説明

エポキシ樹脂組成物、その硬化物、硬化物の製造方法、光半導体封止用樹脂組成物、及び光半導体装置

【課題】ワニス状態での流動性に優れると伴に、硬化物の透明性、及び熱履歴後の耐熱黄変性に優れ、更に硬化物の強度にも優れるエポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、ポリシロキサン構造にアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール系水酸基、シラノール系水酸基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ポリエーテルアルコール基、メルカプト基、及びカルボキシル基から選択される反応性官能基を含む反応性シリコーン(C)、及びラジカル重合開始剤(D)、を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光半導体封止用樹脂組成物に適したエポキシ樹脂組成物、その硬化物、光半導体封止用樹脂組成物、及び光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED、フォトカプラー、光センサ、半導体レーザー、イメージセンサー等の光半導体デバイスは発光素子或いは光伝送装置として近年広く用いられており、光半導体素子を封止する樹脂材料として、芳香族系エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とを組み合わせた2液型硬化剤が、成型加工性や透明性などに優れる点から用いられている。
【0003】
しかしながら、前記した芳香族系エポキシ樹脂を主剤として用いる封止材料は、該樹脂中の芳香環の吸光により硬化物の黄変を招き易く、とりわけLEDの分野では、LED素子の高出力化及び短波長化が進んでいるところ、前記芳香族系エポキシ樹脂はこの短波長の光を吸収し易く、光半導体素子の黄変や光取り出し効率の低下を招いていた。
【0004】
そこで、硬化物の黄変の少ない光半導体封止材料として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂肪族環状エポキシ化合物を主剤として用いる技術が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、このような非芳香族系の化合物であっても、その硬化物の熱履歴による黄変は避けられず、特に近年需要の高い高出力タイプの高輝度LEDの封止材料に求められる熱安定性は得られていないのが現状であった。更に、光半導体封止材料には適度な柔軟性が求められるところ、前記脂肪族環状エポキシ化合物を主剤とする封止材料は、硬化物が硬く脆いため適度な強度が得られない、という欠点を有していた。加えて、このようなエポキシ硬化系の封止材料は硬化反応に長時間要することから光半導体装置の生産性が低くならざるを得ないところ、硬化速度を向上させるべく硬化反応時に過度に加熱すると、やはり硬化物の着色を招いてしまうものであった。
【0005】
そのため、硬化物の耐熱性、耐湿性に優れ、かつ、短時間での硬化が可能となる点から紫外線硬化型の封止材料が用いられており、例えば、前記脂肪族環状エポキシ化合物のビニルエステル化物をラジカル重合により硬化させる方法も知られている(下記特許文献2参照)。しかしながら、ビニルエステル化合物を用いるには、脂肪族環状エポキシ化合物をメタクリル酸と反応させる工程が必要となり、工業的生産に鑑みて有利な手段とは言えず、また、脂肪族環状エポキシ化合物とメタクリル酸との反応生成物は固形となるため、光半導体封止材料として使用する際には溶液状のワニスに調整しなければならず、材料の設計の幅が狭く、近年の光半導体装置の用途の著しい拡大に対応するのが困難なものであった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−316626号公報
【特許文献2】特開2006−332262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、ワニス状態での流動性に優れると伴に、硬化物の透明性、及び熱履歴後の耐熱黄変性に優れ、更に硬化物の強度にも優れるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、エポキシ樹脂とメタクリル酸、及び特定の酸基含有ラジカル重合性単量体を配合した組成物を、一度に反応させて硬化させること、即ち、イン・サイチュー反応により硬化させることにより、硬化前では優れた流動性を有すると共に、硬化後は優れた透明性、耐熱黄変性、及び強度とを発現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、及びラジカル重合開始剤(D)、を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。
【0010】
上記エポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする光半導体封止用樹脂組成物。
【0011】
本発明は、更に、前記透明性エポキシ樹脂組成物を賦型した後、加熱又は活性エネルギー線照射により硬化させてなることを特徴とする硬化物に関する。
本発明は、更に、前記透明性エポキシ樹脂組成物を賦型した後、加熱又は活性エネルギー線照射により硬化させることを特徴とする硬化物の製造方法に関する。
本発明は、更に、光半導体を前記透明性エポキシ樹脂組成物で封止してなることを特徴とする光半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワニス状態での流動性に優れると伴に、硬化物の熱履歴後の耐黄変性に優れ、更に機械的強度にも優れた性能を発現するエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記した通り、エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、及びラジカル重合開始剤(D)、を必須成分とするものであり、これを一度に反応させること、即ち、エポキシ基と酸基との反応と、ラジカル重合性基の重合反応とを特に反応工程として区別することなく両反応を同時乃至連続的に行うことを特徴としている。このようなイン・サイチュー反応により硬化させることにより、硬化物における耐熱黄変性と強度が飛躍的に向上することは特筆すべき点である。
【0014】
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂などの水添ビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック樹脂型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸などの多塩素酸類のポリグリシジルエステル;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミン類とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ブチルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの直鎖型脂肪族エポキシ樹脂;2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソーエキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロピル)シクロヘキシル)プロパン、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシシクロヘキシル−p−ジオキサン)、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リノール酸二量体のジグリシジルエーテル、リモネンジオキシド、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、o−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、1,2−ビス[5−(1,2−エポキシ)−4,7−ヘキサヒドロメタノインダンキシル]エタン、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびジグリシジルヘキサヒドロフタレート等の環状脂肪族構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0015】
これらのなかでも硬化物の黄変防止という観点からビスフェノール型エポキシ樹脂のなかでエポキシ当量150〜1,000g/eq.の低分子量体や、直鎖型脂肪族エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、及び環状脂肪族構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、特に流動性に優れたワニスとなる点からエポキシ当量150〜500g/eq.のビスフェノール型エポキシ樹脂、及び環状脂肪族構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
次に、本発明で用いるメタクリル酸(B)は、前記したとおり、エポキシ樹脂(A)と反応すると同時に、ラジカル重合によりアクリロイル基の重合を生じさせるものである。本発明ではこのようなイン・サイチュー反応を利用した硬化を行うことにより、耐熱黄変性を飛躍的に向上させることができる。
【0017】
また、本発明では反応性シリコーン(C)を用いることから、硬化物の耐光性及び耐熱黄変性を飛躍的に高めることができる。かかる反応性シリコーン(C)は、ポリシロキサン構造にアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール系水酸基、シラノール系水酸基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ポリエーテルアルコール基、メルカプト基、及びカルボキシル基から選択される反応性官能基を含むものが挙げられる。
【0018】
更に具体的には、下記構造式(2)
【0019】
【化1】


ここで、上記式(2)中、R及びRは、それぞれ独立的にメチル基又は水素原子を表す。また、上記式(2)中、X、X’、及びX”は、それぞれ独立的に、下記構造式a〜iからなる群から選択される反応性基、又は、メチル基又は水素原子を表し、x及びyは1以上の整数である。また、x及びyの合計は2〜100となる範囲である。
【0020】
【化2】

【0021】
ここで、X、X’、及びX”は前記反応性基であり、また、上記構造式a〜hにおけるRは炭素原子数1〜4のアルキレン基を表す。
【0022】
これらのなかでも特にエポキシ基、カルボキシル基、又はメタクリロイル基を有するポリシロキサンであることが反応性に優れる点から好ましい。
【0023】
前記反応性シリコーン(C)の使用量は、エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)、前記反応性シリコーン(C)の合計100質量部に対して5〜30質量部の範囲であることが耐光性、耐熱黄変性が一層向上する点から好ましい。
【0024】
以上詳述したエポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、及び反応性シリコーン(C)の各配合割合は、具体的には、これらの合計100質量部に対して、前記エポキシ樹脂(A)を10〜60質量部、前記メタクリル酸(B)を10〜30質量部、前記反応性シリコーン(C)を20〜80質量部となる割合で配合することが、硬化物の耐熱黄変性や強度のバランスが良好となる点から好ましい。特にこれらの性能バランスがより良好なものとなる点から前記エポキシ樹脂(A)を20〜50質量部、前記メタクリル酸(B)を10〜20質量部、前記反応性シリコーン(C)を25〜50質量部となる割合で配合することが特に好ましい。
【0025】
本発明で用いるラジカル重合開始剤(D)は、熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであればよく、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α'−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチ−ルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。前記ラジカル重合開始剤(D)の使用量は、ラジカル重合性成分の総質量及びラジカル重合開始剤(D)の合計質量に対して0.001質量%以上、2質量%以下となる割合で含有されるのが好ましい。
【0026】
本発明では、上記した上記エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、及びラジカル重合開始剤(D)に加え、脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)を併用することが、硬化物の透明性を向上させて光取り出し効率を向上させると共に、硬化物に適度な柔軟性を付与し強度を向上させることができる点から好ましい。かかる酸基含有ラジカル重合性単量体(E)は具体的にはエポキシ樹脂(A)との相溶性の点から下記構造式(1)
【0027】
【化3】


(式中、Rは炭素原子数2〜10の脂肪族炭化水素基、Xはエステル結合又はカーボネート結合、Rは炭素原子数2〜10の脂肪族炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を示す。)で表されるものが好ましい。
【0028】
ここで、前記構造式(1)中、Xとしてエステル結合を有するものとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと炭素原子数2〜10の脂肪族多価カルボン酸とを反応させて得られる化合物、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールと、炭素原子数2〜10の脂肪族多価カルボン酸とを反応させて得られる化合物が挙げられる。
【0029】
ここでヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、β−ヒドロキシエチルメタアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。また、脂肪族多価カルボン酸としては、無水コハク酸、アジピン酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0030】
更に、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールとしては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなどが挙げられる。これらのなかでも炭素原子数が4〜8のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールがエポキシ樹脂(A)との相溶性に優れる点から好ましい。
【0031】
また、前記構造式(1)中、Xとしてカーボネート結合を有するものとしては、例えば、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールと炭酸ジアルキルをエステル交換反応によりポリカーボネートジオールを得た後(メタ)アクリル酸又はその誘導体と反応させて得られる化合物が挙げあれる。
【0032】
ここで、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなどの炭素原子数3〜10のものが挙げられる。これらのなかでも炭素原子数が4〜8のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールがエポキシ樹脂(A)との相溶性に優れる点から好ましい。
一方、炭酸ジアルキルとしては反応性の点から炭酸ジメチルが挙げられる。
【0033】
これらのなかでも特に硬化物に適度な柔軟性を付与できる点から、前記構造式(1)中のXがエステル結合であるものが好ましく、特に、β−ヒドロキシエチルメタアクリレートと無水コハク酸との付加物である3‐[[2‐(メタクリロイルオキシ)エトキシ]カルボニル]プロピオン酸、β−ヒドロキシエチルメタアクリレートとヘキサヒドロフタル酸との付加物である2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸が好ましい。
【0034】
以上詳述したエポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、及び脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)の各配合割合は、具体的には、これらの合計100質量部に対して、前記エポキシ樹脂(A)を10〜60質量部、前記メタクリル酸(B)を10〜30質量部、反応性シリコーン(C)を15〜70質量部、前記脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)を5〜30質量部となる割合で配合することが、硬化物の耐熱黄変性や強度のバランスが良好となる点から好ましい。特にこれらの性能バランスがより良好なものとなる点から前記エポキシ樹脂(A)を20〜50質量部、前記メタクリル酸(B)を10〜20質量部、反応性シリコーン(C)を20〜40質量部、前記脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)を10〜25質量部となる割合で配合することが特に好ましい。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物は上記した各成分に加え、脂肪族環状構造含有モノメタクリレート化合物(E)を用いることが、硬化物の耐熱黄変性を一層向上させることができる点から好ましい。かかる脂肪族環状構造含有モノメタクリレート化合物(E)は、具体的には、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、イソボニルメタクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、特に
ジシクロペンタニルメタクリレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及びイソボニルメタクリレートからなる群から選択される化合物が、硬化物の機械的強度が一層向上する点から好ましい。
【0036】
ここで前記脂肪族環状構造含有モノメタクリレート化合物(E)の使用割合は、エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)、及び脂環構造含有モノメタクリレート化合物(E)の合成質量100質量部に対して、20〜70質量部となる割合、特に40〜60質量部となる割合であることが硬化物強度の点から好ましい。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に、硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に光半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化物の耐熱性がより高くなり、物性バランスを調整することが可能となる点からラジカル重合性多官能モノマーを適宜併用してもよい。ここで使用し得るラジカル重合性多官能モノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンジアミンテトラメタクリレート、ヘキサンジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタビニレートが挙げられる。これらのラジカル重合性多官能モノマーの使用量は組成物中1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0039】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分に加え、酸化防止剤を配合することが加熱時の酸化劣化を防止でき、透明性に優れた硬化物が得られる点で好ましい。
【0040】
ここで使用し得る酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4−メトキシナフトール等のモノフェノール類、ヒドロキノン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の多官能フェノール類に代表されるフェノール系酸化防止剤;p−ベンゾキノン、トルキノン、ナフトキノンに代表されるキノン系酸化防止剤;ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3'−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類に代表されるリン系酸化防止剤が挙げられる。上記した酸化防止剤の使用量は、全硬化成分100質量部に対して0.005〜1質量部となる範囲であることが好ましい。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物は更に紫外線吸収剤を配合することにより、更に耐光性を向上させることができる。配合できる紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸類;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジtert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{(2'−ヒドロキシ−3'、3”、4”、5”、6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル}メチル]ブチルマロネート等のヒンダートアミン類が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の配合量は、全硬化成分100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましい。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記各成分の他、目的に応じ、カップリング剤、離型剤、滑剤等を適宜添加することが出来る。
【0043】
カップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニュウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤、Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニュウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤が挙げられるが好ましくはシリコン系カップリング剤である。カップリング剤を使用する事により耐湿信頼性が優れ、吸湿後の接着強度の低下が少ない硬化物が得られる。
【0044】
離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシュウム、カルシュウム、カドニュウム、バリュウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、密ロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類が挙げられ、好ましくは、高級脂肪酸エステル類、高級脂肪酸アミド類、高級脂肪酸、金属石鹸、炭化水素系滑剤であり、更に好ましくはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレートである。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記した各成分を、均一に撹拌することにより、液状の組成物として容易に得ることができる。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化反応は、上記した通り、エポキシ基と酸基との反応と、ラジカル重合性基の重合反応とを特に反応工程として区別することなく両反応を同時乃至連続的に行うこと、即ち、イン・サイチュー反応により硬化させるものである。具体的な硬化温度は、50〜200℃の温度範囲であることが好ましく、特に、50〜100℃で硬化させ、タックフリー状の硬化物にした後、更に、120〜180℃の温度条件で処理することが好ましい。
【0047】
以上、詳述した本発明の組成物は、前記したとおり透明性や耐黄変性、とりわけ耐熱黄変性に優れ、かつ、硬化前の流動性に優れるため、LED、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトカプラー、CCD、EPROM、フォトセンサーなどの様々な光半導体装置用の封止材料として有用であり、特に、発光時の発熱が著しい高輝度LED素子用封止材料として有用である。ここで高輝度LED素子とは100ルーメン(lm)以上の光束を持つものをいう。
【0048】
上記高輝度LEDとしては、波長350〜550nmに主発光ピークを有する青色乃至白色のLED、及び、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リンの四つの元素から成る化合物半導体を使用し、元素組成を調整することで赤色,オレンジ色,黄色,黄緑色の発色を可能とする4元系LEDが挙げられる。
【0049】
前者の波長350〜550nmに主発光ピークを有する青色乃至白色のLEDの用途としては、携帯型DVDプレーヤーやカーナビなどに使用される液晶パネル用バックライト光源、ラップトップ・パソコンなどに使用される10〜17型の液晶パネル用バックライト光源、自動車のヘッドランプの光源などが挙げられる。
一方、4元系LEDの用途としては、屋外ディスプレイ、自動車のリアランプや車内照明、薄型テレビやパソコンの液晶ディスプレイのバックライト等が挙げられる。
【0050】
本発明の光半導体装置は、例えば充分に脱泡した上記エポキシ樹脂組成物を、例えば、リード線などの電極を取り付けた光半導体に、本発明のエポキシ樹脂組成物でトランスファー成形、注型などのモールド方法によって封止し、硬化する方法や、予め光半導体を回路基板に実装し、それを本発明のエポキシ樹脂組成物で封止し、硬化する方法等が挙げられる。具体的には、光半導体素子をセットした型枠に流し込んだのち、上記温度条件で加熱硬化することにより得ることができる。
【0051】
本発明の光半導体装置は、前記したエポキシ樹脂組成物の用途として列挙した各種の光半導体装置、具体的にはLED、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトカプラー、CCD、EPROM、フォトセンサーなどの受光素子や発光素子等を封止した光半導体装置が挙げられる。これらのなかでもとりわけLED装置、特に高輝度LED装置がとりわけ好ましく、特に波長350〜550nmに主発光ピークを有する青色乃至白色のLED装置、及び、4元系LED装置であることが特に好ましい。
【実施例】
【0052】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り重量基準である。尚、各物性評価は以下の条件にて測定した。
1)ワニス粘度:25℃にてE型粘度計(東機産業(株)製「TV−20形」コーンプレートタイプを使用して測定した。
2)光線透過率:分光光度計「UV−3150」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
3)耐熱劣化性:150℃で72時間加熱後のエポキシ樹脂の硬化物の400nmにおける波長の光線透過率を測定した。
4)耐紫外線性:フェードメーター(スガ試験機(株)製)を使用して照射強度490W/m、ブラックパネル温度63℃で紫外線を1000h照射した後の硬化物の400nmにおける波長の光線透過率を測定した。
5)曲げ強度、曲げ弾性率:JIS6911に準拠した。
6)貯蔵安定性:ワニスを25℃に2週間保管した後に粘度を測定した。
【0053】
実施例1〜3、比較例3及び4
下記の表1又は表2に示す配合に従い、エポキシ樹脂と各種カルボン酸、重合性化合物、ラジカル重合開始剤、硬化促進剤等を、撹拌機を用いて配合してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いてワニス粘度、貯蔵安定性を評価した。
また、このエポキシ樹脂組成物を、厚さ3mmのスペーサー(シリコーンチューブ)をガラス板で挟んだ型の間隙に流し込み、80℃で2時間硬化させ、型から硬化物を取り出し、タックフリー状になっているのを確認した後、更に、160℃に昇温し、160℃に到達した後、該温度で2時間保持し硬化物を得、これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0054】
比較例1及び2
下記表2に示す配合に従い、各成分を配合し、撹拌機を用いて配合してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いてワニス粘度、貯蔵安定性を評価した。
また、このエポキシ樹脂組成物を、実施例1で用いた型の間隙に流し込み、110℃で3時間硬化させ、型から硬化物を取り出し、更に、165℃に昇温し、165℃に到達した後、該温度で2時間保持し硬化物を得、これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
なお、上記表1に示す各成分は、以下の通りである。
脂環式エポキシ樹脂 : (3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 : エポキシ当量188g/eq.のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「EPICLON 850S」、DIC(株)製)
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂 : 水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「EPICLON EXA−7015」エポキシ当量200g/eq.、DIC(株)製)
HO−MS : 3‐[[2‐(メタクリロイルオキシ)エトキシ]カルボニル]プロピオン酸(商品名「ライトエステルHO−MS」、共栄社化学(株)製)
HO−HH : 2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(商品名「ライトエステルHO−HH」、共栄社化学(株)製))
ジシクロペンタニルメタクリレート : 商品名「ファンクリルFA−513M」日立化成工業(株)製
反応性シリコーン1 メタクリル基含有シリコーンオイル(信越化学製、商品名「X−22−2475」、粘度(25℃)5mm/s、比重(25℃)0.93、屈折率(25℃)1.418、官能基当量420g/モル)
反応性シリコーン2 メタクリル基含有シリコーンオイル(信越化学製、商品名「X−22−164A」、粘度(25℃)25mm/s、比重(25℃)0.98、屈折率(25℃)1.415、官能基当量860g/モル)
過酸化物 : 1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン(商品名「パーヘキサHC」日油(株)製))
硬化促進剤 : メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート(商品名「ヒシコーリンPX−4MP」日本化学工業(株)製))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、及びラジカル重合開始剤(D)、を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記反応性シリコーン(C)が、ポリシロキサン構造にアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール系水酸基、シラノール系水酸基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ポリエーテルアルコール基、メルカプト基、及びカルボキシル基から選択される反応性官能基を含むものである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、及び反応性シリコーン(C)の合計100質量部のうち、前記エポキシ樹脂(A)を10〜60質量部、前記メタクリル酸(B)を1〜30質量部、及び反応性シリコーン(C)を20〜80質量部となる割合で含有する請求項1〜3の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
上記エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、及びラジカル重合開始剤(D)に加え、脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)を含有する請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)が、下記構造式(1)
【化1】


(式中、Rは炭素原子数2〜10の脂肪族炭化水素基、Xはエステル結合又はカーボネート結合、Rは炭素原子数2〜10の脂肪族炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を示す。)
で表されるものである請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、及び脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)の合計100質量部のうち、前記エポキシ樹脂(A)を10〜60質量部、前記メタクリル酸(B)を1〜30質量部、反応性シリコーン(C)を15〜70質量部、前記脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)を5〜30質量部となる割合で含有する請求項4又は5記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)、及びラジカル重合開始剤(D)の各成分に加え、脂肪族環状構造含有モノメタクリレート化合物(E)を含有する請求項1〜5の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂(A)、メタクリル酸(B)、反応性シリコーン(C)、脂肪族エステル結合又は脂肪族カーボネート結合を有する酸基含有ラジカル重合性単量体(E)、及びラジカル重合開始剤(D)の合計質量100質量部のうち、前記脂肪族環状構造含有モノメタクリレート化合物(E)を20〜70質量部となる割合で含有する請求項7記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂(A)が、環状脂肪族構造を有するエポキシ樹脂である請求項1〜8の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂(A)が、エポキシ当量150〜1,000g/eq.のビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項1〜8の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項12】
高輝度LED素子封止用材料である請求項8記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜10の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を賦型した後、イン・サイチュー反応により硬化させてなる硬化物。
【請求項14】
請求項1〜10の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を成形機内でイン・サイチュー反応により硬化させることを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項15】
光半導体を請求項1〜10の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物で封止してなることを特徴とする光半導体装置。

【公開番号】特開2010−59317(P2010−59317A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226969(P2008−226969)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】