説明

プラズマ処理装置

【課題】プラズマ処理装置のステージ電極の表面が損傷したとき、上記表面部分だけを容易に交換できるようにする。
【解決手段】ステージ電極20を電極本体21と電極板22とに分割する。電極本体21の周端面21eと電極板22の周端面22eとは互いに面一になっている。ステージ電極20の外周に沿って複数の枠部材30を設ける。これら枠部材30を進退機構5によって退避位置と進出位置との間で進退させる。枠部材30を進出位置に位置させると、枠部材30の位置決め面33が上記周端面21e,22eに当接し、電極板22が位置決めされる。また、枠部材30の段差31によって被処理物9が位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理物の表面をプラズマ処理する装置に関し、特に、その電極構造及び被処理物の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板等の被処理物をステージ上に載置し、被処理物の表面をプラズマ処理する装置は公知である(特許文献1〜4等参照)。これら文献のステージは電極を兼ねる。ステージ電極と対向するように対向電極が設けられる。対向電極とステージ電極との間に電界が印加され、放電空間が生成される。この放電空間に処理ガスが導入されてプラズマ化される。プラズマ化された処理ガスがステージ電極上の被処理物に接触し、処理反応が起きる。ステージ電極の外周には枠部材が設けられている(特許文献3、4参照)。枠部材によって被処理物を位置決めできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−351534号公報
【特許文献2】特開2004−342320号公報
【特許文献3】特開2007−273140号公報
【特許文献4】特開2008−41761号公報
【特許文献5】特開2004−327394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステージ電極の表面は、放電によって酸化されやすい。これを放置すると放電状態の均一性を損なう。そこで酸化した部分を研磨により除去すると、ステージ電極の表面が摩耗する。また、ステージ電極の特に外周の角部は、被処理物との接触によって摩耗しやすい。そのため、ステージ電極をある期間使用したら交換する必要がある。特許文献2、5では、電極を、電極本体とその表面側の電極板との2つの部材に分割し、損傷が生じたときは電極板のみを交換するようになっている。一方、処理すべき基板のサイズが大型であると、ステージ電極のサイズも大型にする必要がある。大型のステージ電極を、電極本体とその表面側の電極板とに分割した場合、電極板を電極本体に位置決めするのが容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、処理ガスを放電空間に導入するとともに前記放電空間内に配置された被処理物に接触させ、前記被処理物の表面をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、
前記被処理物の支持部を兼ね、かつ前記被処理物より小面積のステージ電極と、
前記ステージ電極と対向し、前記ステージ電極との間に前記放電空間を形成する対向電極と、
前記ステージ電極の外周に沿って複数設けられ、前記被処理物の外周部を位置決めして支持する枠部材と、
前記複数の枠部材を、前記ステージ電極に接する進出位置と、前記ステージ電極から離れる退避位置との間で進退させる進退機構と、
を備え、前記ステージ電極が、電極本体と、前記電極本体とは別体をなして前記電極本体の前記対向電極を向く主面に被さる電極板とを含み、前記電極板の前記対向電極を向く放電面上に前記被処理物が配置され、前記電極板が前記電極本体上に位置決めされた状態でこれら電極本体及び電極板の周端面どうしが互いに面一をなしており、
前記枠部材が、前記放電面と面一をなす受け面と、前記受け面と交差して段差を構成する段差面と、前記電極本体及び電極板の周端面を向いて前記受け面と直角に交差する位置決め面とを有し、前記進出位置のとき、前記受け面が前記被処理物の外周部を受け、かつ前記段差面が前記被処理物の周端面に当たり、更に前記位置決め面が前記電極本体及び電極板の周端面に当たることを特徴とする。
ステージ電極が放電や被処理物との接触等によって損傷又は摩耗したときは、ステージ本体の電極本体とその表面側の電極板とのうち、電極板のみを交換すればよい。ステージ電極の全体を交換する必要がなく、大掛かりな交換作業を回避でき、かつ保守費用を軽減できる。電極板の交換の際は、枠部材を後退位置から進出位置へ進出させる。すると、枠部材の位置決め面が電極本体の周端面に当たるとともに電極板の周端面にも当たる。これによって、電極板を電極本体に正確に位置決めすることができる。被処理物のサイズが大型であるために、ステージ電極ひいては電極板のサイズを大型にしなければならない場合であっても、枠部材によって電極板を容易に位置補正できる。しかも、被処理物の外周部を位置決めして支持する枠部材及びその進退機構を用いて、電極板の位置決めをも行なうことができる。
【0006】
前記電極本体には前記主面に達する穴部が形成され、前記電極板が前記穴部に被さり、更に前記穴部にガス圧の付与手段とガスの吸引手段とが選択的に接続されることが好ましい。
前記電極板を前記電極本体上に設置する際は、前記ガス圧付与手段を前記穴部に接続した状態で前記進退機構が前記枠部材を前記進出位置に位置させ、その後、前記穴部に前記ガス圧付与手段に代えて前記吸引手段を接続することが好ましい。
前記電極板の設置の際、穴部にガス圧付与手段を接続して、穴部からガス圧を電極板に付与する。これによって、電極板と電極本体との間の摩擦抵抗を低減することができ、若しくは無くすことができる。したがって、枠部材による電極板の位置決めを容易かつ確実に行なうことができる。電極板を電極本体上に位置決めして設置した後、穴部に吸引手段を接続して穴部内のガスを真空引きする。これによって、電極板を電極本体に吸着して固定することができる。
【0007】
本発明は、大気圧近傍下においてプラズマを生成して表面処理する大気圧プラズマ処理に好適である。ここで、大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極板を電極本体に容易に位置決めすることができる。かつ枠部材によって、被処理物の位置決めだけでなく、電極板の位置決めをも行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置を、被処理物の処理状態で示す正面断面図である。
【図2】上記プラズマ処理装置のステージ電極及び枠部材を、枠部材が進出位置の状態で示す、図1のII−II線に沿う平面図である。
【図3】上記プラズマ処理装置のステージ電極及び枠部材を、枠部材が退避位置の状態で示す平面図である。
【図4】上記プラズマ処理装置において、被処理物を設置する工程を示す正面断面図である。
【図5】上記プラズマ処理装置において、電極板を設置する工程を示す正面断面図である。
【図6】上記プラズマ処理装置において、電極板を設置後、電極本体に吸着して固定する工程を示す正面断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、上記電極板を位置決めする工程を順次示す正面断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置のステージ電極及び枠部材を、枠部材が進出位置の状態で示す平面図である。
【図9】上記第2実施形態に係るプラズマ処理装置のステージ電極及び枠部材を、枠部材が退避位置の状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、被処理物9をプラズマ処理するプラズマ処理装置1を示したものである。被処理物9は、例えば液晶表示パネルのガラス基板にて構成されている。基板9の寸法は、例えば3000mm×3000mm程度の大型サイズである。表面処理の内容は特に限定がない。プラズマ処理装置1は、撥水化、親水化等の表面改質の他、洗浄、親水化、エッチング、アッシング、成膜等の種々の表面処理に適用できる。
【0011】
図1及び図2に示すように、プラズマ処理装置1は、処理ヘッド10と、ステージ電極20と、枠部材30を備えている。処理ヘッド10は、ステージ電極20の上方に離れて架台(図示省略)によって支持されている。処理ヘッド10の内部に対向電極11が収容されている。対向電極11は、四角形の断面を有して図1の紙面と直交する方向に延びる長尺状になっている。対向電極11に電源3が接続されている。電源3は、例えばパルス波状の高周波電力を対向電極11に供給する。対向電極11の下面(ステージ電極20との対向面)には固体誘電体層12が設けられている。固体誘電体層12は、アルミナ等のセラミックの板でもよく、アルミナ等の溶射膜でもよい。
【0012】
処理ヘッド10には移動機構(図示省略)が接続されている。移動機構によって処理ヘッド10が図1の左右方向に往復移動(スキャン)される。移動機構がステージ電極20に接続されていてもよい。ステージ電極20が図1の左右方向に往復移動されるようになっていてもよい。
【0013】
ステージ電極20は、被処理物9を支持する支持部としての機能と、対向電極11と対をなす電極としての機能とを兼ねている。ステージ電極20の上面に被処理物9が載置される。なお、図2においては、被処理物9の図示を省略してある。ステージ電極20の平面視の面積は、被処理物9より少し小さい。したがって、被処理物9をステージ電極20上に載置したとき、被処理物9の外周部がステージ電極20より外側に突出する。
【0014】
ステージ電極20は、平面視で四角形の盤形状になっている。ステージ電極20(後記電極本体21及び電極板22)は、アルミニウムやステンレス等の金属にて構成され、接地線3aを介して電気的に接地されている。処理ヘッド10ひいては対向電極11と、ステージ電極20とは、互いに上下に対向する。電源3から対向電極11への電力供給によって対向電極11とステージ電極20との間に電界が印加される。これによって、処理ヘッド10とステージ電極20との間の空間が放電空間1aになり、そこに大気圧近傍のプラズマ放電が生成される。この放電空間1aに処理ガス供給源2から処理ガスが導入される。これによって、放電空間1a内で処理ガスがプラズマ化(励起、活性化、ラジカル化、イオン化を含む)される。プラズマ化された処理ガスが被処理物9の表面に接触する。これによって、処理反応が起き、被処理物9の表面がプラズマ処理される。
【0015】
処理ガス成分は、処理内容に応じて適宜選択される。例えば、撥水化処理の場合、処理ガスがCF、C、CHF、F等のフッ素含有成分を含むことが好ましい。親水化処理の場合、処理ガスが、N、O等を含むことが好ましい。酸化シリコンのエッチング処理の場合、処理ガスとしてCF、C等のフッ素含有成分にHO等の水素含有添加成分を添加したガスを用いるのが好ましい。アモルファスシリコンやポリシリコンのエッチング処理の場合、処理ガス成分として更にオゾン等の酸化性成分を加えるのが好ましい。
【0016】
ステージ電極20の構造を詳述する。ステージ電極20は、電極本体21と、電極板22とに分割されている。電極本体21と電極板22は互いに別体になり、分離可能になっている。電極本体21は、四角形の盤形状になっている。電極板22は、平面視で電極本体21と同一形状、同一面積の四角形の板状になっている。電極板22の厚さは、電極本体21の厚さより小さく、例えば1mm〜30mm程度である。電極板22が、電極本体21の対向電極11を向く上面(主面)に被さっている。電極板22の対向電極11を向く上面は、対向電極11との間に放電空間1aを形成する放電面となる。この電極板22の上面に被処理物9が配置される。電極本体21に接地線3aが接続されている。電極板22は、電極本体21と接することで電極本体21を介して電気的に接地されている。
【0017】
電極本体21は、4つの周端面21eを有している。電極板22は、4つの周端面22eを有している。電極板22が電極本体21上に位置決めされた状態で、電極本体21及び電極板22の対応する周端面22eどうしが互いに面一になる。これら周端面21e,22eが、ステージ電極20の垂直な周端面を構成する。
【0018】
電極本体21には、複数の穴部21hが分散して形成されている。各穴部21hの上端部が、電極本体21の上面(主面)に達して開口している。電極板22が穴部21hに被さり、これを塞いでいる。
【0019】
穴部21hの下端部(基端部)にガス圧路40が連なっている。ガス圧路40には三方弁等の切換器43が設けられている。切換器43を介してガス圧路40が正負2つの路部分40a,40bに分かれている。正圧路部分40aの基端部にコンプレッサ41(ガス圧付与手段)が連なっている。負圧路部分40bの基端部に真空ポンプ42(吸引手段)が連なっている。切換器43は、正圧路部分40aと負圧路部分40bの何れか一方を選択して穴部21hに接続する。ひいては、穴部21hが、コンプレッサ41と真空ポンプ42の何れか一方に選択的に接続される。被処理物9の処理時等においては、真空ポンプ42が穴部21hに接続される。穴部21h内のガスが真空引きされることによって、電極板22が電極本体21に吸着固定される。後述するように、コンプレッサ41は電極板22の交換時に用いられる。
【0020】
更に電極本体21及び電極板22には、複数の吸着穴21c,22cが分散して形成されている。図示は省略するが、電極本体21の吸着穴21cの下端部(基端部)には真空ポンプ等の吸引手段が接続されている。穴部21h用の吸引手段6が、吸着穴21c,22c用の吸引手段を兼ねていてもよい。吸着穴21cの上端部は、電極本体21の上面に達している。電極板22の吸着穴22cは、電極板22を厚さ方向(上下)に貫通している。電極本体21の吸着穴21cと電極板22の吸着穴22cとが一対一に連通している。吸着穴22cの上端部が被処理物9にて塞がれる。上記吸引手段にて吸着穴21c,22c内のガスが真空引きされることによって、被処理物9が電極板22に吸着されて固定される。被処理物9を吸着手段は、静電吸着でもよい。
【0021】
ステージ電極20の外周に沿って4つ(複数)の枠部材30が設けられている。枠部材30は、ステージ電極20の4つの周端面21e,22eにそれぞれ対応して配置されている。各枠部材30は、ステージ電極20の対応する辺に沿って真っ直ぐ水平に延びている。
【0022】
枠部材30の上面には、段差31が形成されている。段差31は、水平な受け面34と、ほぼ垂直な段差面35とによって構成されている。受け面34は、電極板22の上面と面一すなわち同一水平面上に位置している。段差面35は、受け面34の外側(ステージ電極20とは反対側)の縁と交差し、受け面34より上へ突出している。段差面35は、垂直であってもよく、外側へ傾く斜面になっていてもよい。
【0023】
枠部材30のステージ電極20を向く内側面は、位置決め面33を構成している。位置決め面33は、垂直な平面をなし、かつステージ電極20の対応する周端面21e,22eに沿って長く延びている。受け面34と位置決め面33が直角に交差している。
【0024】
各枠部材30に進退機構5が接続されている。詳細な図示は省略するが、進退機構5は、流体圧シリンダやモータ等のアクチュエータや、枠部材30とアクチュエータとを連結する連結部等を含む。進退機構5は、枠部材30を進出位置(図1、図2、図6)と退避位置(図3、図4、図5)との間で進退させる。図1、図2、図6に示すように、進出位置における枠部材30は、ステージ電極20に接する。すなわち、位置決め面33が、電極本体21及び電極板22の周端面21e,22eに当たる。更に被処理物9をステージ電極20上に載置したとき、枠部材30の段差31に被処理物9の外周部が嵌る。すなわち、枠部材30の受け面34が、被処理物9の外周部を受け、かつ段差面35が被処理物9の周端面に当たる。図3〜図5に示すように、退避位置における枠部材30は、ステージ電極20から離間する。
【0025】
図1及び図4に示すように、ステージ電極20の外側には、被処理物9の昇降機構4が配置されている。昇降機構4は、ステージ電極20及び枠部材30より下方に引っ込んだ下降位置(図1)と、ステージ電極20より上へ突出した上昇位置(図4)との間で昇降する。図1に示すように、枠部材30が進出位置にある時又は枠部材30を進退させる際は、昇降機構4を下降位置に位置させておく。図4に示すように、昇降機構4が上昇位置にある時又は昇降機構4を昇降させる際は、枠部材30を退避位置に位置させておく。昇降機構4の上端部には枠部4aが設けられている。枠部4aによって被処理物9の外周部が支持される。
【0026】
上記のように構成された表面処理装置1の使用方法を、被処理物9の設置方法及び電極板22の交換方法を中心に説明する。
まず、被処理物9の設置方法を説明する。電極板22は、電極本体21上に設置済みとする。図4に示すように、被処理物9をステージ電極20に設置する際は、進退機構5によって枠部材30を退避位置に位置させる。処理ヘッド10(図4において不図示)についてもステージ電極20の真上の位置から外側へ退避させておく。そして、昇降機構4をステージ電極20より上へ突出させる。この昇降機構4の枠部4aに被処理物9を載せる。
【0027】
続いて、昇降機構4を下降させる。枠部4aをステージ電極20より下方へ引っ込ませることで、被処理物9を電極板22上に移し替えることができる。被処理物9の外周部はステージ電極20から突出した状態になる。続いて、図1に示すように、進退機構5によって4つの枠部材30を進出位置へ前進させる。すると、各枠部材30の段差面35が被処理物9の対応する周端面に当たり、被処理物9を正確に位置決めすることができる。かつ、枠部材30の受け面34が被処理物9の裏面の外周部分に接する。これによって、被処理物9の外周部が、段差31に嵌った状態で支持される。各枠部材30の位置決め面33は、ステージ電極20の周端面21e,22eに当接する。被処理物9の位置決め時に吸着穴21c,22cからガスを吹き出すことにしてもよい。そうすることで、被処理物9と電極板22との摩擦抵抗を十分に低減でき、被処理物9の位置調節を確実かつ容易に行なうことができる。被処理物9の位置決め後、吸着穴21c,22c内のガスを真空引きする。これによって、被処理物9を電極板22に吸着して固定することができる。
【0028】
その後、被処理物9にプラズマガスを照射してプラズマ表面処理を行なう。処理後、被処理物9をステージ電極20から搬出する。被処理物9の搬出は上記設置とは逆の手順にて行なう。そして、新たな被処理物9をステージ電極20に設置する。これら被処理物9の設置、表面処理、搬出の期間中、電極板22の電極本体21への吸着固定状態を維持する。
【0029】
被処理物9のプラズマ処理の際、ステージ電極20の表面、具体的には電極板22の上面(放電面)が放電によって酸化しやすい。また、上述した被処理物9の設置、位置決めや搬出等の際に、電極板22の上面と周端面22eとの角部などが被処理物9との接触によって摩耗しやすい。そこで、電極板22を定期的に交換する。電極本体21はそのまま残置する。ステージ電極20の全体を交換する必要がない。したがって、大掛かりな交換作業を回避でき、かつ保守費用を低減できる。
【0030】
上記電極板22の交換は次の手順にて行なう。先ず電極本体21上の損耗した電極板22を取り外す。このとき、真空ポンプ42を停止して、電極板22の真空吸着を解除しておく。コンプレッサ41を穴部21hに接続して、穴部21h内にガスを送り込むことにしてもよい。これによって、電極板22と電極本体21の吸着状態を確実に解除できる。また、進退機構5によって枠部材30を退避位置に退避させる。そして、電極板22を撤去する。
【0031】
次に、図5に示すように、新たな電極板22の設置作業を行なう。予め、進退機構5によって枠部材30を退避位置に位置させておく。そして、新たな電極板22を電極本体21上に搬送し、かつ大まかに位置合わせして載置する。また、切換器43によってコンプレッサ41を穴部21hに接続し、コンプレッサ41から圧縮空気を穴部21hへ導入する。これによって、電極板22の下面に正のガス圧が付与される。このガス圧は、大気圧より50Pa程度高圧になるようにすれば十分である。
【0032】
続いて、進退機構5によって4つの枠部材30を互いに同期させて進出位置へ前進させる。各枠部材30は、電極本体21の対応する周端面21eに対して直交する向きに水平に前進する。そして、図6に示すように、4つの枠部材30が互いに同期して電極本体21の周端面21eにそれぞれ突き当たるとともに、電極板22の周端面22eにそれぞれ突き当たる。これによって、電極板22が水平4方向から位置補正されて正確に位置決めされる。
【0033】
上記電極板22の位置決め動作を更に詳述する。
今、図7(a)に示すように、電極板22の左側の周端面22eが電極本体21の左側の周端面21eより突出し、電極板22の右側の周端面22eが電極本体21の右側の周端面21eより引っ込んでいるものとする。その場合、先ず、左側の枠部材30の位置決め面33が電極板22の左側の周端面22eに突き当たる。この時、右側の枠部材30は電極本体21及び電極板22から離れている。続いて、図7(b)に示すように、左側の枠部材30が電極板22を右へ押し動かす。これによって、電極板22の位置ずれを矯正することができる。やがて、図7(c)に示すように、左側の枠部材30の位置決め面33が、電極本体21の左側の周端面21eにも突き当たる。この時、電極板22の左側の周端面22eが、電極本体21の左側の周端面21eと一致して面一になる。同時に、右側の枠部材30の位置決め面33が、電極本体21の右側の周端面21eに突き当たる。かつ、電極板22の右側の周端面22eが、右側の枠部材30の位置決め面33に突き当たるとともに、電極本体21の右側の周端面21eと一致して面一になる。
【0034】
ステージ電極20の前側(図6において紙面手前)及び後側(図6において紙面奥)でも同様の動作が行なわれる。このようにして、4つの枠部材30によって、電極板22を電極本体21上に正確にかつ迅速に位置決めすることができる。穴部21hからガス圧を電極板22に付与することで、電極板22と電極本体21との間の摩擦抵抗を十分に低減できる。したがって、電極板22が大型であり重量が重くても、枠部材30によって電極板22を容易かつ確実に位置調節することができる。
【0035】
その後、切換器43によって、コンプレッサ41を穴部21hから切り離し、代わりに真空ポンプ42を穴部21hに接続する。そして、真空ポンプ42によって穴部21h内のガスを吸引する。これによって、電極板22を電極本体21に吸着させて固定することができる。電極板22を電極本体21に密着させることで、電極本体21を介して確実に電気的に接地できる。
【0036】
このようにして、プラズマ処理装置1によれば、被処理物9の外周部の位置決め及び支持用の枠部材30を用いて、電極板22の位置決めをも行なうことができる。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
枠部材30は、ステージ電極20の各辺の全長にわたって延びている必要は無い。図8及び図9に示す第2実施形態では、ステージ電極20の各辺につき枠部材30が2つ(複数)設けられている。これら2つの枠部材30は、ステージ電極20の対応する周端面21e,22eの延び方向に間隔を置いて配置されている。各枠部材30が、段差31及び位置決め面33を有している点は第1実施形態と同様である。更に、これら枠部材30が、進退機構5によって互いに同期して進出位置(図8)と退避位置(図9)との間で進退される点についても第1実施形態と同様である。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変をなすことができる。
例えば、被処理物9は、液晶表示パネルに限られず、プラズマ表示パネル等の他のフラットパネルディスプレイであってもよく、更にフラットパネルディスプレイに限られず、半導体ウェハや樹脂シート等であってもよい。
上記実施形態では、複数の枠部材30が進出位置へ互いに同期して移動し、互いに同時に電極本体21の周端面21eに突き当たるようになっていたが、これに限られず、複数の枠部材30が互いに時間的にずれて周端面21eに突き当たるようにしてもよい。
第2実施形態において、ステージ電極20の各辺につき枠部材30が3つ以上設けられていてもよい。ステージ電極20の辺ごとに枠部材30の数が異なっていてもよい。
処理ヘッド10とステージ電極20の配置関係は実施形態に限定されない。ステージ電極20が上側、処理ヘッド10が下側に配置されていてもよい。その場合、被処理物9をクランプ等の固定手段にてステージ電極20に固定することにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、半導体装置や液晶表示装置の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 プラズマ処理装置
1a 放電空間
2 処理ガス供給源
3 電源
3a 接地線
4 昇降機構
4a 枠部
5 進退機構
9 被処理物
10 処理ヘッド
11 対向電極
12 固体誘電体層
20 ステージ電極
21 電極本体
21c 吸着穴
21e 周端面
21h 穴部
22 電極板
22c 吸着穴
22e 周端面
30 枠部材
31 段差
33 位置決め面
34 受け面
35 段差面
40 ガス圧路
40a 正圧路部分
40b 負圧路部分
41 コンプレッサ(ガス圧付与手段)
42 真空ポンプ(吸引手段)
43 切換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスを放電空間に導入するとともに前記放電空間内に配置された被処理物に接触させ、前記被処理物の表面をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、
前記被処理物の支持部を兼ね、かつ前記被処理物より小面積のステージ電極と、
前記ステージ電極と対向し、前記ステージ電極との間に前記放電空間を形成する対向電極と、
前記ステージ電極の外周に沿って複数設けられ、前記被処理物の外周部を位置決めして支持する枠部材と、
前記複数の枠部材を、前記ステージ電極に接する進出位置と、前記ステージ電極から離れる退避位置との間で進退させる進退機構と、
を備え、前記ステージ電極が、電極本体と、前記電極本体とは別体をなして前記電極本体の前記対向電極を向く主面に被さる電極板とを含み、前記電極板の前記対向電極を向く放電面上に前記被処理物が配置され、前記電極板が前記電極本体上に位置決めされた状態でこれら電極本体及び電極板の周端面どうしが互いに面一をなしており、
前記枠部材が、前記放電面と面一をなす受け面と、前記受け面と交差して段差を構成する段差面と、前記電極本体及び電極板の周端面を向いて前記受け面と直角に交差する位置決め面とを有し、前記進出位置のとき、前記受け面が前記被処理物の外周部を受け、かつ前記段差面が前記被処理物の周端面に当たり、更に前記位置決め面が前記電極本体及び電極板の周端面に当たることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記電極本体には前記主面に達する穴部が形成され、前記電極板が前記穴部に被さり、更に前記穴部にガス圧の付与手段とガスの吸引手段とが選択的に接続されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記電極板を前記電極本体上に設置する際は、前記ガス圧付与手段を前記穴部に接続した状態で、前記進退機構が前記枠部材を前記進出位置に位置させ、その後、前記穴部に前記ガス圧付与手段に代えて前記吸引手段が接続されることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−74193(P2012−74193A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217047(P2010−217047)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】