説明

シリカ系硬化被膜の形成方法、シリカ系硬化被膜改善用液体、シリカ系硬化被膜及び電子部品

【課題】 従来のポーラス膜と同等又はそれ以下の比誘電率を有し、しかも十分に機械強度に優れたシリカ系硬化被膜の形成方法を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決する本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法は、基板上に形成されたシリカ系被膜内部に第1の触媒を含有する液体を浸透させる第1工程と、第1工程の後にシリカ系被膜を硬化してシリカ系硬化被膜を得る第2工程とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系硬化被膜の形成方法、シリカ系硬化被膜改善用液体、シリカ系硬化被膜及び電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI等の半導体素子といった電子デバイス部品において、集積回路の集積度の増大及び素子密度の向上等に伴い、配線間容量が増大して信号伝播速度が低下するという配線遅延の問題が顕在化してきた。例えば、電子デバイス部品の配線間隔がおおよそ0.5μmを超える場合では、むしろトランジスタ遅延によるデバイス全体への影響が支配的であり、配線遅延による影響は比較的小さい。しかしながら、LSIの高集積化に伴い、その配線間隔が約0.5μm以下となると、トランジスタ遅延よりも配線遅延の問題が重大なものとなる。
【0003】
この配線遅延の問題を軽減する手段として、電子部品に用いられる絶縁材料の低誘電率化が知られている。一般に配線の信号伝搬速度(v)、及び配線材料が接する絶縁材料の比誘電率(ε)は、下記式(2);
v=k/√ε …(2)
で表される関係を示す(式中のkは定数である)。つまり、使用する周波数領域を高くすると共に、絶縁材料の比誘電率(ε)を低減することにより、信号伝搬の高速化が達成される。例えば、従来から、比誘電率4.2程度のCVD法によって形成されるSiO膜が層間絶縁膜の形成材料として用いられている。しかしながら、最近では、配線間隔が0.09μm以下の電子部品も実用化されつつあり、このような配線間隔の電子部品では、比誘電率が2.4以下程度の絶縁材料が切望されている(例えば非特許文献1参照。)。
【0004】
誘電率が比較的低い低誘電率材料としては、CVD法により形成する比誘電率3.5程度のSiOF膜、スピンコート法により形成する比誘電率が2.5〜3.0程度の有機ポリマー膜、あるいはシリカ系膜等が挙げられ、これらの膜についての検討がなされている。これらのなかで、今後必要とされる比誘電率(2.4以下)を実現するためには、膜中に空孔(空隙)を有するシリカ系ポーラス膜が有力と考えられており、この膜を層間絶縁被膜として採用するための検討・開発が盛んに行われている。
【0005】
そのようなポーラス膜の形成方法として、例えば特許文献1には、有機SOG材の低誘電率化が提案されている。この方法は、金属アルコキシドの加水分解縮重合物と共に加熱することにより揮発又は分解する特性を有するポリマーを含有してなる組成物から被膜を形成し、この被膜を加熱することによって空孔を形成するものである。
【特許文献1】特開平10−283843号公報
【非特許文献1】”INTERNATIONAL TECHNOLOGY ROADMAP FOR SEMICONDUCTORS 2002 UPDATE”、[online]、Semiconductor Industry Association、[平成16年8月4日検索]、インターネット<URL:http://public.itrs.net/Files/2002Update/2002Update.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のものを始めとする従来のポーラス膜の形成方法は、ポーラス膜の低密度化を比較的容易に実現でき、それによりポーラス膜の比誘電率を低下させることができる。しかしながら、本発明者らは、かかる従来のポーラス膜の形成方法について詳細に検討したところ、従来の形成方法により得られるポーラス膜は、空孔を有しない膜と比較して、その機械強度が著しく低下することを見出した。この機械強度の低下は、CMP時の応力によるポーラス膜の凝集破壊、そのポーラス膜に隣接する層との界面付近での剥離、並びにパッケージング工程での不良発生等、プロセス適合性に大きな問題点を生じさせることとなる。
【0007】
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、従来のポーラス膜と同等又はそれ以下の比誘電率を有し、しかも十分に機械強度に優れたシリカ系硬化被膜の形成方法を提供することを目的とする。また、本発明は、シリカ系硬化被膜の形成方法に用いるシリカ系硬化被膜改善用液体、その形成方法により得られるシリカ系硬化被膜、及びそのシリカ系硬化被膜を備えた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法は、基板上に形成されたシリカ系被膜内部に第1の触媒を含有する液体を浸透させる第1工程と、第1工程の後にシリカ系被膜を硬化してシリカ系硬化被膜を得る第2工程とを有し、シリカ系被膜の表面張力が、上記液体の表面張力よりも大きなものであることを特徴とする。
【0009】
ここで、上記液体の表面張力は、温度25℃、相対湿度40〜60%の条件の下、リング法により測定される。
【0010】
このような形成方法により上記課題を解決できる要因は現在のところ詳細には明らかにされていないが、本発明者らはその要因を以下のように考えている。すなわち、従来のポーラス膜の形成方法では、原料組成物に含まれる物質のうちの一部が未反応のままポーラス膜中に残存するため、所望の誘電率及び機械強度を有するポーラス膜を得難くなると推測される。
【0011】
一方、本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法によると、基板上に形成されたシリカ系被膜に対して、第1の触媒を含有する液体を用いて更に処理を施すので、シリカ系被膜中に未反応のまま残存する物質は、第1の触媒の触媒作用により、他物質に転化等するため減少すると考えられる。したがって、その未反応の物質に起因する誘電率の上昇を十分抑制可能となる。また、第1の触媒を含有する液体の浸透により、シリカ系被膜は更に硬化することができると推定される。これにより、シリカ系被膜(又はシリカ系硬化被膜)が空孔を有していても、その機械強度が向上し、本発明の課題を達成可能となる、と本発明者らは考えている。
【0012】
また、シリカ系硬化被膜及び液体が、上述のような関係の表面張力を有することにより、シリカ系硬化被膜の誘電率上昇の抑制効果及び機械強度の向上効果を十分有効に発揮できる。これは以下の要因によるものと発明者らは考えているが、要因はこれに限定されない。すなわち、上述の液体は、その表面張力がシリカ系被膜のものよりも小さいため、シリカ系被膜の内部の例えば空孔内にも十分浸透することができる。よって、シリカ系被膜内部に残存する未反応物質と第1の触媒とが接触しやすくなり、これに起因して、誘電率上昇の抑制効果及び機械強度の向上硬化を十分有効に発揮できると考えられる。同様の観点から、本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、上記液体の表面張力が21mN/m以下であると好ましい。
【0013】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、上記シリカ系被膜の表面張力が、上記液体の表面張力よりも5mN/m以上大きなものであるとより好ましい。これにより、上述の誘電率上昇の抑制効果及び機械強度の向上効果を更に一層有効に発揮できる。これはシリカ系被膜内部へ液体がより浸透しやすくなることに起因すると推測される。
【0014】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法の第1工程において、液体を浸透させる方法は、シリカ系被膜に液体を塗布する方法、液体中にシリカ系被膜を浸漬する方法、又はシリカ系被膜に液体を噴霧する方法のいずれであってもよい。
【0015】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、液体が更に溶媒を含有すると好ましい。これにより、液体中の触媒の分散性が向上するので、より効率よく未反応物質を消費することができ、シリカ系硬化被膜の機械強度を高めることが可能となる。
【0016】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、第1の触媒がシラノール基間の脱水縮合反応に対して触媒作用を示すものであると好ましい。これにより、シリカ系硬化被膜の誘電率上昇を更に抑制でき、その機械強度を一層向上することができる。これは、シリカ系被膜中に残存する未反応物質のうち、誘電率の上昇に強く影響を与えているのがシラノール基を有する化合物であり、第1の触媒としてシラノール基間の脱水縮合反応用の触媒を採用すると、シラノール基を有する化合物が減少することによると考えられる。また、シラノール基間の脱水縮合反応により、シリカ系硬化被膜中の架橋密度が一層高くなるため、更に機械強度の高いシリカ系硬化被膜を得ることができると考えられる。ただし、要因はこれらに限定されない。
【0017】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、第1の触媒が、第1の酸性化合物、第1の塩基性化合物及び第1のオニウム塩化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有すると好ましい。ここで第1の酸性化合物は酸性のオニウム塩化合物を除くものであり、第1の塩基性化合物は塩基性のオニウム塩化合物を除くものである。これらの触媒は、未反応のシラノール基間の脱水縮合反応を一層促進させる効果がある。同様の観点から、本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、第1の塩基性化合物が分子内に窒素原子を有するものであるとより好ましい。
【0018】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、溶媒が分子内にフッ素原子を有する溶媒を含有するとより好ましい。これによりシリカ系硬化被膜の誘電率上昇の抑制効果及び機械強度の向上効果を更に有効に発揮できると考えられる。これは、分子内にフッ素原子を有する溶媒は表面張力が概して小さく、シリカ系被膜内部への浸透性が高いためと考えられる。
【0019】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、シリカ系硬化被膜が空孔を有するものであるとより好ましい。このようなシリカ系硬化被膜は一層低い誘電率を有することが可能となる。しかも、これまでの記載から明らかなように、該シリカ系硬化被膜は空孔を有しているにもかかわらず、十分な機械強度を有するものである。
【0020】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、シリカ系被膜が、下記式(1);
SiX4−n …(1)
で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂を含有するシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜に含まれる溶媒を除去して得られるものであると好ましい。ここで、式(1)中、Rは、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を有する基、炭素数1〜20の有機基、又はH原子若しくはF原子を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。
【0021】
シリカ系被膜の形成の際、このような構成の組成物を用いることにより、低誘電率を発現するシリカ系被膜(Low−k膜)が形成される。特に、本発明においては、上述の第1の触媒を含有する液体との複合的作用により、より低誘電率であってしかも機械強度に一層優れたシリカ系硬化被膜を形成可能となる。
【0022】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、シリカ系被膜形成用組成物が更に第2の触媒を含有するとより好ましい。この第2の触媒は上述の第1の触媒と同様の作用を有するので、該シリカ系被膜形成用組成物は、得られるシリカ系硬化被膜の低誘電率化及び高機械強度化に一層貢献することができる。
【0023】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、第2の触媒がシラノール基間の脱水縮合反応に対して触媒作用を示すものであると更に好ましい。これにより、シリカ系硬化被膜の誘電率上昇を更に抑制でき、その機械強度を一層向上させることができる。これは上述の第1の触媒としてシラノール基間の脱水縮合反応触媒を用いた場合と同様の要因によると考えられる。
【0024】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、第2の触媒が、第2の酸性化合物、第2の塩基性化合物及び第2のオニウム塩化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有すると更に好ましい。ここで第2の酸性化合物は酸性のオニウム塩化合物を除くものであり、第2の塩基性化合物は塩基性のオニウム塩化合物を除くものである。これらの触媒は、未反応のシラノール基間の脱水縮合反応を一層促進させる効果がある。同様の観点から、本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法において、第2の塩基性化合物が分子内に窒素原子を有するものであるとより好ましい。
【0025】
本発明のシリカ系硬化被膜改善用液体は、上述のシリカ系硬化被膜の形成方法に用いられる上記液体であることを特徴とする。したがって、このシリカ系硬化被膜改善用液体を用いると、十分に低い誘電率及び十分に高い機械強度を同時に満足するシリカ系硬化被膜を形成可能となる。
【0026】
本発明のシリカ系硬化被膜は、基板上に設けられており、上述のシリカ系硬化被膜の形成方法により形成されてなることを特徴とする。かかる被膜は、特に、基板上に設けられた複数の導電性層のうち互いに隣設された導電性層の間に形成されたもの、すなわち、リーク電流を十分に低減する必要のある絶縁膜、例えば層間絶縁膜として有用である。
【0027】
本発明の電子部品は、基板上に上述のシリカ系硬化被膜が形成されてなることを特徴とする。かかる本発明の電子部品は、十分に高品質で信頼性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来のポーラス膜と同等又はそれ以下の比誘電率を有し、しかも十分に機械強度に優れたシリカ系硬化被膜の形成方法を提供することができる。また、本発明は、シリカ系硬化被膜の形成方法に用いるシリカ系硬化被膜改善用液体、その形成方法により得られるシリカ系硬化被膜、及びそのシリカ系硬化被膜を備えた電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
【0030】
本発明のシリカ系硬化被膜の形成方法は、基板上に形成された、主にSi−O結合を有する材料から構成される被膜であるシリカ系被膜内部に、第1の触媒を含有する液体を浸透させる第1工程、及びその第1工程の後に上記シリカ系被膜を硬化してシリカ系硬化被膜を得る第2工程を必須の工程とするものである。
【0031】
(基板の準備)
第1工程の前に、シリカ系被膜を形成されたSiウェハ等の基板を準備する。基板上にシリカ系被膜を形成する方法としては特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。まず、加水分解縮合等の縮合により、縮合可能なケイ素含有化合物から得られるシロキサン樹脂を含むシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布し塗布膜を形成する。
【0032】
上述のケイ素含有化合物はその分子中にケイ素(Si)原子を有し縮合可能なものであれば特に限定されないが、本発明の効果をより有効にかつ確実に得るためには、例えば上記一般式(1)で表されるものを用いると好ましい。ここで、式(1)中、Rは、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を有する基、炭素数1〜20の有機基、又はH原子若しくはF原子を示し、Xは加水分解性基を示す。加水分解性基Xの具体例としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン基、アセトキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これらのなかで、シリカ系被膜形成用組成物にした場合の液状安定性及びその組成物の被膜塗布特性等の観点から、アルコキシ基であると好ましい。
【0033】
加水分解性基Xがアルコキシ基である場合の上記一般式(1)で表される化合物としては、それぞれ置換されていてもよい、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0034】
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン等が例示できる。
【0035】
トリアルコキシシランとしては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
ジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0037】
加水分解性基Xがアリールオキシ基である場合の上記一般式(1)で表される化合物としては、それぞれ置換されていてもよい、テトラアリールオキシシラン、トリアリールオキシシラン、ジオルガノジアリールオキシシラン等が挙げられる。テトラアリールオキシシランとしては、例えばテトラフェノキシシランが挙げられる。トリアリールオキシシランとしては、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン等が挙げられる。ジオルガノジアリールオキシシランとしては、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジ−iso−プロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン等が挙げられる。
【0038】
加水分解性基Xがハロゲン原子(ハロゲン基)である場合の上記一般式(1)で表される化合物(ハロゲン化シラン)としては、上述の各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がハロゲン原子で置換された化合物が例示できる。更に、Xがアセトキシ基である場合の上記式(1)で表される化合物(アセトキシシラン)としては、上述の各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がアセトキシ基で置換された化合物が挙げられる。また、Xがイソシアネート基である場合の上記式(1)で表される化合物(イソシアネートシラン)としては、上述の各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がイソシアネート基で置換された化合物が挙げられる。更に、Xがヒドロキシル基である場合の上記式(1)で表される化合物(ヒドロキシシラン)としては、上述の各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がヒドロキシル基で置換された化合物が例示できる。なお、上記式(1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
これらの化合物の中でも、組成物自体の液状安定性や被膜塗布特性等の観点から、テトラアルコキシシラン及びオルガノトリアルコキシシランが更に好ましく、テトラエトキシシラン及びメチルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0040】
上記一般式(1)で表される化合物において、nは0〜2の整数を示す。ただし、nが2のとき、上記Rは各々同一でも異なっていてもよい。また、nが0〜2のとき、上記Xは各々同一でも異なっていてもよい。なお、nは0〜1であることが好ましく、nが0である上記一般式(1)で表される化合物とnが1である上記一般式(1)で表される化合物を組み合わせて使用することが好ましい。nが0及び1である化合物を組み合わせた場合には、シロキサン樹脂は、SiOで表される単位及びRSiO1.5で表される単位を含む。ここで、Rは上記と同義である。かかるシロキサン樹脂は、多官能性を有する上述のテトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとを共加水分解縮合させて得られる。なお、SiOで表される単位はテトラアルコキシシランに由来する単位であり、RSiO1.5で表される単位はトリアルコキシシランに由来する単位である。シロキサン樹脂はかかる単位を含むことにより架橋密度が向上するため、被膜特性を向上させることができる。
【0041】
最終的に得られるシリカ系硬化被膜の低誘電率化及び高機械強度化の観点から、シリカ系被膜形成用組成物には触媒(第2の触媒)が含有されると好ましく、その触媒が下記式(A)で表されるようなシラノール基間の脱水縮合反応に対して触媒作用を示すものであると更に好ましい。
【化1】

【0042】
このような触媒は、上記式(1)で表される化合物の加水分解縮合において加水分解縮合反応を促進する触媒(第2の触媒)として作用する。かかる触媒としては、酸性化合物(第2の酸性化合物)、塩基性化合物(第2の塩基性化合物)又はオニウム塩化合物(第2のオニウム塩化合物)を用いることができる。これらの中で、シリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布する前に加水分解縮合を促進させるものとしては、第2の酸性化合物を用いると好ましい。
【0043】
第2の酸性化合物としては無機酸、有機酸のいずれであってもよく、また、1種類を単独で若しくは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
無機酸としては、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等を用いることができる。これらの中で、最終的に得られる硬化膜であるシリカ系硬化被膜の硬度の向上、塗布溶液の安定性の観点から硝酸が好ましい。
【0045】
有機酸としては、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピコリン酸、ピメリン酸、1,10−フェナントロリン酸、ニコチン酸、酒石酸、コハク酸、グルタル酸、2−グリセリンリン酸、D−グルコース−1−リン酸、アジピン酸、蟻酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸、スルホン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸等を用いることができる。これらの中では、最終的に得られる硬化膜であるシリカ系硬化被膜の硬度の向上、塗布溶液の安定性及び誘電率を更に低下させ得る等の観点により、マレイン酸が好ましい。
【0046】
触媒として第2の酸性化合物を用いる場合の、その使用量は、式(1)で表される化合物1モルに対して0.0001モル〜1モルの範囲が好ましい。この使用量が1モルを超える場合、加水分解縮合時にゲル化が促進される傾向があり、0.0001モル未満の場合、実質的に反応(加水分解縮合反応)が進行しない傾向がある。
【0047】
第2の塩基性化合物としては無機塩基、有機塩基のいずれであってもよく、また、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。有機塩基としては、分子内に窒素原子を有する有機塩基が挙げられ、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メトキシプロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、エチルアミノプロピルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、メチルピリジン、ピロール、ピペラジン、ジメチルピペラジン、ピロリジン、ジアミノベンゼン、テトラメチルアンモウムオキサイド、テトラブチルアンモウムオキサイド、ヘキサメチルホスホルアミド、1.8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1.5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンなどが例示できる。
【0049】
これらの中で、電気的信頼性等の観点から、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を有しない塩基である有機塩基が好ましい。さらには、未反応のシラノール基間の脱水縮合反応を一層促進させる観点から、窒素原子を分子内に有する有機塩素がより好ましい。
【0050】
第2の塩基性化合物は、特に基板上にシリカ系被膜形成用組成物を塗布した後に脱水縮合反応を促進させる効果を有する。
【0051】
第2のオニウム塩化合物としては、例えば、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。これらの中では、より組成物の安定性に優れる点でアンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩としては、ハロゲン化アンモニウム、有機酸アンモニウム塩などが挙げられる。ハロゲン化アンモニウムとしては、第4級のハロゲン化アンモニウム塩であってもよく、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムフロライドなどが例示できる。
【0052】
有機酸アンモニウム塩としては、溶液の安定性及び電気特性の向上の観点から、第4級の有機酸アンモニウム塩が好ましく、テトラメチルアンモニウムの有機酸塩などが挙げられる。テトラメチルアンモニウムの有機酸塩としては、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等が例示できる。
【0053】
これらのオニウム塩化合物の中では、シリカ系硬化被膜の電気特性を向上させる観点から、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩が好ましく、テトラメチルアンモニウム硝酸塩がより好ましい。
【0054】
オニウム塩を水溶液とした場合、そのpHが1.5〜10であると好ましく、2〜8であるとより好ましく、3〜6であると特に好ましい。このpHが1.5を下回ると、あるいは、pHが10を超えると、シリカ系被膜形成用組成物の安定性、及び得られるシリカ系硬化被膜の成膜性等が劣る傾向にある。
【0055】
第2のオニウム塩化合物は、特に基板上にシリカ系被膜形成用組成物を塗布した後に脱水縮合反応を促進させる効果を有すると考えられるが、塗布前に触媒として作用するものであってもよい。触媒としてオニウム塩化合物を用いる場合の、その使用量は、シリカ系被膜形成用組成物の全量基準で0.001質量ppm〜5質量%の範囲が好ましく、0.01質量ppm〜2質量%であるとより好ましく、0.1質量ppm〜1質量%であると一層好ましい。この使用量が0.001質量ppm未満であると、最終的に得られるシリカ系硬化被膜の電気特性、機械特性が劣る傾向にある。一方、この使用量が5質量%を超えると、組成物の安定性、成膜性等が劣る傾向にあると共に、シリカ系硬化被膜の電気特性及びプロセス適合性が低下する傾向にある。なお、これらのオニウム塩は、必要に応じて水や溶媒に溶解あるいは希釈してから、所望の濃度となるように添加することができる。
【0056】
シリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布した後に、上述の第2の酸性化合物、第2の塩基性化合物及び/又は第2のオニウム塩化合物を脱水縮合反応の触媒として使用する場合、その使用量は、シリカ系被膜形成用組成物の全量基準で、1質量ppb〜3質量%であると好ましく、10質量ppb〜1質量%であるとより好ましく、100質量ppb〜0.5質量%であると更に好ましい。使用量が1質量ppbを下回ると、最終的に得られるシリカ系硬化被膜の電気特性、機械特性が低下する傾向にある。また、使用量が3質量%を超えると、シリカ系被膜形成用組成物の安定性、シリカ系被膜(又はシリカ系硬化被膜)の成膜性等が低下する傾向にあり、さらにシリカ系硬化被膜の電気特性、プロセス適合性が低下する傾向にある。
【0057】
これらの触媒は、必要に応じて水や溶媒によって溶解あるいは希釈して所望の濃度になるよう、シリカ系被膜形成用組成物中に添加することができる。
【0058】
この加水分解縮合反応(脱水縮合反応)において、加水分解によって副生するアルコールを、必要に応じてエバポレータ等を用いて除去してもよい。また、加水分解縮合反応系中に存在させる水の量を適宜決定することができるが、この水の量としては、式(1)で表される化合物1モルに対して0.5モル〜20モルの範囲内の値とすると好ましい。この水の量が0.5モル未満の場合及び20モルを超える場合には、シリカ系硬化被膜の成膜性が悪化すると共に、組成物自体の保存安定性が低下する傾向にある。
【0059】
得られるシロキサン樹脂は、溶媒への溶解性、機械特性、成形性等の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定され且つ標準ポリスチレンの検量線を使用して換算された重量平均分子量が、300〜20000であることが好ましく、500〜10000であるとより好ましい。この重量平均分子量が300未満であると、シリカ系被膜の成膜性が劣る傾向にある。一方、この重量平均分子量が20000を超えると、溶媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0060】
シロキサン樹脂中の炭素含有割合は、シロキサン樹脂の全質量基準で11質量%以下であると好ましく、10.4質量%以下であるとより好ましく、9.6質量%以下であると更に好ましく、8.8質量%以下であると特に好ましい。この炭素含有割合が11質量%を超えると、上層膜との接着性、層間絶縁膜の機械強度等が著しく劣る傾向にある。また、炭素含有割合が約6質量%以上であると好ましい。約6質量%未満であると、層間絶縁膜の電気特性が劣る傾向にある。
【0061】
この炭素含有割合は、シロキサン樹脂骨格が完全に縮合硬化した状態を仮定して計算されるものである。ここで、シロキサン樹脂が、炭素を有しない化合物であるテトラアルコキシシランと、炭素を有する化合物であるメチルトリアルコキシシランとの共重合体である場合を例にとって説明する。この場合、テトラアルコキシシランの縮合硬化物をSiO(分子量60.08)と仮定し、メチルトリアルコキシシランの縮合硬化物をCHSiO1.5(分子量67.12)と仮定する。さらに、その共重合体におけるSiOのモル比率及びCHSiO1.5のモル比率を、それぞれSiOの分子量及びCHSiO1.5の分子量にそれぞれ掛け合わせ、更に掛け合わせたもの同士の和を分母とし、炭素の原子量(12.011)と、CHSiO1.5のモル比率とを掛け合わせたものを分子として計算できる。これを式に表すと下記式(3)のようになる。
=Aw×MrCS×100/{Mw×Mr+MwCS×MrCS} …(3)
【0062】
ここで、式(3)中、Rは炭素含有割合(質量%)、Awは炭素の原子量、Mwはテトラアルコキシシランの縮合化合物の分子量、MwCSはメチルトリアルコキシシランの縮合硬化物の分子量、Mrはシロキサン樹脂中のテトラアルコキシシラン(モノマー)のモル比率、及びMrCSはシロキサン樹脂中のメチルトリアルコキシシラン(モノマー)のモル比率をそれぞれ示す。
【0063】
したがって、シロキサン樹脂がテトラエトキシシラン0.600モルとメチルトリエトキシシラン0.400モルとの共重合体である場合、該シロキサン樹脂中の炭素含有割合は下記式(4)のように算出される。
=12.011×0.400×100/(60.08×0.600+67.12×0.400)=7.64<単位:質量%> …(4)
【0064】
シリカ系被膜形成用組成物中に、上記一般式(1)で表される化合物を溶解可能な溶媒が含有されていてもよい。そのような溶媒としては、例えば、エーテルアセテート系溶媒、エーテルグリコール系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、上記以外のエーテル系溶媒、エステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、水等の溶媒が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0065】
エーテルアセテート系溶媒としては、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等が例示できる。
【0066】
エーテルグリコール系溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0067】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が例示可能である。
【0068】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0069】
エーテル系溶媒としては、エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が例示できる。
【0070】
エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等が挙げられる。
【0071】
溶媒の使用量は、シリカ系被膜形成用組成物中のシロキサン樹脂の量が、シリカ系被膜形成用組成物の全量に対して3質量%〜25質量%となるような量とされることが好ましい。この溶媒の量について、シリカ系被膜形成用組成物中のシロキサン樹脂の量が3質量%未満だとシリカ系被膜形成用組成物の液状安定性、シリカ系被膜(又はシリカ系硬化被膜)の成膜性等が低下する傾向にある。シリカ系被膜形成用組成物中のシロキサン樹脂の量が25質量%を超えると、所望の膜厚を有するシリカ系硬化被膜を得ることが困難となる傾向にある。
【0072】
シリカ系被膜形成用組成物中に、500℃以下、好ましくは250〜500℃の加熱処理、あるいはプラズマ処理、または紫外線、赤外線若しくは電子線の照射処理によって分解し、空隙(空孔)を形成させる分解性化合物や多孔質体を必要に応じて含有してもよい。
【0073】
そのような化合物としては、例えば、ビニルエーテル系化合物、オキシエチレン単位を有するビニル系化合物、オキシプロピレン単位を有するビニル系化合物、ビニルピリジン系化合物、スチレン系化合物、アルキルエステルビニル系化合物、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレート系化合物、オキシアルキレン単位を有する重合体、ポリカーボネート重合体等から選ばれるものが挙げられる。
【0074】
これらの中でも、その分解特性及びシリカ系硬化被膜の機械強度の観点から、オキシアルキレン単位を有する重合体が好ましい。
【0075】
上記オキシアルキレン単位としてはオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシテトラメチレン単位、オキシブチレン単位等が挙げられる。オキシアルキレン単位を有する重合体としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩等のエーテルエステル型化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等のエーテルエステル型化合物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール型化合物等を挙げることができる。これらの中では、その分解特性及びシリカ系硬化被膜の機械強度の観点から、オキシプロピレン単位を有する重合体が好ましく、ポリプロピレングリコールが一層好ましい。
【0076】
また、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレート系化合物としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル等の炭素数1〜6のアルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル等の炭素数1〜6のアルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチル等が例示可能である。
【0077】
(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレート系化合物は、ヒドロキシル基を有する化合物との共重合体として用いてもよい。その具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
【0078】
ポリカーボネートとしては、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリトリメチレンカーボネート、ポリテトラメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等の炭酸とアルキレングリコールとの重縮合物を挙げることができる。
【0079】
分解性化合物は、上述の溶媒への溶解性、シロキサン樹脂との相溶性、シリカ系硬化被膜の機械特性、シリカ系被膜やシリカ系硬化被膜の成形性等の観点から、GPCにより測定され、かつ標準ポリスチレンの検量線を使用して換算された重量平均分子量が、200〜10000であることが好ましく、300〜5000であることがより好ましく、400〜2000であることが更に好ましい。この重量平均分子量が200未満であると、空孔の形成が不十分となる傾向にある。一方、この重量平均分子量が10000を超えると、特にシロキサン樹脂との相溶性が低下する傾向にある。
【0080】
分解性化合物の含有量は、シリカ系被膜形成用組成物の全質量基準で、0.10質量%〜10質量%であることが好ましく、1.0質量%〜5.0質量%であることがより好ましい。この含有量が0.10質量%未満であると、空孔形成が不十分となる傾向がある。一方、10質量%を越えると、膜強度が低下する傾向がある。
【0081】
シリカ系被膜形成用組成物はアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有しないことが望ましい。これらの金属を含有する場合のその含有量は、該組成物全体の質量に対して、100質量ppb以下であると好ましく、20質量ppb以下であるとより好ましい。これらの金属の含有量が100質量ppbを超えると、半導体素子に金属イオンが流入しやすくなるため、所望のデバイス特性を得難くなる傾向にある。したがって、これらのアルカリ金属やアルカリ土類金属は、シリカ系被膜形成用組成物を調製する際に、必要に応じてイオン交換フィルター等の使用により除去すると好ましい。
【0082】
シリカ系被膜形成用組成物は、分解性化合物又は多孔質体の凝集防止や、分散性向上のため、必要に応じて界面活性剤を含有してもよい。
【0083】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤を用いることが可能である。それらの中でも、ハロゲン成分及び金属不純分を含有し難い観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0084】
ノニオン性界面活性剤としては、エチレンオキサイド構造を有する化合物、プロピレングリコール構造を有する化合物、アセチレングリコール系構造を有する化合物などが挙げられる。
【0085】
界面活性剤としては、3つのポリアルキレンオキサイド鎖を有するトリブロックコポリマーも用いることができる。
【0086】
これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
シリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布する方法はスピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法等、特に限定されないが、シリカ系被膜の成膜性及び膜均一性に優れる観点から、スピンコート法が好ましい。以下、このスピンコート法を例にとって、シリカ系被膜の形成方法について説明する。
【0088】
まず、シリカ系被膜形成用組成物をSiウェハ等の基板上に好ましくは300回転/分〜5000回転/分、より好ましくは700回転/分〜3000回転/分でスピン塗布して塗布膜を形成する。この際、回転数が300回転/分未満であると、膜均一性が低下する傾向にある一方で、5000回転/分を超えると、成膜性が悪化するおそれがあるため好ましくない。
【0089】
次いで、この塗布膜に対して加熱工程を実施し、シリカ系被膜を得る。この工程は、組成物中の溶媒の乾燥及びシロキサン樹脂の硬化度を高めるためのステップであり、50〜400℃、好ましくは100〜350℃の温度で、ホットプレート等を用いて加熱処理を行う。なお、加熱工程は、必要に応じて、異なる温度での多段加熱であってもよい。
【0090】
この加熱温度が50℃未満であると、溶媒の乾燥が十分に行われない傾向にある。一方、加熱温度が400℃を超えると、被膜においてシロキサン骨格が形成される前に分解性化合物が熱分解揮発してしまい、所望の機械強度及び低誘電特性を有するシリカ系硬化被膜を得難くなるおそれがある。
【0091】
(第1工程)
次に、基板上に形成されたシリカ系被膜の内部に、第1の触媒を含有する液体であるシリカ系硬化被膜改善用液体(以下、「被膜改善用液体」という。)を浸透させる。この被膜改善用液体は第1の触媒を含有し、それを浸透させるシリカ系被膜の表面張力よりも表面張力が小さいものであれば特に限定されない。被膜改善用液体の表面張力がシリカ系被膜の表面張力よりも小さいと、該被膜改善用液体のシリカ系被膜への浸透性が向上するので、得られるシリカ系硬化被膜の誘電率が十分に低下し、機械強度が十分に向上する。
【0092】
同様の観点から、シリカ系被膜の上記表面張力と被膜改善用液体の上記表面張力との差が5mN/m以上であるとより好ましく、5mN/m〜15mN/mであると更に好ましく、10mN/m〜15mN/mであると特に好ましい。この差が15mN/mを超えるとシリカ系被膜が膨潤してその膜厚が不均一になる傾向がある。
【0093】
被膜改善用液体の表面張力は、シリカ系被膜に対する浸透性の観点から、21mN/m以下であると好ましく、8mN/m〜21mN/mであるとより好ましく、9mN/m〜15mN/nmであると更に好ましく、9mN/m〜13mN/mであると特に好ましい。被膜改善用液体の表面張力が8mN/m未満である場合、被膜改善用液体の調製が困難となる傾向がある。
【0094】
被膜改善用液体の表面張力は、ウィルヘルミープレート法やリング(デュヌイ)法などの公知の方法を応用した表面張力測定装置によって測定可能であるが、本発明においてはリング法によって測定される。
【0095】
シリカ系被膜の表面張力は、いわゆる臨界表面張力として導出されるものである。臨界表面張力の導出方法は以下のとおりである。まず、臨界表面張力を導出したい固体表面上、すなわち、本発明においてはシリカ系被膜表面に、数種類の既知で異なった表面張力(温度23〜25℃、相対湿度40〜60%条件下、リング法)を有する液体を滴下し、固体表面上に液滴を形成させる。次いで、その固体表面上の各液滴の接触角(θ)を測定する。得られた接触角(θ)からそのcosθの値を求め、液体の表面張力(横軸、x軸)に対するcosθ(縦軸、y軸)の値をグラフにプロットする。そのプロットから表面張力(x)とcosθ(y)との関係を一次式に近似して求める。そして、得られた一次式にcosθ=1を挿入し、その際の表面張力、すなわち臨界表面張力を導出する。
【0096】
臨界表面張力は、固体表面のぬれ特性を示す尺度であり、この臨界表面張力よりも小さな表面張力を有する液体を該固体表面に滴下すると、その液体は固体表面上で自発的に広がり、その固体表面を完全にぬらす。臨界表面張力が大きな固体表面は比較的多くの種類の液体に対しぬらされやすく、臨界表面張力が小さな固体表面は比較的多くの種類の液体に対しぬらされ難くなる(「接着ハンドブック」日本接着協会編、第2版、第20〜49頁を参照)。
【0097】
ここで、液滴の接触角(θ)は、23〜25℃、常圧(1atm)、常湿(相対湿度として40〜60%)の測定条件の下、市販の接触角測定機で測定することができる。また、表面張力(x)とcosθ(y)との関係を一次式に近似して求める際には、プロットから最小二乗法によって直線を求め、その直線の傾きと切片を導出する。こうして求められた一次式は、例えば下記式(5)のように表される。
x=(y−b)/a <単位;dyn/cm、mN/m> …(5)
式中、xは液体の表面張力(単位;dyn/cm)、yはcosθ、aは直線の傾き、bは直線の切片を示す。この式(5)のy=1の時のxの値が臨界表面張力となる。
【0098】
臨界表面張力を導出する際に用いられる数種類の既知で異なった表面張力を有する液体としては、水、グリセリン、ホルムアミド、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコールなどの水素結合液体、n−へキサン、n−デカンなどの炭化水素液体等が挙げられる。
【0099】
第1の触媒は、シリカ系被膜中に残存するシラノール基を有する化合物を減少させる観点から、シラノール基間の脱水縮合反応に対して触媒作用を示すものであると好ましい。かかる触媒としては、酸性化合物(第1の酸性化合物)、塩基性化合物(第1の塩基性化合物)又はオニウム塩化合物(第1のオニウム塩化合物)を用いることができる。
【0100】
第1の酸性化合物としては、例えば、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸などの無機酸や、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピコリン酸、ピメリン酸、1,10−フェナントロリン酸、ニコチン酸、酒石酸、コハク酸、グルタル酸、2−グリセリンリン酸、D−グルコース−1−リン酸、アジピン酸、蟻酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸、スルホン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸などの有機酸を用いることができる。
【0101】
第1の塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アンモニア、トリエチルアミンなどの有機塩基が挙げられ、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
かかる有機塩基としては、分子内に窒素原子を有する有機塩基が挙げられ、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メトキシプロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、エチルアミノプロピルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、メチルピリジン、ピロール、ピペラジン、ジメチルピペラジン、ピロリジン、ジアミノベンゼン、テトラメチルアンモウムオキサイド、テトラブチルアンモウムオキサイド、ヘキサメチルホスホルアミド、1.8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1.5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンなどの化合物が挙げられる。
【0103】
これらの中で、電気的信頼性等の観点から、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を有しない塩基である有機塩基が好ましい。さらには、未反応のシラノール基間の脱水縮合反応を一層促進させる観点から、窒素原子を分子内に有する有機塩基がより好ましい。
【0104】
第1のオニウム塩化合物としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。これらの中では、組成物の安定性により優れる観点からアンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩としては、ハロゲン化アンモニウム、有機酸アンモニウム塩などが挙げられる。ハロゲン化アンモニウムとしては、第4級のハロゲン化アンモニウム塩であってもよく、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムフロライドなどが例示できる。
【0105】
有機酸アンモニウム塩としては、溶液の安定性及び電気特性の観点から、第4級の有機酸アンモニウム塩が好ましく、テトラメチルアンモニウムの有機酸塩などが挙げられる。テトラメチルアンモニウムの有機酸塩としては、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等が例示できる。
【0106】
これらのオニウム塩化合物の中では、シリカ系硬化被膜の電気特性を向上させる観点から、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩がより好ましく、テトラメチルアンモニウム硝酸塩が特に好ましい。
【0107】
上述の第1の酸性化合物、第1の塩基性化合物及び/又は第1のオニウム塩化合物を第1の触媒として使用する場合、その使用量は、被膜改善用液体の全量基準で、0.0010質量%〜10質量%であると好ましく、0.010質量%〜5.0質量%であるとより好ましく、0.050質量%〜2.0質量%であると更に好ましい。使用量が0.0010質量%を下回ると、最終的に得られるシリカ系硬化被膜の電気特性、機械特性が低下する傾向にある。また、使用量が10質量%を超えると、シリカ系硬化被膜の電気特性、プロセス適合性が低下する傾向にある。
【0108】
被膜改善用液体は、溶媒を含有する溶液であると好ましい。被膜改善用液体が溶媒を含有すると、第1の触媒の被膜改善用液体中での分散性が向上するので、シリカ系被膜の内部にまで該液体と共に第1の触媒を導入することが可能となる。これは、最終的に得られるシリカ系硬化被膜の誘電率上昇の抑制及び機械強度の向上に繋がる。
【0109】
被膜改善用液体に含有される溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン等の飽和炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、パーフルオロデカリン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンなどの含フッ素脂肪族炭化水素系溶媒、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミンなどの含フッ素アルキルアミン系溶媒、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)などの含フッ素環状エーテル系溶媒、メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロヘキシルエーテルなどのハイドロフルオロエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0110】
これらの中で、含フッ素脂肪族炭化水素系溶媒、含フッ素アルキルアミン系溶媒、含フッ素環状エーテル系溶媒、ハイドロフルオロエーテル系溶媒などの分子内にフッ素原子を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒を含有する被膜改善用液体は、表面張力が低い傾向にあり、それによりシリカ系被膜への浸透性が一層高いものである。上述の溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
被膜改善用液体をシリカ系被膜内部に浸透させる方法としては、シリカ系被膜に被膜改善用液体を塗布する方法(スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法など)、被膜改善用液体中にシリカ系被膜を浸漬する方法(ディップコート法)及びシリカ系被膜に被膜改善用液体を噴霧する方法(スプレーコート法)等が挙げられる。これらの中で、シリカ系被膜内部への浸透性を更に向上させ、しかもシリカ系被膜の全体に被膜改善用液体を均一に浸透させる観点から、スピンコート法が好ましい。これにより、得られるシリカ系硬化被膜の成膜性及び膜均一性が向上する。
【0112】
被膜改善用液体の浸透方法としてスピンコート法を採用する場合、塗布の際のスピン速度は100回転/分〜5000回転/分であると好ましく、500回転/分〜2000回転/分であるとより好ましい。スピン速度が100回転/分を下回ると、被膜改善用液体の膜均一性が低下する一方で、5000回転/分を超えると、被膜改善用液体の成膜性が低下する傾向にある。
【0113】
上述のシリカ系被膜の形成、及び被膜改善用液体の浸透をいずれもスピンコート法で行う場合、シリカ系被膜の形成の際のスピン速度よりも、被膜改善用液体の塗布の際のスピン速度が低くてもよく、それらのスピン速度が同じであってもよい。この場合、両者の膜均一性、成膜性を十分に満足しつつ、一層効率的に成膜できるとともに、シリカ系被膜が空孔を有する場合、その空孔内への被膜改善液体の侵入をより容易にすることが可能となる。
【0114】
(第2工程)
第1工程の後、第2工程において、被膜改善用液体が内部に浸透した状態のシリカ系被膜を硬化して、シリカ系硬化被膜を得る。シリカ系被膜の硬化処理は、好ましくは、以下のようにして行われる。
【0115】
まず、主として溶媒などの揮発分を除去するために、ホットプレート等の公知の加熱処理装置を用いて、50〜400℃の温度でシリカ系被膜を加熱する。この加熱処理の際、シリカ系被膜周囲の雰囲気は特に限定されず、N、He、Arなどの不活性ガス雰囲気、O、空気などの酸化性ガス雰囲気、又は還元性ガス雰囲気のいずれであってもよい。加熱時間は、溶媒等の揮発分を除去できる程度でよく、加熱温度や雰囲気によって異なるが、通常は10秒〜60秒程度である。
【0116】
次いで、主としてシリカ系被膜を最終的に硬化させるために、石英チューブ炉などの公知の加熱処理装置を用いて、150〜500℃の温度でシリカ系被膜を加熱する。この温度が150℃未満では、シリカ系被膜の硬化が不十分となる傾向にあり、500℃を超えると、金属配線層がある場合に入熱量が増大して配線金属の劣化が生じるおそれが高くなる傾向にある。この加熱処理の際、シリカ系被膜周囲の雰囲気は特に限定されないが、シリカ系被膜の劣化抑制、電気特性の向上等の観点から、N、Ar、He等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。Oが雰囲気中に含まれる場合は、シリカ系被膜の劣化抑制のため、O濃度が10体積ppm〜5000体積ppmであると好ましい。また加熱時間は2分〜60分であると好ましい。加熱時間が2分を下回ると、シリカ系被膜の硬化が不十分となる傾向にあり、60分を超えると、金属配線層がある場合に入熱量が増大して配線金属の劣化が生じるおそれが高くなる傾向にある。
【0117】
これらの加熱処理における加熱処理装置としては、ホットプレート、石英チューブ炉の他、ラピッドサーマルアニール(RTA)炉が好ましい。また、シリカ系被膜の形成処理から上述の最終的な硬化処理までの間に、加熱処理又は硬化処理として、マイクロウエーブ処理、UV処理又はEB(電子ビーム)処理等を併用してもよい。
【0118】
なお、上述の加熱処理は異なる温度、異なる雰囲気又は異なる加熱処理装置の2段階に分けて行われるものであるが、1段階の加熱処理で揮発分の除去及びシリカ系被膜の硬化を行ってもよく、加熱処理を3段階以上に分けてもよい。
【0119】
こうして得られるシリカ系硬化被膜の膜厚は、0.010μm〜40μmであることが好ましく、0.050μm〜2.0μmであるとより好ましい。この膜厚が40μmを超えると、応力によってクラックが発生しやすくなる一方で、0.010μm未満であると、シリカ系被膜の上下に金属配線層が存在する場合に、上下配線間のリーク特性が悪化する傾向にある。
【0120】
本実施形態に係るシリカ系硬化被膜は、十分に低い誘電率を実現し、しかもたとえ空孔を有していても、その機械強度は十分に高いものである。これは、シリカ系被膜中に残存する原料物質による誘電率の上昇及び機械強度の低下を抑制するためと考えられる。すなわち、被膜改善用液体に含まれる第1の触媒の作用により、そのような原料物質を反応させ別物質へ変換又は除去可能となるためと推測される。
【0121】
かかるシリカ系硬化被膜を有する本発明の電子部品としては、半導体素子、多層配線板等の絶縁膜を有するデバイスが挙げられる。具体的には、半導体素子においては、表面保護膜(パッシベーション膜)、バッファーコート膜、層間絶縁膜等として使用することができる。一方、多層配線板においては、層間絶縁膜として好適に使用することができる。
【0122】
より具体的には、半導体素子として、ダイオード、トランジスタ、キャパシタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリー等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子等が挙げられる。また、多層配線板としては、MCM等の高密度配線板などが挙げられる。さらには、液晶パネル用の反射防止膜、反射膜や導光膜、導光体、太陽電池パネル用の反射防止膜等として用いることもできる。
【0123】
図1は、本発明による電子部品の一実施形態を示す模式断面図である。メモリキャパシタセル8(電子部品)は、拡散領域1A,1Bが形成されたシリコン(Si)ウェハ1(基板)上に酸化膜から成るゲート絶縁膜2Bを介して設けられたゲート電極3(ワード線として機能する。)と、その上方に設けられた対向電極8Cとの間に二層構造の層間絶縁膜5,7(絶縁被膜)が形成されたものである。ゲート電極3の側壁には、側壁酸化膜4A,4Bが形成されており、また、ゲート電極の側方における拡散領域1Bにはフィールド酸化膜2Aが形成され、素子分離がなされている。
【0124】
層間絶縁膜5は、これらのゲート電極3及びフィールド酸化膜2A上に被着されており、本発明に係るシリカ系硬化被膜からなるものである。層間絶縁膜5におけるゲート電極3近傍にはビット線として機能する電極6が埋め込まれたコンタクトホール5Aが形成されている。更に、平坦化された層間絶縁膜5上には平坦化された層間絶縁膜7が被着されており、両者を貫通するように形成されたコンタクトホール7Aには蓄積電極8Aが埋め込まれている。層間絶縁膜7は、層間絶縁膜5と同様に本発明に係るシリカ系硬化被膜からなるものである。そして、蓄積電極8A上に高誘電体からなるキャパシタ絶縁膜8Bを介して対向電極8Cが設けられている。なお、層間絶縁膜5,7は同一の組成を有していても異なる組成を有していてもよい。
【0125】
このように構成された本発明に係る絶縁被膜が形成された上記例示したような電子部品は、低誘電率及び高機械強度を発現する本発明に係るシリカ系硬化被膜を備えることにより、信号伝搬遅延時間の低減といった高性能化が図られると同時に高プロセス適合性等の高信頼性を達成できる。
【0126】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、被膜改善用液体の表面張力が21mN/mよりも大きい場合であっても、その被膜改善用液体をシリカ系被膜内部に浸透させる際に、周囲雰囲気を加圧したり、及び/又は被膜改善用液体が沸騰しない程度に加熱したりすればよい。これにより、シリカ系硬化被膜の誘電率上昇の抑制及び機械強度の向上を一層効率的に達成できる。これは、被膜改善用液体をシリカ系被膜の空孔内に一層効率的に浸透させることによるものと推測される。
【0127】
また、被膜改善用液体が溶媒を含有する場合、その溶媒の表面張力が大きいために被膜改善用液体の表面張力が大きくなる場合は、その液体中に界面活性剤等を添加して、被膜改善用液体の表面張力を低下させてもよい。これにより、上述の加圧や加熱と同様の効果が得られる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
<シリカ系被膜形成用組成物の調製>
以下の手順によりシリカ系被膜形成用組成物を調製した。まず、1000mLのフラスコに、テトラエトキシシラン137.5g及びメチルトリエトキシシラン107.2gを仕込んだ。次いで、金属不純分濃度が20質量ppb以下であるジエチレングリコールジメチルエーテル483.9gを上記フラスコ内に添加し、該フラスコを常温で200回転/分の速度で攪拌しながら、内容物を溶解した。
【0130】
このフラスコ中に、60質量%硝酸0.47gを水71.98gに溶解して得られた水溶液を、攪拌下で30分かけて滴下した。滴下中、発熱により溶液温度が上昇したが、冷却水等で冷却することなく、そのまま放置した。滴下終了後3時間反応させ、ポリシロキサン溶液を得た。この際、液温は常温付近まで低下していた。
【0131】
得られたポリシロキサン溶液を減圧下、65〜85℃の温浴で加熱し、上述の処理で生成したエタノールと溶媒のジエチレングリコールジメチルエーテルの一部を留去して、濃縮されたポリシロキサン溶液533.3gを得た。GPC法によりこの溶液の重量平均分子量を測定すると、1120であった。溶液2gを金属シャーレにはかりとり、150℃の乾燥機で2時間乾燥させることにより求めた、濃縮されたポリシロキサン溶液の固形分濃度は15.0質量%であった。
【0132】
次いで、別の1000mLのフラスコ内に、上述の濃縮されたポリシロキサン溶液464.4g、空孔形成用の分解性化合物としてポリプロピレングリコール(アルドリッチ社製、商品名:PPG725)20.34g、ジエチレングリコールジメチルエーテル396.1g、第2の触媒として2.38質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液(PH3.6)14.6g、及び第2の触媒として1質量%に希釈したマレイン酸水溶液4.5gをそれぞれ添加し、室温で30分間攪拌溶解してシリカ系被膜形成用組成物を得た。なお、分解性化合物として用いたポリプロピレングリコールの350℃における重量減少率は99.9%であった。
【0133】
<被膜改善用液体の調製>
(合成例1)
1000mLのフラスコに、ハイドロフルオロエーテル(3M社製、商品名:HFE−7200)990.0g、及び第1の触媒として1.8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン10.0gを仕込み、常温で200回転/分の速度で攪拌しながら3時間溶解させて合成例1の被膜改善用液体を得た。
【0134】
この被膜改善用液体の25℃、50%RHにおける表面張力を、デュヌイ表面張力試験器((株)伊藤製作所製)を用い測定したところ、14mN/mであった。
【0135】
(合成例2)
ハイドロフルオロエーテル990.0gをエタノール990.0gに代えた以外は合成例1と同様にして、合成例2の被膜改善用液体を得た。
【0136】
この被膜改善用液体の25℃、50%RHにおける表面張力を、デュヌイ表面張力試験器((株)伊藤製作所製)を用い測定したところ、22mN/mであった。
【0137】
また、ハイドロフルオロエーテル(3M社製、商品名:HFE−7200)の25℃、50%RHにおける表面張力を、デュヌイ表面張力試験器((株)伊藤製作所製)を用い測定したところ、14mN/mであった。
【0138】
<シリカ系硬化被膜の形成>
(実施例1)
上記シリカ系被膜形成用組成物を、基板としての5インチSiウェハ上に、スピンコート法により1100回転/分で30秒間塗布した。次いで、塗布後の基板をホットプレート上にてN雰囲気下、250℃で3分間加熱し揮発分を除去して、シリカ系被膜を得た。このシリカ系被膜の表面張力(臨界表面張力)を上述の方法により導出したところ、24mN/mであった。
【0139】
次に合成例1の被膜改善用液体を該シリカ系被膜上に適量注いで30秒間静置した後、スピンコート法により1100回転/分で30秒間塗布した。続いて、被膜改善用液体塗布後の基板をホットプレート上にてN雰囲気下、250℃で30秒間加熱して揮発分を除去した。そして、該基板を、O濃度が約100体積ppmの石英チューブ炉を用い、350℃で30分間加熱して、実施例1に係るシリカ系硬化被膜を得た。この実施例1に係るシリカ系硬化被膜の膜厚をエリプソメータを用いて測定したところ、0.2μmであった。
【0140】
(実施例2)
実施例1と同様にしてシリカ系被膜を得た。次いで、合成例2の被膜改善用液体を該シリカ系被膜上に適量注いで、常圧よりも高い圧力環境下で60秒間静置した後、スピンコート法により1100回転/分で30秒間塗布した。続いて、被膜改善用液体塗布後の基板をホットプレート上にてN雰囲気下、250℃で30秒間加熱して揮発分を除去した。そして、該基板を、O濃度が約100体積ppmの石英チューブ炉を用い、350℃で30分間加熱して、実施例2に係るシリカ系硬化被膜を得た。この実施例2に係るシリカ系硬化被膜の膜厚をエリプソメータを用いて測定したところ、0.2μmであった。
【0141】
(比較例1)
合成例1の被膜改善用液体に代えて液状のハイドロフルオロエーテル(3M社製、商品名:HFE−7200)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係るシリカ系硬化被膜を得た。この比較例1に係るシリカ系硬化被膜の膜厚をエリプソメータを用いて測定したところ、0.2μmであった。
【0142】
(比較例2)
上記シリカ系被膜形成用組成物を、基板としての5インチSiウェハ上に、スピンコート法により1100回転/分で30秒間塗布した。次いで、塗布後の基板をホットプレート上にてN雰囲気下、250℃で3分間加熱し揮発分を除去して、シリカ系被膜を得た。このシリカ系被膜の表面張力を上述の方法により導出したところ、24mN/mであった。
【0143】
続いて、シリカ系被膜が形成された基板をホットプレート上にてN雰囲気下、250℃で30秒間加熱した。そして、該基板を、O濃度が約100体積ppmの石英チューブ炉を用い、350℃で30分間加熱して、比較例2に係るシリカ系硬化被膜を得た。この実施例1に係るシリカ系硬化被膜の膜厚をエリプソメータを用いて測定したところ、0.2μmであった。
【0144】
<シリカ系硬化被膜の評価>
[比誘電率測定]
実施例1、2、及び比較例1、2に係るそれぞれのシリカ系硬化被膜上に、真空蒸着法によりAl被膜を約0.1μmの膜厚で形成し、Siウェハ基板、シリカ系硬化被膜及びAl被膜がこの順に積層した構造体を得た。この構造体の電荷容量を、LFインピーダンスアナライザー(アジレント・テクノロジー社製、商品名:HP4192A)に、誘電体テスト・フィクスチャー(横河電機社製、商品名:HP16451B)を接続した装置を用いて、温度23℃±2℃、湿度40%±10%、使用周波数10kHzの条件で測定した。
そして、電荷容量の測定値を下記式(6);
(シリカ系硬化被膜の比誘電率)=3.597×10−2×(電荷容量<単位:pF>)×(シリカ系硬化被膜の膜厚<単位:μm>) …(6)
に代入し、シリカ系硬化被膜の比誘電率を算出した。結果を表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
[弾性率測定]
シリカ系硬化被膜の機械強度の指標として、その弾性率を以下の方法により測定した。ナノインデンターSA2(DCM、MTS社製)を用いて(温度:23℃±2℃、周波数:75Hz、弾性率の測定範囲:シリカ系硬化被膜の膜厚の1/10以下で、押し込み深さで変動しない範囲)、シリカ系硬化被膜の弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明による電子部品の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0148】
1…シリコンウェハ(基板)、1A,1B…拡散領域、2A…フィールド酸化膜、2B…ゲート絶縁膜、3…ゲート電極、4A,4B…側壁酸化膜、5,7…層間絶縁膜(絶縁被膜)、5A,7A…コンタクトホール、6…ビット線、8…メモリセルキャパシタ(電子部品)、8A…蓄積電極、8B…キャパシタ絶縁膜、8C…対向電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたシリカ系被膜内部に第1の触媒を含有する液体を浸透させる第1工程と、
前記第1工程の後に前記シリカ系被膜を硬化してシリカ系硬化被膜を得る第2工程と、
を有し、
前記シリカ系被膜の表面張力が、前記液体の表面張力よりも大きなものである、シリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項2】
前記液体の前記表面張力が21mN/m以下である、請求項1記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項3】
前記シリカ系被膜の前記表面張力が、前記液体の前記表面張力よりも5mN/m以上大きなものである、請求項1又は2に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項4】
前記第1工程において、前記液体を浸透させる方法が、前記シリカ系被膜に前記液体を塗布する方法、前記液体中に前記シリカ系被膜を浸漬する方法、又は前記シリカ系被膜に前記液体を噴霧する方法である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項5】
前記液体が更に溶媒を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項6】
前記第1の触媒がシラノール基間の脱水縮合反応に対して触媒作用を示すものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項7】
前記第1の触媒が、第1の酸性化合物、第1の塩基性化合物及び第1のオニウム塩化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項8】
前記第1の塩基性化合物が分子内に窒素原子を有するものである、請求項7記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項9】
前記溶媒が分子内にフッ素原子を有する溶媒を含有する、請求項5〜8のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項10】
前記シリカ系硬化被膜が空孔を有するものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項11】
前記シリカ系被膜が、下記式(1);
SiX4−n …(1)
(式中、Rは、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を有する基、炭素数1〜20の有機基、又はH原子若しくはF原子を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)、
で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂を含有するシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜に含まれる溶媒を除去して得られるものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項12】
前記シリカ系被膜形成用組成物が更に第2の触媒を含有する、請求項11記載のシリカ系被膜の形成方法。
【請求項13】
前記第2の触媒がシラノール基間の脱水縮合反応に対して触媒作用を示すものである、請求項12記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項14】
前記第2の触媒が、第2の酸性化合物、第2の塩基性化合物及び第2のオニウム塩化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有する請求項12又は13に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項15】
前記第2の塩基性化合物が分子内に窒素原子を有するものである、請求項14記載のシリカ系硬化被膜の形成方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法に用いられる前記液体である、シリカ系硬化被膜改善用液体。
【請求項17】
基板上に設けられており、請求項1〜16のいずれか一項に記載のシリカ系硬化被膜の形成方法により形成されてなる、シリカ系硬化被膜。
【請求項18】
基板上に請求項17記載のシリカ系硬化被膜が形成されてなる、電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−61762(P2006−61762A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244270(P2004−244270)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】