説明

ディーゼルエンジン

【課題】低負荷領域で燃費を悪化させることなくEGR量を増加させたディーゼルエンジンを提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジン10を、排気によって駆動されるタービン22及びタービンによって駆動され新気を圧縮するコンプレッサ21を有するターボ過給器20と、タービンの下流側の排気管路42から排ガスの一部を抽出してコンプレッサの上流側の吸気管路31内に導入する第1のEGR装置60と、タービンの上流側の排気管路41から排ガスの一部を抽出してコンプレッサの上流側の吸気管路内に導入する第2のEGR装置90と、エンジンの負荷状況に応じて第1のEGR装置と第2のEGR装置とを切り替える制御手段100とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに関し、特に低負荷領域で燃費を悪化させることなくEGR量(再循環される排ガス量)を増加させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用等のエンジンにおいては、排ガス中の有害物質であるNO(窒素酸化物)を低減することが求められている。
特に、空燃比がリーンな状態で運転されることが多いディーゼルエンジンにおいては、ストイキ領域で運転されるガソリンエンジンのように三元触媒を用いたNO処理を図ることが困難であり、燃焼温度の抑制等によってNOの発生自体を低減させる必要がある。
【0003】
ディーゼルエンジンから排出されるNOの低減技術として、排気ガス再循環(EGR)が知られている。EGRは、実質的に不活性ガスといえる排ガスを新気(燃焼用空気)に混合して燃焼室内に導入することによって、燃焼温度を低下させて高温時に発生しやすいNOを低減する技術である。
このようなEGRに関する技術として、ターボ過給器のタービン上流側の高圧の排ガスを、吸気側のコンプレッサ下流側へ導入する高圧EGR(HP−EGR)が知られている。
【0004】
また、近年、NO規制の強化などによって従来よりも大量のEGRを行なうことが必要となり、タービン下流側の排ガスを、コンプレッサ上流側の吸気管路内に導入する低圧EGR(LP−EGR)が普及している。
このような低圧EGRの場合、コンプレッサ上流側の比較的低圧な箇所に排ガスを導入することによって、EGR量を増大することが可能であり、さらに、EGRクーラやインタークーラなどによってEGRを冷却することによって、高密度なEGRを導入することが可能である。
【0005】
このようなディーゼルエンジンの高圧、低圧EGRに関する従来技術として、例えば特許文献1には、エンジンに低圧、高圧用のEGRパイプをそれぞれ設けるとともに、低中速・低負荷域では高圧EGRを主に低圧EGRを補助的に用い、低中速・高負荷域では低圧EGRを用い、高速時には高圧EGRを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−150319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、低圧EGRを実施する場合には、例えば排気管路を絞る排圧調整バルブで排気圧力(排圧)を高めたり、吸気管路を絞る吸気圧調整バルブで吸気圧力を下げることによって、低圧EGR配管の入り側、出側の差圧を大きくしてEGRの導入促進を図っている。
しかし、このように排気管路や吸気管路を絞る場合には、ポンプ損失が悪化して燃費の悪化を招いてしまう。
特に低負荷領域で大量EGRを実施する場合には、排圧調整バルブ等を多めに絞る必要があり、ポンプ損失の悪化が顕著となる。
本発明の課題は、低負荷領域で燃費を悪化させることなくEGR量を増加させたディーゼルエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、排気によって駆動されるタービン及び前記タービンによって駆動され新気を圧縮するコンプレッサを有するターボ過給器と、前記タービンの下流側の排気管路から排ガスの一部を抽出して前記コンプレッサの上流側の吸気管路内に導入する第1のEGR装置と、前記タービンの上流側の排気管路から排ガスの一部を抽出して前記コンプレッサの上流側の吸気管路内に導入する第2のEGR装置と、エンジンの負荷状況に応じて前記第1のEGR装置と前記第2のEGR装置とを切り替える制御手段とを備えることを特徴とするディーゼルエンジンである。
これによれば、第1のEGR装置では排圧調整バルブ等を用いなければEGR量の確保が困難となる低負荷時に、タービン上流側の高圧の排ガスをEGRする第2のEGR装置に切り替えることによって、ポンプ損失を増大させることなく大量EGRを実施することができ、燃費を悪化させずに排ガス中のNOを低減することが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記制御手段は、所定の高負荷領域では前記第1のEGR装置を作動させ、前記高負荷領域に対して負荷が低い低負荷領域では前記第2のEGR装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記第2のEGR装置は、酸化触媒及びディーゼルパティキュレートフィルタを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディーゼルエンジンである。
これによれば、排ガス中に含まれる燃料の未燃分(HC等)や粒子状物質(PM)がコンプレッサに流入することを防止し、コンプレッサを保護することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記低負荷領域においてエンジンの燃焼状態を予混合圧縮自着火燃焼とする燃焼制御手段を備え、前記第2のEGR装置は、酸化触媒を有することを特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジンである。
これによれば、予混合圧縮自着火(PCCI)燃焼として実質的にPMが発生しないスートフリー状態で第2のEGR装置を用いることによって、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を用いることなく、コンプレッサを未燃燃料及びPMから保護することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、低負荷領域で燃費を悪化させることなくEGR量を増加させたディーゼルエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したディーゼルエンジンの実施例の構成を示す模式図である。
【図2】実施例のディーゼルエンジンにおける運転状態に応じたEGRの切替を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、低負荷領域で燃費を悪化させることなくEGR量を増加させたディーゼルエンジンを提供する課題を、タービン下流側からコンプレッサ上流側にEGRを行なう第1のEGR装置と、タービン上流側からコンプレッサ上流側にEGRを行なう第2のEGR装置とをエンジンの負荷状態に応じて切り替えることによって解決した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を適用したディーゼルエンジンの実施例について説明する。
図1は、実施例のディーゼルエンジンの構成を示す模式図である。
エンジン10は、ターボチャージャ20、インテークシステム30、エキゾーストシステム40、燃料供給装置50、第1EGR装置60、酸化触媒(DOC)70、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)80、第2EGR装置90、エンジン制御ユニット(ECU)100等を備えて構成されている。
【0016】
エンジン10は、例えば、乗用車等の自動車の走行用動力源として用いられる4ストロークのディーゼルエンジンである。
エンジン10は、クランクシャフト11、ピストン12、シリンダブロック13、ヘッド14、燃焼室15、グロープラグ16、グローコントローラ17等を備えて構成されている。
クランクシャフト11は、エンジン10の出力軸である。
ピストン12は、シリンダ内を往復運動し、コンロッドを介して燃焼圧力をクランクシャフト11に伝達する部材である。
シリンダブロック13は、ピストン12が収容されるシリンダ部及びクランクシャフト11が回転可能に支持されるクランクケース部を一体に形成したものである。
シリンダブロック13は、クランク角センサ13a及び水温センサ13bを備えている。
クランク角センサ13aは、クランクシャフト11の角度位置を検出するものである。
水温センサ13bは、エンジン10内のウォータージャケット内を循環する冷却水温を検出するものである。
ヘッド14は、シリンダブロック13のピストン12の冠側の端部に設けられ、吸気ポート、排気ポート及びこれらに設けられた吸気バルブ及び排気バルブを開閉する動弁駆動機構等を備えている。
燃焼室15は、ピストン12の冠面とヘッド14のこれに対向する部分との間に形成されている。
グロープラグ16は、先端部が燃焼室15内に露出した状態でヘッド14に設けられた予備加熱装置である。
グローコントローラ17は、ECU100の制御に応じてグロープラグ16への通電量を制御するものである。
【0017】
ターボチャージャ20は、エンジン10の排ガス(既燃ガス)のエネルギを用いて、エンジン10が吸入する燃焼用空気(新気)を圧縮するものである。
ターボチャージャ20は、コンプレッサ21、タービン22、アクチュエータ23、負圧制御弁24等を備えている。
コンプレッサ21は、燃焼用空気を圧縮する遠心型圧縮機である。
タービン22は、コンプレッサ21と同軸に設けられ、エンジン10の排ガスによって駆動されるとともに、コンプレッサ21を駆動するものである。タービン22は、タービンホイールの周囲のノズルに設けられる可動式のべーンによってジオメトリを連続的に変更可能な可変ジオメトリ式のものである。
アクチュエータ23は、タービン22の可動ベーンを駆動する負圧式のアクチュエータである。
負圧制御弁24は、図示しない負圧源からの負圧を、ECU100の制御に従ってアクチュエータ23に導入する電磁弁である。
ターボチャージャ20は、ECU100が設定する目標過給圧に対して、実際の過給圧が低い場合には、可動式のベーンを閉じてノズルを絞ることによってタービン22の回転数を高め、過給圧を高める制御が行われる。
【0018】
インテークシステム30は、エンジン10に燃焼用空気を導入するものである。
インテークシステム30は、インテークダクト31、エアクリーナ32、エアフローメータ33、インタークーラ34、スロットルバルブ35、アクチュエータ36、インテークチャンバ37、吸気圧センサ38、インテークマニホールド39等を備えて構成されている。
【0019】
インテークダクト31は、大気から燃焼用空気を導入し、ターボチャージャ20のコンプレッサ21を経由してエンジン10に供給する空気流路である。
エアクリーナ32は、空気を濾過して埃等を除去するフィルタエレメントを備えている。エアクリーナ32を通過した空気はターボチャージャ20のコンプレッサ21に導入され、圧縮される。
エアフローメータ33は、エアクリーナ32の出口部に設けられ、空気流量を検出するセンサを備えている。また、エアフローメータ33には、吸気温度を検出する吸気温度センサが内蔵されている。
【0020】
インタークーラ34は、ターボチャージャ20のコンプレッサ21を出た空気を、走行風との熱交換によって冷却する熱交換器である。
スロットルバルブ35は、インタークーラ34の下流側に設けられ、エンジン10の吸入空気量を調節するものである。
アクチュエータ36は、ECU100からの制御信号に応じてスロットルバルブ35を開閉駆動するものである。
インテークチャンバ37は、スロットルバルブ35を通過した空気が導入される空気室であって、インテークマニホールド39を介してエンジン10の吸気ポートに接続されている。
吸気圧センサ38は、インテークチャンバ37に設けられ、エンジン10の吸気圧力と実質的に等しいインテークチャンバ37内の圧力を検出するものである。
インテークマニホールド39は、インテークチャンバ37からエンジン10の各気筒の吸気ポートに空気を導入する分岐管路である。
【0021】
エキゾーストシステム40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42、排圧調整バルブ43等を備えて構成されている。
エキゾーストマニホールド41は、エンジン10の各気筒の排気ポートから排出される排ガスを集合させてターボチャージャ20のタービン22に導入する管路である。
エキゾーストパイプ42は、タービン22から出た排気を車外に排出する管路である。エキゾーストパイプ42には、DOC70、DPF80等の排ガス後処理装置が設けられている。
排圧調整バルブ43は、DPF80の下流側(出側)に設けられ、第1EGR装置60の使用時にEGR量を確保するために排気を絞って排圧を向上するものである。
【0022】
燃料供給装置50は、エンジン10の燃焼室15内に燃料を供給するものである。燃料供給装置50は、サプライポンプ51、吸入調量電磁弁52、燃料温度センサ53、コモンレール54、燃圧センサ55、インジェクタ56等を備えたコモンレール式の高圧燃料噴射装置である。
【0023】
サプライポンプ51は、例えばインナカム式の圧送系を備え、燃料である軽油を加圧してコモンレール54に供給するものである。
吸入調量電磁弁52は、サプライポンプ51の燃料の吸入量を調整するものであって、ECU100からの制御信号に応じて駆動される。
燃料温度センサ53は、サプライポンプ51における燃料の温度を検出するものである。
【0024】
コモンレール54は、サプライポンプ51が吐出した高圧の燃料を貯留する蓄圧器である。
燃圧センサ55は、コモンレール54内の燃料の圧力(燃圧)を検出するものである。上述した吸入調量電磁弁52は、燃圧センサ55の出力を用いたフィードバック制御により、燃圧が例えばエンジン回転数及び負荷に応じて設定される所定の目標値となるようにその開度を調節される。
インジェクタ56は、コモンレール54から供給される燃料を各気筒の燃焼室15内に噴射するものである。インジェクタ56は、例えばピエゾ素子やソレノイド等のアクチュエータによって開閉される弁体を有し、ECU100からの噴射パルス信号に応じて開弁される。インジェクタ56の噴射タイミング及び噴射量はECU100によって制御されている。
インジェクタ56は、メイン噴射、メイン噴射に先立って少量の燃料を噴射するパイロット噴射、メイン噴射の後に少量の燃料を噴射するポスト噴射などを行なう。
【0025】
第1EGR装置60は、燃焼温度を抑制してNOの排出量を低減することを目的とし、タービン22よりも下流側のエキゾーストパイプ42から抽出したエンジン10の排ガスの一部を、コンプレッサ21によりも上流側のインテークダクト31内に還流させるものである。
第1EGR装置60は、EGR通路61、EGR制御弁62、EGRクーラ63等を備えて構成されている。
EGR通路61は、エキゾーストパイプ42におけるDPF80の出口側でありかつ排圧調整バルブ43の上流側の領域から排ガスを抽出し、これをインテークダクト31におけるエアフローメータ33とターボチャージャ20のコンプレッサ21との中間の部分に導入する管路である。
EGR制御弁62は、ECU100の制御に応じてEGR通路61の排ガス流量(EGR量)を調節するものである。
EGRクーラ63は、EGR通路61を流れる排ガスを冷却水との熱交換によって冷却するものである。
【0026】
DOC70は、エキゾーストパイプ42に設けられ、排ガス中の主として炭化水素(HC)を酸化処理するものである。DOC70は、例えばコーディエライトハニカム構造体等のセラミック製担体の表面に、白金やパラジウム等の貴金属やアルミナ等の金属酸化物を担持させて形成されている。
DOC70には、入口部分の排ガス温度を検出する温度センサ71が設けられている。
【0027】
DPF80は、エキゾーストパイプ42のDOC70よりも下流側に設けられ、排ガスを濾過して粒子状物質(PM)を捕集するフィルタを備えている。ここで、PMには、スート(煤)、有機溶剤可溶性成分(SOF)、サルフェート(SO4)等が含まれる。
フィルタは、例えば、コーディエライト等の耐熱性セラミックスをハニカム構造に形成し、ガス流路となる多数のセルを、入口側、出口側が互い違いとなるように端面に封をして形成されたいわゆるクローズドタイプ(ウォールフロータイプ)のものである。
DPF80は、入口圧力と出口圧力との間の差圧を検出する差圧センサ81、及び、出口の排ガス温度を検出する温度センサ82を備えている。
【0028】
第2EGR装置90は、エンジン10の低負荷領域においてNOの排出量を低減するため、タービン22よりも上流側のエキゾーストマニホールド41から抽出したエンジン10の排ガスの一部を、第1EGR装置60のEGRクーラ63を経由してインテークダクト31内に還流させるものである。
第2EGR装置90は、EGR通路91、DOC92、DPF93、EGR制御弁94等を備えて構成されている。
EGR通路91は、タービン22よりも上流側であるエキゾーストマニホールド41から排ガスを抽出し、第1EGR装置60のEGR通路61のEGRクーラ63の上流側の領域に導入する管路である。EGR通路91から出た排ガスは、第1EGR装置60と共用のEGRクーラ63で冷却された後に、インテークダクト31におけるエアフローメータ33とターボチャージャ20のコンプレッサ21との中間の部分に導入される。
DOC92は、EGR通路91の途中に設けられ、排ガス中の主として炭化水素(HC)を酸化処理するものである。
DPF93は、EGR通路91におけるDOC92の下流側に設けられ、排ガスを濾過してPMを捕集するものである。
なお、DOC92、DPF93には、上述したDOC70、DPF80と実質的に同様の温度センサ、差圧センサ等が設けられている。
EGR制御弁94は、ECU100の制御に応じてEGR通路91の排ガス流量(EGR量)を調節するものである。
【0029】
ECU100は、上述したエンジン10及びその補機類を統括的に制御するものであって、CPU等の情報処理装置、ROMやRAM等の記憶装置、入出力インターフェイス、及び、A/D変換器、タイマ、カウンタ、各種ロジック回路等の周辺回路を備えている。
ECU100には、上述した各種センサのほか、アクセルペダルセンサ101、大気圧センサ102の出力が入力される。
アクセルペダルセンサ101は、ドライバが操作するアクセルペダルのポジションを検出することによって、ドライバ要求トルクを検出する要求トルク検出手段である。
大気圧センサ102は、車両の周囲雰囲気における大気圧を検出するものである。
【0030】
ECU100は、アクセルペダルセンサ101の出力に応じて設定される要求トルクに応じて、エンジン10の目標トルクを設定し、これに基づいてスロットルバルブ35の開度、燃料供給装置50の燃料噴射量及び時期、燃圧等を制御する。
【0031】
また、ECU100は、エンジン10の運転状態に応じて、上述した第1EGR装置60及び第2EGR装置90を切り替えながらEGRを実施する制御手段としても機能する。
図2は、本実施例におけるエンジンの運転状態に応じたEGRの切替を示す図である。
図2に示すように、ECU100は、第1EGR装置60、第2EGR装置90のEGR制御弁62、94を制御し、エンジン10のトルクが所定の閾値以上である高負荷領域においては、第1EGR装置60によるEGRを実施し、トルクが閾値未満である低負荷領域においては、第2EGR装置90によるEGRを実施する。
【0032】
以上説明した本実施例によれば、第1EGR装置60で大量EGRを実施するには、排圧調整バルブ43を大きく絞らざるを得ない低負荷領域において、第2EGR装置90を用いてタービン22の上流側から比較的高圧の排ガスを抽出し、コンプレッサ21の上流側へEGRを実施することによって、ポンプ損失を悪化させることなくEGR量を増大することができる。
これによって、燃費を悪化させずに排ガス中のNOを低減することができる。
また、第1EGR装置60、第2EGR装置90でEGRされる排ガスを共通のEGRクーラ63で冷却することによって、シンプルな構成によって両者のEGRガスを冷却し、高密度のEGRを行なうことができる。なお、EGRガスは、インタークーラ34においてさらに冷却される。
また、第1EGR装置60、第2EGR装置90によってEGRされる排ガスがともにDOC70,92、DPF80,93を通過することによって、コンプレッサ21に燃料の未燃分やPMが流入することを防止し、コンプレッサ21を保護することができる。
【0033】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)ディーゼルエンジン及びその補機類の構成は上述した実施例のものに限らず、適宜変更することが可能である。
例えば、実施例では、エキゾーストパイプに設けられた排圧調整バルブを用いて第1EGR装置のEGR量を確保しているが、これに代えて、あるいは併用して、吸気管路に設けた絞り弁で吸気側を負圧とすることによって第1EGR装置のEGR量を確保するようにしてもよい。
(2)実施例では、第2EGR装置にDOC及びDPFを設けているが、第2EGR装置が用いられる低負荷領域でのエンジン10の燃焼を、燃焼制御によって予混合圧縮自着火燃焼(PCCI)とし、実質的にPMが発生しないスートフリー状態とした場合には、DPFは省略し、DOCのみを有する構成とすることができる。
(3)実施例では、第1、第2のEGR装置で共通のEGRクーラを用いているが、各EGR装置に独立したEGRクーラを設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 エンジン 11 クランクシャフト
12 ピストン 13 シリンダブロック
13a クランク角センサ 13b 水温センサ
14 ヘッド 15 燃焼室
16 グロープラグ 17 グローコントローラ
20 ターボチャージャ 21 コンプレッサ
22 タービン 23 アクチュエータ
24 負圧制御弁
30 インテークシステム 31 インテークダクト
32 エアクリーナ 33 エアフローメータ
34 インタークーラ 35 スロットルバルブ
36 アクチュエータ 37 インテークチャンバ
38 吸気圧センサ 39 インテークマニホールド
40 エキゾーストシステム 41 エキゾーストマニホールド
42 エキゾーストパイプ 43 排圧調整バルブ
50 燃料供給装置 51 サプライポンプ
52 吸入調量電磁弁 53 燃料温度センサ
54 コモンレール 55 燃圧センサ
56 インジェクタ
60 第1EGR装置 61 EGR通路
62 EGR制御弁 63 EGRクーラ
70 酸化触媒(DOC) 71 温度センサ
80 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
81 差圧センサ 82 温度センサ
90 第2EGR装置 91 EGR通路
92 DOC 93 DPF
94 EGR制御弁
100 エンジン制御ユニット(ECU)
101 アクセルペダルセンサ 102 大気圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気によって駆動されるタービン及び前記タービンによって駆動され新気を圧縮するコンプレッサを有するターボ過給器と、
前記タービンの下流側の排気管路から排ガスの一部を抽出して前記コンプレッサの上流側の吸気管路内に導入する第1のEGR装置と、
前記タービンの上流側の排気管路から排ガスの一部を抽出して前記コンプレッサの上流側の吸気管路内に導入する第2のEGR装置と、
エンジンの負荷状況に応じて前記第1のEGR装置と前記第2のEGR装置とを切り替える制御手段と
を備えることを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記制御手段は、所定の高負荷領域では前記第1のEGR装置を作動させ、前記高負荷領域に対して負荷が低い低負荷領域では前記第2のEGR装置を作動させること
を特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン。
【請求項3】
前記第2のEGR装置は、酸化触媒及びディーゼルパティキュレートフィルタを有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディーゼルエンジン。
【請求項4】
前記低負荷領域においてエンジンの燃焼状態を予混合圧縮自着火燃焼とする燃焼制御手段を備え、
前記第2のEGR装置は、酸化触媒を有すること
を特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−83204(P2013−83204A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223835(P2011−223835)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】