説明

ナビゲーション装置および情報表示方法

【課題】ユーザが面倒な操作をすることなく、VICSレベル3の渋滞表示と走行軌跡表示との視認性を向上させることが可能な「ナビゲーション装置および情報表示方法」を提供する。
【解決手段】VICS情報記憶部15に記憶された渋滞情報が示している道路区間の位置と、走行軌跡記憶部18に記憶された走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じである場合に、走行軌跡情報を非表示とするように走行軌跡描画部21を制御する表示制御部24を設けることにより、ユーザが走行軌跡情報を非表示とするために表示モードを切り替えるといった煩雑なメニュー操作をすることなく、渋滞情報と走行軌跡情報とが道路上で重なって表示されることがなくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置および情報表示方法に関し、特に、VICSセンタから受信される渋滞情報および、蓄積した過去の走行軌跡情報を画面表示する機能を備えたナビゲーション装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載用のナビゲーション装置では、自立航法センサやGPS(Global Positioning System)受信機などを用いて車両の現在位置を検出し、その近傍の地図データを記録媒体から読み出して画面上に表示する。そして、画面上の所定箇所に自車位置を示す自車位置マークを重ね合わせて表示することにより、車両が現在どこを走行しているのかを一目で分かるようにしている。
【0003】
ナビゲーション装置は、道路交通情報センタ(VICSセンタ)から送られてくるVICS道路交通情報(以下、VICS情報と略す)を受信して、刻々と変化する道路状況をナビゲーション画面上に表示できるようになっているものが多い。このようなVICS機能を搭載したナビゲーション装置では、渋滞情報や規制情報といった道路交通情報を画面表示を通じてリアルタイムにユーザに提供することが可能である。
【0004】
VICS情報には、レベル1(文字表示型)、レベル2(簡易図形表示型)、レベル3(地図表示型)の3種類の情報がある。このうちレベル3のVICS情報は、渋滞や混雑の有無を地図上の色付き矢印によって知らせるための渋滞情報である。すなわち、道路を表す各リンクの渋滞情報(渋滞/混雑/順調の何れか)をVICSセンタから受信すると、その渋滞情報に基づいて、各リンクに対応する道路の脇に渋滞箇所(赤の矢印)や混雑箇所(オレンジの矢印)が明滅表示される。また、順調に車が流れている道路の脇には青の矢印が表示される。
【0005】
また、ナビゲーション装置には、車両が走行した軌跡を自動的に記録する機能を備えたものもある。この種のナビゲーション装置では、ユーザがリモコン等を操作して走行軌跡表示モードに切り替えることにより、各リンクに対応する道路上に走行軌跡がドット(点)の列として表示されるので、走行軌跡を逆に辿って元の地点まで戻ることができる。なお、車両が走行している場所に応じて走行軌跡の表示/非表示を自動的に切り替えるようにした技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−181073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、VICSレベル3の渋滞情報(道路脇の矢印)と、走行軌跡情報(道路上のドット列)は、何れも道路リンク情報を使って表示される。そのため、例えば図5に示すように、高速道路と一般道路とが上下に重なった道路形状では、高速道路の道路リンクと一般道路の道路リンクとがほぼ重なるため、渋滞表示と走行軌跡表示とが重なってしまうことがある。渋滞表示と走行軌跡表示とが重なって表示されると非常に見にくくなり、ユーザが両者を認識しにくくなってしまうという問題があった。
【0007】
なお、走行軌跡非表示モードに切り替えて走行軌跡の表示を消すことにより、渋滞情報を見やすくすることが可能である。しかしながら、そのためにはユーザがリモコン等を操作して手動でモードを切り替えなければならない。一般に、ナビゲーション装置には多数の機能が搭載されており、階層構造のメニューにより所望の機能を選択するようになっている。したがって、走行軌跡表示モードから走行軌跡非表示モードに切り替えるためには、メニュー項目を選択する操作が数回必要で、煩雑である。
【0008】
また、特許文献1に記載の技術によれば、走行軌跡の表示/非表示を自動的に切り替えることができるが、車両が主要道路を走行中でないときは走行軌跡が表示されるので、渋滞表示と走行軌跡表示とが重なって見にくくなってしまうことがあるという問題は依然として残る。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、ユーザが面倒な操作をすることなく、VICSレベル3の渋滞表示と走行軌跡表示との視認性を向上させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、渋滞情報受信部により受信された渋滞情報が示している道路区間の位置と、走行軌跡記憶部に記憶された走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じである場合に、渋滞情報および走行軌跡情報の少なくとも一方の表示/非表示を制御するようにしている。例えば、渋滞情報と走行軌跡情報の何れか一方のみを表示し、他方は非表示とするように制御する。または、渋滞情報と走行軌跡情報とを所定時間ずつ交互に表示するように制御する。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、渋滞情報が示している道路区間の位置と走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じである場合には、渋滞情報と走行軌跡情報との両方が同時に表示されることはないので、渋滞情報と走行軌跡情報とが重なって表示されることがなくなり、渋滞情報および走行軌跡情報の視認性を向上させることができる。しかも、渋滞情報と走行軌跡情報の表示/非表示が自動的に切り替えられるので、ユーザは表示モードを切り替えるために煩雑なメニュー操作をしなくても済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるナビゲーション装置の構成例を示す図である。図1において、1はシステムコントローラであり、ナビゲーション装置の全体を制御する。このシステムコントローラ1は、マイクロコンピュータ等により構成され、地図やVICSレベル3の渋滞情報(道路脇の矢印)、走行軌跡情報(道路上のドット列)の描画処理などを行う。
【0013】
2はDVD(Digital Versatile Disk)などの地図記憶媒体であり、地図表示や経路探索などに必要な地図データが記憶されている。なお、ここでは地図データを記憶する記憶媒体としてDVD2を用いているが、CD−ROM、ハードディスク、半導体メモリなどの他の記憶媒体を用いても良い。3はDVD制御部であり、DVD2からの地図データの読み取りを制御する。
【0014】
DVD2に記憶されている地図データには、交差点や分岐など複数の道路が交わる点に対応するノードに関する情報と、道路上のあるノードとこれに隣接する他のノードとの間を接続する、道路や車線等に対応するリンクに関する情報とが含まれている。すなわち、地図データには、全ノードの詳細データを納めた接続ノードテーブルと、隣接する2つのノードによって特定されるリンクの詳細データを納めたリンクテーブルとが含まれている。
【0015】
接続ノードテーブルには、存在するノードのそれぞれ毎に、ノードの正規化経度・緯度、属性フラグ、交通規制の数、交通規制レコード等の情報が含まれている。正規化経度・緯度は、所定の区画を基準とした経度方向・緯度方向の相対位置を示す。属性フラグは、そのノードが交差点ノードであるか否かを示す交差点ノードフラグを含んでいる。交通規制の数は、そのノードに接続されているリンクに右折禁止やUターン禁止等の交通規制が存在する場合に、その交通規制の数を示す。交通規制レコードは、上述した交通規制が存在する場合にはその数に対応した交通規制の具体的な内容を示す。
【0016】
また、リンクテーブルには、リンクの距離、リンクのコスト、道路属性フラグ、道路種別フラグ等の情報が含まれている。リンクの距離は、当該リンクに対応した実際の道路の実距離を示す。リンクのコストは、例えば距離をもとに、道路幅、道路種別、右左折、交通規制などに応じた所定の定数を乗じた値であり、誘導経路として適正の程度を数値化したものである。道路属性フラグは、そのリンクに関する各種の属性を示すものである。例えば、そのリンクがVICSセンタで管理しているVICSリンク(道路交通情報を受信可能なリンク)と対応しているか否かを示す属性が含まれている。道路種別フラグは、そのリンクに対応した実際の道路が高速道路であるか一般道であるかといった種別を示す。
【0017】
4は操作部であり、例えばリモートコントローラ(リモコン)により構成される。この操作部4は、ユーザがシステムコントローラ1に対して各種の情報(例えば、経路誘導の目的地や経由地)を設定したり、各種の操作(例えば、画面スクロールや地図検索、拡大/縮小、最適経路探索など)を行ったりするための各種操作子(ボタンやジョイスティック等)を備えている。なお、この操作部4は、後述するディスプレイ装置10の画面上に設けたタッチパネル等によって構成しても良い。
【0018】
5はGPS受信機であり、複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナ6で受信して、3次元測位処理あるいは2次元測位処理を行って車両の絶対位置および方位を計算する(車両方位は、現時点における自車位置と1サンプリング時間ΔT前の自車位置とに基づいて計算する)。そして、これらの計算した車両の絶対位置および方位の情報を、測位時刻と共にシステムコントローラ1に出力する。
【0019】
7は自立航法センサであり、車両の回転角度を検出する振動ジャイロ等の相対方位センサ(角度センサ)7aと、所定走行距離毎に1個のパルスを出力する距離センサ7bとを備えている。自立航法センサ7は、これらの角度センサ7aおよび距離センサ7bによって車両の相対位置および方位を検出し、その情報をシステムコントローラ1に出力する。
【0020】
8はビーコン送受信機であり、主に高速道路上に設置された電波ビーコン送受信機との間で電波を介して双方向通信を行うとともに、主に一般道上に設置された光ビーコン送受信機との間で光を介して双方向通信を行うことにより、図示しないVICSセンタから送られてくるVICS情報を受信する。また、9はFM多重放送受信機であり、図示しないVICSセンタからFM放送電波を介して送られてくるVICS情報を受信する。ビーコン送受信機8およびFM多重放送受信機9により受信するVICS情報には、レベル3の渋滞情報が含まれている。ビーコン送受信機8およびFM多重放送受信機9により本発明の渋滞情報受信部が構成される。
【0021】
10はディスプレイ装置であり、システムコントローラ1から出力される画像データに基づいて、自車周辺の地図画像を車両位置マークや各種ランドマークと共に表示したり、この地図上に走行軌跡や誘導経路、VICS情報に基づく渋滞情報を表示したり、車両の位置が案内交差点近傍に近づいたときに交差点拡大図を表示したりする。
【0022】
次に、システムコントローラ1の詳細な構成について説明する。11は地図データメモリであり、DVD2から読み出された地図データを一時的に格納する。12は操作部4の操作情報を受け付けるインタフェースである。13はGPSデータ記憶部であり、GPS受信機5から出力される自車の絶対的な位置および方位のデータを順次格納する。14は車両位置・方位計算部であり、自立航法センサ7から出力される自車の相対的な位置および方位のデータに基づいて、絶対的な自車位置(推定車両位置)および車両方位を計算する。
【0023】
15はVICS情報記憶部であり、ビーコン送受信機8およびFM多重放送受信機9により受信されたVICS情報を格納する。16はマップマッチング処理部であり、地図データメモリ11に読み出されている地図データと、GPSデータ記憶部13に格納されたGPS受信機5による自車位置および車両方位のデータと、車両位置・方位計算部14により計算された自立航法センサ7に基づく自車位置および車両方位のデータとを用いて、車両走行距離毎にマップマッチング処理を行って、自車の走行位置を地図データの道路上に位置修正する。
【0024】
17は誘導経路発生部であり、地図データメモリ11に読み出されている地図データを用いて、設定された探索条件で現在地から目的地までの誘導経路を探索する。18は走行軌跡記憶部であり、GPSデータ記憶部13または車両位置・方位計算部14より出力されるデータに基づいて、所定時間毎あるいは所定走行距離毎の車両位置情報を車両の走行軌跡情報として記憶する。
【0025】
19は地図描画部であり、地図データメモリ11に格納された地図データと、マップマッチング処理部16によってマップマッチング処理された後の車両現在位置の情報とに基づいて、車両位置周辺の地図をディスプレイ装置10に表示させるのに必要な地図画像データを描画する。このとき地図描画部19は、自車位置を表す車両位置マークや各種ランドマークを発生し、これらの各種マークを地図と共に表示させるのに必要な地図画像データを生成する。
【0026】
20は誘導経路描画部であり、誘導経路発生部17により発生された誘導経路のデータに基づいて、誘導経路を描画する。具体的には、誘導経路を他の道路とは色を変えて太く描画する。また、車両が誘導経路上の案内交差点に一定距離内に近づいたときに、交差点拡大図を描画する。21は走行軌跡描画部であり、走行軌跡記憶部18に記憶された走行軌跡のデータに基づいて、各リンクに対応する道路上にドット(点)の列を描画する。すなわち、所定時間毎あるいは所定走行距離毎にプロットされた道路上の車両位置にドットの列を描画する。
【0027】
22は渋滞情報描画部であり、VICS情報記憶部15に記憶されたVICS情報に基づいて、各リンクに対応する道路脇に渋滞情報を色付き矢印によって描画する。具体的には、各リンクに対応する道路の脇に渋滞箇所(赤の矢印)や混雑箇所(オレンジの矢印)が明滅するように描画する。また、順調に車が流れている道路の脇には青の矢印を描画する。
【0028】
23は画像合成部であり、地図描画部19で描画された地図画像に対して、誘導経路描画部20で描画した誘導経路、走行軌跡描画部21で描画した走行軌跡、渋滞情報描画部22で描画したVICSレベル3の渋滞情報を重ね合わせてディスプレイ装置10に出力する。
【0029】
24は表示制御部であり、渋滞情報および走行軌跡情報の両方とも表示するモードが設定されているときに、画面表示される地図エリア内の渋滞情報が示している道路区間の位置と、画面表示される地図エリア内の走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであるか否かを判定し、ほぼ同じである場合に、走行軌跡情報を非表示とするように制御する(渋滞情報は表示する)。
【0030】
なお、画面表示されている地図エリアは、地図データメモリ11に記憶されている地図データと、マップマッチング処理部16により求められた車両の現在位置情報とに基づいて、車両現在位置を含む所定範囲のエリアとして特定することが可能である。車両現在位置を含む所定範囲の大きさは、操作部4の操作によって図示しないシステムメモリに設定された表示縮尺に応じて決まる。
【0031】
走行軌跡情報を非表示とするために、表示制御部24は、例えば、走行軌跡描画部21の動作を停止させる。このようにすることにより、従来は図5のようにVICSレベル3の渋滞情報に走行軌跡情報が重なって表示されていたのが、本実施形態では図4のように渋滞情報の表示のみとなる。よって、渋滞情報に走行軌跡情報が重なって表示されることがなくなるので、渋滞情報の視認性を向上させることができる。
【0032】
なお、上述のように走行軌跡描画部21の動作を停止させると、走行軌跡情報は一切、ディスプレイ装置10に表示されなくなる。これに対して、走行軌跡記憶部18に記憶されている走行軌跡情報の一部のみを非表示とするように制御することも可能である。例えば、車両の現在位置より後方のN個分(Nは自然数)のプロット点または走行軌跡記憶部18に直近M分以内(Mは正数)に記憶されたプロット点に対応する走行軌跡情報(ドット)のみを表示し、その他のプロット点に対応する走行軌跡情報を非表示とするようにしても良い。
【0033】
この場合、表示制御部24は、マップマッチング処理部16から車両の現在位置情報を取得する。そして、その車両の現在位置情報を走行軌跡描画部21に供給して、当該車両現在位置から後方に数えてN個分のプロット点に対応する走行軌跡情報のみを表示し、その他のプロット点に対応する走行軌跡情報を非表示とするように走行軌跡描画部21を制御する。
【0034】
または、走行軌跡記憶部18が各プロット点の車両位置情報を記憶する毎に、例えばGPS受信機5から出力されGPSデータ記憶部13に記憶された時刻情報を各プロット点の車両位置情報にタイムスタンプとして関連付けて記憶するようにする。そして、表示制御部24は、走行軌跡記憶部18に直近M分以内に記憶されたプロット点に対応する走行軌跡情報のみを表示するように走行軌跡描画部21を制御する。
【0035】
このようにすれば、少なくとも自車位置の後方に、ある程度走行軌跡が表示されるので、ユーザはどの方向から進行してきたのかを把握することができる。例えば、ある施設に立ち寄って再出発するときに、どの方向から来たのかが分かるので、どの方向に進めば良いか分かりやすく、便利である。また、自車位置より先方では、渋滞情報が示している道路区間と走行軌跡情報が示している道路区間とがほぼ重なっていれば走行軌跡情報が非表示とされるので、これから走行する道路区間の渋滞情報は見やすくなる。
【0036】
また、VICS情報記憶部15に記憶された渋滞情報が示している道路区間とほぼ同じ道路区間においてのみ、走行軌跡情報を非表示とすることも可能である。この場合、表示制御部24は、VICS情報記憶部15に記憶されている渋滞情報に基づいて、当該渋滞情報が表示されている道路区間を調べる。そして、その道路区間を示す情報を走行軌跡描画部21に供給して、その道路区間とほぼ同じ位置にある道路区間については走行軌跡を描画しないように走行軌跡描画部21を制御する。また、VICS情報記憶部15に記憶されている渋滞情報により渋滞または混雑が示されている道路区間とほぼ同じ位置の道路区間においてのみ、走行軌跡情報を非表示とするようにしても良い。
【0037】
このようにすれば、渋滞情報が示している道路区間の位置と走行軌跡情報が示している道路区間の位置とが表示地図エリア内の一部においてほぼ同じとなっていても、ほぼ同じでない区間については、走行軌跡情報が表示されることとなる。これにより、渋滞情報の視認性を良くしつつ、一部分ながら走行軌跡情報もユーザに提供することができる。このためユーザは、走行軌跡を辿りながら走行することができるとともに、渋滞情報も認識しやすくなる。
【0038】
次に、上記のように構成した本実施形態によるナビゲーション装置の動作例、すなわち、本実施形態による情報表示方法の処理手順を説明する。図2は、本実施形態によるナビゲーション装置の動作例を示すフローチャートである。なお、ここでは走行軌跡情報を表示するモードが設定されているものとする。
【0039】
図2において、走行軌跡記憶部18は、GPSデータ記憶部13または車両位置・方位計算部14より出力されるデータに基づいて、例えば所定時間毎に車両位置をプロットする。すなわち、走行軌跡記憶部18は、各プロット点の車両位置情報を走行軌跡情報として順次記憶する(ステップS1)。
【0040】
また、ビーコン送受信機8およびFM多重放送受信機9は、図示しないVICSセンタから送られてくるVICS情報を受信し、システムコントローラ1に出力する。システムコントローラ1は、このVICS情報をVICS情報記憶部15に格納する(ステップS2)。
【0041】
次に、表示制御部24は、走行軌跡記憶部18に記憶されている走行軌跡情報が示している道路区間の位置と、VICS情報記憶部15に記憶されている渋滞情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであるか否かを判定する(ステップS3)。ここでは、画面表示されている地図エリアに対象を絞って道路区間の一致の有無を判定する。
【0042】
そして、表示制御部24は、走行軌跡情報の道路区間の位置と渋滞情報の道路区間の位置とがほぼ同じであると判断した場合には、走行軌跡情報を非表示とするように走行軌跡描画部21を制御する(ステップS4)。ここでの走行軌跡情報の非表示の仕方は、上述のようないくつかのパターンが考えられ、何れのパターンを採用しても良い。一方、走行軌跡情報の道路区間の位置と渋滞情報の道路区間の位置とがほぼ同じでないと判断した場合には、表示制御部24は、走行軌跡情報も表示するように走行軌跡描画部21を制御し、走行軌跡情報および渋滞情報の双方が画面表示されるようにする(ステップS5)。
【0043】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、渋滞情報が示している道路区間の位置と、走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じである場合に、走行軌跡情報を非表示とするようにしている。これにより、渋滞情報と走行軌跡情報とが道路上で重なって表示されることがなくなり、渋滞情報の視認性を向上させることができる。しかも、走行軌跡情報の表示/非表示が自動的に切り替えられるので、ユーザは表示モードを切り替えるために煩雑なメニュー操作をしなくても済む。
【0044】
また、本実施形態では、画面表示されている地図エリアだけを対象として、渋滞情報が示している道路区間の位置と走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであるかどうかを判定し、ほぼ同じである場合に走行軌跡情報を非表示とするようにしている。このようにすれば、画面表示されていない地図エリアにおいて渋滞情報の道路区間と走行軌跡情報の道路区間とがほぼ重なっていても、画面表示されている地図エリア内で渋滞情報の道路区間と走行軌跡情報の道路区間とがほぼ重なっていなければ、走行軌跡情報も表示することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、走行軌跡情報の表示/非表示を制御する例について説明したが、これに限定されない。例えば、表示制御部24は、渋滞情報が示している道路区間の位置と、走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであるときに、走行軌跡情報を表示し、渋滞情報を非表示とするように渋滞情報描画部22を制御するようにしても良い。この場合における渋滞情報を非表示とするための制御パターンも、走行軌跡情報を非表示とするための制御パターンと同様に幾つか考えられる。
【0046】
例えば、渋滞情報を非表示とするために、表示制御部24が渋滞情報描画部22の動作を停止させるようにすることが可能である。また、渋滞情報の一部のみを非表示とするように制御することも可能である。例えば、走行軌跡記憶部18に記憶された走行軌跡情報が示している道路区間とほぼ同じ道路区間においてのみ、渋滞情報を非表示とする。
【0047】
また、表示制御部24は、VICS情報記憶部15に記憶されている渋滞情報が示している道路区間の位置と、走行軌跡記憶部18に記憶されている走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じである場合において、渋滞情報と走行軌跡情報とを所定時間ずつ交互に表示するように走行軌跡描画部21および渋滞情報描画部22を制御するようにしても良い。
【0048】
また、VICS情報記憶部15に記憶されている渋滞情報が示している道路区間の位置と、走行軌跡記憶部18に記憶されている走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じである場合に、渋滞情報を優先して表示するか、走行軌跡情報を優先して表示するか、渋滞情報と走行軌跡情報との双方を交互に表示するかの表示モードをあらかじめユーザが操作部4の操作を通じて設定しておくことができるようにしても良い。
【0049】
図3は、表示モードを設定できるように構成したナビゲーション装置の構成例を示す図である。なお、この図3において、図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図3に示すナビゲーション装置は、図1に示した構成に加えてモード設定部25を備えている。また、図1に示した表示制御部24の代わりに、これとは異なる機能の表示制御部26を備えている。
【0050】
モード設定部25は、ユーザが操作部4を操作することによって成されたモード指定の指示に従って、表示モードを設定する。表示モードには、渋滞情報を優先して表示する渋滞情報優先モードと、走行軌跡情報を優先して表示する走行軌跡優先モードと、渋滞情報および走行軌跡の双方を表示する双方優先モードとがある。ユーザが操作部4を操作して所望の表示モードを指定すると、モード設定部25は、指定された表示モードの情報をシステムメモリ(図示せず)に格納することにより表示モードを設定する。
【0051】
表示制御部26は、VICS情報記憶部15に記憶された渋滞情報と、走行軌跡記憶部18に記憶された走行軌跡情報のそれぞれの表示/非表示を制御する。すなわち、モード設定部25により渋滞情報優先モードが設定されている場合は、渋滞情報が示している道路区間の位置と走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じとなったときに、走行軌跡情報を非表示とするように走行軌跡描画部21を制御する。
【0052】
また、モード設定部25により走行軌跡優先モードが設定されている場合は、渋滞情報が示している道路区間の位置と走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じとなったときに、渋滞情報を非表示とするように渋滞情報描画部22を制御する。また、モード設定部25により双方優先モードが設定されている場合は、渋滞情報が示している道路区間の位置と走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じとなったときに、渋滞情報と走行軌跡情報とを所定時間ずつ交互に表示するように走行軌跡描画部21および渋滞情報描画部22を制御する。
【0053】
また、上記実施形態では、渋滞情報または走行規制情報の表示/非表示を制御するために、表示制御部24,26が走行軌跡描画部21および/または渋滞情報描画部22を制御する例について説明したが、これに限定されない。例えば、走行軌跡描画部21および渋滞情報描画部22は常に通常通り動作するようにし、それらの描画データを画像合成部23に出力するか否かを表示制御部24,26が制御するようにしても良い。
【0054】
また、表示制御部24,26は、走行軌跡情報の表示/非表示を以下のように制御するようにしても良い。すなわち、走行軌跡記憶部18が各プロット点の車両位置情報を記憶する毎に、例えばGPS受信機5から出力されGPSデータ記憶部13に記憶された時刻情報を各プロット点の車両位置情報にタイムスタンプとして関連付けて記憶するようにする。そして、表示制御部24,26は、走行軌跡記憶部18に記憶されている各プロット点のプロット時刻と渋滞情報の受信時刻とを各々比較して、渋滞情報の受信時刻よりプロット時刻が古い走行軌跡情報を非表示とするように走行軌跡描画部21を制御する。
【0055】
また、上記実施形態では、渋滞情報が示している道路区間の位置と、走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じである場合に、渋滞情報および走行軌跡情報の少なくとも一方の表示/非表示を制御する例について説明したが、これに限定されない。例えば、渋滞情報が示している道路区間の位置と、走行軌跡情報が示している道路区間の位置とが同じである場合に、渋滞情報および走行軌跡情報の少なくとも一方の表示/非表示を制御するようにしても良い。
【0056】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態によるナビゲーション装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態によるナビゲーション装置の動作例を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態によるナビゲーション装置の他の構成例を示す図である。
【図4】本実施形態による地図画面の表示例を示す図である。
【図5】従来の地図画面の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
8 ビーコン送受信機
9 FM多重放送受信機
15 VICS情報記憶部
18 走行軌跡記憶部
21 走行軌跡描画部
22 渋滞情報描画部
24,26 表示制御部
25 モード設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から送られてくる渋滞情報を受信する渋滞情報受信部と、
車両の走行軌跡情報を記憶する走行軌跡記憶部と、
上記渋滞情報受信部により受信される上記渋滞情報および上記走行軌跡記憶部に記憶される上記走行軌跡情報の両方とも表示するモードが設定されているときに、画面表示される地図エリア内の上記渋滞情報が示している道路区間の位置と、上記画面表示される地図エリア内の上記走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであるか否かを判定し、ほぼ同じである場合に、上記渋滞情報および上記走行軌跡情報の少なくとも一方の表示/非表示を制御する表示制御部とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
上記表示制御部は、上記渋滞情報を表示し、上記走行軌跡情報を非表示とするように制御することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
上記表示制御部は、上記渋滞情報が示している道路区間とほぼ同じ位置の道路区間においてのみ、上記走行軌跡情報を非表示とするように制御することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
上記表示制御部は、上記渋滞情報により渋滞または混雑が示されている道路区間とほぼ同じ位置の道路区間においてのみ、上記走行軌跡情報を非表示とするように制御することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
上記表示制御部は、上記車両の現在位置より後方のN個分(Nは自然数)のプロット点または上記走行軌跡記憶部に直近M分以内(Mは正数)に記憶されたプロット点に対応する走行軌跡情報のみを表示し、その他のプロット点に対応する走行軌跡情報を非表示とするように制御することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
上記表示制御部は、上記画面表示される地図エリア内の上記渋滞情報が示している道路区間の位置と、上記画面表示される地図エリア内の上記走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであるときに、上記走行軌跡情報を表示し、上記渋滞情報を非表示とするように制御することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
上記表示制御部は、上記画面表示される地図エリア内の上記渋滞情報が示している道路区間の位置と、上記画面表示される地図エリア内の上記走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであるときに、上記渋滞情報と上記走行軌跡情報とを所定時間ずつ交互に表示するように制御することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
外部から送られてくる渋滞情報を渋滞情報受信部にて受信する第1のステップと、
上記渋滞情報受信部により受信される上記渋滞情報および走行軌跡記憶部に記憶される走行軌跡情報の両方とも表示するモードが設定されているときに、画面表示される地図エリア内の上記渋滞情報が示している道路区間の位置と、上記画面表示される地図エリア内の上記走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであるか否かを判定する第2のステップと、
上記画面表示される地図エリア内の上記渋滞情報が示している道路区間の位置と、上記画面表示される地図エリア内の上記走行軌跡情報が示している道路区間の位置とがほぼ同じであると判断した場合に、上記渋滞情報および上記走行軌跡情報の少なくとも一方の表示/非表示を表示制御部にて制御する第3のステップとを有することを特徴とする情報表示方法。
【請求項9】
上記第3のステップでは、上記表示制御部が、上記渋滞情報を表示し、上記走行軌跡情報を非表示とするように制御することを特徴とする請求項7に記載の情報表示方法。
【請求項10】
上記第3のステップでは、上記表示制御部が、上記走行軌跡情報を表示し、上記渋滞情報を非表示とするように制御することを特徴とする請求項7に記載の情報表示方法。
【請求項11】
上記第3のステップでは、上記表示制御部が、上記渋滞情報と上記走行軌跡情報とを所定時間ずつ交互に表示するように制御することを特徴とする請求項7に記載の情報表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−64468(P2008−64468A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239368(P2006−239368)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】