説明

ヘテロダインレーザー干渉測長器及び画像形成装置

【課題】分解能を向上させてデッドパスの影響を排除して高精度の測長を行う小型で高品質の画像を形成するヘテロダインレーザー干渉測長器及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】ヘテロダインレーザー光源1からのレーザービームを2つの測定ビームに分離する偏光ビームスプリッタ2と、仮想直線101上に反対方向を向いて被測定物102に固定される2つの測定ミラー3、4と、前記測定ミラー3、4に対して前記仮想直線101に沿って測定ビームを導く2つの測定光路5、6と、各々の前記測定光路5、6中に配置される1/4波長板7、8と、前記1/4波長板7、8と前記測定ミラー3、4の間に位置し測定ビーム断面の一部を反射する2つの反射ミラー9、10と、前記測定ミラー3、4と前記反射ミラー9、10による2つのビート信号の差分に対応する変位の算出を行う演算手段11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロダインレーザー干渉測長器及びそのヘテロダインレーザー干渉測長器を備える画像形成装置に関し、詳しくは、精密計測をはじめとして、精密機械、半導体、光デイスク等の加工製造に利用されるレーザー光を用いて被測定物の変位を測定するヘテロダインレーザー干渉測長器、及びそのヘテロダインレーザー干渉測長器を備える被記録媒体に記録画像を形成する印刷装置のインクジェットプリンタ、静電記録方式や電子写真方式などの作像プロセスでトナーの記録画像を形成する複写機、ファクシミリ装置、プリンタあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘテロダインレーザー干渉測長器、及びそのヘテロダインレーザー干渉測長器を備える画像形成装置において、レーザー干渉測長器として利用されている方式で代表的なのは、高精度で安定性があるヘテロダインレーザー干渉測長器である。
ヘテロダインレーザー干渉計を利用する回転振れ計測として、被測定面の微細な凹凸の影響を受けない精度の高い変位測定を行うことも提案されている(特許文献5を参照)。
図6は、従来のヘテロダインレーザー干渉測長器1000の基本構成のブロック図である。
図6において、ヘテロダインレーザー光源1001は、互いに周波数がわずかに異なり偏光面が直交する、2つの直線偏光出射ビームを出射する。
【0003】
ヘテロダインレーザー光源1001から出射してビームスプリッタ1020で分岐される直線偏光出射ビームは、光検出器1021で干渉状態を電気信号に変換し、基準信号回路1022でビート信号を検出する。
ビームスプリッタ1020を透過したビームは、偏光ビームスプリッタ1002で基準ビーム1005と測定ビーム1006に分割される。
基準ビーム1005は、1/4波長板1007を透過後、位置固定されている基準ミラー1003で反射され、1/4波長板1007を経て偏光ビームスプリッタ1002に戻る。
測定ビーム1006は、1/4波長板1008を透過後、可動の測定ミラー1004で反射され、1/4波長板1008を経て偏光ビームスプリッタ1002に戻る。
【0004】
基準ミラー1003と測定ミラー1004で反射した基準ビーム1005と測定ビーム1006は、それぞれ2回1/4波長板1007と1/4波長板1008を通るので偏光面が回転し、偏光ビームスプリッタ1002から出射ビームとは分離され、光検出器1009で干渉状態を電気信号に変換し、測定信号回路1010でビート信号を検出する。
偏光ビームスプリッタ1002と2つの1/4波長板1007と1/4波長板1008は一体化することも可能である。
基準信号回路1022と測定信号回路1010の出力は、演算回路1019で演算処理される。
測定対象に搭載して固定される測定ミラー1004が動くと、測定信号回路1010のビート信号位相が変化し、また周波数が速度に応じてドップラーシフトするため、演算回路1019が、基準信号回路1022をもとにこれらを演算処理することで移動距離を測定できる。
【0005】
移動距離は絶対値測定ではなく相対値測定で行われ、任意に定めた測定原点(Z)で測定値をゼロリセットする。測定原点(Z)における基準ビーム1005と測定ビーム1006の光路長差がデッドバスである。
一般に光学系配置の制約等から、このデッドバスをゼロとすることは困難である。周囲環境の温度、湿度、気圧によってレーザー光の波長は変化すると言うことはエドレンの式として知られているため、レーザー干渉測長の測定値も変化するが、デッドパス中の変化分は測定値から分離することができないため、結果として可動の測定ミラー1004の移動距離測定精度が低下すると言う不具合がある。
【0006】
そのため、下記のようなデッドバスの影響を低減させる種々の方法や装置が提案されている。
まず、設計上のデッドパス量をあらかじめ求めておき、環境変化によるデッドバス量変化分を計算してデッドパスを含む実際の測長結果を補正する(特許文献1、2を参照)。
即ち、デッドバス長(Ld)を何らかの手段、例えば、メジャー等によって測定し、レーザー干渉を利用して測定した測長結果を(L)、符号ダッシュを温度等の環境を考慮したエドレンの式による補正後の測長結果とすると、真の移動距離(La)=L’−(Ld−Ld’)とする(特許文献1を参照)。
そして、温度等の環境条件の検出部を備えて、デッドバスを入力部に操作者がデッドパス長(Cd)(正しくは距離に対応するカウント値)を入力し、自動的にエドレンの式による補正が行われるようにし、測定した移動距離(Cp)の値に対し、真の移動距離をC=Cp−(Cd−Cd’)としている(特許文献2を参照)。
【0007】
他に、基準光路の1/4波長板を基準ビームに部分的に挿入し、測定光路の1/4波長板の表面の一部をミラーとし測定原点に配置して、基準信号は基準光路の1/4波長板を通らず基準ミラーから反射される部分と、測定光路の1/4波長板表面から反射される部分の干渉によって発生し、測定信号は基準光路の1/4波長板を通り基準ミラーから反射される部分と、測定光路の1/4波長板を通り測定ミラーから反射される部分の干渉によって発生するようにしているので、デッドパスの測長を基準信号で行い、測定ミラー位置の測長を測定信号で行い、測定ミラーの測長結果からデッドバス量変化を相殺している(特許文献3を参照)。
更に、参照および測定光路に伸縮機構を備え、基準ミラー・測定物と偏光ビームスプリッタとの距離を増減できるようにし、デッドパスゼロに相当する光源からの基準信号を元に、参照および測定光路の位相差を算出し、参照光路の長さを伸縮させて、実際にデッドパス長をゼロに調整することで、デッドバス自体を光学系から取り除くようにしている(特許文献4を参照)。
【0008】
更に、レーザー干渉測長器では基準光路を測定光路として利用して分解能を向上させる方法がある。
図7は、従来の分解能を向上させるレーザー干渉測長器2000の基本構成のブロック図である。
図7において、レーザー干渉測長器2000は、被測定物2001に反対方向を向いた基準ミラー1003と測定ミラー1004が搭載されて固定された形になっている。
基準ミラー1003への基準ビーム1005は、1/4波長板1007から方向を変えるための3つのミラー2002、2003、2004を経て導かれている。基準ビーム1005と測定ビーム1006は同一直線上にあり、基準ミラー1003と測定ミラー1004は2つの基準ビーム1005と測定ビーム1006に対して垂直に配置される構成になっている。
【0009】
レーザー干渉測長器2000は、図6に図示するヘテロダインレーザー干渉測長器1000と比較し、基準ミラー1003が光軸に相当する直線に対して測定ミラー1004と反対方向を向いて測定対象の被測定物2001に搭載されて固定されている点が違っている。
この構成では、被測定物2001の光軸方向移動量に対し光路長が差動検出されて2倍になるので分解能が2倍に向上する。
このような差動検出光学系の構成では、基準ミラー1003と測定ミラー1004の働きは全く同等になる。
ただし光学的差動検出では、被測定物2001を挟み込むような光学系を構成する必要があるため、基本的には被測定物2001に移動量を加えた程度の不等長光路となり、デッドパスが図6で示す通常の光学系に比較して大きくなる。
そのために、より一層のデッドパスによる測定精度の低下を排除する必要が生じてくる。
【0010】
従来技術として取り上げた特許文献1、2では、デッドパス量をあらかじめ求めておき、環境変化によるデッドバス量の変化分を計算して、デッドパスを含む測長結果を補正するものである。
然し、これでは間接的であり、またあらかじめ求めておくデッドパス量の精度が低いと言う不具合がある。
【0011】
特許文献3では、対象と共にデッドパス部の光学測長も行うことでデッドバス量変化を相殺しているが、基準ミラーは位置固定とするのが前提となる。
あえて基準ミラーの可動を許し差動検出光学系に適用しようとすると、2つの光路間で測定光路の位置が光軸に対して反転するため、測定光路を測定ミラーの同一直線上に合わせるためには光路をシフトさせる必要があり、そのための機構が余分に必要になると言う不具合がある。
更に、特許文献4では、デッドパス量を実際に求めてそれ自体を解消させるが、そのために必要な光路伸縮機構が必要であり、実際の装置への搭載は困難で搭載した場合も設置スペースが多くなる不具合がある。
【特許文献1】特開平6−58711号公報
【特許文献2】特開平9−287917号公報
【特許文献3】特開平11−257915号公報
【特許文献4】特開2003−287403号公報
【特許文献5】特開2003−329408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のヘテロダインレーザー干渉測長器、及びそのヘテロダインレーザー干渉測長器を備える画像形成装置は、分解能を向上させてデッドパスの影響を排除する精度は低く余分な機構が必要となるだけでなく大型となり設置スペースも多く形成する画像品質も低下すると言う問題が発生していた。
そこで本発明の課題は、このような問題点を解決するものである。即ち、分解能を向上させてデッドパスの影響を排除して高精度の測長を行う小型で高品質の画像を形成するヘテロダインレーザー干渉測長器、及び、そのヘテロダインレーザー干渉測長器を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、レーザー光を用いて被測定物の変移を測定するヘテロダインレーザー干渉測長器において、異なる周波数で偏光面が直交する2つの直線偏光レーザービームを発生するヘテロダインレーザー光源と、ヘテロダインレーザー光源からのレーザービームを2つの測定ビームに分離する偏光ビームスプリッタと、仮想直線上に反対方向を向いて被測定物に固定される2つの測定ミラーと、測定ミラーに対して仮想直線に沿って測定ビームを導く2つの測定光路と、各々の測定光路中に配置される1/4波長板と、1/4波長板と測定ミラーの間に位置し測定ビーム断面の一部を反射する2つの反射ミラーと、測定ミラーと反射ミラーからの反射光束を2分割して測定ミラーによる干渉光強度のビート信号と反射ミラーによる干渉光強度のビート信号の2つのビート信号の差分に対応する変位の算出を行う演算手段を備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、偏光ビームスプリッタは、1/4波長板を一体化して備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、測定ミラーは、被測定物の端面をミラー化して兼用して備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、2つの反射ミラーは、測定光路の測定ビームの一部を反射するように同一形状でかつ測定光路の光軸に対して同等位置に配置して備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、反射ミラーと測定ミラーの間に位置し、測定ビームを集光して測定ミラーに照射するレンズを備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、レンズは、入射面の一部に反射ミラーを形成して備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、レンズは、光軸を中心に同心円状に反射ミラーを形成して備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、レンズは、周辺部に光軸を中心の同心円状に反射ミラーを形成して備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、演算手段は、測定ミラーと反射ミラーからの反射光束を2分割するビームスプリッタを備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、演算手段は、反射光束から2つの測定ミラーによる干渉光を選択的に透過させる開口と、開口を透過する干渉光強度を電気的に検出する光検出器と、光検出器の出力からビート信号を生成する測定回路を備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0023】
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、演算手段は、反射光束から2つの反射ミラーによる干渉光を選択的に透過させる開口と、開口を透過する干渉光強度を電気的に検出する光検出器と、光検出器の出力からビート信号を生成する測定回路を備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項1から11のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、演算手段は、2つの測定回路の生成するビート信号の差分に対応する変位の算出を行う演算回路を備えるヘテロダインレーザー干渉測長器であることを特徴とする。
【0025】
請求項13に記載の発明は、被記録媒体にトナーの記録画像を形成する画像形成装置において、被記録媒体に記録画像を形成する画像形成ユニットと、請求項1から12のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器を備える画像形成装置であることを特徴とする。
【0026】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の画像形成装置において、画像形成ユニットは、電子写真方式の作像プロセスでトナーの記録画像を形成する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、分解能を向上させてデッドパスの影響を排除して高精度の測長を行う小型で高品質の画像を形成するヘテロダインレーザー干渉測長器、及び、そのヘテロダインレーザー干渉測長器を備える画像形成装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器100の基本構成のブロック図である。
図1においては、レーザー光を用いて被測定物の変移を測定するヘテロダインレーザー干渉測長器100は、異なる周波数で偏光面が直交する2つの直線偏光レーザービームを発生するヘテロダインレーザー光源1と、ヘテロダインレーザー光源1からのレーザービームを2つの測定ビームに分離する偏光ビームスプリッタ2と、仮想直線101上に反対方向を向いて被測定物102に固定される2つの測定ミラー3、4と、測定ミラー3、4に対して仮想直線101に沿って測定ビームを導く2つの測定光路5、6と、各々の測定光路5、6中に配置される1/4波長板7、8と、1/4波長板7、8と測定ミラー3、4の間に位置し測定ビーム断面の一部を反射する2つの反射ミラー9、10と、測定ミラー3、4と反射ミラー9、10からの反射光束を2分割して測定ミラー3、4による干渉光強度のビート信号と反射ミラー9、10による干渉光強度のビート信号の2つのビート信号の差分に対応する変位の算出を行う演算手段11を備えている。
【0029】
ヘテロダインレーザー光源1からは、互いに周波数がわずかに異なり偏光面が直交する、2つの直線偏光出射ビームが出射され、偏光ビームスプリッタ2の中心点I(0)で2つの測定ビームに分割されて、それぞれが測定光路5と測定光路6とする。
測定光路5を通る測定ビームは、1/4波長板7を透過後、方向を変えるためのミラー103、104、105を経て、測定ミラー3へ導かれ、そこで反射されて逆の経路を通り、1/4波長板7を経て偏光ビームスプリッタ2へ戻る。
また、測定ミラー3の手前の所定位置に、測定光路5を通る測定ビームの一部を反射させる反射ミラー9が配置されており、測定光路5を通る測定ビームの一部は測定ミラー3に到達せず反射ミラー9で反射されて、1/4波長板7を経て偏光ビームスプリッタ2へ戻る。
【0030】
測定光路6を通る測定ビームは、1/4波長板8を透過後、測定ミラー4で反射され、1/4波長板8を経て偏光ビームスプリッタ2へ戻る。
測定光路5を通る測定ビームと同様に、測定ミラー4の手前の所定位置に、測定光路6を通る測定ビームの一部を反射させる反射ミラー10が配置されており、
測定光路6を通る測定ビームの一部は測定ミラー4に到達せず反射ミラー10で反射されて、1/4波長板8を経て偏光ビームスプリッタ2へ戻る。
偏光ビームスプリッタ2と2つの1/4波長板7と1/4波長板8は一体化することにより、調整作業等が軽減され高精度化と更に低コスト化される。
【0031】
測定光路5、6を通る測定ビームは一直線をなすように調整されており、2つの測定ミラー3、4は測定光路5、6を通る測定ビームの光軸に対し垂直に、かつ反対方向を向いた状態で可動測定物である被測定物102に設置して固定されている。
また反射ミラー9、10は、測定光路5、6を通る各々の測定ビームの一部を反射するように同一形状で、かつ測定光路5、6を通る測定ビームの光軸に対し同等位置に配置する。
また反射ミラー9、10の位置は、可能な限り測定ミラー3、4に近接させて配置されている。
上記の測定ミラー3、4および反射ミラー9、10としては、平面ミラーやコーナーキューブが使用される。
また測定ミラー3、4は可動測定物である被測定物102の端面そのものをミラーとして形成して兼用することで、調整作業等が軽減され高精度化と更に低コスト化することが出来る。
【0032】
反射ミラー9、10は、測定光路5、6を通る各々の測定ビーム光束の一部を反射させればよく、ミラー部分に反射膜パターンを形成したガラス板等を使用することが出来る。
測定光路5において、偏光ビームスプリッタ2の中心点I(0)から測定ミラー3までの距離、反射ミラー9までの距離を、それぞれ(MP1)、(DP1)とする。
同様に、測定光路6において、偏光ビームスプリッタ2の中心点I(0)から測定ミラー4までの距離、反射ミラー10までの距離を、それぞれ(MP2)、(DP2)とする。
測定ミラー3、4および反射ミラー9、10で反射した測定光路5、6の各々の測定ビームは、それぞれ2回1/4波長板7と1/4波長板8を通るので偏光面が回転し、偏光ビームスプリッタ2から出射ビームとは分離された後に、演算手段11によって測定ミラー3、4と反射ミラー9、10からの反射光束を2分割して測定ミラー3、4による干渉光強度のビート信号と反射ミラー9、10による干渉光強度のビート信号の2つのビート信号の差分に対応する変位の算出を行うようになっている。
【0033】
演算手段11は、測定ミラー3、4および反射ミラー9、10で反射した測定光路5、6の各々の測定ビームは、偏光ビームスプリッタ2から出射ビームとは分離された後に、ビームスプリッタ12を経て分岐された後、それぞれの測定光路5の開口13と測定光路6をミラー23で折り曲げて開口14を経て光検出器15、16に導かれる。
光検出器16の手前には、反射ミラー9、10からの反射光干渉状態を選択的に透過させる開口14が配置されており、光検出器16で干渉状態を電気信号に変換し、測定信号回路18でビート信号を検出して出力するが、測定信号回路18のビート信号は(DP1-DP2)に対応し、これは差動検出光学系におけるデッドパス量に相当する。
【0034】
同様に、光検出器15の手前には、測定ミラー3、4からの反射光干渉状態を選択的に透過させる開口13が配置されており、光検出器15で干渉状態を電気信号に変換し、測定信号回路17でビート信号を検出して出力するが、測定信号回路17のビート信号は(MP1-MP2)に対応し、これは差動検出光学系におけるデッドパスを含む測定対象である被測定物102の移動距離に相当する。
すなわち、デッドパスを含む測定対象の被測定物102の移動距離とデッドパス量が電気的に検出できているので、演算回路19が、測定信号回路17の出力と測定信号回路18の出力の差を算出し、差動検出光学系におけるデッドパス量を含まない測定対象の被測定物102の移動距離、(MP1-MP2)-(DP1-DP2)を得ることが出来る。
【0035】
演算回路19による、測定信号回路17の出力と測定信号回路18の出力の差の算出方法としては、測定信号回路18を基準ビート信号として用い、測定信号回路17のビート信号の差を求める方法や、ヘテロダインレーザー光源1から出射してビームスプリッタ20で分岐される直線偏光出射ビームを光検出器21で干渉状態を電気信号に変換して基準信号回路22で検出するビート信号を利用するようにして、測定信号回路17と測定信号回路18各々で基準信号回路22とのビート信号の差を求め、実際に(DP1-DP2)および(MP1-MP2)に相当するデータを算出してから、これらの差を演算する方法がある。
このヘテロダインレーザー干渉測長器100は、一例として直動ステージの移動量測定に応用できる。
【0036】
具体例として半導体用や光ディスクのパターン作製用の精密直動ステージに適用すれば、デッドパスの影響を受けることなく高精度にステージ移動量を計測しているので、ステージ送り制御の精度を高めることができ、作製パターンの精度を改善できる。
従って、このヘテロダインレーザー干渉測長器100は、光学的差動検出構成で被測定物102の測長を行うと同時に、被測定物102に近接した部分に反射ミラー9、10を設置し、測定光路5、6の各々の測定ビームの一部でデッドパス測長も行って、最終的な測長結果からデッドバスの値を取り除いているので、分解能2倍であっても測長結果からデッドパスの影響を排除することができる。
【0037】
図2は、本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器100のレンズ24、25を備える基本構成のブロック図である。
図3は、本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器100の反射ミラー9、10を光束中心に形成するレンズ・反射ミラー一体素子の基本構成の正面と側面の拡大図である。
図4は、本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器100の反射ミラー9、10を周辺に形成するレンズ・反射ミラー一体素子の基本構成の正面と側面の拡大図である。
図2において、この実施例のヘテロダインレーザー干渉測長器100は、図1のヘテロダインレーザー干渉測長器100と比較して測定ミラー3、4が可動の被測定物102の端面そのものをミラー化して測定ミラー30、40が形成されて兼用しており、かつ測定光路5、6の各々の測定ビームを、レンズ24、25で集光して照射している点が異なり、他の部分については同一である。
なおここでは、測定ミラー3、4は被測定物102の端面そのものをミラー化して測定ミラー30、40とする例を取り上げたが、図1のヘテロダインレーザー干渉測長器100のように独立した測定ミラー3、4が被測定物102に設置して固定されていても差し支えない。
【0038】
レンズ24、25で測定光路5、6の各々の測定ビームを集光することにより、ヘテロダインレーザー光源1のビーム径よりも小さな測定ミラー3(30)、4(40)の面積しかとれない被測定物102や、測定ミラー3(30)、4(40)が曲面となっている被測定物102に対しても測定可能になる。
通常ヘテロダインレーザー光源1の出射ビーム断面は円形であり、加えてレンズ24、25も光軸に対して回転対称の物が多いため、レンズ24、25で測定光路5、6の各々の測定ビームを集光する場合は、反射ミラー9、10の形状として、光束中心もしくは周辺が反射するよう光軸に対して同心円状の反射ミラー形状が好都合である。
さらに反射ミラー9、10の位置として、反射面をレンズ24、25の入射面に配置させると、反射ミラー9、10の間隔を最大に取れるので好都合である。
【0039】
その場合、レンズ24、25の中心部分に平面ミラーの反射ミラー9、10を形成した図3に図示するレンズ・反射ミラー一体素子を利用すると、反射ミラー9、10の間隔が最大限確保できることに加え、レンズ24、25と反射ミラー9、10の位置調整を同時にできるのでより好適である。
反射ミラー9、10を光束中心に形成するレンズ・反射ミラー一体素子を備えるヘテロダインレーザー干渉測長器100では、測定光路5、6の各々の測定ビームを集光するレンズ24、25の入射面中心部に光軸に対し同心円状の平面ミラーの反射ミラー9、10を形成しているので、反射ミラー9、10の間隔が最大限確保され、前述の作用効果に加え、デッドパスの影響を最大限排除することができる。
さらにレンズ24、25と反射ミラー9、10の位置調整が同時に行えるので、取り扱いが容易になる。
【0040】
あるいは、レンズ24、25の周辺部分に平面ミラーの反射ミラー9、10を形成した図4に図示するレンズ・反射ミラー一体素子の利用も、同様に好適である。
反射ミラー9、10を周辺に形成するレンズ・反射ミラー一体素子を備えるヘテロダインレーザー干渉測長器100では、測定光路5、6の各々の測定ビームを集光するレンズ24、25の入射面周辺部に光軸に対し同心円状の平面ミラーの反射ミラー9、10を形成しているので、反射ミラー9、10の間隔が最大限確保され、前述の作用効果に加え、デッドパスの影響を最大限排除することができる。
さらにレンズ24、25と反射ミラー9、10の位置調整が同時に行えるので、取り扱いが容易になる。
【0041】
このようなレンズ24、25を備えるヘテロダインレーザー干渉測長器100は、たとえば回転ステージの回転振れ量測定に応用できる。
具体例として光ディスクのパターン作製用の精密ターンテーブルに適用すれば、デッドパスの影響を受けることなく高精度にターンテーブル回転振れを計測するので、パターン作製用のレーザービーム位置に回転振れ量をフィードバックして、振れのないトラックパターンを作るなど精度を改善できる。
従って、このヘテロダインレーザー干渉測長器100では、測定光路5、6の各々の測定ビームをレンズ24、25で集光して被測定物102に照射しているので、前述の作用効果に加え、測定光路5、6の各々の測定ビーム径よりも小さなビーム反射面しか持たない被測定物102やビーム反射面が曲面の被測定物102も測長することができる。
【0042】
図5は、本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器100を備える画像形成装置200の基本構成図である。
図5において、画像形成装置200は、被記録媒体(P)に画像を形成する画像形成ユニット201と、画像形成ユニット201の上部には原稿画像読取装置202を配置している。画像形成ユニット201は、被記録媒体給送ユニット203の上に保持されている。
画像形成ユニット201は、電子写真方式の作像プロセスで利便性や汎用性に優れ高速で高品質のトナーの記録画像を被記録媒体(P)の記録用紙上に形成するようになっている。
【0043】
原稿画像読取装置202において、原稿台220に載置される原稿(O)は、図示しない駆動手段によって光源221と第1ミラー222が搭載される第1スキャナ223と、第2ミラー224と第3ミラー225が搭載される第2スキャナ226が図示の矢印(A)方向の右方向に移動し、このとき、原稿画像面が光源221により照明され、原稿画像が読み取り光学系227を介して光電変換素子228のCCDで読み取りが行われる。
原稿台220にセットされた原稿(O)の原稿画像が読み取り光学系227を介して光電変換素子228のCCDで読み取りが行われる第1スキャナ223と連動する第2スキャナ226の被測定物102は、ヘテロダインレーザー干渉測長器100によって変移が測定されて、正確な読み取り位置で常に高品質の原稿画像の読み取りが行われる。
【0044】
光電変換素子228によって読み取られた高品質の原稿画像は、画像形成ユニット201の書き込み装置212によってのドラム形状の感光体ドラム210上に結像される。
感光体ドラム210は、図示の矢印(B)方向の時計方向に回転し、この時帯電器211によって表面を一様に帯電され、その帯電面に書き込み装置212のレーザービームにより高品質の原稿画像が形成される。これによって感光体ドラム210上に静電潜像が形成され、この静電潜像は現像装置213によって高品質のトナー画像として可視像化される。
【0045】
一方、被記録媒体給送ユニット203から被記録媒体(P)の記録用紙が感光体ドラム210に向けて給送され、転写器214によって感光体ドラム210上の高品質のトナーの記録画像が被記録媒体(P)に転写される。
この被記録媒体(P)は定着装置215を通り、表面に転写された高品質のトナーの記録画像が被記録媒体(P)上に定着され、ついで被記録媒体(P)は排出トレイ216に排出されて収納される。感光体ドラム210上に残留するトナーは、クリーニングユニット217によって除去されて次工程に備えられる。
従って、分解能を向上させてデッドパスの影響を排除して高精度の測長を行う小型で高品質の画像を形成するヘテロダインレーザー干渉測長器100を備える画像形成装置200を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器の基本構成のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器のレンズを備える基本構成のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器の反射ミラーを光束中心に形成するレンズ・反射ミラー一体素子の基本構成の正面と側面の拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器の反射ミラーを周辺に形成するレンズ・反射ミラー一体素子の基本構成の正面と側面の拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態例にかかるヘテロダインレーザー干渉測長器を備える画像形成装置の基本構成図である。
【図6】従来のヘテロダインレーザー干渉測長器の基本構成のブロック図である。
【図7】従来の分解能を向上させるレーザー干渉測長器の基本構成のブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ヘテロダインレーザー光源
2 偏光ビームスプリッタ
3、4 測定ミラー
5、6 測定光路
7、8 1/4波長板
9、10 反射ミラー
11 演算手段
12 ビームスプリッタ
13、14 開口
15、16 光検出器
17、18 測定信号回路
19 演算回路
20 ビームスプリッタ
21 光検出器
22 基準信号回路
23 ミラー
24、25 レンズ
30、40 測定ミラー
100 ヘテロダインレーザー干渉測長器
101 仮想直線
102 被測定物
103、4、5 ミラー
200 画像形成装置
201 画像形成ユニット
202 原稿画像読取装置
203 被記録媒体給送ユニット
210 感光体ドラム
211 帯電器
212 書き込み装置
213 現像装置
214 転写器
215 定着装置
216 排出トレイ
217 クリーニングユニット
220 原稿台
221 光源
222 第1ミラー
223 第1スキャナ
224 第2ミラー
225 第3ミラー
226 第2スキャナ
227 読み取り光学系
228 光電変換素子
1000 ヘテロダインレーザー干渉測長器
1001 ヘテロダインレーザー光源
1002 偏光ビームスプリッタ
1003 基準ミラー
1004 測定ミラー
1005 基準ビーム
1006 測定ビーム
1007、8 1/4波長板
1009 光検出器
1010 測定信号回路
1019 演算回路
1020 ビームスプリッタ
1021 光検出器
1022 基準信号回路
2000 ヘテロダインレーザー干渉測長器
2001 被測定物
2002、3、4 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を用いて被測定物の変移を測定するヘテロダインレーザー干渉測長器において、
異なる周波数で偏光面が直交する2つの直線偏光レーザービームを発生するヘテロダインレーザー光源と、
前記ヘテロダインレーザー光源からのレーザービームを2つの測定ビームに分離する偏光ビームスプリッタと、
仮想直線上に反対方向を向いて被測定物に固定される2つの測定ミラーと、
前記測定ミラーに対して前記仮想直線に沿って測定ビームを導く2つの測定光路と、
各々の前記測定光路中に配置される1/4波長板と、
前記1/4波長板と前記測定ミラーとの間に位置し、測定ビーム断面の一部を反射する2つの反射ミラーと、
前記測定ミラーと前記反射ミラーからの反射光束を2分割して前記測定ミラーによる干渉光強度のビート信号と前記反射ミラーによる干渉光強度のビート信号の2つのビート信号の差分に対応する変位の算出を行う演算手段と、
を備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項2】
請求項1に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記偏光ビームスプリッタは、前記1/4波長板を一体化して備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記測定ミラーは、被測定物の端面をミラー化して兼用して備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記2つの反射ミラーは、前記測定光路の測定ビームの一部を反射するように同一形状でかつ前記測定光路の光軸に対して同等位置に配置して備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記反射ミラーと前記測定ミラーの間に位置し、測定ビームを集光して前記測定ミラーに照射するレンズを備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項6】
請求項5に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記レンズは、入射面の一部に前記反射ミラーを形成して備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項7】
請求項6に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記レンズは、光軸を中心に同心円状に前記反射ミラーを形成して備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項8】
請求項6に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記レンズは、周辺部に光軸を中心の同心円状に前記反射ミラーを形成して備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記演算手段は、前記測定ミラーと前記反射ミラーからの反射光束を2分割するビームスプリッタを備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記演算手段は、反射光束から前記2つの測定ミラーによる干渉光を選択的に透過させる開口と、前記開口を透過する干渉光強度を電気的に検出する光検出器と、前記光検出器の出力からビート信号を生成する測定回路を備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記演算手段は、反射光束から前記2つの反射ミラーによる干渉光を選択的に透過させる開口と、前記開口を透過する干渉光強度を電気的に検出する光検出器と、前記光検出器の出力からビート信号を生成する測定回路を備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器において、
前記演算手段は、前記2つの測定回路の生成するビート信号の差分に対応する変位の算出を行う演算回路を備えることを特徴とするヘテロダインレーザー干渉測長器。
【請求項13】
被記録媒体にトナーの記録画像を形成する画像形成装置において、
被記録媒体に記録画像を形成する画像形成ユニットと、
請求項1から12のいずれか1項に記載のヘテロダインレーザー干渉測長器と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像形成装置において、
前記画像形成ユニットは、電子写真方式の作像プロセスでトナーの記録画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−327819(P2007−327819A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158385(P2006−158385)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】