説明

プリプレグおよび金属張り積層板

【課題】熱膨張率が低いプリプレグおよび耐熱性、密着性および耐湿性に優れた金属張り積層板を提供すること。
【解決手段】(A)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するエポキシ樹脂、
(B)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するノボラック型フェノール樹脂、
(C)官能基を有するアクリル系ゴム、
(D)溶融シリカおよび
(E)ホスファゼン化合物
を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物と有機繊維で構成された織布または不織布を基材として用いることを特徴とするプリプレグおよび同プリプレグを用いた金属張り積層板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリプレグおよび金属張り積層板に関する。さらに詳しくは、樹脂の脱落が極めて少なく、熱膨張率が低いプリプレグおよび耐熱性、密着性および耐湿性に優れた金属張り積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器の小型・軽量化および高機能化に伴い、それらの機器に使用される多層プリント配線板はますます薄型化および高密度化が求められている。このような要求に応えるものとして、ビルドアップ方式の多層プリント配線板が使用されるようになってきている。
このビルドアップ方式の多層プリント配線板は、例えば基材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグと銅箔とを積層配置、加熱圧着してコア材を作製した後、このコア材に接着用シートやプリプレグを用いてビルドアップ層が形成されている。このような方法によれば、従来の多層プリント配線板よりも高密度配線が可能になる。
従来、ビルドアップ方式の多層プリント配線板におけるコア材やビルドアップ層の形成に用いられるプリプレグは、ガラス転移温度(Tg)の高いエポキシ樹脂とガラスクロスとの組み合わせにより作製されている。このようなプリプレグを用いたビルドアップ方式の多層プリント配線板はそのXY方向あるいは平面方向(繊維方向)の熱膨張率が15〜18ppm/℃となっている。
一方、このようなビルドアップ方式の多層プリント配線板に実装されるシリコンチップの熱膨張率は3ppm/℃程度である。このため、ビルドアップ方式の多層プリント配線板とシリコンチップとをフリップチップ実装した場合、これらの熱膨張率の違いにより応力が発生し、これらの間の接続信頼性が十分でなくなる。このような課題を解決するものとして、例えばアラミド繊維不織布に熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含浸させたアラミド繊維不織布基板が知られている。アラミド繊維は低い熱膨張係数を有するため、このアラミド繊維によって樹脂間を強固に結びつけることによって、低熱膨張、寸法安定性に優れた基板とすることが可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このようなアラミド繊維不織布にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを用いた多層プリント配線板であっても、シリコンチップとプリプレグの熱膨張率の差は依然としてかなり大きい。また、近年のシリコンチップには高速演算等のため表面に低誘電率層が形成されており、この低誘電率層の形成によりシリコンチップが非常に脆くなっている。
このような課題を解決するために、シリコンチップを実装するために用いられる半導体パッケージ用多層プリント配線板の熱膨張率をシリコンチップの熱膨張率と同程度まで低減させ、シリコンチップを実装した場合の接続信頼性を確保するために、基材にビスフェノールA型等の汎用エポキシ樹脂のみを含浸、乾燥させてなるプリプレグを絶縁層として用いた半導体パッケージ用多層プリント配線板において、前記プリプレグの基材として負の熱膨張率を有する有機繊維からなる織布を用いることが提案(例えば、特許文献2参照)されているが、昨今の高精細配線密度の要求に対してプリント配線板を作製する上での歩留まりの向上、および、さらなる信頼性の向上が強く望まれている現状では性能は十分ではない。
そこで、ビスフェノールA型等のエポキシ樹脂とは異なる特定の構造を有するエポキシ樹脂をポリシロキサン骨格を有するポリイミド樹脂および/またはポリアミドイミド樹脂と組み合わせた樹脂組成物を負の熱膨張率を有する有機繊維からなる織布に含浸させた積層板やプリント配線板が提案(例えば、特許文献3参照)されているが、これでも性能は十分ではない。
そこで、ナフトール骨格のような特定の骨格を有するエポキシ樹脂を、エポキシ樹脂と同じような特定の骨格を有する硬化剤を用いて硬化させた硬化物からなる低熱膨張率を有するプリプレグが提案(例えば、特許文献4参照)されているが、難燃性の点では十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−90721号公報
【特許文献2】特開2006−203142号公報
【特許文献3】特開2007−211182号公報
【特許文献4】特開2009−185170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来技術に鑑み、特にXY方向の熱膨張率が大幅に低減したプリプレグおよび同プリプレグを用いた金属張り積層板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するエポキシ樹脂、特定の構造を有するノボラック型フェノール樹脂、官能基を有するアクリル系ゴム、特定の粒子径を有する溶融シリカ、ならびに、難燃剤としてホスファゼン化合物を含む熱硬化性樹脂組成物を有機繊維で構成された織布または不織布に含浸させたプリプレグにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記
(1)(A)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するエポキシ樹脂、
(B)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するノボラック型フェノール樹脂、
(C)官能基を有するアクリル系ゴム、
(D)溶融シリカおよび
(E)ホスファゼン化合物
を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物と有機繊維で構成された織布または不織布を基材として用いることを特徴とするプリプレグ、
(2)エポキシ樹脂がナフトール骨格を有するエポキシ樹脂である上記(1)に記載のプリプレグ、
(3)ノボラック型フェノール樹脂がナフトール骨格を有するノボラック型フェノール樹脂である上記(1)または(2)に記載のプリプレグ、
(4)官能基を有するアクリル系ゴムが水酸基およびカルボキシル基を有するアクリル系ゴムである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプリプレグ、
(5)ホスファゼン化合物がシアノフェノキシホスファゼン化合物である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプリプレグ、
(6)前記有機繊維が負の線膨張率を有し、かつ、弾性率が70GPa以上である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のプリプレグ、
(7)前記有機繊維がアラミド繊維、ポリパラベンゾオキサゾール繊維およびポリアリレート繊維から選ばれるいずれかである上記(1)〜(5)のいずれかに記載のプリプレグ、および
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のプリプレグを加熱下で加圧成形してなる絶縁層を有し、その少なくとも一方の面に金属箔が一体化されてなる金属張り積層板を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、吸湿下での耐熱性が高く、熱膨張率が小さく、かつ、難燃性に優れたプリプレグおよび金属張り積層板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、(A)成分であるエポキシ樹脂について説明する。
(A)成分のエポキシ樹脂としては、分子構造中にナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するものであれば、分子構造、分子量などに制限されることなく、それらの1種または2種以上を使用することができる。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、α‐ナフトール骨格を有するエポキシ樹脂であるNC−7000L〔日本化薬社製、商品名、エポキシ当量234〕、β‐ナフトール骨格を有するエポキシ樹脂であるESN−175SV〔東都化成社製、商品名、エポキシ当量290〕、HP-4170〔大日本インキ化学社製、商品名、エポキシ当量160〕、ナフタレンジオール骨格を含有するエポキシ樹脂であるESN−375〔東都化成社製、商品名、エポキシ当量173〕、同様にナフタレンジオール骨格を含有するエポキシ樹脂であるHP−4032〔大日本インキ化学社製、商品名、エポキシ当量:280〕、EXA−4700〔大日本インキ化学社製、商品名、エポキシ当量164〕、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であるNC−3000SH〔日本化薬社製、商品名、エポキシ当量291〕、NC-3000H〔日本化薬社製、エポキシ当量:291〕、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂であるHP-7200HH〔大日本インキ化学社製、商品名、エポキシ当量280〕などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記(A)成分であるエポキシ樹脂以外の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を併用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等が挙げられる。
(A)成分であるエポキシ樹脂の配合割合は、(A)、(C)、(D)および(E)成分の合計量中10〜60質量%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜50質量%である。配合割合を10質量%以上とすることにより耐熱性が低下するのを防止し、60質量%以下とすることにより後で述べる基材である有機繊維で構成された織布または不織布との密着性が低下するのを防止する。
【0009】
次に(B)成分について説明する。
(B)成分であるノボラック型フェノール樹脂は、上記(A)成分であるエポキシ樹脂の硬化剤として作用し、分子構造中にナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するものであれば、分子量などに制限されずに使用される。このようなノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、α‐ナフトール骨格を有するノボラック型フェノール樹脂であるSN−485〔新日鐵化学社製、商品名、水酸基当量215〕、ナフタレンジオール骨格を含有するノボラック型フェノール樹脂であるSN−395〔新日鐵化学社製、商品名、水酸基当量105〕、EXB-9500〔大日本インキ化学社製、水酸基当量153〕、ビフェニル骨格を有するノボラック型フェノール樹脂であるMEH−7851−3H〔明和化成社製、商品名、水酸基当量223〕、ジシクロペンタジエン骨格を含有するノボラック型フェノール樹脂であるDPP-6125〔新日本石油化学社製、商品名、水酸基当量185〕などが挙げられる。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0010】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、(B)成分以外のフェノール樹脂を併用することができる。このようなフェノール樹脂としては、分子構造中にナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格をいずれも有さないノボラック型フェノール樹脂の他、従来よりエポキシ樹脂の硬化剤として使用されている種々のフェノール樹脂、具体的には、クレゾールノボラック型樹脂およびフェノールノボラック型樹脂のようなフェノールまたはクレゾール樹脂などを混合して使用することができる。この場合、(B)成分以外のフェノール樹脂やクレゾール樹脂は(B)成分全体の30質量%以下とすることが好ましい。
【0011】
上記フェノール樹脂の配合量は、このフェノール樹脂が有するフェノール性水酸基数とエポキシ樹脂が有するエポキシ基数との比[フェノール性水酸基数/エポキシ基数]が0.5〜1となる範囲が好ましく、0.8〜1の範囲がより好ましい。0.5以上とすることにより耐熱性が低下するのを防止し、1以下とすることにより後で述べる有機繊維との密着性が低下するのを防止する。
【0012】
次に(C)成分の官能基を有するアクリル系ゴムについて説明する。
官能基を有するアクリル系ゴムとしては、具体的にはブタジエンメチルアクリレートアクリロニトリルゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムおよびビニル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム等のゴムのうち少なくとも1種を用いることができる。
本発明に用いられるアクリル系ゴムは炭素数1〜20のアルキル基を有するアクリル酸エステルと、架橋点として作用する水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ(グリシジル)基のような官能基を有する単量体混合物を共重合して得られる側鎖に前記水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基のような官能基を有する重合体である。
炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミド、アクリル酸イソデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸N−ビニルピロリドン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アリル等が挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニルマレイミド等が挙げられる。カルボキシル基を有する単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸及びマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
アミノ基を有する単量体としては、例えば、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン等;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等;N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。エポキシ(グリシジル)基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0013】
アクリル系ゴムの官能基としては、水酸基およびカルボキシル基が好ましく、官能基を有する単量体単位の量は、アクリル系ゴムの構成単量体単位中に0.05〜10質量%含まれることが好ましい。官能基を有する単量体の量が0.05質量%未満及び10質量%を越えるとプリプレグの外観が悪くなり、また0.05質量%未満ではアクリル系ゴムのラテックスの機械的安定性が劣るようになり好ましくない。0.05〜3質量%含まれることが特に好ましい。
【0014】
アクリル系ゴムの数平均分子量は、1万〜10万であることが好ましい。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって測定される値であって、標準ポリスチレン換算値のことを意味する。GPC分析は、たとえば、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用いて行うことができる。
アクリル系ゴムは、例えば、ラジカルを発生させるラジカル重合開始剤を用いて前記の単量体をラジカル重合(主として、乳化重合あるいは懸濁重合)させる方法により得ることができる。ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過安息香酸tert−ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジt―ブチルペルオキシド、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、t―ブチルペルイソブチレート、t―ブチルペルピバレート、過酸化水素/第一鉄塩、過硫酸塩/酸性亜硫酸ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド/第一鉄塩、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
アクリル系ゴムには、必要に応じて、イソシアネート、メラミン等の架橋剤、エポキシ樹脂等の高分子化合物、ゴム系エラストマー、リン系化合物等の難燃剤、シリカ等の無機充填剤、カップリング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等を配合して用いてもよい。
官能基を有するアクリル系ゴムは市販品をそのまま使用することができる。市販品としては、SG−70L(官能基:水酸基およびカルボキシル基)、SG−708−6T(官能基:水酸基およびカルボキシル基)、SG−708−6(官能基:水酸基およびカルボキシル基)〔以上、ナガセケミテックス社製のアクリル系ゴム〕、PHR−1H(官能基:カルボキシル基)(以上、JSR社製のアクリル系ゴム)、ニポール1072(官能基:カルボキシル基)、ニポール1072B(官能基:カルボキシル基)、ニポール1072J(官能基:カルボキシル基)〔以上、日本ゼオン株式会社製のアクリル系ゴム〕、クライナックX7.5(官能基:カルボキシル基)〔Bayer社製のアクリル系ゴム〕、ハイカー・CTBN1300XB(官能基:カルボキシル基)、CTBN1300X15(官能基:カルボキシル基)あるいはCTBNX1300XB(官能基:カルボキシル基)〔以上、BFグッドリッチケミカル社製のアクリル系ゴム〕、ベーマックGLS(官能基:カルボキシル基)〔三井・デュポンポリケミカル製のアクリル系ゴム〕などが挙げられる。
【0015】
この(C)成分である官能基を有するアクリル系ゴムの配合割合は、(A)、(C)、(D)および(E)成分の合計量中、5〜40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜30質量%である。配合割合を5質量%以上とすることにより、後で述べる有機繊維との密着性が低下するのを防止し、40質量%以下とすることにより耐熱性が低下するのを防止する。
【0016】
次に(D)成分について説明する。
(D)成分である溶融シリカは平均粒径が0.05〜2μm、最大粒径が10μm以下であることが好ましい。より好ましくは、平均粒径が0.5〜1.0μm、最大粒径が5μm以下である。このような平均粒径0.05〜2μmおよび最大粒径10μm以下を有するものを用いることにより、熱硬化性樹脂組成物の流動性が良好であるため好ましい。なお、上記平均粒径および最大粒径の測定には、例えば、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いることができる。
(D)成分である溶融シリカは必要に応じて、シラン系あるいはチタン系カップリング剤などで表面処理して使用することができる。シラン系カップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシシラン系;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系などが挙げられる。
【0017】
この(D)成分である溶融シリカの配合割合は、(A)、(C)、(D)および(E)成分の合計量中、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%の範囲がより好ましい。配合割合を20質量%以上とすることにより耐熱性が低下するのを防止し、80質量%以下とすることにより、後で述べる有機繊維との密着性が低下するのを防止する。(D)成分である溶融シリカとともに、必要に応じて、合成シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコニア、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、ガラス繊維などを単独または2種以上混合して使用することができる。
【0018】
次に(E)成分について説明する。
本発明において、(E)成分のホスファゼン化合物は熱硬化性樹脂組成物または硬化物において難燃剤として作用する。
本発明において用いられるホスファゼン化合物としては、耐熱性、耐湿性、難燃性、耐薬品性の観点から、その融点が80℃以上であるホスファゼンオリゴマーが好適である。
ホスファゼンオリゴマーとしては、例えば、下記一般式(1)で表されるシクロアルコキシまたはシクロフェノキシホスファゼン化合物および下記一般式(2)で表される線状アルコキシまたはフェノキシホスファゼン化合物が挙げられる。
【0019】
【化1】

【0020】
一般式(1)または(2)において、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲンを含まない有機基を示し、ハロゲンを含まない有機基としては、例えば炭素数1〜10のプロポキシ基のようなアルコキシ基、フェノキシ基(シアノ基のような置換基を有していてもよい)、アミノ基、アリル基などが挙げられる。式中のmは3〜10の整数を表すが、m=3が最も一般的である。
本発明においては、シクロフェノキシホスファゼン化合物またはシアノフェノキシホスファゼン化合物が好ましく用いられる。
ホスファゼン化合物の製造方法は、例えば、特開2001−2691号公報に記載されている。
シクロフェノキシホスファゼン化合物の市販品としては、例えば、商品名で、SPB−100〔大塚化学(株)製、シクロホスファゼン化合物、リン含有量:13質量%、融点:110℃〕等が挙げられる。また、シアノフェノキシホスファゼン化合物の市販品としては、例えば、伏見化学製の商品名でFP−300等が挙げられる。
ホスファゼン化合物の含有量は(A)、(C)、(D)および(E)成分の合計量中、1〜10質量%であり、好ましくは2〜5質量%程度である。
1質量%以上とすることにより、十分な難燃性が付与され、10質量%以下とすることにより、吸湿時の耐熱性の低下を防ぐ。
【0021】
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、硬化促進剤、金属水酸化物やホウ酸亜鉛のような難燃剤、消泡剤、レベリング剤、その他の一般に使用される添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0022】
硬化促進剤としては、2-ウンデシルイミダゾール、2‐ヘプタデシルイミダゾール、2‐メチルイミダゾール、2‐エチルイミダゾール、2‐フェニルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐メチルイミダゾール、4‐メチルイミダゾール、4‐エチルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐ヒドロキシメチルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐メチルイミダゾール、1‐シアノエチル‐2‐メチルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐メチル‐5‐ヒドロキシメチルイミダゾール、2‐フェニル‐4、5‐ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p‐メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボランなどの有機ホスフィン化合物;1,8‐ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン‐7(DBU)、1,5‐ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン‐5などのジアザビシクロアルケン化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン化合物などが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0023】
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、上述した必須成分である(A)、(B)、(C)、(D)成分および(E)成分、ならびに、必要に応じて配合される前記各種添加剤を、適当な溶剤に均一に溶解または分散させることにより、樹脂溶液(ワニス)として調製される。
熱硬化性樹脂組成物の溶解または分散に用いる溶剤は、特に制限されないが、プリプレグ中に残留する量を極力少なくするために、沸点220℃以下のものが好ましく用いられる。溶剤の具体例としては、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。上記の溶剤の中でプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく用いられる。
ワニスの固形分濃度も、特に制限されないが、低すぎるとプリプレグ中の樹脂含浸量が少なくなり、また、高すぎると、ワニスの粘度が増大し、プリプレグの外観が不良となるおそれがあるので40〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは60〜70質量%である。
【0024】
本発明のプリプレグは、上記のように調製されたワニスを基材である有機繊維で構成された織布または不織布に塗付または含浸させ、次いで、乾燥させて溶剤を除去することにより製造することができる。
ワニスを含浸させる基材としては、熱膨張率(JIS K7197)が負で、かつ、引張弾性率(JIS L1013)が70GPa以上の、アラミド繊維、ポリパラベンゾオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維のような有機繊維からなる織布または不織布が用いられる。織布の場合の織り方は、特に制限されるものではないが、平坦性の観点から、平織りが好ましい。
上記有機繊維からなる織布または不織布は市販されており、アラミド繊維としては、例えば、帝人テクノプロダクツ社製テクノーラ繊維を用いた旭シュエーベル製アラミド繊維織布、ケブラー(デュポン社製、商品名)を用いたアラミド繊維織布KS1020、KS1080、KS1220(カネボウ社製、商品名)等が挙げられる。また、ポリパラベンゾオキサゾール繊維としては、東洋紡社製ザイロン−ASやザイロンHM繊維を用いた旭シュエーベル製ポリパラベンゾオキサゾール繊維織布等が挙げられる。さらに、ポリアリレート繊維としては、クラレ社製ベクトランUM繊維を用いた旭シュエーベル製ポリアリレート繊維織布等が挙げられる。
【0025】
また、プリプレグ中のワニスの含浸量は基材との合計量中、固形分として40〜80質量%となる範囲が好ましい。40質量%以上とすることにより基材中に未含浸部分が生じるのを防止し、積層板としたときにボイドやカスレが生じるのを防止する。また、80質量%以下とすることにより厚みのばらつきが大きくなって、均一な積層板やプリント配線板を得ることが困難になるのを防止する。ワニスを基材に含浸または塗付する方法、および、含浸または塗付後乾燥させる方法は、特に制限されるものではなく、従来より一般に知られている方法を用いることができる。
【0026】
このようにして得られたプリプレグを、所要枚数積層し、加熱下で加圧することにより、本発明の積層板を製造することができる。また、所要枚数積層したプリプレグの片面または両面に銅箔などの金属箔を重ね、加熱下で加圧することにより、本発明の金属張り積層板を製造することができる。
さらに、この金属張り積層板を常法によりエッチング加工してシリコンチップのような半導体チップを積層することにより本発明のプリント配線板を製造することができる。積層板および金属張り積層板を製造する際の加熱および加圧条件は、特に制限されるものではないが、通常、170〜200℃程度の温度、5〜50MPa程度の圧力、時間90〜150分程度である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「部」は「質量部」を表わす。
【0028】
[使用材料]
<エポキシ樹脂―成分(A)および比較用エポキシ樹脂>
(1)ビフェニル骨格エポキシ樹脂:NC-3000H〔日本化薬社製、エポキシ当量291〕
(2)ナフトール骨格エポキシ樹脂:HP-4170〔大日本インキ化学社製、エポキシ当量160〕
(3)ナフタレンジオール骨格エポキシ樹脂:HP-4032〔大日本インキ化学社製、エポキシ当量280〕
(4)ジシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂:HP-7200HH〔大日本インキ化学社製、エポキシ当量280〕
(5)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(比較用):エピコート1001〔ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量475〕
(6)クレゾールノボラック骨格エポキシ樹脂(比較用):YDCN-704P〔東都化成社製、エポキシ当量210〕
<成分(B)―ノボラック型フェノール樹脂および比較用硬化剤>
(1)ナフタレンジオール骨格ノボラック型フェノール樹脂:EXB-9500〔大日本インキ化学社製、水酸基当量153〕
(2)ビフェニル骨格ノボラック型フェノール樹脂:MEH-7851-3H〔明和化成社製、水酸基当量223〕
(3)ナフトール骨格ノボラック型フェノール樹脂:SN−485〔新日鐵化学社製、水酸基当量215〕
(4)ジシクロペンタジエン骨格ノボラック型フェノール樹脂:DPP-6125〔新日本石油化学社製、水酸基当量185〕
(5)DICY(比較用):日本カーバイド社製のシアナミド(H2N-CNH-NH-CN)
<成分(C)―官能基を有するアクリル系ゴム>
アクリル系ゴム:モノマー成分としてエチルアクリレート、ブチルアクリレートおよびアクリロニトリルを有するアクリルゴム〔官能基:水酸基およびカルボキシル基、固形分20質量%、数平均分子量10万、ナガセケミテック社製、表1中SG−70Lと記載〕
<成分(D)―溶融シリカ>
溶融シリカ(平均粒径0.5μm、最大粒径:5μm):SC−2050〔アドマテックス社製〕
<成分(E)―ホスファゼン化合物および比較用リン化合物>
(1)シアノフェノキシホスファゼンオリゴマー:FP-300〔伏見化学社製、前記一般式(1)におけるX1およびX2はシアノフェノキシ基、nは3〕
(2)シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー:SPB-100〔大塚化学社製、前記一般式(1)におけるX1およびX2はフェノキシ基、nは3〕
(3)縮合型リン酸エステル(比較用):1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルフォスフェート)〔大八化学社製、表1中PX−200と記載〕
(4)フォスファフェナンスレン系難燃剤(比較用):9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド〔三光化学社製、表1中HCA-HQと記載〕
<任意成分>
硬化促進剤:2-ウンデシルイミダゾール〔四国化成社製、表1中C11Zと記載〕
<基材および比較用基材>
(1)アラミドクロス:旭化成シュエーベル社製のアラミド繊維織布〔テクノラークロス065T(密度61g/m2、線膨張率-5ppm/℃、弾性率70GPaである帝人テクノプロダクツ社製テクノーラ繊維使用)〕
(2)ポリパラベンゾオキサゾールクロス:旭化成シュエーベル社製のポリパラベンゾオキサゾール繊維織布〔密度:64.5g/m2、線膨張率:-6ppm/℃、弾性率:270GPaである東洋紡社製ザイロンHM繊維使用―後で示す表1中では「ポリパラベンゾ」と表示する〕
(3)ポリアリレートクロス:旭化成シュエーベル社製のポリアリレート繊維織布〔密度:61g/m2、線膨張率:-6ppm/℃、弾性率:106GPaであるクラレ社製ベクトランUM繊維使用―後で示す表1中では「ポリアリレート」と表示する〕
(4)ガラス基材(比較用):旭化成イーマテリアルズ製のガラス繊維織布〔密度:
31.0g/m2、線膨張率:5.5ppm/℃、弾性率:72.5GPa、1067〕
【0029】
[試験方法]
(1)難燃性
UL−94にて規定される試験法に準じて測定した。
(2)線膨張率
銅箔をエッチング後、X方向(織布の機械搬送方向)およびY方向(織布の幅方向)、Z方向(織布の厚み方向)の各熱膨張率を、セイコーインスツルメンツ社製の熱機械分析装置TMA/SS6000(商品名)を用いて、TMA法により、窒素雰囲気下、5℃/分の昇温条件において測定した。
(3)銅箔引き剥がし強度
JIS C 6481に準じて測定した。
(4)ハンダ耐熱性
288℃のハンダ浴に30分間各試料を浮かべて膨れの有無を観察し、次の基準で評価した。
◎:良好、○:やや良好、×:不良
(5)耐ミーズリング性
121℃、0.2MPaの飽和水蒸気中で、各試料について5時間の耐湿処理を行った後、260℃のハンダ浴に30秒間浸漬して膨れの有無を観察し、次の基準で評価した。
◎:良好、○:やや不良、×:不良
【0030】
[調製例1]
成分(A)として前記ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂8.7部、前記ナフトール骨格を有するエポキシ樹脂7.7部、前記ナフタレンジオール骨格を有するエポキシ樹脂2.9部、成分(B)として前記ナフタレンジオール骨格を有するノボラック型フェノール樹脂7.7部、成分(C)として前記官能基を有するアクリル系ゴム8.0部、成分(D)として溶融シリカ60部、成分(E)としてシアノフェノキシホスファゼンオリゴマー3.5部、硬化促進剤としてイミダゾール0.03部からなる混合物に溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル7.7部とシクロヘキサノン131.1部を加えて固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「ワニス-1」とする。
【0031】
[調製例2]
成分(A)として前記ナフトール骨格を有するエポキシ樹脂19.3部、成分(B)として前記ナフトール骨格を有するノボラック型フェノール樹脂9.1部
を使用した以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「ワニス-2」とする。
【0032】
[調製例3]
成分(A)として前記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂19.3部、成分(B)として前記ジシクロペンタジエン骨格を有するノボラック型フェノール樹脂9.1部を使用した以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「ワニス-3」とする。
【0033】
[調製例4]
成分(A)として前記ナフタレンジオール骨格を有するエポキシ樹脂19.3部を使用した以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「ワニス-4」とする。
【0034】
[調製例5]
成分(A)として前記ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂19.3部、成分(B)として前記ビフェニル骨格を有するノボラック型フェノール樹脂9.1部を使用した以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「ワニス-5」とする。
【0035】
[調製例6]
成分(E)として前記シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー3.5部を使用した以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「ワニス-6」とする。
【0036】
[比較調製例1]
成分(E)を使用しなかった以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「比較ワニス-1」とする。
【0037】
[比較調製例2]
成分(A)の替わりに前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂を19部およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を9部使用した以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「比較ワニス-2」とする。
【0038】
[比較調製例3]
成分(E)の替わりに前記縮合型リン酸エステルを3.5部使用した以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「比較ワニス-3」とする。
【0039】
[比較調製例4]
成分(E)の替わりに前記HCA-HQを3.5部使用した以外は調製例1と同様に行い、固形分65質量%のワニスを調製した。このワニスを「比較ワニ
ス-4」とする。表1に各ワニスの配合組成をまとめて示す。
【0040】
〔実施例1〜8および比較例1〜5〕
表1に示す各ワニスを表1に示す各基材にそれぞれ含浸後、150℃で乾燥することにより樹脂含浸量72質量%のプリプレグを得た。
アラミドクロスは実施例1〜6および比較例1〜4で、ポリパラベンゾオキサゾールクロスは実施例7で、ポリアリレートクロスは実施例8でそれぞれ使用した。ガラス基材は比較例5で使用した。
【0041】
上記実施例および比較例において得られたプリプレグを8枚重ね合わせてその上下に厚さ18μmの銅箔を重ね、ステンレス板で挟み、190℃、4MPa、130分間加熱下で加圧して銅張り積層板を得た。
この銅張り積層板の銅箔をエッチングして作製したプリント基板のXY方向(基板の平面方向)およびZ方向(基板の厚さ方向)の線膨張率、銅箔引き剥がし強度(ピール強度)、ハンダ耐熱性および耐ミーズリング性の試験を行なった。
表2に各例で得られたプリプレグの特性をまとめて示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のプリプレグおよび金属張り積層板は吸湿下での耐熱性が高く、熱膨張率が小さいため、接続信頼性に優れており、プリント配線板、特にビルドアップ方式の多層プリント配線を製造する分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するエポキシ樹脂、
(B)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格およびジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するノボラック型フェノール樹脂、
(C)官能基を有するアクリル系ゴム、
(D)溶融シリカおよび
(E)ホスファゼン化合物
を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物と有機繊維で構成された織布または不織布を基材として用いることを特徴とするプリプレグ。
【請求項2】
エポキシ樹脂がナフトール骨格を有するエポキシ樹脂である請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
ノボラック型フェノール樹脂がナフトール骨格を有するノボラック型フェノール樹脂である請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
官能基を有するアクリル系ゴムが水酸基およびカルボキシル基を有するアクリル系ゴムである請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項5】
ホスファゼン化合物がシアノフェノキシホスファゼン化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記有機繊維が負の線膨張率を有し、かつ、弾性率が70GPa以上である請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記有機繊維がアラミド繊維、ポリパラベンゾオキサゾール繊維およびポリアリレート繊維から選ばれるいずれかである請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のプリプレグを加熱下で加圧成形してなる絶縁層を有し、その少なくとも一方の面に金属箔が一体化されてなる金属張り積層板。

【公開番号】特開2011−162615(P2011−162615A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24680(P2010−24680)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】