プラズマ処理方法及び装置並びにプラズマCVD方法及び装置
【課題】
一様で安定したプラズマを形成でき、大面積基板に均一な膜厚及び膜質分布で成膜できるプラズマ処理方法及び装置並びにプラズマCVD方法及び装置を提供する。
【解決手段】
本発明によるプラズマ処理装置又はプラズマCVD装置では、電極が、金属製電極本体と、基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置している。
また、本発明によるプラズマ処理方法又はプラズマCVD法は、高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるように構成される。
一様で安定したプラズマを形成でき、大面積基板に均一な膜厚及び膜質分布で成膜できるプラズマ処理方法及び装置並びにプラズマCVD方法及び装置を提供する。
【解決手段】
本発明によるプラズマ処理装置又はプラズマCVD装置では、電極が、金属製電極本体と、基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置している。
また、本発明によるプラズマ処理方法又はプラズマCVD法は、高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液晶分野で用いられる大面積基板に薄膜を均一に形成するのに用いられ得るプラズマ処理方法及び装置並びにプラズマCVD方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面で高品質で低価格の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの需要が増大するのに伴い、それらの生産に用いられるマザーガラスの基板サイズの大型化が加速している。
【0003】
今日、大画面で高品質で低価格の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの需要が増大し、それらの生産に用いられるマザーガラスの基板サイズの大型化が加速している。それに伴い、基板上にデバイスを製作する工程において、プラズマを周いた成膜、エッチング、表面改質等の処理工程では、処理面積の大型化と処理性能の面内均一性が重要な課題とされている。
【0004】
従来から薄膜トランジスタを形成するためには、高周波のプラズマCVD法により、アモルファスシリコン(a−Si)、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiOx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)、nドープアモルファスシリコン(n+a−Si)を基板上に堆積する方法が採られてきた。
【0005】
これらの薄膜を基板上に形成する際には、プラズマCVD装置において高周波電力を用いて成膜ガスをプラズマ化する。しかし、基板の大型化に伴い高周波電力を供給する電極の大きさが大きくなればなるほど電極上で発生する定在波がプラズマ密度の面内均一性に影響し、堆積膜の膜厚の不均一性の悪化を招くことが知られている。
【0006】
従来から薄膜トランジスタを形成するためには、高周波のプラズマCVD法によるアモルファスシリコンや窒化シリコン膜、nドープアモルファスシリコンを基板上に堆積するが、基板の大型化に伴う電極の大型化により定在波の問題がある。一方で薄膜トランジスタを形成する薄膜においては低ダメージの成膜が望ましいとされており、そのためには工業周波数である13.56MHzより高い周波数で成膜することが望ましい。しかし、定在波の影響は周波数が上がるほどより短い距離でも影響を受けやすくなるため高い周波数を利用するためにはカソード分割などの方法が提案されてきたが、これにも問題がある。
【0007】
定在波の影響より具体的には電極面内にて電圧分布が生じるためにプラズマ強度に分布が生じることなる。そのため堆積された薄膜の膜質、膜厚に分布が生じる。
【0008】
同時に、使用する基板の大きさが大きくなるほど、電極の大きさも大きくなり、電極及び基板ホルダーの配置される真空槽も大きくなり、プラズマに供給される高周波電力も大きくなるが、電極の真空槽に対する相対的な大きさは小さくされるため、基板を載置する基板ホルダーから真空槽壁を介して接地電位へ流れる電流分布のプラズマへの影響が無視できなくなることも知られている。
【0009】
添付図面の図17には従来のプラズマCVD装置の一例を示す。図17において、Aは真空槽で、この真空槽Aの内部には基板ホルダーBと電極Cとが対向して配置されている。基板ホルダーBは真空槽Aの底壁に取り付けられ、内部にヒーターDを備え、上面に基板Eが載置される。
【0010】
電極Cは絶縁部材Fを介して真空槽Aの頂部に取り付けられ、そして成膜ガス供給口Gを介して図示していない成膜ガス導入系に接続される。
また、図示していないが、電極Cは図示していないが高周波電源に接続されて、また真空槽Aには真空排気系が設けられている。
【0011】
このように構成した従来の装置では、高周波電源として、通常13.56MHz又は27.12MHzの周波数の高周波電源が用いられ得る。そして基板Eのサイズが1m×1m以下では、堆積すべき膜の種類に応じて成膜条件を最適化することにより、得られる膜厚分布は±10%以下にすることができる。
【0012】
しかし、基板サイズが1m×1m以上になると、上述の理由で膜厚分布の所望の均一性を確保することができなくなる。
【0013】
このような問題点を解決するため、従来、高周波電力を供給する電極を中心部と周辺部との分割し、電極の中心部と周辺部における電極と基板ホルダーとの距離を調節可能にしてプラズマ分布を調節し、膜厚分布を均一化するようにしたプラズマCVD装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0014】
また、電極を複数の小電極に分割して、分割した電極の境界部分において電極と基板ホルダーとの距離が連続となるようにし、また各小電極に供給する高周波電力を調整し、それにより膜厚分布を均一化するようにしたプラズマ処理装置も従来提案されている(特許文献2参照)。
【0015】
さらに、プラズマ形成装置において、間に放電空間を画定する一対の電極の一方の放電空間に対向した境界面に導電性領域と絶縁性領域とを交互に形成して、絶縁性領域の表面における電荷の蓄積により表面近傍における電界を局所的に増強し、それにより表面全体にわたって一様に電子を放出させ、プラズマの一様性及び安定性を向上させるようにすることも従来提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−289881号公報
【特許文献2】特開2003−68651号公報
【特許文献3】特開2005−63973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献1に記載された装置では、電極の中心部と周辺部との境界が不連続であるために、プラズマが不安定となり、薄膜を均一に形成することができないという問題がある。
【0017】
また、特許文献2に記載された発明では、実際上、分割された小電極間の境界部分でプラズマの安定化が困難であり、異常放電も発生し易く、薄膜を均一化する条件を見出すことが困難であるという問題がある。また、電極間の境界面には反応生成物が付着、剥離し易く、そのため装置内のパーティクルの発生源となり、異常放電の発生源ともなり、その結果製品の歩留まりを低下させるという問題もある。
【0018】
さらに、特許文献3に記載された発明では、電極表面が導電性領域と絶縁性領域とで段差があり、平坦ではないため、導電性領域と絶縁性領域との段差部で異常放電が発生しやすく、安定したプラズマ形成は維持できなくなるという問題がある。また特許文献3の図4a、図4cに示すように誘電体の形状が矩形のような角部を持つ構造である場合には、特に高周波を使用した放電においてはその角部に局所的に電界が集中するために異常放電の原因となり、これにより表面の金属−誘電体境界に放電が集中することで金属部分の溶融現象等によりダストの原因となる。また、段差境界に反応生成物が付着し、剥離し易いという問題もある。
【0019】
そこで、本発明は、従来技術に伴うこのような問題点を解決して、一様で安定したプラズマを形成でき、大面積基板に均一な膜厚及び膜質分布で成膜できるプラズマ処理方法及び装置並びにプラズマCVD方法及び装置を提供することを目的としている。
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の発明によれば、
真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、前記真空槽内にガスを導入すると共に前記電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生し、前記基板ホルダーに載置した基板に対してプラズマ処理を行う容量結合型グロー放電を用いるプラズマ処理装置において、
前記電極が、金属製電極本体と、前記基板ホルダーに対向する前記金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が前記電極の表面と同じ平面内に位置していること
を特徴としている。
【0021】
本発明の第1の発明によるプラズマ処理装置において、基板ホルダーに対向する電極の表面が平坦であり、電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極の中心を中心とする直径が1/8〜1/4λの範囲に設定された第1の円形領域では、電極の表面における金属の表面積と誘電体の表面積の割合が7:3〜5:5であり、第1の円形領域外で電極の中心を中心とする直径が1/4〜1/3λの範囲に設定された第2の円形領域では、電極の表面における金属の表面積と誘電体の表面積の割合が8:2〜7:3であり、また第2の円形領域外で電極の中心を中心とする直径が1/3〜1/2λの範囲に設定された第3の円形領域では、電極の表面における金属の表面積と誘電体の表面積の割合がほぼ8:2であるように構成され得る。
【0022】
また、各誘電体は、横断面形状が楕円形又は円形の柱状構造であり得る。
【0023】
各誘電体が円柱上である場合に、基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれた複数個の各円柱状誘電体は、直径5〜20mm、高さ5〜20mmの範囲に寸法決めされ得る。
【0024】
基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体は電極の表面に等間隔に配列され、電極の表面の中央部に埋め込まれる各誘電体の直径が電極の周辺部に埋め込まれる各誘電体の直径より大きくされ得る
【0025】
基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体の数は、電極の中央部で多く、周縁部で少なく配置され得る。
【0026】
代わりに、基板ホルダーに対向する電極の表面の中央部には高さの高い柱状誘電体が埋め込まれ、また電極の表面の周縁部には高さの低い柱状誘電体が埋め込まれ得る。
【0027】
基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体は電極の表面に同心円状に配列され得る。
【0028】
基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体は電極の表面に等間隔に配列され得る。
【0029】
各誘電体は、アルミナ、A1N、マセライト等のセラミクスとこれらの組み合わせたものを含むグループから選択された材料から成り得る。
【0030】
電極は、アルミニウム及びその合金を基材とし、アルマイト、アルミナ溶射、Y2O3溶射のいずれかの表面処理が施され得る。
【0031】
電極は、一体に構成したシャワーヘッドとシャワープレートから構成され得る。
【0032】
本発明の第2の発明によれば、真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、真空槽内に成膜ガスを導入すると共に電極に高周波電力を供給することにより導入した成膜ガスをプラズマ化して、基板ホルダーに載置した基板上に成膜するようにした容量結合型グロー放電を用いるプラズマCVD装置において、
電極が、金属製電極本体と、基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、基板ホルダーに対向する電極の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が電極の表面と同じ平面内に位置していること
を特徴としている。
【0033】
本発明の第3の発明によれば、真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、真空槽内にガスを導入すると共に電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生し、基板ホルダーに載置した基板に対してプラズマ処理を行う容量結合型グロー放電を用いるプラズマ処理方法において、
高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたこと
を特徴としている。
【0034】
本発明の第3の発明による方法では、金属電極に供給する高周波電力の周波数に応じて、金属電極表面と誘電体の端表面との面積比の異なる構造の金属電極が使用され得る。
【0035】
本発明の第4の発明によれば、成膜ガスとしてモノシラン、ジシランのいずれか及び希釈ガスとしてアンモニア、窒素、アルゴン、一酸化二窒素、水素、ヘリウムガスのいずれか一種類または複数のガスを混合ガスとして真空槽内に供給しグロー放電プラズマを形成し、基板上に薄膜を成膜するプラズマCVD方法であって
高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたこと
を特徴としている。
【0036】
本発明の第4の発明による方法では、金属電極に供給する高周波電力の周波数に応じて、金属電極表面と誘電体の端表面との面積比の異なる構造の金属電極が使用され得る。
【0037】
本発明の第2の発明による方法は、ガラス基板上に薄膜トランジスタを形成するのに用いられ得る。
【0038】
本明細書において、用語“大面積基板”は、縦横の長さ1m×1m以上、長辺又は長径の長さが1m以上のサイズをもつ任意の形状の基板を意味するものとする。
【発明の効果】
【0039】
以上説明してきたように、本発明の第1、第2の発明による装置においては、電極が、金属製電極本体と、基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成したことにより、プラズマを制御するファクターの一つであるプラズマ電流をコントロールすることによって27.12MHzといった高周波数においても大面積基板上に均一なプラズマを形成し、基板面内でその膜質および膜厚分布が均一な膜を得ることができるようになる。
【0040】
また、前記基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置するように構成したことにより、誘電体と金属と接合部に局所的に電界が集中しないため異常放電の発生が抑えられ、これにより表面の金属と誘電体との境界に放電が集中することがなく、金属部分の溶融現象等によるダストの発生は防止できる。
【0041】
また、本発明の第1の発明によるプラズマ処理装置において、各誘電体を、横断面形状が楕円形又は円形の柱状構造とすることにより、特に高周波を使用した放電においては局所的に電界が集中する角部がないため異常放電が防止でき、これにより表面の金属と誘電体との境界に放電が集中するのが避けられ、ダストの原因となる金属部分の溶融現象等を防ぐことができる。
【0042】
また、本発明の第1の発明によるプラズマ処理装置において、各誘電体が円柱上である場合に、基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれた複数個の各円柱状誘電体を、直径5〜30mm、高さ5〜20mmの範囲に寸法決めすることにより、誘電体を金属電極に埋め込む際のハンドリングが容易でありしかも特にガラス上に薄膜トランジスタを形成するプラズマCVD法での標準的な成膜条件により基板上に成摸する際に、誘電体露出部での堆積エリアと金属露出部での堆積エリアにおいて顕著な差が生じないようにでき、さらに電圧分布の均等効果が改善される。
【0043】
また、本発明の第1の発明によるプラズマ処理装置において、基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体の数を、電極の中央部で多く、周縁部で少なく配置することにより、電極の電極の中央部における単位面積当りのインピーダンス(直流で考えた場合の抵抗に相当する)を大きくし、電極中央部でのプラズマ電流を少なくしプラズマ強度を小さくし、電極端部でのプラズマ強度を大きくしプラズマ強度を大きくする効果がある。
【0044】
本発明の第3、第4の発明による方法においては、高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたことにより、電極と基板ホルダーとの間の良好な電界強度分布を得ることができ、基板上において成膜ガスを均一にプラズマ化させることができ、反応生成物の均一な膜厚の薄膜を大面積基板上に形成することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、添付図面の図1〜図6を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0046】
図1には、本発明の一実施形態によるプラズマCVD装置を示す。図1において、1は真空槽であり、この真空槽1の内部にはアノードとして機能する基板ホルダー2及びカソードとして機能する電極3が互いに対向して配置されている。基板ホルダー2は真空槽1の底壁に取り付けられ、内部にヒーター4を備え、そして基板ホルダー2の上面に大面積基板5が載置される。電極3はアルミニウム及びその合金を基材とし、アルマイト、アルミナ溶射、Y2O3溶射のいずれかの表面処理がなされる。使用する金属基材及び表面処理はすべてセルフクリーニングの際に使用するNF3やF2あるいはCF系ガスに対して腐食耐性がある必要がある。なお、プラズマCVD装置に限らず、エッチング処理や表面改質のためのプラズマ処理にも同様に適用できる。
【0047】
基板ホルダー2は、図示していない昇降機構によって昇降可能であり、これにより電極3との距離を調節可能にして、成膜時及びクリーニング時に基板ホルダー2と電極3との間の距離を変えるようにされる。この場合、昇降機構はまた、真空槽1の外部から内部へ処理すべき大面積基板5を搬入したり、真空槽1の内部から外部へ処理済みの大面積基板5を搬出する際の搬送動作における基板の昇降動作にも用いることができる。
【0048】
電極3は絶縁部材6を介して真空槽1の頂部に取り付けられている。そして電極3の基板ホルダー2に対向した面は平面状に形成されている。また、電極3の外寸は、基板ホルダー2に載置される大面積基板5の外寸より大きく構成されている。
【0049】
電極3は、電極基体7と、一体に構成したシャワーヘッド8と、金属製電極本体を成すシャワープレート9とを備え、シャワーヘッド8とシャワープレート9は一体に構成されている。シャワープレート9には、同一太さ及び同一高さの円柱状の誘電体10が埋め込まれ、各円柱状の誘電体10の露出端面はシャワープレート9の基板ホルダー2に対向した面と同じ平面内に位置している。円柱状の誘電体10は図示したように、シャワープレート9の中央部には高い密度で、シャワープレート9の周辺部には低い密度で埋め込まれている。
【0050】
誘電体10の材質としては、セルフクリーニングの際に使用するNF3やF2あるいはCF系ガスヘの腐食耐性があるアルミナ、AlN(窒素化アルミ)、マセライト等のセラミクスとこれらの組み合わせとからなるグループから選択される。
【0051】
図1には示されてないが、シャワープレート9には図2に示すように、円柱状の誘電体10を除いた部位に多数のガス放出孔11が設けられている。これにより、図示していない成膜ガス供給源から成膜ガス供給口12を介してシャワーヘッド8の内側に供給された成膜ガスは、シャワーヘッド8の内側で拡散、混合され、そしてシャワープレート9における多数のガス放出孔11から基板ホルダー2上の大面積基板5に向って供給される。
【0052】
図3には、シャワープレート9の表面におけるゾーン分けを示している。第1ゾーンAは、電極3に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極3の中心を中心とする直径が1/8〜1/4λの範囲に設定される第1の円形領域であり、第2ゾーンBは、第1ゾーンA外で電極の中心を中心とする直径が1/4〜1/3λの範囲に設定される第2の円形領域であり、また第3ゾーンCは、第2ゾーンB外で電極の中心を中心とする直径が1/3〜1/2λの範囲に設定される第3の円形領域である。
【0053】
なお、ゾーン分けは三つに限定されるものではなく電極の大きさに応じて二つまたは四つ以上にすることもできる。また電極の形状も矩形である必要はなく、他の形状、例えば円形でも同様に適用できる。
【0054】
電極3は、図示していないが、高周波電源から整合器を介して高周波電力が供給される。また、真空槽1及び基板ホルダー2は接地電位に接続されている。
【0055】
また、図示していないが、真空槽1には、外部の成膜ガス供給源から真空槽1内へ成膜ガスを導入する成膜ガス導入系並びに真空槽1内の真空排気及び成膜ガスの排気を行なう真空排気系が設けられる。
【0056】
図4には、本発明の別の実施形態によるプラズマCVD装置を示す。図4において、図1の装置における対応した部分は同じ符号で示す。図1の装置の場合と同様に、真空槽1の内部にはアノードとして機能する基板ホルダー2及びカソードとして機能する電極3が互いに対向して配置されている。基板ホルダー2は真空槽1の底壁に取り付けられ、内部にヒーター4を備え、そして基板ホルダー2の上面に大面積基板5が載置される。
【0057】
また、基板ホルダー2は、図示していない昇降機構によって昇降可能であり、これにより電極3との距離を調節可能にして、成膜時及びクリーニング時に基板ホルダー2と電極3との間の距離を変えるようにされる。この場合、昇降機構はまた、真空槽1の外部から内部へ処理すべき大面積基板5を搬入したり、真空槽1の内部から外部へ処理済みの大面積基板5を搬出する際の搬送動作における基板の昇降動作にも用いることができる。
【0058】
電極3は、電極基体7と、一体に構成したシャワーヘッド8と、金属製電極本体を成すシャワープレート9とを備え、シャワーヘッド8とシャワープレート9は一体に構成されている。シャワープレート9には、同一太さの円柱状の誘電体10が埋め込まれ、各円柱状の誘電体10の露出端面はシャワープレート9の基板ホルダー2に対向した面と同じ平面内に位置している。図5に示したように、シャワープレート9の中央部には高さの高い円柱状の誘電体10が埋め込まれ、シャワープレート9の周辺部には高さの低い円柱状の誘電体10が埋め込まれている。
【0059】
また図1に示す実施形態の場合と同様に、図示されてないが、シャワープレート9には図2に示すように、円柱状の誘電体10を除いた部位に多数のガス放出孔11が設けられている。これにより、図示していない成膜ガス供給源から成膜ガス供給口12を介してシャワーヘッド8の内側に供給された成膜ガスは、シャワーヘッド8の内側で拡散、混合され、そしてシャワープレート9における多数のガス放出孔11から基板ホルダー2上の大面積基板5に向って供給される。
【0060】
シャワープレート9の表面における円柱状の誘電体10の配列パターンは図3に示す例と同様にされ、この場合には、誘電体10の直径及び誘電体10の間の間隔は固定し、第1ゾーンAには10mm間隔で直径10mm、長さ10mmの円柱状の誘電体10が同心円状に埋め込まれ、第2ゾーンBには間隔10mmで長さ7mmの誘電体10が同心円状に埋め込まれ、また第3ゾーンCには間隔10mmで長さ4mmの誘電体10が同心円状に埋め込まれる。
【0061】
また、図示していないが、真空槽1には、真空槽1内の真空排気及び成膜ガスの排気を行なう真空排気系が設けられる。また、電極3の外寸は、基板ホルダー2に載置される大面積基板5の外寸より大きく構成されている。
【0062】
このように構成した図1及び図4の装置の動作において、図示していない高周波電源からそれぞれ整合器を介して高周波電力が電極3に供給されると、図示していない外部の成膜ガス供給源から真空槽1内へ導入された成膜ガスは、基板ホルダー2をアノード、電極3をカソードとした容量結合型グロー放電により、真空槽1内でプラズマ化される。この場合、電極3に誘電体10を埋め込んでいるため、異常放電を発生させることなしに、面内におけるインピーダンスを変化させて面内での電流分布を均一にし、それにより均一なプラズマを形成することができる。
【0063】
一方、大面積基板5は、基板ホルダー2に内蔵されたヒーター4によって予め所定の温度に加熱されている。それでプラズマ化した成膜ガスによる反応生成物は基板5の表面に到達し、良好な膜厚分布をもつ所望の薄膜を基板上に形成する。
【0064】
ところで、図4の実施形態では、円筒状の誘電体の長さは、電極表面の中央部と周辺部とで階段状に変えているが、代わりに図6に示すように電極表面の中央部から周辺部へ向かって連続して長さを短くすることもできる。
【0065】
また、図示実施形態では、誘電体として円柱状のものを用いているが、放電空間内においては角の無い形状であればよく、断面楕円形の楕円柱上の誘電体を用いることもできる。
【0066】
次に図7〜図16を参照してシミュレーションに基いて本発明をさらに説明する。
実際の電極は平面であるが、シミュレーションの都合上、二次元直角座標を用いる。また形状の対称性を考慮して縦の中心線を対称面とし、全体の1/2(1800mm)を解析領域とした。座標軸は図7〜図9に示すように取る。
【0067】
図7に示す従来構造の駆動電極(シャワープレート)は厚さ80mmであり、アース電極すなわち基板ホルダーまでの距離を15mmとする。
【0068】
また図8にはケース1として、駆動電極(シャワープレート)に直径10mm、長さ10mmのアルミナ(ε=9.0)から成る円柱状の誘電体を中心線X=0から1250mmまでの中央領域は間隔w=5mmで同心円状に配置し、X=1250〜1650mmまでの領域は間隔w=10mmで同心円状に配置し、X=1650〜1800mmまでの領域は間隔w=15mmで同心円状に配置した例を示す。
【0069】
さらに図9にはケース2として、駆動電極(シャワープレート)の中心線X=0から1250mmまでの中央領域には直径10mm、長さh=10mmのアルミナ(ε=9.0)から成る円柱状の誘電体を間隔w=10mmで同心円状に配置し、X=1250〜1650mmまでの領域には直径10mm、長さh=7mmのアルミナ(ε=9.0)から成る円柱状の誘電体を間隔w=10mmで同心円状に配置し、X=1650〜1800mmまでの領域には直径10mm、長さh=4mmのアルミナ(ε=9.0)から成る円柱状の誘電体を間隔w=10mmで同心円状に配置した例を示す。
【0070】
シミュレーションにおける計算条件は次のとおりである。
ガ ス 種 : 窒素ガス(N2)
荷電粒子種 : 電子(e)、窒素イオン(N2(+))
考慮した反応 : e+N2 → e+N2 弾性衝突
e+N2 → 2e+N2(+) 電離
e+N2 → e+2N 解離
e+N2 → e+N2(*) 励起
N2(+)+N2 → N2(+)+N2 電荷交換
ガス圧力 : 150Pa
供給電圧 : V(t)=V0*sin(2πft)+Vdc (tは時間(sec))
V0=200(V)、f=27.12(MHz)、Vdc=0(V)
境界条件 : 駆動電極にV(t)を供給
アース電極(y=0mm) V=0(V)
仮想境界(x=1800mm)、遠方(x=3000mm)においてV=0(V)
対称軸(x=0)
二次電子放出係数:0.0
なお、1/2モデルであるため電極サイズ2.4m×2.6mの対角線の長さを半分にした長さで考察する。
【0071】
また、計算方法としては、プラズマハイブリッドモジュール法(PHM)を使用し、電子及びイオンフラックスの計算にはドリフト・拡散モデルを用い、電子及びイオン密度の計算には連続の式を用い、電子温度(エネルギー)、輸送パラメータ(移動度・拡散係数)、ソースレートの計算にはモンテカルロ法を用いた。
【0072】
シミュレーション結果として図10には、アース電極近傍における水平方向電子密度分布を示し、グラフ(イ)は図7に示す平面電極の場合であり、グラフ(ロ)は図8に示すケース1の場合であり、グラフ(ハ)は図9に示すケース2の場合である。図11にはプラズマ中心部における水平方向電子密度分布を示し、グラフ(イ)は図7に示す平面電極の場合であり、グラフ(ロ)は図8に示すケース1の場合であり、グラフ(ハ)は図9に示すケース2の場合である。図10及び図11から認められるように平面電極の場合に比較して本発明に従って構成したケース1及びケース2の場合の方が面内均一なプラズマ処理、プラズマCVDでは面内均一な成膜速度を実現し得る。
【0073】
また、シミュレーション結果として図12には、アース電極に入射するN2+イオンフラックスを示し、グラフ(イ)は図7に示す平面電極の場合であり、グラフ(ロ)は図8に示すケース1の場合であり、グラフ(ハ)は図9に示すケース2の場合である。図12において平面電極の場合に比較して本発明に従って構成したケース1及びケース2の場合の方がN2+イオンフラックスは均一となり、従って膜質は均一となることがわかる。
【0074】
図3に示すゾーン分けに関して上述のシミュレーションでは、周波数に27.12MHzを使用した場合の例であり、プラズマ密度及びイオンフラックス密度について計算している。各領域はゾーンA、B、Cに分かれており、上述のように第1ゾーンAは、電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極の中心を中心とする直径が1/8〜1/4λの範囲に設定され、第2ゾーンBは、第1ゾーンA外で電極の中心を中心とする直径が1/4〜1/3λの範囲に設定され、また第3ゾーンCは、第2ゾーンB外で電極の中心を中心とする直径が1/3〜1/2λの範囲に設定される。このゾーンAについては1波長中の腹と節が1つづつ含まれるλの1/4の長さである直径2.77m以下でかつλの1/8の長さである直径1.38m以上であることが重要であり、より望ましくは直径2.5m程度の円であることが望ましい。ゾーンBについては波長λの1/3の長さである直径3.69m以下でかつλの1/4の長さである直径2.77m以上であることが重要であり、より望ましくは直径3.3m程度の円であることが望ましい。なお、このシミュレーションで扱う電極より大きい、例えば3.6mm×3.8mの電極の場合には、第3ゾーンCの外周直径を設定して第4ゾーンを画定する必要があり、1/2λ=5.54m、一層望ましくは5.0mに設定され得る。
【0075】
以下図8に示す解析モデルケース1を用いて計算したシミュレーション結果について説明する。
図13には、一つの誘電体の直径とフラックスとの関係のシミュレーション結果を示し、縦軸の“フラックス”は金属部、誘電体部それぞれへのイオン入射のフラックスを表し、またシミュレーションは電極間距離20mmで行った。グラフ1は金属、グラフ2は誘電体を示している。図13のシミュレーション結果に示すように誘電体の直径が30mmを越すような大きなサイズの場合、特にガラス上に薄膜トランジスタを形成するプラズマCVD法での標準的な成膜条件により載置した基板上に成摸した場合には、誘電体露出部に対向する堆積エリアと金属露出部に対向する堆積エリアにおいて顕著な差が出てきてしまう。なお本発明において誘電体の直径を5mm以上としているのは誘電体の加工上の問題及び5mm以下とした場合は金属電極に埋め込む個数が非常に多くなりかつハンドリングが現実的に困難であるためである。
【0076】
図14には、誘電体の埋め込み深さすなわち誘電体の高さと面内でのプラズマ密度分布との関係のシミュレーション結果を示し、誘電体の埋め込み深さは5mm〜20mmであるのが好ましいことがシミュレーション結果から確認できた。これは金属と誘電体の面積比7:3にて埋め込み深さを変化させた条件において確認した。20mm以下としているのは誘電体の加工上の問題及び20mm以上とした場合は電圧分布の均等効果が改善しないこと及び金属電極に埋め込む際の折れなどの問題によりハンドリングが現実的に困難であるためである。
【0077】
図15には、誘電体の埋め込み深さによる誘電体の占める面積割合と面内でのプラズマ
密度分布との関係のシミュレーション結果を示し、グラフ1は誘電体の埋め込み深さが5m
mの場合であり、またグラフ2は誘電体の埋め込み深さが10mmの場合であり、誘電体の占める面積比と電極面内全体でのプラズマ密度分布との相関を示す。シミュレーション結果に示すように、深さ5mmの場合は50%程度の表面積のとき±8%程度になりそれ以上面積比を増やすと逆効果になることがわかる。一方10mmの場合は30%程度の表面積のとき±10%程度になり、改善していることがわかる。
【0078】
図16には、図3に示す第1ゾーンA、第2ゾーンB及び第3ゾーンCにおける誘電体の占める面積割合とフラックスとの関係のシミュレーション結果を示し、誘電体を3ゾーンに分けて配置するパターンを採用した際の、各ゾーンでの“フラックス”がゾーン内の誘電体占有面積とどういう相関を持っているかを示す。これらのグラフから、ゾーンA:30〜50%、ゾーンB:20〜:30%、ゾーンC:0〜20%、とすればゾーンAからCに渡って全体的にフラックスが均一であるようにすることができる。言い換えれば、プラズマ密度がそれぞれのゾーンにおいて均一になるのは、ゾーンAでは金属と誘電体との面積割合が7:3〜5:5、ゾーンBでは金属と誘電体との面積割合が8:2〜7:3、またゾーンCでは金属と誘電体との面積割合がほぼ8:2であることがみてとれる。
【0079】
なお、上記のシミュレーションにおいては、誘電体の材料としてアルミナを用いているが、アルミナに代えてAlNを用いても同等の結果が得られる。
【実施例】
【0080】
上記のシミュレーションにおけるケース1(図8)に基き、電極を作製し、誘電体を図3に示すように同心円状に配置した。誘電体の材料としてはアルミナ(Al2O3)を使用し、直径10mm、高さ10mmの円柱状のものとし、ゾーン別に誘電体の埋め込み間隔を変化させた。成膜条件は真空槽内のガス圧を200Pa、電力密度を0.5W/cm2とし、ガスにはSiH4/N2/NH3を使用した。
【0081】
成膜結果を従来の平面電極の場合と比較して表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1において、誘電体埋め込み電極は従来の平面電極に比べて、成膜速度の値が同等で、膜厚分布、膜質(エッチングレート)分布が大幅に改善されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、特に、薄膜トランジスタの成膜に有利に用いられるが、他の大型基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置に同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一つの実施形態によるプラズマCVD装置を示す概略断面図。
【図2】図1の装置の電極に埋め込まれた誘電体とガス放出穴との配置例を示す部分拡大図。
【図3】図1の装置の電極に埋め込まれる誘電体の配列又は大きさ(高さ)を区分けするゾーンの設定を示す図。
【図4】本発明の別の実施形態によるプラズマCVD装置を示す概略断面図。
【図5】図4の装置において電極に埋め込まれる誘電体の配置例を拡大して示す概略断面図。
【図6】図4の装置において電極に埋め込まれる誘電体の別の配置例を拡大して示す概略断面図。
【図7】通常の平面電極の解析モデルを示す概略断面図。
【図8】図1に示す装置において用いられ電極の解析モデルを示す概略断面図。
【図9】図4に示す装置において用いられ電極の解析モデルを示す概略断面図。
【図10】図7〜図9に示す解析モデルを用いたシミュレーションによるアース電極近傍における水平方向電子密度分布を示すグラフ。
【図11】図7〜図9に示す解析モデルを用いたシミュレーションによるプラズマ中心における水平方向電子密度分布を示すグラフ。
【図12】図7〜図9に示す解析モデルを用いたシミュレーションによるアース電極に入射するN2+イオンフラックスを示すグラフ。
【図13】一つの誘電体の直径とフラックスとの関係のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図14】誘電体の埋め込み深さすなわち誘電体の高さと面内でのプラズマ密度分布との関係のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図15】誘電体の埋め込み深さによる誘電体の占める面積割合と面内でのプラズマ密度分布と の関係のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図16】図3に示す第1ゾーンA、第2ゾーンB及び第3ゾーンCにおける誘電体の占める面積割合とフラックスとの関係のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図17】従来のプラズマCVD装置の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0086】
1:真空槽
2:基板ホルダー
3:電極
4:ヒーター
5:大面積基板
6:絶縁部材
7:電極基体
8:シャワーヘッド
9:シャワープレート
10:誘電体
11:ガス放出孔
12:成膜ガス供給口
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液晶分野で用いられる大面積基板に薄膜を均一に形成するのに用いられ得るプラズマ処理方法及び装置並びにプラズマCVD方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面で高品質で低価格の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの需要が増大するのに伴い、それらの生産に用いられるマザーガラスの基板サイズの大型化が加速している。
【0003】
今日、大画面で高品質で低価格の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの需要が増大し、それらの生産に用いられるマザーガラスの基板サイズの大型化が加速している。それに伴い、基板上にデバイスを製作する工程において、プラズマを周いた成膜、エッチング、表面改質等の処理工程では、処理面積の大型化と処理性能の面内均一性が重要な課題とされている。
【0004】
従来から薄膜トランジスタを形成するためには、高周波のプラズマCVD法により、アモルファスシリコン(a−Si)、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiOx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)、nドープアモルファスシリコン(n+a−Si)を基板上に堆積する方法が採られてきた。
【0005】
これらの薄膜を基板上に形成する際には、プラズマCVD装置において高周波電力を用いて成膜ガスをプラズマ化する。しかし、基板の大型化に伴い高周波電力を供給する電極の大きさが大きくなればなるほど電極上で発生する定在波がプラズマ密度の面内均一性に影響し、堆積膜の膜厚の不均一性の悪化を招くことが知られている。
【0006】
従来から薄膜トランジスタを形成するためには、高周波のプラズマCVD法によるアモルファスシリコンや窒化シリコン膜、nドープアモルファスシリコンを基板上に堆積するが、基板の大型化に伴う電極の大型化により定在波の問題がある。一方で薄膜トランジスタを形成する薄膜においては低ダメージの成膜が望ましいとされており、そのためには工業周波数である13.56MHzより高い周波数で成膜することが望ましい。しかし、定在波の影響は周波数が上がるほどより短い距離でも影響を受けやすくなるため高い周波数を利用するためにはカソード分割などの方法が提案されてきたが、これにも問題がある。
【0007】
定在波の影響より具体的には電極面内にて電圧分布が生じるためにプラズマ強度に分布が生じることなる。そのため堆積された薄膜の膜質、膜厚に分布が生じる。
【0008】
同時に、使用する基板の大きさが大きくなるほど、電極の大きさも大きくなり、電極及び基板ホルダーの配置される真空槽も大きくなり、プラズマに供給される高周波電力も大きくなるが、電極の真空槽に対する相対的な大きさは小さくされるため、基板を載置する基板ホルダーから真空槽壁を介して接地電位へ流れる電流分布のプラズマへの影響が無視できなくなることも知られている。
【0009】
添付図面の図17には従来のプラズマCVD装置の一例を示す。図17において、Aは真空槽で、この真空槽Aの内部には基板ホルダーBと電極Cとが対向して配置されている。基板ホルダーBは真空槽Aの底壁に取り付けられ、内部にヒーターDを備え、上面に基板Eが載置される。
【0010】
電極Cは絶縁部材Fを介して真空槽Aの頂部に取り付けられ、そして成膜ガス供給口Gを介して図示していない成膜ガス導入系に接続される。
また、図示していないが、電極Cは図示していないが高周波電源に接続されて、また真空槽Aには真空排気系が設けられている。
【0011】
このように構成した従来の装置では、高周波電源として、通常13.56MHz又は27.12MHzの周波数の高周波電源が用いられ得る。そして基板Eのサイズが1m×1m以下では、堆積すべき膜の種類に応じて成膜条件を最適化することにより、得られる膜厚分布は±10%以下にすることができる。
【0012】
しかし、基板サイズが1m×1m以上になると、上述の理由で膜厚分布の所望の均一性を確保することができなくなる。
【0013】
このような問題点を解決するため、従来、高周波電力を供給する電極を中心部と周辺部との分割し、電極の中心部と周辺部における電極と基板ホルダーとの距離を調節可能にしてプラズマ分布を調節し、膜厚分布を均一化するようにしたプラズマCVD装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0014】
また、電極を複数の小電極に分割して、分割した電極の境界部分において電極と基板ホルダーとの距離が連続となるようにし、また各小電極に供給する高周波電力を調整し、それにより膜厚分布を均一化するようにしたプラズマ処理装置も従来提案されている(特許文献2参照)。
【0015】
さらに、プラズマ形成装置において、間に放電空間を画定する一対の電極の一方の放電空間に対向した境界面に導電性領域と絶縁性領域とを交互に形成して、絶縁性領域の表面における電荷の蓄積により表面近傍における電界を局所的に増強し、それにより表面全体にわたって一様に電子を放出させ、プラズマの一様性及び安定性を向上させるようにすることも従来提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−289881号公報
【特許文献2】特開2003−68651号公報
【特許文献3】特開2005−63973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献1に記載された装置では、電極の中心部と周辺部との境界が不連続であるために、プラズマが不安定となり、薄膜を均一に形成することができないという問題がある。
【0017】
また、特許文献2に記載された発明では、実際上、分割された小電極間の境界部分でプラズマの安定化が困難であり、異常放電も発生し易く、薄膜を均一化する条件を見出すことが困難であるという問題がある。また、電極間の境界面には反応生成物が付着、剥離し易く、そのため装置内のパーティクルの発生源となり、異常放電の発生源ともなり、その結果製品の歩留まりを低下させるという問題もある。
【0018】
さらに、特許文献3に記載された発明では、電極表面が導電性領域と絶縁性領域とで段差があり、平坦ではないため、導電性領域と絶縁性領域との段差部で異常放電が発生しやすく、安定したプラズマ形成は維持できなくなるという問題がある。また特許文献3の図4a、図4cに示すように誘電体の形状が矩形のような角部を持つ構造である場合には、特に高周波を使用した放電においてはその角部に局所的に電界が集中するために異常放電の原因となり、これにより表面の金属−誘電体境界に放電が集中することで金属部分の溶融現象等によりダストの原因となる。また、段差境界に反応生成物が付着し、剥離し易いという問題もある。
【0019】
そこで、本発明は、従来技術に伴うこのような問題点を解決して、一様で安定したプラズマを形成でき、大面積基板に均一な膜厚及び膜質分布で成膜できるプラズマ処理方法及び装置並びにプラズマCVD方法及び装置を提供することを目的としている。
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の発明によれば、
真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、前記真空槽内にガスを導入すると共に前記電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生し、前記基板ホルダーに載置した基板に対してプラズマ処理を行う容量結合型グロー放電を用いるプラズマ処理装置において、
前記電極が、金属製電極本体と、前記基板ホルダーに対向する前記金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が前記電極の表面と同じ平面内に位置していること
を特徴としている。
【0021】
本発明の第1の発明によるプラズマ処理装置において、基板ホルダーに対向する電極の表面が平坦であり、電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極の中心を中心とする直径が1/8〜1/4λの範囲に設定された第1の円形領域では、電極の表面における金属の表面積と誘電体の表面積の割合が7:3〜5:5であり、第1の円形領域外で電極の中心を中心とする直径が1/4〜1/3λの範囲に設定された第2の円形領域では、電極の表面における金属の表面積と誘電体の表面積の割合が8:2〜7:3であり、また第2の円形領域外で電極の中心を中心とする直径が1/3〜1/2λの範囲に設定された第3の円形領域では、電極の表面における金属の表面積と誘電体の表面積の割合がほぼ8:2であるように構成され得る。
【0022】
また、各誘電体は、横断面形状が楕円形又は円形の柱状構造であり得る。
【0023】
各誘電体が円柱上である場合に、基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれた複数個の各円柱状誘電体は、直径5〜20mm、高さ5〜20mmの範囲に寸法決めされ得る。
【0024】
基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体は電極の表面に等間隔に配列され、電極の表面の中央部に埋め込まれる各誘電体の直径が電極の周辺部に埋め込まれる各誘電体の直径より大きくされ得る
【0025】
基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体の数は、電極の中央部で多く、周縁部で少なく配置され得る。
【0026】
代わりに、基板ホルダーに対向する電極の表面の中央部には高さの高い柱状誘電体が埋め込まれ、また電極の表面の周縁部には高さの低い柱状誘電体が埋め込まれ得る。
【0027】
基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体は電極の表面に同心円状に配列され得る。
【0028】
基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体は電極の表面に等間隔に配列され得る。
【0029】
各誘電体は、アルミナ、A1N、マセライト等のセラミクスとこれらの組み合わせたものを含むグループから選択された材料から成り得る。
【0030】
電極は、アルミニウム及びその合金を基材とし、アルマイト、アルミナ溶射、Y2O3溶射のいずれかの表面処理が施され得る。
【0031】
電極は、一体に構成したシャワーヘッドとシャワープレートから構成され得る。
【0032】
本発明の第2の発明によれば、真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、真空槽内に成膜ガスを導入すると共に電極に高周波電力を供給することにより導入した成膜ガスをプラズマ化して、基板ホルダーに載置した基板上に成膜するようにした容量結合型グロー放電を用いるプラズマCVD装置において、
電極が、金属製電極本体と、基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、基板ホルダーに対向する電極の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が電極の表面と同じ平面内に位置していること
を特徴としている。
【0033】
本発明の第3の発明によれば、真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、真空槽内にガスを導入すると共に電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生し、基板ホルダーに載置した基板に対してプラズマ処理を行う容量結合型グロー放電を用いるプラズマ処理方法において、
高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたこと
を特徴としている。
【0034】
本発明の第3の発明による方法では、金属電極に供給する高周波電力の周波数に応じて、金属電極表面と誘電体の端表面との面積比の異なる構造の金属電極が使用され得る。
【0035】
本発明の第4の発明によれば、成膜ガスとしてモノシラン、ジシランのいずれか及び希釈ガスとしてアンモニア、窒素、アルゴン、一酸化二窒素、水素、ヘリウムガスのいずれか一種類または複数のガスを混合ガスとして真空槽内に供給しグロー放電プラズマを形成し、基板上に薄膜を成膜するプラズマCVD方法であって
高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたこと
を特徴としている。
【0036】
本発明の第4の発明による方法では、金属電極に供給する高周波電力の周波数に応じて、金属電極表面と誘電体の端表面との面積比の異なる構造の金属電極が使用され得る。
【0037】
本発明の第2の発明による方法は、ガラス基板上に薄膜トランジスタを形成するのに用いられ得る。
【0038】
本明細書において、用語“大面積基板”は、縦横の長さ1m×1m以上、長辺又は長径の長さが1m以上のサイズをもつ任意の形状の基板を意味するものとする。
【発明の効果】
【0039】
以上説明してきたように、本発明の第1、第2の発明による装置においては、電極が、金属製電極本体と、基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成したことにより、プラズマを制御するファクターの一つであるプラズマ電流をコントロールすることによって27.12MHzといった高周波数においても大面積基板上に均一なプラズマを形成し、基板面内でその膜質および膜厚分布が均一な膜を得ることができるようになる。
【0040】
また、前記基板ホルダーに対向する金属製電極本体の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置するように構成したことにより、誘電体と金属と接合部に局所的に電界が集中しないため異常放電の発生が抑えられ、これにより表面の金属と誘電体との境界に放電が集中することがなく、金属部分の溶融現象等によるダストの発生は防止できる。
【0041】
また、本発明の第1の発明によるプラズマ処理装置において、各誘電体を、横断面形状が楕円形又は円形の柱状構造とすることにより、特に高周波を使用した放電においては局所的に電界が集中する角部がないため異常放電が防止でき、これにより表面の金属と誘電体との境界に放電が集中するのが避けられ、ダストの原因となる金属部分の溶融現象等を防ぐことができる。
【0042】
また、本発明の第1の発明によるプラズマ処理装置において、各誘電体が円柱上である場合に、基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれた複数個の各円柱状誘電体を、直径5〜30mm、高さ5〜20mmの範囲に寸法決めすることにより、誘電体を金属電極に埋め込む際のハンドリングが容易でありしかも特にガラス上に薄膜トランジスタを形成するプラズマCVD法での標準的な成膜条件により基板上に成摸する際に、誘電体露出部での堆積エリアと金属露出部での堆積エリアにおいて顕著な差が生じないようにでき、さらに電圧分布の均等効果が改善される。
【0043】
また、本発明の第1の発明によるプラズマ処理装置において、基板ホルダーに対向する電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体の数を、電極の中央部で多く、周縁部で少なく配置することにより、電極の電極の中央部における単位面積当りのインピーダンス(直流で考えた場合の抵抗に相当する)を大きくし、電極中央部でのプラズマ電流を少なくしプラズマ強度を小さくし、電極端部でのプラズマ強度を大きくしプラズマ強度を大きくする効果がある。
【0044】
本発明の第3、第4の発明による方法においては、高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたことにより、電極と基板ホルダーとの間の良好な電界強度分布を得ることができ、基板上において成膜ガスを均一にプラズマ化させることができ、反応生成物の均一な膜厚の薄膜を大面積基板上に形成することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、添付図面の図1〜図6を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0046】
図1には、本発明の一実施形態によるプラズマCVD装置を示す。図1において、1は真空槽であり、この真空槽1の内部にはアノードとして機能する基板ホルダー2及びカソードとして機能する電極3が互いに対向して配置されている。基板ホルダー2は真空槽1の底壁に取り付けられ、内部にヒーター4を備え、そして基板ホルダー2の上面に大面積基板5が載置される。電極3はアルミニウム及びその合金を基材とし、アルマイト、アルミナ溶射、Y2O3溶射のいずれかの表面処理がなされる。使用する金属基材及び表面処理はすべてセルフクリーニングの際に使用するNF3やF2あるいはCF系ガスに対して腐食耐性がある必要がある。なお、プラズマCVD装置に限らず、エッチング処理や表面改質のためのプラズマ処理にも同様に適用できる。
【0047】
基板ホルダー2は、図示していない昇降機構によって昇降可能であり、これにより電極3との距離を調節可能にして、成膜時及びクリーニング時に基板ホルダー2と電極3との間の距離を変えるようにされる。この場合、昇降機構はまた、真空槽1の外部から内部へ処理すべき大面積基板5を搬入したり、真空槽1の内部から外部へ処理済みの大面積基板5を搬出する際の搬送動作における基板の昇降動作にも用いることができる。
【0048】
電極3は絶縁部材6を介して真空槽1の頂部に取り付けられている。そして電極3の基板ホルダー2に対向した面は平面状に形成されている。また、電極3の外寸は、基板ホルダー2に載置される大面積基板5の外寸より大きく構成されている。
【0049】
電極3は、電極基体7と、一体に構成したシャワーヘッド8と、金属製電極本体を成すシャワープレート9とを備え、シャワーヘッド8とシャワープレート9は一体に構成されている。シャワープレート9には、同一太さ及び同一高さの円柱状の誘電体10が埋め込まれ、各円柱状の誘電体10の露出端面はシャワープレート9の基板ホルダー2に対向した面と同じ平面内に位置している。円柱状の誘電体10は図示したように、シャワープレート9の中央部には高い密度で、シャワープレート9の周辺部には低い密度で埋め込まれている。
【0050】
誘電体10の材質としては、セルフクリーニングの際に使用するNF3やF2あるいはCF系ガスヘの腐食耐性があるアルミナ、AlN(窒素化アルミ)、マセライト等のセラミクスとこれらの組み合わせとからなるグループから選択される。
【0051】
図1には示されてないが、シャワープレート9には図2に示すように、円柱状の誘電体10を除いた部位に多数のガス放出孔11が設けられている。これにより、図示していない成膜ガス供給源から成膜ガス供給口12を介してシャワーヘッド8の内側に供給された成膜ガスは、シャワーヘッド8の内側で拡散、混合され、そしてシャワープレート9における多数のガス放出孔11から基板ホルダー2上の大面積基板5に向って供給される。
【0052】
図3には、シャワープレート9の表面におけるゾーン分けを示している。第1ゾーンAは、電極3に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極3の中心を中心とする直径が1/8〜1/4λの範囲に設定される第1の円形領域であり、第2ゾーンBは、第1ゾーンA外で電極の中心を中心とする直径が1/4〜1/3λの範囲に設定される第2の円形領域であり、また第3ゾーンCは、第2ゾーンB外で電極の中心を中心とする直径が1/3〜1/2λの範囲に設定される第3の円形領域である。
【0053】
なお、ゾーン分けは三つに限定されるものではなく電極の大きさに応じて二つまたは四つ以上にすることもできる。また電極の形状も矩形である必要はなく、他の形状、例えば円形でも同様に適用できる。
【0054】
電極3は、図示していないが、高周波電源から整合器を介して高周波電力が供給される。また、真空槽1及び基板ホルダー2は接地電位に接続されている。
【0055】
また、図示していないが、真空槽1には、外部の成膜ガス供給源から真空槽1内へ成膜ガスを導入する成膜ガス導入系並びに真空槽1内の真空排気及び成膜ガスの排気を行なう真空排気系が設けられる。
【0056】
図4には、本発明の別の実施形態によるプラズマCVD装置を示す。図4において、図1の装置における対応した部分は同じ符号で示す。図1の装置の場合と同様に、真空槽1の内部にはアノードとして機能する基板ホルダー2及びカソードとして機能する電極3が互いに対向して配置されている。基板ホルダー2は真空槽1の底壁に取り付けられ、内部にヒーター4を備え、そして基板ホルダー2の上面に大面積基板5が載置される。
【0057】
また、基板ホルダー2は、図示していない昇降機構によって昇降可能であり、これにより電極3との距離を調節可能にして、成膜時及びクリーニング時に基板ホルダー2と電極3との間の距離を変えるようにされる。この場合、昇降機構はまた、真空槽1の外部から内部へ処理すべき大面積基板5を搬入したり、真空槽1の内部から外部へ処理済みの大面積基板5を搬出する際の搬送動作における基板の昇降動作にも用いることができる。
【0058】
電極3は、電極基体7と、一体に構成したシャワーヘッド8と、金属製電極本体を成すシャワープレート9とを備え、シャワーヘッド8とシャワープレート9は一体に構成されている。シャワープレート9には、同一太さの円柱状の誘電体10が埋め込まれ、各円柱状の誘電体10の露出端面はシャワープレート9の基板ホルダー2に対向した面と同じ平面内に位置している。図5に示したように、シャワープレート9の中央部には高さの高い円柱状の誘電体10が埋め込まれ、シャワープレート9の周辺部には高さの低い円柱状の誘電体10が埋め込まれている。
【0059】
また図1に示す実施形態の場合と同様に、図示されてないが、シャワープレート9には図2に示すように、円柱状の誘電体10を除いた部位に多数のガス放出孔11が設けられている。これにより、図示していない成膜ガス供給源から成膜ガス供給口12を介してシャワーヘッド8の内側に供給された成膜ガスは、シャワーヘッド8の内側で拡散、混合され、そしてシャワープレート9における多数のガス放出孔11から基板ホルダー2上の大面積基板5に向って供給される。
【0060】
シャワープレート9の表面における円柱状の誘電体10の配列パターンは図3に示す例と同様にされ、この場合には、誘電体10の直径及び誘電体10の間の間隔は固定し、第1ゾーンAには10mm間隔で直径10mm、長さ10mmの円柱状の誘電体10が同心円状に埋め込まれ、第2ゾーンBには間隔10mmで長さ7mmの誘電体10が同心円状に埋め込まれ、また第3ゾーンCには間隔10mmで長さ4mmの誘電体10が同心円状に埋め込まれる。
【0061】
また、図示していないが、真空槽1には、真空槽1内の真空排気及び成膜ガスの排気を行なう真空排気系が設けられる。また、電極3の外寸は、基板ホルダー2に載置される大面積基板5の外寸より大きく構成されている。
【0062】
このように構成した図1及び図4の装置の動作において、図示していない高周波電源からそれぞれ整合器を介して高周波電力が電極3に供給されると、図示していない外部の成膜ガス供給源から真空槽1内へ導入された成膜ガスは、基板ホルダー2をアノード、電極3をカソードとした容量結合型グロー放電により、真空槽1内でプラズマ化される。この場合、電極3に誘電体10を埋め込んでいるため、異常放電を発生させることなしに、面内におけるインピーダンスを変化させて面内での電流分布を均一にし、それにより均一なプラズマを形成することができる。
【0063】
一方、大面積基板5は、基板ホルダー2に内蔵されたヒーター4によって予め所定の温度に加熱されている。それでプラズマ化した成膜ガスによる反応生成物は基板5の表面に到達し、良好な膜厚分布をもつ所望の薄膜を基板上に形成する。
【0064】
ところで、図4の実施形態では、円筒状の誘電体の長さは、電極表面の中央部と周辺部とで階段状に変えているが、代わりに図6に示すように電極表面の中央部から周辺部へ向かって連続して長さを短くすることもできる。
【0065】
また、図示実施形態では、誘電体として円柱状のものを用いているが、放電空間内においては角の無い形状であればよく、断面楕円形の楕円柱上の誘電体を用いることもできる。
【0066】
次に図7〜図16を参照してシミュレーションに基いて本発明をさらに説明する。
実際の電極は平面であるが、シミュレーションの都合上、二次元直角座標を用いる。また形状の対称性を考慮して縦の中心線を対称面とし、全体の1/2(1800mm)を解析領域とした。座標軸は図7〜図9に示すように取る。
【0067】
図7に示す従来構造の駆動電極(シャワープレート)は厚さ80mmであり、アース電極すなわち基板ホルダーまでの距離を15mmとする。
【0068】
また図8にはケース1として、駆動電極(シャワープレート)に直径10mm、長さ10mmのアルミナ(ε=9.0)から成る円柱状の誘電体を中心線X=0から1250mmまでの中央領域は間隔w=5mmで同心円状に配置し、X=1250〜1650mmまでの領域は間隔w=10mmで同心円状に配置し、X=1650〜1800mmまでの領域は間隔w=15mmで同心円状に配置した例を示す。
【0069】
さらに図9にはケース2として、駆動電極(シャワープレート)の中心線X=0から1250mmまでの中央領域には直径10mm、長さh=10mmのアルミナ(ε=9.0)から成る円柱状の誘電体を間隔w=10mmで同心円状に配置し、X=1250〜1650mmまでの領域には直径10mm、長さh=7mmのアルミナ(ε=9.0)から成る円柱状の誘電体を間隔w=10mmで同心円状に配置し、X=1650〜1800mmまでの領域には直径10mm、長さh=4mmのアルミナ(ε=9.0)から成る円柱状の誘電体を間隔w=10mmで同心円状に配置した例を示す。
【0070】
シミュレーションにおける計算条件は次のとおりである。
ガ ス 種 : 窒素ガス(N2)
荷電粒子種 : 電子(e)、窒素イオン(N2(+))
考慮した反応 : e+N2 → e+N2 弾性衝突
e+N2 → 2e+N2(+) 電離
e+N2 → e+2N 解離
e+N2 → e+N2(*) 励起
N2(+)+N2 → N2(+)+N2 電荷交換
ガス圧力 : 150Pa
供給電圧 : V(t)=V0*sin(2πft)+Vdc (tは時間(sec))
V0=200(V)、f=27.12(MHz)、Vdc=0(V)
境界条件 : 駆動電極にV(t)を供給
アース電極(y=0mm) V=0(V)
仮想境界(x=1800mm)、遠方(x=3000mm)においてV=0(V)
対称軸(x=0)
二次電子放出係数:0.0
なお、1/2モデルであるため電極サイズ2.4m×2.6mの対角線の長さを半分にした長さで考察する。
【0071】
また、計算方法としては、プラズマハイブリッドモジュール法(PHM)を使用し、電子及びイオンフラックスの計算にはドリフト・拡散モデルを用い、電子及びイオン密度の計算には連続の式を用い、電子温度(エネルギー)、輸送パラメータ(移動度・拡散係数)、ソースレートの計算にはモンテカルロ法を用いた。
【0072】
シミュレーション結果として図10には、アース電極近傍における水平方向電子密度分布を示し、グラフ(イ)は図7に示す平面電極の場合であり、グラフ(ロ)は図8に示すケース1の場合であり、グラフ(ハ)は図9に示すケース2の場合である。図11にはプラズマ中心部における水平方向電子密度分布を示し、グラフ(イ)は図7に示す平面電極の場合であり、グラフ(ロ)は図8に示すケース1の場合であり、グラフ(ハ)は図9に示すケース2の場合である。図10及び図11から認められるように平面電極の場合に比較して本発明に従って構成したケース1及びケース2の場合の方が面内均一なプラズマ処理、プラズマCVDでは面内均一な成膜速度を実現し得る。
【0073】
また、シミュレーション結果として図12には、アース電極に入射するN2+イオンフラックスを示し、グラフ(イ)は図7に示す平面電極の場合であり、グラフ(ロ)は図8に示すケース1の場合であり、グラフ(ハ)は図9に示すケース2の場合である。図12において平面電極の場合に比較して本発明に従って構成したケース1及びケース2の場合の方がN2+イオンフラックスは均一となり、従って膜質は均一となることがわかる。
【0074】
図3に示すゾーン分けに関して上述のシミュレーションでは、周波数に27.12MHzを使用した場合の例であり、プラズマ密度及びイオンフラックス密度について計算している。各領域はゾーンA、B、Cに分かれており、上述のように第1ゾーンAは、電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極の中心を中心とする直径が1/8〜1/4λの範囲に設定され、第2ゾーンBは、第1ゾーンA外で電極の中心を中心とする直径が1/4〜1/3λの範囲に設定され、また第3ゾーンCは、第2ゾーンB外で電極の中心を中心とする直径が1/3〜1/2λの範囲に設定される。このゾーンAについては1波長中の腹と節が1つづつ含まれるλの1/4の長さである直径2.77m以下でかつλの1/8の長さである直径1.38m以上であることが重要であり、より望ましくは直径2.5m程度の円であることが望ましい。ゾーンBについては波長λの1/3の長さである直径3.69m以下でかつλの1/4の長さである直径2.77m以上であることが重要であり、より望ましくは直径3.3m程度の円であることが望ましい。なお、このシミュレーションで扱う電極より大きい、例えば3.6mm×3.8mの電極の場合には、第3ゾーンCの外周直径を設定して第4ゾーンを画定する必要があり、1/2λ=5.54m、一層望ましくは5.0mに設定され得る。
【0075】
以下図8に示す解析モデルケース1を用いて計算したシミュレーション結果について説明する。
図13には、一つの誘電体の直径とフラックスとの関係のシミュレーション結果を示し、縦軸の“フラックス”は金属部、誘電体部それぞれへのイオン入射のフラックスを表し、またシミュレーションは電極間距離20mmで行った。グラフ1は金属、グラフ2は誘電体を示している。図13のシミュレーション結果に示すように誘電体の直径が30mmを越すような大きなサイズの場合、特にガラス上に薄膜トランジスタを形成するプラズマCVD法での標準的な成膜条件により載置した基板上に成摸した場合には、誘電体露出部に対向する堆積エリアと金属露出部に対向する堆積エリアにおいて顕著な差が出てきてしまう。なお本発明において誘電体の直径を5mm以上としているのは誘電体の加工上の問題及び5mm以下とした場合は金属電極に埋め込む個数が非常に多くなりかつハンドリングが現実的に困難であるためである。
【0076】
図14には、誘電体の埋め込み深さすなわち誘電体の高さと面内でのプラズマ密度分布との関係のシミュレーション結果を示し、誘電体の埋め込み深さは5mm〜20mmであるのが好ましいことがシミュレーション結果から確認できた。これは金属と誘電体の面積比7:3にて埋め込み深さを変化させた条件において確認した。20mm以下としているのは誘電体の加工上の問題及び20mm以上とした場合は電圧分布の均等効果が改善しないこと及び金属電極に埋め込む際の折れなどの問題によりハンドリングが現実的に困難であるためである。
【0077】
図15には、誘電体の埋め込み深さによる誘電体の占める面積割合と面内でのプラズマ
密度分布との関係のシミュレーション結果を示し、グラフ1は誘電体の埋め込み深さが5m
mの場合であり、またグラフ2は誘電体の埋め込み深さが10mmの場合であり、誘電体の占める面積比と電極面内全体でのプラズマ密度分布との相関を示す。シミュレーション結果に示すように、深さ5mmの場合は50%程度の表面積のとき±8%程度になりそれ以上面積比を増やすと逆効果になることがわかる。一方10mmの場合は30%程度の表面積のとき±10%程度になり、改善していることがわかる。
【0078】
図16には、図3に示す第1ゾーンA、第2ゾーンB及び第3ゾーンCにおける誘電体の占める面積割合とフラックスとの関係のシミュレーション結果を示し、誘電体を3ゾーンに分けて配置するパターンを採用した際の、各ゾーンでの“フラックス”がゾーン内の誘電体占有面積とどういう相関を持っているかを示す。これらのグラフから、ゾーンA:30〜50%、ゾーンB:20〜:30%、ゾーンC:0〜20%、とすればゾーンAからCに渡って全体的にフラックスが均一であるようにすることができる。言い換えれば、プラズマ密度がそれぞれのゾーンにおいて均一になるのは、ゾーンAでは金属と誘電体との面積割合が7:3〜5:5、ゾーンBでは金属と誘電体との面積割合が8:2〜7:3、またゾーンCでは金属と誘電体との面積割合がほぼ8:2であることがみてとれる。
【0079】
なお、上記のシミュレーションにおいては、誘電体の材料としてアルミナを用いているが、アルミナに代えてAlNを用いても同等の結果が得られる。
【実施例】
【0080】
上記のシミュレーションにおけるケース1(図8)に基き、電極を作製し、誘電体を図3に示すように同心円状に配置した。誘電体の材料としてはアルミナ(Al2O3)を使用し、直径10mm、高さ10mmの円柱状のものとし、ゾーン別に誘電体の埋め込み間隔を変化させた。成膜条件は真空槽内のガス圧を200Pa、電力密度を0.5W/cm2とし、ガスにはSiH4/N2/NH3を使用した。
【0081】
成膜結果を従来の平面電極の場合と比較して表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1において、誘電体埋め込み電極は従来の平面電極に比べて、成膜速度の値が同等で、膜厚分布、膜質(エッチングレート)分布が大幅に改善されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、特に、薄膜トランジスタの成膜に有利に用いられるが、他の大型基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置に同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一つの実施形態によるプラズマCVD装置を示す概略断面図。
【図2】図1の装置の電極に埋め込まれた誘電体とガス放出穴との配置例を示す部分拡大図。
【図3】図1の装置の電極に埋め込まれる誘電体の配列又は大きさ(高さ)を区分けするゾーンの設定を示す図。
【図4】本発明の別の実施形態によるプラズマCVD装置を示す概略断面図。
【図5】図4の装置において電極に埋め込まれる誘電体の配置例を拡大して示す概略断面図。
【図6】図4の装置において電極に埋め込まれる誘電体の別の配置例を拡大して示す概略断面図。
【図7】通常の平面電極の解析モデルを示す概略断面図。
【図8】図1に示す装置において用いられ電極の解析モデルを示す概略断面図。
【図9】図4に示す装置において用いられ電極の解析モデルを示す概略断面図。
【図10】図7〜図9に示す解析モデルを用いたシミュレーションによるアース電極近傍における水平方向電子密度分布を示すグラフ。
【図11】図7〜図9に示す解析モデルを用いたシミュレーションによるプラズマ中心における水平方向電子密度分布を示すグラフ。
【図12】図7〜図9に示す解析モデルを用いたシミュレーションによるアース電極に入射するN2+イオンフラックスを示すグラフ。
【図13】一つの誘電体の直径とフラックスとの関係のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図14】誘電体の埋め込み深さすなわち誘電体の高さと面内でのプラズマ密度分布との関係のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図15】誘電体の埋め込み深さによる誘電体の占める面積割合と面内でのプラズマ密度分布と の関係のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図16】図3に示す第1ゾーンA、第2ゾーンB及び第3ゾーンCにおける誘電体の占める面積割合とフラックスとの関係のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図17】従来のプラズマCVD装置の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0086】
1:真空槽
2:基板ホルダー
3:電極
4:ヒーター
5:大面積基板
6:絶縁部材
7:電極基体
8:シャワーヘッド
9:シャワープレート
10:誘電体
11:ガス放出孔
12:成膜ガス供給口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、前記真空槽内にガスを導入すると共に前記電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生し、前記基板ホルダーに載置した基板に対してプラズマ処理を行う容量結合型グロー放電を用いるプラズマ処理装置において、
前記電極が、金属製電極本体と、前記基板ホルダーに対向する前記金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が前記電極の表面と同じ平面内に位置していること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、前記電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極の中心を中心とする直径が1/8〜1/4λの範囲に設定された第1の円形領域では、前記電極の表面における金属の表面積と前記誘電体の表面積の割合が7:3〜5:5であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、前記電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、前記第1の円形領域外で電極の中心を中心とする直径が1/4〜1/3λの範囲に設定された第2の円形領域では、前記電極の表面における金属の表面積と前記誘電体の表面積の割合が8:2〜7:3であることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、前記電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、前記第2の円形領域外で電極の中心を中心とする直径が1/3〜1/2λの範囲に設定された第3の円形領域では、前記電極の表面における金属の表面積と前記誘電体の表面積の割合がほぼ8:2であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記各誘電体は、横断面形状が楕円形の楕円柱状構造であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記各誘電体は、横断面形状が円形の円柱状構造であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれた複数個の各円柱状誘電体が、直径5〜20mm、高さ5〜20mmであることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体が電極の表面に等間隔に配列されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体が電極の表面に等間隔に配列され、前記電極の表面の中央部に埋め込まれる各誘電体の直径が前記電極の周辺部に埋め込まれる各誘電体の直径より大きいことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体の数が、電極の中央部で多く、周縁部で少なく配置されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面の中央部には高さの高い柱状誘電体が埋め込まれ、また電極の表面の周縁部には高さの低い柱状誘電体が埋め込まれることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体が電極の表面に同心円状に配列されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体が電極の表面に等間隔に配列されることを特徴とする請求項11又は12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記各誘電体が、アルミナ、A1N、マセライト等のセラミクスとこれらの組み合わせたものを含むグループから選択された材料から成ることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記電極が、アルミニウム及びその合金を基材とし、アルマイト、アルミナ溶射、Y2O3溶射のいずれかの表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記電極が、一体に構成したシャワーヘッドと金属製電極本体を成すシャワープレートを備えていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、前記真空槽内に成膜ガスを導入すると共に前記電極に高周波電力を供給することにより導入した成膜ガスをプラズマ化して、前記基板ホルダーに載置した基板上に成膜するようにした容量結合型グロー放電を用いるプラズマCVD装置において、
前記電極が、金属製電極本体と、前記基板ホルダーに対向する前記金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が前記電極の表面と同じ平面内に位置していること
を特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項18】
真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、前記真空槽内にガスを導入すると共に前記電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生し、前記基板ホルダーに載置した基板に対してプラズマ処理を行う容量結合型グロー放電を用いるプラズマ処理方法において、
高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたこと
を特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項19】
金属電極に供給する高周波電力の周波数に応じて、金属電極表面と誘電体の端表面との面積比の異なる構造の金属電極を使用することを特徴とする請求項18に記載のプラズマ処理方法。
【請求項20】
成膜ガスとしてモノシラン、ジシランのいずれか及び希釈ガスとしてアンモニア、窒素、アルゴン、一酸化二窒素、水素、ヘリウムガスのいずれか一種類または複数のガスを混合ガスとして真空槽内に供給しグロー放電プラズマを形成し、基板上に薄膜を成膜するプラズマCVD方法であって
高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたこと
を特徴とするプラズマCVD方法。
【請求項21】
金属電極に供給する高周波電力の周波数に応じて、金属電極表面と誘電体の端表面との面積比の異なる構造の金属電極を使用することを特徴とする請求項20に記載のプラズマCVD方法。
【請求項22】
ガラス基板上に薄膜トランジスタを形成することを特徴とする請求項20又は21に記載のプラズマCVD方法。
【請求項1】
真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、前記真空槽内にガスを導入すると共に前記電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生し、前記基板ホルダーに載置した基板に対してプラズマ処理を行う容量結合型グロー放電を用いるプラズマ処理装置において、
前記電極が、金属製電極本体と、前記基板ホルダーに対向する前記金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が前記電極の表面と同じ平面内に位置していること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、前記電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極の中心を中心とする直径が1/8〜1/4λの範囲に設定された第1の円形領域では、前記電極の表面における金属の表面積と前記誘電体の表面積の割合が7:3〜5:5であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、前記電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、前記第1の円形領域外で電極の中心を中心とする直径が1/4〜1/3λの範囲に設定された第2の円形領域では、前記電極の表面における金属の表面積と前記誘電体の表面積の割合が8:2〜7:3であることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、前記電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、前記第2の円形領域外で電極の中心を中心とする直径が1/3〜1/2λの範囲に設定された第3の円形領域では、前記電極の表面における金属の表面積と前記誘電体の表面積の割合がほぼ8:2であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記各誘電体は、横断面形状が楕円形の楕円柱状構造であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記各誘電体は、横断面形状が円形の円柱状構造であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれた複数個の各円柱状誘電体が、直径5〜20mm、高さ5〜20mmであることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体が電極の表面に等間隔に配列されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体が電極の表面に等間隔に配列され、前記電極の表面の中央部に埋め込まれる各誘電体の直径が前記電極の周辺部に埋め込まれる各誘電体の直径より大きいことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体の数が、電極の中央部で多く、周縁部で少なく配置されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面の中央部には高さの高い柱状誘電体が埋め込まれ、また電極の表面の周縁部には高さの低い柱状誘電体が埋め込まれることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体が電極の表面に同心円状に配列されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面に埋め込まれる複数個の誘電体が電極の表面に等間隔に配列されることを特徴とする請求項11又は12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記各誘電体が、アルミナ、A1N、マセライト等のセラミクスとこれらの組み合わせたものを含むグループから選択された材料から成ることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記電極が、アルミニウム及びその合金を基材とし、アルマイト、アルミナ溶射、Y2O3溶射のいずれかの表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記電極が、一体に構成したシャワーヘッドと金属製電極本体を成すシャワープレートを備えていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、前記真空槽内に成膜ガスを導入すると共に前記電極に高周波電力を供給することにより導入した成膜ガスをプラズマ化して、前記基板ホルダーに載置した基板上に成膜するようにした容量結合型グロー放電を用いるプラズマCVD装置において、
前記電極が、金属製電極本体と、前記基板ホルダーに対向する前記金属製電極本体の表面に埋め込まれた複数個の誘電体とで構成され、前記基板ホルダーに対向する前記電極の表面が平坦であり、該表面に埋め込まれる複数個の誘電体の端表面が前記電極の表面と同じ平面内に位置していること
を特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項18】
真空槽内に、基板ホルダーと電極とを対向させて配置し、前記真空槽内にガスを導入すると共に前記電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生し、前記基板ホルダーに載置した基板に対してプラズマ処理を行う容量結合型グロー放電を用いるプラズマ処理方法において、
高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたこと
を特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項19】
金属電極に供給する高周波電力の周波数に応じて、金属電極表面と誘電体の端表面との面積比の異なる構造の金属電極を使用することを特徴とする請求項18に記載のプラズマ処理方法。
【請求項20】
成膜ガスとしてモノシラン、ジシランのいずれか及び希釈ガスとしてアンモニア、窒素、アルゴン、一酸化二窒素、水素、ヘリウムガスのいずれか一種類または複数のガスを混合ガスとして真空槽内に供給しグロー放電プラズマを形成し、基板上に薄膜を成膜するプラズマCVD方法であって
高周波電力を供給する電極として、放電に対向する金属製電極本体の表面に複数個の誘電体を埋め込みそれぞれの誘電体の端表面が金属製電極本体の表面と同じ平面内に位置する構造の金属電極を使用し、大面積基板に均一に成膜できるようにしたこと
を特徴とするプラズマCVD方法。
【請求項21】
金属電極に供給する高周波電力の周波数に応じて、金属電極表面と誘電体の端表面との面積比の異なる構造の金属電極を使用することを特徴とする請求項20に記載のプラズマCVD方法。
【請求項22】
ガラス基板上に薄膜トランジスタを形成することを特徴とする請求項20又は21に記載のプラズマCVD方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−324603(P2006−324603A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148574(P2005−148574)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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