説明

ナビゲーション装置における逆走検出方法

【課題】新たに専用の逆走検出データを整備することなく、既存の地図データベースの範囲内で逆走検出を実現する。
【解決手段】地図データ入力部1から入力された地図データベースに基づいて、表示装置6に描かれた道路上に、位置検出器8、9、10、及び11で検出され制御回路4のマップマッチング処理にて演算された自車の位置を表示するナビゲーション装置において、自車位置と周辺リンクの重なり判定をステップS32で行い、重ならない場合は、マップマッチング処理を終了し、重なる場合は、直ちにリンク上に前記自車の位置を合わせこむマップマッチング処理を行ってから、このリンクの情報を活用し、該リンクの向きと自車の走行方向との一致不一致を判定する。そして、不一致の場合は、逆走と決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が本来走行すべき方向と逆方向に走行した逆走検出を行う場合に、ナビゲーション装置において既存機能として標準的に備えられている地図データベースを利用し、専用データを新たに整備することなく効果的な逆走検出を実現することが出来るナビゲーション装置における逆走検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の複雑化や運転者の高齢化に伴い逆走事故が増加する傾向にあり、このような逆走事故を防止したいという社会的要請がある。ところが、現今では、逆走事故が多発している高速道路の出入り口やサービスエリア、あるいはパーキングエリアの出入り口付近に、指示矢印や進入禁止などの標識あるいは看板を掲げることで逆走に対する注意喚起を行うことが一般的である。
【0003】
また、特許文献1で、ナビゲーション装置を利用した逆走防止システムが提案されている。この特許文献1は、経路案内時あるいは経路非案内時に係らず、逆走予測及び警告機能を搭載することによって、道路上への装置の設置を必要とせずに、運転者への正確な逆走警告を行うという目的の基に次のような構成を採用している。
【0004】
即ち、車載用のナビゲーション装置、自動車専用道路上の逆走禁止道路情報(特定地点において、ある方向から進入してきたときは逆走と決定し得る専用データ)を持ったデータベースを搭載している。
【0005】
これにより、逆走禁止道路の順方向とは逆方向から接近あるいは走行した場合、ナビゲーションの案内として運転者への音声等の警告を発することで、逆走を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−139531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、実施されている高速道路及びサービスエリア、またはパーキングエリアの出入口付近に、指示矢印や進入禁止の標識あるいは看板による逆走警告では、充分な効果は得られていない。
【0008】
そして、前述の通り、逆走事故が多発することは、社会的問題になっており、一旦事故が発生すれば、重大事故に繋がる可能性が高いため、実効性があるナビゲーション装置における逆走検出方法が社会全体から強く求められている。特に、車両メーカ及びナビゲーション装置のメーカから、自社製品の安心及び安全への貢献を謳うための逆走検出方法が強く求められている。
【0009】
ところが、特許文献1では、専用のデータを用いるという構成のために、上記専用データの整備が進まない現状では、充分な効果が発揮できていない。換言すれば、特許文献1に記載されているナビゲーションを利用した逆走警告機能を実現する場合、日本全国あるいはナビゲーション地図データが整備されている世界各国に対して、新たに逆走検出専用のデータを整備する必要がある。このことは費用対効果の観点からも現実的ではない。
【0010】
つまり、充分な効果が得られる逆走検出を実現するためには、ナビゲーション装置において、新たに専用データを整備することなく、既存の地図データベースの範囲内で実現することが重要な課題になる。
【0011】
更に、従来のマップマッチング処理(以下、単にMM処理とも言う)は、逆走検出には関係していない。従来のナビゲーション装置では、位置精度が悪かったので、車両の位置が、リンクの位置と合致するという第1条件のみでなく、車両の進行方向とリンクの向きが一致したことを第2条件として、第1条件と第2条件が両方満たされた場合に、その車両が、その道路上に存在すると認定しているのである。
【0012】
一方、近年のナビゲーション装置における位置検出精度は、年々高精度化している。これは、位置を確定するロジックの進化、及びチューニングの進化、あるいは道路の勾配も検出する3Dジャイロセンサ(1秒間に何度動いたかという角速度を検出するジャイロセンサと、道路のアップダウンの上下角度(傾斜角)を測定する3Dセンサを一体化した自車位置測位ユニット)のようなハードウエアの進化によるところが大きい。
【0013】
例えば、屋内立体駐車場の内部では、車両がGPS電波を受信できないため、ぐるぐる回りながら階を上り下りするうちに自車位置が把握できなくなり、駐車場を出た時に誤った自車位置を表示してしまうことがある。このような場合でも、3Dジャイロセンサを活用し、傾斜角を求めて適正な旋回角を算出し、建物内部でも自車位置の精度が向上し、実際の出口と、ナビゲーション装置の画面上での出口をマッチングさせることが出来る。
【0014】
また、GPS電波の受信状態は、ビルや高架、トンネル、及び水面など周辺の環境によって刻一刻と変化する。このような変化に影響されにくいように測位チャンネルを12chにして、仰角の低いGPS衛星からの電波も受信可能にしている。また、GPSフィルタの採用により、精度の高いデータを選別することで、高精度な自車位置表示を実現している。
【0015】
本発明は、このような近年の技術動向、及び社会的要請に鑑みて、ナビゲーション装置において、新たに専用データを整備することなく、既存の地図データベースの範囲内で逆走検出を実現するナビゲーション装置における逆走検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、少なくとも地図データ入力部(1)、位置検出器(8,9,10、及び11)、表示装置(6)、及び制御回路(4)を備え、地図データ入力部(1)から入力された地図データベースに基づいて表示装置(6)に描かれた道路上に、位置検出器(8,9,10、及び11)で検出され制御回路(4)のマップマッチング処理にて確定された自車位置を表示するナビゲーション装置において、マップマッチング処理で用いる地図データベース内のリンクの情報を活用し、該リンクの向きと自車の走行方向との一致不一致を判定して、不一致の場合は、逆走と決定したことを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、通常のナビゲーション装置において整備されているリンクの情報を活用して逆走検出が出来るため、新たな逆走検出用の専用データを用いることなく、逆走検出が可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、マップマッチング処理の中で、自車進行方向とリンク向きとの方向一致を判定し、不一致の場合は逆走と判定することを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、リンクの向きの情報は、マップマッチング処理や経路案内等の基本機能のための既存の地図データベース内に存在する。よってこの情報を活用し、新たな専用データを必要としないで、マップマッチング処理の中で逆走検出を行うことが出来る。
【0020】
請求項3に記載の発明では、マップマッチング処理にて自車位置と周辺リンクの重なり判定を行い、重なる場合は、その重なるリンク上に自車位置を合わせこむ処理を行ってから、重なるリンクの向きと自車の走行方向との一致不一致を判定して、不一致の場合は、逆走と決定することを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、リンク上に自車位置を合わせこむマップマッチング処理が完了してから、そのリンクでの逆走検出が可能になるため、今走行している道路での逆走を直ちに検出できる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、マップマッチング処理は、自車位置と周辺リンクの重なり判定を行い、重ならない場合は、マップマッチング処理を終了し、重なる場合は、この重なりだけで直ちにリンク上に自車位置を合わせこむ処理を行ってマップマッチング処理を完了すること特徴としている。
【0023】
この発明によれば、自車位置と周辺リンクの重なりだけで、リンク上に自車位置を合わせこむマップマッチング処理が完了するから、マップマッチング処理の時間を短縮できる。
【0024】
請求項5に記載の発明では、地図データベース内のリンクの向きの情報は、マップマッチング処理のために、地図データベースの情報を入力するための地図データ入力部(1)から入力されたものであることを特徴としている。
【0025】
この発明によれば、リンクの向きの情報は、マップマッチング処理のために、地図データ入力部(1)から入力されたものであるから、既存のデータベースを活用し、新たな専用データを必要としない。
【0026】
請求項6に記載の発明では、表示装置(6)によって表示された地図上の各道路表示は、交差、分岐及び合流する複数のノードにて分割され、それぞれのノード間は、リンクとして規定され、各リンクを接続することにより、道路情報が構成され、リンクは、地図データベース内の道路データにノードと共に記述されており、このリンクのデータの中に走行すべき方向が記述されていることを特徴としている。
【0027】
この発明によれば、通常のナビゲーション装置で活用されているリンクの情報で逆走検出が出来る。
【0028】
請求項7に記載の発明では、逆走と決定する場合には、逆走フラグを立てることを特徴としている。
【0029】
この発明によれば、逆走フラグを利用して、他のプログラムで容易に逆走警告や逆走通報を行うことが出来る。
【0030】
請求項8に記載の発明では、地図データベースの中のリンクには該リンクの属性が定義され、該リンクの属性の中に特定箇所の情報が入っており、該特定箇所が定義されたリンクのみで逆走検出を行うことを特徴としている。
【0031】
この発明によれば、逆走が発生し易い予め定めた特定箇所のみで逆走検出が行えるから、誤った逆走検出を行う確立が減少する。
【0032】
請求項9に記載の発明では、地図データベースの中のリンクの属性の中に特定箇所の情報が入っていない非特定箇所では、逆走検出後の逆走警告を運転者に行わないことを特徴としている。
【0033】
この発明によれば、逆走が発生し易い予め定めた特定箇所のみで逆走警告が行えるから、誤った逆走警告を行う確立が減少する。
【0034】
請求項10に記載の発明では、リンクの属性には、IC、SA、及びPAのうちのいずれかがあり、ICとは、高速道路等の料金所から本線までの間の区間、SAとは、サービスエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間、更に、PAとは、パーキングエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間をそれぞれ示す情報から成ることを特徴としている。
【0035】
この発明によれば、逆走が起こり易い上記区間での道路上での逆走を検出できる。
【0036】
請求項11に記載の発明では、リンクの属性が、IC、SA、及びPA以外の場合は、特定箇所以外であると判定され、逆走の決定は行わないことを特徴としている。
【0037】
この発明によれば、危険な逆走が発生し難い区間での、不要な逆走検出を防止できる。
【0038】
請求項12に記載の発明では、ナビゲーション装置は送受信機(3)を備え、逆走と決定された後に、制御回路(4)に接続された送受信機(3)を介して基地局に自車位置を通報して、この逆走車両の存在及び位置を周辺の車両に通報し、周辺の車両のナビゲーション装置内で、他車の逆走を検出することを特徴としている。
【0039】
この発明によれば、逆走が発生しても、周辺の車両が、車両速度を低下させる等の処置が取れるため、重大事故が軽減する。
【0040】
請求項13に記載の発明では、位置検出器(8,9,10、及び11)内のジャイロセンサには、3Dジャイロセンサが採用されていることを特徴としている。
【0041】
この発明によれば、3Dジャイロセンサが採用されていることにより、自車位置を検出する精度が高く、マップマッチング処理にて自車位置と周辺リンクの重なり判定を行い、重なる場合は、その重なるリンク上に自車位置を合わせこむ処理を行ってから、重なるリンクの向きと自車の走行方向との一致不一致を判定して、不一致の場合は、逆走と決定する処理を行って、従来のマップマッチング処理を簡素化して逆走検出を行うようにしても、正確なマップマッチング処理の中で逆走検出も行える。
【0042】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態におけるナビゲーション装置の全体を示す全体構成図である。
【図2】比較例としての従来のMM処理のフローチャートである。
【図3】上記第1実施形態におけるMM処理兼逆走検出処理のフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態におけるMM処理兼逆走検出処理のフローチャートである。
【図5】上記第2実施形態における特定箇所の説明チャートである
【図6】上記第2実施形態においてリンクの属性がICの場合の一例を説明するインターチェンジの平面図である。
【図7】上記第2実施形態においてリンクの属性がSAの場合の一例を説明するサービスエリアの鳥瞰図である。
【図8】本発明のその他の実施形態においてリンクの属性がICの場合の周辺車両での逆走表示の一例を説明するインターチェンジの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1及び図3を用いて詳細に説明する。図1は、ナビゲーション装置の全体を示す全体構成図である。図1において、1は地図データ入力部、2は、ナビゲーション装置及び車両制御のための種々の操作スイッチから成る操作スイッチ群であり、例えば方向指示器を作動させるためのスイッチも含まれる。
【0045】
3はVICS等のインフラデータ受信機である。そして、これらの機器が接続された制御回路4、制御回路4に接続された外部メモリ5、表示装置6、及び音声入力のための音声入力マイク7を備えている。
【0046】
なお、制御回路4は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/О及びこれらを接続するバスラインが備えられてルート設定手段等を構成する。
【0047】
位置検出器は、いずれも周知の、地磁気に基づいて方位を検出する地磁気センサ8、角速度を検出して方位を算出する3Dジャイロセンサ9、走行距離を検出して距離データを取得する距離センサ10、及びGPS(Global Positioning System)衛星からのGPS電波を、アンテナで受信して位置データを取得するGPS受信機11を有している。
【0048】
GPS受信機11、地磁気センサ8、3Dジャイロセンサ9、及び距離センサ10が取得したデータを相互補完することによって、車両の現在位置の検出と、正確な走行距離の計測を行う。
【0049】
なお、更に、ステアリングホイールの回転方向及び回転角度を検出するために、ステアリングホイールとステアリングコラムの間に挟みこんで使用するステアリングセンサ等を用いてもよい。
【0050】
なお、位置検出機能の要求精度によっては、上述したセンサ等8、9、10、及び11のうちの一部で構成しても良い。そして、車両の位置が特定されると、その位置を追跡すること、つまり、位置変化を見ることで車両の進行方向が特定できる。
【0051】
地図データ入力部1は、位置検出および表示のための地図データベースを入力するための装置である。この地図データベースには、道路データ、背景データ、及び属性データ等が含まれる。
【0052】
道路データには、相互に関係する形状情報、及び位相情報が含まれている。位相情報は、ノードと、リンクを記述するものであって、推奨ルートの設定などに用いられる。ここで、リンクとノードについて説明する。地図上の各道路表示は、交差、分岐及び合流する点等の、複数のノードにて分割され、それぞれのノード間は、リンクとして規定されている。そして、各リンクを接続することにより、道路情報が構成される。
【0053】
リンクのデータは、走行すべき方向(リンクの向き)、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端と終端を示す点、リンクの属性(道路名称、道路種別、道路幅員、及び車線数等)から構成されている。
【0054】
他方、ノードとは、地図上の各道路表示が交差、分岐、及び合流する点を表すものであ
る。ノード毎に、固有の番号を付したノードID,ノード座標,ノード名称,ノードに接
続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、分岐場所、及び合流場所
等の各データが付与されている。
【0055】
これらの情報の媒体としては、データ量の観点からCD−ROMまたはDVD−ROMを用いるのが一般的であるが、メモリカード、及びハードディスク等を用いてもよい。
【0056】
表示装置6は、LCD等のカラー表示装置から成り、表示装置6の画面には、位置検出器8、9、10、及び11からの情報により確定された車両現在位置マークと、地図データ入力部1より入力された地図データベースから作成された地図と、更に、地図上において案内のために表示する誘導経路等の付加データを重ねて表示することが出来る。
【0057】
また、このナビゲーション装置は、操作スイッチ群2により目的地の位置を入力すると、現在地からその目的地までの最適な経路を自動的に選択して誘導経路を形成して表示する所謂、経路案内機能を備えている。このような自動的に最適な経路を設定する手法は、例えば、周知のダイクストラ(Dijkstra)法によるコスト計算によってなされる。
【0058】
そして、上記コスト計算は、リンク長、道路種別、及び道路幅員等を考慮した、リンク毎に付されるコスト値を用いて、最小のコストで目的地に到達する経路を計算するものである。
【0059】
操作スイッチ群2は、例えば、表示装置6と一体となった画面上のタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチが用いられ、各種入力に使用される。また、音声入力マイク7は、ユーザの発話を電気信号に変換し、制御回路4にて上記電気信号が分析され、発話内容が解析されている。
【0060】
図1において、操作スイッチ群2から入力された目的地により、地図データ入力部1の地図データベースを用いて制御回路4で経路を計算する。制御回路4で計算された経路と、位置検出器8、9、10、及び11と地図データ入力部1よりの情報により、制御回路4内にて表示装置6が表示する地図の向きを演算して、表示装置6画面内の地図上に自車位置を表示している。
【0061】
上記のように、この種のナビゲーション装置で、効果の得られる逆走検出機能を実現するためには、逆走検出専用データを整備するような方法ではなく、既存の地図データベースの範囲内で、実現する方法が必要である。
【0062】
このために、自車の現在地を地図データベースに格納されている道路情報(リンク)上に合わせこむために実施しているマップマッチング処理(MM処理)を逆走検出に利用するのが、この第1実施形態である。
【0063】
より具体的には、従来のMM処理では、位置精度向上の一貫として自車進行方向とリンクの向きとの方向一致を判定しているが、この判定結果の不一致の場合を、逆走状態として扱うことで逆走検出を実現しているのである。
【0064】
以下、この処理の概要について、先ず説明する。先ずMM処理にて自車進行方向とリンク向きとの方向一致を判定し、不一致の場合は逆走と判定する。そして、MM処理で実施している「自車進行方向とリンク向きとの方向一致判定」を全道路に対して適用する。
【0065】
このような方法により、新たに専用データを整備する必要が無く、既存の地図データベースのみで逆走検出を実現することが出来る。
(比較例のフローチャート)
先ず、本件実施形態のフローチャートを説明する前に、従来の一般的なMM処理のフローチャートを比較例として図2で説明する。MM処理のフローが開始されると、ステップS21にて前処理として、自車位置の特定及び自車位置周辺のリンクの抽出などを行う。つまり、前処理とは、自車がどこにいるのか、自車の周りにどのような道路(リンク)があるのかを特定する処理である。
【0066】
そして、ステップS22で、自車位置と周辺リンクとの重なりを判定する。自車位置と周辺リンクが重なる場合は、ステップS23で、上記リンクの向きと自車の進行方向の一致を判定する。
【0067】
そして、ステップS22で自車位置と周辺リンクが重ならない場合、及び重なっても、ステップS23で方向不一致の場合は、どこの道路にも自車が乗っていない(MM不成立)と判断して、ステップS24で後処理(例えば、フラグを立てる等)を行い終了する。なお、MM不成立では、以後の経路案内等のナビゲーション機能ができなくなる。
【0068】
また、リンクの向きと自車の進行方向が一致する場合は、ステップS25にて、自車位置をリンク上に合わせこむ処理を行う。
(第1実施形態のフローチャート)
このような比較例に対して、本発明の第1実施形態では、リンクの向きと自車進行方向との一致までをMM処理成立の条件とする必要性は、最近の位置精度向上に鑑みて不要であるとの考え方をベースとして、次のようなMM処理を行い、逆走検出を可能としている。
【0069】
図3は、第1実施形態のMM処理兼逆走検出処理のフローチャートである。そして、上述したように、リンクのデータは、走行すべき方向(リンクの向き)、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端と終端を示す点、リンクの属性(道路名称、道路種別、道路幅員、及び車線数等)から構成されている。
【0070】
図3において、先ず、MM処理が始まると、ステップS31で、上述と同様の前処理を行い、ステップS32にて、自車位置と周辺の上記リンクとの重なり判定を行う。そして、重ならない場合は、そのままステップS33で後処理を行い終了する。重なる場合は、ステップS34で、直ちに自車の位置を上記リンク上に合わせこむ処理を行う。
【0071】
即ち、自車位置と周辺リンクの重なり判定のみでMM処理を完了している。なお、このようなMM処理のプログラムは、経路案内等のナビゲーション機能のプログラムが動いているときにも、並行して常に動いている。
【0072】
このようにして、自車位置をリンク上に合わせこんだ後、ステップS35にて、上記リンクの向きと自車進行方向の一致及び不一致を判定する。
【0073】
そして、不一致の場合に、ステップS36で逆走と決定する。具体的には、逆走状態を表示や音声による警告、あるいは、警報器による警告を行う等のために逆走フラグを立てる。一方、リンクの向きと、自車進行方向の一致を判定して一致する場合は、そのままステップS33に進んで後処理を行って終了する。
【0074】
以上のように、この第1実施形態では、自車位置と周辺リンクの重なり判定を行った結果、重なるということは、即、自車が道路上に乗って走行していると認定した。換言すれば、重なっていれば無条件で自車位置をリンク上に合わせこんだ。
【0075】
つまり、重なる=正規の方向でその道路を走行しているか、その道路を逆走しているかのいずれかであり、少なくとも、その道路上に、車両が乗っていると認定した。そして、その後で、リンクの向きと自車進行方向の一致を判定した。
【0076】
そして、不一致の場合は、逆走と決定したのである。また、逆走している場合には、逆走フラグを立てた。そしてMM処理とは別のプログラムが、上記が逆走フラグを見て、運転者に表示や警報等を行うものである。
【0077】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。
【0078】
上記第1実施形態は、ナビゲーション装置における逆走判定に、既存機能として標準的に備えているマップマッチング機能を利用することで、専用データを新たに整備することなく、全ての道路で逆走検出を実現したが、この第2実施形態は、特定箇所のみで逆走検出を行い、非特定箇所では従来と同様のMM処理を行うものである。
【0079】
つまり、自車進行方向とリンクの向きとの方向が不一致の場合は、更に、既存の地図データベースの中に整備されているリンクの属性を判定して、逆走しているかどうかを決定する。リンクには一本一本にリンクの属性が定義され、このリンクの属性の中にSA、PA、及びICの特定箇所の情報が入っている。このうちICとは、高速道路等の料金所から本線までの間の区間である。SAとは、サービスエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間である。更に、PAとは、パーキングエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間である。
【0080】
図4は、第2実施形態におけるMM処理兼逆走検出処理のフローチャートである。図4において、MM処理が開始されると、ステップS41で自車位置の特定、及び自車位置周辺のリンクの抽出などの前処理を行う。そして、ステップS42で自車位置と周辺リンクの重なりを判定する。重ならない場合は、ステップS43で後処理を行いそのまま終了する。
【0081】
上記ステップS42で、自車位置と周辺リンクが重なる場合は、ステップS44でリンクの向きと自車進行方向の一致を判定する。そして、リンクの向きと自車進行方向が一致する場合は、ステップS45にて、自車位置をリンク上に合わせこむMM処理を行う。
【0082】
また、リンクの向きと自車進行方向とが一致しない場合は、直ちに逆走と決定するのでなく、ステップS46において、リンクの向きの判定に使用したリンクの属性の判定を行う。
【0083】
ここで、リンクの属性が、上記ICまたはSAもしくはPAである等の予め定めた特定箇所を示している場合には、ステップS47で自車位置をリンク上に合わせこむ。そして、ステップS48にて逆走と決定し、例えば逆走フラグを立てる。
【0084】
また、ステップS46にて、上記特定箇所でない場合は、逆走決定を行うことなくリンクの向きと自車進行方向が不一致の場合であっても、ステップS43で、そのまま後処理を行って終了する。
【0085】
このように、この第2実施形態では、自車進行方向とリンク向きとの方向一致を判定し、不一致の場合は、更に、リンクの属性から特定箇所を見た上で逆走しているかどうか判定している。このリンクの属性とは、その道路の特定箇所を表す情報であれば、地図データベースのどこに存在していても良い。
【0086】
図5は、第2実施形態における特定箇所の説明チャートである。前述のように、リンクの属性には、IC、SA、及びPAがあり、このICとは、高速道路等の料金所から本線までの間の区間である。SAとは、サービスエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間である。更に、PAとは、パーキングエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間である。
【0087】
そして、図5のリンクの属性がICの場合のイメージが、図6に示されている。つまり、図6は、リンクの属性がICの場合の一例を説明するインターチェンジの平面図である。図6において、黒く塗られた61及び62は、中央分離帯である。
【0088】
矢印63及び64は、通常走行の車両の進行方向を示している。一方、屈曲した矢印65は、逆走した車両の軌跡を示している。即ち、この逆走車両は、前のインターチェンジで降りるのを忘れたため、元の場所に戻ろうとして、このインターチェンジにおいて逆走を起こした例である。
【0089】
次に、リンクの属性がSA/PAの場合は、サービスエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間またはパーキングエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間を示している。これに関連するイメージを図7に示している。つまり、図7は、リンクの属性がSAの場合の一例を説明するサービスエリアの鳥瞰図である。
【0090】
この図7において、71は中央分離線、72はサービスエリア、73は店舗、74は駐車場である。矢印76及び77は、このサービスエリア内外の通常走行の車両の軌跡を示している。このようなサービスエリアにおいて逆走を発生するケースとしては、対向車線を横断してサービスエリアに進入する矢印78のケース、あるいは、サービスエリアで休憩した後に、出口を間違えて逆走する矢印79のケース等が考えられる。
【0091】
次に、リンクの属性が、IC、SA、及びPA以外の場合は、特定箇所以外であると判定され、逆走の決定はなされない。この第2実施形態においても、新たに専用データを整備する必要は無く、既存の地図データのみで逆走警告を実現可能である。
【0092】
なお、図4に示す第2実施形態のMM処理自体は、従来と同様である。よって、位置精度が、比較的悪い場合でも、自車位置をリンク上に合わせこむMM処理が出来る。また、逆走が比較的発生し易い特定箇所のみで逆走を決定することが出来る。
【0093】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の第1実施形態では、逆走と決定して逆走フラグを立てることで、逆走警告を行ったが、逆走と決定しても警告を直ぐには行わず、その道路のリンクの属性を確認して、その道路が予め定めた特定箇所(=逆走事故が発生する可能性が高い地点)である場合のみ、逆走警告するようにしても良い。これによれば、非特定箇所での誤った逆走警告の発生が減少する。
【0094】
また例えば、上述の第1実施形態では、逆走と決定して逆走フラグを立てたが、その道路のリンクの属性を確認して、その道路が予め定めた特定箇所(=逆走事故が発生する可能性が高い地点)以外の非特定箇所である場合は、逆走検出自体を行わないようにしても良い。これによれば、非特定箇所での誤った逆走検出の発生が減少する。
【0095】
また、第1及び第2実施携帯において逆走と決定された後に、図1の送受信機3を介して例えばVICSセンター等の基地局に自車の位置を通報して、この逆走車両の存在及び位置を周辺車両に通報してもよい。
【0096】
図8は、この実施形態において、リンクの属性がICの場合の、上記周辺車両での逆走表示の一例を説明するインターチェンジの平面図である。そして、この通報を受けた車両のナビゲーション装置の表示装置には、自車の位置80を示すと共に、自車前方道路に逆走車両があることを図8のような警告マーク81の点滅で表示すると共に、音声と点滅する矢印表示82で逆走車両が存在することを警告しても良い。
【0097】
なお、位置検出精度が高いことが望ましいが、ジャイロセンサは、3Dジャイロセンサでなくてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 地図データ入力部
2 操作スイッチ群
4 制御回路
6 表示装置
8、9、10、及び11 位置検出器
IC 高速道路等の料金所から本線までの間の区間
SA サービスエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間
PA パーキングエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間
72 サービスエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも地図データ入力部(1)、位置検出器(8,9,10、及び11)、表示装置(6)、及び制御回路(4)を備え、前記地図データ入力部(1)から入力された地図データベースに基づいて前記表示装置(6)に描かれた道路上に、前記位置検出器(8,9,10、及び11)で検出され前記制御回路(4)のマップマッチング処理にて確定された自車位置を表示するナビゲーション装置において、
前記マップマッチング処理で用いる前記地図データベース内のリンクの情報を活用し、該リンクの向きと前記自車の走行方向との一致不一致を判定して、不一致の場合は、逆走と決定したことを特徴とするナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項2】
前記マップマッチング処理の中で、自車進行方向とリンク向きとの方向一致を判定し、不一致の場合は逆走と判定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項3】
前記マップマッチング処理にて前記自車位置と周辺リンクの重なり判定を行い、重なる場合は、その重なるリンク上に前記自車位置を合わせこむ処理を行ってから、前記重なるリンクの向きと自車の走行方向との一致不一致を判定して、不一致の場合は、逆走と決定することを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項4】
前記マップマッチング処理は、自車位置と周辺リンクの重なり判定を行い、重ならない場合は、前記マップマッチング処理を終了し、重なる場合は、この重なりだけで直ちにリンク上に前記自車位置を合わせこむ処理を行って前記マップマッチング処理を完了すること特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項5】
前記地図データベース内の前記リンクの向きの情報は、マップマッチング処理のために、前記地図データベースの情報を入力するための地図データ入力部(1)から入力されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項6】
前記表示装置(6)によって表示された地図上の各道路表示は、交差、分岐及び合流する複数のノードにて分割され、それぞれのノード間は、前記リンクとして規定され、前記各リンクを接続することにより、道路情報が構成され、前記リンクは、前記地図データベース内の道路データにノードと共に記述されており、このリンクのデータの中に走行すべき方向が記述されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項7】
前記逆走と決定する場合には、逆走フラグを立てることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項8】
前記地図データベースの中の前記リンクには該リンクの属性が定義され、該リンクの属性の中に特定箇所の情報が入っており、該特定箇所が定義された前記リンクのみで逆走検出を行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項9】
前記地図データベースの中の前記リンクの属性の中に前記特定箇所の情報が入っていない非特定箇所では、逆走検出後の逆走警告を運転者に行わないことを特徴とする請求項8に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項10】
前記リンクの属性には、IC、SA、及びPAのうちのいずれかがあり、前記ICとは、高速道路等の料金所から本線までの間の区間、前記SAとは、サービスエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間、更に、前記PAとは、パーキングエリアと高速道路本線とを繋ぐ区間をそれぞれ示す情報から成ることを特徴とする請求項8または9に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項11】
前記リンクの属性が、前記IC、前記SA、及び前記PA以外の場合は、前記特定箇所以外であると判定され、前記逆走の決定は行わないことを特徴とする請求項10に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項12】
前記ナビゲーション装置は送受信機(3)を備え、前記逆走と決定された後に、制御回路(4)に接続された前記送受信機(3)を介して基地局に前記自車位置を通報して、この逆走車両の存在及び位置を周辺の車両に通報し、周辺の車両のナビゲーション装置内で、他車の逆走を検出することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。
【請求項13】
前記位置検出器(8,9,10、及び11)内のジャイロセンサには、3Dジャイロセンサが採用されていることを特徴とする請求項3または4に記載のナビゲーション装置における逆走検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−210435(P2010−210435A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57024(P2009−57024)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】