説明

パターン形成方法、パターン形成体

【課題】複数の段差を備えた微細な3次元構造パターンの形成に好適なパターン形成方法及びパターン形成体を提供する。
【解決手段】パターン形成方法は、基板上に第1層目のハードマスク層12、エッチストッパ層13、第2層目のハードマスク層22を形成し、該ハードマスク層及びエッチストッパ層をパターニングし、該ハードマスク層をエッチングマスクとして基板11に異方性エッチングを行う。複数の段差を備えた微細な3次元構造パターン形成方法及びパターン形成体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な3次元構造パターンの形成方法、ならびに該パターン形成方法を用いて製造されたパターン形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に特定の微細な3次元構造パターンを形成した構造物は、広範に用いられている。微細な3次元構造パターンを形成した構造物としては、例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、記録デバイス、医療検査用チップ、ディスプレイパネル、マイクロ流路などが挙げられる。
近年、より微細なパターンや、より段数の多い構造に対する要求が増加している。例えば、半導体分野において、特定の微細な3次元構造パターンを形成したデュアルダマシン構造が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、デュアルダマシン構造の形成方法として、インプリント技術を用いる方法が開示されている。インプリント法においては、モールドに形成された3次元構造パターンを転写することが可能であるので、多段構造のパターンを転写することも可能である。これにより、必要な工程数を削減できるということから、多段構造のインプリントモールドに対する要望が高まっている。
【0004】
また、微細な3次元構造パターンを転写するためのインプリントモールドの製造には、微細な3次元構造パターンの形成方法を用いることが知られている。
また、特定の微細な3次元構造パターン(例えば、多段の階段状構造など)を製造する方法として、荷電粒子線リソグラフィを用いて階段状構造を形成する方法が知られている。
【0005】
また、リソグラフィ法では、露光後の現像処理において、描画したレジストパターンが倒壊することが知られている。レジストパターンの倒壊は、パターンが高アスペクト比であるほど起こりやすいことが知られている。
例えば、下記特許文献2では、レジスト表層に架橋を形成することにより、レジストパターンの倒壊を抑制する方法が開示されている。
また、微細な3次元構造パターンの形成では、3次元パターンに応じて複数回のレジストのパターニングを行うことが知られている。
【0006】
このとき、図2に示すように、1段のパターンが形成された基板37には、ハードマスクパターン36を含む全面にレジスト膜44を平坦にコートできなくなってしまう。平坦でないレジスト膜44にパターニングを行うと、レジストパターンの位置精度が低下するため、所望するレジストパターンを形成することは困難である。また、図3(a)に示すように、レジスト膜44が平坦になるようにレジスト膜44を厚くした場合には、形成したレジストパターン55のアスペクト比が高くなるため、図3(b)に示すように、レジストパターン55の倒壊が発生し、所望するレジストパターンを得ることが困難である。
【0007】
また、一般にレジスト膜は絶縁物であるために、電子線による描画を行う際には、負電荷を持つ電子線によってレジスト膜表面に負電荷が誘起され、その負電荷が放電できないと、レジスト膜表面に負電荷が蓄積され、その蓄積された負電荷によって電子線がレジスト膜表面近くで曲げられてしまい、描画の位置ずれが生じてしまうという問題があるため、導電性を持たない基板上にレジスト膜のパターニングを行うことは困難である。
また、導電性のハードマスク層をエッチングマスクとして絶縁性の基板に異方性エッチングを行うことにより、絶縁性の基板に段差を形成すると、段差の凹部にはハードマスク層が存在しないため、段差を備えた基板上に新たにレジストのパターニングを行う工程において、負電荷の蓄積による描画の位置ずれが問題となる。
【0008】
以下、従来の典型的な多段構造のパターン形成方法の一例を図4を参照して説明する。
まず、図4(a)に示すように、ハードマスク層32を備えた基板31に、レジストをコートして第1のレジスト膜34を形成する。
次に、図4(b)に示すように、第1のレジスト膜34のパターニングを行い、第1のレジストパターン35を形成する。
次に、図4(c)に示すように、第1のレジストパターン35をマスクとしてハードマスク層32をエッチングし、第1のハードマスクパターン36を形成する。
【0009】
次に、図4(d)に示すように、第1のハードマスクパターン36をマスクとして基板31をエッチング、洗浄し、1段のパターンが形成された基板37が作製される。
次に、図4(e)に示すように、1段のパターンが形成された基板37に再度レジストをコートして第2のレジスト膜44を形成する。
次に、図4(f)に示すように、第2のレジスト膜44のパターニングを行い、第2のレジストパターン45を形成する。
【0010】
次に、図4(g)に示すように、第2のレジストパターン45をマスクとして第1のハードマスクパターン36をエッチングして、第2のハードマスクパターン46を形成する。
次に、図4(h)に示すように、エッチングされた第2のハードマスクパターン46をマスクとして1段のパターンが形成された基板37をエッチングする。
【0011】
次に、図4(i)に示すように、第2のハードマスクパターン46を洗浄して剥離し、2段のパターンが形成された基板47が作製される。
この従来の典型的な多段構造のパターン形成方法では、第2のレジストパターニング(図4(e)〜(f)参照)において、基板が既に段差を備えているため、図2に示すように、レジスト膜を平坦にコートすることができず、所望するレジストパターンを得ることが困難であり、微細な3次元パターンの形成に不適である。
【0012】
また、第N番目に形成するレジストパターンは第(N−1)番目に形成したパターンよりも小さいため、多段構造の段差が多くなるほど微細なレジストパターンを既に段差を備えた基板上のレジストに形成しなければならず、所望するレジストパターンを得ることが困難であり、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
また、第1段目のパターンが形成された基板上の段差の凹部にはハードマスク層が存在しない。そのため、第2のレジストパターニングを行う工程(図4(e)〜(f)参照)において、電子線によってレジストに誘起された負電荷が放電されず、レジスト膜表面に負電荷が蓄積され、その負電荷によって電子線がレジスト膜表面近くで曲げられ、描画の位置ずれが生じるため、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
例えば、下記特許文献3では、レジストパターン倒れの発生を抑制するために、基板に形成したハードマスク層に段差を形成する方法が開示されている。
【0013】
以下、段差を備えたハードマスク層を用いた多段構造のパターン形成方法の一例を図5を参照して説明する。
まず、図5(a)に示すように、ハードマスク層32を備えた基板31に、レジストをコートして第1のレジスト膜34を形成する。
次に、図5(b)に示すように、第1のレジスト膜34のパターニングを行い、第1のレジストパターン35を形成する。
次に、図5(c)に示すように、第1のレジストパターン35をマスクとしてハードマスク層32をエッチングし、第1のハードマスクパターン36を形成する。
次に、図5(d)に示すように、第1のレジストパターン35を洗浄し、剥離する。
【0014】
次に、図5(e)に示すように、第1のハードマスクパターン36が形成された基板31に再度レジストをコートして第2のレジスト膜44を形成する。
次に、図5(f)に示すように、第2のレジスト膜44のパターニングを行い、第2のレジストパターン45を形成する。
次に、図5(g)に示すように、第2のレジストパターン45をマスクとして第1のハードマスクパターン36をエッチングし、段差を備えたハードマスクパターン56を形成する。
【0015】
次に、図5(h)に示すように、段差を備えたハードマスクパターン56をマスクとして、基板31をエッチングし、第2のレジストパターン45を洗浄し、剥離して、1段のパターンが形成された基板37が作製される。
次に、図5(i)に示すように、段差を備えたハードマスクパターン56をエッチングし、第2のハードマスクパターン46を形成する。
次に、図5(j)に示すように、第2のハードマスクパターン46をマスクとして、1段のパターンが形成された基板37をエッチングする。
【0016】
次に、図5(k)に示すように、第2のハードマスクパターン46を洗浄し、剥離して、2段のパターンが形成された基板47が作製される。
この段差を備えたハードマスク層を備えた多段構造のパターン形成方法では、第2のレジストパターニングを行う工程(図5(e)〜(f))において、導電性のハードマスク層が基板上の一部分にしか存在しないため、電子線によってレジストに誘起された負電荷が放電されず、レジスト膜表面に負電荷が蓄積され、その負電荷によって電子線がレジスト膜表面近くで曲げられ、描画の位置ずれが生じるため、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
【0017】
また、ドライエッチングを行うことによりハードマスク層に段差を形成すると、パターンの肩部分のほうが平坦部よりも速くハードマスク層のエッチングが進行するため、ハードマスク層に形成する段差の断面形状が図6(a)に示すような矩形にはならず、図6(b)に示すようになだらかになり、基板に寸法精度良く段差を形成することは困難であるため、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特表2007−521645号公報
【特許文献2】特開2004−085792号公報
【特許文献3】特開2009−111241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、複数の段差を備えた微細な3次元構造パターンの形成に好適なパターン形成方法及びパターン形成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1に記載の発明は、基板上に第1層目のハードマスク層を形成し、前記基板上の前記第1層目のハードマスク層を備えた面に、第1層目のエッチストッパ層を形成し、前記基板上の前記第1層目のエッチストッパ層を備えた面に、第2層目から第N層目までのハードマスク層と、第2層目から第(N−1)層目までのエッチストッパ層とを交互に形成し、前記第N層目のハードマスク層のパターニング処理し、前記第(N−1)層目から第1層目までのエッチストッパ層と、前記第(N−1)層目から第1層目までのハードマスク層とを交互にパターニング処理し、前記パターニングされた第1層目から第N層目までのハードマスク層をエッチングマスクとして前記基板に第1段目の異方性エッチングしてパターニング処理することを特徴とするパターン形成方法である。なお、本発明において、Nは2以上の自然数とする。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、前記第(N−1)層目のハードマスク層に形成するパターンの線幅は前記第N層目のハードマスク層に形成するパターンの線幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法である。
また、請求項3に記載の発明は、前記基板の前記第1段目のパターンが形成された側に、順に、第2段目から第N段目までのパターニング処理する工程と、を備え、前記第N段目のパターンの線幅は第(N−1)段目のパターンの線幅よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法である。
【0022】
また、請求項4に記載の発明は、前記基板は、石英基板であり、前記第1層目から第N層目までのハードマスク層は、クロムからなる層であり、前記第1層目から第(N−1)層目までのエッチストッパ層は、シリコンからなる層であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のパターン形成方法である。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載のパターン形成方法を用いて形成されたことを特徴とするパターン形成体である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数の段差を備えた微細な3次元構造パターンの形成に好適なパターン形成方法及びパターン形成体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係るパターン形成方法の一例を示す概略断面図である。
【図2】従来のパターン形成方法における問題点を示す概略断面図である。
【図3】従来のパターン形成方法における問題点を示す概略断面図である。
【図4】従来のパターン形成方法の一例を示す概略断面図である。
【図5】従来のパターン形成方法の一例を示す概略断面図である。
【図6】従来のパターン形成方法における問題点を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明を行う。
<基板11に第1層目のハードマスク層12、エッチストッパ層13、及び第2層目のハードマスク層22を形成する工程(A)>(図1(a)参照)
まず、基板11上に第1層目のハードマスク層12を形成する。第1層目のハードマスク層12の形成方法としては、第1層目のハードマスク層12に選択した材料に応じて、適宜公知の薄膜形成技術を用いて形成して良い。例えば、スパッタリング法などを用いて良い。
基板11は、用途に応じて適宜選択して良い。基板11としては、例えば、シリコン基板、石英基板、サファイア基板、SOI基板などを好適に用いて良い。
第1層目のハードマスク層12は、基板11及びエッチストッパ層13とのエッチング選択比が高く、導電性の材料であれば良い。
【0026】
次に、基板11の第1層目のハードマスク層12を形成した面に、(第1層目の)エッチストッパ層13を形成する。エッチストッパ層の形成方法としては、エッチストッパ層に選択した材料に応じて、適宜公知の薄膜形成技術を用いて形成して良い。例えば、スパッタリング法などを用いて良い。
エッチストッパ層は、第1層目のハードマスク層12及び第2層目のハードマスク層22とのエッチング選択比が高い材料であれば良い。
【0027】
次に、基板11のエッチストッパ層13を形成した面に、第2層目のハードマスク層22を形成する。第2層目のハードマスク層22の形成方法としては、第2層目のハードマスク層22に選択した材料に応じて、適宜公知の薄膜形成技術を用いて形成して良い。例えば、スパッタリング法などを用いて良い。
第2層目のハードマスク層22は、エッチストッパ層13とのエッチング選択比が高く、導電性の材料であれば良い。
【0028】
ここで、例えば、基板11として石英基板を用いた場合、第1層目のハードマスク層12にはCr(クロム)からなる層、エッチストッパ層にはSi(シリコン)からなる層、第2層目のハードマスク層にはクロムからなる層を用いることが好ましい。石英基板は、一般的な露光光に対して透過性を有しており、特に、光インプリント法に用いるインプリントモールドや、フォトマスクなどの製造工程に、本発明の形態のパターン形成方法を用いる場合に好適である。
【0029】
第1層目のハードマスク層12にはクロムからなる層を用いることで、後述する<第1層目のハードマスク層12のパターニングを行う工程(C)>におけるレジスト膜24を用いたリソグラフィにおいて、電子線による負電荷の蓄積を防ぐことができ、第1層目のハードマスク層12のパターニングにおいて、一般的なエッチング条件において、第1層目のハードマスク層12を基板11に対してエッチング選択比を高く設定することができる。また、後述する<基板11に第1段目の異方性エッチングを行う工程(D)>及び<基板11に第2段目の異方性エッチングを行う工程(F)>において、一般的なエッチング条件において、基板11を第1層目のハードマスク層12に対してエッチング選択比を高く設定することができる。また、後述する<第1層目のハードマスクパターン16に異方性エッチングを行う工程(E)>において、一般的なエッチング条件において、第1層目のハードマスク層12を基板11及びエッチストッパ層13に対してエッチング選択比を高く設定することができる。
【0030】
また、エッチストッパ層13にはシリコンからなる層を用いることで、後述する<第2層目のハードマスク層22のパターニングを行う工程(B)>におけるエッチストッパ層13のエッチングにおいて、一般的なエッチング条件において、エッチストッパ層13を第1層目のハードマスク層12に対してエッチング選択比を高く設定することができる。
また、第2層目のハードマスク層22にはクロムからなる層を用いることで、後述する<第2層目のハードマスク層22のパターニングを行う工程(B)>における第1のレジスト膜14を用いたリソグラフィにおいて、電子線による負電荷の蓄積を防ぐことができ、第2層目のハードマスク層22のパターニングにおいて、一般的なエッチング条件に置いて、第2層目のハードマスク層22をエッチストッパ層13に対してエッチング選択比を高く設定することができる。
【0031】
<第2層目のハードマスク層22のパターニングを行う工程(B)>
次に、第2層目のハードマスク層22のパターニングを行う。第2層目のハードマスク層22のパターニングを行う方法としては、第1のレジスト膜14を用いたリソグラフィを用いる。例えば、第2層目のハードマスク層22のパターニングは、第2層目のハードマスク層22上に第1のレジスト膜14を形成する(図1(b))。次に、第1のレジスト膜14をパターニングし、第1のレジストパターン15を形成する(図1(c))。次に、第1のレジストパターン15をマスクとしてエッチングを行うことにより、第2層目のハードマスク層22のパターニングを行い、第2層目のハードマスクパターン26を形成する(図1(d))。第2層目のハードマスク層22のパターニングを行った後は、第2層目のハードマスクパターン26をマスクとしてエッチストッパ層13のエッチングを行い(図1(e))、次に、第1のレジストパターン15を洗浄して剥離する(図1(f))。
【0032】
このとき、第2層目のハードマスクパターン26の線幅は、後述する<第1層目のハードマスク層12のパターニングを行う工程(C)>において形成する第1層目のハードマスクパターン16の線幅よりも小さい。このため、複数のパターンのうち、最も微細なパターンを、段差のない基板上に形成された平坦な第1のレジスト膜14を用いたリソグラフィを用いて形成することができ、ハードマスク層22に精度よくパターンを形成することができる。
【0033】
ここで、ハードマスク層22のパターニングにおいては、第2層目のハードマスク層22はエッチストッパ層13に対してエッチング選択比が高い材料であるため、第2層目のハードマスクパターン26の断面形状を矩形とすることができる。このため、基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
また、エッチストッパ層13のエッチングにおいては、エッチストッパ層13は第1層目のハードマスク層12に対してエッチング選択比が高い材料であるため、パターニングされたエッチストッパ層13’の断面形状を矩形とすることができる。このため、基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
【0034】
<第1層目のハードマスク層12のパターニングを行う工程(C)>
次に、第1層目のハードマスク層12のパターニングを行う。第1層目のハードマスク層12のパターニングを行う方法としては、第2のレジスト膜24を用いたリソグラフィ法を用いる。例えば、第1層目のハードマスク層12のパターニングは、第2層目のハードマスクパターン26を含む基板11上に第2のレジスト膜24を形成する(図1(g))。次に、第2のレジスト膜24をパターニングし、第2のレジストパターン25を形成する(図1(h))。次に、第2のレジストパターン25をマスクとしてエッチングを行うことにより、第1層目のハードマスク層12のパターニングを行い、第1層目のハードマスクパターン16を形成する(図1(i))。第1層目のハードマスク層12のパターニングを行った後は、第2のレジストパターン25を洗浄して剥離する(図1(j))。
【0035】
ここで、第2のレジスト膜24のパターニングにおいては、既に形成されている第2層目のハードマスクパターン26の線幅が十分に微細であるため、十分な平坦性をもって第2のレジスト膜24をコートすることができる。このため、第2のレジスト膜24を厚くすることなく、第2のレジスト膜24のパターニングの位置精度を向上させることができ、第2のレジストパターン25の倒壊を抑制し、所望のパターンを精度良く得ることができる。
【0036】
また、第2のレジスト膜24のパターニングにおいて、電子線によってレジストに誘起された負電荷が第1層目のハードマスク層12を介して放電される。このため、第2のレジスト膜24に負電荷が蓄積されず、第2のレジスト膜24のパターニングにおいて描画の位置ずれを防ぐことができ、精度良く描画を行うことができる。
さらに、第1層目のハードマスク層12は基板11に対してエッチング選択比が高い材料であるため、第1層目のハードマスクパターン16の断面形状を矩形とすることができる。このため、基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
【0037】
<基板11に第1段目の異方性エッチングを行う工程(D)>
次に、基板11上の第1層目のハードマスクパターン16が形成された側から、基板11に異方性エッチングを行う(図1(k))。エッチングとしては、適宜公知のエッチング方法を用いてよく、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチングなどを用いて行っても良い。また、エッチングの条件は、用いた第1層目のハードマスク層12、第2層目のハードマスク層22、及び基板11の材料に応じて、適宜調節して良い。このとき、基板11には、第1層目のハードマスクパターン16の線幅に応じて、第2層目のハードマスクパターン26の線幅よりも大きな線幅の段差が形成される。
【0038】
<第1層目のハードマスクパターン16に異方性エッチングを行う工程(E)>
次に、第1層目のハードマスクパターン16の異方性エッチングを行う(図1(l))。エッチングとしては、適宜公知のエッチング方法を用いて良く、例えばドライエッチング、ウェットエッチングなどを行っても良い。また、エッチングの条件は、用いた第1層目のハードマスク層12、エッチストッパ層13、第2層目のハードマスク層22、及び基板11の材料に応じて、適宜調節して良い。
【0039】
ここで、第1層目のハードマスクパターン16は基板11及びエッチストッパ層13に対してエッチング選択比が高い材料であるため、エッチングされた第1層目のハードマスクパターン16’の断面形状を矩形とすることができる。このため、基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
【0040】
<基板11に第2段目の異方性エッチングを行う工程(F)>
次に、1段のパターンが形成された基板17の第1層目のハードマスクパターン16’が形成された側から、1段のパターンが形成された基板17に異方性エッチングを行う(図1(m))。エッチングとしては、適宜公知のエッチング方法を用いて良く、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチングなどを用いて行っても良い。また、エッチングの条件は、用いた第1層目のハードマスク層12、及び基板11の材料に応じて、適宜調節して良い。このとき、1段のパターンが形成された基板17には、第2層目のハードマスクパターン26の線幅に応じて、前述の<基板11に第1段目の異方性エッチングを行う工程(D)>において基板11に形成された段差よりも、線幅が大きい段差が形成される。
【0041】
また、上記工程(A)においてエッチストッパ層の形成とハードマスク層の形成を繰り返して3層以上のN層のハードマスク層を形成し、上記工程(B)及び工程(C)において第N層目から第1層目までのハードマスク層のパターニングを行い、上記工程(D)〜工程(F)を繰り返すことにより、基板に形成する3次元構造パターンを2段のみならず3段以上の多段(N段)の構造パターンとすることができる。
【0042】
そして、上記工程(A)〜工程(F)の後、パターニングされたエッチストッパ層13’及び第1層目のハードマスクパターン16’のウェット剥離洗浄を行うことにより、位置精度及び寸法精度の高いインプリントモールドが作製される。
また、上記工程(A)〜工程(F)により作製されたパターン形成体から、位置精度及び寸法精度の高いフォトマスクを作製できる。
【0043】
また、本発明によれば、多段構造パターンのなかで最も微細なパターンから順にレジストパターニングを行うことができる。このため、複数の段差を備えた微細な3次元構造パターンの形成を好適に行うことができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例のパターン形成方法について、図1を参照して、光インプリント用モールドを作製する場合の一例を挙げながら説明を行う。本発明の実施例のパターン形成方法は、下記実施例に限定されるものではない。
まず、図1(a)〜(b)に示すように、基板11には石英基板を用いた。石英基板11上に第1層目のハードマスク層としてCr膜30nm厚を製膜した第1層目のCr層12、エッチストッパ層としてSi膜20nm厚を製膜したSi層13、第2層目のハードマスク層としてCr膜30nm厚を製膜した第2層目のCr層22を順に形成し、第2層目のCr層22上にポジ型レジストFEP−171(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)200nm厚をコートし第1のレジスト膜14とした。
【0045】
次に、図1(c)に示すように、電子線描画装置にて、第1のレジスト膜14に対して電子線をドーズ10μC/cm2で照射した後、現像液を用いた現像処理、リンス、及びリンス液の乾燥を行い、第1のレジストパターン15を得た。ここで、現像液にはTMAH水溶液、リンス液には純水を用いた。
次に、図1(d)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによって第2層目のCr層22のエッチングを行い、第2層目のCrパターン26を得た。このとき、第2層目のCr層22のエッチングの条件は、Cl2流量40sccm、O2流量10sccm、He流量80sccm、圧力30Pa、ICPパワー120W、RIEパワー50Wとした。
【0046】
このとき、第2層目のCr層22は、Si層13に対してエッチング選択比が高い材料であるため、第2層目のCrパターン26の裾引きを軽減することができ、第2層目のCrパターン26の断面形状を矩形とすることができる。このため、石英基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
次に、図1(e)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによってSi層13のエッチングを行い、パターニングされたSi層13’を得た。このとき、Si層13のエッチングの条件は、CF4流量30sccm、C48流量20sccm、圧力30Pa、ICPパワー500W、RIEパワー50Wとした。
このとき、Si層13は、第1層目のCr層12に対してエッチング選択比が高い材料であるため、パターニングされたSi層13’の裾引きを軽減することができ、パターニングされたSi層13’の断面形状を矩形とすることができる。このため、石英基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
【0047】
次に、図1(f)に示すように、O2プラズマアッシング(条件:O2流量500sccm、圧力30Pa、RIEパワー1000W)によってレジストパターン15を剥離した。
【0048】
以上より、図1(f)に示すように、石英基板11上の第1層目のCr膜12上に第2層目のCrパターン26を形成することができた。
次に、図1(g)に示すように、第1層目のCr膜12と第2層目のCrパターン26とを備えた石英基板11上にポジ型レジスト200nm厚をコートし、第2のレジスト膜24とした。
【0049】
パターニングされたSi層13’と第2層目のCrパターン26の高さは低いため、第2のレジスト膜24は、十分な平坦性をもってコートすることができる。このため、第2のレジスト膜24を厚くすることなく、第2のレジスト膜24のパターニングの位置精度を向上させることができ、第2のレジストパターン25の倒壊を抑制し、所望のパターンを精度良く得ることができる。
【0050】
次に、図1(h)に示すように、電子線描画装置にて、第2のレジスト膜24に対して電子線をドーズ10μC/cm2で照射した後、現像液を用いた現像処理、リンス、及びリンス液の乾燥を行い、第2のレジストパターン25を得た。ここで、現像液にはTMAH水溶液、リンス液には純水を用いた。
第2のレジスト膜24のパターニングにおいて、電子線によってレジストに誘起された負電荷が第1層目のCr膜12を介して放電される。このため、第2のレジスト膜24に負電荷が蓄積されず、第2のレジスト膜24のパターニングにおいて描画の位置ずれを防ぐことができ、精度良く描画を行うことができる。
【0051】
次に、図1(i)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによって第1層目のCr層12のエッチングを行い、第1層目のCrパターン16を得た。このとき、第1層目のCr層12のエッチングの条件は、Cl2流量40sccm、O2流量10sccm、He流量80sccm、圧力30Pa、ICPパワー120W、RIEパワー50Wとした。
このとき、第1層目のCr層12は、基板11に対してエッチング選択比が高い材料であるため、第1層目のCrパターン16の裾引きを軽減することができ、第1層目のCrパターン16の断面形状を矩形とすることができる。このため、石英基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
次に、図1(j)に示すように、O2プラズマアッシング(条件:O2流量500sccm、圧力30Pa、RIEパワー1000W)によって第2のレジストパターン25を剥離した。
【0052】
以上より、図1(j)に示すように、石英基板上に第1層目のCrパターン16を形成することができた。
次に、図1(k)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによって石英基板11のエッチングを行った。このとき、石英基板11のエッチングの条件は、C48流量10sccm、O2流量10sccm〜25sccm、Ar流量75sccm、圧力2Pa、ICPパワー20W、RIEパワー550Wとした。
【0053】
このとき、石英基板11は、第1層目のCrパターン16に対してエッチング選択比が高い材料であるため、第1層目のCrパターン16の寸法がほとんど変化することなく石英基板11をエッチングすることができる。このため、石英基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
以上より、図1(k)に示すように、第1段目のパターンが形成された石英基板17を作製することができた。
【0054】
次に、図1(l)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによって第1層目のCrパターン16のエッチングを行った。このとき、第1層目のCrパターン16のエッチングの条件は、Cl2流量40sccm、O2流量10sccm、He流量80sccm、圧力30Pa、ICPパワー120W、RIEパワー50Wとした。このとき、第2層目のCrパターン26もエッチングされ、第2層目のCrパターン26は消失した。
【0055】
第1層目のCrパターン16はパターニングされたSi層13’に対してエッチング選択比が高い材料であるため、エッチング途中で第2層目のCrパターン26が消失しても、パターニングされたSi層13’の寸法はほとんど変化せず、エッチングされた第1層目のCrパターン16’の断面形状を矩形とすることができる。また、第1層目のCrパターン16は石英基板11に対してエッチング選択比が高い材料であるため、エッチングされた第1層目のCrパターン16’の裾引きを軽減することができ、エッチングされた第1層目のCrパターン16’の断面形状を矩形とすることができる。このため、石英基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
【0056】
次に、図1(m)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによって1段のパターンが形成された石英基板17のエッチングを行った。このとき、1段のパターンが形成された石英基板17のエッチングの条件は、C48流量10sccm、O2流量10sccm〜25sccm、Ar流量75sccm、圧力2Pa、ICPパワー20W、RIEパワー550Wとした。このとき、パターニングされたSi層13’もエッチングされ、パターニングされたSi層13’は消失した。
【0057】
1段のパターンが形成された石英基板17は、エッチングされた第1層目のCrパターン16’に対してエッチング選択比が高い材料であるため、エッチング途中でパターニングされたSi層13’が消失しても、エッチングされた第1層目のCrパターン16’の寸法がほとんど変化することなく1段のパターンが形成された石英基板17をエッチングすることができる。このため、1段のパターンが形成された石英基板17に寸法精度良くパターンを形成することができる。
以上より、図1(m)に示すように、2段のパターンが形成された石英基板27を作製することができた。
【0058】
次に、図1(n)に示すように、残存したエッチングされた第1層目のCrパターン16’のウェット洗浄を行った。これにより、2段のパターンが形成された石英基板27を得ることができた。
以上より、本発明の実施例におけるパターン形成方法を用いて、寸法精度の高い光インプリント用のインプリントモールドを製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のパターン形成方法は、微細なパターンを形成することが求められる広範な分野に利用することが期待される。例えば、パターン形成体として、インプリントモールド、フォトマスク、半導体デバイス、光学素子、配線回路(ディアルダマシン構造の配線回路など)、記録デバイス(ハードディスクやDVDなど)、医療検査用チップ(DNA分析用途など)、ディスプレイ(拡散板、導光板など)、マイクロ流路など、に利用することが期待される。
【符号の説明】
【0060】
11・・・基板
12・・・第1層目のハードマスク層(Cr層)
13・・・エッチストッパ層(Si層)
13’・・・パターニングされたエッチストッパ層(Si層)
14・・・第1のレジスト膜
15・・・第1のレジストパターン
16・・・第1層目のハードマスクパターン(Crパターン)
16’・・・エッチングされた第1層目のハードマスクパターン(Crパターン)
17・・・1段のパターンが形成された基板
22・・・第2層目のハードマスク層(Cr層)
24・・・第2のレジスト膜
25・・・第2のレジストパターン
26・・・第2層目のハードマスクパターン(Crパターン)
27・・・2段のパターンが形成された基板
31・・・基板
32・・・ハードマスク層
34・・・第1のレジスト膜
35・・・第1のレジストパターン
36・・・第1のハードマスクパターン
37・・・1段のパターンが形成された基板
44・・・第2のレジスト膜
45・・・第2のレジストパターン
46・・・第2のハードマスクパターン
47・・・2段のパターンが形成された基板
55・・・倒壊したレジストパターン
56・・・段差を備えたハードマスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1層目のハードマスク層を形成し、
前記基板上の前記第1層目のハードマスク層を備えた面に、第1層目のエッチストッパ層を形成し、
前記基板上の前記第1層目のエッチストッパ層を備えた面に、第2層目から第N層目までのハードマスク層と、第2層目から第(N−1)層目までのエッチストッパ層とを交互に形成し、
前記第N層目のハードマスク層のパターニング処理し、
前記第(N−1)層目から第1層目までのエッチストッパ層と、前記第(N−1)層目から第1層目までのハードマスク層とを交互にパターニング処理し、
前記パターニングされた第1層目から第N層目までのハードマスク層をエッチングマスクとして前記基板に第1段目の異方性エッチングしてパターニング処理することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記第(N−1)層目のハードマスク層に形成するパターンの線幅は前記第N層目のハードマスク層に形成するパターンの線幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記基板の前記第1段目のパターンが形成された側に、順に、第2段目から第N段目までのパターニング処理する工程と、を備え、
前記第N段目のパターンの線幅は第(N−1)段目のパターンの線幅よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記基板は、石英基板であり、
前記第1層目から第N層目までのハードマスク層は、クロムからなる層であり、
前記第1層目から第(N−1)層目までのエッチストッパ層は、シリコンからなる層であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のパターン形成方法を用いて形成されたことを特徴とするパターン形成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−74566(P2012−74566A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218693(P2010−218693)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】