ハイブリッド車両の制御装置
【課題】エンジンの始動/停止制御と自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えること。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、エンジンEngと、モータ/ジェネレータMGと、第1クラッチCL1と、自動変速機ATと、統合コントローラ10と、ATコントローラ7と、エンジン/変速協調制御手段(図6)と、を備える。エンジン/変速協調制御手段は、エンジン始動/停止制御と自動変速機ATの変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで他方の制御を開始してもショックが許容値を越えない場合、要求タイミングで他方の制御を開始し、要求タイミングで他方の制御を開始するとショックが許容値を越える場合、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御を開始する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、エンジンEngと、モータ/ジェネレータMGと、第1クラッチCL1と、自動変速機ATと、統合コントローラ10と、ATコントローラ7と、エンジン/変速協調制御手段(図6)と、を備える。エンジン/変速協調制御手段は、エンジン始動/停止制御と自動変速機ATの変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで他方の制御を開始してもショックが許容値を越えない場合、要求タイミングで他方の制御を開始し、要求タイミングで他方の制御を開始するとショックが許容値を越える場合、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御を開始する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動系にエンジンとモータと自動変速機を備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両の制御装置としては、エンジン始動制御と変速制御を同時に行うことに起因するショックを防止するため、エンジン始動制御と変速制御を排他処理するものが知られている。つまり、エンジン始動制御が先に来た場合には、エンジン始動制御が終わってから変速制御を開始する。また、変速制御が先に来た場合には、変速制御が終わってからエンジン始動制御を開始する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−2241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のハイブリッド車両の制御装置にあっては、エンジン始動制御と変速制御を同時処理としてもショックが問題ない状況であっても排他処理としている。このため、例えば、エンジン始動を待たせて変速制御を先にした場合、駆動力が出ないというラグ感をドライバーに与える。加えて、駆動力が出ないことで、ドライバーがアクセルを踏み増すことが予測され、アクセル踏み増しにより、エンジン始動開始時、急に駆動力が出て飛び出し感を与えるという懸念がある。すなわち、エンジン始動制御と変速制御を排他処理とした場合には、ラグや燃費へ跳ね返るばかりでなく、ドライバーによる駆動力コントロール性も確保されない、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、エンジンの始動/停止制御と自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置では、エンジンと、モータと、モード切り替え手段と、自動変速機と、エンジン始動/停止制御手段と、変速制御手段と、エンジン/変速協調制御手段と、を備える手段とした。
前記モータは、前記エンジンから駆動輪への駆動系に設けられ、前記エンジンの始動と前記駆動輪の駆動を行う。
前記モード切り替え手段は、前記エンジンと前記モータの連結部に設けられ、前記エンジンと前記モータを駆動源とするハイブリッド車モードと、前記モータを駆動源とする電気自動車モードと、を切り替える。
前記自動変速機は、前記モータと前記駆動輪との間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する。
前記エンジン始動/停止制御手段は、前記ハイブリッド車モードへのモード遷移時、始動要求に基づいて前記エンジンの始動制御を行い、前記電気自動車モードへのモード遷移時、停止要求に基づいて前記エンジンの停止制御を行う。
前記変速制御手段は、走行時、変速要求に基づいて前記自動変速機の変速段を現変速段から要求変速段へ移行する変速制御を行う。
前記エンジン/変速協調制御手段は、前記エンジンの始動/停止制御と前記自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで他方の制御を開始してもショックが許容値を越えない場合、要求タイミングで他方の制御を開始し、要求タイミングで他方の制御を開始するとショックが許容値を越える場合、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御を開始する。
【発明の効果】
【0007】
したがって、エンジン始動制御と変速制御を同時処理としてもショックが問題ない状況下では、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで応答良く他方の制御が開始される。また、エンジン始動制御と変速制御を同時処理とするとショックが問題ある状況下では、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御が開始される。
すなわち、ショックが問題ない状況下では、制御開始待ちをすることなく、エンジン始動制御と変速制御が高応答により同時処理される。また、ショックが問題ある状況下においても、ショックが問題ない状況に移行するまでの最小限の制御開始待ちにより、エンジン始動制御と変速制御が同時処理される。
この結果、エンジンの始動/停止制御と自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。
【図2】実施例1のATコントローラ7に設定されている自動変速機ATのシフトマップの一例を示す図である。
【図3】実施例1の統合コントローラ10のモード選択部に設定されているEV-HEV選択マップの一例を示す図である。
【図4】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATの一例を示すスケルトン図である。
【図5】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATでの変速段ごとの各摩擦要素の締結状態を示す締結作動表である。
【図6】実施例1の統合コントローラとATコントローラによるエンジン始動制御と変速制御のエンジン/変速協調制御系を示す制御ブロック図である。
【図7】実施例1のエンジン/変速協調制御系にて実行される始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例1のエンジン/変速協調制御系にて実行される変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】自動変速機ATの各摩擦要素から第2クラッチCL2を選定する方法を説明するための現変速段(CurGp)と次変速段(NextGp)での摩擦要素選定表を示すCL2要素選定図である。
【図10】1→2アップ変速時の変速指令ギア比NEXTGP_MAP・制御ギア比NEXTGP・現在ギア比CURGP・入力回転の関係に対し(1)〜(5)の各タイミングにて変速禁止や始動禁止や始動許可の設定を行う例を示す設定例説明図である。
【図11】始動中Up変速全域禁止タイミング(1)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【図12】変速前処理中始動禁止タイミング(2)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【図13】変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【図14】変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)での自動変速機ATにおける回転数変化を示す共線図である。
【図15】変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミング(4)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【図16】変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミング(5)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【0011】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(モード切り替え手段)と、モータ/ジェネレータMG(モータ)と、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、変速機入力軸INと、メカオイルポンプM-O/Pと、サブオイルポンプS-O/Pと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0012】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0013】
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づき第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、締結・半締結状態・解放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて完全締結を保ち、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14を用いたストローク制御により、完全締結〜スリップ締結〜完全解放までが制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
【0014】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(力行)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(回生)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータは、自動変速機ATの変速機入力軸INに連結されている。
【0015】
前記第2クラッチCL2は、前記モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装されたクラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づき第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、締結・スリップ締結・解放が制御される。この第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設される油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
【0016】
前記自動変速機ATは、有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える有段変速機であり、実施例1では前進7速/後退1速の変速段を持つ有段変速機としている。そして、実施例1では、前記第2クラッチCL2として、自動変速機ATとは独立の専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦要素のうち、所定の条件に適合する摩擦要素(クラッチやブレーキ)を選択している。
【0017】
前記自動変速機ATの変速機入力軸IN(=モータ軸)には、変速機入力軸INにより駆動されるメカオイルポンプM-O/Pが設けられている。そして、車両停止時等でメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が不足するとき、油圧低下を抑えるために電動モータにより駆動されるサブオイルポンプS-O/Pが、モータハウジング等に設けられている。なお、サブオイルポンプS-O/Pの駆動制御は、後述するATコントローラ7により行われる。
【0018】
前記自動変速機ATの変速機出力軸には、プロペラシャフトPSが連結されている。そして、このプロペラシャフトPSは、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0019】
このFRハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロールモード(以下、「WSCモード」という。)と、を有する。
【0020】
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放状態とし、モータ/ジェネレータMGの駆動力のみで走行するモードであり、モータ走行モード・回生走行モードを有する。この「EVモード」は、要求駆動力が低く、バッテリSOCが確保されているときに選択される。
【0021】
前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態として走行するモードであり、モータアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「HEVモード」は、要求駆動力が高いとき、あるいは、バッテリSOCが不足するようなときに選択される。
【0022】
前記「WSCモード」は、モータ/ジェネレータMGの回転数制御により、第2クラッチCL2をスリップ締結状態に維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態や運転者操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら走行するモードである。この「WSCモード」は、「HEVモード」の選択状態での停車時・発進時・減速時等のように、エンジン回転数がアイドル回転数を下回るような走行領域において選択される。
【0023】
次に、FRハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,5,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0024】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0025】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報を、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0026】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・半締結・解放を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0027】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図2に示すシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令を油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。前記シフトマップとは、図2に示すように、アクセル開度APOと車速VSPに応じてアップ変速線とダウン変速線を書き込んだマップをいう。
この変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2のスリップ締結を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。
【0028】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
【0029】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や他のセンサ・スイッチ類22からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0030】
この統合コントローラ10には、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図3に示すEV-HEV選択マップ上で存在する位置により最適な走行モードを検索し、検索した走行モードを目標走行モードとして選択するモード選択部を有する。このEV-HEV選択マップには、EV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「EVモード」から「HEVモード」へと切り替えるEV⇒HEV切替線と、HEV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」から「EVモード」へと切り替えるHEV⇒EV切替線と、「HEVモード」の選択時に運転点(APO,VSP)がWSC領域に入ると「WSCモード」へと切り替えるHEV⇒WSC切替線と、が設定されている。前記HEV⇒EV切替線と前記HEV⇒EV切替線は、EV領域とHEV領域を分ける線としてヒステリシス量を持たせて設定されている。前記HEV⇒WSC切替線は、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEngがアイドル回転数を維持する第1設定車速VSP1に沿って設定されている。但し、「EVモード」の選択中、バッテリSOCが所定値以下になると、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
【0031】
図4は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATの一例を示すスケルトン図である。
【0032】
前記自動変速機ATは、前進7速後退1速の有段式自動変速機であり、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGのうち、少なくとも一方からの駆動力が変速機入力軸Inputから入力され、4つの遊星ギアと7つの摩擦要素とによって回転速度が変速されて変速機出力軸Outputから出力される。
【0033】
変速ギア機構は、変速機入力軸Input側から変速機出力軸Output側までの軸上に、順に第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2による第1遊星ギアセットGS1及び第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4による第2遊星ギアセットGS2が配置されている。また、摩擦要素として第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3及び第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3、第4ブレーキB4が配置されている。また、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。
【0034】
前記第1遊星ギアG1は、第1サンギアS1と、第1リングギアR1と、第1ピニオンP1と、第1キャリアPC1と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第2遊星ギアG2は、第2サンギアS2と、第2リングギアR2と、第2ピニオンP2と、第2キャリアPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第3遊星ギアG3は、第3サンギアS3と、第3リングギアR3と、第3ピニオンP3と、第3キャリアPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第4遊星ギアG4は、第4サンギアS4と、第4リングギアR4と、第4ピニオンP4と、第4キャリアPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0035】
前記変速機入力軸Inputは、第2リングギアR2に連結され、エンジンEngとモータージェネレータMGの少なくとも一方からの回転駆動力を入力する。前記変速機出力軸Outputは、第3キャリアPC3に連結され、出力回転駆動力を、ファイナルギア等を介して駆動輪(左右後輪RL,RR)に伝達する。
【0036】
前記第1リングギアR1と第2キャリアPC2と第4リングギアR4とは、第1連結メンバM1により一体的に連結される。前記第3リングギアR3と第4キャリアPC4とは、第2連結メンバM2により一体的に連結される。前記第1サンギアS1と第2サンギアS2とは、第3連結メンバM3により一体的に連結される。
【0037】
前記第1クラッチC1(=インプットクラッチI/C)は、変速機入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。前記第2クラッチC2(=ダイレクトクラッチD/C)は、第4サンギアS4と第4キャリアPC4とを選択的に断接するクラッチである。前記第3クラッチC3(=H&LRクラッチH&LR/C)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4とを選択的に断接するクラッチである。前記第2ワンウェイクラッチF2(=1&2速ワンウェイクラッチ1&2OWC)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4の間に配置されている。前記第1ブレーキB1(=フロントブレーキFr/B)は、第1キャリアPC1の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第1ワンウェイクラッチF1(=1速ワンウェイクラッチ1stOWC)は、第1ブレーキB1と並列に配置されている。前記第2ブレーキB2(=ローブレーキLOW/B)は、第3サンギアS3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第3ブレーキB3(=2346ブレーキ2346/B)は、第1サンギアS1及び第2サンギアS2を連結する第3連結メンバM3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第4ブレーキB4(=リバースブレーキR/B)は、第4キャリアPC3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。
【0038】
図5は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATでの変速段ごとの各摩擦要素の締結状態を示す締結作動表である。尚、図5において、○印はドライブ状態で当該摩擦要素が油圧締結であることを示し、(○)印はコースト状態で当該摩擦要素が油圧締結(ドライブ状態ではワンウェイクラッチ作動)であることを示し、無印は当該摩擦要素が解放状態であることを示す。
【0039】
上記のように構成された変速ギア機構に設けられた各摩擦要素のうち、締結していた1つの摩擦要素を解放し、解放していた1つの摩擦要素を締結するという架け替え変速を行うことで、下記のように、前進7速で後退1速の変速段を実現することができる。
【0040】
すなわち、「1速段」では、第2ブレーキB2のみが締結状態となり、これにより第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「2速段」では、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が締結状態となり、第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「3速段」では、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第2クラッチC2が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2はいずれも係合しない。「4速段」では、第3ブレーキB3、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「5速段」では、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「6速段」では、第3ブレーキB3、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となる。「7速段」では、第1ブレーキB1、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1が係合する。「後退速段」では、第4ブレーキB4、第1ブレーキB1及び第3クラッチC3が締結状態となる。
【0041】
図6は、実施例1の統合コントローラ10とATコントローラ7によるエンジン始動制御と変速制御のエンジン/変速協調制御系を示す制御ブロック図である。
【0042】
エンジン/変速協調制御系の特徴は、エンジン制御に関する情報を持つ統合コントローラ10側で変速禁止フラグを設定し、ATコントローラ7に出力する。また、変速制御に関する情報を持つATコントローラ7側で始動禁止フラグを設定し、統合コントローラ10に出力する。例えば、統合コントローラ10側で変速禁止フラグと始動禁止フラグを設定する場合には、ATコントローラ7から変速制御に関するきめ細かな情報を入力する必要がある。これに対し、ATコントローラ7から変速制御に関する情報を入力することなく、精度の高い始動禁止フラグの設定ができる。
【0043】
前記統合コントローラ10は、図6に示すように、始動方法判定部10aと、フェール・システム要求判定部10bと、始動要求フラグ生成部10cと、変速禁止判定部10d(変速禁止フラグ設定手段)と、停止禁止判定部10eと、エンジン始動禁止判定部10fと、を備えている。
【0044】
前記始動方法判定部10aは、通常始動かコースト始動かを判定し、判定結果をエンジン始動禁止判定部10fに出力する。前記フェール・システム要求判定部10bは、フェールセーフ要求やコンポ保護要求を判定し、判定結果をエンジン始動禁止判定部10fに出力する。前記始動要求フラグ生成部10cは、エンジン始動要求フラグを生成し、始動制御部71に出力する。前記変速禁止判定部10d(変速禁止フラグ設定手段)は、変速禁止フラグを設定し、変速制御部72に出力する。前記停止禁止判定部10eは、エンジン停止禁止を判定する。前記エンジン始動禁止判定部10fは、始動禁止フラグ生成部71a(始動禁止フラグ設定手段)からの始動禁止フラグと、始動方法判定部10aからの判定結果と、フェール・システム要求判定部10bからの判定結果を入力し、エンジン始動禁止条件の優先度を含めて最終的にエンジン始動禁止を判定する。
なお、優先度は、1:フェールセーフ、2:コンポ保護、3:性能要求、4:燃費・排気要求である。1,2の情報は、フェール・システム要求判定部10bから取得され、3,4の情報は、始動禁止フラグ生成部71aからの始動禁止フラグにより取得する。
【0045】
前記ATコントローラ7は、図6に示すように、始動制御部71と、変速制御部72と、を備えている。前記始動制御部71は、始動禁止フラグ生成部71aと、Up+始動制御中チェンジマインド禁止部71bと、始動制御中Up禁止Down許可部71cと、CL2要素選定部71dと、を有する。前記変速制御部72は、変速中チェンジマインド禁止部72aを有する。
【0046】
前記始動禁止フラグ生成部71aは、変速種・マニュアルモード(Mモード)の有無・変速フェーズ(締結側)・変速フェーズ(解放側)・ドライブ/コースト判定情報を入力する。そして、始動禁止フラグ(ゼロ:許可、1:禁止)を生成し、統合コントローラ10のエンジン始動禁止判定部10fに対し、始動禁止フラグ情報を出力する。
なお、変速フェーズは、前処理/トルクフェーズ/イナーシャフェーズ/CL同期フェーズ/後処理で個別に始動禁止フラグをセット・クリアする。また、自動変速機ATでUp/Downの変速を手動によるレバー操作により行うマニュアルモードの有無は、Mモード判定部23から取得する。
【0047】
前記CL2要素選定部71dは、各変速段においては、図9に示すように、自動変速機ATの摩擦要素の中から、1速ではLow/B、2速ではLow/B、3速ではD/C、4速ではH/C、5速ではH/C、6速ではI/C、7速ではI/C、というように、CL2要素を選定する。
そして、アップ変速(N→N+1)では、アップ変速後のN+1にてCL2要素を決める。これは、N+1速始動として扱い、始動制御中にアップ回転変化を同時に行なうためである。
また、ダウン変速(N→N-1)では、ダウン変速前のNにてCL2要素を決める。これは、N速始動として扱い、回転が低い状態で始動を行なうためである。
但し、3→2ダウン変速は、例外として、CL2要素をダウン変速後のLow/Bとする。これは、トルク分担比が2速と3速で差異が大きく、2速で設定する方が、ショック感度が良いためである。
【0048】
図7は、実施例1のエンジン/変速協調制御系にて実行される始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御処理の流れを示すフローチャートである(エンジン/変速協調制御手段)。以下、図7の各ステップについて説明する。
【0049】
ステップS11では、エンジンEngの始動要求に基づき、エンジン始動制御を開始し、ステップS12へ進む。
【0050】
ステップS12では、ステップS11でのエンジン始動制御開始に続き、変速要求有りか否かを判断する。YES(変速要求有り)の場合はステップS15へ進み、NO(変速要求無し)の場合はステップS13へ進む。
【0051】
ステップS13では、ステップS12での変速要求無しとの判断に続き、エンジン始動制御を実行し、ステップS14へ進む。
【0052】
ステップS14では、ステップS13でのエンジン始動制御に続き、エンジン始動制御が終了したか否かを判断する。YES(エンジン始動制御終了)の場合はエンドへ進み、NO(エンジン始動制御未終了)の場合はステップS12へ戻る。
【0053】
ステップS15では、ステップS12での変速要求有りとの判断に続き、変速禁止フラグ=1(禁止)であるか否かを判断する。YES(変速禁止フラグ=1)の場合はステップS16へ進み、NO(変速禁止フラグ=0)の場合はステップS17へ進む。
ここで、変速禁止フラグ=1(禁止)は、下記の(1)〜(3)のとき設定し、それ以外のときは、変速禁止フラグ=0(許可)とする。
(1) モータ回転数制御中の変速であり、変速制御側でギア比の判定ができないとき。
具体例としては、エンジン始動中におけるアップ変速全域禁止とする。また、WSCモード中におけるアップ/ダウン変速共に全域禁止とする。
(2) アクセル一定による変速であり、ドライバーからのショック低減要求が高いとき。
具体例としては、エンジン始動中におけるアクセル一定によるパワーオンダウン変速を禁止する。但し、アクセル開度条件により禁止領域を設定する。
(3) 変速機入力トルクの管理が難しい変速であり、ショックに影響する可能性が高いとき。
具体例としては、コーストでのエンジン始動時におけるアップ/ダウン変速共に全域禁止する。バックアップ始動時(CL2滑らせない始動)におけるアップ/ダウン変速共に全域禁止する。
【0054】
ステップS16では、ステップS15での変速禁止フラグ=1であるとの判断に続き、変速要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求であるか否かを判断する。YES(変速要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求)の場合はステップS17へ進み、NO(変速要求がフェールセーフ要求でもコンポ保護要求でもない)の場合はステップS15へ戻る。
【0055】
ステップS17では、ステップS15での変速禁止フラグ=0であるとの判断、あるいは、ステップS16での変速要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求であるとの判断に続き、変速制御を開始し、ステップS18へ進む。
【0056】
ステップS18では、ステップS17での変速制御開始、あるいは、ステップS19での始動/変速制御未終了であるとの判断に続き、エンジン始動制御と変速制御の同時処理を行い、ステップS19へ進む。
【0057】
ステップS19では、ステップS18でのエンジン始動制御と変速制御の同時処理に続き、エンジン始動制御と変速制御の何れの制御も終了したか否かを判断する。YES(始動/変速制御終了)の場合はエンドへ進み、NO(始動/変速制御未終了)の場合はステップS18へ戻る。
【0058】
図8は、実施例1のエンジン/変速協調制御系にて実行される変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御処理の流れを示すフローチャートである(エンジン/変速協調制御手段)。以下、図8の各ステップについて説明する。
【0059】
ステップS21では、変速要求に基づき、変速制御を開始し、ステップS22へ進む。
【0060】
ステップS22では、ステップS21での変速制御開始に続き、エンジン始動要求有りか否かを判断する。YES(エンジン始動要求有り)の場合はステップS25へ進み、NO(エンジン始動要求無し)の場合はステップS23へ進む。
【0061】
ステップS23では、ステップS22でのエンジン始動要求無しとの判断に続き、変速制御を実行し、ステップS24へ進む。
【0062】
ステップS24では、ステップS23での変速制御に続き、変速制御が終了したか否かを判断する。YES(変速制御終了)の場合はエンドへ進み、NO(変速制御未終了)の場合はステップS22へ戻る。
【0063】
ステップS25では、ステップS22でのエンジン始動要求有りとの判断に続き、始動禁止フラグ=1(禁止)であるか否かを判断する。YES(始動禁止フラグ=1)の場合はステップS26へ進み、NO(始動禁止フラグ=0)の場合はステップS27へ進む。
ここで、始動禁止フラグ=1(禁止)は、下記の(1)〜(4)のとき設定し、それ以外のときは、始動禁止フラグ=0(許可)とする。
(1) エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2(スリップクラッチ)と、変速に関与する変速クラッチと、の容量バランスにより、第2クラッチCL2がスリップを維持できない変速フェーズのとき。
具体例としては、1→2アップ変速での前処理中におけるエンジン始動を禁止する。
(2) エンジン始動制御を入れると、エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と、変速での締結クラッチと、が同じクラッチになる変速中のとき。
具体例としては、2→3アップ変速中と3→4アップ変速中におけるエンジン始動を禁止する。
(3) ワンウェイクラッチを用いた変速中のとき。
具体例としては、3→2ダウン変速中と2→1ダウン変速中におけるエンジン始動を禁止する。
(4) 変速においてモータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域のとき。
具体例としては、変速フェーズがCL同期フェーズ中の領域におけるエンジン始動を禁止する。
【0064】
ステップS26では、ステップS25での始動禁止フラグ=1であるとの判断に続き、始動要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求であるか否かを判断する。YES(始動要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求)の場合はステップS27へ進み、NO(始動要求がフェールセーフ要求でもコンポ保護要求でもない)の場合はステップS25へ戻る。
【0065】
ステップS27では、ステップS25での始動禁止フラグ=0であるとの判断、あるいは、ステップS26での始動要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求であるとの判断に続き、エンジン始動制御を開始し、ステップS28へ進む。
【0066】
ステップS28では、ステップS27でのエンジン始動制御開始、あるいは、ステップS29での始動/変速制御未終了であるとの判断に続き、エンジン始動制御と変速制御の同時処理を行い、ステップS29へ進む。
【0067】
ステップS29では、ステップS28でのエンジン始動制御と変速制御の同時処理に続き、エンジン始動制御と変速制御の何れの制御も終了したか否かを判断する。YES(始動/変速制御終了)の場合はエンドへ進み、NO(始動/変速制御未終了)の場合はステップS28へ戻る。
【0068】
次に、作用を説明する。
実施例1のFRハイブリッド車両の制御装置における作用を、「始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御作用」、「変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御作用」、「1→2アップ変速での設定例に基づく作用」に分けて説明する。
【0069】
[始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御作用]
実施例1の始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御作用を、図7のフローチャートに基づき説明する。
【0070】
エンジン始動制御の開始から終了までのエンジン始動制御中に変速要求があり、かつ、変速禁止フラグが変速禁止フラグ=0(許可)であるときには、図7のフローチャートにおいて、ステップS11→ステップS12→ステップS15→ステップS17へと進む。つまり、変速要求タイミングで変速制御が開始される。そして、ステップS17からは、ステップS18→ステップS19へと進み、ステップS18→ステップS19へと進む流れを繰り返すことでエンジン始動制御と変速制御を同時処理とする。そして、ステップS19にて始動/変速制御終了と判断されると、始動/変速の協調制御を終了する。
【0071】
エンジン始動制御の開始から終了までのエンジン始動制御中に変速要求があり、かつ、変速禁止フラグが変速禁止フラグ=1(禁止)で、変速要求がフェールセーフ要求やコンポ保護要求ではないときには、図7のフローチャートにおいて、ステップS11→ステップS12→ステップS15→ステップS16へと進み、変速禁止フラグ=1である間は、ステップS15→ステップS16へと進む流れが繰り返される。そして、変速禁止フラグ=1から変速禁止フラグ=0に書き換えられると、ステップS15からステップS17へと進み、フラグ書き換えタイミングにて変速制御が開始される。そして、ステップS17からは、ステップS18→ステップS19へと進み、ステップS18→ステップS19へと進む流れを繰り返すことでエンジン始動制御と変速制御を同時処理とする。そして、ステップS19にて始動/変速制御終了と判断されると、始動/変速の協調制御を終了する。
【0072】
したがって、エンジン始動制御と変速制御を同時処理としてもショックが問題ない状況下(変速禁止フラグ=0)では、エンジン始動制御中に変速要求があったとき、変速要求タイミングで応答良く変速制御が開始される。また、エンジン始動制御と変速制御を同時処理とするとショックが問題ある状況下(変速禁止フラグ=1)では、エンジン始動制御中に変速要求があったとき、変速制御を許可できるタイミング(フラグ書き換えタイミング)まで待って変速制御が開始される。
【0073】
すなわち、ショックが問題ない状況下では、変速制御の開始待ちをすることなく、エンジン始動制御と変速制御が高応答により同時処理される。また、ショックが問題ある状況下においても、ショックが問題ない状況に移行するまでの最小限による変速制御の開始待ちにより、エンジン始動制御と変速制御が同時処理される。
このため、エンジン始動制御中に変速要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【0074】
ここで、統合コントローラ10からの指令により行われる「エンジン始動制御」について説明する。
EVモードでの走行状態でエンジン始動線をアクセル開度APOが越えるとエンジン始動要求が出され、このエンジン始動要求に基づいて「エンジン始動制御」を開始する。エンジン始動制御では、まず、第2クラッチCL2を半クラッチ状態にスリップさせるように、第2クラッチCL2のトルク容量を制御する。そして、第2クラッチCL2のスリップ開始を判断した後、第1クラッチCL1の締結を開始し、モータ/ジェネレータMGを始動モータとするクランキングによりエンジン回転を上昇させる。そして、エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジンEngを燃焼作動させ、モータ回転数とエンジン回転数が近くなったところで第1クラッチCL1を完全に締結する。その後、第2クラッチCL2をロックアップさせてHEVモードに遷移させる。
【0075】
次に、「エンジン始動制御」とは独立に、ATコントローラ7からの指令により行われる「変速制御」について説明する。
走行状態で、運転点(VSP,APO)が、図2に示すシフトマップ上でアップ変速線またはダウン変速線を横切ると変速要求が出され、この変速要求に基づいて「変速制御」を開始する。変速制御では、基本的に、締結されている1つの摩擦要素を解放し、解放されている1つの摩擦要素を締結するという掛け替え油圧制御により行われる。この変速制御は、前処理制御→トルクフェーズ制御→イナーシャフェーズ制御→CL同期フェーズ制御→後処理制御へと移行して変速を完了する。このとき、変速開始から変速終了までを、前処理/トルクフェーズ/イナーシャフェーズ/CL同期フェーズ/後処理というように個別に分けて管理している。このフェーズ個別管理は、タイマー情報や自動変速機ATの入出力回転数から演算されるギア比変化情報、等を用い、変速の進行度合いを監視することで行っている。以下、変速禁止フラグの設定作用について説明する。
【0076】
実施例1では、モータ回転数制御中の変速であり、変速制御側でギア比の判定ができないとき、変速禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、エンジン始動制御やWSCモード中は、モータ回転数制御により第2クラッチCL2のスリップ制御が行われる。このとき、変速制御を入れると、変速制御側では変速の進行を監視できなくなり、クラッチの解放・締結状態が読めなく、大きな変速ショックが出てしまう可能性がある。
したがって、この条件に合致するエンジン始動中においてアップ変速全域禁止とし、WSCモード中においてアップ/ダウン変速共に全域禁止とする。このため、変速制御を入れるとクラッチの解放・締結状態が読めない走行状況において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
なお、エンジン始動中におけるダウン変速は、主にドライバーのアクセル踏み込み操作により発生するため、ドライバーの駆動力コントロール性を重視し、ラグを無くすために変速禁止フラグ=0(許可)する。
【0077】
実施例1では、アクセル一定による変速であり、ドライバーからのショック低減要求が高いとき、変速禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、アクセル操作量を一定に保ったままでの走行中は、ラグ感度とショック感度のうち、ショック感度が高くなる。
したがって、この条件に合致するエンジン始動中のアクセル一定によるパワーオンダウン変速の場合、ラグ感度よりもショック感度を優先して禁止する。このため、ドライバーからのショック低減要求が高い運転状態において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0078】
実施例1では、変速機入力トルクの管理が難しい変速であり、ショックに影響する可能性が高いとき、変速禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、アクセル足離しによるコースト走行時や第2クラッチCL2滑らせないバックアップ始動時には、変速機入力トルクの管理が難しく、エンジン始動中に変速制御を入れると、大きなショックは出る可能性が高くなる。
したがって、この条件に合致するコーストでのエンジン始動時においてアップ/ダウン変速共に全域禁止し、バックアップ始動時においてアップ/ダウン変速共に全域禁止する。このため、変速機入力トルクの管理が難しい走行状況において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0079】
[変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御作用]
実施例1の変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御作用を、図8のフローチャートに基づき説明する。
【0080】
変速制御の開始から終了までの変速制御中にエンジン始動要求があり、かつ、始動禁止フラグが始動禁止フラグ=0(許可)であるときには、図8のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS25→ステップS27へと進む。つまり、エンジン始動要求タイミングでエンジン始動制御が開始される。そして、ステップS27からは、ステップS28→ステップS29へと進み、ステップS28→ステップS29へと進む流れを繰り返すことでエンジン始動制御と変速制御を同時処理とする。そして、ステップS29にて始動/変速制御終了と判断されると、始動/変速の協調制御を終了する。
【0081】
変速制御の開始から終了までの変速制御中にエンジン始動要求があり、かつ、始動禁止フラグが始動禁止フラグ=1(禁止)で、始動要求がフェールセーフ要求やコンポ保護要求ではないときには、図8のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS25→ステップS26へと進み、始動禁止フラグ=1である間は、ステップS25→ステップS26へと進む流れが繰り返される。そして、始動禁止フラグ=1から始動禁止フラグ=0に書き換えられると、ステップS25からステップS27へと進み、フラグ書き換えタイミングにてエンジン始動制御が開始される。そして、ステップS27からは、ステップS28→ステップS29へと進み、ステップS28→ステップS29へと進む流れを繰り返すことでエンジン始動制御と変速制御を同時処理とする。そして、ステップS29にて始動/変速制御終了と判断されると、始動/変速の協調制御を終了する。
【0082】
したがって、エンジン始動制御と変速制御を同時処理としてもショックが問題ない状況下(始動禁止フラグ=0)では、変速制御中にエンジン始動要求があったとき、エンジン始動要求タイミングで応答良くエンジン始動制御が開始される。また、エンジン始動制御と変速制御を同時処理とするとショックが問題ある状況下(始動禁止フラグ=1)では、変速制御中にエンジン始動要求があったとき、エンジン始動制御を許可できるタイミング(フラグ書き換えタイミング)まで待ってエンジン始動制御が開始される。
【0083】
すなわち、ショックが問題ない状況下では、エンジン始動制御の開始待ちをすることなく、エンジン始動制御と変速制御が高応答により同時処理される。また、ショックが問題ある状況下においても、ショックが問題ない状況に移行するまでの最小限によるエンジン始動制御の開始待ちにより、エンジン始動制御と変速制御が同時処理される。
このため、変速制御中にエンジン始動要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。以下、始動禁止フラグの設定作用について説明する。
【0084】
実施例1では、エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と、変速に関与する変速クラッチと、の容量バランスにより、第2クラッチCL2がスリップを維持できない変速フェーズのとき、始動禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、変速制御中、第2クラッチCL2がスリップを維持できない状況でエンジン始動制御を入れると、大きな始動ショックが発生するおそれがある。
したがって、この条件に合致する1→2アップ変速での前処理中においてエンジン始動を禁止する。このため、エンジン始動制御を入れると第2クラッチCL2がスリップを維持できない状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる始動ショックの発生を未然に防止できる。
【0085】
実施例1では、エンジン始動制御を入れると、エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と、変速での締結クラッチと、が同じクラッチになる変速中のとき、始動禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と、変速での締結クラッチが同じクラッチであると、強制スリップインができず、大きな始動ショックが発生するおそれがある。
したがって、この条件に合致する2→3アップ変速中と3→4アップ変速中においてエンジン始動を禁止する。このため、エンジン始動制御を入れるとエンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と変速での締結クラッチが同じクラッチとなる状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる始動ショックの発生を未然に防止できる。
【0086】
実施例1では、ワンウェイクラッチを用いた変速中のとき、始動禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、ワンウェイクラッチを用いた変速中にエンジン始動制御を入れると、ワンウェイクラッチの衝突ショックが発生するおそれがある。
したがって、この条件に合致する3→2ダウン変速中と2→1ダウン変速中においてエンジン始動を禁止する。このため、ワンウェイクラッチを用いた変速が行われている状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる衝突ショックの発生を未然に防止できる。
【0087】
実施例1では、変速においてモータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域のとき、始動禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、モータ回転数制御が行われている変速中にエンジン始動制御が入ると、第2クラッチCL2のスリップを誤判定してしまい、飛び出し感が出てしまうおそれがある。
したがって、この条件に合致する変速フェーズがCL同期フェーズ中の領域においてエンジン始動を禁止する。このため、モータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域の状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる飛び出し感の発生を未然に防止できる。
【0088】
[1→2アップ変速での設定例に基づく作用]
図10は、1→2アップ変速時の変速指令ギア比NEXTGP_MAP・制御ギア比NEXTGP・現在ギア比CURGP・入力回転の関係に対し(1)〜(5)の各タイミングにて変速禁止や始動禁止や始動許可の設定を行う例を示す設定例説明図である。
なお、「NEXTGP_MAP」とは、変速指令ギア比であり、図2に示すシフトマップ上で運転点が変速線を横切ったときに出力される。「NEXTGP」とは、制御ギア比であり、各変速制御が確定し、変速制御が開始される時に出力される。「CURGP」とは、現在ギア比であり、各変速制御の終了時に出力される。
(1)は、エンジン始動中はアップ変速を禁止する排他処理による始動中Up変速全域禁止タイミングである。
(2)は、変速のうち前処理中はエンジン始動を禁止する変速前処理中始動禁止タイミングである。
(3)は、変速のうちトルクフェーズ中であればエンジン始動を許可する変速トルクフェーズ中始動許可タイミングである。
(4)は、変速のうちイナーシャフェーズ中であればエンジン始動を許可する変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミングである。
(5)は、変速のうちCL同期フェーズ中であればエンジン始動を禁止する変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミングである。
以下、各作用をタイミング(1)〜(5)に分けて説明する。
【0089】
(始動中Up変速全域禁止タイミング(1)での排他制御作用)
図11は、始動中Up変速全域禁止タイミング(1)でのタイムチャートである。以下、図11に基づいて始動中Up変速全域禁止タイミング(1)での排他制御作用を説明する。
エンジン始動中はアップ変速を禁止する排他処理による始動中Up変速全域禁止タイミングの場合、時刻t1にてエンジン始動要求が出されると、時刻t1からエンジン始動制御が開始され、時刻t4にてエンジン始動制御を終了する。変速制御側では、時刻t1の直後の時刻t2にて変速要求が出されても、時刻t1〜時刻t4のエンジン始動制御中は変速禁止フラグが設定されることで、エンジン始動制御が終了する時刻t4から変速制御が開始されることになる。すなわち、エンジン始動中はアップ変速を禁止する排他処理が行われることになり、この場合、排他処理により入力回転が高くなることで、燃費の悪化となる。また、1速での駆動力の伝達で加速度Gが上昇した後、続いて2速へのアップ変速により加速Gが低下するというように、ドライバーに対し駆動力違和感を与えることになる。
【0090】
(変速前処理中始動禁止タイミング(2)での協調制御作用)
図12は、変速前処理中始動禁止タイミング(2)でのタイムチャートである。以下、図12に基づいて変速前処理中始動禁止タイミング(2)での協調制御作用を説明する。
変速のうち前処理中はエンジン始動を禁止する変速前処理中始動禁止タイミングの場合、時刻t1にて変速が開始されると、時刻t1〜時刻t3が前処理中となり、この間は始動禁止フラグが設定される。このため、時刻t2のタイミングにてエンジン始動要求があっても、エンジン始動制御の開始が時刻t3まで待たれることになる。すなわち、変速制御中にエンジン始動要求があった場合、変速フェーズのうち前処理の間は、エンジン始動を入れると、第2クラッチCL2のスリップを維持できないため、この前処理の領域では、始動禁止フラグを設定することに該当する。そして、トルクフェーズ以降になると、変速制御とエンジン始動制御が同時処理される。
【0091】
(変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)での協調制御作用)
図13は、変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)でのタイムチャートである。以下、図13に基づいて変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)での協調制御作用を説明する。
変速のうちトルクフェーズ中であればエンジン始動を許可する変速トルクフェーズ中始動許可タイミングの場合、時刻t1にて変速が開始されると、時刻t1〜時刻t2が前処理中となり、この間は始動禁止フラグが設定される。そして、トルクフェーズ中である時刻t3のタイミングにてエンジン始動要求があると、直ちに時刻t3からエンジン始動制御が開始される。すなわち、変速フェーズのうち、トルクフェーズ中にエンジン始動要求があると、エンジン始動要求のタイミングでエンジン始動制御を開始し、それ以降は、変速制御とエンジン始動制御が同時処理される。
【0092】
ここで、前処理の間は禁止しているエンジン始動を、トルクフェーズ中であれば許可する理由を説明する。
図14は、変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)での自動変速機ATにおける回転数変化を示す共線図である。
1→2アップ変速時は、Low/Bを第2クラッチCL2とし、エンジン始動制御中にモータ回転数制御により第2クラッチCL2のスリップ維持が必要である。
1→2アップ変速は、図14(a)の1速インギア状態(図13の時刻t1〜t3)→図14(b)のトルク/イナーシャフェーズ状態(図13の時刻t3〜t5)→図14(c)の同期フェーズ状態(図13の時刻t5〜t7)→図14(d)の2速インギア状態(図13の時刻t7〜)を経過して行われる。このとき、1→2アップ変速での締結要素である2346/Bの容量が、トルクフェーズやイナーシャフェーズにおいて不足する。このため、図14(b),(c)の点線に示すように、入力回転が下がってしまい、第2クラッチCL2であるLow/Bのスリップを維持できなくなる。つまり、2346/Bが容量を持つまでに入力回転を1速以下の回転に引き下げてしまうと、ショックやG引きが出てしまう可能性がある。
この入力回転を引き下げる要因は、第1クラッチCL1を掴みすぎ、あるいは、MGトルク不足による変速機入力トルクの不足にあることを解明した。
したがって、トルクフェーズ中であれば積極的にエンジン始動制御の開始を許可することで、変速機入力トルクの不足が解消され、図14の実線に示すように、第2クラッチCL2(Low/B)のスリップ維持を行うことができる。
【0093】
(変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミング(4)での協調制御作用)
図15は、変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミング(4)でのタイムチャートである。以下、図15に基づいて変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミング(4)での協調制御作用を説明する。
変速のうちイナーシャフェーズ中であればエンジン始動を許可する変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミングの場合、変速フェーズのうちイナーシャフェーズの開始域である時刻t4のタイミングにてエンジン始動要求があると、直ちに時刻t4からエンジン始動制御が開始され、時刻t7にてエンジン始動制御を終了する。一方、変速制御側は、エンジン始動制御からの要求によりモータ回転数制御が行われることで、時刻t4から時刻t7まで次変速の変速禁止フラグが設定される。
【0094】
(変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミング(5)での協調制御作用)
図16は、変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミング(5)でのタイムチャートである。以下、図16に基づいて変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミング(5)での協調制御作用を説明する。
変速のうちCL同期フェーズ中であればエンジン始動を禁止する変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミングの場合、CL同期フェーズ中(時刻t4〜時刻t6)の時刻t5のタイミングでエンジン始動要求があると、時刻t6までエンジン始動制御の開始が待たれる。そして、エンジン始動制御側では、時刻t6からエンジン始動制御が開始され、時刻t8で終了する。変速制御側では、時刻t6から時刻t7までエンジン始動制御からの要求によりモータ回転数制御が行われることで、次変速を禁止する変速禁止フラグが設定される。但し、現変速は続行するため、時刻t6の直後に変速を終了させる。
【0095】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0096】
(1) エンジンEngと、
前記エンジンEngから駆動輪RL,RRへの駆動系に設けられ、前記エンジンEngの始動と前記駆動輪RL,RRの駆動を行うモータ(モータ/ジェネレータMG)と、
前記エンジンEngと前記モータ(モータ/ジェネレータMG)の連結部に設けられ、前記エンジンEngと前記モータ(モータ/ジェネレータMG)を駆動源とするハイブリッド車モード(HEVモード)と、前記モータ(モータ/ジェネレータMG)を駆動源とする電気自動車モード(EVモード)と、を切り替えるモード切り替え手段(第1クラッチCL1)と、
前記モータ(モータ/ジェネレータMG)と前記駆動輪RL,RRとの間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する自動変速機ATと、
前記ハイブリッド車モード(HEVモード)へのモード遷移時、始動要求に基づいて前記エンジンEngの始動制御を行い、前記電気自動車モード(EVモード)へのモード遷移時、停止要求に基づいて前記エンジンEngの停止制御を行うエンジン始動/停止制御手段(統合コントローラ10)と、
走行時、変速要求に基づいて前記自動変速機ATの変速段を現変速段から要求変速段へ移行する変速制御を行う変速制御手段(ATコントローラ7)と、
前記エンジンEngの始動/停止制御と前記自動変速機ATの変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで他方の制御を開始してもショックが許容値を越えない場合、要求タイミングで他方の制御を開始し、要求タイミングで他方の制御を開始するとショックが許容値を越える場合、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御を開始するエンジン/変速協調制御手段(図6〜図8)と、
を備える。
このため、エンジンEngの始動/停止制御と自動変速機ATの変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【0097】
(2) 前記エンジン始動制御を開始した後、変速制御を入れるとショックに影響する条件が成立するとき、変速禁止フラグを設定する変速禁止フラグ設定手段(変速禁止判定部10d)を設け、
前記エンジン/変速協調制御手段(図7)は、前記エンジン始動制御中に変速制御要求があったとき、変速禁止フラグが非設定であれば、要求タイミングで変速制御を開始し、変速禁止フラグが設定であれば、変速禁止フラグが非設定になるタイミングまで待って変速制御を開始する。
このため、エンジン始動制御中に変速制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【0098】
(3) 前記変速禁止フラグ設定手段(変速禁止判定部10d)は、モータ回転数制御中の変速であり、変速制御側でギア比の判定ができないとき、変速禁止フラグを設定する。
このため、(2)の効果に加え、変速制御を入れるとクラッチの解放・締結状態が読めない走行状況において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0099】
(4) 前記変速禁止フラグ設定手段(変速禁止判定部10d)は、アクセル一定による変速であり、ドライバーからのショック低減要求が高いとき、変速禁止フラグを設定する。
このため、(2),(3)の効果に加え、ドライバーからのショック低減要求が高い運転状態において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0100】
(5) 前記変速禁止フラグ設定手段(変速禁止判定部10d)は、変速機入力トルクの管理が難しい変速であり、ショックに影響する可能性が高いとき、変速禁止フラグを設定する。
このため、(2)〜(4)の効果に加え、変速機入力トルクの管理が難しい走行状況において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0101】
(6) 前記変速制御を開始した後、エンジン始動制御を入れるとショックに影響する条件が成立するとき、始動禁止フラグを設定する始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)を設け、
前記エンジン/変速協調制御手段(図8)は、前記変速制御中にエンジン始動制御要求があったとき、始動禁止フラグが非設定であれば、要求タイミングでエンジン始動制御を開始し、始動禁止フラグが設定であれば、始動禁止フラグが非設定になるタイミングまで待ってエンジン始動制御を開始する。
このため、変速制御中にエンジン始動制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【0102】
(7) 前記始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)は、始動制御でスリップさせるスリップクラッチと、変速に関与する変速クラッチと、の容量バランスにより、前記スリップクラッチがスリップを維持できない変速フェーズのとき、始動禁止フラグを設定する。
このため、(6)の効果に加え、エンジン始動制御を入れると第2クラッチCL2がスリップを維持できない状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる始動ショックの発生を未然に防止できる。
【0103】
(8) 前記始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)は、始動制御を入れると、始動制御でスリップさせるスリップクラッチと、変速での締結クラッチと、が同じクラッチになる変速中のとき、始動禁止フラグを設定する。
このため、(6),(7)の効果に加え、エンジン始動制御を入れるとエンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と変速での締結クラッチが同じクラッチとなる状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる始動ショックの発生を未然に防止できる。
【0104】
(9) 前記始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)は、ワンウェイクラッチを用いた変速中のとき、始動禁止フラグを設定する。
このため、(6)〜(8)の効果に加え、ワンウェイクラッチを用いた変速が行われている状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる衝突ショックの発生を未然に防止できる。
【0105】
(10) 前記始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)は、変速においてモータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域のとき、始動禁止フラグを設定する。
このため、(6)〜(9)の効果に加え、モータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域の状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる飛び出し感の発生を未然に防止できる。
【0106】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0107】
実施例1では、エンジン始動制御と変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったときの例を示した。しかし、エンジン停止制御と変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があった場合にも勿論、本発明の協調制御を用いることができる。
【0108】
実施例1では、第2クラッチCL2を、有段式の自動変速機ATに内蔵した摩擦要素の中から選択する例を示した。しかし、自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設けても良く、例えば、モータ/ジェネレータMGと変速機入力軸との間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例や、変速機出力軸と駆動輪の間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例も含まれる。
【0109】
実施例1では、自動変速機ATとして、前進7速後退1速の有段式の自動変速機を用いる例を示した。しかし、変速段数はこれに限られるものではなく、変速段として2速段以上の複数の変速段を有する自動変速機であれば良い。
【0110】
実施例1では、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段として、第1クラッチCL1を用いる例を示した。しかし、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段としては、例えば、プラネタリギア等のように、クラッチを用いることなくクラッチ機能を発揮するような差動装置や動力分割装置を用いる例としても良い。
【0111】
実施例1では、制御装置を後輪駆動のハイブリッド車両に対し適用した例を示したが、前輪駆動のハイブリッド車両に対しても適用することができる。要するに、自動変速機が搭載され、走行モードとして、HEVモードとEVモードを有するハイブリッド車両であれば適用できる。
【符号の説明】
【0112】
Eng エンジン
CL1 第1クラッチ(モード切り替え手段)
MG モータ/ジェネレータ(モータ)
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機
IN 変速機入力軸
M-O/P メカオイルポンプ
S-O/P サブオイルポンプ
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 ATコントローラ
71a 始動禁止フラグ生成部(始動禁止フラグ設定手段)
8 第2クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
10d 変速禁止判定部(変速禁止フラグ設定手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動系にエンジンとモータと自動変速機を備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両の制御装置としては、エンジン始動制御と変速制御を同時に行うことに起因するショックを防止するため、エンジン始動制御と変速制御を排他処理するものが知られている。つまり、エンジン始動制御が先に来た場合には、エンジン始動制御が終わってから変速制御を開始する。また、変速制御が先に来た場合には、変速制御が終わってからエンジン始動制御を開始する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−2241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のハイブリッド車両の制御装置にあっては、エンジン始動制御と変速制御を同時処理としてもショックが問題ない状況であっても排他処理としている。このため、例えば、エンジン始動を待たせて変速制御を先にした場合、駆動力が出ないというラグ感をドライバーに与える。加えて、駆動力が出ないことで、ドライバーがアクセルを踏み増すことが予測され、アクセル踏み増しにより、エンジン始動開始時、急に駆動力が出て飛び出し感を与えるという懸念がある。すなわち、エンジン始動制御と変速制御を排他処理とした場合には、ラグや燃費へ跳ね返るばかりでなく、ドライバーによる駆動力コントロール性も確保されない、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、エンジンの始動/停止制御と自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置では、エンジンと、モータと、モード切り替え手段と、自動変速機と、エンジン始動/停止制御手段と、変速制御手段と、エンジン/変速協調制御手段と、を備える手段とした。
前記モータは、前記エンジンから駆動輪への駆動系に設けられ、前記エンジンの始動と前記駆動輪の駆動を行う。
前記モード切り替え手段は、前記エンジンと前記モータの連結部に設けられ、前記エンジンと前記モータを駆動源とするハイブリッド車モードと、前記モータを駆動源とする電気自動車モードと、を切り替える。
前記自動変速機は、前記モータと前記駆動輪との間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する。
前記エンジン始動/停止制御手段は、前記ハイブリッド車モードへのモード遷移時、始動要求に基づいて前記エンジンの始動制御を行い、前記電気自動車モードへのモード遷移時、停止要求に基づいて前記エンジンの停止制御を行う。
前記変速制御手段は、走行時、変速要求に基づいて前記自動変速機の変速段を現変速段から要求変速段へ移行する変速制御を行う。
前記エンジン/変速協調制御手段は、前記エンジンの始動/停止制御と前記自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで他方の制御を開始してもショックが許容値を越えない場合、要求タイミングで他方の制御を開始し、要求タイミングで他方の制御を開始するとショックが許容値を越える場合、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御を開始する。
【発明の効果】
【0007】
したがって、エンジン始動制御と変速制御を同時処理としてもショックが問題ない状況下では、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで応答良く他方の制御が開始される。また、エンジン始動制御と変速制御を同時処理とするとショックが問題ある状況下では、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御が開始される。
すなわち、ショックが問題ない状況下では、制御開始待ちをすることなく、エンジン始動制御と変速制御が高応答により同時処理される。また、ショックが問題ある状況下においても、ショックが問題ない状況に移行するまでの最小限の制御開始待ちにより、エンジン始動制御と変速制御が同時処理される。
この結果、エンジンの始動/停止制御と自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。
【図2】実施例1のATコントローラ7に設定されている自動変速機ATのシフトマップの一例を示す図である。
【図3】実施例1の統合コントローラ10のモード選択部に設定されているEV-HEV選択マップの一例を示す図である。
【図4】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATの一例を示すスケルトン図である。
【図5】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATでの変速段ごとの各摩擦要素の締結状態を示す締結作動表である。
【図6】実施例1の統合コントローラとATコントローラによるエンジン始動制御と変速制御のエンジン/変速協調制御系を示す制御ブロック図である。
【図7】実施例1のエンジン/変速協調制御系にて実行される始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例1のエンジン/変速協調制御系にて実行される変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】自動変速機ATの各摩擦要素から第2クラッチCL2を選定する方法を説明するための現変速段(CurGp)と次変速段(NextGp)での摩擦要素選定表を示すCL2要素選定図である。
【図10】1→2アップ変速時の変速指令ギア比NEXTGP_MAP・制御ギア比NEXTGP・現在ギア比CURGP・入力回転の関係に対し(1)〜(5)の各タイミングにて変速禁止や始動禁止や始動許可の設定を行う例を示す設定例説明図である。
【図11】始動中Up変速全域禁止タイミング(1)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【図12】変速前処理中始動禁止タイミング(2)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【図13】変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【図14】変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)での自動変速機ATにおける回転数変化を示す共線図である。
【図15】変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミング(4)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【図16】変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミング(5)でのNEXTGP_MAP・NEXTGP・CURGP・始動制御フラグ(ENGSTART)・モータ回転・目標回転・ENG回転・CL2油圧・締結油圧・前後加速度G・始動禁止フラグ・変速禁止フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【0011】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(モード切り替え手段)と、モータ/ジェネレータMG(モータ)と、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、変速機入力軸INと、メカオイルポンプM-O/Pと、サブオイルポンプS-O/Pと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0012】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0013】
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づき第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、締結・半締結状態・解放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて完全締結を保ち、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14を用いたストローク制御により、完全締結〜スリップ締結〜完全解放までが制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
【0014】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(力行)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(回生)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータは、自動変速機ATの変速機入力軸INに連結されている。
【0015】
前記第2クラッチCL2は、前記モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装されたクラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づき第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、締結・スリップ締結・解放が制御される。この第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設される油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
【0016】
前記自動変速機ATは、有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える有段変速機であり、実施例1では前進7速/後退1速の変速段を持つ有段変速機としている。そして、実施例1では、前記第2クラッチCL2として、自動変速機ATとは独立の専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦要素のうち、所定の条件に適合する摩擦要素(クラッチやブレーキ)を選択している。
【0017】
前記自動変速機ATの変速機入力軸IN(=モータ軸)には、変速機入力軸INにより駆動されるメカオイルポンプM-O/Pが設けられている。そして、車両停止時等でメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が不足するとき、油圧低下を抑えるために電動モータにより駆動されるサブオイルポンプS-O/Pが、モータハウジング等に設けられている。なお、サブオイルポンプS-O/Pの駆動制御は、後述するATコントローラ7により行われる。
【0018】
前記自動変速機ATの変速機出力軸には、プロペラシャフトPSが連結されている。そして、このプロペラシャフトPSは、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0019】
このFRハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロールモード(以下、「WSCモード」という。)と、を有する。
【0020】
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放状態とし、モータ/ジェネレータMGの駆動力のみで走行するモードであり、モータ走行モード・回生走行モードを有する。この「EVモード」は、要求駆動力が低く、バッテリSOCが確保されているときに選択される。
【0021】
前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態として走行するモードであり、モータアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「HEVモード」は、要求駆動力が高いとき、あるいは、バッテリSOCが不足するようなときに選択される。
【0022】
前記「WSCモード」は、モータ/ジェネレータMGの回転数制御により、第2クラッチCL2をスリップ締結状態に維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態や運転者操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら走行するモードである。この「WSCモード」は、「HEVモード」の選択状態での停車時・発進時・減速時等のように、エンジン回転数がアイドル回転数を下回るような走行領域において選択される。
【0023】
次に、FRハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,5,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0024】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0025】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報を、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0026】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・半締結・解放を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0027】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図2に示すシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令を油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。前記シフトマップとは、図2に示すように、アクセル開度APOと車速VSPに応じてアップ変速線とダウン変速線を書き込んだマップをいう。
この変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2のスリップ締結を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。
【0028】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
【0029】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や他のセンサ・スイッチ類22からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0030】
この統合コントローラ10には、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図3に示すEV-HEV選択マップ上で存在する位置により最適な走行モードを検索し、検索した走行モードを目標走行モードとして選択するモード選択部を有する。このEV-HEV選択マップには、EV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「EVモード」から「HEVモード」へと切り替えるEV⇒HEV切替線と、HEV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」から「EVモード」へと切り替えるHEV⇒EV切替線と、「HEVモード」の選択時に運転点(APO,VSP)がWSC領域に入ると「WSCモード」へと切り替えるHEV⇒WSC切替線と、が設定されている。前記HEV⇒EV切替線と前記HEV⇒EV切替線は、EV領域とHEV領域を分ける線としてヒステリシス量を持たせて設定されている。前記HEV⇒WSC切替線は、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEngがアイドル回転数を維持する第1設定車速VSP1に沿って設定されている。但し、「EVモード」の選択中、バッテリSOCが所定値以下になると、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
【0031】
図4は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATの一例を示すスケルトン図である。
【0032】
前記自動変速機ATは、前進7速後退1速の有段式自動変速機であり、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGのうち、少なくとも一方からの駆動力が変速機入力軸Inputから入力され、4つの遊星ギアと7つの摩擦要素とによって回転速度が変速されて変速機出力軸Outputから出力される。
【0033】
変速ギア機構は、変速機入力軸Input側から変速機出力軸Output側までの軸上に、順に第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2による第1遊星ギアセットGS1及び第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4による第2遊星ギアセットGS2が配置されている。また、摩擦要素として第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3及び第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3、第4ブレーキB4が配置されている。また、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。
【0034】
前記第1遊星ギアG1は、第1サンギアS1と、第1リングギアR1と、第1ピニオンP1と、第1キャリアPC1と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第2遊星ギアG2は、第2サンギアS2と、第2リングギアR2と、第2ピニオンP2と、第2キャリアPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第3遊星ギアG3は、第3サンギアS3と、第3リングギアR3と、第3ピニオンP3と、第3キャリアPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第4遊星ギアG4は、第4サンギアS4と、第4リングギアR4と、第4ピニオンP4と、第4キャリアPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0035】
前記変速機入力軸Inputは、第2リングギアR2に連結され、エンジンEngとモータージェネレータMGの少なくとも一方からの回転駆動力を入力する。前記変速機出力軸Outputは、第3キャリアPC3に連結され、出力回転駆動力を、ファイナルギア等を介して駆動輪(左右後輪RL,RR)に伝達する。
【0036】
前記第1リングギアR1と第2キャリアPC2と第4リングギアR4とは、第1連結メンバM1により一体的に連結される。前記第3リングギアR3と第4キャリアPC4とは、第2連結メンバM2により一体的に連結される。前記第1サンギアS1と第2サンギアS2とは、第3連結メンバM3により一体的に連結される。
【0037】
前記第1クラッチC1(=インプットクラッチI/C)は、変速機入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。前記第2クラッチC2(=ダイレクトクラッチD/C)は、第4サンギアS4と第4キャリアPC4とを選択的に断接するクラッチである。前記第3クラッチC3(=H&LRクラッチH&LR/C)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4とを選択的に断接するクラッチである。前記第2ワンウェイクラッチF2(=1&2速ワンウェイクラッチ1&2OWC)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4の間に配置されている。前記第1ブレーキB1(=フロントブレーキFr/B)は、第1キャリアPC1の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第1ワンウェイクラッチF1(=1速ワンウェイクラッチ1stOWC)は、第1ブレーキB1と並列に配置されている。前記第2ブレーキB2(=ローブレーキLOW/B)は、第3サンギアS3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第3ブレーキB3(=2346ブレーキ2346/B)は、第1サンギアS1及び第2サンギアS2を連結する第3連結メンバM3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第4ブレーキB4(=リバースブレーキR/B)は、第4キャリアPC3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。
【0038】
図5は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATでの変速段ごとの各摩擦要素の締結状態を示す締結作動表である。尚、図5において、○印はドライブ状態で当該摩擦要素が油圧締結であることを示し、(○)印はコースト状態で当該摩擦要素が油圧締結(ドライブ状態ではワンウェイクラッチ作動)であることを示し、無印は当該摩擦要素が解放状態であることを示す。
【0039】
上記のように構成された変速ギア機構に設けられた各摩擦要素のうち、締結していた1つの摩擦要素を解放し、解放していた1つの摩擦要素を締結するという架け替え変速を行うことで、下記のように、前進7速で後退1速の変速段を実現することができる。
【0040】
すなわち、「1速段」では、第2ブレーキB2のみが締結状態となり、これにより第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「2速段」では、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が締結状態となり、第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「3速段」では、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第2クラッチC2が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2はいずれも係合しない。「4速段」では、第3ブレーキB3、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「5速段」では、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「6速段」では、第3ブレーキB3、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となる。「7速段」では、第1ブレーキB1、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1が係合する。「後退速段」では、第4ブレーキB4、第1ブレーキB1及び第3クラッチC3が締結状態となる。
【0041】
図6は、実施例1の統合コントローラ10とATコントローラ7によるエンジン始動制御と変速制御のエンジン/変速協調制御系を示す制御ブロック図である。
【0042】
エンジン/変速協調制御系の特徴は、エンジン制御に関する情報を持つ統合コントローラ10側で変速禁止フラグを設定し、ATコントローラ7に出力する。また、変速制御に関する情報を持つATコントローラ7側で始動禁止フラグを設定し、統合コントローラ10に出力する。例えば、統合コントローラ10側で変速禁止フラグと始動禁止フラグを設定する場合には、ATコントローラ7から変速制御に関するきめ細かな情報を入力する必要がある。これに対し、ATコントローラ7から変速制御に関する情報を入力することなく、精度の高い始動禁止フラグの設定ができる。
【0043】
前記統合コントローラ10は、図6に示すように、始動方法判定部10aと、フェール・システム要求判定部10bと、始動要求フラグ生成部10cと、変速禁止判定部10d(変速禁止フラグ設定手段)と、停止禁止判定部10eと、エンジン始動禁止判定部10fと、を備えている。
【0044】
前記始動方法判定部10aは、通常始動かコースト始動かを判定し、判定結果をエンジン始動禁止判定部10fに出力する。前記フェール・システム要求判定部10bは、フェールセーフ要求やコンポ保護要求を判定し、判定結果をエンジン始動禁止判定部10fに出力する。前記始動要求フラグ生成部10cは、エンジン始動要求フラグを生成し、始動制御部71に出力する。前記変速禁止判定部10d(変速禁止フラグ設定手段)は、変速禁止フラグを設定し、変速制御部72に出力する。前記停止禁止判定部10eは、エンジン停止禁止を判定する。前記エンジン始動禁止判定部10fは、始動禁止フラグ生成部71a(始動禁止フラグ設定手段)からの始動禁止フラグと、始動方法判定部10aからの判定結果と、フェール・システム要求判定部10bからの判定結果を入力し、エンジン始動禁止条件の優先度を含めて最終的にエンジン始動禁止を判定する。
なお、優先度は、1:フェールセーフ、2:コンポ保護、3:性能要求、4:燃費・排気要求である。1,2の情報は、フェール・システム要求判定部10bから取得され、3,4の情報は、始動禁止フラグ生成部71aからの始動禁止フラグにより取得する。
【0045】
前記ATコントローラ7は、図6に示すように、始動制御部71と、変速制御部72と、を備えている。前記始動制御部71は、始動禁止フラグ生成部71aと、Up+始動制御中チェンジマインド禁止部71bと、始動制御中Up禁止Down許可部71cと、CL2要素選定部71dと、を有する。前記変速制御部72は、変速中チェンジマインド禁止部72aを有する。
【0046】
前記始動禁止フラグ生成部71aは、変速種・マニュアルモード(Mモード)の有無・変速フェーズ(締結側)・変速フェーズ(解放側)・ドライブ/コースト判定情報を入力する。そして、始動禁止フラグ(ゼロ:許可、1:禁止)を生成し、統合コントローラ10のエンジン始動禁止判定部10fに対し、始動禁止フラグ情報を出力する。
なお、変速フェーズは、前処理/トルクフェーズ/イナーシャフェーズ/CL同期フェーズ/後処理で個別に始動禁止フラグをセット・クリアする。また、自動変速機ATでUp/Downの変速を手動によるレバー操作により行うマニュアルモードの有無は、Mモード判定部23から取得する。
【0047】
前記CL2要素選定部71dは、各変速段においては、図9に示すように、自動変速機ATの摩擦要素の中から、1速ではLow/B、2速ではLow/B、3速ではD/C、4速ではH/C、5速ではH/C、6速ではI/C、7速ではI/C、というように、CL2要素を選定する。
そして、アップ変速(N→N+1)では、アップ変速後のN+1にてCL2要素を決める。これは、N+1速始動として扱い、始動制御中にアップ回転変化を同時に行なうためである。
また、ダウン変速(N→N-1)では、ダウン変速前のNにてCL2要素を決める。これは、N速始動として扱い、回転が低い状態で始動を行なうためである。
但し、3→2ダウン変速は、例外として、CL2要素をダウン変速後のLow/Bとする。これは、トルク分担比が2速と3速で差異が大きく、2速で設定する方が、ショック感度が良いためである。
【0048】
図7は、実施例1のエンジン/変速協調制御系にて実行される始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御処理の流れを示すフローチャートである(エンジン/変速協調制御手段)。以下、図7の各ステップについて説明する。
【0049】
ステップS11では、エンジンEngの始動要求に基づき、エンジン始動制御を開始し、ステップS12へ進む。
【0050】
ステップS12では、ステップS11でのエンジン始動制御開始に続き、変速要求有りか否かを判断する。YES(変速要求有り)の場合はステップS15へ進み、NO(変速要求無し)の場合はステップS13へ進む。
【0051】
ステップS13では、ステップS12での変速要求無しとの判断に続き、エンジン始動制御を実行し、ステップS14へ進む。
【0052】
ステップS14では、ステップS13でのエンジン始動制御に続き、エンジン始動制御が終了したか否かを判断する。YES(エンジン始動制御終了)の場合はエンドへ進み、NO(エンジン始動制御未終了)の場合はステップS12へ戻る。
【0053】
ステップS15では、ステップS12での変速要求有りとの判断に続き、変速禁止フラグ=1(禁止)であるか否かを判断する。YES(変速禁止フラグ=1)の場合はステップS16へ進み、NO(変速禁止フラグ=0)の場合はステップS17へ進む。
ここで、変速禁止フラグ=1(禁止)は、下記の(1)〜(3)のとき設定し、それ以外のときは、変速禁止フラグ=0(許可)とする。
(1) モータ回転数制御中の変速であり、変速制御側でギア比の判定ができないとき。
具体例としては、エンジン始動中におけるアップ変速全域禁止とする。また、WSCモード中におけるアップ/ダウン変速共に全域禁止とする。
(2) アクセル一定による変速であり、ドライバーからのショック低減要求が高いとき。
具体例としては、エンジン始動中におけるアクセル一定によるパワーオンダウン変速を禁止する。但し、アクセル開度条件により禁止領域を設定する。
(3) 変速機入力トルクの管理が難しい変速であり、ショックに影響する可能性が高いとき。
具体例としては、コーストでのエンジン始動時におけるアップ/ダウン変速共に全域禁止する。バックアップ始動時(CL2滑らせない始動)におけるアップ/ダウン変速共に全域禁止する。
【0054】
ステップS16では、ステップS15での変速禁止フラグ=1であるとの判断に続き、変速要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求であるか否かを判断する。YES(変速要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求)の場合はステップS17へ進み、NO(変速要求がフェールセーフ要求でもコンポ保護要求でもない)の場合はステップS15へ戻る。
【0055】
ステップS17では、ステップS15での変速禁止フラグ=0であるとの判断、あるいは、ステップS16での変速要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求であるとの判断に続き、変速制御を開始し、ステップS18へ進む。
【0056】
ステップS18では、ステップS17での変速制御開始、あるいは、ステップS19での始動/変速制御未終了であるとの判断に続き、エンジン始動制御と変速制御の同時処理を行い、ステップS19へ進む。
【0057】
ステップS19では、ステップS18でのエンジン始動制御と変速制御の同時処理に続き、エンジン始動制御と変速制御の何れの制御も終了したか否かを判断する。YES(始動/変速制御終了)の場合はエンドへ進み、NO(始動/変速制御未終了)の場合はステップS18へ戻る。
【0058】
図8は、実施例1のエンジン/変速協調制御系にて実行される変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御処理の流れを示すフローチャートである(エンジン/変速協調制御手段)。以下、図8の各ステップについて説明する。
【0059】
ステップS21では、変速要求に基づき、変速制御を開始し、ステップS22へ進む。
【0060】
ステップS22では、ステップS21での変速制御開始に続き、エンジン始動要求有りか否かを判断する。YES(エンジン始動要求有り)の場合はステップS25へ進み、NO(エンジン始動要求無し)の場合はステップS23へ進む。
【0061】
ステップS23では、ステップS22でのエンジン始動要求無しとの判断に続き、変速制御を実行し、ステップS24へ進む。
【0062】
ステップS24では、ステップS23での変速制御に続き、変速制御が終了したか否かを判断する。YES(変速制御終了)の場合はエンドへ進み、NO(変速制御未終了)の場合はステップS22へ戻る。
【0063】
ステップS25では、ステップS22でのエンジン始動要求有りとの判断に続き、始動禁止フラグ=1(禁止)であるか否かを判断する。YES(始動禁止フラグ=1)の場合はステップS26へ進み、NO(始動禁止フラグ=0)の場合はステップS27へ進む。
ここで、始動禁止フラグ=1(禁止)は、下記の(1)〜(4)のとき設定し、それ以外のときは、始動禁止フラグ=0(許可)とする。
(1) エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2(スリップクラッチ)と、変速に関与する変速クラッチと、の容量バランスにより、第2クラッチCL2がスリップを維持できない変速フェーズのとき。
具体例としては、1→2アップ変速での前処理中におけるエンジン始動を禁止する。
(2) エンジン始動制御を入れると、エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と、変速での締結クラッチと、が同じクラッチになる変速中のとき。
具体例としては、2→3アップ変速中と3→4アップ変速中におけるエンジン始動を禁止する。
(3) ワンウェイクラッチを用いた変速中のとき。
具体例としては、3→2ダウン変速中と2→1ダウン変速中におけるエンジン始動を禁止する。
(4) 変速においてモータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域のとき。
具体例としては、変速フェーズがCL同期フェーズ中の領域におけるエンジン始動を禁止する。
【0064】
ステップS26では、ステップS25での始動禁止フラグ=1であるとの判断に続き、始動要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求であるか否かを判断する。YES(始動要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求)の場合はステップS27へ進み、NO(始動要求がフェールセーフ要求でもコンポ保護要求でもない)の場合はステップS25へ戻る。
【0065】
ステップS27では、ステップS25での始動禁止フラグ=0であるとの判断、あるいは、ステップS26での始動要求がフェールセーフ要求またはコンポ保護要求であるとの判断に続き、エンジン始動制御を開始し、ステップS28へ進む。
【0066】
ステップS28では、ステップS27でのエンジン始動制御開始、あるいは、ステップS29での始動/変速制御未終了であるとの判断に続き、エンジン始動制御と変速制御の同時処理を行い、ステップS29へ進む。
【0067】
ステップS29では、ステップS28でのエンジン始動制御と変速制御の同時処理に続き、エンジン始動制御と変速制御の何れの制御も終了したか否かを判断する。YES(始動/変速制御終了)の場合はエンドへ進み、NO(始動/変速制御未終了)の場合はステップS28へ戻る。
【0068】
次に、作用を説明する。
実施例1のFRハイブリッド車両の制御装置における作用を、「始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御作用」、「変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御作用」、「1→2アップ変速での設定例に基づく作用」に分けて説明する。
【0069】
[始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御作用]
実施例1の始動制御の開始後に変速要求があるときのエンジン/変速協調制御作用を、図7のフローチャートに基づき説明する。
【0070】
エンジン始動制御の開始から終了までのエンジン始動制御中に変速要求があり、かつ、変速禁止フラグが変速禁止フラグ=0(許可)であるときには、図7のフローチャートにおいて、ステップS11→ステップS12→ステップS15→ステップS17へと進む。つまり、変速要求タイミングで変速制御が開始される。そして、ステップS17からは、ステップS18→ステップS19へと進み、ステップS18→ステップS19へと進む流れを繰り返すことでエンジン始動制御と変速制御を同時処理とする。そして、ステップS19にて始動/変速制御終了と判断されると、始動/変速の協調制御を終了する。
【0071】
エンジン始動制御の開始から終了までのエンジン始動制御中に変速要求があり、かつ、変速禁止フラグが変速禁止フラグ=1(禁止)で、変速要求がフェールセーフ要求やコンポ保護要求ではないときには、図7のフローチャートにおいて、ステップS11→ステップS12→ステップS15→ステップS16へと進み、変速禁止フラグ=1である間は、ステップS15→ステップS16へと進む流れが繰り返される。そして、変速禁止フラグ=1から変速禁止フラグ=0に書き換えられると、ステップS15からステップS17へと進み、フラグ書き換えタイミングにて変速制御が開始される。そして、ステップS17からは、ステップS18→ステップS19へと進み、ステップS18→ステップS19へと進む流れを繰り返すことでエンジン始動制御と変速制御を同時処理とする。そして、ステップS19にて始動/変速制御終了と判断されると、始動/変速の協調制御を終了する。
【0072】
したがって、エンジン始動制御と変速制御を同時処理としてもショックが問題ない状況下(変速禁止フラグ=0)では、エンジン始動制御中に変速要求があったとき、変速要求タイミングで応答良く変速制御が開始される。また、エンジン始動制御と変速制御を同時処理とするとショックが問題ある状況下(変速禁止フラグ=1)では、エンジン始動制御中に変速要求があったとき、変速制御を許可できるタイミング(フラグ書き換えタイミング)まで待って変速制御が開始される。
【0073】
すなわち、ショックが問題ない状況下では、変速制御の開始待ちをすることなく、エンジン始動制御と変速制御が高応答により同時処理される。また、ショックが問題ある状況下においても、ショックが問題ない状況に移行するまでの最小限による変速制御の開始待ちにより、エンジン始動制御と変速制御が同時処理される。
このため、エンジン始動制御中に変速要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【0074】
ここで、統合コントローラ10からの指令により行われる「エンジン始動制御」について説明する。
EVモードでの走行状態でエンジン始動線をアクセル開度APOが越えるとエンジン始動要求が出され、このエンジン始動要求に基づいて「エンジン始動制御」を開始する。エンジン始動制御では、まず、第2クラッチCL2を半クラッチ状態にスリップさせるように、第2クラッチCL2のトルク容量を制御する。そして、第2クラッチCL2のスリップ開始を判断した後、第1クラッチCL1の締結を開始し、モータ/ジェネレータMGを始動モータとするクランキングによりエンジン回転を上昇させる。そして、エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジンEngを燃焼作動させ、モータ回転数とエンジン回転数が近くなったところで第1クラッチCL1を完全に締結する。その後、第2クラッチCL2をロックアップさせてHEVモードに遷移させる。
【0075】
次に、「エンジン始動制御」とは独立に、ATコントローラ7からの指令により行われる「変速制御」について説明する。
走行状態で、運転点(VSP,APO)が、図2に示すシフトマップ上でアップ変速線またはダウン変速線を横切ると変速要求が出され、この変速要求に基づいて「変速制御」を開始する。変速制御では、基本的に、締結されている1つの摩擦要素を解放し、解放されている1つの摩擦要素を締結するという掛け替え油圧制御により行われる。この変速制御は、前処理制御→トルクフェーズ制御→イナーシャフェーズ制御→CL同期フェーズ制御→後処理制御へと移行して変速を完了する。このとき、変速開始から変速終了までを、前処理/トルクフェーズ/イナーシャフェーズ/CL同期フェーズ/後処理というように個別に分けて管理している。このフェーズ個別管理は、タイマー情報や自動変速機ATの入出力回転数から演算されるギア比変化情報、等を用い、変速の進行度合いを監視することで行っている。以下、変速禁止フラグの設定作用について説明する。
【0076】
実施例1では、モータ回転数制御中の変速であり、変速制御側でギア比の判定ができないとき、変速禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、エンジン始動制御やWSCモード中は、モータ回転数制御により第2クラッチCL2のスリップ制御が行われる。このとき、変速制御を入れると、変速制御側では変速の進行を監視できなくなり、クラッチの解放・締結状態が読めなく、大きな変速ショックが出てしまう可能性がある。
したがって、この条件に合致するエンジン始動中においてアップ変速全域禁止とし、WSCモード中においてアップ/ダウン変速共に全域禁止とする。このため、変速制御を入れるとクラッチの解放・締結状態が読めない走行状況において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
なお、エンジン始動中におけるダウン変速は、主にドライバーのアクセル踏み込み操作により発生するため、ドライバーの駆動力コントロール性を重視し、ラグを無くすために変速禁止フラグ=0(許可)する。
【0077】
実施例1では、アクセル一定による変速であり、ドライバーからのショック低減要求が高いとき、変速禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、アクセル操作量を一定に保ったままでの走行中は、ラグ感度とショック感度のうち、ショック感度が高くなる。
したがって、この条件に合致するエンジン始動中のアクセル一定によるパワーオンダウン変速の場合、ラグ感度よりもショック感度を優先して禁止する。このため、ドライバーからのショック低減要求が高い運転状態において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0078】
実施例1では、変速機入力トルクの管理が難しい変速であり、ショックに影響する可能性が高いとき、変速禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、アクセル足離しによるコースト走行時や第2クラッチCL2滑らせないバックアップ始動時には、変速機入力トルクの管理が難しく、エンジン始動中に変速制御を入れると、大きなショックは出る可能性が高くなる。
したがって、この条件に合致するコーストでのエンジン始動時においてアップ/ダウン変速共に全域禁止し、バックアップ始動時においてアップ/ダウン変速共に全域禁止する。このため、変速機入力トルクの管理が難しい走行状況において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0079】
[変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御作用]
実施例1の変速制御の開始後に始動要求があるときのエンジン/変速協調制御作用を、図8のフローチャートに基づき説明する。
【0080】
変速制御の開始から終了までの変速制御中にエンジン始動要求があり、かつ、始動禁止フラグが始動禁止フラグ=0(許可)であるときには、図8のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS25→ステップS27へと進む。つまり、エンジン始動要求タイミングでエンジン始動制御が開始される。そして、ステップS27からは、ステップS28→ステップS29へと進み、ステップS28→ステップS29へと進む流れを繰り返すことでエンジン始動制御と変速制御を同時処理とする。そして、ステップS29にて始動/変速制御終了と判断されると、始動/変速の協調制御を終了する。
【0081】
変速制御の開始から終了までの変速制御中にエンジン始動要求があり、かつ、始動禁止フラグが始動禁止フラグ=1(禁止)で、始動要求がフェールセーフ要求やコンポ保護要求ではないときには、図8のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS25→ステップS26へと進み、始動禁止フラグ=1である間は、ステップS25→ステップS26へと進む流れが繰り返される。そして、始動禁止フラグ=1から始動禁止フラグ=0に書き換えられると、ステップS25からステップS27へと進み、フラグ書き換えタイミングにてエンジン始動制御が開始される。そして、ステップS27からは、ステップS28→ステップS29へと進み、ステップS28→ステップS29へと進む流れを繰り返すことでエンジン始動制御と変速制御を同時処理とする。そして、ステップS29にて始動/変速制御終了と判断されると、始動/変速の協調制御を終了する。
【0082】
したがって、エンジン始動制御と変速制御を同時処理としてもショックが問題ない状況下(始動禁止フラグ=0)では、変速制御中にエンジン始動要求があったとき、エンジン始動要求タイミングで応答良くエンジン始動制御が開始される。また、エンジン始動制御と変速制御を同時処理とするとショックが問題ある状況下(始動禁止フラグ=1)では、変速制御中にエンジン始動要求があったとき、エンジン始動制御を許可できるタイミング(フラグ書き換えタイミング)まで待ってエンジン始動制御が開始される。
【0083】
すなわち、ショックが問題ない状況下では、エンジン始動制御の開始待ちをすることなく、エンジン始動制御と変速制御が高応答により同時処理される。また、ショックが問題ある状況下においても、ショックが問題ない状況に移行するまでの最小限によるエンジン始動制御の開始待ちにより、エンジン始動制御と変速制御が同時処理される。
このため、変速制御中にエンジン始動要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。以下、始動禁止フラグの設定作用について説明する。
【0084】
実施例1では、エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と、変速に関与する変速クラッチと、の容量バランスにより、第2クラッチCL2がスリップを維持できない変速フェーズのとき、始動禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、変速制御中、第2クラッチCL2がスリップを維持できない状況でエンジン始動制御を入れると、大きな始動ショックが発生するおそれがある。
したがって、この条件に合致する1→2アップ変速での前処理中においてエンジン始動を禁止する。このため、エンジン始動制御を入れると第2クラッチCL2がスリップを維持できない状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる始動ショックの発生を未然に防止できる。
【0085】
実施例1では、エンジン始動制御を入れると、エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と、変速での締結クラッチと、が同じクラッチになる変速中のとき、始動禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、エンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と、変速での締結クラッチが同じクラッチであると、強制スリップインができず、大きな始動ショックが発生するおそれがある。
したがって、この条件に合致する2→3アップ変速中と3→4アップ変速中においてエンジン始動を禁止する。このため、エンジン始動制御を入れるとエンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と変速での締結クラッチが同じクラッチとなる状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる始動ショックの発生を未然に防止できる。
【0086】
実施例1では、ワンウェイクラッチを用いた変速中のとき、始動禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、ワンウェイクラッチを用いた変速中にエンジン始動制御を入れると、ワンウェイクラッチの衝突ショックが発生するおそれがある。
したがって、この条件に合致する3→2ダウン変速中と2→1ダウン変速中においてエンジン始動を禁止する。このため、ワンウェイクラッチを用いた変速が行われている状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる衝突ショックの発生を未然に防止できる。
【0087】
実施例1では、変速においてモータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域のとき、始動禁止フラグ=1(禁止)を設定する。
すなわち、モータ回転数制御が行われている変速中にエンジン始動制御が入ると、第2クラッチCL2のスリップを誤判定してしまい、飛び出し感が出てしまうおそれがある。
したがって、この条件に合致する変速フェーズがCL同期フェーズ中の領域においてエンジン始動を禁止する。このため、モータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域の状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる飛び出し感の発生を未然に防止できる。
【0088】
[1→2アップ変速での設定例に基づく作用]
図10は、1→2アップ変速時の変速指令ギア比NEXTGP_MAP・制御ギア比NEXTGP・現在ギア比CURGP・入力回転の関係に対し(1)〜(5)の各タイミングにて変速禁止や始動禁止や始動許可の設定を行う例を示す設定例説明図である。
なお、「NEXTGP_MAP」とは、変速指令ギア比であり、図2に示すシフトマップ上で運転点が変速線を横切ったときに出力される。「NEXTGP」とは、制御ギア比であり、各変速制御が確定し、変速制御が開始される時に出力される。「CURGP」とは、現在ギア比であり、各変速制御の終了時に出力される。
(1)は、エンジン始動中はアップ変速を禁止する排他処理による始動中Up変速全域禁止タイミングである。
(2)は、変速のうち前処理中はエンジン始動を禁止する変速前処理中始動禁止タイミングである。
(3)は、変速のうちトルクフェーズ中であればエンジン始動を許可する変速トルクフェーズ中始動許可タイミングである。
(4)は、変速のうちイナーシャフェーズ中であればエンジン始動を許可する変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミングである。
(5)は、変速のうちCL同期フェーズ中であればエンジン始動を禁止する変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミングである。
以下、各作用をタイミング(1)〜(5)に分けて説明する。
【0089】
(始動中Up変速全域禁止タイミング(1)での排他制御作用)
図11は、始動中Up変速全域禁止タイミング(1)でのタイムチャートである。以下、図11に基づいて始動中Up変速全域禁止タイミング(1)での排他制御作用を説明する。
エンジン始動中はアップ変速を禁止する排他処理による始動中Up変速全域禁止タイミングの場合、時刻t1にてエンジン始動要求が出されると、時刻t1からエンジン始動制御が開始され、時刻t4にてエンジン始動制御を終了する。変速制御側では、時刻t1の直後の時刻t2にて変速要求が出されても、時刻t1〜時刻t4のエンジン始動制御中は変速禁止フラグが設定されることで、エンジン始動制御が終了する時刻t4から変速制御が開始されることになる。すなわち、エンジン始動中はアップ変速を禁止する排他処理が行われることになり、この場合、排他処理により入力回転が高くなることで、燃費の悪化となる。また、1速での駆動力の伝達で加速度Gが上昇した後、続いて2速へのアップ変速により加速Gが低下するというように、ドライバーに対し駆動力違和感を与えることになる。
【0090】
(変速前処理中始動禁止タイミング(2)での協調制御作用)
図12は、変速前処理中始動禁止タイミング(2)でのタイムチャートである。以下、図12に基づいて変速前処理中始動禁止タイミング(2)での協調制御作用を説明する。
変速のうち前処理中はエンジン始動を禁止する変速前処理中始動禁止タイミングの場合、時刻t1にて変速が開始されると、時刻t1〜時刻t3が前処理中となり、この間は始動禁止フラグが設定される。このため、時刻t2のタイミングにてエンジン始動要求があっても、エンジン始動制御の開始が時刻t3まで待たれることになる。すなわち、変速制御中にエンジン始動要求があった場合、変速フェーズのうち前処理の間は、エンジン始動を入れると、第2クラッチCL2のスリップを維持できないため、この前処理の領域では、始動禁止フラグを設定することに該当する。そして、トルクフェーズ以降になると、変速制御とエンジン始動制御が同時処理される。
【0091】
(変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)での協調制御作用)
図13は、変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)でのタイムチャートである。以下、図13に基づいて変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)での協調制御作用を説明する。
変速のうちトルクフェーズ中であればエンジン始動を許可する変速トルクフェーズ中始動許可タイミングの場合、時刻t1にて変速が開始されると、時刻t1〜時刻t2が前処理中となり、この間は始動禁止フラグが設定される。そして、トルクフェーズ中である時刻t3のタイミングにてエンジン始動要求があると、直ちに時刻t3からエンジン始動制御が開始される。すなわち、変速フェーズのうち、トルクフェーズ中にエンジン始動要求があると、エンジン始動要求のタイミングでエンジン始動制御を開始し、それ以降は、変速制御とエンジン始動制御が同時処理される。
【0092】
ここで、前処理の間は禁止しているエンジン始動を、トルクフェーズ中であれば許可する理由を説明する。
図14は、変速トルクフェーズ中始動許可タイミング(3)での自動変速機ATにおける回転数変化を示す共線図である。
1→2アップ変速時は、Low/Bを第2クラッチCL2とし、エンジン始動制御中にモータ回転数制御により第2クラッチCL2のスリップ維持が必要である。
1→2アップ変速は、図14(a)の1速インギア状態(図13の時刻t1〜t3)→図14(b)のトルク/イナーシャフェーズ状態(図13の時刻t3〜t5)→図14(c)の同期フェーズ状態(図13の時刻t5〜t7)→図14(d)の2速インギア状態(図13の時刻t7〜)を経過して行われる。このとき、1→2アップ変速での締結要素である2346/Bの容量が、トルクフェーズやイナーシャフェーズにおいて不足する。このため、図14(b),(c)の点線に示すように、入力回転が下がってしまい、第2クラッチCL2であるLow/Bのスリップを維持できなくなる。つまり、2346/Bが容量を持つまでに入力回転を1速以下の回転に引き下げてしまうと、ショックやG引きが出てしまう可能性がある。
この入力回転を引き下げる要因は、第1クラッチCL1を掴みすぎ、あるいは、MGトルク不足による変速機入力トルクの不足にあることを解明した。
したがって、トルクフェーズ中であれば積極的にエンジン始動制御の開始を許可することで、変速機入力トルクの不足が解消され、図14の実線に示すように、第2クラッチCL2(Low/B)のスリップ維持を行うことができる。
【0093】
(変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミング(4)での協調制御作用)
図15は、変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミング(4)でのタイムチャートである。以下、図15に基づいて変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミング(4)での協調制御作用を説明する。
変速のうちイナーシャフェーズ中であればエンジン始動を許可する変速イナーシャフェーズ中始動許可タイミングの場合、変速フェーズのうちイナーシャフェーズの開始域である時刻t4のタイミングにてエンジン始動要求があると、直ちに時刻t4からエンジン始動制御が開始され、時刻t7にてエンジン始動制御を終了する。一方、変速制御側は、エンジン始動制御からの要求によりモータ回転数制御が行われることで、時刻t4から時刻t7まで次変速の変速禁止フラグが設定される。
【0094】
(変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミング(5)での協調制御作用)
図16は、変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミング(5)でのタイムチャートである。以下、図16に基づいて変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミング(5)での協調制御作用を説明する。
変速のうちCL同期フェーズ中であればエンジン始動を禁止する変速CL同期フェーズ中始動禁止タイミングの場合、CL同期フェーズ中(時刻t4〜時刻t6)の時刻t5のタイミングでエンジン始動要求があると、時刻t6までエンジン始動制御の開始が待たれる。そして、エンジン始動制御側では、時刻t6からエンジン始動制御が開始され、時刻t8で終了する。変速制御側では、時刻t6から時刻t7までエンジン始動制御からの要求によりモータ回転数制御が行われることで、次変速を禁止する変速禁止フラグが設定される。但し、現変速は続行するため、時刻t6の直後に変速を終了させる。
【0095】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0096】
(1) エンジンEngと、
前記エンジンEngから駆動輪RL,RRへの駆動系に設けられ、前記エンジンEngの始動と前記駆動輪RL,RRの駆動を行うモータ(モータ/ジェネレータMG)と、
前記エンジンEngと前記モータ(モータ/ジェネレータMG)の連結部に設けられ、前記エンジンEngと前記モータ(モータ/ジェネレータMG)を駆動源とするハイブリッド車モード(HEVモード)と、前記モータ(モータ/ジェネレータMG)を駆動源とする電気自動車モード(EVモード)と、を切り替えるモード切り替え手段(第1クラッチCL1)と、
前記モータ(モータ/ジェネレータMG)と前記駆動輪RL,RRとの間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する自動変速機ATと、
前記ハイブリッド車モード(HEVモード)へのモード遷移時、始動要求に基づいて前記エンジンEngの始動制御を行い、前記電気自動車モード(EVモード)へのモード遷移時、停止要求に基づいて前記エンジンEngの停止制御を行うエンジン始動/停止制御手段(統合コントローラ10)と、
走行時、変速要求に基づいて前記自動変速機ATの変速段を現変速段から要求変速段へ移行する変速制御を行う変速制御手段(ATコントローラ7)と、
前記エンジンEngの始動/停止制御と前記自動変速機ATの変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで他方の制御を開始してもショックが許容値を越えない場合、要求タイミングで他方の制御を開始し、要求タイミングで他方の制御を開始するとショックが許容値を越える場合、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御を開始するエンジン/変速協調制御手段(図6〜図8)と、
を備える。
このため、エンジンEngの始動/停止制御と自動変速機ATの変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【0097】
(2) 前記エンジン始動制御を開始した後、変速制御を入れるとショックに影響する条件が成立するとき、変速禁止フラグを設定する変速禁止フラグ設定手段(変速禁止判定部10d)を設け、
前記エンジン/変速協調制御手段(図7)は、前記エンジン始動制御中に変速制御要求があったとき、変速禁止フラグが非設定であれば、要求タイミングで変速制御を開始し、変速禁止フラグが設定であれば、変速禁止フラグが非設定になるタイミングまで待って変速制御を開始する。
このため、エンジン始動制御中に変速制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【0098】
(3) 前記変速禁止フラグ設定手段(変速禁止判定部10d)は、モータ回転数制御中の変速であり、変速制御側でギア比の判定ができないとき、変速禁止フラグを設定する。
このため、(2)の効果に加え、変速制御を入れるとクラッチの解放・締結状態が読めない走行状況において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0099】
(4) 前記変速禁止フラグ設定手段(変速禁止判定部10d)は、アクセル一定による変速であり、ドライバーからのショック低減要求が高いとき、変速禁止フラグを設定する。
このため、(2),(3)の効果に加え、ドライバーからのショック低減要求が高い運転状態において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0100】
(5) 前記変速禁止フラグ設定手段(変速禁止判定部10d)は、変速機入力トルクの管理が難しい変速であり、ショックに影響する可能性が高いとき、変速禁止フラグを設定する。
このため、(2)〜(4)の効果に加え、変速機入力トルクの管理が難しい走行状況において、エンジン始動制御中に変速制御を入れることによる変速ショックの発生を未然に防止できる。
【0101】
(6) 前記変速制御を開始した後、エンジン始動制御を入れるとショックに影響する条件が成立するとき、始動禁止フラグを設定する始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)を設け、
前記エンジン/変速協調制御手段(図8)は、前記変速制御中にエンジン始動制御要求があったとき、始動禁止フラグが非設定であれば、要求タイミングでエンジン始動制御を開始し、始動禁止フラグが設定であれば、始動禁止フラグが非設定になるタイミングまで待ってエンジン始動制御を開始する。
このため、変速制御中にエンジン始動制御要求があったとき、ショックを防止するだけでなく、ラグ・燃費への跳ね返りを最小限に抑えることができる。
【0102】
(7) 前記始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)は、始動制御でスリップさせるスリップクラッチと、変速に関与する変速クラッチと、の容量バランスにより、前記スリップクラッチがスリップを維持できない変速フェーズのとき、始動禁止フラグを設定する。
このため、(6)の効果に加え、エンジン始動制御を入れると第2クラッチCL2がスリップを維持できない状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる始動ショックの発生を未然に防止できる。
【0103】
(8) 前記始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)は、始動制御を入れると、始動制御でスリップさせるスリップクラッチと、変速での締結クラッチと、が同じクラッチになる変速中のとき、始動禁止フラグを設定する。
このため、(6),(7)の効果に加え、エンジン始動制御を入れるとエンジン始動制御でスリップさせる第2クラッチCL2と変速での締結クラッチが同じクラッチとなる状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる始動ショックの発生を未然に防止できる。
【0104】
(9) 前記始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)は、ワンウェイクラッチを用いた変速中のとき、始動禁止フラグを設定する。
このため、(6)〜(8)の効果に加え、ワンウェイクラッチを用いた変速が行われている状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる衝突ショックの発生を未然に防止できる。
【0105】
(10) 前記始動禁止フラグ設定手段(始動禁止フラグ生成部71a)は、変速においてモータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域のとき、始動禁止フラグを設定する。
このため、(6)〜(9)の効果に加え、モータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域の状況において、変速制御中にエンジン始動制御を入れることによる飛び出し感の発生を未然に防止できる。
【0106】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0107】
実施例1では、エンジン始動制御と変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったときの例を示した。しかし、エンジン停止制御と変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があった場合にも勿論、本発明の協調制御を用いることができる。
【0108】
実施例1では、第2クラッチCL2を、有段式の自動変速機ATに内蔵した摩擦要素の中から選択する例を示した。しかし、自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設けても良く、例えば、モータ/ジェネレータMGと変速機入力軸との間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例や、変速機出力軸と駆動輪の間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例も含まれる。
【0109】
実施例1では、自動変速機ATとして、前進7速後退1速の有段式の自動変速機を用いる例を示した。しかし、変速段数はこれに限られるものではなく、変速段として2速段以上の複数の変速段を有する自動変速機であれば良い。
【0110】
実施例1では、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段として、第1クラッチCL1を用いる例を示した。しかし、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段としては、例えば、プラネタリギア等のように、クラッチを用いることなくクラッチ機能を発揮するような差動装置や動力分割装置を用いる例としても良い。
【0111】
実施例1では、制御装置を後輪駆動のハイブリッド車両に対し適用した例を示したが、前輪駆動のハイブリッド車両に対しても適用することができる。要するに、自動変速機が搭載され、走行モードとして、HEVモードとEVモードを有するハイブリッド車両であれば適用できる。
【符号の説明】
【0112】
Eng エンジン
CL1 第1クラッチ(モード切り替え手段)
MG モータ/ジェネレータ(モータ)
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機
IN 変速機入力軸
M-O/P メカオイルポンプ
S-O/P サブオイルポンプ
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 ATコントローラ
71a 始動禁止フラグ生成部(始動禁止フラグ設定手段)
8 第2クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
10d 変速禁止判定部(変速禁止フラグ設定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンから駆動輪への駆動系に設けられ、前記エンジンの始動と前記駆動輪の駆動を行うモータと、
前記エンジンと前記モータの連結部に設けられ、前記エンジンと前記モータを駆動源とするハイブリッド車モードと、前記モータを駆動源とする電気自動車モードと、を切り替えるモード切り替え手段と、
前記モータと前記駆動輪との間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する自動変速機と、
前記ハイブリッド車モードへのモード遷移時、始動要求に基づいて前記エンジンの始動制御を行い、前記電気自動車モードへのモード遷移時、停止要求に基づいて前記エンジンの停止制御を行うエンジン始動/停止制御手段と、
走行時、変速要求に基づいて前記自動変速機の変速段を現変速段から要求変速段へ移行する変速制御を行う変速制御手段と、
前記エンジンの始動/停止制御と前記自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで他方の制御を開始してもショックが許容値を越えない場合、要求タイミングで他方の制御を開始し、要求タイミングで他方の制御を開始するとショックが許容値を越える場合、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御を開始するエンジン/変速協調制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン始動制御を開始した後、変速制御を入れるとショックに影響する条件が成立するとき、変速禁止フラグを設定する変速禁止フラグ設定手段を設け、
前記エンジン/変速協調制御手段は、前記エンジン始動制御中に変速制御要求があったとき、変速禁止フラグが非設定であれば、要求タイミングで変速制御を開始し、変速禁止フラグが設定であれば、変速禁止フラグが非設定になるタイミングまで待って変速制御を開始することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記変速禁止フラグ設定手段は、モータ回転数制御中の変速であり、変速制御側でギア比の判定ができないとき、変速禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記変速禁止フラグ設定手段は、アクセル一定による変速であり、ドライバーからのショック低減要求が高いとき、変速禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記変速禁止フラグ設定手段は、変速機入力トルクの管理が難しい変速であり、ショックに影響する可能性が高いとき、変速禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記変速制御を開始した後、エンジン始動制御を入れるとショックに影響する条件が成立するとき、始動禁止フラグを設定する始動禁止フラグ設定手段を設け、
前記エンジン/変速協調制御手段は、前記変速制御中にエンジン始動制御要求があったとき、始動禁止フラグが非設定であれば、要求タイミングでエンジン始動制御を開始し、始動禁止フラグが設定であれば、始動禁止フラグが非設定になるタイミングまで待ってエンジン始動制御を開始することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動禁止フラグ設定手段は、始動制御でスリップさせるスリップクラッチと、変速に関与する変速クラッチと、の容量バランスにより、前記スリップクラッチがスリップを維持できない変速フェーズのとき、始動禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動禁止フラグ設定手段は、始動制御を入れると、始動制御でスリップさせるスリップクラッチと、変速での締結クラッチと、が同じクラッチになる変速中のとき、始動禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動禁止フラグ設定手段は、ワンウェイクラッチを用いた変速中のとき、始動禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動禁止フラグ設定手段は、変速においてモータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域のとき、始動禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンから駆動輪への駆動系に設けられ、前記エンジンの始動と前記駆動輪の駆動を行うモータと、
前記エンジンと前記モータの連結部に設けられ、前記エンジンと前記モータを駆動源とするハイブリッド車モードと、前記モータを駆動源とする電気自動車モードと、を切り替えるモード切り替え手段と、
前記モータと前記駆動輪との間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する自動変速機と、
前記ハイブリッド車モードへのモード遷移時、始動要求に基づいて前記エンジンの始動制御を行い、前記電気自動車モードへのモード遷移時、停止要求に基づいて前記エンジンの停止制御を行うエンジン始動/停止制御手段と、
走行時、変速要求に基づいて前記自動変速機の変速段を現変速段から要求変速段へ移行する変速制御を行う変速制御手段と、
前記エンジンの始動/停止制御と前記自動変速機の変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったとき、要求タイミングで他方の制御を開始してもショックが許容値を越えない場合、要求タイミングで他方の制御を開始し、要求タイミングで他方の制御を開始するとショックが許容値を越える場合、他方の制御を許可できるタイミングまで待って他方の制御を開始するエンジン/変速協調制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン始動制御を開始した後、変速制御を入れるとショックに影響する条件が成立するとき、変速禁止フラグを設定する変速禁止フラグ設定手段を設け、
前記エンジン/変速協調制御手段は、前記エンジン始動制御中に変速制御要求があったとき、変速禁止フラグが非設定であれば、要求タイミングで変速制御を開始し、変速禁止フラグが設定であれば、変速禁止フラグが非設定になるタイミングまで待って変速制御を開始することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記変速禁止フラグ設定手段は、モータ回転数制御中の変速であり、変速制御側でギア比の判定ができないとき、変速禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記変速禁止フラグ設定手段は、アクセル一定による変速であり、ドライバーからのショック低減要求が高いとき、変速禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記変速禁止フラグ設定手段は、変速機入力トルクの管理が難しい変速であり、ショックに影響する可能性が高いとき、変速禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記変速制御を開始した後、エンジン始動制御を入れるとショックに影響する条件が成立するとき、始動禁止フラグを設定する始動禁止フラグ設定手段を設け、
前記エンジン/変速協調制御手段は、前記変速制御中にエンジン始動制御要求があったとき、始動禁止フラグが非設定であれば、要求タイミングでエンジン始動制御を開始し、始動禁止フラグが設定であれば、始動禁止フラグが非設定になるタイミングまで待ってエンジン始動制御を開始することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動禁止フラグ設定手段は、始動制御でスリップさせるスリップクラッチと、変速に関与する変速クラッチと、の容量バランスにより、前記スリップクラッチがスリップを維持できない変速フェーズのとき、始動禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動禁止フラグ設定手段は、始動制御を入れると、始動制御でスリップさせるスリップクラッチと、変速での締結クラッチと、が同じクラッチになる変速中のとき、始動禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動禁止フラグ設定手段は、ワンウェイクラッチを用いた変速中のとき、始動禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動禁止フラグ設定手段は、変速においてモータ回転数制御が行われている変速フェーズ領域のとき、始動禁止フラグを設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図14】
【公開番号】特開2012−25228(P2012−25228A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164194(P2010−164194)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]