説明

エポキシ樹脂組成物、それを用いたダイアタッチ方法及び該組成物の硬化物を有する半導体装置

【課題】シリコンウエハー上へ印刷法により数μm〜数十μmの厚さで表面の凹凸を低く抑えて塗布することができ、加熱により容易にBステージ化が可能で、且つ、Bステージ状態で、ダイシングテープの貼付性、及びシリコンウエハーを個片化するときのダイシング性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)軟化点が40〜110℃である室温で固体状のエポキシ樹脂、(B)軟化点が40〜110℃以下である室温で固体状の硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)質量平均粒径が0.05〜5μmである無機フィラー、(E)希釈剤および(F)特定のジメチルシリコーンを含み、成分(A)及び/又は成分(B)がシリコーン変性されているエポキシ樹脂組成物;上記組成物を用いたシリコンチップのダイアタッチ方法;シリコンチップと、基体と、上記組成物の硬化物とを有し、該硬化物を介して該シリコンチップが該基体に接着されている半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップおよび半導体素子を接着するのに好適に用いることのできるエポキシ樹脂組成物に関する。詳細には、薄膜印刷性に優れ、安定なBステージ状態を形成するエポキシ樹脂組成物に関し、更に、それを用いたダイアタッチ方法及び該組成物の硬化物を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性・耐熱性等に優れていることから、種々の用途に使用されている。特に液状エポキシ樹脂は、電機及び電子部品の製造に、広く使用されている。液状エポキシ樹脂又はそれを主成分とする組成物を部品に施与する方法としては、スピンコーティング、印刷、ディッピング等がある。このうち、印刷は、種々の形状の塗膜を、簡易且つ生産性良く形成することができるので、広く使用されている。
【0003】
エポキシ樹脂を含むスクリーン印刷用組成物としては、例えば(A)ポリイミドシリコーン樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤、(D)無機フィラー、(E)有機溶剤を含む接着剤ワニス(特許文献1)が知られている。また、エポキシ樹脂、光重合開始剤、B−ステージ状態及び硬化後の靭性を付与するための熱可塑性エラストマープレポリマー、チクソトロピー性向上のためのフィラー、及び溶剤を含むリードフレーム固定用組成物が知られている(特許文献2)。これらの組成物は、リードフレーム等の狭い領域に施与される。また近年は半導体パッケージの薄型化・小型化が求められており、ダイボンド材もその例外ではなく、10μm以下のものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−60417号公報
【特許文献2】特開平5−226571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記組成物を、より大きな面積、例えば、大口径のシリコンウエハー全面に印刷すると、表面に凹凸が出来、均一な厚みの膜を形成することが難しい。
【0006】
そこで本発明は、シリコンウエハー上へ印刷法により数μm〜数十μmの厚さで表面の凹凸を低く抑えて塗布することができ、加熱により容易にBステージ化が可能で、且つ、Bステージ状態で、ダイシングテープの貼付性、及びシリコンウエハーを個片化するときのダイシング性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意検討した結果、特定の軟化点を有するエポキシ樹脂及び硬化剤、ならびにジメチルシリコーンオイルを含有する樹脂組成物が、印刷後の平坦性、Bステージ状態で、ダイシングテープの貼付性、さらにはシリコンウエハーを個片化するときのダイシング性に優れていることを見出し本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明は第一に、
(A)軟化点が40℃以上110℃以下である室温で固体状のエポキシ樹脂、
(B)軟化点が40℃以上110℃以下である室温で固体状の硬化剤
成分(A)中のエポキシ基1当量に対し、該成分(B)中の、エポキシ基と反応性を有する基が0.8〜1.25当量となる量、
(C)硬化促進剤
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.05〜10質量部、
(D)質量平均粒径が0.05〜5μmである無機フィラー
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して5〜200質量部、
(E)希釈剤
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して5〜400質量部、および
(F)一般式(1)で示されるジメチルシリコーン
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.01〜2質量部
【0009】
【化1】


(上記式中、nは、0〜2000の整数)
を含み、成分(A)及び成分(B)の少なくともいずれかがシリコーン変性されているエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明は第二に、下記工程(i)〜(vi)を含むシリコンチップのダイアタッチ方法を提供する。
(i)上記エポキシ樹脂組成物をシリコンウエハーの片面に塗布し、該エポキシ樹脂組成物からなる接着層を形成させる工程、
(ii)60℃〜200℃で、1分間〜3時間加熱することにより、前記接着層中の前記エポキシ樹脂組成物をBステージ化する工程、
(iii)Bステージ化した前記エポキシ樹脂組成物からなる接着層を介して前記シリコンウエハーをダイシングテープに貼り付ける工程、
(iv)工程(iii)の接着層及びシリコンウエハーを切断して、切断された接着層と、切断されたシリコンウエハーからなるシリコンチップとを含み、該接着層が該シリコンチップの片面に付着している個片を複数個得る工程、
(v)前記個片をダイシングテープからピックアップし、該個片中の前記エポキシ樹脂組成物を介して、基体上に搭載する工程、そして
(vi)前記基体上に搭載された前記個片中の前記エポキシ樹脂組成物を硬化させる工程。
【0011】
本発明は第三に、シリコンチップと、基体と、上記エポキシ樹脂組成物の硬化物とを有し、該硬化物を介して該シリコンチップが該基体に接着されている半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエポキシ樹脂剤組成物は、印刷後の平坦性に優れるため、スクリーン印刷法によりシリコンウエハー上に数μm〜数十μmの厚さで表面の凹凸を低く抑えて塗布することが可能であり、かつ、加熱により容易にBステージ状態を形成することができる。さらには、Bステージ状態で、ダイシングテープの貼付性に優れ、かつ、シリコンウエハーを個片化するときのダイシング性に優れた樹脂組成物である。また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、低弾性である事から耐冷熱サイクル性に優れており、Bステージ状態でダイシング工程を経る方法で使用するダイボンド剤として好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本明細書中「Bステージ状態」とはエポキシ樹脂組成物が一次硬化、半硬化あるいは仮硬化した状態を意味し、「Cステージ状態」とは完全に硬化反応を終了させた状態を意味する。また、「Bステージ化」とはBステージ状態にすることを意味する。さらに、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。加えて、「室温」とは、通常、5〜35℃、特に17〜28℃を意味する。
【0014】
[(A)エポキシ樹脂]
(A)成分のエポキシ樹脂は、室温で固体状であり、軟化点が40℃以上110℃以下、好ましくは45℃以上100℃以下、さらに好ましくは50℃以上90℃以下の樹脂である。これにより、ダイシング時に、ダイシングテープにシリコンウエハーをしっかり固定することができ、チップ割れおよびチップ飛びを防ぐことができる。軟化点が前記下限値未満では、ダイシングテープとシリコンウエハーの密着性が高くなりすぎるため、チップがピックアップ出来ずチップ割れを生じる原因となるため好ましくない。また、前記上限値超では、チップをピックアップした後のダイアタッチ時に該樹脂組成物の粘度が高くなり、基板との接着不良が発生するおそれがある。なお、エポキシ樹脂の軟化点はJIS K 7234規定の環球法で得られた値である。(A)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂は上記軟化点を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えばノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型、フェノールアラルキル型、ジシクロペンタジエン型、ナフタレン型、またはアミノ基含有型のエポキシ樹脂、後述するシリコーン変性エポキシ樹脂、及びこれらの混合物を使用することができる。なかでも、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、またはノボラック型のエポキシ樹脂及びシリコーン変性エポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
シリコーン変性エポキシ樹脂は、アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られる共重合体である。アルケニル基含有エポキシ樹脂としては、下記式(1)〜(3)に示されるものが挙げられる。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
上記式(1)〜(3)において、Rは下記式:
【0021】
【化5】


で表されるグリシジル基であり、Xは水素原子又は臭素原子であり、nは0以上の整数、好ましくは0〜50、より好ましくは1〜20の整数である。mは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1である。ただし、シリコーン変性エポキシ樹脂が室温で固体であるためには、m/(m+n)が好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.02〜0.2を満たす数である。
【0022】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(4)で示される化合物が挙げられる。
a(R2bSiO (4-a-b)/2 (4)
【0023】
上記式(4)において、R2はヒドロキシ基、或いは非置換又は置換の、炭素原子数1〜10の、1価炭化水素基、アルコキシ基もしくはアルケニルオキシ基である。1価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子等で置換したハロゲン置換1価炭化水素基が挙げられる。置換のアルコキシ基としてはハロゲン置換アルコキシ基が挙げられ、置換のアルケニルオキシ基としてはハロゲン置換アルケニルオキシ基が挙げられる。
【0024】
a、bは0.001≦a≦1、1≦b≦3、1<a+b≦4を満足する数であり、好ましくは0.01≦a≦0.1、1.8≦b≦2、1.85≦a+b≦2.1を満足する数である。該オルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子を好ましくは1〜1000個、より好ましくは2〜400個、さらにより好ましくは5〜200個有する。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、式(5)に示される化合物が挙げられる。
【0025】
【化6】


(R2は上述の通りであり、好ましくはメチル基或いはフェニル基である。pは0〜1000の整数、好ましくは3〜400の整数であり、qは0〜20の整数、好ましくは0〜5の整数であり、1≦p+q≦1000、好ましくは2≦p+q≦400、さらに好ましくは5≦p+q≦200を満たす整数である。)
【0026】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、さらに具体的には下記のものを挙げることができる。
【0027】
【化7】

【0028】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子量が100〜100,000であることが好ましく、より好ましくは500〜20000である。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が前記範囲内である場合、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンと反応させるアルケニル基含有エポキシ樹脂の構造或いは分子量に応じて、オルガノハイドロジェンポリシロキサンがマトリクスに均一に分散した均一構造、或いはオルガノハイドロジェンポリシロキサンがマトリクスに微細な層分離を形成する海島構造が出現する。
【0029】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が比較的小さい場合、特に100〜10,000である場合は均一構造が形成され、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が比較的大きい場合、特に10,000〜100,000である場合は海島構造が形成される。均一構造と海島構造の何れかは用途に応じて選択されればよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が100未満の時、得られる硬化物は剛直で脆くなる。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が100,000より大きいと、海島構造が大きくなり、得られる硬化物に局所的な応力が発生するため好ましくない。
【0030】
アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンを反応させる方法は公知の方法を用いることができ、例えば、白金系触媒の存在下で、アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンを付加反応させることで製造することができる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、アルケニル基含有エポキシ樹脂が有するアルケニル基1モルに対し、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するSiH基が0.1〜1モルとなる量で共重合させることが好ましい。
【0031】
[(B)硬化剤]
(B)成分の硬化剤は、室温で固体状であり、軟化点が40℃以上110℃以下、好ましくは45℃以上100℃以下、さらに好ましくは50℃以上90℃以下である。これにより、ダイシング時に、ダイシングテープにシリコンウエハーをしっかり固定することができ、チップ割れおよびチップ飛びを防ぐことができる。軟化点が前記下限値未満では、ダイシングテープとシリコンウエハーの密着性が高くなりすぎるため、チップがピックアップ出来ずチップ割れを生じる原因となるため好ましくない。また、前記上限値超では、チップをピックアップした後のダイアタッチ時に該樹脂組成物の粘度が高くなり、基板との接着不良が発生するおそれがある。なお、硬化剤の軟化点はJIS K 7234規定の環球法で得られた値である。(B)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0032】
硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている公知のものを使用することができ、上記軟化点を有する硬化剤であれば特に制限されないが、例えばフェノール樹脂(即ち、未変性のフェノール樹脂)、シリコーン変性フェノール樹脂、酸無水物、及びアミン類が挙げられる。中でも、フェノール樹脂またはシリコーン変性フェノール樹脂を良好に使用することができる。フェノール樹脂としては、アラルキル型、ノボラック型、ビスフェノール型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、ナフタレン型、シクロペンタジエン型、フェノールアラルキル型等が挙げられ、これらを単独、あるいは2種類以上を混合して用いても良い。なかでもアラルキル型、ノボラック型、ビスフェノール型が好ましい。
【0033】
シリコーン変性フェノール樹脂は、上記式(4)で示したオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、下記に示すアルケニル基含有フェノール樹脂とを反応させて得られる共重合体である。該反応は公知の方法を用いて行えばよく、例えば、白金系触媒の存在下で、アルケニル基含有フェノール樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させることで製造することができる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、アルケニル基含有フェノール樹脂が有するアルケニル基1モルに対し、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するSiH基が0.1〜1モルとなる量で共重合させることが好ましい。
【0034】
アルケニル基含有フェノール樹脂としては、下記に示すものが挙げられる。
【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】


(但し、X、n、mは上述の通り。)
【0038】
成分(B)は、成分(A)中のエポキシ基1当量に対し、成分(B)中の、エポキシ基と反応性を有する基が、通常、0.8〜1.25当量となる量で配合され、特に0.9〜1.1当量となる量であることがよい。成分(B)の配合量が当該範囲外では、樹脂組成物の一部が未硬化となり、硬化物の性能および半導体装置の性能に支障をきたす恐れがある。
【0039】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)の少なくともいずれか一方が、あるいは両方がシリコーン変性されているものであり、特には、少なくとも成分(A)がシリコーン変性されているのが好ましい。成分(B)がシリコーン変性されていない場合、成分(A)がシリコーン変性エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂組成物がシリコーン鎖を含有することにより、低弾性であり耐熱サイクル性に優れた硬化物を与えることができる。
【0040】
[(C)硬化促進剤]
(C)硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の反応を促進するものであれば特に制限されない。(C)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。(C)成分としては、例えば、有機リン、イミダゾール、3級アミン等の塩基性有機化合物を使用することができる。有機リンとしては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−トルイル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート誘導体、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート誘導体等が挙げられる。イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。3級アミンとしては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。
【0041】
中でも、下記式(6)で表わされるテトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート誘導体、又は下記式(7)で表わされるメチロールイミダゾール誘導体が好ましい。これらの硬化促進剤は、(B)硬化剤と組合せて選択するのがよい。
【0042】
【化11】


(R〜R14は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の一価炭化水素基、或いはハロゲン原子である。)
【0043】
【化12】


(R15は、メチル基またはメチロール基であり、R16は、炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である。)
【0044】
(C)硬化促進剤の添加量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との合計の100質量部に対して、0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは0.2〜5質量部である。硬化促進剤が前記下限値未満である場合は、エポキシ樹脂組成物が硬化不十分になる恐れがあり、また前記上限値超ではエポキシ樹脂組成物の保存性、或いはBステージ状態の安定性に支障をきたす恐れがある。
【0045】
[(D)質量平均粒径が0.05〜5μmである無機フィラー]
(D)成分は、質量平均粒径が0.05〜5μmである無機フィラーであり、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。(D)成分の無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカチタニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート、タルク、マイカ等を挙げることができ、これらは1種単独あるいは2種類以上組み合せて使用することができる。特に、シリカ、アルミナ、タルクを1種単独あるいは2種類以上組み合せて使用することが好ましい。
【0046】
無機フィラーは、質量平均粒径が、通常、0.05〜5μmであり、特に0.5〜3μmであることが望ましい。質量平均粒径はレーザー回折法で、例えば、累積質量平均径D50(又はメジアン径)等として測定することができる。質量平均粒径が前記下限値未満であると、樹脂組成物の粘度が上昇し、印刷性が悪化する。また、前記上限値を超えると、Bステージ状態での表面粗さが大きくなるためダイシングフィルムとの密着性が悪化し、ダイシング時にチップ飛びまたはチップ欠けが生じるおそれがあるため好ましくない。
【0047】
該無機フィラーの最大粒径は、ウエハー上に塗布されたダイボンド剤の厚み(通常5〜50μm程度)の50%以下であることが望ましく、特に30%以下であることが望ましい。最大粒径が上記範囲内であれば、(D)成分の無機フィラーがチップ、基板、配線等にダメージを与えることを効果的に防ぐことができ、無機フィラーとそれ以外の部分との境界における局所的なストレスが発生しにくく、半導体装置の機能を維持しやすい。
【0048】
無機フィラーは、予めシラン系カップリング剤で表面処理したものを使用することが好ましい。より好ましくは、(A)成分のエポキシ樹脂とカップリング剤で表面処理した充填剤とを予め減圧・混練処理を行うことが望ましい。これにより充填剤表面とエポキシ樹脂の界面がよく濡れた状態とすることができ、耐湿信頼性が格段に向上する。
【0049】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。これらの中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。
【0050】
(D)成分の無機フィラーの添加量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との合計の100質量部に対して、5〜200質量部、好ましくは7.5〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部である。該添加量が前記下限値未満である場合は、硬化後の樹脂強度が弱くなり、後述の耐湿耐半田試験あるいは温度サイクル試験で不良発生の恐れがあり、また前記上限値超ではダイアタッチ時の粘度が高くなり、基板へチップを貼り付けることが困難になる恐れがある。
【0051】
[(E)希釈剤]
希釈剤は樹脂組成物の粘度を調整する目的で添加する。(E)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0052】
希釈剤の種類は特に限定されるものではないが、沸点が150℃以上の溶剤(特には、有機溶剤)であることが望ましく、成分(A)、成分(B)、成分(F)の混合物を溶解し、成分(C)、成分(D)を溶解しない沸点が150℃以上の溶剤であることがより望ましい。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート、カルビトールアセテート等のグリコールエステル等が挙げられる。樹脂組成物の粘度を印刷工程で作業性の良い粘度にする為には、希釈剤がある程度高沸点、例えば180℃〜260℃であることが望ましい。中でも、イソホロン、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6ヘキサンジオールジアセテートが好適に使用できる。
【0053】
希釈剤の配合量は特に制限されないが、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の合計100質量部に対して、通常、5〜400質量部であり、好ましくは30〜100質量部である。希釈剤の配合量が400質量部より多いと樹脂組成物が低粘度になりすぎるため、(D)無機フィラーが長期保存中に沈降する恐れがあり好ましくない。一方、希釈剤の配合量が5質量部より少ないと樹脂組成物の粘度が高くなり、シリコンウエハ上への塗布が困難になる恐れがある。
【0054】
[(F)ジメチルシリコーン]
(F)成分のジメチルシリコーン(即ち、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖の直鎖状ジメチルポリシロキサン)は、表面張力が低く、スクリーン印刷後のメッシュ跡を速やかにレベリングさせる効果と、印刷後のボイドを消泡する効果がある。(F)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0055】
該ジメチルシリコーンの配合量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の合計100質量部に対して、通常、0.01〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。ジメチルシリコーン配合量が2質量部より多いと(A)成分と(B)成分との相溶性が悪いため分離してしまう可能性がある。ジメチルシリコーン配合量が0.01質量部より少ないと十分なレベリング効果と消泡効果が得られない恐れがある。
【0056】
該ジメチルシリコーンの25℃での粘度は好ましくは1mPa・s〜1000000mPa・s、より好ましくは10mPa・s〜100000mPa・sである。該粘度が上記範囲内であれば、沸点が低くなりすぎないため、製造過程で揮発しにくく、また、分散性が悪くなりにくく十分なレベリング効果と消泡効果が得やすい。一般式(1)中のnはこれらの粘度を与える値であることが好ましい。
【0057】
[その他の成分]
本発明の組成物には、上述した成分の他に用途に応じて、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の絶縁性充填材、シランカップリング剤、難燃剤、イオントラップ剤、ワックス、着色剤、及び接着助剤等のその他の成分を、本発明の目的を阻害しない量で添加することができる。その他の成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0058】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。シランカップリング剤の配合量は、(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜3質量部である。
【0059】
[エポキシ樹脂組成物]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上述した各成分を公知の方法、例えば、ミキサー、ロールミル等を用いて混合することによって製造することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、5μm〜200μmのいずれか1点の厚さにおいて、60℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃で1分間〜3時間、好ましくは10分間〜1時間加熱することによりBステージ化することが可能な組成物であることが好ましい。また、Bステージ状態で本発明のエポキシ樹脂組成物の表面の算術平均粗さは、好ましくは2μm以下(0〜2μm)、より好ましくは1μm以下である。なお、算術平均粗さはJIS B 0601に準じ測定することができる。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度は、Bステージ状態でE型粘度計により120℃で測定した値が1〜1000Pa・s、特には5〜200Pa・sであるのがよい。粘度が上記上限値超ではダイアッタチ時にエポキシ樹脂組成物と被着体との濡れ性が悪くなり、ボイドおよび接着不良の原因となるため好ましくない。上記下限値未満ではダイアッタチ時にSiチップが完全に固定されず、流れる可能性があり好ましくない。なお、E型粘度計での粘度測定はJIS Z−8803に準じて行われる。
【0061】
[シリコンチップのダイアタッチ方法]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記工程(i)〜(vi)を含むシリコンチップのダイアタッチ方法に用いることができる。
【0062】
工程(i)では、スクリーンマスクを用いた公知の方法に従い、印刷法で、エポキシ樹脂組成物をシリコンウエハーの片面に塗布する。エポキシ樹脂組成物が塗布された面は、下記工程(v)で、基体、例えば、基板もしくは他のチップ等に接着する面となる。
【0063】
工程(ii)では、例えば、開閉式または連続式のオーブンで、60℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃で、1分間〜3時間、好ましくは10分間〜1時間加熱することにより、エポキシ樹脂組成物をBステージ状態にする。
【0064】
工程(iii)は公知の方法に従って行えばよい。
【0065】
工程(iv)では、例えば、ダイヤモンドブレードを高速回転させることでシリコンウエハーを切削するダイシング方法、あるいはレーザーによるレーザーダイシング方法等により、シリコンウエハー及びエポキシ樹脂組成物からなる接着層を、互いが付着したままで、複数の個片に切断する。何れの方法を使用するかは用途に応じて適宜選択すればよい。
【0066】
工程(v)では、例えば、ダイボンダーを使用して個片を基板もしくは他のチップ等の基体上に搭載する。個片を搭載する条件は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよい。個片の搭載条件としては、個片搭載直前のプレヒートの温度および時間、ならびに、個片搭載時の個片及び前記基体の温度、時間及び圧力が挙げられる。プレヒートは個片に塗布されたエポキシ樹脂組成物と個片の密着性を向上する為に行う。プレヒートは50℃〜150℃、2秒〜10分で行うことが望ましい。個片の搭載条件は、個片の温度が25℃〜250℃、前記基体の温度が25℃〜200℃で、0.1秒〜10秒、0.01MPa〜10MPaで行うことが望ましい。
【0067】
工程(vi)では、例えば、開閉式または連続式のオーブンを使用して、エポキシ樹脂組成物を硬化させる。硬化条件は、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは120〜180℃で、好ましくは1〜8時間、より好ましくは1.5〜3時間である。なお、エポキシ樹脂組成物の硬化は半導体装置の樹脂封止工程において同時に行ってもよい。
【0068】
[半導体装置]
本発明の半導体装置におけるシリコンチップとしては、例えば、上記工程(iv)においてシリコンウエハーを切断して得られたシリコンチップが挙げられる。また、本発明の半導体装置における基体としては、例えば、上記工程(v)において個片が搭載される、基板もしくは他のチップ等の基体が挙げられる。更に、本発明の半導体装置における硬化物としては、例えば、上記工程(vi)においてエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化物が挙げられる。本発明の半導体装置は、例えば、上記工程(i)〜(vi)を含むシリコンチップのダイアタッチ方法を行い、更に、樹脂封止工程等を経ることにより得ることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
[合成例1]シリコーン変性エポキシ樹脂の合成
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと還流管を取り付けたフラスコに、下記式(8)で示されるエポキシ樹脂(重量平均分子量(ポリスチレン換算)2500)149gとトルエン298gを入れ、130℃、2時間で共沸脱水を行った後、100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)1gを滴下した後、直ちに下記式(9)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン68g(0.023mol)とトルエン136gの混合物を30分間かけて滴下し、100℃で6時間熟成した。得られた反応混合物よりトルエンを減圧除去し、下記式(10)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を得た。該化合物の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は20000、オルガノポリシロキサン骨格含有量は31.2質量%であった。
【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
【化15】

(10)
【0074】
[実施例1〜3、比較例1〜5]
以下に示す各成分を、表1に示す配合量でプラネタリーミキサーを用いて混合し、3本ロールミルを通過させた後、25℃において再度プラネタリーミキサーで混合して、実施例1〜3及び比較例1〜5のエポキシ樹脂組成物を製造した。
【0075】
<(A)エポキシ樹脂>
(1)エポキシ樹脂(a1):合成例1で製造したシリコーン変性エポキシ樹脂(エポキシ当量291、軟化点70℃)
(2)エポキシ樹脂(a2):o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1020−55(日本化薬社製)、エポキシ当量200、軟化点57℃)
(3)エポキシ樹脂(a3):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE310S(日本化薬社製)、エポキシ当量180、室温(25℃)で液状(粘度15Pa・s))
<(B)硬化剤>
(1)硬化剤(b1):アラルキル型フェノール樹脂(MEHC−7800H(明和化成製)、フェノール当量175、軟化点85℃)
(2)硬化剤(b2):ジアリールビスフェノールA(BPA−CA(小西化学社製)、フェノール当量154、室温(25℃)で液状(粘度16Pa・s))
<(C)硬化促進剤>
2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成製 2P4MHZ-PW)
<(D)無機フィラー>
シリカ(SE-2030、球状、質量平均粒径0.6μm、アドマテックス社製)
<(E)希釈剤>
カルビトールアセテート、沸点は217.4℃
<(F)ジメチルシリコーン>
KF−96-100cs(信越化学工業(株)製 分子量6000 25℃での粘度97mPa・s)
<その他の成分:シランカップリング剤>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM403、信越化学工業製)
【0076】
各エポキシ樹脂組成物について、後述する評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0077】
<粘度>
各組成物について、JIS Z−8803に準じ、E型粘度計(HBDV−III、ブルックフィールド社製)を用いて、測定温度25℃、ずり速度2.00(sec−1)で、回転開始後2分における粘度を測定した。
【0078】
<120℃におけるBステージ状態での粘度>
120℃/15分の条件下でBステージ化した各エポキシ樹脂組成物について上記条件(ただし、測定温度は120度に変更)で粘度を測定した。
【0079】
<スクリーン印刷後のボイド残り>
各組成物を用いて、シリコンウエハー(6インチ径、0.2mm厚)の片面に開口部140mmφ、50μm厚、#325のスクリーンマスクにより、印圧10psi、ウレタンスキージ速度25mm/sでスクリーン印刷を行い、ウエハー全面に薄くエポキシ樹脂組成物を塗布し、塗布直後と25℃/50%RHの環境下で30分間静置した後のボイド数を下記の様に評価した。
○・・・ボイドが10個以下
△・・・ボイドが11〜50個
×・・・ボイドが51個以上
【0080】
<Bステージ化後の表面の算術平均粗さ>
上記でシリコンウエハー上に塗布したエポキシ樹脂組成物を120℃/15分間/窒素通気の条件下でBステージ化し、エポキシ樹脂組成物が塗布されたシリコンウエハーを得た。該Bステージ状態のエポキシ樹脂組成物の表面の算術平均粗さをJIS B 0601に準じレーザー顕微鏡(型番、VK−8510 株式会社キーエンス社製)で測定した。
【0081】
<ダイシング性>
上記シリコンウエハーを、前記Bステージ化後のエポキシ樹脂組成物を介して、ダイシングテープ(T−80MW、トーヨーアドテック社製)に貼り付け、ダイシング速度50mm/s で5mm×5mmに個片化して、ダイシング性を評価した。チップ飛びおよびチップ割れのいずれもが発生しなかった場合を良(○)、少なくとも一方が一個以上の個片について発生した場合を不良(×)と評価した。
【0082】
<ダイアタッチ性>
前記切断されたシリコンウエハー及びエポキシ組成物よりなる個片をダイシングテープからピックアップし、エポキシ組成物を介して表面にソルダーレジスト(30ミクロン厚)を塗布したBT基板(200ミクロン厚、35mm×35mm)上にダイアタッチした。ダイアタッチ時の条件は2MPa/0.5秒/チップ及び基板の温度150℃である。その後、BT基板上のエポキシ樹脂組成物を125℃/1時間、さらに165℃/2時間で硬化した。得られたデバイスについて、超音波索傷装置(型番、Quantam350 SONIX社製)を用いてボイド及び剥離の有無を観察した。剥離およびボイドの少なくとも一方が認められた領域が、チップ面積の5%以上のものは不良(×)、5%未満であるものは良(○)とした。
【0083】
<ヤング率>
硬化させた20mm×5mm×200μmの試験片に関して動的粘弾性率を測定した。測定には動的粘弾性測定装置を用い、引張りモード、チャック間距離15mm、測定周波数30Hzの条件で、25℃におけるヤング率を測定した。
【0084】
<耐湿耐半田試験>
前記でダイアタッチ性評価のために作成されたデバイスを、さらにKMC−2520(信越化学工業製エポキシ封止材)で封止した。成型条件は金型温度175℃、注入時間10秒、注入圧70KPa、成型時間90秒、後硬化条件は180℃/2時間であり、成型後の試験片全体は1000ミクロン厚、35mm×35mmである。
得られた試験片を、85℃/85%RHの恒温恒湿器に168時間放置して、更に最高温度が260℃であるIRリフローオーブン中を3回通過させた後に、超音波索傷装置で、チップ面積の20%以上の領域での剥離やSiチップのクラック等の不良の有無を観測し、不良が見られる試験片数/総試験片数(20個)を数えた。
【0085】
<温度サイクル試験>
上記耐湿耐半田試験を行なった後に、クラック等の不良が無かった試験片を温度サイクル試験機に投入した。ここでの試験条件は−55℃/30分+(−55℃→125℃)/5分+125℃/30分+(125℃→−55℃)/5分を1サイクルとし、1000サイクルを施した後に、超音波索傷装置で剥離、クラック等の不良の有無を観測し、不良が見られる試験片数/総試験片数を数えた。
【0086】
【表1】

【0087】
表1より、本願発明の樹脂組成物はスクリーン印刷性に優れ、Bステージ化後の平坦性に優れることから、ダイシングテープの貼付後のダイシング性、ダイアタッチ性に優れ、且、Cステージ状態で低弾性であり耐湿耐半田性および耐温度サイクル性に優れた硬化物を与える。
【0088】
ジメチルシリコーンを減量した比較例1および2の組成物はスクリーン印刷後の消泡性が悪く、Bステージ化後の表面平坦性が悪いことから、ダイアタッチ時にボイドを巻き込み、また、ダイシングテープを貼り付けたときに空間ができ、ダイシング時にチップ飛びが発生する。ダイアタッチ時にボイドを巻き込むと、耐湿耐半田試験時および温度サイクル試験時にボイド部の内圧が上昇し剥離およびチップクラックの原因となる。
【0089】
シリコーン変性樹脂を含有しない比較例3の組成物は硬化物のヤング率が高くなり、耐湿耐半田試験時および温度サイクル試験時に剥離およびクラック発生の原因となる。
【0090】
液状の硬化剤を用いた比較例4の組成物はBステージ化後にタック性が残り、ダイシング時に切削の圧力でダイが動き、また、飛びが発生する。また、粘着性があるため、ダイシングテープよりピックアップ不可能であった。液状のエポキシ樹脂と液状の硬化剤を使用した比較例5の組成物はBステージ化しないため、ダイシング性およびダイアタッチ性の評価が不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ウエハー上へのスクリーン印刷が可能で、印刷後は速やかに消泡し、スクリーンメッシュ跡も速やかにレベリングし、さらにはBステージ化が可能であることからダイシングテープの貼付性に優れ、また、シリコンウエハーを個片化するときのダイシング性に優れているため、小型化、高密度化および構造の複雑化が要求される半導体装置の製造に使用するエポキシ樹脂接着剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)軟化点が40℃以上110℃以下である室温で固体状のエポキシ樹脂、
(B)軟化点が40℃以上110℃以下である室温で固体状の硬化剤
成分(A)中のエポキシ基1当量に対し、該成分(B)中の、エポキシ基と反応性を有する基が0.8〜1.25当量となる量、
(C)硬化促進剤
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.05〜10質量部、
(D)質量平均粒径が0.05〜5μmである無機フィラー
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して5〜200質量部、
(E)希釈剤
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して5〜400質量部、および
(F)一般式(1)で示されるジメチルシリコーン
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.01〜2質量部
【化1】


(上記式中、nは、0〜2000の整数)
を含み、成分(A)及び成分(B)の少なくともいずれかがシリコーン変性されているエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(1)5μm〜200μmのいずれか1点の厚さにおいて、60℃〜200℃で1分間〜3時間加熱することによりBステージ化することが可能であり、
(2)Bステージ状態でエポキシ樹脂組成物の表面の算術平均粗さが2μm以下である
請求項1に係るエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(E)希釈剤が、沸点が150℃以上の溶剤である請求項1または2に係るエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
E型粘度計により120℃において測定される、Bステージ状態での粘度が1〜1000Pa・sである、請求項1〜3のいずれか1項に係るエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
下記工程(i)〜(vi)を含むシリコンチップのダイアタッチ方法
(i)請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物をシリコンウエハーの片面に塗布し、該エポキシ樹脂組成物からなる接着層を形成させる工程、
(ii)60℃〜200℃で、1分間〜3時間加熱することにより、前記接着層中の前記エポキシ樹脂組成物をBステージ化する工程、
(iii)Bステージ化した前記エポキシ樹脂組成物からなる接着層を介して前記シリコンウエハーをダイシングテープに貼り付ける工程、
(iv)工程(iii)の接着層及びシリコンウエハーを切断して、切断された接着層と、切断されたシリコンウエハーからなるシリコンチップとを含み、該接着層が該シリコンチップの片面に付着している個片を複数個得る工程、
(v)前記個片をダイシングテープからピックアップし、該個片中の前記エポキシ樹脂組成物を介して、基体上に搭載する工程、そして
(vi)前記基体上に搭載された前記個片中の前記エポキシ樹脂組成物を硬化させる工程。
【請求項6】
シリコンチップと、基体と、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物とを有し、該硬化物を介して該シリコンチップが該基体に接着されている半導体装置。

【公開番号】特開2012−158631(P2012−158631A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17398(P2011−17398)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】