説明

セラミック材料、焼結セラミック及びセラミック部品、セラミックの製造方法及び使用法

純粋な成分A及びBの2つの相の混合物を含むセラミックの混合システムが、提案される。相Aは、BiNbOの立方晶−正方晶変態をベースとし、相Bは、Bi(Zn2/3Nb4/3)Oの単斜晶パイロクロア変態をベースとする。これからなるセラミック体の電気的特性は、コンデンサ及びインダクタが集積化された多層構造を有する部品に適した材料をなす。これは、データ処理又は信号処理に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
LTCC(Low Temperature Cofired Ceramic)技術は、幾つかのメタライゼーションレベル(metallization levels)を有するセラミック多層部品を実現することを可能にする。そこへ、例えば導体トレース、抵抗、コンデンサ、インダクタのような複数の受動部品を、集積することができる。このように、これらの回路を構成する回路及び部品は、LTCCセラミック基板で実現され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
LTCC技術で使用されるセラミック材料の誘電率(dielectric constant)が大きくなるほど、より高いコンデンサの集積が可能になる。一方、過度に高い誘電率は、インダクタの集積にとって不利になる。したがって、セラミックの選択は、誘電率に関して最適化されなければならない。さらに、銀等の経済的な電極材料の使用を可能にするために、十分低い焼結温度を、セラミック材料の要件とする。加えて、セラミック材料は、LTCC技術で生成された部品を過度な特性変化なしに広い温度間隔で使用することができるように、絶縁性及び他の特性についての温度変化がわずかだけになるべきである。
【0003】
これまで、十分低い焼結温度をもって20以上の誘電率を有するセラミック材料、又はその誘電率が必要な温度安定性を有してLTCC技術で生成され得るセラミック材料を見つけることはできていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一観点では、本発明は、上述の不利益に対する耐性を有する必要なく、前述したタイプの部品を実現することができるセラミック材料を明記する。
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を備えたセラミック材料によって達成される。発明の有利な構成、焼結セラミック、セラミック及びセラミック部品、セラミックの製造方法及び使用は、附加的な請求項から明らかになる。
【0006】
一例として、2つの純粋相A及びBの混合物を含むセラミック材料が、提案される。その相の混合物は、合成物xA+(1−x)Bを有する。ここで、xは、0よりも大きく、1よりも小さい。相Aは、BiNbOの立方晶−正方晶変態である。相Bは、系Bi(Zn2/3Nb4/3)Oの単斜晶パイロクロア変態をベースにする。2つの相、相A及びBは、混合物中に純粋相領域を各々形成する。
【0007】
純粋相の結晶構造を決定する上記基本合成物から始まり、それら2つの相の各々は、他の金属により全体として30モル%の割合まで、例えばその材料中で元素Bi、Zn、及びNbが置換され得るように、変化し得る。加えて、ニオブ(Nb:niobium)は、タンタル(Ta:tantalum)で完全に置換され得る。置換物として一定の部分にある他の金属は、それらが、問題なく又は過度に大きな各結晶相の格子歪を生じることなく、格子点で初期元素と置換することができるように、好ましくは、原子相当の直径をもってそれらが同一又は類似の原子価を有するように選択される。
【0008】
特に、ビスマス(Bi:bismuth)は、Ca、Sr、Ba、Pb、Cd、Y、La及び原子番号58−71の希土類元素から選ばれた1又は2以上の元素により、30モル%の割合まで置換することができる。対応元素の置換は、相A及びBの2相のいずれにも結晶変態の変化をもたらさない。
【0009】
相Bでは、亜鉛(Zn:zinc)は、Mg、Ca、Co、Mn、Ni、Fe、Cr、及びCuから選ばれた1又は2以上の元素により、30モル%の割合まで置換することができる。ここでも、結晶変態は、対応した交換により、影響を受けない。
【0010】
元素Nbは、Sn、Ti、Hf、Sb、Ta、V、W、及びMoから選ばれた1又は2以上の元素により、30モル%の割合まで2つの純粋相のそれぞれを置換することができる。これらの置換も、結晶変態の変化をもたらさない。さらに、Nbは、それによって、純粋相又は混合相の相が変化することなく、Sbで完全に置換され得る。
【0011】
提案されたセラミック材料の有利な合成物は、四角形を形成する4点A、B、C、Dにより、3元素Zn−Nb−Biの相ダイアグラム(phase diagram)で定義され得る。この四角形の内側にある合成物は、本発明の意義によく適しており、特に、適した低焼結温度、十分高い誘電率及び高い絶縁品質係数(dielectric quality factor)を有する。4点A〜Dは、モル%で表現されたセラミック材料の内容物により定義される。
A:Zn=4.0 ;Nb=30.0;Bi=66.0
B:Zn=7.8 ;Nb=25.0;Bi=67.2
C:Zn=16.0;Nb=30.0;Bi=54.0
D:Zn=15.0;Nb=35.0;Bi=50.0
【0012】
上記材料から、セラミック体は、960℃以下、より有利には900℃以下の温度で焼結され、誘電率が65〜95にあるセラミックが得られる。そのようなセラミックは同時に、1GHz(ギガヘルツ)の測定周波数で測定した場合いずれも、800以上の絶縁品質係数を有し得る。
【0013】
有利なセラミックでは、セラミック材料中の相Aのモル比xが、0.1〜0.8にある。例えば、2つの相、相A及びBの1:1混合は、有利である。純粋相A及びBのほぼ等しい割合を有するセラミック合成物の本質的な利点は、材料の温度係数、及び特に前記2つの相の誘電率の温度係数が、この手法で等しくされ、セラミック材料全体で、適宜、最小にされること、である。これは、純粋相Aは誘電率の負の温度係数を有するが、純粋相Bは正の温度係数を有する、という事実に基づく。例えば、たった−5ppmの−44℃〜+155℃(それからなる共振器の共振周波数により測定)の誘電率の温度係数は、相A及びBの1:1混合で得られる。そのようなセラミックは、81のε、1000(1GHzで測定)の絶縁品質係数Q、又はQ×f=1000GHzの生成物質を有する。
【0014】
本発明のセラミック材料は、焼結温度に至るまでの温度及び焼結温度を超える温度で、銀含有電極材料に関して不活性にふるまうという追加の利点を有する。これは、銀含有電極でセラミック材料の素地(green body)を印刷し、銀又は追加の銀含有に対する各元素の交換により相合成物が変わることなく完成した部品へそれらを一緒に焼結することを可能にする。したがって、セラミック材料及びそれから生成されるセラミックは、セラミック部品、特に経済的な銀電極を使用するセラミック多層部品に非常に適している。
【0015】
上述の特性は、相A及び相Bが先に明記した初期の合成比にあれば、確実に得られる。実質的にセラミックの特性が変わることなく100%まで可能なタンタルによるニオブの置換を除いて、それらの特性は、上述の30モル%の割合までの置換だけが上述の目的のために使用可能なセラミックをもたらす上述の代用原子による1又は2以上の元素の部分的な置換によって、大きく変化する。
【0016】
例えば不適切な相混合比及び過剰なビスマスの置換のため、そのセラミック中のビスマスの割合が全体として低下するという事実から、制約が生じ得る。この場合、銀含有電極材料に対してセラミック材料の安定性の低下が、観測され得る。これは、場合によっては、より適切でない特性を有する定義されない合成物の点までの相変態をもたらす。さらにこれは、監視することが難しい。セラミック材料中のビスマス含有量が全体として50モル%以上であれば、確かな安定性が得られる。各場合において、焼結中、銀含有材料に対してなお安定しているような、より少ないビスマス含有のセラミック合成物を得ることができる。
【0017】
このセラミック材料から、又はこのセラミック材料からなる焼結セラミックから生成される部品は、多層構造で有利に構成され得る。その中では、モノリシックセラミック体における複数のセラミック層が、それらの間に配置されたメタライゼーションレベルと交互になる。それらセラミック層は、積層されて一緒に焼結される。その中では、受動部品又は受動部品の連結が、構造化されたメタライゼーションレベルから生じる。これらは、貫通接続部により、互いに接続される。
【0018】
受動部品の連結は、全体で、完全な単体の部品を生じ得る。これは、例えばモバイル通信アプリケーションのためのLCフィルタとして構成される。電気部品のための基板として、そして特に異なる電気部品を有するモジュールのための基板として、そこに実現された集積受動部品を有する上述のセラミック材料からなる多層セラミックを使うことも可能である。そのような基板は、各部品又はモジュール上の集積ICにとって、必要な整合要素だけでなく、必要な接続も提供する。
【0019】
本発明のセラミック材料を製造するため、1つは、既知の純粋相A及びBから始まる。相Aは、例えば“Solid Solutions Bi2O3-Nb2O5 by M. Valant and D. Suvrov in J. Am. Cer. Soc. 86 [6] 939-944 (2003)”に記述されている。相Bは、例えば記事“Structures, Phase Transformations and Dielectric Properties of Pyrochlores Containing Bi”by X. V. Wang in J. Am. Cer. Soc. 80 [10] 2745-2748 (1997)に記述されている。いわゆる混合酸化物プロセスが有利に使用されて、これら純粋相が互いに分離して生成される。この目的のため、各元素は、所望のモル比で、酸化物の形において互いに混合される。粉状混合物は、砕かれて、均質にされ、それから相A及び/又はBの所望の結晶変態をもたらす適切な温度プログラムにかけられる。純粋相は、2段階の焼成及び焼結プロセスで、有利に生成される。ここで、第1段階は、酸化ビスマスからの揮発性相の過剰に強い蒸発、及びそれによる材料中のビスマスの減少を防止するため、低温度で実行される。
【0020】
立方晶からより好ましい正方晶の相へ、少なくとも部分的に相転移させるため、純粋相Aの製造において、約800℃で、より長く滞留相を維持することが有利である。しかしながら、本発明に係るセラミック材料は、完全には正方晶の相へ転移していないものの、それでもなお所望の特性を有し、相Aを有することもある。
【0021】
純粋相の製造後、それらは、2μm以下の粒子サイズに、すり砕かれる。それら純粋相を用いた粉末は、2つの相の混合物についての所望の比で混合され、均質にされ、グリーンフィルム(green films)が、それらから形成される。前述した粒子サイズまでの粉砕は、例えばそれら純粋相の混合後に、行うこともできる。
【0022】
また、貫通接続部は、例えばパンチングにより、グリーンフィルムで形成され、それから、例えば金属粒子を含むペースト等の導電性材料が充填される。また、メタライゼーション構造は、金属を含有する焼結可能なペーストの形で印刷される。
【0023】
また、これらフィルムの幾つかは、貫通接続部により、メタライゼーション構造の適切な接続であるように、積層される。またこれは、それらの間に配置された前記セラミックと協働して、所望の部品機能を生み出す。
【0024】
また、積層されたフィルムは、ラミネーションにより固定される。このプロセスステップの後、元来大きな表面領域の上に生成され、複数の独立部品又は部品のための独立基板を含む多層セラミックは、例えば切断等の細分化プロセスにより、分離され得る。続けて、ラミネートされたグリーンフィルムが、焼結される。
【0025】
いったんそれら純粋相が生成されれば、それらは、焼結温度を超えるまで2つの相の混合物の均質な混合においてでさえ、熱力学的に安定するようになる。したがって、混合中でさえ、相変態のおそれはない。このように、グリーンフィルムの緻密化だけが、前記焼結プロセスで実行される。これにより、その全焼結プロセスが、速やかに実行され得る。例えば900℃の焼結温度までの加熱が早く、維持が容易であり、また、冷却も早い。
【0026】
本発明は、以下に、実施形態及びその関連図面を参照して詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】有利な合成物を含む、Nb、Bi、及びZn系の3相ダイアグラムの一例を示す。
【図2】部品の製造過程のフロー図を示す。
【図3】本発明により製造された部品を概略断面で示す。
【図4】本発明に係る合成物を有するセラミックのセラミック構造を写真で示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、3相ダイアグラムZnO−BiO1.5−NbO2.5の一例を示す。このダイアグラムでは、四辺形が、4点A〜Dにより記述される。ここでは、囲んだ面の各点が、有利な特性を有する本発明に係るセラミックの合成物を示している。異なる点A、B、C、及びDに関するモル%座標は、次の通りである。
A:Zn=4.0 ;NbO2.5=30.0;BiO1.5=66.0
B:Zn=7.8 ;Nb=25.0;Bi=67.2
C:Zn=16.0;Nb=30.0;Bi=54.0
D:Zn=15.0;Nb=35.0;Bi=50.0
【0029】
加えて、Xで示され、ライン上にある3つの合成物が、その相ダイアグラムに描かれる。外側の2点は、2つの純粋相A及びBにより形成される。ラインの中点は、2相の1:1の合成物を示す。本実施形態は、ほぼ最適な特性を有し、コンデンサ及び/又はインダクタを実装する電気部品で使用するために適したセラミックをなす。このセラミックは、高周波技術で、特にワイヤレスコミュニケーションシステム(wireless communications systems)で使用するための部品としての使用に適している。1:1合成物は、すでに述べたように、81の誘電率ε、1000(1GHzで測定)の絶縁品質係数Q、このセラミックからなる共振器で測定された−5ppmの共振周波数の温度係数、そして良質の製品で1000GHzの周波数を有する。
【0030】
対応部品の小型化を許容する高い誘電率、及び本発明のセラミック混合物で互いに均等化する2つの純粋相A及びBの相反する温度係数から本発明により生じる非常に小さい温度係数は、とても有利である。混合相の焼結温度も、純粋相Bの焼結温度よりも十分低く、950℃以上である。1:1合成物の付近にある混合相は、1:1混合相のそれに対して同様にプラスとなる。上述の又は所望の適用目的のための特性が、純粋相A及びBの近くの合成物にとって相対的に最も好ましくないことに関しては、概ね正しい。本発明に係る全ての混合相は、改善された特性、特に前記純粋相と比べて改善された温度係数を確かに有する。例えば、1:9〜9:1の混合比は、非常に適した特性を有する。純粋相A付近よりも純粋相B付近で、より良好な特性が得られることは、概ね正しい。
【0031】
図2は、本発明に係る合成物を有するセラミックの幾つかの層を有する電気多層部品の製造過程順の図を示す。第1ステップでは、純粋相A及びBを、好ましくは混合酸化物プロセスにより、互いに分離して生成する。そこで、良質な電気グレードの金属酸化物が、必要な比率で一緒に加えられ、砕かれて、均質にされ、その後、焼成され、焼結される。焼成は、2段階で行うことが好ましい。ここで、第1段階は、揮発性のビスマス相の過剰な蒸発を避けるため、比較的低い温度で実行される。部品Aについては、800℃でやや長い滞留時間が維持され、そこでは、もとの立方晶相から正方晶相への少なくとも部分的な相転移が起こる。本発明によれば、正方晶相は特に適しているが、本発明に係るセラミック合成物の電気特性に不利な影響を及ぼすことなく、立方晶相の部分を含み得る。純粋相Bは、単斜晶系のパイロクロア相として生じる。
【0032】
次のステップでは、純粋相A及びBは、所望の比率で結合され、混合され、粒子径2μm又はそれ以下に至るまで細かく砕かれる。2つの純粋相を一緒に粉砕するため、相の純粋な領域を有する細かく砕かれた粒子の均質な混合物が生じる。
【0033】
次のステップでは、均質な混合相から、グリーンフィルムが形成される。この目的のため、細かく砕かれた粉末から、溶媒を有するスラリーが作られる。これは、望ましくは、粘性のバインダー部を含み得る。そして、グリーンフィルムは、例えばフィルム延伸又はフィルムキャスティングにより、それから作られる。次のステップでは、乾燥、及びそれによるグリーンフィルムからの溶媒の除去の後、所望の部品のために必要な貫通接続部は、例えばパンチングにより形成される。また、これら貫通接続部には、例えばドクターブレードを用いて、金属粒子を含む導電性化合物が充填される。最後に、メタライゼーション構造は、例えばスクリーン印刷プロセスにより、グリーンフィルム上へ印刷される。グリーンフィルム上に形成されたメタライゼーション構造は、連続多層セラミックのメタライゼーションレベルに相当する。
【0034】
次のステップでは、印刷されたグリーンフィルムが、部品の適切な順序で、次々に積層(スタック化)され、コンパクトな形態にラミネートされる。それは、この段階でも、すでに機械的な強さを有し、切断又はパンチングにより、有利に細分化され得る。細分化は、一般的にグリーンフィルムが大きな表面領域で形成されるため、必要である。その領域上には、多数の独立した又は異なる部品のためのメタライゼーション構造が、並んで形成され得る。これらの部品は、この細分化により互いに切り離される。
【0035】
次のステップでは、分離したフィルムスタックを焼結する。例えばコンデンサ及びインダクタのような異なる受動部品の機能が、貫通接続部により互いに接続される異なるメタライゼーションレベルでのメタライゼーション構造の相互作用により実現され得る、モノリシックセラミック多層部品が得られる。最後のステップでは焼結前に、外部電極がまだグリーンフィルムに集積化されて設けられていない場合に限って、それら外部電極をモノリシックセラミック部品に適用することができる。
【0036】
本発明に係る固体セラミックの磨かれた部分に基づいて、図4に、そのセラミック構造を示す。その図は、純粋相Aと強く関連し得る連続相から混合相が形成されることを示す。図中の白い点は、純粋相Bと関連し得る含有物である。黒い点又は領域は、残存孔又はこの試験試料の不純物によるものである。焼結において粒子の成長が起こることが、そのフィルムから分かる。典型的には5μmまで、幾つかの場合には10μmに至る粒子径が確認できる。
【0037】
図3は、本発明に係る前記2つの相の混合セラミックで得られ又は実現され得るタイプの考え得る部品を示す。例としてここに示される部品は、スタック化及び同時焼結がなされた6つのセラミック層K1−K6を有する。メタライゼーション構造Mが構造化されたメタライゼーションレベルは、各2つのセラミック層Kの間に提供される。異なるメタライゼーションレベルのメタライゼーション構造M間の必要な電気的接続は、前述の貫通接続部DKにより、実行される。
【0038】
図3では、前記要素の2つの部品、すなわち隣り合うメタライゼーションレベルに配置された2つの金属表面により形成されるコンデンサCが、示される。これと並んで、例えば貫通接続部により一緒に接続された幾つかのハーフループ(half-loops)のらせん状構造からなるインダクタLが、示される。前記部品が外部回路環境と接触し得る外部コンタクトAK、AK’は、セラミック体の下側に提供される。そのような部品は、例えばL及びCの要素の適切な接続が、モバイルコミュニケーションのための端末装置で使用されるタイプのバンドパスフィルタを実現するLCフィルタとして、形成することができる。
【0039】
他の部品のための基板として、本発明の多層セラミックを用いることもできる。その目的のため、下側の外部コンタクトに加えて、多層セラミックは、上側(図には示さず)にコンタクト領域を有する。これにより、ディスクリート部品もしくは集積化された部品、又は所望の部品チップが搭載される。一例として、前記部品は、弾性表面波(SAW:surface acoustic wave)で作動する部品のメタライゼーション構造を備えた圧電性結晶になり得る。
【0040】
本発明に係るセラミックで実現されたセラミック部品のメタライゼーション構造は、銀、又は焼結温度に対して抵抗力のあるあらゆる所望の他の金属からなってもよい。前記貫通接続部には、同様に、銀含有材料、又は銀−パラジウム合金が充填される。前記セラミックは、多層構造で、コンパクトな形態に形成され得る。適切に構造化され、三次元構造を実現するグリーンフィルムを、接続及び焼結することもできる。それにより、多層スタック内に、例えば開閉可能なキャビティを実現することができる。例えば開いたキャビティには、ディスクリート部品が配置され、メタライゼーション構造に接続され得る。これは、特にコンパクトな部品の実現を可能にする。
【0041】
本発明は、詳細に紹介した実施形態の各例に限定されない。純粋相の金属製部品が、最大で30モル%の前述の範囲で上述の置換原子に交換される、追加の合成物は、本発明の範囲内にある。交換及びそれにより得られるセラミックの特性にとっての重要な要素は、純粋相の各結晶構造の維持である。概して、原子価及び原子径に関して類似する金属は、互いに交換することができる。2つの純粋相のうちの一方のわずかな成分だけを含み、圧倒的に他方の純粋相からなる化合物も、本発明に係る2つの純粋相A及びBの混合物である。純粋相と比較して、それら混合相の各々は、所望の特性範囲に関する特徴が改善されている。
【0042】
セラミックから形成される部品は、同様に、上に述べた実施形態に制限されない。しかしながら、原則として、多数の異なる電子セラミック部品は、前記セラミックから形成され得る。前記セラミックは、様々な受動部品が集積化されたそれらの部品のために特に適している。そのような部品は、特に信号処理部品及びデータ処理部品として、大きな制約を受けない限り、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0<x<1において、2つの相の混合物xA+(1−x)Bを有し、
相Aは、BiNbOの立方晶−正方晶変態をベースとし、
相Bは、Bi(Zn2/3Nb4/3)Oの単斜晶パイロクロア変態をベースとし、そして、
前記2つの相は、全材料中のBi、Zn、及びNbが30モル%の割合までそれぞれ他の金属により置換されるように変化し、また、Nbは、100%までTaにより置換される、
ことを特徴とするセラミック材料。
【請求項2】
Biは、Ca、Sr、Ba、Pb、Cd、Y、La及び原子番号58−71の希土類元素からなるグループから選ばれた1又は2以上の元素により、30モル%の割合まで置換される、
ことを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項3】
Znは、Mg、Ca、Co、Mn、Ni、Fe、Cr、及びCuからなるグループから選ばれた1又は2以上の元素により、30モル%の割合まで置換される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
Nbは、Sn、Ti、Hf、Sb、Ta、V、W、及びMoから選ばれた1又は2以上の元素により、30モル%の割合まで置換される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
元素Zn−Nb−Biの相ダイアグラム中、
A:Zn=4.0 ;Nb=30.0;Bi=66.0
B:Zn=7.8 ;Nb=25.0;Bi=67.2
C:Zn=16.0;Nb=30.0;Bi=54.0
D:Zn=15.0;Nb=35.0;Bi=50.0
の4点A、B、C、Dにより定義される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
960℃以下の焼結温度で焼結される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の材料の焼結セラミック。
【請求項7】
65〜95の誘電率を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のセラミック。
【請求項8】
1GHzの測定周波数で800以上の絶縁品質係数を有する、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のセラミック。
【請求項9】
セラミック材料中の相Aの相対的なモル比xが0.10〜0.80である、
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のセラミック。
【請求項10】
混合物中の相は、主成分の純粋相として提供される、
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のセラミック。
【請求項11】
純粋相A及びBの領域の直径は、10μm以下又は10μmに等しい、
ことを特徴とする請求項6乃至10のいずれか一項に記載のセラミック。
【請求項12】
請求項6乃至11のいずれか一項に記載のセラミックを含む、
ことを特徴とする電気部品。
【請求項13】
構造化されたメタライゼーションレベルと交互に配置され、モノリシックスタック中へ焼結された複数のセラミック層を含む多層構造と、
前記多層構造で形成された複数の受動部品と、そして、
複数の貫通接続部と、
を備え、
前記構造化されたメタライゼーションレベルは、前記貫通接続部により互いに接続され、それによって、前記受動部品を相互に接続する、
ことを特徴とする請求項12に記載の部品。
【請求項14】
前記受動部品は、LCフィルタを形成するように相互に接続される、
ことを特徴とする請求項13に記載の部品。
【請求項15】
前記多層構造は、電気部品のための基板を含む、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の部品。
【請求項16】
純粋相A及びBを互いに分離して生成する工程、
前記純粋相を各々粉末になるまで砕く工程、及び、
所定の比率で前記純粋相の粉末を混合する工程、
を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセラミック材料を製造する方法。
【請求項17】
前記混合物を処理して素地を生成する工程と、
焼結工程と、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記純粋相を生成する工程は、混合酸化物プロセスにより前記純粋相を生成する工程を含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記焼結工程は、960℃以下の温度で実行される、
ことを特徴とする請求項16乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物を用いて素地としてのフィルムを形成する工程、
前記フィルム中に貫通接続部をパンチングする工程、
前記貫通接続部に導電性材料を充填する工程、
電極材料のメタライゼーション構造を有する前記フィルムを印刷する工程、
複数の異なるフィルムを、上下に積層する工程、
前記積層されたフィルムをラミネートする工程、及び、
前記積層されたフィルムを焼結する工程、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項16乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記受動部品は、周波数範囲1〜5GHzについてのモバイル通信アプリケーションに、LTCC技術でLCフィルタを形成するように相互に接続される、
ことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の部品の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−537444(P2009−537444A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511329(P2009−511329)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000847
【国際公開番号】WO2007/134569
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】