説明

トンネルトランジスタの製造方法

【課題】1回のリソグラフィ工程によりセルフアラインでトンネルトランジスタを製造する方法を提供する。
【解決手段】ゲート絶縁膜及びゲート電極が積層された半導体基板上に第1の絶縁膜を形成しリソグラフィにより第1の絶縁膜の端部に第1の絶縁膜とは薬品選択性が異なりゲート電極位置を画定する第2の絶縁膜を形成する工程と、第1及び第2の絶縁膜をマスクにゲート電極の一端を画定する工程と、第1及び第2の絶縁膜をマスクにして第1導電型不純物を半導体基板に導入しソースを形成する工程と、半導体基板全面に第1の絶縁膜とは薬品選択性が異なる第3の絶縁膜を被覆する工程と、該第3の絶縁膜の一部を除去することにより該第1の絶縁膜を選択的に除去する工程と、第2及び第3の絶縁膜をマスクにしてゲート電極を形成した後、第2導電型不純物を半導体基板に導入しドレインを形成する工程を含むトンネルトランジスタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルトランジスタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル電流をゲート電圧で制御することで動作するトンネルトランジスタは、半導体集積回路の基本素子として現在用いられている電界効果トランジスタに比べて低電圧で動作可能であるという特徴を持つ(例えば、非特許文献1参照)。トンネルトランジスタを半導体集積回路の基本素子として用いることによって、半導体集積回路の消費電力の低減化を図ることができる。
【0003】
トンネルトランジスタは、ソース領域とドレイン領域とが反対の導電型を有することを特徴とする。それゆえに従来型電界効果トランジスタのように、セルフアラインでソース領域とドレイン領域とを同時に形成することができない。
平面型トンネルトランジスタの製造方法は、例えば特許文献1、2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−195487号公報
【特許文献2】特開昭58−96766号公報
【特許文献3】特開2008−252086号公報
【特許文献4】特開2006−147861号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】W.Y.Choi et al., IEEE Electron Device Letters vol.28, p743(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のトンネルトランジスタの製造方法では、その構造上複雑なマスク工程を必要としていた。
したがって本発明は、複雑なマスク工程を必要とすることなく、1回のリソグラフィ工程によるセルフアラインで、トンネルトランジスタを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、以下のトンネルトランジスタの製造方法によって解決される。
(1)ゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層が積層された半導体基板上に第1の膜を形成しリソグラフィにより第2の膜の形成位置を画定する工程と、第1の膜の端部に第1の膜とは薬品選択性が異なりゲート電極位置を画定する第2の膜を形成する工程と、第1及び第2の膜をマスクにゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層を選択的に除去してゲート絶縁膜及びゲート電極の一端を画定する工程と、第1及び第2の膜をマスクにして第1導電型又は第2導電型の不純物を半導体基板に導入しソース又はドレインを形成する工程と、半導体基板全面に第1の膜とは薬品選択性が異なる第3の膜を被覆する工程と、該第3の膜の一部を除去することにより第1の膜の表面を露出する工程と、該第1の膜を選択的に除去する工程と、第2及び第3の膜をマスクにしてゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層を選択的に除去し、ゲート絶縁膜及びゲート電極を形成した後、第2導電型又は第1導電型の不純物を半導体基板に導入しドレイン又はソースを形成する工程を含むことを特徴とするトンネルトランジスタの製造方法。
(2)ゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層が積層された半導体基板上に第1の絶縁膜を形成しリソグラフィにより第2の絶縁膜の形成位置を画定する工程と、第1の絶縁膜の端部に第1の絶縁膜とは薬品選択性が異なりゲート電極位置を画定する第2の絶縁膜を形成する工程と、第1及び第2の絶縁膜をマスクにゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層を選択的に除去してゲート絶縁膜及びゲート電極の一端を画定する工程と、第1及び第2の絶縁膜をマスクにして第1導電型又は第2導電型の不純物を半導体基板に導入しソース又はドレインを形成する工程と、半導体基板全面に第1の絶縁膜とは薬品選択性が異なる第3の絶縁膜を被覆する工程と、該第3の絶縁膜の一部を除去することにより第1の絶縁膜の表面を露出する工程と、該第1の絶縁膜を選択的に除去する工程と、第2及び第3の絶縁膜をマスクにしてゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層を選択的に除去し、ゲート絶縁膜及びゲート電極を形成した後、第2導電型又は第1導電型の不純物を半導体基板に導入しドレイン又はソースを形成する工程を含むことを特徴とするトンネルトランジスタの製造方法。
(3)上記第2導電型又は第1導電型の不純物を半導体基板に導入しドレイン又はソースを形成する工程において、上記第2導電型又は第1導電型の不純物は、半導体基板に斜めイオン注入して導入することを特徴とする(2)に記載のトンネルトランジスタの製造方法。
(4)上記第2及び第3の絶縁膜をマスクにして第2導電型又は第1導電型の不純物を半導体基板に導入しドレイン又はソースを形成する工程の後に、上記第2及び第3の絶縁膜を除去する工程、及びドレイン又はソース上に金属層を堆積し、加熱することによりドレイン又はソースの一部に金属・半導体合金電極を形成する工程をさらに含むことを特徴とする(2)又は(3)に記載のトンネルトランジスタの製造方法。
(5)上記半導体基板はSi基板であることを特徴とする(2)ないし(4)のいずれかに記載のトンネルトランジスタの製造方法。
(6)上記金属・半導体合金電極は、NiSiであることを特徴とする(4)又は(5)に記載のトンネルトランジスタの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リソグラフィ工程が1回で済む。すなわち、マスク枚数が1枚で済む利点がある。
さらに、リソグラフィの位置精度に依存せずゲート長を決定できるので、微細なトンネルトランジスタの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程を説明する図面
【図2】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程を説明する図面
【図3】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程を説明する図面
【図4】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程を説明する図面
【図5】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程を説明する図面
【図6】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程を説明する図面
【図7】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程を説明する図面
【図8】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程を説明する図面
【図9】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程の変形例を説明する図面
【図10】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程の変形例を説明する図面
【図11】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程の他の変形例を説明する図面
【図12】本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程の他の変形例を説明する図面
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例)
本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程について、図1〜8を参照して詳細に説明する。
【0011】
半導体基板1上にゲート絶縁膜となる層2、ゲート電極となる層3及び第1の膜4を順次堆積する。
実施例では、半導体基板1としてSi基板を用い、その上にゲート絶縁層2としてHfAlOx(ハフニウムアルミニウムオキサイド)をALD法によって堆積し、さらにゲート電極層3としてTaN(タンタルナイトライド)とポリシリコンの2層をそれぞれスパッタ法及びCVD法で堆積する。さらに第1の膜4として実施例ではSiN(シリコンナイトライド)をCVD法で堆積する。
【0012】
次にリソグラフィ工程とエッチングにより、第1の膜4を加工し、部分的にゲート電極層3を表出させる(図1参照)。第1の膜4の端部位置で次工程で形成される第2の膜5の位置が画定される。
実施例では、リソグラフィはネガレジストを用いた液浸リソグラフィ法で、エッチングは反応性イオンエッチングで行う。
【0013】
次に第2の膜5を堆積し、加工してサイドウォールを形成する(図2参照)。
実施例では、SiOをCVD法で堆積し、これを反応性イオンエッチングにより堆積膜厚等量分だけエッチングし、サイドウォールを形成する。この加工された第2の膜5によってトンネルトランジスタのゲート位置が画定される。
【0014】
次にゲート電極となる層3とゲート絶縁膜となる層2を、第1の膜4と第2の膜5とをマスクとして選択的にエッチングし、ゲート電極及びゲート絶縁膜の端部位置を画定する。
次にトンネルトランジスタのソース又はドレインとなる領域の半導体基板1を表出させ、第1又は第2の導電型の不純物を導入しソース又はドレイン領域を形成する(図3参照)。
【0015】
実施例では、反応性イオンエッチングによりポリシリコン/TaNのゲート電極層3を選択エッチングし、その後フッ酸によりHfAlOxのゲート絶縁層2をエッチングする。このエッチング工程において、第2の膜5が部分的もしくは全体的に除去されることは問題にならない。不純物の導入は例えばイオン注入によって行う。
【0016】
次に第3の膜6を堆積する(図4参照)。ここで、第3の膜6と第2の膜5は同一の材料であってもよい。実施例では、CVD法によってSiOを堆積する。
次に第3の膜6を加工し、第1の膜4を露出させる(図5参照)。例えば、CMP(化学機械研磨)によって行う。
【0017】
次に第1の膜4を第2の膜5及び第3の膜6に対して選択的に除去する(図6参照)。
実施例では、リン酸(HPO)によってSiN(第1の膜4)をSiO(第2の膜5及び第3の膜6)と選択的に除去する。
【0018】
次に第2の膜5及び第3の膜6をマスクとして、ゲート電極10とゲート絶縁膜9とを画定する。次いでトンネルトランジスタのドレイン又はソースとなる領域の半導体基板1を表出させ、第1又は第2の導電型の不純物を導入しソース又はドレイン領域を形成する(図7参照)。
【0019】
実施例では、反応性イオンエッチングによりポリシリコン/TaNのゲート電極となる層3を選択エッチングし、その後フッ酸によりHfAlOxのゲート絶縁膜となる層2をエッチングする。この際、第2の膜5及び第3の膜6が部分的に除去されることは問題にならない。半導体基板1を表出させたら、不純物を導入し、トンネルトランジスタのドレイン又はソースとなる領域を形成する(図7参照)。これは、例えばイオン注入によって行う。
【0020】
最後に第2の膜5及び第3の膜6を除去し、トンネルトランジスタが完成する。例えば、フッ酸によってSiO(第2の膜5及び第3の膜6)をエッチングする(図8参照)。
なお、この実施例では図中でゲート電極の左側をソース、右側をドレインとしたが、逆であっても問題はない。
【0021】
(変形例)
本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程の変形例について、図9〜10を参照して説明する。
【0022】
図7において、トンネルトランジスタのドレイン又はソース8となる領域の半導体基板1を表出させるまでの工程は、実施例のものと同一である。ここでは、領域8をドレインであるとして説明する。このとき、不純物導入工程として斜めイオン注入法を用いると、影効果によってドレインがゲート構造端部から離れたところに形成される(オフセットドレイン構造)。
最終的なトンネルトランジスタの構造を図10に示す。
【0023】
このように、本発明による製造プロセスはオフセットドレイン構造を持つトンネルトランジスタの製造プロセスにも用いることができる。
オフセットドレイン構造の効果については例えば特許文献3(特開2008−252086号公報)に記載されている。
なお、図3における不純物導入時に斜めイオン注入法を用いれば、領域7をドレインとする場合にもオフセットドレイン構造をもつトンネルトランジスタを作製できる。
【0024】
(他の変形例)
本発明に係るトンネルトランジスタの製造工程の他の変形例について、図11〜12を参照して説明する。
【0025】
図8のトンネルトランジスタ構造上に、金属層11を形成する(図11参照)。金属層11は、例えば、Ni(ニッケル)層をスパッタ法により堆積することで形成される。
次に図11の状態にあるトンネルトランジスタに加熱をすることで、ソース及びドレイン領域にシリサイド12が形成される。このときソース及びドレイン領域にある不純物はシリサイド端に濃縮され、その後金属層11を除去することでメタルソースドレイン型のトンネルトランジスタが作製される(図12参照)。
【0026】
この変形例では、例えば、RTA(急速加熱アニール法)によって加熱するとシリサイド12として、NiSiが形成される。
メタルソースドレイン型のトンネルトランジスタの効果については、例えば特許文献4(特開2006−147861号公報)に記載されている。
【0027】
なお、上記の実施例、変形例は、あくまでも本発明の理解を容易にするためのものであり、この実施例、変形例に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形、他の態様は、当然本発明に包含されるものである。
【0028】
例えばトンネルトランジスタは、ドレイン領域にゲート電極による被覆が無い構造にすると特性が向上するが、本発明によればこのような構造のトンネルトランジスタを製造することも可能である。
また本発明によれば、平面型トンネルトランジスタのみではなく、FinFETのような立体構造を有するトンネルトランジスタにも適用可能である。
さらにソース、ドレイン領域の形成は、例えば、イオン注入、固相ドーピング、メタルソースドレインによることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 半導体基板
2 ゲート絶縁膜となる層
3 ゲート電極となる層
4 第1の膜
5 第2の膜
6 第3の膜
7 トンネルトランジスタのソース又はドレイン
8 トンネルトランジスタのドレイン又はソース
9 トンネルトランジスタのゲート絶縁膜
10 トンネルトランジスタのゲート電極
11 金属層
12 シリサイド



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層が積層された半導体基板上に第1の膜を形成しリソグラフィにより第2の膜の形成位置を画定する工程と、第1の膜の端部に第1の膜とは薬品選択性が異なりゲート電極位置を画定する第2の膜を形成する工程と、第1及び第2の膜をマスクにゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層を選択的に除去してゲート絶縁膜及びゲート電極の一端を画定する工程と、第1及び第2の膜をマスクにして第1導電型又は第2導電型の不純物を半導体基板に導入しソース又はドレインを形成する工程と、半導体基板全面に第1の膜とは薬品選択性が異なる第3の膜を被覆する工程と、該第3の膜の一部を除去することにより第1の膜の表面を露出する工程と、該第1の膜を選択的に除去する工程と、第2及び第3の膜をマスクにしてゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層を選択的に除去し、ゲート絶縁膜及びゲート電極を形成した後、第2導電型又は第1導電型の不純物を半導体基板に導入しドレイン又はソースを形成する工程を含むことを特徴とするトンネルトランジスタの製造方法。
【請求項2】
ゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層が積層された半導体基板上に第1の絶縁膜を形成しリソグラフィにより第2の絶縁膜の形成位置を画定する工程と、第1の絶縁膜の端部に第1の絶縁膜とは薬品選択性が異なりゲート電極位置を画定する第2の絶縁膜を形成する工程と、第1及び第2の絶縁膜をマスクにゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層を選択的に除去してゲート絶縁膜及びゲート電極の一端を画定する工程と、第1及び第2の絶縁膜をマスクにして第1導電型又は第2導電型の不純物を半導体基板に導入しソース又はドレインを形成する工程と、半導体基板全面に第1の絶縁膜とは薬品選択性が異なる第3の絶縁膜を被覆する工程と、該第3の絶縁膜の一部を除去することにより第1の絶縁膜の表面を露出する工程と、該第1の絶縁膜を選択的に除去する工程と、第2及び第3の絶縁膜をマスクにしてゲート絶縁膜となる層及びゲート電極となる層を選択的に除去し、ゲート絶縁膜及びゲート電極を形成した後、第2導電型又は第1導電型の不純物を半導体基板に導入しドレイン又はソースを形成する工程を含むことを特徴とするトンネルトランジスタの製造方法。
【請求項3】
上記第2導電型又は第1導電型の不純物を半導体基板に導入しドレイン又はソースを形成する工程において、上記第2導電型又は第1導電型の不純物は、半導体基板に斜めイオン注入して導入することを特徴とする請求項2に記載のトンネルトランジスタの製造方法。
【請求項4】
上記第2及び第3の絶縁膜をマスクにして第2導電型又は第1導電型の不純物を半導体基板に導入しドレイン又はソースを形成する工程の後に、上記第2及び第3の絶縁膜を除去する工程、及びドレイン又はソース上に金属層を堆積し、加熱することによりドレイン又はソースの一部に金属・半導体合金電極を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のトンネルトランジスタの製造方法。
【請求項5】
上記半導体基板はSi基板であることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のトンネルトランジスタの製造方法。
【請求項6】
上記金属・半導体合金電極は、NiSiであることを特徴とする請求項4又は5に記載のトンネルトランジスタの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−204583(P2012−204583A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67536(P2011−67536)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】