説明

ハイブリッド制御装置

【課題】無駄なアイドリングを極力少なくするとともに、必要時には吸気量の学習制御を正確に実行することのできるハイブリッド制御装置を提供する。
【解決手段】車両の要求パワーに基づいて算出したエンジン2とモータジェネレータMGの夫々が出力すべきパワーに基づき動力分割機構61を制御するハイブリッド制御装置7であって、エンジン制御装置82から受信する、アイドリング制御を実行する際に学習するアイドリング制御値の更新情報に基づき、学習の必要性の有無を判断する学習制御判断部と、学習の必要性があると判断する場合で、前記算出結果でエンジン2の出力すべきパワーがなくモータジェネレータMGが出力すべきパワーがある場合に、エンジン制御装置82にアイドリング制御を実行させてアイドリング制御値を学習させるアイドリング制御指示部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の要求パワーに基づいて、エンジンとモータジェネレータの夫々が出力すべきパワーを算出し、該算出結果に基づき動力分割機構を制御するハイブリッド制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータジェネレータが動力分割機構を介して接続されたハイブリッド車両が提案されている。動力分割機構に遊星歯車機構が採用されたシリーズパラレルハイブリッド車両では、エンジンの出力軸がプラネタリキャリアに接続され、主に発電機として動作する第一のモータジェネレータの回転軸がサンギヤ軸に接続され、車両の駆動軸がリングギヤ軸に接続されている。
【0003】
エンジンの出力トルクは動力分割機構を介して車両の駆動トルク(プロペラ軸に分配されるトルク)と発電機の発電に使用される。このとき、エンジンがプロペラ軸に出力するトルクとユーザが要求する駆動トルクとを比較して、エンジンのプロペラ軸に対する不足トルクを第二のモータジェネレータとしての駆動モータで補う。従って、発電機で発電した量よりも駆動モータで使用する電力量が大きい場合は不足電力量をバッテリで補い、発電機で発電した量よりも駆動モータで使用する電力量が少ない場合は過剰電力量をバッテリに充電することになる。
【0004】
つまり、エンジンは車両の要求パワーを満たすように制御すれば、駆動モータがユーザ要求トルクに対する過不足トルクを補うことができる構成となっている。そのため、エンジンは車両要求パワーを満たす出力に対して、最適な目標回転数を設定することができる。
【0005】
しかし、上述のハイブリッド車両は、発進時、低速走行時、または緩やかな坂を下る場合等の軽負荷時には、モータジェネレータによる駆動力のみで走行しており、このような走行状態では、燃費向上のためにエンジンを停止している。つまり、ハイブリッド車両は、エンジンの駆動力のみで走行する車両と比較して、エンジンのアイドリングが実施される機会が少ない。
【0006】
ところで、車両は、常に最適なアイドリングを確保することが望ましく、具体的には、アイドリング時のエンジンの回転数は、燃費や騒音を低減するために、できるだけ低く且つ安定した回転数であることが望ましい。そのため、車両では、エンジンがアイドリング状態の場合に、エンジンの実際の回転数が予め設定された目標回転数に近づくように吸気量を調整して基準吸気量を算出する所謂アイドルスピードコントロール(以下、ISCと記す。)による学習制御が実行されている。
【0007】
しかし、上述したとおり、ハイブリッド車両は、エンジンのアイドリングが実施される機会が少ないので、ISCによる学習制御が実行される機会が少ない。その結果、エンジンの吸気管の目詰まり等によって吸気量が変動し、基準吸気量を変更する必要が生じても、ISCによる学習制御が実行されないために基準吸気量が適正な値からずれる虞があった。
【0008】
このような問題を解決するため、特許文献1では、以下のような内燃機関の吸気制御装置が開示されている。つまり、吸気制御装置は、内燃機関の出力トルクを調整するために内燃機関の吸入空気量を調整する吸気調整手段と、内燃機関の運転状態に応じて変化する内燃機関の要求出力トルクを機関運転状態に基づき算出する要求トルク算出手段と、内燃機関の実際の出力トルクを検出する実トルク検出手段と、実トルク検出手段によって検出される実際の出力トルクが、要求トルク算出手段によって算出される要求出力トルクに近づくように吸気補正量を増減させる補正手段と、吸気補正量が所定範囲内の値となるように内燃機関の吸入空気量を補正するための学習値を増減させる学習手段とを備えている。
【0009】
そして、吸気制御装置は、内燃機関がアイドル状態でない場合であっても、実際の出力トルクと要求出力トルクとに基づいて吸気補正量の補正及び学習値の学習を行なうことにより、アイドル運転の行なわれる機会の少ない内燃機関であっても学習値の学習を的確に行なうことができる。
【特許文献1】特開2000−97069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1では、学習制御を実行するためにアイドリングを実行することによる燃費悪化を避けるために、アイドリング状態ではない状態で学習制御を実行しているために、算出された吸気量の学習値が正確な値でない虞がある。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、無駄なアイドリングを極力少なくするとともに、必要時には吸気量の学習制御を正確に実行することのできるハイブリッド制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明によるハイブリッド制御装置の特徴構成は、車両の要求パワーに基づいて、エンジンとモータジェネレータの夫々が出力すべきパワーを算出し、該算出結果に基づき分割機構を制御するハイブリッド制御装置であって、エンジン制御装置から受信する、アイドリング制御を実行する際に学習するアイドリング制御値の更新情報に基づき、学習をさせる必要性があるか否かを判断する学習制御判断部と、前記学習制御判断部によりアイドリング制御値の学習をさせる必要性があることを判断する場合で、前記算出結果においてエンジンの出力すべきパワーがなくモータジェネレータが出力すべきパワーがある場合に、前記エンジン制御装置にアイドリング制御を実行させてアイドリング制御値を学習させるアイドリング制御指示部を備えている点にある。
【0013】
上述の構成によれば、学習制御判断部がアイドリング制御値の学習をさせる必要性のあることを判断した場合にのみ、アイドリング制御指示部がエンジン制御装置にアイドリング制御値の学習を実行させる。また、アイドリング制御指示部は、エンジン制御装置を制御してエンジンをアイドリング状態とした上で、エンジン制御装置にアイドリング制御値の学習を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した通り、本発明によれば、無駄なアイドリングを極力少なくするとともに、必要時には吸気量の学習制御を正確に実行することのできるハイブリッド制御装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるハイブリッド制御装置について説明する。図1に示すように、ハイブリッド車両1は、エンジン2、バッテリ3、インバータ4、駆動輪5、無段変速機構6、及び本発明によるハイブリッド制御装置7を含む複数の電子制御装置8等を備えて構成されている。
【0016】
エンジン2は、図2に示すように、シリンダブロック20及びシリンダヘッド21を備え、シリンダブロック20には複数のシリンダ22が並設され、各シリンダ22内にピストン23が往復動可能に配置されている。各ピストン23はコネクティングロッド24を介してクランクシャフト25に連結され、各ピストン23の往復運動がコネクティングロッド24によって回転運動に変換されてクランクシャフト25に伝達されるように構成されている。クランクシャフト25の端部には複数の歯が周囲に形成されたパルス円盤が取り付けられ、その回転数がクランクポジションセンサ26によってパルス信号として検出されるように構成されている。また、エンジン2には、エンジン2の冷却水の温度を検出する水温センサ2Aが備えられている。
【0017】
各シリンダ22の上部空間に燃焼室27が形成され、シリンダヘッド21には、各燃焼室27に連通する吸気ポート28及び排気ポート29が設けられ、これらの吸気ポート28及び排気ポート29を開放及び閉鎖するために吸気バルブ10及び排気バルブ11がそれぞれ往復動可能に支持されている。
【0018】
吸気ポート28には外気の汚れを除去するエアクリーナ121、吸気量を検出するエアフロメータ122、吸入空気流量を調節するスロットルバルブ123、圧力変動を平滑化させるサージタンク124、吸気マニホールド125等を備えた吸気通路12が接続され、それらを経て燃焼用空気が燃焼室27に供給される。
【0019】
スロットルバルブ123は、吸気通路12内で通路の軸心に垂直な軸心周りに回動可能なモータの出力軸に取り付けられ、図示しない運転席のアクセルペダル操作に連動して回転制御されるように構成され、吸気通路12を流れる吸入空気量がスロットルバルブ123の回動角度に応じて制御され、その回転角度を検出するスロットルセンサ123aが設けられている。
【0020】
吸気マニホールド125には気筒数と同数のインジェクタ13が取付けられている。各インジェクタ13は通電されると開弁して各吸気ポート28へ向けて燃料を噴射する電磁弁で構成され、各インジェクタ13から噴射される燃料と吸入空気との混合気が各燃焼室27へ導かれる。
【0021】
クランクシャフト25が2回転する間に1回転するロータが内蔵されたディストリビュータ14によって、イグナイタ(図示せず)から出力される高電圧がシリンダヘッド21に設けられた点火プラグ(図示せず)にクランク角に同期して分配され、燃焼室27へ導入された混合気が爆発・燃焼する。このときに生じた高温高圧の燃焼ガスによりピストン23が往復動してクランクシャフト25が回転してエンジン2の駆動力が得られる。
【0022】
排気ポート29には、空燃比センサ151、排気マニホールド152、燃焼ガス中の有害物質を浄化する三元触媒が内蔵された触媒コンバータ153等を備えた排気通路15が接続され、燃焼室27で生じた燃焼ガスが排気通路15から排気される。
【0023】
バッテリ3は、複数の電池セルが一体化されたモジュールを複数直列に接続したリチウムイオン電池やニッケル水素電池等の組電池で構成されている。
【0024】
インバータ4は、バッテリ3から入力された直流電力を交流電力に変換して発電機MG1及び駆動モータMG2に出力するとともに、発電機MG1及び駆動モータMG2から入力された交流電力を直流電力に変換してバッテリ3に出力する。
【0025】
無段変速機構6は、エンジン2のクランクシャフト25から入力された出力トルクを、遊星歯車機構でなる動力分割機構61を介してプロペラ軸62及び発電機MG1に伝達する。また、無段変速機構6には、プロペラ軸62を駆動する走行アシスト用の駆動モータMG2がリダクションギヤ等のギヤ機構63を介して備えられ、プロペラ軸62がデファレンシャルギヤ機構64を介して駆動輪5に連結されている。
【0026】
発電機MG1及び駆動モータMG2は、発電機及び電動機の両方として機能し得るが、発電機MG1は主として発電機として動作し、駆動モータMG2は主として電動機として動作する。
【0027】
発電機MG1は、動力分割機構61を介して伝達されたエンジン2からの出力トルクによって回転駆動して発電する。発電機MG1による発電電力は、インバータ4を介してバッテリ3及び/または駆動モータMG2に供給され、バッテリ3の充電電力及び/または駆動モータMG2の駆動電力として用いられる。
【0028】
駆動モータMG2は、インバータ4から入力された交流電力によって回転駆動される。駆動モータMG2の回転駆動で生成された駆動力は、ギヤ機構63、プロペラ軸62、及びデファレンシャルギヤ機構64を介して駆動輪5へ伝達される。また、ハイブリッド車両1の減速時には、駆動モータMG2の回転駆動による発電電力がインバータ4を介してバッテリ3に供給され、バッテリ3が充電される。
【0029】
動力分割機構61は、図3に示すような遊星歯車機構で構成されており、サンギヤ611と、サンギヤ611と、リングギヤ612と、複数のピニオンギヤ613とを備えている。尚、図3は、図1に示した動力分割機構61の断面図である。
【0030】
図1に示すように、サンギヤ611は、サンギヤ軸614を介して発電機MG1の回転軸と接続されており、リングギヤ612は、リングギヤ軸615及びギヤ機構63を介して駆動モータMG2の回転軸と接続されている。
【0031】
複数のピニオンギヤ613は、サンギヤ611およびリングギヤ612との間に配置され、各ピニオンギヤ613が、サンギヤ611の外周を自転しながら公転する。各ピニオンギヤ613の公転力は、プラネタリキャリア軸616により図3に示すプラネタリキャリア617の回転力として与えられる。プラネタリキャリア軸616はエンジン2と接続されている。
【0032】
プラネタリキャリア617の回転に伴ってサンギヤ611及びリングギヤ612が回転することにより、エンジン2からプラネタリキャリア軸616を介して供給された出力トルクが、ピニオンギヤ613を介してリングギヤ612及びサンギヤ611へ伝達される。つまり、エンジン2による出力トルクが、プロペラ軸62の回転トルクと発電機MG1の回転トルクとに分割される。
【0033】
以下、無段変速機構6の動作について詳述する。遊星歯車機構では、サンギヤ611、リングギヤ612、及びプラネタリキャリア617のうちの何れか二つについて回転数が決定されると、残り一つの回転数が決定される。
【0034】
ここで、プラネタリキャリア617(エンジン2)、サンギヤ611(発電機MG1)、またはリングギヤ612(プロペラ軸62)の回転数は、残り二つの回転数、及び、サンギヤ611とリングギヤ612の歯の数の比に基づいて、以下の数1から数3で決定される。尚、数1から数3において、Neはエンジン2の回転数、Ngは発電機MG1の回転数、Npはプロペラ軸62の回転数、ρはサンギヤ611とリングギヤ612の歯の数の比(サンギヤ611の歯の数をリングギヤ612の歯の数で除算した値)である。
【数1】


【数2】


【数3】

【0035】
また、エンジン2、発電機MG1、及びプロペラ軸62のトルクは、以下の数4から数6の関係を有している。尚、数4から数6において、Teはエンジン2のトルク、Tgは発電機MG1のトルク、Tpはプロペラ軸62のトルク、Tepはエンジン直行トルク、Tmpはプロペラ軸換算トルクであり、エンジン直行トルクTep及びプロペラ軸換算トルクTmpについては以下で説明する。
【数4】


【数5】


【数6】

【0036】
ここで、エンジン直行トルクTepは、エンジン2のトルクTe及び発電機MG1のトルクTgの二箇所のトルクによって決定されるプロペラ軸62に加わるトルクのことであり、数5から明白であるが発電機MG1のトルクTgが決定されるとエンジン直行トルクTepも決定する。また、プロペラ軸換算トルクTmpは、駆動モータMG2のトルクにギヤ機構63のギヤ比を乗算することで算出されるトルクである。
【0037】
つまり、数6より、プロペラ軸62のトルクTpは、エンジン2の出力トルクによってプロペラ軸62に加えられるトルクであるエンジン直行トルクTepと、駆動モータMG2の駆動力によってプロペラ軸62に加えられるトルクであるプロペラ軸換算トルクTmpとの合算によって決定される。
【0038】
ハイブリッド車両1の走行時、プロペラ軸62の要求するパワーに相当するトルクがエンジン2から出力され、出力されたトルクは動力分割機構61を介してプロペラ軸62に伝達される。
【0039】
つまり、エンジン2の出力トルクは動力分割機構61を介して車両1の駆動トルク(プロペラ軸62に分配されるトルク)と発電機MG1の発電に使用される。このとき、エンジン2がプロペラ軸62に出力するトルクとユーザが要求する駆動トルクとを比較して、エンジン2のプロペラ軸62に対する不足トルクを駆動モータMG2で補う。従って、発電機MG1で発電した量よりも駆動モータMG2で使用する電力量が大きい場合は不足電力量をバッテリ3で補い、発電機MG1で発電した量よりも駆動モータMG2で使用する電力量が少ない場合は過剰電力量をバッテリ3に充電することになる。
【0040】
つまり、エンジン2は車両の要求パワーを満たすように制御すれば、駆動モータMG2がユーザ要求トルクに対する過不足トルクを補うことのできる構成となっている。そのため、エンジン2は車両要求パワーを満たす出力に対して、最適な目標回転数を設定することができる。
【0041】
以下、図4から図6に示す共線図を用いて、無段変速機構6の動作について更に詳述する。
【0042】
ハイブリッド車両1が停止している場合、エンジン2、発電機MG1、及び駆動モータMG2は何れも停止しており、エンジン2、発電機MG1、及び駆動モータMG2の回転数及びトルクは零であるため、共線図におけるエンジン2、発電機MG1、及び駆動モータMG2の動作点は図4(a)で示すような直線で表わされる。
【0043】
ハイブリッド車両1が、エンジン2を停止させて駆動モータMG2の駆動力のみで前進している場合、エンジン2の回転数Neはエンジン2停止のため零であり、プロペラ軸62は駆動モータMG2の駆動力により正回転(回転数Npは正の値)であり、発電機MG1はプロペラ軸62の正回転により負回転(回転数Ngは負の値)である。
【0044】
また、エンジン2のトルクTeはエンジン2停止のため零であるので、発電機MG1のトルクTgも零となり、プロペラ軸62のトルクTp(正トルク)がそのままハイブリッド車両1の駆動力となる。
【0045】
よって、共線図におけるエンジン2、発電機MG1、及び駆動モータMG2の動作点は図4(b)で示すような直線で表わされる。
【0046】
ハイブリッド車両1が、エンジン2による前進加速走行を行なっている場合、エンジン2は正回転(回転数Neは正の値)である。プロペラ軸62は正回転(回転数Npは正の値)であり、ハイブリッド車両1が高速である程その回転数Npは大きくなる。発電機MG1は、低速走行では正回転(回転数Ngは正の値)だが、高速走行ではプロペラ軸62の回転数Npの増大により負回転(回転数Ngは負の値)となる。
【0047】
また、エンジン2のトルクTeは、ハイブリッド車両1が加速走行のため、正トルクであり、発電機MG1のトルクTgは、エンジン2のトルクTgが正トルクであるため、負トルクとなる。エンジン直行トルクTepは、ハイブリッド車両1が加速走行のため、車速にかかわらず正トルクとなるが、プロペラ軸換算トルクTmpは、ハイブリッド車両1が低速の場合には正トルクとなるが、ハイブリッド車両1が高速の場合には発電機MG1の消費電力を賄うための発電により負トルクとなる。但し、エンジン直行トルクTepの絶対値がプロペラ軸換算トルクTmpの絶対値よりも大きいため、エンジン直行トルクTepとプロペラ軸換算トルクTmpの合計であるプロペラ軸62のトルクTpは正トルクとなる。
【0048】
よって、共線図におけるエンジン2、発電機MG1、及び駆動モータMG2の動作点は、低速の場合は図5(a)、高速の場合は図5(b)で示すような直線で表わされる。
【0049】
ハイブリッド車両1が、図5(a)の状態で、エンジン2による前進減速走行を行なっている場合、ハイブリッド車両1が前進走行のため、エンジン2、プロペラ軸62、及び発電機MG1共に正回転(回転数Ne、Np、Ngは正の値)である。
【0050】
また、エンジン2のトルクTeは、ハイブリッド車両1が減速走行のため、負トルクであり、発電機MG1のトルクTgは、エンジン2のトルクTeが負トルクであるため、正トルクとなる。エンジン直行トルクTepは、ハイブリッド車両1が減速走行であるため制動力を確保するために、負トルクとなり、プロペラ軸換算トルクTmpは、発電機MG1の発電電力を賄うために、負トルクとなる。つまり、エンジン直行トルクTepとプロペラ軸換算トルクTmpの加算値であるプロペラ軸62のトルクTpは負トルクとなる。
【0051】
よって、共線図におけるエンジン2、発電機MG1、及び駆動モータMG2の動作点は図6で示すような直線で表わされる。
【0052】
電子制御装置8は、バッテリ3の充電状態の監視を行なうバッテリ制御装置81と、エンジン2の吸気量及び燃料噴射量の制御等を実行するエンジン制御装置82と、エンジン制御装置82並びに発電機MG1及び駆動モータMG2(以下、モータジェネレータMGと記す。)を制御するハイブリッド制御装置7と、ブレーキを制御するブレーキ制御装置83と、モータジェネレータMGを制御するMG制御装置84等を備えて構成されている。
【0053】
各電子制御装置8にはCPUを備えたマイクロコンピュータ、CPUで実行される制御プログラムが格納されたROM及び/またはEEPROM、ワーキングエリアとして使用されるRAM、及び入出力回路等が設けられており、以下で説明する各電子制御装置8の各機能ブロック(例えば、学習制御判断部)の機能は、CPUが制御プログラムを実行することで実現されている。尚、各電子制御装置8は相互に通信可能に接続されている。
【0054】
バッテリ制御装置81には、バッテリ3の出力電圧を測定する電圧測定部31と、出力電流を測定する電流測定部32と、温度を測定する温度測定部33からの測定値が入力されており、バッテリ制御装置81は、これらの測定値に基づいてバッテリ残存容量(以下、「SOC(State of Charge)」と記す。)を演算する。
【0055】
MG制御装置84は、ハイブリッド制御装置7から入力されたモータジェネレータMGの要求トルクを満たすようにモータジェネレータMGを駆動制御し、また、ハイブリッド制御装置7からモータジェネレータMGへ出力要求がある場合、当該出力要求を満たす発電量を確保するためにモータジェネレータMGを駆動制御する。
【0056】
エンジン制御装置82は、ISC(アイドルスピードコントロール)学習制御を実行する。ここで、ISC学習制御は、エンジン2のアイドル運転時に実行される制御であり、エンジン2のアイドル運転時の実際の回転数とエンジン制御装置82で算出された目標回転数との差分を算出して、当該差分が零となるようにエンジン2への吸入空気量、つまりスロットルバルブ123の開度を調整する制御である。
【0057】
以下に詳述する。エンジン制御装置82は、水温センサ2Aからの入力信号より現在のエンジン水温を検出して、エンジン水温に対する目標回転数で構成されエンジン制御装置82のROMに予め記憶されているマップデータを検索することで、目標回転数を導出する。また、エンジン制御装置82は、クランクポジションセンサ26の出力信号に基づいてエンジン2の実際の回転数を算出する。
【0058】
そして、エンジン制御装置82は、実際の回転数が目標回転数より大きい場合には、当該差分に基づいて算出した補正量だけスロットルバルブ123の開度を小さくして吸入空気量を減少させ、実際の回転数が目標回転数より小さい場合には、当該差分に基づいて算出した補正量だけスロットルバルブ123の開度を大きくして吸入空気量を増加させる処理を繰り返すことで、両回転数が一致するようにスロットルバルブ123の開度をフィードバック制御する。尚、フィードバック制御方式として所謂PID制御が使用されるがこれに限るものではない。
【0059】
以上のようなフィードバック制御によって求められたスロットルバルブ123の開度は、アイドリング制御値としてエンジン制御装置82のRAMまたはEEPROMに記憶される。
【0060】
その後、ハイブリッド車両1が次にアイドル状態となった場合に、エンジン制御装置82がISC学習制御を実行する場合、スロットルバルブ123の開度は記憶しておいたアイドリング制御値に設定され、このように設定されたスロットルバルブ123の開度を基準として、上述したフィードバック制御が実行され、新たなスロットルバルブ123の開度、つまり新たなアイドリング制御値が算出される。
【0061】
ハイブリッド制御装置7は、動力分割機構61を介して接続されたエンジン2とモータジェネレータMGをハイブリッド車両1の要求パワーに基づいて制御する。換言すると、ハイブリッド制御装置7は、ハイブリッド車両1の要求パワーに基づいて、エンジン制御装置82にエンジン2を制御させ、MG制御装置84にモータジェネレータMGを制御させる。つまり、ハイブリッド制御装置7は、車両の要求パワーに基づいて、エンジン2とモータジェネレータMGの夫々が出力すべきパワーを算出し、該算出結果に基づき動力分割機構61を制御する。
【0062】
以下に詳述する。ハイブリッド制御装置7は、アクセルポジションセンサから得られたアクセル開度、シフトポジションセンサから得られたシフト位置、車速センサから得られた車速情報、ブレーキ制御装置83から得られたブレーキ操作情報や電池の残存容量等のハイブリッド車両1の運転状態に基づいてエンジン出力及びモータトルクを算出し、算出されたエンジン出力及びモータトルクを実現するために必要なパワーをエンジン制御装置82及びMG制御装置84に要求する。
【0063】
ハイブリッド制御装置7は、ハイブリッド車両1の力行時にバッテリ3から電力をモータジェネレータMGに供給し、ハイブリッド車両1の回生制動時にモータジェネレータMGによる発電電力でバッテリ3を充電するように、MG制御装置84にモータジェネレータMGを制御させる。
【0064】
ハイブリッド制御装置7は、バッテリ制御装置81から入力されたバッテリ3のSOCとハイブリッド制御装置7のROMに格納されたハイブリッド車両1の運転状態に対するエンジン出力及びモータトルクの配分を示すマップ情報等に基づいて演算処理を実行し、充電許容電力Win及び放電許容電力Woutの範囲内でSOCが目標範囲に収まるようにバッテリ3の充放電が実行されるようにMG制御装置84にモータジェネレータMGを制御させる。
【0065】
ハイブリッド制御装置7は、エンジン2の始動及び停止の切替をエンジン制御装置82に命令する。例えば、ハイブリッド制御装置7は、ハイブリッド車両1の発進時、低速走行時、または緩やかな坂を下る場合等の軽負荷時には、エンジン2を始動させることなく、モータジェネレータMGによる駆動力でハイブリッド車両1を走行させるようエンジン制御装置82及びMG制御装置84を制御する。そして、所定値以上の駆動力が必要な運転状態となった場合には、エンジン2を始動させるようエンジン制御装置82に命令する。
【0066】
以上より、ハイブリッド制御装置7は、車両1の要求パワーとバッテリ4の残存容量に基づいて、エンジン2とモータジェネレータMGとの動力の配分を決定し、動力分割機構61を制御するとともに、エンジン制御装置82やMG制御装置84へその配分に応じた動力を出力することを指示する。
【0067】
ハイブリッド制御装置7は、エンジン制御装置82から受信する、アイドリング制御を実行する際に学習するアイドリング制御値の更新情報に基づき、学習をさせる必要性があるか否かを判断する学習制御判断部としてのISC状態検出部と、学習制御判断部によりアイドリング制御値の学習をさせる必要性があることを判断する場合で、エンジン2とモータジェネレータMGの夫々が出力すべきパワーの算出結果においてエンジン2の出力すべきパワーがなくモータジェネレータMGが出力すべきパワーがある場合に、エンジン制御装置82にアイドリング制御を実行させてアイドリング制御値を学習させるアイドリング制御指示部としてのISC調整司令部を備えている。
【0068】
アイドリング制御値は、例えば、エンジン制御装置82にてISC学習制御が実行され、アイドリング制御値が算出された場合に、エンジン制御装置82からハイブリッド制御装置7に送信される。
【0069】
ISC状態検出部は、エンジン制御装置82より受信したアイドリング制御値を参照して、アイドリング制御値の学習制御、つまりISC学習制御が所定期間(例えば、1月)において所定回数以下(例えば、3回)である場合、1トリップつまり車両の始動から車両の停止まで(例えば、イグニッションスイッチのオンからオフ、または、プッシュスタートオンからプッシュスタートオフ)の学習制御の実施頻度が所定値(例えば、0.25%)以下の場合、学習値の最新更新時から所定時間(例えば、300時間)以上経過している場合等に学習する必要があると判断する。
【0070】
また、ISC状態検出部は、アイドリング制御値の偏りが検出された場合に、アイドリング制御値の学習をさせる必要性があると判断する構成であってもよい。
【0071】
つまり、この場合、ハイブリッド制御装置7は、エンジン2のアイドリング制御値の偏りを検出するISC状態検出部と、ISC状態検出部によりアイドリング制御値の偏りが検出された場合に、エンジン制御装置82にアイドル運転状態でISC学習制御を実行させるISC調整司令部を備えている。
【0072】
ISC状態検出部によるアイドリング制御値の偏りの検出方法としては、例えば、ISC状態検出部は、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるようにフィードバック制御するモータジェネレータMGのフィードバックトルク量が所定範囲を逸脱する場合に、アイドリング制御値が偏っていると検出し、アイドリング制御値の学習をさせる必要性があると判断する方法がある。
【0073】
エンジン直行トルクは、数5に示すとおり、発電機MG1のトルクによって決定される。
【0074】
また、エンジン制御装置82は、このエンジン直行トルクTepと目標エンジン回転数になるようにスロットル開度を制御しているが、前記スロットル開度はアイドリング制御値分のスロットル開度も含んでいるため、アイドリング制御値の誤差によって目標エンジン回転数とならない場合が発生する。このようなときは発電機MG1のトルクTgをフィードバック制御することによりエンジン2を目標回転数に収束させることができる。
【0075】
発電機のトルクTgのフィードバック制御の例について詳述する。ISC状態検出部は、エンジン2の回転数Neの目標値と現在のエンジン2の回転数の差分に基づいて発電機MG1に必要な回転速度を算出し、算出した回転速度で発電機MG1を回転させるために必要な発電機MG1のトルク(目標トルク)を算出する。
【0076】
そして、ISC状態検出部は、MG制御装置84を制御して発電機のトルクTgが目標トルクとなるようなスイッチング信号をインバータ4へ出力させ、インバータ4は当該スイッチング信号に基づいた交流電力を発電機MG1に出力する。
【0077】
当該交流電力によって発電機MG1の回転数は変動し、それに伴ってエンジン2の回転数も変動するので、ISC状態検出部は、変動後のエンジン2の回転数を現在のエンジン2の回転数として検出し、以下、当該フィードバック処理を繰り返していく。
【0078】
また、ISC状態検出部は、数4に基づいて、要求エンジントルクTeから発電機MG1が必要とする目標トルクTg(=−(ρ×Te)/(1+ρ))を算出する。
【0079】
そして、ISC状態検出部は、発電機MG1のトルクTgのフィードバック制御において、発電機MG1の実際のトルクが予め設定された所定範囲外となった場合、つまり、発電機MG1の実際のトルクが発電機MG1の目標トルクよりも、予め設定された所定値より大きくなった場合、または、予め設定された所定値より小さくなった場合に、アイドリング制御値が偏っていると判断する。
【0080】
尚、本実施形態では、ISC状態検出部によるアイドリング制御値の偏りの有無の判断は、1トリップに一回、例えば、当該トリップにおけるハイブリッド車両の走行開始から所定時間後または所定距離走行後に実行されるが、1トリップに一回に限るものではなく、例えば、複数トリップに一回または1トリップに複数回であってもよい。ここで、トリップとは、ハイブリッド車両のスタータースイッチ等の始動冶具がオン操作されてハイブリッド車両のシステムが駆動してから、前記始動冶具がオフ操作されてハイブリッド車両のシステムが停止するまでのことである。
【0081】
アイドリング制御値がずれている、つまり吸入空気量に誤差があると、上述の発電機MG1のトルクTgのフィードバック制御において、エンジン2の回転数Neが当該誤差の分だけ誤って算出されることになり、当該エンジン2の回転数Neに基づいて算出される発電機MG1のトルクTgも誤って算出される。よって、モータジェネレータMGのトルクが所定範囲を逸脱するか否かによって、アイドリング制御値が偏っているか否かを判断することができる。
【0082】
ISC調整司令部は、ISC状態検出部によってアイドリング制御値が偏っていると判断されると、エンジン制御装置82に対して上述したISC学習制御を実行するよう命令する制御信号を出力する。
【0083】
また、ISC調整司令部は、ISC状態検出部によってアイドリング制御値が偏っていると判断された場合に、エンジン2がアイドル状態でない場合には、エンジン2をアイドル状態とするようにエンジン制御装置82及びMG制御装置84を制御する。
【0084】
具体的には、エンジン2が駆動しているが、エンジン2から出力されるパワーが駆動輪5の駆動に使用されている場合、駆動輪5の駆動は専らモータジェネレータMGの駆動力によって行われるようにMG制御装置84を制御し、エンジン制御装置82はアイドリング状態となるように制御する。
【0085】
また、ISC調整司令部は、エンジン制御装置82よりISC学習制御の実行を終了した旨の制御信号を受け取ると、エンジン2のアイドル状態を終了するように、エンジン制御装置82及びMG制御装置84を制御する。
【0086】
具体的には、ISC調整司令部は、現在のハイブリッド車両1の走行状態に基づいて、エンジン2を停止するように、または、エンジン2から出力されるパワーが駆動輪5の駆動に使用され、当該使用分だけモータジェネレータMGによる駆動力を減少するようにエンジン制御装置82及びMG制御装置84を制御する。
【0087】
また、ISC調整指令部は、エンジン2とモータジェネレータMGの併用運転からモータジェネレータMGの単独運転へ切り替える場合に、アイドリング制御値の学習制御、つまりISC学習制御を実行させるように構成されている。
【0088】
以下に詳述する。通常、エンジン2とモータジェネレータMGの併用運転時から、極低速運転や車両停止状態等になったとき、エンジン2を停止させるが、ISC調整司令部は、モータジェネレータMGの単独運転時にも、エンジン制御装置82を制御してエンジン2を停止させるのではなくエンジン2をアイドル状態とさせた上で、エンジン制御装置82にISC学習制御を実行させる。
【0089】
また、ISC調整司令部は、車両の急加速時等のエンジン2からの出力が車両の走行に不可欠な場合には、エンジン制御装置82にアイドリング制御値の学習指示を行なわない。
【0090】
つまり、ISC調整司令部は、エンジン2とモータジェネレータMGの夫々が出力すべきパワーの算出結果においてエンジン2の出力すべきパワーがなくモータジェネレータMGが出力すべきパワーがある場合に、エンジン制御装置82にアイドリング制御を実行させてアイドリング制御値を学習させるのである。
【0091】
上述の構成によれば、通常、エンジン2が停止されるモータジェネレータMGの単独運転への切替時に、ISC調整指令部は、エンジン2をアイドル運転状態としてISC学習制御を実行させるので、ISC学習制御の機会を増加させることができる。
【0092】
また、ハイブリッド制御装置7は、アイドリング制御値の学習制御、つまりISC学習制御の実行後にISC状態検出部によるアイドリング制御値の偏りの検出閾値、つまりアイドリング制御値の学習をさせる必要性があるか否かの判断閾値を大きくするように構成されていてもよい。
【0093】
以下に詳述する。例えば、あるトリップで、ISC状態検出部がアイドリング制御値の偏りを検出し、ISC調整司令部がエンジン制御装置82にISC学習制御を実行させた場合、次回のトリップでは、ISC状態検出部が、アイドリング制御値の偏りを検出するための所定値を、前記あるトリップにおける所定値よりも絶対値の大きい値として、アイドリング制御値の偏りの有無を判断する。
【0094】
つまり、前記次回のトリップで、発電機MG1の実際のトルクと目標トルクとの差分が、前記あるトリップ(前回のトリップ)と同じ程度となったとしても、ISC状態検出部は、アイドリング制御値の偏りであるとは検出しない。
【0095】
このような構成とすることで、ISC学習制御が一度実行されると、発電機MG1の実際のトルクと目標トルクとの差分が、大きくなった所定値以上となるまではISC学習制御が再び実行されることはないので、エンジン制御装置82によって無駄なアイドリングが実行されることを防止することができる。
【0096】
更に詳述する。エンジン制御装置82によってISC学習制御が実行されるとアイドリング制御値の偏りは是正されるはずである。しかし、本発明では、ISC状態検出部が、アイドリング制御値の偏りの有無を、吸入空気量またはスロットルバルブ123の開度以外の要素であるモータジェネレータMGのトルクに基づいて判断しているため、モータジェネレータMG等に異常があると、ISC学習制御により吸入空気量またはスロットルバルブ123の開度が是正されていても、ISC状態検出部はアイドリング制御値に偏りがあると判断してしまう。
【0097】
そこで、ISC学習制御が実行された後に、ISC状態検出部によって少なくとも一回連続してアイドリング制御値に偏りがあると判断された場合、ISC状態検出部は、アイドリング制御値の偏りではなくモータジェネレータMG等に異常があると判断する。
【0098】
その後のトリップにおいて、ISC状態検出部が、より大きな所定閾値で判断してもアイドリング制御値に偏りがあると判断した場合、モータジェネレータMG等ではなく本当にアイドリング制御値に偏りがあると判断する。つまり、任意のトリップ数が経過する間に、吸気通路12に付着した炭素等の増加によって、アイドリング制御値に偏りが発生したと判断するのである。
【0099】
以上の説明では、ハイブリッド制御装置7は、ISC学習制御を実行した次のトリップに、ISC状態検出部によるアイドリング制御値の偏りの検出閾値を大きくする構成について説明したが、無駄なアイドリングの実行を防止することができるのであれば上述の構成に限らず、例えば、所定数のトリップ連続してアイドリング制御値の偏りが検出された場合に、ISC状態検出部によるアイドリング制御値の偏りの検出閾値を大きくする構成等であってもよい。
【0100】
以下、ISC状態検出部及びISC調整司令部によって実行される制御について図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0101】
ハイブリッド制御装置7のISC状態検出部は、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるようにフィードバック制御するモータジェネレータMGのフィードバックトルク量が所定範囲を逸脱するか否かを判断する(S1)。
【0102】
ISC状態検出部によってモータジェネレータMGのフィードバックトルク量が所定範囲を逸脱していると判断された場合(S1)、ISC調整司令部は、エンジン2からの駆動力が不要であるか否か、つまりモータジェネレータMGの駆動力のみで走行可能であるか否かを判断する(S2)。
【0103】
そして、ISC調整司令部は、エンジン2からの駆動力が不要である場合には、エンジン制御装置82に対してアイドリング指令を出力した上で(S3)、エンジン制御装置82にISC学習制御を実行させる(S4)。
【0104】
一方、ISC状態検出部によってモータジェネレータMGのトルクが所定範囲を逸脱していないと判断された場合(S1)、または、ISC調整司令部によってエンジン2からの駆動力が必要であると判断された場合には(S2)、ISC調整司令部はエンジン制御装置6に対してアイドリング指令を出力することなく、ハイブリッド制御装置7が通常制御を実行する(S5)。
【0105】
ここで、通常制御とは、ハイブリッド車両1の運転状態に基づいてエンジン出力及びモータトルクを算出し、当該エンジン出力及びモータトルクを実現するために必要なパワーをエンジン制御装置82及びMG制御装置84に要求する制御のことである。
【0106】
以下、別実施形態について説明する。上述の実施形態では、ISC状態検出部は、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるようにフィードバック制御するモータジェネレータMGのフィードバックトルク量が所定範囲を逸脱する場合に、アイドリング制御値が偏っていると検出する構成について説明したが、このような方法に限らない。
【0107】
例えば、ISC状態検出部は、モータジェネレータMGに接続されているバッテリ3の要求パワーと計測パワーの偏差が所定範囲を逸脱する場合に、アイドリング制御値が偏っていると検出し、アイドリング制御値の学習をさせる必要性があると判断する構成であってもよい。
【0108】
以下に詳述する。数7に示すように、バッテリ3の要求パワーPo1と駆動輪5の駆動のためにモータジェネレータMGが要求するパワーとの合計パワーPo2が、ハイブリッド制御装置7がハイブリッド車両1を走行させるためにエンジン2に要求するパワー(以下、ハイブリッド制御装置7の要求パワーPo3と記す。)である。
【数7】

【0109】
計測パワーPo4とは、数8に示すように、エンジン2の実際の出力パワーPo5から駆動輪5の駆動のためにモータジェネレータMGが要求するパワーPo2を減じたパワーである。
【数8】

【0110】
つまり、数9に示すように、ハイブリッド制御装置7の要求パワーPo3とエンジン2の実際の出力パワーPo5との間に誤差が存在すると、当該誤差に相当するパワーが、バッテリ3の要求パワーPo1に対する計測パワーPo4の偏差となる。
【数9】

【0111】
バッテリ3の要求パワーPo1より計測パワーPo4が大きい場合は、当該偏差が余剰パワーとしてバッテリ3へ過充電される。また、バッテリ3の要求パワーPo1より計測パワーPo4が小さい場合は、当該偏差が不足パワーとしてバッテリ3から過放電されるのである。
【0112】
そして、ISC状態検出部は、当該偏差が予め設定された所定範囲外である場合に、アイドリング制御値が偏っていると判断する。
【0113】
エンジン制御装置82は、エンジン2の要求するトルクTe及びエンジン2の回転数Neを予め設定されたマップデータに適用することで、要求するスロットルバルブ123の開度を算出する。そして、エンジン制御装置82は、エンジン2を、要求するスロットルバルブ123の開度で駆動させることにより、ハイブリッド制御装置7の要求パワーをエンジン2に出力させる。
【0114】
しかし、アイドリング制御値に偏りがあり、スロットルバルブ123の開度に誤差があると、エンジン2の実際の出力パワーはハイブリッド制御装置7の要求パワーとは異なる値となってしまう。よって、バッテリ3の要求パワーと計測パワーの偏差が所定範囲を逸脱するか否かによって、アイドリング制御値が偏っているか否かを判断することができる。
【0115】
尚、上述した実施形態は本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等を適宜変更設計できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】ハイブリッド車両の機能ブロック構成図
【図2】エンジンの説明図
【図3】動力分割機構の断面図
【図4】(a)は車両停止中の動作点を示す共線図、(b)はEV前進走行中の動作点を示す共線図
【図5】(a)は高速時の前進加速走行中の動作点を示す共線図、(b)は低速時の前進加速走行中の動作点を示す共線図
【図6】前進減速走行中の動作点を示す共線図
【図7】ISC状態検出部及びISC調整司令部によって実行される制御について説明するためのフローチャート
【符号の説明】
【0117】
1:車両
2:エンジン
7:ハイブリッド制御装置
61:動力分割機構
82:エンジン制御部(エンジン制御装置)
MG:モータジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の要求パワーに基づいて、エンジンとモータジェネレータの夫々が出力すべきパワーを算出し、該算出結果に基づき動力分割機構を制御するハイブリッド制御装置であって、
エンジン制御装置から受信する、アイドリング制御を実行する際に学習するアイドリング制御値の更新情報に基づき、学習をさせる必要性があるか否かを判断する学習制御判断部と、
前記学習制御判断部によりアイドリング制御値の学習をさせる必要性があることを判断する場合で、前記算出結果においてエンジンの出力すべきパワーがなくモータジェネレータが出力すべきパワーがある場合に、前記エンジン制御装置にアイドリング制御を実行させてアイドリング制御値を学習させるアイドリング制御指示部
を備えているハイブリッド制御装置。
【請求項2】
前記学習制御判断部は、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるようにフィードバック制御する前記モータジェネレータのフィードバックトルク量が所定範囲を逸脱する場合に、アイドリング制御値の学習をさせる必要性があると判断する請求項1記載のハイブリッド制御装置。
【請求項3】
前記学習制御判断部は、前記モータジェネレータに接続されているバッテリの要求パワーと計測パワーの偏差が所定範囲を逸脱する場合に、アイドリング制御値の学習をさせる必要性があると判断する請求項1記載のハイブリッド制御装置。
【請求項4】
前記アイドリング制御指示部は、エンジンとモータジェネレータの併用運転からモータジェネレータの単独運転へ切り替える場合に、アイドリング制御値を学習させる請求項1から3の何れかに記載のハイブリッド制御装置。
【請求項5】
アイドリング制御値の学習の実行後に前記学習制御判断部によるアイドリング制御値の学習をさせる必要性があるか否かの判断閾値を大きくする請求項1から4の何れかに記載のハイブリッド制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−248586(P2009−248586A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95065(P2008−95065)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】