説明

フレキシブル配線板及びフレキシブル配線板の製造方法

【課題】高さ精度の良い突起を有するフレキシブル配線板を製造する。
【解決手段】本発明のフレキシブル配線板1aは、配線膜15と一緒にベースフィルム11が変形し、配線膜15に突起18が形成されると同時に、ベースフィルム11の突起18の真裏位置に凹部17が形成されている。凹部17内には樹脂材料22が配置されており、凹部17内の空間が小さくされているので、フレキシブル配線板1aに電気部品4を接続する時に、突起18に荷重がかかったとしても、フレキシブル配線板1aが変形し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブル配線板の技術分野に関し、特に、配線膜に突起が形成されたフレキシブル配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配線板と電気部品の接続には、突起を介して配線板と電気部品を電気的に接続する方法が広く用いられている。
従来の突起の形成方法には、配線膜の表面に半田ボールをボールマウンタで実装する方法が公知であるが、半田ボールを1つ1つ実装するため、作業時間が長くなってしまう。
【0003】
配線膜の表面にエッチング法で金属バンプを形成する方法も公知であるが、この方法ではエッチングむらが生じやすく、金属バンプの高さ精度が悪いという問題がある。
【0004】
また、配線膜上にワイヤーボンディング法で金バンプを1つずつ形成することも公知であるが、この方法は金バンプを1つずつ形成するため手間がかかるだけではなく、形成された金バンプは高さ精度が悪く、各バンプの高さを揃える(レベリング)必要があり、突起形成の作業工程数が多くなってしまう。
【0005】
加工用凹部が設けられた金型に配線板を押し当て、加熱しながら配線板を金型に向かって押圧することで、加工用凹部側に配線膜を膨出させ、配線膜に突起を形成する方法が公知である(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
しかしながら、近年電気装置の精密化により、薄型のフレキシブル配線板(例えば、ベースフィルム及び配線の合計膜厚が12.5μm以上75μm以下)が求められており、そのようなフレキシブル配線板で、配線膜を押圧によって膨出させると、フレキシブル配線板全体が変形し、ベースフィルム側に大きな凹部が形成されてしまう。
【0007】
ベースフィルムに凹部が形成された状態で、半導体素子等他の電気部品をマウントすると、凹部の空間の分だけ突起に係る荷重が逃げ、接続不良が生じたり、フレキシブル配線板が大きく変形する原因となる。
【0008】
また、突起を形成する際に、ベースフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度以上に加熱を行うと、ベースフィルムの変形量が著しく多くなりすぎ、配線膜の位置ずれや、ベースフィルムの膜厚分布が不均一になる原因となる。
【特許文献1】特開2000−490447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、フレキシブル配線板の金属バンプを精度良く形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、ベースフィルム上にパターニングされた配線膜を配置し、前記配線膜と前記ベースフィルムが配置された部分の、前記ベースフィルムの所定位置に加工用突起を当接して、前記加工用突起で前記ベースフィルムを押圧し、前記配線膜を膨出させて前記突起を形成し、前記突起の裏面側に形成された前記ベースフィルムの凹部に樹脂材料を配置するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項2記載の発明は、配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、導電膜上に配置されたベースフィルムの所定位置に加工用突起を当接し、前記加工用突起で前記ベースフィルムを押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数個形成し、前記突起の裏面側に形成された前記ベースフィルムの凹部に樹脂材料を配置した後、前記導電膜の前記突起が形成された側の面に、所定形状のレジスト層を配置し、前記導電膜の前記レジスト層から露出した部分を除去して、前記配線膜を形成するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項3記載の発明は、配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、導電膜上に配置されたベースフィルムの所定位置に加工用突起を当接し、前記加工用突起で前記ベースフィルムを押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数個形成し、前記導電膜の前記突起が形成された側の面に、所定形状のレジスト層を配置し、前記導電膜の前記レジスト層から露出した部分を除去して、前記配線膜を形成し、前記突起の裏面側に形成された前記ベースフィルムの凹部に樹脂材料を配置するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法であって、前記樹脂材料の配置は、前記ベースフィルムの主成分と同じ種類の樹脂を主成分とする前記樹脂材料を用いるフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項5記載の発明は、配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、キャリアフィルム上に配置された導電膜の所定位置に、加工用突起を接触させ、前記各加工用突起で前記導電膜を押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数形成し、前記導電膜の前記突起が形成された側の面とは反対側の面に、所定形状のレジスト層を配置し、前記導電膜の前記レジスト層から露出する部分をエッチング除去して前記配線膜を形成し、レジスト層を除去した後、前記突起の裏面側に形成された前記配線膜の凹部に樹脂材料を配置し、前記配線膜と密着するベースフィルムを形成した後、前記キャリアフィルムを除去するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項6記載の発明は、配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、導電膜の所定位置に加工用突起を接触させ、前記各加工用突起で前記導電膜を押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数形成し、前記導電膜の前記突起が形成された側の面にキャリアフィルムを配置し、前記導電膜の前記突起が形成された側の面とは反対側の面に所定形状のレジスト層を配置し、前記導電膜の前記レジスト層から露出する部分をエッチング除去して前記配線膜を形成し、レジスト層を除去した後、前記突起の裏面側に形成された前記配線膜の凹部に樹脂材料を配置し、前記配線膜と密着するベースフィルムを形成した後、前記キャリアフィルムを除去するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項7記載の発明は、配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、導電膜の所定部分を加工用突起で押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数形成した後、前記突起の裏面側に形成された前記導電膜の凹部に樹脂材料を配置してベースフィルムを形成し、前記導電膜の前記突起が形成された側の面に、所定形状のレジスト層を配置した後、前記導電膜の前記レジスト層から露出する部分をエッチング除去し、前記配線膜を形成するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法であって、前記樹脂材料の配置は、基材シート上に配置された樹脂材料を、前記凹部に密着させるフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項9記載の発明は、請求項8記載のフレキシブル配線板の製造方法であって、前記樹脂材料を前記凹部に密着させた後、前記基材シートを前記樹脂材料から剥離するフレキシブル配線板の製造方法。
請求項10記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法であって、前記樹脂材料の配置は、前記凹部に樹脂材料を塗布するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項11記載の発明は、請求項1乃至請求項10記載のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法であって、前記凹部に前記樹脂材料を配置した後、前記樹脂材料を硬化させるフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項12記載の発明は、フレキシブル配線板の製造方法であって、第一の加工用突起と、第一の加工用凹部が形成された第一の金型と、前記第一の加工用突起と嵌合する位置に第二の加工用凹部が形成され、前記第一の加工用凹部と嵌合する位置に第二の加工用突起が形成された第二の金型との間に、積層体を配置し、前記積層体の前記ベースフィルムの表面に位置する第一の導電膜を前記第一の加工用突起と前記第二の加工用凹部の間に位置させ、前記ベースフィルムの裏面に位置する第二の導電膜を前記第二の加工用突起と前記第一の加工用凹部の間に位置させて、前記第一、第二の金型で前記積層体を挟み込み、前記積層体の表面に凸部と凹部を形成し、かつ、前記積層体の裏面に凸部と凹部を形成するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項13記載の発明は、請求項12記載のフレキシブル配線板の製造方法であって、前記ベースフィルムに貫通孔を形成しておき、前記貫通孔に充填した導電材料で前記第一、第二の導電膜を電気的に接続した後、前記第一、第二の金型で前記積層体を挟み込むフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項14記載の発明は、請求項12又は請求項13のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法であって、前記積層体の表面に形成された凹部と、前記積層体の裏面に形成された凹部に樹脂材料を配置するフレキシブル配線板の製造方法である。
請求項15記載の発明は、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置され、所定形状にパターニングされた配線膜とを有し、前記配線膜には突起が形成されたフレキシブル配線板であって、前記ベースフィルムの前記配線膜とは反対側の面には、前記突起が位置する部分に凹部が形成され、前記凹部には樹脂材料が配置されたフレキシブル配線板である。
請求項16記載の発明は、請求項15記載のフレキシブル配線板の製造方法であって、前記ベースフィルムと前記樹脂材料は、同じ種類の樹脂を主成分とするフレキシブル配線板である。
請求項17記載の発明は、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置され、所定パターニングされた配線膜とを有し、前記配線膜の表面には突起が形成されたフレキシブル配線板であって、前記配線膜の前記突起の裏面側には凹部が設けられ、前記凹部には樹脂材料が配置されたフレキシブル配線板である。
請求項18記載の発明は請求項17記載のフレキシブル配線板であって、前記樹脂材料は前記ベースフィルムの一部分で構成されたフレキシブル配線板である。
請求項19記載の発明は、請求項15乃至請求項18のいずれか1項記載のフレキシブル配線板であって、前記ベースフィルムは可撓性を有する樹脂フィルムで構成されたフレキシブル配線板である。
請求項20記載の発明は、請求項19記載のフレキシブル配線板であって、前記ベースフィルムはガラス転移温度が300℃以上の樹脂を主成分とするフレキシブル配線板である。
請求項21記載の発明は、請求項19又は請求項20のいずれか1項記載のフレキシブル配線板であって、前記ベースフィルムはポリイミド樹脂を主成分とするフレキシブル配線板である。
請求項22記載の発明は、請求項15乃至請求項21のいずれか1項記載のフレキシブル配線板であって、前記ベースフィルムの膜厚は8μm以上25μm以下であるフレキシブル配線板である。
請求項23記載の発明は、請求項15乃至請求項22のいずれか1項記載のフレキシブル配線板であって、前記配線膜の膜厚は8μm以上35μm以下であるフレキシブル配線板である。
請求項24記載の発明は、請求項15乃至請求項23のいずれか1項記載のフレキシブル配線板であって、前記接続部の先端の、前記配線膜の他の部分の表面からの高さは10μm以上20μm以下であるフレキシブル配線板である。
【0011】
本発明は上記のように構成されており、配線膜や導電膜を加工用突起で直接又は間接的に押圧することで、突起が形成される。
フレキシブル配線板の膜厚(例えば膜厚12.5μm以上75μm以下)に対して、配線膜の他の部分からの高さが0.27倍以上0.8倍以下と高い突起(例えば高さ10μm以上20μm以下)が形成されるように、フレキシブル配線板を変形させると、その変形によって突起の裏面に大きい凹部が形成されるが、本発明では突起を形成した後、その凹部に樹脂材料が配置されるので、凹部内部の空間が小さくなる。
【0012】
金型の一面に複数の加工用突起を設け、該金型の加工用突起が配置された面を導電膜又は配線膜に押し当てれば、複数の加工用突起で同時に複数の部分が押圧されることになるので、複数の突起が同時に形成される。
【0013】
導電膜又は配線膜を挟み込んだ状態で、加工用突起と加工用凹部を嵌合させれば、導電膜又は配線膜は加工用加工用凹部の形状に応じた形状に膨出されるので、高さ精度の良い突起が形成される。各加工用凹部の形状と大きさを同一にし、各加工用突起の形状と大きさを同一にすれば、同じ形状で同じ大きさの複数の突起が同時に形成されることになり、突起の高さを揃える工程が不要になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線膜を加工用突起で押圧するだけで突起が形成されるので、突起を形成する工程が容易である。また、突起を形成する時に、突起の真裏位置に生じる凹部には、樹脂材料が配置されるので、突起を他の電気部品のランド部分に押し当てる時に、突起に係る荷重によってベースフィルムが変形し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1(a)の符号10は本発明に用いる積層体の一例を示しており、積層体10はベースフィルム11と、ベースフィルム11上に配置された配線膜15とを有している。
【0016】
配線膜15は、細長の配線部(ここでは不図示)と、配線部よりも幅広の接続部16とを複数有している。ここでは、接続部16は円形であって、その直径は
100μm以上200μm以下にされており、各接続部16は配線板の長手方向の端部にそれぞれ接続されている。
【0017】
図1(b)の符号31、32は第一、第二の金型を示しており、第一の金型31の一面には円錐状の加工用突起36が複数形成され、第二の金型32の一面には加工用突起36と対応する位置に、加工用突起36と相似形の加工用凹部37が複数設けられている。
【0018】
第一、第二の金型31、32を加工用突起36が配置された面と、加工用凹部37が配置された面とが対向するように配置し、積層体10をベースフィルム11側の面が加工用突起36が配置された面と対向し、配線膜15側の面が加工用凹部37が配置された面と対向するように、第一、第二の金型31、32の間に配置する。
【0019】
第一、第二の金型31、32と積層体10を、加工用突起36と加工用凹部37とが互いに対向し、各接続部16が互いに対向する加工用突起36と、加工用凹部37との間に位置するように位置合わせを行った後(図1(b))、第一、第二の金型31、32で積層体10を挟み込むと、加工用突起36の先端が、ベースフィルム11の接続部16の真裏位置に押し当てられ、ベースフィルム11が加工用突起36で押圧される。
【0020】
ベースフィルム11はポリイミド樹脂のような柔軟性を有する樹脂で構成されており、その膜厚はベースフィルム11が可撓性を有する程度の厚さ(8μm以上25μm)になっているので、押圧によってベースフィルム11は接続部16に向かって押し曲げられ、各接続部16がベースフィルム11を介して加工用突起36で押圧される。
【0021】
配線膜15は銅箔のような金属箔で構成されており、その膜厚は押圧によって変形する程度の厚さ(8μm以上35μm以下)になっているので、加工用突起36で各接続部16を押圧すると、各接続部16がベースフィルム11と反対側にそれぞれ盛り上がり、加工用凹部37内で膨出する。
【0022】
加工用凹部37の容積は加工用突起36の体積よりも大きく、加工用凹部37の形状は、ベースフィルム11と配線膜15を一緒に挟んだ状態で、加工用突起36を加工用凹部37に嵌合させた時に、接続部16が配線膜15の他の部分から10μm以上20μm以下の高さで膨出し、膨出した接続部16の表面と、加工用凹部37の内壁との間に隙間が生じないようになっている。
【0023】
従って、各接続部16には、配線膜15の他の部分の表面から先端までの高さが10μm以上20μm以下であって、加工用凹部37の形状に応じた形状の突起18が同時に形成される(図1(c))。
【0024】
図1(d)は第一、第二の金型31、32の間から積層体10を取り出し、加工用突起36による荷重を無くした状態を示しており、接続部16は塑性変形し、突起18が形成された状態が維持されている。
ベースフィルム11の突起18の真裏部分は、接続部16に密着しているため、接続部16と一緒に変形した状態が維持され、凹部17が形成されている。
【0025】
図1(d)の符号20は積層フィルムを示しており、積層フィルム20は基材シート21と、基材シート21の表面に配置された層状の樹脂材料22とを有している。積層フィルム20の樹脂材料22が配置された側の面を、積層体10のベースフィルム11側の面に押し当てると、ベースフィルム11の凹部17が形成された側の面に樹脂材料22が密着する。
【0026】
その状態で全体を加熱し、加熱によって樹脂材料22の復元力を減少させた状態で、積層フィルム20を積層体21に向かって押圧すると、ベースフィルム11表面の凹部17と凹部17の間の部分に樹脂材料21が密着すると同時に、凹部17内に樹脂材料22の一部が入り込み、凹部17内が隙間無く充填される。
【0027】
樹脂材料22の膜厚は、凹部17に樹脂材料22の一部が充填されても樹脂材料22全体が殆ど変形しない程度に厚くなっているので、樹脂材料22のベースフィルム11の反対側の面には新たな凹部は形成されず、平坦なまま維持される(図2(e))。
【0028】
樹脂材料22は熱硬化性の樹脂であるポリイミド前駆体を主成分としており、凹部17が樹脂材料22で充填された状態で、ポリイミド前駆体が重合する重合温度以上に加熱すると、ポリイミド前駆体が重合し、樹脂材料22が凹部17を充填した状態で硬化する。
【0029】
上述したように、ベースフィルム11はポリイミド樹脂で構成されている。従って、硬化した樹脂材料22はベースフィルム11と同じ種類の樹脂を含有することになるので、硬化した樹脂材料22のベースフィルム11に対する親和性は高く、硬化した樹脂材料22はベースフィルム11に強固に接着される。
【0030】
ここでは、基材シート21は剥離フィルムで構成されており、基材シート21と硬化した後の樹脂材料22との間の接着力は、硬化した樹脂材料22とベースフィルム11との間の接着力に比べて弱いので、基材シート21を引き剥がすと、基材シート21と樹脂材料22との界面で剥離が起こって基材シート21が除去され、硬化した樹脂材料22はベースフィルム11上に残る。
【0031】
図2(f)の符号1aは基材シート21を剥離した後の本発明第一例のフレキシブル配線板を示している。次に、このフレキシブル配線板1aに電気部品を接続する工程を説明する。
【0032】
図3(a)の符号4は半導体チップのような電気部品を示しており、電気部品4は部品本体41を有している。部品本体41の一面にはランド部42が配置されており、ランド部42は部品本体41の内部回路に接続されている。
【0033】
フレキシブル配線板1aの突起18が形成された側の面に異方導電性接着フィルム45を配置し、ランド部42と突起18とが対向するように、電気部品4とフレキシブル配線板1aの位置合わせを行う。
【0034】
次いで、電気部品4を異方導電性接着フィルム45に密着させ、加熱押圧すると、異方導電性接着フィルム45のバインダー樹脂46が昇温して軟化し、押圧によって突起18が軟化したバインダー樹脂46を押し退け、バインダー樹脂46中に分散された導電性粒子47が突起18の先端とランド部42の間に挟みこまれる。
【0035】
積層体10は膜厚が16μm以上60μm以下と薄いにも関わらず、突起18の高さが10μm以上20μm以下になるように大きく変形しており、突起18の真裏位置に空間(ボイド)がある状態で、突起18をランド部42に押し付けると、フレキシブル配線板1aが変化してしまうが、上述したように凹部17は樹脂材料22で隙間無く充填されているので、フレキシブル配線板1aが変形しない。
【0036】
バインダー樹脂46はエポキシ樹脂のような熱硬化性の樹脂を有しており、更に加熱押圧を続けると、導電性粒子47が突起18とランド部42で挟み込まれた状態でバインダー樹脂46が硬化する。
【0037】
図3(b)の符号2はバインダー樹脂が硬化した状態の電気装置を示している。この電気装置2は、突起18とランド部42とで導電性粒子47を挟み込むことでフレキシブル配線板1aの配線膜が、電気部品4の内部回路に電気的に接続されており、硬化したバインダー樹脂46によって機械的にも接続されている。
【0038】
以上は、積層フィルム20を積層体10に貼付した後、基材シート21を剥離する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述した工程で凹部17を樹脂材料22で充填した後、樹脂材料22から基材シート21を剥離せずに、基材シート21を樹脂材料22と一緒に積層体10に貼付したまま残してもよい。
【0039】
図4の符号1bは、基材シート21が樹脂材料22と一緒に積層体10に貼付された本発明第2例のフレキシブル配線板を示している。この場合、基材シート21は剥離フィルムではなく、硬化した樹脂材料22に対して密着性の高いものを用いることが好ましい。
【0040】
また、凹部17の充填方法は、樹脂材料22を貼付する場合に限定されるものではない。例えば、ポリイミド樹脂前駆体である充填用樹脂と、溶媒とを混合して液状の樹脂材料を作成し、図1(a)〜(c)の工程で突起18が形成された状態の積層体10の凹部17側の面に該樹脂材料を塗布すると、凹部17が樹脂組成物で充填され、ベースフィルム11上に樹脂材料の塗布層が形成される。
【0041】
次いで塗布層を加熱し、余分な溶媒を塗布層から蒸発させると共に、塗布層中のポリイミド前駆体を重合させると、塗布層を構成する樹脂材料が硬化する。図5の符号1cは、ベースフィルム11上で液状の樹脂材料39が硬化した状態の本発明第3例のフレキシブル配線板を示している。
【0042】
以上は、パターニング後の配線膜15を膨出させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図6(a)の符号50は本発明に用いる積層体の第2例を示しており、積層体50はベースフィルム51と、ベースフィルム51上に配置され、銅箔のような金属箔で構成された導電膜52とを有している。
【0043】
上述した第一、第二の金型31、32を加工用突起36が配置された面と加工用凹部37が配置された面とが互いに対向するように配置し、積層体50をベースフィルム51側の面が加工用突起36が配置された面と対向し、導電膜52側の面が加工用凹部37が配置された面と対向するように第一、第二の金型31、32の間に配置する。
【0044】
第一、第二の金型31、32と積層体50を、加工用突起36と加工用凹部37とが互いに対向し、導電膜52の後述する接続部が形成される部分が互いに対向する加工用突起36と、加工用凹部37との間に位置するように位置合わせを行う(図6(b))。
【0045】
上述した第一例の積層体10の場合と同様に、この積層体50のベースフィルム51は柔軟性を有しており、導電膜は押圧によって変形可能になっているので、第一、第二の金型31、32で積層体50を挟み込むと、導電膜52がベースフィルム11を介して加工用突起36で押圧されて、加工用凹部37側へ膨出する。
【0046】
加工用凹部37と加工用突起36の大きさは、導電膜52を挟んで嵌合したときに、導電膜52の表面が他の部分の表面から10μm以上20μm以下の高さに盛り上がるようになっており、その盛り上がった部分と加工用凹部37の内壁との間に隙間が生じないようになっている。
【0047】
従って、積層体50を挟み込んだ状態で加工用凹部37と加工用突起36が嵌合すると、導電膜52に高さ10μm以上20μm以下であって、加工用凹部37の形状に応じた形の突起58が形成される。
【0048】
図6(d)は第一、第二の金型31、32の間から積層体50を取り出した状態を示している。導電膜52は塑性変形し、突起58が形成された状態が維持されており、ベースフィルム51の突起58の真裏部分は導電膜52と一緒に変形し、凹部57が形成されている。
【0049】
次に、上述した図1(d)〜図2(f)、図4、図5に示したいずれかの方法で凹部57に樹脂材料22を充填した後、導電膜52の突起58が形成された側の面にレジスト層25を形成する(図6(e))。
【0050】
導電膜52の所定位置に細長のレジスト層25が残留し、細長のレジスト層25の長手方向の端部であって、突起58上の位置に幅広のレジスト層25が残留するように、レジスト層25の露光、現像する(パターニング)。
【0051】
図7(f)はパターニングされたレジスト層25が導電膜52上に配置された状態を示しており、パターニングされたレジスト層25の間に露出する導電膜52をエッチング除去すると、導電膜52の幅広のレジスト層25が残留した部分が接続部56として残り、細長のレジスト層25が残留した部分が配線部として残り、接続部56と配線部とを有する配線膜55が形成される。図7(g)の符号1dは配線膜55上からレジスト層25を除去した状態の本発明第4例のフレキシブル配線板を示している。
【0052】
以上は、樹脂材料22で凹部57を充填した後に、導電膜55のパターニングを行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図6(a)〜(d)に示した工程で導電膜52に突起58を形成した後、凹部57を充填する前に、導電膜52上にレジスト層25を配置し、上述した図6(e)、図7(f)に示した工程でレジスト層25を露光、現像する(図8(a))。
【0053】
レジスト層25の間に露出する導電膜52をエッチング除去し、レジスト層25を除去した後、図1(d)〜図2(f)、図4、図5に示したいずれかの方法で凹部57に樹脂材料22を充填すれば、図8(c)の符号1eに示すような本発明第5例のフレキシブル配線板が得られる。
【0054】
以上は、ベースフィルム11を介して加工用突起36で導電膜52を押圧する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図9(a)は本発明に用いる第3例の積層体60を示しており、この積層体60はキャリアフィルム61と、キャリアフィルム61上に配置された導電膜62とを有している。
【0055】
この積層体60を、導電膜62側の面と加工用突起36が配置された側の面と対向し、キャリアフィルム61側の面が加工用凹部37が配置された側の面と対向するように、上述した第一、第二の金型31、32の間に配置し、加工用突起36と加工用凹部37が互いに対向し、導電膜62の後述する接続部が形成される部分が対向する加工用突起36と加工用凹部37の間に位置するように位置あわせをし、第一、第二の金型31、32で積層体60を挟み込むと、導電膜62に加工用突起36に押し当てられ、導電膜62がキャリアフィルム61側に押し曲げられ、導電膜62がキャリアフィルム61側に膨出して突起68が形成されると同時に、突起68の真裏位置が窪み、凹部67が形成される(図9(b))。
【0056】
キャリアフィルム61は柔軟性を有する樹脂で構成されており、その膜厚はキャリアフィルム61が可撓性を有する程度に薄くされているので、導電膜62が変形すると、キャリアフィルム61も一緒に変形する。
【0057】
図9(c)は第一、第二の金型31、32の間から取り出し、加工用突起36による荷重を無くした状態を積層体60を示している。導電膜62は塑性変形し、キャリアフィルム61側に膨出した突起68が形成され、突起68の真裏位置に凹部67が形成された状態が維持されており、キャリアフィルム61は導電膜62と一緒に変形している。
【0058】
次に、導電膜62のキャリアフィルム61とは反対側の面にレジスト層25を形成する(図9(d))。導電膜62の所定位置に細長のレジスト層25が残留し、細長のレジスト層25の長手方向の端部であって、凹部67上に幅広のレジスト層25が残留するように、レジスト層25のパターニングを行う(図9(e))。
【0059】
パターニングされたレジスト層25の間に露出する導電膜62をエッチング除去すると、導電膜62の幅広のレジスト層25が残留する部分が幅広の接続部66として残り、細長のレジスト層25が残留する部分が細長の配線部として残り、接続部66と配線部とを有する配線膜が形成される。
【0060】
図9(f)は配線膜65が形成された状態を示しており、レジスト層25をパターニングする工程と、導電膜62をエッチング除去する工程では、キャリアフィルム61は除去されないので、配線膜65はキャリアフィルム61によって支持されている。
【0061】
ポリイミド前駆体である充填用樹脂と、溶媒とを混合して液状の樹脂材料を作成し、キャリアフィルム61の配線膜65が形成された側の面に塗布すると、配線膜65の間と、接続部66に形成された凹部67に樹脂材料が充填され、配線膜65に密着する樹脂材料の塗布層が形成される。
【0062】
次いで、塗布層を加熱すると、充填用樹脂が熱重合し、樹脂材料が凹部67を充填した状態で硬化し、効果した樹脂材料からなるベースフィルム63が形成される(図10(g))。
次いで、キャリアフィルム61を除去し、突起68を露出させると、図10(h)に示すような本発明第6例のフレキシブル配線1dが得られる。
【0063】
上述したように、配線膜65の間と、凹部67に充填された樹脂材料が硬化してベースフィルム63が形成されているので、配線膜65の間と凹部67内にはベースフィルム63が配置された状態になっている。
【0064】
以上は、導電膜を、ベースフィルムやキャリアフィルムと一緒に変形させて突起を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図11(a)の符号62は金属箔からなる導電膜を示しており、この導電膜62を、第一の金型31の加工用突起36が形成された面と、第二の金型32の加工用凹部37が形成された面の間に配置し、第一、第二の金型31、32と、導電膜62を、加工用突起36と加工用凹部37が互いに対向し、導電膜62の後述する接続部が形成される部分が、互いに対向する加工用突起36と加工用凹部37の間に位置するよう位置合わせを行った後、第一、第二の金型31、32で導電膜62を挟み込むと、導電膜62が各加工用突起36で直接押圧され、加工用凹部37側に膨出する。
【0065】
加工用凹部37と加工用突起36の大きさは、導電膜62を挟み込んで嵌合したときに、導電膜62の表面が他の部分の表面から10μm以上20μm以下の高さに加工用凹部37側に盛り上がり、その盛り上がった部分と加工用凹部37の内壁との間に隙間が生じないようになっている。
【0066】
従って、導電膜62の加工用突起36で押圧された部分には、高さが10μm以上20μ以下であって、加工用突起36と対応した形状の突起68が形成されると同時に、突起68の真裏位置に加工用突起36と対応した形状の凹部67が形成される。
【0067】
第一、第二の金型31、32から突起68と凹部67が形成された状態の導電膜62を取り出し、導電膜62の凹部67が形成された側の面にキャリアフィルム61を配置する。図9(c)〜図(f)に示した工程で導電膜72の所定部分をエッチング除去して接続部と配線部とを有する配線膜を形成し、図10(g)、(h)に示した工程でベースフィルムを形成すると、図10(h)に示したようなフレキシブル配線板1dが得られる。
【0068】
以上は、導電膜72をパターニングした後、ベースフィルムを形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図12(a)は図11(a)、(b)に示した工程で、導電膜62に突起68と凹部67が形成された状態を示しており、この導電膜62の凹部67が形成された側の面に、図10(g)、(h)に示した工程でベースフィルム71を形成すると、凹部67がベースフィルム71を構成する樹脂材料で充填される(図12(b))。
【0069】
次に、図6(e)、図7(f)、(g)に示した工程で、導電膜62の所定部分をエッチング除去すると、突起68が位置する部分に形成された幅広の接続部66と、該接続部に接続された細長の配線部からなる配線膜65が形成され、図12(c)に示すようなフレキシブル配線板1eが得られる。このフレキシブル配線板1eでは、配線膜65の凹部67がベースフィルム71の樹脂材料で充填されている。
【0070】
以上は、ベースフィルム71を構成する樹脂材料で凹部67が充填される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図13の符号1fに示すフレキシブル配線板は、配線膜44の突起48が形成された側の面がベースフィルム40に密着して配置されており、ベースフィルム40の突起48上に位置する部分はエッチング除去され、突起48の先端部分がベースフィルム40表面から突き出されている。
【0071】
配線膜44には上述した図1(b)、(c)又は図6(b)、(c)で示した工程で突起48が形成される時に、突起48の真裏位置に凹部49が形成されている。ベースフィルム40の配線膜44が配置された面には、上述した図1(d)、図2(e)、(f)に示した工程、図4で示した工程又は図5で示した工程で樹脂材料69が配置され、凹部49内部が樹脂材料69で充填されている。
【0072】
以上は、フレキシブル配線板の片面に突起を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図14(a)の符号80は積層体を示している。この積層体80はベースフィルム81を有しており、ベースフィルム81の表面と裏面には、パターニングされた金属膜からなる第一、第二の配線膜85a、85bが配置されている。ベースフィルム81には導電材料83が充填された貫通孔82が設けられ、第一、第二の配線膜85a、85bはその導電材料83によって電気的に接続されている。
【0073】
図14(a)の符号91、92はそれぞれ第一、第二の金型を示している。
第一の金型91の一面には、第一、第二の金型91、92で積層体90を挟み込んだ時に、積層体80の表面に突起を形成すべき位置に第一の加工用凹部98が形成され、積層体80の裏面に突起を形成すべき位置に第一の加工用突起96が形成されている。
【0074】
他方、第二の金型92の一面には、第一、第二の金型91、92で積層体80を挟み込んだ時に、積層体80の表面に突起を形成すべき位置に第二の加工用突起97が形成され、積層体80の裏面に突起を形成すべき位置に第二の加工用凹部99が形成されている。
【0075】
第一の加工用凹部98は第二の加工用突起97と相似形であって、その容積は第二の加工用突起97の体積よりも大きく、また、第二の加工用凹部99は第一の加工用突起96と相似形であって、その容積は第一の加工用突起96の体積よりも大きくされているので、第一、第二の金型91、92の間に上述した積層体80を配置し、第一、第二の金型91、92で積層体80を挟み込み、積層体80をプレスすると、第一の加工用突起96と、第二の加工用凹部99が積層体80を挟んだ状態で嵌合し、第二の加工用突起97と第一の加工用凹部98とが積層体80を挟んだ状態で嵌合する。
【0076】
第一の配線膜85aは積層体80の表面に位置し、第二の配線膜85bは積層体80の裏面に位置しており、第一、第二の配線膜85a、85bは所定形状にパターニングされ、該パターニングによって突起を形成すべき部分は幅広にされ、第一、第二の接続部86a、86bが形成されている。
【0077】
従って、第一の加工用突起96と第二の加工用凹部99が嵌合すると、第一の加工用突起96が第一の接続部86aの真裏に位置するベースフィルム81又は第二の配線膜85bを押し上げ、第一の接続部86aが第二の加工用凹部99側へ膨出し、第二の加工用突起97が第一の加工用凹部98に嵌合すると、第二の加工用突起97が第二の接続部86bの真裏位置でベースフィルム81又は第一の配線膜85aを押し上げ、第二の接続部86bが第一の加工用凹部98側へ膨出される。
【0078】
第一の加工用突起96と第一の加工用凹部98は同じ第一の金型91に形成され、第二の加工用突起97と第二の加工用凹部99は同じ第二の金型に形成されているので、1回のプレスで積層体80の表面側の第一の接続部86aと、裏面側の第二の接続部86bが一緒に膨出し、第一、第二の突起88a、88bが形成される(図14(b))。
【0079】
図14(c)は積層体80を第一、第二の金型91、92から取り出し、第一、第二の加工用突起96、97が積層体80から取り払われた後の状態を示している。第一、第二の配線膜85a、85bは金属膜のような展性を有する導電膜で構成されているので、第一、第二の接続部86a、86bの膨出された部分は塑性変形し、第一、第二の突起88a、88bが形成された状態が維持されている。
【0080】
第一、第二の突起88a、88bの真裏に位置するベースフィルム81や第一、第二の配線膜85a、85bは第一、第二の突起88a、88bが形成される時に一緒に窪み、第一、第二の加工用突起96、97が取り払われた後も窪んだ状態が維持され、第一、第二の凹部87a、87bが形成されている。
【0081】
従って、第一、第二の金型91、92から取り出した状態では、積層体80の表面には第一の突起88aと第一の凹部87aの両方が形成され、裏面には第二の突起88bと第二の凹部87bの両方が形成されている。
【0082】
次に、積層体80の表面及び裏面に、上述した図1(d)、図2(e)、(f)に示した工程、図4で示した工程又は図5で示した方法で樹脂材料95を配置し、第一、第二の凹部87a、87b内に樹脂材料95を充填した後、第一、第二の突起88a、88bの先端部分が露出し、かつ、第一、第二の凹部87a、87b内に充填された樹脂材料95が残る程度に、樹脂材料95のエッチングを行うと、フレキシブル配線板1gが得られる(図14(d))。
【0083】
以上は、予めパターニングされた第一、第二の配線膜85a、85bに第一、第二の突起88a、88bを形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ベースフィルムの表面及び裏面にパターニング前の第一、第二の導電膜が配置して積層体を作成し、該積層体を上述した第一、第二の金型91、92で挟み込んで、その表面に第一の突起と第一の凹部を形成すると同時に、その裏面に第二の突起と第二の凹部を形成した後、第一、第二n導電膜を所定形状にパターニングした後、上述した図14(c)、(d)で説明した工程で、第一、第二の凹部内部に樹脂材料を充填した場合も、図14(d)に示すようなフレキシブル配線板が得られる。
【0084】
両面に突起を有するフレキシブル配線板を製造する場合も、配線膜(第一、第二の配線膜)や導電膜の膜厚が8μm以上35μm以下と薄く、ベースフィルムの膜厚が8μm以上25μm以下と薄ければ、積層体80が容易に変形するので、第一、第二の加工用突起96、97で押圧する時の荷重が少なくて済む。
【0085】
以上は、第一、第二の加工用突起96、97が第一、第二の配線膜85a、85b又はベースフィルムに直接接触する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば積層体80の表面及び裏面にカバーフィルムを貼付し、第一、第二の加工用突起96、97を、カバーフィルムの第一、第二の接続部の裏面側の位置に押し当てれば、第一、第二の突起を形成する時に、第一、第二の配線膜やベースフィルムに第一、第二の加工用突起96、97が直接接触せず、第一、第二の加工用突起96、97にかける荷重を大きくしても、第一、第二の配線膜やベースフィルムが破損しない。
【0086】
以上は、予めパターニングされた第一、第二の配線膜85a、85bに突起をそれぞれ形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ベースフィルムの両面にパターニング前の第一、第二の導電膜を配置し、第一、第二の突起を第一、第二の導電膜にそれぞれ形成した後、第一、第二の導電膜をパターニングすれば、第一、第二の突起が形成された状態の第一、第二の配線膜が得られる。
【0087】
以上は、第一、第二の配線膜が貫通孔内の導電性材料によって電気的に接続された場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一、第二の配線膜が電気的に接続されていない場合も本発明には含まれる。
【0088】
以上は、導電膜や配線膜の表面及び裏面のうち、いずれか一方又は両方が、加工用突起36や加工用凹部37に直接接触させて突起を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
上述した積層体、又は導電膜のうち、導電膜表面が露出する部分に保護フィルムを貼付した後、加工用突起36で押圧すれば、導電膜や配線膜が加工用突起36や加工用凹部37に直接接触させずに、突起を形成することができるので、導電膜や配線膜の損傷を防御することができる。
【0090】
以上はベースフィルム11にポリイミド樹脂を含有するものを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、可撓性を有するベースフィルムを形成可能な樹脂であれば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等種々のものを用いることが可能であり、これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0091】
フレキシブル配線板と電気部品を接続する際に、熱硬化性の接着剤を用いる場合には、ベースフィルムの主成分である樹脂のガラス転移温度が低いと、フレキシブル配線板が変形する原因となるので、そのガラス転移温度は300℃以上であることが好ましい。また、可撓性を有しない範囲であれば、2枚以上の樹脂フィルムを張り合わせてベースフィルム11としてもよい。
【0092】
突起を形成するときには、積層体又は導電膜を加熱しながら加工用突起36で押圧することもできる。本発明に用いるベースフィルムは膜厚が8μm以上25μm以下と薄く、高い温度で加熱されるとベースフィルムが破断する場合があるので、加工用突起36で押圧するときの温度は、ベースフィルムの主成分である樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
【0093】
導電膜や配線膜を構成する導電材料も銅に限定されるものではなく、アルミニウム等種々の導電材料を用いることができる。
凹部を充填する樹脂材料の樹脂もポリイミド樹脂に限定されるものではなく、凹部が形成された対象物(ベースフィルムや導電膜)に対して接着性が高い樹脂であれば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等種々の樹脂を含有するものを用いることができる。
【0094】
凹部内に樹脂材料を配置した後、加熱によって樹脂材料を硬化させる場合には、その加熱温度はベースフィルムの主成分であるガラス転移温度未満であることが好ましい。また、該樹脂材料を硬化させる方法は加熱に限定されず、例えば樹脂材料に光重合性樹脂を含有させた場合には、光照射によって樹脂材料を硬化させることができる。
【0095】
ベースフィルムの凹部に樹脂材料を配置する場合には、ベースフィルムの主成分と同じ種類の樹脂を含有する樹脂材料を用いれば、樹脂材料とベースフィルムの密着性が高くなる。
【0096】
また、以上はベースフィルムや配線膜の凹部に、樹脂材料を隙間無く充填する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、突起がランド部に押し当てられる時にフレキシブル配線板が変形しない程度であれば、樹脂材料を配置した後の凹部に多少の空間(ボイド)が残ってもよい。
【0097】
樹脂材料の配置に用いる基材シートの種類は特に限定されるものではないが、基材シートを樹脂材料から剥離せずに、フレキシブル配線板に残す場合には、柔軟性を有する樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0098】
樹脂材料を塗布する場合には、その塗布方法は特に限定されるものではなく、ワイヤバー、グラビアコーター等種々の塗布装置を用いて塗布することができる。 樹脂材料は積層体の凹部が形成された面全部に配置してもよいし、凹部が形成された部分だけに配置してもよい。また、インクジェットプリンタ等の塗布装置に液状の樹脂材料を充填し、該塗布装置のノズルから樹脂材料を凹部に向けて吐出し、凹部が位置する部分だけに樹脂材料を配置してもよい。
【0099】
本発明のフレキシブル配線板に接続される電気部品は半導体素子に限定されず、本発明のフレキシブル配線板には他のフレキシブル配線板、リジッド基板、抵抗器等種々のものを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】(a)〜(d):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第一例の前半を説明する断面図
【図2】(e)、(f):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第一例の後半を説明する断面図
【図3】(a)、(b):本発明のフレキシブル配線板と電気部品とを接続する工程を説明する断面図
【図4】本発明第二例の製造方法で作成されたフレキシブル配線板を説明する断面図
【図5】本発明第三例の製造方法で作成されたフレキシブル配線板を説明する断面図
【図6】(a)〜(e):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第四例の前半の断面図
【図7】(f)、(g):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第四例の後半の断面図
【図8】(a)〜(c):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第五例を説明する断面図
【図9】(a)〜(f):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第六例の前半の断面図
【図10】(g)、(h):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第六例の後半の断面図
【図11】(a)〜(c):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第七例を説明する断面図
【図12】(a)〜(c):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第八例を説明する断面図
【図13】本発明の第九例の製造方法で作成されたフレキシブル配線板を説明する断面図
【図14】(a)〜(d):本発明のフレキシブル配線板の製造工程の第十例を説明する断面図
【符号の説明】
【0101】
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g……フレキシブル配線板 10、50、60、80……積層体 11、51、63、71……ベースフィルム 15、65、55、85a、85b……配線膜 17、57、67……凹部 18、58、68……突起 36……加工用突起 37……加工用凹部 20……積層フィルム 21……基材シート 22、39……樹脂材料 25……レジスト層 52、62……導電膜 61……キャリアフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、
ベースフィルム上にパターニングされた配線膜を配置し、
前記配線膜と前記ベースフィルムが配置された部分の、前記ベースフィルムの所定位置に加工用突起を当接して、前記加工用突起で前記ベースフィルムを押圧し、前記配線膜を膨出させて前記突起を形成し、
前記突起の裏面側に形成された前記ベースフィルムの凹部に樹脂材料を配置するフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項2】
配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、
導電膜上に配置されたベースフィルムの所定位置に加工用突起を当接し、前記加工用突起で前記ベースフィルムを押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数個形成し、
前記突起の裏面側に形成された前記ベースフィルムの凹部に樹脂材料を配置した後、
前記導電膜の前記突起が形成された側の面に、所定形状のレジスト層を配置し、前記導電膜の前記レジスト層から露出した部分を除去して、前記配線膜を形成するフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項3】
配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、
導電膜上に配置されたベースフィルムの所定位置に加工用突起を当接し、前記加工用突起で前記ベースフィルムを押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数個形成し、
前記導電膜の前記突起が形成された側の面に、所定形状のレジスト層を配置し、前記導電膜の前記レジスト層から露出した部分を除去して、前記配線膜を形成し、
前記突起の裏面側に形成された前記ベースフィルムの凹部に樹脂材料を配置するフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂材料の配置は、前記ベースフィルムの主成分と同じ種類の樹脂を主成分とする前記樹脂材料を用いる請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項5】
配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、
キャリアフィルム上に配置された導電膜の所定位置に、加工用突起を接触させ、前記各加工用突起で前記導電膜を押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数形成し、
前記導電膜の前記突起が形成された側の面とは反対側の面に、所定形状のレジスト層を配置し、
前記導電膜の前記レジスト層から露出する部分をエッチング除去して前記配線膜を形成し、レジスト層を除去した後、
前記突起の裏面側に形成された前記配線膜の凹部に樹脂材料を配置し、前記配線膜と密着するベースフィルムを形成した後、前記キャリアフィルムを除去するフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項6】
配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、
導電膜の所定位置に加工用突起を接触させ、前記各加工用突起で前記導電膜を押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数形成し、
前記導電膜の前記突起が形成された側の面にキャリアフィルムを配置し、前記導電膜の前記突起が形成された側の面とは反対側の面に所定形状のレジスト層を配置し、
前記導電膜の前記レジスト層から露出する部分をエッチング除去して前記配線膜を形成し、レジスト層を除去した後、
前記突起の裏面側に形成された前記配線膜の凹部に樹脂材料を配置し、前記配線膜と密着するベースフィルムを形成した後、前記キャリアフィルムを除去するフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項7】
配線板の配線膜上に突起が形成されたフレキシブル配線板を製造するフレキシブル配線板の製造方法であって、
導電膜の所定部分を加工用突起で押圧し、前記導電膜を膨出させて前記突起を複数形成した後、
前記突起の裏面側に形成された前記導電膜の凹部に樹脂材料を配置してベースフィルムを形成し、
前記導電膜の前記突起が形成された側の面に、所定形状のレジスト層を配置した後、前記導電膜の前記レジスト層から露出する部分をエッチング除去し、前記配線膜を形成するフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂材料の配置は、基材シート上に配置された樹脂材料を、前記凹部に密着させる請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂材料を前記凹部に密着させた後、前記基材シートを前記樹脂材料から剥離する請求項8記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂材料の配置は、前記凹部に樹脂材料を塗布する請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項11】
前記凹部に前記樹脂材料を配置した後、前記樹脂材料を硬化させる請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項12】
第一の加工用突起と、第一の加工用凹部が形成された第一の金型と、前記第一の加工用突起と嵌合する位置に第二の加工用凹部が形成され、前記第一の加工用凹部と嵌合する位置に第二の加工用突起が形成された第二の金型との間に、積層体を配置し、
前記積層体の前記ベースフィルムの表面に位置する第一の導電膜を前記第一の加工用突起と前記第二の加工用凹部の間に位置させ、前記ベースフィルムの裏面に位置する第二の導電膜を前記第二の加工用突起と前記第一の加工用凹部の間に位置させて、前記第一、第二の金型で前記積層体を挟み込み、
前記積層体の表面に凸部と凹部を形成し、かつ、前記積層体の裏面に凸部と凹部を形成するフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項13】
前記ベースフィルムに貫通孔を形成しておき、前記貫通孔に充填した導電材料で前記第一、第二の導電膜を電気的に接続した後、前記第一、第二の金型で前記積層体を挟み込む請求項12記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項14】
前記積層体の表面に形成された凹部と、前記積層体の裏面に形成された凹部に樹脂材料を配置する請求項12又は請求項13のいずれか1項記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項15】
ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置され、所定形状にパターニングされた配線膜とを有し、
前記配線膜には突起が形成されたフレキシブル配線板であって、
前記ベースフィルムの前記配線膜とは反対側の面には、前記突起が位置する部分に凹部が形成され、前記凹部には樹脂材料が配置されたフレキシブル配線板。
【請求項16】
前記ベースフィルムと前記樹脂材料は、同じ種類の樹脂を主成分とする請求項15記載のフレキシブル配線板。
【請求項17】
ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置され、所定パターニングされた配線膜とを有し、
前記配線膜の表面には突起が形成されたフレキシブル配線板であって、
前記配線膜の前記突起の裏面側には凹部が設けられ、前記凹部には樹脂材料が配置されたフレキシブル配線板。
【請求項18】
前記樹脂材料は前記ベースフィルムの一部分で構成された請求項17記載のフレキシブル配線板。
【請求項19】
前記ベースフィルムは可撓性を有する樹脂フィルムで構成された請求項15乃至請求項18のいずれか1項記載のフレキシブル配線板。
【請求項20】
前記ベースフィルムはガラス転移温度が300℃以上の樹脂を主成分とする請求項19記載のフレキシブル配線板。
【請求項21】
前記ベースフィルムはポリイミド樹脂を主成分とする請求項19又は請求項20のいずれか1項記載のフレキシブル配線板。
【請求項22】
前記ベースフィルムの膜厚は8μm以上25μm以下である請求項15乃至請求項21のいずれか1項記載のフレキシブル配線板。
【請求項23】
前記配線膜の膜厚は8μm以上35μm以下である請求項15乃至請求項22のいずれか1項記載のフレキシブル配線板。
【請求項24】
前記接続部の先端の、前記配線膜の他の部分の表面からの高さは10μm以上20μm以下である請求項15乃至請求項23のいずれか1項記載のフレキシブル配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−86153(P2006−86153A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266338(P2004−266338)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル株式会社 (595)
【Fターム(参考)】