説明

プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法

【課題】プロセス温度が室温程度の低い温度帯域でプラズマ処理する際に、そのプロセス温度を低く維持してプラズマ成膜処理等のプラズマ処理の再現性を向上させることが可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】真空引き可能になされた筒体状の処理容器24と、被処理体Wを保持して処理容器内へ挿脱される保持手段28と、ガスを供給するガス供給手段46,48と、処理容器の長さ方向に沿って設けられてガスを高周波電力により発生したプラズマにより活性化する活性化手段58とを有して、被処理体に対してプラズマ処理を施すようになされたプラズマ処理装置において、高周波を遮断するために処理容器の周囲を囲むようにして設けられると共に接地された筒体状のシールド筐体72と、プラズマ処理中にシールド筐体と処理容器との間の空間部82に沿って冷却気体を流す冷却機構74とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体にプラズマを用いて室温程度の温度帯域にて成膜処理を施すためのプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路を製造するためにはシリコン基板等よりなる半導体ウエハに対して、成膜処理、エッチング処理、酸化処理、拡散処理、改質処理、自然酸化膜の除去処理等の各種の処理が行なわれる。そして、最近にあっては、成膜材料の耐熱性等を考慮してプロセス処理時における低温化が求められており、これに対応してプロセス時のウエハ温度が低くても反応を促進させることができるプラズマを用いたプラズマ処理装置が提案されている(特許文献1〜4等)。
【0003】
上記したプラズマ処理装置の一例を説明すると、図14は上記した従来の縦型のプラズマ処理装置の一例を示す概略模式図である。図14において、内部雰囲気が真空引き可能になされた石英製の円筒体状の処理容器2内には、半導体ウエハWが回転可能になされたウエハボート4により多段に支持されており、このウエハボート4は、処理容器2の下方より昇降されてこの処理容器2内に挿脱できるようになっている。また、この処理容器2の下端は蓋部6により気密に閉じるようになっている。この処理容器2の側壁には、この高さ方向に沿って断面が矩形状になされたプラズマ形成ボックス8が設けられている。そして、このボックス8内にプラズマにより活性化するガスを流すガスノズル10が設けてある。
【0004】
そして、このプラズマ形成ボックス8の区画壁の外側両側に、それぞれ独立したプラズマ電極12をボックスの高さ方向に沿って互いに対向させて一対設け、この両プラズマ電極12間にプラズマ発生用の高周波電源14からの、例えば13.56MHzの高周波電力を印加するようになっている。また、この処理容器2の外側には、天井部も含めて断熱材16が設けられると共に、この断熱材16の内側の側面には、上記半導体ウエハWを加熱するために加熱ヒータ18が設けられる。そして、この断熱材16の外側面には、天井部を含めてシールド筐体20が設けられると共に、このシールド筐体20は接地されて、高周波が外部へ洩れ出ることを防止するようになっている。
【0005】
このような構成において、上記両プラズマ電極12間に高周波電力が印加されるとプラズマが発生し、このプラズマによってプラズマ形成ボックス8内に供給されたガスが活性化されて活性種が発生し、ウエハWの加熱温度が低くても上記形成された活性種によって反応等が促進されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−049809号公報
【特許文献2】特開2006−270016号公報
【特許文献3】特開2007−42823号公報
【特許文献4】国際公開2006/093136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近あっては、新しい技術としてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)なる技術が提案されており、このMEMS技術においては、圧力センサやマイクロフォン等の1つの装置を小さなチップ内に微細加工技術によって三次元的に組み立てる技術であり、中には回転子を有する微細モータを組み付けるようなMEMS技術も提案されている。例えば上記微細モータを形成する場合には、回転可能な微細な回転子を形成するために、この回転子に相当する微細な部品の全周囲を予め酸化膜で包み込むように形成して、その周辺部を上記回転子を収容するケースを薄膜で形成した後に、上記酸化膜の全体をエッチングにより除去することによりケース内を空洞化させ、これにより、上記微細な回転子をケース内で回転(自転)ができるような構造に仕上げている。
【0008】
このように、装置自体には最終的には残らないで、製造工程の途中で必要のために形成されて、その後に除去されるような薄膜を犠牲層と称され、それが酸化膜の場合には犠牲酸化膜といわれる。このような犠牲層、或いは犠牲酸化膜は、後で除去されるので膜質特性等は特に問題とはなされない。従って、通常のゲート酸化膜や層間絶縁膜等の高い膜質特性が要求される酸化膜等を成膜する時には、高い膜質特性を得るために比較的温度の高い高温下で成膜処理を行わざるを得ないが、このような犠牲酸化膜を形成するためには、室温等の低温域で成膜できる技術が開発されている。
【0009】
上記犠牲酸化膜を成膜するには、例えば成膜装置として図14にて説明したようなプラズマ処理装置を用い、原料ガスとしてDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)等のアミノシラン系ガスとプラズマにより発生したオゾン等の活性種を用い、室温程度の比較的低温で上記犠牲酸化膜を形成するようになっている。
【0010】
しかしながら、上記した犠牲酸化膜を形成するために、図14にて説明したようなプラズマ処理装置を用いると、バッチ処理をする毎に処理容器2と断熱材16との間の空間部分にプラズマにより発生した熱が蓄積されて熱が籠もるようになり、この結果、連続してバッチ処理を行うと、バッチ処理毎にプロセス温度が次第に上昇してしまって、成膜の再現性が低下してしまう、といった問題が発生していた。
【0011】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、プロセス温度が室温程度の低い温度帯域でプラズマ処理する際に、そのプロセス温度を低く維持してプラズマ成膜処理等のプラズマ処理の再現性を向上させることが可能なプラズマ処理装置を提供することにある。本発明の他の目的は、クリーニング頻度を少なくしてスループットを向上させることが可能なプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、真空引き可能になされた筒体状の処理容器と、複数の被処理体を保持して前記処理容器内へ挿脱される保持手段と、前記処理容器内へガスを供給するガス供給手段と、前記処理容器の長さ方向に沿って設けられて前記ガスを高周波電力により発生したプラズマにより活性化する活性化手段とを有して、前記被処理体に対してプラズマ処理を施すようになされたプラズマ処理装置において、高周波を遮断するために前記処理容器の周囲を囲むようにして設けられると共に接地された筒体状のシールド筐体と、前記プラズマ処理中に前記シールド筐体と前記処理容器との間の空間部に沿って冷却気体を流す冷却機構と、を備えるように構成したことを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0013】
このように、筒体状の処理容器内に保持手段に保持された複数の被処理体を収容して必要なガスを導入し、これらの被処理体を活性化手段により発生したプラズマによってガスの活性種を形成し、この活性種によって被処理体にプラズマ処理を施すようにしたプラズマ処理装置において、高周波を遮断するために処理容器の周囲を囲むようにして設けられると共に接地された筒体状のシールド筐体と、プラズマ処理中にシールド筐体と処理容器との間の空間部に沿って冷却気体を流す冷却機構とを備え、プラズマ処理中に冷却機構により処理容器の外側に沿って冷却気体を流して冷却するようにしたので、シールド筐体と処理容器との間の空間部にプラズマから発生した熱が籠もることがなくなり、その結果、プロセス温度が室温程度の低い温度帯域でプラズマ処理する際に、そのプロセス温度を低く維持してプラズマ成膜処理等のプラズマ処理の再現性を向上させることが可能となる。
【0014】
請求項13に係る発明は、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発明において、前記空間部内の雰囲気の温度を測定する温度測定手段と、前記排気ヘッダ部と前記排気源との間に設けられた排気路と、前記排気路の途中に介設され、前記プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で前記空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の前記温度測定手段の測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、前記プラズマ処理時には閉じられた状態になされる弁機構とを備えることを特徴とする。
【0015】
このように、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発明において、更に空間部内の雰囲気の温度を測定する温度測定手段と、排気ヘッダ部と排気源との間に設けられた排気路と、排気路の途中に介設され、プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の温度測定手段の測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、プラズマ処理時には閉じられた状態になされる弁機構とを備えることにより、例えば処理容器の内壁に堆積する不要な膜が剥がれ落ち難くなるような条件を設定することができる。この結果、クリーニング頻度を少なくしてスループットの向上を図ることが可能となる。
【0016】
請求項18に係る発明は、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置を用いて被処理体にプラズマ処理を施すプラズマ処理方法において、前記プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で処理容器とシールド筐体との間に形成される空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の前記空間部の雰囲気の温度を測定し、この測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、前記空間部に冷却気体を流さないようにした状態で前記プラズマ処理を行うようにしたことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0017】
これにより、例えば処理容器の内壁に堆積する不要な膜が剥がれ落ち難くなるような条件を設定することができる。この結果、クリーニング頻度を少なくしてスループットの向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1及びこれを引用する請求項に係る発明によれば、筒体状の処理容器内に保持手段に保持された複数の被処理体を収容して必要なガスを導入し、これらの被処理体を活性化手段により発生したプラズマによってガスの活性種を形成し、この活性種によって被処理体にプラズマ処理を施すようにしたプラズマ処理装置において、高周波を遮断するために処理容器の周囲を囲むようにして設けられると共に接地された筒体状のシールド筐体と、プラズマ処理中にシールド筐体と処理容器との間の空間部に沿って冷却気体を流す冷却機構とを備え、プラズマ処理中に冷却機構により処理容器の外側に沿って冷却気体を流して冷却するようにしたので、シールド筐体と処理容器との間の空間部にプラズマから発生した熱が籠もることがなくなり、その結果、プロセス温度が室温程度の低い温度帯域でプラズマ処理する際に、そのプロセス温度を低く維持してプラズマ成膜処理等のプラズマ処理の再現性を向上させることができる。
【0019】
特に、請求項13及びこれを引用する請求項に係る発明によれば、更に空間部内の雰囲気の温度を測定する温度測定手段と、排気ヘッダ部と排気源との間に設けられた排気路と、排気路の途中に介設され、プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の温度測定手段の測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、プラズマ処理時には閉じられた状態になされる弁機構とを備えることにより、例えば処理容器の内壁に堆積する不要な膜が剥がれ落ち難くなるような条件を設定することができる。この結果、クリーニング頻度を少なくしてスループットの向上を図ることができる。
【0020】
請求項18及びこれを引用する請求項に係る発明によれば、例えば処理容器の内壁に堆積する不要な膜が剥がれ落ち難くなるような条件を設定することができる。この結果、クリーニング頻度を少なくしてスループットの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るプラズマ処理装置の一例を示す縦断面構成図である。
【図2】プラズマ処理装置を示す横断面図である。
【図3】シールド筐体と冷却機構を示す部分概略斜視図である。
【図4】吸気ヘッダ部の状態を示す分解斜視図である。
【図5】排気ヘッダ部を示す横断面図である。
【図6】バッチ処理を連続して行った時の処理中における空間部の温度変化を示すグラフである。
【図7】図6に示すグラフの結果から求めた空間部の温度差を示す図である。
【図8】本発明の変形実施例1に係るプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】本発明の変形実施例1におけるシールド筐体内雰囲気と大気との差圧とシールド筐体の内部の温度との関係を示すグラフである。
【図10】差圧が0Paの時のラン数とパーティクル数及び累積膜厚との関係を示すグラフである。
【図11】差圧が60Paの時のラン数とパーティクル数及び累積膜厚との関係を示すグラフである。
【図12】差圧が130Paの時のラン数とパーティクル数及び累積膜厚との関係を示すグラフである。
【図13】プラズマ処理(ラン)終了後のシールド筐体内の温度変化を示すグラフである。
【図14】従来の縦型のプラズマ処理装置の一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係るプラズマ処理装置の一例を示す縦断面構成図、図2はプラズマ処理装置を示す横断面図、図3はシールド筐体と冷却機構を示す部分概略斜視図、図4は吸気ヘッダ部の状態を示す分解斜視図、図5は排気ヘッダ部を示す横断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明のプラズマ処理装置22は、鉛直方向に設置されて下端が開口された有天井の縦長円筒体状の処理容器24を有している。この処理容器24の全体は、例えば石英により形成されており、この処理容器24内の天井には、石英製の天井板26が設けられて封止されている。また、この処理容器24の下端部は、排気特性の向上のためにその内径が少し大きく設定され、その下端は開口されている。この下端部に例えばステンレススチール製の円筒体状のマニホールドを連結するようにした構成を用いてもよい。
【0024】
上記処理容器24の下端開口部においては、その下方より多数枚の被処理体としての半導体ウエハWを多段に載置した保持手段としての石英製のウエハボート28が昇降可能に挿脱自在になされている。本実施例の場合において、このウエハボート28の支柱28Aには、例えば50〜150枚程度の直径が300mmのウエハWを略等ピッチで多段に支持できるようになっている。
【0025】
このウエハボート28は、石英製の保温筒30を介してテーブル32上に載置されており、このテーブル32は、処理容器24の下端開口部を開閉する例えばステンレススチール製の蓋部34を貫通する回転軸36上に支持される。そして、この回転軸36の蓋部34に対する貫通部には、例えば磁性流体シール38が介設され、この回転軸36を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部34の周辺部と処理容器24の下端部には、例えばOリング等よりなるシール部材40が介設されており、処理容器24内のシール性を保持している。
【0026】
上記した回転軸36は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム42の先端に取り付けられており、ウエハボート28及び蓋部34等を一体的に昇降して処理容器24内へ挿脱できるようになされている。尚、上記テーブル32を上記蓋部34側へ固定して設け、ウエハボート28を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。そして、この処理容器24の下端部は、例えばステンレススチールよりなるベース板44に取り付けられて支持されている。
【0027】
この処理容器24の下部には、処理容器24内の方へプラズマ化される第1のガスを供給する第1のガス供給手段46と、第2のガスを供給する第2のガス供給手段48とが設けられる。具体的には、上記第1のガス供給手段46は、上記処理容器24の下部の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて延びる石英管よりなる第1のガスノズル50を有している。この第1のガスノズル50には、その長さ方向に沿って複数(多数)のガス噴射孔50Aが所定の間隔を隔てて形成されて分散形のガスノズルとなっており、各ガス噴射孔50Aから水平方向に向けて略均一に第1のガスを噴射できるようになっている。
【0028】
また同様に上記第2のガス供給手段48も、上記処理容器24の下部の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて延びる石英管よりなる第2のガスノズル52を有している。上記第2のガスノズル52には、その長さ方向に沿って複数(多数)のガス噴射孔52Aが所定の間隔を隔てて形成されて分散形のガスノズルとなっており、各ガス噴射孔52Aから水平方向に向けて略均一に第2のガスを噴射できるようになっている。また、上記第1及び第2のガスノズル50、52に接続されるガス通路46A、48Aの途中には、それぞれガス流量を制御するマスフローコントローラのような流量制御器46B、48B及び開閉弁46C、48Cが介設されている。
【0029】
尚、ここでは第1のガスと第2のガスを供給する第1のガス供給手段46と第2のガス供給手段48しか示していないが、更に多くのガス種を用いる場合には、それに対応して更に別のガス供給手段を設けるのは勿論であり、例えばN 等のパージガスを供給するためのガス供給手段も設けられている。また図示されてないが、不要な膜を除去するクリーニングガス、例えばHF系ガスを供給するクリーニングガス供給系も設けられている。
【0030】
そして、この処理容器24の下部の側壁には排気口54が形成されている。そして、この排気口54には、圧力調整弁56Aや真空ポンプ56B等が介設された真空排気系56が接続されており、処理容器24内の雰囲気を真空引きして所定の圧力に維持できるようになっている。
【0031】
そして、上記処理容器24には、その長さ方向に沿って設けられて、上記第1のガスを高周波電力により発生したプラズマにより活性化する活性化手段58が形成されている。この活性化手段58は、図2にも示すように処理容器24の長手方向に沿って設けられたプラズマ区画壁60により区画形成されたプラズマ形成ボックス62と、このプラズマ区画壁60にその長手方向に沿って設けられたプラズマ電極64と、このプラズマ電極64に接続された高周波電源66とにより主に構成されている。
【0032】
具体的には、上記プラズマ形成ボックス62は、上記処理容器24の側壁を上下方向に沿って所定の幅で削りとることによって上下に細長い開口68を形成し、この開口68をその外側より覆うようにして断面コ字状になされた上下に細長い例えば石英製の上記プラズマ区画壁60を容器外壁に気密に溶接接合することにより形成されている。
【0033】
これにより、この処理容器24の側壁の外側に突出させるようにして、断面コ字状に窪ませて一側が処理容器24内へ開口されて連通されたプラズマ形成ボックス62が一体的に形成されることになる。すなわちプラズマ区画壁60の内部空間はプラズマ形成領域となっており、上記処理容器24内に一体的に連通された状態となっている。上記開口68は、ウエハボート28に保持されている全てのウエハWを高さ方向においてカバーできるように上下方向に十分に長く形成されている。そして、上記プラズマ区画壁60の両側壁の外側面には、互いに対向させるようにして一対の上記プラズマ電極64が設けられている。このプラズマ電極64は、プラズマ形成ボックス62の長手方向に沿って全体に形成されている。
【0034】
そして、上記各プラズマ電極64は、それぞれ給電ライン70に接続され、この給電ライン70は、インピーダンス整合を図るための整合回路71が途中に介設されて上記プラズマ発生用の高周波電源66に接続されており、この高周波電力によってプラズマ形成ボックス62内にプラズマを形成するようになっている。ここで上記高周波電源66の周波数としては、例えば13.56MHzが用いられるが、これに限定されず、4MHz〜27.12MHzの範囲内の周波数を用いることができる。
【0035】
そして、上記処理容器24内を上方向に延びて行く第1のガスノズル50は途中で処理容器24の半径方向外方へ屈曲されて、上記プラズマ形成ボックス62内の一番奥(処理容器24の中心より一番離れた部分)に位置され、この一番奥の部分に沿って上方に向けて起立させて設けられている。従って、高周波電源66がオンされている時に上記第1のガスノズル50の各ガス噴射孔50Aから噴射された第1のガスはここでプラズマにより活性化されて処理容器24の中心に向けて拡散しつつ流れるようになっている。尚、上記第1のガスノズル50は、処理容器24の側壁を貫通させないで、プラズマ区画壁の下端部より直接貫通させるようにして設けてもよい。
【0036】
また、処理容器24の開口68の内側の一側には、上記第2のガスノズル52が起立させて設けられており(図2参照)、第2のガスノズル52に設けた各ガス噴射孔52Aより処理容器24の中心方向に向けて第2のガスを噴射し得るようになっている。そして、このように形成された処理容器24の外側に、本発明の特徴とするシールド筐体72と、プラズマ処理中にこのシールド筐体72内に冷却気体を流す冷却機構74とが設けられている。具体的には、上記処理容器24の外側には天井部も含めて周囲全体を囲むようにして例えば円筒状に成形された上記シールド筐体72が設けられている。このシールド筐体72は、アルミニウムやステンレススチール等の金属よりなって接地されており、活性化手段64から外へ洩出する高周波を遮断して外側へ洩れ出ないようにしている。
【0037】
このシールド筐体72の下端部は、上記ベース板44に接続されており、この下方からも高周波が洩れ出ないようにしている。このシールド筐体72のシールド値(比導電率×比透磁率×板厚)は高い程よく、例えばSUS304(ステンレススチールの種類)を用いた場合の板厚は1.5mm以上に設定するのがよい。また、その寸法は例えば直径が300mmのウエハWを収容する上記処理容器24の直径が450mm程度の場合には、上記ケーシング筐体72の直径は600mm程度である。
【0038】
そして、このケーシング筐体72に取り付けられる上記冷却機構74は、このシールド筐体72の一端である下端部に設けられて冷却気体を取り込むための吸気ヘッダ部76と、シールド筐体72の他端である上端部に設けられてシールド筐体72内の雰囲気を排気するための排気ヘッダ部78とよりなり、上記シールド筐体72と処理容器24との間の空間部82に沿って矢印84に示すように冷却気体を流すようになっている。そして、この排気ヘッダ部78は、排気源80に接続される。この排気源80とは、ここではクリーンルーム内に設置されたこのプラズマ処理装置22を含む各装置内の排気を行う工場ダクト83よりなり、この工場ダクト83の下流側には、大型の排気ファン(図示せず)が設けられており、工場内全体の排気を行うようになっている。
【0039】
上記吸気ヘッダ部78は、図3及び図4にも示すように、上記シールド筐体72の側壁に、その周方向に沿って設けられた気体流通ダクト86と、上記シールド筐体72の側壁にその周方向に沿って所定の間隔で均等に形成された気体流通孔88と、上記気体流通ダクト86に設けられて冷却気体を取り込むための気体導入口90とを有している。上記気体流通ダクト86は、ここでは断面が略矩形状に成形されており、シールド筐体72の下端部の周囲をリング状に囲むようにして設けられている。
【0040】
そして、この気体流通ダクト86の天井部86Aに、上記シールド筐体72の直径方向に対向するように配置して一対(2個)の上記気体導入口90が形成されている。上記気体流通孔88は、ここではシールド筐体72の周方向に沿って長方形状に成形されており、全体で4個の気体流通孔88が等間隔で配置されている。従って、上記2つの気体導入口90から気体流通ダクト86内に取り込んだ冷却気体を、この気体流通ダクト86内に沿って流しつつ上記長方形状の気体流通孔88からシールド筐体72内へ流し込むようになっている。
【0041】
この場合、冷却気体を均等に流すために、上記気体導入口90を、隣り合う気体流通孔88間の中央部に設置するのが好ましい。この気体流通孔88の数は4個に限定されず、2つ、或いは更に多く設けてもよいし、パンチングメタル状にリング状に形成してもよい。また、高周波のシールド効果を高めるために上記気体流通孔88にパンチングメタルを取り付けるようにしてもよい。
【0042】
そして、ここでは上記2つの気体導入口90に接続するようにして、半円弧状の冷却気体案内ダクト92が設けられる。この冷却気体案内ダクト92の中央部には気体入口94が設けられると共に、その両端側に、上記各気体導入口90に連通される開口96がそれぞれ形成されている。ここではクリーンルーム内の常時23〜27℃程度に維持されている清浄空気が冷却気体として用いられており、従って、上記気体導入口90から導入された清浄空気よりなる冷却気体が上記冷却気体案内ダクト92内を流れて開口96及び気体導入口90を介してリング状の気体流通ダクト86内を2方向に分かれて流れ、上記気体流通孔88よりシールド筐体72内へ流れ込むようになっている。実際には、上記気体入口94には、図示しない給気路が接続され、この給気路からクリーンルーム内と同様な温度の清浄空気が導入される。
【0043】
尚、上記冷却気体案内ダクト92は設けないで、2つの気体導入口90より直接的に冷却気体であるクリーンルーム内の清浄空気を取り込むようにしてもよいし、この気体導入口90の数を更に多く設けるようにしてもよい。
【0044】
一方、図3及び図5にも示すように、上記シールド筐体72の上端部に設けられる排気ヘッダ部78は、シールド筐体72の端面を塞ぐ端板98に形成された気体流通孔100と、この気体流通孔100を囲んで覆うようにして設けられた箱状の排気ボックス102と、この排気ボックス102に設けられた気体排気口104と、この気体排気口104に接続されて上記排気源80である工場ダクト83(図1参照)に接続される排気路106とを有している。
【0045】
上記端板98は、シールド筐体72の天井板として機能するものであり、この端板98も高周波に対するシールド機能を有する金属板、例えばステンレススチールにより形成されている。この端板98に形成される気体流通孔100は、ここでは複数の直径の小さなパンチ孔100Aを配列して形成されており、下方から上昇してくる冷却気体をパンチ孔100Aを通して上方へ流すと共に高周波に対するシール性を高めるようになっている。すなわち、ここでは端板98としては、中央部側に複数の孔が形成されたパンチングメタルを用いることができる。この場合、この気体流通孔100を大口径の1つの孔として形成してもよい。この大口径の気体流通孔100にパンチングメタルを取り付けるようにしてもよい。
【0046】
上記排気ボックス102は、ここでは略正四角形状に成形されており、その内側には、上記気体流通孔100を囲むようにすると共に、一辺を上記排気ボックス102の側壁と共通にした逆”コ”字状の区画壁108が更に設けられている。そして、この区画壁108の対向面には一対の流通孔110が形成されると共に、この流通孔110は、上記排気ボックス102の壁面と上記区画壁108との間に形成された流路112を介して上記気体排気口104に連通されている。
【0047】
従って、上記複数のパンチ孔100Aを介して上記流れ出た冷却気体は、区画壁108に設けた一対の流通孔110を介して流路112内を流れ、更に気体排気口104より工場ダクト83側へ向けて流れるように構成されている。尚、上記排気ボックス102の形状は矩形状に限定されず、例えば円形に成形してもよいし、更に区画壁108の形状を円形に成形するようにしてもよい。更に、気体排気口104を排気ボックス102の側壁ではなく、この気体排気口104を排気ボックス102の天井部に設けるようにして冷却気体を上方へ抜くようにしてもよい。また上記排気路106には、流量制御弁113が介設されており、排気風量を制御できるようになっている。
【0048】
そして、図1に戻ってこのプラズマ処理装置22の動作全体の制御、例えばガスの供給の開始及び供給の停止、高周波電源66の電力の設定や、このオン・オフ、プロセス圧力の設定等は例えばコンピュータ等よりなる装置制御部114により行われる。そして、この装置制御部114は、このプラズマ処理装置22の全体の動作も制御することになる。またこの装置制御部114は、上記各種ガスの供給や供給停止の制御、高周波のオン・オフ制御及び装置全体の動作を制御するためのコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶する例えばフレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等の記憶媒体116を有している。
【0049】
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置を用いて行なわれるプラズマ処理としてプラズマによる成膜方法を室温付近で行う場合を例にとって説明する。具体的には、ここでは成膜処理として、第1のガスとして酸素を用い、第2のガスとしてアミノシラン系ガスを用いて室温付近で犠牲酸化膜を形成する場合を例にとって説明する。尚、アミノシラン系ガスとしては先に説明したDIPASを用いることができる。
【0050】
まず、図1及び図2に示すように、常温の多数枚、例えば50〜150枚の300mmサイズのウエハWが載置された状態のウエハボート28を室温、例えば23〜27℃程度になされた処理容器24内にその下方より上昇させてロードし、蓋部34で処理容器24の下端開口部を閉じることにより容器内を密閉する。
【0051】
そして処理容器24内を真空引きして所定のプロセス圧力に維持し、上記第1のガスと第2のガスとを第1のガス供給手段46及び第2のガス供給手段48からそれぞれ流量制御しつつ供給する。これと共に高周波電源(RF電源)66をオンして活性化手段58のプラズマ形成ボックス62内にプラズマを立てるようにする。
【0052】
具体的には、第1のガスである酸素ガスは第1のガスノズル50の各ガス噴射孔50Aから水平方向へ噴射され、また、第2のガスであるアミノシラン系ガスは第2のガスノズル52の各ガス噴射孔52Aから水平方向へ噴射される。そして、酸素ガスは、プラズマ形成ボックス62内に形成されているプラズマにより活性化されてオゾン等の活性種が作られ、この活性種が上記アミノシラン系ガスと反応してウエハWの表面に犠牲酸化膜を形成することになる。
【0053】
一方、このようなプラズマ成膜処理が行われている間、上記プラズマによって発生した熱が、上記処理容器24の外側を覆う高周波遮断用のシールド筐体72内に次第に籠もる傾向となる。しかし、本発明においては、このシールド筐体72内は冷却機構74によって流されている冷却気体によって冷却されているので、処理容器24やウエハWの温度上昇を抑制して、これを室温程度に維持することができる。
【0054】
すなわち、このシールド筐体72内の雰囲気は、排気源80である工場ダクト83に連通されて排気されているので、常時減圧雰囲気になされている。従って、このプラズマ処理装置22が設置されているクリーンルーム内の23〜27℃程度に維持された清浄空気は、シールド筐体72の下部に設けた気体導入口94から矢印120(図1及び図3参照)に示すように冷却気体として冷却気体案内ダクト92内に取り込まれてこの中を流れ、この冷却気体は、円弧形状の冷却気体案内ダクト92の両端に設けた各開口96及び気体導入口90を介して吸気ヘッダ部78の気体流通ダクト86内へ矢印122(図3参照)に示すように取り込まれる。この冷却気体は、リング状の気体流通ダクト86内を2方向に分かれて流れ、4つ設けられた上記気体流通孔88よりシールド筐体72内へ流れ込むことになる。
【0055】
このシールド筐体72内へ流れ込んだ冷却気体は、このシールド筐体72と処理容器24との間の空間部82内を矢印84(図1参照)に示すように上昇して流れて行き、この時、プラズマにより発生した熱により昇温傾向にある処理容器24の側壁を冷却すると共に、この空間部82に籠もっているプラズマにより発生した熱を運んで排出して行くことになる。この冷却気体の上昇する流れは、処理容器24の略全周において生ずることになる。
【0056】
このシールド筐体72内を上昇して流れた冷却気体は、排気ヘッダ部78の気体流通孔100の各パンチ孔100Aを介して排気ボックス102内に収束するようにして流れ込み、更にこの冷却気体は矢印124(図5参照)に示すように区画壁108に設けた一対の各流通孔110を介して排気ボックス102と区画壁108との間の流路112内を流れ、更に気体排気口104より排気路106を介して工場ダクト83側へ流れて行くことになる。
【0057】
このようにして、シールド筐体72内は冷却されているので、処理容器24やウエハWの温度上昇を抑制してこれを室温程度に維持することができる。また、1つのバッチ処理が終了して次のバッチ処理を行う時にもシールド筐体72内には熱が籠もる状態とはなっていないので、処理容器24やウエハWの温度上昇を抑制して室温程度に維持することができ、プラズマ処理の再現性を高く維持することができる。換言すれば、一度に複数枚のウエハWをプラズマ処理するバッチ処理を連続的に行っても、上述のように冷却気体をシールド筐体72内に流して空間部82に籠もった熱を排出すると共に処理容器24及びウエハWを冷却して室温程度に維持することができるので、プラズマ処理(成膜処理)の再現性を高く維持することができる。
【0058】
このように、本発明によれば、筒体状の処理容器24内に保持手段28に保持された複数の被処理体、例えば半導体ウエハWを収容して必要なガスを導入し、これらの被処理体を活性化手段58により発生したプラズマによってガスの活性種を形成し、この活性種によって被処理体にプラズマ処理を施すようにしたプラズマ処理装置22において、高周波を遮断するために処理容器24の周囲を囲むようにして設けられると共に接地された筒体状のシールド筐体72と、プラズマ処理中にシールド筐体72と処理容器24との間の空間部82に沿って冷却気体を流す冷却機構74とを備え、プラズマ処理中に冷却機構74により処理容器24の外側に沿って冷却気体を流して冷却するようにしたので、シールド筐体72と処理容器24との間の空間部82にプラズマから発生した熱が籠もることがなくなり、その結果、プロセス温度が室温程度の低い温度帯域でプラズマ処理する際に、そのプロセス温度を低く維持してプラズマ成膜処理等のプラズマ処理の再現性を向上させることができる。
【0059】
<本発明の冷却機構の評価>
次に、上述したような冷却機構74を設けた本発明のプラズマ処理装置を用いて複数回のプラズマによるバッチ処理を連続的に行った時の処理容器24とシールド筐体72との間に形成される空間部82の温度変化を測定したので、その評価結果について説明する。ここでは比較のために、図14に示すような円筒体状の断熱材付きの加熱ヒータ(ヒータ自体は駆動せず)を有する従来のプラズマ処理装置でプラズマによるバッチ処理も行ったので、その結果についても説明する。
【0060】
ここでの処理は、1回のバッチ処理で117枚のウエハについて60分間のプラズマ成膜処理を行い、このバッチ処理を連続して7回(7RUN)行った。図6はバッチ処理を連続して行った時の処理中における空間部の温度変化を示すグラフであり、図6(A)が従来のプラズマ処理装置の場合を示し、図6(B)が本発明のプラズマ処理装置の場合を示している。ここで図6(B)に示す本発明のプラズマ処理装置では、シールド筐体内の排気風量を0.55m /minに設定している。
【0061】
図7は図6に示すグラフの結果から求めた空間部の温度差を示す図である。尚、ここでは本発明では排気風量を3種類変えて行ったときの実験の結果を併せて記載している。また、ここではウエハボートに多段に支持されているウエハを高さ方向に4つのエリアに分割し、最上段に位置するエリアに対応する空間部の温度を”TOP”(トップ)と表し、その下のエリアに対応する空間部の温度を”T−C”(トップセンター)と表し、更にその下のエリアに対応する空間部の温度を”C−B”(センターボトム)と表し、更に最下段に位置するエリアに対応する空間部の温度を”BTM”(ボトム)と表している。上記各温度は空間部82に配置した熱電対により測定している。また、全てのプロセスにおいて、処理開始時の空間部82の温度は27℃であった。
【0062】
図6(A)に示すように、従来のプラズマ処理装置の場合には、”TOP”、”T−C”、C−B”、及び”BTM”の全てのエリアの空間部の温度は、1RUN目から7RUN目までバッチ処理を繰り返す毎に空間部の温度は27〜28℃から徐々に上昇し、最終的に40〜46℃程度まで上昇しており、再現性が劣っていることが判る。具体的には、図7(A)に示すように、空間部の最大値(Max)と最小値(Min)との温度差(Δ)は、”TOP”が18.5℃、”T−C”が16.5℃、C−B”が13.6℃、”BTM”が10.7℃となっており、バッチ処理間で空間部の温度が大きく変動して好ましくない。
【0063】
これに対して、図6(B)に示すように、本発明の場合には、”TOP”、”T−C”、C−B”、及び”BTM”の全てのエリアの空間部の温度は、1RUN目から7RUN目まで略27〜30℃の範囲内に収まっており、バッチ処理を連続的に行っても空間部の温度が上昇することがなくてこれを安定的に維持することができるので、プラズマ処理の再現性を高めることができることが判る。
【0064】
図7(C)はこの図6(B)に示す実験の空間部の温度の最大値(Max)と最小値(Min)との温度差(Δ)をとったものであり、それぞれ3.6℃、1.9℃、1.4℃、1.2℃であり、全てのエリアで温度差が非常に小さくなって従来の装置例と比較して遥かに良好な結果を得ることができた。また、本発明のプラズマ処理装置を用いて、排気風量のみを0.35m /min及び0.72m /minに変えて、図6(B)にて説明した実験と同様な実験を行った時の結果を図7(B)及び図7(D)にそれぞれ示す。
【0065】
これによれば、”TOP”、”T−C”、C−B”、及び”BTM”の空間部の各温度は、図7(B)及び図7(D)に示す場合も、設定温度である27℃よりそれ程変化しておらず、十分に良好な結果を示しており、また、温度差(Δ)も図7(B)の場合は5.2℃、3.9℃、2.2℃、1.4℃であり、また図7(D)の場合は3.0℃、1.7℃、1.5℃、1.2℃であり、共に良好な結果を示しており、プラズマ処理の再現性を高めることができることが判る。
【0066】
この場合、図7(B)に示すように、排気風量を0.35m /minに少なくした場合に、”TOP”や”T−C”の空間部の各温度が32.5℃や31.1℃まで上昇するが、設定温度の27℃の±6℃の範囲内なので、十分に実用に耐え得る結果であった。
【0067】
<変形実施例1>
次に本発明に変形実施例1について説明する。先の実施例では、成膜処理中には冷却機構74を用いてシールド筐体72内の空間部82へ冷却気体を必ず流すようにしていたが、このプラズマ処理装置22を設置する環境、例えばクリーンルーム内の温度環境等によっては、スループット向上の観点より冷却気体を流さない方がよい場合もある。具体的には、成膜処理を繰り返して行うと、処理容器24の内壁にも剥がれ落ちるとパーティクルの原因となる不要な膜が累積して堆積することになるが、一般的には、この不要な膜が剥がれ落ちる前に、定期的に、或いは不定期的にクリーニングガスを用いて上記不要な膜を除去するクリーニング操作が行われている。
【0068】
この不要な膜を除去するクリーニングにおいては、例えば処理容器24の側壁に堆積する上記不要な膜の累積膜厚を管理し、この膜厚が予め定めた基準となる厚さ、例えば1〜20μm程度の範囲内の予め定められた基準値に達する毎にクリーニング操作を行うようになっている。この場合、成膜時の処理容器24の温度に依存して、処理容器24の内壁に堆積する不要な膜の膜質が微妙に変化し、例えば累積膜厚が基準値に達する前に剥がれ落ち易くなる場合もあることが判明した。この基準値は、成膜する膜種やプロセス条件等によって予め定められている。
【0069】
具体的には、冷却機構74を動作させて処理容器24の側壁の温度を下げ過ぎると、低温になるに従って不要の膜が剥がれ落ち易くなり、累積膜厚が予め定めた基準値以下でも不要な膜が剥がれ落ち始めてパーティクルが発生する現象が生じることが判った。そこで、この本発明の変形実施例1ではプラズマ処理装置22の設置環境に依存して、冷却機構74を動作させるか否かを決定するようにしている。
【0070】
図8は本発明の変形実施例1に係るプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。図8においては、基本的な構成は、以下に説明する点を除いて先に図1乃至図5を参照して説明したプラズマ処理装置と同じである。図1乃至図5において説明した構成と同一構成部分については同一参照符号を付して、その説明を省略する。図8においては重要な構成部分のみを模式的に記載している。
【0071】
ここでは上記冷却機構74の排気ヘッダ部78の気体排気口104と排気源88とを連絡する排気路106の途中に弁機構130を設けている。この弁機構130は、バタフライ弁のような流量制御弁132と第1の開閉弁134とを直列に設けて構成されている。また、冷却機構74の吸気ヘッダ部76に設けた冷却気体案内ダクト92の気体入口94には、給気路136が接続され、この給気路136の途中には第2の開閉弁138が介設されている。この給気路136には、クリーンルーム内と略同じ温度の清浄空気が冷却気体として矢印120のように吸い込まれて行くことになる。尚、この給気路136を設けないで気体入口94をクリーンルーム内に開放させるようにしてもよい。
【0072】
また、処理容器24とシールド筐体72との間に形成される空間部82には、この空間部82内の雰囲気の温度を測定する温度測定手段140が設けられている。具体的には、この温度測定手段140は、シールド筐体72の側壁より内側に向けて僅かに延在された複数、例えば4つの熱電対140A、140B、140C、140Dにより構成されている。この4つの熱電対140A〜140Dは、処理容器24内のウエハWの収容領域に対応させて、その高さ方向に略等間隔で配置されている。
【0073】
すなわち、熱電対140Aは最上段に配置され、次の熱電対140Bは熱電対140Aの下方に配置され、次の熱電対140Cは熱電対140Bの下方に配置され、次の最下段の熱電対140Dは熱電対140Cの下方に配置される。従って、これらの熱電対140A〜140Dは、その上方より下方に向けて”TOP”(トップ)、”T−C”(トップセンター)、”C−B”(センターボトム)及び”BTM”(ボトム)となる。そして、これらの各熱電対140A〜140Dの各出力は、例えば装置制御部114へ入力されている。また、上記空間部82には、この空間部28内の圧力と外気であるクリーンルーム内との差圧を求める差圧計150が設けられており、この出力を例えば上記装置制御部114へ入力するようになっている。
【0074】
さて、このような構成において本実施例では、このプラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で上記空間部82の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の上記温度測定手段140の測定温度が、予め定められた閾値温度よりも低い場合には、プラズマ処理時には上記弁機構130を閉じた状態で行うようにする。この弁機構130の動作は、装置制御部114からの制御で行ってもよいし、オペレータが手動で行うようにしてもよい。
【0075】
具体的には、前述したように成膜のプラズマ処理時の処理容器24の温度に依存して、容器内壁に付着する不要な膜の付着強度は微妙に変化するので、冷却機構74を動作して冷却気体を流すと、プラズマ処理装置22の設置環境に依存して剥がれ落ち易い不要な膜が付着する場合が生ずる。例えば冷却気体として用いるクリーンルーム内の雰囲気温度が高い場合には、吸い込まれる冷却気体の温度も高いので、プラズマ処理時に冷却機構74を動作して冷却気体を流しても、処理容器24は過度に冷却されることはなく、従って、不要な膜は剥がれ難い状態で付着することになる。
【0076】
これに対して、冷却気体として用いるクリーンルーム内の雰囲気温度が低い場合には、吸い込まれる冷却気体の温度も低いので、プラズマ処理時に冷却機構74を動作して冷却気体を流すと、処理容器24は過度に冷却されることになり、従って、不要な膜は剥がれ易い状態で付着することになる。
【0077】
この場合、処理容器24の内壁で特にパーティクルが発生し易い部分は、プラズマで激しく叩かれることになるプラズマ形成ボックス62内であるが、この部分の温度を検出するために熱電対を配置すると、プラズマ形成ボックス62の近傍には高周波電極が配置されていることから異常放電が生ずる原因となるので現実的ではない。
【0078】
そこで、本実施例では冷却気体により処理容器24の側壁が冷却されることから、冷気気体がこの空間部82内を通過する時に、処理容器24の側壁を過度に冷却することになるような雰囲気温度を求めるようにし、処理容器24の側壁が過度に冷却されるような状態の時には、冷却機構74を動作させないで冷却気体の流れを停止させるようにしている。
【0079】
そして、上述したような条件を求めるために、ここではプラズマ処理装置22のスタンバイ時に冷却気体を空間部82内に流して、その時の空間部82内の雰囲気温度を基準にして成膜のためのプラズマ処理時に冷却気体を流すか否かを決定するようにしている。具体的には、プラズマ処理装置22をスタンバイ状態に維持した状態で、空間部82内を予め設定された排気風量、例えば大気との圧力差が−100Pa程度となるような排気風量で排気した時の温度測定手段140である熱電対140A〜140Dの測定温度が、予め定められた閾値温度、例えば33℃よりも低い場合には、上記成膜用のプラズマ処理時には弁機構130の第1の開閉弁134を閉状態として、冷却気体が空間部82内を流れないようにしている。すなわち、冷却機構74が動作しないようにしている。
【0080】
逆に、上記測定温度が例えば33℃以上の場合には、上記弁機構130の第1の開閉弁134を開状態として冷却気体を流すようにしている。すなわち、冷却機構74を動作させるようにしている。また、上記第1の開閉弁134の開閉に連動させて、第2の開閉弁138の開閉も行うようにするのが好ましい。ここで上記閾値温度33℃は、成膜ガスとしてアミノシラン系ガス、例えばDIPASを用いた場合である。
【0081】
このような第1及び第2の開閉弁134、138の開閉は、基本的にはクリーンルーム内にプラズマ処理装置22を設置した時にスタンバイ状態を実現して上述したような検証動作を行って決定する。以後、上記第1及び第2の開閉弁134、138は、基本的には開状態、或いは閉状態が固定されたまま、成膜用のプラズマ処理やクリーニング処理が繰り返し施されることになる。またクリーニング時の条件によってはクリーニング処理時に冷却気体を流す場合もある。更に、メンテナンス等により設定環境が変わった場合には、再度、上述したような検証動作を行うことになる。
【0082】
また、上記スタンバイ状態とは、装置自体の電源が投入されて、各種配線類のヒータ等がオン状態となっているが活性化手段58はオフ状態でプラズマが形成されておらず、処理容器24の温度が変動せずに安定した状態を指し、例えば装置電源投入後ならば一日以上経過した状態であり、成膜のプロセス(ラン)が終了した後ならば、例えば約7時間以上経過している状態を指す。
【0083】
<検証実験>
次に、上記変形実施例1について検証実験を行ったので、その内容について説明する。図9は本発明の変形実施例1におけるシールド筐体内雰囲気と大気との差圧とシールド筐体の内部の温度との関係を示すグラフ、図10は差圧が0Paの時のラン数とパーティクル数及び累積膜厚との関係を示すグラフ、図11は差圧が60Paの時のラン数とパーティクル数及び累積膜厚との関係を示すグラフ、図12は差圧が130Paの時のラン数とパーティクル数及び累積膜厚との関係を示すグラフ、図13はプラズマ処理(ラン)終了後のシールド筐体内の温度変化を示すグラフである。ここでは、上記差圧を0〜−250Paまで変化させており、その中の数箇所においてプラズマ成膜処理を行ってパーティクルの評価を行っている。
【0084】
この場合、差圧0Paの場合は、第1及び第2の開閉弁134、138を共に閉状態にして空間部82内に冷却気体を流さないようにしており、差圧0Pa以外は、第1及び第2の開閉弁134、138を共に開状態にし、且つ弁機構130の流量制御弁132の弁開度を適宜調整することによって差圧を変化させている。従って、図9の横軸の差圧は、排気風量に対応している。すなわち、差圧が少ない場合は冷却気体の排気流量は少なく、差圧が大きくなるに従って、冷却気体の排気流量は順次大きくなる。
【0085】
図9に示すグラフ中において、曲線Aは図8中のTOPの熱電対104Aの温度を示し、曲線Bは図8中のCTPの熱電対104Bの温度を示し、曲線Cは図8中のCBTの熱電対104Cの温度を示し、曲線Dは図8中のBTMの熱電対104Dの温度を示す。また、曲線X1は図8中の処理容器24の上段のポイントX1の位置の温度を示し、曲線X2は処理容器24の中段のポイントX2の位置の温度を示している。また、この時のプラズマ処理装置22を設置しているクリーンルーム内の温度は23〜24℃程度である。
【0086】
図9に示すグラフから明らかなように、冷却気体を流さない差圧0Paの時は、全ての温度測定箇所において温度が一番高くなっている。例えば曲線X1、X2で示される各ポイントX1、X2の温度は44〜45℃程度であり、曲線A〜Dで示される各熱電対140A〜140Dの温度は、35〜39℃程度である。そして、差圧が大きくなるに従って、すなわち、排気風量が増加するに従って各温度は次第に低下してくる。
【0087】
ここで差圧0Pa、−2Pa、−50Pa、−60Pa、−100Pa、−130Pa、−250Paの各ポイントでそれぞれ複数ランの成膜処理を行ってパーティクルの評価を行った。この結果、差圧0Paの時は、累積膜厚が基準値以上になってもパーティクル数は上限値の50個以下であって合格したが、これ以外の差圧−2Pa〜−250Paの全てにおいて累積膜厚が基準値よりも小さい値でパーティクル数は上限値の50個に達してしまい不合格であった。すなわち、差圧が僅か−2Pa程度にしかならないような僅かな量の冷却気体が空間部に流れただけでも、その時に生ずる僅かな温度低下が悪影響を及ぼし、累積膜厚が基準値に達する前にパーティクル数が50個になってしまっている。
【0088】
この結果、ここでの設置環境では、冷却機構74を動作させないようにして、すなわち、冷却気体を流さないで成膜のプラズマ処理を行う必要があることが判る。図10乃至図12のグラフはその時の一部の結果を示し、図10は差圧が0Paの時を示し、図11は差圧が60Paの時を示し、図12は差圧が130Paの時を示している。各図において左側縦軸はパーティクル数を示し、右側縦軸は累積膜厚を示している。
【0089】
また、1つのランは1つのバッチ処理を示しており、各ランにおいてTOP(トップ)、CTR(センタ)、BTM(ボトム)の各ウエハ位置でパーティクルを測定しており、上記順序でパーティクルのカウント数を棒グラフで記載している。また、ここではパーティクル数の上限値を50個に設定しており、累積膜厚の基準値は、前述したように1〜20μm程度の範囲内における特定の値を予め設定している。その結果、図10に示す差圧0Paの場合には、1〜22ラン行っており、上述したように累積膜厚が基準値に達しても、パーティクル数は上限値の50個に達しておらず、好ましい結果が得られることが判る。
【0090】
これに対して、図11に示す差圧60Paの場合には、累積膜厚が基準値よりも低いポイントP1のところで(22ラン)、パーティクル数50個の上限値に達しており好ましくない。また図12に示す差圧130Paの場合には、累積膜厚が基準値よりも薄く且つ上記ポイントP1よりも更に薄いポイントP2のところで(22ラン)、パーティクル数50個の上限値に達しており好ましくない。このように上記差圧を小さくすることにより、パーティクルの増加量が次第に減少して行くことが理解できる。また、上述したように、ここでの設置環境では、冷却機構74を動作させないようにして、すなわち、冷却気体を流さないで成膜のプラズマ処理を行う必要があることが判る。
【0091】
ここで上記差圧と排気風量との関係を説明する。上記空間部82の容量(シールド筐体72の容量−処理容器34の外殻の体積)は250リットル程度であり、この空間部82内に冷却気体を流す時には、−40〜−100Paの範囲内の差圧になるように予め流量制御弁132の弁開度調整によって設定している。この場合、差圧が−40Paの場合には、排気風量は0.45m /min程度であり、差圧が−100Paの場合には、排気風量は0.70m /min程度である。この排気風量はプラズマ処理装置が設置されるクリーンルームによって任意に定めることができる。そして、実際にプラズマ処理装置をクリーンルームに設置する時には、圧力調整弁132を用いて、上記差圧が−40〜100Paの範囲内で、換言すれば、排気風量を0.45〜0.70m /min程度の範囲内の任意の風量で予め設定することになる。
【0092】
ここで上記検証実験でパーティクルに関して合格となった差圧0Paの時のスタンバイ時の条件について検討を行う。図13は1回の成膜用のプラズマ処理(ラン)を行った後のスタンバイ状態の時の各部分の温度を示すグラフである。図13中において、曲線A〜D、X1、X2は、図9において説明した場合と同じであり、曲線Aは図8中のTOPの熱電対104Aの温度を示し、曲線Bは図8中のCTPの熱電対104Bの温度を示し、曲線Cは図8中のCBTの熱電対104Cの温度を示し、曲線Dは図8中のBTMの熱電対104Dの温度を示す。また、曲線X1は図8中の処理容器24の上段のポイントX1の位置の温度を示し、曲線X2は処理容器24の中段のポイントX2の位置の温度を示している。ここでは室温は23〜24℃に設定され、またシールド筐体72内の空間部82の排気は行っておらず、差圧0Paになっている。
【0093】
図13に示すように、2時24分に1回のランが終了すると、各部分の温度は次第に低下している。そして、ラン終了した後、約7時間が経過した9時24分以降は各部分の温度は略安定しており、スタンバイ状態となっている。この場合、各熱電対140A〜140Dの温度は略33〜34℃の範囲内で安定している。すなわち、スタンバイ時に熱電対140A〜140Dの測定温度が33℃以上であれば、このプラズマ処理装置を用いてプラズマ処理を行っても(排気風量=0の状態)、パーティクル数50個の上限値をクリアするための累積膜厚の基準値の条件をクリアすることができる。
【0094】
換言すれば、スタンバイ状態の時に、上記流量制御弁132で予め設定した排気風量で空間部82内に冷却気体を流した状態において、上記各熱電対140A〜140Dの測定温度が33℃以上であれば、成膜用のプラズマ処理時に好ましくは冷却機構74を動作させて、すなわち、第1及び第2の開閉弁124、138を共に開状態にして冷却気体を流して処理容器24を冷却するようにする。
【0095】
この場合、パーティクルの発生を抑制するという観点からは冷却気体を流さなくてもよいが、冷却気体を流さないとその分、処理容器の温度が上がっている。そして、過度に温度が上がると、時々行われるクリーニング時に容器内壁に付着している不要な膜が除去し難くなる場合がある。従って、好ましくは上述したように冷却気体を流すのが好ましい。
【0096】
このように、本発明の変形実施例1によれば、更に空間部内の雰囲気の温度を測定する温度測定手段と、排気ヘッダ部と排気源との間に設けられた排気路と、排気路の途中に介設され、プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時(空間部とクリーンルーム内の大気との差圧が予め設定された設定値となるように空間部の雰囲気を排気した時)の温度測定手段の測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、プラズマ処理時には閉じられた状態になされる弁機構とを備えることにより、例えば処理容器の内壁に堆積する不要な膜が剥がれ落ち難くなるような条件を設定することができる。この結果、クリーニング頻度を少なくしてスループットの向上を図ることができる。
【0097】
また、本発明のプラズマ処理方法によれば、例えば処理容器の内壁に堆積する不要な膜が剥がれ落ち難くなるような条件を設定することができる。この結果、クリーニング頻度を少なくしてスループットの向上を図ることができる。
【0098】
尚、上記した累積膜厚の基準値やパーティクル数50個の上限値は単に一例を示したに過ぎず、これらに限定されないのは勿論である。また上記実施例では、温度測定手段140として4つの熱電対140A〜140Dを設けたが、これに限定されず、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上設けるのがよい。
【0099】
また、上記各実施例では、シールド筐体72内の雰囲気を排気する排気源80として常時吸引している工場ダクト83を用いたが、これに替えて、或いはより強力に排気するために排気路106に付加的な排気源80として排気ポンプを介設するようにしてプラズマ処理中に駆動させるようにしてもよい。
【0100】
また、ここでは排気ヘッダ部78に、排気ボックス102等を用いたが、これに替えて、排気ボックス102として、吸気ヘッダ部76と同じ構造の気体流通ダクト86や気体流通孔88や気体導入口90(気体排気口104として用いる)等をシールド筐体72の上端部に設けるようにしてもよい。
【0101】
また、ここでは常温(室温)でのプラズマ処理として犠牲酸化膜を成膜する場合を例にとって説明したが、これに限定されないのは勿論であり、加熱ヒータを不要にして室温程度(23〜27℃程度)で行うプラズマ処理の全てに本発明を適用することができる。また、ここでは処理容器24の下端部に吸気ヘッダ部76を設け、上端部に排気ヘッダ部78を設けたシールド筐体72内には下方から上方に向けて冷却気体を流すようにしたが、これに限定されず、処理容器24の上端部に吸気ヘッダ部76を設け、下端部に排気ヘッダ部78を設けて、シールド筐体72内には上方から下方に向けて冷却気体を流すようにしてもよい。
【0102】
また、ここでは給気側の冷却気体としてクリーンルーム側の清浄気体を用いたが、制御性を向上させるために給気路136の途中にチラー等の温度制御器を設けて、空間部82に導入される冷却気体の温度を一定の温度に維持するようにしてもよい。また、ここでは処理容器24を鉛直方向に起立させて設けた縦型式のプラズマ処理装置を例にとって説明したが、これに限定されず、処理容器を横方向に設置した横型のプラズマ処理装置にも本発明を適用することができる。
【0103】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
22 プラズマ処理装置
24 処理容器
28 ウエハボート(保持手段)
46 第1のガス供給手段
48 第2のガス供給手段
58 活性化手段
62 プラズマ形成ボックス
64 プラズマ電極
66 高周波電源
72 シールド筐体
74 冷却機構
76 吸気ヘッダ部
78 排気ヘッダ部
80 排気源
82 空間部
83 工場ダクト
86 気体流通ダクト
88 気体流通孔
90 気体導入口
92 冷却気体案内ダクト
98 端板
100 気体流通孔
102 排気ボックス
104 気体排気口
106 排気路
130 弁機構
132 圧力調整弁
134 第1の開閉弁
136 吸気路
138 第2の開閉弁
140 温度測定手段
140A〜140D 熱電対
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引き可能になされた筒体状の処理容器と、
複数の被処理体を保持して前記処理容器内へ挿脱される保持手段と、
前記処理容器内へガスを供給するガス供給手段と、
前記処理容器の長さ方向に沿って設けられて前記ガスを高周波電力により発生したプラズマにより活性化する活性化手段とを有して、
前記被処理体に対してプラズマ処理を施すようになされたプラズマ処理装置において、
高周波を遮断するために前記処理容器の周囲を囲むようにして設けられると共に接地された筒体状のシールド筐体と、
前記プラズマ処理中に前記シールド筐体と前記処理容器との間の空間部に沿って冷却気体を流す冷却機構と、
を備えるように構成したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記冷却機構は、
前記シールド筐体の一端に設けられて前記冷却気体を取り込むための吸気ヘッダ部と、
前記シールド筐体の他端に設けられて前記シールド筐体内の雰囲気を排気するために排気源に接続された排気ヘッダ部と、を有することを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記排気源は、装置内の雰囲気を排出するための工場ダクトであることを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記排気源は、排気ポンプであることを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記吸気ヘッダ部は、
前記シールド筐体の側壁にその周方向に沿って設けられた気体流通ダクトと、
前記気体流通ダクトと前記シールド筐体内とを連通させるために前記シールド筐体の側壁に、その周方向に沿って所定の間隔で形成された気体流通孔と、
前記気体流通ダクトに設けられて前記冷却気体を取り込むための気体導入口と、
を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記気体流通孔には、複数の孔が形成されたパンチングメタルが取り付けられていることを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記排気ヘッダ部は、
前記シールド筐体の端面を塞ぐ端板に形成された気体流通孔と、
該気体流通孔を囲んで覆うようにして設けられた箱状の排気ボックスと、
該排気ボックスに設けられた気体排気口と、
該気体排気口に接続されて前記排気源に連絡される排気路と、
を有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記気体流通孔には、複数の孔が形成されたパンチングメタルが取り付けられていることを特徴とする請求項7記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記冷却気体は、工場であるクリーンルーム内の雰囲気であることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記処理容器は、鉛直方向に縦長に設置されていることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記吸気ヘッダ部は、前記シールド筐体の下端部に設けられ、前記排気ヘッダ部は、前記シールド筐体の上端部に設けられることを特徴とする請求項10記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記吸気ヘッダ部は、前記シールド筐体の上端部に設けられ、前記排気ヘッダ部は、前記シールド筐体の下端部に設けられることを特徴とする請求項10記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記空間部内の雰囲気の温度を測定する温度測定手段と、
前記排気ヘッダ部と前記排気源との間に設けられた排気路と、
前記排気路の途中に介設され、前記プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で前記空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の前記温度測定手段の測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、前記プラズマ処理時には閉じられた状態になされる弁機構と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記弁機構は、圧力調整弁と開閉弁とを含むことを特徴とする請求項13記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記吸気ヘッダ部には、給気路が接続され、該給気路の途中には、前記プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で前記空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の前記温度測定手段の測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、前記プラズマ処理時には閉じられた状態になされる開閉弁が介設されていることを特徴とする請求項13又は14記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記ガスは、成膜用のガスであるアミノシラン系ガスを含むことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記閾値温度は33℃であることを特徴とする請求項13乃至16のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置を用いて被処理体にプラズマ処理を施すプラズマ処理方法において、
前記プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で処理容器とシールド筐体との間に形成される空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の前記空間部の雰囲気の温度を測定し、この測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、前記空間部に冷却気体を流さないようにした状態で前記プラズマ処理を行うようにしたことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項19】
前記空間部の雰囲気の温度が、前記閾値温度以上の場合には、前記冷却気体を流した状態で、或いは前記冷却気体を流さない状態で、前記プラズマ処理を行うようにしたことを特徴とする請求項18記載のプラズマ処理方法。
【請求項20】
前記プラズマ処理装置をスタンバイ状態に維持した状態で処理容器とシールド筐体との間に形成される空間部の雰囲気を予め設定された排気風量で排気した時の前記空間部の雰囲気の温度を測定し、この測定温度が予め定められた閾値温度よりも低い場合には、前記処理容器内にクリーニングガスを流す時にも、前記空間部には冷却気体を流さないようにしたことを特徴とする請求項18又は19記載のプラズマ処理方法。
【請求項21】
使用するガスには、成膜用のガスであるアミノシラン系ガスが含まれることを特徴とする請求項18乃至20のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項22】
前記閾値温度は33℃であることを特徴とする請求項18乃至21のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−283331(P2010−283331A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39446(P2010−39446)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】