説明

ディーゼルエンジン

【課題】排気ガスの排出経路に設けている後処理装置内のディーゼルパティキュレートフィルタの効率のよい再生を課題とする。
【解決手段】過給器TBと、過給器TBの排気タービン45の下手側に少なくとも排気ガス中の粒状化物質PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ46bを有する排気ガス後処理装置46を備えたディーゼルエンジンにおいて、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ46bの上流側及び下流側に設けている圧力センサ52,53の差圧が所定値以上の圧力を検出すると、前記後処理装置46下流側の絞り弁47を絞ってディーゼルパティキュレートフィルタ46bを再生する構成とし、所定時間後エンジン回転数をローアイドル回転数近傍まで低下させると共に前記絞り弁47を開くように制御を行なうエンジンコントロールユニット100を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガスを処理する後処理装置を備えたディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を再生させるにあたり、DPF前後の圧力を検出して所定値以上になると絞り弁を絞ってDPFの温度を上昇させてDPFを再生する構成である。しかしながら、同時にエンジン回転数をローアイドル回転数近傍まで下降させる制御技術は開示されていない(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−90359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、絞り弁を絞ってもエンジン回転数が高い状態のままでは、排気ガスの流速が速いためにDPFの温度が再生可能な温度まで上昇するのに時間がかかってしまう。特に、冬場の寒い時期には、再生可能な温度まで上がらないこともある。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消するディーゼルエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、過給器(TB)と、過給器(TB)の排気タービン(45)の下手側に少なくとも排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を有する排気ガス後処理装置(46)を備えたディーゼルエンジンにおいて、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側及び下流側に設けている圧力センサ(52),(53)の差圧が所定値以上の圧力を検出すると、前記後処理装置(46)下流側の絞り弁(47)を絞ってディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する構成とし、所定時間後エンジン回転数をローアイドル回転数近傍まで低下させると共に前記絞り弁(47)を開くように制御を行なうエンジンコントロールユニット(100)を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンとしたものである。
【0006】
請求項1の作用は、燃焼した排気ガスはシリンダから出ていくが、後処理装置(46)の一部を構成するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)は排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集する。しかし、低負荷状態が長時間続くと粒状化物質(PM)が蓄積状態となって詰ってしまう。この詰り状態を圧力センサ(52),(53)で測定し、所定以上の差圧になると、絞り弁47を絞る。すると、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の抵抗によりディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)内の排気ガス温度が上昇する。
【0007】
さらに、所定時間後にエンジン回転数をローアイドル回転数近傍まで下降させて絞り弁(47)を開く。これにより、排気ガスの流速が下がってさらに排気ガス温度が上昇する。しかし、適度な温度上昇にするために、絞り弁(47)を開く。このような一連の流れの中で、高温の排気ガスで(PM)が焼きとばされ、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)が再生する。
【0008】
請求項2記載の発明では、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の温度を検出する温度センサ(58),(59)の値が所定値を超えると、エンジン回転数を中速域の回転数まで上昇させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンとしたものである。
【0009】
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の温度を検出する温度センサ(58),(59)の値が所定値を超えると、エンジン回転数を中速域の回転数まで上昇させる。これにより、排気ガスの流速が速くなることで温度が下がり、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の急激な温度上昇を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生時間の短縮が可能となる。
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の急激な温度上昇を防ぐことができるので、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の損傷を防止可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
【0012】
このように、コモンレール1は、エンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0013】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0014】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0015】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0016】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0017】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
【0018】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0019】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0020】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0021】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0022】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0023】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0024】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケースT内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0025】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0026】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0027】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダーである。
【0028】
図5はエンジンのシリンダー5内への吸気と排気の模式図であり、4サイクルのディーゼルエンジンの実施例である。過給器TBの吸気タービン36により過給された空気は、エアクリーナー35から吸気タービン36、インタークーラー37を通過して吸気マニホールド38からシリンダー5内へ送られる構成である。39は吸気バルブであり、40はピストンである。48はカムでありロッカーアーム49を介して吸排気バルブ39、41を開閉させるものである。
【0029】
シリンダー5内で燃焼した排ガスは、排気バルブ41から排気マニホールド42を通過した後、過給器TBの排気タービン45で過給器TBを駆動して排出される構成である。
このディーゼルエンジンは、排気ガスの一部を吸気側に混入させるためのEGR(排気再循環装置)回路44を有している。EGR回路で排気ガスの一部を吸気側に混入させることで酸素量(O2)を減らして、窒素酸化物Noxの発生を低減させるように構成している。ただし、EGR率が上昇しすぎると、逆に酸素量が少なくなって不完全燃焼になるので、燃焼状態によりEGR率を調節する必要がある。この調節は、EGRバルブ43にて行う。EGR回路44は、後述する後処理装置46下流側の排気管55と過給器TBの吸気タービン36上流側の吸入管56との間を接続している。また、EGR回路44の途中にはEGRクーラ57を設ける構成としている。このEGRバルブ43の開閉具合でシリンダー5内への排気ガスの還元量が変化する。
【0030】
排気タービン45を通過後の排気ガスは、後処理装置46を通過してマフラー50から大気中に排出される。後処理装置46は、酸化触媒(DOC)46aとディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bとから構成されている。
【0031】
酸化触媒(DOC)は不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は粒状化物室(PM)を捕集するためのものである。前記EGRバルブ43と絞り弁47については、ECU100により制御される構成である。後処理装置46はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bのみで構成してもよい、酸化触媒(DOC)を設けると不燃物質が燃焼するので、よりクリーンな排気ガスとなる。
【0032】
DPF46bは、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、PMが溜まってきて能力の低下が懸念される。そこで、後処理装置46の下手側に絞り弁47を設け、この絞り弁47を絞るとDPF46b内の圧力が高く保持されるので温度も高くなる。これにより、高い温度の影響により、DPF46bの再生が可能となる。即ち、高い温度の排気ガスがDPF46bを通過すると、DPF46b内に存在しているPMが焼き飛ばされることでDPF46bが再生される。
【0033】
DPF46bを再生させるためのDPF再生運転としては、EGRバルブ43と絞り弁47の両方を絞る。そして、燃料噴射タイミングのリタード(遅角)と合わせてDPF46b内のガス温度を上昇させ、DPF46bが再生に入るようにする。これにより、燃料のアフター噴射(排気ガス温度を上昇させるため)が不要となったり、アフター噴射の回数を減らすことができるようになるので、燃料消費量を抑制できて環境にもよい。
【0034】
このようなDPF再生運転を行うための条件としては、後処理装置46の上手側に圧力センサ52を設け、後処理装置46の下手側にも圧力センサ53を設け、この圧力差が所定値以上になるとDPF46b内にPMが蓄積して抵抗となっている状態なので、DPF再生運転を行うようにする。
【0035】
また、DPF再生運転に入った状態が長時間続くと、過熱状態となってしまいDPF46bが損傷してしまう。そこで、後処理装置46の下手側に温度センサ59を設け、この温度センサ59の値が所定値を超えるとDPF再生運転を止めて通常運転に戻るようにする。
【0036】
通常の運転は、EGRバルブ43と絞り弁47を同時に制御してEGR量を適宜コントロールするようにする。特に、絞り弁47を有することで、DPF46b内のガス温度を高く保持することができるようになる。
【0037】
前述のような構成としたことで、吸気スロットルが不要となる。即ち、過給器付き機関では吸気側圧力が高いので、EGRガス量を確保するために排気絞り弁または吸気スロットルを設け、EGRバルブと連動した制御が必要となるが、このようなシステムが不要となる。
【0038】
また、DPF46b下流の排気ガスを取り出すために、過給器TBの汚れに伴う性能劣化を生じることを防止できるようになる。そして、EGRガスはEGRクーラ57で冷却されるため、NOx低減に対して効果が大きくなる。
【0039】
前述したように、DPFの再生運転を行なうDPF強制再生モードにおいては、排気絞り弁47を絞り、ON−OFF制御によってEGRバルブ43を全閉とするように構成する。したがって、排気ガスの還元が行なわれないのでNOが増加し、このNOが酸化触媒(DOC)46aによってNO2に転換され、DPF46bの再生が促進されるようになる。
【0040】
また、DPF46bの強制再生中において、エンジン回転がローアイドルに移行した場合は、前記EGRバルブ43を全開とする。DPF46bの下流側には温度センサ59を設けているので、この温度センサ59による検出値が所定値以上に上昇したことも条件に加えるようにしてもよい。
【0041】
前記絞り弁47を絞ってDPF46bの強制再生を行なう場合において、エンジン回転数を低い回転数にして供給酸素量を増加させるとともに、排気ガス流速が減少することで温度を上昇しやすくしていた。ところが、再生中にエンジン回転数がローアイドルまたはその近傍に変更された場合、供給酸素量の増加と流速の減少により、煤が急速に燃焼してしまう。その結果、温度が急速に上昇してDPF46bが損傷してしまう可能性がある。そこで、最高温度が許容温度を超えないようにする煤を管理する必要がある。
【0042】
このために、温度センサ59が所定値を超えると、エンジン回転数を中速域まで上昇させるように構成する。これにより、排気ガスの流速が速くなるので最高温度が下がり、DPF46bの損傷を防止できるようになる。また、前記温度センサ59の所定値の値を限界値近傍で制御すると、DPF46bの再生を効率よく行なうことができるようになる。
【0043】
前記エンジン回転数を中速域まで上昇させるにあたり、一旦最高回転数まで上昇させ、その後中速域まで減速させるように構成してもよい、これにより、一旦排気ガスが最高速度で流れるので、予熱などでDPF46bが加熱されてしまって閾値の温度を超えてしまうことを防止できるようになる。
【0044】
また、DPF46bの強制再生中において、前述のようにエンジン回転数をローアイドルに移行するときにおいて、ポスト噴射を中断し、その後エンジン回転数を最高回転数まで上昇させ、中速域に移行する段階でポスト噴射を再開する構成とする。これにより、排気ガス温度の急激な上昇が抑制できるので、DPF46bの損傷を防止できるようになる。
【0045】
図6に示すように、後処理装置46の酸化触媒46aの入口部分にプレート61を設け、このプレート61の中心部分にファン60を回転可能に設ける構成とする。これにより、排気ガスの流れでファン60が回転するので排気ガスが拡散されて排気ガス濃度が均一となり、PMの捕集の偏りによる再生時の異常燃焼を防止することができるようになる。
【0046】
図7のファン60aは、ファン自体を排気ガスの流れる長手方向に長くしている実施例である。図8は酸化触媒46aの入口部分に円錐状のプレート62を設け、複数の穴を設ける構成とする。これにより、排気ガスの流れが均一となり、PMの捕集の偏りによる再生時の異常燃焼を防止することができるようになる。また、図9のように、酸化触媒46aの入り口部分の形状を円錐状に構成してもよい。また、図10に示すように、酸化触媒46aの上流側にプレート63を設け、このプレート63に穴64を設けるにあたり、外周部になるほど大径穴となるように構成してもよい。
【0047】
DPF46bの再生の操作方法として、図11に示すように構成してもよい。即ち、エンジンのスタートキー65のエンジン停止位置の手前に、DPF46bを強制再生させる位置を設ける構成とする。この強制再生位置にすると、DPF46bが自動的に再生され、再生後自動的にエンジンが停止する構成である。強制再生の判断としては、前述のように圧力センサ52,53の差圧が所定値以上になると、モニター等で運転者に知らせる構成である。また、強制再生位置がない場合においては、エンジン停止位置で強制再生可能に構成する。この場合は、常時強制再生すると燃料の無駄になるので、強制再生の可否を決定するスイッチを設け、このスイッチが入り状態のときには、従来のエンジン停止位置でDPF46bが再生するようにする。
【0048】
図12ではDPF46b内の煤に着火して異常燃焼してしまった場合の対処方法を示している。後処理装置46内には消化管69が接続しており、この消化管69にはラジエータ66のリザーブタンク67の冷却水が流れる構成である。後処理装置46内で異常燃焼が発生したことを温度センサ58,59が検出すると、消化バルブ68が開いて消化する構成である。これにより、後処理装置46内での異常燃焼が機体全体に広がるのを防止することができるようになる。
【0049】
図13はテールパイプ70内を流れる排気ガス温度を下げる構成である。DPF46bからはかなり高温の排気ガスが排出されるため、テールパイプ70に着火性の高い物質が付着していると火災になる危険性がある。そこで、パイプ71をテールパイプ70に接続し、パイプ71から大気中の空気をテールパイプ70内に送り込むようにすることで、テールパイプ70自体の温度を下げるようにする。特に、農業機械においては、藁屑などがテールパイプ70に絡っていたり、堆積したりしていると、着火して危険であるが、このような不具合を防止できるようになる。
【0050】
図14に示すように、インタークーラ37で冷却された空気の一部を、後処理装置46の上流側、又は下流側に送る構成とする。即ち、管路72から冷却空気を取り入れ、バルブ75を介して管路74経由で後処理装置46の上流側と接続している。また、バルブ75から管路73を経由して後処理装置46の下流側に接続している構成である。
【0051】
DPF46bの再生時以外は、前記バルブ75は閉じているが、排気温度の上昇を検出すると開いて排気温度を下げるようにしてもよい。
DPF46bの再生時において、前述した温度センサ58,59の値が正常値であれば、バルブ75を開いて冷却空気を後処理装置46の下流側に送るようにする。これにより、マフラ等の温度上昇を抑制できるようになる。また、DPF46bの再生時において、温度センサ58,59の値が異常に高い温度になると、バルブ75を開いて冷却空気を後処理装置46の上流側に送るようにする。これにより、DPF46bの急激な温度上昇を抑制できるようになり、DPF46bの損傷を防止できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクタの左側面図
【図4】トラクタの平面図
【図5】吸気系と排気系の模式図
【図6】後処理装置の側面図と内部の一部正面図
【図7】後処理装置の側面図
【図8】後処理装置の側面図
【図9】後処理装置の側面図
【図10】後処理装置の側面図
【図11】エンジンキーの平面模式図
【図12】後処理装置の模式図
【図13】後処理装置の模式図
【図14】吸気系と排気系の模式図
【符号の説明】
【0054】
TB 過給器
PM 粒状化物質
46 排気ガス後処理装置
46b ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
47 絞り弁
52,53 圧力センサ
58,59 温度センサ
100 エンジンコントロールユニット(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給器(TB)と、過給器(TB)の排気タービン(45)の下手側に少なくとも排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を有する排気ガス後処理装置(46)を備えたディーゼルエンジンにおいて、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の上流側及び下流側に設けている圧力センサ(52),(53)の差圧が所定値以上の圧力を検出すると、前記後処理装置(46)下流側の絞り弁(47)を絞ってディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を再生する構成とし、所定時間後エンジン回転数をローアイドル回転数近傍まで低下させると共に前記絞り弁(47)を開くように制御を行なうエンジンコントロールユニット(100)を設けたことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の温度を検出する温度センサ(58),(59)の値が所定値を超えると、エンジン回転数を中速域の回転数まで上昇させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−53795(P2010−53795A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220512(P2008−220512)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】