説明

パターン形成体の製造方法、機能性素子の製造方法および半導体素子の製造方法

【課題】本発明は、高精細なパターニングが可能なパターン形成体の効率的な製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基板上に形成され、表面が疎水性を示す疎水性層上にフォトレジストパターンを形成するフォトレジストパターン形成工程と、上記フォトレジストパターンが形成された上記疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、親水性領域を形成する親水化工程と、上記フォトレジストパターンを剥離し、上記疎水性層表面に、上記親水性領域と上記親水化工程にて上記フォトレジストパターンで覆われていた疎水性領域とがパターン状に形成された親疎水パターンを形成するフォトレジストパターン剥離工程とを有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタやダイオード等の半導体素子の作製に好適に用いられるパターン形成体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成することが可能なパターン形成体の製造方法としては、各種手法が提案されている。
特に、高精細なパターニングが可能なパターン形成体の製造方法としては、液体に対する表面の濡れ性が異なるパターンを形成する手法が提案されている。
【0003】
例えば、基板上に透明導電膜をパターン状に形成し、透明導電膜の開口部に、液状薄膜材料に対する表面の濡れ性が光照射によって変化する材料を用いて絶縁膜を形成し、透明導電膜および絶縁膜の一部にフォトマスクを介して選択的に光照射して絶縁膜表面の光照射領域の液状薄膜材料に対する濡れ性を高くし、透明導電膜および絶縁膜の光照射領域上に液状薄膜材料を付与して薄膜をパターン状に形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、絶縁膜への光照射によって、液状薄膜材料に対する濡れ性の異なる領域を膜表面に形成し、この膜表面の濡れ性の差異を利用して、高い精度で効率良く薄膜をパターン状に形成することができる。
【0004】
また、基材上に撥液層が形成された基板とフォトマスクとを所定の圧力で密着し、基板にフォトマスクを介して光を照射して撥液層に機能性液体に対する接触角の大きさが異なるプレパターンを形成し、プレパターンに機能性液体を供給して機能性液体の接触角が小さい部分に微細構造体を形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、親水性を示すガラス基板上に疎水性を示すポリイミド層を形成し、ポリイミド層上にフォトレジストを形成し、フォトリソグラフィーによりポリイミド層をパターニングし、ガラス基板が露出した親水性領域とガラス基板上にポリイミド層が形成されている疎水性領域とを形成し、親水性領域上に導電性材料または半導電性材料をインクジェット印刷により付着させ、ソース・ドレイン電極を形成する方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法では、フォトレジストのパターニング後、酸素プラズマを露光することによって、ポリイミド層をエッチングするとともに、ガラス基板表面の親水性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−288469号公報
【特許文献2】特開2008−9321号公報
【特許文献3】特表2003−518756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法においては、光照射する際に基板とフォトマスクとを密着させると最も高い精度が得られるが、密着させるとフォトマスクが傷つけられたり汚染されたりするので、基板とフォトマスクとの間隙を可能な限り小さくすることが好ましいとされている。また、光照射による濡れ性変化は絶縁膜近傍における酸素の活性種と絶縁膜表面との反応による効果が大きく、真空紫外領域の光が好ましいとされている。
しかしながら、基板とフォトマスクとの間に空間があると、真空紫外線を照射した際に酸素の活性種が真空紫外線が照射されていない領域にも回り込み、パターンがぼやけて精度が落ちるという問題がある。さらには、パターン形成体を利用して機能性素子を作製する場合であって、照射領域上に薄膜を形成した後、未照射領域上にさらに部材を形成する場合に、真空紫外線照射時に酸素の活性種が未照射領域にも回り込んでしまうと、未照射領域表面が発生した酸素の活性種により酸化され、未照射領域表面にキャリアトラップに起因するOH基が形成されるおそれがあり、また、未照射領域上に形成された部材との界面が荒れてしまい、平坦性や積層する分子の分子配向性が悪くなり、素子特性が低下するおそれがある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法によれば、基板とフォトマスクとがある程度の圧力をもって密着しているので、光による酸素の活性種の未照射領域への回り込みが少なく、照射部である撥液部と未照射部である親液部との境界を明瞭にすることができる。
しかしながら、上記方法では、基板とフォトマスクとを密着させるので、上述したようにフォトマスクが傷つけられたり汚染されたりするという問題がある。また、光による酸素原子ラジカルの発生が少ないので、照射部が表面改質されないか、あるいは表面改質されるのに時間がかかるという問題がある。
【0009】
また、特許文献3に記載の方法では、ポリイミド層による段差が生じるため、親水性領域上へのインクの付着方法が限定されてしまうという問題や、目的とするパターンの種類によっては適用できないものがあるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高精細なパターニングが可能なパターン形成体の効率的な製造方法を提供することを主目的とするものである。さらには、パターン形成体を利用して機能性素子を作製する場合に、素子特性を向上させることが可能なパターン形成体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、基板上に形成され、表面が疎水性を示す疎水性層上にフォトレジストパターンを形成するフォトレジストパターン形成工程と、上記フォトレジストパターンが形成された上記疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、親水性領域を形成する親水化工程と、上記フォトレジストパターンを剥離し、上記疎水性層表面に、上記親水性領域と上記親水化工程にて上記フォトレジストパターンで覆われていた疎水性領域とがパターン状に形成された親疎水パターンを形成するフォトレジストパターン剥離工程とを有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0012】
本発明によれば、親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、目的とする親疎水パターンを高精細に形成することが可能である。また、親水化工程にて、疎水性層表面の親水化したい領域は露出しているので、短時間のエネルギー照射で親水化することができ、効率良くパターン形成体を製造することが可能である。さらに、本発明のパターン形成体の製造方法により製造されるパターン形成体を用いて機能性素子を製造する場合であって、パターン形成体の親水性領域上に機能性部を形成した後、疎水性層上にさらに部材を形成する場合には、親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、疎水性層と部材との界面の状態を良好なものとし、素子特性を高めることも可能である。
【0013】
上記発明においては、上記エネルギーが真空紫外線であることが好ましい。真空紫外線はエネルギーが高く、より効果的に酸素の活性種を発生させることが可能であり、短時間で効率良く疎水性層表面を親水化することができるからである。
【0014】
また本発明においては、上記疎水性層が、上記基板上に形成された機能層と、上記機能層上に形成され、疎水性を示す疎水層とを有していてもよい。機能毎に層が分かれているので、層構成や材料の組み合わせ等を容易に変更することができるからである。
【0015】
さらに本発明においては、上記疎水層がオルガノポリシロキサンを含有することが好ましい。エネルギー照射により純水の接触角が低下し得る材料として、オルガノポリシロキサンが好適に用いられるからである。
【0016】
また本発明においては、上記フォトレジストパターン形成工程では、上記疎水性層上にフッ素基を含む界面活性剤を含有するフォトレジストを塗布し、パターニングして、上記フォトレジストパターンを形成することが好ましい。フッ素基を含む界面活性剤を含有するフォトレジストを用いることで、疎水性層表面の疎水性が高くとも、疎水性層上にフォトレジストを良好に塗布することができるからである。
【0017】
また本発明は、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とする機能性素子の製造方法を提供する。
【0018】
さらに本発明は、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とする半導体素子の製造方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体を用いるので、機能性部を高精細に形成することが可能である。また、機能性部形成工程後、疎水性層上にさらに部材を形成する場合には、上述のパターン形成体の製造方法における親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、疎水性層と部材との界面の状態を良好なものとすることができ、素子特性を向上させることが可能である。
【0020】
上記発明においては、上記半導体素子がトラジスタまたはダイオードであることが好ましい。半導体素子がトラジスタまたはダイオードである場合、上記の疎水性層と部材との界面の状態を改善することにより、優れた素子特性が得られるからである。
【0021】
また本発明においては、上記疎水性層が絶縁膜であり、上記機能性部が電極または半導体層であることが好ましい。電極および半導体層が互いに近傍に配置される場合、電極または半導体層のパターニング精度が低下すると素子特性が劣化する可能性があるからである。
【0022】
さらに本発明においては、上記基板と上記疎水性層との間にゲート電極が形成されており、上記疎水性層がゲート絶縁膜であり、上記機能性部がソース電極およびドレイン電極であり、上記機能性部形成工程後に、上記疎水性層上に半導体層を形成する半導体層形成工程を有することが好ましい。ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造の場合、疎水性層と半導体層との界面をキャリアが移動することになる。本発明によれば、上述のパターン形成体の製造方法における親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、エネルギーの照射による疎水性層表面の半導体層が形成される領域への影響を防ぐことができる。したがって、疎水性層および半導体層の界面の状態を良好なものとし、素子特性を向上させることができる。
【0023】
また本発明においては、上記半導体層が有機半導体層であることが好ましい。これは、ゲート絶縁膜が疎水性を有する場合に、有機半導体材料の分子配向が改善され、素子特性を向上させる効果が大きいためである。また、有機半導体層は比較的安価に大面積化が可能であり、フレキシブル基板上に成膜することができ、さらに機械的衝撃に対して安定であるという利点を有しているからである。
【0024】
さらに本発明においては、上記疎水性層表面の25℃での純水の接触角が100°以上であり、上記半導体層形成工程にて、上記疎水性層上に直に上記有機半導体層を形成することが好ましい。疎水性層表面の疎水性が上記のように高い場合には、有機半導体材料の配向性を向上させることができるからである。
【0025】
また本発明においては、上記半導体層形成工程が、上記機能性部が形成された上記疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、第2親水性領域を形成する第2親水化工程と、上記第2親水性領域表面を有機化合物により修飾し、表面改質領域を形成する表面改質工程と、上記表面改質領域上に上記有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程とを有することも好ましい。機能性部形成工程後に、上記の第2親水化工程および表面改質工程を行うことで、有機半導体層を形成する領域を半導体特性に悪影響を及ぼさない表面状態とすることが可能となるからである。また、機能性部形成工程後に、上記の第2親水化工程および表面改質工程を行うことで、有機半導体層を形成する領域の濡れ性(疎水性または親水性)を調整することができ、有機半導体層形成用塗工液を塗布して有機半導体層を形成する場合には、有機半導体層形成用塗工液の塗布性を改良することが可能であるからである。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、目的とする親疎水パターンを高精細に形成することが可能であるという効果を奏する。さらに、パターン形成体を用いて機能性素子を製造する場合であって、パターン形成体の親水性領域上に機能性部を形成した後、疎水性層上にさらに部材を形成する場合には、親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、疎水性層と部材との界面の状態を良好なものとし、素子特性を高めることも可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のパターン形成体の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図3】本発明の機能性素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図4】本発明のパターン形成体の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図5】本発明の半導体素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図6】本発明のパターン形成体の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図7】本発明の半導体素子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図8】本発明の半導体素子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のパターン形成体の製造方法、機能性素子の製造方法、および半導体素子の製造方法について詳細に説明する。
【0029】
A.パターン形成体の製造方法
まず、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。
本発明のパターン形成体の製造方法は、基板上に形成され、表面が疎水性を示す疎水性層上にフォトレジストパターンを形成するフォトレジストパターン形成工程と、上記フォトレジストパターンが形成された上記疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、親水性領域を形成する親水化工程と、上記フォトレジストパターンを剥離し、上記疎水性層表面に、上記親水性領域と上記親水化工程にて上記フォトレジストパターンで覆われていた疎水性領域とがパターン状に形成された親疎水パターンを形成するフォトレジストパターン剥離工程とを有することを特徴とするものである。
【0030】
本発明のパターン形成体の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1(a)〜(f)は、本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。まず、基板1上に表面が疎水性を示す疎水性層2を形成する(図1(a))。次に、疎水性層2上にフォトレジスト3aを塗布し(図1(b))、フォトマスク11を介して光12を照射し(図1(c))、現像して、フォトレジストパターン3bを形成する(図1(d))(フォトレジストパターン形成工程)。次いで、フォトレジストパターン3bが形成された疎水性層2の表面に真空紫外線13を照射して親水化し、親水性領域を形成する(図1(e))(親水化工程)。続いて、フォトレジストパターン3bを剥離し、疎水性層2表面に、親水性領域5aと親水化工程にてフォトレジストパターン3bで覆われていた疎水性領域5bとがパターン状に形成された親疎水パターンを形成する(図1(f))(フォトレジストパターン剥離工程)。このようにしてパターン形成体10が得られる。
【0031】
本発明によれば、親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、目的とする親疎水パターンを高精細に形成することが可能である。また、親水化工程にて、疎水性層表面の親水化したい領域は露出しているので、短時間のエネルギー照射で親水化することができ、効率良くパターン形成体を製造することが可能である。
さらに、本発明のパターン形成体の製造方法により製造されるパターン形成体を利用して機能性素子を作製する場合であって、親水性領域上に機能性部を形成した後、疎水性層上にさらに部材を形成する場合には、親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、疎水性層と部材との界面の状態を良好なものとすることができ、素子特性を向上させることが可能である。
【0032】
以下、本発明のパターン形成体の製造方法における疎水性層および各工程について説明する。
【0033】
1.疎水性層
本発明における疎水性層は、基板上に形成され、表面が疎水性を示すものである。
【0034】
疎水性層表面の疎水性としては、疎水性層表面の25℃での純水の接触角が、親水化工程にて疎水性層表面に形成される親水性領域表面の25℃での純水の接触角よりも高ければ特に限定されるものではない。中でも、疎水性層表面の25℃での純水の接触角は、80°以上であることが好ましく、特に100°以上であることが好ましい。
なお、上記接触角は、例えば、基板上に1マイクロリットルの液体を滴下し、滴下した液滴の形状を側面より観測し、液滴と基板とのなす角を計測することにより測定することができる。このような測定は、例えば、井元製作所製接触角測定装置によって行うことができる。
【0035】
疎水性層としては、基板上に形成され、表面が疎水性を示すものであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途や、後述の親水化工程にて疎水性層表面に形成する親水性領域の親水性の程度等に応じて適宜選択される。疎水性層は、例えば、疎水性材料を含有する単一の層であってもよく(第1態様の疎水性層)、所定の機能を有する機能層と、疎水性を示す疎水層とが積層されたものであってもよい(第2態様の疎水性層)。以下、各態様に分けて説明する。
【0036】
(1)第1態様の疎水性層
本態様の疎水性層は、疎水性材料を含有する単一の層である。本態様においては、単一の層であるので、パターン形成体の層構成を簡素化することができる。
【0037】
疎水性材料としては、エネルギー照射により純水の接触角が低下し得るものであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途や、後述の親水化工程にて形成する親水性領域の親水性の程度等に応じて適宜選択される。疎水性材料は、有機材料であってもよく、無機材料であってもよい。具体的に、疎水性材料としては、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニル系樹脂、表面をHMDS(ヘキサメチルジシラン)やOTS(オクダデシルトリクロロシラン)等で修飾処理したSiO2(酸化ケイ素)等を挙げることができる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0038】
また、疎水性材料は、上述の材料の他に、エネルギー照射により純水の接触角が低下し得る材料であり、かつエネルギー照射により劣化、分解されないような高い結合エネルギーを有する主鎖をもつ材料を含有していてもよい。このような材料としては、オルガノポリシロキサン等を挙げることができる。中でも、アルキル基、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましい。オルガノポリシロキサンがアルキル基、フルオロアルキル基を含有する場合には、エネルギー照射により純水の接触角が大きく低下するからである。
なお、オルガノポリシロキサンについては、例えば特開2000−249821号公報に記載されているものと同様のものとすることができる。
【0039】
疎水性層の形成方法としては、疎水性材料の種類に応じて適宜選択される。
疎水性層の厚みとしては、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択される。例えば、パターン形成体を用いてトランジスタを作製する場合であって、疎水性層がトランジスタのゲート絶縁膜である場合においては、疎水性層の厚みは0.01μm〜10μmの範囲内で設定することができ、0.1μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜1μmの範囲内であることがより好ましい。
【0040】
(2)第2態様の疎水性層
本態様の疎水性層2は、図2(a)に例示するように、基板1上に形成され、所定の機能を有する機能層2aと、機能層2a上に形成され、疎水性を示す疎水層2bとを有するものである。本態様においては、機能毎に層が分かれているので、層構成や材料の組み合わせ等を容易に変更することができる。この場合、図2(a)〜(f)に例示するように、疎水層2bの表面に親水性領域5aと疎水性領域5bとがパターン状に形成された親疎水パターンが形成される。
以下、機能層および疎水層に分けて説明する。
【0041】
(a)機能層
本態様に用いられる機能層は、所定の機能を有するものである。
機能層の材料としては、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択される。例えばパターン形成体を用いてトラジスタやダイオードのソース電極・ドレイン電極、ゲート電極または半導体層を形成する場合には、疎水性層をゲート絶縁膜とすることができ、機能層には絶縁性材料を用いることができる。
機能層の形成方法としては、機能層の材料の種類に応じて適宜選択される。
機能層の厚みとしては、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択される。
【0042】
(b)疎水層
本態様に用いられる疎水層としては、疎水性を示すものである。
疎水層の疎水性としては、疎水層表面の25℃での純水の接触角が、親水化工程にて疎水層表面に形成される親水性領域表面の25℃での純水の接触角よりも高ければ特に限定されるものではない。中でも、疎水層表面の25℃での純水の接触角は、80°以上であることが好ましく、特に100°以上であることが好ましい。
【0043】
疎水層の材料としては、エネルギー照射により純水の接触角が低下し得るものであり、かつエネルギー照射により劣化、分解されないような高い結合エネルギーを有する主鎖をもつものであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途や、後述の親水化工程にて疎水層表面に形成する親水性領域の親水性の程度等に応じて適宜選択される。疎水層の材料は、有機材料であってもよく、無機材料であってもよい。具体的に、疎水層の材料としては、オルガノポリシロキサン等を挙げることができる。中でも、アルキル基、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましい。オルガノポリシロキサンがアルキル基、フルオロアルキル基を含有する場合には、エネルギー照射により純水の接触角が大きく低下するからである。
なお、オルガノポリシロキサンについては、例えば特開2000−249821号公報に記載されているものと同様のものとすることができる。
また、疎水層は、オルガノポリシロキサンの他に、例えば特開2000−249821号公報に記載されている界面活性剤や添加剤を含有することができる。
【0044】
疎水層の形成方法としては、疎水層の材料の種類に応じて適宜選択され、例えば、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ビードコート、ディップコート等の湿式法、および、熱CVD法、プラズマCVD法等のCVD法や、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法などの乾式法を用いることができる。
【0045】
疎水層の厚みとしては、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択される。例えば、疎水層の厚みは、0.01μm〜1μmの範囲内で設定することができ、0.05μm〜0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0046】
(3)基板
本発明に用いられる基板は、上記疎水性層を支持するものである。
基板としては、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択される。基板の材料としては、例えば、ガラス、金属、セラミック、樹脂等が挙げられる。また、基板は、ガラス基板等の可撓性を有さないリジット基板であってもよく、樹脂フィルム等の可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0047】
2.フォトレジストパターン形成工程
本発明におけるフォトレジストパターン形成工程は、上記疎水性層上にフォトレジストパターンを形成する工程である。
【0048】
疎水性層上にフォトレジストパターンを形成する方法としては、疎水性層上にフォトレジストパターンを形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、通常、疎水性層上にフォトレジストを塗布し、パターニングして、フォトレジストパターンを形成する方法が用いられる。
【0049】
フォトレジストは、ポジ型およびネガ型のいずれであってもよい。中でも、後述のフォトレジストパターン剥離工程でのフォトレジストパターンの剥離し易さを考慮すると、ポジ型フォトレジストが好ましい。フォトレジストとしては、一般的なものを用いることができる。
【0050】
中でも、フォトレジストがフッ素基を含む界面活性剤を含有することが好ましい。このようなフォトレジストであれば、フォトレジストの表面張力を効果的に低減することが可能なため、疎水性層表面の疎水性が高くとも、疎水性層上にフォトレジストを良好に塗布することができるからである。フッ素基を含む界面活性剤としては、フォトレジストに対して可溶であれば特に限定されるものではなく、高分子系および低分子系のいずれも用いることができ、一般的なフッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0051】
また、フォトレジストは、疎水性層表面のフォトレジストの接触角が15°以下となるものであることが好ましく、中でも10°以下となるものであることが好ましい。上記接触角が上記範囲であれば、疎水性層上にフォトレジストを良好に塗布することができるからである。
【0052】
フォトレジストの塗布方法としては、疎水性層上に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート、キャスティング、ディップコート、バーコート、ブレードコート、ロールコート、グラビアコート、スプレーコート、フレキソ印刷等が用いられる。
【0053】
フォトレジストの膜厚は、後述の親水化工程でのエネルギー照射に耐え得る厚みであれば特に限定されるものではない。
【0054】
フォトレジストのパターニングは、通常、フォトレジストをパターン露光し、現像する方法が用いられる。
フォトレジストをパターン露光する方法としては、例えば、フォトマスクを介して露光する方法、レーザー描画法など、一般的な方法を用いることができる。
フォトレジストを現像する方法としては、例えば現像液を用いる方法を適用することができる。現像液としては、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できる。また、現像液として、無機アルカリ系現像液や、水溶液を使用することもできる。
フォトレジストを現像した後は、水で洗浄するのが好ましい。
【0055】
フォトレジストパターンは、所望の親水性領域を形成することができるパターンであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択される。
【0056】
3.親水化工程
本発明における親水化工程は、上記フォトレジストパターンが形成された上記疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、親水性領域を形成する工程である。
【0057】
疎水性層の表面に照射されるエネルギーとしては、疎水性層の表面を親水化することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。中でも、真空紫外線が好ましい。真空紫外線はエネルギーが高く、より効果的に酸素の活性種を発生させることが可能であり、短時間で効率良く疎水性層表面を親水化することができるからである。
【0058】
真空紫外線の波長は、疎水性層表面を親水化することができる波長であればよく、疎水性層の材料の種類に応じて適宜選択される。通常は、100nm〜250nmの範囲内であることが好ましく、中でも150nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。波長が上記範囲よりも長いと、酸素ラジカルの発生効率が低くなり、疎水性層の材料の種類によっては感度が低くなってしまう場合があるからである。また、波長が上記範囲よりも短いと、安定した真空紫外線の照射が困難となる可能性があるからである。
【0059】
真空紫外線の照射に用いることができる光源としては、例えば、エキシマランプ、低圧水銀ランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
真空紫外線の照射量としては、疎水性層の材料の種類に応じて適宜調整される。
【0060】
真空紫外線を疎水性層に照射する方法としては、疎水性層に均一な照射量で真空紫外線を照射できる方法であれば特に限定されず、例えば、疎水性層の全面を同時に照射する方法、および、光源または疎水性層が形成された基板の少なくとも一方を移動させながら、疎水性層を順次に照射する方法を挙げることができる。中でも、疎水性層を順次に照射する方法が好ましい。その理由は次の通りである。
すなわち、真空紫外線は指向性のない分散光であるため、疎水性層の全面を同時に照射する方法では、例えば、大面積の疎水性層に真空紫外線を照射する場合に、中央部と端部とで真空紫外線の照射量に差が生じてしまう可能性がある。しかしながら、疎水性層を順次に照射する方法によれば、たとえ大面積の疎水性層に真空紫外線を照射する場合であっても、全面に対して均一に照射することが容易になるからである。
また、疎水性層を順次に照射する方法の中でも、疎水性層が形成された基板を固定し、光源を移動させながら照射する方法が好ましい。このような方法によれば、大面積の疎水性層に均一に真空紫外線を照射することが容易になるからである。
【0061】
真空紫外線の照射は、通常、酸素の存在下において行われる。
【0062】
親水性領域の親水性としては、親水性領域表面の25℃での純水の接触角が、親水化工程前の疎水性層表面の25℃での純水の接触角よりも低ければ特に限定されるものではない。中でも、親水性領域表面の25℃での純水の接触角は、30°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましく、5°以下であることがさらに好ましい。また、親水性領域表面の25℃での純水の接触角と、親水化工程前の疎水性層表面の25℃での純水の接触角との差は、50°以上であることが好ましく、より好ましくは70°以上、さらに好ましくは80°以上であり、特に好ましくは90°以上である。上記接触角および上記接触角の差が上述の範囲であることにより、パターン形成体を用いて機能性素子を製造する場合に、機能性部形成用塗工液をより選択性高く親水性領域上に付与させることができ、高精度で機能性部を形成することが可能になるからである。
【0063】
4.フォトレジストパターン剥離工程
本発明におけるフォトレジストパターン剥離工程は、上記フォトレジストパターンを剥離し、上記疎水性層表面に、上記親水性領域と上記親水化工程にて上記フォトレジストパターンで覆われていた疎水性領域とがパターン状に形成された親疎水パターンを形成する工程である。
【0064】
ここで、「親水性領域」は上記親水化工程にて疎水性層表面が親水化された領域であり、「疎水性領域」は親水化工程にて疎水性層表面がフォトレジストパターンで覆われていた領域である。
【0065】
疎水性領域表面の25℃での純水の接触角と、親水性領域表面の25℃での純水の接触角との差は、50°以上であることが好ましく、より好ましくは70°以上、さらに好ましくは80°以上であり、特に好ましくは90°以上である。上記接触角の差が上記範囲であることにより、パターン形成体を用いて機能性素子を製造する場合に、親水性領域上のみに機能性部を形成することが容易になるからである。
【0066】
フォトレジストを剥離する方法としては、例えば、アセトン、トルエン等の有機溶剤、剥離液等を用いる方法を適用することができる。剥離液としては、一般的に使用されている剥離液を使用できる。
【0067】
5.用途
本発明のパターン形成体の製造方法により製造されるパターン形成体は、例えば、半導体素子の電極や半導体層、配線基板の配線、有機EL素子の発光層等の有機層、カラーフィルタ、マイクロレンズ、バイオチップ等の形成に用いることができる。
【0068】
B.機能性素子の製造方法
次に、本発明の機能性素子の製造方法について説明する。
本発明の機能性素子の製造方法は、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とするものである。
【0069】
図3(a)〜(b)は、本発明の機能性素子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、上述のパターン形成体の製造方法によりパターン形成体10を準備する(図3(a))。図3(a)に示すパターン形成体10は、図1(a)〜(f)に示すパターン形成体の製造方法により製造することができる。次に、パターン形成体10の親水性領域5a上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部6を形成する(図3(b))(機能性部形成工程)。
【0070】
本発明によれば、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体を用いるので、機能性部を高精細に形成することが可能である。また、機能性部形成工程後、疎水性層上にさらに部材を形成する場合には、上述のパターン形成体の製造方法における親水化工程にて、親水化される領域(親水性領域)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、疎水性層と部材との界面の状態を良好なものとすることができ、素子特性を向上させることが可能である。
【0071】
なお、パターン形成体の製造方法およびパターン形成体については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。以下、機能性部形成工程および機能性素子について説明する。
【0072】
1.機能性部形成工程
本発明における機能性部形成工程は、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部を形成する工程である。
【0073】
ここで、「機能性」とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)のような各種の機能を意味するものである。
【0074】
機能性部形成用塗工液は、少なくとも機能性材料を含有するものである。機能性材料としては、機能性素子の種類や用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば、半導体材料、発光材料、PEDOT/PSS等の正孔注入性材料、金属ナノコロイド等の導電性材料、着色材料、樹脂材料、タンパク質、細胞、DNA等の生体物質などを挙げることができる。
【0075】
親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布する方法としては、親水性領域上にのみ機能性部を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、親水性領域表面および疎水性領域表面の純水の接触角の差に応じて適宜選択される。親水性領域表面および疎水性領域表面の純水の接触角の差が大きい場合には、疎水性層の全面に機能性部形成用塗工液を塗布する方法および親水性領域上にのみ機能性部形成用塗工液を塗布する方法のいずれも用いることができる。一方、親水性領域表面および疎水性領域表面の純水の接触角の差が小さい場合には、親水性領域上にのみ機能性部形成用塗工液を塗布する方法が用いられる。疎水性層の全面に機能性部形成用塗工液を塗布する方法としては、例えば、スピンコート、ダイコート、ロールコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、ブレードコート、グラビア・オフセット印刷等が挙げられる。親水性領域上にのみ機能性部形成用塗工液を塗布する方法としては、例えば、インクジェット、ディスペンサ等の吐出法が挙げられる。
【0076】
2.機能性素子
本発明の機能性素子の製造方法により製造される機能性素子としては、例えば、トランジスタやダイオード等の半導体素子、有機EL素子、カラーフィルタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を挙げることができる。
【0077】
C.半導体素子の製造方法
次に、本発明の半導体素子の製造方法について説明する。
本発明の半導体素子の製造方法は、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とするものである。
【0078】
本発明の半導体素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図4(a)〜(f)および図5(a)〜(c)は、本発明の半導体素子の製造方法の一例を示す工程図であり、機能性部としてソース電極およびドレイン電極を形成する例である。まず、基板1上にゲート電極21を形成し、基板1上にゲート電極21を覆うように、表面が疎水性を示す疎水性層2(ゲート絶縁膜22)を形成する(図4(a))。次に、疎水性層2上にフォトレジスト3aを塗布し(図4(b))、フォトマスク11を介して光12を照射し(図4(c))、現像して、フォトレジストパターン3bを形成する(図4(d))(フォトレジストパターン形成工程)。次いで、フォトレジストパターン3bが形成された疎水性層2の表面に真空紫外線13を照射して親水化し、親水性領域を形成する(図4(e))(親水化工程)。続いて、フォトレジストパターン3bを剥離し、疎水性層2表面に、親水性領域5aと親水化工程にてフォトレジストパターン3bで覆われていた疎水性領域5bとがパターン状に形成された親疎水パターンを形成する(図4(f)および図5(a))(フォトレジストパターン剥離工程)。このようにしてパターン形成体10が得られる。
次に、パターン形成体10の親水性領域5a上に機能性部形成用塗工液を塗布し、ソース電極23およびドレイン電極24を形成する(図5(b))(機能性部形成工程)。次いで、疎水性層2(ゲート絶縁膜22)上にソース電極23およびドレイン電極24の間に半導体層25を形成する(図5(c))(半導体層形成工程)。このようにして半導体素子20が得られる。この半導体素子は、ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を有するトランジスタまたはダイオードである。
【0079】
図6(a)〜(f)および図7(a)〜(e)は、本発明の半導体素子の製造方法の他の例を示す工程図であり、機能性部として半導体層を形成する例である。まず、基板1上に、表面が疎水性を示す疎水性層2(絶縁膜)を形成する(図6(a))。次に、疎水性層2上にフォトレジスト3aを塗布し(図6(b))、フォトマスク11を介して光12を照射し(図6(c))、現像して、フォトレジストパターン3bを形成する(図6(d))(フォトレジストパターン形成工程)。次いで、フォトレジストパターン3bが形成された疎水性層2の表面に真空紫外線13を照射して親水化し、親水性領域を形成する(図6(e))(親水化工程)。続いて、フォトレジストパターン3bを剥離し、疎水性層2表面に、親水性領域5aと親水化工程にてフォトレジストパターン3bで覆われていた疎水性領域5bとがパターン状に形成された親疎水パターンを形成する(図6(f)および図7(a))(フォトレジストパターン剥離工程)。このようにしてパターン形成体10が得られる。
次に、パターン形成体10の親水性領域5a上に半導体層形成用塗工液を塗布し、半導体層25を形成する(図7(b))(機能性部形成工程)。次いで、疎水性層2(絶縁膜)上に半導体層25を挟むようにソース電極23およびドレイン電極24を形成する(図7(c))。続いて、半導体層25、ソース電極23およびドレイン電極24を覆うようにゲート絶縁膜22を形成する(図7(d))。そして、ゲート絶縁膜22上にゲート電極21を形成する(図7(e))。このようにして半導体素子20が得られる。この半導体素子は、トップゲート・トップコンタクト型構造を有するトランジスタまたはダイオードである。
【0080】
本発明によれば、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体を用いるので、機能性部を高精細に形成することが可能である。
【0081】
特に、図5(c)に示すボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を有するトランジスタにおいては、疎水性層2(ゲート絶縁膜22)と半導体層25との界面をキャリアが移動するため、良好なトランジスタ特性を得るには、疎水性層2(ゲート絶縁膜22)と半導体層25と界面の平滑性や、疎水性領域5bの表面状態が重要である。本発明においては、上述したように、親水化される領域(親水性領域5a)以外の領域はフォトレジストパターンで覆われており、オゾンや活性酸素から保護されているので、疎水性領域5b表面でのキャリアトラップ要因となるOH基の形成が抑制され、疎水性層2と半導体層25との界面の状態を良好なものとすることができるので、オンオフ電流比、しきい値電圧Vth、移動度などのトランジスタ特性に優れる半導体素子を製造することが可能である。
【0082】
図4(a)〜(f)および図5(a)〜(c)は、ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を有するトランジスタまたはダイオードの製造方法の一例であり、図6(a)〜(f)および図7(a)〜(e)は、トップゲート・トップコンタクト型構造を有するトランジスタまたはダイオードの製造方法の一例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、図示しないがボトムゲート・トップコンタクト型構造やトップゲート・ボトムコンタクト型構造を有するトランジスタまたはダイオードの作製にも適用することができる。
【0083】
以下、本発明の半導体素子の製造方法における各工程および半導体素子について説明する。
【0084】
1.機能性部形成工程
本発明における機能性部形成工程は、上述のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部を形成する工程である。
以下、機能性部の形成方法およびパターン形成体について説明する。
【0085】
(1)機能性部の形成方法
本発明に用いられる機能性部形成用塗工液は、少なくとも機能性材料を含有するものである。機能性材料としては、半導体素子を構成する機能性部の種類等に応じて適宜選択されるものであり、例えば、機能性部として電極を形成する場合には導電性材料が用いられ、機能性部として半導体層を形成する場合には半導体材料が用いられる。
【0086】
親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布する方法としては、親水性領域上にのみ機能性部を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ディップコート、ダイコート、ビードコート、スピンコート、インクジェット、ディスペンサ、ブレードコート、フレキソ印刷、グラビア印刷等を挙げることができる。
【0087】
機能性部としては、半導体素子を構成する部材であり、かつパターニングが必要な部材であれば特に限定されるものではなく、例えば、電極、配線、半導体層等が挙げられる。中でも、機能性部は電極または半導体層であることが好ましい。電極および半導体層が互いに近傍に配置される場合、電極または半導体層のパターニング精度が低下すると素子特性が劣化する可能性があるからである。
【0088】
機能性部が電極である場合、電極としては、例えば、ゲート電極、ソース電極・ドレイン電極、陽極、陰極等のいずれであってもよい。本発明においては、後述するように半導体素子がトランジスタまたはダイオードであることが好ましいことから、機能性部としてゲート電極またはソース電極・ドレイン電極を形成することが好ましく、特にソース電極・ドレイン電極を形成することが好ましい。上述したように、図5(c)に例示するようなボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を有するトランジスタまたはダイオードにおいて、疎水性層2(ゲート絶縁膜22)と半導体層25との界面の状態を良好なものとし、素子特性を向上させることができるからである。
【0089】
機能性部が電極である場合、機能性部形成用塗工液としては、導電性材料を含有するものであればよく、一般的なものを使用することができる。また、機能性部として電極を形成する方法としても、一般的な方法を適用することができる。
【0090】
機能性部としてゲート電極を形成する場合、上記導電性材料としては、例えば、Au、Cu、Ag、ITO、Pt等の金属粒子もしくは金属酸化物粒子、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素材料、PEDOT/PSS等の導電性高分子材料などが挙げられる。ゲート電極の厚みとしては、30nm〜500nm程度で設定することができる。
また、機能性部としてソース電極およびドレイン電極を形成する場合、上記導電性材料としては、例えば、Au、Cu、Ag、ITO、Pt等の金属粒子もしくは金属酸化物粒子、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素材料、PEDOT/PSS等の導電性高分子材料などが挙げられる。ソース電極およびドレイン電極の厚みとしては、30nm〜500nm程度で設定することができる。
【0091】
機能性部として半導体層を形成する場合には、半導体材料が用いられる。上記半導体材料としては、無機半導体材料および有機半導体材料のいずれも使用することができる。
塗布可能な無機半導体材料としては、Si、InGaZnO系の酸化物半導体を用いることができ、例えば特開2005−223138号公報、特開2010−16037号公報に記載のものが挙げられる。
有機半導体材料としては、例えば、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。より具体的には、ペンタセン、シリルエチン置換ペンタセンに代表されるペンタセン誘導体、アントラジチオフェン誘導体、ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、ジナフトチエノチオフェン誘導体、チオフェン、ペリレン、フラーレン等の低分子系有機半導体材料、および、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)等のポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン等のポリチオフェン類、ポリイソチアナフテン等のポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレン等のポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)等のポリアニリン類、ポリアセチレン等のポリアセチレン類、ポリジアセチレン、ポリアズレン等のポリアズレン類等の高分子系有機半導体材料を挙げることができる。さらに、上記有機半導体材料に有機ポリマーを混合して用いることができる。混合する有機ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ポリメタクリル酸メチル樹脂類、ポリビニルカルバゾール類、ポリトリアリルアミン類が挙げられる。また、ここに挙げた有機ポリマー以外にも一般的な有機ポリマーを用いることができる。
機能性部として半導体層を形成する場合、機能性部形成用塗工液および半導体層の形成方法としては、半導体材料の種類に応じて適宜選択される。例えば、無機半導体材料の場合、機能性部形成用塗工液としては無機半導体材料の前駆体が用いられ、塗布後に前駆体の加熱処理を行い無機半導体層を形成することができる。また、有機半導体材料の場合、機能性部形成用塗工液としては、上記有機半導体材料を有機溶媒に溶解した溶液や、上記有機半導体材料と上記有機ポリマーとを任意の比率で有機溶媒に混合した溶液が用いられ、塗布後に有機溶媒を乾燥させ有機半導体層を形成することができる。
【0092】
(2)パターン形成体
本発明に用いられるパターン形成体は、上述のパターン形成体の製造方法により製造されるものである。
なお、パターン形成体の製造方法およびパターン形成体については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0093】
機能性部が電極または配線である場合、パターン形成体の疎水性層は絶縁膜であることが好ましい。また、半導体素子がトラジスタまたはダイオードであり、機能性部がゲート電極、ソース電極・ドレイン電極または半導体層である場合、上述のパターン形成体の疎水性層はゲート絶縁膜であることが好ましい。
【0094】
疎水性層がゲート絶縁膜である場合、上記「A.パターン形成体の製造方法」の項に記載したように、ゲート絶縁膜は、表面が疎水性を示すものであれば特に限定されるものではなく、例えば、疎水性材料を含有する単一の層であってもよく(第1態様の疎水性層)、所定の機能を有する機能層と、疎水性を示す疎水層とが積層されたものであってもよい(第2態様の疎水性層)。すなわち、ゲート絶縁膜は、絶縁性を示す疎水性材料を含有する単一の層であってもよく、絶縁性を示す機能層と疎水性を示す疎水層とが積層されたものであってもよい。中でも、絶縁性を示す機能層と疎水性を示す疎水層とが積層されていることが好ましい。これは、機能毎に層が分かれているので、層構成や材料の組み合わせ等を容易に変更することができるからである。
【0095】
ゲート絶縁膜が絶縁性を示す疎水性材料を含有する単一の層である場合、絶縁性を示す疎水性材料としては、所望の耐電圧および疎水性を満たすものであれば特に限定されるものではない。なお、絶縁性を示す疎水性材料については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の第1態様の疎水性層の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
上記ゲート絶縁膜の形成方法としては、例えば、CVD法、PVD法等の乾式法であってもよく、絶縁性を示す疎水性材料を含有する塗工液を塗布する湿式法であってもよい。塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート、ダイコート、ロールコート、バーコート、LB、ディップコート、スプレーコート、ブレードコート、キャスト、インクジェット、スクリーン印刷、パッド印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクトプリンティング法、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビア・オフセット印刷等が挙げられる。
上記ゲート絶縁膜の厚みとしては、0.01μm〜10μm程度で設定することができる。
【0096】
また、ゲート絶縁膜が絶縁性を示す機能層と疎水性を示す疎水層とが積層されたものである場合、機能層の材料としては、所望の耐電圧を満たす絶縁性材料であれば特に限定されるものではない。絶縁性材料としては、一般的なゲート絶縁膜と同様のものを用いることができ、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の絶縁性無機材料、および、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料等が挙げられる。
機能層の形成方法としては、CVD法、PVD法等の乾式法であってもよく、絶縁性材料を含有する塗工液を塗布する湿式法であってもよい。塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート、ダイコート、ロールコート、バーコート、LB、ディップコート、スプレーコート、ブレードコート、キャスト、インクジェット、スクリーン印刷、パッド印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクトプリンティング法、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビア・オフセット印刷等が挙げられる。
機能層の厚みとしては、0.01μm〜10μm程度で設定することができる。
なお、疎水層については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の第2態様の疎水性層の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0097】
本発明においては、ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造、ボトムゲート・トップコンタクト型構造、トップゲート・ボトムコンタクト型構造、トップゲート・トップコンタクト型構造のいずれも作製することが可能である。疎水性層がゲート絶縁膜であり、機能性部としてソース電極・ドレイン電極を形成する場合には、図5(c)に例示するようなボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を作製することができる。疎水性層が絶縁膜であり、機能性部として半導体層を形成する場合には、図7(e)に例示するようなトップゲート・トップコンタクト型構造や、図示しないがトップゲート・ボトムコンタクト型構造を作製することができる。疎水性層が絶縁膜であり、機能性部としてソース電極・ドレイン電極を形成する場合には、図示しないがトップゲート・ボトムコンタクト型構造を作製することができる。また、疎水性層がゲート絶縁膜であり、機能性部としてゲート電極を形成する場合には、図示しないがトップゲート・ボトムコンタクト型構造またはトップゲート・トップコンタクト型構造を作製することができる。
中でも、疎水性層がゲート絶縁膜であり、機能性部としてソース電極・ドレイン電極を形成することが好ましい。上述したように、図5(c)に例示するようなボトムゲート・ボトムコンタクト型構造の場合、疎水性層2(ゲート絶縁膜22)と半導体層25との界面の状態を良好なものとし、素子特性を向上させることができるからである。
【0098】
疎水性層がゲート絶縁膜であり、機能性部としてソース電極・ドレイン電極または半導体層を形成する場合、図4(a)〜(f)および図5(a)〜(c)に例示するように基板1と疎水性層2(ゲート絶縁膜22)との間にはゲート電極21が形成される。
ゲート電極としては、一般的なゲート電極と同様のものを用いることができ、上述の機能性部としてゲート電極を形成する場合の導電性材料を使用することができる。
上記導電性材料の成膜方法としては、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザCVD法等のCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、電解メッキ法、浸漬メッキ法、無電解メッキ法、ゾルゲル法、有機金属分解(MOD)法などを挙げることができる。また、ゲート電極のパターニング方法としては、通常、フォトリソグラフィー法が用いられる。
ゲート電極の厚みとしては、30nm〜500nm程度で設定することができる。
【0099】
また、疎水性層がゲート絶縁膜であり、機能性部としてゲート電極を形成する場合、図示しないが基板と疎水性層(ゲート絶縁膜)との間には半導体層およびソース電極・ドレイン電極が形成される。
ソース電極およびドレイン電極としては、一般的なソース電極およびドレイン電極と同様のものを用いることができ、上述の機能性部としてソース電極およびドレイン電極を形成する場合の導電性材料を使用することができる。
上記導電性材料の成膜方法としては、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザCVD法等のCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、電解メッキ法、浸漬メッキ法、無電解メッキ法、ゾルゲル法、有機金属分解(MOD)法などを挙げることができる。また、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法、インクジェット法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法を用いることもできる。ソース電極およびドレイン電極のパターニング方法としては、通常、フォトリソグラフィー法が用いられる。
ソース電極およびドレイン電極の厚みとしては、10nm〜1000nm程度で設定することができる。
また、半導体層としては、一般的な半導体層と同様のものを用いることができ、上述の機能性部として半導体層を形成する場合の半導体材料を使用することができる。
なお、半導体層の形成方法および厚みについては、後述の半導体層形成工程に記載するものと同様とすることができる。
【0100】
2.半導体層形成工程
本発明においては、基板と疎水性層との間にゲート電極が形成されており、疎水性層がゲート絶縁膜であり、機能性部がソース電極およびドレイン電極である場合、上記機能性部形成工程後に、上記疎水性層上に半導体層を形成する半導体層形成工程を行うことが好ましい。この場合、図5(c)に例示するようなボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を作製することができ、本発明においては疎水性層2(ゲート絶縁膜22)と半導体層25との界面の状態を良好なものとすることができるので、優れた素子特性を有する半導体素子を製造することが可能となる。
【0101】
半導体層に用いられる半導体材料としては、一般的な半導体層と同様のものを用いることができ、無機半導体材料および有機半導体材料のいずれも使用することができ、上述の機能性部として半導体層を形成する場合の半導体材料を使用することができる。
【0102】
中でも、半導体材料が有機半導体材料であることが好ましい。すなわち、半導体層が有機半導体層であることが好ましい。これは、ゲート絶縁膜が疎水性を有する場合に、有機半導体材料の分子配向が改善され、素子特性を向上させる効果が大きいためである。また、有機半導体材料は無機半導体材料に比較して安価に大面積化が可能であり、フレキシブル基板上に成膜することができ、さらに機械的衝撃に対して安定であるという利点を有しているからである。
【0103】
半導体層の形成方法としては、CVD法、PVD法等の乾式法であってもよく、半導体材料を含有する半導体層形成用塗工液を塗布する湿式法であってもよい。
半導体層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート、ダイコート、ロールコート、バーコート、LB、ディップコート、スプレーコート、ブレードコート、キャスト等を挙げることができる。
【0104】
半導体層の厚みとしては、上記半導体材料の種類等に応じて所望の半導体特性が得られれば特に限定されるものではないが、1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm〜300nmの範囲内、さらに好ましくは20nm〜100nmの範囲内である。
【0105】
半導体層が有機半導体層である場合、半導体層形成工程は、疎水性層上に有機半導体層を形成する工程であればよいが、中でも、疎水性層表面の25℃での純水の接触角が100°以上であり、疎水性層上に直に有機半導体層を形成する態様(第1態様の半導体層形成工程)と、機能性部が形成された疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化して第2親水性領域を形成し、第2親水性領域表面を有機化合物により修飾して表面改質領域を形成し、表面改質領域上に有機半導体層を形成する態様(第2態様の半導体層形成工程)との好ましい二つの態様を有する。以下、各態様に分けて説明する。
【0106】
(1)第1態様の半導体層形成工程
本態様の半導体層形成工程は、疎水性層表面の25℃での純水の接触角が100°以上であり、図5(c)に例示するように疎水性層2上に直に半導体層25(有機半導体層)を形成する工程である。
疎水性層表面の疎水性が上記のように高い場合には、有機半導体材料の配向性を向上させることができる。
なお、疎水性層については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0107】
本態様においては、上述したように疎水性層表面の疎水性が高いために有機半導体材料の配向性を向上させることができるので、有機半導体材料としては高分子系有機半導体材料が好適に用いられる。
なお、高分子系有機半導体材料については、上記機能性部形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、有機半導体層の形成方法、厚み等については、上述の半導体層の形成方法、厚み等と同様である。
【0108】
(2)第2態様の半導体層形成工程
本態様の半導体層形成工程は、機能性部が形成された疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、第2親水性領域を形成する第2親水化工程と、第2親水性領域表面を有機化合物により修飾し、表面改質領域を形成する表面改質工程と、表面改質領域上に有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程とを有するものである。
【0109】
図8(a)〜(f)は本態様の半導体層形成工程を有する半導体素子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図8(a)に示すパターン形成体10の親水性領域5a上に機能性部形成用塗工液を塗布し、ソース電極23およびドレイン電極24を形成する(図8(b))(機能性部形成工程)。次に、ソース電極23およびドレイン電極24が形成された疎水性層2の表面にメタルマスク14を介して真空紫外線15を照射して親水化し(図8(c))、第2親水性領域5cを形成する(図8(d))(第2親水化工程)。次いで、第2親水性領域5c表面を有機化合物により修飾し、表面改質領域5dを形成する(図8(e))(表面改質工程)。続いて、表面改質領域5d上に半導体層25(有機半導体層)を形成する(図8(f))(有機半導体層形成工程)。このようにして半導体素子20が得られる。この半導体素子は、ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を有するトランジスタまたはダイオードである。
【0110】
疎水性層が、エネルギーの照射により一部分解してOH基を生じる材料を含有する場合、疎水性層の表面にエネルギーを照射することで疎水性層の表面にOH基が生成されて親水化される。表面にOH基等の極性基が生成された疎水性層上に有機半導体層を形成すると、半導体特性が劣化するおそれがある。一方、OH基は選択的に有機化合物で修飾することができる。したがって、機能性部形成工程後に、上記の第2親水化工程および表面改質工程を行うことで、有機半導体層を形成する領域を半導体特性に悪影響を及ぼさない表面状態とすることが可能となる。例えば、有機化合物が芳香族化合物である場合、芳香族化合物は、有機溶媒に対して高い親和性を持つ一方で、疎水性が高く、表面改質領域表面への水分子の吸着を防ぐことができるため、表面改質領域上に形成される有機半導体層の電気伝導特性や信頼性を向上させることができる。また、機能性部形成工程後に、上記の第2親水化工程および表面改質工程を行うことで、有機半導体層を形成する領域の濡れ性(疎水性または親水性)を調整することができ、有機半導体層形成用塗工液を塗布して有機半導体層を形成する場合には、有機半導体層形成用塗工液の塗布性を改良することが可能である。例えば、有機化合物が脂肪族化合物である場合、脂肪族化合物のアルキル鎖長を調整することで、有機半導体層を形成する領域の濡れ性(疎水性または親水性)を制御することができる。
【0111】
以下、本態様の半導体層形成工程における各工程について説明する。
【0112】
(a)第2親水化工程
本態様における第2親水化工程は、機能性部が形成された疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、第2親水性領域を形成する工程である。
【0113】
疎水性層の表面に照射されるエネルギーとしては、疎水性層の表面を親水化することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。中でも、真空紫外線が好ましい。真空紫外線はエネルギーが高く、より効果的に酸素の活性種を発生させることが可能であり、短時間で効率良く疎水性層表面を親水化することができるからである。
なお、真空紫外線の波長や光源等については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の親水化工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0114】
機能性部が形成された疎水性層の表面にエネルギーを照射する方法としては、有機半導体層を形成する領域を親水化することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、フォトマスクやメタルマスク等のマスクを介してエネルギーを照射する方法、直接パターン状にエネルギーを照射する方法等を挙げることができる。また、上記「A.パターン形成体の製造方法」のフォトレジストパターン形成工程と親水化工程とフォトレジストパターン剥離工程とを行うことにより、第2親水性領域を形成することもできる。
【0115】
なお、第2親水性領域の親水性については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の項に記載した親水性領域の親水性と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0116】
(b)表面改質工程
本態様における表面改質工程は、第2親水性領域表面を有機化合物により修飾し、表面改質領域を形成する工程である。
【0117】
第2親水性領域表面を修飾する有機化合物としては、第2親水性領域表面を所望の濡れ性(疎水性または親水性)とすることができるものであれば特に限定されるものではないが、自己組織化単分子膜を形成することができるものであることが好ましい。第2親水性領域上に自己組織化単分子膜からなる表面改質領域を容易に形成することができるからである。
【0118】
自己組織化単分子膜を形成可能な有機化合物としては、第2親水性領域表面を所望の濡れ性(疎水性または親水性)とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、フェニチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン等の芳香族化合物、ヘキサメチルジシラザン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、フッ素化アルキルシラン、アルキルトリメトキシシラン、アルキルトリエトキシシラン等の脂肪族化合物が挙げられる。
中でも、自己組織化単分子膜を形成可能な有機化合物は、有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液の塗布適性を向上させる場合には、芳香族化合物であることが好ましい。上述したように、芳香族化合物の自己組織化単分子膜は、有機溶媒に対して高い親和性を持つ一方で、疎水性が高く、表面改質領域表面への水分子の吸着を防ぐことができるため、表面改質領域上に形成される有機半導体層の電気伝導特性や信頼性を向上させることができるからである。
【0119】
第2親水性領域表面を有機化合物により修飾する方法としては、例えば、第2親水性領域を有機化合物を含有する溶液に浸し、有機化合物を吸着させる浸漬吸着法や、有機化合物を蒸発させ、第2親水性領域に吸着させる気相吸着法等が挙げられる。
【0120】
(c)有機半導体層形成工程
本態様における有機半導体層形成工程は、表面改質領域上に有機半導体層を形成する工程である。
【0121】
有機半導体層の形成方法としては、CVD法、PVD法等の乾式法であってもよく、有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液を塗布する湿式法であってもよい。中でも、真空排気設備等の大きな設備投資を必要としない湿式法が好ましい。また、上述したように、上記の第2親水化工程および表面改質工程を行うことで、有機半導体層形成用塗工液の塗布性を改良することが可能である。
なお、有機半導体層形成用塗工液の塗布方法については、上述の半導体層形成用塗工液の塗布方法と同様である。
また、有機半導体層の厚みについては、上述の半導体層の厚みと同様である。
【0122】
3.半導体素子
本発明の半導体素子の製造方法によって製造される半導体素子は、トラジスタまたはダイオードであることが好ましく、中でもトランジスタであることが好ましく、特に有機トランジスタであることが好ましい。上述したように、図5(c)に例示するようなボトムゲート・ボトムコンタクト型構造を有する有機トランジスタの場合、オンオフ電流比、しきい値電圧Vth、移動度などのトランジスタ特性に優れる有機トランジスタを製造することが可能となるからである。
【0123】
また、半導体素子がトランジスタまたはダイオードである場合、ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造、ボトムゲート・トップコンタクト型構造、トップゲート・ボトムコンタクト型構造、トップゲート・トップコンタクト型構造のいずれを有するものであってもよい。中でも、上述したように、半導体特性を向上させることができることから、ボトムゲート・ボトムコンタクト型構造が好ましい。
【0124】
また、本発明の半導体素子の製造方法により製造される半導体素子の用途としては、例えば、液晶表示装置、電気泳動表示装置、有機EL表示装置等を挙げることができる。
【0125】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0126】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
ガラス基材上にCr薄膜(膜厚150nm)をスパッタ蒸着し、次いでフォトリソグラフィー工程およびエッチング工程にてCr薄膜をパターニングしてゲート電極を作製した。
次に、ゲート電極上にアクリル系樹脂をスピンコートし、紫外線照射および加熱工程にて硬化させ、絶縁膜(膜厚1μm)を形成した。次いで、アルキル基を有するオルガノシロキサンポリマー分散液Aを準備して、絶縁膜上にスピンコートにて塗布し、疎水層(膜厚50nm)を形成した。形成した疎水層表面に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角は102°であった。
次に、パーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤をポジ型フォトレジストに固形分濃度0.5wt%添加し、フォトレジストの調製を行った。次いで、疎水層上にフォトレジストをスピンコートにて塗布し、フォトマスクを用いた露光および現像工程を経てソースおよびドレイン電極形成領域のフォトレジストを除去した。
次に、大気下で真空紫外線(波長172nm、照度3mW/cm)を60秒間照射し、ソースおよびドレイン電極形成領域を親水化させた。親水化させた領域に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角は5°以下であった。
次に、アセトンに浸漬させてフォトレジストを除去し、次いでイソプロピルアルコール(IPA)にてリンス洗浄を行い、親疎水パターン基板を形成した。真空紫外線照射時にフォトレジストで覆われていた領域に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角はフォトレジスト塗布前と同様に102°であった。
【0127】
次に、水に分散させた銀コロイド溶液(固形分濃度20wt%)を親疎水パターン基板上にバーコート(バーギャップ:1.5mil、塗工スピード:20mm/s)にて全面塗布し、銀コロイド溶液を親水性領域にのみ選択的に付着させパターニングした。その後、150℃のオーブンにて30分間の加熱乾燥工程を経て銀コロイドを焼結させ、ソース・ドレイン電極(膜厚200nm)を形成した。形成した電極を顕微鏡にて観察したところ、チャネル幅1200μm、チャネル長50μmのソース・ドレイン電極が露光時に用いたフォトマスクの設計どおりに形成されていた。これは、ソース・ドレイン電極形成領域以外の領域が上記真空紫外線照射時にフォトレジストで覆われ、真空紫外線照射時に生じる酸素の活性種から保護されているため、フォトマスクの設計どおりの親疎水パターンが形成されたものと考えられる。
【0128】
次に、チオフェン系ポリマーをモノクロロベンゼン溶液に固形分濃度1wt%にて溶解させた有機半導体層形成用塗工液を準備し、ソース・ドレイン電極を形成した表面にスピンコートにて膜厚50nmの有機半導体層を形成して、トランジスタ素子を作製した。
作製したトランジスタ素子をソース・ドレイン電圧−80V、ゲート電圧を50V〜−80Vで変化させて電流−電圧特性を測定した結果、トランジスタ移動度は8.5×10−2cm/Vsと見積もられた。電流−電圧特性の測定は真空中、遮光下で測定を行った。
また、ソース・ドレイン電圧およびゲート電圧に−50Vを1000秒間印加し、ソース・ドレイン電流の変化を観測するバイアスストレス試験を行った。結果、1000秒後ではソース・ドレイン電流は99.8%維持され、良好なバイアスストレス耐性を示した。これは、有機半導体層が積層されるトランジスタのソース・ドレイン電極間が上記真空紫外線照射時にフォトレジストで覆われ、真空紫外線照射時に生じる酸素の活性種から保護されているため、疎水層表面がバイアスストレスに悪影響を及ぼすOH基を形成して親水化していないためと考えられる。
【0129】
[実施例2]
上記の実施例1と同様の方法でゲート電極およびゲート電極上の絶縁膜を形成した。次いで、実施例1とは異なる条件で調製したアルキル基を有するオルガノシロキサンポリマー分散液Bを準備して、絶縁膜上にスピンコートにて塗布し、疎水層(膜厚50nm)を形成した。形成した疎水層表面に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角は95°であった。
【0130】
次に、上記の実施例1と同様の方法でソース・ドレイン電極を形成した。この際、親水化させた領域に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角は5°以下であった。また、真空紫外線照射時にフォトレジストで覆われていた領域に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角はフォトレジスト塗布前と同様に95°であった。形成した電極を顕微鏡にて観察したところ、チャネル幅1200μm、チャネル長50μmのソース・ドレイン電極が露光時に用いたフォトマスクの設計どおりに形成されていた。
【0131】
次に、上記の実施例1と同様の方法で有機半導体層を形成して、トランジスタ素子を作製した。
作製したトランジスタ素子をソース・ドレイン電圧−80V、ゲート電圧を50V〜−80Vで変化させて電流−電圧特性を測定した結果、トランジスタ移動度は5.7×10−2cm/Vsと見積もられた。電流−電圧特性の測定は真空中、遮光下で測定を行った。
【0132】
[実施例3]
上記の実施例1と同様の手順にて、ソース・ドレイン電極まで作製した素子を準備した。
次に、メタルマスクを素子に接着させ、メタルマスクの開口部を介して、作製した素子のソース・ドレイン電極間の疎水層表面に大気下で真空紫外線(波長172nm、照度3mW/cm)を60秒間照射し、疎水層表面を親水化させた。親水化させた表面に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角は5°以下であった。
【0133】
次に、親水化表面をHMDS(ヘキサメチルジシラザン)の蒸気に1時間晒し、HMDS分子を吸着させた。HMDS分子を吸着させた表面に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角は91°であった。真空紫外線照射の親水化処理により表面にOH基が形成され、次いで行ったHMDS処理によりHMDS分子がOH基に吸着したため、接触角が変化したと考えられる。
【0134】
次に、上記の実施例1と同様の手順にて、有機半導体層を形成して、トランジスタ素子を作製した。
作製したトランジスタ素子をソース・ドレイン電圧−80V、ゲート電圧を50V〜−80Vで変化させて電流−電圧特性を測定した結果、トランジスタ移動度は8.8×10−2cm/Vsと見積もられた。電流−電圧特性の測定は真空中、遮光下で測定を行った。
【0135】
[比較例1]
上記実施例1と同様の手順で、ゲート電極、ゲート電極上の絶縁層および疎水層を形成した。
次に、ソース・ドレイン電極形成領域が開口部となっているメタルマスクを疎水層上に接着させた。接着にはガラス基材裏面に磁石を配置して、磁力によりメタルマスクを接着させた。次に、大気下で真空紫外線(波長172nm、照度3mW/cm)を60秒間照射し、ソース・ドレイン電極形成領域を親水化させた。親水化させた領域に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角は5°以下であった。
次に、実施例1と同様の手順および条件で、銀コロイド溶液をバーコートにより全面塗布し、ソース・ドレイン電極形成を試みた。
【0136】
結果、形成した電極を顕微鏡にて観察したところ、チャネル幅1200μm、チャネル長50μmのソース・ドレイン電極がパターンされていなく、ソース・ドレイン電極間が塗布した銀コロイドにより導通した。このため、疎水層の親水化パターニングにメタルマスクを用いた場合では、トランジスタ素子を作製することができなかった。これは、真空紫外線照射時に発生した酸素の活性種がメタルマスク表面の凹凸と疎水層との隙間からメタルマスクの非開口部に回り込み、ソース・ドレイン電極形成領域の周囲の疎水層表面にOH基が形成されて親水化したものと考えられる。
【0137】
[比較例2]
上記実施例1と同様の手順でゲート電極、ゲート電極上の絶縁層および疎水層を形成した。
次に、ソース・ドレイン電極形成領域が非遮光領域となっているフォトマスクを疎水層上に50μmの隙間を空けて配置した。次に、大気下で真空紫外線(波長172nm、照度3mW/cm)を60秒間照射し、ソース・ドレイン電極形成領域を親水化させた。親水化させた領域に25℃の純水を1.2μl滴下し、θ/2θ法にて接触角測定を行った結果、接触角は5°以下であった。
次に、実施例1と同様の手順および条件で、銀コロイド溶液をバーコートにより全面塗布し、ソース・ドレイン電極形成を試みた。
【0138】
結果、比較例1と同様に、形成した電極を顕微鏡にて観察したところ、チャネル幅1200μm、チャネル長50μmのソース・ドレイン電極がパターンされていなく、ソース・ドレイン電極間が塗布した銀コロイドにより導通した。このため、疎水層の親水化パターニングにフォトマスクを用いた場合では、トランジスタ素子を作製することができなかった。これは、真空紫外線照射時に発生した酸素の活性種がフォトマスクと疎水層との隙間からフォトマスクの遮光領域に回り込み、ソース・ドレイン電極形成領域の周囲の疎水層表面にOH基が形成されて親水化したものと考えられる。
【符号の説明】
【0139】
1 … 基板
2 … 疎水性層
2a … 機能層
2b … 疎水層
3a … フォトレジスト
3b … フォトレジストパターン
5a … 親水性領域
5b … 疎水性領域
5c … 第2親水性領域
5d … 表面改質領域
6 … 機能性部
10 … パターン形成体
11 … フォトマスク
12 … 光
13,15 … 真空紫外線
14 … メタルマスク
20 … 半導体素子
21 … ゲート電極
22 … ゲート絶縁膜
23 … ソース電極
24 … ドレイン電極
25 … 半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成され、表面が疎水性を示す疎水性層上にフォトレジストパターンを形成するフォトレジストパターン形成工程と、
前記フォトレジストパターンが形成された前記疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、親水性領域を形成する親水化工程と、
前記フォトレジストパターンを剥離し、前記疎水性層表面に、前記親水性領域と前記親水化工程にて前記フォトレジストパターンで覆われていた疎水性領域とがパターン状に形成された親疎水パターンを形成するフォトレジストパターン剥離工程と
を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
【請求項2】
前記エネルギーが真空紫外線であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項3】
前記疎水性層が、前記基板上に形成された機能層と、前記機能層上に形成され、疎水性を示す疎水層とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項4】
前記疎水層がオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする請求項3に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項5】
前記フォトレジストパターン形成工程では、前記疎水性層上にフッ素基を含む界面活性剤を含有するフォトレジストを塗布し、パターニングして、前記フォトレジストパターンを形成することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とする機能性素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、親水性領域上に機能性部形成用塗工液を塗布し、機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記半導体素子がトラジスタまたはダイオードであることを特徴とする請求項7に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記疎水性層が絶縁膜であり、前記機能性部が電極または半導体層であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記基板と前記疎水性層との間にゲート電極が形成されており、前記疎水性層がゲート絶縁膜であり、前記機能性部がソース電極およびドレイン電極であり、
前記機能性部形成工程後に、前記疎水性層上に半導体層を形成する半導体層形成工程を有することを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれかの請求項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記半導体層が有機半導体層であることを特徴とする請求項10に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記疎水性層表面の25℃での純水の接触角が100°以上であり、前記半導体層形成工程にて、前記疎水性層上に直に前記有機半導体層を形成することを特徴とする請求項11に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項13】
前記半導体層形成工程が、前記機能性部が形成された前記疎水性層の表面にエネルギーを照射して親水化し、第2親水性領域を形成する第2親水化工程と、前記第2親水性領域表面を有機化合物により修飾し、表面改質領域を形成する表面改質工程と、前記表面改質領域上に前記有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程とを有することを特徴とする請求項11に記載の半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−216647(P2011−216647A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82957(P2010−82957)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】