説明

スイッチング回路のノイズ低減装置

【課題】ノイズ低減効果が大きく、小型化が可能なスイッチング回路のノイズ低減装置を提供する。
【解決手段】第1のスイッチングドライバの入力端に入力されるパルス信号と逆位相のパルス信号に基づいて動作する第2のスイッチングドライバと、一端が第2のスイッチングドライバの出力端に接続されるとともに他端がスイッチング回路の出力端子と接続されるインピーダンス素子とを具備し、インピーダンス素子のインピーダンス値Zvと、第1のコイルのインダクタンス値Lと、コンデンサの静電容量値Cと、第1及び第2のスイッチングドライバのスイッチング周波数fcとが、aを0以外の任意の定数として、(数3)の関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング回路の出力端子に発生するスイッチングノイズを低減するスイッチング回路のノイズ低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・高効率化が進む中で、電力効率の高い回路方式であるスイッチング電源や、D級アンプなどのスイッチング回路が、ますます多用されるようになってきた。
【0003】
ところで、これらのスイッチング回路の出力段には、スイッチングに起因するスイッチングノイズが生じるという問題がある。このスイッチングノイズは、他の回路や他の機器に悪影響を及ぼす原因となるため、ノイズレベルを低減することが求められるが、その手法として通常は、出力段フィルタの次数を増加させる方法が適用されている。
【0004】
しかし、フィルタの次数を増加させるためには、大電流を流す経路に磁気飽和しにくい大きなコイル部品を追加する必要があるが、それによって製品のコストやサイズが増加してしまう。
【0005】
このため、フィルタは可能な限り最小の次数で構成することが望ましく、フィルタの次数を増加させずにノイズを低減させる方法としては、例えば、複数のスイッチング回路の出力段にそれぞれコイルを接続し、コイルを介した出力側のノードを接続し合い、それぞれの出力パルスの位相を変える(2個の場合は逆位相にする)ことによって、スイッチングノイズを低減するものや(例えば、特許文献1参照)、副経路を設けて、コイルとコンデンサで出力端子にノイズの逆相成分を振り込むもの(例えば、特許文献2参照)、ノイズ成分を低電圧電源で動作する信号処理回路で抽出・出力させる副経路を減衰器とインバータとアナログバッファアンプとコイルとコンデンサで構成するものがあり(例えば、特許文献3参照)、他にも、特許文献4や特許文献5に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5959441号明細書
【特許文献2】米国特許第5929692号明細書
【特許文献3】特開2007−104285号公報
【特許文献4】米国特許第6693805号明細書
【特許文献5】米国特許第6703812号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、マルチフェーズと呼ばれる方式であって、デューティが50%の状態から離れるにしたがってノイズの低減効果は低下してしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載された方法は、ノイズの低減効果は最適条件下でも4次のローパスフィルタ程度以下の特性であり、それ以上のノイズ低減効果は得られない。また、これらの方法では、パラメータが固定されているため、バラツキ要因等でノイズ低減効果の最適設定からずれていても調整することができないといった課題がある。
【0009】
また、特許文献3に記載された方法は、バッファアンプの消費電力が大きく、高効率が期待されるスイッチング回路に適用するのは実用上困難である。
【0010】
さらに、特許文献1乃至5に記載された各方法は、いずれも、スイッチングドライバ回路の後段にコイル、その後段にコンデンサ、という接続順序であるため、システムの一部をICやモジュールに内蔵することができず、小型化が困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、ノイズ低減効果が大きく、小型化が可能なスイッチング回路のノイズ低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため、請求項1の発明は、電圧入力端の一端が電源側電圧源に接続されるとともに該電圧入力端の他端がコモン側電圧源に接続されパルス入力端に入力されるパルス信号に基づいて動作する第1のスイッチングドライバと、一端が前記第1のスイッチングドライバの出力端と接続されるとともに他端が出力端子と接続される第1のコイルと、一端が前記出力端子と接続されるとともに他端が前記コモン側電圧源に接続された第1のコンデンサとを具備するスイッチング回路のノイズ低減装置であって、前記第1のスイッチングドライバの入力端に入力されるパルス信号と逆位相のパルス信号に基づいて動作する第2のスイッチングドライバと、一端が前記第2のスイッチングドライバの出力端に接続されるとともに他端が前記出力端子と接続されるインピーダンス素子とを具備し、前記インピーダンス素子のインピーダンス値Zvと、前記第1のコイルのインダクタンス値Lと、前記コンデンサの静電容量値Cと、前記第1のスイッチングドライバ及び前記第2のスイッチングドライバのスイッチング周波数fcとが、aを0以外の任意の定数として、数1の関係を満たすことを特徴とする。
【0013】
【数1】

【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第2のスイッチングドライバの最大出力電圧を調整する出力調整手段をさらに具備し、前記出力調整手段は、該出力調整手段の出力端と前記コモン側電圧源との間の電圧をVC、前記電源側電圧源と前記コモン側電圧源との間の電圧をVDDとした場合に、前記VCと前記VDDと前記定数aとの関係が数2を満たすように、前記第2のスイッチングドライバの最大出力電圧を調整することを特徴とする。
【0015】
【数2】

【0016】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記出力調整手段は、前記第2のスイッチングドライバの電圧入力端に印加する電圧を調整することを特徴とする。
【0017】
また、請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記出力調整手段は、前記第2のスイッチングドライバのデューティー比を調整することを特徴とする。
【0018】
また、請求項5の発明は、請求項2の発明において、前記出力調整手段は、前記第2のスイッチングドライバのデッドタイムを調整することを特徴とする。
【0019】
また、請求項6の発明は、請求項2の発明において、前記出力端子におけるノイズ量を検出するノイズ量検出手段と、前記ノイズ量検出手段が検出したノイズ量に基づいて前記出力調整手段が前記第2のスイッチングドライバの最大出力電圧を調整する際の調整量を決定する調整量決定手段とをさらに具備することを特徴とする。
【0020】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかの発明において、前記インピーダンス素子は、第2のコイルと該第2のコイルと直列接続された第2のコンデンサとで構成され、前記第2のコンデンサと前記第2のスイッチングドライバの出力端とが接続され、前記第2のコイルと前記出力端子とが接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スイッチング回路のスイッチングに起因するノイズを低減するとともに、そのための回路構成を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用するスイッチング回路の構成例を示した図である。
【図2】ノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図3】出力特性を示した図である。
【図4】実施例2におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図5】実施例2におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図6】実施例3におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図7】実施例4におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図8】実施例5におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図9】実施例6におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図10】実施例7におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図11】ノイズ検出部201と調整信号生成部202の構成例を示した図である。
【図12】実施例8におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【図13】記憶部203と比較部204、基準電圧変更部205の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るスイッチング回路のノイズ低減装置の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、本発明を適用するスイッチング回路の構成例を説明する。図1は、本発明を適用するスイッチング回路の構成例を示した図である。
【0025】
同図に示すスイッチング回路は、スイッチングドライバD1の電圧入力端に電源側電圧源VDDとコモン側電圧源VSSが接続され、スイッチングドライバD1の出力端N3とスイッチング回路の出力端子であるVOUTとの間に、フィルタを構成するコイルLとコンデンサCが接続されている。
【0026】
このスイッチング回路では、スイッチングドライバD1が、その入力端N1と入力端N2に入力されるパルス信号に基づいて動作し、スイッチング電源やD級アンプとして動作する。なお、通常は、入力端N2に入力されるパルス信号は、入力端N1に入力されるパルス信号を反転した信号である。
【0027】
続いて、図1に示したスイッチング回路のノイズを低減するノイズ低減装置について説明する。図2は、ノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【0028】
同図に示すように、ノイズ低減装置は、図1に示したスイッチング回路に、スイッチングドライバD2を加え、スイッチングドライバD2の出力端N6と出力端子VOUTの間に、インピーダンス素子Zvを接続している。
【0029】
スイッチングドライバD2は、電圧入力端に電源側電圧源VDDとコモン側電圧源VSSが接続され、その入力端N4と入力端N5に入力されるパルス信号に基づいて動作する。入力端N4と入力端N5に入力されるパルス信号は、スイッチングドライバD1の入力端N1と入力端N2に入力されるパルス信号と逆位相の信号、つまり、入力端N1に入力されるパルス信号を反転した信号が入力端N4に入力され、入力端N2に入力されるパルス信号を反転した信号が入力端N5に入力される。
【0030】
また、インピーダンス素子Zvは、数3に示す関係を満たすものである。
【0031】
【数3】

【0032】
ただし、数3においては、コイルLのインダクタンス値をL[H]、コンデンサCの静電容量をC[F]、スイッチングドライバD1及びスイッチングドライバD2のスイッチング周波数をfc、aを0以外の任意の定数とし、Sc=jωc=2・π・fcとしている。
【0033】
また、数3中の「//」は、インピーダンスの並列接続を示す演算子である。
【0034】
このように、数3に示す関係を満たすインピーダンス素子Zvを介して、スイッチングドライバD2の出力をスイッチングドライバD1の出力に重畳することよって、スイッチング回路のノイズを低減することが可能となる。
【0035】
例えば、デバイスドライバD1の出力(出力端N3の電圧)が、図3(a)に示すような特性である場合に、これをコイルLとコンデンサCで構成されるフィルタを介して出力した特性、つまり、図1に示すスイッチング回路の出力端子VOUTの出力特性は、図3(b)に示すような傾向となる。なお、図3(b)は、図3(a)と異なる縦軸により、9.5[V]付近のみを示したものである。
【0036】
そして、図2に示すように、インピーダンス素子Zvを介して、スイッチングドライバD2の出力をスイッチングドライバD1の出力に重畳した場合、つまり、図2に示すスイッチング回路の出力端子VOUTの出力特性は、図3(c)に示すような傾向となる。
【0037】
さらに、定数aに対して最適値を与えたとき、出力端子VOUTの出力特性は、図3(d)に示すような傾向となる。
【0038】
なお、図3(c)と図3(d)は、図3(b)と異なる縦軸により、9.4[V]付近のみを拡大して示したものである。
【実施例2】
【0039】
実施例2では、実施例1で説明したノイズ低減装置のデバイスドライバD2の出力を電源電圧に応じて調整する場合を説明する。
【0040】
図4は、実施例2におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。同図に示すノイズ低減装置は、実施例1で説明したノイズ低減装置(図2参照)に、出力調整部100を追加した構成となっている。
【0041】
出力調整部100は、スイッチングドライバD2の電圧入力端N7と電圧入力端N8の間に印加する電圧、または、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号を調整する。
【0042】
出力調整部100としては、例えば、図5に示すように電圧調整部101を用い、スイッチングドライバD2の電圧入力端N7と電圧入力端N8の間に印加する電圧を調整する。
【0043】
このとき、電圧調整部101が適切に電圧調整を行うことで、実施例1で説明したノイズ低減装置(図2参照)よりも、さらに、スイッチング回路のノイズを低減することができる。
【0044】
具体的には、電源側電圧源VDDの電位をVDD、コモン側電圧源VSSの電位をVSS、電圧調整部101がスイッチングドライバの電圧入力端N7に印加する電位をVCとすると、各電位が数4に示すような関係を満たすようにすることで、スイッチング回路のノイズを低減することができる。なお、数4中の「a」は、数3に示した定数「a」である。
【0045】
【数4】

【0046】
また、コモン側電圧源VSSの電位が0である場合には、数4は、数5で示される。
【0047】
【数5】

【0048】
このように、電圧調整部101が適切に電圧調整を行うことにより、図5に示すスイッチング回路の出力端子VOUTの出力特性は、図3(d)に示すような傾向となる。なお、図3(c)は、電圧調整部101により電圧調整を行っていない場合(実施例1参照)の出力特性を示したものである。
【実施例3】
【0049】
実施例2では、図4に示した出力調整部100として、スイッチングドライバD2の電圧入力端N7と電圧入力端N8の間に印加する電圧を調整する電圧調整部101を用いた場合(図5参照)を説明したが、実施例3では、出力調整部100として、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号を調整する場合を説明する。
【0050】
図6は、実施例3におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。同図に示すノイズ低減装置は、図4に示した出力調整部100として、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号を調整するデューティー調整部102を用いている。
【0051】
デューティー調整部102は、その入力端N9と入力端N10に入力されたパルス信号のデューティー比を調整し、調整したパルス信号をスイッチングドライバD2の入力端N4と入力端N5に入力する。
【0052】
デューティー調整部102の入力端N9と入力端N10には、スイッチングドライバD1の入力端N1と入力端N2に入力されるパルス信号と逆位相の信号、つまり、実施例1及び実施例2では、スイッチングドライバD2の入力端N4と入力端N5に入力されていたパルス信号が入力される。そして、デューティー調整部102は、スイッチングドライバD2の出力端N6から出力される電圧が実施例2で説明した図5に示すノイズ低減装置のスイッチングドライバD2の出力端N6から出力される電圧と同様になるように、入力されたパルス信号のデューティー比を調整する。
【実施例4】
【0053】
実施例4では、出力調整部100として、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号を調整する場合の別例を説明する。
【0054】
図7は、実施例4におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。同図に示すノイズ低減装置は、図4に示した出力調整部100として、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号を調整するデッドタイム調整部103を用いている。
【0055】
デッドタイム調整部103は、その入力端N11と入力端N12に入力されたパルス信号のデッドタイムを調整し、調整したパルス信号をスイッチングドライバD2の入力端N4と入力端N5に入力する。
【0056】
デッドタイム調整部103の入力端N11と入力端N12には、スイッチングドライバD1の入力端N1と入力端N2に入力されるパルス信号と逆位相の信号、つまり、実施例1及び実施例2では、スイッチングドライバD2の入力端N4と入力端N5に入力されていたパルス信号が入力される。そして、デッドタイム調整部103、スイッチングドライバD2の出力端N6から出力される電圧が実施例2で説明した図5に示すノイズ低減装置のスイッチングドライバD2の出力端N6から出力される電圧と同様になるように、入力されたパルス信号のデッドタイム、つまり、スイッチングドライバD2が有するスイッチング素子がいずれもオフとなる時間を調整する。
【実施例5】
【0057】
実施例5では、実施例2乃至4で説明した例の変形例を説明する。実施例2乃至4で説明した各例では、いずれも、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号は、スイッチングドライバD1の入力端N1と入力端N2に入力されるパルス信号と逆位相の信号、又は、これを調整したものであったが、ここでは、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号を、スイッチングドライバD1の出力端N3が出力に基づいて、スイッチングドライバD2の出力端N6が出力がスイッチングドライバD1の出力端N3の出力と位相が反転したものとなるような、パルス信号を生成して入力する。
【0058】
図8は、実施例5におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。同図に示すノイズ低減装置は、実施例2で説明したノイズ低減装置(図5参照)に、プリドライバ回路104を追加し、このプリドライバ回路104の出力をスイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するようにしたものである。
【0059】
プリドライバ回路104は、スイッチングドライバD1の出力端N3の出力に基づいて、スイッチングドライバD2の出力端N6からこれと位相が反転した出力が行われるようなパルス信号を生成し、生成したパルス信号をスイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力する。
【0060】
プリドライバ回路104が生成するパルス信号は、例えば、入力端N5に入力されるものが、スイッチングドライバD1の出力端N3の出力と同位相で、入力端N4に入力されるものが、その逆位相となる。
【0061】
なお、同図においては、実施例2で説明した構成(図5参照)を変形したものを例として説明したが、プリドライバ回路104がデューティー比またはデッドタイムを調整するようにすることで、実施例3、実施例4で説明した例を変形した例とすることが可能となる。
【実施例6】
【0062】
実施例6は、実施例1乃至5で説明した例の変形例を説明する。図9は、実施例6におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【0063】
同図に示すノイズ低減装置は、実施例2で説明したノイズ低減装置(図4参照)のインピーダンス素子Zvを、コンデンサCvとコイルLvを直列に接続することで構成し、コンデンサCvをスイッチングドライバD2の出力端N6と接続したものである。
【0064】
このように、インピーダンス素子ZvをコンデンサCvとコイルLvの直列接続で構成し、コンデンサCvをスイッチングドライバD2の出力端N6と接続とする場合、コンデンサCvをIC(Integrated Circuit)やモジュールの一部として構成することができ、結果として、ノイズ低減装置や、これを含むスイッチング回路を小型化することが容易となる。
【0065】
なお、ここでは、実施例2で説明したノイズ低減装置(図4参照)のインピーダンス素子Zvを変更した場合を説明したが、実施例1乃至5で説明した各ノイズ低減装置に対しても、インピーダンス素子Zvを、コンデンサCvとコイルLvを直列に接続することで構成し、コンデンサCvをスイッチングドライバD2の出力端N6と接続することで、同様の効果を得ることができる。
【実施例7】
【0066】
図10は、実施例7におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。同図に示すノイズ低減装置は、実施例2で説明したノイズ低減装置(図4参照)に、ノイズ検出部201と調整信号生成部202を追加し、出力調整部100を調整信号を入力することで制御可能な出力調整部105に置き換えたものである。なお、出力調整部105としては、実施例2乃至4のそれぞれで説明したように、電圧調整部、デューティ調整部、デッドタイム調整部を利用することができる。
【0067】
ノイズ検出部201は、スイッチング回路の出力端子VOUTのノイズを検出する。調整信号生成部202は、ノイズ検出部201が検出したノイズに応じて調整信号を生成する。出力制御部105は、調整信号生成部202が生成した調整信号に応じて、スイッチングドライバD2の出力レベル(出力電圧)が変化するように、スイッチングドライバD2の電圧入力端N7と電圧入力端N8の間に印加する電圧、または、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号を調整する。
【0068】
ここで、ノイズ検出部201と調整信号生成部202の構成例について説明する。図11は、ノイズ検出部201と調整信号生成部202の構成例を示した図である。
【0069】
同図に示すように、ノイズ検出部201は、ハイパスフィルタ211と、増幅器212、整流器213、ローパスフィルタ214で構成され、調整信号生成部202は、誤差増幅器221と、基準電圧源222で構成される。
【0070】
ノイズ検出部201は、ハイパスフィルタ211がスイッチング回路の出力から低周波数成分を除去、つまり、ノイズ成分を抽出し、増幅器212で増幅し、整流器213で整流する。そして、ローパスフィルタ214を介して高周波数成分を除去することで、ノイズを電圧が示す量として出力する。
【0071】
一方、調整信号生成部202は、ノイズ検出部201が出力する電圧と基準電圧源222の電圧との差を、誤差増幅器221が出力する。
【0072】
これにより、出力調整部105が調整すべき電圧が、調整信号生成部202より調整信号として出力される。
【実施例8】
【0073】
実施例8では、実施例7で説明したノイズ低減装置の変形例を説明する。図12は、実施例8におけるノイズ低減装置の構成例を示した図である。
【0074】
同図に示すノイズ低減装置は、実施例7で説明したノイズ低減装置(図10参照)に、記憶部203と比較部204、基準電圧変更部205を追加したものである。
【0075】
記憶部203は、ノイズ検出部201が検出したノイズの量を記憶する。比較部204は、ノイズ検出部201が検出したノイズの量と記憶部203に記憶されているノイズの量を比較する。基準電圧変更部205は、比較部204の比較結果に応じて、調整信号生成部202の基準電圧源222の大きさを変更する。
【0076】
続いて、記憶部203と比較部204、基準電圧変更部205の動作について説明する。図13は、記憶部203と比較部204、基準電圧変更部205の動作の流れを示すフローチャートである。
【0077】
ノイズ低減装置は、動作を開始すると、まず、基準電圧変更部205が保持するカウンタの値nを0に初期化し(ステップ301)、記憶部203がノイズ検出部201が検出したノイズの量を記憶する(ステップ302)。
【0078】
続いて、基準電圧変更部205が保持するカウンタの値nに基づいて、基準電圧源222の大きさを変更する(ステップ303)。具体的には、基準電圧源222の初期電圧がVrefであるとすれば、これを、ΔVのn倍だけ低下させる。ΔVは、予め定めた値で、基準電圧源222の変更単位である。
【0079】
次に、比較部204がノイズ検出部201が検出したノイズの量を取得し(ステップ304)、記憶部203に記憶されているノイズの量と比較する。比較の結果、取得したノイズの量よりも記憶部203に記憶されているノイズの量の方が大きければ(ステップ305でNO)、比較部204がその結果を信号として出力し、この信号に応じて基準電圧変更部205が保持するカウンタの値nをインクリメントする(ステップ306)。このとき、記憶部203がノイズ検出部201は、検出したノイズの量を記憶する(ステップ307)。
【0080】
ノイズ低減装置は、ステップ303からステップ307の処理を繰り返し、比較部204による比較の結果、取得したノイズの量が記憶部203に記憶されているノイズの量以下となれば(ステップ305でYES)、基準電圧源222の変更処理を終了する。
【0081】
これらの処理により、スイッチング回路のノイズを、自動でΔV以下に低減することが可能となる。
【0082】
なお、実施例2乃至8では、いずれも、出力調整部100が、スイッチングドライバD2の出力端N6から出力される電圧を調整するために、スイッチングドライバD2の電圧入力端N7と電圧入力端N8の間に印加する電圧、または、スイッチングドライバD2の入力端N4、入力端N5に入力するパルス信号を調整するようにしたが、電流を調整するようにしても、同様の結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0083】
100 出力調整部
101 電圧調整部
102 デューティー調整部
103 デッドタイム調整部
104 プリドライバ回路
105 出力調整部
201 ノイズ検出部
202 調整信号生成部
203 記憶部
204 比較部
205 基準電圧変更部
211 ハイパスフィルタ
212 増幅器
213 整流器
214 ローパスフィルタ
221 誤差増幅器
222 基準電圧源
C コンデンサ
Cv コンデンサ
D1 スイッチングドライバ
D2 スイッチングドライバ
L コイル
Lv コイル
N1 入力端
N2 入力端
N3 出力端
N4 入力端
N5 入力端
N6 出力端
N7 電圧入力端
N8 電圧入力端
N9 入力端
N10 入力端
N11 入力端
N12 入力端
VDD 電源側電圧源
VOUT 出力端子
VSS コモン側電圧源
Zv インピーダンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧入力端の一端が電源側電圧源に接続されるとともに該電圧入力端の他端がコモン側電圧源に接続されパルス入力端に入力されるパルス信号に基づいて動作する第1のスイッチングドライバと、一端が前記第1のスイッチングドライバの出力端と接続されるとともに他端が出力端子と接続される第1のコイルと、一端が前記出力端子と接続されるとともに他端が前記コモン側電圧源に接続された第1のコンデンサとを具備するスイッチング回路のノイズ低減装置であって、
前記第1のスイッチングドライバの入力端に入力されるパルス信号と逆位相のパルス信号に基づいて動作する第2のスイッチングドライバと、
一端が前記第2のスイッチングドライバの出力端に接続されるとともに他端が前記出力端子と接続されるインピーダンス素子と
を具備し、
前記インピーダンス素子のインピーダンス値Zvと、前記第1のコイルのインダクタンス値Lと、前記コンデンサの静電容量値Cと、前記第1のスイッチングドライバ及び前記第2のスイッチングドライバのスイッチング周波数fcとが、aを0以外の任意の定数として、
【数1】

の関係を満たす
ことを特徴とするスイッチング回路のノイズ低減装置。
【請求項2】
前記第2のスイッチングドライバの最大出力電圧を調整する出力調整手段をさらに具備し、
前記出力調整手段は、該出力調整手段の出力端と前記コモン側電圧源との間の電圧をVC、前記電源側電圧源と前記コモン側電圧源との間の電圧をVDDとした場合に、前記VCと前記VDDと前記定数aとの関係が
【数2】

を満たすように、前記第2のスイッチングドライバの最大出力電圧を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング回路のノイズ低減装置。
【請求項3】
前記出力調整手段は、前記第2のスイッチングドライバの電圧入力端に印加する電圧を調整することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング回路のノイズ低減装置。
【請求項4】
前記出力調整手段は、前記第2のスイッチングドライバのデューティー比を調整することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング回路のノイズ低減装置。
【請求項5】
前記出力調整手段は、前記第2のスイッチングドライバのデッドタイムを調整することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング回路のノイズ低減装置。
【請求項6】
前記出力端子におけるノイズ量を検出するノイズ量検出手段と、
前記ノイズ量検出手段が検出したノイズ量に基づいて前記出力調整手段が前記第2のスイッチングドライバの最大出力電圧を調整する際の調整量を決定する調整量決定手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング回路のノイズ低減装置。
【請求項7】
前記インピーダンス素子は、第2のコイルと該第2のコイルと直列接続された第2のコンデンサとで構成され、
前記第2のコンデンサと前記第2のスイッチングドライバの出力端とが接続され、前記第2のコイルと前記出力端子とが接続される
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のスイッチング回路のノイズ低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−217069(P2011−217069A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82411(P2010−82411)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(510090379)ケーイーシージャパン株式会社 (1)
【出願人】(595134216)
【Fターム(参考)】