説明

イオン注入パターン検出方法

【課題】比較的低濃度のイオン注入領域を検出可能なイオン注入パターン検出方法を提供する。
【解決手段】イオン注入領域14を有する基板13を移動させながら、イオン注入領域14を含む検査領域に対して、ほぼ垂直方向に励起用レーザ光18を、斜め方向に検出用レーザ入射光22を照射し、照射位置に照射される検出用レーザ入射光22のサーマルウェーブ信号(検出用レーザ反射光23)を測定し、照射位置とサーマルウェーブ信号とを記録する工程と、記録された一連の検査領域内の照射位置及びサーマルウェーブ信号に基づき、検査領域内でのサーマルウェーブ信号のピーク位置を算出する工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入された領域を検出するイオン注入パターン検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、マスクを用いて基板に回路パターンを露光したり、部分的にイオン注入を行ったりする場合には、基板とマスクとの位置合せが不可欠である。このようなマスクと基板との位置合せを行う一方法として、例えば、カメラと画像処理系とを組み合わせたものがある。位置合せには、基板に形成されたアライメントマーク(基板マーク)が使われる。基板マークとして、基板上に形成されパターニングされた窒化シリコン膜または多結晶シリコン膜等の凹凸部等が使用されることが多い。
【0003】
そして、例えば、基板マーク及びマスクの位置合せ用に形成されたアライメントマーク(マスクマーク)からの反射像をカメラでそれぞれ観測し、読み取った画像を画像処理して位置ずれを検出し、この検出結果に基づいて基板とマスクの各マークが所定の位置関係となるように、基板とマスクとを相対的に移動して位置合せを行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ここで、基板マークは、照明光に対して検出可能であることが必須である。凹凸部等で形成された基板マークの他に、比較的高濃度のイオン注入領域は、照明光に対して検出可能なので、基板マークとして使用できる可能性が高い。しかしながら、基板マーク形成のための高濃度なイオン注入工程が必要となるという問題がある。すなわち、半導体装置製造プロセス開始の早い時点で行われる比較的低濃度(例えば、ドーズ量1E13cm−2以下)なイオン注入を使用した基板マークは、通常の照明では検出できない、あるいは、正確に検出できないという問題がある。
【特許文献1】特開2000−356511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、比較的低濃度のイオン注入領域を検出可能なイオン注入パターン検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のイオン注入パターン検出方法は、イオン注入領域を有する基板を移動させながら、前記イオン注入領域を含む検査領域に対して、第1の方向に向けて励起用の第1のレーザ光を、第2の方向に向けて検出用の第2のレーザ光を照射し、前記照射位置に照射される前記第2のレーザ光のサーマルウェーブ信号を測定し、前記照射位置と前記サーマルウェーブ信号とを記録する工程と、記録された一連の前記検査領域内の前記照射位置及び前記サーマルウェーブ信号に基づき、前記検査領域内での前記サーマルウェーブ信号のピーク位置を算出する工程とを備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の別態様のイオン注入パターン検出方法は、イオン注入領域を有する基板を移動させながら、前記イオン注入領域を含む検査領域に対して、第1の方向に向けて励起用の第1のレーザ光を、第2の方向に向けて検出用の第2のレーザ光を照射し、前記照射位置に照射される前記第2のレーザ光のサーマルウェーブ信号を測定し、前記照射位置と前記サーマルウェーブ信号とを記録する工程と、記録された一連の前記検査領域内の前記照射位置及び前記サーマルウェーブ信号に基づき、前記検査領域内での前記サーマルウェーブ信号が、ピーク値の両側で所定のサーマルウェーブ信号値となる点を前記イオン注入領域の幅の両端として算出する工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的低濃度のイオン注入領域を検出可能なイオン注入パターン検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。以下に示す図では、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1に係るイオン注入パターン検出方法について、図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0011】
図1はイオン注入パターン検出のためのイオン注入領域検出装置の構成を模式的に示す図である。図2はイオン注入パターンを有する基板と励起及び検出レーザ光との関係を模式的に示す図である。図3は検出されたサーマルウェーブ信号とイオン注入パターンのピーク位置との関係を模式的に示す図である。
【0012】
まず、図1に示すように、イオン注入パターンであるイオン注入領域を検出のためのイオン注入領域検出装置1は、基板13を支持する支持台11、基板13の被検査部を励起するための第1のレーザ光となる励起用レーザ光源17、励起された領域を検出するための第2のレーザ光となる検出用レーザ光源21、及び、基板13の被検査部から反射された信号(反射光)を受けるフォトディテクタ25を有する測定部10を備え、更に、測定部10の制御及び測定部10で得られたデータの収納・解析等を行う制御・データ処理部31を備えている。制御・データ処理部31は、図示されてないCPU部、記憶部、入出力部等を有している。測定部10は、例えば、図示されてないOff−Axis方式のアラインメント装置の一部として配設されている。制御・データ処理部31はアラインメント装置の制御・データ処理部の一部として共有されてもよい。
【0013】
基板13は、シリコン等の半導体基板である。基板13の表面には、低濃度(例えば、ドーズ量1E13cm−2以下)にイオン注入された位置合わせ用のマークとなるイオン注入領域(後述の14)が、例えば、半導体基板の半導体素子等の形成領域を外して形成されている。
【0014】
基板13が固定される支持台11は、XY(平面)方向及びZ(高さ)方向への移動とそれぞれX軸、Y軸、Z軸の回りの回転等により、基板13の位置調整を行うことが可能である。
【0015】
励起用レーザ光源17は、例えば、Arレーザ(波長488nm)である。励起用レーザ光18は、変調されて、図示を省略した光学素子等を通過して、基板13の表面にほぼ垂直方向から照射され、例えば、直径1〜数μmの焦点を結ぶ。
【0016】
検出用レーザ光源21は、例えば、He−Neレーザ(波長633nm)である。検出用レーザ入射光22は、図示を省略した光学素子等を通過して、基板13表面の励起用レーザ光18が照射されている位置に重なるように、斜め上方から照射される。
【0017】
フォトディテクタ25は、He−Neレーザ光に十分な感度を有する、例えば、CCD等を有している。励起用レーザ入射光22が照射された基板13の表面で反射された検出用レーザ反射光23が、図示を省略した光学素子等を通過して、フォトディテクタ25に入射される。
【0018】
以上の構成により、励起用レーザ光18と検出用レーザ入射光22とは、入射方向が違うものの、基板13の表面において、励起用レーザ光18の照射領域からはみ出さないように検出用レーザ入射光22が重ねて当てられる。いわゆるサーマルウェーブ法を適用した方法である。励起用レーザ光18は、例えば、照射領域が直径約1μmに絞られ、1MHzに変調されて、基板13に照射される。励起用レーザ光18を吸収して、基板13内部にサーマルウェーブ(熱波)とプラズマウェーブ(プラズマ波)が発生し、基板13の表面下の結晶構造に依存して、基板13の表面の様子が変化する。なお、要求される精度等により、照射領域直径及び変調周波数等は変更可能である。
【0019】
この基板13の表面に、検出用レーザ入射光22を照射し、その反射である検出用レーザ反射光23をフォトディテクタ25により検出することにより、イオン注入により発生する結晶欠陥等の度合いに関連する量を検出可能となる。サーマルウェーブ及びプラズマウェーブは、基板13の表面部分の結晶欠陥等の欠陥の存在に対して、非常に敏感な反射信号として表れ、ドーズ量1E10cm−2〜1E12cm−2程度で発生する欠陥を検出可能である。なお、励起用レーザ光18と検出用レーザ入射光22とは各々の光軸が一致して、基板13の表面に対してほぼ垂直方向から照射されても差し支えない。
【0020】
次に、イオン注入領域の検出について説明する。基板13は、例えば、半導体装置製造プロセス開始の早い時点で、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のウェルが形成される。この時に、図2に示すように、同時に、低濃度にイオン注入された位置合わせ用のイオン注入領域14が形成される。
【0021】
図2(a)に示すように、イオン注入領域14の図面右側に外れた位置に励起用レーザ光18及び検出用レーザ入射光22が照射され、検出用レーザ反射光23が反射され、フォトディテクタ25で測定される。基板13を図面右側(X方向とする)に1ステップずつ移動(位置は−X方向に移動)させる。1ステップの移動は、基板13表面の励起用レーザ光18等の照射位置が十分重なる程度の間隔(例えば、約0.02〜0.1μm)となるように設定される。なお、基板13を連続的に移動しながら測定を行う連続スキャン等のモードを使用することが可能である。
【0022】
基板13は、被測定領域をカバーするように移動されて、図2(b)に示すように、励起用レーザ光18等は、イオン注入領域14の図面左側に外れた位置に来る。図2(a)から図2(b)に基板13が移動される間に、イオン注入領域14を含む表面からのデータがフォトディテクタ25で測定される。この測定される検出用レーザ反射光23からなるサーマルウェーブ信号データは、X方向の位置と共に、制御・データ処理部31に記録される。
【0023】
次に、イオン注入領域14のピーク位置、すなわち、基板マーク位置の求め方について説明する。図3に示すように、X方向の位置を横軸に取り、検出用レーザ反射光23の強度を縦軸に取って、記録された検出用レーザ反射光23のサーマルウェーブ信号、すなわち、結晶欠陥の度合いに関する量が示される。隣接のサーマルウェーブ信号は滑らかな曲線で接続されて、サーマルウェーブ信号曲線となる。サーマルウェーブ信号は、極大値(ピーク値)を有する形状をなす。サーマルウェーブ信号曲線のピーク値は、必ずしも、求めるイオン注入領域のピーク位置に一致するとは限らない。そこで、サーマルウェーブ信号曲線で示される分布の中心位置は、サーマルウェーブ信号曲線の半値幅の中点と仮定して算出する。サーマルウェーブ信号曲線の半値幅の中点、すなわち、ピーク値の半分となるサーマルウェーブ信号が、サーマルウェーブ信号曲線と交わる両端の中点として求められる。この求められた分布のほぼ中心位置となる中点を基板マーク位置15とする。
【0024】
なお、図3のサーマルウェーブ信号曲線の上側に、イオン注入された不純物の濃度分布を示す。濃度分布は、例えば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)等の不純物分析により求めることができ、所定の濃度を示す等濃度線で囲まれた境界線内の領域が、より濃度の高いイオン注入領域14ということになる。イオン注入領域14の分布のほぼ中心に、基板マーク位置15が設定できている。
【0025】
ここで、基板マーク位置15は、半値幅の中点の他に、閾値となるサーマルウェーブ信号を予め設定しておいて、その線がサーマルウェーブ信号曲線と交わる両端の中点として算出することも可能である。また、符号(+/−)がそれぞれ異なるサーマルウェーブ信号曲線が最も急峻に変化する2つの位置を結ぶ線分の中点として算出する方法で求めることも可能である。また、サーマルウェーブ信号曲線が滑らかな曲線にならない場合、ノイズの平滑化処理等を、適宜、適用してもよい。
【0026】
上述したように、低濃度にイオン注入されたイオン注入領域14を有する基板13のイオン注入領域14を含む検査領域に励起用レーザ光18を照射し、励起用レーザ光18の照射部と同一の位置に照射される検出用レーザ入射光22を、基板13表面で反射させて、検出用レーザ反射光23としてフォトディテクタ25で測定し、基板13を一定方向に一定間隔で移動させながら、同様な測定行って位置とサーマルウェーブ信号データを取得し、測定データのサーマルウェーブ信号曲線からピーク位置を算出し、イオン注入領域14の位置とすることができる。すなわち、低濃度にイオン注入された位置合わせ用のイオン注入領域14は、サーマルウェーブ法により検出されて、ピーク位置が算出されて、基板マークとして使用することが可能となる。
【0027】
また、この低濃度にイオン注入されたイオン注入領域14をアラインメント用の基板マークとする方法は、例えば、検出され易いように、高いドーズ量のイオン注入領域を別に形成することを必要としない。つまり、通常の半導体装置製造プロセスにおいて、基板マーク形成工程を別に設ける必要がなく、工程短縮が可能となる。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例2に係るイオン注入パターン検出方法について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は検出されたイオン注入パターン同士の位置関係を評価することを説明するための模式的な図で、図4(a)は平面図、図4(b)はサーマルウェーブ信号分布図である。図5は検出されたサーマルウェーブ信号とイオン注入パターン領域幅との関係を模式的に示す図である。実施例1とは、イオン注入パターン検出がアラインメント用の基板マーク以外に適用される例である点が異なる。以下、実施例1と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略し、異なる構成部分について説明する。
【0029】
まず、実施例1で示したイオン注入領域14に対して、位置合わせされた別のイオン注入領域を形成して、イオン注入領域14と別のイオン注入領域との距離、及び、別のイオン注入領域間の距離を求める例を説明する。
【0030】
図4(a)に示すように、基板マークとなるイオン注入領域14を基準に、基板13上に、低濃度な矩形のイオン注入領域44、54が形成されている。イオン注入は、例えば、イオン注入領域14の基板マーク位置15に位置合わせされたステンシルマスクを介して行われる。
【0031】
図4(b)に示すように、イオン注入領域44は、実施例1と同様な方法で、励起用レーザ光18等が照射されて、測定され、イオン注入領域44のピーク位置(1点鎖線)が検出される。その結果、例えば、イオン注入領域14とイオン注入領域44との間隔は、距離Laと算出される。また、同様に、イオン注入領域54のピーク位置(1点鎖線)も検出され、イオン注入領域14とイオン注入領域54との間隔は、距離Lbと算出される。なお、イオン注入領域44、54が同時にステンシルマスクを介して行われる場合、イオン注入領域44、54は一定の間隔を有しているので、イオン注入領域44、54の一方を測定し、他の間隔を類推することは可能である。そして、イオン注入領域44、54の位置を精度良く求める場合、イオン注入領域54のイオン注入領域14とは反対側に基板マークとなるイオン注入領域14aを設けておき、イオン注入領域14、14aとイオン注入領域44、54との間のそれぞれの距離を測定し、ステンシルマスク製造誤差及び支持台11の移動誤差等をキャンセルする方法が有用である。
【0032】
また、イオン注入領域44、54が、それぞれ、別工程としてイオン注入され、しかも、イオン注入領域44とイオン注入領域54との間の距離のみが必要な場合、イオン注入領域44とイオン注入領域54を両端に含む領域は、実施例1と同様な方法で、励起用レーザ光18等が照射されて、測定され、イオン注入領域44、54のピーク位置が、それぞれ、検出される。その結果、例えば、イオン注入領域44とイオン注入領域54との間隔は、距離Lcと算出される。
【0033】
上述したように、実施例1と同様な方法を適用することによって、低濃度なイオン注入領域44、54の、それぞれの位置を算出でき、これらの位置から、イオン注入領域14、44、54のそれぞれの間隔、すなわち距離、を求めることが可能となる。そして、求めた距離La、Lb、Lcが許容範囲内にあるかどうかを、予め設定された基準値と比較することにより検証できる。その結果、基板13のイオン注入領域44、54の位置に基づく良否判定、あるいは、アラインメント装置へのフィードバック等を、低濃度なイオン注入が終わった段階で行うことが可能となり、その後の工程に対して、無駄を少なくすることが可能となる。つまり、不良品の早い段階での排除や装置の早い段階での修正が可能となる
次に、低濃度なイオン注入領域64の幅、すなわち、広がり寸法を、イオン注入パターン検出方法により算出する例を説明する。基板13にイオン注入を行うと、イオン注入された元素が一定濃度存在する領域と実質的に存在しない領域との間に、連続的な濃度分布を有する領域が存在する。
【0034】
図5に示すように、イオン注入領域64は、予め決められた濃度を結んでできる境界線より高い濃度領域を示している。境界となる濃度をより低濃度に設定すれば、より広いイオン注入領域を検出することが可能である。濃度分布の中心(基板マーク位置等のピーク位置)は、濃度の境界線の設定に依存することは少なく、ほぼ一義的に決められるが、濃度の境界線は、設定に基づいてある範囲内で規定されることになる。
【0035】
サーマルウェーブ信号曲線は、結晶欠陥等の度合いに関係する量を示しており、イオン注入された不純物元素が多いほど、結晶欠陥等の頻度が高くなり、サーマルウェーブ信号は強くなる関係にある。つまり、不純物種、ドーズ量、注入エネルギー等が同じ条件において、イオン注入された不純物元素の濃度と、サーマルウェーブ信号は相関関係がある。具体的には、不純物の濃度を例えばSIMS等で測定して、不純物の濃度分布を求めておき、一方、一定の条件に基づくサーマルウェーブ信号を測定、曲線を算出し、両者をつき合わせて、サーマルウェーブ信号曲線から所望の濃度を境界とするイオン注入領域の幅を決めることは可能である。
【0036】
図5に示すように、まず、基準となるイオン注入領域64に相当する濃度を境界としてイオン注入領域幅Wを求めたい場合、サーマルウェーブ信号曲線のピーク値に対する相対的な強度値(検出強度値)、例えば、相対強度がピーク値に対して約65%下がった値、を設定する。次に、求めようとする別のイオン注入領域のサーマルウェーブ信号曲線を実施例1で述べた方法で求めて、サーマルウェーブ信号曲線がこの検出強度値と交わる両端を境界として、イオン注入領域幅Wとすればよい。
【0037】
検出強度値は、半導体装置の特性に及ぼす影響により、濃度の低めな境界を検出して判断する必要がある場合、逆に、濃度の高めな境界を検出して判断する必要がある場合があり、それぞれの場合に即して運用することが可能である。
【0038】
上述したように、基準となるイオン注入領域のイオン注入領域幅を検出するための検出強度値を予め求めて、その検出強度値を別のサーマルウェーブ信号曲線に適用することにより、同条件で形成した任意のイオン注入領域幅を求めることが可能となる。その結果、任意のイオン注入領域のイオン注入領域幅に基づく良否判定が可能となる。従来、例えば、基板13表面をエッチングして、段差を形成して、段差の間隔を測定して、イオン注入領域幅を求めた検査に比較して、本実施例のイオン注入領域幅検出方法を用いた工程は、簡便となり、工程の短縮も可能となる。
【0039】
以上、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0040】
例えば、実施例では、イオン注入領域は重ならない例を示したが、イオン注入領域が一部重なる、あるいは、同じ領域に複数回のイオン注入を行っても検出可能である。イオン注入による結晶欠陥等の度合いに関する量に変化が現れるので、測定されるサーマルウェーブ信号に変化が現れて、例えば、相対的な比較は可能となる。
【0041】
また、実施例では、基板上のイオン注入領域において、サーマルウェーブ信号曲線のピーク位置は存在するものとして説明してきたが、サーマルウェーブ信号曲線が検出されず、従ってピーク位置が存在しないというデータが得られるときは、イオン注入領域は、少なくとも測定領域に存在しないので、基板マーク、イオン注入の合わせ基準、または、その他のイオン注入領域等が存在しない不良基板であると判断することが可能である。
【0042】
本発明は、以下の付記に記載されるような構成が考えられる。
(付記1) イオン注入領域を有する基板を移動させながら、前記イオン注入領域を含む検査領域に対して、第1の方向に向けて励起用の第1のレーザ光を、第2の方向に向けて検出用の第2のレーザ光を照射し、前記照射位置に照射される前記第2のレーザ光のサーマルウェーブ信号を測定し、前記照射位置と前記サーマルウェーブ信号とを記録する工程と、記録された一連の前記検査領域内の前記照射位置及び前記サーマルウェーブ信号に基づき、前記検査領域内での前記サーマルウェーブ信号のピーク位置を算出する工程とを備えているイオン注入パターン検出方法。
【0043】
(付記2) 前記サーマルウェーブ信号は、平滑化処理により滑らかな曲線とされる付記1に記載のイオン注入パターン検出方法。
【0044】
(付記3) 前記サーマルウェーブ信号が最も急峻に変化する位置を前記イオン注入パターンの境界とする付記1に記載のイオン注入パターン検出方法。
【0045】
(付記4) 前記サーマルウェーブ信号のピーク位置のサーマルウェーブ信号を予め設定した基準値と比較する付記1に記載のイオン注入パターン検出方法。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1に係るイオン注入パターン検出のためのイオン注入領域検出装置の構成を模式的に示す図。
【図2】本発明の実施例1に係るイオン注入パターンを有する基板と励起及び検出レーザ光との関係を模式的に示す図。
【図3】本発明の実施例1に係る検出されたサーマルウェーブ信号とイオン注入パターンのピーク位置との関係を模式的に示す図。
【図4】本発明の実施例2に係る検出されたイオン注入パターン同士の位置関係を評価することを説明するための模式的な図で、図4(a)は平面図、図4(b)はサーマルウェーブ信号分布図。
【図5】本発明の実施例2に係る検出されたサーマルウェーブ信号とイオン注入パターン領域幅との関係を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0047】
1 イオン注入領域検出装置
10 測定部
11 支持台
13 基板
14、14a、44、54、64 イオン注入領域
15 基板マーク位置
17 励起用レーザ光源
18 励起用レーザ光
21 検出用レーザ光源
22 検出用レーザ入射光
23 検出用レーザ反射光
25 フォトディテクタ
30 データ処理部
31 制御・データ処理部
La、Lb、Lc 距離
W イオン注入領域幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入領域を有する基板を移動させながら、前記イオン注入領域を含む検査領域に対して、第1の方向に向けて励起用の第1のレーザ光を、第2の方向に向けて検出用の第2のレーザ光を照射し、前記照射位置に照射される前記第2のレーザ光のサーマルウェーブ信号を測定し、前記照射位置と前記サーマルウェーブ信号とを記録する工程と、
記録された一連の前記検査領域内の前記照射位置及び前記サーマルウェーブ信号に基づき、前記検査領域内での前記サーマルウェーブ信号のピーク位置を算出する工程と、
を備えていることを特徴とするイオン注入パターン検出方法。
【請求項2】
前記ピーク位置は、前記サーマルウェーブ信号の半値幅の中心であることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入パターン検出方法。
【請求項3】
前記ピーク位置と、別のイオン注入領域のサーマルウェーブ信号のピーク位置との間の距離を算出する工程を更に有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のイオン注入パターン検出方法。
【請求項4】
前記サーマルウェーブ信号が、ピーク値の両側で所定のサーマルウェーブ信号値となる点を前記イオン注入領域の幅の両端として算出する工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン注入パターン検出方法。
【請求項5】
イオン注入領域を有する基板を移動させながら、前記イオン注入領域を含む検査領域に対して、第1の方向に向けて励起用の第1のレーザ光を、第2の方向に向けて検出用の第2のレーザ光を照射し、前記照射位置に照射される前記第2のレーザ光のサーマルウェーブ信号を測定し、前記照射位置と前記サーマルウェーブ信号とを記録する工程と、
記録された一連の前記検査領域内の前記照射位置及び前記サーマルウェーブ信号に基づき、前記検査領域内での前記サーマルウェーブ信号が、ピーク値の両側で所定のサーマルウェーブ信号値となる点を前記イオン注入領域の幅の両端として算出する工程と、
を備えていることを特徴とするイオン注入パターン検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−139251(P2008−139251A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328185(P2006−328185)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】