説明

プラズマ処理装置

【課題】良質のプラズマを供給すること。
【解決手段】プラズマ発生空間22がプラズマ処理空間13に隣接し且つ連通しているプラズマ処理装置において、プラズマ発生空間22が分散等して形成され、且つプラズマ発生空間22内に電子を封じる磁気回路25が付設される。プラズマ成分比率の制御性がよい。プラズマ分布の均一性確保とプラズマ処理空間からプラズマ発生空間へのガス流入阻止の両立が図れる。さらに、プラズマ処理空間13を可動壁体40で囲んで、圧力制御性も高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ICやLCDなど高精度の製造工程においてプラズマ処理を効率よく行うときに好適なプラズマ処理装置に関し、詳しくは、電界及び磁界を用いてプラズマを発生させるプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CVDやエッチング,アッシング等のプラズマ処理に用いられるプラズマ処理装置の例として、対向電極となる一対の平行平板を設けておいてこれらの平行平板間にプラズマ処理空間を形成してシリコンウエハ等の基板を対象にエッチング処理を行ういわゆる平行平板形エッチャー(RIE)や成膜処理を行う平行平板形PCVD等が知られている。
【0003】
図13に縦断面構造図を示したが、平行平板形のプラズマ処理装置は、一対の平行平板が真空チャンバ内に設けられていて、両平板間に形成されたプラズマ処理空間にプラズマを発生させ又は導入するとともにそのプラズマ処理空間内に所定の処理ガス等も導入する。そして、プラズマ処理空間にてプラズマ反応を行わせ、これによってプラズマ処理空間内の基板表面に対してエッチング処理等を施すものである。
【0004】
エッチャーを例に詳述すると、この装置は、真空チャンバ本体部2の上に真空チャンバ蓋部3が開閉可能に取着された真空チャンバを備えており、被処理物である基板1が平板状をしていることから、水平に置かれたカソード部12が真空チャンバ本体部2内のほぼ中央に設けられ、このカソード部12の上面が平坦に形成されたうえ絶縁膜が張られて基板1を乗載しておくことが可能なようになっている。真空チャンバ本体部2の内底中央には筒状のローアーサポート12aが貫通して立設されており、カソード部12はこのローアーサポート12aの上端に固着して支持されており、これらによって構成された基板支持体は、真空チャンバ内に植設され上面が基板乗載可能に形成されたものとなっている。
【0005】
真空チャンバ蓋部3内のほぼ中央であってカソード部12の上方にはアノード部11が筒状のアッパーサポート11aによって真空チャンバ蓋部3に垂設されており、アノード部11とカソード部12とを互いに対向した電極としてRF電源31によって高周波が印加されると所定の真空圧の下でアノード部11とカソード部12との間にプラズマが発生する。そこに、所定の処理ガスが供給されるとカソード部12上面に載置された基板1にガス状態等に応じたプラズマ処理がなされる。これにより、アノード部11は、カソード部12の上面との間にプラズマ処理空間13を形成するものとなっている。
【0006】
真空チャンバ本体部2には真空チャンバ内ガスを吸い出して適度な真空度を保つために内外貫通した吸引口2aが加工形成され、この吸引口2aに対し順にゲートバルブ4a、可変バルブ4、真空ポンプ5が連結されている。ゲートバルブ4aは保守時等に仕切るための手動弁であり通常動作時には開状態にされる。これとターボポンプ等の真空ポンプ5とに介挿された可変バルブ4は、バルブ開度を可変駆動するモータ等が付設されていてこれを電気信号で制御することで遠隔制御可能な通過流体の可変絞りとして機能する。そして、真空チャンバに付設された真空圧計4bによって真空チャンバ内の真空圧が検出され、この検出値と所定の設定目標値との差に基づいてPID制御回路4cによって制御信号が生成出力されると、この制御信号に従って可変バルブ4による絞り量が可変駆動される。このような真空圧計4bを圧力検出器としPID制御回路4cを圧力制御回路とし可変バルブ4を圧力制御機構とする圧力制御手段によって、真空チャンバ内の真空圧が設定圧力になるように自動制御される。
【0007】
ところで上述のようにプラズマ空間を挟む平行平板に電界を加えるだけのプラズマ発生ではプラズマ密度が不足するので、磁界も加えてプラズマを封じることで高密度プラズマ(HDP)を発生させるようにした物も知られている。これは、MRIE(マグネトロンリアクティブイオンエッチャー)等に応用されており、プラズマの高密度化に伴ってプラズマ成分におけるイオン種の割合も増加させるものである。このタイプではプラズマが偏在しがちなことに加えて、イオン種の割合が高くなるとイオンによる被処理物へのダメージも強くなる傾向がある。そこで、下記に特許文献1に記載の如く平面状コイルを用いた磁場の一様化によってダメージを防止しようとした装置もあるが、この方式では、依然として、発生中の高密度プラズマに被処理物が直接曝される。しかし、そのことに起因してのプラズマ電流による被処理物のチャージアップ等その他の問題ついては、言及が無い。
【特許文献1】特開平3−079025号公報 これに対し、イオンによる被処理物へのダメージを低減させるとともに発生中の高密度プラズマに被処理物が直接曝されないようにするために、プラズマ空間を互いに連通したプラズマ処理空間とプラズマ発生空間とに分離しておき、プラズマ発生空間内で高密度プラズマを発生させてそこからプラズマ処理空間へプラズマを供給させる際にプラズマ成分のイオン種を抑制してラジカル種の割合を増加させるようにしたプラズマエッチング装置も知られている。これには、ラジカルフローを利用したECR(電子サイクロトロン共鳴)や下記特許文献2に記載のもの等のように両空間を距離的に引き離したものや、ICP(インダクティブカップルプラズマ)等のように強力な磁場で高密度プラズマをプラズマ処理空間に隣接したプラズマ発生空間へ閉じこめるもの、さらにプラズマ処理空間にプラズマ発生空間が隣接している点では同じであるが下記特許文献3記載のもの等のようにリングアンテナからの円偏波電磁波を利用して高密度プラズマを閉じこめるものなどに分類される。
【特許文献2】特開平4−081324号公報
【特許文献3】特開平4−290428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これら従来のプラズマ処理装置のうち、上述したECRタイプのもの即ち距離的に引き離す方式では、プラズマ処理空間およびプラズマ発生空間の両空間が適度な距離を保つようにそれらの機構を実装するうえで制約が多い等のことから、イオン種の割合が必要以上に抑制されてしまってラジカル種が増えた割にはプラズマ処理効率の向上が得られない。しかも、機構の実装等を工夫してプラズマにおけるラジカル種の成分とイオン種の成分との比率をプラズマ処理効率の高いところへ近づけたとしても、活性ガスの種類や圧力さらには被処理物の材質などが変化すると望ましい比率自体がずれて変動するうえ、両空間の距離を可変制御しうる機構の具体化が困難なこともあって、この方式の下では、適正なプラズマ成分比率で処理効率が良いというプラズマ処理装置を実現しきれていない。
【0009】
一方、ICPのタイプでは、コイルに流す電流の時間変化に伴う磁界の変化が電子を加速してその電子が周りの処理ガスを電離させるエネルギーを超えるとイオン化が起こりプラズマが発生し形成される。この電離メカニズムは、コイルの合成磁界に依存して収束された状態で形成されるため、イオン化に役立つ高エネルギー電子の発生形状はドーナツ状となる。この電子エネルギー分布はほぼボルツマン分布をするから、電離以上のエネルギーを持つ電子は、プラズマ空間内のガスを電離させ、それ以下の電子はラジカルを生成させる。このように、ICPプラズマではイオン形成とラジカル形成とが同一のプラズマ形成手段に依存しているため、イオンとラジカルとの密度比率を任意に設定・制御することができない。また、TCPプラズマ(トランスフォームドカップルプラズマ)についても、コイル形状は異なるが、ほぼ同一のメカニズムとなっている。
【0010】
他方、円偏波電磁波を利用する方式では、強力磁場の利用は避けても、大径の単一リングアンテナを用いていること等のため、プラズマ処理空間におけるプラズマ分布の均一性を確保するために、プラズマ発生空間が概ねプラズマ処理空間に匹敵する広がりを持っており、少なくとも被処理物以上の広がりを持っており、その広い状態のまま両空間の隣接面のところで連通するものとなっている。
【0011】
しかし、両空間連通部の面積が広いと、プラズマ処理空間からプラズマ発生空間へ逆流するガスが多くなる。このことは、プラズマ処理空間とプラズマ発生空間とが分離されていても隣接している方式を採っている従来のプラズマ処理装置の場合すべてに共通して言えることである。さらに、このことはECR等についてもほぼ同じと言える。このタイプの場合、一見すると、TCPやICPプラズマと異なりプラズマ発生空間とプラズマ処理空間とが離れているため、両者が分離されているように見えるが、両空間の連通部における開口径が大きいので、プラズマ成分に関しては見かけほど分離されていないのである。
【0012】
このような逆流ガスには被処理物の処理によって発生等した早急に排出すべき成分も一部ではあっても含まれている。そして、かかる排出すべきガスは、プラズマ発生空間に入ると高密度プラズマによって激しく分解・電離させられるので、適正な処理を妨げたり装置内部を汚染させたりする不所望なものに変質してしまうことが多い。一応分割されていてもプラズマ成分に関しては明確に分離しきれていないのである。このため、プラズマ分布の均一性が確保できたとしても、不所望なガスの逆流を阻止できないのでは、良質の処理を提供することが難しい。
【0013】
なお、両空間が連通する隣接面のところに連通面積を絞るバッフル板を設置して通過量を抑制することも考えられるが、この場合、流入量が減っても流出量も同様に減ることから、一旦プラズマ発生空間へ入ったガスはなかなか出ていかないので、高密度プラズマによって変質させられるガスの割合が高くなってしまう。このため、単純に特開平4−290428号公報記載のもの等とバッフル板等とを組み合わせても、ガス変質防止という最終的な効果は期待できない。
【0014】
そこで、プラズマ処理空間からプラズマ発生空間へのガス流入を有効に阻止することができるように両空間の構造等を工夫することが課題となる。ただし、プラズマダメージやチャージアップ低減の観点からプラズマ空間をプラズマ発生空間とプラズマ処理空間とに分離するとともに、プラズマにおけるラジカル種の成分とイオン種の成分との比率を適正化するという観点から、プラズマ発生空間とプラズマ処理空間とを隣接させるという条件は維持したい。
【0015】
ところで、プラズマ処理の対象である基板サイズが広がって大きくなるに連れて1枚ごとに処理する枚様処理がプラズマ処理装置でも一般的となっており、その場合、一対の平行平板のうち基板支持体となる他方の平板についてその上面は概ね基板によって覆われることから、それ以前のように基板支持体の中央に吸引口を設けるということが難しいので、従来のプラズマ処理装置では、吸引口が真空チャンバ本体部において基板支持体植設部位を外したところに形成されている。そして、基板サイズが大きくなるに連れて平行平板も大きくなり、さらにはチャンバ内容積や吸引口も拡大してきている。
【0016】
一方、基板サイズが大きくなったからといって、処理の精密度や均一性に対する要求は緩むことなく厳しさを増すばかりである。そして、この要求に応えるには、基板上面全域に亘ってプラズマ状態の均一性を確保することが必要となる。ところが、吸引口が対称中心からずれていたり、例え吸引口を対称位置に分散させたとしても各吸引口から真空ポンプまでの配管に長短があったりすると、プラズマ等の流れが偏向して、プラズマの均一性を確保するのが難しい。これに対しては、真空チャンバにおいて吸引口の手前にバッフル板を設置してバッフル板より手前の流れを均一化することも考えられるが(図13における2b参照)、この場合、チャンバ内容積の増加に加えて、バッフル板が流れの抵抗になることから、圧力制御性が低下してしまう。すなわち、プラズマの圧力状態を素早く制御することができなくなって圧力変動が増加し、その結果、プラズマの圧力を所望の設定状態に維持することが困難となる。
【0017】
他方、プラズマの圧力制御性を高めるには逆に真空チャンバの容積を減らすことが有効といえる。具体的にはチャンバ内側壁が平行平板の辺縁部に接触しそうなところまで真空チャンバを縮めることが考えられる(図14参照)。もっとも、このような強引な手法で単純にチャンバ容積の削減を行ったのでは、吸引口をプラズマ処理空間の真横に設けざるを得ないことから、プラズマの流れが激しく偏ってプラズマの均一性が大きく損なわれることになりかねない。この場合、緩衝用にバッフル板を設ける空間的な余裕も無く、基板の搬入搬出機構等の付設や平行平板の裏側等の保守作業も困難になってしまう。
【0018】
しかしながら、プラズマ処理の均一性に加えて基板の大形化もプラズマ処理装置に対する重要な要請であり、何れか一方にしか応えないのでは、装置の製品価値を維持向上させることができない。そこで、これらの相反する要求に応えるべく、プラズマの圧力状態等を一層均一に且つ一層素早く制御することが可能な構造を案出することも、さらなる課題となる。
【0019】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、プラズマ空間をプラズマ発生空間とプラズマ処理空間とに分離し且つこれらを隣接させるという前提条件の下でプラズマ成分比率の適正化・制御性を積極的に高めるとともに、プラズマ分布の均一性確保とプラズマ処理空間からプラズマ発生空間へのガス流入阻止の両立を図ることにより、良質のプラズマを供給するプラズマ処理装置を実現することを目的とする。また、この発明は、均一で質の良いプラズマの供給に加えて圧力制御性にも優れたプラズマ処理装置を実現することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を解決するために発明された第1乃至第14の解決手段について、その構成および作用効果を以下に説明する。なお、その骨子は、プラズマ空間をプラズマ発生空間とプラズマ処理空間とに分割するとともに、分割された両空間におけるプラズマ成分に関しての分離度を高めることにある。
【0021】
第1の解決手段のプラズマ処理装置は、プラズマ処理空間が形成された第1機構と、前記第1機構に取着して又はそれと一体的に設けられプラズマ発生空間が形成された第2機構とを具え、前記プラズマ発生空間が前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通しているプラズマ処理装置において、前記プラズマ発生空間が分散等して形成されたものであることを特徴とするものである。
【0022】
第2の解決手段のプラズマ処理装置は、(真空チャンバ内に)対向電極となる一対の平行平板(を具えこれら平行平板)間にプラズマ処理空間を形成したプラズマ処理装置において、前記一対の平行平板のうち一方の平板に又はその隣接機構部に、前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通したプラズマ発生空間が分散等して形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
すなわち、これら第1,2の解決手段のプラズマ処理装置は、プラズマ空間がプラズマ発生空間とプラズマ処理空間とに分割されているとともに、プラズマ発生空間がプラズマ処理空間に隣接し且つ連通しているプラズマ発生装置において、プラズマ発生空間が分散等して形成されているものである。
【0024】
ここで、上記の「分散等」とは、点状に分かれて散在しているという文字通りの分散の他、密接とは言えない程度に離れるように分割されている場合や、線状,破線状,直・曲線状などで複数の又はそれらの混在するものがプラズマ処理空間との隣接部・連通部に分布している場合、さらには環状,円状,多角形状、スパイラル状のものが同心で若しくは非同心で多数が列設され又は単独で広く形成されている場合も該当する意味である。
【0025】
このような第1,2の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ空間の分離および隣接連通という条件を維持することにより、プラズマダメージやチャージアップの低減、及びプラズマにおけるラジカル種の成分とイオン種の成分との比率適正化という基本的要請に応えている。
【0026】
しかも、プラズマ発生空間が分散等して形成されているので、プラズマ分布の均一性確保の要請に応え得るばかりか、プラズマ処理空間との連通隣接面さらにはその面に沿ったプラズマ発生空間自身の断面積が必然的にプラズマ処理空間のそれよりも小さくなる。このことは、全断面についてだけでなく、中央部やその他の部分断面についてもいえる。このように双方空間の面積に差があると、連通隣接面の面積とこれに沿ったプラズマ処理空間の断面積との比を第1比とし連通隣接面の面積とこれに沿ったプラズマ発生空間の断面積との比を第2比として、第1比が1未満で且つ第2比よりも小さいことになる。
【0027】
そして、第1比が1未満の場合、プラズマ処理空間からプラズマ発生空間へ流入するガス量が減少する。一方、第2比が1の場合、プラズマ発生空間からプラズマ処理空間へ流出するガス量は減少しない。また、第2比が1未満で流出ガス量が減少する場合であっても、第2比が第1比より大きければ、減少の程度が小さくて済む。何れにしても、相対的には、プラズマ処理空間からプラズマ発生空間へ流入するガスの割合よりもプラズマ発生空間からプラズマ処理空間へ流出するガスの割合の方が高くなる。これにより、不所望なガスのプラズマ発生空間への流入が抑制されるばかりか、ガスがプラズマ発生空間へ入ってしまったときでもそのガスはプラズマ流とともに速やかにプラズマ処理空間へ出されてしまうので、高密度プラズマによるガス変質を防止・抑制することができる。
【0028】
したがって、この発明によれば、所定の前提条件の下でプラズマ成分比率の適正化・制御性を積極的に高めるとともに、プラズマ分布の均一性確保とプラズマ処理空間からプラズマ発生空間へのガス流入阻止という両要請に応えることで、良質のプラズマを供給することができる。その結果、良質のエッチング処理を提供することができる。
【0029】
第3の解決手段のプラズマ処理装置は、(真空チャンバ内に)対向電極となる一対の平行平板(を具えこれら平行平板)間にプラズマ処理空間を形成したプラズマ処理装置において、前記一対の平行平板のうち一方の平板に又はその隣接機構部に、前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通したプラズマ発生空間が形成されるとともに、前記プラズマ発生空間に対して磁気回路が付設され、この磁気回路用の磁性部材が(少なくとも一部は)前記プラズマ発生空間によって囲まれた又は挟まれたところに配置されていることを特徴とするものである。
【0030】
このような第3の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ空間の分離および隣接連通という条件を維持することにより、プラズマダメージやチャージアップの低減、及びプラズマにおけるラジカル種の成分とイオン種の成分との比率適正化という基本的要請に応えている。しかも、プラズマ発生空間内にはプラズマの発生およびそのイオン化に寄与する電子が磁気回路によって封じられるが、この磁気回路用の磁性部材が少なくとも一部はプラズマ発生空間によって囲まれた又は挟まれたところに配置されているので、磁気回路が局所化される。そうすると、磁力線の分布状態が凝縮されたものとなり、漏れ磁束も少なくなる。
【0031】
これにより、電子がプラズマ発生空間内に高い確度で封じられる。そして、電子がプラズマ処理空間へ迷い出てそこの低温プラズマをランダムにイオン化したり、逆にその電子等と入れ替わりにプラズマ処理空間から不所望な処理ガスがプラズマ発生空間に混入してきたりすることが少なくなる。つまり、制御不能な混合が減少することとなる。その結果、イオン種比率の高いプラズマを適度にプラズマ処理空間へ送給してそこのイオン種比率の低いプラズマと混合させるに際して、エッチング処理に供するプラズマにおけるイオン種成分比率が適正値になるように広い範囲に亘って制御することが可能となる。
【0032】
また、局所的な磁気回路は、並列化等によって容易に均一化の要請にも応える。しかも、局所化によって磁気回路全体としては磁力が弱くて済むので、個々の磁性部材に小形・簡易なものが使えて実装が容易になるという利点がある。さらに、プラズマ発生空間の分散等形成という上述の構成と組み合わせた場合には、プラズマ発生空間へ逆流して高密度プラズマによってイオン化された不所望なガスがさらなる変質をする前に高密度プラズマと一緒になってプラズマ処理空間へ速やかに押し戻されるという相乗効果も期待できる。
【0033】
したがって、この発明によれば、所定の前提条件の下でプラズマ成分比率の適正化・制御性を積極的に高めるとともに、プラズマ分布の均一性確保とプラズマ処理空間からプラズマ発生空間へのガス流入阻止という両要請に応えることで、良質のプラズマを供給することができる。その結果、良質のプラズマ処理を提供することができる。
【0034】
第4の解決手段のプラズマ処理装置は、(真空チャンバ内に)対向電極となる一対の平行平板(を具えこれら平行平板)間にプラズマ処理空間を形成したプラズマ処理装置において、前記一対の平行平板のうち一方の平板に又はその隣接機構部に、前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通したプラズマ発生空間が分散等して形成されており、且つ、前記プラズマ発生空間に電子を封じる磁気回路が付設されていることを特徴とする。このような第4の解決手段のプラズマ処理装置は、上述した第2,第3の解決手段の双方の作用効果を併せ持つものとなる。
【0035】
第5の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第4の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記プラズマ発生空間が線状に形成されたものであり、前記磁気回路用の磁性部材が前記プラズマ発生空間を(両側から)挟んで(多数)列設されたものであることを特徴とする。
【0036】
このような第5の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ発生空間を点在・散在させた場合に比べて、プラズマ発生空間が分散等していながらも連続したところで或る程度の容量を確保したものとなる。特に、スパイラル状に形成した場合は、単一空間としてのまとまりも持つ。これにより、プラズマ発生空間が分散等していてもその中のプラズマはかなり均一化される。また、多重環状や多重矩形辺状に形成したり、さらにはこれらを一部で連結させることで、まとまりを保持しつつ処理対象基板の形状に適合した分散を図ることも容易である。しかも、プラズマ発生空間の形状が決まれば、磁気回路は小片に分けてこれに沿ってその両側等に並べることで容易に、プラズマ発生空間に電子が封じられることとなる。これにより、磁気回路の具体化も容易となる。
【0037】
第6の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第3〜第5の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記磁気回路が永久磁石または直流励磁コイルによって形成されていることを特徴とする。
【0038】
このような第6の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、強力な電磁石が不要なので、実装設計が容易となり、装置を小形にすることができる。また、強力電磁石に加えてその駆動用大電源も不要となるので、コストが削減される。特に永久磁石の場合は、同一・類似形状の小片を列設することで各種形状に容易に適合するので、原価削減ばかりか設計の自由度向上も大きい。
【0039】
第7の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第1〜第6の解決手段のプラズマ処理装置であって、プラズマの発生または強化に寄与する電界または磁界を前記プラズマ処理空間に印加する第1印加回路と、プラズマの発生および強化に寄与する電界または磁界を前記プラズマ発生空間に印加する第2印加回路とを備えたことを特徴とする。
【0040】
このような第7の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、第1印加回路の出力パワーを変えることでプラズマにおけるイオン種成分の比率を可変制御しうるばかりか、第2印加回路の出力パワーも変えることでプラズマにおけるイオン種成分の比率を変えることなくプラズマ密度を可変制御することも可能となる。これにより、プラズマ成分比率とプラズマ密度とを独立に設定しうるものとなる。
【0041】
第8の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第7の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記第1印加回路および前記第2印加回路は、出力が互いに独立して制御可能なものであることを特徴とする。
【0042】
ここで、「独立して制御可能」とは、両回路の出力を別個に可変したければそのようにできるという意味であり、制御の内容が関連しないということまで意味する訳では無い。例えば、予め或る係数または関数を設定しておいて、この係数または関数によって両者が関連付けられる場合でも、その係数または関数に基づくそれぞれの制御目標に対してそれぞれの回路がその出力を対応させるとき、独立して制御可能に含まれる。
【0043】
このような第8の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、各印加回路の出力パワーが独立に制御される。これにより、プラズマ成分比率とプラズマ密度とが独立して設定される。換言すればイオン種濃度とラジカル種濃度とが独立に制御・設定される。そこで、広い設定範囲の中から自由に処理条件を選択することができるので、プラズマ処理の効率および質を一層向上させることができる。
【0044】
第9の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第1〜第8の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記プラズマ発生空間は、前記プラズマ処理空間に連通する又は開口するところの面積が(前記一対の平行平板と平行な断面における)前記プラズマ発生空間の面積よりも小さいものであることを特徴とするものである。
【0045】
このような第9の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ発生空間とプラズマ処理空間との連通部分が絞られて、単にプラズマ発生空間をプラズマ処理空間に開口させた場合よりも第1,第2の解決手段について述べた第1比が小さくなるので、不所望なガスのプラズマ発生空間への流入が一層抑制される。さらに、これに加えて、プラズマ発生空間内で発生し膨張したプラズマが面積比に応じた適度な速度でプラズマ処理空間へ送り出されるので、そのプラズマ特にイオン種に対して鉛直方向の速度成分を加味することもできる。
【0046】
第10の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第1〜第9の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記プラズマ発生空間にプラズマ用ガスを導入する第1のガス導入路と、前記プラズマ処理空間に処理ガスを導入する第2のガス導入路とが個別に設けられているものである。
【0047】
このような第10の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ用ガスが第1のガス導入路を介してプラズマ発生空間に導入される一方、処理ガスは、それとは別個に、第2のガス導入路を介してプラズマ処理空間に導入される。そして、高密度プラズマの発生に必要なプラズマ用ガスと高密度プラズマに入ると好ましくない処理ガスとが分離され、特に処理ガスはプラズマ発生空間を経ることなくプラズマ処理に供され、これらは最終段階に至って初めて混合される。これにより、処理ガスがプラズマ処理に供される前に高密度プラズマによって変質させられるのを確実に回避することができる。
【0048】
第11の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第10の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記第2のガス導入路へは反応ガス成分を含むガスを供給するとともに前記第1のガス導入路へは非反応性ガスのみを供給するものである。
【0049】
このような第11の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、処理ガスにはエッチング処理に必要な反応ガス成分が含まれることとなる一方、プラズマ用ガスには、高密度プラズマの発生に役立ち且つ高密度プラズマとなっても不所望に変質することの無い非反応性ガスのみが用いられる。これにより、反応ガス供給をプラズマ発生空間経由で行った場合に比べて、より質の良いプラズマを提供することができ、延いては反応ガスの変質を気にすることなく高密度プラズマそしてイオン種を所望量任意に例えば大量に生成することができる。
【0050】
第12の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第2〜第11の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記一対の平行平板を基準とした前記プラズマ処理空間の開口部分を覆う形状の可動壁体と、前記可動壁体が前記開口部分を覆う位置と前記可動壁体が前記開口部分を解放する位置との両位置に亘って前記可動壁体を進退させる壁体駆動機構とを備え、前記一対の平行平板のうち他方の平板は、前記真空チャンバの内底に直接又はサポート部材を介して間接的に植設され上面が基板乗載可能に形成されたものであることを特徴とするものである。
【0051】
ここで、上記の「一対の平行平板を基準としたプラズマ処理空間の開口部分」とは、両平行平板を両端面とする筒状空間の側面部分を意味する。また、「開口部分を覆う」とは、完全に密閉して覆うのではなく、少なくとも処理済みのプラズマやガス等を排気してプラズマを維持しうる程度の隙間は残すようにして覆うという意味である。
【0052】
このような第12の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、真空チャンバの内部空間において他方の平板の上面に基板が乗載させられその上方にプラズマ処理空間が形成されそこでその基板に対するプラズマ処理が施されるが、プラズマ処理空間の開口部分が可動壁体によって覆われることから、プラズマ処理空間は真空チャンバ内で一対の平行平板と可動壁体とによって概ね囲まれることとなる。そこで、真空チャンバ内空間の一部がプラズマ処理空間に分割され、両者の圧力状態もほぼ分離されることとなる。その分離の程度は、可動壁体による覆いから残された隙間の大きさに依存する。
【0053】
そして、可動壁体を壁体駆動機構によって進退させると、その隙間が広狭変化して、プラズマ処理空間内圧力は素早く真空チャンバ内の真空圧に近づいたりこれから離れて高くなったりするので、可動壁体の進退駆動に基づいてプラズマの圧力状態を制御することが可能となる。また、可動壁体の形状を平行平板の形状に整合させてそれらとの間隙を出来るだけ一様に分散させることでプラズマ処理空間から流出する流れの形態における偏りも減ることとなる。なお、基板を真空チャンバから出し入れする際には、プラズマ処理空間の開口部分が解放される位置まで可動壁体を壁体駆動機構によって進退移動させておけば、可動壁体を真空チャンバ内に設けたことの不都合は何も無い。
【0054】
これにより、直接の圧力制御対象がチャンバ内圧力からその一部のプラズマ処理空間に分離されて応答性の劣る大容積の物から応答性の優れた小容積の物に絞り込まれる一方で、流れの形態が、真空チャンバ壁の吸引口による支配を外れて、中心を基準に対称にする等の一様分散化が比較的容易な可動壁体によってほとんど決せられるので、プラズマ処理空間内の圧力制御性を向上させると同時にプラズマ処理空間内における流れの状態を一様にさせることも容易となる。したがって、この発明によれば、均一で質の良いプラズマの供給に加えて圧力制御性にも優れたプラズマ処理装置を実現することができる。
【0055】
第13の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第12の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記可動壁体は、前記開口部分を覆う位置に在るとき前記他方の平板との間に通過流体の絞りとなる間隙を生じさせる形状のものであることを特徴とするものである。
【0056】
このような第13の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ処理に際して、一般に基板の無い一方の平板側からプラズマ処理空間へ供給される処理ガス等が同じ一方の平板側からでなく別の他方の平板側の隙間を経由してプラズマ処理空間から流出する。これにより、流れが上方から下方へ揃い易くなるので、逆流や滞留の発生が抑制される。したがって、この発明によれば、プラズマ状態の均一性を一層高めることができる。
【0057】
第13の解決手段のプラズマ処理装置は、上記の第12,第13の解決手段のプラズマ処理装置であって、前記プラズマ処理空間の圧力に応じて前記壁体駆動機構による前記可動壁体の進退量を制御する圧力制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【0058】
このような第14の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ処理空間の圧力が圧力制御手段によって所望の真空圧になるよう自動制御される。しかも、その際に、プラズマ処理空間に対する圧力制御性の良い可動壁体の進退量を制御することで自動制御がなされるので、プラズマ処理装置の処理レシピ等の設定目標に対してプラズマの圧力状態が速やかに且つ正確に追従する。これにより、従来より木目細かな処理条件を設定しても確実に設定通りのプラズマ反応が行われる。したがって、この発明によれば、より精密なプラズマ処理を基板に施すことができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の第1,第2の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ発生空間とプラズマ処理空間との断面積比を変えてプラズマ発生空間にイオン種が長時間止まらないで済むようにしたことにより、プラズマ成分比率の適正化・制御性を積極的に高めるとともにプラズマ分布の均一性確保とプラズマ処理空間からプラズマ発生空間へのガス流入阻止という両要請に応えられて、その結果、良質のプラズマを供給するプラズマ処理装置を実現することができたという有利な効果が有る。
【0060】
また、本発明の第3の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ発生空間に電子を確実に封じるようにしたことにより、プラズマ成分比率の適正化・制御性を積極的に高めるとともにプラズマ分布の均一性確保とプラズマ処理空間からプラズマ発生空間へのガス流入阻止という両要請に応えられて、その結果、良質のプラズマを供給するプラズマ処理装置を実現することができたという有利な効果を奏する。
【0061】
さらに、本発明の第4の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ発生空間とプラズマ処理空間との断面積比を変えてプラズマ発生空間にイオン種が長時間止まらないで済むようにしたことに加えてプラズマ発生空間に電子を確実に封じるようにもしたことにより、プラズマ成分比率の適正化・制御性を積極的に高めるとともにプラズマ分布の均一性確保とプラズマ処理空間からプラズマ発生空間へのガス流入阻止という両要請に応えられて、その結果、良質のプラズマを供給するプラズマ処理装置を実現することができたという有利な効果が有る。
【0062】
また、本発明の第5の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、まとまりを保ちつつ分散させるようにしたことにより、発生プラズマの均一化および磁気回路の設計・製造の容易化を達成することまでもできたという有利な効果を奏する。
【0063】
さらに、本発明の第6の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、強力電磁石が不要となるようにしたことにより、設計容易化・装置小形化・コスト削減を達成することができたという有利な効果が有る。
【0064】
また、本発明の第7及び第8の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ成分比率とプラズマ濃度とを独立して設定しうるようにしたことにより、プラズマ処理の効率を一層向上させることができたという有利な効果を奏する。
【0065】
また、本発明の第9の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、単にプラズマ発生空間をプラズマ処理空間に開口させた場合よりもプラズマ処理空間からプラズマ発生空間の方を見た面積比が小さくなるようにしたことにより、不所望なガスのプラズマ発生空間への流入が一層抑制されるとともに、イオン種に対して鉛直方向の速度成分を加味することもできるようになったという有利な効果が有る。
【0066】
また、本発明の第10の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、処理ガスがプラズマ発生空間を経ることなくプラズマ処理に供されるようにしたことにより、処理ガスがプラズマ処理に供される前に高密度プラズマによって変質させられるのを確実に回避することができたという有利な効果が有る。
【0067】
また、本発明の第11の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、反応ガスが直接に高密度プラズマに曝されることの無いようにしたことにより、より質の良いプラズマを提供することができ、さらにはイオン種を任意に生成することもできるようになったという有利な効果が有る。
【0068】
また、本発明の第12の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、圧力制御対象が大容積のチャンバ内圧力から小容積のプラズマ処理空間に絞り込まれる一方で流れの形態が真空チャンバ壁の吸引口による支配を外れて一様分散化容易な可動壁体に依存するようにしたことにより、均一で質の良いプラズマの供給に加えて圧力制御性にも優れたプラズマ処理装置を実現することができたという有利な効果が有る。
【0069】
また、本発明の第13の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、流れが一方向へ揃うようにしたことにより、プラズマの均一性を一層高めることができたという有利な効果を奏する。
【0070】
また、本発明の第14の解決手段のプラズマ処理装置にあっては、プラズマ処理空間に対する圧力制御性の良い可動壁体の進退量を制御することで自動制御がなされるようにしたことにより、従来より精密なプラズマ処理を基板に施すことが可能になったという有利な効果が有る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
このような解決手段で達成された本発明のプラズマ処理装置は、一般に適宜の真空チャンバに装着して使用される。そのために、プラズマ処理空間に隣接したプラズマ発生空間が形成される平行平板のうちの一方の平板やその隣接機構などの各機構部は、真空チャンバ内への組み込み等の容易性と真空度の必要性とのバランスを図る等の観点から、別個に形成してから取着されることが多いが、例えば密着して固設されることが多いが、一部又は全部が同一・単一の部材たとえばクラッド材を加工等することで一体的に形成されてもよい。
【実施例1】
【0072】
本発明のプラズマ処理装置の一実施例としてのプラズマエッチング装置について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、その主要部の縦断面図であり、図2は、そのプラズマ発生チャンバ周りの縦断面斜視図であり、図3は、その中の一のプラズマ発生空間についての拡大図であり、図5は、真空チャンバへの装着状態を示す断面図である。
【0073】
このプラズマエッチング装置は、概ね、プラズマ処理空間を確保するための平行平板部(第1機構)と、プラズマ発生空間を確保するための隣接機構部(第2機構)およびその付加部と、各プラズマに電界又は磁界を印加するための印加回路部とで構成されている。
【0074】
平行平板部は、一対の平行平板となる共に金属製のアノード部11及びカソード部12を有していて、アノード部11が上方に配置され、エッチング対象のウエハ等の基板1を乗載するために上面の絶縁処理された基板支持体となるカソード部12が下方に配置されて、これらによって挟まれたところに低温プラズマ10用のプラズマ処理空間13が形成されるものとなっている。また、アノード部11は、予め、多数の連通口14が貫通して穿孔されるとともに、プラズマ処理空間13へ向けて開口した第2のガス導入路としての処理ガス供給口15も形成されたものとなっている。この例では、連通口14の横断面積とプラズマ処理空間13の有効な横断面積との比すなわち第1比が0.05になっている。なお、処理ガス供給口15を介してプラズマ処理空間13へ供給される処理ガスBとしては、シランガス等の反応ガスに適量の希釈ガスを混合させたもの等が供給されるようにもなっている。
【0075】
隣接機構部すなわち一対の平行平板のうちの一方の平板11に隣接する機構は、絶縁物製のプラズマ発生チャンバ21が主体となっており、このプラズマ発生チャンバ21には、プラズマ発生空間22となる複数の(図では4個の)環状溝が同心に彫り込まれて形成されている。これにより、プラズマ発生空間22が分散等したものとなっている。そして、プラズマ発生チャンバ21は、プラズマ発生空間22の開口側(図では下面)をアノード部11の上面に密着した状態で固設される。その際、プラズマ発生空間22の開口がアノード部11の連通口14に重なるように位置合わせがなされる。これにより、プラズマ発生空間22とプラズマ処理空間13とが互いに隣接し且つ連通しているものとなる。この例では、連通口14の横断面積とプラズマ発生空間22の横断面積との比すなわち第2比が0.5になっている。これにより、プラズマ発生空間22がプラズマ処理空間13に連通するところの面積がプラズマ発生空間22の面積よりも小さくて少し絞られた状態となる。なお、これらの比の値は大小関係が逆転しない限り自由に変えてよいものである。
【0076】
また、プラズマ発生チャンバ21は、プラズマ発生空間22のさらに奥に第1のガス導入路としてのプラズマ用ガス送給路23がやはり環状に形成され、両者が多数の小穴またはノズルで連通されていて、プラズマ発生空間22は底部(図では上方)からアルゴン等の非反応性ガス成分だけのプラズマ発生用ガスAの供給を受けて高密度プラズマ20を発生させ連通口14を介してプラズマ処理空間13へそれを送り込むものとなっている。さらに、プラズマ発生チャンバ21は、プラズマ発生空間22を囲む側壁と底部とを残すようにしてプラズマ発生空間22開口側の裏の面(図では上面)が削り取られる。そして、プラズマ発生空間22の両側壁を挟むようにして、コイル24及び永久磁石片25が環状に付加される。
【0077】
永久磁石片25は、縦の長さがプラズマ発生空間22のそれにほぼ等しくされ、且つ横のプラズマ発生空間22方向へ磁極が向くようにされ、さらに環状の不所望な誘起電流を断つために小片に分けて形成されている。そして、多数の永久磁石片25がプラズマ発生空間22側壁に沿って列設されることで、プラズマ発生空間22に対応した環状の磁気回路が構成される。これにより、磁気回路用の磁性部材25は最外周以外のものがプラズマ発生空間22によって挟まれたところに配置されたものとなっている。この磁気回路の磁力は、質量の小さい電子を捕捉可能な程度の強さで十分であり、質量の大きいイオンまで捕捉する程度の強さは不要である。
【0078】
この磁気回路の一断面について詳述すると(図3参照)、縦長の永久磁石片25のほぼ上半分から出た磁束線26は永久磁石片25の上端近くを中心とした略同心円を描いて戻ることから、永久磁石片25のほぼ上端を頂上とする磁気の山ができる。永久磁石片25の下端のところにもほぼ同様の磁気の山ができる。永久磁石片25はプラズマ発生空間22を挟んで両側に付設されているので、プラズマ発生空間22の周りには磁気の山が4つできる。そこで、プラズマ発生空間22には、磁気の山に囲まれた言わば磁気の盆地ができる。そして、ここに電子が補足されることとなる。なお、ポテンシャル場風に説明したが実際はベクトル場なので正確に述べると複雑になるが、要するに全体としては環状のプラズマ発生空間22の中でドーナツ状に電子が封じられるようになっているのである。なお、磁極が上下になった永久磁石片を上下に並べることによっても(図4参照)プラズマ発生空間22の断面を囲む4つの磁気の山を作ることが可能である。また、図示は割愛したが、5つ以上の磁気の山で囲むようにしてもよい。
【0079】
印加回路部は、RF電源31を中心とする第1印加回路と、RF電源32を中心とする第2印加回路とに分かれる。RF電源31は、その出力パワーが可変のものであり、接地されたアノード部との間に交番電界を印加するとともにバイアス電圧も発生させるために、その出力はブロッキングキャパシタを介してカソード部12へ送給される。また、これには、周波数500KHz〜2MHzのものがよく用いられる。これにより、第1印加回路は、低温プラズマ10の強化に或る程度寄与する電界をプラズマ処理空間13に印加するものとなっている。
【0080】
RF電源32は、やはり出力パワーが可変のものであり、プラズマ発生空間22を挟む両コイル24を駆動してプラズマ発生空間22に交番磁界を印加するようになっている。その最大出力パワーは大きく、その周波数は13MHz〜100MHzとされることが多い。これにより、第2印加回路は、高密度プラズマ20の発生および強化に寄与する磁界をプラズマ発生空間22に印加するものとなっている。
【0081】
圧力制御手段については、従来装置(図13参照)における可変バルブ4が省かれ、その代わりに、可動壁体40、及びこれを上下動させる壁体駆動機構41〜44が設けられている(図5参照)。
【0082】
可動壁体40は、金属製の筒状体からなり、内径がカソード部12の外径より僅かに大きくて内腔にカソード部12が緩く上下動可能に嵌合されるようになっている。その上端はアノード部11に接近したときに全周縁のところにほぼ同一の隙間ができるようになっている。そして、そのときに、可動壁体40は上部がプラズマ処理空間13の側面周辺を塞ぐとともに下部がカソード部12との嵌合が外れないところまで届くような長さに形成されている。これにより、可動壁体40は、真空チャンバ2,3内に設けられ一対の平行平板11,12を基準としたプラズマ処理空間13の開口部分を覆う形状のものとなっている。なお、この可動壁体40は不所望にチャージアップしないように接地等されるようにもなっている。
【0083】
壁体駆動機構は、気密性及び伸縮性を持ったベローズ41が吸引口2aと重ならない位置で真空チャンバ本体部2の底面と可動壁体40とを連結し、このベローズ41内にボールネジ42が縦に遊挿され、その上端が可動壁体40に連結されていて、可動壁体40を上下動可能に支持するものである。さらに、ボールネジ42は、サポート43によって真空チャンバ本体部2に対して固定されたモータ44の回転軸に対して下端が連結されている。そして、モータ44が回転すると、これに応じてボールネジ42が進退駆動され、それに伴って可動壁体40が上下に駆動されて、上はアノード部11にほぼ当接するまで下はカソード部12の上面より低いところまで可動壁体40が移動する。これにより、壁体駆動機構41〜44は、可動壁体40がプラズマ処理空間13の開口部分を覆う上方位置と、可動壁体40がプラズマ処理空間13の開口部分を解放する下方位置との両位置に亘って、可動壁体40を上下に進退させるものとなっている。
【0084】
また、図示は割愛したが、真空圧計4bは可動壁体40に取着されてプラズマ処理空間13内の圧力を直接検出するようになっており、その検出信号はベローズ41内腔等を介して真空を破らずに取り出せるようになっている。そして、その検出信号を受けたPID制御回路4cによってモータ44の回転量や回転速度が制御される。これにより、このプラズマエッチング装置は、プラズマ処理空間13の圧力に応じて壁体駆動機構41〜44による可動壁体40の進退量を制御する圧力制御手段を備えたものとなっている。
【0085】
この実施例のプラズマエッチング装置について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図5は、上述した主要部を真空チャンバに装着した状態を示す断面図であり、図6は、プラズマ内電子のエネルギー分布を示すグラフであり、図7は、プラズマにおけるイオン比率の制御可能範囲を示す図である。
【0086】
使用に先だって、プラズマエッチング装置のカソード部12は、上が解放した箱状の真空チャンバ本体部2の中央にローアーサポート12aを介して植設される。真空チャンバ本体部2は、プラズマ発生チャンバ21やアノード部11が取着され、水冷も可能であり、これを閉めると、真空チャンバ本体部2の内部さらにはプラズマ処理空間13及びプラズマ発生空間22も密閉される。それから、可動壁体40がカソード部12よりも下方へ下げられ、その状態で真空チャンバ2,3内へ横から水平状態の基板1が搬入され、この基板1がカソード部12の上面に載置される。そして、基板搬入口等が閉められると同時に真空ポンプ5による真空引きが行われる。このとき、ゲートバルブ4aは開状態にされたままであり、可変バルブ4も存在しないので、真空チャンバ2,3内は速やかに真空状態となる。
【0087】
それから、モータ44を回転させて可動壁体40をアノード部11に当接しない程度に上昇させ、さらにプラズマ用ガス送給路23を介するプラズマ用ガスAの供給,さらに処理ガス供給口15を介する処理ガスBの供給などを適宜に開始すると、可動壁体40の上端とアノード部11の下面との間に形成される絞り部49によってプラズマ処理空間13内の圧力が適度に保たれる。すなわち、可動壁体40に付設された真空圧計4bによってプラズマ処理空間13内の真空圧が検出され、この検出値と所定の設定目標値との差に基づいてPID制御回路4cによって制御信号が生成出力され、この制御信号に従ってモータ44が回転してボールネジ42を進退させることで可動壁体40が上下動する。
【0088】
具体的には、プラズマ処理空間13の真空度が低下して絶対圧力が上がり過ぎると、可動壁体40が下降するように駆動されて、絞り部49が開き気味になってプラズマ処理空間13の圧力が速やかに下がって所定圧になる。逆に、プラズマ処理空間13の真空度が高くなって絶対圧力が下がり過ぎると、可動壁体40が上昇するように駆動されて、絞り部49が閉まり気味になってプラズマ処理空間13の圧力が速やかに上がって所定圧になる。こうして、可動壁体40及び壁体駆動機構41〜44を圧力制御機構とする圧力制御手段によって、真空チャンバ内の真空圧が速やかに設定圧力になるよう自動制御される。
【0089】
また、絞り部49はプラズマ処理空間13の上部周辺にほぼ一様に展開して形成され、プラズマ処理空間13内圧力とその外側の真空チャンバ内圧力との差に応じて、絞り部49の何処でもガス等の通過流体の流れが概ね同様の状態となるので、プラズマ処理空間13内のガス状態はほぼ対称形で均一性の高いものとなる。さらに、このような圧力制御状態はプラズマ処理空間13にプラズマが形成されたときにも継続するので、以下に述べるエッチング処理における低温プラズマ10の状態も、ほぼ対称形で均一性の高いものとなる。これで、カソード部12上に乗載された基板1に対するプラズマエッチング処理の準備が調う。
【0090】
次に、RF電源32を作動させると、プラズマ発生空間22内にコイル24を介してRF電磁界が印加され、プラズマ用ガスAの電子が激しく運動させられる。このとき、電子は、永久磁石片25による磁気回路の働きによってプラズマ発生空間22に長く留まり、環状空間内を螺旋運動しながら飛び回ってプラズマ用ガスAを励起させる。こうして、高密度プラズマ20が発生するが、プラズマ発生空間22に封じられた電子にはイオン種生成に大きく寄与する10〜15eV以上の高いエネルギーのものが多く含まれているので(図6(a)の二点鎖線グラフを参照)、高密度プラズマ20はイオン種成分の比率が高い。そして、プラズマ発生空間22で膨張した高密度プラズマ20は、特にそのラジカル種およびイオン種成分は、膨張圧力によって速やかにプラズマ処理空間13へ運ばれる。
【0091】
また、RF電源31を作動させると、プラズマ処理空間13にもアノード部11及びカソード部12を介してRF電界が印加される。こちらには電子を封じ込める磁気回路等がないので、処理ガスB等が励起されても高密度プラズマができないで、低温プラズマ10となる。RF電源31からのパワーだけの場合、低温プラズマ10は、10〜15eV以上のエネルギーを持った電子が少ないので(図6(a)の一点鎖線グラフを参照)、ラジカル種成分の比率が高くなる。もっとも、この装置における低温プラズマ10の場合は、上述の高密度プラズマ20が混合されるので、実際のラジカル種成分とイオン種成分との比率は、両者の中間における何れかの比率となる。
【0092】
そして、RF電源32の出力をアップさせると、プラズマ発生空間22内における10〜15eV以上の電子が増える(図6(b)参照)。そして、高密度プラズマ20の生成量が増加する。その混合の結果、低温プラズマ10は、イオン種成分の割合が引き上げられる。一方、RF電源32の出力をダウンさせると、プラズマ発生空間22内における10〜15eV以上の電子が減ってくる(図6(c)参照)。そして、高密度プラズマ20の生成量が減少する。その混合の結果、低温プラズマ10は、イオン種成分の割合が引き下げられる。
【0093】
さらに、RF電源31の出力をアップさせる一方でRF電源32の出力を少しダウンさせると、次のようになる。先ずRF電源31の出力アップによってプラズマ処理空間13における電子密度が高密度および高エネルギー側に移行し(図6(d)一点鎖線参照)、プラズマ処理空間13内の低温プラズマが増える。これによってそこのラジカル濃度が上がるのだが、同時にイオン比率も少し上がる。次に、RF電源32の出力ダウンによってプラズマ発生空間22における電子密度が低密度および低エネルギー側に移行し(図6(d)二点鎖線参照)、プラズマ発生空間22内の高密度プラズマが少し減る。これによってそこのラジカル濃度およびイオン比率が下がるが、こちらは高エネルギー成分が元々大きいので少しの出力ダウンであってもイオン比率が大きく下がる。そして、このような高密度プラズマ20がプラズマ処理空間13内の低温プラズマ10に混合されると、イオン比率の増減が概ね相殺される一方ラジカル濃度は増加する。すなわち、低温プラズマ10は、ラジカル種成分とイオン種成分との比率があまり変わらずにプラズマ濃度が引き上げられる。同様にして、RF電源31,32の出力を逆方向にアップ・ダウンさせると、低温プラズマ10のプラズマ濃度が引き下げられる。
【0094】
こうして、低温プラズマ10は、容易にラジカル種成分とイオン種成分との比率が可変制御され、その可変範囲が従来のほとんど総ての機種をカバーしうるほど広範に亘っている(図7参照、なお、この図7や上述の図6は定性的・相対的な性質を説明するための模式図的なものである)。そして、そのときのエッチングにとって最適な条件の下で即ち従来では設定困難だった条件下で効率よくエッチング処理が進む(図7におけるa点を参照)。さらに、処理ガスBの成分変更などによって最適条件が変化した場合は、RF電源31,32の出力を適宜調節する。しかも、この調節はいわゆるレシピとして予め設定しておけば自動的に行われる。その結果、再び最適条件下で効率よくエッチング処理が進む(図7におけるb点を参照)。これで、エッチング処理を常に効率よく行うことができる。
【0095】
また、この装置では、プラズマ発生空間22の断面積がプラズマ処理空間13の断面積よりも遥かに小さくなっていて、第1比が第2比より桁違いに小さいことから、高密度プラズマ20がプラズマ発生空間22からプラズマ処理空間13へ速やかに送り出されるうえに、そもそもプラズマ処理空間13からプラズマ発生空間22へ逆流して入り込むガス量が少ないので、処理ガスBが高密度プラズマ20で直接に励起されて不所望なまで分解・電離するということはほとんど無くなる。
【0096】
このようにして良質なプラズマによるエッチング処理が効率よく進むと、低温プラズマ10が基板1と反応してできる反応生成物の発生速度すなわち単位時間当たりに発生する反応生成物の量も増加する。そして、これが真空チャンバ内に滞留するとこの反応生成物と処理ガスとの反応等によってプラズマ処理の質が低下してしまいかねないが、上述したようにプラズマエッチング処理に必要なガス圧とされる範囲がアノード部11とカソード部12と可動壁体40とによる最小限の空間に絞り込まれていて、その周りを取り囲む真空チャンバ2,3内は十分に吸引されて真空状態となっていることから、反応生成物は発生量が増加してもプラズマ処理空間13に長く留まることなく速やかに排気される。こうして、プラズマ発生空間等からの良質なプラズマの供給と、可動壁体等による反応生成物の速やかな排出とが相まって、質も処理速度も優れたプラズマエッチング処理が継続されるのである。
【0097】
次に、プラズマ成膜装置(CVD)について説明するが、基本的には上述したものとほぼ同様の構成のものでよく、相違点は、対向電極におけるカソードとアノードとが入れ替わることと、成膜処理ガスBとしてモノシランその他の活性ガスが用いられることと、プラズマ処理空間の圧力が少し高い(真空度は低い)ところに設定されること等である。この場合も、低温プラズマ10は、容易にラジカル種成分とイオン種成分との比率が可変制御され、その可変範囲が従来のほとんど総ての機種をカバーしうるほど広範に亘っている(図8参照)。
【0098】
そして、そのときの成膜にとって最適な条件の下で即ち従来では設定困難だった条件下で効率よく成膜処理が進む(図8におけるa点を参照)。 さらに、処理ガスBの成分変更などによって最適条件が変化したときにRF電源31,32の出力を適宜調節することで何時でも最適条件下で効率よく成膜処理を進めることができる(図8におけるb点を参照)ことも同様である。こうして、ポリシリコンや,アルミやタングステン等のメタル,酸化膜,窒化膜など種々のものが成膜の対象とされたときであっても、本発明のプラズマ成膜装置ではプラズマ成膜時のイオンとラジカルとの比を広範に変えることが可能なので、成膜対象の膜質やその他の用途に応じて最適な成膜条件を自由に選択・設定することができて、良質な成膜が高い生産性で行なわれる。
【0099】
このようにこれらのプラズマ処理装置は、プラズマにおけるイオン比率の制御可能範囲が広くて、従来のプラズマエッチング装置やプラズマCVDのほぼ総てに亘るとともにそれらの間隙をもカバーすることから(図9参照)、最適なプラズマ処理条件を自由に選択・設定することができる。その結果、良質なプラズマ処理を効率良く行うことが可能となる。
【0100】
最後に、本発明のプラズマ処理装置についての他の構成例を説明する。図10〜図12に示したプラズマ処理装置は、上述の装置における可動壁体40についての各種変形例であり、何れも、可動壁体40が、上昇させられてプラズマ処理空間13の開口部分を覆う位置に在るときにカソード部(基板支持体)12との間に通過流体の絞りとなる間隙を生じさせるような形状に加工されたものである。なお、アノード部11もカソード部12と外径が同一にされて可動壁体40の内腔に嵌挿されるものとなっている。
【0101】
図10に示した第1変形例の可動壁体40aは、内腔の下方が広げられて段付き状態に形成されており、ボールネジ42等がカソード部12と干渉し合わないように最下端のところがボールネジ42によって支持されるとともに、内腔の小径部下端部分とカソード部12の上辺縁部分とによって流体に対する絞り部49aが形成されるようになっている。
【0102】
図11に示した第2変形例の可動壁体40bは、カソード部12の上辺縁に対応した高さのところに開口49bが多数穿孔形成されていて、それらの開口49bのところに分散して絞りが形成されるものである。
【0103】
図12に示した第3変形例の可動壁体40cは、さらに可動壁体内側面49cに丸みを持たせることで、プラズマ処理空間13の角張ったところが少なくなるようにしたものであり、これによって開口49b近傍における流れの急激な変化によってプラズマ処理空間13内部にまで及びうる不均一性の影響が緩和されることを期したものである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のプラズマ処理装置の一実施例としてのプラズマエッチング装置について、その主要部の縦断面図である。
【図2】そのプラズマ発生空間周りの縦断面斜視図である。
【図3】そのうち一のプラズマ発生空間についての拡大図である。
【図4】磁気回路の変形例である。
【図5】真空チャンバへの装着状態を示す断面図である。
【図6】プラズマ内電子のエネルギー分布である。
【図7】プラズマエッチャでのイオン比率の制御可能範囲を示す。
【図8】プラズマCVDでのイオン比率の制御可能範囲を示す。
【図9】プラズマにおけるイオン比率の制御可能範囲を示す。
【図10】可動壁体の第1変形例である。
【図11】可動壁体の第2変形例である。
【図12】可動壁体の第3変形例である。
【図13】従来のプラズマ処理装置である。
【図14】チャンバ縮小時の予想構造図である。
【符号の説明】
【0105】
1 基板(被処理物、ウエハ)
2 真空チャンバ本体部(真空チャンバ)
2a 吸引口
2b バッフル板
3 真空チャンバ蓋部(真空チャンバ)
4 可変バルブ(可変絞り、圧力制御機構、圧力制御手段)
4a ゲートバルブ(仕切弁)
4b 真空圧計(圧力検出器、圧力制御手段)
4c PID制御回路(圧力制御回路、圧力制御手段)
5 真空ポンプ
10 低温プラズマ
11 アノード部(平行平板の一方、第1印加回路、第1機構)
11a アッパーサポート
12 カソード部(平行平板の他方、第1印加回路、第1機構、基板支持体)
12a ローアーサポート
13 プラズマ処理空間
14 連通口
15 処理ガス供給口(第2のガス導入路)
20 高密度プラズマ
21 プラズマ発生チャンバ(隣接機構部、第2機構)
22 プラズマ発生空間
23 プラズマ用ガス送給路(第1のガス導入路)
24 コイル(第2印加回路)
25 永久磁石片(磁気回路用の磁性部材)
26 磁束線(磁気回路)
31 RF電源(第1印加回路)
32 RF電源(第2印加回路)
40,40a,40b,40c 可動壁体(可変絞り)
41 ベローズ(蛇腹、壁体駆動機構)
42 ボールネジ(進退駆動軸、壁体駆動機構)
43 サポート(支柱、壁体駆動機構)
44 モータ(電動機、壁体駆動機構)
49,49a 絞り部
49b 開口
49c 可動壁体内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極となる一対の平行平板間にプラズマ処理空間を形成したプラズマ処理装置において、
前記一対の平行平板のうち一方の平板に又はその隣接機構部に、前記プラズマ処理空間に隣接し且つ連通したプラズマ発生空間が環状に形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記プラズマ発生空間を挟んで配置された磁気回路用の磁性部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記磁気回路用の磁性部材が永久磁石または直流励磁コイルであることを特徴とする請求項2に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項4】
プラズマの発生または強化に寄与する電界または磁界を前記プラズマ処理空間に印加する第1印加回路と、
プラズマの発生および強化に寄与する電界または磁界を前記プラズマ発生空間に印加する第2印加回路とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1印加回路および前記第2印加回路は、出力が互いに独立して制御可能なものであることを特徴とする請求項4に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記プラズマ発生空間にプラズマ用ガスを導入する第1のガス導入路と、前記プラズマ処理空間に処理ガスを導入する第2のガス導入路とが個別に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第2のガス導入路へは反応ガス成分を含むガスを供給すると共に前記第1のガス導入路へは非反応性ガスのみを供給するものであることを特徴とする請求項6に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項8】
上記プラズマ処理装置がデポジション処理装置またはエッチング処理装置のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載されたプラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−59944(P2007−59944A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307098(P2006−307098)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【分割の表示】特願平10−56060の分割
【原出願日】平成10年2月20日(1998.2.20)
【出願人】(596064444)株式会社エフオーアイ (15)
【Fターム(参考)】