説明

パターン検査方法及びパターン検査装置並びにパターン検査用プログラム

【課題】照明ムラがあっても欠陥の形状や外形寸法を正しく且つ高速に計測できるパターン検査方法を得る。
【解決手段】半導体回路等の本パターン検査方法は、検査対象の画像を微分処理して微分画像を作成する第1ステップS1と、微分画像と予め良品から作成しておいたマスク画像とを比較して差分画像を作成する第2ステップS2と、差分画像の輝度値が所定値を超えた場合に、その所定値を超えた輝度を有する画素を含む小領域を計算する第3ステップS3と、検査対象の画像から小領域において画像特徴量を計算する第4ステップS4と、画像特徴量の値から上記小領域の良否を判定する第5ステップS5とを備える。本パターン検査方法に於ける画像処理はパソコンを用いてソフトウエアによって処理可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,半導体や液晶の回路パターンの不具合を、例えば異物,傷,パターン欠損などを、画像処理技術を駆使して検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シェーディングと呼ばれる照明むらの影響を排除しつつパターン検査を行う従来方法としては、良品のパターンの画像と検査対象のパターンの画像とをそれぞれ微分して、パターンの輪郭を抽出し、両者の輪郭の違いを以って微小欠陥を検出するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−77495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の検査方法を適用する上で、次の様な問題点がある。
【0005】
例えば、黒い異物欠陥がパターン上に存在するときに、この従来方法を適用した場合、異物の輪郭しか検出できない。
【0006】
又、異物がその輪郭をもったリング(線)状の異物なのか、あるいは塊上の異物なのかが判定できない。
【0007】
更には、実際には異物の輪郭に相当する部分の輝度が部分的にうすい場合も多く、この場合には部分的な輪郭しか得られないため、欠陥の外形寸法も正しく得られないと言う問題点がある。
【0008】
この発明は、上記の様な諸問題点を解決するためになされたものであり、安定且つ高速に欠陥の形状を正しく検出することが出来るパターン検査方法乃至はパターン検査装置を得ることを、その主目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主題に係るパターン検査方法は、照明手段と撮像手段とを用いて得られた検査対象の画像を検査する方法において、前記検査対象の画像を微分処理して微分画像を作成する第1ステップと、前記微分画像と予め良品から作成しておいたマスク画像とを比較して差分画像を作成する第2ステップと、前記差分画像の輝度値が所定値を超えた場合に、その所定値を超えた輝度を有する画素を含む小領域を計算する第3ステップと、前記検査対象の画像から前記小領域において画像特徴量を計算する第4ステップと、前記画像特徴量の値から前記小領域の良否を判定する第5ステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
又、本発明の主題に係るパターン検査装置は、検査対象の画像を微分処理して微分画像を作成する第1手段と、前記微分画像と予め良品から作成しておいたマスク画像とを比較して差分画像を作成する第2手段と、前記差分画像の輝度値が所定値を超えた場合に、その所定値を超えた輝度を有する画素を含む小領域を計算する第3手段と、前記検査対象の画像から前記小領域において画像特徴量を計算する第4手段と、前記画像特徴量の値から前記小領域の良否を判定する第5手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
以下、この発明の主題の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に、詳述する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の主題によれば、シェーディング等の照明むらの影響を排除しつつ、高速に精度良く検査対象の欠陥を判定することが出来る。
【0013】
又、本発明の主題は、予めマスク画像に不感帯領域を設け、その不感帯領域においては差分画像を作成しない様に構成することで、検査対象において必要な部分のみを検査することが出来るため,検査をより一層高速に行うことが出来る。
【0014】
又、本発明の主題は、同軸落射照明,斜方照明,透過照明のいずれか、あるいは複数を組み合わせて前記照明手段を構成することで、特にガラス基板の電蝕不良等が観察しやすくなり、検査精度をより一層向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係るパターン検査方法(画像処理方法)の特徴点は、先ず、検査対象の画像を微分処理して照明ムラの影響を無くした微分画像を用いて、予め用意されている良品画像との差分検出処理によって欠陥場所の粗検査を行い、その後、上記粗検査で見つかった、欠陥が有ると仮定される箇所(小領域)に限定して、原画像から画像特徴量を計算して検査を実施する点、換言すれば、上記粗検査で見つかった場所に対して部分的に濃淡画像処理を実施して精検査を段階的に行う点にある。以下、より具体的な実施の各形態に関して、図面を参照して、その内容を記載する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係るパターン検査方法を示す流れ図である。又、図2は、本実施の形態によるパターン検査方法を実現するためのパターン検査システムの構成を模式的に示すブロック図である。又、図3は、検査を実行途中の中間的な画像を図1に併記した流れ図である。
【0017】
図2において、本実施の形態に係るパターン検査方法を実現するパターン検査システムは、検査対象3を撮像するCCDカメラ1(撮像手段の一例)と、検査対象3を照らす同軸落射照明2a、斜方照明2b及び透過照明2c(照明手段の一例)と、検査対象3及び透過照明2cを保持するテーブル4と、テーブル4を所定位置に移動させるXステージ5及びYステージ6を備えている。更に、本パターン検査システムは、画像メモリ7(第1記憶手段;例えば、パソコン内部のメモリあるいはパソコン外部に接続された拡張ボードのメモリより成る)と、本パターン検査方法実行手段の中核を成す画像処理手段8(例えば、本手段8はパーソナルコンピュータより成る、あるいは、CPUやDSP等のハードウエア回路とハードディスクとの組み合わせより成るH/W回路から構成される。)とを、有している。ここで、図2の画像メモリ7がパーソナルコンピュータ内部のメモリである場合には、画像処理手段8と画像メモリ7とから成る部分が、例えばパーソナルコンピュータより成る「パターン検査装置」を構成している。これに対して、画像メモリ7が外付けの拡張ボードのメモリである場合には、例えばパーソナルコンピュータより成る画像処理手段8自体が「パターン検査装置」を成す。内部及び外部の両メモリが画像メモリ7として用いられる場合には、画像処理手段8と画像メモリ7とから成る部分が「パターン検査装置」を成す。本例では、パーソナルコンピュータより成る「パターン検査装置」は、図1及び図3で模式的に表示される一連の画像処理を実行指令するプログラムで以ってソフトウエア的に制御されている。
【0018】
本装置において、CCDカメラ1で撮像された画像は、画像メモリ7より成るストーレッジデバイスに蓄積される。画像メモリ7に蓄積された検査対象3の画像は、本実施の形態に係るパターン検査方法を実施する画像処理手段8によって後述する画像処理を施され、その結果、画像処理手段8は、当該対象画像の良否を示す判定結果9を出力する。
【0019】
検査対象の例としては、液晶やIC等、回路パターンが形成された物体などが挙げられる。尚、CCDカメラ1の代わりに、撮像手段として同等の機能を有するラインセンサカメラやCMOSカメラやビジコンカメラ等が、「撮像手段」として用いられても構わない。
【0020】
次に、図2に基づいて、本実施の形態に係るパターン検査方法を実現するパターン検査システムの動作について、詳細に記載する。先ず、同軸落射照明2aで検査対象3を照明し、検査対象3の画像をCCDカメラ1で撮像して、撮影された検査対象3の画像データを画像メモリ7に入力する。図2の構成では画像メモリ7への入力はCCDカメラ1から入力しているが、例えば、予め撮像済みの画像データファイルをメディアから読み取って画像メモリ7に入力しても構わない。尚、検査対象3の画像を撮像する際には、検査対象3から得られる画像のコントラストを高める目的で、検査対象3と同軸落射照明2aとの間に、特定の波長域のみを通過させるフィルタ(図示せず)を配置しても良い。
【0021】
画像メモリ7に入力・格納された検査対象3の画像は、以下に詳述する本パターン検査方法を実施する画像処理手段8において画像処理され、画像処理手段8は良否の判定結果9を出力する。以下では、画像処理手段8における動作を模式的に示す図1及び図3のフローチャートに基づいて、画像処理手段8で実施される本パターン検査方法について記載する。
【0022】
先ず、ステップS1(第1ステップないしは第1手段に相当)では、画像処理手段8(例えばCPU)は、図2の画像メモリ7に入力・格納されている検査対象3の画像の微分処理を行って、検査対象画像の微分画像を作成する。ステップS1は、その内部では、微分処理を行うステップS11と、微小なノイズ除去を行うステップS12とに分解される。ステップS11では、画像のXY方向の微分が出力される画像処理方法が実施される。例えば、既知技術であるSobelフィルタやPrewittフィルタをステップS11として実施しても良いし、X方向の微分を得るフィルタの出力結果とY方向の微分を得るフィルタの出力結果とを平均したものをステップS11の出力としても構わない。ステップS11で出力された微分画像には微細なノイズ成分が含まれていることが多いため、ステップS12では、そのノイズ成分の除去を行う。ステップS12では、例えば、既知技術である3×3最小値フィルタを複数回適用した後、3×3最大値フィルタを同回適用するという収縮/膨張処理で微小ノイズを除去する。ステップS12で使用できるその他の既知技術としては、ゴマ塩ノイズを除去する3×3メディアンフィルタや、平均値フィルタを適用しても構わない。これらのステップS11及びステップS12を実施することで、検査対象3の撮像画像の微分画像が得られる。微分画像は、検査対象3のエッジ部分(輝度差の大きい部分)を強調した画像となる。検査対象画像の微分画像を図3に示す。微分画像においては、本来はエッジの部分が明るく、逆に背景の部分が暗くなるが、図3の例示では、分かりやすい様にするため、便宜上、明暗を反転させた図(エッジの部分が暗く、背景の部分が明るい図)を表記している。この微分画像の例では、検査対象画像が持つパターンがエッジとして現れていると同時に、線状の欠陥及び円状の欠陥の周囲もエッジとして現れている。
【0023】
ここで、マスク画像の作成について説明する。マスク画像の作成は、図1及び図3のステップS0で行なわれる。このステップS0の動作は、本パターン検査と同時に行っても良いし、あるいは、本検査の実行に先立ってオフラインで実施しても構わない。以下では、オフラインで実施する方法として、マスク画像の作成を記載する。
【0024】
ステップS0は、ステップS01〜ステップS04で構成される。先ず、ステップS01に先立ち、画像メモリ7に、検査対象3と比較するための良品の対象物体の画像を入力・格納する。その後、ステップS01では、上記ステップS11と同様の微分処理を実施する。次のステップS02では、上記ステップS12と同様のノイズ除去処理を実施し、良品の対象物体の微分画像を得る。ステップS03では、前述の3×3最大値フィルタを適用する等して、良品の対象物体の微分画像を膨張させた画像を得る。本発明では、この膨張処理後の画像を「マスク画像」と呼ぶ。ここでの膨張処理は、後にステップS2で位置合わせと差分処理とを実行する際に、位置合わせの誤差や検査対象と良品とのパターンの誤差の影響を無くすために適用されるものである。図3に、ステップS03で得られたマスク画像の一例を示す。このマスク画像では、膨張処理を実施したため、パターンのエッジ部分が、通常の微分画像で得られるエッジ部分よりも太い線となっている。図3のマスク画像も、便宜上、分かり易い様に、明暗を反転させて表記されている。ステップS04では、得られたマスク画像と良品の画像とを画像データベースD1に保存する。ここで、画像データベースD1は、例えばパーソナルコンピュータ内のハードディスクから成る第2記憶手段を成す。
【0025】
上記の説明では、マスク画像の作成について、実際に撮像した良品画像からマスク画像を生成する手順を述べているが、マスク画像の作成に関しては、パターンの設計データを基にエッジ部分の画像を生成し、膨張させて得ると言う方法を採用しても良い。
【0026】
又、上記の説明では、オフラインでマスク画像を作成する方法を述べているが、検査と同時にステップS0を実施する場合には、次の様にすれば良い。即ち、カメラを2台用意し、一方のカメラは検査対象3を撮像し、他方のカメラは良品を撮像し、CPU等は、検査対象3についてはステップS1を実行し、良品に対してはステップS0を並行して実行する。これらのステップS0,S1を同時に実行すれば、次に説明するステップS2以降が滞りなく実行出来る。
【0027】
更に検査対象物体が連続して流れて来る場合には、1つ前に検査したものを上記の良品とみなし、1つ前に検査した対象の画像をステップS0で処理し、現在検査している対象の画像をステップS1で処理して、その後、ステップS2以降を実施すると言う方法を採用しても良い。欠陥が連続して同じ箇所に発生しないと仮定すれば、この方法でも不良品を検出することが出来る。
【0028】
ステップS2(第2ステップ又は第2手段に相当)は、図1に示す様に、3つのステップS21〜S23で構成されており、CPU等は、ステップS1で作成した検査対象3の微分画像とステップS0で作成した良品のマスク画像との比較から、差分画像を作成する。最初のステップS21では、CPU等は、ステップS0で作成されて画像データベースD1内に保存されているマスク画像の中から、検査対象3の品種に合わせて、当該品種に対応しているマスク画像を選択する。次に、ステップS22では、CPU等は、選択したマスク画像と検査対象3の微分画像との位置合わせを行う。この位置合わせが必要な理由は、通常、検査対象3の微分画像と良品画像との間では多少の位置ズレを生じているため、そのまま差分処理を行っても正しい画像が得られないためである。ここでは、当該位置合わせの方法例として、微分画像及びマスク画像に共通な特徴的な部分のX,Y位置を計測することで、位置合わせを行う。図3を例にとれば、図3の微分画像とマスク画像とにおいて、共に写っている左上隅の4角形のパターンの中心位置を画像処理で計測すれば良い。位置合わせの方法として、例えば、上記の4角形のパターンの中心位置を求めるのに、微分画像のエッジを用いても良い。即ち、CPU等は、4角形の各辺のエッジ位置を求め、それらを直線回帰して4辺を抽出し、4辺の交点である4頂点を求め、4頂点の平均値をパターンの中心とする。又、微分画像以外に画像入力時に得られた原画像を用いても良い。既知技術である正規化相互相関を用いたパターンマッチング手法を用いれば、検査対象の原画像と、良品画像の原画像との両方から、予め教示してある4角形のパターンの位置を検出することが出来るため、これを位置合わせに用いることが出来る。
【0029】
この様に、検査対象3の微分画像における4角形のパターンの中心位置(Xd, Yd)、及び、良品のマスク画像における4角形のパターンの中心位置(Xm, Ym)が計算できれば、CPU等は、位置ズレ量(Xd-Xm, Yd-Ym)も計算でき、この位置ズレ量を補正して、次に述べる差分を取れば、両者の画像に共通なパターンのエッジ部分を取り除くことが出来る。
【0030】
ステップS23では、CPU等は、差分処理を行う。ここでの差分処理としては、以下に示す様に、様々な方法が考えられる。
【0031】
位置合わせ補正後、微分画像の任意の1点の輝度をGd、それに対応するマスク画像上の1点の輝度をGm、及び、対応する差分画像上の1点の輝度値をGsと定義すると、単純な差分を適用した場合には、輝度値Gsは、
【0032】
【数1】

【0033】
で与えられる。
【0034】
これに対して、マスク画像の輝度が所定値(T)以上の値の部分を全て、微分画像から取り除く方法の場合には、輝度値Gsは、
【0035】
【数2】

【0036】
で与えられる。
【0037】
又、透過照明2cを用いた場合などでは、対数変換した後に差分をとっても良い。この場合、輝度値Gsは、
【0038】
【数3】

【0039】
で与えられる。これは、透過光を用いて得られた画像は物体の光の吸収率を反映したものとなっているため、この差画像を求める際には、対数変換を用いた方がより適切であると言う物理的な根拠に基づく。
【0040】
ここで、ステップS03の膨張処理の効果について説明する。上記ステップS23の差分処理をステップS03の膨張処理無くして実行した場合には、位置合わせ補正後に残った微小な位置ズレと対象の個体差によるパターンとの違いによって、パターンのエッジ部を完全に取り除くことが出来ず、ノイズ成分が生じると言う不具合が発生する。特に、エッジはそもそも輝度変化が大きい部分であるため、それらの差分によるノイズ成分の大きさは無視できない場合がある。そこで、ステップS03において既述した膨張処理を実行しておけば、これらのノイズを完全に消去することが出来る。
【0041】
次に、ステップS2の差分画像を作成する上で、ステップS1で作成した微分画像を用いる効果について述べる。広い範囲を照明する場合において、照明むらは避けられず、このために検査対象の原画像の明るさは場所によってばらついてしまう(シェーディング)。同様に、差分画像を作成するために用いる良品の原画像の明るさもばらついているため、これらの原画像同士の差分を計算した場合、欠陥よりも照明むらが強調された画像になってしまう。良品を撮像した場合の照明と検査時の照明とが異なるときは、勿論この不具合が生じるが、照明が全く同一な場合でも、良品と検査対象3との位置ズレがあるため、それを補正した段階で照明むらの影響が出てしまう。又、照明の劣化によっても、照明むらの問題は発生する。
【0042】
この様な場合には、前述した微分画像を作成してそれらの差分をとることで問題が解決される。蓋し、照明むらは緩やかな明るさ変化であるため、局所的な計算である微分計算をすれば、照明むらの影響が無くなってしまうためである。上記の理由で、既述の様に微分画像を作成して差分画像を作成すれば、照明のむらの影響を排除することが出来る。
【0043】
次の第3ステップ(第3手段に相当)は、差分画像の輝度値が所定値を超えた場合に、その所定値を超えた輝度を有する画素を含む小領域を計算するステップである。即ち、ステップS3では、CPU等は、上記ステップS2で生成した差分画像から、欠陥の位置を計算し、欠陥を含む小領域を計算する。先ず、ステップS31では、CPU等は、差分画像を所定のしきい値で2値化処理し、2値画像を得る。ステップS32では、CPU等は、当該2値画像から、2値塊(2値領域)の面積,重心位置,外接四辺形の座標などの2値特徴量を計算する。ステップS33では、CPU等は、得られた2値特徴量を、所定の判定しきい値で以って、2値画像に欠陥が存在するかどうかを判定する。例えば、2値特徴量として面積を用いた場合には、面積が所定の値以上ならば欠陥が存在すると、CPU等は判定する。あるいは、外接四辺形の座標を2値特徴量として用いる場合には、その辺の長さが所定の値以上ならば欠陥が存在すると、CPU等は判定する。ステップS34では、CPU等は、欠陥とされた2値塊の重心位置を中心として、所定の距離を持つ範囲を、「小領域」として定める。尚、ステップS32で計算する2値特徴量は複数でも構わないし、ステップS33で良否判定する場合にも、複数の2値特徴量を用いて判定しても構わない。
【0044】
ここで、判定ステップS33において重要な点とは、この段階での判定しきい値はあまり厳しいものにしないことである。前述した様に、黒色異物などでは、差分画像は異物の輪郭部分しか得られないため、ステップS32で得られる2値特徴量はあまり大きくない。このため、ステップS33の判定しきい値を低め(緩め)に設定する。そもそもステップS3は欠陥の粗検索的な役割を担っているため、ここで厳しい判定をすると、却って真の欠陥を見逃すことになってしまう。
【0045】
ステップS4(第4ステップ又は第4手段に相当)では、CPU等は、画像メモリ7に格納されている検査対象3の検査対象画像を読み出して、読み出した検査対象画像から上記小領域において画像特徴量を計算する。この時点では、小領域に計測範囲が限定されているため、照明むらの影響も軽微になっている。このステップS4では、例えば、検査対象3の原画像(検査対象画像)と、良品画像の原画像との差分画像を計算し、所定しきい値で2値化する。この様にすれば、黒色異物などはその輪郭だけでなく形状が明確に現れるため、CPU等は、その面積や外接四辺形の辺の長さを画像特徴量として計算する。
【0046】
ステップS5(第5ステップないしは第5手段に該当)では、CPU等は、上記の画像特徴量を判定しきい値と比較して、当該小領域の良否を判定する。この段階では、ステップS3と異なり、欠陥の形状がはっきりしているため、判定しきい値は本来の検査として適切な値に設定されている。
【0047】
ステップS4では、上記の計測方法以外の方法として、例えば、原画像を既知の自動2値化手法あるいは固定2値化手法で2値化して、2値塊の面積や円形度(真円率)や2値塊の外接四辺形を求め、その辺の長さを画像特徴量として求めても良い。又、2値化せずに原画像の小領域における輝度平均を求めても良いし、あるいは、輝度の分散値を画像特徴量として求めても良い。これらの場合は、特に小領域の中にパターンのエッジが含まれない場合に有効な方法となる。勿論、この場合は良品の原画像が不要なので、計算速度も高速になる。尚、ステップS4で計算する画像特徴量は複数でも構わないし、ステップS5で良否判定する場合も、複数の画像特徴量を用いて判定しても構わない。
【0048】
上記の様にパターン検査方法を構築しているので、シェーディング,照明劣化などに起因する照明むらの影響を排除しつつ、異物の外形等を正しく得ることが出来、それらを良否判定することで精度の高い検査が可能になる。又、最初から欠陥を細かく探すことをせずに、最初は微分画像の差画像を用いることで粗く欠陥箇所を検出し、欠陥候補である小領域に限って信頼度の高い特徴量を計算する様にしたため、全体では高速な検査が可能となる。
【0049】
(実施の形態2)
図4は、本実施の形態に係るパターン検査方法を示す流れ図である。尚、本実施の形態では、図2を援用する。図4では、実施の形態1で引用した図1と同じ処理を行う部分については、同一のステップ名を付してある。基本的な流れは実施の形態1の図1とほぼ同様なので、共通部分を省き、以下では異なる点についてのみ記載する。
【0050】
図4で例示される検査方法と図1で例示される検査方法との間で異なる点とは、先ず、微分画像を作成するステップS1において、ステップS13を追加している点にある。即ち、検査対象画像に微分処理を施した直後に、ステップS13において、CPU等は、所定しきい値で2値化処理を行う。この様にすることで、微分画像で強調されるエッジがより強調される効果が生じる。その後に続くステップS12では、扱う画像が2値画像になるため、実施の形態1で説明したノイズ除去方法の他に、2値特徴量計算を実施して2値塊の面積を計算後、所定面積以下の2値塊をノイズとして除去する方法も可能となる。このノイズ除去方法は、収縮/膨張処理や、メディアンフィルタや、平均値フィルタよりも強力なノイズ除去効果を奏する。又、マスク画像を作成する際のステップS05の追加も上記と同様の理由による。
【0051】
ステップS13及びステップS05を追加したことに伴い、微分画像は2値画像となった。このため、ステップS23の差分画像計算方法に関しても、実施の形態1で述べた方法の他に、論理計算であるXOR(eXclusive OR)を微分画像とマスク画像とに対して実施することによっても差分画像を計算することが出来る。この場合、単なる差分計算と比べて、より一層高速に計算出来ると言う利点がある。
【0052】
実施の形態2のステップS3では、その入力段階で、差分画像は既に2値画像になっているため、実施の形態1で説明した2値化処理を行うステップS31は不要になっている。
【0053】
図4に例示した様にパターン検査方法を構成するときには、既述した実施の形態1で奏する効果を得られると共に、2値処理を早期に実施することで、微分画像、マスク画像の高コントラスト化による検査精度向上、及び、XORを用いた差分画像計算により一層高速に検査出来る効果を奏する。
【0054】
(実施の形態3)
上述の実施の形態1及び実施の形態2では、微分画像とマスク画像との差分画像を計算する際に、画像の特定箇所に関して重み付けをせず、単純に差分を計算し、検査を実施している。
【0055】
ところが、実際の検査においては、例えばパターンが回路パターンであった場合、回路パターン上の傷や異物は検査で検出すべき欠陥であるが、パターン外の部分に傷,異物があっても問題にならない場合がある。この点を図3を用いて説明すると、図3の検査対象画像の白色部分を回路パターン部とすると、白色の回路パターン上の異物や傷は問題となるが、図3の検査対象画像の部分の背景である黒色部分にある異物,傷は問題にならないと言うことである。この様な場合、差分画像を計算するステップS2において、画像全体に関して差分する必要はなく、検査に必要なパターン部に対してのみ差分画像を計算すれば良い。
【0056】
本実施の形態では、マスク画像の作成時に、予め非パターン部分を不感帯領域として、画像データベースD1に保存しておく。この不感帯領域のデータには、良品の原画像と良品の原画像に適用する適切な2値化しきい値でも代用可能である。この後、検査時のステップS2において差分画像を作成する際には、不感帯領域ではないパターン部のところのみ差分画像が作成され、不感帯領域では差分画像は生成されない。
【0057】
本実施の形態によれば、ステップS2に引き続くステップS3〜S5の処理を大幅に減らすことが出来、検査時間のより一層の高速化を実現することが可能である。
【0058】
(実施の形態4)
上述の実施の形態1,実施の形態2及び実施の形態3では、照明手段として、主に図2に示される同軸落射照明2aを例にとって説明している。ここで、同軸落射照明2aは、人間が顕微鏡で目視検査する際の照明と同じであり、得られる画像も人間が観察する場合とほぼ同じになるため、人間との検査基準のレベル合わせが容易となる。
【0059】
一方で、同軸落射照明2aでは、欠陥の画像のコントラストが画像処理に必要な分得られないこともある。例えば、液晶の透明電極の電蝕不良などに関しては、同軸照明では必ずしも明瞭なコントラストが得られない場合がある。
【0060】
この際には、図2の斜方照明2bや透過照明2cを利用すれば良い。斜方照明2b又は/及び透過照明2cを用いると、完全にメタル化していない半透明の電蝕不良も明瞭に観察出来るので、当該照明は有効である。又、検査対象が液晶のガラス基板の様に透明で、しかも欠陥が異物など不透明な場合の検査では、欠陥をコントラスト良く検出出来る透過照明2cの利用が、特に適している。又、半導体の様な一見不透明なものでも、半導体は赤外線を透過するため、赤外線照明を透過照明として用いることで検査が可能である。
【0061】
この様に、検出したい欠陥の種類に応じて、同軸落射照明2a,斜方照明2b,透過照明2cを適宜使い分けて、それぞれの欠陥を安定に検出出来る照明を適用するのが望ましい。勿論、検出したい欠陥が複数ある場合などには、これらの照明2a,2b,2cを複数適宜に組み合わせて用いても構わない。
【0062】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るパターン検査装置乃至は方法は、半導体や液晶等の回路パターンを有するデバイスの製造装置乃至は製造工程に適用して好適なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係るパターン検査方法の流れを示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1に係るパターン検査システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるパターン検査方法の流れ図に画像処理中の画像の例を付加したフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2に係るパターン検査方法の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 CCDカメラ、2a 同軸落射照明、2b 斜方照明、2c 透過照明、3 検査対象、4 テーブル、5 Xステージ、6 Yステージ、7 画像メモリ、8 画像処理手段、9 判定結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明手段と撮像手段とを用いて得られた検査対象の画像を検査する方法において、
前記検査対象の画像を微分処理して微分画像を作成する第1ステップと、
前記微分画像と予め良品から作成しておいたマスク画像とを比較して差分画像を作成する第2ステップと、
前記差分画像の輝度値が所定値を超えた場合に、その所定値を超えた輝度を有する画素を含む小領域を計算する第3ステップと、
前記検査対象の画像から前記小領域において画像特徴量を計算する第4ステップと、
前記画像特徴量の値から前記小領域の良否を判定する第5ステップとを備えることを特徴とする、
パターン検査方法。
【請求項2】
請求項1記載のパターン検査方法であって、
前記第2ステップにおいて、予め前記マスク画像に不感帯領域を設けておき、当該不感帯領域においては前記差分画像を作成しないように構成することを特徴とする、
パターン検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン検査方法であって、
同軸落射照明、斜方照明及び透過照明の内の少なくとも一つを前記照明手段に使用することを特徴とする、
パターン検査方法。
【請求項4】
照明手段と撮像手段とを用いて得られた検査対象の画像を検査する装置であって、
前記検査対象の画像を微分処理して微分画像を作成する第1手段と、
前記微分画像と予め良品から作成しておいたマスク画像とを比較して差分画像を作成する第2手段と、
前記差分画像の輝度値が所定値を超えた場合に、その所定値を超えた輝度を有する画素を含む小領域を計算する第3手段と、
前記検査対象の画像から前記小領域において画像特徴量を計算する第4手段と、
前記画像特徴量の値から前記小領域の良否を判定する第5手段とを備えることを特徴とする、
パターン検査装置。
【請求項5】
請求項4記載のパターン検査装置であって、
前記第2手段は、
予め前記マスク画像に設けておいた不感帯領域においては前記差分画像を作成しないことを特徴とする、
パターン検査装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のパターン検査方法に於ける前記第1ステップ乃至前記第5ステップの各画像処理ステップを電子計算機に指令して当該電子計算機で前記各画像処理ステップを順次に実行させるための、
パターン検査用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−284471(P2006−284471A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107231(P2005−107231)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】