説明

パターン形状検査方法及びその装置

【課題】パターンの形状測定において、対象構造が計測可能か、又はどの程度の誤差が生じるかを分光反射率測定により事前に知る。
【解決手段】繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めるとともに検出時に生じる検出波長ごとのノイズの量を求め、分光反射率の情報及び検出時に生じる検出波長ごとのノイズの量の情報と、繰り返しパターンの屈折率と消衰係数とを含む光学的材質の情報及び繰り返しパターンの形状の情報とを用いて繰り返しパターンの形状を算出して所定の精度で繰り返しパターンを計測することが可能かを評価し、評価した結果所定の精度で計測可能と判定した場合に繰り返しパターンと同一のパターンが形成された基板を順次分光検出してパターンの形状を検査するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された線幅100nm以下のパターンの断面形状を検査する方法及びその装置に関し、例えば次世代のハードディスクメディアであるパターンドメディアや半導体デバイスの、パターン断面形状の検査に適したパターン形状検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(以下、HDD (Hard Disk Drive)と記す)の記録容量は、継続的に大容量化する傾向にある。しかし、従来のディスク基板上に磁性膜を成膜しただけのいわゆる連続媒体(従来のメディア)では、記録密度1Tbit/in程度が限界であり、それ以上の記録密度を実現する技術としてパターンドメディアの導入が計画されている。
【0003】
パターンドメディアとは、図1に示す様にディスク0101面上に、記録トラック0102を同心円状に形成するディスクリートトラックメディアと、記録単位(ビット)を独立させた島状のパターン0103として形成するビットパターンドメディアの2方式が検討されている。いずれの場合も、従来の連続媒体とは異なり、ディスクメディア上に数10nmピッチのパターンを形成するという特徴がある。
【0004】
そのため、従来の製造プロセスとは異なり、新たにパターン形成のためのプロセスが加わることとなり、同プロセスに起因する不良が発生することが懸念されている。例えば、図2はパターンの断面を模式的に示した図であるが、正常なパターン0201と比較してパターン断面形状が変形0202してしまうことや、パターンそのものが抜けてしまうこと0203等が欠陥として考えられる。
【0005】
これらのようなパターンの欠陥を検査する手段としては、原子間力顕微鏡(以下、AFM(atomic force microscope)と略す)や電子顕微鏡(以下、SEM(scanning electron microscope)と略す)等の手段の他に、いわゆるスキャットロメトリと呼ばれる光学式の検査方法がある。AFM及びSEMは当該技術分野において既知の技術である。
【0006】
スキャットロメトリとは一般的には、図3に示すように分光検出光学系0301で検査対象0302表面の分光反射率0303を検出し、検出した分光反射率0303に基づいて検査対象0302表面上に一様に形成された繰り返しパターン0304の断面形状を検出する手法を指す。一様に形成された繰り返しパターンの断面形状が異なると、その表面の分光反射率も異なることを利用し、検査対称表面の分光反射率から検査対象表面に一様に形成された繰り返しパターンの形状を検出することができる。検査対象の構造や材質を用いて算出した理論値(モデル)を高さや幅等の形状をパラメータとして、実際に検出した分光反射率と一致するようにパラメータを最適化することにより形状を求める。パラメータの最適化には、モデルフィッティングやライブラリマッチング等の手法が用いられる。
【0007】
光学式の手法であるスキャットロメトリは、AFMやSEMと比較して高速で検査が可能であるという特徴がある。スキャトロメトリを用いてパターンの正確な形状が計測でき、且つスループットの大きな検査方法が、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-150832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パターンドメディアは、サブストレート(基板)に磁性体等の成膜,ナノインプリント,エッチング等により表面に線幅数100nm以下のパターンを形成して製造する(プロセスの詳細は後述する)。この時、各工程にかかる時間は数秒/枚程度である。例えば全数を検査することを考えた場合、同様に数秒/枚以内で検査することが要求される。
【0010】
上述の通り、AFM,SEM又はスキャトロメトリを用いることにより、基板上に形成された線幅数100nm以下のパターンの断面形状を検査することができる。特に光学式のスキャトロメトリは、他の方式と比較して高速で多点の検査が可能である。ただし、スキャトロメトリを適用しようとする場合、検出しようとするパターンの形状変化に対して、表面の分光反射率が十分変化することが必要である。実際に分光反射率を検出する場合には、検出器等に起因するノイズ(誤差)が生じるため、表面の分光反射率が十分変化しない場合は、ノイズに埋もれてしまい、パターン形状の算出結果に誤差が生じることとなる。
【0011】
パターンの形状変化によって、表面の分光反射率が十分変化するかどうかは、対象パターンの光学的材質(屈折率及び消衰係数)やパターン形状、及び分光反射率検出時に生じるノイズの量によって決まる。ただし、それぞれ単体で決まるのではなく、複合して作用するため、対象構造が計測可能か、またはどの程度の誤差が生じるかを事前に知ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、スキャトロメトリ技術において、検査対象パターンの光学的材質(屈折率及び消衰係数)やパターン形状、及び分光反射率検出時に生じるノイズの量に基づいて、対象パターンが計測可能か、またはどの程度の誤差を生じるかを予め評価する。
【0013】
即ち、本発明では、上記した従来技術の課題を解決するために、基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンの形状を検査する方法を、繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めるとともにこの検出時に生じる検出波長ごとのノイズの量を求め、この求めた分光反射率の情報及び検出時に生じる検出波長ごとのノイズの量の情報と、繰り返しパターンの屈折率と消衰係数とを含む光学的材質の情報及び繰り返しパターンの形状の情報とを用いて繰り返しパターンの形状を算出して所定の精度で繰り返しパターンを計測することが可能かを評価し、評価した結果所定の精度で計測可能と判定した場合に繰り返しパターンと同一のパターンが形成された基板を順次分光検出し分光反射率を求めて基板上の繰り返しパターンを計測し、この計測した結果を予め設定しておいた基準と比較することにより繰り返しパターンの形状を検査するようにした。
また、本発明では、基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めることにより所定の精度で前記繰り返しパターンを計測することが可能かを評価し、この評価した結果所定の精度で計測可能と判定した場合に繰り返しパターンと同一形状のパターンが形成された基板を順次分光検出し分光反射率を求めて基板上の繰り返しパターンを計測し、この計測した結果を予め設定しておいた基準と比較することにより繰り返しパターンの形状を検査するパターン形状検査方法において、所定の精度で繰り返しパターンを計測することが可能かを評価することを、繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めるとともにこの検出時に生じるノイズの量を求め、この求めた分光反射率の情報及び検出時に生じるノイズの量の情報と繰り返しパターンの光学的材質の情報及び繰り返しパターンの形状の情報とを用いて繰り返しパターンの形状を算出し、この算出した繰り返しパターンの形状の情報を用いて所定の精度で繰り返しパターンを計測することが可能かを評価するようにした。
【0014】
更に、本発明では、基板に形成された微細な繰り返しパターンの形状を検査する装置を、基板を保持して回転し移動可能なステージ手段と、ステージ手段に保持された基板に光を照射してこの光が照射された基板からの反射光を分光して検出する分光検出手段と、この分光検出手段で分光検出して得たデータを処理して分光反射率を算出しこの算出した分光反射率のデータを用いて基板上に形成されたパターンの形状を求めるデータ処理手段と、このデータ処理手段で処理する条件を入力すると共にデータ処理手段で処理した結果を出力する表示画面を備えた入出力手段と、ステージ手段と分光検出手段とデータ処理手段と入出力手段とを制御する制御手段とを備えて構成し、データ処理手段は、基板を分光検出手段で分光検出したデータを処理して分光反射率の情報を得る分光反射率算出部と、この分光反射率算出部で算出した分光反射率の情報を用いて基板上に形成されたパターン形状の予め設定した許容精度内での計測の可否を判定し、計測条件を設定するパターン形状計測可否判定部と、このパターン形状計測可否判定部で計測可能と判定されたパターンと同一形状のパターンが形成された基板を分光検出手段で分光検出し分光反射率算出部で算出した分光反射率の情報を用いてパターン形状計測可否判定部で設定した計測条件を用いてパターンの形状を算出してこのパターンの良否を判定するパターン形状欠陥検出部とを備えて構成した。
【発明の効果】
【0015】
従来は、実際に検査して対象パターンの形状を測定し、同じ場所をSEMで断面観察する等の別の手段で測定した結果と比較することにより、計測可否や計測精度を評価する必要があったが、本発明を用いることにより、予め計測可否や計測精度を知ることができる。
【0016】
さらに、例えば所望とする計測精度がある場合、その精度を実現するにはノイズをどの程度減らす必要があるか、例えば加算平均によってノイズを減らす場合に、何回加算すればよいか等の計測条件を自動で設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】パターンドメディアの概要を示す斜視図である。
【図2】パターンドメディアの欠陥の概要を示す斜視図である。
【図3】スキャットロメトリの構成概要を示すブロック図である。
【図4】パターン形成プロセスを示す型と基板の断面図である。
【図5】磁性体パターンの形状示す断面図である。
【図6】レジストパターンの形状示す断面図である。
【図7】形状の異なる2つのパターンの表面反射率を示す断面図とグラフである。
【図8】形状の異なる2つのパターンの表面反射率を示す断面図とグラフである。
【図9】形状の異なる2つのパターンの表面反射率を示す断面図とグラフである。
【図10】本発明の実施例における検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施例におけるステージ系の概略の構成を示すブロック図である。
【図12A】本発明の実施例における検出光学系の概略の構成を示すブロック図である。
【図12B】本発明の実施例における検出光学系の対物レンズの概略の構成を示すブロック図である。
【図12C】本発明の実施例における検出光学系の分光検出器の概略の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施例における検出光学系の他の構成の概略を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施例におけるデータ処理手段の構成を示すブロック図である。
【図15A】ノイズが重畳した場合の分光反射率を示すグラフである。
【図15B】ノイズ量と波長の関係を示すグラフである。
【図16A】本発明の実施例におけるパターン形状欠陥検出処理の流れを示すフロー図である。
【図16B】本発明の実施例におけるパターン形状欠陥検出処理で、パターン形状検査の可否を判定して検査条件を設定する処理の流れを示すフロー図である。
【図17】パターンの構造の概略示す平面図である。
【図18】パターンの断面の分布を示すグラフである。
【図19】パターンの構造の概略示す平面図である。
【図20】モデル値と演算結果とを比較したグラフである。
【図21】モデル値と演算結果とを比較したグラフである。
【図22】ノイズ量と算出誤差との関係を表すグラフである。
【図23】本発明の実施例におけるデータ処理の流れを示すフロー図である。
【図24】本発明の実施例における設定画面の正面図である。
【図25】反差社率の変化量を表すグラフである。
【図26】反射率の変化量とノイズとの比表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例として、HDDパターンドメディアの検査に適用した場合について説明する。
【0019】
パターンドメディアとは、前述したように従来のメディアとは異なり、ディスク0101の表面に磁性体のパターンを形成する(図1参照)。図4はパターン形成工程を模式的に示した図である。まず、基板0400の上に形成された磁性体層0403上にレジスト0402を塗布する(a)。塗布したレジストに対して型(モールド)0401押し当てる(b)。この状態で型0401の側から露光光を照射してレジスト0402を露光し微細パターンをレジストに転写する(c)。レジスト0402に転写したパターンの凸部0405と凹部0406とのレジスト膜厚の違いにより、同じ量エッチングすると凹部0406のレジスト膜が先に無くなりその下の磁性体膜0403がエッチングされて削られ、磁性体膜0403に凹部0407が形成される。一方、パターンの凸部0405のレジスト膜は未だ残っているためにその下の磁性体膜0403はパターンの凸部0405のレジスト膜でマスクされてエッチングされない。これにより磁性体0403のパターンをディスク基板0400上に形成する(e)。最後にレジストを除去する(f)。この様なパターン形成方法をナノインプリント技術と言う。
【0020】
ハードディスクメディアは、ディスク基板0400上に形成された磁性体を磁化することにより、情報を記録する。そのため、ディスク基板0400上の磁性体の量は、記録媒体としての性能を左右する一因となる。
【0021】
従来のメディアを例として考える。磁性体層の膜厚が一定値よりも小さい場合には、磁化による記録自体はできるが、磁性体からの漏れ磁界が小さくなるために記録した情報を読み込むことができなくなる場合がある。
【0022】
パターンドメディアに関しても同様である。図5は磁性体パターンを模式的示した図である。同図(a)が正常なパターン0510であり、パターンは複数の層(図5の例では0501〜0504の4層)で構成されており、縦縞の部分が記録となる磁性体0501部分である。同図(b)に示すようにパターン0520の幅が小さければ磁性体の量が小さいため、上記のように書き込みはできるが読み込みができず不良となる可能性があり、同図(c)のようにパターン0530の幅が大きすぎると、隣接するトラックの信号をノイズとして検出してしまうため、この場合も不良となりうる。この様に、パターン形成後の磁性体パターンの形状が、記録媒体としての性能を決定する要因となる。
【0023】
パターン形状検査が必要と考えられる工程は、インプリント後のレジストパターン,エッチング後や埋め込み平坦化後の磁性体パターンであるが、磁性体パターンの形状は、主としてレジストパターンの形状によって決まるため(図4参照)、図4(d)に示すようなレジストパターンの形状を検査するのが最も効率的である。
【0024】
図6はレジストパターンを模式的に示した図であり、磁性体層0601上にレジストパターン0602が形成されている。このとき、レジストパターン0602は磁性体層0601上に直接形成されているのではなく、磁性体層とレジストパターンとの間にレジストの層0606が形成されている。レジストパターン0602の検出すべき形状は、主としてパターンの幅0603,高さ0604及び下地膜厚0605(レジストの層0606の厚さ)である。
【0025】
このような微細なレジストパターン0602の断面形状を測定する手法として、スキャトロメトリがある。スキャトロメトリとは前述の通り、検査対象の構造や材質を用いて算出した理論値(モデル)を、高さや幅等の形状をパラメータとして、実際に検出した分光反射率と一致するようにパラメータを最適化することにより、検査対象表面上に一様に形成された繰り返しパターンの断面形状を求めることができる。スキャトロメトリは当該技術分野において既知の技術である。
【0026】
スキャトロメトリにおいて、形状計測精度を決定する要因として次の2つが考えられる。一つは、対象パターンの形状変化に対する表面の分光反射率の変化が検出可能なほど変化するかである。形状変化に対して、分光反射率がほとんど変化しない場合には、形状の変化を検出することはできない。
【0027】
分光反射率の変化量に影響を及ぼす要素は、測定対象の光学的な材質(屈折率と消衰係数)と、パターンの形状である。パターンの形状が同じでも材質が異なれば、形状変化に対する分光反射率の変化が異なる。図7は、ある材質で構成された、高さの異なるパターン0701とパターン0702それぞれの表面の分光反射率を示したものである。グラフの中の実線が高さが比較的高いパターン0702の分光反射率を示し、グラフに中の点線が高さが比較的低いパターン0701の分光反射率を示す。同図に示すようにパターン形状が異なると分光反射率も異なることがわかる。一方、図8には、図7に示したパターン0701および0702とそれぞれ同じ形状のパターン0801と0802を示す。パターン0801及び0802の形状の変化は図7と同じであるが、パターンを構成する材質が異なる場合の分光反射率の変化を示している。グラフの中の実線が高さが比較的高いパターン0802の分光反射率を示し、グラフに中の点線が高さが比較的低いパターン0801の分光反射率を示す。同図でも、パターン形状の変化によって、分光反射率が変化することがわかる。
【0028】
しかし、図7と図8とを比較すると、パターン形状の変化は同じであるにもかかわらず、パターンを構成する材質が異なることにより、分光反射率そのものが異なるだけでなく、その変化の仕方も異なることがわかる。
【0029】
また、材質が同じでもパターンの形状が異なれば形状変化に対する分光反射率の変化が異なる。図9は、パターン0901及び0902の材質は図7で説明したパターン0701および0702と同じであるが、形状が異なる場合の分光反射率の変化を示している。図7はパターンの断面形状は台形であるが、図9では矩形である。ただし、高さ変化は図7と同じである。図7に示した分光反射率のグラフと図9の分光反射率のグラフを比較することにより、同じ形状変化(この場合は、パターンの高さの変化)の場合でも、パターンの形状が異なる場合には、分光反射率そのものが異なるだけでなく、その変化の仕方も異なることがわかる。
一方、形状計測精度を決定するもう一つの要因は、分光反射率を検出する際の、検出器等に起因するノイズ(誤差)である。図15Aはノイズが重畳した場合の分光反射率を示している。同図中の点線で示したグラフがノイズのない場合の分光反射率を、実線がノイズの重畳した場合の分光反射率を示している。同図に示す通り、ノイズが重畳することにより分光反射率に誤差が生じる。ノイズ量が大きい場合には、正確な分光反射率を検出することができないため、形状算出結果に誤差を生じる。
【0030】
上記の形状計測精度を決定する要因は、それぞれ単独で影響するのではなく、複合して影響する。例えば、図15Bは図15Aに示すようにノイズの重畳した分光データを20回検出し、各波長での反射率値のばらつきを3σで表したグラフである。同図から、300nm以下の短い波長で大きなノイズが重畳していることがわかる。この場合、パターンの形状変化による分光反射率の変化が上記300nm以下で大きく変化し、その他の波長ではあまり変化が生じない場合には、結果として形状算出結果に誤差を生じることとなる。
【0031】
従来は、実際にスキャトロメトリによる測定条件を設定して測定を実施し、スキャトロメトリで測定した形状と、SEM観察等で測定した形状とを比較して、測定の可否や測定精度を評価し、測定条件の最適化をしていた。しかし、この方法では、SEM観察等の別手段での測定が必要なため、時間と手間がかかるという課題があった。
【0032】
本発明では、検査対象パターンの光学的材質(屈折率及び消衰係数)やパターン形状、及び分光反射率検出時に生じるノイズの量に基づいて、対象パターンが計測可能か、またはどの程度の誤差を生じるかを予め評価する。以下に、本発明の実施例を示す。
【0033】
まず始めに、本発明によるパターン形状検査装置について説明する。図10は本発明の検出方法を用いたパターン形状検査装置の構成を示したものである。本発明による検査装置は、検査対象1005に検出光を照射し検査対象1005からの反射光を分光検出する分光検出光学系1001と、検査対象である磁気ディスク1005を保持し磁気ディスク1005の表面の任意の位置で分光検出できるように光学系1001との位置を相対的に移動できるステージ部1002、分光検出光学系1001やステージ部1002の動作を制御する制御部1003及び分光検出光学系1001で検出した分光検出データに基づいて対象表面に形成されたパターンの形状または形状の測定等をするデータ処理部1004で構成される。
【0034】
図11はステージ部1002の一例を示した概要図で、同図は検査対象1005がハードディスクの様な円板状の例を示している。この場合、ステージ部1002は磁気ディスク1005の表面であるディスク面と平行に移動するXステージ1101と、ディスク面に垂直な方向に移動するZステージ1102およびディスクを回転させるθステージ1103を備えて構成される。
【0035】
Zステージ1102は、分光検出光学系1001のフォーカス位置に検査対象1005を移動させるためのものであり、Xステージ1101とθステージ1103とは円板状の検査対象1005の任意の位置を分光検出光学系1001の検出位置に移動させるためのものである。検査対象1005を移動させる方法としては、XYステージを用いる方法も考えられるが、検査対象1005がハードディスクの場合には、形状が円板状であり、検査対象1005上に形成されたパターンも同心円状に形成されていることからXθステージの方が適している。例えば円板状の検査対象表面全面を高速に検査することを目的とした場合には、Xθステージを同時に動かし、ディスク表面をらせん状に分光検出すれば効率的である。
【0036】
図12は本発明による分光検出光学系1001の一例を示した図である。同図に示すように分光検出光学系1001は主として、光源1201、ハーフミラー1202、偏光素子1203、対物レンズ1204および分光器1205を備えて構成される。光源1201から発射された光はコリメートレンズ1206で平行光とされた後、ハーフミラー1202に入射して入射光量の半分がハーフミラー1202で反射されてその向きをかえ、偏光素子1203および対物レンズ1204を介して検査対象ディスク1005に照射される。検査対象ディスク1005からの反射光は再び対物レンズ1204および偏光素子1203を通り、ハーフミラー1202に入射して入射光量の半分がハーフミラー1202を透過して結像レンズ1207に入射して分光検出器1205に導かれる。
【0037】
このとき、分光検出器1205の入射口1208の位置を結像レンズ1207の結像位置としておくと、入射口1208の形状よって分光検出する領域を制限することができる。例えば、入射口1208の大きさを直径600μmの円形とし、結像面での倍率を20倍とすると、分光検出領域の大きさは検査対象ディスク1005上で直径30μmとなる。
検出波長帯域として200nm付近の波長を利用しようとする場合、適用できる光学素子等は限られたものとなる。光源には、波長200nm付近以上の光を射出するキセノンランプや重水素ランプ等を用いることができる。ただし、検査対象によっては波長400nm程度以上でも十分性能を発揮できる場合もあり、その場合はハロゲンランプ等の可視光から赤外光の光を射出する光源を用いてもよい。
【0038】
本実施例の光学系では対物レンズ1204に図12Bに示すような反射型対物レンズを用いている。一般的に用いられる光透過型のガラス(石英)レンズで構成された屈折型の対物レンズでは200nm付近から可視光までをブロードに適用できるものはほとんど無い。一方、反射型対物レンズは凹面ミラー1211と凸面ミラー1212の組合せで構成されており、波長200nm付近から可視光までをブロードに使用することができる。
【0039】
分光検出器1205は図12Cに示すように、内部に凹面回折格子1221とCCDリニアセンサ1222を備え、検査対象ディスク1005からの反射光が入射する部分には入射口1208を設けた視野絞り1223が備えられている。視野絞り1223とCCDリニアセンサ1222とは結像レンズ1207に対して共役な位置関係にある。分光検出器1205は、通常市販されているもので、CCDリニアセンサ1222による検出のサンプリングレートが最大で数100kHz程度のものが一般的に入手可能である。さらにサンプリングレートを高くするためには、CCDリニアセンサ1222に替えて、ホトマルをアレイ状に並べた素子を適用すれば可能である。
【0040】
上記に説明した分光検出光学系1001は、ブロードな波長帯域を分光して検出する場合を示しているが、複数の離散的な波長の光を検出する方法も考えられる。例えば図13に示す様に、それぞれ異なる波長帯域のレーザを発射する複数のレーザー光源1301−1〜3から発射された光を、ダイクロイックミラー1302−1,2を用いて同一光軸上に重ね合わせて検出光としてハーフミラー1302に入射させ、ハーフミラー1302で反射した光を偏光素子1203を透過させて一定の偏光の状態にした後、対物レンズ1204を解して試料1005に照射する。試料1005からの反射光のうち対物レンズ1204に入射した反射光を、偏光素子1203を透過させて一定の偏光の状態にした後、ハーフミラー1302で入射光量の半分を透過させて結像レンズ1207を透過させた後、ダイクロイックミラー1303−1、2を用いて波長ごとに分離して複数の検出器1304-1〜3で波長ごとに検出する方法がある。同図では光源として3つのレーザーを用いた場合を示しているが、離散的な波長の数を3つに限定するものではない。
【0041】
次に、データ処理部1004の構成を図14に示す。データ処理部1004は、分光検出器1205からの出力を受けて分光反射率を算出する分光反射率算出部1401、検査対象である磁気ディスク1005上に形成された微細な繰り返しパターンの形状を許容精度の範囲内で検出することができるか否かを判定するパターン形状計測可否判定部1410、パターン形状計測可否判定部1410で許容精度の範囲内で検出することができると判定されたパターンと同じ形状のパターンが形成された検査対象の磁気ディスクをパターン形状計測可否判定部1410で設定した条件に基づいて順次検査するパターン形状欠陥検出部1420、データ処理手段1004で処理する条件を入力すると共にデータ処理手段1004で処理した結果を出力する表示画面1431を備えた入出力部1430を備えている。
【0042】
そして、パターン形状計測可否判定部1410は、分光検出器1205から出力される検出信号に含まれるノイズの検出波長ごとの分布を求めるノイズ分布算出部1411、分光反射率算出部1401で求めた分光反射率分布とノイズ分布算出部1411で求めた検出波長ごとのノイズの分布情報を用いてノイズを含んだパターン形状を算出するパターン形状算出部1421、パターン形状算出部1421で算出したノイズを含んだパターン形状に基づいて微細な繰り返しパターンの形状を予め許容精度の範囲内で検出することができるか否かを判定する計測可否判定部1413を備えている。
【0043】
また、パターン形状欠陥検出部1420は、計測可否判定部1413で許容精度の範囲内で検出することができると判定されたパターンと同じ形状のパターンが形成された検査対象の磁気ディスクを分光検出した分光検出光学系1001の分光検出器1205からの出力を受けて分光反射率算出部1401で算出した分光反射率のデータを入力して検査パターンの形状を算出する検査パターン形状算出部1421と、検査パターン形状算出部1421で求めた検査パターンの形状を予め記憶した置いた基準データと比較して算出されたパターン形状が基準の範囲内に入っていれば良品と判定し、基準の範囲から外れている場合にはその基板を不良品と判定するパターン良否判定部1422を備えている。
【0044】
次に、図16Aを用いて、本実施例による基板上に形成された微細な繰り返しパターンの形状検査を行う手順を説明する。
【0045】
先ず、分光検出光学系1001で検出した分光波形データをデータ処理部1004の分光反射率算出部1401で処理して分光反射率を算出し、この算出した分光反射率データを用いてパターン形状計測可否判定部1410で検査対象パターンの形状検査が可能であるか否かをチェックする(S1610)。
【0046】
次に、S1610で形状検査が可能であると判定された場合には、S1610で生成した検査条件を設定する(S1620)。次に、この設定した条件で微細な繰り返しパターンが形成された基板の検査を開始し(S1630)、分光検出光学系1001で検出した分光波形データをデータ処理部1004の分光反射率算出部1401で処理して分光反射率を算出し、この算出した分光反射率データを用いてパターン形状欠陥検出部1420で基板を順次検査する。検査対象の基板がなくなるまでこの検査を繰り返し(S1640)、検査対象基板が無くなった時点で検査を終了する。
【0047】
基板の検査工程(S1630)においては、分光反射率を測定して算出されたパターン形状の各部(パターン高さ、パターンの幅など)の値を予め記憶した置いた基準データと比較して算出されたパターン形状が基準の範囲内に入っていれば良品と判定し、基準の範囲から外れている場合にはその基板を不良品と判定する。
【0048】
次に、図16Aの検査対象パターンの形状検査が可能であるか否かをチェックする工程(S1610)について、その詳細なフローを図16Bを用いて説明する。
【0049】
同図に示すように、まず必要な情報として、計測対象の光学的な材質(屈折率及び消衰係数)及び高さや幅等の形状の範囲を入出力部1430から入力する(S1601)。材質は、検出する分光反射率と同じ波長の値が必要となる。ただし、分光反射率と同じ波長のデータが得られない場合は、内挿や外挿によって、材質の値を補正すれば良い。
【0050】
形状は、パターンの平面形状と断面形状を入力する。平面形状としては、図17に示すようにパターン単体1701の平面形状1702と複数のパターンの配置1703を設定する。同図では、パターンの平面形状の例として、円形を示しているが、楕円,四角形その他の形状を設定可能とする。また、パターンの配置としては、同図はあくまで例であり、同図に示すような配置の他に格子状に配置する等も可能である。
【0051】
一方断面形状は、図18に示すようにパターンの高さ方向に対する幅の分布1801や、図19に示すように複数の台形1901〜1903の重ね合わせやエッジ部丸み半径1904等を入力する。パターン形状を台形で近似することにより、形状を表すパラメータを減じることができる。同図では、複数の台形として3つの台形の場合の例を示しているが、3つの限定するものではない。
【0052】
また一方で、分光反射率のノイズを入力する(S1602)。分光反射率のノイズは、上記光学系等で検出して評価する。具体的には、分光検出光学系1001で例えば20回分光検出して分光反射率算出部1401で20回分の分光反射率を検出し、ノイズ分布算出部1411で各波長での20回のデータから標準偏差(σ)を計算することにより図15に示した様なノイズ分布を検出することができる。
【0053】
上記データに基づいてパターン形状算出部1412において、ノイズが重畳した実検出相当の分光反射率を算出することができる。具体的には、材質と形状データからRCWA(Rigorous Coupled-Wave Analysis)等の手法を用いることにより、表面の分光反射率の理論値を求めることができる。分光反射率の理論値は、上記パターン形状の範囲内の値で、任意の分解能で算出をしておく。例えば、幅の範囲が20〜30nmで1nmの分解能とした場合は、幅のバリエーションは11通りとなる。高さやその他の形状についても同様である。
【0054】
次に、実検出相当とするために、パターン形状算出部1412において、算出した分光反射率の理論値にノイズを重畳する(S1603)。具体的には、前述したノイズの標準偏差(σ)から例えば乱数発生関数等の手段を用いてノイズを作りだし、上記分光反射率の理論値に重畳する。結果としては、図15Aに示すような、点線1401で表されているノイズのない分光反射率(理論値)に対して、実線1402で表されている計算で求めたノイズを重畳したデータを求めることができる。理論値重畳するノイズは、分光反射率毎に変えてもよいし、同じ分光反射率に異なるノイズを重畳したデータを複数作製してもよい。要は、ノイズによる形状算出結果のばらつきを評価できればよい。
【0055】
続いて、パターン形状算出部1412において、算出した実検出相当の分光反射率データに対して、スキャトロメトリと同様にモデルフィッティングまたはライブラリマッチング等の手法を用いて、パターン形状を算出する(S1604)。この時、算出される値は、分光反射率に重畳されたノイズの影響で、誤差を含む値となる。
【0056】
次に、パターン形状算出部1412において、S1604で算出した(誤差を含む)値と、ノイズを重畳する前の分光反射率の理論値を算出する際に用いた形状の値とを比較して、算出誤差を求め、これを評価する(S1605)。具体的には、図20に示すように、横軸に理論値算出に用いた形状の値をとり、縦軸に算出結果をとってグラフに表す。この時、縦軸方向のばらつきが、ノイズによる算出ばらつきとなる。なお、理想的にはグラフがy=xの線上となることが望ましいが、上記ばらつきの他に、オフセット的に誤差が生じる場合が考えられる。オフセット誤差は別途評価することにより、キャンセルすることができる。
【0057】
最後に、計測可否判定部1413において、このノイズによる算出のばらつきから、許容誤差の範囲内での検出が可能か否かを判定し、許容誤差の範囲内での検出が可能な場合には検出誤差(精度)を推定し(S1606)、検出時間や演算波長などの検出条件を作成する(S1607)。この最後のステップS1607は、図16Aで説明した検査条件設定のステップ(S1620)に相当する。
【0058】
上記グラフに基づいて、対象構造の形状計測可否及び計測精度を評価することができる。
同グラフにおいて、算出値の誤差が大きく、y=xの線から大きくばらついて線形性が確認できない場合には、計測不可と判定することができる。また、算出結果のばらつきに対して、例えば3σを算出することにより、実際に検出した場合と同様の条件での計測ばらつき(誤差)を評価することができる。
【0059】
従来は、実際に検査して対象パターンの形状を測定し、同じ場所をSEM観察する等の別の手段で測定した結果と比較することにより、計測可否や計測精度を評価する必要があったが、本発明を用いることにより、予め計測可否や計測精度を知ることができる。
【0060】
図21は、分光反射率の理論値に重畳するノイズの大きさを小さくして、上記と同様に評価した結果を示している。同図に示す通り、重畳するノイズ量が小さくなるに従って、計測誤差も小さくなることがわかる。
【0061】
図22はノイズの大きさと算出誤差との関係を示した図である。同図から、分光反射率のノイズが小さくなると計測誤差も小さくなることが確認でき、ノイズの大きさと計測誤差とに相関があることがわかる。
【0062】
このことから、所望の計測精度を得るには、ノイズをどの程度にしなければならないかを知ることができる。例えば、図22で、計測誤差(3σ)として1nm以内を得るには、ノイズの量をM以下とすれば良い。
【0063】
例えば、所望の精度で測定しようとした場合に、その精度を実現するのにはノイズが多きい場合には、ノイズの低減が必要となる。光学系や回路で生じるノイズを低減することは比較的困難であるが、検出データを加算平均することでノイズを低減することができる。一般的にランダムなノイズの場合、加算平均回数をNとすれば、ノイズはNの平方根の逆数倍となる。例として4回の加算平均をすれば、ノイズは1/2倍となる
数1に、現状のノイズNpreと所望の精度を実現するノイズNobjとから、加算回数Nを求める式を示す。この式を用いれば、所望の精度を実現するための計測条件の一つを自動で設定することが可能となる。
【0064】
【数1】


上記加算回数Nを求めるための手順をまとめると図23となる。まず、上記手順に従って図22に示す関係を評価しておく(S2301)。次に所望の計測精度(計測誤差(3σ))を設定し、許容ノイズ量を求める(S2302)。最後に、数1に基づいて加算回数Nを決定する(S2303)。
【0065】
図24は本発明による、計測可否及び計測精度の評価や加算回数の決定をするための設定画面2400の一例を示す。設定画面2400には、パターンの断面形状の模式図を表示する領域2401とパターン層数や下地層数を入力する領域2411、パターン配置の模式図を表示する領域2402とパターン配置の種類を入力する領域2412、検出波長とノイズ量との関係のグラフを表示する領域2403と検出回数を入力する領域2413、ノイズ量と検出誤差との関係を示すグラフを表示する領域2404と許容精度などを入力する領域2414が表示される。
【0066】
このような設定画面2400上で、図16で説明したフローに従って、まずS1601で、領域2411に計測対象の光学的な材質(屈折率及び消衰係数)及び高さや幅等の形状の範囲、領域2412にパターン配置の種類を入力する。領域2412に入力するパターン配置の平面構造の種類としては、そのパターンの平面形状(円形,四角形等)と、配置を入力する。領域2411に入力するパターンの断面構造としては、まず、パターンの下地の層数とそれぞれの材質を、次にパターンの総数と材質及びそれぞれの断面形状を入力する。図24では入力した情報に基づいて、領域2401と領域2402とにパターンの形状が表示される。
【0067】
次に、S1602において、分光反射率に重畳するノイズの量を検出する。検出は、例えば反射率の基準となるSi基板の表面の分光検出を20回繰り返し行って20回分の分光反射率を求め、この求めた20回分の分光反射率の各波長でばらつき(σ)を求めることにより検出することができる。例えば、図24に示す通り、領域2413に検出回数を入力し「ノイズ検出開始」ボタン2423をクリックすることにより、検出を開始し、検出した分光反射率の各波長におけるばらつき(σ)を領域2403にグラフで表示する。
【0068】
続いて、入力領域2414の許容精度入力領域2431に所望の計測精度(許容誤差)の値を入力して「評価開始」ボタン2424をクリックすることにより、S1603において、領域2411、2412,2413で入力した情報に基づいて検出した結果からノイズ重畳分光反射率を算出し、その結果に基づいてS1604においてパターン形状を算出し、S1605で算出誤差を評価し、S1606で検出可否の判定などの評価を実行する。評価の間は特に画面上の動きはないが、例えば図24に示すように、進行状況を示すバー表示2405すると進行状況が確認しやすい。
【0069】
評価のための計算が終了後に結果を表示する。まず、評価の算出結果から計測精度表示領域2432に算出した計測精度を表示し、許容精度入力領域2431から入力した所望の計測精度(許容精度)と比較して所望の値以上である場合は計測可否表示領域2433に計測不可を、以下である場合は計測可能であることを示す。図24では例として、表示領域2433に「OK」/「NG」で表示すればよい。
【0070】
「NG」の場合には必要に応じて、加算回数Nを評価する。図24に示す「評価開始」ボタン2425をクリックすることにより、図23に示す手順に従って演算を実施し、加算回数Nを結果として表示領域2434に表示する。
【0071】
次に、本発明の実施例として、演算波長の最適化を実施した場合の例を示す。RCWA等の分光反射率を算出する演算は、演算量が大きく計算時間がかかる。そのため、例えば演算対象とする波長の数を減らすと演算時間も短くすることができる。
【0072】
以下に、演算に用いる波長を最適化する方法を示す。前述の通り、パターン形状の変化によって、表面の分光反射率がほとんど変化しない場合、または変化する波長の場合でもその波長の反射率に重畳するノイズが大きい場合には、その波長を演算に用いても計測精度に影響しない、または計測誤差増大の要因となる。
【0073】
そこで、ノイズ量と反射率の変化量とから、演算に用いる波長を最適化する。具体的には、図15に示すようなノイズ量を評価し、次にシミュレーションに基づいて図25に示すような形状変化に対する反射率の変化量を評価する。両図を比較して、その比がしきい値以上の波長のみを使用することが考えられる。
【0074】
図26は波長選択の画面の一例を示す。同図に示すように、しきい値を設定し、ノイズ量と反射率の変化量との比が、しきい値以上となる波長範囲を表示する。このように、ノイズ量と反射率の変化量とから、演算に用いる波長数を最適化して減じることができる。演算に用いる波長数を減じることができれば、前述した計測可否や計測精度の評価のための演算量を減らすことができるため、評価時間を短縮することができる。
【0075】
図26に示した波長選択の画面に表示されたノイズ量と反射率の変化量との比と波長との関係を示すグラフ上で演算に用いる波長範囲を指定すると、図24に示した設定画面2400の波長範囲表示領域2435に指定した波長範囲が表示され、「評価開始」ボタン2426をクリックすることにより設定した波長範囲での演算を開始して、計測精度や計測可否の判定を実行し、その結果を計測精度表示領域2432や計測可否表示領域2433に表示する。
【0076】
以上のようにして加算平均回数Nと演算する波長範囲を決定し、これを図16Aで説明したS1620で検査条件としてデータ処理部1004に設定する。
【0077】
以上が発明の説明であるが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0078】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0079】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0080】
0101…パターンドメディアディスク 0102…トラックパターン 0103…ビットパターン 0201…正常なパターン断面 0202…形状が変形したパターン断面 0203…パターンの抜け 0301…分光検出光学系 0302…検査対象基板 0304…繰り返しパターン 0401…型(モールド) 0402…レジスト 0403、0501、0601…磁性体層 0602…レジストパターン 0701、0801、0901…パターン 0701、0801、0901…高さの異なるパターン 1001…分光検出光学系 1002…ステージ部 1003…制御部 1004…データ処理部 1005…ハードディスクメディア 1101…Xステージ 1102…Zステージ 1103…θステージ 1201…光源 1202…ハーフミラー 1203…偏向素子 1204…対物レンズ 1205…分光器 1301…レーザー光源 1302、1303…ダイクロイックミラー 1304…検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンを検査する方法であって、
前記繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めるとともに該検出時に生じる検出波長ごとのノイズの量を求め、
該求めた分光反射率の情報及び検出時に生じる検出波長ごとのノイズの量の情報と、前記繰り返しパターンの屈折率と消衰係数とを含む光学的材質の情報及び前記繰り返しパターンの形状の情報とを用いて前記繰り返しパターンの形状を算出して所定の精度で前記繰り返しパターンを計測することが可能かを評価し、
該評価した結果計測可能と判定した場合に前記繰り返しパターンと同一のパターンが形成された基板を順次分光検出し分光反射率を求めて前記基板上の繰り返しパターンを計測し、
該計測した結果を予め設定しておいた基準と比較することにより前記繰り返しパターンの形状を検査する
ことを特徴とするパターン形状検査方法。
【請求項2】
前記繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めるときに、予め設定した波長の範囲に限定して分光反射率を求めることを特徴とする請求項1記載のパターン形状検査方法。
【請求項3】
前記繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めるときに、所定の回数繰り返して前記繰り返しパターンを分光検出し、該繰り返し分光検出して得たデータから前記予め設定した波長の範囲でそれぞれ分光反射率を求め、該求めたそれぞれの分光反射率のデータを平均化して前記繰り返しパターンの分光反射率とすることを特徴とする請求項2記載のパターン形状検査方法。
【請求項4】
基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めることにより所定の精度で前記繰り返しパターンを計測することが可能かを評価し、
該評価した結果計測可能と判定した場合に前記繰り返しパターンと同一形状のパターンが形成された基板を順次分光検出し分光反射率を求めて前記基板上の繰り返しパターンを計測し、
該計測した結果を予め設定しておいた基準と比較することにより前記繰り返しパターンの形状を検査する方法であって、
前記所定の精度で前記繰り返しパターンを計測することが可能かを評価することを、
前記繰り返しパターンを分光検出して分光反射率を求めるとともに該検出時に生じるノイズの量を求め、
該求めた分光反射率の情報及び検出時に生じるノイズの量の情報と前記繰り返しパターンの光学的材質の情報及び前記繰り返しパターンの形状の情報とを用いて前記繰り返しパターンの形状を算出し、
該算出した前記繰り返しパターンの形状の情報を用いて所定の精度で前記繰り返しパターンを計測することが可能かを評価する
ことを特徴とするパターン形状検査方法。
【請求項5】
前記所定の精度で前記繰り返しパターンを計測するために必要な前記繰り返しパターンの分光検出回数を設定し、前記繰り返しパターンと同一形状のパターンが形成された基板を順次分光検出するときに、それぞれの基板について前記設定した回数分光検出を行い、 該設定した回数分光検出して得たデータからそれぞれ分光反射率を求め、該求めたそれぞれの分光反射率のデータを平均化して前記繰り返しパターンの分光反射率とすることを特徴とする請求項4記載のパターン形状検査方法。
【請求項6】
前記設定した回数分光検出して得たデータから、予め設定した波長の範囲に限定して分光反射率を求めることを特徴とする請求項5記載のパターン形状検査方法。
【請求項7】
基板に形成された微細な繰り返しパターンの形状を検査する装置であって、
基板を保持して回転し移動可能なステージ手段と、
ステージ手段に保持された基板に光を照射して該光が照射された基板からの反射光を分光して検出する分光検出手段と、
該分光検出手段で分光検出して得たデータを処理して分光反射率を算出し該算出した分光反射率のデータを用いて前記基板上に形成されたパターンの形状を求めるデータ処理手段と、
該データ処理手段で処理する条件を入力すると共に該データ処理手段で処理した結果を出力する表示画面を備えた入出力手段と、
前記ステージ手段と前記分光検出手段と前記データ処理手段と前記入出力手段とを制御する制御手段とを備え、前記データ処理手段は、
前記基板を前記分光検出手段で分光検出したデータを処理して分光反射率の情報を得る分光反射率算出部と、
該分光反射率算出部で算出した分光反射率の情報を用いて前記基板上に形成されたパターン形状の予め設定した許容精度内での計測の可否を判定し、計測条件を設定するパターン形状計測可否判定部と、
該パターン形状計測可否判定部で計測可能と判定されたパターンと同一形状のパターンが形成された基板を前記分光検出手段で分光検出し前記分光反射率算出部で算出した分光反射率の情報を用いて前記パターン形状計測可否判定部で設定した計測条件を用いてパターンの形状を算出して該パターンの良否を判定するパターン形状欠陥検出部と
を有することを特徴とするパターン形状検査装置。
【請求項8】
前記パターン形状計測可否判定部は、
前記分光検出手段で分光検出したデータから前記分光検出時に生じるノイズの検出波長に対する分布を求めるノイズ分布算出部と、
前記分光反射率算出部で得た分光反射率の情報及び前記ノイズ分布算出部で求めたノイズの量の情報と前記入出力手段から入力された前記繰り返しパターンの光学的材質の情報及び前記繰り返しパターンの形状の情報とを用いて前記繰り返しパターンの形状を算出するパターン形状算出部と、
該パターン形状算出部で算出したパターンの形状のデータを前記分光反射率算出部で分光反射率を算出する際に用いたパターンの形状の値と比較して前記予め設定した許容精度内での計測の可否及び計測精度を求める計測可否判定部と、
を備えたことを特徴とする請求項7記載のパターン形状検査装置。
【請求項9】
前記入出力手段は、前記基板上に形成された繰り返しパターンの分光反射率分布を分光反射率算出部で繰返して求める回数を入力する繰り返し検出回数入力部を有することを特徴とする請求項7記載のパターン形状検査装置。
【請求項10】
前記入出力手段は、前記基板上に形成された繰り返しパターンの分光反射率分布を分光反射率算出部で算出するときの波長の範囲を入力する波長範囲入力部を有することを特徴とする請求項7記載のパターン形状検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−172999(P2012−172999A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32274(P2011−32274)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】