説明

チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置計測装置およびレーザー加工機

【課題】チャックテーブルに保持された被加工物の上面位置を正確に計測することができる高さ位置計測装置を提供する。
【解決手段】高さ位置計測装置は、発光源からの光を第1の偏波保持ファイバーと第2の偏波保持ファイバーに導く光分岐手段と、光照射光路に導かれた光を平行光に形成する第1のコリメーションレンズと、平行光に形成された光を偏光する1/4波長板と、対物レンズと、第1の反射光と第2の反射光とを平行光に形成する第2のコリメーションレンズと、第1の反射光と第2の反射光との光路長を調整する光路長調整手段と、第1の反射光と第2の反射光との干渉を回折する回折格子と、回折格子によって回折した第1の反射光と第2の反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、検出信号に基づいて分光干渉波形を求め分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行する制御手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工機等の加工機に装備されるチャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の高さを計測する高さ位置計測装置およびレーザー加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
また、光デバイス製造工程においては、サファイア基板や炭化珪素基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体からなる光デバイス層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って切断することにより光デバイスが形成された領域を分割して個々の光デバイスを製造している。
【0004】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、ウエーハを分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)このように被加工物に形成されたストリートに沿って内部に変質層を形成する場合、被加工物の上面から所定の深さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0005】
また、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハを分割する方法として、ウエーハに形成されたストリートに沿ってウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)このようにウエーハに形成されたストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にも、ウエーハの所定高さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0006】
しかるに、ウエーハ等の板状の被加工物にはウネリがあり、その厚さにバラツキがあるため、均一なレーザー加工を施すことが難しい。即ち、ウエーハの内部にストリートに沿って変質層を形成する場合、ウエーハの厚さにバラツキがあるとレーザー光線を照射する際に屈折率の関係で所定の深さ位置に均一に変質層を形成することができない。また、ウエーハに形成されたストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にもその厚さにバラツキがあると、均一な深さのレーザー加工溝を形成することができない。
【0007】
上述した問題を解消するために、チャックテーブルに保持されたウエーハ等の被加工物の上面高さを確実に計測することができる高さ位置計測装置が下記特許文献3に開示されている。下記特許文献3に開示された計測装置は、色収差レンズを通過した白色光が波長によって異なる焦点距離を有することを利用して、その反射光によって波長を特定することにより焦点距離を求めるので、チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を正確に計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3408805号
【特許文献2】特開平10−305420号公報
【特許文献3】特開2008−170366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
而して、白色光を色収差レンズによって集光すると、光軸上に各波長に対応した集光点が位置付けられるが、波長が長くなるに従って集光レンズの内側 (光軸側)に位置付けられ実質的にNA値が小さくなるため、焦光点がボケて正確な表面高さ位置を検出することができないという問題がある。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物の高さを正確に計測することができる高さ位置計測装置および高さ位置計測装置を装備したレーザー加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の位置を検出する被加工物の高さ位置計測装置において、
所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、該第1の経路に配設され発光源からの光を導く第1の偏波保持ファイバーと、該第2の経路に配設され該第1の偏波保持ファイバーを逆行する反射光を導く第2の偏波保持ファイバーと、該第1の偏波保持ファイバーの端面から光照射光路に導かれた光を平行光に形成する第1のコリメーションレンズと、該第1のコリメーションレンズによって平行光に形成された光を偏光する1/4波長板と、該1/4波長板を通過した光を該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の上面に導く対物レンズとを具備している検出光照射手段と、
該第1の偏波保持ファイバーの端面で反射し該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第1の反射光と、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物で反射し該対物レンズと該1/4波長板と該第1のコリメーションレンズと該第1の偏波保持ファイバーおよび該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第2の反射光とを平行光に形成する第2のコリメーションレンズと、
該第2のコリメーションレンズを通過した該第1の反射光と該第2の反射光との光路長を調整する光路長調整手段と、
該光路長調整手段を経由した該第1の反射光と該第2の反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した該第1の反射光と該第2の反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、該第1の反射光の第1の光路長と該第2の反射光の第2の光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいて該チャックテーブルの表面から該チャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置計測装置が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の位置を検出する高さ位置計測装置とを具備し、該レーザー光線照射手段はレーザー光線を発振するレーザー光線発振器と該レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物に照射する集光器とを具備しているレーザー加工機において、
該高さ位置計測装置は、所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、該第1の経路に配設され発光源からの光を導く第1の偏波保持ファイバーと、該第2の経路に配設され該第1の偏波保持ファイバーを逆行する反射光を導く第2の偏波保持ファイバーと、該第1の偏波保持ファイバーの端面から光照射光路に導かれた光を平行光に形成する第1のコリメーションレンズと、該第1のコリメーションレンズによって平行光に形成された光を偏光する1/4波長板と、該1/4波長板を通過した光を該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の上面に導く対物レンズとを具備している検出光照射手段と、
該第1の偏波保持ファイバーの端面で反射し該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第1の反射光と、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物で反射し該対物レンズと該1/4波長板と該第1のコリメーションレンズと該第1の偏波保持ファイバーおよび該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第2の反射光とを平行光に形成する第2のコリメーションレンズと、
該第2のコリメーションレンズを通過した該第1の反射光と該第2の反射光との光路長を調整する光路長調整手段と、
該光路長調整手段を経由した該第1の反射光と該第2の反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した該第1の反射光と該第2の反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、該第1の反射光の第1の光路長と該第2の反射光の第2の光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいて該チャックテーブルの表面から該チャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求める制御手段と、を具備し、
該検出光照射手段が該集光器に隣接して配設されている、
ことを特徴とするレーザー加工機が提供される。
【0013】
上記レーザー光線照射手段の集光器をチャックテーブルの保持面に対して垂直な集光点位置調整方向に移動せしめる集光点位置調整手段を備えており、上記制御手段は上記第1の反射光の第1の光路長と上記第2の反射光の第2の光路長との光路長差に基づいて集光点位置調整手段を制御する。
上記検出光照射手段は、上記集光器の加工送り方向両側にそれぞれ配設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置計測装置は以上のように構成され、イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、光路長調整手段を経由した第1の反射光(第1の偏波保持ファイバーの端面で反射し該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第1の反射光)と第2の反射光(チャックテーブルの保持面に保持された被加工物で反射し対物レンズと1/4波長板と第1のコリメーションレンズと第1の偏波保持ファイバーおよび光分岐手段を経由して第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第2の反射光)との光路長差を求め、該光路長差に基づいてチャックテーブルの表面からチャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求めるので、チャックテーブルに保持された被加工物の上面位置を正確に計測することができる。
また、本発明によるレーザー加工機は上記高さ位置計測装置を装備しているので、チャックテーブルに保持された被加工物の上面位置を基準とした所定の位置に正確にレーザー加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工機の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工機に装備されるレーザー光線照射手段および高さ位置計測装置のブロック構成図。
【図3】図2に示す高さ位置計測装置を構成する制御手段によって求められる分光干渉波形を示す説明図。
【図4】図2に示す高さ位置計測装置を構成する制御手段によって求められる被加工物の表面までの光路長差を示す説明図。
【図5】図2に示す高さ位置計測装置を構成する制御手段によって求められる被加工物の表面までの光路長差と被加工物の表面までの光路長差および被加工物の厚みを示す光路長差の説明図。
【図6】図1に示すレーザー加工機によって加工される被加工物としての光デバイスウエーハの斜視図。
【図7】図1に示すレーザー加工機によって図6に示す光デバイスウエーハに変質層を形成するレーザー加工工程の一実施形態を示す説明図。
【図8】図1に示すレーザー加工機によって図6に示す光デバイスウエーハに変質層を形成するレーザー加工工程の他の実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に従って構成されたチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置およびレーザー加工機の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1には、本発明に従って構成されたチャックテーブルに保持された被加工物の位置を計測する計測装置を装備したレーザー加工機の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工機1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー照射ユニット5とを具備している。
【0018】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円形形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0019】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にX軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。
【0021】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し加工送り量を検出するための割り出し送り量検出手段384を備えている。割り出し送り量検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。この送り量検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。
【0023】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0024】
図示の実施形態のおけるレーザー照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられた円筒形状のユニットハウジング52を具備しており、ユニットホルダ51が上記可動支持基台42の装着部422に一対の案内レール423、423に沿って移動可能に配設されている。ユニットホルダ51に取り付けられたユニットハウジング52には、図2に示すレーザー光線照射手段6が配設されている。レーザー光線照射手段6は、パルスレーザー光線発振手段61と、該パルスレーザー光線発振手段61から発振されたパルスレーザー光線を図2において下方に向けて方向変換する方向変換ミラー62と、該方向変換ミラー62によって方向変換されたパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36の保持面に保持された被加工物Wに照射する集光器63を具備している。パルスレーザー光線発振手段61は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器611と、これに付設された繰り返し周波数設定手段612とから構成されており、例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を発振する。集光器63は、パルスレーザー光線発振手段61から発振されたパルスレーザー光線を集光する集光レンズ631と、該集光レンズ631を収容するレンズケース632とからなっており、このレンズケース632はボイスコイルモータやリニアモータ等からなる第1の集光点位置調整手段64によって図2において上下方向即ちチャックテーブル36の保持面に対して垂直な集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめられるようになっている。この第1の集光点位置調整手段64は、後述する制御手段によって制御される。
【0025】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、ユニットホルダ51を可動支持基台42の装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)即ちチャックテーブル36の保持面に対して垂直な方向に移動させるための第2の集光点位置調整手段53を具備している。第2の集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、上記レーザー照射ユニット5を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー照射ユニット5を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー照射ユニット5を下方に移動するようになっている。
【0026】
上記レーザー照射ユニット5を構成するユニットハウジング52の前端部には、撮像手段65が配設されている。この撮像手段65は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0027】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工機は、チャックテーブルに保持された被加工物の位置を検出する高さ位置計測装置7を具備している。この高さ位置計測装置7について、図2を参照して説明する。
図2に示す高さ位置計測装置7は、所定の波長領域を有する光を発する発光源71と、該発光源71からの光をチャックテーブルに保持された被加工物に照射する検出光照射手段72a、72bを具備している。上記発光源71は、例えば波長が820〜870nm領域の光を発光するLED、SLD、LD、ハロゲン電源、ASE電源、スーパーコンティニアム電源を用いることができる。
【0028】
上記検出光照射手段72a、72bは、それぞれ発光源71からの光を第1の経路73a、73bに導くとともに該第1の経路73a、73bを逆行する反射光を第2の経路74a、74bに導く光分岐手段721a、721bと、第1の経路73a、73bに配設され発光源71からの光を導く第1の偏波保持ファイバー722a、722bと、第2の経路74a、74bに配設され第1の偏波保持ファイバー722a、722bを逆行する反射光を導く第2の偏波保持ファイバー723a、723bと、該第1の偏波保持ファイバー722a、722bの端面から光照射光路75a、75bに導かれた光を平行光に形成する第1のコリメーションレンズ724a、724bと、該コリメーションレンズ724a、724bによって平行光に形成された光を偏光する1/4波長板725a、725bと、該1/4波長板725a、725bを通過した光を該チャックテーブル36の保持面(上面)に保持された被加工物Wの上面に導く対物レンズ726a、726bとからなっている。この検出光照射手段72a、72bを構成する光分岐手段721a、721bは、偏波保持ファイバーカプラ、偏波保持ファイバーサーキュレーター、シングルモードファイバーカプラ、シングルモードファイバーカプラサーキュレーターなどを用いることができる。上記1/4波長板725a、725bは、発光源71からの光の直線偏光を円偏光に、または円偏光を直線偏光に変換する。なお、実施形態においては、1/4波長板725a、725bは発光源71からの光の直線偏光を円偏光に偏光する。そして、1/4波長板725a、725bによって偏光された円偏光の光が被加工物の上面で反射すると円偏光の回転方向が逆転し、1/4波長板725a、725bを再度通過すると偏光面が90度回転した直線偏光となる。このように構成された検出光照射手段72a、72bは、図1および図2に示すようにレーザー光線照射手段6の集光器63に近接し加工送り方向(X軸方向)の両側にそれぞれ配設される。
【0029】
図2を参照して説明を続けると、上記第2の経路74a、74bと光検出光路77との間には光スイッチ76が配設されている。この光スイッチ76は、上記一方の検出光照射手段72aの第2の偏波保持ファイバー723aに導かれた反射光と他方の検出光照射手段72bの第2の偏波保持ファイバー723bに導かれた反射光を切り替えて、いずれか一方を光検出光路77に導く機能を有し、後述する制御手段によって制御される。
【0030】
上記光検出光路77には、光スイッチ76に接続された第3の偏波保持ファイバー78と、第2のコリメーションレンズ79と、光路長調整手段80と、回折格子81と、ラインイメージセンサー82が配設されている。第2のコリメーションレンズ79は、上記第1の偏波保持ファイバー722a、722bの端面で反射し光分岐手段721a、721bを経由して第2の偏波保持ファイバー723a、723bの端面から光検出光路77に配設された第3の偏波保持ファイバー78に導かれた第1の反射光(図示の実施形態においては直線偏光)と、チャックテーブル36の保持面(上面)に保持された被加工物Wの上面で反射し対物レンズ726a、726bと1/4波長板725a、725bと第1のコリメーションレンズ724a、724bと第1の偏波保持ファイバー722a、722bおよび光分岐手段721a、721bを経由して第2の偏波保持ファイバー723a、723bの端面から光検出光路77に配設された第3の偏波保持ファイバー78に導かれた第2の反射光(図示の実施形態においては第1の反射光の偏光面に対して90度回転した偏光面を有する直線偏光)とを平行光に形成する。
【0031】
上記光路長調整手段80は、上記第2のコリメーションレンズ79によって平行光に形成された第2の反射光は通過させ第1の反射光は反射する第1のビームスプリッター801および第2のビームスプリッター802と、上記第1のビームスプリッター801によって反射された第1の反射光を方向変換して上記第2のビームスプリッター802に導く第1の方向変換ミラー803aおよび第2の方向変換ミラー803bとからなる方向変換手段803とによって構成されている。なお、光路長調整手段80は、方向変換手段803を第1のビームスプリッター801および第2のビームスプリッター802を通過する光軸に対して直交する矢印で示す方向に移動することにより、上記第1の反射光の光路長を調整することができる。
【0032】
上記回折格子81は、上記光路長調整手段80を経由した上記第1の反射光と第2の反射光との干渉を回折し、各波長に対応する回折信号をラインイメージセンサー82に送る。上記ラインイメージセンサー82は、回折格子81によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、検出信号を制御手段90に送る。
【0033】
制御手段90は、イメージセンサー82による検出信号から分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、上記第1の反射光の光路長と上記第2の反射光の光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいてチャックテーブル36の表面からチャックテーブル36の保持面(上面)に保持された被加工物Wの上面までの距離を求める。即ち、制御手段90は、イメージセンサー82からの検出信号に基づいて図3に示すような分光干渉波形を求める。図3において横軸は反射光の波長を示し、縦軸は光強度を示している。
【0034】
以下、制御手段90が上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて実行する波形解析の一例について説明する。
上記第1の反射光の光路における第1の偏波保持ファイバー722a、722bの端面から第1の偏波保持ファイバー722a、722b、光分岐手段721a、721b、第2の偏波保持ファイバー723a、723b、第3の偏波保持ファイバー78、第2のコリメーションレンズ79、上記光路長調整手段80の方向変換手段803を経由して回折格子81に至るまでの光路長を(L1)とし、上記第2の反射光の光路におけるチャックテーブル36の保持面(上面)から対物レンズ726a、726b、1/4波長板725a、725b、第1のコリメーションレンズ724a、724b、第1の偏波保持ファイバー722a、722b、光分岐手段721a、721b、第2の偏波保持ファイバー723a、723b、第3の偏波保持ファイバー78、第2のコリメーションレンズ79、光路長調整手段80の第1のビームスプリッター801および第2のビームスプリッター802を経由して回折格子81に至るまでの光路長を(L2)とし、光路長(L1)と光路長(L2)との差を光路長差(L=L1−L2)とする。なお、図示の実施形態において光路長差(L=L1−L1)は、例えば500μmに設定されているものとする。
【0035】
次に、制御手段90は、上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行する。この波形解析は、例えばフーリエ変換理論やウエーブレット変換理論に基づいて実行することができるが、以下に述べる実施形態においては下記数式1、数式2、数式3に示すフーリエ変換式を用いた例について説明する。
【0036】
【数1】

【0037】
【数2】

【0038】
【数3】

【0039】
上記数式において、λは波長、dは上記第1の反射光の光路における第1の偏波保持ファイバー722a、722bの端面から第1の偏波保持ファイバー722a、722b、光分岐手段721a、721b、第2の偏波保持ファイバー723a、723b、第3の偏波保持ファイバー78、第2のコリメーションレンズ79、上記光路長調整手段80の方向変換手段803を経由して回折格子81に至るまでの光路長(L1)と、上記第2の反射光の光路におけるチャックテーブル36の保持面に保持された被加工物Wの上面から対物レンズ726a、726b、1/4波長板725a、725b、第1のコリメーションレンズ724a、724b、第1の偏波保持ファイバー722a、722b、光分岐手段721a、721b、第2の偏波保持ファイバー723a、723b、第3の偏波保持ファイバー78、第2のコリメーションレンズ79、光路長調整手段80の第1のビームスプリッター801および第2のビームスプリッター802を経由して回折格子81に至るまでの光路長(L3)との光路長差(L1−L3)、W(λi)は窓関数である。
上記数式1は、cosの理論波形と上記分光干渉波形(I(λn))との比較で最も波の周期が近い(相関性が高い)、即ち分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が高い光路長差(d)を求める。また、上記数式2は、sinの理論波形と上記分光干渉波形(I(λn))との比較で最も波の周期が近い(相関性が高い)、即ち分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が高い光路長差(d)を求める。そして、上記数式3は、数式1の結果と数式2の結果の平均値を求める。
【0040】
制御手段90は、上記数式1、数式2、数式3に基づく演算を実行することにより、図4に示すように信号強度が高い光路長差(d)を求める。図4において横軸は光路長差(d)を示し、縦軸は信号強度を示している。図4の(a)は光路長差(d)が630μmの場合であり、この場合チャックテーブル36の保持面(上面)から被加工物Wの上面までの距離は図示の実施形態においては130μmである。図4の(b)は光路長差(d)が580μmの場合であり、この場合チャックテーブル36の表面から被加工物Wの表面(上面)までの距離は図示の実施形態においては80μmである。このように、上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行して光路長差(d)を求めることにより、チャックテーブル36の保持面(上面)から被加工物Wの上面までの距離を求めることができる。なお、制御手段90は、上記図4に示す解析結果を表示手段91に表示する。
【0041】
上述した実施形態においては、被加工物Wがシリコンウエーハのように上記波長領域の光を透過しない場合について説明したが、次に被加工物Wがサファイアや石英やガラス等の光が透過する材料によって形成されている場合について説明する。
第1の偏波保持ファイバー722a、722bの端面(図2において下面)で反射した第1の反射光(図示の実施形態においては直線偏光)は、直線変更の状態で第1の偏波保持ファイバー722a、722bを逆行して、光分岐手段721a、721b、第2の偏波保持ファイバー723a、723b、第3の偏波保持ファイバー78を経由して第2のコリメーションレンズ79に導かれる。一方、発光源71から第1の偏波保持ファイバー722a、722bの端面を通して照射される光(図示の実施形態においては直線偏光)は、1/4波長板725a、725bによって直線偏光から円偏光に変換される。従って、被加工物Wに照射された円偏光は被加工物Wの上面(表面)で反射する反射光と被加工物Wの下面(裏面)で反射する反射光が生成され、この第2の反射光(図示の実施形態においては回転方向が逆転した円偏光)は対物レンズ726a、726bを通して1/4波長板725a、725bを再度通過することにより上記第1の反射光に対して偏光面が90度回転した直線偏光になる。このようにして1/4波長板725a、725bを再度通過した第2の反射光は、第1のコリメーションレンズ724a、724bを経由して第1の偏波保持ファイバー722a、722bを逆行し、光分岐手段721a、721b、第2の偏波保持ファイバー723a、723b、第3の偏波保持ファイバー78を経由して第2のコリメーションレンズ79に導かれる。なお、上記第1の反射光と偏光面が90度回転している第2の反射光は、光スイッチ76によって第2の偏波保持ファイバー723aと723bのいずれか一方に導かれた第1の反射光および第2の反射光が第3の偏波保持ファイバー78を経由して第2のコリメーションレンズ79に導かれる。
【0042】
このようにして第2のコリメーションレンズ79に導かれた第1の反射光と第2の反射光は、第2のコリメーションレンズ79によって平行光に形成され、光路長調整手段80に導かれる。光路長調整手段80に導かれた第1の反射光と第2の反射光は、上述したように光路長が調整されて回折格子81に導かれる。回折格子81に導かれた第1の反射光と第2の反射光は回折格子81によって回折され、この回折された回折光がラインイメージセンサー82に導かれる。そして、ラインイメージセンサー82は回折格子81によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、検出信号を制御手段90に送る。このように第1の偏波保持ファイバー722a、722bの端面(図2において下面)で反射した第1の反射光と、被加工物Wの上面(表面)および下面(裏面)で反射した第2の反射光による分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて上述した波形解析を実行すると、図5に示すように信号強度が高い光路長差(d)が3個求められる。図5において横軸は光路長差(d)を示し、縦軸は信号強度を示している。図5に示す例においては、光路長差(d)が620μmの位置と光路長差(d)が500μmの位置と光路長差(d)が120μmの位置で信号強度が高く表されている。光路長差(d)が620μmの位置の信号強度(A)は被加工物Wの上面(表面)を表し、この場合チャックテーブル36の保持面(上面)から被加工物Wの上面(表面)までの距離は図示の実施形態においては120μmである。また、光路長差(d)が500μmの位置の信号強度(B)は被加工物Wの上面(表面)を表し、この場合チャックテーブル36の保持面(上面)から被加工物Wの上面(表面)までの距離は図示の実施形態においては零(0)である。一方、光路長差(d)が120μmの位置の信号強度(C)は被加工物Wの厚みを表しており、被加工物Wの厚みが120μmであることが直接求められる。なお、制御手段90は、上記図5に示す解析結果を表示手段91に表示する。
【0043】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図6にはレーザー加工される被加工物としての光デバイスウエーハ10の斜視図が示されている。図6に示す光デバイスウエーハ10は、厚みが例えば100μmのサファイアウエーハからなっており、その表面10aに窒化ガリウム系化合物半導体からなる光デバイス層が積層され格子状に形成された複数のストリート101によって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイス102が形成されている。
【0044】
上述したレーザー加工機1を用い、上記光デバイスウエーハ10のストリート101に沿ってレーザー光線を照射し、光デバイスウエーハ10の内部にストリート101に沿って変質層を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。なお、光デバイスウエーハ10の内部に変質層を形成する際に、光デバイスウエーハ10の厚さにバラツキがあると、上述したように屈折率の関係で所定の深さに均一に変質層を形成することができない。そこで、レーザー加工を施すに際しては、上述した高さ位置計測装置7によってチャックテーブル36の保持面に保持された光デバイスウエーハ10の上面位置を計測しつつレーザー光線を照射する。
即ち、先ず上述した図1に示すレーザー加工機1のチャックテーブル36の保持面上に光デバイスウエーハ10の裏面10bを上にして載置し、該チャックテーブル36の保持面上に光デバイスウエーハ10を吸引保持する。このようにして光デバイスウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段65の直下に位置付けられる。
【0045】
チャックテーブル36が撮像手段65の直下に位置付けられると、撮像手段65および制御手段90によって光デバイスウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段95および制御手段8は、光デバイスウエーハ10の所定方向に形成されているストリート101と、該ストリート101に沿ってレーザー光線を照射する集光器63との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、検出位置のアライメントを遂行する。また、光デバイスウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート101に対しても、同様に検出位置のアライメントが遂行される。このとき、光デバイスウエーハ10のストリート101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、光デバイスウエーハ10を形成するサファイアウエーハは透明体であるため、裏面10bから透かしてストリート101を撮像することができる。
【0046】
以上のようにしてチャックテーブル36の保持面に保持された光デバイスウエーハ10に形成されているストリート101を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、加工送り手段37および第1の割り出し送り手段38を作動して図7の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線照射手段6の集光器63が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート101の一端(図7の(a)において左端)を高さ位置計測装置7を構成する一方の検出光照射手段72aの直下に位置付ける。次に、高さ位置計測装置7を作動するとともに加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を図7の(a)において矢印X1で示す加工送り方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。なお、チャックテーブル36を図7の(a)において矢印X1で示す加工送り方向に加工送りする際には、制御手段90は一方の検出光照射手段72aの第2の偏波保持ファイバー723aに導かれた反射光を光検出光路75に導くように光スイッチ76を切り替える。このようにして高さ位置計測装置7を作動することにより、上述したように光デバイスウエーハ10の上面(裏面)における所定のストリート101に沿った高さ位置が計測される。そして、制御手段90は、加工送り量検出手段374からの検出信号と高さ位置計測装置7からの計測信号に基づいて、光デバイスウエーハ10の移動位置に対応する上面(裏面)の高さ位置を上述したように求め、この光デバイスウエーハ10の移動位置に対応する上面(裏面)の高さ位置を内蔵するメモリに格納する。
【0047】
次に、制御手段90は、加工送り量検出手段374から送られる検出信号に基づいてチャックテーブル36のX1で示す方向への移動距離を求める。そして、この移動距離が図7の(b)に示すように一方の検出光照射手段72aと集光器622の中心間距離Sに達したら、制御手段90は光デバイスウエーハ10の所定のストリート101の一端(図7の(b)において左端)が集光器63の直下に達したと判断し、レーザー光線照射手段6を作動し集光器63からパルスレーザー光線を照射する。このとき、制御手段90は、メモリに格納されたストリート101の一端(図7の(b)において左端)の上面(裏面)の高さ位置に基づいて、集光器63から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pをストリート101の上面(裏面)の高さ位置から内部に所定距離(例えば50μm)の深さ位置に位置付けるように第1の集光点位置調整手段64を制御する。以後、制御手段90は、加工送り量検出手段374から送られる検出信号と一方の検出光照射手段72aからの計測信号に基づいて、一方の検出光照射手段72aと集光器622の中心間距離Sだけ遅らせて集光器63から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pをストリート101の上面(裏面)の高さ位置から内部に所定距離(例えば50μm)の深さ位置に位置付けるように、第1の集光点位置調整手段64を制御する。そして、図7の(c)で示すように集光器63の照射位置にストリート101の他端(図7の(b)において右端)が達したら、制御手段90は、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する(レーザー加工工程)。この結果、光デバイスウエーハ10の内部には、図7の(c)で示すように裏面10b(上面)から所定の深さ位置に裏面10b(上面)と平行に変質層110が形成される。
【0048】
なお、上記レーザー加工工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
レーザー光線 :LD励起QスイッチNd:YVO4レーザー
波長 :1064nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :80kHz
パルス幅 :120ns
平均出力 :1.2W
集光スポット径 :φ2μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0049】
以上のようにして、光デバイスウエーハ10の所定のストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、制御手段90は第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を割り出し送り方向にストリート101の間隔だけ割り出し送りするとともに加工送り手段37を作動して、図8の(a)に示すようにストリート101の一端(図8の(a)において右端)を高さ位置計測装置7を構成する他方の検出光照射手段72bの直下に位置付ける。次に、高さ位置計測装置7を作動するとともに加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を図8の(a)および(b)において矢印X2で示す加工送り方向に所定の加工送り速度で移動し、上述したレーザー加工工程を実施する。そして、図8の(c)で示すように集光器63の照射位置にストリート101の一端(図8の(c)において左端)が達したら、制御手段90は、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。この結果、光デバイスウエーハ10の内部には、図8の(c)で示すように裏面10b(上面)から所定の深さ位置に裏面10b(上面)と平行に変質層110が形成される。なお、チャックテーブル36を図8の(a)および(b)において矢印X2で示す加工送り方向に加工送りする際には、制御手段90は他方の検出光照射手段72bの第2の偏波保持ファイバー723bに導かれた反射光を光検出光路75に導くように光スイッチ76を切り替える。このように、図示の実施形態におけるレーザー加工機は高さ位置計測装置7を構成する検出光照射手段72a、72bがレーザー光線照射手段6の集光器63に近接し加工送り方向(X軸方向)の両側にそれぞれ配設されているので、被加工物である光デバイスウエーハ10を往復加工する際に光デバイスウエーハ10の上面の高さ位置を計測しつつレーザー加工することができる。
【0050】
以上のようにして、光デバイスウエーハ10の所定方向に延在する全てのストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行する。このようにして、光デバイスウエーハ10に形成された全てのストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、光デバイスウエーハ10を保持しているチャックテーブル36は、最初に光デバイスウエーハ10を吸引保持した位置に戻され、ここで光デバイスウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、光デバイスウエーハ10は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0051】
以上、本発明によるチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置計測装置をレーザー加工機に適用した例を示したが、本発明による高さ位置計測装置は切削ブレードを装備した切削加工機等の他の加工機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:加工送り量検出手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:高さ計測兼レーザー照射ユニット
53:第2の集光点位置調整手段
6:レーザー光線照射手段
61:パルスレーザー光線発振手段
63:集光器
64:第1の集光点位置調整手段
65:撮像手段
7:高さ位置計測装置
71:発光源
72a、72b:検出光照射手段
721a、721b:光分岐手段
722a、722b:第1の偏波保持ファイバー
723a、723b:第2の偏波保持ファイバー
724a、724b:第1のコリメーションレンズ
725a、725b:1/4波長板
726a、726b:対物レンズ
76:光スイッチ
78:第3の偏波保持ファイバー
79:第2のコリメーションレンズ
80:光路長調整手段
81:回折格子
82:ラインイメージセンサー
90:制御手段
10:光デバイスウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の位置を検出する被加工物の高さ位置計測装置において、
所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、該第1の経路に配設され発光源からの光を導く第1の偏波保持ファイバーと、該第2の経路に配設され該第1の偏波保持ファイバーを逆行する反射光を導く第2の偏波保持ファイバーと、該第1の偏波保持ファイバーの端面から光照射光路に導かれた光を平行光に形成する第1のコリメーションレンズと、該第1のコリメーションレンズによって平行光に形成された光を偏光する1/4波長板と、該1/4波長板を通過した光を該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の上面に導く対物レンズとを具備している検出光照射手段と、
該第1の偏波保持ファイバーの端面で反射し該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第1の反射光と、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物で反射し該対物レンズと該1/4波長板と該第1のコリメーションレンズと該第1の偏波保持ファイバーおよび該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第2の反射光とを平行光に形成する第2のコリメーションレンズと、
該第2のコリメーションレンズを通過した該第1の反射光と該第2の反射光との光路長を調整する光路長調整手段と、
該光路長調整手段を経由した該第1の反射光と該第2の反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した該第1の反射光と該第2の反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、該第1の反射光の第1の光路長と該第2の反射光の第2の光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいて該チャックテーブルの表面から該チャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置計測装置。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の位置を検出する高さ位置計測装置とを具備し、該レーザー光線照射手段はレーザー光線を発振するレーザー光線発振器と該レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物に照射する集光器とを具備しているレーザー加工機において、
該高さ位置計測装置は、所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、該第1の経路に配設され発光源からの光を導く第1の偏波保持ファイバーと、該第2の経路に配設され該第1の偏波保持ファイバーを逆行する反射光を導く第2の偏波保持ファイバーと、該第1の偏波保持ファイバーの端面から光照射光路に導かれた光を平行光に形成する第1のコリメーションレンズと、該第1のコリメーションレンズによって平行光に形成された光を偏光する1/4波長板と、該1/4波長板を通過した光を該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の上面に導く対物レンズとを具備している検出光照射手段と、
該第1の偏波保持ファイバーの端面で反射し該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第1の反射光と、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物で反射し該対物レンズと該1/4波長板と該第1のコリメーションレンズと該第1の偏波保持ファイバーおよび該光分岐手段を経由して該第2の偏波保持ファイバーの端面から光検出光路に導かれた第2の反射光とを平行光に形成する第2のコリメーションレンズと、
該第2のコリメーションレンズを通過した該第1の反射光と該第2の反射光との光路長を調整する光路長調整手段と、
該光路長調整手段を経由した該第1の反射光と該第2の反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した該第1の反射光と該第2の反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、該第1の反射光の第1の光路長と該第2の反射光の第2の光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいて該チャックテーブルの表面から該チャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求める制御手段と、を具備し、
該検出光照射手段が該集光器に隣接して配設されている、
ことを特徴とするレーザー加工機。
【請求項3】
該レーザー光線照射手段の該集光器を該チャックテーブルの保持面に対して垂直な集光点位置調整方向に移動せしめる集光点位置調整手段を備えており、
該制御手段は、該第1の反射光の第1の光路長と該第2の反射光の第2の光路長との光路長差に基づいて該集光点位置調整手段を制御する、請求項2記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該検出光照射手段は、該集光器の加工送り方向両側にそれぞれ配設されている、請求項2又は3記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−237348(P2011−237348A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110493(P2010−110493)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】