説明

ナビゲーション方法およびナビゲーション装置

【課題】通信状況にかかわらず、車両の現在位置を確認できる信頼性の高いナビゲーション方法、ナビゲーション装置およびナビゲーションの情報提供装置を提供する。
【解決手段】本実施形態に係るナビゲーションシステムによると、情報センタ10側は、車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための分割経路情報を車載装置100側に最初に送る際に、経路全体を描画する簡略地図データを送信する。これにより、車載装置100側は、分割経路情報を情報センタ10から最初に受けるとき、経路全体を含む簡略地図データをも受け取ることができる。したがって、例えば無線による通信手段の電波が届かないトンネル内等の電波が弱い地域などを車両が走行している場合であっても、車載装置100側は、最初に受け取った簡略地図データに基づいて経路案内をすることができるため、通信状況にかかわらず、車両の現在位置を確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路案内に必要なデータをセンタ側から移動側に分割して提供する場合に好適なナビゲーション方法、ナビゲーション装置およびその情報提供装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、経路データやその案内データをセンタ側から移動側に提供するシステムとして、例えば、下記、特許文献1に開示される「ナビゲーションシステム」がある。このナビゲーションシステムでは、目的地まで車両(利用者)を案内するために必要な地図画像や経路データを、ナビゲーション情報送信システム(センタ側)から車両側(移動側)に送信するように構成している。
【0003】
そして、このナビゲーションシステムによれば、ナビゲーション情報送信システムでは、車両側のナビゲーション装置から出される各要求に基づいて各種データベースから必要なデータを読み出しナビゲーション装置に送信、あるいは車両側のナビゲーション装置から出される経路探索要求に基づいて行った経路探索結果をナビゲーション装置に送信する。一方、ナビゲーション装置では、受信した所定のデータから作成した地図画像や探索した最適な経路を、CRT等の表示部に表示して利用者を目的地まで案内する。
【0004】
また、下記、特許文献2には、運転操作ミスによって車両が推奨経路を逸脱したときに最新の推奨経路をセンタ側から車両側に送信するようにした「車載経路誘導装置」が開示されている。このシステムによれば、車両は必要に応じて出発地と目的地をコントロールセンタへ送信し、推奨経路を受信する。車両が推奨経路上を走行しているかどうかが判定されており、推奨経路を逸脱した場合は、再度出発地を設定して目的地とともにコントロールセンタへ送信する。情報センタは、車両から受信した再設定後の出発地から目的地までの経路を探索し、探索した推奨経路のデータを車両へ送信する。
【特許文献1】特開平10−19588号公報
【特許文献2】特開平8−334374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両が、無線電話などの通信手段の電波が届かないトンネル内や山間部、ビルの影などの電波が弱い地域(以下「電波の不感地帯」という。)などを走行している場合には、センタ側と良好に交信を行なうことができず、必要な経路・案内データを取得できない可能性がある。上述した各公報に開示された技術は、そのような電波状況を考慮しておらず、安心して経路案内を受けることができないという不都合がある。
【0006】
その一方で、例えば高速道路のように、経路案内の対象となる道路が単一の道筋によるものである場合には、特にナビゲーションによって経路案内されなくても利用者は道なりに車両を運転すれば目的地に近づくことができる。そのため、現実には、高速道路等の単一の道筋、即ちいわゆる「一本道」を走行している車両にとっては、ナビゲーションによる経路案内は詳細なものである必要はない。
また、車両側が必要な地図画像等を既に取得している場合には、取得済みのデータを用いて経路案内をすることができるため、再度、同じデータを受信する必要はない。
【0007】
このように「経路案内の対象となる道路が単一の道筋によるものである場合」や「車両側が必要な地図画像等を既に取得している場合」には、いわば不必要なデータや経路探索結果をセンタ側から車両が受け取っていることになる。具体的には、例えばセンタ側から不要なデータをも含めて経路案内データとして、車両側が一括受信する場合である。そして、このような不要なデータのやりとりは、利用者にとっては通信コストを増大させるという問題に直結し、またナビゲーションシステムにとっては通信トラフィックの増加による通信障害の発生原因にもなり得るという問題につながる。
【0008】
本発明は、以上の点に着目したもので、通信状況にかかわらず、車両の現在位置を確認できる信頼性の高いナビゲーション方法、ナビゲーション装置およびナビゲーションの情報提供装置を提供することを、その目的とするものである。
また、本発明の別の目的は、通信コストを削減し得るナビゲーション方法、ナビゲーション装置およびナビゲーションの情報提供装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1のナビゲーション方法では、車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データおよび案内データを分割してセンタ側から移動側へ送り、該データに基づいて移動側で経路案内を行なうナビゲーション方法であって、前記分割した描画および案内データを移動側に最初に送る際に、経路全体を描画する全経路描画データを送信することを技術的特徴とする。
【0010】
また、請求項2のナビゲーション方法では請求項1において、前記分割した描画および案内データを送る度ごとに、最新のデータに基づく経路探索および案内データ抽出を行う経路探索・案内データ抽出手段を含むことを技術的特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3のナビゲーション方法では請求項1または2において、前記分割した経路を案内するための描画データおよび案内データは、センタ側から、異なる地理上の位置または異なる時間に移動側に対して送信されるとともに、前記送信された全経路描画データによる経路全体は、センタ側との通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合に移動側で表示されることを技術的特徴とする。
【0012】
また、請求項4のナビゲーション方法では請求項1〜3のいずれか一項において、前記全経路描画データは、出発地と目的地とを含む地図描画データであることを技術的特徴とする。
【0013】
またさらに、請求項5のナビゲーション方法では、車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データおよび案内データを分割してセンタ側から移動側へ送り、該データに基づいて移動側で経路案内を行なうナビゲーション方法であって、前記分割した経路を案内するための描画データおよび案内データは、センタ側から、異なる地理上の位置または異なる時間に移動側に対して送信すると共に、該データを送信すると予想される特定位置の通信状況を判定し、前記特定位置の通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合に、経路全体を描画する全経路描画データを送信することを技術的特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、請求項6のナビゲーション装置では、車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データおよび案内データを分割したデータをセンタ側から受信し、該受信されたデータに基づいて経路案内を行なうナビゲーション装置であって、前記分割した描画および案内データを最初に受信する際に、経路全体を描画する全経路描画データを受信することを技術的特徴とする。
【0015】
また、請求項7のナビゲーション装置では請求項6において、前記分割した経路を案内するための描画データおよび案内データは、異なる地理上の位置または異なる時間に受信することを技術的特徴とする。
【0016】
さらに、請求項8のナビゲーション装置では請求項6または7において、前記送信された経路全体は、センタ側との通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合に移動側で表示されることを技術的特徴とする。
【0017】
さらにまた、請求項9記載のナビゲーション装置では請求項6において、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段を備え、該検出手段によって検出された現在位置を、前記受信した経路全体の表示とともに表示することを技術的特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するため、請求項10のナビゲーションの情報提供装置では、車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データを分割して移動側に送るナビゲーションの情報提供装置であって、前記分割した描画データのうち、一の分割描画データに含まれる案内経路のすべてが単一の道筋からなるときは、該分割描画データを送らないことを技術的特徴とする。
ここで、単一の道筋とは、一義的に進路を決定することのできる、いわゆる「一本道」のことであり、その代表例として分岐のない高速道路が挙げられる。
【0019】
また、請求項11のナビゲーションの情報提供装置では、車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データを分割して移動側に送るナビゲーションの情報提供装置であって、前記分割した描画データのうち、一の分割描画データが、既に移動側に存在するときには、該分割描画データを送らないことを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明では、センタ側は、車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データおよび案内データを分割して移動側に最初に送る際に、経路全体を描画する全経路描画データを送信する。これにより、移動側は、分割した描画データおよび案内データをセンタ側から最初に受けるときに、全経路描画データをも受け取ることができる。したがって、例えば無線による通信手段の電波が届かないトンネル内や山間部、ビルの影などの電波が弱い地域などを車両が走行している場合であっても、移動側は、最初に受け取った全経路描画データに基づいて経路案内をすることができるところ、通信状況にかかわらず、車両の現在位置を確認し得る効果があるので、信頼性の高いナビゲーション方法を提供することができる。
【0021】
請求項2記載の発明では、請求項1記載のナビゲーション方法において、分割した描画および案内データを送る度ごとに、最新のデータに基づく経路探索および案内データ抽出を行う経路探索・案内データ抽出手段を含む。これにより、センタ側では、経路探索・案内データ抽出手段により最新のデータに基づいて経路探索および案内データ抽出を行い、最新の描画データおよび案内データを移動側に送ることができる。したがって、移動側では、最新の分割した描画データおよび案内データをセンタ側から受け取ることができるところ、通信状況にかかわらず車両の現在位置を確認し得る効果に加えて、通信可能な場合には、時々刻々と変化する道路交通状況に対応した経路案内を受け得る効果があるので、より信頼性の高いナビゲーション方法を提供することができる。
【0022】
請求項3記載の発明では、請求項1または2記載のナビゲーション方法において、分割した経路を案内するための描画データおよび案内データは、センタ側から、異なる地理上の位置または異なる時間に移動側に対して送信されると共に、センタ側との通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合には、最初に送信された全経路描画データによる経路全体を移動側で表示する。これにより、移動側は、異なる地理上の位置または異なる時間にセンタ側から描画データおよび案内データを受信することができ、またセンタ側との通信状況が通信不良等の場合には、表示された経路全体を移動側で参照することができる。したがって、移動側では、異なる地理上の位置または異なる時間に応じて変化する道路交通状況を踏まえて経路案内をすることができるほか、センタ側と通信できない場合には表示された経路全体から車両の現在位置を確認することができるところ、通信状況にかかわらず車両の現在位置を確認し得る効果に加えて、通信可能な場合には、異なる地理上の位置または異なる時間に応じて変化する道路交通状況を踏まえた経路案内を受け得る効果があるので、より信頼性の高いナビゲーション方法を提供することができる。
【0023】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナビゲーション方法において、全経路描画データは、出発地と目的地とを含む地図描画データであることから、移動側は出発地と目的地とを地図上に表示することができる。したがって、移動側では、出発地と目的地とを表示した地図上に車両の現在位置を確認することができる。
【0024】
請求項5記載の発明では、センタ側から移動側に送信される描画データおよび案内データは、移動側の異なる地理上の位置または異なる時間に対応して送信されるとともに、センタ側の通信状況判定によりこれらのデータを送信すると予想される特定位置の通信状況が通信不良等であると判定すると全経路描画データを移動側に送信する。これにより、移動側は、センタ側が通信状況判定により特定位置の通信状況が通信不良等であると判定すると全経路描画データを受信することができる。したがって、例えば無線による通信手段の電波が届かないトンネル内や山間部、ビルの影などの電波が弱い地域などを車両が走行している場合であっても、移動側は、予めセンタ側から受信した全経路描画データに基づいて経路案内をすることができるところ、通信状況にかかわらず、車両の現在位置を確認し得る効果があるので、信頼性の高いナビゲーション方法を提供することができる。
【0025】
請求項6記載の発明では、センタ側から、分割した描画および案内データを最初に受信する際に、経路全体を描画する全経路描画データを受信する。これにより、例えば無線による通信手段の電波が届かないトンネル内や山間部、ビルの影などの電波が弱い地域などを車両が走行している場合であっても、移動側は、最初に受け取った全経路描画データに基づいて経路案内をすることができる。したがって、通信状況にかかわらず、車両の現在位置を確認し得る効果があるので、信頼性の高いナビゲーション装置を提供することができる。
【0026】
請求項7記載の発明では、分割した経路を案内するための描画データおよび案内データは、異なる地理上の位置または異なる時間に受信する。これにより、異なる地理上の位置または異なる時間に応じて変化する道路交通状況を踏まえて経路案内をすることができる。したがって、通信状況にかかわらず車両の現在位置を確認し得る効果に加えて、通信可能な場合には、異なる地理上の位置または異なる時間に応じて変化する道路交通状況を踏まえた経路案内を受け得る効果があるので、より信頼性の高いナビゲーション装置を提供することができる。
【0027】
請求項8記載の発明では、センタ側より送信された経路全体は、センタ側との通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合に移動側で表示される。これにより、センタ側との通信状況が通信不良等の場合には、表示された経路全体を参照することができる。したがって、センタ側と通信できない場合には表示された経路全体から車両の現在位置を確認することができるところ、通信状況にかかわらず車両の現在位置を確認し得る効果があるので、より信頼性の高いナビゲーション方法を提供することができる。
【0028】
請求項9記載の発明では、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段を備え、該検出手段によって検出された現在位置を、前記受信した経路全体の表示とともに表示する。これにより、受信した経路全体の表示上に車両の現在位置を確認することができる。したがって、通信状況にかかわらず車両の現在位置を明確に確認し得る効果があるので、より信頼性の高いナビゲーション方法を提供することができる。
【0029】
請求項10記載の発明では、経路を案内する分割した描画データのうち、一の分割描画データに含まれる案内経路のすべてが単一の道筋からなるときは、該分割描画データを送らない。これにより、移動側では、該分割描画データを受け取ることができなくても、該分割描画データに含まれる案内経路のすべてが単一の道筋からなるときは、経路案内がなくても道なりに直進すれば目的地に近づくことができるので、不要なデータの送信を省くことができる。したがって、通信コストを削減し得る効果がある。
【0030】
請求項11記載の発明では、経路を案内する分割した描画データのうち、一の分割描画データが、既に移動側に存在するときには、該分割描画データを送らない。これにより、移動側では、該分割描画データを受け取ることができなくても、既に存在する該分割描画データを用いて経路案内をすることができるので、不要なデータの送信を省くことができる。したがって、通信コストを削減し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明のナビゲーション方法、ナビゲーション装置およびその情報提供装置の実施形態について図1〜図8を参照して説明する。
本発明の一実施態様に係るナビゲーションシステムは、車両の出発位置から目的地に至る経路探索の経路・案内データを分割して送信する情報センタ(センタ側)と、この送信された分割データを受信し、その分割データに基づいて利用者に経路案内を行う車載装置(移動側)と、から構成される。
【0032】
図1に示すように、情報センタ10は、主に、送受信部12、演算処理部14、データベース30および外部情報収集部40から構成される。
送受信部12は、送信装置、受信装置を含む無線通信機器であり、車載装置100との間で無線回線によるデータの送受信を行うためのものである。例えば自動車電話機、携帯電話機、PHS等の無線通信システムを利用し、その通信形態は例えばパケット通信方式を採る。
【0033】
演算処理部14は、演算処理を行なうCPU16、各種のプログラムやデータが格納されるメモリ18が含まれている。
メモリ18には、車両の現在位置(出発位置)から目的地までの経路を探索する経路探索プログラム20、探索された経路のセグメント分割や車両側に送信する道路長を設定するセグメント処理プログラム22、これによって設定された道路長に対応する案内データを検索して抽出し編集する案内データ抽出プログラム24、データ送信の適否を判定する通信判定プログラム25、全体の動作を制御管理するシステム制御プログラム26等、情報センタ10で実行される各種のプログラムが格納されている。またメモリ18には、それらのプログラムの実行に使用される所定の作業領域も確保されている。
【0034】
データベース30は、推奨経路を探索するための経路探索用データ32、経路案内のデータを蓄積した案内用データ34、通信エリアに関するデータを蓄積した通信エリアデータ36、目的地を設定する電話番号や住所等の目的地設定用データ38等の経路探索および経路案内に必要なデータを格納している。経路探索用データ32は、交差点に関するデータ、道路に関するデータ、ノード点に関するデータ等を含んでいる。また案内用データ34には、各交差点や道路の地図データ、主要な施設を示すランドマークデータ、音声案内データ等の各種案内データが含まれる。通信エリアデータ36には、電波の不感地帯、電波が届いても電波が弱い通信不適切な地帯等、予め情報センタ10側で把握している通信状況に関するデータが含まれる。
【0035】
さらに、データベース30には、外部情報収集部40が接続されている。この外部情報収集部40は、道路工事、交通規制、道路や施設の新設、通信エリアの変更等、最新の道路・交通情報や通信情報を電話回線等を利用して収集し、データベース30に格納されたデータを随時更新するためのものである。
【0036】
次に、車載装置100について説明する。車載装置100は、演算処理部101はCPUを中心に、主に、メモリ102、位置計測部104、入力部105、表示部106、音声出力部107および送受信部108から構成されており、さらにメモリ102は、プログラム格納領域102A(例えばROM)と、データ記憶領域102B(例えばRAM)とから構成されている。
【0037】
メモリ102のプログラム格納領域102Aは、情報センタ10から送信される経路データや案内データに基づいて、経路やランドマークを表示部106に表示したり、経路案内の音声を音声出力部107から出力する経路案内プログラム150、車両現在位置と受信した経路・案内データを比較して次の経路に対する経路・案内データを要求するデータリクエストプログラム152、全体の動作を制御する制御プログラム154等、演算処理部101で実行されるプログラムを格納する。
【0038】
一方、メモリ102のデータ記憶領域102Bは、プログラムの実行に際して作業領域として使用される他、例えば、情報センタ10から送信される経路・案内データ(経路データおよび案内データ)160、車両固有のIDデータ162、位置計測部104により計測される車両位置データ(経度・緯度)164、あるいは後述するダウンロードによって取得するラスター地図等の簡略地図データベース166等を格納する。
【0039】
なお、車両位置データ164には、位置計測部104によって所定時間間隔で測定した現在位置データの他に、過去の複数の位置データも含まれている。例えば、一定距離に含まれる測定点の位置データ、または一定数の測定点の位置データが記憶される。新たに位置計測部104で計測が行われると、その最新の位置データが記憶されるとともに、最も古く記憶された位置データは消去される。これら複数の位置データを結ぶことで、車両の走行軌跡を得ることができる。この走行軌跡は、車両が走行している道路を特定するためのいわゆるマップマッチングに利用される。
【0040】
位置計測部104は、いわゆるGPS等を利用して車両の位置を計測し、経度・緯度により現在の車両位置データを出力するためのもので、複数のGPS衛星からの信号を受信して車両の絶対位置を計測するGPS受信機、車両の相対位置を計測するための速度センサや方位センサ等を備えている。速度センサや方位センサは、自律航法に使用される。それらセンサによって計測される相対位置は、GPS受信機が衛星からの電波を受信できないトンネル内等において位置を得たり、GPS受信機によって計測された絶対位置の測位誤差を補正する等に利用される。
【0041】
入力部105には、各種スイッチ、表示部106の表示面に取り付けられたタッチパネル、リモコン、音声認識を利用したデータ入力装置等が含まれる。タッチパネルでは、表示部106に表示されたアイコン等を利用者が指でタッチすることによって、対応するデータや命令が入力される。音声認識を利用したデータ入力装置では、利用者が音声を発することによってそれに対応するデータや命令が入力される。
【0042】
表示部106は、液晶やCRT等によるディスプレイで、前述したタッチパネルを備えている。送受信部108は、情報センタ10側とデータの送受信を行うための通信装置で、送信装置、受信装置を含む通信機器によって構成されている。これも、情報センタ10側と同様に、例えば自動車電話機、携帯電話機、PHS等の無線通信システムを利用する。
【0043】
次に、情報センタ10の作動を図1〜図4に基づいて説明する。
図2には、情報センタ10による経路探索処理の流れが示されている。この処理は、車載装置100側からの経路取得要求を受信したか否かを判断する処理(S10)から始まるので、まず車載装置100による経路取得要求の送信について説明する。なお、この経路取得要求の送信は、図3に示すステップ52に該当する。
【0044】
図1に示すように、車載装置100側では、メモリ102に格納されている制御プログラム154が演算処理部101で実行されている。この状態で、ユーザの入力操作に基づいてメモリ102に格納されているデータリクエストプログラム152が実行されると、位置計測部104で計測した車両現在位置および目的地等の各情報を情報センタ10側に送受信部108によって送信する。このとき自車と他車を識別するためのIDも同時に送信する。これにより情報センタ10では、車両から送信した経路取得要求および各情報を送受信部12で受信する。
【0045】
情報センタ10では、車両から送信した経路取得要求等を送受信部12で受信すると、これらの情報を送受信部12から演算処理部14に送る。これらの情報を取得した演算処理部14では、前述したようにメモリ18に格納されている経路探索プログラム20による経路探索処理が行われているので、図2に戻り引き続きその処理の流れを説明する。
【0046】
図2に示すように、経路探索処理ではステップ10により経路取得要求を受信したと判断すると(S10でYes)、ステップ12に処理を移行し、目的地の入力があるか否かを判断する。即ち、経路取得要求とともに得た各情報から目的地情報を抽出することにより、目的地入力の有無を判断する。これにより、目的地入力があると判断すれば(S12でYes)、この目的地情報から目的地を決定し、次のステップ14で目的地までの経路を探索する。例えば目的地情報として電話番号や住所等の情報を受信した場合には、データベース30の目的地設定用データ38を利用して目的地を決定する。一方、目的地入力があると判断できなければ(S12でNo)、目的地なしくして経路探索を行うことができないので、この経路探索処理を終了して制御プログラム26に処理を移す。
【0047】
ステップ14による経路探索では、車両現在位置から目的地までの経路を探索する。この経路探索は、メモリ18に格納された経路探索プログラム20によってデータベース30の経路探索用データ32、即ち交差点データ、道路データ、ノードデータを参照して行われる。この経路探索のアルゴリズムは公知であり、例えば特開平1−173297号公報、特開平1−173298号公報に開示された方法で行われ、経路全体の距離が最も短いものを最適経路とする等の条件で推奨経路を設定する。なお、この経路探索は車両側、即ち車載装置100から経路取得要求を受信する度に、車両現在位置から目的地までの経路が探索される。情報センタ10では、外部情報収集部40によって外部から道路情報や交通情報等を取得し、データベース30から最新の情報が引き出せるように例えば所定時間ごとに更新している。これにより、車両側からの経路取得要求毎に経路検索を行うので、工事や事故による渋滞等を避ける等の常に最新のデータに基づく推奨経路とその案内データを車両側に提供することができる。なお、このステップ14による経路探索処理は、特許請求の範囲に記載の「経路探索・案内データ抽出手段」に相当する。
【0048】
ステップ14により探索された推奨経路は、次にステップ16により分割経路に分割される。即ち、メモリ18に格納されたセグメント処理プログラム22によって実行され、探索された経路をナビゲーションの単位である所定長(例えば2000メートル)のセグメントに分割される。図4に示す経路例において探索された経路を分割した場合、例えば7セグメント、即ち第1区から第7区の分割経路に分割される。なお、これらの分割経路にはデータヘッド、交差点情報、道路情報、ノード情報、目印情報等が含まれる。また、セグメントの分割単位は、時間単位(例えば1時間単位)やデータ量単位(例えば512バイト単位)で設定しても良く、さらには地理的あるいは時間的な諸条件を考慮してセグメントの分割単位を設定しても良い。これにより、後述するステップ30により異なる地理上の位置または異なる時間に車両側に送信することができるので、異なる地理上の位置または異なる時間に応じて変化する道路交通状況を踏まえた経路案内を行うことができる。
【0049】
ステップ16により経路の分割が行われると、ステップ18では探索した経路の大部分に一本道を含むか否かを判断する。ここにいう「大部分に一本道を含む」とは、例えば経路全体の80%以上に一本道が含まれる場合をいい、この含む割合は、利用者等の任意な条件設定により適宜変更可能なものである。またここにいう「一本道」とは、例えば分岐のない高速道路のように、一義的に進路を決定することのできる道路のことである。このような経路案内の対象となる道路が単一の道筋によるものである場合には、特にナビゲーションによって経路案内されなくても利用者は道なりに車両を運転すれば目的地に近づくことができるので、そのような場合には(S18でYes)、経路全体を含む簡略地図データの作成(S22)およびその送信(S24)を行うことなく、ステップ26に処理を移行する。一方、経路の大部分に一本道を含むことがなければ(S18でNo)、次のステップ20に移行する。
【0050】
ステップ20では、探索した経路全体を含む地図を車両側、即ち車載装置100側が持っているか否かを判断する。この判断は、前述した経路取得要求とともに得た各情報から取得地図情報を抽出することにより、車両側が既に取得している地図情報から判断しても良いし、あるいはセンタ側が、車両側に以前送信した地図の情報として保持している送信地図情報から判断しても良い。地図情報の具体例としては、例えばその地図の南西角および北東角のメッシュ番号により表されるものである(後述する図7に示す地図では地図情報[A1D4])。
【0051】
このステップ20による判断処理によって、経路全体を含む地図を車両側が持っていると判断すれば(S20でYes)、経路全体を含む簡略地図データの作成(S22)およびその送信(S24)を行うことなく、ステップ26に処理を移行する。一方、そのような地図を持っていると判断できければ(S20でNo)、次の経路全体を含む簡略地図データの作成(S22)に移行する。従って、最初の経路取得要求を受信した場合には、原則として経路全体を含む地図を持っていないので、ステップ18による例外(S18でNo)を除きステップ26で作成する分割経路情報を車載装置100側に最初に送る際に、経路全体を描画する簡略地図データを送信することになる。
【0052】
ステップ22は、検索した経路全体を含む簡略地図データ(全経路描画データ)を車両側が持っていないときに行う処理で、当該簡略地図データの作成を行うものである。この簡略地図は、例えば主要幹線道路等の所定の国道(例えば国道番号が2桁までのもの)および高速道路からなる道路情報や河川等の地形情報を簡略化した線図として描き、それをイメージデータ(ビットマップデータ)として取り込んだもの、即ちラスター地図や、またその道路情報や河川等の地形情報を簡略化した線図としての地形情報をベクトルデータとして取り込んだもの、即ちベクトル地図、等のことである。なお、この地図データは、出発地と目的地を含む地図描画データ、つまり検索した経路全体を含むものであるが、例えば日本全国を含むものではなく、当該経路を含むために必要最小限のデータに留めるものである。これにより、不要な地域部分の地図データを除くことができるため、車両側に伝送するデータ量を小さくすることができるところ、通信コストを削減することができる。また必要に応じて地図データを所定のアルゴリズムによりデータ圧縮して伝送すれば、さらなる通信コストを削減が期待できる。
【0053】
続くステップ24では、ステップ24で作成した簡略地図データを車両側に送信する処理を行う。この送信処理は、送受信部12を介して行われ、所定の無線回線によって車載装置100側に簡略地図データが無線伝送される。
【0054】
ステップ26による分割経路情報の作成では、前述したステップ16による経路の分割によって分割された分割経路とそれに伴う描画データおよび案内データをメモリ18に格納された案内データ抽出プログラム24により案内用データ34から抽出し、描画データおよび案内データを付加した分割経路情報(分割データ)を作成、編集する。これにより、車両側、即ち車載装置100に送信すべき分割経路情報の作成が完了するので、次のステップ28により分割経路情報の受信指示を車載装置100側に送信する。続いてステップ30により分割経路情報を車載装置100側に送信する。これら送信処理も、前述したステップ24による簡略地図データの送信と同様に、送受信部12を介して行われる。なお、この案内データ抽出プログラム24は、特許請求の範囲に記載の「経路探索・案内データ抽出手段」に相当する。
【0055】
続いて、車載装置100の作動を図1〜図4に基づいて説明する。
図3には、車載装置100による分割経路受信処理の流れが示されている。
この処理は、移動中の車両が現在位置している分割区間の次の区間の分割経路情報を取得するためのものであるので、演算処理部101による制御プログラム154が、位置計測部104における車両現在位置によって、図4に示す経路例であれば区間の境界であるそれぞれの分割経路切替地点P12、P23、P34、P45、P56、P67の手前から所定の距離地点(例えば200メートル)に車両が到達したと判断したときに起動される。
【0056】
まず、ステップ50により位置計測部104における車両現在位置を確認し、車両の現在位置が目的地周辺に位置するか否かを判断する。そして、車両の現在位置が目的地の周辺に位置していると判断すれば(S50でYes)、これ以上分割経路情報を要求する必要がないので、分割経路受信処理を終了して制御プログラム26に処理を移す。図4に示す経路例であれば目的地に最も近い第7区内に車両が位置するときである。一方、目的地の周辺に位置していると判断しなければ(S50でNo)、処理をステップ52に移し、情報センタ10に対して経路取得要求の送信を行う。
【0057】
ステップ52では、メモリ102に格納されたデータリクエストプログラム152を実行することにより、情報センタ10に経路取得要求を送信する(図4に示すR1〜R7)。このステップ52による処理の説明は、前述した情報センタ10のステップ10による処理を説明する際にその前提として既述しているので省略する。ステップ52による経路取得要求の送信が完了すると、次にステップ54に処理を移行する。
【0058】
ステップ54では、車載装置100側からの最初の経路取得要求R1に対して情報センタ10側から送信されてくる簡略地図データの受信、即ち簡略地図データのダウンロードを行う。この簡略地図データは、前述したセンタ側による経路探索処理のステップ24によって送信されてくるもので、ステップ22により経路全体を含む簡略地図が作成された場合に送信される。そのため最初の経路取得要求R1であっても、経路全体の大部分に一本道を含む場合(S18でYes)や経路全体を含む地図を車載装置100側が既に持っている場合(S20でYes)には、簡略地図データは送信されてこないため、このステップ54による処理は行わない。このようにして簡略地図データが受信された場合は、前述したメモリ102による簡略地図データベース166に格納され、後述するステップ66による表示処理によって参照される。
【0059】
次にステップ56では、情報センタ10から分割経路情報の受信指示があったか否か、即ち前述した情報センタ10の経路探索処理によって行われる分割経路情報の受信指示(S28)を車載装置100側が受信したか否かを判断する。受信指示を受けていれば(S56でYes)、情報センタ10側から分割経路情報が追って送信されてくるので、それを受信すべく次のステップ58に処理を移行し、分割経路情報の受信に移る。一方、受信指示を受けていなければ(S56でNo)、情報センタ10が分割経路情報の受信指示を送信したにも拘わらず車両側、即ち車載装置100側が通信障害等によりそれを受信できなかった場合であるので処理をステップ66に移し、ステップ54でダウンロードした簡略地図データを簡略地図データベース166から読み出して表示する(図4に示す第5区のM5)。
【0060】
ステップ58で情報センタ10側から送信されてくる分割経路情報を受信し、その受信が分割経路切替地点に到達するまでに完了したか否かをステップ60、62において判断する。この判断は、経時的な通信トラフィックの増加や人為的・自然現象的な電波伝搬の障害等の突発的に生ずる通信障害によって、車両側に分割経路情報の一部または全部が届かない場合が生じうることを想定したものである。つまり、ステップ60により次の分割経路切替地点に到達するまでは次の分割経路情報の受信に備えて待機するが(S60でNo)、車両の移動によって次の分割経路切替地点を到達した場合には(S60でYes)、その直後から車両が次の区間に進入する可能性が高いのでそれまでに次の分割経路情報が受信完了していなければ(S62でNo)、当該分割経路情報の取得を断念してステップ66によりステップ54でダウンロードした簡略地図データを簡略地図データベース166から読み出して表示する。
【0061】
一方、ステップ62により分割経路切替地点に到達するまでに次の分割経路情報をすべて受信できると、演算処理部101は受信した分割経路情報を経路案内データ160としてメモリ102に格納し受信が完了する(S62でYes)。これにより、ステップ64に処理を移行し、メモリ102に格納された経路案内プログラム150を実行すると、受信した経路案内データ160を利用した案内表示が表示部106、音声出力部107によって行われる。即ち分割された経路の地図やランドマークが表示部106に表示されるとともに、交差点の右左折等では該当する音声案内が音声出力部107から出力される。
【0062】
以上説明した情報センタ10および車載装置100の各処理を図4に示す経路例に基づいて通信手順として図示すると図5に示すように表される。ここで、図4および図5について説明する。なお、括弧内のS**(**は数字)は前述した図2および図3に示す各処理ステップを表す。
まず、出発位置に位置する車載装置100側の分割経路情報受信処理が起動されることによって、経路取得要求R1を情報センタ10に送信する(S52)。すると、情報センタ10側では、経路取得要求R1を受信することで(S10でYes)、現在地から目的地までの経路の探索(S14)、経路の分割(S16)をそれぞれ行う。そして、探索した経路の大部分に一本道を含むか(S18)、また当該経路全体を含む地図を車載装置100側が持っているか(S20)を判断する。ここでは、探索した第1区から第7区までの経路には、高速道路等の一本道は含まれず、また最初の経路取得要求R1であるから当該地図を持っていないので、ステップ18およびステップ20ではともにNoの方向に分岐する。そして、分割経路情報D1を作成した後(S22)、分割経路情報の受信を指示し(S28)、さらに分割経路情報D1を送信する(S30)。一方、情報センタ10側に経路取得要求R1を送信した車載装置100側では、簡略地図データの受信(S54)に移り、さらに分割経路情報の受信指示を待つ(S56)。そして、分割経路情報D1を受信すると(S58、S60、S62)、分割経路情報D1による経路案内S1を表示部106に表示する(S64)。ここで受信された簡略地図データは、簡略地図データベース166に格納される。
【0063】
経路案内S1に従って車両が走行を続けると、走行する車両(車載装置100)の現在位置が、やがて走行中の第1区と次に走行予定の第2区との境界、即ち分割経路切替地点P12から200メートル手前に到達する。すると、再び車載装置100側の分割経路情報受信処理が起動されることによって、経路取得要求R2を情報センタ10に送信する(S52)。すると、情報センタ10側では、現在地から目的地までの経路の探索(S14)、経路の分割(S16)を行った後、車載装置100側は既に簡略地図データを持っているので(S20でNo)、次に分割経路情報D2の作成(S26)を行い、さらに分割経路情報の受信指示(S28)の後に分割経路情報D2を送信する(S30)。この分割経路情報の受信指示を受信した車載装置100側では、第1区と第2区の分割経路切替地点P12に到達するまでに次の分割経路情報D2を受信し(S58、S60、S62)、分割経路情報D2による経路案内S2を表示部106に表示する(S64)。
【0064】
同様に経路案内S2に従って走行中の車両が、第2区と第3区の分割経路切替地点P23に到達するまでに車載装置100は次の分割経路情報D3を受信し(S58、S60、S62)、分割経路情報D3による経路案内S3を表示部106に表示する(S64)。このようにして順次表示される経路案内S3、S4に従ってさらに車両が走行を続けると、やがて走行中の第4区と次に走行予定の第5区との分割経路切替地点P45から200メートル手前に到達する。
ここで再び車載装置100側の分割経路情報受信処理が起動し、次の分割経路情報D5を取得するために経路取得要求R5を情報センタ10に送信する(S52)。すると、情報センタ10側では、経路取得要求R5を受信することで(S10でYes)、前述同様に、経路の探索(S14)、経路の分割(S16)、分割経路情報D5の作成(S26)を順次行い、さらに分割経路情報の受信指示(S28)の後に分割経路情報D5を送信する(S30)。
【0065】
しかしここでは、図4に示すように、分割経路情報D5を送信する位置は、通信不良、不能地帯に該当することから、情報センタ10により送信された分割経路情報D5が車載装置100側に届かない。そのため、車載装置100側では、分割経路情報D5を受信することができず(S62でNo)、メモリ102に格納された簡略地図データベース166から簡略地図データを読み出して経路全体を含む簡略地図Mを表示部106に表示する(S66)。これにより、情報センタ10側から送られてくるべき分割経路情報D5が取得できなくても、簡略地図Mに示された出発位置から目的地までの経路上あるいはその付近に自車の現在位置を示すことができるので、情報センタ10との通信状況にかかわらず、自車の現在位置を確認することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態よると、情報センタ10側は、車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための分割経路情報を車載装置100側に最初に送る際に、経路全体を描画する簡略地図データを送信する。これにより、車載装置100側は、分割経路情報を情報センタ10から最初に受けるときに、経路全体を含む簡略地図データをも受け取ることができる。したがって、例えば無線による通信手段の電波が届かないトンネル内や山間部、ビルの影などの電波が弱い地域などを車両が走行している場合であっても、車載装置100側は、最初に受け取った簡略地図データに基づいて経路案内をすることができるため、通信状況にかかわらず、車両の現在位置を確認し得る効果がある。
【0067】
なお、上述した情報センタ10では、ステップ20により経路全体を含む地図を車載装置100側が持っていると判断できない場合に経路全体を含む簡略地図を作成し(S22)、その簡略地図データを車載装置100側に送信したが、本発明では、ステップ26により作成する分割経路情報を送信すると予想される特定位置の通信状況をメモリ18に格納された通信判定プログラム25によって通信エリアデータ36を参照して判定し、この特定位置の通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合に、経路全体を含む簡略地図を作成し(S22)、その簡略地図データを車載装置100側に送信しても良い。これにより、当該簡略地図データが車両側で必要になる場合にだけ簡略地図を作成し、その簡略地図データを車載装置100側に送信することになるので、情報センタ10側からの不要なデータ送信を極力回避することができる。したがって、さらなる通信コストの削減が期待できる。
【0068】
次に、本発明の他の実施形態を図1、図6〜図8に基づいて説明する。
この実施形態に係るナビゲーションも、前述した実施形態に係るものと同様、車両の出発位置から目的地に至る経路探索の経路・案内データを分割して送信する情報センタ110(センタ側)と、この送信された分割データを受信し、その分割データに基づいて利用者に経路案内を行う車載装置200(移動側)と、から構成される。なお、情報センタ110および車載装置200の構成は、前述した実施形態に係る情報センタ10および車載装置100(図1)と実質的に同一の構成を採るため、ここではそれらの説明を省略する。
【0069】
まず、情報センタ110の作動を図1、図6〜図8に基づいて説明する。
図6には、情報センタ110による経路探索処理の流れが示されている。この処理は、車載装置200側からの経路取得要求を受信したか否かを判断する処理(S110)から始まるが、車載装置200による経路取得要求の送信処理は、
前述した車載装置100による経路取得要求の送信(S52)と同様である。
【0070】
即ち、図1に示すように、車載装置200側では、メモリ102に格納されている制御プログラム154が演算処理部101で実行されている。この状態で、ユーザの入力操作に基づいてメモリ102に格納されているデータリクエストプログラム152が実行されると、位置計測部104で計測した車両現在位置および目的地等の各情報を情報センタ10側に送受信部108によって送信する。このとき自車と他車を識別するためのIDも同時に送信する。これにより情報センタ10では、車両から送信した経路取得要求および各情報を送受信部12で受信する。一方、情報センタ110では、車両から送信した経路取得要求等を送受信部12で受信すると、これらの情報を送受信部12から演算処理部14に送る。これらの情報を取得した演算処理部14では、前述したようにメモリ18に格納されている経路探索プログラム20による経路探索処理が行われている。
【0071】
経路探索処理によるステップ110によって経路取得要求を受信したと判断すると(S110でYes)、ステップ112に処理を移行し、目的地の入力があるか否かを判断する。即ち、経路取得要求とともに得た各情報から目的地情報を抽出することにより、目的地入力の有無を判断する。これにより、目的地入力があると判断すれば(S112でYes)、この目的地情報から目的地を決定し、次のステップ114で目的地までの経路を探索する。例えば目的地情報として電話番号や住所等の情報を受信した場合には、データベース30の目的地設定用データ38を利用して目的地を決定する。一方、目的地入力があると判断できなければ(S112でNo)、目的地なしくして経路探索を行うことができないので、この経路探索処理を終了して制御プログラム26に処理を移す。
【0072】
ステップ114による経路探索では、車両現在位置から目的地までの経路を探索する。この経路探索は、メモリ18に格納された経路探索プログラム20によってデータベース30の経路探索用データ32、即ち交差点データ、道路データ、ノードデータを参照して行われる。この経路探索のアルゴリズムは公知であり、例えば特開平1−173297号公報、特開平1−173298号公報に開示された方法で行われ、経路全体の距離が最も短いものを最適経路とする等の条件で推奨経路を設定する。なお、この経路探索は車両側、即ち車載装置200から経路取得要求を受信する度に、車両現在位置から目的地までの経路が探索される。情報センタ110では、外部情報収集部40によって外部から道路情報や交通情報等を取得し、データベース30から最新の情報が引き出せるように例えば所定時間ごとに更新している。これにより、車両側からの経路取得要求毎に経路検索を行うので、工事や事故による渋滞等を避ける等の常に最新のデータに基づく推奨経路とその案内データを車両側に提供することができる。なお、このステップ114による経路探索処理は、特許請求の範囲に記載の「経路探索・案内データ抽出手段」に相当する。
【0073】
ステップ114により探索された推奨経路は、次にステップ116により分割経路に分割される。即ち、メモリ18に格納されたセグメント処理プログラム22によって実行され、探索された経路をナビゲーションの単位である所定長(例えば2000メートル)のセグメントに分割される。図7に示す経路例において探索された経路を分割した場合、例えば5セグメント、即ち図7中にマル1〜マル5で示された第1区から第5区の分割経路に分割される。なお、これらの分割経路にはデータヘッド、交差点情報、道路情報、ノード情報、目印情報等が含まれる。また、セグメントの分割単位は、時間単位(例えば1時間単位)やデータ量単位(例えば512バイト単位)で設定しても良く、さらには地理的あるいは時間的な諸条件を考慮してセグメントの分割単位を設定しても良い。これにより、後述するステップ30により異なる地理上の位置または異なる時間に車両側に送信することができるので、異なる地理上の位置または異なる時間に応じて変化する道路交通状況を踏まえた経路案内を行うことができる。
【0074】
ステップ116により経路の分割が行われると、ステップ118では分割された分割経路とそれに伴う案内データをメモリ18に格納された案内データ抽出プログラム24により案内用データ34から抽出し、案内データを付加した分割経路情報(分割データ)を作成、編集する。なおこの案内データ抽出プログラム24は、特許請求の範囲に記載の「経路探索・案内データ抽出手段」に相当する。
【0075】
続くステップ120では、この作成した分割経路情報の経路とその周辺を含む描画用地図データの検索を行う。この検索は、案内データ抽出プログラム24により行われ、案内用データ34に格納された描画用地図データ群から該当する地図を所定のアルゴリズムにより選択することで行われる。また「その周辺」とは、例えば当該経路を中心とした所定幅(5km等)のベルト状地域をいい、この範囲に含まれる描画用地図データはすべて検索の対象となる。
【0076】
次いでステップ122では、ステップ120で検索した描画用地図データに当該経路とその周辺のすべてが含まれるか否かが判断される。つまり、例えば図7に示す地図上に含まれる探索経路(丸Sから丸Gに至る太線)の場合、ステップ120で検索された描画用地図データ[A-1] だけでは第1区の経路マル1をすべて含むことができないので、ステップ124により他の経路とその周辺を含む描画用地図データの検索も行う。これにより、図7に示す経路例では、描画用地図データ[B-1] も検索され、図8(A) に示す描画用地図データ[A-1] と描画用地図データ[B-1] が得られたので、ステップ126により分割経路情報の受信指示を車載装置200側に送信する。
【0077】
そして、ステップ128により車載装置200に検索した描画用地図データと同じものがあるか否かを判断する。この判断は、情報センタ110が既に車載装置200側に送信した描画用地図データを記録することにより、その記録と検索した描画用地図情報とを照合することによって行われる。またその都度、その描画用地図データが車載装置200側に存在するか否かを確認する手順を採っても良い。この判断処理により同じものが車載装置200側にあれば(S128でYes)、ステップ120、124で検索した描画用地図データから既に存在する描画用地図データを除いてその他の描画用地図データを車載装置200側に送信する。続いてステップ134により分割経路情報を車載装置200側に送信する。
【0078】
一方、同じものが車載装置200側になければ(S128でNo)、ステップ130に処理を移行して、ステップ120、124で検索した描画用地図データのすべてを車載装置200側に送信する。続いてステップ134により分割経路情報を車載装置200側に送信する。これら送信処理は、送受信部12を介して行われ、所定の無線回線によって車載装置200側に描画用地図データおよび分割経路情報が無線伝送される。
【0079】
ここで、以上説明した経路探索処理による描画用地図データの検索(S120、122、124)および送信する描画用地図データの選択(S128、132)を、具体的な経路例(図7)を用いながら図8を参照して説明する。
図7には、丸Sから丸Gに至る経路(太線)が示されており、この経路はマル1〜マル5の5区間に分割されている。情報センタ10から車載装置200側に送信される描画用地図も5分割される(図8に示す(A) 〜(E) )。
【0080】
最初(1番目)に車載装置200側に送信される描画用地図データ(図8(A) )は、図6に示すステップ120により検索される描画用地図データ[A-1] と、ステップ124により検索される描画用地図データ[B-1] である。このように検索されるのは、分割経路マル1が双方の描画用地図に跨るからである。
【0081】
2番目に車載装置200側に送信される描画用地図データ(図8(B) )は、ステップ120により検索される描画用地図データ[B-2] のみである。ステップ124により描画用地図データ[B-1] も検索されるが、この描画用地図データ[B-1] は、車載装置200側に既に存在するので、ステップ128の判断Noにより処理されるステップ132によって除外され、描画用地図データ[B-2] のみ車載装置200側に送信される。
【0082】
3番目に車載装置200側に送信される描画用地図データ(図8(C) )は、ステップ120により検索される描画用地図データ[B-3] と、ステップ124により検索される描画用地図データ[C-3] である。ステップ124により描画用地図データ[B-2] も検索されるが、この描画用地図データ[B-2] は、車載装置200側に既に存在するので、ステップ128の判断Noにより処理されるステップ132によって除外され、描画用地図データ[B-3] と描画用地図データ[C-3] が車載装置200側に送信される。
【0083】
4番目に車載装置200側に送信される描画用地図データ(図8(D) )は、ステップ124により検索される描画用地図データ[D-3] のみである。ステップ120により描画用地図データ[C-3] も検索されるが、この描画用地図データ[C-3] は、車載装置200側に既に存在するので、ステップ128の判断Noにより処理されるステップ132によって除外され、描画用地図データ[D-3] のみが車載装置200側に送信される。
【0084】
最後(5番目)に車載装置200側に送信される描画用地図データ(図8(E) )は、ステップ124により検索される描画用地図データ[D-4] のみである。ステップ120により描画用地図データ[D-3] も検索されるが、この描画用地図データ[D-3] は、車載装置200側に既に存在するので、ステップ128の判断Noにより処理されるステップ132によって除外され、描画用地図データ[D-4] のみが車載装置200側に送信される。
【0085】
なお、上述したいずれの描画用地図データにおいても、既に車載装置200側に最新のものが存在する場合には、その送信によって古いデータのものに置き換えることになるので、そのような古いものは送信されない。
【0086】
以上説明したように、本実施形態よると、経路を案内する分割した描画用地図データのうち、一の分割描画データである描画用地図データが、既に車載装置200側に存在するときには、その描画用地図データを送らない。これにより、車載装置200側では、その描画用地図データを受け取ることができなくても、既に存在する描画用地図データを用いて経路案内をすることができるので、不要なデータの送信を省くことができる。したがって、通信コストを削減し得る効果がある。
【0087】
また、ステップ128により車載装置200側に検索した描画用地図データを同じものがあるか否かを判断したが、このステップにおいて、検索した描画用地図データに含まれる案内経路のすべてが単一の道筋からなるか否かをも判断し、それに該当する描画用地図データをステップ132より除いてその他の描画用地図データを送信するように処理しても良い。これにより、車載装置200側では、その描画用地図データを受け取ることができなくても、その描画用地図データに含まれる案内経路のすべてが単一の道筋からなるときは、経路案内がなくても道なりに直進すれば目的地に近づくことができるので、不要なデータの送信を省くことができる。したがって、さらに通信コストを削減し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る情報センタにおける経路探索処理のフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る車載装置における分割経路情報受信処理のフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る車載装置が順次受信する分割経路情報と、通信不良不能地帯において参照される簡略地図との補完関係を示す説明図である。
【図5】本実施形態に係るナビゲーションシステムにおける情報センタと車載装置との間の通信手順の流れを示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る情報センタにおける経路探索処理のフローチャートである。
【図7】当該他の実施形態に係る経路探索処理に検索される描画用地図データの一例を示した説明図である。
【図8】当該他の実施形態に係る経路探索処理により順次送信される描画用地図データの一例を示した説明図で、(A) 〜(E) はその順番を示す。
【符号の説明】
【0089】
10 情報センタ(センタ側)
100 車載装置(移動側)
104 位置計測部(現在位置検出手段)
D1〜D7 分割経路情報(分割データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データおよび案内データを分割してセンタ側から移動側へ送り、該データに基づいて移動側で経路案内を行なうナビゲーション方法であって、
前記分割した描画および案内データを移動側に最初に送る際に、経路全体を描画する全経路描画データを送信することを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項2】
前記分割した描画および案内データを送る度ごとに、最新のデータに基づく経路探索および案内データ抽出を行う経路探索・案内データ抽出手段を含むことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション方法。
【請求項3】
前記分割した経路を案内するための描画データおよび案内データは、センタ側から、異なる地理上の位置または異なる時間に移動側に対して送信されるとともに、
前記送信された全経路描画データによる経路全体は、センタ側との通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合に移動側で表示されることを特徴とする請求項1または2記載のナビゲーション方法。
【請求項4】
前記全経路描画データは、出発地と目的地とを含む地図描画データであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナビゲーション方法。
【請求項5】
車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データおよび案内データを分割してセンタ側から移動側へ送り、該データに基づいて移動側で経路案内を行なうナビゲーション方法であって、
前記分割した経路を案内するための描画データおよび案内データは、センタ側から、異なる地理上の位置または異なる時間に移動側に対して送信すると共に、
該データを送信すると予想される特定位置の通信状況を判定し、前記特定位置の通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合に、経路全体を描画する全経路描画データを送信することを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項6】
車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データおよび案内データを分割したデータをセンタ側から受信し、該受信されたデータに基づいて経路案内を行なうナビゲーション装置であって、
前記分割した描画および案内データを最初に受信する際に、経路全体を描画する全経路描画データを受信することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
前記分割した経路を案内するための描画データおよび案内データは、異なる地理上の位置または異なる時間に受信することを特徴とする請求項6記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記送信された経路全体は、センタ側との通信状況が通信不良または通信不能であると判定された場合に移動側で表示されることを特徴とする請求項6または7記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段を備え、該検出手段によって検出された現在位置を、前記受信した経路全体の表示とともに表示することを特徴とする請求項6記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データを分割して移動側に送るナビゲーションの情報提供装置であって、
前記分割した描画データのうち、一の分割描画データに含まれる案内経路のすべてが単一の道筋からなるときは、該分割描画データを送らないことを特徴とするナビゲーションの情報提供装置。
【請求項11】
車両の出発位置から目的地までの経路を案内するための描画データを分割して移動側に送るナビゲーションの情報提供装置であって、
前記分割した描画データのうち、一の分割描画データが、既に移動側に存在するときには、該分割描画データを送らないことを特徴とするナビゲーションの情報提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−14731(P2009−14731A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199123(P2008−199123)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【分割の表示】特願平11−328199の分割
【原出願日】平成11年11月18日(1999.11.18)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】