説明

オンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子

【課題】
半導体メモリにおいて、製造条件、電圧、温度の変動に関係なく、安定した有効ターミネーション抵抗値及びプルアップ/プルダウン経路抵抗値との間の不整合を安定化できるオンダイターミネーション回路を提供する。
【解決手段】
EMRSの設定値を復号化し復号出力信号を出力する復号化手段と、ODT出力信号を出力する出力ノードに並列接続され異なるターミネーション抵抗値を有する複数の出力駆動部を含むODT出力駆動手段と、復号化手段の復号出力信号に応答して前記複数の出力駆動部をターンオン/ターンオフさせるための複数の制御信号を生成する制御信号生成手段とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体設計技術に関し、より詳しくは、製造条件、電圧、温度の変動に関係なく、所望のターミネーション抵抗値を得ることのできるように改良したオンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU、メモリ、及びゲートアレイなどのような集積回路チップで構成される様々な半導体素子(デバイス)は、PC、サーバ、またはワークステーションのような様々な電気製品内に採用さられている。大部分の場合、それら半導体素子は、外部から伝送される各種信号を入力パッドを介して受信するための受信回路と、内部の信号を出力パッドを介して外部に提供するための出力回路とを備えている。
【0003】
一方、電気製品の動作スピードが高速化するに従って、半導体装置の間にインターフェスされる信号のスイング幅は、次第に狭くなってきている。その理由は、信号伝送に掛かる遅延時間を最小化するためである。しかし、信号のスイング幅が狭まるほど、外部ノイズによる影響は大きくなり、インターフェス端でインピーダンスミスマッチング(インピーダンス不整合)による信号の反射も大きくなる。そのようなインピーダンスミスマッチングは、外部ノイズや電源電圧の変動、動作温度の変化、製造工程における工程条件のばらつきなどが原因で発生する。インピーダンスミスマッチングがあると、データの高速伝送を難しくし、半導体装置のデータ出力端から出力される出力データを歪曲させたりする。したがって、受信側の半導体素子が前記歪曲された出力信号を入力端で受信する場合、セットアップ/ホールドフェイル(setup/hold failure)または入力レベルの判断ミスなどの問題が頻繁に起こる可能性がある。
【0004】
したがって、動作スピードの高速化が要求される受信側の半導体素子は、オンチップターミネーション(on-chip termination)またはオンダイターミネーション(on-die teremination)と呼ばれるインピーダンスマッチング回路を集積回路チップ内のパッド付近に採用する場合が多い。一般的にオンダイターミネーションスキームにおいて、送信側では出力回路によるソースターミネーション(source termination)が行なわれ、受信側では入力パッドに接続された受信回路に対して並列に接続されたターミネーション回路により並列ターミネーションが行なわれる。
【0005】
図1は、従来の技術に係る半導体メモリ素子のオンダイターミネーション回路のブロック構成図である。
【0006】
図1に示されているように、従来の技術に係るオンダイターミネーション回路は、復号化部10、制御信号生成部20及びOCT出力駆動部30で構成されている。復号化部10は、EMRS(extended mode register sets)(拡張モードレジスタセット)の設定値を復号化して、復号出力信号S0、S1、S2を出力する。制御信号生成部20は、復号化部10の復号出力信号S0、S1、S2に応答して、出力駆動部32、34、36をターンオン/ターンオフさせるためのプルアップ制御信号ODT_PU<1>〜<3>、プルダウン制御信号ODT_PD<1>〜<3>を生成する。ODT出力駆動部30は、それら制御信号ODT_PU<1>〜<3>、ODT_PD<1>〜<3>に応答して、ターミネーション抵抗値(終端インピーダンス)を調節する。ターミネーション抵抗値を調節するために、ODT出力駆動部30は、出力ノードN1に並列接続された同じ抵抗値(インピーダンス値)を有する複数の出力駆動部32、34、36を含んでいる。
【0007】
ここで、ODT出力駆動部30内に設けられた第1ないし第3の出力駆動部32、34、36は、それぞれ、一つのプルアップ駆動部32A、34A、36Aと一つのプルダウン駆動部32B、34B、36Bとを有する。プルアップ駆動部32A、34A、36Aは、一つのタイプのMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタまたはNMOSトランジスタ)だけを備え、プルアップ制御信号ODT_PU<1>〜<3>のそれぞれに応答して出力ノードN1をプルアップ駆動する。同様に、プルダウン駆動部32B、34B、36Bは、一つのタイプのMOSトランジスタだけを備え、プルダウン制御信号ODT_PD<1>〜<3>のそれぞれに応答して出力ノードN1をプルダウン駆動する。
【0008】
ここに、第1ないし第3出力駆動部32、34、36は、各同じ回路構造を有するので、第1出力駆動部32について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図2は、図1の第1出力駆動部32の内部回路図である。
【0010】
図2に示されているように、第1出力駆動部32内の第1プルアップ駆動部32Aは、複数個のPMOSトランジスタと抵抗とを有する。図2に示されているように、第1プルアップ駆動部32A内に設けられた第1ないし第4のPMOSトランジスタPM1、PM2、PM3、PM4は、第1プルアップ制御信号ODT_PU<1>をゲート入力とし、電源電圧VDDQに自分のソース端が接続されており、プルアップ抵抗R1は、第1ないし第4PMOSトランジスタPM1、PM2、PM3、PM4の共通接続されたドレイン端と出力ノードN1との間に配置されている。
【0011】
そして、第1プルダウン駆動部32Bは、複数個のNMOSトランジスタと抵抗とを有し、第1プルダウン制御信号ODT_PD<1>をゲート入力とし、電源電圧VSSQに自分のソース端が接続された第1ないし第4のNMOSトランジスタNM1、NM2、NM3、NM4と、第1ないし第4のNMOSトランジスタNM1、NM2、NM3、NM4の共通接続されたドレイン端と出力ノードN1との間に配置されたプルダウン抵抗R2とを有している。
【0012】
上述したように、ODT出力駆動部30が含む出力駆動部32、34、36は、出力ノードN1が全て共通接続されている。すなわち、各出力駆動部32、34、36が出力ノードN1に並列接続された形態を有する。
【0013】
したがって、制御信号ODT_PU<1>〜<3>、ODT_PD<1>〜<3>によってターンオンされる出力駆動部の数が多くなるほど、並列接続される抵抗数が増加するようになるので、ターミネーション抵抗値が小さくなり、反対にターンオンされた出力駆動部の数が少なくなるほど、ターミネーション抵抗値は大きくなる。
【0014】
ユーザは、ERMS設定を通してターミネーション抵抗値を50Ω、75Ω、150Ω のうち何れかに設定できるが、このことについて具体的に出力駆動部32、34、36のターンオン抵抗値を考慮しながら、以下に説明する。
【0015】
仮に、出力駆動部32、34、36のターンオン抵抗値がそれぞれ150Ωであれば、ODT出力駆動部30が全てターンオンされる場合には、150Ωの抵抗3個が並列接続されたものと同じであるので、ターミネーション抵抗値は50Ωになる。また、出力駆動部2個がターンオンされる場合には、150Ωの抵抗2個が並列接続されることになるので、ターミネーション抵抗値は75Ωになり、1個だけターンオンされる場合には、150Ωになる。
【0016】
図3は、図1の制御信号生成部20の内部回路図であって、制御信号生成部20は、復号化部10の各出力信号に対応する制御信号を生成するための第1ないし第3制御信号生成部22、24、26を含む。第1ないし第3制御信号生成部22、24、26は、同じ回路構成を有するので、第1制御信号生成部22について説明する。
【0017】
図3に示されているように、第1制御信号生成部22は、復号化部10の出力信号S0を反転させるためのインバータI1と、インバータI1の出力信号をゲート入力とし、電源電圧VDDQと第1プルアップ制御信号ODT_PU<1>を出力する出力ノードとの間にソースドレイン経路を有するPMOSトランジスタPM5と、インバータI1の出力信号をゲート入力とし、該出力ノードと電源電圧VSSQとの間にドレインソース経路を有するNMOSトランジスタNM5と、復号化部10の出力信号SOをゲート入力とし、電源電圧VDDQと第1プルダウン制御信号ODT_PD<1>を出力する出力ノードとの間にソースドレイン経路を有するPMOSトランジスタPM6と、信号SOをゲート入力とし、該出力ノードと電源電圧VSSQとの間にドレインソース経路を有するNMOSトランジスタNM6とを含んで構成されている。
【0018】
下記の[表1]は、JEDEC仕様に規定されたEMRS値及びターミネーション抵抗値を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
上記[表1]は、ユーザによるEMRS値の入力によって半導体メモリ素子のターミネーション抵抗が設定される過程を説明するものである。
【0021】
まず、EMRSのA6及びA2の両者が論理レベル「L」を呈し非アクティブレベルにある場合、復号化部10は、EMRSの設定値によって、第1復号出力信号S0、第2復号出力信号S1、第3復号出力信号S2を全て論理レベル「H」にし、非アクティブレベルとする。したがって、制御信号生成部20は、プルアップ及びプルダウン制御信号ODT_PU<1>〜<3>、ODT_PD<1>〜<3>をそれぞれ論理レベル「H」と「L」に非アクティブにして、第1ないし第3出力駆動部32、34、36が全てターンオフされて、ターミネーション抵抗値が∞Ωになるようにする。なお、ここの説明では、A6、A2は「H」がアクティブレベルであり、S0、S1、S2は「L」がアクティブレベルであり、ODT_PU<1>〜<3>は「L」がアクティブレベルであり、ODT_PD<1>〜<3>は「H」がアクティブレベルであるとして、説明しているが、設計方針により、論理回路の「H」レベルと「L」レベルのいずれをアクティブレベルとして使うかは、使用するMOSトランジスタのタイプに応じて任意に決めることができる。
【0022】
また、EMRSのA6及びA2が、それぞれ論理レベル「L」と「H」を呈する場合、復号化部10は、出力信号S0及びS1を論理レベル「L」のアクティブレベルにする。(なお、従来技術における復号化部10の具体的な内部回路構成は、図示を省略したが、上記に説明した論理演算動作をする論理回路構成になっているものと、理解されたい。)制御信号生成部20は、出力信号S0及びS1に応答して、該当のプルアップ制御信号ODT_PU<1>、<2>及びプルダウン制御信号ODT_PD<1>、<2>をアクティブにするので、第1及び第2出力駆動部32、34がターンオンされて、ターミネーション抵抗値が75Ω になる。
【0023】
また、EMRSのA6及びA2が、それぞれ論理レベル「H」と「L」を呈する場合、復号化部10は、出力信号S1を論理レベル「L」のアクティブレベルにする。したがって、制御信号生成部20は、第2プルアップ制御信号ODT_PU<2>及び第2プルダウン制御信号ODT_PD<2>をアクティブにして、第2出力駆動部34がターンオンされて、ターミネーション抵抗値が150Ω になる。
【0024】
次いで、EMRSのA6及びA2の両者が論理レベル「H」を呈する場合、復号化部10は、出力信号S0、S1、S2の全てをアクティブレベルにするため、制御信号生成部20が全てのプルアップ制御信号ODT_PU<1>〜<3>及びプルダウン制御信号ODT_PD<1>〜<3>をアクティブレベルにする。したがって、第1ないし第3出力駆動部32、34、36の全てがターンオンされて、ターミネーション抵抗値が50Ωになる。
【0025】
上述のように、ユーザは、EMRS設定値のA2及びA6の設定組合せにより、ターミネーション抵抗値をそれぞれ150Ω、75Ω、50Ωに設定することができる。
【0026】
一方、JEDECスペックでは、このような有効ターミネーション抵抗値の誤差範囲だけでなく、PMOSトランジスタとプルアップ抵抗で構成されたプルアップ経路抵抗値と、NMOSトランジスタとプルダウン抵抗で構成されたプルダウン経路抵抗値との間の不一致を示すRtt不整合に対しても規定している。
【0027】
ところが、従来の技術に係るオンダイターミネーション回路内の出力駆動部は、出力ノードを駆動するための各プルアップ駆動部及びプルダウン駆動部を一つのタイプのMOSトランジスタで構成するため、製造プロセス条件、電圧、温度等の変動の際、これらのPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの物理的な特性変化がそれぞれ異なって現れるようになり、ターミネーション抵抗値を所望どおりに精確に制御することができなくなる。また、PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの物理的な特性差によって、プルアップ経路抵抗値とプルダウン経路抵抗値との間の不整合もまた一層ひどくなる。その結果、JEDEC仕様を満足させることができず、半導体素子が不良品になるという問題が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
この発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製造プロセス条件、電圧、温度等の変動に関係なく、安定した有効ターミネーション抵抗値及びプルアップ/プルダウン経路抵抗値との不整合を安定化できるオンダイターミネーション回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するため、この発明によれば、オンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子は、EMRS値を復号化するための復号化手段と、出力信号を出力するノードに並列接続され、それぞれ異なる抵抗値を有する複数の出力駆動部を含むODT出力駆動部と、前記復号化手段の復号出力信号に応答し、前記複数の出力駆動部をターンオン/ターンオフさせるための複数の制御信号を生成する制御信号生成手段とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、それぞれ異なるタイプのMOSトランジスタを使用して出力駆動部を構成するので、ターミネーション抵抗値の変動を減らし、プルアップ経路抵抗値とプルダウン経路抵抗値との間の不一致を減らして、チップの信頼性を向上させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、この発明の最も好ましい実施の形態を説明する。
【0032】
図4は、この発明の実施形態に係る半導体メモリ素子のオンダイターミネーション回路のブロック構成図である。
【0033】
図4に示されているように、この発明に係るオンダイターミネーションは、復号化部100、制御信号生成部200及びODT出力駆動部300を含んで構成されている。復号化部100は、EMRSの設定値を復号化して、復号出力信号S0、S1、S2を出力する。ODT出力駆動部300は、出力ノードN2に並列接続され、それぞれ異なる抵抗値を有する複数の出力駆動部320、340を備えてる。次いで、制御信号生成部200は、復号化部100の復号出力信号S0、S1、S2に応答して、出力駆動部320、340をターンオン/ターンオフさせるためのプルアップ制御信号ODT_PU<1>〜<2>及びプルダウン制御信号ODT_PD<1>〜<2>を生成する。
【0034】
そして、ODT出力駆動部300内の第1及び第2出力駆動部320、340は、いずれも異なるタイプのMOSトランジスタを含んで構成され、それぞれプルアップ制御信号ODT_PU<1>、ODT_PU<2>に応答して出力ノードN2をプルアップ駆動するプルアップ駆動部322、342と、いずれも異なるタイプのMOSトランジスタを含んで構成され、それぞれプルダウン制御信号ODT_PD<1>、ODT_PD<2>に応答して出力ノードN2をプルダウン駆動するプルダウン駆動部324、344とを含んで構成されている。
【0035】
図5は、図4の第1出力駆動部320の内部回路図である。
【0036】
図5に示されているように、第1出力駆動部320内の第1プルアップ駆動部322は、第1プルアップ制御信号ODT_PU<1>をゲート入力とし、電源電圧VDDQに自分のソース端が接続された第1ないし第3PMOSトランジスタPM7、PM8、PM9と、第1ないし第3PMOSトランジスタPM7、PM8、PM9の共通接続されたドレイン端と出力ノードN2との間に配置されたプルアップ抵抗R3と、第1プルダウン制御信号ODT_PD<1>をゲート入力とし、電源電圧VDDQに自分のドレイン端が接続され、第1ないし第3PMOSトランジスタPM7、PM8、PM9の共通接続されたドレイン端に自分のソース端が接続された第1NMOSトランジスタNM7とを含んで構成されている。
【0037】
そして、第1プルダウン駆動部324は、第1プルダウン制御信号ODT_PD<1>をゲート入力とし、電源電圧VSSQに自分のソース端が接続された第2ないし第4NMOSトランジスタNM8、NM9、NM10と、第2ないし第4NMOSトランジスタNM8、NM9、NM10の共通接続されたドレイン端と出力ノードN2との間に配置されたプルダウン抵抗R4と、第1プルアップ制御信号ODT_PU<1>をゲート入力とし、電源電圧VSSQに自分のドレイン端が接続され、第2ないし第4NMOSトランジスタNM8、NM9、NM10の共通接続されたドレイン端に自分のソース端が接続された第4PMOSトランジスタPM10とを含んで構成されている。すなわち、第1プルアップ駆動部322及び第1プルダウン駆動部324は、いずれもが異なるタイプのトランジスタを含んで構成されている。
【0038】
ここに、第1出力駆動部320のターンオン抵抗値は75Ωであり、第2出力駆動部340のターンオン抵抗値は150Ωに設定してある。したがって、第1出力駆動部320だけがターンオンされると、ターミネーション抵抗値は75Ωになり、第2出力駆動部だけが340がターンオンされるとターミネーション抵抗値は150Ωになる。そして、第1及び第2出力駆動部320、340の両者がターンオンされると、ターミネーション抵抗値は50Ωになる。
【0039】
上述したように、この発明に係る半導体メモリ素子は、異なるタイプのMOSトランジスタ、すなわちPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの両者を使用して、各出力駆動部320、340内のプルアップ駆動部322、342及びプルダウン駆動部324、344をそれぞれ構成する。
【0040】
したがって、製造工程における条件に起因するばらつきや、周辺温度の変化、動作電圧の変動等によってPMOSトランジスタの駆動速度がNMOSトランジスタより遅くなったとしても、同じプルアップ駆動部またはプルダウン駆動部内のNMOSトランジスタがこれを補完するため、ターミネーション抵抗値の変動が少なくなる。また、プルアップ経路とプルダウン経路内との抵抗値の不一致を防止し、Rtt不整合が要求仕様を満足させるようになる。
【0041】
以上説明したように、この発明に係るオンダイターミネーション回路を備える半導体メモリ素子は、製造プロセス、周囲温度、動作電圧の変動に対して安定であるので、チップの信頼性を向上させるだけでなく、異なるターミネーション抵抗値を有する出力駆動回路を組み合わせて使用するようにしたので、出力駆動部の個数を減らすことができ、チップのサイズを小さくすることにも寄与する。
【0042】
図6は、図4の復号化部100の内部回路図である。
【0043】
図6に示されているように、復号化部100は、複数個のインバータと複数個のNANDゲートとで構成されている。具体的に説明すれば、復号化部100は、EMRSのA2を反転させるためのインバータI2と、インバータI2の出力信号を反転させるためのインバータI3と、EMRSのA6を反転させるためのインバータI4と、インバータI4の出力信号を反転させるためのインバータI5と、インバータI3及びI4の出力信号を入力とするNANDゲートND1と、NANDゲートND1の出力信号を反転させて出力信号S0を出力するためのインバータI6と、インバータI2及びI5の出力信号を入力とするNANDゲートND2と、NANDゲートND2の出力信号を反転させて出力信号S1を出力するためのインバータI7と、インバータI3及びI5の出力信号を入力とするNANDゲートND3と、NANDゲートND3の出力信号を反転させて出力信号S2を出力するためのインバータI8とを含んでなる。
【0044】
図7は、図4の制御信号生成部200の内部回路図である。
【0045】
図7に示されているように、制御信号生成部200は、復号化部100の復号出力信号S0またはS2のアクティブ時に、第1プルアップ制御信号ODT_PU<1>及び第1プルダウン制御信号ODT_PD<1>をアクティブにする第1制御信号生成部220と、復号化部100の復号出力信号S1またはS2のアクティブ時に、第2プルアップ制御信号ODT_PU<2>及び第2プルダウン制御信号ODT_PD<2>をアクティブレベルにする第2制御信号生成部240とを含んでいる。
【0046】
そして、第1制御信号生成部220は、復号化部100の第2復号出力信号S1を反転させるためのインバータI9と、インバータI9の出力信号と第1復号出力信号S0とを入力とするNANDゲートND4と、第3復号出力信号S2を反転させるためのインバータI10と、NANDゲートND4の出力信号とインバータI10の出力信号とを入力とするNANDゲートND5と、NANDゲートND5の出力信号を反転させて第1プルアップ制御信号ODT_PU<1>を出力するためのインバータI11と、NANDゲートND5の出力信号を遅延させて、第1プルダウン制御信号ODT_PD<1>を出力するためのインバータチェーンI12、I13とを有して構成されている。
【0047】
第2制御信号生成部240は、復号化部100の第2及び第3復号出力信号S1及びS2を入力とするNORゲートNR1と、NORゲートNR1の出力信号を反転させるためのインバータI14と、インバータI14の出力信号を反転させて第2プルアップ制御信号ODT_PU<2>として出力するためのインバータI15と、インバータI14の出力信号を遅延させて、第2プルダウン制御信号ODT_PD<2>として出力するためのインバータチェーンI16、I17とを有して構成されている。
【0048】
次いで、ユーザのEMRS入力に応じて、この発明に係る半導体メモリ素子のターミネーション抵抗の値が決定される過程を説明する。
【0049】
まず、ユーザがEMRSを特定値に設定すると、復号化部100は、それに応じたアクティブレベルを呈する各復号出力信号S0、S1、S2を出力する。具体的に説明すれば、復号化部100は、EMRSのA6及びA2が両者とも論理レベル「L」を呈し非アクティブレベルになった場合には、復号出力信号S0、S1、S2を全て論理レベル「L」の非アクティブレベルにする。そして、EMRSのA6及びA2がそれぞれ論理レベル「L」及び「H」を呈する場合には、復号出力信号S0だけが論理レベル「H」のアクティブレベルになり、EMRSのA6及びA2がそれぞれ論理レベル「H」及び「L」を呈する場合には、出力信号S1だけが論理レベル「H」のアクティブレベルになる。また、EMRSのA6及びA2の両者が論理レベル「H」を呈しアクティブレベルになった場合には、復号出力信号S2だけが論理レベル「H」のアクティブレベルになる。(ここでは、信号S0、S1、S2は、「H」がアクティブレベルであるとして説明している。)
次いで、制御信号生成部200は、復号化部100の復号出力信号S0、S1、S2に応答して、プルアップ制御信号ODT_PU<1>、ODT_PU<2>、プルダウン制御信号ODT_PD<1>、ODT_PD<2>をアクティブすることによって、ターンオンされる出力駆動部の数を選定して、ターミネーション抵抗値を決定する。
【0050】
すなわち、復号化部100の復号出力信号S0だけがアクティブレベルになった場合、制御信号生成部200は、第1プルアップ制御信号ODT_PU<1>及び第1プルダウン制御信号ODT_PD<1>のみをアクティブレベルにするので、第1出力駆動部320のみがターンオンされて、ターミネーション抵抗値が75Ωになる。
【0051】
また、復号化部100の復号出力信号S1だけがアクティブレベルになった場合、制御信号生成部200は、第2プルアップ制御信号ODT_PU<2>及び第2プルダウン制御信号ODT_PD<2>のみをアクティブレベルにするので、第2出力駆動部340のみがターンオンされて、ターミネーション抵抗値が150Ωになる。
【0052】
次いで、復号化部100の復号出力信号S2だけがアクティブレベルになった場合、制御信号生成部200は、第1及び第2プルアップ制御信号ODT_PU<1>〜<2>と第1及び第2プルダウン制御信号ODT_PD<1>〜<2>との全てをアクティブにするので、第1及び第2出力駆動部320、340の両者がターンオンされて、ターミネーション抵抗値が50Ωになる。
【0053】
上述したこの発明に係るオンダイターミネーション回路を備える半導体メモリ素子は、異なるタイプ(Pチャネル型とNチャネル型)のMOSトランジスタを使用して出力駆動部を構成したことにより、製造工程、電圧、温度などの変動に起因する各タイプのMOSトランジスタの特性差が互いに補完される関係になる。したがって、製造工程、電圧、温度等の変動によるターミネーション抵抗値の誤差変動が少なくなり、プルアップ経路抵抗とプルダウン経路抵抗との間の不一致が少なくなって、JEDECの要求仕様を容易に満足させることができ、半導体チップの信頼性が向上するばかりでなく、出力駆動部の個数を減らすこともでき、またチップのサイズを縮めることもできる。
【0054】
なお、この発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、この発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、多様に変更が可能であり、それら変更もこの発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来の技術に係る半導体メモリ素子のオンダイターミネーション回路のブロック構成図である。
【図2】図1の第1出力駆動部の内部回路図である。
【図3】図1の制御信号生成部の内部回路図である。
【図4】この発明の実施形態に係る半導体メモリ素子のオンダイターミネーション回路のブロック構成図である。
【図5】図4の第1出力駆動部の内部回路図である。
【図6】図4の復号化部の内部回路図である。
【図7】図4の制御信号生成部の内部回路図である。
【符号の説明】
【0056】
100 復号化部
200 制御信号生成部
300 出力駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EMRSの設定値を復号化し復号出力信号を出力する復号化手段と、
ODT出力信号を出力する出力ノードに並列接続され異なるターミネーション抵抗値を有する複数の出力駆動部を含む出力駆動手段と、
前記復号化手段の復号出力信号に応答して前記複数の出力駆動部をターンオン/ターンオフさせるための複数の制御信号を生成する制御信号生成手段と
を備えてなるオンダイターミネーション回路。
【請求項2】
前記出力駆動部が、
前記制御信号に応答して前記出力ノードをプルアップ駆動するためのプルアップ駆動部と、
前記制御信号に応答して前記出力ノードをプルダウン駆動するためのプルダウン駆動部とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のオンダイターミネーション回路。
【請求項3】
前記プルアップ駆動部及びプルダウン駆動部は、いずれもがPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタを使用して構成される
ことを特徴とする請求項2に記載のオンダイターミネーション回路。
【請求項4】
前記複数の制御信号は、プルアップ制御信号及びプルダウン制御信号を含んでおり、
前記プルアップ駆動部が、
前記プルアップ制御信号をゲート入力とし、第1電源電圧に自分のソース端が接続された第1ないし第3PMOSトランジスタと、
前記第1ないし第3PMOSトランジスタの共通接続されたドレイン端と前記出力ノードとの間に配置されたプルアップ抵抗と、
前記プルダウン制御信号をゲート入力とし、前記第1電源電圧に自分のドレイン端が接続され、前記共通接続されたドレイン端に自分のソース端が接続された第1NMOSトランジスタとを含む
ことを特徴とする請求項3に記載のオンダイターミネーション回路。
【請求項5】
前記プルダウン駆動部が、
前記プルダウン制御信号をゲート入力とし、第2電源電圧に自分のソース端が接続された第2ないし第4NMOSトランジスタと、
前記第2ないし第4NMOSトランジスタの共通接続されたドレイン端と前記出力ノードとの間に配置されたプルダウン抵抗と、
前記プルアップ制御信号をゲート入力とし、前記第2電源電圧に自分のドレイン端が接続され、前記第2ないし第4NMOSトランジスタの共通接続されたドレイン端に自分のソース端が接続された第4PMOSトランジスタとを含む
ことを特徴とする請求項4に記載のオンダイターミネーション回路。
【請求項6】
前記復号化手段は、第1ないし第3の復号出力信号を出力するものであり、
前記制御信号生成手段が、
前記復号化手段の前記第1または第3の復号出力信号がアクティブレベルを呈するときに、第1プルアップ制御信号及び第1プルダウン制御信号をアクティブレベルにする第1制御信号生成部と、
前記復号化手段の前記第2または第3の復号出力信号がアクティブレベルを呈するときに、第2プルアップ制御信号及び第2プルダウン制御信号をアクティブレベルにする第2制御信号生成部とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のオンダイターミネーション回路。
【請求項7】
前記第1制御信号生成部が、
前記第1復号出力信号を反転させるための第1インバータと、
前記第1インバータの出力信号と前記第1復号出力信号とを入力とする第1NANDゲートと、
前記第3復号出力信号を反転させるための第2インバータと、
前記第1NANDゲートと前記第2インバータとの出力信号を入力される第2NANDゲートと、
前記第2NANDゲートの出力信号を反転させ、前記第1プルアップ制御信号を出力するための第3インバータと、
前記第2NANDゲートの出力信号を遅延させ、前記第1プルダウン制御信号を出力するための第1インバータチェーンとを含む
ことを特徴とする請求項6に記載のオンダイターミネーション回路。
【請求項8】
前記第2制御信号生成部が、
前記第2及び第3復号出力信号を入力される第1NORゲートと、
前記第1NORゲートの出力信号を反転させるための第4インバータと、
前記第4インバータの出力信号を反転させ、前記第2プルアップ制御信号を出力するための第5インバータと、
前記第4インバータの出力信号を遅延させ、前記第2プルダウン制御信号を出力するための第2インバータチェーンとを含む
ことを特徴とする請求項7に記載のオンダイターミネーション回路。
【請求項9】
EMRS値を復号化し復号出力信号を出力する復号化手段と、
相互に異なるタイプのMOSトランジスタを有し、プルアップ制御信号及びプルダウン制御信号に応答してODT出力信号を出力する出力ノードをプルアップ駆動するプルアップ駆動部と、相互に異なるタイプのMOSトランジスタを有し、プルダウン制御信号及びプルアップ制御信号に応答して前記出力ノードをプルダウン駆動するプルダウン駆動部とを有する複数の出力駆動部を含む出力駆動手段と、
前記復号化手段の復号出力信号に応答し、前記出力駆動部をターンオン/ターンオフさせるための複数のプルアップ及びプルダウン制御信号を生成する制御信号生成手段と
を備えてなるオンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子。
【請求項10】
前記プルアップ駆動部及び前記プルダウン駆動部を、PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタ、すなわち、互いに異なるタイプのMOSトランジスタの両者を使用して構成した
ことを特徴とする請求項9に記載のオンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子。
【請求項11】
前記複数の制御信号は、プルアップ制御信号及びプルダウン制御信号を含んでおり、
前記プルアップ駆動部が、
前記プルアップ制御信号をゲート入力とし、第1電源電圧に自分のソース端が接続された第1ないし第3のPMOSトランジスタと、
前記第1ないし第3のPMOSトランジスタの共通接続されたドレイン端と前記出力ノードとの間に配置されたプルアップ抵抗と、
前記プルダウン制御信号をゲート入力とし、前記第1電源電圧に自分のドレイン端が接続され、前記共通接続されたドレイン端に自分のソース端が接続された第1NMOSトランジスタとを含む
ことを特徴とする請求項10に記載のオンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子。
【請求項12】
前記プルダウン駆動部が、
前記プルダウン制御信号をゲート入力とし、第2電源電圧に自分のソース端が接続された第2ないし第4のNMOSトランジスタと、
前記第2ないし第4のNMOSトランジスタの共通接続されたドレイン端と前記出力ノードとの間に配置されたプルダウン抵抗と、
前記プルアップ制御信号をゲート入力とし、前記第2電源電圧に自分のドレイン端が接続され、前記第2ないし第4のNMOSトランジスタの共通接続されたドレイン端に自分のソース端が接続された第4PMOSトランジスタとを含む
ことを特徴とする請求項11に記載のオンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子。
【請求項13】
前記復号化手段は、第1ないし第3の復号出力信号を出力するものであり、
前記制御信号生成手段が、
前記復号化手段の前記第1または第3の復号出力信号がアクティブレベルを呈するときに、第1プルアップ制御信号及び第1プルダウン制御信号をアクティブレベルにする第1制御信号生成部と、
前記復号化手段の前記第2または第3の復号出力信号がアクティブレベルを呈するときに、第2プルアップ制御信号及び第2プルダウン制御信号をアクティブれべるにする第2制御信号生成部とを含む
ことを特徴とする請求項12に記載のオンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子。
【請求項14】
前記第1制御信号生成部が、
前記第1復号出力信号を反転させるための第1インバータと、
前記第1インバータの出力信号と前記第1復号出力信号とを入力とする第1NANDゲートと、
前記第3復号出力信号を反転させるための第2インバータと、
前記第1NANDゲートと前記第2インバータとの出力信号を入力とする第2NANDゲートと、
前記第2NANDゲートの出力信号を反転させ、前記第1プルアップ制御信号を出力するための第3インバータと、
前記第2NANDゲートの出力信号を遅延させ、前記第1プルダウン制御信号に出力するための第1インバータチェーンとを含む
ことを特徴とする請求項13に記載のオンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子。
【請求項15】
前記第2制御信号生成部が、
前記第2及び第3復号出力信号を入力とする第1NORゲートと、
前記第1NORゲートの出力信号を反転させるための第4インバータと、
前記第4インバータの出力信号を反転させ、前記第2プルアップ制御信号を出力するための第5インバータと、
前記第4インバータの出力信号を遅延させ、前記第2プルダウン制御信号を出力するための第2インバータチェーンとを含む
ことを特徴とする請求項14に記載のオンダイターミネーション回路を備えた半導体メモリ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−129421(P2006−129421A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69855(P2005−69855)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(591024111)株式会社ハイニックスセミコンダクター (1,189)
【Fターム(参考)】