説明

ポリアミド樹脂およびそれを用いた組成物、接着剤、接着剤シートおよびプリント回路基板

【課題】低温接着が可能で、接着性と耐熱性に優れた、特に回路基板に有用な接着剤組成物及び接着シートを提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度が80℃以上、対数粘度が0.15dl/g以上、引っ張り弾性率が1500MPa以下のポリアミド樹脂であって、該ポリアミド樹脂のアミン成分またはイソシアネート成分にイソホロン及び/またはジシクロヘキシルメタン残基を含有することを特徴とするポリアミド樹脂およびそれから得られる接着剤、接着剤シートおよびプリント回路基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリアミド樹脂およびそれを用いた組成物、接着剤、接着剤シートおよびプリント回路基板に関する。更に詳しくは低沸点溶剤に溶解する接着剤組成物を用いるため作業性に優れるプリント回路板に好適なポリアミド樹脂および耐熱性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、耐熱性接着剤としてはポリイミド系樹脂やエポキシ樹脂等を主成分とする材料が用いられてきたが、これらの樹脂を用いるに於いていくつかの問題があった。
その一つが耐熱性と低温接着性の両立が挙げられる。一般に、ポリイミドは耐熱性に優れるが故に高温で接着させる強力な設備が必要であり、低温で接着できるエポキシ系接着剤は耐熱性に劣るという問題があった。
上記の低温接着性と耐熱性の両立についての具体的な方法がいくつか開示されている。例えば、耐熱性エポキシ樹脂、マレイミド樹脂を用いるなどの方法があるが、これらの樹脂はその硬化密度の高さから脆いため、用途が限られる。また、特許文献1には特定構造を有するポリエーテルイミドにエポキシ樹脂を配合させて低温接着性と耐熱性を両立させることが示されているが、その内容によれば接着時間を数分にしようとすれば200℃の接着温度が必要であり充分な低温接着性とは言い難い。一方、ポリアミド樹脂はナイロンー6やナイロンー66などをはじめ、成型材料や繊維、フィルム用に古くから知られているがこれらのポリアミド樹脂は溶剤に溶解しにくいため接着剤用途には応用できなかった。また、溶剤に溶解するポリアミド樹脂として特許文献2に開示されているが、弾性率が高く、伸度が低く脆いため接着剤には応用できないものであった。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−99280号公報
【特許文献2】特許第3381807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は耐熱性と低温接着性を兼ね揃えた接着剤組成物、特にフレキシブルプリント回路板、TAB等のプリント回路板に有用な接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
(1)ガラス転移温度が80℃以上、対数粘度が0.15dl/g以上、引っ張り弾性率が1500MPa以下のポリアミド樹脂であって、該ポリアミド樹脂のアミン成分またはイソシアネート成分にイソホロン及び/またはジシクロヘキシルメタン残基を含有することを特徴とするポリアミド樹脂。
【0006】
(2)ポリアミド樹脂がダイマー酸、ポリ(アクリロニトリルーブタジエン)、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコールの少なくとも1種を共重合されている前記(1)記載のポリアミド樹脂。
【0007】
(3)前記(1)または(2)記載のポリアミド樹脂から得られる接着剤。
【0008】
(4)前記(1)または(2)記載のポリアミド樹脂と、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンから選ばれた1種又は2種以上の混合溶剤を含有した耐熱性接着剤組成物。
【0009】
(5)前記(1)または(2)記載のポリアミド樹脂に、架橋剤を含有した耐熱性接着剤組成物。
【0010】
(6)架橋剤として多官能エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物の一種又は2種以上が配合されている前記(4)または(5)記載の耐熱性接着剤組成物。
【0011】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミド樹脂または耐熱性接着剤組成物から成形された接着剤シート。
【0012】
(8)前記(3)〜(7)のいずれかに記載の接着剤、接着剤組成物又はそのシートを用いたプリント回路基板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温で接着が可能で、金属やポリイミドフィルムへの接着性と耐半田性に優れた、特に回路基板に有用な接着剤組成物及び接着シート並びにを提供することができ、産業界に寄与すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は耐熱性及び低温接着性に優れたポリアミド樹脂及びこれに架橋剤を配合した耐熱性接着剤組成物及びこれを成形した接着剤シートであり、これらを用いたプリント回路板に関する。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は溶融重合または溶液重合法等公知の方法で製造することができる。
【0015】
本発明のポリアミド樹脂を溶融重合法により製造する場合は、ジカルボン酸成分とジアミン成分を直接混合、加熱攪拌しても良いし、予めジカルボン酸とジアミンから塩を形成させた水溶液を加圧、加熱しながら脱水重合させる方法でもよい。また、溶液重合する場合はジカルボン酸とジイソシアネートをN−メチルー2−ピロリドンやN,N’−ジメチルアセトアミド、N,N‘―ジメチルホルムアミドなどの極性溶剤中で加熱、攪拌して合成することができる。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂の製造に用いられる酸成分としては蓚酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレンーブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸 、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4‘−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられ、これらの中ではアジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸が溶解性や接着性の点から好ましく、更にその一部がジカルボキシポリブタジエンやジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)に置き換えられることが好ましい。
【0017】
また、本発明ポリアミド樹脂の耐熱性を向上させる目的で、上記ジカルボン酸の一部は多官能カルボン酸に置き換えることが可能である。例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロテトラカルボン酸またはこれらの無水物が挙げられ、これらの中では溶解性や価格の点からトリメリット酸またはその無水物が好ましく、その量はジカルボン酸中の50モル%以下が好ましい。50モル%を超えると溶剤溶解性が低下するため接着剤として用いることが困難になるためである。
【0018】
さらに、架橋性を向上させる目的で官能基を3個以上有する化合物を共重合することが可能である。例えばトリメシン酸等の多官能カルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等の水酸基を有するジカルボン酸、5−アミノイソフタル酸等のアミノ基を有するジカルボン酸、グリセリン、ポリグリセリン等の水酸基を3個以上有するもの、トリス(2−アミノエチル)アミン等のアミノ基を3個以上有するものが挙げられ、これらの中で反応性、溶解性の点から5−ヒドロキシイソフタル酸等の水酸基を有するジカルボン酸、トリス(2−アミノエチル)アミン等のアミノ基を3個以上有するものが好ましく、その量はジカルボン酸又はジアミンに対して20モル%以下が好ましい。20モル%を超えると架橋点が多くなりポリアミド製造時にゲル化したり、不溶物を形成したりする恐れがあるので好ましくない。
【0019】
ポリアミド樹脂の製造に用いられるジアミン(溶液重合の場合はジイソシアネート)としてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、1,4シクロヘキサンジアミン、1,3シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4―ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’―ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4―トリレンジアミン、2,6―トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミン及びこれらのジイソシアネートが挙げられ、これらの中では耐熱性、接着性、溶解性などから4,4’―ジアミノジフェニルメタン(ジイソシアネート)、イソホンジアミン(ジイソシアネート)等が好ましい。
【0020】
本発明ポリアミド樹脂には上記の酸成分とジアミン(ジイソシアネート)成分の他にジオール成分を共重合することができる。ジオール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリエステルジオール、カーボネートジオール等が挙げられ、これらの中では接着性、溶解性からポリエステルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコールが好ましい。
【0021】
本発明ポリアミド樹脂は回路基板用接着剤とするために、有機溶剤に溶解して用いられる。本発明のポリアミド樹脂が溶融重合法で合成される場合は、得られたポリマー固形のペレットまたはシートを下記に挙げられる溶剤に室温または加熱攪拌して溶解すればよい。また、本発明のポリアミド樹脂が溶液重合法で合成される場合は、重合溶液をそのまま溶液とすることもできるし、重合溶液をポリアミド樹脂とは混和しないが、その溶剤とは混和する溶液中に投入して凝固させ、洗浄、乾燥したポリマーを下記に挙げられる溶剤中に再溶解して用いることができる。
【0022】
本発明ポリアミド樹脂を溶解する溶剤としては、N−メチルー2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類などの1種または2種以上の混合溶剤が挙げられる。これらの中では溶解性と取り扱いの容易さからイソプロピルアルコール、エタノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0023】
本発明耐熱性接着剤組成物の用途は特に制限されないが、最も有用な用途はプリント回路板関連用接着剤であり、具体的にはポリイミドフィルムやポリエステルフィルム、ガラスーエポキシシート、フェノール樹脂シート等の絶縁基材に銅箔やアルミ箔等を張り合わせる接着剤、カバーレイフィルム用接着剤、回路基板の一部を補強板で強化する場合の接着剤、回路基板に直接半導体チップを搭載する場合の接着剤等が挙げられる。
いずれにしても近年の配線の高密度化や鉛フリー半田志向に対応するには本接着剤組成物に主たる成分として用いられるポリアミド樹脂は低温接着性と耐熱性及び接着強度を満足させる必要があり、このためにはガラス転移温度は80℃以上、対数粘度は0.15dl/g以上必要である。ガラス転移温度が80℃未満ではハンダやワイヤーボンドの温度に耐えないし、対数粘度が0.15dl/g未満では接着強度が不足する。また、本発明のポリアミド樹脂をフレキシブルプリント基板やTABなどの金属積層版やカバーレイフィルムに用いる場合、充分な接着性を確保するため及び積層体のカールを解消するためには引っ張り弾性率は1500MPa以下が好ましい。引張り弾性率が1500MPaを超えると、樹脂が硬く、脆いため充分な接着性が得られないことと、塗布、乾燥時のカールが発生するために好ましくない。
【0024】
本発明耐熱性接着剤には耐熱性を損なわない範囲で低温接着性や接着強度を向上させるために架橋剤を配合することができる。架橋剤として制限はないが、2官能以上の多官能のエポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられ、その配合量はポリアミドイミド樹脂100部に対して1〜40部、好ましくは3〜20部である。架橋剤が1部未満では低温接着性や接着強度の改良は見られず、40部を超えると耐熱性が低下したり脆くなるために好ましくない。
【0025】
本発明耐熱性接着剤組成物には、本発明の内容を損なわない範囲で無機、有機の顔料、染料、帯電防止剤、レベリング剤及びポリアミド樹脂以外の樹脂、例えばポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリウレタン等を適宜配合することができる。
【0026】
本発明耐熱性接着剤の使用方法の一つとして、ポリアミド樹脂溶液に架橋剤や添加剤などを配合した溶液を直接被着体に塗布、乾燥後もう一方の被着体と重ね合わせて加熱ロール又はヒートプレスにより圧着させ、必要により加熱硬化処理を行うことが挙げられる。
この場合、接着剤層中に溶剤が残ると接着加工時に発砲したり、耐熱性そのものが低下して好ましくない結果になる。
【0027】
もう一つの使用方法として、本発明の耐熱性接着剤組成物溶液をポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルム、シリコーンやワックス処理したポリエステルフィルや紙等の離型基材に塗布、乾燥して得られる接着剤フィルムやシートを2種類の被着体に挟み込み、加熱ロールやヒートプレスで加熱圧着、必要により硬化させることが挙げられる。
この場合も塗布法と同様、残溶剤のないシートを得るには低沸点溶剤に溶解したものを使用するのが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。
なお、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
・ ガラス転移温度
任意の厚みの幅3mmのフィルムをアイテイ計測制御(株)社製動的粘弾性測定装置DVA−220を用いて、周波数110Hzで動的粘弾性の測定を行い、その貯蔵弾性率の変曲点から求めた。
・ 対数粘度
乾燥した固形状ポリマー0.5gを100mlのNMPに溶解した溶液を30℃でウベローデ粘度管を用いて測定した。
・ 接着力
・ 銅張り積層板の調整
25μmのポリイミドフィルム(東レ製カプトン)の片面にポリアミド/硬化剤溶液を膜厚が20μmとなるように塗布し、60℃で5分、130℃で10分乾燥後、塗布面に18μmの圧延銅箔を重ねて、各ホ゜リアミト゛樹脂のガラス転移温度+30℃で30秒熱プレスを行い、更に200℃で30分熱処理を行った。
・ 補強板の調整
ポリプロピレンフィルムにポリアミド/硬化剤溶液を膜厚が20μmとなるように塗布し、60℃で5分、130℃で10分乾燥後、ポリプロピレンフィルムからはくりしてBステージ状の接着剤シートを作成した。これらの接着剤シートを0.3mmのアルミ板と上記銅張り積層板のポリイミドフィルム面との間に挟み、各ポリアミド樹脂のガラス転移温度+30℃で30秒熱プレスを行い、更に200℃で30分熱処理を行った。
・ 接着力の測定
上記方法で作成した銅張り積層板と補強板から幅10mmの短冊を作成して、室温で東洋ボールドウイン社製テンシロンを用いて、引っ張り速度200mm/分で剥離強度を測定した。
・ 引っ張り弾性率
ポリアミド樹脂溶液をポリプロピレンフィルムに膜厚が20μmとなるように塗布し、60℃で5分、130℃で10分乾燥した後ポリプロピレンフィルムから剥離して、金属枠に固定した後、ポリアミド樹脂のガラス転移温度−10℃の熱風オーブン中で約20時間乾燥したフィルムを作成した。これらのフィルムから幅10mmの短冊を作り、東洋ボールドウイン社のテンシロンを用いて、引張り速度200mm/分で測定した。
・ 耐半田性
接着力を測定した銅張り積層版と補強板を260℃の半田浴に60秒フロートさせたときの状態を観察した。
【0029】
<ポリアミド樹脂Aの製造>
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにセバチン酸(SA)0.49モル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)0.49モル、分子量3500のジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)(宇部興産CTBN1300×13)0.02モルとイソホロンジイソシアネート(IPDI)1.03モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにγ―ブチロラクトン(γ−BL)と共に仕込み、攪拌しながら150℃に昇温して約2時間、更に180℃に昇温して約5時間反応させた。得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は105℃、対数粘度は0.48dl/gであった。このポリマー溶液を攪拌している水中に投入して凝固させ、水洗、乾燥した後エタノールに固形分が25%となるように溶解した。この溶液をポリプロピレンフィルム上にキャストして100℃で約10分乾燥させて0.03mm厚みのフィルムを得た。このフィルムの引っ張り弾性率は1089MPaであった。
【0030】
<ポリアミド樹脂Bの製造>
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにアゼライン酸0.99モルと分子量3000のポリプロピレングリコール0.01モル、IPDI1.02モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにNMPと共に仕込み、攪拌しながら150℃に昇温して約2時間、200℃で約8時間反応させた。得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は108℃、対数粘度は0.45dl/gであった。ポリアミド樹脂Aと同じ方法で溶剤置換を行い、固形分濃度が25%となるようにイソプロピルアルコールに溶解した。この溶液から作成したフィルムの引っ張り弾性率は749MPaであった。
【0031】
<ポリアミド樹脂Cの製造>
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにセバチン酸0.95モル、分子量2000のポリエステルポリオール(アジピン酸/5−スルホナトリウムイソフタル酸/ネオペンチルグリコール/ヘキサンジオール=97/3/75/25モル)0.05モル、イソホロンジイソシアネート1.02モル、ジアザビシクロウンデセン0.01モルを固形分濃度が50%となるようにγ―BLと共に仕込み、攪拌しながら150℃に昇温して2時間、更に200℃に昇温して約5時間反応させた。得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は118℃、対数粘度は0.38dl/gであった。このポリアミド樹脂を水中に投入して凝固させ洗浄、乾燥した後イソプロピルアルコールに固形分濃度が25%となるように溶解した。この溶液から作成したフィルムの引っ張り弾性率は1260MPaであった。
【0032】
<ポリアミド樹脂Dの合成>
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにセバチン酸0.65モル、5−ヒドロキシイソフタル酸0.05モル、ダイマー酸0.3モル、イソホロンジイソシアネート1.03モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにγ―ブチロラクトンと共に仕込み、攪拌しながら150℃で2時間、更に180℃で3時間反応させた。得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は105℃、対数粘度は0.46dl/gであった。このポリアミド樹脂を水中に投入して凝固させ、洗浄、乾燥した後イソプロピルアルコール/テトラヒドロフランの等量混合溶剤に固形分濃度が25%となるように溶解した.この溶液から作成したフィルムの引張り弾性率は1258MPaであった。
【0033】
<ポリアミド樹脂Eの合成>
セバチン酸0.85モル、ダイマー酸0.15モルとイソホロンジアミン1モルを固形分濃度が50%となるようにイオン交換水に溶解して塩を形成させた溶液を加圧型オートクレーブに投入して攪拌しながら徐々に昇温し、加圧下230℃で3時間、水を除去しながら反応させた。得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は122℃、対数粘度は0.25dl/gであった。このポリアミド樹脂を固形分濃度が25%となるようにエタノール/トルエンの等量混合溶剤に溶解させた。この溶液から作成したフィルムの引張り弾性率は1420MPaであった。
【0034】
<接着剤組成物の製造1>
上記で製造したポリアミド樹脂A,B,C,D,E溶液100gにフェノールノボラック型エポキシ化合物(油化シェル製エピコート152)を5g配合して接着剤組成物a,b,c,d,eとした。
【0035】
<接着剤組成物の製造2>
ポリアミド樹脂A,B,C溶液100gに3官能イソシアネート化合物コロネートEH(日本ポリウレタン製)5g配合して接着剤組成物a’、b’、c’とした。
【0036】
<接着剤のシート化>
上記接着剤組成物a,b,c、d,eを50μmのポリプロピレンフィルムに塗布して、60℃で5分、120℃で5分乾燥した後剥離して膜厚20μmの接着シートa’’,b’’,c’’,d’’,e’’を得た。
【0037】
実施例1〜8
接着剤組成物a,b,c,d,e,a’、c’、d’を1oz電解銅箔に間隙100μmで塗布、60℃で5分、120℃で5分乾燥した後接着剤面にポリイミドフィルムを重ね合わせて180℃のロールラミネーターで張り合わせた後、ロールに巻いた状態でで220℃の窒素ガスオーブン中に10時間放置してフレキシブル銅張り積層板を得た。
【0038】
実施例9〜13
接着剤組成物bを用いて作成した銅張り積層板のポリイミドフィルム面に接着シートa’’,b’’,c’’,d’’,e’’各々を介して0.3mmのアルミ板製補強板を重ね合わせて、170℃のヒートプレスを用い、20kgf/cm2の圧力で20分間圧着した。その後同じ温度で加圧下、1時間熱処理を行った。
【0039】
比較例1
ポリアミド樹脂製造例Aにおいて原料の仕込みをセバチン酸0.55モル、CHDA0.55モル、CTBN1300×13を0.02モル、IPDI1.0モルとした以外は、ポリアミ樹脂製造例Aと同じ条件で製造した。得られたポリアミド樹脂Fの対数粘度は0.10dl/gと低く、自己支持のフィルムを形成しないためにガラス転移温度や引張り弾性率の測定はできなかった。
【0040】
比較例2、3
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツクチフラスコにアジピン酸0.5モル、イソフタル酸0.5モルとジフェニルメタン4,4’ジイソシアネート0.5モル、イソホロンジイソシアネート0.5モルを固形分濃度が50%となるようにNMPとともに仕込み、150℃で2時間、200℃で5時間反応させた。冷却後、固形分濃度が25%となるようにシクロヘキサノンで希釈した。得られたポリアミド樹脂Gのガラス転移温度は226℃で対数粘度は0.45dl/gであった。この樹脂溶液をポリエステルフィルム上にキャストして100℃で乾燥後、ポリエステルフィルムから剥離して金属製枠に固定して200℃で20時間乾燥して作成したフィルムの引っ張り弾性率は2640MPaであった。
このポリアミド樹脂の25%溶液100gにエピコート152を5g配合した接着剤組成物g及びそのシートg’’を用いて、実施例と同じ条件でフレキシブル銅張り積層板及び補強板張り合わせを行った。
【0041】
比較例3
ポリアミド樹脂Dの製造においてSAを0.5モル、タ゛イマー酸を0.5モルにした以外はポリアミド樹脂Dと同じ方法でポリアミド樹脂Hを製造した。得られた樹脂の対数粘度は0.33dl/g、ガラス転移温度は45℃であった。ポリアミド樹脂Dと同じ方法で作成したフィルムの引張り弾性率は664MPaであった。このポリアミド樹脂Hの25%溶液100部にエピコート154を5部配合した接着剤組成物h及び接着剤シートh’’を用いて、実施例と同じ条件でフレキシブル銅張り積層板及び補強版の貼合わせを行った。
【0042】
上記例の結果をまとめて表1に示す。
【表1】

* :EP152はエピコート152,CEHはコロネートEH
**:FCLは銅張り積層板のポリイミドフィルムと銅箔の接着強度
補強板はポリイミドフィルムとアルミ板の接着強度
【産業上の利用可能性】
【0043】
実施例の結果からも明らかなように本発明によれば、低温で接着が可能で金属やポリイミドフィルムへの接着性と耐半田性に優れているので、接着剤、接着剤シートおよびプリント回路基板などに好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が80℃以上、対数粘度が0.15dl/g以上、引っ張り弾性率が1500MPa以下のポリアミド樹脂であって、該ポリアミド樹脂のアミン成分またはイソシアネート成分にイソホロン及び/またはジシクロヘキシルメタン残基を含有することを特徴とするポリアミド樹脂。
【請求項2】
ポリアミド樹脂がダイマー酸、ポリ(アクリロニトリルーブタジエン)、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコールの少なくとも1種を共重合されている請求項1記載のポリアミド樹脂。
【請求項3】
請求項1または2記載のポリアミド樹脂から得られる接着剤。
【請求項4】
請求項1または2記載のポリアミド樹脂と、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンから選ばれた1種又は2種以上の混合溶剤を含有した耐熱性接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1または2記載のポリアミド樹脂に、架橋剤を含有した耐熱性接着剤組成物。
【請求項6】
架橋剤として多官能エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物の一種又は2種以上が配合されている請求項4または5記載の耐熱性接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂または耐熱性接着剤組成物から成形された接着剤シート。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載の接着剤、接着剤組成物又はそのシートを用いたプリント回路基板。

【公開番号】特開2008−45036(P2008−45036A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222248(P2006−222248)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】