説明

クロックバッファ回路及びクロック分配回路

【課題】クロック源の消費電力を増大させることなく、動作クロック周波数に応じて駆動能力を変化させることにより消費電力低減可能なクロックバッファ回路を提供すること。
【解決手段】クロック信号を伝達するバッファ部102と、クロック信号の参照クロック信号に対する逓倍数をカウントし、バッファ部102に対して逓倍数に基づいたイネーブル信号を出力する駆動能力切替部101と、を備え、バッファ部102は、当該バッファ部102の入力に接続された入力インバータ7と、イネーブル信号によりオンオフが可能であって、それぞれの出力が当該バッファ部の出力に共通に接続された複数の出力インバータ13〜28と、を備え、入力インバータ7が1個のCMOSインバータからなるクロックバッファ回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックバッファ回路及びクロック分配回路に関し、特に駆動能力可変クロックバッファ回路及びクロック分配回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration)では、例えば水晶発振子から発振される参照クロックをPLL(Phase-Locked Loop)回路などにより逓倍することにより動作クロックを生成している。ここで、動作クロック周波数は高いほど消費電力が大きくなる。そのため、最近のLSIには、この動作クロック周波数を例えばアプリケーションにより切り替え、低消費電力化しているものがある。
【0003】
また、動作クロック周波数が高い程、この動作クロックを伝送するクロックバッファ回路の駆動能力も高くする必要がある。上述の動作クロックを変化させることができるLSIにおいても、クロックバッファ回路は高い動作クロック周波数に合わせて設計されており、動作クロック周波数に応じて駆動能力を変化させることはできなかった。例えば、特許文献1には、駆動能力可変クロックバッファ回路が開示されているものの、動作クロック周波数に応じて駆動能力を変化させるものではない。また、駆動能力可変クロックバッファ回路の詳細な構成については、何ら開示されていない。
【0004】
これに対し、特許文献2、特許文献3には、駆動能力が異なる複数のクロックバッファ回路を並列に接続し、動作クロック周波数に応じて適切な駆動能力のクロックバッファ回路を選択する手法が開示されている。また、特許文献4には、動作クロック周波数に応じて出力バッファ回路を構成するトランジスタの並列個数を調整することにより、その駆動能力を制御する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−219250号公報
【特許文献2】特平6−216729号公報
【特許文献3】特開2004−086531号公報
【特許文献4】特開2008−219250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2〜4では、例えばPLL回路などのクロック源に対し、並列接続された駆動能力が異なる複数のクロックバッファ回路もしくは並列接続されたトランジスタが、直接接続されている。そのため、クロック源に接続されたクロックバッファ回路の入力容量が大きくなり、クロック源の消費電力も増大してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るクロックバッファ回路は、
クロック信号を伝達するバッファ部と、
前記クロック信号の参照クロック信号に対する逓倍数をカウントし、前記バッファ部に対して前記逓倍数に基づいたイネーブル信号を出力する駆動能力切替部と、を備え、
前記バッファ部は、
当該バッファ部の入力に接続された入力インバータと、
前記イネーブル信号によりオンオフが可能であって、それぞれの出力が当該バッファ部の出力に共通に接続された複数の出力インバータと、を備え、
前記入力インバータが1個のCMOSインバータからなるものである。
【0008】
本発明に係るクロック分配回路は、
クロック信号を伝達する複数のバッファ部と、
前記クロック信号の参照クロック信号に対する逓倍数をカウントし、前記複数のバッファ部に対して前記逓倍数に基づいたイネーブル信号を出力する駆動能力切替部と、を備え、
前記複数のバッファ部のそれぞれは、
当該バッファ部の入力に接続された入力インバータと、
前記イネーブル信号によりオンオフが可能であって、それぞれの出力が当該バッファ部の出力に共通に接続された複数の出力インバータと、を備え、
前記入力インバータが1個のCMOSインバータからなるクロック分配回路
【0009】
本発明では、バッファ部の入力に接続された入力インバータを備え、当該入力インバータが1個のCMOSインバータからなる。そのため、クロック源の消費電力を増大させることなく、動作クロック周波数に応じて駆動能力を変化させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クロック源の消費電力を増大させることなく、動作クロック周波数に応じて駆動能力を変化させることにより消費電力低減可能なクロックバッファ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る駆動能力可変クロックバッファ回路100の構成図である。
【図2】入力インバータ7の構成を示す回路図である。
【図3】中継インバータ8の構成を示す回路図である。
【図4】中継インバータ9の構成を示す回路図である。
【図5】出力インバータ13〜16の構成を示す回路図である。
【図6】出力インバータ25〜28の構成を示す回路図である。
【図7】駆動能力可変クロックバッファ回路100の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】駆動能力可変クロックバッファ回路100の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】デコーダ6が備える真理値表の一例である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るクロック分配回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0013】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る駆動能力可変クロックバッファ回路について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動能力可変クロックバッファ回路の構成図である。本駆動能力可変クロックバッファ回路100は、駆動能力切替部101、バッファ部102を備えている。
【0014】
駆動能力切替部101は、フリップフロップ(FF:Flip Flop)1、2、NANDゲート3、アップカウンタ(Up Counter)4、フリップフロップ群5、デコーダ(Decoder)6を備えている。
バッファ部102は、1個の入力インバータ7、5個の中継インバータ8〜12、16個の出力インバータ13〜28を備えている。入力インバータ7、出力インバータ13〜28は1個のCMOSインバータから構成されている。他方、中継インバータ8〜12は、4個のCMOSインバータが並列接続された構成である。
【0015】
フリップフロップ1は、例えばD−フリップフロップである。フリップフロップ1のクロック入力には、PLL回路200から出力された動作クロックCLKが入力される。フリップフロップ1のディレイ入力には、PLL回路200に入力される参照クロックCLKrefが入力される。
フリップフロップ2も、例えばD−フリップフロップである。フリップフロップ2のクロック入力には、PLL回路200から出力された動作クロックCLKの反転信号が入力される。フリップフロップ2のディレイ入力には、フリップフロップ1から出力された非反転出力信号Q_FF1が入力される。
【0016】
NANDゲート3には、フリップフロップ1から出力された非反転出力信号Q_FF1及びフリップフロップ2から出力された反転出力信号QB_FF2が入力される。NANDゲート3から出力された信号OUT_NANDは、アップカウンタ4及びフリップフロップ群5に入力される。
アップカウンタ4のクロック入力には、PLL回路200から出力された動作クロックCLKが入力され、この動作クロックCLKをカウントする。また、アップカウンタ4のリセット入力RSTには、NANDゲート3から出力された信号OUT_NANDがリセット信号として入力される。
【0017】
フリップフロップ群5は、例えば複数のD−フリップフロップから構成される。フリップフロップ群5を構成するD−フリップフロップの個数は、当該駆動能力可変クロックバッファ回路100の駆動能力切替段数に基づいて適宜決定すればよい。フリップフロップ群5を構成する各D−フリップフロップのクロック入力には、NANDゲート3から出力されたリセット信号が入力される。各D−フリップフロップのディレイ入力には、アップカウンタ4から出力されたカウント値が入力される。
【0018】
デコーダ6には、フリップフロップ群5を構成する各D−フリップフロップから出力された非反転出力信号Q_FF5が入力される。具体的には、この非反転出力信号Q_FF5は、NANDゲート3から出力されたリセット信号が入力されたタイミングでの、カウント値である。つまり、常に最大カウント値となる。デコーダ6はフリップフロップ群5を介して入力された最大カウント値に基づいてバイナリ信号b0〜b10を生成する。
【0019】
バッファ部102では、当該バッファ部102の入力に入力インバータ7が設けられている。入力インバータ7の出力には、中継インバータ8が接続されている。中継インバータ8の出力には、4つの中継インバータ9〜12が並列接続されている。中継インバータ9の出力には、出力インバータ13〜16が並列接続されている。同様に、中継インバータ10の出力には、出力インバータ17〜20が並列接続されている。同様に、中継インバータ11の出力には、出力インバータ21〜24が並列接続されている。同様に、中継インバータ12の出力には、出力インバータ25〜28が並列接続されている。そして、16個の出力インバータ13〜28の出力が、バッファ部102の出力OUTに共通に接続されている。ここで、中継インバータ9〜12、出力インバータ13〜28は、イネーブル信号によるオンオフが可能である。
【0020】
駆動能力切替部101のデコーダ6から出力されたバイナリ信号b0〜b10が、イネーブル信号としてバッファ部102に入力される。入力されたバイナリ信号b0〜b10に基づいて、バッファ部102の駆動能力が決定される。図1の例では、バイナリ信号b0は、中継インバータ12に入力される。バイナリ信号b1、b2、b3、b4は、それぞれ出力インバータ28、27、26、25に入力される。バイナリ信号b5は、出力インバータ21〜24に共通に入力される。バイナリ信号b6は、中継インバータ11に入力される。バイナリ信号b7は、出力インバータ17〜20に共通に入力される。バイナリ信号b8は、中継インバータ10に入力される。バイナリ信号b9は、出力インバータ13〜16に共通に入力される。バイナリ信号b10は、中継インバータ9に入力される。
【0021】
中継インバータ9は、後段に接続された出力インバータ13〜16がオンとなる場合にオンとなり、出力インバータ13〜16がオフとなる場合にオフとなる。同様に、中継インバータ10は、後段に接続された出力インバータ17〜20がオンとなる場合にオンとなり、出力インバータ17〜20がオフとなる場合にオフとなる。同様に、中継インバータ11は、後段に接続された出力インバータ21〜24がオンとなる場合にオンとなり、出力インバータ21〜24がオフとなる場合にオフとなる。同様に、中継インバータ12は、後段に接続された出力インバータ25〜28のいずれかがオンとなる場合にオンとなり、出力インバータ25〜28の全てがオフとなる場合にオフとなる。
【0022】
ここで、バッファ部102の駆動能力は、並列接続された16個の出力インバータ13〜28のオン状態の個数によって決定される。図1の例では、バッファ部102の駆動能力は、出力インバータ13〜28の1個のみをオンとする場合から16個全てをオンとする場合まで、最大16段階変化させることができる。この出力インバータの個数は、4個以上であることが好適であり、8個以上であることがより好適である。
【0023】
図2は、入力インバータ7の構成を示す回路図である。入力インバータ7は、CMOSインバータであって、PMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1とを備えている。PMOSトランジスタP1のソースが電源VDDに接続され、ドレインはNMOSトランジスタN1のドレインに接続されている。NMOSトランジスタN1のソースはグランドGNDに接続されている。PMOSトランジスタP1のゲートとNMOSトランジスタN1のゲートが接続されたノードに入力信号IN(動作クロックCLK)が入力される。そして、PMOSトランジスタP1のドレインと、NMOSトランジスタN1のドレインとが接続されたノードから出力信号OUTが出力される。
【0024】
図3は、中継インバータ8の構成を示す回路図である。中継インバータ8は、4個のPMOSトランジスタP2〜P5と4個のNMOSトランジスタN2〜N5とを備えている。そして、PMOSトランジスタP2とNMOSトランジスタN2とから構成されるCMOSインバータ、PMOSトランジスタP3とNMOSトランジスタN3とから構成されるCMOSインバータ、PMOSトランジスタP4とNMOSトランジスタN4とから構成されるCMOSインバータ、PMOSトランジスタP5とNMOSトランジスタN5とから構成されるCMOSインバータを備えている。この4個のCMOSインバータが並列接続されている。そのため、4個のCMOSインバータの入力が共通に接続されたノードに入力信号IN(入力インバータ7の出力信号)が入力される。また、4個のCMOSインバータの出力が共通に接続されたノードから出力信号OUTが出力される。
【0025】
図4は、中継インバータ9の構成を示す回路図である。中継インバータ9も、中継インバータ8と同様に、4個のCMOSインバータが並列接続されている。中継インバータ8との相違点は、各CMOSインバータのNMOSトランジスタが共通に接続されたノードとグランドGNDとの間にスイッチSW1が設けられている点である。スイッチSW1のオンオフは、バイナリ信号b10により制御される。この場合、スイッチSW1は、例えばNMOSトランジスタとすることができる。このNMOSトランジスタのゲートにバイナリ信号b10が入力される。バイナリ信号b10が1(High)の場合、スイッチSW1がオンとなり、中継インバータ9が駆動する。一方、バイナリ信号b10が0(Low)の場合、スイッチSW1がオフとなり、中継インバータ9は駆動しない。
【0026】
中継インバータ10〜12も、中継インバータ9と同様の構成を有する。
なお、スイッチSW1は、各CMOSインバータのPMOSトランジスタが共通に接続されたノードと電源VDDとの間に設けてもよい。この場合、スイッチSW1は、例えばPMOSトランジスタとすることができる。
【0027】
図5は、出力インバータ13〜16の構成を示す回路図である。中継インバータ9と同様に、4個のCMOSインバータである出力インバータ13〜16が、並列接続されている。そして、各CMOSインバータのNMOSトランジスタが共通に接続されたノードとグランドGNDとの間にスイッチSW2が設けられている。この場合、スイッチSW2は、例えばNMOSトランジスタとすることができる。このNMOSトランジスタのゲートにバイナリ信号b9が入力される。バイナリ信号b9が1(High)の場合、スイッチSW2がオンとなり、全ての出力インバータ13〜16が駆動する。一方、バイナリ信号b9が0(Low)の場合、スイッチSW2がオフとなり、全ての出力インバータ13〜16が駆動しない。
【0028】
出力インバータ17〜20及び出力インバータ21〜24も、出力インバータ13〜16と同様の構成を有する。
なお、スイッチSW2は、各出力インバータ13〜16のPMOSトランジスタが共通に接続されたノードと電源VDDとの間に設けてもよい。この場合、スイッチSW2は、例えばPMOSトランジスタとすることができる。
【0029】
図6は、出力インバータ25〜28の構成を示す回路図である。出力インバータ13〜16と同様に、4個のCMOSインバータである出力インバータ25〜28が、並列接続されている。出力インバータ13〜16と異なる点は、各CMOSインバータのNMOSトランジスタとグランドGNDとの間にスイッチSW3〜SW6がそれぞれ設けられている点である。この場合、スイッチSW3〜SW6は、例えばNMOSトランジスタとすることができる。この各NMOSトランジスタのゲートにバイナリ信号b1〜b4が入力され、各出力インバータ25〜28の駆動状態が個別に制御される。
【0030】
バイナリ信号b1が1(High)の場合、スイッチSW6がオンとなり、出力インバータ28が駆動する。一方、バイナリ信号b1が0(Low)の場合、スイッチSW6がオフとなり、出力インバータ28が駆動しない。同様に、バイナリ信号b2が1(High)の場合、スイッチSW5がオンとなり、出力インバータ27が駆動する。一方、バイナリ信号b2が0(Low)の場合、スイッチSW5がオフとなり、出力インバータ27が駆動しない。同様に、バイナリ信号b3が1(High)の場合、スイッチSW4がオンとなり、出力インバータ26が駆動する。一方、バイナリ信号b3が0(Low)の場合、スイッチSW4がオフとなり、出力インバータ26が駆動しない。同様に、バイナリ信号b4が1(High)の場合、スイッチSW3がオンとなり、出力インバータ25が駆動する。一方、バイナリ信号b4が0(Low)の場合、スイッチSW3がオフとなり、出力インバータ25が駆動しない。
【0031】
なお、スイッチSW3〜SW6は、各出力インバータ13〜16のPMOSトランジスタと電源との間に設けてもよい。この場合、スイッチSW3〜SW6は、例えばPMOSトランジスタとすることができる。
【0032】
次に、図7、図8を用いて、図1に係る駆動能力可変クロックバッファ回路100の動作について説明する。図7、8は、駆動能力可変クロックバッファ回路100の動作を説明するためのタイミングチャートである。図7、8では、上段から動作クロックCLK、参照クロックCLKref、フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1、フリップフロップ2の反転出力信号QB_FF2、NANDゲートの出力信号OUT_NAND、アップカウンタ4のカウント値CNT、フリップフロップ群5の非反転出力信号Q_FF5が示されている。
【0033】
まず、図7の例について説明する。図7の場合、動作クロックCLKが参照クロックCLKrefの2逓倍となっている。フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1は、参照クロックCLKrefを動作クロックCLKによりリタイミングした信号である。つまり、参照クロックCLKrefから動作クロックCLKの1周期分右にシフトした信号となる。
【0034】
フリップフロップ2の反転出力信号QB_FF2は、フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1を動作クロックCLKの反転信号によりリタイミングした信号である。つまり、フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1を反転し、動作クロックCLKの半周期分右にシフトした信号となる。
【0035】
フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1と、フリップフロップ2の反転出力信号QB_FF2とを入力とするNANDゲートの出力信号OUT_NANDは、アップカウンタ4のリセット信号である。そのため、NANDゲートの出力信号OUT_NANDの立ち上がりの次の動作クロックCLKの立ち上がり時にアップカウンタ4はカウントをリセットする。つまり、0からカウントを開始する。
【0036】
図7の場合、動作クロックCLKは、参照クロックCLKrefの2逓倍である。そのため、図7に示すように、NANDゲートの出力信号OUT_NANDの立ち上がり時におけるアップカウンタ4のカウント値CNTは常に1である。つまり、アップカウンタ4のカウント値CNTをNANDゲートの出力信号OUT_NANDによりリタイミングしたフリップフロップ群5の非反転出力信号Q_FF5は、常に最終カウント値1となる。この値に基づいて、デコーダ6はバイナリ信号b0〜b10を生成する。これにより、出力インバータ13〜28のうち、駆動するインバータが決定される。
【0037】
次に、図8の例について説明する。図8の場合、動作クロックCLKが参照クロックCLKrefの8逓倍となっている。フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1は、図7の場合と同様に、参照クロックCLKrefを動作クロックCLKによりリタイミングした信号である。つまり、参照クロックCLKrefから動作クロックCLKの1周期分右にシフトした信号となる。
【0038】
フリップフロップ2の反転出力信号QB_FF2も、図7の場合と同様に、フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1を動作クロックCLKの反転信号によりリタイミングした信号である。つまり、フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1を反転し、動作クロックCLKの半周期分右にシフトした信号となる。
【0039】
フリップフロップ1の非反転出力信号Q_FF1と、フリップフロップ2の反転出力信号QB_FF2とを入力とするNANDゲートの出力信号OUT_NANDは、アップカウンタ4のリセット信号である。そのため、NANDゲートの出力信号OUT_NANDの立ち上がりの次の動作クロックCLKの立ち上がり時にアップカウンタ4はカウントをリセットする。つまり、0からカウントを開始する。
【0040】
図8の場合、動作クロックCLKは、参照クロックCLKrefの8逓倍である。そのため、図8に示すように、NANDゲートの出力信号OUT_NANDの立ち上がり時におけるアップカウンタ4のカウント値CNTは常に7である。つまり、アップカウンタ4のカウント値CNTをNANDゲートの出力信号OUT_NANDによりリタイミングしたフリップフロップ群5の非反転出力信号Q_FF5は、常に最終カウント値7となる。この値に基づいて、デコーダ6はバイナリ信号b0〜b10を生成する。これにより、出力インバータ13〜28のうち、駆動するインバータが決定される。
【0041】
図9はデコーダ6が備える真理値表の一例である。上述の通り、図7に示したように動作クロックCLKが参照クロックCLKrefの2逓倍である場合、フリップフロップ群5の非反転出力信号Q_FF5は1である。そのため、図9の例では、バイナリ信号[b10:b0]=00000000111となり、イネーブル信号によるオンオフが可能な中継インバータ9〜12、出力インバータ13〜28のうち、駆動するのは中継インバータ12、出力インバータ27、28のみとなる。これ以外に、入力インバータ7、中継インバータ8が駆動している。従って、入力インバータ7の消費電力をP、中継インバータ8の消費電力をPなどとすると、駆動能力可変クロックバッファ回路100の消費電力P=P+P+P12+P27+P28となる。
【0042】
他方、図8に示したように動作クロックCLKが参照クロックCLKrefの8逓倍である場合、フリップフロップ群5の非反転出力信号Q_FF5は7である。そのため、図9の例では、バイナリ信号[b10:b0]=11111111111となり、イネーブル信号によるオンオフが可能な中継インバータ9〜12、出力インバータ13〜28の全てが駆動する。これ以外に、入力インバータ7、中継インバータ8が駆動している。
【0043】
従って、駆動能力可変クロックバッファ回路100の消費電力P=P+P+P+P10+P11+P12+P13+P14+P15+P16+P17+P18+P19+P20+P21+P22+P23+P24+P25+P26+P27+P28となる。
なお、図9の真理値表はこれに限定されるものではなく、あくまで一例である。
【0044】
従って、駆動能力を切り替えることにより、消費電力も切り替えることができる。
なお、各インバータの消費電力は以下の式で与えられる。
=f×(Cg+Cw)×VDD/2
=f×(Cg9〜12+Cw)×VDD/2
=f×(Cg13〜16+Cw)×VDD/2
10=f×(Cg17〜20+Cw)×VDD/2
11=f×(Cg21〜24+Cw)×VDD/2
12=f×(Cg25〜28+Cw)×VDD/2
13〜P28=f×(Cg+Cw)×VDD/2
【0045】
ここで、f:動作クロック周波数、Cw:配線容量、Cg:出力インバータ13〜28の接続先のゲート容量、Cg:中継インバータ8のゲート容量、Cg9〜12:中継インバータ9〜12のゲート容量、Cg13〜16:出力インバータ13〜16のゲート容量、Cg17〜20:出力インバータ17〜20のゲート容量、Cg21〜24:出力インバータ21〜24のゲート容量、Cg25〜28:出力インバータ25〜28のゲート容量、である。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態に係る駆動能力可変クロックバッファ回路100では、参照クロックCLKrefに対する動作クロックCLKの逓倍値をカウントし、このカウント値に基づいて、駆動能力を切り替えるためのイネーブル信号を自動的に生成する。そのため、動作クロック周波数に応じて適切な駆動能力に切り替え、消費電力を低減することができる。
【0047】
ここで、クロック源の消費電力PCLKは、次式で与えられる。
CLK=f×(Cg+Cw)×VDD/2
つまり、出力インバータ13〜28の駆動数によらず、一定である。これは、クロック源が、1個のCMOSインバータからなる入力インバータ7に接続されているためである。なお、上記したクロック源の消費電力が出力インバータの駆動数によらず一定となる技術的効果を得るためには、最低限、クロック信号が入力される第1入力ノードを有する第1のインバータ回路と、前記第1のインバータ回路の第1出力ノードと接続される第2の入力ノードを有し、前記クロック信号の周波数に応じて駆動能力が変化する第2のインバータ回路と、を有し、前記第1のインバータ回路の前記第1入力ノードに共通に接続されているMOSトランジスタの個数が、前記第2のインバータ回路の前記第2入力ノードに共通に接続されているMOSトランジスタの個数より少ないことが担保されていればよい。すなわち、図1の回路構成と具体的に対応付けて説明すれば、インバータ回路7と、出力インバータ回路13〜16の少なくとも二つのインバータで構成される最小限のクロックバッファ回路であれば、クロック源の消費電力をバッファ駆動数によらず一定にする効果が得られる。つまり上述した第1のインバータ回路が図1の入力インバータ回路7であり、第2のインバータ回路が図1における出力インバータ回路13ないし16の内の少なくとも二つを含んでいるということである。そして、駆動能力の変化をより細かく制御できるようにするために、図1のそのほかのインバータ回路、例えばインバータ回路9や、インバータ回路17〜20等が設けられているに過ぎない。すなわち、本発明の解決しようとする課題を解決するための最低限の構成は上記の構成となる。
【0048】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るクロック分配回路について説明する。図10は、本発明の第2の実施の形態に係るクロック分配回路の構成図である。本クロック分配回路は、実施の形態1に係る駆動能力可変クロックバッファ回路をクロック分配回路に適用したものである。
【0049】
本クロック分配回路は、1つの駆動能力切替部101に対し、複数のバッファ部102a〜102fを備えている。ここで、駆動能力切替部101の構成は、実施の形態1に係る駆動能力切替部101と同一であるため、説明を省略する。また、各バッファ部102a〜102fの構成も、実施の形態1に係るバッファ部102と同一であるため、説明を省略する。なお、各バッファ部102a〜102fには、駆動能力切替部101のデコーダ6から出力されたイネーブル信号(バイナリ信号)が入力される。図10では、このイネーブル信号線の束を太線で示している。
【0050】
バッファ部102aの入力には、PLL200から出力された動作クロックCLKが入力される。バッファ部102aの出力には、複数のバッファ部102b、102gの入力が接続されている(一部不図示)。
【0051】
バッファ部102bの出力には、4個のバッファ部102c〜102fの入力が共通に接続されている。102gの出力についても同様に複数のバッファ部の入力が接続されている(不図示)。そして、バッファ部102c〜102fのそれぞれから出力された動作クロックCLKが、機能ブロックへ入力される。なお、本実施の形態では、全てのバッファ部102c〜102fが駆動能力切替可能であるが、全てのバッファ部102c〜102fのうち少なくとも1個のバッファ部を駆動能力切替可能としてもよい。
【0052】
本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、クロック源の消費電力を増大させることなく、動作クロック周波数に応じて適切な駆動能力に切り替え、消費電力を低減することができる。
【0053】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 フリップフロップ
2 フリップフロップ
3 NANDゲート
4 アップカウンタ
5 フリップフロップ群
6 デコーダ
7 入力インバータ
8−12 中継インバータ
13−28 出力インバータ
100 駆動能力可変クロックバッファ回路
101 駆動能力切替部
102 バッファ部
102a−102f バッファ部
200 PLL回路
N1−N5 NMOSトランジスタ
P1−P5 PMOSトランジスタ
SW1−SW6 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を伝達するバッファ部と、
前記クロック信号の参照クロック信号に対する逓倍数をカウントし、前記バッファ部に対して前記逓倍数に基づいたイネーブル信号を出力する駆動能力切替部と、を備え、
前記バッファ部は、
当該バッファ部の入力に接続された入力インバータと、
前記イネーブル信号によりオンオフが可能であって、それぞれの出力が当該バッファ部の出力に共通に接続された複数の出力インバータと、を備え、
前記入力インバータが1個のCMOSインバータからなるクロックバッファ回路。
【請求項2】
前記駆動能力切替部は、
前記参照クロック信号の1サイクル毎に前記クロック信号のサイクル数をカウントするアップカウンタと、
前記アップカウンタがカウントした最大カウント値から前記イネーブル信号を生成するデコーダと、を備えることを特徴とする請求項1に記載のクロックバッファ回路。
【請求項3】
前記入力インバータと前記出力インバータとの間に設けられた中継インバータを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のクロックバッファ回路。
【請求項4】
前記中継インバータは、互いに並列接続された複数個のCMOSインバータからなることを特徴とする請求項3に記載のクロックバッファ回路。
【請求項5】
前記複数の出力インバータのそれぞれは、1個のCMOSインバータからなり、前記複数の出力インバータの数が4個以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のクロックバッファ回路。
【請求項6】
クロック信号を伝達する複数のバッファ部と、
前記クロック信号の参照クロック信号に対する逓倍数をカウントし、前記複数のバッファ部に対して前記逓倍数に基づいたイネーブル信号を出力する駆動能力切替部と、を備え、
前記複数のバッファ部のそれぞれは、
当該バッファ部の入力に接続された入力インバータと、
前記イネーブル信号によりオンオフが可能であって、それぞれの出力が当該バッファ部の出力に共通に接続された複数の出力インバータと、を備え、
前記入力インバータが1個のCMOSインバータからなるクロック分配回路。
【請求項7】
クロック信号が入力される第1入力ノードを有する第1のインバータ回路と、
前記第1のインバータ回路の第1出力ノードと接続される第2の入力ノードを有し、前記クロック信号の周波数に応じて駆動能力が変化する第2のインバータ回路と、を備え、
前記第1のインバータ回路の前記第1入力ノードに共通に接続されているMOSトランジスタの個数が、前記第2のインバータ回路の前記第2入力ノードに共通に接続されているMOSトランジスタの個数より少ないことを特徴とするクロックバッファ回路。
【請求項8】
前記第1のインバータ回路と前記第2のインバータ回路の間に、前記第1のインバータ回路の前記第1出力ノードに接続される第3入力ノードと、前記第2のインバータの第2入力ノードと接続されている第3出力ノードを有する第3のインバータ回路をさらに備え、
前記第1のインバータ回路の前記第1入力ノードに共通に接続されているMOSトランジスタの個数が、前記第3のインバータ回路の前記第3入力ノードに共通に接続されているMOSトランジスタの個数より少ないことを特徴とする請求項7に記載のクロックバッファ回路。
【請求項9】
前記第1のインバータ回路の前記第1入力ノードに共通に接続されているMOSトランジスタの個数は、2個であることを特徴とする請求項7に記載のクロックバッファ回路。
【請求項10】
前記第3のインバータ回路の駆動能力は、前記クロック信号の周波数に応じて変化しないことを特徴とする請求項8に記載のクロックバッファ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−138767(P2012−138767A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289861(P2010−289861)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】