説明

パターン形成方法及びデバイス製造方法

【課題】重ね合わせ露光を行うことなくリソグラフィ・プロセスを用いて、露光装置の解像限界を超えるような微細パターンを形成する。
【解決手段】パターン形成方法は、ウエハW上にネガレジスト3及びより高感度のポジレジスト4を塗布することと、ウエハWのポジレジスト4及びネガレジスト3をライン・アンド・スペースパターンの像で露光することと、ポジレジスト4及びネガレジスト3をウエハWの表面の法線に平行な方向に現像することとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体上にパターンを形成するパターン形成方法、及びデバイス製造方法に関し、例えば露光装置の解像限界よりも微細なパターンを形成する場合に適用可能なものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等のデバイス(電子デバイス、マイクロデバイス)を製造する際に、ウエハ又はガラス基板等の基板に対する薄膜形成プロセスと、基板又は薄膜上にレジストパターン(感光材料のパターン)を形成するリソグラフィ・プロセスと、そのレジストパターンをマスクとしてその基板又は薄膜を加工する加工プロセスとを繰り返すデバイス製造プロセスが用いられている。なお、本明細書では、リソグラフィ・プロセス(リソグラフィ工程)とは、基板に対してレジスト(フォトレジスト)を塗布する塗布工程、露光装置を用いてマスクパターンを介してレジストを露光する露光工程、及びその露光後のレジストを現像する現像工程を含むプロセスを意味している。
【0003】
半導体素子等のパターンの微細化に対応して、そのリソグラフィ・プロセスで使用される露光装置では、解像力を高めるために露光波長の短波長化、投影光学系の開口数NAの増大、いわゆる変形照明等の照明条件の最適化、及び位相シフトレチクル等のマスク技術の開発等が行われてきた。最近では、焦点深度を広く確保した上で、開口数NAを実質的にさらに増大するために、液浸法を用いた露光装置も開発されている。最近では、2回のリソグラフィ・プロセスを繰り返すことによって露光装置の解像限界を超える微細な回路パターンを形成するいわゆるダブルプロセス方式も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のダブルプロセス方式のパターン形成方法においては、2回目のリソグラフィ・プロセスにおいて重ね合わせ露光を行う必要があるため、最終的に形成される微細パターンの形状精度が露光装置のアライメント精度にも依存するという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑み、重ね合わせ露光を行うことなくリソグラフィ・プロセスを用いて、露光装置の解像限界を超えるような微細パターンを形成できるパターン形成技術及びデバイス製造技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、物体上にパターンを形成する方法であって、その物体上に感光特性の異なる第1及び第2の感光層を形成することと、パターンを介してその第1及び第2の感光層を露光することと、その第1及び第2の感光層を現像することとを含むパターン形成方法が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、物体上にパターンを形成する方法において、その物体上に第1の感光層、中間層、及び第2の感光層を形成することと、パターンを介してその第1の感光層、その中間層、及びその第2の感光層を露光することと、その第1の感光層、その中間層、及びその第2の感光層を現像することとを含むパターン形成方法が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、感光性の下層を基板上に形成することと;
感光性の上層を前記下層上に形成することと;前記下層上に形成した前記上層を、所定パターンで光照射して前記上層及び下層を同時に感光させることと;前記感光した上層を現像して前記所定パターンと対応する第1領域を上層に残留させることと;前記上層の第1領域をマスクとして前記感光した下層を現像することにより、前記所定パターンと対応する第2領域及び、前記上層の第1領域の下方に位置するマスクされた領域を下層に残留させることと;前記下層の第2領域及びマスクされた領域をマスクとして前記基板を現像することにより基板上に第2領域及びマスクされた領域に対応するパターンを形成することを含むパターン形成方法が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従えば、本発明のパターン形成方法を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成された基板を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパターン形成方法によれば、現像後に、露光されたパターンよりも微細な感光層のパターンが得られる。従って、リソグラフィ・プロセスを用い、かつ重ね合わせ露光を行うことなく、露光装置の解像限界を超えるような微細パターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(A)は本発明の実施形態で使用されるパターン形成システムの要部を示すブロック図、図1(B)はその実施形態で使用される露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1(B)のウエハステージWSTを示す平面図である。
【図3】図1(B)の露光装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態において、ウエハ上に塗布される2層のレジストの状態の変化を示すウエハ表面の一部の拡大断面図である。
【図5】その第1の実施形態におけるウエハ上のパターンの変化を示す拡大断面図であり、図5(A)は現像後にウエハ上に残されるレジストパターンを示す図、図5(B)はポジレジスト剥離後のレジストパターンを示す図、図5(C)はウエハ上に形成されるL&Sパターンを示す図である。
【図6】その第1の実施形態のパターン形成プロセスを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態において、ウエハ上に塗布される2層のレジスト及び減光層の状態の変化を示すウエハ表面の一部の拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態において、ウエハ上に塗布される2層のレジスト及び減光層等の状態の変化を示すウエハ表面の一部の拡大断面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態において、ウエハ上に塗布される2層のレジストの状態の変化を示すウエハ表面の一部の拡大断面図である。
【図10】図9に示す状態に続いて、ウエハ上の2層のレジストの状態の変化を示す拡大断面図である。
【図11】第4の実施形態におけるウエハ上のパターンの変化を示す拡大断面図であり、図11(A)はドライ現像中のレジストパターンを示す図、図11(B)はドライ現像後のレジストパターンを示す図、図11(C)はウエハ上に形成されるL&Sパターンを示す図である。
【図12】第4の実施形態のパターン形成プロセスを示すフローチャートである。
【図13】本発明の第5の実施形態において、ウエハ上に塗布される2層のレジスト及び減光層の状態の変化を示すウエハ表面の一部の拡大断面図である。
【図14】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1の実施形態]
以下、本発明の好ましい第1の実施形態につき図1〜図6を参照して説明する。
【0013】
図1(A)は、本実施形態のパターン形成システムの要部を示すブロック図、図1(B)は、本実施形態のリソグラフィ・プロセスで使用されるいわゆるスキャニングステッパ(走査型の投影露光装置)型の露光装置100の概略構成を示す。図1(A)において、パターン形成システムは、露光装置100、ウエハに対するレジスト(フォトレジスト)の塗布及び現像を行うコータ・デベロッパ200、ウエハ上にパターンを形成するエッチング装置300、薄膜形成装置(不図示)、及びこれらの装置間でウエハの搬送を行う搬送機構(不図示)等を含んでいる。
【0014】
図1(B)において、露光装置100は、照明系10と、照明系10からの露光用の照明光(露光光)ILにより照明されるレチクルRを保持するレチクルステージRSTと、レチクルRから射出された照明光ILをウエハW上に投射する投影光学系PLを含む投影ユニットPUと、ウエハWを保持するウエハステージWST及び計測ステージMSTを有するステージ装置50とを備えている。露光装置100は、装置全体の動作を統括的に制御するコンピュータよりなる図3の主制御装置20を含む制御系も備えている。以下、露光装置100の投影光学系PLの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向にY軸を、Z軸及びY軸に直交する方向にX軸を取り、X軸、Y軸、及びZ軸の周りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0015】
照明系10は、例えば特開2001−313250号公報(対応する米国特許出願公開第2003/0025890号明細書)などに開示されるように、光源と、照明光学系とを含み、照明光学系は、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)、回折光学素子など)等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する。照明系10は、レチクルブラインドで規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。
【0016】
照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。なお、照明光としては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、YAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波、又は水銀ランプの輝線(i線等)なども使用できる。
【0017】
照明系10は、露光中にウエハWに対する露光量を計測するために、照明光から分岐した光束の光量を計測するインテグレータセンサISも備えている。このインテグレータセンサISの計測値と、ウエハW上の照明光の照度(パルスエネルギー)との関係は予め計測され、図3の露光量制御系130内の記憶部に記憶されている。露光量制御系130は、露光中にウエハWの各点に対する積算露光量が主制御装置20から設定された露光量となるように、インテグレータセンサISの計測値に基づいて照明光のパルスエネルギー等を制御する。
【0018】
図1(B)のレチクルステージRST上には、回路パターンなどがそのパターン面(下面)に形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により保持されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含む図3のレチクルステージ駆動系11によって、XY平面内で微少駆動可能であると共に、走査方向(Y方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0019】
図1(B)のレチクルステージRSTの位置情報(X方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む)は、レーザ干渉計よりなるレチクル干渉計116によって、移動鏡15(ステージ端面を鏡面加工した反射面でもよい)を介して、例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、図3の主制御装置20に送られる。主制御装置20は、その計測値に基づいてレチクルステージ駆動系11を制御することで、レチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
【0020】
また、レチクルステージRSTの下方に配置された投影ユニットPUは、鏡筒40と、該鏡筒40内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を有する投影光学系PLとを含む。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率β(例えば1/4倍、1/5倍などの縮小倍率)を有する。照明系10からの照明光ILによってレチクルRの照明領域IARが照明されると、レチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介して照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの像が、ウエハWの一つのショット領域上の露光領域IA(照明領域IARと共役な領域)に形成される。本例のウエハWは、例えば直径が200mmから300mm程度の円板状の半導体ウエハの表面にパターン形成用の薄膜(金属膜、ポリシリコン膜等)を形成したものである。さらに、露光対象のウエハWの表面には、後述のように、感光層(感光材料)である複数種類のレジスト(フォトレジスト)がそれぞれ所定の厚さ(例えば40nm〜200nm程度)で塗布される。
【0021】
また、露光装置100では、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子である先端レンズ191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように、局所液浸装置30の一部を構成するノズルユニット32が設けられている。
【0022】
図1(B)において、ノズルユニット32は、露光用の液体Lqを供給可能な供給口と、液体Lqを回収可能な多孔部材(メッシュ)が配置された回収口とを有する。ノズルユニット32の供給口は、供給流路及び供給管31Aを介して、液体Lqを送出可能な図3の液体供給装置186に接続されている。ノズルユニット32の回収口は、回収流路及び回収管31Bを介して図3の液体回収装置189に接続されている。
【0023】
液浸法によるウエハWの露光時に、液体供給装置186から送出された露光用の液体Lqは、供給管31A、及びノズルユニット32の供給流路を流れた後、その供給口より照明光ILの光路空間を含むウエハW上の液浸領域に供給される。また、液浸領域からノズルユニット32の回収口を介して回収された液体Lqは、回収流路及び回収管31Bを介して液体回収装置189に回収される。ウエハW上に形成される液浸領域は、ウエハW全体ではなく、ウエハWの一部の領域のみに、すなわち局所的に形成される。この意味で、局所液浸露光装置または方法は、ウエハ全体が、容器やプール中に充填された液体に浸漬されているタイプの液浸露光装置または方法と区別される。
【0024】
なお、ノズルユニット32としては、例えば国際公開第2005/122218号パンフレット(対応米国特許出願公開第2007/0291239号)に開示されているように、中央の液体の供給及び回収を行う第1のノズル部材と、その外側の液体回収用の第2のノズル部材とを含むノズルユニット等を使用してもよい。
【0025】
図1(B)において、ステージ装置50のウエハステージWST及び計測ステージMSTは、それぞれ不図示の複数の例えば真空予圧型空気静圧軸受を介して、ベース盤12のXY平面に平行な上面12a上に数μm程度のクリアランスを介して非接触で支持されている。さらに、ステージ装置50は、ステージWST,MSTの位置情報を計測するY軸干渉計16,18及びX軸干渉計(不図示)を含む干渉計システム118(図3参照)、露光の際などにウエハステージWSTの位置情報を計測するための後述するエンコーダシステム、及びステージWST,MSTをX方向、Y方向に独立して駆動する例えば複数組のリニアモータ(あるいは平面モータ)などを含むステージ駆動系124(図3参照)などを備えている。
【0026】
ウエハステージWSTは、ステージ本体91と、ステージ本体91上に搭載されたウエハテーブルWTBと、ステージ本体91内に設けられて、ステージ本体91に対するウエハテーブルWTB(ウエハW)のZ方向の位置、及びθx方向、θy方向のチルト角を相対的に微小駆動するZ・レベリング機構とを備えている。また、照射系90a及び受光系90bから成る、例えば特開平6−283403号公報(対応する米国特許第5,448,332号明細書)等に開示されるものと同様の構成で、ウエハW上の複数点のZ方向の位置を計測する斜入射方式のオートフォーカスセンサ(以下、AF系と呼ぶ。)90(図3参照)が設けられている。主制御装置20は、露光中にAF系90の計測値に基づいて、ウエハWの表面が投影光学系PLの像面に合焦されるように、そのZ・レベリング機構を駆動する。
【0027】
また、図2のウエハステージWSTの平面図に示すように、ウエハテーブルWTBのY方向及びX方向の端面には、それぞれ鏡面加工によって反射面17a,17bが形成されている。干渉計システム118のY軸干渉計16及びX軸干渉計(不図示)は、これらの反射面17a,17b(移動鏡でもよい)にそれぞれ干渉計ビームを投射して、各反射面の位置、ひいてはウエハステージWSTの位置情報(例えば少なくともX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む)を例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で計測し、この計測値を主制御装置20に供給する。
【0028】
また、ウエハテーブルWTB上には、例えば真空吸着等によって、ほぼXY平面に平行な吸着面上にウエハWを保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。ウエハテーブルWTB上面のそのウエハホルダ(ウエハW)の周囲には、ウエハ表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面を有する平板状のプレート(撥液板)28が設けられている。図2に示すように、プレート28は、ウエハWを囲む第1領域28aと、第1領域28aの周囲に配置される矩形枠状(環状)の第2領域28bとを有する。
【0029】
第2領域28bのX方向の両側の領域には、Yスケール39Y1,39Y2が形成され、第2領域28bのY方向の両側の領域には、Xスケール39X1,39X2が形成されている。Yスケール39Y1,39Y2及びXスケール39X1,39X2は、それぞれX方向及びY方向を長手方向とする格子線38及び37を所定ピッチ(例えば100nm〜4μm)でY方向及びX方向に沿って形成してなる、Y方向及びX方向を周期方向とする反射型の格子(例えば位相型の回折格子)である。
【0030】
本実施形態では、Yスケール39Y1,39Y2の格子を例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で検出するY軸の複数のエンコーダよりなる図3のYリニアエンコーダ70A,70C、及びXスケール39X1,39X2の格子を検出する図3のXリニアエンコーダ70B,70Dが設けられている。本実施形態では、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のXY平面内の位置情報は、主として、上述したYリニアエンコーダ70A,70C及びXリニアエンコーダ70B,70D(エンコーダシステム)によって計測する。そして、干渉計システム118の計測値は、そのエンコーダシステムの計測値の長期的変動(例えばスケールの経時的な変形などによる変動)を補正(校正)する場合などに補助的に用いられる。また、干渉計システム118の計測情報は、例えばウエハ交換のため、後述するアンローディング位置、及びローディング位置付近においてウエハテーブルWTBのY方向の位置等を計測するのにも用いられる。
【0031】
図1(B)において、計測ステージMSTは、ステージ本体92上に平板状の計測テーブルMTB等を搭載して構成されている。計測テーブルMTB及びステージ本体92には、照射量モニタ、照度むらセンサ等の各種計測用部材(不図示)が設けられている。計測ステージMSTの計測テーブルMTBの+Y方向及び−X方向の端面にも反射面が形成されている。干渉計システム118のY軸干渉計18及びX軸干渉計(不図示)は、これらの反射面に干渉計ビーム(測長ビーム)を投射して、計測ステージMSTの位置情報(例えば、少なくともX方向、Y方向の位置とθz方向の回転角とを含む)を計測する。
【0032】
これらの計測値に基づいて主制御装置20が、ステージ駆動系124を介してウエハステージWST及び計測ステージMSTの位置及び速度を制御する。
【0033】
本実施形態の露光装置100は、図1(B)では不図示であるが、ウエハW上の所定のアライメントマークの位置を計測するアライメント系AL(図3参照)、及びレチクルRのアライメントマークの投影光学系PLによる像の位置を計測するために、少なくとも一部がウエハステージWSTに設けられる空間像計測系(不図示)を備えている。これらの空間像計測系及びアライメント系ALを用いて、レチクルRとウエハWの各ショット領域とのアライメントが行われる。
【0034】
ウエハWの露光時には、局所液浸装置30から投影光学系PLとウエハWとの間に液体Lqを供給し、レチクルRのパターンの一部の像を投影光学系PLを介してウエハW上の一つのショット領域に投影した状態で、レチクルステージRSTを介してレチクルRをY方向に移動するのに同期して、ウエハステージWSTを介してウエハWを対応する方向に移動することで、当該ショット領域にレチクルRのパターンの像が走査露光される。その後、ウエハステージWSTを介して、ウエハW上の次のショット領域が露光領域の手前に移動するようにウエハWがX方向、Y方向にステップ移動される。このステップ移動と、走査露光とを繰り返すことによって、ステップ・アンド・スキャン方式及び液浸方式で、ウエハW上の各ショット領域にそれぞれレチクルRのパターンの像が露光される。
【0035】
以下、本実施形態のパターン形成システムを用いるパターン形成プロセスの一例につき図6のフローチャートを参照して説明する。この場合、一例としてウエハW上には周期(ピッチ)Pのライン・アンド・スペースパターン(以下、L&Sパターンという)を形成するものとする。周期Pは、図1(B)の露光装置100の解像限界を超える値、例えば解像限界のほぼ1/2の値である。露光装置100の解像限界のL&Sパターンの像の周期を例えば80nmとすると、ウエハW上に形成されるL&Sパターンの周期は40nmである。
【0036】
この場合、図1(B)のレチクルRのパターン領域には、露光装置100の投影光学系PLによる像のX方向の周期が2PとなるL&Sパターン(又は位相シフトパターン等でもよい)が形成されている。
【0037】
また、図4(A)〜図4(C)及び図5(A)〜図5(C)は、パターン形成の一連の工程中のウエハW表面の一部の拡大断面図である。なお、ウエハW上に形成されるL&Sパターンの周期方向をX方向として、ウエハW表面の法線方向をZ方向としている。
【0038】
先ず、不図示の薄膜形成装置を用いて、半導体ウエハよりなるウエハWの表面にパターン形成用の薄膜(不図示)を形成する。なお、本願に添付の図は、そのような薄膜が予め形成されたウエハをウエハWとして表わす。次に、そのウエハWを図1(A)のコータ・デベロッパ200に搬送して、図4(A)に示すように、ウエハW表面に下層として低感度の(必要露光量が大きい)ネガレジスト3を厚さ40〜200nm程度に塗布する(図6のステップ101参照)。続いてステップ102において、ウエハWのネガレジスト3上に、上層として、高感度の(必要露光量が少ない)ポジレジスト4を厚さ40〜200nm程度に塗布する。ネガレジスト3及びポジレジスト4の感度については後述する。レジストの感度情報は、主制御装置20内の記憶装置に記憶されている。なお、ウエハW上にネガレジスト3を塗布した後、及び/又はさらにポジレジスト4を塗布した後で、必要に応じてウエハWのプリベークを行うようにしてもよい。また、上述の薄膜形成装置をコータ・デベロッパ200に設け、ここで薄膜を形成しても良い。
【0039】
次のステップ103において、2層のレジストが塗布されたウエハWを図1(B)の露光装置100のウエハステージWST上に搬送し、ウエハWの各ショット領域にレチクルRのL&Sパターンの像を投影光学系PLを介して露光する。この結果、図4(B)に示すように、ウエハW上の各ショット領域において、ネガレジスト3及びポジレジスト4は、例えば正弦波状の光量分布曲線5で表されるX方向に周期(ピッチ)2PのL&Sパターンの像で露光される。
【0040】
この場合、高感度のポジレジスト4の感光レベル(閾値)Thpは、光量分布曲線5のうちで、最大光量となる位置を中心としてX方向の幅がほぼ3P/2となる領域6Aがその感光レベルThp以上となるように設定されている。従って、領域6AはX方向に2Pの周期で周期的に存在する。その領域6Aが、ポジレジスト4の感光部(現像で除去される部分)に対応し、感光部と非感光部とのX方向の幅の比はほぼ3:1である。一方、低感度のネガレジスト3の感光レベル(閾値)Thnは、光量分布曲線5のうちで、最大光量となる位置を中心としてX方向の幅がほぼP/2の領域7Aがその感光レベルThn以上となるように設定されている。従って、領域7AはX方向にP/2の周期で周期的に存在する。その領域7Aが、図4(C)のネガレジスト3の感光部(現像で残される部分)3Aに対応し、感光部と非感光部との幅の比はほぼ1:3である。また、領域7Aはそれぞれ領域6Aの中央に位置している。
【0041】
この条件下では、ポジレジスト4の感度は、感光部と非感光部との幅の比が1:1になる場合よりも高く、ネガレジスト3の感度は、感光部と非感光部との幅の比が1:1になる場合よりも低くなっている。
【0042】
この実施形態において、光量分布曲線5が位置Xに関して正弦波であると仮定して、光量分布曲線5の最小値を0、最大値(露光装置による設定露光量)をEPとすると、感光レベルThp,Thnはそれぞれほぼ以下のようになる。
【0043】
Thp=(2−21/2)EP/4 …(1)
Thn=(2+21/2)EP/4 …(2)
Thn/Thp=(2+21/2)/(2−21/2)≒5.83 …(3)
従って、低感度のネガレジスト3の感光レベルThnは、高感度のポジレジスト4の感光レベルThpのほぼ6倍に設定すればよいことになる。このとき、実際の露光量EPを、例えば感光される領域7Aの幅がP/2になるように定めることによって、感光される領域6Aの幅はほぼ3P/2となる。実際には、光量分布曲線5の形状及び現像特性等に応じて、感光レベルThn,Thpを定めることができる。
【0044】
次のステップ104において、露光後のウエハWを露光装置100から図1(A)のコータ・デベロッパ200に搬送し、必要に応じて定在波効果軽減のために、ウエハWに対して現像前ベークであるPEB(post-exposure bake)を行う。その後、ウエハW上のネガレジスト3及びポジレジスト4に対して、ウエハW表面の法線方向であるZ方向に現像を行う。この現像は、異方性現像と呼ぶことができる。そのために、一例として図4(C)に示すように、ウエハWの上方にあるノズル(不図示)から、ドライエッチングのように、プラズマ状の現像液DLをウエハWに対してZ方向に所定時間噴き付ける。この現像は、異方性のドライ現像と言うこともできる。この現像の前半部では、ポジレジスト4のうちで図4(B)の感光される領域6Aに対応する感光部が溶解されて脱落し、幅P/2の非感光部4Aが周期2Pで残される。
【0045】
なお、この段階までは、異方性のドライ現像に代えて、通常の方向性のない現像を行ってもよい。ただし、この後でも、通常の方向性のない現像を継続すると、ポジレジスト4の非感光部4Aの底面側のネガレジスト3の領域(以下、非現像部という)3Bも現像されて、非感光部4Aも脱落してしまう。それを避けるため、本実施形態では下層となるネガレジスト3の現像はZ方向に行われる。従って、現像の後半部では、図5(A)に示すように、ウエハW上のネガレジスト3のうちで、幅がほぼP/2の感光部3Aと、ポジレジスト4の非感光部4Aによって覆われる幅がほぼP/2の非現像部3Bとが残される。なお、ネガレジスト3の非現像部3Bは、ポジレジスト4の非感光部4Aによりマスクされた領域といえる。また、感光部3A及び非現像部3BのX方向の周期は2Pであり、非現像部3Bは感光部3A間の中央に位置している。
【0046】
次のステップ105において、ポジレジスト4の非感光部4Aよりなるポジ型のレジストパターンのみを剥離する、例えば有機溶剤または高周波放電による酸素プラズマ中で灰化(ashing)することにより除去すると、ウエハW上には図5(B)に示すように、幅P/2の感光部3A及び非現像部3Bを周期PでX方向に配置したネガ型のレジストパターンが残される。すなわち、ウエハW上に幅P/2の凸部が周期Pで繰り返されるパターンが形成される。それに続くステップ106において、ウエハW上でそのレジストパターンをマスク層としてパターン形成を行うために、ウエハWを図1(A)のエッチング装置300に搬送し、ウエハWの加熱(キュア)及びエッチング等を含む基板処理を行う。次のステップ107で、ウエハW上のネガ型のレジストパターンを剥離することによって、図5(C)に示すように、ウエハW表面の薄膜部には、幅がほぼP/2の凸のライン部3Cを周期PでX方向に配列したL&SパターンLSPが形成される。図4(B)の光量分布曲線5で表されるL&Sパターンの像の周期2Pを例えば80nmとすると、図5(C)のL&SパターンLSPの周期Pは40nmである。
【0047】
このように本実施形態によれば、ウエハW上に露光装置100の解像限界(周期2P)の1/2の周期Pの微細なL&SパターンLSPを形成できる。
【0048】
その後、ステップ108の次工程において、一例として、ウエハWに対して、必要に応じてリソグラフィ・プロセスが繰り返される。
【0049】
本実施形態の作用効果等は以下の通りである。
【0050】
(1)本実施形態のパターン形成プロセスは、ウエハW上に感光特性の異なるネガレジスト3及びポジレジスト4を塗布するステップ101,102(塗布工程)と、露光装置100によってレチクルRのパターンの像でウエハW上のネガレジスト3及びポジレジスト4を同時に露光するステップ103(露光工程)と、ウエハW上のネガレジスト3及びポジレジスト4をZ方向に現像するステップ104(現像工程)とを含む1回のリソグラフィ・プロセス(リソグラフィ工程)を実行することで、ウエハW上に露光装置100の解像限界のほぼ1/2のレジストパターンを形成している。すなわち、一回だけの露光で解像限界のほぼ1/2のレジストパターンの形成を実現している。
【0051】
従って、リソグラフィ・プロセスを用い、かつ重ね合わせ露光を行うことなく、露光装置の解像限界を超える微細パターンを形成できる。
【0052】
(2)また、ステップ104では、ネガレジスト3及びポジレジスト4をウエハW表面に垂直なZ方向に現像しているため、図5(A)に示すように、断面形状の輪郭がウエハW表面に垂直な良好なレジストパターンを形成できる。
【0053】
ただし、レジストパターンの断面の輪郭はウエハW表面にほぼ垂直であればよいため、現像の方向もほぼZ方向に平行であればよい。特にネガレジスト3及びポジレジスト4の厚さが薄くなるほど、現像の方向のZ方向からのずれの許容量は増加する。さらに、現像液DLは、必ずしも全体として平行である必要はなく、その現像の方向のずれの許容量程度の範囲内で均一に分布していてもよい。
【0054】
さらに、ステップ104の前半部で、ポジレジスト4の現像を行う段階では、ポジレジスト4のみに反応する通常の方向性の無い現像(ウェット現像等)を行ってもよい。この場合には、ポジレジスト4の現像と後のネガレジスト3の現像とで現像液の種類が異なってもよい。
【0055】
(3)また、本実施形態では、ステップ104の現像として、プラズマ状の現像液を噴き付ける異方性のドライ現像を行っている。この場合には、現像液と物理的に衝突したレジスト(ネガレジスト3に関しては、非感光部4Aの影に入る非現像部3B以外の部分)のうちで、現像液によって溶解・脱落する化学的成分を持つ部分(ネガレジスト3に関しては、感光部3A以外の部分、即ち感光部3Aと非現像部3Bとの間の部分)が脱落する。
【0056】
なお、異方性の現像としては、その他に、現像液を高圧の蒸気状にして、ウエハの上方(Z方向)から噴射してもよい。この場合には、化学反応と物理作用との相乗効果で所定の部分(ネガレジスト3に関しては、感光部3Aと非現像部3Bとの間の部分)のみが脱落する。
【0057】
また、ステップ104において、異方性の現像のみを行う場合にも、ポジレジスト4の現像時と、ネガレジスト3の現像時とで、現像液の種類を切り換えてもよい。
【0058】
(4)また、図4(C)に示すように、ウエハW上の第1層はネガレジスト3で、第2層はネガレジスト3より高感度のポジレジスト4であるため、特にこの実施形態ではそれらの感光レベルThp、Thnを所定の関係に調整したので、異方性の現像後に、露光パターンの周期の1/2の周期のレジストパターンを形成できる。
【0059】
なお、図4(B)では、ポジレジスト4における照明光(投影像)の光量(光量分布曲線5)の減少は無視しているが、実際にはポジレジスト4において投影像の光量が減少するため、ネガレジスト3の感度はもっと高く(感光レベルThnをもっと低く)設定できる場合がある。
【0060】
(5)なお、ウエハW上の第1層としてポジレジスト4を塗布し、第2層としてネガレジスト3を塗布し、ポジレジスト4の感度をネガレジスト3より高く(感光レベルThpを感光レベルThnより低く)設定してもよい。この構成でも、Z方向への現像を行うことによって、ウエハW上に周期Pのレジストパターンが形成できる。
【0061】
(6)また、図4(B)の場合、ネガレジスト3の感度は、感光部3Aと非感光部(溶解部)との幅の周期方向(X方向)の比がほぼ1:3となるように低く設定され、ポジレジスト4の感度は、感光部(溶解部)と非感光部4Aとの幅のX方向の比がほぼ3:1になるように高く設定されている。これによって、現像後に、ウエハW上に周期が1/2で、凸部と凹部との幅の比がほぼ1:1の微細なレジストパターンを高精度に形成できる。
【0062】
(7)なお、例えばネガレジスト3及びポジレジスト4を薄く塗布した場合には、図6のステップ105を省略して、図5(A)に示すように、ポジレジスト4の非感光部4Aが残存している状態でウエハWのエッチングを行うことも可能である。
【0063】
(8)本実施形態では、ウエハ上に1次元のL&Sパターンの像を露光しているが、ウエハW上にX方向、Y方向に周期性を持つ2次元のL&Sパターン等の像を露光してもよい。この場合には、最終的にウエハ上に2次元の微細なパターンを形成できる。
【0064】
(9)なお、ネガレジスト3及び/又はポジレジスト4は、それぞれ多層レジスト膜であってもよい。
【0065】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態につき図7を参照して説明する。図7(A)〜(C)において図4(A)〜(C)及び図5(A)〜(C)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。本実施形態においても、図1(A)のパターン形成システムを使用するが、以下で説明するように、ウエハW上にパターンを形成する方法の一部が図6とは異なっている。
【0066】
即ち、本実施形態では、図6のステップ101とステップ102との間で、ネガレジスト3上に図1(B)の露光装置100の照明光ILに対して所定の透過率を持つ減光層(遮光層)8を形成する。この結果、ステップ102に対応する工程が終了すると、図7(A)に示すように、ウエハW上にはネガレジスト3、減光層8、及びポジレジスト4が積層して形成される。減光層8は、ポジレジスト4又はネガレジスト3用の現像液によって除去(溶解)される材料から形成され、その厚さによって透過率を制御できる。この点で、減光層8はネガレジスト3の感光性調整層または露光量調整層と言える。減光層8の透過率は、一例としてポジレジスト4の感度とネガレジスト3の感度とが等しくなるように、例えば1/6(17%)程度に設定される。従って、本実施形態では、ネガレジスト3及びポジレジスト4の感度(感光レベル)は等しい。
【0067】
また、ステップ103に対応して、本実施形態でも、図7(B)に示すように、ウエハWのポジレジスト4が、ほぼ正弦波状の光量分布曲線5Pで表されるX方向に周期2PのL&Sパターンの像で露光される。これと同時に、減光層8の作用によって、ウエハWのネガレジスト3が、光量分布曲線5Pのレベルを例えば1/6程度に圧縮した光量分布曲線5Nで表される周期2PのL&Sパターンの像で露光される。
【0068】
この場合、ポジレジスト4の感光レベルThpは、光量分布曲線5Pのうちで、X方向の幅が3P/2の周期的な領域6A(感光部)がその感光レベルThp以上となるように設定されている。また、ネガレジスト3の感光レベルThnは、感光レベルThpと同じであるが、光量分布曲線5Nのうちで、X方向の幅がP/2の周期的な領域7A(感光部)がその感光レベルThn以上となるように設定されている。従って、光量分布曲線5Pが位置Xに関して正弦波であると仮定して、光量分布曲線5Pの最小値を0、最大値をEPとすると、感光レベルThp,Thnはそれぞれ上記の式(1)で表される。
【0069】
この後、図6のステップ104に対応するZ方向への現像工程を実行することによって、図7(C)に示すように、ウエハW上では、ネガレジスト3のうちで幅P/2の感光部3A及び非現像部3Bが周期2Pで残され、非現像部3B上に減光層8の境界部8Aを介してポジレジスト4の非感光部4Aが残される。即ち、ウエハW上に露光装置100の解像限界のほぼ1/2の周期Pのレジストパターンが形成される。従って、この後は、図6のステップ105、106に対応する工程を実行することで、ウエハW上に周期PのL&Sパターンを形成できる。
【0070】
本実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果に加えて以下の作用効果を有する。
【0071】
(1)ウエハW上のネガレジスト3とポジレジスト4との間に、照明光(露光光)に対して所定の透過率を持つ減光層8(中間層)が形成される。従って、減光層8の透過率を制御することによって、例えばネガレジスト3及びポジレジスト4の感度(感光レベル)を等しく設定しても、ウエハ上に露光装置100の解像限界を超える微細なパターンを形成できる。これによって、ネガレジスト3及びポジレジスト4の管理が容易になり、露光装置100では露光量の制御を高精度に行うのみで、ウエハ上にL&Sパターンを高精度に形成できる。
【0072】
(2)また、減光層8のうちで、境界部8A以外の部分はステップ104の現像時に除去されるため、減光層8は、最終的に形成されるL&Sパターンの形状には影響を与えない。
【0073】
(3)また、図7(A)では、減光層8の下層がネガレジスト3で、上層がポジレジスト4であるため、ネガレジスト3に対する露光量が減少する。従って、ネガレジスト3及びポジレジスト4の感度を容易に等しくできる。
【0074】
(4)また、本実施形態のパターンを形成する方法は、ウエハW上にネガレジスト3、減光層8、及びポジレジスト4を形成するステップ(ステップ101、減光層8の塗布工程、及びステップ102)と、レチクルRのパターンを介してウエハWのネガレジスト3、減光層8、及びポジレジスト4を露光するステップ103と、ウエハW上のネガレジスト3、減光層8、及びポジレジスト4を現像するステップ104とを有するものでもある。
【0075】
この実施形態によれば、例えばネガレジスト3及びポジレジスト4の感度を等しくした容易なリソグラフィ・プロセスを用い、かつ重ね合わせ露光を行うことなく、露光装置の解像限界を超えるような微細パターンを形成できる。
【0076】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態につき図8を参照して説明する。図8(A)〜(D)において図4(A)〜(C)及び図5(A)〜(C)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。本実施形態においても、図1(A)のパターン形成システムを使用するが、本実施形態では通常の現像を行うのみで、異方性の現像を行う必要がない点が異なっている。
【0077】
即ち、本実施形態では、図8(A)に示すように、ウエハW上に低感度のネガレジスト3及び高感度のポジレジスト4を塗布した後、光量分布曲線5で示す周期2PのL&Sパターンの像を露光する。ネガレジスト3が感光される領域7Aの幅はP/2で、ポジレジスト4が感光される領域6Aの幅は3P/2である。ただし、レジスト3,4の厚さは、周期2Pに対して比較的薄く設定されている。
【0078】
その後、ポジレジスト4のみを現像する現像液を用いて、ウエハW上のポジレジスト4のみに通常の現像(例えばウェット現像)を行うことで、図8(B)に示すように、幅P/2の非感光部4Aが周期2Pで残される。その後、ネガレジスト3のみを現像する現像液を用いて、ウエハW上のネガレジスト3のみに通常の現像(例えばウェット現像)を行うことで、図8(C)に示すように、幅P/2の感光部3A、及び非感光部4Aに覆われて両端部が溶解された底面の幅がほぼP/2の非現像部3Bとが周期Pで残される。その後、図8(C)のレジストパターンをマスク層としてエッチング等を行うことで、図8(D)に示すように、ウエハW上に周期PのL&SパターンLSPが形成される。
【0079】
このように本実施形態によれば、レジスト3,4を薄く形成することによって、通常の現像を行うのみで、ウエハW上にライン部とスペース部との幅がほぼ1:1で周期がほぼPと見なされるレジストパターンを形成できる。従って、このレジストパターンを用いてウエハW上に露光装置の解像度を超えるパターンを形成できる。
【0080】
[第4の実施形態]
本実施形態のパターン形成システムを用いるパターン形成プロセスの一例につき図12のフローチャートを参照して説明する。この場合、前述の実施形態と同様にして、ウエハW上には周期(ピッチ)PのL&Sパターンを形成するものとする。
【0081】
図1(B)のレチクルRのパターン領域には、露光装置100の投影光学系PLによる像のX方向の周期が2PとなるL&Sパターン(又は位相シフトパターン等でもよい)が形成されている。
【0082】
さらに、本実施形態では、図1(A)のコータ・デベロッパ200でウエハ上の複数層のレジストを現像する過程で、所定のレジストの感光部の表面近傍にケイ素(Si)を付着させるシリル化(silylation)を行う。リソグラフィ工程におけるシリル化は、例えば特開2000−182923号公報、特開2001−135565号公報に開示されているように、従来は現像後のレジストのエッチング耐性を向上させるため、または露光後のレジストをRIEなどでエッチングするときのレジストのRIEに対する耐久性を向上するために用いられていた。本願では、後述のように、そのシリル化を所定のレジストの感光部の現像液に対する耐性を向上させるために用いる。
【0083】
以下の説明で使用する図9(A)〜図9(C)、図10(A)〜図10(C)、及び図11(A)〜図11(C)は、パターン形成の一連の工程中のウエハW表面の一部の拡大断面図である。なお、ウエハW上に形成されるL&Sパターンの周期方向をX方向として、ウエハW表面の法線方向をZ方向としている。
【0084】
先ず、不図示の薄膜形成装置を用いて、半導体ウエハよりなるウエハWの表面にパターン形成用の薄膜(不図示)を形成する。次に、そのウエハWを図1(A)のコータ・デベロッパ200に搬送して、図9(A)に示すように、ウエハW表面に低感度で(必要露光量が大きい)且つシリル化する特性を有するネガレジスト(ネガ型シリル化レジスト)3を厚さ40〜200nm程度に塗布する(図12のステップ201参照)。続いてステップ202において、ウエハWのネガレジスト3上に、高感度で(必要露光量が少ない)且つシリル化しない通常のポジレジスト4を厚さ40〜200nm程度に塗布する。ネガレジスト3及びポジレジスト4の感度については後述する。レジストの感度情報は、主制御装置20内の記憶装置に記憶されている。なお、ウエハW上にネガレジスト3を塗布した後、及び/又はさらにポジレジスト4を塗布した後で、必要に応じてウエハWのプリベークを行うようにしてもよい。
【0085】
次のステップ203において、2層のレジストが塗布されたウエハWを図1(B)の露光装置100のウエハステージWST上に搬送し、ウエハWの各ショット領域にレチクルRのL&Sパターンの像を投影光学系PLを介して露光する。この結果、図9(B)に示すように、ウエハW上の各ショット領域において、ネガレジスト3及びポジレジスト4は、ほぼ正弦波状の光量分布曲線5で表されるX方向に周期(ピッチ)2PのL&Sパターンの像で露光される。
【0086】
この場合、高感度のポジレジスト4の感光レベル(閾値)Thpは、光量分布曲線5のうちで、最大光量となる位置を中心としてX方向の幅がほぼ3P/2となる領域6Aがその感光レベルThp以上となるように設定されている。従って、領域6AはX方向に2Pの周期で周期的に存在する。その領域6Aが、ポジレジスト4の感光部(現像で除去される部分)に対応し、感光部と非感光部とのX方向の幅の比はほぼ3:1である。一方、低感度のネガレジスト3の感光レベル(閾値)Thnは、光量分布曲線5のうちで、最大光量となる位置を中心としてX方向の幅がほぼP/2の領域7Aがその感光レベルThn以上となるように設定されている。従って、領域7AはX方向に2/Pの周期で周期的に存在する。その領域7Aが、図9(C)のネガレジスト3の感光部(現像で残される部分)3Aに対応し、感光部と非感光部との幅の比はほぼ1:3である。ネガレジスト3の感光部3Aは、シリル化反応部分でもある。また、領域7Aはそれぞれ領域6Aの中央に位置している。
【0087】
なお、光量分布曲線5の像が露光されたときに、感光部と非感光部とのX方向の幅の比がほぼ1:1になるレジストの感度を基準としたときに、ネガレジスト3の感度は低感度であり、ポジレジスト4の感度は高感度であるということもできる。第1実施形態と同様に、光量分布曲線5が位置Xに関して正弦波であると仮定して、光量分布曲線5の最小値を0、最大値(露光装置による設定露光量)をEPとすると、感光レベルThp,Thnは前述の式(1)〜(3)で表わされる。
【0088】
ゆえに、低感度のネガレジスト3の感光レベルThnは、高感度のポジレジスト4の感光レベルThpのほぼ6倍に設定すればよいことになる。このとき、実際の露光量EPを、例えば感光される領域7Aの幅がP/2になるように定めることによって、感光される領域6Aの幅はほぼ3P/2となる。実際には、光量分布曲線5の形状及び現像特性等に応じて、感光レベルThn,Thpを定めることができる。
【0089】
次のステップ204において、露光後のウエハWを露光装置100から図1(A)のコータ・デベロッパ200に搬送し、必要に応じて定在波効果軽減のために、ウエハWに対して現像前ベークであるPEB(post-exposure bake)を行う。その後、ウエハW上のポジレジスト4に対して、通常の現像(例えばウェット現像)を行う。この現像によって、図9(C)に示すように、ポジレジスト4のうちの幅がほぼP/2で周期2Pの非感光部4Aの間の感光部(図9(B)の領域6Aに相当)が次第に溶解する。そして、図10(A)に示すように、ポジレジスト4の感光部が完全に溶解して脱落し、非感光部4Aだけが残された時点で、ポジレジスト4の現像が停止される。
【0090】
次のステップ205において、ウエハW上のネガレジスト3の感光部3Aのシリル化を行うために、図10(B)に示すように、ウエハWのネガレジスト3及びポジレジスト4の表面に、ケイ素(Si)を含む例えばHMDS(ヘキサメチルジシラン:Haxamethyldisilazane)のようなシリル化ガスSGを約150°Cの温度で流し、ウエハWを加熱する。この結果、図10(B)に示すように、ネガレジスト3の感光部3Aの表面だけに、高エッチング耐性のケイ素を含む材料が付着したシリル化部3Sが形成される。
【0091】
なお、この後に通常の現像を行うと、ポジレジスト4の非感光部4Aの底面側の図10(C)に示すネガレジスト3の領域(以下、非現像部という)3Bも現像されて、感光部3A以外の部分が全部脱落してしまう。それを避けるため、本実施形態では次のステップ206において、異方性を有する現像を行なう。ウエハW上のネガレジスト3及びポジレジスト4に対して、感光部3A以外の部分を均一に次第に脱落させるための現像(エッチング)を行う。この工程はネガレジスト3(シリル化されていない部分)及びポジレジスト4を溶解する液体DKを噴き付けることによって行われるため、ドライ現像又はレジストのエッチング(ネガレジストとポジレジストの両方を除去するエッチング)とも呼ぶことができる。
【0092】
即ち、一例として図10(C)に示すように、ウエハWの上方にあるノズル(不図示)から、液体DKをウエハWに対してZ方向に所定時間噴き付ける。この場合、ネガレジスト3の感光部3Aの表面にはシリル化部3Sが形成されているため、感光部3Aは確実に残される。そのドライ現像によって(液体DKに対するネガレジスト3(シリル化されていない部分)及びポジレジスト4の溶解度は同一であるため)、図10(C)及び図11(A)に示すように、ポジレジスト4の非感光部4Aと、ネガレジスト3の感光部3A及び非現像部3Bの間の部分とがほぼ同じ速度で脱落する。そして、図11(B)に示すように、ネガレジスト3の感光部3A及び非現像部3Bの間の部分が完全に脱落した時点でこのドライ現像を停止する。この時点では、ポジレジスト4の非感光部4Aも殆ど全部が脱落しているため(本実施形態ではポジレジスト4とネガレジスト3の厚みをほぼ同一にしたので)、ウエハW上には、幅がほぼP/2の感光部3Aと、ポジレジスト4の非感光部4Aによって覆われていた幅がほぼP/2の非現像部3Bとが残される。また、非現像部3Bは感光部3A間の中央に位置しているため、ウエハW上には、幅P/2の感光部3A及び幅P/2の非現像部3Bを周期PでX方向に配置したネガ型のレジストパターンが残される。すなわち、ウエハW上にX方向に幅P/2の凸部が周期Pで存在するパターンが形成される。
【0093】
それに続くステップ207において、ウエハW上でそのレジストパターンをマスク層としてパターン形成を行うために、ウエハWを図1(A)のエッチング装置300に搬送し、ウエハWの加熱(キュア)及びエッチング等を含む基板処理を行う。次のステップ208で、ウエハW上のネガ型のレジストパターンを剥離することによって、図11(C)に示すように、ウエハW表面の薄膜部には、幅がほぼP/2の凸のライン部3Cを周期PでX方向に配列したL&SパターンLSPが形成される。図9(B)の光量分布曲線5で表されるL&Sパターンの像の周期2Pを例えば80nmとすると、図11(C)のL&SパターンLSPの周期Pは40nmである。
【0094】
このように本実施形態によれば、ウエハW上に露光装置100の解像限界(周期2P)の1/2の周期Pの微細なL&SパターンLSPを形成できる。
【0095】
その後、ステップ209の次工程において、一例として、ウエハWに対して、必要に応じてリソグラフィ・プロセスが繰り返される。
【0096】
本実施形態の作用効果等は以下の通りである。
【0097】
(1)本実施形態のパターン形成プロセスは、ウエハW上に感光特性の異なるネガレジスト3及びポジレジスト4を塗布するステップ201,202(塗布工程)と、露光装置100によってレチクルRのパターンの像でウエハW上のネガレジスト3及びポジレジスト4を同時に露光するステップ203(露光工程)と、ウエハW上のネガレジスト3及びポジレジスト4をネガレジスト3のシリル化プロセスを含んで現像するステップ204〜206(現像工程)とを含む1回のリソグラフィ・プロセス(リソグラフィ工程)を実行することで、ウエハW上に露光装置100の解像限界のほぼ1/2のレジストパターンを形成している。露光回数に着目すれば、一回だけの露光を通じて解像限界のほぼ1/2のレジストパターンの形成が実現されている。
【0098】
従って、リソグラフィ・プロセスを用い、かつ重ね合わせ露光を行うことなく、露光装置の解像限界を超える微細パターンを形成できる。
【0099】
(2)また、その現像工程では、ポジレジスト4を現像するステップ204と、ネガレジスト3の感光部3Aの表面をシリル化して現像液に対して難溶性にする(耐性を増す)ステップ205と、ネガレジスト3及びポジレジスト4をドライ現像(エッチング)するステップ206とを行っている。従って、ドライ現像によってネガレジスト3の感光部3A、及びポジレジスト4の非感光部4Aで覆われていた非現像部3Bのみが残されるため、ウエハW上に効率的に露光装置の解像限界の1/2の周期のレジストパターンを形成できる。
【0100】
なお、ネガレジスト3の感光部3Aの現像液に対する耐性を増すためには、シリル化以外のプロセスを用いてもよい。
【0101】
(3)また、ステップ206では、ネガレジスト3及びポジレジスト4をウエハW表面に垂直なZ方向に現像(エッチング)しているため、図11(B)に示すように、断面形状の輪郭がウエハW表面に垂直な良好なレジストパターンを形成できる。
【0102】
ただし、レジストパターンの断面の輪郭はウエハW表面にほぼ垂直であればよいため、現像の方向もほぼZ方向に平行であればよい。特にネガレジスト3及びポジレジスト4の厚さが薄くなるほど、現像の方向のZ方向からのずれの許容量は増加する。
【0103】
(4)また、本実施形態では、ステップ206の現像として、ポジレジストとネガレジストの両方に作用するエッチングであるドライ現像を行っている。その代わりに、ネガレジスト3だけに対して作用する現像(プラズマ状の現像液を噴き付ける異方性のドライ現像)を行ってもよい。この場合には、現像後に、ポジレジスト4の非感光部4Aが残されるため、非感光部4Aのみを剥離する工程を実行することが好ましい。
【0104】
また、異方性の現像としては、その他に、現像液を高圧の蒸気状にして、ウエハの上方(Z方向)から噴射してもよい。この場合には、化学反応と物理作用との相乗効果で所定の部分(ネガレジスト3に関しては、感光部3Aと非現像部3Bとの間の部分)のみが脱落する。
【0105】
(5)また、図9(B)に示すように、ウエハW上の第1層はネガレジスト3で、第2層はネガレジスト3より高感度のポジレジスト4であるため、ステップ206の後に、露光パターンの周期よりも小さい、この実施形態では露光パターンの周期、の1/2の周期のレジストパターンを形成できる。
【0106】
なお、図9(B)では、ポジレジスト4における光吸収などによる照明光(投影像)の光量(光量分布曲線5)の減少は無視しているが、実際にはポジレジスト4を通過する際投影像の光量が減少するため、ネガレジスト3の感度はもっと高く(感光レベルThnをもっと低く)設定できる場合がある。
【0107】
(6)なお、ウエハW上の第1層としてポジレジスト4を塗布し、第2層としてネガレジスト3を塗布し、ポジレジスト4の感度をネガレジスト3より高く(感光レベルThpを感光レベルThnより低く)設定してもよい。この構成でも、順序は異なるがステップ204〜206の各に従う処理を行うことによって、ウエハW上に周期Pのレジストパターンが形成できる。この場合には、ステップ205に対応する工程で、ポジレジスト4の非感光部4Aに対してシリル化等のエッチング液に対する耐性向上処理が施される。
【0108】
(7)また、図9(B)の場合、ネガレジスト3の感度は、感光部3Aと非感光部(溶解部)との幅の周期方向(X方向)の比がほぼ1:3となるように低く設定され、ポジレジスト4の感度は、感光部(溶解部)と非感光部4Aとの幅のX方向の比がほぼ3:1になるように高く設定されている。これによって、ウエハW上に周期が1/2で、凸部と凹部との幅の比がほぼ1:1の微細なレジストパターンを高精度に形成できる。
【0109】
(8)本実施形態では、ウエハ上に1次元のL&Sパターンの像を露光しているが、ウエハW上にX方向、Y方向に周期性を持つ2次元のL&Sパターン等の像を露光してもよい。この場合には、最終的にウエハ上に2次元の微細なパターンを形成できる。
【0110】
(9)なお、ネガレジスト3及び/又はポジレジスト4は、それぞれ多層レジスト膜であってもよい。
【0111】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態につき図13を参照して説明する。図13(A)〜(C)において図9(A)〜(C)及び図10(A)〜(C)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。本実施形態においても、図1(A)のパターン形成システムを使用するが、以下で説明するように、ウエハW上にパターンを形成する方法の一部が図12とは異なっている。
【0112】
即ち、本実施形態では、図12のステップ201とステップ202との間で、ネガレジスト3上に図1(B)の露光装置100の照明光ILに対して所定の透過率を持つ減光層8を形成する。この結果、ステップ202に対応する工程が終了すると、図13(A)に示すように、ウエハW上にはネガレジスト3、減光層8、及びポジレジスト4が積層して形成される。減光層8は、ポジレジスト4用の現像液によって除去(溶解)される材料から形成され、その厚さによって透過率を制御できる。この点で、減光層8は、ネガレジスト3の感度調整層または露光量調整層として機能する。減光層8の透過率は、一例としてポジレジスト4の感度とネガレジスト3の感度とが等しくなるように、例えば1/6(17%)程度に設定される。従って、本実施形態では、ネガレジスト3及びポジレジスト4の感度(感光レベル)は等しい。
【0113】
また、ステップ203に対応して、本実施形態でも、図13(B)に示すように、ウエハWのポジレジスト4が、ほぼ正弦波状の光量分布曲線5Pで表されるX方向に周期2PのL&Sパターンの像で露光される。これと同時に、減光層8の作用によって、ウエハWのネガレジスト3が、光量分布曲線5Pのレベルを例えば1/6程度に圧縮した光量分布曲線5Nで表される周期2PのL&Sパターンの像で露光される。
【0114】
この場合、ポジレジスト4の感光レベルThpは、光量分布曲線5Pのうちで、X方向の幅が3P/2の周期的な領域6A(感光部)がその感光レベルThp以上となるように設定されている。また、ネガレジスト3の感光レベルThnは、感光レベルThpと同じであるが、光量分布曲線5Nのうちで、X方向の幅がP/2の周期的な領域7A(感光部)がその感光レベルThn以上となるように設定されている。従って、光量分布曲線5Pが位置Xに関して正弦波であると仮定して、光量分布曲線5Pの最小値を0、最大値をEPとすると、感光レベルThp,Thnはそれぞれ上記の式(1)で表される。
【0115】
この後、図12のステップ204に対応してポジレジスト4の現像を行った後、ステップ205に対応してシリル化ガスSGを用いてネガレジスト3のシリル化を行う。この結果、図13(C)に示すように、ウエハW上では、ネガレジスト3の幅P/2の感光部3A上にシリル化部3Sが形成され、ネガレジスト3上に幅P/2のポジレジスト4の非感光部4Aが残される。なお、ネガレジスト3と非感光部4Aとの間には減光層8の境界部8Aが残される。この境界部8Aはこのまま残されていてもよいが、ステップ206に対応する工程で除去してもよい。従って、この後は、図12のステップ206から208の工程を実行することによって、ウエハW上に周期PのL&Sパターンを形成できる。
【0116】
本実施形態によれば、第4の実施形態の作用効果に加えて以下の作用効果を有する。
【0117】
(1)ウエハW上のネガレジスト3とポジレジスト4との間に、照明光(露光光)に対して所定の透過率を持つ減光層8(中間層)が形成される。従って、減光層8の透過率を制御することによって、例えばネガレジスト3及びポジレジスト4の感度(感光レベル)を等しく設定しても、ウエハ上に露光装置100の解像限界を超える微細なパターンを形成できる。これによって、ネガレジスト3及びポジレジスト4の管理が容易になり、露光装置100では露光量の制御を高精度に行うのみで、ウエハ上にL&Sパターンを高精度に形成できる。
【0118】
即ち、例えばネガレジスト3及びポジレジスト4の感度を等しくした容易なリソグラフィ・プロセスを用い、かつ重ね合わせ露光を行うことなく、露光装置の解像限界を超えるような微細パターンを形成できる。
【0119】
(2)また、減光層8のうちで、境界部8A以外の部分はステップ204の現像時に除去されるため、減光層8は、最終的に形成されるL&Sパターンの形状には影響を与えない。
【0120】
(3)また、図13(A)では、減光層8の下層がネガレジスト3で、上層がポジレジスト4であるため、ネガレジスト3に対する露光量が減少する。従って、ネガレジスト3及びポジレジスト4の感度を容易に等しくできる。
【0121】
また、上記の実施形態の露光装置を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図14に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光装置(EUV露光装置)または露光方法によりマスクのパターンを基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。なお、上記の実施形態の図11のステップ101〜107の工程または図12のステップ201〜207の工程は、図14のステップ223及び224中に含まれている。すなわち、本発明のパターン形成方法を用いて、この分野で行われている既知のプロセスを経て、種々のデバイスを製造することができる。
【0122】
この場合、露光装置の解像度を超える微細なパターンを有する電子デバイスを高精度に製造できる。
【0123】
上記のように第1〜第5実施形態によりパターン形成方法を具体的に説明してきたが、種々の改変や変更を加えることができる。例えば、上記各実施形態では、シリル化ガスSGとして、HMDS(ヘキサメチルジシラン)を用いたが、これに代えて、例えば、テトラメチルジシラザン(tetramethyldisilazane)、ジメチルシリルジメチルアミン(dimethylsilyldimethylamine)、ジメチルシリルジエチルアミン(dimethylsilyldiethylamine)、トリメチルシリルシ゛メチルアミン(trimethylsilyldimethylamine)、トリメチルシリルジエチルアミン(trimethylsilyldiethylamine)などを用い得る。
【0124】
上記各実施形態では、局所液浸型の露光装置を例に挙げて説明したが、ウエハ(基板)の全体を液体に浸漬するタイプの液浸露光装置にも適用することができる。また、上記実施形態では、投影光学系の先端の光学素子の像面側の光路空間(先端の光学素子と基板との間の空間)に液体を満たしていたが、例えば米国特許出願公開第2005/0248856号などに開示されているように、先端の光学素子の物体面(入射面)側の光路空間も液体で満たす投影光学系を露光装置に採用することもできる。また、本発明は、投影光学系と基板との間の液浸領域をその周囲のエアーカーテンで保持する液浸型の露光装置にも適用することができる。
【0125】
本発明は、走査露光型の投影露光装置のみならず、ステップ・アンド・リピート型のような一括露光型(ステッパー型)の投影露光装置を用いて露光する場合にも適用することが可能である。また、本発明は、液浸型の露光装置で露光を行う場合の他に、ドライ型の露光装置で露光する場合にも適用できる。さらに、本発明は、波長数nm〜100nm程度の極端紫外光(EUV光)を露光ビームとして用いる投影露光装置で露光を行う場合にも適用できる。
【0126】
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンの像を投影する露光装置(リソグラフィシステム)を用いる場合にも本発明を適用することができる。
【0127】
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置の製造プロセスや、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスの製造プロセスにも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、製造工程にも適用することができる。すなわち、パターンが形成される物体は、ウエハに限られるものでなく、例えばガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなどでも良いし、その形状も円形に限らず矩形などでも良い。
【0128】
また、本発明のパターン形成方法は、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されるように、複数のステージを備えるマルチステージ型の露光装置、あるいは、例えば国際公開第1999/23692号パンフレット、米国特許第6,897,963号明細書などに開示されるように、計測部材(基準マーク、センサなど)を有する計測ステージを備える露光装置を用いる場合にも適用することができる。
【0129】
また、照明光としてArFエキシマレーザ光などの紫外光だけでなく、電子線やイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置、X線露光装置などを本発明のパターン形成方法に用いることができる。
【0130】
上記各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターンを形成したレチクル(光透過型マスク)を用いたが、このような光透過性マスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)を用いても良い。
【0131】
なお、本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記各公報、各国際公開パンフレット、米国特許及び米国特許出願公開明細書における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0132】
このように、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のパターン形成方法は、重ね合わせ露光を行うことなく、露光装置の解像限界を超えるような微細パターンを形成できる。それゆえ、本発明は、微細パターンを形成する技術分野、例えば、半導体産業を含む精密機器産業の国際的な発展に著しく貢献することができる。
【符号の説明】
【0134】
R…レチクル、W…ウエハ、LSP…ライン・アンド・スペースパターン(L&Sパターン)、3…ネガレジスト、3A…感光部、3B…非現像部、4…ポジレジスト、4A…非感光部、5…光量分布曲線、8…減光層、100…露光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体上にパターンを形成する方法であって、
前記物体上に感光特性の異なる第1及び第2の感光層を形成することと、
パターンを介して前記第1及び第2の感光層を露光することと、
前記第1及び第2の感光層を現像することと、
を有するパターン形成方法。
【請求項2】
前記現像は、前記第1及び第2の感光層を所定方向に現像することを含む請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記所定方向は、前記物体の表面に垂直な方向である請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記現像を、前記第1及び第2の感光層を可溶性を制御しながら行う請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記現像は、
前記第2の感光層を現像する第1の現像と、
前記第1の感光層の感光部又は非感光部の表面を難溶性にすることと、
前記第1及び第2の感光層を現像する第2の現像と、を含む請求項4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記難溶性にすることは、前記第1の感光層の表面にシリコンを含む気体を導入し、前記物体を加熱することを含む請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記第2の現像は、前記第1及び第2の感光層を所定方向に除去することにより行う請求項5又は6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記所定方向は、前記物体の表面に垂直な方向である請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記第1の感光層はネガ型で、前記第2の感光層はポジ型である請求項1〜8のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記第1の感光層は前記第2の感光層よりも低感度である請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記第1の感光層はポジ型で、前記第2の感光層はネガ型である請求項1〜10のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記第1の感光層は前記第2の感光層よりも高感度である請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の感光層は感度が異なる請求項1〜12のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の感光層の間に、露光光に対して所定の透過率を持つ中間層を形成する請求項1〜13のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記中間層の一部を、前記現像で除去する請求項14に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記第1の感光層はネガ型で、前記第2の感光層はポジ型である請求項14又は15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記パターンを介した露光光の前記物体上での光強度分布の周期に対して、現像後の前記物体上の感光層の周期はほぼ1/2である請求項1〜16のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
物体上にパターンを形成する方法であって、
前記物体上に第1の感光層、中間層、及び第2の感光層を形成することと、
パターンを介して前記第1の感光層、前記中間層、及び前記第2の感光層を露光することと、
前記第1の感光層、前記中間層、及び前記第2の感光層を現像することと、
を有するパターン形成方法。
【請求項19】
前記現像は、前記第1及び第2の感光層を所定方向に現像することである請求項18に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
前記所定方向は、前記物体の表面に垂直な方向である請求項19に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
前記現像は、前記中間層を除去することを含む請求項18〜20のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項22】
前記現像は、前記第1の感光層、前記中間層、及び前記第2の感光層を可溶性を制御しながら行う請求項18に記載のパターン形成方法。
【請求項23】
前記現像は、
前記第2の感光層を現像する第1の現像と、
前記第1の感光層の感光部又は非感光部の表面を難溶性にすることと、
前記第1及び第2の感光層を現像する第2の現像とを含む請求項22に記載のパターン形成方法。
【請求項24】
前記難溶性にすることは、前記第1の感光層の表面にシリコンを含む気体を導入し、前記物体を加熱する請求項23に記載のパターン形成方法。
【請求項25】
前記第2の現像は、前記第1及び第2の感光層を所定方向に除去することで行う請求項23又は24に記載のパターン形成方法。
【請求項26】
前記所定方向は、前記物体の表面に垂直な方向である請求項25に記載のパターン形成方法。
【請求項27】
前記第1の現像は、前記中間層の少なくとも一部を除去するを含む請求項23〜26のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項28】
前記中間層は、露光光に対して所定の透過率を有し、
前記第1の感光層はネガ型で、前記第2の感光層はポジ型である請求項18〜27のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項29】
前記パターンを介した露光光の前記物体上での光強度分布の周期に対して、現像後の前記物体上の感光層の周期はほぼ1/2である請求項18〜28のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項30】
感光性の下層を基板上に形成することと;
感光性の上層を前記下層上に形成することと;
前記下層上に形成した前記上層を、所定パターンで光照射して前記上層及び下層を同時に感光させることと;
前記感光した上層を現像して前記所定パターンと対応する第1領域を上層に残留させることと;
前記上層の第1領域をマスクとして前記感光した下層を現像することにより、前記所定パターンと対応する第2領域及び、前記上層の第1領域の下方に位置するマスクされた領域を下層に残留させることと;
前記下層の第2領域及びマスクされた領域をマスクとして前記基板を現像することにより基板上に第2領域及びマスクされた領域に対応するパターンを形成することを含むパターン形成方法。
【請求項31】
前記下層がネガレジストであり、前記上層がポジレジストである請求項30に記載のパターン形成方法。
【請求項32】
異方性ドライエッチングにより前記上層の第1領域をマスクとして前記下層を現像する請求項31に記載のパターン形成方法。
【請求項33】
前記異方性ドライエッチングの後に、前記上層の第1領域を前記下層上から除去する請求項32に記載のパターン形成方法。
【請求項34】
前記異方性ドライエッチングの前に、第2領域をシリル化する請求項32に記載のパターン形成方法。
【請求項35】
前記異方性ドライエッチングにより下層のシリル化した領域およびマスク領域以外を除去する請求項34に記載のパターン形成方法。
【請求項36】
前記異方性ドライエッチングにより前記上層の第1領域を除去する請求項35に記載のパターン形成方法。
【請求項37】
さらに、前記下層と上層の間に遮光層を形成することを含む請求項30〜36のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項38】
さらに、前記遮光層を、前記上層を現像する際に除去する請求項37に記載のパターン形成方法。
【請求項39】
前記所定パターンが周期2Pを有する繰り返しパターンを含み、第1領域と第2領域が異なる幅を有し、第1領域と第2領域の幅の和が2Pである請求項30〜38のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項40】
前記所定パターンが、パターン化を実行する露光装置の解像限界の約1/2の周期を有するパターンである請求項30〜39のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか一項に記載のパターン形成方法を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、
前記パターンが形成された基板を処理することと、を含むデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−67979(P2010−67979A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208014(P2009−208014)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】