説明

ハイブリッド車両

【課題】EV走行中にクランキングを行う際に、内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを考慮して、最適な減速比の始動段を決定することが可能なハイブリッド車両の制御技術を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両1のECU100は、EV走行中において内燃機関5の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かに応じて、内燃機関5を始動するクランキングを行う際に、機関出力軸と駆動輪とを係合させる変速段である始動段を決定する。要求駆動力の増大に応じて内燃機関5の始動要求が生じた場合には、内燃機関5の始動は、応答性が必要なものであると判定し、二次電池120の蓄電状態(SOC)の低下に応じて内燃機関5の始動要求が生じた場合には、応答性が必要なものではないと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルクラッチ式変速機を備えたハイブリッド車両の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の変速機においては、近年、第1入力軸で受けた機械的動力を、複数の変速段(例えば、奇数ギア段)のうちいずれか1つにより変速して、駆動輪に向けて伝達可能な第1変速機構と、第2入力軸で受けた機械的動力を、複数の変速段(例えば、偶数ギア段)のうちいずれか1つにより変速して駆動輪に向けて伝達可能な第2変速機構と、機関出力軸と第1入力軸とを係合させることが可能な第1クラッチと、機関出力軸と第2入力軸とを係合させることが可能な第2クラッチとを有する、いわゆるデュアルクラッチ式変速機(Dual Clutch Transmission)が知られている(例えば、特許文献1参照)。デュアルクラッチ式変速機は、第1クラッチと第2クラッチを交互に係合状態にすることで、内燃機関からの機械的動力を変速する変速段を、第1変速機構と第2変速機構との間で切替えるときに、機関出力軸から駆動輪への動力伝達に途切れが生じることを抑制している。
【0003】
また、特許文献1には、デュアルクラッチ式(ツインクラッチ式)変速機を備え、原動機として内燃機関と電気モータ(回転電機)とを有するハイブリッド自動車が開示されている。特許文献1には、デュアルクラッチ式変速機の2つの入力軸(第1及び第2クラッチ軸の出力軸)に電気モータがトルクを出力することで、機関出力軸を回転駆動する、いわゆる「クランキング」を行って、内燃機関を始動することが提案されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、原動機(駆動力発生源)として内燃機関(エンジン)とモータ(モータジェネレータ)と、エンジンとモータとの間に設けられたクラッチ(エンジンクラッチ)とを備えたハイブリッド車両において、内燃機関の始動時において、初爆により生じたトルク変動が、そのまま駆動輪に伝達されて駆動力変動が生じることを抑制するために、機関出力軸の回転速度である機関回転速度(実エンジン回転数)が、目標値に追従するよう、エンジンクラッチの係合力(締結力)を調整する制御技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−153335号公報
【特許文献2】特開2006−298078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなデュアルクラッチ式変速機を備えたハイブリッド車両においては、電気モータから出力された機械的動力のみを駆動輪に伝達して駆動力を生じさせる車両走行であるEV走行を行うことができる。EV走行を行っている間(以下、EV走行中と記す)は、通常、第1及び第2クラッチは、解放状態に制御されている。EV走行中において、駆動輪に生じることが要求される駆動力である要求駆動力が増大した場合や、電気モータに電力を供給する二次電池の蓄電状態(SOC)が低下した場合等、内燃機関の始動要求が生じた場合には、当該始動要求に応じて、内燃機関を始動させる必要がある。
【0007】
このようなEV走行中において内燃機関を始動させる場合、第1クラッチ又は第2クラッチを係合状態にして、駆動輪に係合している電気モータのロータと、機関出力軸とを係合させると共に、電気モータのロータに生じるトルク(以下、モータトルクと記す)を増大させることで、ロータから出力される機械的動力の一部を、機関出力軸に伝達して、当該機関出力軸を回転駆動する、いわゆる「押しがけクランキング」を行うことが可能である。このようなクランキングを行うことにより、駆動輪に生じる駆動力が一時的にゼロとなる、いわゆる「駆動力抜け」が生じることを防止して内燃機関を始動させることが可能である。
【0008】
このようなクランキングを行って内燃機関を始動させる場合、デュアルクラッチ式変速機の第1及び第2入力軸のうち、対応するクラッチが係合状態となって機関出力軸と直接係合する入力軸の回転速度(以下、入力回転速度と記す)は、駆動輪の回転速度すなわち車速に比例しており、且つ、対応するクラッチを係合状態にしたときに、駆動輪と機関出力軸とを係合させる変速段(以下、始動段と記す)の減速比に応じて変化する。当該入力回転速度が低ければ、クランキングを行うためにクラッチを係合状態にしたときに、機関出力軸の回転速度が、内燃機関において共振等の振動が生じる回転速度域(以下、振動回転速度域と記す)内に入っていまい、ファイアリングを行うときに内燃機関に振動が生じる虞がある。一方、入力回転速度が高ければ、クランキングのためのクラッチの係合動作を行う際において、静止している機関出力軸と、入力軸との回転速度差が大きく、当該クラッチにおける摩擦損失が大きくなる虞がある。
【0009】
また、EV走行中における内燃機関の始動には、要求駆動力が増大した場合など、始動要求に対して即座に内燃機関を始動することが必要なもの、すなわち始動要求に対して応答性が必要なものもあれば、二次電池のSOCが予め設定された判定値より低下した場合など、内燃機関の実際の始動が、その始動要求から比較的遅れたとしても、さほど問題がない、すなわち始動要求に対して応答性が必要とされないものもある。
【0010】
したがって、デュアルクラッチ式変速機の2つの入力軸のうち少なくとも一方に電気モータのロータが係合するハイブリッド車両においては、EV走行中にクランキングを行う場合、内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを考慮して、最適な減速比の始動段を決定して係合状態にしておくことが必要となる。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、EV走行中にクランキングを行う際に、内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを考慮して、最適な減速比の始動段を決定することが可能なハイブリッド車両の制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係るハイブリッド車両は、原動機として内燃機関と電気モータとを有し、複数の変速段のうちいずれか1つにより、第1入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第1変速機構と、複数の変速段のうちいずれか1つにより、第2入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第2変速機構と、内燃機関の機関出力軸と第1入力軸とを係合させることが可能な第1クラッチと、当該機関出力軸と第2入力軸とを係合させることが可能な第2クラッチとを有し、第1入力軸及び第2入力軸のうち少なくとも一方に電気モータのロータが係合しているデュアルクラッチ式変速機と、第1及び第2変速機構の変速段の係合/解放状態を制御可能な制御手段と、を備えたハイブリッド車両であって、制御手段は、電気モータから出力される機械的動力のみを駆動輪に伝達して駆動力を生じさせるEV走行中において内燃機関の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを判定する応答性判定手段と、内燃機関の始動が始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かに応じて、内燃機関を始動する際に機関出力軸と駆動輪とを係合させる変速段である始動段を決定する始動段決定手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記のハイブリッド車両において、応答性判定手段は、駆動輪に生じることが要求される駆動力である要求駆動力の増大に応じて内燃機関の始動要求が生じた場合に、内燃機関の始動は、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定するものとすることができる。
【0014】
上記のハイブリッド車両において、応答性判定手段は、電気モータに電力を供給する二次電池の蓄電状態の低下に応じて内燃機関の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関の始動は、始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定するものとすることができる。
【0015】
上記のハイブリッド車両において、始動段決定手段は、内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定した場合には、内燃機関の始動直後において、電気モータから出力された機械的動力が駆動輪に伝達されて駆動輪に作用する駆動力であるモータ駆動力と、内燃機関から出力された機械的動力が駆動輪に伝達されて駆動輪に作用する駆動力である機関駆動力により、要求駆動力が達成可能となる変速段を、始動段に決定するものとすることができる。
【0016】
上記のハイブリッド車両において、始動段決定手段は、少なくとも、内燃機関の始動が始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定した場合には、内燃機関の始動のため機関出力軸を回転駆動する際において、第1及び第2入力軸のうち対応する入力軸の回転速度である入力回転速度が、内燃機関の振動に対応して予め設定された振動回転速度域内に入らない変速段のうち、最も減速比の小さい変速段を、始動段に決定するものとすることができる。
【0017】
上記のハイブリッド車両において、制御手段は、第1及び第2クラッチのうち、始動段に対応するクラッチを係合状態にすると共に、電気モータが出力する機械的動力であるモータ出力を増大させて、機関出力軸を回転駆動するものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、EV走行中において内燃機関の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを判定する応答性判定手段と、内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かに応じて、内燃機関を始動する際に機関出力軸と駆動輪とを係合させる変速段である始動段を決定する始動段決定手段とを有するものとしたので、EV走行中において内燃機関を始動する際に、駆動輪と機関出力軸とを係合させる始動段を、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを考慮したものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、ハイブリッド車両の概略構成を示す模式図である。図2は、デュアルクラッチ式変速機が有するデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。図3は、変形例のデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。
【0021】
ハイブリッド車両1は、駆動輪88を回転駆動するための原動機(動力源)として、内燃機関5と、発電可能な電動機であるモータジェネレータ50(以下、単に「電気モータ」と記す)とを備えている。電気モータ50は、デュアルクラッチ式変速機10と共に駆動装置(10,50)を構成している。駆動装置(10,50)は、内燃機関5と結合されて、ハイブリッド車両1に搭載される。ハイブリッド車両1には、内燃機関5、電気モータ50、及びデュアルクラッチ式変速機10を協調して制御する制御手段として、ハイブリッド車両用の電子制御装置(以下、単に「ECU」と記す)100が設けられている。ECU100には、各種制御定数を記憶する記憶手段としてROM(図示せず)が設けられている。
【0022】
内燃機関5は、燃料のエネルギを燃焼により機械的動力に変換して出力する熱機関であり、ピストン6がシリンダ内を往復運動するピストン往復動機関である。内燃機関5は、図示しない燃料噴射装置、点火装置、及びスロットル弁装置を備えている。これら装置は、ECU100により制御される。内燃機関5は、発生した機械的動力を、機関出力軸(クランク軸)8から出力する。機関出力軸8には、後述するデュアルクラッチ式変速機10のデュアルクラッチ機構20の入力側、例えば、クラッチハウジング14a(図2参照)が結合される。ECU100は、内燃機関5の機関出力軸8から出力する機械的動力を調整することが可能となっている。内燃機関5には、機関出力軸8の回転角位置(以下、クランク角と記す)を検出するクランク角センサ(図示せず)が設けられており、クランク角に係る信号をECU100に送出している。内燃機関5の作動により機関出力軸8に生じるトルク(以下、機関トルクと記す)は、ECU100により制御される。
【0023】
電気モータ50は、供給された電力を機械的動力に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換して回収する発電機としての機能とを兼ね備えた回転電機、いわゆるモータジェネレータである。電気モータ50は、永久磁石型交流同期電動機で構成されており、後述するインバータ110から三相の交流電力の供給を受けて回転磁界を形成するステータ54と、回転磁界に引き付けられて回転する回転子であるロータ52とを有しており、当該ロータ52から機械的動力を入出力可能となっている。電気モータ50には、ロータ52の回転角位置を検出するレゾルバ(図示せず)が設けられており、ロータ52の回転角位置に係る信号をECU100に送出している。
【0024】
また、ハイブリッド車両1には、電気モータ50に電力を供給する電力供給装置として、インバータ110と二次電池120が設けられている。インバータ110は、二次電池120から供給される直流電力を交流電力に変換して電気モータ50に供給することが可能に構成されている。二次電池120は、電気モータ50に供給される電力を貯蔵する。また、インバータ110は、電気モータ50からの交流電力を直流電力に変換して二次電池120に回収することも可能に構成されている。このようなインバータ110から電気モータ50への電力供給、及び電気モータ50からの電力回収は、ECU100により制御される。
【0025】
なお、以下の説明において、電気モータ50を電動機として機能させて、電気モータ50がロータ52から機械的動力を出力することを「力行」と記す。これに対して、電気モータ50を発電機として機能させて、駆動輪88から電気モータ50のロータ52に伝達された機械的動力を電力に変換して二次電池120に回収すると共に、このときロータ52に生じる回転抵抗により、ロータ52及びこれに係合する部材(例えば、駆動輪88)の回転を制動することを「回生制動」と記す。電気モータ50の電動機/発電機としての機能の切替えと、電気モータ50においてロータ52から入力又は出力されるトルク(以下、モータトルクと記す)は、ECU100により制御される。
【0026】
また、ハイブリッド車両1は、内燃機関5及び電気モータ50からの機械的動力を駆動輪88に伝達する動力伝達装置として、機関出力軸8及び電気モータ50からの機械的動力を変速しトルクを変化させて、駆動輪88に係合する推進軸66に向けて伝達可能なデュアルクラッチ式変速機10と、推進軸66に伝達された機械的動力を、減速すると共に駆動輪88に係合する左右の駆動軸80に分配する終減速装置70とを有している。
【0027】
デュアルクラッチ式変速機10は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第1群の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つにより変速して駆動輪88に係合する推進軸66に伝達可能な第1変速機構30と、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第2群の変速段42,44のうちいずれか1つにより変速して駆動輪88に係合する推進軸66に伝達可能な第2変速機構40とを有しており、加えて、内燃機関5の機関出力軸8と第1入力軸27とを係合させることが可能な第1クラッチ21と、機関出力軸8と第2入力軸28とを係合させることが可能な第2クラッチ22により構成されるデュアルクラッチ機構20を有している。
【0028】
デュアルクラッチ式変速機10は、前進用に第1速ギア段31から第5速ギア段35までの5つの変速段を有しており、後進用に1つの変速段、後進ギア段39を有している。第1速〜第5速ギア段31〜35の減速比は、第1速ギア段31、第2速ギア段42、第3速ギア段33、第4速ギア段44、第5速ギア段35の順に小さくなるよう設定されている。
【0029】
第1変速機構30は、複数の歯車対を備えた平行軸歯車装置として構成されており、第1群の変速段は、奇数段すなわち第1速ギア段31と、第3速ギア段33と、第5速ギア段35と、後進ギア段39により構成されている。第1変速機構30において、前進用の変速段31,33,35のうち、第1速ギア段31が最も低速側の変速段となっている。
【0030】
第1速ギア段31は、第1入力軸27に結合されている第1速メインギア31aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第1速メインギア31aと噛み合う第1速カウンタギア31cとを有している。第1変速機構30には、第1速ギア段31に対応して、第1速カウンタギア31cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第1速カップリング機構(噛み合いクラッチ機構)31eが設けられている。第1速カップリング機構31eにより第1速カウンタギア31cと第1出力軸37を係合させる、すなわち第1速ギア段31を係合状態にすることで、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第1速ギア段31により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
【0031】
同様に、第3速ギア段33は、第1入力軸27に結合されている第3速メインギア33aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第3速メインギア33aと噛み合う第3速カウンタギア33cとを有している。第1変速機構30には、第3速ギア段33に対応して、第3速カウンタギア33cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第3速カップリング機構33eが設けられている。第3速カップリング機構33eにより第3速カウンタギア33cと第1出力軸37を係合させる、すなわち第3速ギア段33を係合状態にすることで、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第3速ギア段33により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
【0032】
また、第5速ギア段35は、第1入力軸27に結合されている第5速メインギア35aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第5速メインギア35aと噛み合う第5速カウンタギア35cとを有している。第1変速機構30には、第5速ギア段35に対応して、第5速カウンタギア35cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第5速カップリング機構35eが設けられている。第5速カップリング機構35eにより第5速カウンタギア35cと第1出力軸37を係合させる、すなわち第5速ギア段35を係合状態にすることで、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第5速ギア段35により変速し、トルクを変化させて、第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
【0033】
また、後進ギア段39は、第1入力軸27に結合されている後進メインギア39aと、後進メインギア39aと噛み合う後進中間ギア39bと、後進中間ギア39bと噛み合い、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられた後進カウンタギア39cとを有している。第1変速機構30には、後進ギア段39に対応して、後進カウンタギア39cと第1出力軸37とを係合させることが可能な後進カップリング機構39eが設けられている。後進カップリング機構39eにより後進カウンタギア39cと第1出力軸37とを係合させる、すなわち後進ギア段39を係合状態にすることで、第1変速機構30は、第1入力軸27から受けた機械的動力を、後進ギア段39により、回転方向を逆方向に変えると共に変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
【0034】
第1変速機構30の第1出力軸37には、第1駆動ギア37cが結合されており、当該第1駆動ギア37cは、動力統合ギア58と噛み合っている。動力統合ギア58には、推進軸66が結合されている。推進軸66は、後述する終減速装置70を介して、駆動輪88が結合された駆動軸80と係合している。つまり、第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39の出力側にある第1出力軸37と、駆動輪88は係合している。
【0035】
第1変速機構30における各変速段31,33,35,39の係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つを選択して係合状態にすることで、第1変速機構30が第1入力軸27で受けた機械的動力を、選択されて係合状態にある変速段により変速し、第1出力軸37から駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。
【0036】
一方、第2変速機構40は、第1変速機構30と同様に、複数の歯車対を備えた平行軸歯車装置として構成されており、第2群の変速段は、偶数段、すなわち第2速ギア段42と、第4速ギア段44から構成されている。第2変速機構40の入力軸である第2入力軸28には、電気モータ50のロータ52が結合されている。
【0037】
第2速ギア段42は、第2入力軸28に結合されている第2速メインギア42aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第2速メインギア42aと噛み合う第2速カウンタギア42cとを有している。第2変速機構40には、第2速ギア段42に対応して、第2速カウンタギア42cと第2出力軸48とを係合させることが可能な第2速カップリング機構42eが設けられている。第2速カップリング機構42eにより第2速カウンタギア42cと第2出力軸48とを係合させる、すなわち第2速ギア段42を係合状態にすることで、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第2速ギア段42により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達することが可能となっている。
【0038】
同様に、第4速ギア段44は、第2入力軸28に結合されている第4速メインギア44aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第4速メインギア44aと噛み合う第4速カウンタギア44cとを有している。第2変速機構40には、第4速ギア段44に対応して、第4速カウンタギア44cと第2出力軸48とを係合させることが可能な第4速カップリング機構44eが設けられている。第4速カップリング機構44eにより第4速カウンタギア44cと第2出力軸48とを係合させる、すなわち第4速ギア段44を係合状態にすることで、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第4速ギア段44により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達することが可能となっている。
【0039】
第2変速機構40の第2出力軸48には、第2駆動ギア48cが結合されており、当該第2駆動ギア48cは、動力統合ギア58と噛み合っている。動力統合ギア58には、推進軸66が結合されており、推進軸66は、後述する終減速装置70を介して、駆動輪88に結合された駆動軸80と係合している。つまり、第2変速機構40の第2群の変速段42,44の出力側を構成する第2出力軸48と、駆動輪88は係合している。
【0040】
電気モータ50のロータ52は、第2変速機構40の第2入力軸28に結合されており、ロータ52から入出力する機械的動力すなわちトルクは、第2変速機構40の第2入力軸28にそのまま伝達される。つまり、デュアルクラッチ式変速機10を構成する第1変速機構30及び第2変速機構40にそれぞれ対応して設けられた第1入力軸27及び第2入力軸28のうち、第2入力軸28には、電気モータ50のロータ52が係合している。
【0041】
第2変速機構40における各変速段42,44の係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、第2変速機構40の第2群の変速段42,44のうちいずれか1つの変速段を選択して係合状態にすることで、第2変速機構40が第2入力軸28で受けた機械的動力を、選択されて係合状態にある変速段により変速し、第2出力軸48から駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。
【0042】
デュアルクラッチ機構20は、内燃機関5の機関出力軸8と第1変速機構30の第1入力軸27とを係合させることが可能な第1クラッチ21と、内燃機関5の機関出力軸8と第2変速機構40の第2入力軸28とを係合させることが可能な第2クラッチ22とを有している。第1クラッチ21及び第2クラッチ22は、湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等の摩擦式ディスククラッチ装置で構成される。
【0043】
第1クラッチ21が係合状態となることで、機関出力軸8と第1入力軸27が一体に回転して、機関出力軸8からの機械的動力を、第1変速機構30の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つにより変速して駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。つまり、第1クラッチ21は、第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39に対応して設けられている。
【0044】
一方、第2クラッチ22を係合状態にすることで、機関出力軸8と第2入力軸28が一体に回転して、機関出力軸8からの機械的動力を、第2変速機構40の変速段42,44のうちいずれか1つにより変速して駆動輪88に向けて伝達することが可能となっている。つまり、第2クラッチ22は、第2変速機構40の第2群の変速段42,44に対応して設けられている。
【0045】
第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、デュアルクラッチ機構20において、第1クラッチ21又は第2クラッチ22のうちいずれか一方を係合状態にして、他方を解放状態にすることで、内燃機関5からの機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうちいずれか一方に伝達させることが可能となっている。
【0046】
ここで、デュアルクラッチ機構20の詳細な構造の一例について図2を用いて説明する。図2に示すように、デュアルクラッチ機構20において、機関出力軸8には、図示しないダンパ等を介してデュアルクラッチ機構20のクラッチハウジング14aが結合されている。すなわち、クラッチハウジング14aは、機関出力軸8と一体に回転する。クラッチハウジング14aは、摩擦板(クラッチディスク)27a,28aを収容可能に構成されている。
【0047】
これに対して、第1変速機構30の第1入力軸27と、第2変速機構40の第2入力軸28は、同軸に配置されており、2重軸構造となっている。具体的には、第1入力軸27は、中空シャフトとして構成されており、第1入力軸27内には、第2入力軸28が延びている。内側の軸である第2入力軸28は、外側の軸である第1入力軸27に比べて軸方向に長く構成されている。機関出力軸8側から駆動輪88側に向かうに従って、まず、第1変速機構30の各変速段のメインギア31a,33a,35a,39aが配設されており、次に、第2変速機構40の各変速段のメインギア42a,44aが配設されている。
【0048】
第1入力軸27の端には、円板状の摩擦板27aが結合されており、一方、第2入力軸28の端にも、同様の摩擦板28aが結合されている。第1クラッチ21は、摩擦板27aと対向して設けられた摩擦相手板(図示せず)と、摩擦相手板を駆動するアクチュエータ(図示せず)とを有している。摩擦相手板が摩擦板27aをクラッチハウジング14aに結合された部材に押し付けることで、第1クラッチ21は、機関出力軸8と、第1変速機構30の第1入力軸27とを係合することが可能となっている。
【0049】
これと同様に、第2クラッチ22は、摩擦板28aに対向して設けられた摩擦相手板(図示せず)が、摩擦板28aをクラッチハウジング14aに結合された部材に押し付けることで、機関出力軸8と、第2変速機構40の第2入力軸28とを係合することが可能となっている。デュアルクラッチ機構20における、第1及び第2クラッチ21,22にそれぞれ対応して設けられた摩擦相手板のアクチュエータによる駆動は、ECU100により制御される。
【0050】
なお、上述のデュアルクラッチ機構20の詳細な構造において、第1変速機構30の第1入力軸27と第2変速機構40の第2入力軸28は同軸に配置されるものとしたが、デュアルクラッチ機構20の詳細な構造は、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、第1入力軸27と第2入力軸28は、所定の間隔を空けて平行に延びるよう配置されるものとしても良い。この変形例のデュアルクラッチ機構20においては、機関出力軸8の端に、駆動ギア14cが結合されている。駆動ギア14cには、第1ギア16と、第2ギア18が噛み合っており、第1ギア16は、第1クラッチ21に結合されており、第2ギア18は、第2クラッチ22に結合されている。第1クラッチ21は、第1変速機構30の第1入力軸27と、機関出力軸8に係合する第1ギア16とを係合させることが可能に構成されている。一方、第2クラッチ22は、第2変速機構40の第2入力軸28と、機関出力軸8に係合する第2ギア18とを係合させることが可能に構成されている。
【0051】
第1及び第2クラッチ21,22は、それぞれ摩擦式クラッチ等の任意のクラッチ機構で構成することができる。第1クラッチ21及び第2クラッチ22において交互に係合状態と解放状態を切替ることで、機関出力軸8から出力される内燃機関5の機械的動力は、駆動ギア14cから、第1変速機構30の第1入力軸27、又は第2変速機構40の第2入力軸28のいずれかに伝達されることとなる。
【0052】
また、ハイブリッド車両1には、図1に示すように、原動機から推進軸66に伝達された機械的動力を、減速すると共に、駆動輪88に係合する左右の駆動軸80に分配する終減速装置70が設けられている。終減速装置70は、推進軸66に結合された駆動ピニオン68と、駆動ピニオン68とリングギア72が直交して噛み合う差動機構74とを有している。終減速装置70は、原動機すなわち内燃機関5及び電気モータ50のうち少なくとも一方から推進軸66に伝達された機械的動力を、駆動ピニオン68及びリングギア72により減速し、差動機構74により左右の駆動軸80に分配して、駆動軸80に結合されている駆動輪88に伝達することで、当該駆動輪88の接地面にハイブリッド車両1を駆動する駆動力[N]を生じさせることが可能となっている。
【0053】
また、ハイブリッド車両1には、駆動輪88の回転速度を検出する車輪速センサ(図示せず)が設けられており、検出した駆動輪88の回転速度に係る信号をECU100に送出している。また、ハイブリッド車両1には、電気モータ50に供給される電力を貯蔵する二次電池120の蓄電状態(state-of-charge:SOC)を検出する電池監視ユニット(図示せず)が設けられており、検出した二次電池120の蓄電状態に係る信号を、ECU100に送出している。また、ハイブリッド車両1には、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルポジションセンサ(図示せず)が設けられており、アクセルペダルの操作量(以下、アクセル操作量と記す)に係る信号を、ECU100に送出している。
【0054】
ECU100は、第1変速機構30及び第2変速機構40における各変速段の係合/解放状態と、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放状態とを検出している。また、ECU100は、クランク角センサ(図示せず)からの機関出力軸8の回転角位置(クランク角)に係る信号と、レゾルバからの電気モータ50のロータ52の回転角位置に係る信号と、車輪速センサからの駆動輪88の回転速度に係る信号とを検出している。また、ECU100は、電池監視ユニットからの二次電池120のSOCに係る信号と、アクセルペダルポジションセンサからのアクセル操作量に係る信号を検出している。
【0055】
これら検出した信号に基づいて、ECU100は、各種制御変数を算出している。制御変数には、内燃機関5の機関出力軸8の回転速度(以下、機関回転速度と記す)と、内燃機関5が機関出力軸8から出力する「機関トルク」と、電気モータ50のロータ52の回転速度(以下、モータ回転速度と記す)と、電気モータ50のロータ52に生じる「モータトルク」と、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放状態と、第1変速機構30及び第2変速機構40において現在選択されている(係合状態にある)変速段と、ハイブリッド車両1の走行速度(以下、車速と記す)と、二次電池120のSOCと、運転者により駆動軸80に生じることが要求される駆動力(以下、要求駆動力と記す)等が含まれている。
【0056】
これら制御変数に基づいて、ECU100は、内燃機関5及び電気モータ50の作動を把握しており、ECU100は、内燃機関5の運転状態、すなわち機関回転速度及び機関トルクと、電気モータ50の運転状態、すなわちモータ回転速度及びモータトルクと、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放状態と、第1変速機構30及び第2変速機構40の各変速段31〜44の係合/解放状態とを、協調して制御することが可能となっている。
【0057】
以上のように構成されたハイブリッド車両1は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を交互に係合状態にすることで、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を駆動輪88に伝達する動力伝達に用いる変速段(機関出力変速段)を、第1変速機構30の変速段31,33,35と、第2変速機構40の変速段42,44との間で切替えるときに、機関出力軸8から駆動輪88への動力伝達に途切れが生じることを抑制することが可能となっている。
【0058】
例えば、機関出力変速段を、第1変速機構30の第1速ギア段31から、第2変速機構40の第2速ギア段42に切替えるアップシフトを行う場合、第1クラッチ21が係合状態にしており、且つ第2クラッチ22を解放状態にしているときに、第2速ギア段42を予め係合状態にしておくことで、第2入力軸28を空転させる。そして、係合状態にある第1クラッチ21を解放状態にしながら、解放状態にする第2クラッチ22を係合状態にすることで、第1クラッチ21と第2クラッチ22とをつなぎ替える動作、いわゆる「クラッチ・トゥ・クラッチ」を行わせる。これにより、機関出力軸8から推進軸66への動力伝達経路を、徐々に第1変速機構30の第1入力軸27から第2変速機構40の第2入力軸28に移していき、第1速ギア段31から第2速ギア段42へのアップシフトが完了する。このようにして、デュアルクラッチ式変速機10は、機関出力軸8から駆動輪88への動力伝達に途切れを生じさせることなく、第1変速機構30の変速段すなわち奇数段と、第2変速機構40の変速段すなわち偶数段との間において、機関出力変速段を切替えるシフト動作を行うことが可能となっている。
【0059】
また、ハイブリッド車両1は、原動機として内燃機関5と電気モータ50とを併用又は選択使用することで、様々な車両走行(走行モード)を実現することができる。例えば、内燃機関5の機関出力軸8から出力される機械的動力(機関出力)のみを駆動輪88に伝達することで駆動輪88に駆動力を生じさせる車両走行である「エンジン走行」、内燃機関5の機関出力軸8から出力される機械的動力と、電気モータ50のロータ52から出力される機械的動力とを統合して駆動輪88に伝達することで駆動輪88に駆動力を生じさせる車両走行である「HV走行」、電気モータ50のロータ52から出力される機械的動力のみを駆動輪88に伝達することで駆動輪88に駆動力を生じさせる車両走行である「EV走行」等がある。
【0060】
これら車両走行は、運転者により駆動輪に生じることが要求される要求駆動力や、電気モータ50に供給する電力を貯蔵する二次電池120のSOCに応じて、ECU100により、逐次、自動的に切替えられる。以下に、各走行モードにおけるECU100の制御と、内燃機関5、第1クラッチ21及び第2クラッチ22、第1変速機構30及び第2変速機構40、及び電気モータ50の動作を併せて説明する。
【0061】
ECU100が、第1クラッチ21を係合状態にすると共に第2クラッチ22を解放状態にすることで、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を、第1入力軸27で受け、第1変速機構30の変速段31,33,35,39のいずれか1つの係合状態にある変速段により変速し、第1出力軸37から駆動輪88に伝達することができる。このように、ハイブリッド車両1は、第1クラッチ21を係合状態にしている場合に、エンジン走行を実現することができる。
【0062】
この場合において、第2変速機構40の変速段42,44のいずれか1つを係合状態にすることで、第2入力軸28は、駆動輪88の回転速度すなわちハイブリッド車両1の車速に比例する回転速度で空転する。このとき、ECU100が電気モータ50を力行させて、ロータ52から第2入力軸28にモータトルクを出力することで、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力と、電気モータ50のロータ52からの機械的動力とを、それぞれ第1変速機構30において係合状態にある変速段と、第2変速機構40において係合状態にある変速段により変速し、動力統合ギア58で統合して、駆動輪88に伝達することができる。このようにして、ハイブリッド車両1は、第1クラッチ21を係合状態にしている場合に、HV走行を実現することができる。
【0063】
一方、ECU100が第1クラッチ21を解放状態にすると共に第2クラッチ22を係合状態にすることで、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を、第2入力軸28で受け、第2変速機構40の変速段42,44のいずれか1つの係合状態にある変速段により変速し、第2出力軸48から駆動輪88に伝達することができる。このようにして、ハイブリッド車両1は、第2クラッチ22を係合状態にしている場合に、エンジン走行を実現することができる。
【0064】
この場合において、ECU100が電気モータ50を力行させて、ロータ52から第2入力軸28にモータトルクを出力することで、デュアルクラッチ式変速機10は、電気モータ50のロータ52からの機械的動力と、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力とを、第2入力軸28で統合し、第2変速機構40において係合状態にある変速段により変速して、動力統合ギア58を介して駆動輪88に伝達することができる。このようにして、ハイブリッド車両1は、第2クラッチ22を係合状態にしている場合に、HV走行を実現することができる。
【0065】
また、ハイブリッド車両1に原動機として電気モータ50のみを選択使用するEV走行を行わせる場合、上述のエンジン走行及びHV走行の制御とは異なり、ECU100は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を双方共に解放状態にすると共に、第2変速機構40の変速段42,44のいずれか1つを係合状態にして、電気モータ50を力行させる。デュアルクラッチ式変速機10は、電気モータ50のロータ52からの機械的動力(以下、モータ出力と記す)を、第2入力軸28で受け、第2変速機構40において係合状態にある変速段により変速して、動力統合ギア58を介して駆動輪88に伝達する。
【0066】
このようなEV走行中において内燃機関5を始動させる場合、第1クラッチ21又は第2クラッチ22を係合状態にして、駆動輪88に係合している電気モータ50のロータ52と、機関出力軸8とを係合させると共に、電気モータ50のロータ52に生じるモータトルクを増大させることで、ロータ52から出力されるモータ出力の一部を機関出力軸8に伝達して、当該機関出力軸8を回転駆動する、いわゆる「押しがけクランキング」を行うことが可能である。このような押しがけクランキングを行う場合は、第2変速機構40の変速段42,44を全て解放状態にした後、第2クラッチ22を係合状態にすると共に電気モータ50を力行させて機関出力軸8を回転駆動する「通常のクランキング」を行う場合に比べて、ロータ52と駆動輪88との間における動力伝達が遮断されて駆動力が一時的にゼロとなる、いわゆる「駆動力抜け」が生じることを防止しつつ、内燃機関5を始動させることが可能である。
【0067】
このような押しがけクランキングを行って内燃機関5を始動させる場合、デュアルクラッチ式変速機10の第1及び第2入力軸27,28のうち、対応するクラッチが係合状態となって機関出力軸8と直接係合する入力軸の回転速度(以下、入力回転速度と記す)は、駆動輪88の回転速度すなわち車速に比例しており、且つ、対応するクラッチを係合状態にしたときに、駆動輪88と機関出力軸8とを係合させる変速段(以下、始動段と記す)の減速比に応じて変化する。入力回転速度が低ければ、押しがけクランキングを行う際にクラッチを係合状態にしたときに、機関出力軸8の回転速度が、内燃機関5において共振等の振動が生じる回転速度域(以下、振動回転速度域と記す)内に入っていまい、ファイアリングを行うときに内燃機関に振動が生じる虞がある。一方、入力回転速度が高ければ、押しがけクランキングのためのクラッチの係合動作を行う際において、静止している機関出力軸8と、入力軸との回転速度差が大きく、当該クラッチにおける摩擦損失が大きくなる虞がある。
【0068】
このようなEV走行中において、ECU100には、非作動状態にある内燃機関5を始動させる制御指令(以下、始動要求と記す)が生じることがある。運転者によるアクセル操作量が増大した場合、駆動輪88に生じることが要求される要求駆動力が増大して、電気モータ50がロータ52から出力するモータ出力のみを駆動輪88に伝達したのでは、要求駆動力を達成できないと判断して、ECU100には、当該要求駆動力の増大に応じて、内燃機関5の始動要求が生じる。また、EV走行を比較的長時間継続して、二次電池120のSOCが、予め設定された判定値より低下した場合、電気モータ50を発電機として作動させて二次電池120のSOCを上昇させることが望ましいと判断して、ECU100には、二次電池120のSOCの低下に応じて、内燃機関5の始動要求が生じる。このような始動要求が生じた場合、ECU100は、内燃機関5を始動させる「始動制御」を実行する。
【0069】
ECU100は、EV走行中において生じた始動要求に当該始動制御において、始動制御により実行される内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性(即座に行われること)が必要なものであるか否かを判定する機能(以下、単に「応答性判定手段」と記す)を有している。要求駆動力の増大に応じて内燃機関5の始動要求が生じた場合、ECU100は、内燃機関5の始動は、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定する。これは、運転者等が要求駆動力の増大を意図したにも拘らず、始動要求に対して、内燃機関5の始動と、内燃機関5からの機械的動力による要求駆動力の達成が遅れてしまい、運転者に対して運転性に係る違和感を与えてしまうためである。
【0070】
一方、二次電池120のSOCの低下に応じて、内燃機関5の始動要求が生じた場合、ECU100は、当該内燃機関5の始動は、始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定する。二次電池120のSOCを上昇させるために、内燃機関5を始動させて、内燃機関5からの機械的動力を、ロータ52に伝達させて電気モータ50を発電機として作動させる場合、必ずしも始動要求に即応して内燃機関10を始動させる必要はなく、ハイブリッド車両1の走行状態が、押しがけクランキングを行うのに適した車速すなわち入力回転速度となったときに、内燃機関5を始動させれば良いからである。
【0071】
したがって、デュアルクラッチ式変速機10の2つの入力軸27,28のうち少なくとも一方に電気モータ50のロータ52が係合するハイブリッド車両1において、EV走行中に押しがけクランキングを行う場合、内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを考慮して、クラッチの係合動作が行われる時点の車速に応じた最適な減速比の始動段を決定し、これを係合状態にしておくことが必要となる。
【0072】
そこで、本実施形態に係るハイブリッド車両1において、制御手段としてのECU100は、EV走行中に内燃機関5の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを判定して、始動段を決定する条件を変更しており、以下に、図1、図4〜図9を用いて説明する。
【0073】
図4は、本実施形態に係るハイブリッド車両の始動段の決定に必要となる、係合状態にする変速段及び車速に対する入力回転速度と、その下限値を取得する手法を説明するフローチャートである。図5は、本実施形態に係るハイブリッド車両における、変速段ごとの車速に対する入力回転速度及び始動必要動力を示す図である。図6は、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御手段(ECU)が実行する始動制御を示すフローチャートである。図7−1は、本実施形態に係る始動制御が実行されたときのハイブリッド車両における動力伝達経路を説明する図であり、始動段が第5速ギア段である場合を示す図である。図7−2は、本実施形態に係る始動制御が実行されたときのハイブリッド車両における動力伝達経路を説明する図であり、始動段が第4速ギア段である場合を示す図である。図8は、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御手段(ECU)が実行する、要求駆動力に基づく始動段決定制御を示すフローチャートである。図9は、本実施形態に係るハイブリッド車両の走行性能曲線図(駆動力特性曲線図)である。
【0074】
[入力回転速度及び下限入力回転速度を取得する手法]
EV走行中において内燃機関5を始動するために、機関出力軸8と駆動輪88とを係合させる変速段(以下、始動段と記す)を決定するにあたって、ECU100は、係合状態にする変速段及び車速ごとの入力回転速度と、その下限値とを、以下に説明する手法により制御パラメータとして取得する。
【0075】
図4に示すように、ステップS000において、ECU100は、係合状態にする変速段及び車速に対する入力回転速度Ncを示す入力回転速度マップを算出する。入力回転速度Ncは、係合状態にする変速段が第1変速機構30のものである場合には、第1入力軸27の回転速度となり、第2変速機構40のものである場合には、第2入力軸28の回転速度となる。つまり、入力回転速度Ncは、車速と、係合状態にする変速段の減速比に比例して変化する。具体的には、まず、車速と駆動輪88の動半径から駆動輪88の回転速度(駆動輪回転速度)Ndを求めておく。ECU100は、駆動輪回転速度Ndと、各変速段の減速比Rtと、終減速装置70の終減速比Rdに基づいて、下記の式(1)により、各変速段31〜44及び車速ごとに入力回転速度Ncを算出する。
Nc=Nd×Rd×Rt ・・・(1)
【0076】
なお、第1変速機構30の変速段31,33,35の減速比には、第1駆動ギア37cと動力統合ギア58との間における減速比が含まれており、第2変速機構40の変速段42,44の減速比には、第2駆動ギア48cと動力統合ギア58との間における減速比が含まれている。
【0077】
そして、ステップS010において、ECU100は、変速段及び車速に対する始動必要動力Pnを示す始動必要動力マップを算出する。始動必要動力Pnは、内燃機関5を始動させる際に電気モータ50から機関出力軸8に伝達されることが必要となる機械的動力であり、内燃機関5を始動させるために電気モータ50が機関出力軸8に向けて出力する機械的動力である。ECU100は、入力回転速度Ncと、内燃機関5を始動させる際の機関出力軸の回転駆動に必要なトルクの最大値T(以下、最大クランキングトルクと記す)Tに基づいて、下記の式(2)により、各変速段31〜44及び車速ごとに始動必要動力Pnを算出する。
Pn=T×Nc ・・・(2)
【0078】
なお、最大クランキングトルクTは、内燃機関5の圧縮上死点近傍において圧縮反力により機関出力軸8に作用するトルクである。最大クランキングトルクTは、予め適合実験等により求められており、制御定数としてECU100のROMに記憶されている。
【0079】
そして、ステップS020において、ECU100は、図5にハッチングで示すように、内燃機関5に共振等の振動が生じる機関出力軸8の回転速度域(以下、振動回転速度域と記す)を取得して設定する。振動回転速度域は、内燃機関5を支持するマウントやダンパ等、ハイブリッド車両1の諸元に基づいて定まるものである。本実施形態において、振動回転速度域は、図5にハッチングで示すように、車速に関係のない、所定の機関回転速度域となっている。振動回転速度域の最低値と、振動回転速度域の最大値Nvmax(以下、最大振動回転速度と記す)は、予め適合実験等により求められており、制御定数としてECU100のROMに記憶されている。
【0080】
なお、本実施形態において、振動回転速度域は、係合状態にする変速段及び車速に関係なく一定のものとしたが、この態様に限定されるものではない。係合状態にする変速段や車速など、ハイブリッド車両1の運転状態を示すパラメータに応じてECU100が設定するものとしても良い。
【0081】
そして、ステップS030において、ECU100は、内燃機関5を始動させる際、特に内燃機関5において初爆が生じるときに、機関回転速度が上述の最大振動回転速度Nvamxを超えるように、入力回転速度の下限値Nmin(以下、下限入力回転速度と記す)を、下記の式(3)により、設定する。
Nmin=Nvmax+A ・・・(3)
なお、式(3)において、Aは、入力回転速度が、振動回転速度域に入らないように余裕を持たせるために設定された値である。
【0082】
以上のようにして、ECU100は、係合状態にする変速段及び車速ごとの入力回転速度と、下限入力回転速度Nminを制御変数として取得する。
【0083】
[EV走行中の始動制御]
次に、ECU100が、EV走行中に内燃機関5の始動要求を受けた場合に実行する始動制御について説明する。ECU100は、EV走行中において内燃機関5の始動要求を受けると、図6に示すように、まず、ステップS102において、各種の制御変数を取得する。制御変数には、車速、EV走行を行うために電気モータ50が駆動輪88に出力している機械的動力Pev(以下、EV走行出力と記す)、前進用の各変速段31〜44のうち係合状態となっている変速段等がある。
【0084】
そして、ステップS104において、ECU100は、内燃機関5を始動するときに、機関出力軸8と駆動輪88とを係合させる始動段として、駆動力抜けを生じさせることなく、使用可能な変速段(以下、使用可能変速段と記す)を判別する。
【0085】
例えば、図7−1に太実線で示すように、第4速ギア段44を係合状態にしてEV走行を行っている場合、第2変速機構40における使用可能変速段は、係合状態にある第4速ギア段44のみであり、第2速ギア段42は、使用可能変速段にはならない。第2速ギア段42を係合状態にするには、モータトルクをゼロにして第4速ギア段44の解放動作を行った後、第2入力軸28の回転速度を電気モータ50により調整して第2速ギア段42の係合動作を行う必要があり、第4速ギア段44の解放動作の開始から第2速ギア段42の係合動作の完了までの間、電気モータ50のロータ52と駆動輪88との間において動力伝達を行うことができず、駆動輪88に生じる駆動力がゼロとなる、いわゆる「駆動力抜け」が生じるためである。
【0086】
一方、第1変速機構30における使用可能変速段は、前進用の全ての変速段、すなわち第1速ギア段31、第3速ギア段33、及び第5速ギア段35となる。EV走行中は、通常、第1クラッチ21及び第2クラッチ22が双方共に解放状態となっており、第1変速機構30において、第1入力軸27が空転しており、駆動輪88に係合する第1出力軸37と第1入力軸27との間においてはトルクが作用していない。このため、第1変速機構30においては、容易に変速段31,33,35を係合状態にすることができるからである。
【0087】
このように、ハイブリッド車両1は、第4速ギア段44を係合状態にしてEV走行を行っている場合、電気モータ50が第2入力軸28に係合している第2変速機構40においては、現在、係合状態にある変速段44が、使用可能変速段となり、これと反対側(非モータ側)の第1変速機構30においては、前進用の全ての変速段31,33,35が、使用可能変速段となる。
【0088】
そして、ステップS106において、ECU100は、内燃機関5の始動時のクランキングのために電気モータ50が発生可能な機械的動力である「始動用発生可能出力」Pstを推定する。ECU100は、電気モータ50が出力可能な機械的動力の最大値である最大モータ出力Pmaxと、EV走行を行っている現時点において、電気モータ50が出力しているEV走行出力Pevに基づいて、下記の式(4)により、始動用発生可能出力Pstを推定する。
Pst=Pmax−Pev ・・・(4)
【0089】
そして、ステップS108において、ECU100は、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを判定する。詳細には、始動要求を受けてから即座に内燃機関5を始動させる必要があるか、それとも、始動要求から実際の始動が比較的遅れたとしても問題がないかを判定している。
【0090】
例えば、運転者によるアクセル操作量の増大に伴って要求駆動力が増大し、当該要求駆動力を電気モータ50のモータ出力の増大により達成できず、内燃機関5の始動要求が生じた場合、ECU100は、即座に内燃機関5を始動し、内燃機関5からの機関出力により要求駆動力を達成する必要があるとして、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定する。一方、ハイブリッド車両1がEV走行を比較的長い時間継続して、二次電池120のSOCが予め設定された判定値よりも低下して、内燃機関5の始動要求が生じた場合、ECU100は、即座に内燃機関5を始動せずに、車速が始動に適した値となってから内燃機関5を始動しても問題がないとして、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定する。
【0091】
二次電池120のSOCが低下により始動要求が生じた場合など、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものではない(S108:No)と判定した場合、ECU100は、ステップS110において、「振動抑制と効率に基づく始動段決定制御」を実行する。具体的には、ステップS104で判別された使用可能変速段の中から、始動必要動力Pnが、最大モータ出力PmaxとEV走行出力の差分である始動用発生可能出力Pst以下となり、且つ、入力回転速度Ncが、内燃機関5の振動回転速度域に応じて予め設定された下限入力回転速度Nmin以上となる変速段を、車速に応じて特定する。
【0092】
例えば、図5に示すように、ハイブリッド車両1が、第4速ギア段44を係合状態にしてEV走行を行っており、且つ車速が50km/hである場合について説明する。第4速ギア段44を係合状態にしている場合、使用可能変速段は、第2変速機構40の第4速ギア段44、第1変速機構30の第1速ギア段31、第3速ギア段33、第5速ギア段35となる。そして、これらの使用可能変速段31,33,35、44のうち、始動必要動力Pnが始動用発生可能出力Pst以下となり、且つ入力回転速度Ncが、下限入力回転速度Nmin以上となる変速段(以下、特定変速段と記す)は、図5に示すように、車速が50km/hである場合、第3速ギア段33、第4速ギア段44、第5速ギア段35となる。
【0093】
つまり、第4速ギア段44を係合状態にしてEV走行を行っており、且つ車速が50km/hである場合、特定変速段33,44,35であれば、内燃機関5の始動時に、共振等の振動を生じさせることなく、始動段として用いることができる。なお、第1速ギア段31は、使用可能変速段ではあるが、入力回転速度Ncに比例する始動必要動力Pnが、始動用発生可能出力Pstを超えてしまい、始動段として用いることができない。第2速ギア段42は、使用可能変速段ではなく、仮に当該変速段42を始動段として用いると、駆動力抜けが生じてしまう。
【0094】
そして、始動必要動力Pnが始動用発生可能出力Pst以下となり、且つ入力回転速度Ncが、下限入力回転速度Nmin以上となる特定変速段33,44,35の中から、入力回転速度Ncが最も低くなる変速段、すなわち減速比が最も小さい変速段である第5速ギア段35を、始動段として決定する。このようにして、ハイブリッド車両1が、第4速ギア段44を係合状態にして、車速50km/hでEV走行を行っており、このとき、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定した場合、ECU100は、「振動抑制と効率に基づく始動段決定制御」を実行して、第5速ギア段35を始動段に決定する。
【0095】
そして、ステップS130において、ECU100は、決定された始動段である第5速ギア段35は、現在、係合状態にあるか否かを判定する。例えば、第1変速機構30において、第3速ギア段33が係合状態にある場合、ECU100は、始動段が、現在係合状態にはない(No)と判定して、ステップS132において、始動段である第5速ギア段35を係合状態にする。詳細には、第3速ギア段33の解放動作を行った後、第5速ギア段35の係合動作を行う。
【0096】
そして、ステップS134において、ECU100は、図7−1に示すように始動段である第5速ギア段35に対応する第1クラッチ21を係合状態にすると共に、機関出力軸8の回転駆動に必要な始動必要動力Pna(図5参照)分、電気モータ50のモータ出力を増大させる。これにより、図7−1に太実線で示す、電気モータ50のロータ52から駆動輪88に伝達される機械的動力を一定に維持する(すなわち駆動輪88に生じる駆動力を一定に維持する)と共に、図に太破線で示すように、ロータ52から、動力統合ギア58、始動段である第5速ギア段35、始動段に対応するクラッチである第1クラッチ21を介して、機関出力軸8に始動必要動力Pnaを伝達することができ、入力回転速度Ncaで機関出力軸8を回転駆動してクランキングを行うことができる。当該クランキングを行っている間にファイアリングを行うことで、駆動力抜けを生じさせることなく内燃機関5を始動させることができる。
【0097】
一方、ステップS108において、要求駆動力の増大により始動要求が生じた場合など、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものである(Yes)と判定した場合、ECU100は、ステップS120において、「要求駆動力に基づく始動段決定制御」を実行する。
【0098】
具体的には、図8のステップS121に示すように、ECU100は、駆動輪88に生じることが要求される要求駆動力Ftを制御変数として取得する。要求駆動力Ftは、運転者によるアクセル操作量と車速に基づいて算出される。
【0099】
そして、ステップS122において、ECU100は、ステップS110と同様に、使用可能変速段のうち、始動必要動力Pnが始動用発生可能出力Pst以下となり、且つ入力回転速度Ncが下限入力回転速度Nmin以上となる、車速(50km/h)に応じて特定された特定変速段33,35,44のうち、最も減速段が小さい変速段(すなわち最も入力回転速度が低くなる変速段)である第5速ギア段35から、これを始動段とした場合に、内燃機関5の始動直後において要求駆動力を達成できるか否かを、下記のループ制御により検討する。
【0100】
ステップS123において、ECU100は、その時点の車速に応じて、駆動輪88に生じさせることが可能な駆動力の最大値Fmax(以下、単に「最大駆動力」と記す)を、特定変速段のうち最も減速比の小さい第5速ギア段35から算出する。最大駆動力Fmaxは、内燃機関5から出力可能な機械的動力を、始動段により変速してトルクを変化させて駆動輪88に伝達して、当該駆動輪88に作用させることが可能な駆動力である「機関駆動力」Feと、電気モータ50から出力可能なモータトルクを、第2変速機構40において係合状態にある変速段(始動段と一致する場合もあり)により変速しトルクを変化させて駆動輪88に伝達して、当該駆動輪88に作用させることが可能な駆動力である「モータ駆動力」Fmgの合計として、下記の式(5)により、求めることができる。
Fmax=Fe+Fmg ・・・(5)
つまり、車速が同一の場合、始動段を減速比が大きいものにするに従って、機関駆動力Feは、大きくなる。
【0101】
そして、ステップS124において、ECU100は、車速と特定変速段(第5速ギア段35)に応じて算出された最大駆動力Fmaxが、要求駆動力Ftを上回るか否かを判定する。換言すれば、図9に示すように、要求駆動力Ftからモータ駆動力Fmgを減じた値が、第5速ギア段35を始動段とした場合の機関駆動力Fe_5より小さいか否かを判定する。
【0102】
図9に示すように、第5速ギア段35を始動段とした場合、ECU100は、最大駆動力Fmaxが、要求駆動力Ftを下回る(No)と判定して、ステップS125に進み、第5速ギア段35の次に減速比が小さい特定変速段である第4速ギア段44に検討対象を変更する。
【0103】
一方、第4速ギア段44を始動段とした場合、図9に示すように、機関駆動力Fe_4は、要求駆動力Ftからモータ駆動力Fmgを減じた値より大きくなる。この場合、ECU100は、第4速ギア段44を始動段とした場合の最大駆動力Fmaxが、要求駆動力Ftより大きくなる(S124:Yes)と判定して、ステップS126に進み、当該第4速ギア段44を始動段として決定する。
【0104】
このようにして、ハイブリッド車両1が、第4速ギア段44を係合状態にして、車速50km/hでEV走行を行っており、このとき、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定した場合、ECU100は、「要求駆動力に基づく始動段決定制御」を実行して、第4速ギア段44を始動段に決定する。
【0105】
そして、図6に示すステップS130において、ECU100は、決定された始動段である第4速ギア段44は、現在、係合状態にあるか否かを判定する。図7−2に示すように、第4速ギア段44を係合状態にして、EV走行を行っている場合、ECU100は、始動段が、現在係合状態にある(Yes)と判定して、ステップS134に進む。
【0106】
そして、ステップS134において、ECU100は、図7−2に示すように、始動段である第4速ギア段44に対応する第2クラッチ22を係合状態にすると共に、機関出力軸8の回転駆動に必要な始動必要動力Pnb(図5参照)分、電気モータ50のモータ出力を増大させる。これにより、図7−2に太実線で示す、電気モータ50のロータ52から駆動輪88に伝達される機械的動力を一定に維持する(すなわち駆動輪88に生じる駆動力を一定に維持する)と共に、図に太破線で示すように、ロータ52から、第2入力軸28、及び始動段44に対応するクラッチである第2クラッチ22を介して、機関出力軸8に始動必要動力Pnb(図5参照)を伝達することができ、入力回転速度Ncbで機関出力軸8を回転駆動してクランキングを行うことができる。当該クランキングを行っている間にファイアリングを行うことで、内燃機関5を始動させると共に、内燃機関5の始動直後において即座に要求駆動力Ftを達成することができる。
【0107】
以上に説明したように本実施形態に係るハイブリッド車両1は、原動機として内燃機関5と電気モータ50とを有し、複数の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つにより、第1入力軸27と駆動輪88とを係合させることが可能な第1変速機構30と、複数の変速段42,44のうちいずれか1つにより、第2入力軸28と駆動輪88とを係合させることが可能な第2変速機構40と、内燃機関5の機関出力軸8と第1入力軸27とを係合させることが可能な第1クラッチ21と、当該機関出力軸8と第2入力軸28とを係合させることが可能な第2クラッチ22とを有し、第1入力軸27及び第2入力軸28のうち少なくとも一方に電気モータ50のロータ52が係合しているデュアルクラッチ式変速機10と、第1及び第2変速機構30,40の変速段31〜44の係合/解放状態と、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放状態と、電気モータ50の作動とを制御可能な制御手段としてのECU100を備えている。
【0108】
ECU100は、電気モータ50から出力される機械的動力のみを駆動輪88に伝達して駆動力を生じさせるEV走行中において、内燃機関5の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを判定する機能(応答性判定手段)と、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かに応じて、内燃機関5を始動する際に機関出力軸8と駆動輪88とを係合させる変速段である始動段を決定する機能(始動段決定手段)とを有するものとしたので、EV走行中において内燃機関5を始動するクランキングを行う際に、駆動輪88と機関出力軸8とを係合させる始動段を、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを考慮したものにすることができる。
【0109】
また、本実施形態において、ECU100の応答性判定手段は、駆動輪88に生じることが要求される駆動力である要求駆動力の増大に応じて内燃機関5の始動要求が生じた場合に、内燃機関5の始動は、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定するものとした。運転者等が要求駆動力の増大を意図したにも拘らず、始動要求に対して、内燃機関5の始動と、内燃機関5からの機械的動力による要求駆動力の達成が遅れてしまい、運転者に対して運転性に係る違和感を与えてしまうことを、抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態において、ECU100の応答性判定手段は、電気モータ50に電力を供給する二次電池120の蓄電状態(SOC)の低下に応じて内燃機関5の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関5の始動は、始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定するものとした。二次電池120のSOCを上昇させるために、内燃機関5を始動させて、内燃機関5からの機械的動力を、ロータ52に伝達させて電気モータ50を発電機として作動させる場合、必ずしも始動要求に即応して内燃機関10を始動させる必要はなく、ハイブリッド車両1の走行状態が、押しがけクランキングを行うのに適した車速すなわち入力回転速度Ncとなったときに、内燃機関5を始動させることが可能となる。
【0111】
また、本実施形態において、ECU100の始動段決定手段は、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定した場合には、内燃機関5の始動直後において、電気モータ50から出力された機械的動力が駆動輪88に伝達されて駆動輪88に作用する駆動力であるモータ駆動力と、内燃機関5から出力された機械的動力が駆動輪88に伝達されて駆動輪88に作用する駆動力である機関駆動力により、要求駆動力が達成可能となる変速段を、始動段に決定するものとした。始動段を係合状態にして、始動段に対応するクラッチを係合状態にすることで、機関出力軸8を回転駆動してクランキングを行って内燃機関5を始動させると共に、内燃機関5の始動直後において即座に要求駆動力を達成することができる。
【0112】
また、本実施形態において、ECU100の始動段決定手段は、少なくとも、内燃機関5の始動が始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定した場合には、内燃機関5の始動のため機関出力軸8を回転駆動する際において、第1及び第2入力軸27,28のうち対応する入力軸の回転速度である入力回転速度Ncが、内燃機関5の振動に対応して予め設定された振動回転速度域(図5参照)内に入らない変速段のうち、最も減速比の小さい変速段を、始動段に決定するものとしたので、クランキングを行っているとき(ファイアリング時を含む)において、内燃機関5に共振等の振動が生じることを抑制することができる。
【0113】
また、本実施形態において、ECU100は、第1及び第2クラッチ21,22のうち、始動段に対応するクラッチを係合状態にすると共に、電気モータ50がロータ52から出力する機械的動力であるモータ出力を増大させて、機関出力軸8を回転駆動するものとした。増大させたモータ出力の一部を機関出力軸8に伝達して、当該機関出力軸8を回転駆動するため、内燃機関5を始動するときに、電気モータ50から駆動輪88に伝達される機械的動力が変化することを抑制することができる、すなわち駆動輪88に生じる駆動力が変化することを抑制することができる。
【0114】
なお、本実施形態において、電気モータ50のロータ52が入力軸(第2入力軸28)に係合する変速機構である第2変速機構40の変速段42,44は、偶数段(第2速ギア段、第4速ギア段)で構成されているものとしたが、本発明が適用可能なデュアルクラッチ式変速機10の態様は、これに限定されるものではない。第2変速機構40の変速段が、奇数段で構成されており、一方、第1変速機構30の変速段が、偶数段で構成されていても良いことは勿論である。
【0115】
また、本実施形態において、電気モータ50は、供給された電力を機械的動力に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備えたモータジェネレータであるものとしたが、本発明に係る電気モータは、これに限定されるものではない。電気モータ50は、二次電池120から供給された電力を、機械的動力に変換してロータ52から出力する機能のみを有する電動機で構成するものとしても良い。
【0116】
また、本実施形態に係る第1及び第2変速機構30,40の各変速段31〜44において、メインギア31a〜44aは、それぞれ第1入力軸27又は第2入力軸28に結合されており、メインギア31a〜44aとそれぞれ噛み合うカウンタギア31c〜44cは、第1出力軸37又は第2出力軸48を中心に回転可能に設けられており、カップリング機構31e〜44eは、カウンタギア31c〜44cと、これに対応する出力軸37,48とを係合させるものとしたが、カップリング機構の態様は、これに限定されるものではない。第1及び第2変速機構30,40の各変速段31〜44のうち少なくとも一部の変速段において、メインギアが、これに対応する入力軸を中心に回転可能に設けられ、カウンタギアが、これに対応する出力軸に結合されており、カップリング機構がメインギアと入力軸とを係合させるものしても良い。
【0117】
また、本実施形態において、第2変速機構40の第2入力軸28には、電気モータ50のロータ52が結合されているものとしたが、本発明が適用可能なデュアルクラッチ式変速機10の態様は、これに限定されるものではない。第2入力軸28は、電気モータ50のロータ52と係合していれば良く、例えば、第2入力軸28とロータ52との間に、ロータ52の回転速度を減速して第2入力軸28に伝達する減速機構や、ロータ52の回転速度を変速して第2入力軸28に伝達する変速機構を設けるものとしても良い。
【0118】
また、本実施形態において、デュアルクラッチ式変速機10は、第1変速機構30が、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第1出力軸37から駆動輪88と係合する動力統合ギア58に伝達し、第2変速機構40が、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第2出力軸48から動力統合ギア58に伝達するものとしたが、第1変速機構30及び第2変速機構40の態様は、これに限定されるものではない。第1変速機構30及び第2変速機構40は、それぞれ入力軸27,28で受けた機械的動力を、駆動輪88に向けて伝達可能であれば良く、例えば、第1変速機構30と第2変速機構40は、それぞれ第1入力軸27、第2入力軸28で受けた機械的動力を、駆動輪88と係合する共通の出力軸に伝達するものとしても良い。
【0119】
また、本実施形態において、デュアルクラッチ式変速機10は、内燃機関5の機関出力軸8及び電気モータ50のロータ52からの機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうち少なくとも一方により変速して、動力統合ギア58から、推進軸66、終減速装置70の差動機構74を介して駆動輪88に伝達するものとしたが、第1変速機構30及び第2変速機構40から駆動輪88に向けての動力伝達の態様は、これに限定されるものではない。デュアルクラッチ式変速機10において、第1変速機構30及び第2変速機構40は、それぞれ第1入力軸27及び第2入力軸28で受けた機械的動力を、駆動輪88に向けて伝達可能であれば良く、例えば、動力統合ギア58、又は当該動力統合ギア58と噛み合う第1及び第2駆動ギア37c,48cが、直接に差動機構74のリングギア72を駆動するものとしても良い。
【0120】
また、本実施形態に係るハイブリッド車両1においては、デュアルクラッチ式変速機10の第1入力軸27及び第2入力軸28のうち少なくとも一方に電気モータ50のロータ52が係合しているものとしたが、ハイブリッド車両1の態様は、これに限定されるものではない。EV走行中において内燃機関5を始動させる場合、第1クラッチ21又は第2クラッチ22を係合状態にして、駆動輪88に係合している電気モータ50のロータ52と、機関出力軸8とを係合させると共に、電気モータ50のロータ52に生じるモータトルクを増大させることで、ロータ52から出力されるモータ出力の一部を機関出力軸8に伝達して、当該機関出力軸8を回転駆動することができれば良く、例えば、原動機として第1及び第2の電気モータを有し、デュアルクラッチ式変速機10の第1入力軸には、第1の電気モータのロータが係合しており、第2入力軸には、第2の電気モータのロータが係合しているものとしても良い。
【0121】
また、本実施形態において、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定した場合、ECU100は、始動段として使用可能な変速段である使用可能変速段であって、始動必要動力Pnが始動用発生可能出力Pst以下となり、且つ入力回転速度Ncが、振動回転速度域に応じて設定された下限入力回転速度Nmin以上となる変速段の中から、内燃機関5の始動直後において要求駆動力を達成可能な変速段を始動段に決定するものとしたが、内燃機関5の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定した場合の始動段の決定手法は、これに限定されるものではない。使用可能変速段の中から、内燃機関5の始動直後において、要求駆動力を達成可能な複数の変速段を特定し、この複数の変速段の中から、下限入力回転速度Nmin以上となる変速段のうち、最も減速比が小さい変速段を、始動段に決定するものとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上のように、本発明は、デュアルクラッチ式の変速機を備えたハイブリッド車両に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係る変形例のデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。
【図4】本実施形態に係るハイブリッド車両の始動段の決定に必要となる、係合状態にする変速段及び車速に対する入力回転速度と、その下限値を取得する手法を説明するフローチャートである。
【図5】本実施形態に係るハイブリッド車両における、変速段ごとの車速に対する入力回転速度及び始動必要動力を示す図である。
【図6】本実施形態に係るハイブリッド車両の制御手段(ECU)が実行する始動制御を示すフローチャートである。
【図7−1】本実施形態に係る始動制御が実行されたときのハイブリッド車両における動力伝達経路を説明する図であり、始動段が第5速ギア段である場合を示す図である。
【図7−2】本実施形態に係る始動制御が実行されたときのハイブリッド車両における動力伝達経路を説明する図であり、始動段が第4速ギア段である場合を示す図である。
【図8】本実施形態に係るハイブリッド車両の制御手段(ECU)が実行する、要求駆動力に基づく始動段決定制御を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態に係るハイブリッド車両の走行性能曲線図(駆動力特性曲線図)である。
【符号の説明】
【0124】
1 ハイブリッド車両
5 内燃機関
8 機関出力軸
10 デュアルクラッチ式変速機
20 デュアルクラッチ機構
21 第1クラッチ
22 第2クラッチ
27 第1入力軸
28 第2入力軸
30 第1変速機構
31,33,35,39 ギア段(変速段、歯車対)
37 第1出力軸
40 第2変速機構
42,44 ギア段(変速段、歯車対)
48 第2出力軸
50 電気モータ(モータジェネレータ)
52 電気モータのロータ
66 推進軸
70 終減速装置
74 差動機構
80 駆動軸
88 駆動輪
100 ハイブリッド車両用の電子制御装置(ECU、制御手段、記憶手段、応答性判定手段、始動段決定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機として内燃機関と電気モータとを有し、
複数の変速段のうちいずれか1つにより、第1入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第1変速機構と、複数の変速段のうちいずれか1つにより、第2入力軸と駆動輪とを係合させることが可能な第2変速機構と、内燃機関の機関出力軸と第1入力軸とを係合させることが可能な第1クラッチと、当該機関出力軸と第2入力軸とを係合させることが可能な第2クラッチとを有し、第1入力軸及び第2入力軸のうち少なくとも一方に電気モータのロータが係合しているデュアルクラッチ式変速機と、
第1及び第2変速機構の変速段の係合/解放状態を制御可能な制御手段と、
を備えたハイブリッド車両であって、
制御手段は、
電気モータから出力される機械的動力のみを駆動輪に伝達して駆動力を生じさせるEV走行中において内燃機関の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かを判定する応答性判定手段と、
内燃機関の始動が始動要求に対して応答性が必要なものであるか否かに応じて、内燃機関を始動する際に機関出力軸と駆動輪とを係合させる変速段である始動段を決定する始動段決定手段と、
を有することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
応答性判定手段は、駆動輪に生じることが要求される駆動力である要求駆動力の増大に応じて内燃機関の始動要求が生じた場合に、内燃機関の始動は、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定する
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両において、
応答性判定手段は、電気モータに電力を供給する二次電池の蓄電状態の低下に応じて内燃機関の始動要求が生じた場合に、当該内燃機関の始動は、始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定する
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
始動段決定手段は、
内燃機関の始動が、始動要求に対して応答性が必要なものであると判定した場合には、
内燃機関の始動直後において、電気モータから出力された機械的動力が駆動輪に伝達されて駆動輪に作用する駆動力であるモータ駆動力と、内燃機関から出力された機械的動力が駆動輪に伝達されて駆動輪に作用する駆動力である機関駆動力により、要求駆動力が達成可能となる変速段を、始動段に決定する
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
始動段決定手段は、
少なくとも、内燃機関の始動が始動要求に対して応答性が必要なものではないと判定した場合には、
内燃機関の始動のため機関出力軸を回転駆動する際において、第1及び第2入力軸のうち対応する入力軸の回転速度である入力回転速度が、内燃機関の振動に対応して予め設定された振動回転速度域内に入らない変速段のうち、最も減速比の小さい変速段を、始動段に決定する
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
制御手段は、
第1及び第2クラッチのうち、始動段に対応するクラッチを係合状態にすると共に、電気モータが出力する機械的動力であるモータ出力を増大させて、機関出力軸を回転駆動する
ことを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−76625(P2010−76625A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247790(P2008−247790)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】