回転軸と、当該回転軸と同軸に一体化された永久磁石と、永久磁石に回転力を生じさせる磁界を発生する磁界発生手段と、永久磁石の温度を検出する温度センサとを設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアクチュエータ装置に関し、例えばAC(Alternating Current )サーボモータに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ACサーボモータにおいては、回転自在に枢支されたロータと、当該ロータを取り囲むように所定間隔で固定配設された複数のステータ鉄心及び各ステータ鉄心にそれぞれ巻回された複数のコイルからなるステータとがモータケース内部に一体に収納されることにより構成されている。
【0003】またACサーボモータにおいては、通常、モータケースの外部におけるロータの軸(以下、これをロータ軸と呼ぶ)の反回転トルク出力側にロータ軸の回転位置を検出する回転位置センサが設けられている。
【0004】そしてこのようなACサーボモータを用いたアクチュエータシステムでは、ACサーボモータとは別体にコントローラが設けられ、このコントローラにおいてACサーボモータの回転位置センサから出力されるセンサ信号を利用しながら所望回転出力を得るための各種演算処理を実行し、当該演算結果に基づく駆動電流をコントローラからACサーボモータに与えるようにして当該ACサーボモータを回転制御するようになされていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところがかかるアクチュエータシステムでは、コントローラ及びACサーボモータ間を接続するケーブルとして、回転駆動用(コイル用)に3本、回転位置センサ用に4本から12本の合計7本から15本の比較的太い線材を必要とし、しかもこの線材として、ノイズ等の影響や機械的振動による断線対策を考慮した特殊なケーブル仕様のものが必要となる問題があった。
【0006】またかかるアクチュエータシステムにおいては、このようなACサーボモータ及びコントローラ間の配線に加えて、当該コントローラ及びさらに上位のコントローラ間の交信用配線等が必要であり、このためシステム全体としての配線が多いことから構成が煩雑で組立性が悪い問題があった。
【0007】さらにかかるアクチュエータシステムにおいては、構造的にACサーボモータのロータ及び回転位置センサが離れた位置に配置されるために、高精度かつ高速に位置決めを行い得るようにするためにはACサーボモータのロータ軸を太くし、かつその結合部の構造材としても機械的剛性の高いものが必要となるために、システム全体として重くかつ大きくなる問題があった。
【0008】さらにかかるアクチュエータシステムにおいては、回転位置センサが大きく、重いために、高速な位置決めを行い得るようにするためには、ACサーボモータとして大きいものが必要となり、しかもその軸受けとして高剛性のものが必要となる問題があった。
【0009】さらにかかるアクチュエータシステムにおいては、ACサーボモータが駆動時に発熱するために当該ACサーボモータに与える駆動電流の最大値が制限されるが、実際上は最大の駆動電流値に対して安全率を含んだ低い電流しかACサーボモータに与えることができないために、出力トルクに制限を受ける問題があった。
【0010】本発明は以上の点を考慮してなされたもので、アクチュエータシステムの構成を簡易化させると共に、性能を向上させながら容易に小型化させ得るアクチュエータ装置を提案しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するため本発明においては、アクチュエータ装置において、駆動手段を介して回転軸の回転を制御する制御手段をハウジング内に設けるようにした。
【0012】この結果このアクチュエータ装置では、外部との間の配線量を格段的に低減させることができる。
【0013】また本発明においては、アクチュエータ装置において、回転軸の回転変位を検出する回転軸回転変位検出手段をハウジング内に設けるようにした。
【0014】この結果このアクチュエータ装置では、回転軸の回転変位を高精度に行うことができ、しかも回転軸を太くしたり、当該回転軸の材料として剛性の高いものを用いたりすることなく高精度かつ高速に位置決めを行い得るようにすることができる。
【0015】さらに本発明においては、アクチュエータ装置において、回転軸と、当該回転軸と同軸に一体化された永久磁石と、供給される駆動電流の電流値に応じた大きさの磁界を発生するようにして永久磁石に回転力を生じさせる磁界発生手段と、永久磁石の温度を検出する温度センサと設けるようにした。
【0016】この結果このアクチュエータ装置では、温度センサの出力に基づいて、実際に許容されるコイルに与える駆動電流の電流値の上限を容易に検出し得るようにすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0018】(1)本実施の形態によるACサーボモータの構成図1において、1は全体として本実施の形態によるACサーボモータを示し、回転トルクを発生させるモータ部2と、当該モータ部2において発生された回転トルクを増幅して出力するトルク増幅部3とから構成されている。
【0019】モータ部2においては、金属等の導電材からなるモータケース4の内部に回転軸受け5A、5Bにより回転自在に枢支されたロータ軸6が設けられ、当該ロータ軸6にロータ基体7及び図2(B)及び(C)のように4極に着磁されたリング状の永久磁石でなるロータマグネット8が同軸に一体化されることによりロータ9が形成されている。
【0020】またモータケース4の内側には、図3及び図4(A)に示すように、ロータ9を取り囲むように6つのステータ鉄心10A〜10Fが等間隔(60〔°〕間隔)で固着されると共に、これら各ステータ鉄心10(10A〜10F)には、それぞれ巻線が施されることによりコイル11(11A〜11F)が形成されている。
【0021】これによりモータ部2においては、180 〔°〕対向する2つのコイル11(11A及び11D、11B及び11E、11C及び11F)の組(合計3組ある)をそれぞれU相、V相及びW相として、これらU相、V相及びW相の各コイル11にそれぞれ120 〔°〕ずつ位相がずれた駆動電流を印加して各コイル11に駆動電流の電流値に応じた強さの磁界を発生させることによってロータ9を介して駆動電流の電流値に応じた大きさの回転トルクを発生させることができるようになされている。
【0022】一方トルク増幅部3においては、図1及び図5(A)〜(C)に示すように、モータケース4の先端部に着脱自在に固定されたギアケース12を有する。そしてこのギアケース12の内部には、当該ギアケース12の内側面に固定された環状の内歯車13と、ロータ軸6の先端部に固定された太陽歯車14と、内歯車13及び太陽歯車14間に120 〔°〕間隔で配置された第1〜第3の遊星歯車15A〜15Cとからなる遊星歯車機構16が設けられている。
【0023】また遊星歯車機構16の第1〜第3の遊星歯車15A〜15Cの各軸17A〜17Cは、それぞれギアケース12の先端に回転自在に配置された出力軸18に固定されている。
【0024】これによりこのトルク増幅部3においては、モータ部2からロータ軸6を介して与えられる回転トルクを、遊星歯車機構16を介して増幅して出力軸18に伝達し、当該出力軸18を介して外部に出力し得るようになされている。
【0025】またトルク増幅部3には、出力軸18に固着された環状の樹脂マグネット19と、当該樹脂マグネット19の外周面と対向するようにギアケース12の外周面に固着された第1及び第2の磁気センサ(以下、ホール素子とする)20A、20Bとからなる1回転絶対角度センサ21が設けられている。
【0026】この場合樹脂マグネット19は、図5(A)のように2極にかつ一周に亘って磁束密度φ(θg )が図6のように変化するように着磁されると共に、第1及び第2のホール素子20A、20Bは、図5(B)のように90〔°〕の位相差をもってギアケース12の外周面に固着されている。
【0027】これにより1回転絶対角度センサ21においては、出力軸18の回転変位を、当該出力軸18の回転に伴う第1及び第2のホール素子20A、20Bの配設位置における磁束密度φ(θg )の変化として検出し、検出結果を第1及び第2のホール素子20A、20Bからそれぞれ図7に示すようなそれぞれsin(θg)及びcos(θg )で与えられる波形の第1及び第2の1回転絶対角度センサ信号S1A、S1Bとして出力することができるようになされている。
【0028】かかる構成に加えこのACサーボモータ1の場合、モータ部2のモータケース4の内部には、ロータ軸6の磁極角度を検出するロータ軸磁極角度センサ22と、外部の上位コントローラ(図示せず)からの指令に基づいて出力軸6の回転角度、回転速度及び回転トルク等を制御する制御基板23と、制御基板23の制御のもとにモータ部2の各コイル11に駆動電流を供給するパワー基板24とが収納されている。
【0029】この場合ロータ軸磁極角度センサ22は、ロータ9のロータ基体7の前端面に固着された樹脂マグネット25と、制御基板23に搭載された第1〜第4の磁気センサ(以下、ホール素子とする)26A〜26Dとから形成されている。そして樹脂マグネット25は、図2(B)及び(C)に示すように、ロータ9のロータマグネット8と同じ4極に着磁され、当該ロータマグネット8と同位相でロータ基体7に固着されている。
【0030】また第1〜第4のホール素子26A〜26Dは、図8(B)に示すように、ロータ軸6と同心円上に、第1及び第2のホール素子26A、26Bが180 〔°〕対向し、かつ第3及び第4のホール素子26C、26Dがこれら第1及び第2のホール素子26A、26Bと同じ方向に45〔°〕位相がずれた位置に位置するように制御基板23に搭載されている。
【0031】これによりこのロータ軸回転角度センサ22においては、ロータ軸6の磁極角度を、当該ローラ軸6と一体に回転する樹脂マグネット25の回転に伴う第1〜第4のホール素子26A〜26Dの配設位置における磁束密度の変化として検出し得るようになされている。
【0032】なおロータ軸6の磁極角度とは、ロータ軸6の機械的な回転角度にロータマグネット8の磁極数の半分の値を掛けた角度((2)式参照)と定義する。この実施の形態においては、ロータマグネット8が4極に着磁されているため、磁気角度は0から2πまでの範囲の値をとる。
【0033】一方制御基板23は、図1、図2(A)、図8及び図9に示すように、環状に形成されたプリント配線板の一面側に1チップマイクロコンピュータ27及びクロック発生用の水晶発振器28が搭載されると共に、他面側に上述のロータ軸回転角度センサ22の第1〜第4のホール素子26A〜26Dと、樹脂マグネット25の温度を検出する温度センサ29とが搭載されることにより構成されている。
【0034】そしてこの制御基板23においては、図9のようにロータ軸磁極角度センサ22における第1及び第2のホール素子26A、26Bの出力と、第3及び第4のホール素子26C、26Dの出力とをそれぞれ第1及び第2の減算回路30A、30Bを介して加算して第1及び第2のロータ軸磁極角度センサ信号S2A、S2Bとして1チップマイクロコンピュータ27に取り込み、かつ1回転絶対角度センサ21(図1、図5(C))からケーブル31(図1)を介して供給される第1及び第2の1回転絶対角度センサ信号S1A、S1Bを1チップマイクロコンピュータ27に取り込み得るようになされている。
【0035】また制御基板23においては、2本の電源ライン、1本の汎用のパラレル通信ライン、2本のRS−232Cシリアル通信ライン及び3本の同期式シリアル通信ラインを有する第2のケーブル32(図1)を通じて上位コントローラと接続されており、かくして1チップマイクロコンピュータ27がこの第2のケーブル32を介して駆動電圧を入力し、かつ上位コントローラと交信することができるようになされている。
【0036】そして1チップマイクロコンピュータ27は、この第2のケーブル32を介して上位コントローラから与えられる出力軸18(図1)の回転角度、回転速度又は回転トルクの指定値(以下、これらをそれぞれ指定回転角度、指定回転速度及び指定回転トルクと呼ぶ)と、第1及び第2の1回転絶対角度センサ信号S1A、S1Bと、第1及び第2のロータ軸磁極角度センサ信号S2A、S2Bと、後述のようにパワー基板24から供給される第1〜第3の駆動電流検出信号S3A〜S3Cとに基づいて、U相、V相及びW相の各コイル11にそれぞれ印加すべき駆動電流の電流値(以下、これらをそれぞれ第1〜第3の電流指令値と呼ぶ)を算出し、これら算出した第1〜第3の電流指令値を第3のケーブル33を介してパワー基板24に送出するようになされている。
【0037】パワー基板24においては、図1、図4(B)及び(C)に示すように、環状に形成されたプリント配線板の一面側に図10に示すコイル駆動ブロック34を形成する複数のパワートランジスタチップ35が搭載されることにより構成されている。
【0038】そしてこのコイル駆動ブロック34は、制御基板23の1チップマイクロコンピュータ27から与えられる第1〜第3の電流指令値に基づいて、モータ部2のU相、V相及びW相の各コイル11に対してそれぞれ対応する電流値の駆動電流を印加することによりモータ部2のロータ9を回転駆動させる。
【0039】またこの際コイル駆動ブロック34は、このときU相、V相及びW相の各コイル11にそれぞれ印加されている駆動電流の電流値をそれぞれ検出し、検出結果を第1〜第3の駆動電流検出信号S3A〜S3Cとして第3のケーブル33(図1)を介して制御基板23に送出する。
【0040】このようにしてこのACサーボモータ1では、制御基板23の1チップマイクロコンピュータ27及びパワー基板24のコイル駆動ブロック34からなる制御回路によって、上位コントローラから与えられた指定回転角度、指定回転速度又は指定回転トルクに応じてモータ部2を駆動する。
【0041】(2)1チップマイクロコンピュータ27及びコイル駆動ブロック34の構成ここで1チップマイクロコンピュータ27は、図11に示すように、演算処理ブロック40、レジスタ41、ロータ軸回転角度検出処理ブロック42、トルク−3相電流信号変換処理ブロック43、電流制御処理ブロック44及び第1〜第4のアナログ/ディジタル変換回路45〜48から構成されている。
【0042】そして1チップマイクロコンピュータ27では、1回転絶対角度センサ21(図1、図5(C))から供給される第1及び第2の1回転絶対角度センサ信号S1A、S1Bを第3のアナログ/ディジタル変換回路47においてディジタル変換し、得られた第1及び第2の1回転絶対角度センサデータD1A、D1Bをレジスタ41に格納する。
【0043】また1チップマイクロコンピュータ27では、第1及び第2の減算回路30A、30B(図9)から与えられるロータ軸磁極角度センサ22の出力に基づく第1及び第2のロータ軸磁極角度センサ信号S2A、S2Bを第2のアナログ/ディジタル変換回路46においてディジタル変換し、得られた第1及び第2のロータ軸磁極角度センサデータD2A、D2Bをロータ軸回転角度検出処理ブロック42に入力する。
【0044】ロータ軸回転角度検出処理ブロック42は、供給される第1及び第2のロータ軸磁極角度センサデータD2A、D2Bに基づいてロータ軸6の磁極回転角度(以下、これをロータ軸磁極回転角度と呼ぶ)Pmlと、磁極角度θp とを検出し、ロータ軸回転角度Pmlをレジスタ41に格納すると共に磁極角度θp をトルク−3相電流信号変換処理ブロック43に送出する。
【0045】なおロータ軸6の磁極回転角度(ロータ軸磁極回転角度Pml)とは、ロータ軸6の回転に伴い第1〜第4のホール素子26A〜26Dにより検出される樹脂マグネット25の隣接する一対のN極及びS極による磁極変化を1周期(0〜2π)とする角度と定義する。この実施の形態においては樹脂マグネット25が4極に着磁されているため、ロータ軸磁極回転角度Pmlは0から4πまでの範囲の値をとる。
【0046】そして演算処理ブロック40は、このようにしてレジスタ41に格納された第1及び第2の1回転絶対角度センサデータD1A、D1B並びにロータ軸磁極回転角度Pmlと、上位コントローラから与えられる指定回転角度、指定回転速度又は指定回転トルクとに基づいて、目標とする回転トルク(以下、これを目標回転トルクと呼ぶ)T0 を演算し、演算結果をレジスタ41に格納する。
【0047】このレジスタ41に格納された目標トルクT0 は、トルク−3相電流信号変換処理ブロック43により読み出される。そしてトルク−3相電流信号変換処理ブロック43は、この目標トルクT0 と、ロータ軸回転角度検出処理ブロック42から与えられるロータ軸6の磁極角度θp とに基づいて、モータ部2におけるU相、V相、W相の各コイル11にそれぞれ印加すべき駆動電流の電流値を表す上述の第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 、Wr をそれぞれ算出し、これを電流制御処理ブロック44に送出する。
【0048】またこのとき電流制御処理ブロック44には、第1のアナログ/ディジタル変換回路45から、パワー基板24から与えられる第1〜第3の駆動電流検出信号S3A〜S3Cをディジタル変換することにより得られた第1〜第3の駆動電流検出データD3A、D3Bが与えられる。
【0049】かくして電流制御処理ブロック44は、これら第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 、Wr と、第1〜第3の駆動電流検出データD3A、D3Bとに基づいて、第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 、Wr に対して電圧変動に対する補償処理を含む所定の信号処理を施した後これをPWM(Pulse Width Modulation)変調し、得られた第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cを第3のケーブル33を介してこれをパワー基板24のコイル駆動ブロック34に送出する。
【0050】なお第3のケーブル33には、第1〜第3のPWM信号S4A〜S4C用にそれぞれ2本のラインが設けられている。そして電流制御処理ブロック44は、出力軸18(図1)を正転駆動するときには第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cをそれぞれ一方の第1のラインを介してパワー基板24のコイル駆動ブロック34に送出すると共に、第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cにおける論理「0」レベルの信号(以下、これらを第1〜第3の基準信号と呼ぶ)S5A〜S5Cを他方の各第2のラインをそれぞれ介してパワー基板24のコイル駆動ブロック34に送出する。
【0051】また電流制御処理ブロック44は、出力軸18を逆転駆動するときには第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cをそれぞれ第2のラインを介してパワー基板24のコイル駆動ブロック34に送出すると共に、第1〜第3の基準信号S5A〜S5Cをそれぞれ各第1のラインを介してパワー基板24のコイル駆動ブロック34に送出する。
【0052】コイル駆動ブロック34においては、図10R>0に示すように、U相、V相、W相の各コイル11にそれぞれ対応させて、それぞれ4個の増幅器50A〜50Cからなる同様構成の第1〜第3のゲートドライブ回路51A〜51Cと、それぞれ2個のPNP型トランジスタTR1、TR2及び2個のNPN型トランジスタTR3、TR4からなる同様構成の第1〜第3のインバータ回路52A〜52Cから構成されている。
【0053】そしてこのコイル駆動ブロック34では、U相、V相及びW相の各第1のラインがそれぞれ対応する第1〜第3のゲートドライブ回路51A〜51Cの第1及び第3の増幅器50A、50Cをそれぞれ介して対応する第1〜第3のインバータ回路52A〜52Cの第2のPNP型トランジスタTR2のベース及び第1のNPN型トランジスタTR3のベースと接続され、U相、V相及びW相の各第2のラインがそれぞれ対応する第1〜第3のゲートドライブ回路52A〜52Cの第2及び第4の増幅器50B、50Dをそれぞれ介して対応する第1〜第3のインバータ回路52A〜52Cの第2のPNP型トランジスタTR2のベース及び第1のNPN型トランジスタTR4のベースと接続されている。
【0054】またこのコイル駆動ブロック34では、モータ部2のU相、V相及びW相の各コイル11がそれぞれ対応する第1〜第3のインバータ回路52A〜52Cにおける第1のPNP型トランジスタTR1のコレクタ及び第1のNPN型トランジスタTR3のコレクタの接続中点と、第2のPNP型トランジスタTR2のコレクタ及び第2のNPN型トランジスタTR4のコレクタの接続中点との間に接続されている。
【0055】これによりこのコイル駆動ブロック34においては、U相、V相及びW相の各相毎に、第1又は第2のラインを介して与えられる第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cをそれぞれ対応する第1〜第3のインバータ回路52A〜52Cにおいてアナログ波形の駆動電流Iu 、Iv 、Iw に変換し、これらをそれぞれ対応するU相、V相及びW相の各コイル11に印加することができるようになされている。
【0056】またコイル駆動ブロック34においては、U相、V相及びW相の各コイル11に供給する駆動電流Iu 、Iv 、Iw の大きさを第1〜第3のインバータ回路52A〜52Cにそれぞれ設けられたコイルからなる電流センサ53により検出し、検出結果を上述のように第1〜第3の第1〜第3の駆動電流検出信号S3A〜S3Cとして制御基板23の1チップマイクロコンピュータ27の第1のアナログ/ディジタル変換回路45(図1111)に送出するようになされている。
【0057】(3)1チップマイクロコンピュータ27の各処理ブロックの詳細構成ここで、1チップマイクロコンピュータ27の演算処理ブロック40、ロータ軸回転角度検出処理ブロック42、トルク−3相電流信号変換処理ブロック43及び電流制御処理ブロック44について、それぞれ構成を詳細に説明する。
【0058】(3−1)演算処理ブロック40の詳細構成まず演算処理ブロック40は、図11からも明らかなように、CPU(Central Processing Unit )60と、各種プログラムが格納されたROM(Read OnlyMemory)61と、CPU60のワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)62と、汎用のパラレル通信に対応したパラレル通信用入出力回路63と、上位コントローラとの間の入出力インターフェース回路でなるシリアル通信用入出力回路64と、サーボ割込みのための1〔ms〕周期のサーボ割込信号S10及びPWM周期である50〔μm 〕周期のPWMパルス信号S11を発生するカウンタ・タイマ・コントロール回路65と、カウンタ・タイマ・コントロール回路65からサーボ割込信号S10が正しく発生されているかをCPU60が判断するための1〔ms〕周期以上の所定周期の基準信号でなるウォッチドッグ信号S12を発生するウォッチドッグ信号発生回路66とがCPUバス67を介して相互に接続されることにより構成されている。
【0059】この場合CPU60は、シリアル通信用入出力回路64を介して上位コントローラから電源電圧(5〔V〕)が供給されると、まずROM61に格納された初期プログラムに基づいて、パラレル通信用入出力回路63、シリアル通信用入出力回路64、カウンタ・タイマ・コントロール回路65、ロータ軸回転角度検出処理ブロック42、トルク−3相電流信号変換処理ブロック43、電流制御処理ブロック44に対する各種初期値やパラメータの設定処理等の立上がり処理を実行する。
【0060】またCPU60は、この結果としてカウンタ・タイマ・コントロール回路65から与えられるサーボ割込信号S10及びROM61に格納された対応するプログラムに基づいて、上述のように目標回転トルクT0 を生成するモータ回転制御演算処理や、進相制御処理、温度補償制御処理及びシリアル通信制御処理を1〔ms〕内に時分割的に実行する。なおこれら各処理モード時におけるCPU60の処理については後述する。
【0061】ここでシリアル通信用入出力回路64の構成について説明する。このシリアル通信用入出力回路64においては、RS−232Cシリアル通信方式及び同期式シリアル通信方式のいずれにも対応できるように構成されている。
【0062】実際上シリアル通信用入出力回路64は、例えばRS−232Cシリアル通信方式での通信時には、2本のラインを用いて送信信号としてのTXD信号、受信信号としてのRXD信号を送受することにより通信を行う。このときデータ転送速度は9600〔ビット/秒〕、転送データ長は8ビット、ストップビット1ビット及びスタートビット1ビットで、パリティビットなしのデータ構造により転送フォーマットで上位コントローラとの通信が行われる。
【0063】またシリアル通信用入出力回路64は、同期式シリアル通信方式での通信時には、3本のラインを用いて送信信号としてのTXD信号、受信信号としてのRXD信号及び同期クロック信号を送受することにより通信を行う。このときデータ転送速度は800 又は1500〔キロビット/秒〕、同期キャラクタデータは2バイト、転送データ長は1バイト(8ビット)から数十バイトのデータ構造による転送フォーマットで上記コントローラとの通信が行われる。
【0064】そしてこの通信方式では、高速にデータ通信を行えるため実時間でコマンドを与えることができる。なおNバイトのデータを転送する場合、1フレームのデータ構造は、「同期キャラクタ1+同期キャラクタ2+データ1(8ビット)+データ2(8ビット)+……+データN(8ビット)+同期キャラクタ1+同期キャラクタ2」のような構造となる。
【0065】(3−2)ロータ軸回転角度検出処理ブロック42の詳細構成次にロータ軸回転角度検出処理ブロック42の構成を詳細に説明する。なおその前提として、先にロータ軸磁極角度センサ22(図1)の構成について説明する。
【0066】まずロータ軸磁極角度センサ22においては、樹脂マグネット25が、ロータマグネット8と同極に着磁され、当該ロータマグネット8と同位相でロータ基体7に固着されている。そして樹脂マグネット25の着磁パターンは、最大磁束密度をφ0 として、磁束密度φ(θp )が図12及び次式
【0067】
【数1】


【0068】となるように選定されている。
【0069】ここでθp はロータ軸6の磁束角度である。そしてこの磁極角度θp とロータ軸6の機械的な回転角度θm との関係は、磁極数をP(本実施の形態においては4)として次式
【0070】
【数2】


【0071】と表すことができる。
【0072】一方ロータ軸磁極角度センサ22の第1〜第4のホール素子26A〜26Dは、図8(B)について上述したように樹脂マグネット25と対向し、かつロータ軸6と同心円上の次式
【0073】
【数3】


【0074】
【数4】


【0075】
【数5】


【0076】
【数6】


【0077】で与えられる位置に位置するように制御基板23に搭載されている。
【0078】なお(3)式〜(6)式において、θ0 は1つのコイル11の位置を原点とする座標位置を示し、以下においては1つのU相のコイル11Aの極中心位置をθ0 =0とする(図4(A)参照)。さらに座標位置θ0 が次式
【0079】
【数7】


【0080】で与えられるその隣のコイル11B、11FをV相とし、座標位置θ0 が次式
【0081】
【数8】


【0082】で与えられるコイル11F、11CをW相とする。なお極中心位置がθ0 =0のコイル11Aと180 〔°〕対向するコイル11DはU相となる。
【0083】因にステータ鉄心10(図3)の極数Ps (本実施の形態においては4)と、樹脂マグネット25の磁極数Pとの関係は、次式
【0084】
【数9】


【0085】で与えられる。
【0086】そして上述のように配置された第1〜第4のホール素子26A〜26Dの出力Sh1、Sh2、Sh3、Sh4は、これら第1〜第4の素子26A〜26Dのセンサ感度係数をG0 、ロータ軸6の回転角度をθm としてそれぞれ次式
【0087】
【数10】


【0088】
【数11】


【0089】
【数12】


【0090】
【数13】


【0091】のようになる。従ってロータ軸6が1回転するとき、第1〜第4のホール素子26A〜26Dの出力Sh1、Sh2、Sh3、Sh4の信号レベルが樹脂マグネット25の磁極数Pに比例して変化する。
【0092】ただし実際上は組み立ての際にロータ軸6と、第1〜第4のホール素子26A〜26Dのセンサ面との直角度に精度誤差が生じたり、同心度に誤差が生じるため、これら誤差をそれぞれφe1、φe2、θe1、θe2として、第1〜第4のホール素子26A〜26Dの実際の出力Sh1′、Sh2′、Sh3′、Sh4′は、それぞれ次式
【0093】
【数14】


【0094】
【数15】


【0095】
【数16】


【0096】
【数17】


【0097】となる。
【0098】そしてこれら実際の第1及び第2のホール素子26A、26Bの各出力Sh1′、Sh2′を加算した第1のセンサ信号Sh12 (本実施の形態においては、図9R>9の第1のロータ軸磁極角度センサ信号S2Aに相当)と、第3及び第4のホール素子26C、26Dの各出力Sh3′、Sh4′を加算した第2のセンサ信号Sh34 (本実施の形態においては、図9の第2のロータ軸磁極角度センサ信号S2Bに相当)は、θe1、θe2が十分に小さいものとして、それぞれ次式
【0099】
【数18】


【0100】
【数19】


【0101】として表すことができる。なおこの第1及び第2のセンサ信号Sh12 、Sh34 の波形を図13に示す。
【0102】そしてこれら第1及び第2のセンサ信号Sh12 、Sh34 に基づいて、以下の手順によりロータ軸6の磁極角度θp 及びロータ軸磁極回転速度Pmlを求めることができる。
【0103】すなわち、まずその初期値を0として磁極角度演算値θx を設定し、次式
【0104】
【数20】


【0105】を演算する。
【0106】そしてEθx =0とならない場合には、θx を次式
【0107】
【数21】


【0108】により算出する。ここでKrpは比例ゲイン、Kriは積分ゲインをそれぞれ示し、ともに正の定数である。
【0109】この算出したθx を用いて(20)式を再び演算し、この後Eθx =0となるまでこれを繰り返す。この結果Eθx はゼロ値に収束してゆき、このときθx が次式
【0110】
【数22】


【0111】として与えられ、これがすなわちロータ軸磁極回転角度Pmlに相当する。
【0112】またこのようにしてロータ軸磁極回転角度Pmlが得られると、ロータ軸磁極回転角度Pmlと、磁極角度θp との間に次式
【0113】
【数23】


【0114】の関係があることから、ロータ軸磁極回転角度Pmlに基づいて磁極角度θp も求めることができる。なお(23)式においてNx は0以上の整数を表す。
【0115】かかる原理に基づいてロータ軸回転角度検出処理ブロック42は、図14に示すように構成されている。そしてこのロータ軸回転角度検出処理ブロック42では、ロータ軸磁極角度センサ22から第2のアナログ/ディジタル変換回路46を介して与えられる第1及び第2のロータ軸磁極角度センサデータD2A、D2Bを演算器70に入力する。
【0116】このとき演算器70には、後述のように関数変換器71から先行して算出した磁極角度演算値θx の正弦値(sinθx )及び余弦値(cosθx )が与えられる。
【0117】かくして演算器70は、第1及び第2のロータ軸磁極角度センサデータD2A、D2Bと、先行して算出した磁極角度演算値θx の正弦値及び余弦値とに基づいて(20)式を演算することにより、(2)式で与えられる磁極角度θp と、そのときのθx との誤差を演算し、演算結果を第1の乗算器72に送出する。
【0118】そしてこの乗算結果には、この後第1の乗算器72において次式
【0119】
【数24】


【0120】(ただしSはラプラス演算子)で与えられる積分ゲインが乗算され、第2の乗算器73において比例ゲインKrpが乗算され、加算器74において1/S(Sはラプラス演算子)が乗算される。
【0121】この結果加算器74から磁極角度演算値θx が出力されて、これが関数変換器71に送出されると共に、磁極角度演算器75に与えられる。かくして磁極角度演算器75は、このときの磁極角度演算値θx の値をロータ軸磁極角度Pmlとしてレジスタ41(図11)に格納する。
【0122】またこのとき磁極角度演算器75は、これと共に(23)式におけるNx の値を0から順番に増加させながら0から2πまでの範囲に入るθp の値を求め、これを磁気角度θp としてトルク−3相電流信号変換処理ブロック43に送出する。
【0123】このようにしてロータ軸回転角度検出処理ブロック42では、第1及び第2のロータ軸磁極角度センサデータD2A、D2Bに基づいて磁極角度θp 及びロータ軸磁極回転角度Pmlを検出する。
【0124】なおロータ軸回転角度検出処理ブロック42において、上述のような磁気角度θp 及びロータ軸磁極回転角度Pm1の演算処理は、演算処理ブロック40のカウンタ・タイマ・コントロール回路65から与えられるPWMパルス信号S11に基づいて行われる。
【0125】従ってこのロータ軸回転角度検出処理ブロック42から出力される磁気角度θp 及びロータ軸磁極回転角度Pm1は、PWMパルス信号S11の周期である50〔μs 〕毎に更新される。
【0126】(3−3)トルク−3相電流信号変換処理ブロック43の詳細構成トルク−3相電流信号変換処理ブロック43は、図15に示すように、レジスタ41(図11)に格納された目標回転トルクT0 を後述のPWMパルス周期(50〔μs 〕周期)で読み出し、当該目標回転トルクT0 と、ロータ軸回転角度検出処理ブロック42(図14)から与えられる磁極角度θp とに基づいて次式
【0127】
【数25】


【0128】
【数26】


【0129】
【数27】


【0130】を演算することにより、第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 及びWr を算出し、これらを電流制御処理ブロック44(図11)に送出する。
【0131】なおこの第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 及びWr の演算処理は、演算処理ブロック40のカウンタ・タイマ・コントロール回路65から与えられるPWMパルス信号S11に基づいて行われる。従ってこれら第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 及びWr もPWMパルス信号S11の周期である50〔μs 〕毎に更新される。
【0132】(3−4)電流制御処理ブロック44の詳細構成一方電流制御処理ブロック44には、図16に示すように、U相、V相及びW相の各コイル11にそれぞれ対応させて、減算回路80A〜80C、第1及び第2の乗算回路81A〜81C、82A〜82C及びPWM変換器83A〜83Cからなる第1〜第3の信号処理系84A〜84Cが設けられている。
【0133】そしてこの電流制御処理ブロック44では、これら第1〜第3の信号処理系84A〜84Cにおいて、トルク−3相電流信号変換処理ブロック43(図1515)から与えられる第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 、Wr と、パワー基板24から与えられる第1〜第3の駆動電流検出信号S3A〜S3Cとに基づいて、電圧変動の補償処理を含む所定の信号処理を施しながら、第1〜第3のPWM信号S4A〜S4C及び第1〜第3の基準信号S5A〜S5Cを生成し得るようになされている。
【0134】実際上第1〜第3の信号処理系84A〜84Cにおいては、それぞれ供給される第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 及びWr と、第1〜第3の駆動電流検出信号S3A〜S3Cとの誤差を減算回路80A〜80Cにおいて検出し、検出結果を第1の乗算回路81A〜81Cに送出する。
【0135】そして第1〜第3の信号処理系84A〜84Cでは、この後この誤差を0に収束させるため、この誤差に対して各第1の乗算回路81A〜81Cにおいてラプラス演算子をSとして次式
【0136】
【数28】


【0137】で与えられる積分ゲインを乗算し、乗算結果に第2の乗算回路82A〜82Cにおいて比例ゲインKrpを乗算する。
【0138】そしてこのようにして得られたそれぞれ次式
【0139】
【数29】


【0140】
【数30】


【0141】
【数31】


【0142】で与えられる各第2の乗算回路82A〜82Cから出力される値X1 、X2 、X3 が、それぞれU相、V相及びW相の各コイル11に実際に印加すべき駆動電流の電流値であり、これら値X1 、X2 、X3 がそれぞれ対応するPWM変換器83A〜83Cに与えられる。
【0143】そして各PWM変換器83A〜83Cは、それぞれ供給される値X1 、X2 、X3 に基づいて、それぞれ50〔μs 〕周期のパルスのパルス幅を制御することにより第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cと、第1〜第3の基準信号S5A〜S5Cとを発生する。
【0144】実際上各PWM変換器83A〜83Cは、図17に示すように、それぞれ供給される値X1 、X2 、X3 を図示しない内部レジスタにセットし、値X1 、X2、X3 が正のときには、当該値X1 、X2 、X3 を演算処理ブロック40のカウンタ・タイマ・コントロール回路65から与えられる50〔μs 〕周期のPWMパルス信号S11の立ち上がりエッジ毎に第1のPWMパルス信号発生回路85A内のダウンカウンタ(図示せず)にセットする。
【0145】そしてこのダウンカウンタは、演算処理ブロック40(図11)のCPUクロック(0.1 〔μs 〕)の立ち上がりエッジ毎にカウンタ値を減少させてゼロ値で停止する。従って第1のPWMパルス信号発生回路85Aの出力は、ダウンカウンタのカウント値がゼロ値になるまで出力が論理「1」レベル、カウンタ値がゼロ値となってからは論理「0」レベルとなる。
【0146】また次のPWMパルス信号S11の立ち上がりエッジで再びレジスタに格納された値X1 、X2 、X3 が第1のPWMパルス信号発生回路85Aのダウンカウンタに再びセットされて上述の処理が繰り返される。
【0147】従って第1のPWMパルス信号発生回路85Aからは、レジスタに格納される値X1 、X2 、X3 が更新されるまで、当該値X1 、X2 、X3 に比例した一定のパルス幅Tonの第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cが出力され、第2のPWMパルス信号発生回路85Aからは、論理「0」レベルの基準信号S5A〜S5Cが出力される。
【0148】一方、各PWM変換器83A〜83Cにおいては、値X1 、X2 、X3 が負の値であった場合にはその絶対値を演算して正の整数に変換した後、この値を第2のPWMパルス信号発生回路85B内のダウンカウンタ(図示せず)にセットする。
【0149】この結果このときには第2のPWMパルス信号発生回路85Bからは、上述の第1のPWMパルス信号発生回路85Aと同様にして、レジスタに格納される値X1 、X2 、X3 が更新されるまで、当該値X1 、X2 、X3 に比例した一定のパルス幅Tonの第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cが出力される。またこのとき第1のPWMパルス信号発生回路85Bからは、論理「0」レベルの基準信号S5A〜S5Cが出力される。
【0150】このようにして第1〜第3のPWM変換器83A〜83Cにおいては、供給される値X1 、X2 、X3 に応じたパルス幅Tonの第1〜第3のPWM信号S4A〜S4C及び第1〜第3の基準信号S5A〜S5Cを生成し、これをそれぞれ第3のケーブル33を介してパワー基板24のコイル駆動ブロック34に送出するようになされている。
【0151】(4)コイル駆動電流と出力トルクの関係ここでこのACサーボモータ1におけるモータ部2のU相、V相及びW相の各コイル11に印加する駆動電流Iu 、Iv 、Iw と、出力軸18を介して外部に出力される回転トルク(以下、出力トルクと呼ぶ)との関係について説明する。
【0152】まずU相、V相及びW相の各コイル11に駆動電流Iu 、Iv 、Iw を印加したときにおけるこれらU相、V相及びW相の各コイル11の交差する磁束密度をφu 、φv 、φw とすると、出力トルクT(θp )は、モータ部2のロータ軸6の磁極角度θp を用いて次式
【0153】
【数32】


【0154】のように与えられる。なおこの(32)式において、K0 は各コイル11に駆動電流Iu 、Iv 、Iw を印加したときの一定の係数値を表す。
【0155】ここでU相、V相及びW相の各コイル11に印加する駆動電流Iu 、Iv 、Iw は、上述のようにそれぞれ次式
【0156】
【数33】


【0157】
【数34】


【0158】
【数35】


【0159】のように制御され、このため各磁束密度はφu 、φv 、φw はそれぞれ次式、
【0160】
【数36】


【0161】
【数37】


【0162】
【数38】


【0163】となる。
【0164】従って出力トルクT(θp )は、これら(33)式〜(38)式を(32)式に代入して、次式
【0165】
【数39】


【0166】と表すことができる。
【0167】従ってこのACサーボモータ1では、各コイル11に印加する駆動電流Iu 、Iv 、Iw の大きさに比例した出力トルクが得られることが分かる。
【0168】(5)ACサーボモータ1におけるソフトウェア制御次にこのACサーボモータ1の演算処理ブロック40(図11)におけるソフトウェア制御について説明する。
【0169】演算処理ブロック40では、上述のようにCPU60がカウンタ・タイマ・コントロール回路65から与えられるサーボ割込信号S10及びROM61に格納された対応するプログラムに基づいて、1〔ms〕内に時分割的にモータ回転制御演算処理、進相制御処理、温度補償制御処理及びシリアル通信制御処理を実行する。以下、これら各処理モード時におけるCPU60の処理について説明する。
【0170】(5−1)モータ回転制御演算処理モード時におけるCPU60の処理モータ回転制御演算処理モード時におけるCPU60の処理は、上述のように上位コントローラから与えられる指定回転位置、指定回転速度又は指定回転トルクの値の指定に応じた目標回転トルクT0 を算出することである。
【0171】そしてCPU60は、この目標回転トルクT0 を、上位コントローラから指定回転位置Pref が与えられている場合には、ロータ軸回転角度検出処理ブロック42によりレジスタ41に格納されるロータ軸磁極回転角度Pm1に基づいて出力軸18(図1)の回転位置Pm を算出すると共に、この回転位置Pm を用いて次式
【0172】
【数40】


【0173】
【数41】


【0174】をそれぞれ演算することにより、指定回転位置Pref に対する目標の回転速度Vmrefと、出力軸の現在の回転速度Vm とを算出する。そしてこのようにして得られた(40)式及び(41)式から次式
【0175】
【数42】


【0176】の演算を実行することにより目標回転トルクT0 を算出する。
【0177】また上位コントローラから指定回転速度Vref が与えられている場合には、(41)式を用いて出力軸18の現在の回転速度Vm を算出し、この回転速度Vmに基づいて次式
【0178】
【数43】


【0179】を演算することにより目標回転トルクT0 を算出する。また上位コントローラから指定回転トルクTref が与えられている場合には、これをそのまま目標回転トルクT0 とする。
【0180】なおこれら(40)〜(43)式において、Sはラプラス演算子を示し、Kpp、Kvi及びKvpはそれぞれ上位コントローラにより設定される制御ゲインパラメータを表す。この制御ゲインパラメータKpp、Kvi及びKvpの値を変化させることにより、指定回転角度Pref や指定回転速度Vref に対するACサーボモータ1の応答を変化させることができる。
【0181】因にこのようなモータ回転制御演算処理モード時におけるCPU60の具体的な処理手順を図18に示す。
【0182】CPU60は、上位コントローラから指定回転角度Pref が与えられた場合、まずレジスタ41に格納された第1及び第2の絶対角度センサデータD1A、D1Bに基づいてロータ軸6の磁極回転数(以下、ロータ軸磁極回転数と呼ぶ)Nm を算出する(ステップSP1)。
【0183】なおロータ軸磁極回転数Nm とは、ロータ軸6の回転に伴いロータ軸磁極角度センサ22の第1〜第4のホール素子26A〜26Dにより検出される樹脂マグネット25の隣接する一対のN極及びS極による磁束変化を1回転とする回転数と定義する。この実施の形態においては、樹脂マグネット25は4極に着磁されているため、ロータ軸6が機械的に1回転するとロータ軸磁極回転数Nm は2となる。
【0184】そしてこのロータ軸磁極回転数Nm は、図1919に示すロータ軸磁極回転数検出処理手順に従って、それぞれsinθg 、cosθg で表される第1及び第2の1回転絶対角度センサ信号S1A、S1Bの位相θg をレジスタ41に格納された第1及び第2の絶対角度センサデータD1A、D1Bに基づいてソフトウエア処理により算出し(ステップSP1A)、この位相θg にトルク増幅部3の遊星ギア機構部16のギア比Nを乗算し(ステップSP1B)、この乗算結果を2πで割り算してその割算結果の整数部分にロータ軸磁極角度センサ22(図1)の樹脂マグネット25の磁極数(本実施の形態においては4)の半分の値Np を乗算する(ステップSP1C)ことにより得ることができる。
【0185】またCPU60は、図18に示すように、このようにして算出したロータ軸磁極回転数Nm と、レジスタ41に格納されたロータ軸磁極回転角度データPm1とに基づき、次式
【0186】
【数44】


【0187】で与えられるPm0を初期値として、次式
【0188】
【数45】


【0189】の演算を実行することによりそのときの出力軸18の回転角度Pm を算出する(ステップSP2)。
【0190】そしてCPU60は、指定回転角度Pref からこの回転角度Pm を減算することにより、指定回転角度Pref に対する誤差(以下、これを回転角度誤差と呼ぶ)Pe を検出する(ステップSP3)。
【0191】続いてCPU60は、この回転角度誤差Pe に比例ゲインKppを乗算することにより、指定回転角度Pref に対する目標回転角度Vmrefを算出する(ステップSP4)。
【0192】次いでCPU60は、レジスタ41に格納されたロータ軸磁極回転角度Pm1を微分することによりそのときの出力軸の回転速度Vm を算出する(ステップSP5)と共に、この後ステップSP4において算出した目標回転速度VmrefからステップSP5において算出した回転速度Vm を減算することにより速度誤差Veを算出する(ステップSP6)。
【0193】続いてCPU60は、この速度誤差Ve に次式
【0194】
【数46】


【0195】で与えられる速度積分ゲイン及び比例ゲインKvpを順次乗算する(ステップSP7及びステップSP8)。これにより目標回転トルクT0 を得ることができる。
【0196】なおCPU60は、モータ回転制御演算処理モード時、上位コントローラから指定回転速度Vref が与えられているときにはこの処理をステップSP6にから開始し、回転トルクTref が与えられているときにはこれをそのまま目標回転トルクT0 としてレジスタ41に格納する。
【0197】(5−2)進相制御処理モード時におけるCPU60の処理まず進相制御について説明する。モータ部2のU相、V相及びW相の各コイル11に供給する各駆動電流Iu 、Iv 、Iw は、それぞれトルク−3相電流信号変換処理ブロック43及び電流制御処理ブロック44においてそれぞれ(33)式、(34)式及び(35)式となるように制御される。
【0198】このとき例えばロータ9が高速に回転していると、パワー基板24の各インバータ回路52A〜52Cにこれら(33)式、(34)式及び(35)式のような駆動電流Iu 、Iv 、Iw が与えられても実際にU相、V相及びW相の各コイル11に流れる駆動電流Iu 、Iv 、Iw はコイル11のインピーダンスにより遅れが生じ、この結果出力トルクが低下する。
【0199】進相制御とは、この問題を改善するために次式
【0200】
【数47】


【0201】
【数48】


【0202】
【数49】


【0203】のようにU相、V相及びW相の各コイル11に印加する駆動電流Iu 、Iv 、Iw の位相を予めロータ9の回転速度に応じた補正値θoff 分だけ進ませておく制御のことである。
【0204】そして実際上CPU60は、この進相制御処理として補正値θoff を例えば図18におけるステップSP5において算出した回転速度Vm を利用して、次式
【0205】
【数50】


【0206】により算出してこれらをトルク−3相電流信号変換処理ブロック43に与えることにより、当該トルク−3相電流信号変換処理ブロック43において発生させる第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 、Wr をそれぞれ(47)式〜(49)式のように補正値θoff 分だけ進相させるように制御する。
【0207】なお(50)式においてKv は、出力軸18の回転速度の大きさと、進相補正の量との関係を決めるゲインで、モータ部2の各コイル11の仕様により決定される定数である。
【0208】(5−3)温度補償制御処理モード時におけるCPU60の処理永久磁石を用いたACサーボモータでは、コイルに流れる電流による発熱や渦電流損による発熱が生じる。こうした熱により永久磁石の磁気特性が変化する。一般的に高温の雰囲気でコイル電流を流し、高い磁束密度を加えると永久磁石は減磁してしまう。このためコイル電流の最大値は、安全性をもたせるために一般的に低く抑えられた設計となっている。
【0209】温度補償制御とは、温度により許容される最大電流を制御することにより永久磁石のもつ磁気特性を有効に利用する制御である。
【0210】この実施の形態の場合、図9に示すように、制御基板23の温度センサ29から出力される温度センサ信号S14が1チップマイクロコンピュータ27の第4のアナログ/ディジタル変換回路48を介して温度センサデータD14としてレジスタ41に格納される。
【0211】そしてCPU60は、この温度センサデータD14の値THに基づいて、(33)式〜(35)式におけるI0 の最大値Imax を次式
【0212】
【数51】


【0213】により演算し、この演算結果に基づいてトルク−3相電流信号変換処理ブロック43を制御することにより、モータ部2のU相、V相及びW相の各コイル11に流す駆動電流Iu 、Iv 、Iw の上限を設定する。なおKthは、永久磁石(本実施の形態においてはロータ9のロータマグネット8(図1))の温度特性に応じて決まる温度係数である。
【0214】(5−4)シリアル通信処理モード時におけるCPU60の処理CPU60は、シリアル通信処理モード時、上位コントローラとの間で通信を行い、制御コマンドや変更パラメータを入力し、またはモニタ用に内部信号を送信する。
【0215】(5−5)外力推定処理モード時におけるCPU60の処理ここでこのACサーボモータ1の場合、演算処理ブロック40では、上述のようなモータ回転制御演算処理、進相制御処理、温度補償制御処理及びシリアル通信制御処理に加えて、出力軸18に与えられる外力(負荷トルク)の大きさを推定し得るようになされている。
【0216】この場合一般的なモータにおける出力トルクTm と、ロータの機械的な回転角度θm と、出力軸に与えられる外力Td と、ギア機構の出力角度(以下、出力軸の回転角度とする)θg との関係は、図20のように表すことができる。
【0217】すなわちロータの機械的な回転角度θm は、出力トルクTm からギア機構の構造的な負荷トルクTdmを減算し、その減算結果に次式
【0218】
【数52】


【0219】を乗算することにより算出することができる。なおJm はロータの慣性モーメントを表し、Dm はロータの軸受け等との摩擦係数を表す。
【0220】また出力軸の回転角度θg は、外力Td と、ギア機構の構造的な負荷トルクTdmにギア機構のギア比Nを乗算した乗算結果(以下、これを構造的出力軸負荷トルクと呼ぶ)Tdlとを加算し、この加算結果Tdlに次式
【0221】
【数53】


【0222】を乗算することにより算出することができる。なおJl はギア機構における慣性モーメント、Dl はギア機構内における摩擦係数、Sはラプラス演算子をそれぞれ示す。
【0223】そしてギア機構の構造的な負荷Tdmは、出力軸の回転角度θg にギア機構におけるギア比Nを乗算した乗算結果をモータロータの機械的な回転角度θm から減算し、減算結果にギア機構におけるばね係数Kg を乗算することにより算出することができる。
【0224】かかる原理に基づいて、CPU60は、図21に示す以下の手順に従って外部から出力軸18に与えられる外力の大きさを推定する。
【0225】すなわちCPU60は、まず外力の推定値(以下、これを外力推定値と呼ぶ)Tdeとして適当な大きさの初期値を発生し、当該外力推定値Tdeと、遊星歯車機構16の構造的出力軸負荷トルクTdlとの加算結果に次式
【0226】
【数54】


【0227】を乗算することにより出力軸18の数学モデル的な回転角度θgmを算出する。
【0228】そして演算により求められる実際の出力軸18の回転角度θg からこの回転角度θgmを減算することにより、実際の回転角度θg に対する数学モデルの回転角度θgmの誤差(以下、これをモデル誤差と呼ぶ)Eθg を算出すると共に、このモデル誤差Eθg に次式
【0229】
【数55】


【0230】で与えられる推定ゲインを乗算することにより外力推定値Tdeを算出する。なおこの(55)式において、Ka は一定の正の係数値である。
【0231】そしてCPU60は、この後外力推定値Tdeを新たに得られた外力推定値Tdeに順次更新しながら上述の演算処理を繰り返す。この結果このような演算処理を繰り返すことによってモデル誤差Eθg はゼロ値に収束してゆき、これに伴って外力推定値Tdeも実際に出力軸18に与えられる外力の大きさに近づいてゆく。
【0232】そしてモデル誤差Eθg が0となったときの外力推定値Tdeが実際に出力軸18に与えられている外力と推定することができ、CPU60はこの値を演算により得られた外力推定値Tdeとする。
【0233】そしてCPU60は、この後この外力推定値Tdeを上位コントローラに送信したり、または上位コントローラの制御のもとに、この外力推定値Tdeに基づいて、出力軸18に与えられる外力に拮抗した出力トルクの発生及び出力トルク制御や、外力を上回る出力トルクの発生及び出力制御、又は外力を下回る出力トルクの発生及び出力制御を実行する。
【0234】なおこの実施の形態の場合においては、上述のように1回転絶対角度センサ21により検出される出力軸18の回転変位に基づいて当該出力軸18に与えられる外力の大きさを推定するようになされている。このためトルク増幅部3の減速機構(遊星歯車機構16)は、出力軸18に与えられる外力に比例して入力軸(ロータ軸6)が変位を生じるのに十分な可逆駆動性(バックドライバビリティ)をもつように構築されている。
【0235】(6)本実施の形態の動作及び効果以上の構成において、このACサーボモータ1では、上位コントローラから与えられる指定回転角度、指定回転速度又は指定回転トルクに基づいて制御基板23の1チップマイクロコンピュータ27においてU相、V相及びW相の各コイル11に印加すべき駆動電流Iu 、Iv 、Iw の値でなる第1〜第3の電流指令値Ur 、Vr 、Wr をそれぞれ算出し、当該算出した第1〜第3の電流指令値Ur、Vr 、Wr に基づく第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cをパワー基板24のコイル駆動ブロック34に送出する。
【0236】そしてパワー基板24のコイル駆動ブロック34は、供給される第1〜第3のPWM信号S4A〜S4Cに基づいて駆動電流Iu 、Iv 、Iw を生成し、これをU相、V相及びW相の各コイル11に印加するようにしてロータ9を回転駆動する。
【0237】そしてこのACサーボモータ1では、上述のようにロータ9の回転を制御する制御手段としての制御基板23及びパワー基板24が、ロータ9や、ステータ鉄心10A及びコイル11からなるステータと一体にモータケース4の内部に収納されているため、外部との接続配線量を格段的に減少させることができると共に、アクチュエータシステム全体としての配線量をも減少させることができる。
【0238】またこの場合において、PWM変換器83A〜83C(スイッチング素子)が導電材からなるモータケース4の内部に収納されており、このため例えば従来のACサーボモータのようにPWM信号(スイッチング信号)を外部からACサーボモータに与える場合に比べてスイッチングノイズが外部に悪影響を及ぼすのを格段的に低減することができる。またこのことからACサーボモータ1と上位コントローラとを接続する第2のケーブル32として比較的一般的なものを使用することができる。
【0239】さらにこのACサーボモータ1では、ロータ軸磁極角度センサ22をモータケース4内部におけるロータ9の近傍に配置し、当該ロータ軸磁極角度センサ22の出力に基づいてロータの回転角度θm を求めるようにしているため、ロータ軸6を太くすることなく高精度かつ高速の位置決めを行い得るようにすることができ、その分全体として小型に構築することができる。
【0240】またこのようにロータ軸磁極角度センサ22をモータケース4内部におけるロータ9の近傍に配置しているため、機械的な変動が少なく、ロータ軸6の回転角度を安定して検出するもことができる。
【0241】さらにこのACサーボモータ1では、温度センサ29をモータケース4内部におけるロータマグネット8の近傍に設けられているため、当該温度センサ29の出力に基づいて、ロータマグネット8の磁気特性に応じて実際に各コイル11に印加できる駆動電流Iu 、Iv 、Iw の上限を正確にかつ容易に求めることができ、その分駆動電流Iu 、Iv 、Iw の上限を従来のように安全性を含んで設定する場合に比べて、当該上限を上昇させて最大出力トルクを増加させることができる。
【0242】さらにこのACサーボモータ1では、ロータ9及び当該ロータ9の回転を制御する制御回路とが平面上に配置されているため、小型偏平に構築することができる。
【0243】さらにこのACサーボモータ1では、構造が簡単でかつ部品点数が少ないため、製造時における組立作業や調整作業を容易化させ得る利点もある。
【0244】以上の構成によれば、上位コントローラの制御のもとにモータ部2の回転を制御する制御基板23及びパワー基板24をロータ9及びスタータと一体にモータケース4の内部に収納するようにしたことによりACサーボモータ1の外部との接続配線量を格段的に減少させることができると共に、アクチュエータシステム全体としての配線量をも減少させることができ、かくしてアクチュエータシステム全体としての構成を簡易化させ得るACサーボモータを実現できる。
【0245】またロータ軸6の回転角度を検出するロータ軸磁極角度センサ22をモータケース4内部におけるロータ9の近傍に配置するようにしたことにより、ロータ軸6を太くすることなく高精度かつ高速位置決めを行い得るようにすることができ、かくして性能を向上させながら小型化をも図ることのできるACサーボモータを実現できる。
【0246】さらに温度センサ29をモータケース4内部におけるロータマグネット8の近傍に設けるようにしたことにより、当該温度センサ29の出力に基づいて、ロータマグネット8の磁気特性に応じて実際に各コイル11に印加できる駆動電流Iu 、Iv 、Iw の上限を正確にかつ容易に求めることができ、その分駆動電流Iu 、Iv 、Iw の上限を従来のように安全性を含んで設定する場合に比べて、当該上限を上昇させて最大出力トルクを増加させることができ、かくして性能を向上させ得るACサーボモータを実現できる。
【0247】(7)他の実施の形態なお上述の実施の形態においては、本発明をACサーボモータに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は、回転自在に枢支された回転軸(本実施の形態においてはロータ軸6)と、回転軸を回転駆動する駆動手段(本実施の形態においてはロータ9と、ステータ鉄心10及びコイルからなるステータ)とがハウジング(本実施の形態においてはモータケース4)内に収納されたアクチュエータ装置であるのならば、この他種々のアクチュエータ装置に広く適用することができる。
【0248】また上述の実施の形態においては、例えばロータマグネット8を4極に着磁するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば8極やこれ以外の極数に着磁するようにしても良い。
【0249】さらに上述の実施の形態においては、ロータ9の回転を制御する制御手段としての制御基板23及びパワー基板24を別体に形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、一体に形成するようにしても良い。
【0250】さらに上述の実施の形態においては、1チップマイクロコンピュータ27が上位コントローラから与えられる指定回転角度、指定回転速度又は指定回転トルクに基づいてロータ9の回転を制御するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば予めプログラムされている回転角度や、回転速度又は回転トルクの変化パターンに基づいてロータ9の回転を制御するようにしても良い。
【0251】さらに上述の実施の形態においては、ロータ軸6の回転変位を検出する回転軸回転変位検出手段としてのロータ軸磁極角度センサ22を、所定パターンで着磁さた樹脂マグネット25(第1の構成部)と、第1〜第4のホール素子26A〜26D(第2の構成部)とで構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成を広く適用することができる。
【0252】さらに上述の実施の形態においては、ロータ軸6の回転変位として、ロータ軸6の磁極角度θp を検出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、磁極角度θp 以外の回転変位情報を検出するようにしても良い。
【0253】さらに上述の実施の形態においては、ロータ部2においてパワー基板24から供給される駆動電流Iu 、Iv 、Iw の電流値に応じた大きさの磁界を発生させる磁界発生手段としてコイル11を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の磁界発生手段を広く適用することができる。
【0254】さらに上述の実施の形態においては、U相、V相及びW相の各コイル11に印加する駆動電流Iu 、Iv 、Iw の電流値を検出する駆動電流値検出手段をコイル53(図10)により構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成の駆動電流値検出手段を広く適用することができる。
【0255】さらに上述の実施の形態においては、制御基板23の1チップコンピュータ27に、上位コントローラとの通信するためのシリアル通信機能としてRS−232Cシリアル通信機能及び同期式シリアル通信機能をもたせるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これ以外のシリアル通信機能をもたせるようにしても良い。
【0256】さらに上述の実施の形態においては、モータ部2において発生された回転トルクを増幅するトルク増幅手段を、図5に示すような遊星歯車機構16により構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成を広く適用することができる。
【0257】さらに上述の実施の形態においては、出力軸18の回転変位を検出する出力軸回転変位検出手段としての1回転絶対角度センサ21を樹脂マグネット19と、第1及び第2のホール素子20A、20Bとにより構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成を広く適用することができる。
【0258】さらに上述の実施の形態においては、1回転絶対角度センサ21から出力される第1及び第2の1回転絶対角度センサ信号S1A、S1Bと、ロータ軸磁極角度センサ22の出力に基づく第1及び第2のロータ軸磁極角度センサ信号S2A、S2Bとに基づいて外部から出力軸18に与えられる負荷トルク(外力)を検出する演算手段を、1チップマイクロコンピュータ27により構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これを1チップマイクロコンピュータ27と別体に設けるようにしても良い。
【0259】さらに上述の実施の形態においては、パワー基板24において検出されたU相、V相及びW相の各コイル11に印加される各駆動電流Iu 、Iv 、Iw に基づいて各駆動電流Iu 、Iv 、Iw の電流値をフィードバック制御するようにして、電源電圧の変動の影響を減少させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、オープンループ制御によりV相及びW相の各コイル11に印加される各駆動電流Iu 、Iv 、Iw の電流値を制御するようにしても良い。
【0260】実際上、このような方法としては、電源電圧Vcmの大きさを検出し、当該検出結果に基づいて電流制御処理ブロック44におけるゲインGv を次式
【0261】
【数55】


【0262】のように可変するようにすれば良い。
【0263】
【発明の効果】上述のように本発明によれば、回転自在に枢支された回転軸と、回転軸を回転駆動する駆動手段とがハウジング内に収納されたアクチュエータ装置において、回転軸の回転を駆動手段を介して制御する制御手段をハウジング内に設けるようにしたことにより、外部との間の配線量を格段的に低減させることができ、かくしてアクチュエータシステムの構成を簡易化させ得るアクチュエータ装置を実現できる。
【0264】また本発明によれば、回転自在に枢支された回転軸と、回転軸を回転駆動する駆動手段とがハウジング内に収納されたアクチュエータ装置において、回転軸の回転変位を検出する回転軸回転変位検出手段をハウジング内に設けるようにしたことにより、回転軸の回転変位を高精度に行うことができると共に、回転軸を太くしたり、当該回転軸の材料として剛性の高いものを用いたりすることなく高精度かつ高速に位置決めを行い得るようにすることができ、かくして性能を向上させながら容易に小型化させ得るアクチュエータ装置を実現できる。
【0265】さらに本発明によれば、アクチュエータ装置において、回転自在に枢支された回転軸と、当該回転軸と同軸に一体化された永久磁石と、供給される駆動電流の電流値に応じた大きさの磁界を発生させるようにして永久磁石に回転力を生じさせる磁界発生手段を設けるようにしたことにより、永久磁石に回転力を生じさせる磁界発生手段と、永久磁石の温度を検出する温度センサとを設けるようにしたことにより、温度センサの出力に基づいて、実際にコイルに許容される駆動電流の電流値の上限を容易に検出し得るようにすることができ、かくして性能を向上させ得るアクチュエータ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態によるACサーボモータの構成を示す断面図である。
【図2】ロータ及びロータ軸磁極角度センサの構成を示す略線図である。
【図3】ロータ及びステータ鉄心の位置関係を示す略線図である。
【図4】ステータ及びパワー基板の構成を示す略線図である。
【図5】トルク増幅部の構成を示す略線図である。
【図6】1回転絶対角度センサにおける樹脂マグネットの着磁パターンの説明に供する特性曲線図である。
【図7】1回転絶対角度センサ信号の波形を示す特性曲線図である。
【図8】制御基板の構成を示す略線図である。
【図9】制御基板の構成を示すブロック図である。
【図10】パワー基板の構成を示す回路図である。
【図11】1チップマイクロコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図12】ロータ軸磁極角度センサにおける樹脂マグネットの着磁パターンの説明に供する特性曲線図である。
【図13】第1及び第2のセンサ信号(第1及び第2のロータ軸磁極角度センサ信号)の波形を示す特性曲線図である。
【図14】ロータ軸回転角度検出処理ブロックの構成を示すブロック図である。
【図15】トルク−3相電流信号変換処理ブロックの構成を示すブロック図である。
【図16】電流制御処理ブロックの構成を示すブロック図である。
【図17】PWM変換器の処理の説明に供する略線図である。
【図18】モータ回転制御処理モード時におけるCPUの演算処理の説明に供するブロック図である。
【図19】モータ軸磁極回転数検出処理手順を示すブロック図である。
【図20】ロータ及びギア機構の関係の数学モデルを示すブロック図である。
【図21】外力推定処理モード時におけるCPUの演算処理の説明に供するブロック図である。
【符号の説明】
1……ACサーボモータ、2……モータ部、3……トルク増幅部、4……モータケース、6……ロータ軸、8……ロータマグネット、9……ロータ、10、10A〜10F……ステータ鉄心、11、11A〜11F……コイル、16……遊星歯車機構、18……出力軸、19、25……樹脂マグネット、20A、20B、26A〜26D……ホール素子、21……1回転絶対角度センサ、22……ロータ軸磁極角度センサ、23……制御基板、24……パワー基板、27……1チップマイクロコンピュータ、29……温度センサ、31〜33……ケーブル、34……コイル駆動ブロック、40……演算処理ブロック、42……ロータ軸回転角度検出ブロック、43……トルク−3相電流信号変換処理ブロック、44……電流制御処理ブロック、52A〜52C……インバータ回路、60……CPU、64……シリアル通信用入出力回路、83A〜83C……PWM変換器、S1A、S1B……1回転絶対角度センサ信号、S2A、S2B……ロータ軸磁極角度センサ信号、S3A〜S3C……駆動電流検出信号、S4A〜S4B……PWM信号、S13……温度センサ信号、Ur 、Vr 、Wr ……電流指令値、Iu 、Iv 、Iw ……駆動電流、θp ……磁気角度、Pm1……ロータ軸磁極回転角度、Pref ……指定回転角度、Vref ……指定回転速度、Tref ……指定回転トルク、T0 ……目標回転トルク、Tde……外力推定値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】回転自在に枢支された回転軸と、上記回転軸を回転駆動する駆動手段とがハウジング内に収納されたアクチュエータ装置において、上記ハウジング内に設けられ、上記駆動手段を介して上記回転軸の回転を制御する制御手段を具えることを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】上記制御手段は、上記回転軸の回転角度、回転速度及び又は回転トルクを制御することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】上記制御手段は、外部から与えられる駆動命令に応じた状態に上記回転軸が回転するように、上記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】上記ハウジング内に設けられ、上記回転軸の回転変位を検出する回転軸回転変位検出手段を具えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】上記回転軸回転変位検出手段は、上記回転軸と一体に設けられた第1の構成部と、上記ハウジング内の所定位置に固定配置された第2の構成部とを具え、上記回転軸と一体に回転する上記第1の構成部の回転変位を上記第2の構成部により検出するようにして、上記回転軸の回転変位を検出することを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】上記第1の構成部は、所定パターンで着磁されたマグネットでなり、上記第2の構成部は、磁気センサでなることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】上記駆動手段は、所定パターンで着磁され、上記回転軸と同軸に一体化された永久磁石と、上記制御手段から与えられる駆動電流の電流値に応じた強さの磁界を発生することにより、上記永久磁石に上記回転軸を中心とする回転力を生じさせる磁界発生手段とを有し、上記制御手段は、上記軸回転変位検出手段の検出結果に基づいて上記回転軸の回転速度を算出し、当該算出結果に応じた補正値分だけ上記駆動電流の位相を進相させることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項8】上記駆動手段は、所定パターンで着磁され、上記回転軸と同軸に一体化された永久磁石と、上記制御手段から与えられる駆動電流の電流値に応じた強さの磁界を発生することにより、上記永久磁石に上記回転軸を中心とする回転力を生じさせる磁界発生手段とを有し、上記ハウジング内には、上記永久磁石の温度を検出する温度センサが設けられ、上記制御手段は、上記温度センサの検出結果に基づいて、上記駆動手段に与える上記駆動電流の上記電流値の上限を設定することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項9】上記駆動手段は、上記制御手段から与えられる駆動電流の電流値に応じた大きさ回転力を上記回転軸に生じさせ、上記ハウジング内には、上記駆動手段に与えられる上記駆動電流の上記電流値を検出する駆動電流値検出手段が設けられ、上記制御手段は、上記駆動電流検出手段の検出結果に基づいて、上記駆動手段に与える上記駆動電流の上記電流値を制御することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項10】上記制御手段は、外部と所定のシリアル通信方式により通信する機能を有することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ装置。
【請求項11】上記シリアル通信方式は、RS−232Cシリアル通信方式及び又は同期式通信方式でなることを特徴とする請求項10に記載のアクチュエータ装置。
【請求項12】上記回転軸を介して出力される回転トルクを増幅するトルク増幅手段と、上記トルク増幅手段により増幅された上記回転トルクに基づいて回転する出力軸と、上記出力軸の回転変位を検出する出力軸回転変位検出手段と、演算手段とを具え、上記トルク増幅手段は、外部から上記出力軸に与えられる負荷トルクに比例して上記入力軸が変位を生じるのに十分な可逆駆動性を有し、上記演算手段は、上記回転軸回転変位検出手段及び上記出力軸変位検出手段の検出結果に基づいて、上記出力軸に外部から与えられる負荷トルクを検出することを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項13】上記駆動手段は、上記制御手段から与えれる駆動電流の電流値に応じた大きさ回転力を上記回転軸に発生させ、上記制御手段は、上記駆動手段に与えるべき上記駆動電流の電流値を表すパルス信号を発生する制御部と、上記制御部から与えられる上記パルス信号に応じた上記電流値の上記駆動電流を生成し、当該駆動電流を上記駆動手段に与える駆動電流生成部とを有し、上記ハウジングが導電性材料を用いて形成されたことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項14】回転自在に枢支された回転軸と、上記回転軸を回転駆動する駆動手段とがハウジング内に収納されたアクチュエータ装置において、上記ハウジング内に設けられ、上記回転軸の回転変位を検出する回転軸回転変位検出手段を具えることを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項15】回転自在に枢支された回転軸と、所定パターンで着磁され、上記回転軸と同軸に一体化された永久磁石と、供給される駆動電流の電流値に応じた強さの磁界を発生することにより、上記永久磁石に上記回転軸を中心とする回転力を生じさせる磁界発生手段と、上記永久磁石の温度を検出する温度センサとを具えることを特徴とするアクチュエータ装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図8】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図15】
image rotate


【図11】
image rotate


【図14】
image rotate


【図17】
image rotate


【図16】
image rotate


【図18】
image rotate


【図19】
image rotate


【図20】
image rotate


【図21】
image rotate


【公開番号】特開2000−299970(P2000−299970A)
【公開日】平成12年10月24日(2000.10.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−38097(P2000−38097)
【出願日】平成12年2月9日(2000.2.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】