説明

ハイブリッド駆動装置およびその制御方法

【課題】低速側の変速段に切替られた場合にも、駆動力を発生する各部位を保護可能なハイブリッド駆動装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】ハイブリッド制御部52は、副変速機構26がLO側ギヤ段に切替えられると、車速が、LOギヤ段の変速比に応じて予め定められた制限車速を超過しないように、制御動作を実行する。具体的には、ハイブリッド制御部52は、第2モータジェネレータMG2の回転速度が許容回転速度を超えないように、エンジン8の出力、ならびに、エンジン8および第2モータジェネレータMG2が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減する。さらに、ハイブリッド制御部52は、温度センサ11t,12t,62t,20t,26tでそれぞれ検出される温度T1,T2,T3,T4,T5が対応の上限温度を超過した場合にも、エンジン8および第1モータジェネレータMG1が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関および電動機を備えたハイブリッド駆動装置およびその制御方法に関し、より特定的には、動力伝達経路にトランスファ装置などの変速機構を備えた構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費効率を高めるために、内燃機関(エンジン)および電動機を動力源とするハイブリッド駆動装置を搭載した、ハイブリッド車両が実用化されている。このようなハイブリッド車両では、内燃機関と機械的に連結された電動機および/または発電機を適宜制御することで、内燃機関の運転点を最適な運転点に調整して、燃料消費効率を向上させている。すなわち、内燃機関から見ると、電動機および/または発電機が一種の無段階変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)を構成しているともいえる。その結果、ハイブリッド車両の車速に依存することなく、内燃機関は同一の運転点を維持しながら作動することもできる。
【0003】
ところで、従来から、悪路走行時や牽引走行時などのより大きな駆動トルクが必要な状況に対応するために、運転操作に応じて、低速側の変速段へ切替え可能なトランスファ装置を搭載した車両が知られている。たとえば、特開平10−250395号公報(特許文献1)には、トランスファセレクタレバーの高速ポジションから低速ポジションへの操作によって切替機構を低速側へ作動させ、トランスミッションの出力軸の回転を遊星歯車機構を介して後輪側と前輪側とにそれぞれ減速して駆動伝達するようにしたトランスファ装置が開示されている。
【特許文献1】特開平10−250395号公報
【特許文献2】特開平7−186753号公報
【特許文献3】特開2005−29118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド車両に、このようなトランスファ装置を搭載することで、より大きな駆動トルクを発生することができるようになる。ここで、トランスファ装置が低速側、すなわちより大きな変速比に切替られると、同一の車速で走行する場合であっても電動機などの回転速度は、この変速比の切替えに応じて増大する。一方、内燃機関は、トランスファ装置の切替えにかかわらず、最適な運転点を維持する。
【0005】
このように、トランスファ装置が低速側に切替られたとしても、内燃機関の作動音や作動に伴う振動などはほとんど増加しないため、運転者は低速側の変速段で走行していることに気付かないことも多いと思われる。そのため、トランスファ装置を低速側の変速段に設定した状態で、長時間走行してしまう場合も想定される。その結果、電動機の回転速度が許容回転速度を超過したり、電動機や電動機に電力を供給する電力変換装置などが過負荷になったりすることが懸念される。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、低速側の変速段に切替られた場合にも、駆動力を発生する各部位を保護可能なハイブリッド駆動装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に従うハイブリッド駆動装置は、動力源と、動力を受けて発電する発電機と、動力源からの動力の少なくとも一部を発電機に分配するとともに、残部を回転出力軸に分配する動力分配機構と、回転出力軸から駆動輪までの動力伝達経路に配置された第1変速機構とを備え、第1変速機構は、運転操作に応じて、通常走行に用いられる通常変速段と、通常変速段に比較して大きな変速比に設定された少なくとも1つの低速側変速段とを選択可能であり、さらに、動力分配機構と第1変速機構との間で動力伝達経路に接続され、電力を用いて駆動力を発生する電動機と、車速を取得する車速取得手段と、動力源、発電機、電動機の作動を制御する制御手段とを備える。そして、制御手段は、第1変速機構で低速側変速段が選択されると、低速側変速段の変速比に応じて予め定められた制限車速を車速が超過しないように制御動作を実行する。
【0008】
この発明によれば、第1変速機構で低速側変速段が選択されると、低速側変速段の変速比に応じて予め定められた制限車速を車速が超過しないように制御動作を実行する。これにより、動力分配機構と第1変速機構との間で動力伝達経路に接続される電動機の回転速度が過剰に増加することを防止できる。
【0009】
好ましくは、制限車速は、電動機の許容回転速度に基づいて決定される。
好ましくは、制御手段は、車速と制限車速との大小関係を比較する第1比較手段を含む、制御手段は、車速が制限車速を超過した場合に、動力源および電動機が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減する。
【0010】
好ましくは、この局面に従うハイブリッド駆動装置は、電動機の温度を取得する温度取得手段をさらに備え、制御手段は、電動機の温度と予め定められたしきい値との大小関係を比較する第2比較手段をさらに含み、制御手段は、電動機の温度がしきい値を超過した場合にも、動力源および電動機が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減する。
【0011】
好ましくは、制御手段は、少なくとも車速に応じて、駆動輪に伝達されるべき出力の要求値を決定する出力要求値決定手段をさらに含み、制御手段は、出力の要求値に従って、動力源、発電機、電動機の各々の作動目標値を決定し、出力要求値決定手段は、少なくとも、車速が制限車速に近付くにつれて、または、電動機の温度が予め定められたしきい値に近付くにつれて、出力の要求値の大きさを低減する。
【0012】
好ましくは、この局面に従うハイブリッド駆動装置は、回転出力軸から第1変速機構までの動力伝達経路に配置され、複数の変速段を有する第2変速機構をさらに備える。
【0013】
好ましくは、この局面に従うハイブリッド駆動装置は、車速が制限車速に近接した状態が連続すると、運転者に対する警告表示を行なう警告灯表示手段をさらに備える。
【0014】
この発明の別の局面に従うハイブリッド駆動装置の制御方法は、ハイブリッド駆動装置が、動力源と、動力を受けて発電する発電機と、動力源からの動力の少なくとも一部を発電機に分配するとともに、残部を回転出力軸に分配する動力分配機構と、回転出力軸から駆動輪までの動力伝達経路に配置された第1変速機構と、動力分配機構と第1変速機構との間で動力伝達経路に接続され、電力を用いて駆動力を発生する電動機とを備え、第1変速機構は、運転操作に応じて、通常走行に用いられる通常変速段と、通常変速段に比較して大きな変速比に設定された少なくとも1つの低速側変速段とを選択可能である。そして、この局面に従う制御方法は、車速を取得するステップと、第1変速機構で低速側変速段が選択されると、低速側変速段の変速比に応じて予め定められた制限車速を車速が超過しないように、動力源、発電機、電動機の作動を制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、低速側の変速段に切替られた場合にも、駆動力を発生する各部位を保護可能なハイブリッド駆動装置およびその制御方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
(ハイブリッド駆動装置の全体構成)
図1は、この発明の実施の形態に従うハイブリッド駆動装置100の概略構成図である。
【0018】
図1を参照して、この発明の実施の形態に従うハイブリッド駆動装置100は、動力ユニット2と、主変速機構20と、副変速機構26と、回転駆動軸22と、差動歯車装置36と、駆動輪38とを備える。ハイブリッド駆動装置100は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に特に好適に用いられるものである。
【0019】
なお、動力ユニット2のエンジン8および副変速機構26以外の部分は、軸心に対して対称的に構成されており、図1では、動力ユニット2および主変速機構20を表す部分については、下側の記載が省略されている。
【0020】
また、ハイブリッド駆動装置100は、蓄電装置60と、パワーコントロールユニット(PCU)62と、制御装置50と、油圧制御回路42と、変速モード切替装置46と、アクセルペダル34と、回転数センサ30と、温度センサ11t,12t,20t,26t,62tと、警告表示灯64とをさらに備える。
【0021】
動力ユニット2は、動力源である内燃機関(以下、「エンジン」とも記す)8と、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2と、動力分配機構である第1遊星歯車機構10とを含む。動力ユニット2は、駆動力(駆動トルク)を発生し、その発生した駆動トルクを回転出力軸14(第2モータジェネレータMG2の出力軸)を介して主変速機構20へ出力する。
【0022】
主変速機構20は、動力ユニット2と中間回転軸21との間の動力伝達経路に設けられ、たとえば有段式の自動変速機(AT)からなる。すなわち、主変速機構20は、回転出力軸14と中間回転軸21との間で、複数の変速段(変速比)を選択的に形成可能である。
【0023】
副変速機構26は、代表的に中間回転軸21と回転駆動軸22との間に配置され、運転者が変速モード切替装置46を操作することで生じる切替信号SELに応じて、通常走行に用いられる通常変速段(以下、「HI側ギヤ段」とも記す)と、通常変速段に比較して大きな変速比に設定された低速側変速段(以下、「LO側ギヤ段」とも記す)とのいずれかを選択的に形成する。副変速機構26は、代表的にトランスファ装置からなる。また、副変速機構26は、選択中のギヤ段を示す選択状態信号MODをハイブリッド制御部52へ出力する。なお、本実施の形態では、低速側変速段が1段の副変速機構26について例示するが、2段以上の低速側変速段を有する副変速機構を用いてもよい。
【0024】
上述したように、本実施の形態に従うハイブリッド駆動装置100では、動力ユニット2の回転出力軸14から駆動輪38までの動力伝達経路に、主変速機構20および副変速機構26が直列に配置される。したがって、動力ユニット2の回転出力軸14は、主変速機構20および副変速機構26のそれぞれで形成される変速比に応じて、駆動輪38と連結される。
【0025】
副変速機構26の出力軸である回転駆動軸22は、差動歯車装置36を介して駆動輪38に連結され、動力ユニット2から出力される駆動トルクを駆動輪38へ伝達する。
【0026】
蓄電装置60は、充放電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池からなる。蓄電装置60は、パワーコントロールユニット62へ電力を供給し、また、パワーコントロールユニット62から出力される回生電力を受けて充電される。なお、蓄電装置60として、大容量のキャパシタを用いてもよい。
【0027】
パワーコントロールユニット62は、制御装置50からの駆動信号に基づいて、蓄電装置60からの直流電力を交流電力に変換して、モータジェネレータMG1,MG2のステータ11s,12sへ出力する。また、パワーコントロールユニット62は、制御装置50からの駆動信号に基づいて、モータジェネレータMG1,MG2により回生発電された交流電力を直流電力に変換して蓄電装置60へ出力する。より具体的には、パワーコントロールユニット62は、代表的に半導体スイッチング素子をスイッチング動作させることで、交流電力と直流電力とを相互に変換する。
【0028】
油圧制御回路42は、制御装置50からの油圧制御指令に基づいて、油圧を用いて主変速機構20内の摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)の係合および解放を行い、主変速機構20での変速動作を実現する。
【0029】
変速モード切替装置46は、切替レバー48と、ポジションセンサ49とを含む。切替レバー48は、「HI側ギヤ段」および「LO側ギヤ段」のいずれか一方を運転者が選択するための操作レバーである。ポジションセンサ49は、切替レバー48による選択されるギヤ段を示す切替信号SELを副変速機構26へ出力する。なお、ポジションセンサ49に代えて、切替レバー48による機械的な変位によって切替動作が行なわれるように、ワイヤーなどを用いて、切替レバー48と副変速機構26とを連動可能に連結してもよい。また、いずれのギヤ段にも設定されない「ニュートラル(N)」ポジションが設けられてもよい。
【0030】
また、アクセルペダル34には開度検出センサ32が連結されており、開度検出センサ32は、運転者によるアクセルペダル34の操作に応じたアクセル開度Accを示す信号を制御装置50へ出力する。
【0031】
回転数センサ30は、回転駆動軸22の回転数を検出し、その検出値から車速Vを示す信号を制御装置50へ出力する。なお、本明細書において、回転数とは、各機器における単位時間(たとえば1分)あたりの回転の回数(すなわち回転速度)を示すものとする。
【0032】
温度センサ11tは、主として、第1モータジェネレータMG1のステータ11sの温度T1を検出し、その温度T1を示す信号を制御装置50へ出力する。同様に、温度センサ12tは、主として、第2モータジェネレータMG2のステータ12sの温度T2を検出し、その温度T2を示す信号を制御装置50へ出力する。また、温度センサ62tは、パワーコントロールユニット62の半導体スイッチング素子などの温度T3を検出し、その温度T3を示す信号を制御装置50へ出力する。
【0033】
また、温度センサ20tは、主変速機構20におけるATF(Automatic Transmission Fluid)の温度を検出し、そのATF温度T4を示す信号を制御装置50へ出力する。同様に、温度センサおよび26tは、副変速機構26におけるATFの温度を検出し、そのATF温度T5を示す信号を制御装置50へ出力する。ここで、ATFとは、主変速機構20および副変速機構26の潤滑や冷却を行なうための油脂類である。
【0034】
制御装置50は、エンジン制御部58と、変速制御部54と、ハイブリッド制御部52とを含む。エンジン制御部58は、ハイブリッド制御部52からのエンジン回転数目標値に従って、エンジン8の始動/停止制御および作動時の回転数制御を実行する。変速制御部54は、主変速機構20に対する変速制御を実行する。具体的には、変速制御部54は、走行状況に応じて、主変速機構20での変速段(ギヤ段)を決定し、主変速機構20においてそのギヤ段が達成されるように、主変速機構20の各摩擦係号要素を係合または解放させるための指令を油圧制御回路42へ出力する。
【0035】
ハイブリッド制御部52は、車速V、アクセル開度Acc、選択状態信号MOD、蓄電装置60の充電状態(SOC:State Of Charge;以下、「SOC」とも称す)、および図示しない各種センサからの信号に基づいて、動力ユニット2に対する制御演算を実行し、その演算結果に基づいた制御信号をエンジン制御部58およびパワーコントロールユニット62へ出力する。
【0036】
特に本実施の形態に従うハイブリッド制御部52は、副変速機構26がLO側ギヤ段に切替えられると、車速が、LOギヤ段の変速比に応じて予め定められた制限車速を超過しないように、制御動作を実行する。具体的には、ハイブリッド制御部52は、第2モータジェネレータMG2の回転速度が許容回転速度を超えないように、エンジン8の出力(パワー)、ならびに、エンジン8および第2モータジェネレータMG2が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減する。また、このような低減動作は、第1遊星歯車機構10や主変速機構20の各ギヤの回転速度が対応の許容回転速度を超えそうな場合にも実行される。
【0037】
さらに、ハイブリッド制御部52は、温度センサ11t,12t,62t,20t,26tでそれぞれ検出される温度T1,T2,T3,T4,T5が対応の上限温度を超過した場合にも、エンジン8の出力(パワー)、ならびに、エンジン8および第2モータジェネレータMG2が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減する。
【0038】
このように、ハイブリッド制御部52は、副変速機構26がLOギヤ段に切替られた場合であっても、第2モータジェネレータMG2やパワーコントロールユニット62などを保護することができる。
【0039】
(動力ユニットの構成)
エンジン出力軸9は、車体に固定された非回転部材であるトランスミッションケース(図示しない)内において、共通の軸心上に配設された回転部材である。第1遊星歯車機構10は、エンジン出力軸9に連結された出力分割機構である。エンジン8は、燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関であり、代表的にガソリンエンジンやディーゼルエンジンからなる。なお、エンジン8と第1遊星歯車機構10との間には、脈動吸収ダンパが介挿されてもよい。
【0040】
シングルピニオン型の第1遊星歯車機構10は、エンジン8で発生する動力を機械的に分配する動力分配機構であって、エンジン8の出力を第1モータジェネレータMG1および回転出力軸14に分配する差動機構として動作する。より具体的には、第1遊星歯車機構10は、第1サンギヤS1と、第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリアCA1と、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1とを回転要素として含む。
【0041】
この第1遊星歯車機構10においては、第1キャリアCA1はエンジン出力軸9、すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1モータジェネレータMG1のロータ11rに連結され、第1リングギヤR1は回転出力軸14に連結されている。そして、遊星歯車装置の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリアCA1および第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転である。
【0042】
これにより、エンジン8で発生した動力の少なくとも一部を受けて、第1モータジェネレータMG1が発電し、蓄電装置60を充電するとともに、エンジン8で発生した動力の残部は第1リングギヤR1を介して回転出力軸14へ伝達される。
【0043】
また、第2モータジェネレータMG2は、回転出力軸14と一体的に回転するロータ12rを有する。そのため、第2モータジェネレータMG2が蓄電装置60からの電力を用いて発生した駆動トルクに、第1遊星歯車機構10の第1リングギヤR1を介して入力されるエンジン8からの駆動力が付加されて、駆動輪38へ伝達される。
【0044】
このように、第1遊星歯車機構10は、電気的な差動装置として機能し、動力ユニット2は、エンジン8の回転数と回転出力軸14の回転数とを任意に変化させることができる。すなわち、動力ユニット2は、(エンジン出力軸9の回転速度)/(回転出力軸14の回転速度)を連続的に変化可能な電気的な無段階変速機として機能する。
【0045】
(主変速機構の構成)
主変速機構20は、回転出力軸14(第2モータジェネレータMG2の出力軸)と中間回転軸21との間の動力伝達経路に配置される。
【0046】
主変速機構20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18を含む。
【0047】
第2遊星歯車装置16は、第2サンギヤS2と、第2遊星歯車P2と、第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリアCA2と、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2とを回転要素として含む。また、第3遊星歯車装置18は、第3サンギヤS3と、第3遊星歯車P3と、第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリアCA3と、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3とを回転要素として含む。
【0048】
回転出力軸14には、第1クラッチC1を介して第3サンギヤS3が、第2クラッチC2を介して第2キャリアCA2が、第3クラッチC3を介して第2サンギヤS2が、それぞれ選択的に連結される。
【0049】
また、第2サンギヤS2は、第1ブレーキB1を介してケースに選択的に連結される。第2キャリアCA2および第3リングギヤR3は、一体的に中間回転軸21に連結されるとともに、第2ブレーキB2を介してケースに選択的に連結される。さらに、第2キャリアCA2および第3リングギヤR3は、一方向クラッチF1を介してケースに選択的に連結される。第2リングギヤR2および第3キャリアCA3は、一体的に回転駆動軸22に連結されている。
【0050】
ここで、クラッチC1〜C3、ブレーキB1,B2、一方向クラッチF1は、一般の車両用自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合装置である。これらは、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介装されている両側の部材を選択的に連結する。
【0051】
(副変速機構の構成)
副変速機構26は、中間回転軸21と回転駆動軸22との間の動力伝達経路に配置される。そして、切替信号SELに応じて、通常走行に用いられるHI側ギヤ段と、通常変速段に比較して大きな変速比に設定されたLO側ギヤ段とのいずれかを選択的に形成する。
【0052】
より具体的には、副変速機構26は、切替信号SELに応じて選択的に噛み合い位置を変化可能なスリーブ24と、中間回転軸21と噛み合って回転するカウンターシャフト27と、カウンターシャフト27と噛み合って回転するドリブンギヤ28とを含む。そして、スリーブ24が紙面左側に位置すると、スリーブ24を介して、中間回転軸21と回転駆動軸22とが直結されるため、変速比が「1」であるHI側ギヤ段が形成される。
【0053】
一方、スリーブ24が紙面右側に位置すると、中間回転軸21は、カウンターシャフト27、カウンターシャフト27、およびスリーブ24を介して、回転駆動軸22と連結される。ここで、カウンターシャフト27およびスリーブ24の各歯車数を適宜設計することで、「1」より大きな変速比(たとえば、2〜3)をもつLO側ギヤ段が形成される。
【0054】
なお、副変速機構26における切替操作は、代表的に、車両の停車状態、すなわち回転駆動軸22が回転停止状態において実行されるが、走行状態であっても切替可能に構成してもよい。その場合には、少なくとも速度および温度のいずれか1つが制約条件を超えているときには、副変速機構26のHI側からLO側への切替を禁止するように構成することが望ましい。
【0055】
(LO側ギヤ段選択時の車速制限動作)
図2は、副変速機構26の切替動作に係る各部の回転速度を示す円線図である。なお、図2は、副変速機構26の切替動作の前後において、車速Vが所定値を維持する場合を示す。
【0056】
図2(a)は、動力ユニット2の各回転部材における回転速度の変化を示す。図2(b)は、副変速機構26の各回転部材における回転速度の変化を示す。
【0057】
図2(b)を参照して、副変速機構26でHI側ギヤ段が選択されると、変速比が「1」であるので、回転駆動軸22の回転速度と中間回転軸21の回転速度とは互いに一致する。次に、変速モード切替装置46が運転者によって操作され、副変速機構26がHI側ギヤ段からLO側ギヤ段に切替られると、変速比が「1」より大きな値に設定されるので、中間回転軸21の回転速度は、回転駆動軸22の回転速度に比較して高くなる。
【0058】
これに伴い、主変速機構20で選択される変速段が同一であるとすると、図2(a)に示すように、回転出力軸14の回転速度、すなわち第2モータジェネレータMG2の回転速度は、HI側ギヤ段が選択されている場合に比較して高くなる。
【0059】
また、HI側ギヤ段が選択されている場合とほぼ同じ運転点でエンジン8が作動するように、第1モータジェネレータMG1の回転速度は低下する。
【0060】
したがって、副変速機構26において、HI側ギヤ段からLO側ギヤ段への切替動作が行なわれると、第2モータジェネレータMG2の回転速度はその変速比の変化に応じて高くなる一方で、エンジン8の回転速度は切替動作の前後で変化しない。そのため、LO側ギヤ段が選択された場合には、第2モータジェネレータMG2の回転速度が許容回転速度を超えないように保護する必要がある。また、第2モータジェネレータMG2の回転速度が比較的高い状態に維持されるので、第2モータジェネレータMG2やパワーコントロールユニット62が高負荷状態で作動することになり、各部位における発熱量も増大する。そのため、このような発熱についても保護する必要がある。
【0061】
以下、このような車速制限動作を実現するための構成について、図3〜図6を用いて説明する。
【0062】
図3は、この発明の実施の形態に従う車速制限動作を実現するための機能ブロック図である。
【0063】
図3を参照して、この発明の実施の形態に従う車速制限動作は、主として、ハイブリッド制御部52によって主体的に実行される。具体的には、ハイブリッド制御部52は、配分部200と、車両要求パワー決定部202とを含む。
【0064】
配分部200は、車両要求パワー決定部202から出力される車両要求パワーPに応じて、エンジン8、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2の各々の作動目標値を決定することで、それぞれにおける作動状態を制御する。すなわち、エンジン8で発生する動力のうち、第1モータジェネレータMG1において発電に使用される動力を除いた残りの動力と、第2モータジェネレータMG2が発生する動力との合計が、車両要求パワーPと一致するように、エンジン回転数目標値Ne、MG1発電目標値Pm1、およびMG2トルク目標値Tm2を決定する。これらの目標値の決定に際して、車速V、アクセル開度Acc、蓄電装置60のSOC、などが考慮される。ここで、エンジン回転数目標値Neは、エンジン8の燃料消費効率が最も高くなるように優先的に決定される。
【0065】
配分部200で決定されるエンジン回転数目標値Neは、エンジン制御部58(図1)へ伝えられ、エンジン制御部58がエンジン8の回転数を制御する。また、MG1発電目標値Pm1およびMG2トルク目標値Tm2は、パワーコントロールユニット62(図1)へ伝えられ、パワーコントロールユニット62がモータジェネレータMG1,MG2のステータ11s,12sとの間で授受される電力を制御する。
【0066】
ここで、車両要求パワー決定部202は、少なくとも車速Vおよびアクセル開度Accに応じて、車両要求パワーPを決定する。代表的に、車両要求パワー決定部202は、車両要求パワーPをアクセル開度Accおよび車速Vに対応付けて規定したマップを格納しており、各時点のアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて、当該マップを参照することで、車両要求パワーPを決定する。
【0067】
特に、本実施の形態に従う車両要求パワー決定部202は、LO側ギヤ段およびHI側ギヤ段に対応付けてそれぞれ異なるマップを格納しており、副変速機構26から出力される選択状態信号MODに応じて、対応するいずれかのマップを参照することで、車両要求パワーPを決定する。
【0068】
図4は、車両要求パワー決定部202に格納される車両要求パワーPの特性の一例を示す図である。
【0069】
図4を参照して、車両要求パワー決定部202には、LO側ギヤ段およびHI側ギヤ段の別に、車速Vに対応付けて車両要求パワーPを規定したマップがそれぞれ格納されている。なお、車両要求パワーPは、アクセル開度Accにも対応付けて規定されているが、図4では、理解を容易にするために、特定のアクセル開度Accにおける車両要求パワーPの特性のみを示す。
【0070】
車両要求パワーPの特性を規定したマップの各々では、車速が、対応する制限車速VLIM(HI),VLIM(LO)に近付くにつれて、車両要求パワーPの大きさが低減するような特性が規定されている。そして、車速が、対応する制限車速VLIM(HI),VLIM(LO)を超えると、車両要求パワーPは「ゼロ」に設定される。
【0071】
なお、制限車速VLIM(HI),VLIM(LO)は、第2モータジェネレータMG2の許容回転速度などによって定まり、特に、LO側ギヤ段が選択された場合のVLIM(LO)は、LO側ギヤ段における副変速機構26の変速比を考慮して予め定められる。
【0072】
このように、車速が対応する制限車速VLIM(HI),VLIM(LO)に近付くにつれて、車両要求パワーPの大きさが低減するため、駆動輪38に伝達されるべき出力が低減し、車両の速度増加が抑制される。
【0073】
再度、図3を参照して、ハイブリッド制御部52は、換算部222と、車速監視部220と、論理和部(OR)210とをさらに含む。
【0074】
車速監視部220は、車速Vと、換算部222で算出される制限車速#VLIMとの大小関係を比較し、車速Vが制限車速#VLIMを超過した場合に、車速制限要求を論理和部210へ出力する。ここで、換算部222は、副変速機構26でHI側ギヤ段が設定されている状態(変速比「1」)において、第2モータジェネレータMG2の許容回転速度の範囲内で決定される制限車速VLIM(HI)を基準にして、副変速機構26で選択中のギヤ段に応じた制限車速#VLIMを換算して出力する。具体的には、換算部222は、副変速機構26でHI側ギヤ段が選択中であれば、制限車速VLIM(HI)をそのまま制限車速#VLIMとして出力する一方、副変速機構26でLO側ギヤ段が選択中であれば、制限車速VLIM(HI)をLO側ギヤ段に相当する変速比で割り算して、その値を制限車速#VLIMとして出力する。このような換算部222における演算処理は、選択状態信号MODに応じて切替えられる。
【0075】
このように、車速監視部220は、第2モータジェネレータMG2が許容回転速度を超過しないように監視する部位である。
【0076】
さらに、ハイブリッド制御部52は、温度監視部230をさらに含む。温度監視部230は、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2、パワーコントロールユニット62、主変速機構20、および副変速機構26の温度がそれぞれ対応の上限温度を超過しないように監視する部位である。より詳細には、温度監視部230は、第1モータジェネレータMG1のステータ11sの温度T1を監視する温度比較部232と、第2モータジェネレータMG2のステータ12sの温度T2を監視する温度比較部234と、パワーコントロールユニット62の温度T3を監視する温度比較部236と、主変速機構20のATF温度T4を監視する温度比較部238と、副変速機構26のATF温度T5を監視する温度比較部240とを含む。
【0077】
温度比較部232,234,236,238,240は、それぞれ温度T1,T2,T3,T4,T5と、対応する予め定められたしきい値Th1,Th2,Th3,Th4,Th5との大小関係を比較し、温度T1,T2,T3,T4,T5が対応するしきい値Th1,Th2,Th3,Th4,Th5を超過すれば、車速制限要求を論理和部210へ出力する。なお、しきい値Th1,Th2,Th3は、ロータコイルの絶縁強度や半導体スイッチング素子の絶縁強度などを考慮して、実験的もしくは経験的に定められる。また、ATF温度のしきい値Th4,Th5は、各ATFの温度特性などを考慮して、実験的もしくは経験的に定められる。
【0078】
そして、論理和部210は、車速監視部220および温度監視部230(温度比較部232,234,236,238,240)から出力される車速制限要求を論理和(OR)演算して結合した後、配分部200へ出力する。
【0079】
ここで、配分部200は、車速制限要求が与えられると、エンジン8の出力(パワー)、ならびに、エンジン8および第2モータジェネレータMG2が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減し、車速の速度上昇を抑制する。
【0080】
なお、図4に示すように、温度T1,T2,T3,T4,T5が、対応するしきい値Th1,Th2,Th3,Th4,Th5に近付くにつれて、車両要求パワーPを徐々に低減するようにしてもよい。
【0081】
図5は、エンジン8で発生する駆動トルクの変更方法の一例を説明するための図である。
【0082】
図6は、第2モータジェネレータMG2で発生する駆動トルクの低減方法の一例を説明するための図である。
【0083】
図5を参照して、配分部200は、最大の燃料消費効率を達成できるエンジントルクTeをエンジン回転数に対応付けて規定した、エンジン8の最適燃費線を格納している。そして、配分部200は、エンジン8で発生すべき出力(パワー)とこの最適燃費線との交点を、エンジン8の運転点に設定し、この運転点に対応するエンジン回転数をエンジン回転数目標値Neとして決定する。したがって、通常の制御動作によれば、エンジン8の運転点は、この最適燃費線上のいずれかの位置に設定されることになる。
【0084】
ここで、エンジン8で発生する駆動トルクを変更するために、配分部200は、当該時点における運転点に対応する同一パワー線に沿って、最適燃費線の下側または上側に運転点をシフトさせる。運転点をいずれの方向(上側または下側)にシフトさせるかについては、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2の温度状態に依存して決定される。代表的に、第1モータジェネレータMG1が発電機として作動し、第2モータジェネレータMG2が電動機として作動する場合には、第1モータジェネレータMG1の温度T1が上限温度に近いと、運転点は下側、すなわちエンジントルクTeを低減する方向にシフトさせることが好ましい。一方、第2モータジェネレータMG2の温度T2が上限温度に近いと、運転点は上側、すなわちエンジントルクTeを増加する方向にシフトさせることが好ましい。このように、同一パワー線に沿って運転点をシフトすることで、走行状況に応じて決定される車両要求パワーPを満足しつつ、すなわち動力ユニット2内のパワーバランスを維持したまま、エンジン8の駆動トルクを低減することができる。
【0085】
図6を参照して、配分部200は、第2モータジェネレータMG2の回転速度が相対的に低い場合(定トルク領域)にはMG2トルクを一定に保つ一方、第2モータジェネレータMG2の回転速度が相対的に高い場合にはMG2トルクを回転数の増加に応じて低減する。ここで、定トルク領域は、第2モータジェネレータMG2で発生する出力(パワー=MG2トルク×MG2回転速度)が定格出力を超えるまでの領域である。すなわち、通常の制御動作によれば、第2モータジェネレータMG2の運転点は、図6に示す特性線上のいずれかの位置に設定されることになる。
【0086】
ここで、第2モータジェネレータMG2で発生する駆動トルクを低減するために、配分部200は、当該時点の運転点をMG2トルクが低減する方向にシフトさせる。たとえば、第2モータジェネレータMG2の運転点が図6に示す特性線上にあれば、運転点は同一回転数を維持したまま下側にシフトする。
【0087】
また、第2モータジェネレータMG2で発生する駆動トルクを低減することで、パワーコントロールユニット(PCU)62からステータ12sへ供給される電流の大きさを抑制できる。このように電流を抑制することで、銅損による発熱量を低減できる。
【0088】
さらに、配分部200は、第1モータジェネレータMG1についても、同様に反力トルク(発電力)を低減させる。
【0089】
このような動作により、ステータ11s,12sおよびパワーコントロールユニット62からの発熱量を低減し、モータジェネレータMG1,MG2およびパワーコントロールユニット62を熱負荷の面から保護できる。
【0090】
なお、上記の車速制限動作が実行されるのは、副変速機構26でLO側ギヤ段が選択された状態に限られることはなく、HI側ギヤ段が選択された場合にも同様の車速制限動作を行なうようにしてもよい。
【0091】
(警告灯表示)
ハイブリッド制御部52は、さらに、車速が制限車速に近接した状態が連続すると、警告表示灯64(図1)を点灯し、運転者に対する警告表示を行なう。
【0092】
図7は、警告灯表示を実現するための機能ブロック図である。
図7を参照して、ハイブリッド制御部52には、運転者に対する警告表示を行なうための制御構造として、偏差算出部80と、比較部82と、タイマー部84とを含む。
【0093】
偏差算出部80は、回転数センサ30(図1)によって検出される車速Vに対して、換算部222(図3)で算出される制限車速#VLIMを減じて、余裕車速Vmgnを算出する。ここで、余裕車速Vmgnは、制限車速#VLIMに対する各時点における車速Vの余裕量である。そして、比較部82が制限車速#VLIMと予め定められたしきい値αとの大小関係を比較し、制限車速#VLIMがしきい値α以下となった場合に、タイマー部84を活性化する。
【0094】
タイマー部84は、比較部82によって活性化されている期間において時間積算を行う。そして、タイマー部84は、積算した時間が予め定められたしきい値βを超過した場合に、警告表示灯64を点灯させる。
【0095】
すなわち、ハイブリッド制御部52は、車速Vが制限車速#VLIMからしきい値αの範囲内にある状態が、しきい値βだけ継続すると、警告表示灯64を点灯し、運転者にHI側ギヤ段への切替えを促す。これにより、運転者に対して副変速機構26の切替え忘れを通知することができるとともに、LO側ギヤ段で長時間走行することによる不要な燃料消費を回避できる。
【0096】
(処理フロー)
上述したような本実施の形態に従う車速制限動作は、次のような処理フローにまとめられる。
【0097】
図8は、この発明の実施の形態に従う車速制限動作の処理手順を示すフローチャートである。図8に示す処理フローは、代表的にエンジン制御部58、変速制御部54、およびハイブリッド制御部52がプログラムを実行することで実現される。なお、図8に示す処理フローは、IG(イグニッション)オンが与えられている状態において、所定周期(たとえば、100msec)で実行されるサブルーチンプログラムとして実装される。
【0098】
図8を参照して、ステップS100にて、ハイブリッド制御部52が副変速機構26で選択中のギヤ段を取得する。次のステップS102にて、副変速機構26で選択中のギヤ段に応じて、ハイブリッド制御部52が制限車速#VLIMを算出する。そして、ステップS104にて、ハイブリッド制御部52が回転数センサ30で検出される車速Vを取得する。そして、ステップS106にて、ハイブリッド制御部52は、車速Vが制限車速#VLIMを超過しているか否かを判断する。
【0099】
車速Vが制限車速#VLIMを超過していない場合(ステップS106においてNOの場合)には、処理はステップS108に進み、ハイブリッド制御部52は、温度センサ11t,12t,62t,20t,26tでそれぞれ検出される温度T1,T2,T3,T4,T5が対応の上限温度を超過しているか否かを判断する。
【0100】
温度T1,T2,T3,T4,T5のいずれもが対応の上限温度を超過していない場合(ステップS108においてNOの場合)には、処理はステップS110に進み、ハイブリッド制御部52は、通常の制御動作に従って、エンジン回転数目標値Ne、MG1発電目標値Pm1、MG2トルク目標値Tm2を決定する。
【0101】
これに対して、車速Vが制限車速#VLIMを超過している場合(ステップS106においてYESの場合)、または温度T1,T2,T3,T4,T5のいずれかが対応の上限温度を超過している場合(ステップS108においてYESの場合)には、処理はステップS112に進み、ハイブリッド制御部52は、車速制限動作を実行する。ここで、車速制限動作には、(1)エンジン8で発生する出力の低減、(2)エンジン8で発生する駆動トルクの低減、(3)第2モータジェネレータMG2で発生する駆動トルクの低減、(4)車両要求パワーPの低減、が含まれ、ハイブリッド制御部52は、少なくともいずれか1つの低減動作を実行する。そして、このような車速制限動作に従って、ハイブリッド制御部52は、エンジン回転数目標値Ne、MG1発電目標値Pm1、MG2トルク目標値Tm2を決定する。
【0102】
そして、ステップS110またはステップS112の処理が実行されると、処理はステップS114に進み、エンジン制御部58およびパワーコントロールユニット62が、ステップS110またはステップS112によって決定された、エンジン回転数目標値Ne、MG1発電目標値Pm1、MG2トルク目標値Tm2に従って、エンジン8、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2の作動を制御する。
【0103】
そして、処理はステップS100に戻される。
この発明の実施の形態と本願発明との対応関係については、エンジン8が「動力源」に相当し、第1モータジェネレータMG1が「発電機」に相当し、第1遊星歯車機構10が「動力分配機構」に相当し、副変速機構26が「第1変速機構」に相当し、第2モータジェネレータMG2が「電動機」に相当し、主変速機構20が「第2変速機構」に相当する。そして、回転数センサ30が「車速取得手段」に相当し、温度センサ12tが「温度取得手段」に相当し、制御装置50が「制御手段」に相当し、警告表示灯64と、偏差算出部80と、比較部82と、タイマー部84とが「警告灯表示手段」に相当する。さらに、車速監視部220が「第1比較手段」に相当し、温度監視部230が「第2比較手段」に相当し、車両要求パワー決定部202が「出力要求値決定手段」に相当する。
【0104】
なお、上述の本実施の形態においては、第2モータジェネレータMG2の出力軸が回転出力軸14に連結された構成について例示したが、第2モータジェネレータMG2の出力軸を中間回転軸21に連結した構成であってもよい。すなわち、本発明は、動力源であるエンジン8から駆動輪38までの動力伝達経路において、副変速機構26より動力源側に第2モータジェネレータMG2などの無段階変速機を実現するための部材が配置される構成に適用可能である。
【0105】
この発明の実施の形態によれば、副変速機構26でLO側ギヤ段に切替られると、車速がLO側ギヤ段の変速比に応じて予め定められた制限車速を超過しないように制御動作を実行する。これにより、動力分配機構である第1遊星歯車機構10と主変速機構20との間で動力伝達経路に接続される第2モータジェネレータMG2の回転速度が過剰に増加することを防止できる。また、第2モータジェネレータやパワーコントロールユニット62からの発熱量を低減し、これらが過剰に過熱することを防止できる。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】この発明の実施の形態に従うハイブリッド駆動装置100の概略構成図である。
【図2】副変速機構26の切替動作に係る各部の回転速度を示す円線図である。
【図3】この発明の実施の形態に従う車速制限動作を実現するための機能ブロック図である。
【図4】車両要求パワー決定部202に格納される車両要求パワーPの特性の一例を示す図である。
【図5】エンジン8で発生する駆動トルクの変更方法の一例を説明するための図である。
【図6】第2モータジェネレータMG2で発生する駆動トルクの低減方法の一例を説明するための図である。
【図7】警告灯表示を実現するための機能ブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態に従う車速制限動作の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
2 動力ユニット、8 内燃機関(エンジン)、9 エンジン出力軸、10 第1遊星歯車機構、11s,12s ステータ、11r,12r ロータ、11t,12t,20t,26t,62t 温度センサ、14 回転出力軸、16 第2遊星歯車装置、18 第3遊星歯車装置、20 主変速機構、21 中間回転軸、22 回転駆動軸、24 スリーブ、26 副変速機構、27 カウンターシャフト、28 ドリブンギヤ、30 回転数センサ、32 開度検出センサ、34 アクセルペダル、36 差動歯車装置、38 駆動輪、42 油圧制御回路、46 変速モード切替装置、48 切替レバー、49 ポジションセンサ、50 制御装置、52 ハイブリッド制御部、54 変速制御部、58 エンジン制御部、60 蓄電装置、62 パワーコントロールユニット(PCU)、64 警告表示灯、80 偏差算出部、82 比較部、84 タイマー部(TIM)、100 ハイブリッド駆動装置、200 配分部、202 車両要求パワー決定部、210 論理和部(OR)、220 車速監視部、222 換算部、230 温度監視部、232,234,236,238,240 温度比較部、B1 第1ブレーキ、B2 第2ブレーキ、C1 第1クラッチ、C2 第2クラッチ、C3 第3クラッチ、CA1 第1キャリア、CA2 第2キャリア、CA3 第3キャリア、F1 一方向クラッチ、MG1 第1モータジェネレータ、MG2 第2モータジェネレータ、P1 第1遊星歯車、P2 第2遊星歯車、P3 第3遊星歯車、R1 第1リングギヤ、R2 第2リングギヤ、R3 第3リングギヤ、S1 第1サンギヤ、S2 第2サンギヤ、S3 第3サンギヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と、
動力を受けて発電する発電機と、
前記動力源からの動力の少なくとも一部を前記発電機に分配するとともに、残部を回転出力軸に分配する動力分配機構と、
前記回転出力軸から駆動輪までの動力伝達経路に配置された第1変速機構とを備え、
前記第1変速機構は、運転操作に応じて、通常走行に用いられる通常変速段と、前記通常変速段に比較して大きな変速比に設定された少なくとも1つの低速側変速段とを選択可能であり、さらに、
前記動力分配機構と前記第1変速機構との間で前記動力伝達経路に接続され、電力を用いて駆動力を発生する電動機と、
車速を取得する車速取得手段と、
前記動力源、前記発電機、前記電動機の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1変速機構で前記低速側変速段が選択されると、前記低速側変速段の変速比に応じて予め定められた制限車速を車速が超過しないように制御動作を実行する、ハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記制限車速は、前記電動機の許容回転速度に基づいて決定される、請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記制御手段は、車速と前記制限車速との大小関係を比較する第1比較手段を含み、
前記制御手段は、車速が前記制限車速を超過した場合に、前記動力源および前記電動機が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減する、請求項1または2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記電動機の温度を取得する温度取得手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記電動機の温度と予め定められたしきい値との大小関係を比較する第2比較手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記電動機の温度が前記しきい値を超過した場合にも、前記動力源および前記電動機が発生する駆動トルクの少なくとも一方を低減する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記制御手段は、少なくとも車速に応じて、前記駆動輪に伝達されるべき出力の要求値を決定する出力要求値決定手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記出力の要求値に従って、前記動力源、前記発電機、前記電動機の各々の作動目標値を決定し、
前記出力要求値決定手段は、少なくとも、車速が前記制限車速に近付くにつれて、または、前記電動機の温度が予め定められたしきい値に近付くにつれて、前記出力の要求値の大きさを低減する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
前記回転出力軸から前記第1変速機構までの動力伝達経路に配置され、複数の変速段を有する第2変速機構をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
車速が前記制限車速に近接した状態が連続すると、運転者に対する警告表示を行なう警告灯表示手段をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
ハイブリッド駆動装置の制御方法であって、
前記ハイブリッド駆動装置は、
動力源と、
動力を受けて発電する発電機と、
前記動力源からの動力の少なくとも一部を前記発電機に分配するとともに、残部を回転出力軸に分配する動力分配機構と、
前記回転出力軸から駆動輪までの動力伝達経路に配置された第1変速機構と、
前記動力分配機構と前記第1変速機構との間で前記動力伝達経路に接続され、電力を用いて駆動力を発生する電動機とを備え、
前記第1変速機構は、運転操作に応じて、通常走行に用いられる通常変速段と、前記通常変速段に比較して大きな変速比に設定された少なくとも1つの低速側変速段とを選択可能であり、
前記制御方法は、
車速を取得するステップと、
前記第1変速機構で前記低速側変速段が選択されると、前記低速側変速段の変速比に応じて予め定められた制限車速を車速が超過しないように、前記動力源、前記発電機、前記電動機の作動を制御するステップとを含む、ハイブリッド駆動装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−260466(P2008−260466A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105906(P2007−105906)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】