説明

ナビゲーション装置、ナビゲーションシステム

【課題】指定された道路が適切であれば、その道路を通過するように目的地までの経路を設定すると共に、指定された道路が適切でなければ、その道路を通らずに目的地までの経路を適切に設定することができるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】表示モニタに表示された地図上でユーザが道路を指定することにより、ユーザが通過したいと思う通過道路を設定する(ステップS30)。この通過道路を構成する複数のリンクを、そのリンクコストの合計値よりも小さいリンクコストが設定された仮想リンクに置き換える(ステップS40)。そして、通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストと、ステップS40で置き換えた仮想リンクに設定されたリンクコストに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を探索する(ステップS50)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定された目的地まで運転者を案内するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画面表示された道路地図上でユーザが通過したいと希望する道路をトレースして指定すると、その指定された道路を通過するように目的地までの経路を設定するナビゲーション装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−111354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるナビゲーション装置では、ユーザに指定された道路がどのような道路であっても、その道路を必ず通るように目的地までの経路が設定される。したがって、指定された道路が適切でない場合、たとえばその道路を通ると大幅に遠回りとなってしまうような場合であっても、指定された道路を通るように経路が設定されてしまうという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によるナビゲーション装置は、所定のリンクコストがそれぞれ設定された複数のリンクによって構成される通過道路を出発地から目的地までの間に設定する道路設定手段と、道路設定手段により設定された通過道路を構成する複数のリンクを、その複数のリンクのリンクコストの合計値よりも小さいリンクコストが設定された仮想リンクに置き換える置換手段と、通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストと、置換手段により置き換えられた仮想リンクに設定されたリンクコストとに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を探索する経路探索手段とを備えるものである。
請求項2の発明は、請求項1のナビゲーション装置において、道路設定手段は、表示モニタに表示された地図上でユーザが指定した道路を通過道路に設定するものである。
請求項3の発明は、請求項1または2のナビゲーション装置において、通過道路を構成する複数のリンクのいずれかに特定の交通規制情報が設定されている場合、置換手段は、仮想リンクにも同一内容の交通規制情報を設定するものである。
請求項4の発明は、請求項1〜3いずれか一項のナビゲーション装置において、仮想リンクを使用するか否かを判定する判定手段をさらに備え、判定手段により仮想リンクを使用しないと判定された場合、経路探索手段は、仮想リンクを用いることなく、通過道路および通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストに基づいて、推奨経路を探索するものである。
請求項5の発明は、請求項4のナビゲーション装置において、判定手段は、ユーザに予め設定された推奨経路の探索条件の設定結果に基づいて、仮想リンクを使用するか否かを判定するものである。
請求項6の発明は、請求項4のナビゲーション装置において、判定手段は、暦および/または時間に基づいて、仮想リンクを使用するか否かを判定するものである。
請求項7の発明は、請求項1〜6いずれか一項のナビゲーション装置において、推奨経路から自車両が逸脱すると、そのときの自車位置を出発地として目的地までの新たな推奨経路を再探索するリルート手段をさらに備え、推奨経路に含まれる通過道路から自車両が逸脱した場合、リルート手段は、仮想リンクを使用せずに、通過道路および通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストに基づいて、新たな推奨経路を再探索するものである。
請求項8の発明は、請求項1〜7いずれか一項のナビゲーション装置において、通過道路の渋滞状況を判断する渋滞判断手段と、渋滞判断手段による通過道路の渋滞状況の判断結果に応じて、仮想リンクに設定されるリンクコストを変化するリンクコスト変化手段とをさらに備えるものである。
請求項9の発明は、請求項8のナビゲーション装置において、渋滞判断手段は、道路交通情報通信システムセンターより送信された道路交通情報に基づいて、通過道路の渋滞状況を判断するものである。
請求項10の発明は、請求項8のナビゲーション装置において、渋滞判断手段は、過去の渋滞状況が曜日や時間ごとに記録された統計交通情報に基づいて、通過道路の渋滞状況を判断するものである。
請求項11の発明によるナビゲーションシステムは、請求項1〜10いずれか一項のナビゲーション装置と、様々なユーザが優先的に通過する道路の情報が記録されたデータベース手段と、データベース手段に記録された情報に基づいて通過道路を決定する通過道路決定手段と、通過道路決定手段により決定された通過道路を地図上で特定するための通過道路情報をナビゲーション装置に送信する送信手段とを備え、道路設定手段は、送信手段から送信された通過道路情報に基づいて通過道路を設定するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、指定された道路が適切であれば、その道路を通過するように目的地までの経路を設定すると共に、指定された道路が適切でなければ、その道路を通らずに目的地までの経路を適切に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を図1に示す。このナビゲーション装置は車両に搭載されて使用され、車両の運転者であるユーザによって目的地が設定されると、その目的地までの推奨経路を探索し、探索された推奨経路に従ってユーザを目的地まで案内する。さらに、推奨経路を探索する際にユーザが途中で通りたいと思う道路を指定すると、指定された道路を通過するように推奨経路の探索を行うことができるものである。
【0008】
図1に示すナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、入力装置17およびディスクドライブ18を有している。ディスクドライブ18には、地図データが記録されたDVD−ROM19が装填される。制御回路11は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行する。これにより、たとえば目的地の設定、推奨経路の探索、地図の表示などの様々な処理や制御がナビゲーション装置1において行われる。
【0009】
現在地検出装置14は、自車両の現在地すなわち自車位置を検出する装置であり、たとえば、自車両の進行方向を検出する振動ジャイロセンサ14a、車速を検出する車速センサ14b、GPS衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ14c等の各種センサ類からなる。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出される自車位置に基づいて、後述する経路探索開始点を決定したり、自車位置マークを地図上に示したりすることができる。
【0010】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを一時的に格納する。この画像データは、地図を表示するための地図描画用データや各種の図形データ等からなり、DVD−ROM19に記録されている地図データなどに基づいて、制御回路11により作成される。作成された画像データが制御回路11から画像メモリ15に出力されることによって、表示モニタ16に地図が表示される。
【0011】
入力装置17は、車両の目的地や経由地(以下、これらを合わせて単に目的地という)をユーザが設定したりするための各種入力スイッチを有している。この入力装置17は、操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16に表示される画面指示に従って入力装置17を操作することにより、地名や地図上の位置などを指定して目的地を設定することができる。
【0012】
ディスクドライブ18は、装填されたDVD−ROM19より、地図を表示するための地図データを読み出す。この地図データには、ルート探索に用いられる経路計算データ、推奨経路に従って自車両を目的地まで誘導するために用いられる交差点名称や道路名称などの経路誘導データ、道路を表す道路データなどが含まれている。また、河川や鉄道、地図上の各種施設等(ランドマーク)など、道路以外の地図要素を表す背景データなども地図データに含まれている。
【0013】
道路データにおいて、道路区間を表す最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間ごとに設定された複数のリンクによって構成されている。なお、リンクによって設定される道路区間の長さは異なっており、リンクの長さは一定ではない。リンク同士を接続している点はノードと呼ばれ、このノードはそれぞれに位置情報(座標情報)を有している。また、リンク内にはノードとノードの間に形状補間点と呼ばれる点が設定されていることもある。形状補間点もノードと同じく、それぞれに位置情報(座標情報)を有している。このノードと形状補間点の位置情報によって、リンク形状、すなわち道路の形状が決定される。経路計算データには、上記の各リンクに対応して、自車両の通過所要時間を表すためのリンクコストと呼ばれる値が設定されている。
【0014】
なお、ここではDVD−ROMを用いた例について説明しているが、DVD−ROM以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスク、メモリーカードなどから地図データを読み出すこととしてもよい。あるいは、外部より携帯電話回線などを介して送信される地図データを受信し、その地図データを用いることとしてもよい。すなわち、地図データの取得にはどのような方法を用いてもよい。
【0015】
ユーザが入力装置17を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、現在地検出装置14により検出された現在地を経路探索開始点として、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算を行うことにより、現在地から目的地までのルート探索計算を行う。このルート探索計算では、現在地から目的地までの間に通過する各リンクに対して設定されたリンクコストを合計し、その値が最小となるような経路が推奨経路として求められる。
【0016】
ルート探索計算の結果求められた推奨経路は、その表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、他の道路とは区別して地図上に表される。これにより、ユーザは推奨経路を表示モニタ16に表示された地図上において認識することができる。また、この推奨経路に従って自車両が走行できるよう、ナビゲーション装置1は、ユーザに対して画像や音声などによる進行方向指示を行うことにより、自車両を誘導する。このように、地図を表示して推奨経路に従って自車両を目的地まで誘導することにより、目的地までのルート案内が行われる。
【0017】
上記のようにして推奨経路を探索する際に、ユーザは目的地に向かう途中で通過したいと思う道路を地図上で指定することもできる。たとえば、表示モニタ16をタッチパネルとし、その画面に表示された地図上でペンや指などでなぞる操作をすることにより、ユーザは通過したいと思う道路を指定する。あるいは、入力装置17の一部として操作パネルやリモコンに設置されたカーソルキーを用いて、表示モニタ16に表示された地図上でカーソルを移動させて通過したいと思う道路を指定するようにしてもよい。このようにして指定された道路を、以下では通過道路と呼ぶこととする。なお、ここで説明した通過道路の指定方法は一例であり、これ以外の方法を用いてもよい。
【0018】
以上説明したようにしてユーザが通過道路を指定すると、その通過道路を構成する複数のリンクがまとめて1つの仮想リンクに置き換えられる。仮想リンクとは、通過道路を構成する複数のリンクを組にして1つのリンクで表したものである。この仮想リンクには、元の複数のリンクに設定されたリンクコストの合計よりも小さなリンクコストが設定される。そして、通過道路については元のリンクコストよりも小さな仮想リンクのリンクコストを用いて、前述したようなルート探索計算が行われる。その結果、指定された通過道路を通るような推奨経路が探索される。
【0019】
推奨経路の探索方法について、以下に具体例による説明を行う。図2に示すように、現在地である出発地Oから目的地Dまでの間には、リンクL1〜L9によって表される複数の道路が存在しているものとする。各リンクはそれぞれノードN1〜N7を介して接続されている。たとえば、ノードN1を介してリンクL1とリンクL2が接続されており、ノードN2を介してリンクL2、L3およびL9が接続されている。
【0020】
リンクL1〜L9には、それぞれの通過所要時間に応じた値のリンクコストが設定されている。たとえば、リンクL1のリンクコストにはC1=50の値が設定されており、リンクL2のリンクコストにはC2=30の値が設定されている。それ以外のリンクL3〜L9についても、リンクコストC3〜C9がそれぞれ設定されている。これらのリンクコストの値は、道路の制限速度などに基づいて予め定められている。
【0021】
初めに、図2においてユーザが通過道路を指定せずに目的地までの推奨経路を探索した場合について説明する。この場合、出発地Oから目的地Dまでをつないだときに、そのリンクコストの合計値が最小となるようなリンクの組がルート探索計算により求められる。こうして求められたリンクの組によって構成される経路が推奨経路に設定される。図2の場合、出発地Oから目的地Dまでをつなぐリンクの組は、リンクL1、L2およびL3の組と、リンクL4、L5、L6、L7、L8、L9およびL3の組である。前者の組によって構成される経路を経路1と表し、後者の組によって構成される経路を経路2と表すと、経路1のリンクコストの合計値は50+30+5=85であり、経路2のリンクコストの合計値は10+15+10+10+10+30+5=90である。したがって、経路1が推奨経路として求められる。
【0022】
次に、図2においてユーザが通過道路を前述のような方法で指定してから目的地までの推奨経路を探索した場合について説明する。この場合、ルート探索計算が行われる前に、ユーザによって指定された通過道路を構成するリンクが組み合わされて仮想リンクに置き換えられる。ここでは、リンクL6、L7およびL8が仮想リンクLiに置き換えられるものとする。この仮想リンクLiには、元のリンクの組に対して設定されたリンクコストの合計値よりも小さなリンクコストの値が設定される。ここでは、元のリンクL6、L7およびL8のリンクコストの合計値10+10+10=30に対して、それよりも小さいCi=20が仮想リンクLiのリンクコストの値として設定されるものとする。
【0023】
リンクL6、L7およびL8が仮想リンクLiに置き換えられるときには、元のリンクL6、L7およびL8に対して、仮想リンクに置き換えられたことを示すフラグ情報がそれぞれ付与される。さらに、リンクL6、L7およびL8と仮想リンクLiの対応関係を表した対応テーブルが作成される。これにより、ルート探索計算を行う際にフラグ情報が付与されたリンクがあった場合は、対応テーブルを参照してそのリンクがどの仮想リンクに置き換えられたかを判断することができる。
【0024】
こうして通過道路を構成するリンクL6、L7およびL8が仮想リンクLiに置き換えられると、ルート探索計算が実行され、出発地Oから目的地Dまでをつないだときにリンクコストの合計値が最小となるリンクの組が求められる。この際、通過道路については置き換えた仮想リンクLiに設定されたリンクコストが用いられ、通過道路以外の道路については、その道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストが用いられる。その結果、経路2のリンクコストの合計値は10+15+20+30+5=80となるため、経路1のリンクコストの合計値85よりも小さくなる。したがって、経路2が推奨経路として求められる。
【0025】
なお、以上説明したようにして推奨経路として求められた経路2を地図上に表示するとき、通過道路は仮想リンクLiでなく元のリンクL6、L7およびL8のリンク情報に基づいて表示される。さらに、通過道路のルート案内を行う際も、元のリンクL6、L7およびL8のリンク情報に従って進行方向の指示が行われる。このようにすることで、実際の通過道路に従って地図の表示やルート案内を正しく行うことができる。
【0026】
また、通過道路の元のリンクL6、L7またはL8のリンクに一方通行や右折禁止など特定の交通規制情報が設定されている場合は、置き換え後の仮想リンクLiに対しても、それと同一内容の交通規制情報が設定される。たとえば、リンクL8の先が右折禁止となっていた場合は、仮想リンクLiの先も右折禁止とする。これにより、仮想リンクを用いてルート探索計算を行った結果、実際には通行できないような推奨経路が誤って探索されてしまうことを防止できる。
【0027】
次にリルート処理について説明を行う。自車両が目的地に向かって走行している途中で推奨経路から逸脱してしまった場合、リルート処理と呼ばれる処理が制御回路11において実行されることにより、自車位置から目的地までの新たな推奨経路が自動的に再探索される。このリルート処理は、推奨経路から逸脱したときの自車位置を新たな出発地としてルート探索計算を行うことにより行われる。すなわち、推奨経路から逸脱すると、その時点の自車位置から目的地までをつないでリンクコストの合計値が最小となるようなリンクの組がルート探索計算によって求められる。こうしてリルート処理が実行されることにより、新たな推奨経路が求められる。
【0028】
ここで、ユーザに指定された通過道路から自車両が逸脱して上記のようなリルート処理が実行されるとする。この場合、通過道路についても仮想リンクを使用せずに、仮想リンクに置き換える前の元のリンクを用いて、リルート処理時のルート探索計算が行われる。すなわち図2の例では、仮想リンクLiのリンクコストCiではなく、リンクL6、L7およびL8のリンクコストC6、C7およびC8に基づいて、リンクコストの合計値が最小となるようなリンクの組が求められる。このようにすることで、推奨経路の一部に設定された通過道路を通行中に、その通過道路を通ることをユーザが途中で止めた場合は、リルート処理によって適切な推奨経路を再探索することができる。なお、通過道路が複数個指定されている場合は、逸脱した通過道路に対応する仮想リンクのみを使用しないこととしてもよいし、全ての通過道路について仮想リンクを使用しないこととしてもよい。
【0029】
図2の例において、仮想リンクLiのリンクコストCi=20はあくまで一例であり、リンクコストC6、C7およびC8の合計値よりも小さければ、仮想リンクLiに対して設定されるリンクコストはどのような値であってもよい。すなわち、通過道路を構成する元のリンクのリンクコストを任意の割合で減少させることにより、仮想リンクのリンクコストを設定することができる。
【0030】
なお、元のリンクコストに比べて仮想リンクのリンクコストを小さな値に設定する程、指定された通過道路を推奨経路が通る可能性が高くなる。しかし、仮想リンクのリンクコストをあまり小さな値に設定してしまうと、指定された通過道路が適切でない場合、たとえばその通過道路を通ると大幅に遠回りとなってしまうような場合であっても、指定された通過道路を通るように推奨経路が設定される。したがって、道路状況を総合的に判断した上で、指定された通過道路が適切であれば、その通過道路を通過するように目的地までの経路を設定すると共に、指定された通過道路が適切でなければ、その通過道路を通らずに目的地までの経路を適切に設定することができるように、適切なリンクコストの値を仮想リンクに対して設定することが好ましい。
【0031】
たとえば、指定された通過道路を通った場合の所要時間が、通らなかった場合の所要時間の120%以内であれば通過道路を通るように推奨経路を設定し、120%を超えるときには通過道路を通らないように推奨経路を設定する場合を考える。この場合、通過道路を通って出発地から目的地まで至る経路のうちリンクコストの合計値が最小となる経路において、通過道路のリンクを仮想リンクに置き換えたときの総リンクコストが、元の総リンクコストの100/120、すなわち約83%となるように、仮想リンクのリンクコストが設定される。これはあくまで一例であり、他にも様々な方法で仮想リンクのリンクコストを設定することができる。
【0032】
以上説明したようにして推奨経路を探索して自車両を目的地まで案内する際に、制御回路11によって実行されるフローチャートを図3に示す。以下、このフローチャートについて詳細に説明する。ステップS10では、地名や地図上の位置を指定することにより、目的地を設定する。
【0033】
ステップS20では、予め定められた仮想リンクの使用条件を満たすか否か判定する。この判定は、たとえば暦や時間に基づいて行われる。具体的には、朝や夕方、昼間などの特定の時間帯や、祝日、休日などの特定の曜日に該当する場合は、仮想リンクの使用条件を満たすものと判定する。これらの条件を組み合わせて用いてもよい。あるいは、推奨経路の探索条件の一つとして、ユーザが仮想リンクを使用するか否かを予め設定できるようにしてもよい。仮想リンクの使用条件を満たす場合はステップS30へ進み、満たさない場合はステップS60へ進む。
【0034】
ステップS30では、目的地に向かう途中でユーザが通過したいと思う通過道路の設定を行う。この通過道路の設定は、前述のように表示モニタ16に表示された地図上でタッチパネル操作やカーソル操作によってユーザが道路を指定することにより行われる。あるいは、過去に設定された通過道路をいくつか記憶しておき、それを呼び出してユーザが設定したい通過道路を選択することとしてもよい。通過道路が設定されたら、次のステップS40へ進む。
【0035】
ステップS40では、ステップS30で設定された通過道路のリンクを仮想リンクに置き換える。このとき、通過道路を構成する複数のリンクを組み合わせて1つの仮想リンクに置き換える。なお、通過道路が1つのリンクによって構成される場合は、そのリンクを1つの仮想リンクに置き換える。ステップS40において通過道路のリンクを仮想リンクに置き換える際には、前述のように通過道路を構成するリンクに対してフラグ情報が付与され、さらにそのリンクと仮想リンクの対応テーブルが作成される。
【0036】
ステップS50では、推奨経路の探索を行う。このとき、ステップS30、S40の処理が実行されることによって通過道路が設定され、そのリンクが仮想リンクに置き換えられている場合は、通過道路については元のリンクコストではなく仮想リンクのリンクコストに基づいてルート探索計算が行われる。一方、ステップS20において仮想リンクの使用条件を満たさないと判定された場合は、仮想リンクを使用せずにルート探索計算が行われる。その結果、目的地までのリンクコストの合計値が最小となるリンクの組が推奨経路として求められる。
【0037】
ステップS60では、ステップS50で求められた推奨経路を表示モニタ16に表示された地図上に表示する。このとき、ステップS30で設定された通過道路については、仮想リンクに置き換える前の元のリンクに基づいて推奨経路の表示を行う。
【0038】
ステップS70では、ステップS60で地図上に表示された推奨経路に基づいて、自車両を目的地まで案内するためのルート案内を行う。このとき、ステップS30で設定された通過道路については、仮想リンクに置き換える前の元のリンクに基づいてルート案内を行う。
【0039】
ステップS80では、自車両が目的地に到着したか否かを判定する。自車両が目的地に到着した場合は、図3のフローチャートを終了する。これにより、目的地までのルート案内が終了する。しかし、自車両がまだ目的地に到着していない場合は、ステップS90へ進む。
【0040】
ステップS90からステップS120では、自車両が推奨経路を逸脱したときのリルート処理が行われる。ステップS90では、自車両が推奨経路から逸脱したか否かを判定する。自車位置が推奨経路上になく、推奨経路から逸脱したと判定された場合は、次のステップS100へ進む。一方、推奨経路から逸脱していないと判定された場合はステップS70へ戻り、ルート案内を続ける。
【0041】
ステップS100では、自車両が推奨経路から逸脱する直前まで、ステップS30で設定された通過道路上を走行していたか否かを判定する。通過道路上を走行していた場合はステップS110へ進む。通過道路上を走行していなかった場合は、ステップS110を実行せずにステップS120へ進む。
【0042】
ステップS110では、通過道路に対する仮想リンクの設定を解除する。すなわち、通過道路のリンクを仮想リンクで置き換えずに、元のリンクを使用してルート探索計算を行うようにする。
【0043】
ステップS120では、推奨経路の再探索を行う。このとき、ステップS110が実行されることによって仮想リンクの設定が解除された場合は、通過道路については仮想リンクに設定されたリンクコストではなく、元のリンクコストに基づいてルート探索計算が行われる。一方、ステップS100において通過道路上を走行していなかったと判定された場合は、ステップS50における推奨経路の探索時と同様に、通過道路については元のリンクコストではなく仮想リンクのリンクコストに基づいてルート探索計算が行われる。ステップS120を実行したらステップS70へ戻り、再探索された新たな推奨経路に基づいてルート案内を行う。
【0044】
以上説明したようにして、目的地までの推奨経路が探索され、その推奨経路にしたがって目的地までのルート案内が行われる。
【0045】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
(1)通過道路を出発地から目的地までの間に設定し(ステップS30)、その通過道路を構成する複数のリンクを、その複数のリンクのリンクコストの合計値よりも小さいリンクコストが設定された仮想リンクに置き換える(ステップS40)。そして、通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストと、ステップS40で置き換えた仮想リンクに設定されたリンクコストに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を探索する(ステップS50)こととした。このようにしたので、指定された道路が適切であれば、その道路を通過するように目的地までの経路を設定すると共に、指定された道路が適切でなければ、その道路を通らずに目的地までの経路を適切に設定することができる。
【0046】
(2)ステップS30で通過道路を設定する際、表示モニタ16に表示された地図上でユーザが指定した道路を通過道路に設定することができる。このようにすれば、ユーザが途中で通りたいと思う通過道路を簡単に設定することができる。
【0047】
(3)通過道路を構成する複数のリンクのいずれかに特定の交通規制情報が設定されている場合、仮想リンクにも同一内容の交通規制情報を設定することとした。このようにしたので、仮想リンクを用いてルート探索計算を行った結果、実際には通行できないような推奨経路が誤って探索されてしまうことを防止できる。
【0048】
(4)仮想リンクの使用条件を満たすか否かを判定することにより(ステップS20)、仮想リンクを使用するか否かを判定する。このとき、ユーザに予め設定された推奨経路の探索条件の設定結果や、暦、時間などを仮想リンクの使用条件として、仮想リンクを使用するか否かを判定する。その結果、仮想リンクを使用しないと判定された場合は、ステップS30およびS40を実行しないことにより、ステップS50において仮想リンクを使用せずに、全ての道路すなわち通過道路および通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストに基づいて、推奨経路を探索することとした。このようにしたので、状況に応じて仮想リンクの使用の有無を切り替えて、最適な推奨経路を探索することができる。
【0049】
(5)推奨経路から自車両が逸脱すると(ステップS90)、リルート処理を実行することにより、そのときの自車位置を出発地として目的地までの新たな推奨経路を再探索する(ステップS120)。このとき、推奨経路に含まれる通過道路から自車両が逸脱した場合は(ステップS100)、仮想リンク設定を解除してから(ステップS110)ステップS120を実行する。これにより、ステップS120において、仮想リンクを使用せずに、通過道路および通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストに基づいて、新たな推奨経路を再探索する。このようにしたので、推奨経路の一部に設定された通過道路を通行中に、その通過道路を通ることをユーザが途中で止めた場合は、リルート処理によって適切な推奨経路を再探索することができる。
【0050】
なお、上記の実施の形態では、仮想リンクに対して元のリンクコストの合計値よりも小さい一定のリンクコストを設定することとした。しかし、このリンクコストの値を道路状況に応じて変化させるようにしてもよい。このようにすれば、道路状況により適した推奨経路を設定することができる。たとえば、道路交通情報通信システム(VICS)によって提供される道路交通情報に基づいて、仮想リンクのリンクコストを変化することができる。すなわち、FM多重放送やビーコンを介してVICSセンターから送信される道路交通情報を受信することにより、設定された通過道路の渋滞状況を判断する。その結果、通過道路が渋滞していると判断された場合は、元のリンクコストの合計値に近いリンクコストを仮想リンクに対して設定し、渋滞の程度が小さいほど仮想リンクのリンクコストを下げる。
【0051】
あるいは、過去の渋滞状況を曜日や時間ごとに統計交通情報として記録しておき、その統計交通情報に基づいて現在の渋滞状況を判断する。その結果、設定された通過道路の渋滞が激しいと判断された場合は、元のリンクコストの合計値に近いリンクコストを仮想リンクに対して設定し、渋滞の程度が小さいと判断されるほど仮想リンクのリンクコストを下げる。
【0052】
また、通過道路の設定を車両の運転者であるユーザ自身が指定して行うのではなく、外部から送信される情報に基づいて行うようにしてもよい。図4は、外部から送信される情報に基づいて通過道路を設定するナビゲーションシステムの構成例を示した図である。ナビゲーション装置1は車両100に備えられており、通信端末2が接続されている。この通信端末2には、たとえば携帯電話などが用いられる。通信端末2は、移動体通信網3と無線接続される。移動体通信網3には、通過道路データベース4が接続されている。すなわち、ナビゲーション装置1は、通信端末2と移動体通信網3を介して通過道路データベース4に接続される。通過道路データベース4には、予め収集された様々なユーザが優先的に通過する道路のデータベース情報が記録されている。
【0053】
ナビゲーション装置1は、通信端末2と移動体通信網3を介して通過道路データベース4に接続されると、通過道路データベース4に対して通過道路情報を要求する。通過道路データベース4は、ナビゲーション装置1からの要求に応じて前述のデータベース情報に基づいて通過道路を決定し、その通過道路を地図上で特定するための通過道路情報をナビゲーション装置1に対して送信する。ナビゲーション装置1は、通過道路データベース4から送信された通過道路情報を移動体通信網3と通信端末2を介して受信し、受信した通過道路情報に基づいて通過道路を設定する。このようにして、外部から送信される情報に基づいて通過道路を設定することができる。
【0054】
上記の実施の形態はあくまで一例であり、発明を解釈する際、各実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係には何ら限定も拘束もされない。また、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態によるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】推奨経路の探索方法を説明するための具体例を示した図である。
【図3】推奨経路を探索して自車両を目的地まで案内する際に実行されるフローチャートである。
【図4】外部から送信される情報に基づいて通過道路を設定するナビゲーションシステムの構成例を示した図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ナビゲーション装置
11 制御回路
12 ROM
13 RAM
14 現在地検出装置
15 画像メモリ
16 表示モニタ
17 入力装置
18 ディスクドライブ
19 DVD−ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のリンクコストがそれぞれ設定された複数のリンクによって構成される通過道路を出発地から目的地までの間に設定する道路設定手段と、
前記道路設定手段により設定された通過道路を構成する複数のリンクを、その複数のリンクのリンクコストの合計値よりも小さいリンクコストが設定された仮想リンクに置き換える置換手段と、
前記通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストと、前記置換手段により置き換えられた仮想リンクに設定されたリンクコストとに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を探索する経路探索手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1のナビゲーション装置において、
前記道路設定手段は、表示モニタに表示された地図上でユーザが指定した道路を通過道路に設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2のナビゲーション装置において、
前記通過道路を構成する複数のリンクのいずれかに特定の交通規制情報が設定されている場合、前記置換手段は、前記仮想リンクにも同一内容の交通規制情報を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項のナビゲーション装置において、
前記仮想リンクを使用するか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記判定手段により仮想リンクを使用しないと判定された場合、前記経路探索手段は、前記仮想リンクを用いることなく、前記通過道路および前記通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストに基づいて、前記推奨経路を探索することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4のナビゲーション装置において、
前記判定手段は、ユーザに予め設定された推奨経路の探索条件の設定結果に基づいて、前記仮想リンクを使用するか否かを判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項4のナビゲーション装置において、
前記判定手段は、暦および/または時間に基づいて、前記仮想リンクを使用するか否かを判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項のナビゲーション装置において、
前記推奨経路から自車両が逸脱すると、そのときの自車位置を出発地として目的地までの新たな推奨経路を再探索するリルート手段をさらに備え、
前記推奨経路に含まれる通過道路から自車両が逸脱した場合、前記リルート手段は、前記仮想リンクを使用せずに、前記通過道路および前記通過道路以外の道路を構成する各リンクにそれぞれ設定されたリンクコストに基づいて、新たな推奨経路を再探索することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか一項のナビゲーション装置において、
前記通過道路の渋滞状況を判断する渋滞判断手段と、
前記渋滞判断手段による通過道路の渋滞状況の判断結果に応じて、前記仮想リンクに設定されるリンクコストを変化するリンクコスト変化手段とをさらに備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項8のナビゲーション装置において、
前記渋滞判断手段は、道路交通情報通信システムセンターより送信された道路交通情報に基づいて、前記通過道路の渋滞状況を判断することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項10】
請求項8のナビゲーション装置において、
前記渋滞判断手段は、過去の渋滞状況が曜日や時間ごとに記録された統計交通情報に基づいて、前記通過道路の渋滞状況を判断することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか一項のナビゲーション装置と、
様々なユーザが優先的に通過する道路の情報が記録されたデータベース手段と、
前記データベース手段に記録された情報に基づいて通過道路を決定する通過道路決定手段と、
前記通過道路決定手段により決定された通過道路を地図上で特定するための通過道路情報を前記ナビゲーション装置に送信する送信手段とを備え、
前記道路設定手段は、前記送信手段から送信された通過道路情報に基づいて通過道路を設定することを特徴とするナビゲーションシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−263934(P2007−263934A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93365(P2006−93365)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】