説明

マスキング材料の除去

マスキング材料、例えば、フォトレジストを除去するための方法、およびマスキング材料を除去することによって形成される電子デバイスが示される。例えば、マスキング材料を除去するための方法は、マスキング材料を、セリウムおよび少なくとも1つの追加的な酸化剤を含む溶液と接触させる工程を含む。セリウムは塩に含まれてもよい。塩は硝酸セリウムアンモニウムであってもよい。少なくとも1つの追加的な酸化剤は、マンガン、ルテニウムおよび/またはオスミウム含有化合物であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してマスキング材料の除去、そしてより具体的にはセリウムを含む溶液を使用するマスキング材料の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストを含むレジストは、半導体デバイス製造の間に基板(例えば、半導体ウエハ)上にパターン層を形成するために使用される放射線感受性(例えば、光放射線感受性)の材料である。レジストをコーティングした基板の部分を放射線に露光した後、(ポジレジストに関しては)レジストの露光部分、または(ネガレジストに関しては)レジストの未露光部分のいずれかを除去すると、基板のその下層の表面が現れるが、基板の残りの表面はレジストによってコーティングされて保護されている。レジストは、より一般には、マスキング材料と呼ばれ得る。イオン注入、エッチングまたは堆積などの他の製造プロセスが、基板の被覆されていない表面および残存するレジスト上に実行されてもよい。他の製造プロセスを実行した後、残存するレジストは剥離作業で除去される。
【0003】
イオン注入において、ドーパントイオン(例えば、ホウ素、二フッ化ホウ素、ヒ素、インジウム、ガリウム、リン、ゲルマニウム、アンチモン、キセノンまたはビスマスのイオン)は、基板に向けて加速されて注入される。イオンは、基板の露光領域、ならびに残存するレジストに注入される。例えば、トランジスタのチャネル領域、ならびにソースおよびドレイン領域などの基板の注入領域を形成するために、イオン注入が使用されてもよい。また、低濃度ドープのドレインおよび二重拡散ドレイン領域を形成するために、イオン注入が使用されてもよい。しかしながら、レジストに注入されたイオンは、レジストの表面から水素を減少させ得、レジスト層の下層の部分(すなわち、レジスト層のバルク部分)より硬質な炭化層であり得る外層またはクラスト(crust)をレジストに形成させる。外層およびバルク部分は異なる熱膨張率を有し、そして異なる速度で剥離プロセスに反応する。高線量イオン注入レジストは、レジストの深刻な硬化またはクラスト形成を生じ得、外層およびバルク部分の間で比較的大きな差異、例えば、熱膨張率、溶解度、ならびに他の化学的および物理的特性における差異をもたらす。
【0004】
トランジスタの1種は、電界効果トランジスタ(FET)として知られている。FETは金属酸化物半導体FET(MOSFET)としても知られているが、MOSFETは金属ゲートの代わりにシリコンゲートを有するFETの誤称である。FETトランジスタは、ソース領域、ドレイン領域、ソース領域とドレイン領域との間のチャネル領域、チャネル領域上のゲート絶縁体、およびゲート絶縁体上のゲート電極を備える。非常に初期の技術による初期のFETでは、ゲート電極は典型的に金属を含んでいた。後の技術では、ゲート電極は典型的に半導体シリコンを(例えば、ポリシリコンの形態で)含んでいた。シリコンは、ゲート絶縁体として使用される二酸化ケイ素とシリコンとの相性が良いため、そしてFETおよびFETを含む集積回路を製造するために有用な高温にシリコンが耐えることができたために使用されていた。しかしながら、非常に最近の技術には、金属ゲート電極を再び使用しているものがある。金属は、ポリシリコンより低い電気抵抗を有するという利点を有し、したがって、信号伝搬時間を低減させる。さらにまた、トランジスタ寸法が従来技術の寸法よりも小型である非常に最近の技術において、ゲート誘電層を非常に薄く(例えば、1ナノメートル)することが必要である。非常に薄いゲート誘電層では、ポリシリコンゲート電極において、ポリデプリーション(poly depletion)と呼ばれる問題を生じ得、トランジスタのチャネル領域が反転時に、ゲート誘電体の次のゲートポリシリコン電極に空乏層が形成される。ポリデプリーションを避けるためには、金属ゲートが望ましい。通常、高誘電率(high−k)誘電体として知られている比較的高い誘電率のゲート絶縁体材料とともに、様々な金属ゲート材料が使用されてもよい。金属ゲート材料の例には、タンタル、タングステン、窒化タンタルおよび窒化チタン(TiN)が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の原理は、例えば、マスキング材料を除去するための方法、およびマスキング材料を除去することによって形成されるデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、マスキング材料を除去する方法は、マスキング材料を、セリウムを含む溶液と接触させることを含む。
【0007】
本発明の別の態様によると、マスキング材料を、セリウムを含む溶液と接触させて、マスキング材料を除去することによって、電子デバイスが形成される。
【0008】
本発明の追加的な態様によると、基板からフォトレジストを除去する方法は、フォトレジストを、セリウムを含む溶液と接触させる工程を含む。フォトレジストを溶液と接触させる前に、1平方センチメートルあたり約5×1014より多いイオンおよび/またはイオンがフォトレジストに衝突する前に約5000電子ボルト(5keV)より高い平均エネルギーを有するイオンで、フォトレジストがイオン注入されていることが仮定される。基板は窒化チタンを含む。
【0009】
本発明のさらに別の態様によると、基板からフォトレジストを除去することによって、電子デバイスが形成される。フォトレジストは、フォトレジストを、セリウムを含む溶液と接触させることによって除去される。フォトレジストを溶液と接触させる前に、1平方センチメートルあたり約5×1014より多いイオン、および/またはイオンがフォトレジストに衝突する前に約5keVより高い平均エネルギーを有するイオンで、フォトレジストがイオン注入されている。好ましくは、電子デバイスは窒化チタンを含む。
【0010】
本発明のさらに追加的な態様によると、電子デバイスを形成する方法は、窒化チタンを含む基板を形成する工程と、1平方センチメートルあたり約5×1014より多いイオン、および/またはイオンがフォトレジストに衝突する前に約5keVより高い平均エネルギーを有するイオンでフォトレジストをイオン注入する工程と、フォトレジストを、セリウムを含む溶液と接触させる工程とを含む。
【0011】
本発明の1つまたはそれ以上の実施形態によると、マスキング材料はレジストまたはフォトレジストを含み、そしてレジストまたはフォトレジストを除去するために使用される溶液は、硝酸セリウムアンモニウムを含む。
【0012】
本発明の一態様によると、マスキング材料を除去する方法は、マスキング材料を、セリウムと少なくとも1つの追加的な酸化剤とを含む溶液と接触させる工程を含む。
【0013】
本発明の別の態様によると、マスキング材料を、セリウムと少なくとも1つの追加的な酸化剤とを含む溶液と接触させて、マスキング材料を除去することによって電子デバイスが形成される。
【0014】
本発明の追加的な態様によると、基板からフォトレジストを除去する方法は、フォトレジストを、セリウムと少なくとも1つの追加的な酸化剤とを含む溶液と接触させる工程を含む。フォトレジストを溶液と接触させる前に、1平方センチメートルあたり約5×1014より多いイオンおよび/またはイオンがフォトレジストに衝突する前に約5000電子ボルト(5keV)より高い平均エネルギーを有するイオンで、フォトレジストがイオン注入されていることが仮定される。好ましくは、基板は窒化チタンを含む。
【0015】
本発明のさらに別の態様によると、基板からフォトレジストを除去することによって、電子デバイスが形成される。フォトレジストは、フォトレジストを、セリウムと少なくとも1つの追加的な酸化剤とを含む溶液と接触させることによって除去される。フォトレジストを溶液と接触させる前に、1平方センチメートルあたり約5×1014より多いイオン、および/またはイオンがフォトレジストに衝突する前に約5keVより高い平均エネルギーを有するイオンで、フォトレジストがイオン注入されている。好ましくは、電子デバイスは窒化チタンを含む。
【0016】
本発明のさらに追加的な態様によると、電子デバイスを形成する方法は、窒化チタンを含む基板を形成する工程と、1平方センチメートルあたり約5×1014より多いイオン、および/またはイオンがフォトレジストに衝突する前に約5keVより高い平均エネルギーを有するイオンでフォトレジストをイオン注入する工程と、フォトレジストを、セリウムと少なくとも1つの追加的な酸化剤とを含む溶液と接触させる工程とを含む。
【0017】
本発明の1つまたはそれ以上の実施形態によると、マスキング材料はレジストまたはフォトレジストを含み、そしてレジストまたはフォトレジストを除去するために使用される溶液は、硝酸セリウムアンモニウムと少なくとも1つの追加的な酸化剤とを含む。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、例えば、イオン注入が実施され、それによって、硬質なまたは溶解が困難なシェルがレジスト上に形成されるレジストの実質的に完全な除去を提供する。本発明の追加的な実施形態は、例えば、高線量イオン注入が実施されたレジストを剥離する湿潤のみの方法(wet-only method)(例えば、高線量イオン注入剥離またはHDIS)を提供する。この湿潤のみの方法は、あらゆるプラズマに関連する工程またはあらゆる真空に関連する工程の使用を必要としない。
【0019】
本発明のこれらおよび他の特徴、目的および利点は、添付の図面と関連して読まれるべきそれらの実例となる実施形態の以下の詳細な記載から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の典型的な実施形態によって、基板からマスキング材料を除去する方法を示す。
【図2】本発明の典型的な実施形態によるマスキング材料除去法を使用して処理されたウエハのX線光電子分光法(XPS)分析の結果を示す。
【図3】本発明の典型的な実施形態によるマスキング材料除去法を使用して処理されたシリコン−オン−インシュレータ(SOI)ウエハの断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4】本発明の典型的な実施形態によるマスキング材料除去法を使用して処理されたシリコン−オン−インシュレータウエハのXPS分析の結果を示す。
【図5】本発明の典型的な実施形態によるマスキング材料除去法を使用して処理された、パッケージされた集積回路の断面図を示す。
【図6】マンガンを含むセリウム含有溶液、およびマンガンを含まないセリウム含有溶液を使用する、様々な位置での試験ウエハのクリーニングを示す。
【図7】希釈CAN溶液を使用する、様々な位置での試験ウエハのクリーニングを示す。
【図8】1.002:1のNH対TFAの比率を有する溶液を使用するマスキング材料除去の範囲を示す。
【図9】3.826:1のNH対TFAの比率を有する溶液を使用するマスキング材料除去の範囲を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の原理は、実例となるレジストを除去する方法と関連して、本明細書に記載される。しかしながら、実例として示されて、本明細書に記載される具体的な方法およびデバイスに、本発明の原理が限定されないことは認識されるべきである。むしろ、本発明の原理は、マスキング材料の除去の技術を広く対象とする。この理由から、示された実施形態に本発明の範囲内である数多くの修正を行うことができる。すなわち、本明細書に記載される具体的な実施形態に関する限定は意図されないか、または推測されるべきではない。
【0022】
イオン注入は、ドーパント材料のイオンを、通常固体である標的材料に注入することができるプロセスである。イオン注入された材料の物理的特性は、通常、注入前の標的材料の物理的特性と異なる。イオン注入は、半導体デバイス製造において、例えば、集積回路およびシリコン半導体デバイスの製造において使用される。注入されたイオンは、標的とは異なる元素であるイオンのため、標的において化学変化を導入し得るか、または生させ得、そして/あるいはイオン注入によって標的が変性され得るか、もしくはダメージを受け得るか、もしくはさらに破壊され得る構造変化を導入し得るか、または生じさせ得る。例としてのみ、半導体製造において注入される種に典型的に使用される元素としては、ホウ素、二フッ化ホウ素、ヒ素、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、ビスマス、キセノン、リンおよびアンチモンが含まれる。ホウ素は、シリコン中に「正孔」(すなわち電子空孔)を提供するか、または生じさせるため、シリコンのp型ドーパントである。ヒ素は、シリコン中で余分の電子を提供するか、または生じさせるため、シリコンのn型ドーパントである。真性シリコンに注入されたホウ素およびヒ素などのドーパントによって、真性シリコンは半導体として導電性となり得る。1種またはそれ以上のドーパント材料が標的材料に注入されてもよい。
【0023】
イオン注入は、通常、線量およびエネルギーによって特徴づけられる。線量は、標的材料の面積あたり注入されるイオンの数である。エネルギーは、注入されているイオンのエネルギーである。より先進の半導体加工または製造技術では、典型的に、以前の技術よりも高線量および/または高エネルギーが使用される。高線量イオン注入(HDII)において、イオン線量は約5×1014イオン/cmより大きくてもよく、そして/またはイオンの平均エネルギーは、イオンが標的または基板に衝突する前に、約5000電子ボルト(keV)から100keV超までであってもよい。
【0024】
フォトレジストを含むレジスト(より一般に、マスキング材料)は、表面、例えば、基板または標的の表面上にパターンコーティングを形成するために使用される放射線感受性材料である。レジストは、半導体デバイス、例えば、集積回路およびシリコン半導体デバイスの製造に使用される。半導体デバイスの製造におけるレジストの使用の1つは、半導体基板へのドーパントの選択的イオン注入のためのマスクとしてである。レジストの層は、半導体基板の表面に、または半導体層上の絶縁体層などの基板上もしくは基板内の層の表面に適用される。レジストの一部は、放射線に露光される。そのようなレジストの部分は、注入される半導体の領域(ポジレジスト)、または注入されない半導体の領域(ネガレジスト)のいずれかに相当する。次いで、レジストは、レジストの所望の部分のみが残るようにレジストの一部を除去するのに役立つ現像剤に暴露される。ポジレジストは、放射線に露光されるレジストの部分がレジスト現像剤に可溶性となり、そしてそれによって除去される種類のレジストである。未露光であるレジストの部分は、レジスト現像剤に不溶性であり、そしてレジスト現像剤によって除去されない。ネガレジストは、放射線に露光されるレジストの部分がレジスト現像剤に不溶性となり、そしてフォトレジスト現像剤によって除去されない種類のレジストである。放射線に未露光であるレジストの部分は、レジスト現像剤に可溶性であり、そしてレジスト現像剤によって除去される。レジストの可溶性部分は、レジスト現像剤によって溶解される。イオン注入は、レジストが放射線への露光によってパターン化され、現像剤によって現像された後に生じる。レジストの残存する部分は、注入されたイオンが、レジストより下層の半導体または他の材料に達することを阻害する。レジストによって阻害されたイオンは、下層の基板の代わりにレジストに注入される。レジストによって被覆されていない半導体の部分は、イオン注入される。
【0025】
様々なレジストが感受性である放射線は、比較的広い範囲を包含する。例としてのみ、放射線は、紫外線光(例えば、約300〜400nm(ナノメートル))、遠紫外線光(DUV、例えば、約10〜300nm)、水銀蒸気ランプのG、HおよびI線(それぞれ、約436nm、404.7nmおよび365.4nm)、ならびにX線(例えば、約0.01〜10nm)の範囲内であってもよい。あるいは放射線は、電子ビーム(eビーム)放射線を含んでもよい。約193nmの波長を含むDUV光および約248nmの波長を含む光は、放射線にしばしば使用される。約193および248nmの放射線を含むリソグラフィー技術は、それぞれ、193nmリソグラフィーおよび248nmリソグラフィーと呼ばれている。
【0026】
レジストによって阻害された注入イオンの比較的高い線量および/または高いエネルギーのため、レジストは、イオンが衝突して、吸収されるレジストの外側部分または外側側面上でクラストまたは硬質のシェルを形成する。イオンを吸収するレジスト材料は、イオンによって硬化される。レジストに吸収されるイオンは、レジストによって、レジストの下層の半導体または他の材料に注入されることを阻害されたイオンである。レジスト硬化は、炭化、重合またはポリマー架橋から生じ得るか、またはそのように呼ばれ得る。具体的には、レジストの外側領域に貫通するイオンは、レジストの外側領域(例えばレジストの上面および側面)をクラストにさせ、そして外側領域付近のレジストの内側領域の化学結合を架橋させる原因となり得る。クラストは、レジスト剥離プロセスの間に除去するのが困難であることが知られている(例えば、クラストは、剥離するために使用されるいくつかの既知の溶媒に不溶性である)。イオンはレジスト材料に限定的な距離でのみ貫通するため、クラストは大部分がレジストの外側部分上で形成される。レジストの底面が注入された材料または基板によって被覆されているため、クラストはレジストの上部および側面表面に形成され得るが、底面部分またはレジストの内部部分には形成されない。典型的なレジストに関して、イオンが通常、主に下方向に発生されて注入されるので、上部クラストは側面クラストより厚い。レジストクラストの厚さは、注入されたイオンの線量およびイオン注入エネルギー次第である。クラストの内部または下層のレジスト材料、すなわち、イオンに一般に影響を受けないレジストの部分は、バルクレジストまたはバルクレジスト材料と呼ばれる。レジストの硬化またはクラスタ形成は、例えば、レジストの外側部分を、水中で、またはいくつかの他の水溶液中で(必ずしも他の全ての水溶液中または全ての有機溶媒中ではない)、不溶性、またはより可溶性でないようにさせる。
【0027】
レジスト材料は、それらが露光されることになっている光の波長または放射線の種類に合うように、しばしば調整される。そのようなレジスト材料は、レジスト材料のための露光波長に関して、または放射線の種類に関して、記載されてもよい。例えば、レジスト材料は、G線、I線、DUV(193nmおよび248nmの名称を含む)、X線、ならびにeビームと呼ばれてもよい。
【0028】
高線量イオン注入剥離(HDIS)は、HDIIを実施した露光レジストを剥離するプロセスである。いくつかのHDISプロセスとしては、プラズマプロセスおよび真空プロセスなどの乾燥プロセスが含まれる。
【0029】
HDISプロセスの特徴には、例えば、剥離速度、残留物の量、および基板、シリコン基板またはシリコンより上の層などの曝露された下の層の損失が含まれ得る。残留物は、HDISの後に基板表面に見られる時がある。残留物は、例えば、HDIIの間のスパッタリング、レジストの外層の不完全な除去、および/またはレジスト中の注入されたイオンの酸化から生じ得る。最適には、剥離および任意のリンスの後、高収率を保証し、追加的な残留物除去プロセスの必要を排除するために、表面は実質的に残留物を含まない。追加的な残留物除去プロセスの例は、フォトレジストを除去するために名目上必要とされる時点を過ぎての剥離プロセスの延長のような、オーバーストリップである。オーバーストリップは、下層の機能的デバイス構造をいくらか除去する時がある。これは、特に、約32ナノメートル以下の極浅接合デバイス製造技術、および金属ゲートトランジスタ製造技術に関して、デバイス性能および収率に悪影響を与え得る。
【0030】
溶液は、2種以上の物質から構成される均一な混合物である。そのような混合物において、1種またはそれ以上の溶質が溶媒中に溶解されてもよい。溶液は、例えば、他の液体中に溶解された液体を含んでもよい。1種の化合物がもう1種の化合物に溶解する能力は、溶解度と呼ばれる。化合物の物理的特性は、他の化合物が添加される時に変化し得る。
【0031】
金属ゲートまたは金属ゲート電極の意味は、本明細書で使用される場合、金属を含むトランジスタのゲート電極(例えば、FET)を含む。金属は、他の材料と組み合わせられてもよい。金属ゲート中の金属には、限定されないが、Ti、Ta、W、Mo、Ru、Al、La、窒化チタン、窒化タンタル、炭化タンタル、炭化チタン、窒化モリブデン、窒化タングステン、酸化ルテニウム(IV)、窒化タンタルケイ素、窒化チタンケイ素、窒化タンタル炭素、窒化チタン炭素、チタンアルミナイド、タンタルアルミナイド、窒化チタンアルミニウム、窒化タンタルアルミニウム、酸化ランタン、またはそれらの組み合わせが含まれる。金属ゲートの具体的な一例は、窒化チタン(TiN)を含む。なお、TiNは、電子デバイスにおいて、例えば、シリコンと金属との接触の間のバリア金属として、そして電気導体として、他の用途を有する。金属ゲート材料として開示される化合物が、様々な化学量論を有し得ることは認識されるであろう。したがって、窒化チタンは、本明細書中、TiNとして表され、窒化タンタルは、本明細書にTaNとして表され、その他も同様である。
【0032】
灰化は、HDIIを実施しなかったレジストの典型的な除去プロセスである。灰化は、揮発によって、通常、酸化プラズマと相互に作用させて、レジストを除去するために、レジストを十分高い温度まで加熱することを伴う。灰化は、得られたレジストクラストが灰化プロセスに耐性を示すため、特にHDIIのためのイオン注入マスクとして使用されるレジスト材料を剥離するための、問題のある方法である。温度が上昇して、クラストの下または中の揮発性バルクレジストの圧力が増加することによって、バルクレジストがレジストクラストを突破するか、またはレジストクラストを通って「飛び出す(pop)」。そのような飛び出しによって、レジストクラストの断片がウエハの表面上に拡散し、ウエハ表面に強固に接着する。ウエハ表面からのレジストクラスト断片の除去は困難または不可能であり得、例えば、ウエハ基板内で形成されるデバイスの深刻な収率低下を生ずる。重要なことに、レジストクラストの除去は、飛び出しを防止するために十分低い温度で実行されなければならない。一般には、飛び出しを防止するために十分低い温度を使用することは、レジスト除去に必要とされる時間を延長し、ウエハスループット(すなわち、単位時間あたり処理されるウエハ)を低下させる。より薄い側面クラストがより厚い上部クラストの前に除去される場合、「バルクレジストアンダーカット」と呼ばれる問題が生じ得る。これによって、バルクレジストは、その時点で完全に除去されていない上部クラストの下で除去される。バルクレジストアンダーカットは、上部クラストの断片を自由にさせ、基板と接触させ得、基板に強く接着し、そして、例えば、基板内で形成されるデバイスの収率を低下させる。そのうえ、レジストクラストを含むレジストの、ウエハからの完全な、または実質的に完全な除去は、基板(例えば半導体またはシリコンウエハ)中または上で形成されるデバイスの容認できる収率を確実にするために必要とされる。
【0033】
上で概説されるように、レジスト剥離の3つの重要な態様は、(i)比較的低い温度(例えば、飛び出しを防止するのに十分低い温度)で剥離すること、(ii)容認できるウエハのスループットを可能にするように、比較的短時間のレジスト剥離、および(iii)基板表面からレジストの実質的に完全な除去である。レジスト剥離の第4の重要な態様は、レジスト剥離から生じ得る基板へのダメージまたは基板の一部の望ましくない除去に関する。そのようなダメージは、例えば、基板中または基板上で形成された構造およびデバイス(例えば、半導体ウエハもしくはシリコンウエハ中または上で形成されたトランジスタもしくは他の電子デバイス)を機能させなくするか、または十分に機能させなくするため、望ましくない。基板は、本明細書中、後の製造プロセスで材料層がその上に堆積されるシリコン、金属ゲートまたはそれらの組み合わせを含むものとして定義される。「シリコン」は、Si、多結晶Si、単結晶SiおよびSiGe、ならびに酸化シリコン、熱酸化物、SiOHおよびSiCOHなどの他のシリコン含有材料を含むものとして定義されてもよい。シリコンは、例えば、FETおよび集積回路などの電子デバイスのための基板の一部または基板として使用されてもよいシリコン−オン−インシュレータ(SOI)ウエハに含まれる。他の種類のウエハもシリコンを含んでもよい。基板材料へのダメージ、またはその除去の例としては、限定されないが、シリコンまたは窒化チタン(TiN)、例えば、半導体と金属との間のバリアに含まれるFETまたはTiNの金属ゲートに含まれるTiNへのダメージ、またはその除去が挙げられる。ダメージは、例えば、溶解(エッチング)、酸化物のような異なる固相への変換または両方の組み合わせを伴い得る。
【0034】
本明細書に記載されるような本発明の実施形態は、例えば、シリコンのブロックマスク、他の半導体技術および微小電気機械(MEM)技術として使用され得る、イオン注入後のレジストの有効な除去に関する。レジスト除去のための一般に知られているプロセスは、乾燥エッチング(例えば、プラズマエッチング、真空プロセス)および湿潤エッチング(例えば、化学エッチング)の組み合わせ、または硫酸および過酸化水素の混合物(SPM)などの硫酸ベースの化学物質を使用する湿潤エッチングのいずれかを伴う。現在使用されている多くの既知のレジスト剥離法の一般的な欠点は、イオン注入の後にウエハ表面上に存在するクラストが形成されたフォトレジストの不完全な除去を含む。半導体技術が進歩して、先進技術ノードでは、より高い線量およびより高いエネルギー準位でのイオン注入が必要とされるようになり、イオン注入阻害レジストのクラスト形成が増加する。加えて、乾燥エッチングまたはSPM浸漬を介するレジスト除去は、過剰なシリコンおよびドーパント損失を生じ、脆弱なシリコン構造へのダメージをもたらす可能性があることが示された。
【0035】
本発明の方法は、HDIIによって注入されている、例えば、約5×1014以上のイオン/cmおよび/または約5keVを上回るエネルギーによって注入されているレジストを剥離するために有用である。しかしながら、本発明の方法はそのように限定されることなく、5×1014未満のイオン/cmおよび約5keV未満のエネルギーによって注入されているレジストを剥離するために有用であり得る。本発明の方法は、eビーム、X線、ならびにG線、H線、I線DUV、約248nmおよび約193nmに相当する波長の光の種類の放射線の1種への露光を含む手順によってパターン化されたレジストを剥離するために有用であり得る。
【0036】
本明細書に記載されるような本発明の実施形態には、例えば、摂氏約90度(℃)未満の温度(例えば、約35〜90℃、および/または飛び出しを防止するために十分低い温度)、HDISを実行するために合理的な約80分未満の時間(例えば、約5〜75分)、レジストの実質的に完全な除去(例えば、約99%の除去)、基板材料への最小限のダメージもしくはダメージが全くないこと、、または基板材料の除去への最小限のダメージもしくはダメージが全くないこと(例えば、約50オングストローム未満のTiNの除去、シリコン損失が最小または全くないこと、およびSOIウエハの成分の限定的な酸化)を含むHDISのための方法が含まれる。本発明の方法によるHDISによって、例えば、溶液中、またはウエハに堆積された残存するレジスタもしくはレジスタクラスト残留物がほとんどないか、または全くないという結果になり得る。
【0037】
本明細書に記載されるような本発明の実施形態では、一般的な溶媒(例えば、水)中でレジストを可溶性にさせるために、イオン注入されたレジストと反応させる酸化化学を使用する。酸化化学は、例えば、酸化官能基または化学結合を含み得る。特に、レジストのクラスト形成部分またはポリマー含有部分は、完全にまたは実質的に可溶性にされる。
【0038】
本明細書に記載されるような本発明の実施形態は、さらに、高密度イオン注入レジストの剥離が可能なランタノイド元素セリウムまたはセリウムを含む塩を含有する安定した水溶液を提供する。
【0039】
本明細書に記載されるような本発明の実施形態は、限定されないが、32ナノメートル以下の技術として一般に既知の集積回路製造技術を含む多くの技術に関して有用である。
【0040】
本明細書に記載されるような本発明の実施形態は、例えば、FETなどの電子デバイスを形成するため、または注入されているソース、ドレインもしくはチャネル領域に、ドーパント(例えば、イオン注入ドーパント)が入ることを阻害することによって、FETのソース、ドレインおよびチャネル領域を形成するために使用されてもよい。本発明の実施形態は、例えば、導体となるか、または導体以外の領域となる領域をマスキングすることによって、導体を形成するために使用されてもよい。
【0041】
図1は、一般に、本発明の典型的な実施形態に従って、基板からマスクキング材料を除去するための方法100を示す。この方法は、HDISの方法であってもよい。方法100は、例えば、プラズマまたは真空プロセスを使わずに湿潤化学を伴ってもよい。方法100は、乾燥プロセス(すなわち、プラズマまたは真空プロセスを伴うプロセス)を伴わない、湿潤のみの方法と考えられてもよいが、さらなる乾燥プロセスが湿潤プロセスの前または後に考えられることは、当業者によって認識されるであろう。
【0042】
方法100の工程110は、基板を提供する工程を含む。基板は、その上またはその中に電子デバイスが形成される、ウエハ、例えば、半導体ウエハであってもよい。電子デバイスは、金属ゲート(例えば、Tiを含む金属ゲート)を含むFETを含むFETなどのトランジスタを含んでもよい。ウエハが提供される場合、例えば、ソース/ドレイン領域またはチャネル領域のイオン注入がウエハを提供する前に実施され得る場合、いくつかの電子デバイスは部分的に形成されてもよい。別の例としてのみ、TiN層の堆積は、ウエハ提供前に実施されていてもよい。マスキング材料は、ウエハ上面に接着し得る。マスキング材料は、レジスト材料、例えば、フォトレジスト材料を含んでもよい。マスキング材料は、マスキング材料によって被覆されていないウエハ部分のイオン注入の間にイオン注入(例えば、HDII)されていてもよい。マスキング材料のイオン注入によって、マスキング材料中に、硬化された、クラスト形成された、重合されたおよび/または炭化された外層の形成がもたらされ得る。マスキング材料の外層は、易溶性ではなく、例えば、以下に工程130および表1で記載されるリンスなどの、リンス中に易溶性ではない。
【0043】
方法100の工程120は、接着したマスキング材料を含む基板を溶液と接触させることを含む。溶液は、ランタノイド元素セリウムを含む。セリウムは、溶液中で使用される活性元素として開示されているが、セリウムと同一または同様の化学的特徴を有する元素を使用可能であることは理解されるべきである。例えば、他のランタノイド元素は、セリウムと同様の特徴のいくつかを有してもよい。ランタノイド元素は、一般に、原子番号57〜71の元素、すなわち、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムであることが知られている。
【0044】
溶液は、元素セリウムの少なくとも1種の塩または配位錯体を含んでもよい。セリウムの塩は、例えば、硝酸セリウムアンモニウムであってもよい。硝酸セリウムアンモニウムの化学式は、Ce(NH(NOまたは(NHCe(NOとして表され得る。硝酸アンモニウムセリウムは、CAN、硝酸セリウム(IV)アンモニウム、硝酸セリウムアンモニウム(ceric ammonium nitrate)および硝酸アンモニウムセリウムとしても知られている。CANは、本明細書で使用される場合、硝酸セリウムアンモニウムを指す。CANは、オレンジ色の水溶性の塩であり、酸化剤として使用されてもよい。使用されてもよい他のセリウム塩としては、限定されないが、硝酸セリウム、硫酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウム、重硫酸セリウム、過塩素酸セリウム、メタンスルホン酸セリウム、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム、塩化セリウム、水酸化セリウム、カルボン酸セリウム、セリウムβ−ジケトン、トリフルオロ酢酸セリウムおよび酢酸セリウムが含まれる。本発明のいくつかの実施形態において、溶液は2種以上の上記セリウムの塩を含んでもよい。好ましくは、セリウム塩は、硝酸セリウムアンモニウムを含む。セリウム塩の濃度の有効な範囲は、溶液の全重量に基づき、約0.01%〜約70重量%、好ましくは、約0.01%〜約30重量%である。
【0045】
特に、周囲温度(すなわち、約20℃より高くから25℃)より高い温度に保持された時、セリウム水溶液は加水分解して、時間が経過すると沈殿を生じる傾向があるため、溶液を安定させるために、安定剤として酸または他の化合物の添加を使用してもよい。セリウム塩の濃縮水溶液は、一般に安定であるが、70℃付近の高温で、加水分解および/または酸化還元反応のため、セリウム塩は沈殿を生じる。しかしながら、強酸性溶液において、そのような沈殿物は可溶性である。この理由から、溶液を安定させて、セリウムの沈殿を防止するか、または制限するために、CANは酸性または他の安定媒体中で調製されてもよい。安定剤は、例えば、溶液から沈殿物(例えば、CAN、または1種もしくはそれ以上のCAN成分の沈殿または沈殿物)を溶解することによって、沈殿を低減させるように作用する。例えば、20%CAN水溶液は大量の沈殿物を生じ得、そして約70℃で、比較的短時間である約30〜45分後に完全に不透明になる。同一CAN濃度および温度で、溶媒が約5.5%の硝酸および約74.5%の水を含む場合、24時間後でさえ沈殿物は実質的にない。
【0046】
考えられる安定剤としては、アンモニウム塩、強酸、弱塩基の塩およびそれらのいずれかの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。1種またはそれ以上の安定剤が使用されてもよい。例えば、溶液は、例えば、CAN中でアンモニウム化合物に加えて、アンモニウム塩をさらに含んでもよい。アンモニウム塩の添加は、溶液を安定させるために有益である。アンモニウム塩には、限定されないが、少なくとも1つの塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化アンモニウム(すなわち、アンモニア)、硫酸アンモニウム(NHSO、重硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム(NHClO)、トリフルオロ酢酸アンモニウム(ATFA)、メタンスルホン酸アンモニウム、カルボン酸アンモニウム、アンモニウムβ−ジケトネート、およびトリフルオロメタンスルホン酸アンモニウムが含まれる。例えば、CANのみに関しては1時間未満であることと比較して、約20%のCANおよび約12%の硝酸アンモニウムを含む水溶液は70℃で約2.5時間透明なままである。塩化アンモニウム(例えば、5%の濃度で使用される)は同様に作用するが、塩化物とCe(4+)との遅い反応により、貯蔵寿命に悪影響を及ぼす。一実施形態において、安定剤は、トリフルオロ酢酸アンモニウムを含む。例えば、4%のトリフルオロ酢酸アンモニウムを含有する20%CAN溶液は、70℃で約14時間透明なままである。CANおよび水(例えば、DI水)の調合物のための安定剤である他の化合物には、限定されないが、弱塩基と強酸との塩が含まれる。考えられる酸としては、1種またはそれ以上の硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、氷酢酸、過ヨウ素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸およびポリスルホン酸(例えば、ポリ(4−スチレンスルホン酸)が含まれるがこれらに限定されない。あるいは、または加えて、他の水溶性ポリマーが添加されてもよく、限定されないが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびポリマー酸が含まれる。ポリマー酸の例としては、ポリマレイン酸、ポリテトラフルオロスルホン酸、ポリ(エチレンマレイン)酸およびポリスチレンカルボン酸が含まれるがこれらに限定されない。これらの安定剤の濃度の有効な範囲は、溶液の全重量に基づき、約0.01%〜約60重量%、好ましくは、約0.5%〜約25重量%である。前記安定剤のいかなる組み合わせ、すなわち、アンモニウム塩のみ、強酸のみ、弱塩基の塩のみ、またはアンモニウム塩、強酸および弱塩基の塩の任意の組合せも考えられることは理解されるであろう。溶液がCANおよび過塩素酸を含む場合、溶液は、好ましくは、クロムフィルムをエッチングするために使用されない。
【0047】
都合よく、トリフルオロ酢酸アンモニウムは、アンモニアとトリフルオロ酢酸(TFA)とを組み合わせることによって、その場で生じさせることができる。TFAに対するアンモニアのモル比は、溶液の安定化を増加させるために多様であってもよい。例えば、NH対TFAのモル比が1:1を超える場合、溶液はより安定な傾向がある。好ましくは、NH対TFAのモル比は、約0.8:1より多くから約5:1まで、好ましくは、約2:1から約3:1までの範囲である。同時に、好ましくは、アンモニア対CANのモル比は、約1:1より多くから約2:1、好ましくは、約1.2:1〜約1.7:1の範囲である。当業者によって容易に決定されるように、これらの比率は例示的であり、マスキング材料を効果的に除去するために、必要に応じて多様であってもよいことは認識されるであろう。
【0048】
溶液は、他の溶質または溶媒をさらに含んでもよい。例えば、溶液は、溶媒として、脱イオン水(DI水)などの水(HO)をさらに含んでもよい。実施形態としては、溶液の全重量に基づき、約1重量%〜約40重量%のセリウム塩、および約60重量%〜約99重量%のDI水、好ましくは、約5重量%〜約35重量%のセリウム塩、および約65重量%〜約95重量%のDI水、さらに好ましくは、約10重量%〜約30重量%のセリウム塩、および約70重量%〜約90重量%のDI水、そして最も好ましくは、約15重量%〜約25重量%のセリウム塩、および約75重量%〜約85重量%のDI水を含む。溶液の典型的な調合物は、約20重量%のCANおよび約80重量%のDI水を含む。別の調合物が考えられ、例えば、CANと、酢酸、メタン硫酸、トリフルオロ酢酸、および他のフッ素化カルボン酸などの酸化耐性酸を含む酸性水溶液とを含む調合物である。酸化耐性溶媒は、調合物、例えば、スルホランおよびニトロメタンの一部としても考えられる。
【0049】
アンモニウム塩、他の溶質および溶媒、ならびに安定剤に加えて、セリウム溶液は、少なくとも1つの追加的な酸化剤をさらに含んでもよい。考えられる追加的な酸化剤は、少なくとも1種のルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、マンガン(Mn)およびオスミウム(Os)含有化合物を含む。例えば、酸化剤は、限定されないが、RuO、OsO、KMnO、NHMnO、RuCl、OsCl、Ru(NO、Os(NO、Mn(NO・xHO、MnCO、MnSO・xHO、Mn(C・xHO、MnCl、MnBr、およびそれらの組み合わせを含む。都合よく、Ce(IV)の存在下である場合、追加的な酸化剤種がその場で生じ得る。例えば、RuOは高価で毒性であるが、Ce(IV)の存在下で、その場で再生することができるため、低濃度のRuOおよびCe(IV)を使用することができる。さらに、Ce(IV)との反応によって、その場で酸化型、例えば、RuOを生じるため、より低い原子価のRu、IrまたはOs塩、例えば、RuClを使用することができる。同様に、低pHでのセリウムの存在下で、Mn(II)塩はMn(VII)塩、すなわち、過マンガン酸塩(MnO))に酸化され、これは組成物に存在する他の酸化剤、例えば、セリウムの酸化活性を高めるであろう。例えば、追加的な酸化剤は、Mn(NO)・xHO、MnCO、MnSO・xHOまたはそれらの組み合わせであることができ、Mn(II)イオンはCe(IV)の存在下でMn(VII)に酸化される。追加的な酸化剤、例えば、Mn(II)塩を含むことと関連した利点としては、2つの酸化剤の存在、そしてCe(IV)の存在下での、反応された過マンガン酸塩の再生が挙げられる。好ましい実施形態において、追加的な酸化剤は、Mn(NO・xHO、MnCO、MnSO・xHOまたはそれらの組み合わせを含む。特に好ましい実施形態において、追加的な酸化剤はMn(NO・xHOを含む。その場で強力な酸化剤を生じることが可能であり、剥離に関与することが可能な他の元素には、限定されないが、クロム(Cr3+塩として添加され、その場で、クロム酸塩または重クロム酸塩に酸化する)、バナジウム(VO2+塩として添加され、その場で、V5+に酸化される)、臭素(臭化物、例えば、臭化アンモニウムまたは臭化マンガンとして添加され、その場で、臭素酸塩(BrO3−)に酸化される)、およびヨウ素(例えば、ヨウ素酸アンモニウムとして添加することが可能であり、過ヨウ素酸塩に酸化される)が含まれる。高い酸化状態を直接、初期の溶液に添加することもでき、例えば、Crに関しては重クロム酸アンモニウム、Brに関しては臭素酸アンモニウム、Iに関しては過ヨウ素酸、そして活性酸素に関しては過硫酸アンモニウムとして添加する。添加剤の溶解度および溶解の容易さ、ならびに他のプロセス上の考慮すべき問題次第で、前記化合物をそのままの固体として、または水溶液として添加することができることは当業者によって認識されるであろう。
【0050】
加えて、本発明の溶液は、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、双性イオン性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤、好ましくは少なくとも1種の非イオン性界面活性剤をさらに含むことが可能である。例えば、そして好ましくは、適切な非イオン性界面活性剤としては、フルオロ界面活性剤、エトキシル化フルオロ界面活性剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、アルキルフェノールエトキシレート、ヒマシ油エトキシレート、脂肪酸エトキシレート、アルキルエトキシレート、アルキルフェニルエトキシレート、ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、フッ素化ポリエーテル、ならびに上記の少なくとも1種を含む組み合わせが含まれ得る。例えば、非イオン性界面活性剤は、Zonyl(登録商標)FSO-100またはFSN-100フルオロ界面活性剤(DuPont Canada Inc., Mississauga, Ontario, Canada)などのエトキシル化フルオロ界面活性剤、PLURONIC(登録商標)17R4または25R4(BASF)などのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、BRIJ(登録商標)35Pなどのポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、TRITON(登録商標)X-100などのアルキルフェノールエトキシレート、SURFONIC(登録商標)CO(Huntsmen Chemical, Texas, USA)などのヒマシ油エトキシレート、SURFONIC(登録商標)E-400 MO(Huntsmen Chemical, Texas, USA)、DYNOL(登録商標)604(Air Products)などの脂肪酸エトキシレート、POLYFOX(商標)PF-159(Omnova Solutions, Inc.)などのフッ素化ポリエーテル、およびそれらの組み合わせであってもよい。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、ZONYL(登録商標)FSO-100、FSN-100、PLURONIC(登録商標)17R4、PLURONIC(登録商標)25R4、BRIJ(登録商標)35P、SURFONIC(登録商標)CO-42、SURFONIC(登録商標)E-400 MO、POLYFOX(登録商標)PF-159およびそれらの組み合わせであってもよい。陰イオン性フルオロ界面活性剤も使用することができ、例えば、ZONYL(登録商標)URおよびZONYL(登録商標)FS-62(DuPont Canada Inc., Mississauga, Ontario, Canada)などのフルオロ界面活性剤、NOVEC(商標)4300(3M)などのフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム、CAPSTONE(商標)FS-10(DuPont)などのペルフルオロアルキルスルホン酸、エチルヘキシル硫酸ナトリウム(NIAPROOF(登録商標)08)などのアルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸アンモニウム、アルキル(C10〜C18)カルボン酸アンモニウム塩、スルホコハク酸ナトリウムおよびそれらのエステル、例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、アルキル(C10〜C18)スルホン酸ナトリウム塩、二陰イオン性スルホン酸塩界面活性剤、DowFax(The Dow Chemical Company, Midland, Mich., USA)、ならびにそれらの組み合わせである。加えて、本明細書中、非イオン性界面活性剤と陰イオン性界面活性剤との混合物が考えられる。
【0051】
本発明の溶液の実施形態には、(i)セリウム塩および溶媒を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(ii)セリウム塩、溶媒およびアンモニウム塩を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(i)セリウム塩、溶媒および酸を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(iv)セリウム塩、溶媒、アンモニウム塩および酸を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(v)セリウム塩、溶媒、酸および追加的な酸化剤を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(vi)セリウム塩、溶媒、酸およびマンガン(II)塩を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(vii)セリウム塩、溶媒、ATFAおよび追加的な酸化剤を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(viii)セリウム塩、溶媒、ATFAおよびマンガン(II)塩を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(ix)(vii)セリウム塩、溶媒、硝酸および追加的な酸化剤を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液、(viii)セリウム塩、溶媒、硝酸およびマンガン(II)塩を含むか、またはそれらからなるか、またはそれらから本質的になる溶液が含まれるがこれらに限定されない。
【0052】
有効であり得る溶液調合物には、約2%〜約70%のCANおよび溶媒を含む溶液が含まれるがこれに限定されない。溶媒の有効な例としては、約1%〜約55%の濃縮過塩素酸、約5%〜約60%の酢酸、約1%〜約50%の硝酸(HNO)、約1%〜約50%の硫酸、約1%〜約50%のメタンスルホン酸(CHSOH)、約1%〜約55%のトリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)、および/または約1%〜約55%のポリスルホン酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸)を含む溶媒組成物が含まれるがこれらに限定されない。溶液が1種のみ、または2種以上の酸を含んでもよいと考えられる。例としてのみ、基板は約10〜約75%のポリスルホン酸水溶液に浸漬されてもよい。使用されるポリスルホン酸の濃度は、水中で約10〜約50%濃縮ポリスルホン酸であってもよい。ポリスルホン酸は、例えば、ポリスチレンスルホン酸であってもよい。
【0053】
好ましい実施形態において、溶液調合物は、溶液の全重量に基づき、約10重量%未満、好ましくは約0.5%〜約8重量%、なおさらに好ましくは約1%〜約6%の範囲のCAN濃度まで希釈される。この「希釈溶液」には安定剤が実質的に含まれなくてもよく、あるいは安定剤が含まれてもよい。例えば、希釈溶液は、CANおよび水を含むことが可能であるか、またはそれらからなることが可能であるか、またはそれらから本質的になることが可能である。あるいは、希釈溶液は、CAN、少なくとも1種の安定剤および水を含むことが可能であるか、またはそれらからなることが可能であるか、またはそれらから本質的になることが可能である。有利には、希釈溶液は、より高濃度のCAN溶液を希釈することによって調製可能である。あるいは、希釈溶液は、水、例えば、必要に応じて、温水または沸騰水に固体CANを添加して、その中のCANの溶解を達成することによって調製することができる。「溶液」という用語がプロセスの記載に使用される場合、それは、希釈されていてもそうではなくても、本明細書に記載される溶液のいずれにも相当することが認識されるであろう。
【0054】
溶液中での基板の浸漬によって、基板を溶液と接触させてもよい。他の接触方法も考えられ、例えば、溶液による基板の噴霧、リンス、洗浄、および溶液中での基板の攪拌である。典型的に、特定の時間、基板を溶液と接触させる。基板を溶液と接触させるために、約5〜約60分間の時間が有効な時間の例である。
【0055】
レジストを剥離するプロセスは、スプレーバッチツールまたは単一ウエハ装置でも実行可能であり、後者は、任意の前処理および/または後処理工程のために窒素雰囲気下で低発火点溶媒を使用する選択肢を含むがこれに限定されないいくつかの利点を有する。より揮発性の酸化剤耐性成分をセリウム含有化合物と組み合わせることが可能であり、そしてプロセスを短縮するために、セリウム含有化合物処理工程の温度を100℃近くまで高めることができる。
【0056】
別の実施形態において、プロセスは、多数ウエハスプレーツール用に設計されてもよく、それによって、本明細書に記載の希釈溶液は、ウエハの大型バッチ(例えば、FSI's Zetaツール)上で経済的に霧噴霧される(例えば、1〜2リットル/分)。有利には、これは、マスキング材料の除去と関連する所有コストを低下させる。本明細書に記載のプロセスのさらに別の実施形態において、適度の加圧をかけることが可能な密閉チャンバーが使用されてもよい。より高温(例えば、130〜150℃)で操作され、非常に迅速であり、溶液およびプロセス時間の両方をさらに節約する同様のプロセスが開発され得る。
【0057】
溶液および/または基板は、特定の温度まで、もしくは特定の温度の範囲内で加熱されてもよく、そして/あるいは保持されてもよい。マスキング材料の飛び出しを防止するために、十分低い温度が好ましい。また他の考慮すべき問題は、温度範囲に対する上限、例えば、水の沸点が指示されてよい。約35〜90℃の温度は、工程120の性能に関する溶液の有効な温度の例である。
【0058】
溶液は、マスキング材料の実質的に全てとまではいかないが、少なくとも一部を除去し得る。最良のケースにおいて、溶液はマスキング材料の全て(100%)を除去し得る。基板および接着したマスキング材料を溶液に接触させることによって、マスキング材料の1種またはそれ以上の特徴が変更され得る。基板および接着したマスキング材料を溶液に接触させることによって、マスキング材料、特にマスキング材料の外側部分またはクラストは可溶性にされ得るか、または溶液との接触の前よりも可溶性にされ得る。例えば、マスキング材料は、液体もしくは工程130および表1(以下を参照のこと)のリンスに可溶性にされ得るか、またはより可溶性にされ得る。結果的に、工程130に記載されるリンスによって、マスキング材料が溶解され、マスキング材料の残存部分の全てまたはいくらかが除去され得る。リンスは、マスキング材料を追加的に、またはその代わりに、機械的に除去(例えば、フラッシュ、リンス、または洗浄)してもよい。
【0059】
方法100の工程130は、基板、および基板に接着した任意の残存するマスキング材料を、リンスと接触させる工程である。本発明の一実施形態において、工程130は工程120の後に実施される。リンスによって、基板表面から、残存するマスキング材料のいくらかまたは全てが除去される。好ましい実施形態において、リンスは、実質的に全ての残存するマスキング材料、あるいは基板中または基板上に形成される電子デバイスの合理的または所望の収率が可能となるように少なくとも十分な量の残存するマスキング材料を除去する。残存するマスキング材料は、全てもしくは一部の外側層および/または全てもしくは一部のバルク材料を含んでもよい。全てもしくは一部の外側層は、工程120によって、あらかじめリンスに可溶性にされている。
【0060】
リンス中で基板を浸漬することによって、基板をリンスと接触させてもよい。他の接触方法も考えられ、例えば、リンスによる基板の噴霧または洗浄、およびリンス中での基板の攪拌である。典型的に特定の時間、基板をリンスと接触させる。典型的な時間については、本方法の後述の実験の記載に示される。
【0061】
リンスおよび/または基板は、特定の温度まで、もしくは特定の温度の範囲内で加熱されてもよく、そして/あるいは保持されてもよい。約55〜約90℃の温度が有効である。
【0062】
リンスは、例えば、硫酸(HSO)、または硫酸および水(例えば、DI水)を含んでもよい。リンスは、単一のリンスまたは一連のリンス手順を含んでもよい。例えば、リンスは、水、硫酸または硫酸および水中での単一リンスを含んでもよい。一連のリンス手順の例は、最初に水でリンスし、続いて、硫酸、または硫酸および水でリンスし、任意に、続いて水中でもう1回リンスしてもよい。追加的なリンスが考えられる。リンス工程の間、最終リンスの後、および溶液と最初のリンスとの接触の間に乾燥を行ってもよい。窒素(N)を含む雰囲気下で乾燥を行ってもよい。
【0063】
好ましいプロセスにおいて、マスキング材料除去のプロセスは、基板の(例えば、希釈または濃硫酸による)プレリンス、基板と溶液(または希釈溶液)との接触、および基板の(例えば、希釈または濃硫酸による)後リンスを含む。あらゆるフォトレジストおよびCe含有粒子の最終的な除去に関して、希釈SCl溶液による短時間のリンスは任意である。様々な化学的リンスの間に、基板を脱イオン水でリンスする。
【0064】
本発明の一実施形態において、工程120および130は、全て、ほとんど全て、または実質的に全て(例えば、約100%)のマスキング材料を除去するのに十分である。プラズマ、プラズマエッチングまたは真空プロセスを伴う工程は必要とされないが、好ましい場合は使用されてもよく、これを当業者は容易に決定できる。
【0065】
本明細書に記載されるプロセスは、基板の少なくとも第1の部分上に形成された層内に含まれ、そしてドーパント材料の少なくとも第1の部分が基板の少なくとも第1の部分と接触することを阻害するマスキング材料を、基板から効果的かつ効率的に除去する。マスキング材料は、(i)約10〜約400ナノメートルの1種またはそれ以上の波長を含む光、(ii) X線放射線、および(iii)電子ビーム放射線の少なくとも1種に露光されるレジストを含む。好ましくは、ドーパント材料の第1の部分は、マスキング材料に注入されるイオンを含み、イオンは、ホウ素、三フッ化ホウ素、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、ビスマス、ヒ素、リン、キセノンおよびアンチモン少なくとも1種を含む。基板は、基板の第2の部分に注入されるイオンを含むドーパント材料の第2の部分をさらに含んでもよい。一実施形態において、プロセスは、溶液によるマスキング材料の少なくとも第1の部分の除去、およびマスキング材料を液体と接触させ、マスキング材料の第2の部分を除去することを含む。好ましくは、液体は、水、酸、および硫酸(HSO)の少なくとも1種を含む。
【0066】
本発明の別の実施形態において、リンスに加えて、ウエハおよびツールを粒子除去溶液と接触させ、Ce(IV)含有沈殿物を溶解および/または除去してもよい。リンス工程前、リンス工程後、またはリンス工程の前後に、粒子除去溶液をウエハに接触させてもよいことは、当業者に認識されるであろう。
【0067】
方法100は、少なくとも部分的に電子デバイス、例えば、FET、集積回路またはMEM、例えば、微小電気機械システム(MEMS)を形成するか、または製造する方法として考えられてもよい。例としてのみ、基板(例えば、基板は窒化チタンを含む)を形成すること、フォトレジストをイオン注入(例えば、HDII)すること、そしてフォトレジストを、セリウム(例えば、CAN)を含む溶液、またはセリウムと少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む溶液と接触させることによって、電子デバイスは形成されてもよい。
【0068】
MEMまたはMEMSは、微小製造技術による、一般的な基板(例えば、シリコンおよび/TiNを含む基板)上での、機械構成部品(例えば、スイッチ、センサまたは起動装置)、ならびに電子機器(例えば、トランジスタ、誘導子、レジスタ、電子メモリ素子、コンデンサおよび電子導体)の集積化によって製造されたデバイスである。微小機械部品は、例えば、選択的にシリコンウエハ部分をエッチングするか、または新規の構造層を添加するマイクロマシニングプロセスを使用して製造される。MEMは、一般に、相補型金属酸化物半導体(CMOS)IC技術と両立するプロセスを使用して、シリコン基板上で製造される。MEMの製造は、本発明の実施形態に従って、レジスト除去を含んでもよい。
【0069】
方法100および本発明の他の方法は、例えば、水または酸に可溶性のセリウム(IV)化合物から、時には水に不溶性であるセリウム(III)化合物への還元を含み得る。
【0070】
溶液の酸性度またはpHの制御によって、混合物または溶液中であるセリウム塩、および存在する場合、少なくとも1種の追加的な酸化剤の溶解度を制御する。酸性度またはpHは、例えば、以下の実施例2および3の溶液などの酸水溶液(すなわち、酸および水、ならびにセリウムを含む溶液)中の酸の量によって制御されてもよい。添加された酸がない場合でさえ、Ce(IV)の部分的な加水分解は低いpHを保証する。非常に高い酸濃度では、いくつかのゲート材料、例えば、TiNに過度のエッチングが生じる可能性があるため、典型的に、溶液のpHは、3未満、好ましくは2未満、最も好ましくは1未満であるが、0未満ではない。
【0071】
本発明の原理を、以下の非限定的な実施例によって、より完全に説明する。実施例中、百分率は重量による。
【実施例】
【0072】
実施例A
表1は、方法100の実施の4つの例を例示する。全ての実施例は、レジストが接着した基板からの、レジスト(すなわち、マスキング材料)の除去に関する。示された線量およびエネルギーで、レジストにヒ素イオン注入する。方法100の工程110は、レジストが接着した上記基板を提供することを含む。
【0073】
【表1】

【0074】
表1で示される全ての線量、エネルギー、溶液組成物、溶質組成物、温度および時間は近似値である。
【0075】
本発明の原理が、あらゆる正確な測定値または範囲に限定されていない点に注意することが重要である。したがって、本明細書に示される測定値および範囲は、当業者側であらゆる不相応な実験を必要とすることなく、本発明の溶液を形成する方法、およびそれを適用する方法に関して、実例として有益であるように意図される。したがって、本明細書に実例として提供されるもの以外の測定値および範囲は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0076】
実施例1において、方法100の溶液は、約20%のCANおよび約80%のDI水を含む。溶液を約70℃まで加熱した後、基板を溶液に約30分間浸漬する(すなわち、接触させる)。このような溶液中での浸漬は、方法100の工程120に含まれる。
【0077】
基板を溶液から除去し、DI水中での約30秒間の浸漬によってリンスし、そして窒素(N)含有雰囲気中で乾燥させる。このリンスは、方法100の工程130に含まれる。
【0078】
実施例2において、方法100の溶液は、約15%のCANおよび約85%の溶媒を含む。溶媒は、DI水中約10%の濃過塩素酸(HClO)を含む(すなわち、約10%の濃過塩素酸および約90%の水)。濃過塩素酸は、約70%の過塩素酸と、例えば、約30%の水を含む。溶液を約60℃まで加熱した後、基板を約30分間溶液に浸漬する。このような溶液中での浸漬は、方法100の工程120に含まれる。
【0079】
基板を溶液から除去し、そしてDI水中で約30秒間の浸漬によって、第1のリンス手順を実施する。次いで、基板を窒素含有雰囲気で乾燥させる。次いで、硫酸溶液を約19℃の温度に調節した後、約15分間の濃硫酸(すなわち、約96.5%の硫酸および約3.5%のDI水)中での浸漬を含む第2のリンス手順を基板に実施する。次いで、流DI水中での短時間のリンスを含む第3のリンス手順を基板に実施する。例としてのみ、流水は室温または室温付近であってもよく、そして第3のリンス手順の時間は約1分以内でもよい。次いで、基板を窒素含有雰囲気で乾燥させる。第1、第2および第3のリンス手順を含む、このようなリンスは、方法100の工程130に含まれる。
【0080】
実施例3において、方法100の溶液は、約20%のCANおよび約80%の溶媒を含む。溶媒は、DI水中約50%の氷酢酸(CHCOOH)を含む(すなわち、約50%の氷酢酸および約50%のDI水)。溶液を約70℃まで加熱した後、基板を約60分間溶液に浸漬する。このような溶液中での浸漬は、方法100の工程120に含まれる。
【0081】
基板を溶液から除去し、そしてDI水中で約30秒間の浸漬によって、第1のリンス手順を実施する。次いで、基板を窒素含有雰囲気で乾燥させる。次いで、硫酸溶液を約19℃の温度に調節した後、約15分間の濃硫酸(すなわち、約96.5%の硫酸および約3.5%のDI水)中での浸漬を含む第2のリンス手順を基板に実施する。次いで、流DI水中での短時間のリンスを含む第3のリンス手順を基板に実施する。例としてのみ、流水は室温または室温付近であってもよく、そして第3のリンス手順の時間は約1分以内でもよい。次いで、基板を窒素含有雰囲気で乾燥させる。第1、第2および第3のリンス手順を含む、このようなリンスは、方法100の工程130に含まれる。
【0082】
実施例4において、方法100の溶液は、約55%のCANおよび約45%のDI水を含む。溶液を約80℃まで加熱した後、基板を約15分間溶液に浸漬する。このような溶液中での浸漬は、方法100の工程120に含まれる。
【0083】
基板を溶液から除去し、DI水中での約30秒間の浸漬によってリンスし、そして窒素含有雰囲気中で乾燥させる。このリンスは、方法100の工程130に含まれる。
【0084】
TiNに及ぼすCAN化学の効果を測定するための実験を実施した。TiNはいくつかのFET、例えば、部分的に、本発明の実例となる方法を使用して形成されたFETの金属ゲートに含まれるため、TiNが選択された。この実験は、2つの温度で、様々な時間、CANの20%水溶液に、ウエハ上に堆積したTiNを暴露する工程と、ウエハおよびTiNがCANに暴露される前に、TiN層内に以前にチタンから形成されたチタン酸化物(TiO)層の厚さを測定する工程とを含んだ。残存するTiN層および残存するSiOxide層の厚さも測定した(すなわち、CAN中での浸漬の後に残存する厚さ)。
【0085】
【表2】

【0086】
上記の表2は、HDISとして使用されたCANの、TiNとの有利な相溶性を例示する実験結果を示す。この実験結果は、方法100の適用によって得られた。この場合、工程110は、約2000オングストロームの酸化シリコン(SiOxide)と、SiOxide層上に名目上(約)130オングストロームのTiN層とがコーティングされたシリコンウエハを提供する工程を含んだ。コーティングされて提供されたウエハを、最初のウエハと記載する。表2に示される全ての温度、時間および寸法は近似値である。
【0087】
工程120は、表中に示される時間および温度での、約20%のCANおよび約80%のDI水の溶液中でのウエハの浸漬を含んだ。工程130は、溶液中での浸漬後のDI水中でのウエハのリンス工程と、窒素を含む雰囲気での乾燥工程とを含んだ。CAN中での浸漬、リンス工程および乾燥工程の後、反射率測定によって、残存する層の厚さを測定した。表に示すように、残存する層は、TiOの上層と、CAN中での浸漬前の最初のTiN層の残存部分であるTiN層と、実質的にCAN中での浸漬前の最初のSiOxide層であるSiOxide層とを含む。対照ウエハは、CAN中に浸漬されなかった。対照ウエハに関して、厚さ約4オングストロームのTiO層が測定され、そして厚さ約110オングストロームのTiN層が測定された。測定された厚さ約4オングストロームのTiO層、およびTiN層の約130から約110オングストロームへの測定された厚さの見掛けの減少(すなわち、約20オングストロームの厚さの差)は、CANによるものではなく、他の原因を有し、例えば、TiNの酸化であり、CANまたは実験誤差によるものではない。原因がどうであれ、TiNに及ぼすCANの効果を算出する際に、CAN中での浸漬から得られたTiO層の測定された厚さから、対照ウエハの測定された約4オングストロームのTiO層厚さを差し引くことが合理的である。同様に、CAN中に浸漬されたウエハのTiN層と最初のウエハとの差から、約20オングストロームのTiN層厚さ差を差し引くことが合理的である。
【0088】
例えば、表中には、約60分間約85℃でCANに浸漬されたウエハ2に関して、TiN層の厚さは、対照ウエハの約80オングストロームから、約110オングストロームまで減少し、そして対照ウエハより約31オングストローム厚い厚さ約35オングストロームのTiO層が形成したことが示される。表に示されるTiN層およびTiO層の厚さは、HDIS剥離およびデバイス製造に関して容認できる。ここで使用されるものと同一のTiN試験片が一般的な湿潤レジスト剥離混合物(すなわち、硫酸および過酸化水素を含有する熱溶液)に浸漬される場合、全TiN層が1分未満でエッチングされることに留意することは重要である。これは確実に、本発明に開示される調合物に関する事例ではない。
【0089】
図2は、表2の対照ウエハおよびウエハ5のX線光電子分光法(XP)分析の結果を示す。線210は、対照、すなわち、CAN溶液に浸漬前のウエハを表す。線220は、浸漬後のウエハ5を表す。約458および449電子ボルト(EV)の結合エネルギーの間に中央があるピークは、最も多くは酸化チタン型の酸化されたチタン相当する。約456および457電子ボルトの結合エネルギーの間に中心がある肩として現れるピークは、窒化チタンに相当する。XPデータから、TiOの厚さは、約20〜30オングストローム以上であると定性的に算定することができる。XP分析からのこの結果は、反射率測定によって測定された、表2に示される実験結果と良く一致する。456および457EVの間に中央がある肩は線220にも見られ、方法100によるプロセスの後、TiNが上部TiO層の下になお存在することを示唆していることに留意することは重要である。
【0090】
以下の表3は、シリコンウエハの試料、シリコン−オン−インシュレータ(SOI)ウエハの部分、193nm感受性レジストでコーティングされたウエハの部分、およびTiNに及ぼす、CAN含む溶液によるプロセスの効果を示す。表3に示される全ての温度および時間は近似値である。
【0091】
示された時間および示された温度で、約20%のCANおよび約80%のDI水の溶液中での浸漬によって、試料を処理した。シリコンウエハ試料および193レジスト試料に関して、CAN溶液中での浸漬の後、室温(RT)または室温付近での約5分間の硫酸によるリンスを行った。浸漬および(実施する場合は)後リンスの試料の分析をXPによって行い、そしてシリコンウエハ試料に関しては、追加的に全反射X線蛍光分析(TXRF)によって行った。TiNの試料を除き、処理後の試料でセリウムは検出されなかった。TiNの試料に関しては、セリウムは、約5〜15分間の冷硫酸中での浸漬からなる第2部のレジスト剥離手順後に除去された。
【0092】
【表3】

【0093】
図3は、ウエハが約20%のCANおよび約80%のDI水の溶液に約30分間、約65℃で浸漬された後の走査電子顕微鏡(SEM)画像であって、SOIウエハ300の断面の層間の境界を強調するために、白線が描かれている。SOIウエハは、バルクシリコン基板330と、バルクシリコン基板330に接している二酸化ケイ素(SiO)の絶縁層320と、絶縁層320に接している上部シリコン層310とを含む。浸漬前、上部シリコン層310の厚さは名目上(約)70nmであった。浸漬後、SEMで測定した上部シリコン層310の厚さは約69.22nmである。したがって、CAN溶液中での浸漬後、SOIウエハ、またはSOIウエハ中に含まれる層の測定可能な薄化はない。
【0094】
図4は、図3に関して記載されたようにウエハがCAN溶液中に浸漬され後の、SOIウエハ300のXPS分析の結果を示す。約103および104電子ボルト(EV)の間に結合エネルギーを有する最も左のピークは、SiOに相当する。約99および101電子ボルトの間で結合エネルギーを有する最も右のピークは、Siに相当する。線410は、対照、すなわち、CAN溶液中での浸漬の前のウエハを表す。線420は、浸漬後のウエハを表す。
【0095】
本発明の少なくとも一部の技術、例えば、図1〜4に例示される技術は、1種またはそれ以上の集積回路で実施されてもよい。集積回路を形成する際に、ダイは、典型的に、半導体ウエハの表面上で繰り返されたパターンで製造される。個々のダイは、ウエハから切断されるか、または、さいの目形にされ、次いで、集積回路としてパッケージされる。当業者は、ウエハをさいの目形にして、ダイをパッケージし、集積回路を製造する方法を知っている。そのようにして製造された集積回路は、本発明の一部である。
【0096】
図5は、本発明の実施形態に従ってパッケージされた集積回路500を示す断面図である。パッケージされた集積回路500は、リードフレーム502と、リードフレームに取り付けられたダイ504と、プラスチックカプセル化型508とを備える。図5は、1種のみの集積回路パッケージを示すが、本発明はそのように限定されず、本発明は、あらゆるパッケージの種類に封入される集積回路ダイを含んでもよい。
【0097】
ダイ504は、本明細書に記載されるデバイス、例えば、本発明の方法によって形成されるFETまたは他の電子デバイスを含み、そして他の構造または回路を含んでもよい。例えば、ダイ504は、少なくとも1つの導体、MEMデバイス、FET、FETのソース、ドレインもしくはチャネル領域、またはFETのゲート導体を含んでもよく、その形成は、本発明の方法によるレジストの除去を含む。
【0098】
実施例B
本発明の溶液を使用して、バッチ法でレジストを除去するプロセスの実施形態を記載する。具体的には、マスキング材料を除去する方法が記載され、この方法は、マスキング材料を、(a)任意選択的な前処理と、その後のDI水リンス、(b)本明細書に記載されるセリウムを含む溶液と、その後のDI水リンス、(c)硫酸後処置、(d)DI水リンス、(e)希釈標準クリーン溶液1(SC−1)処理、(f)DI水リンス、および(g)IPA乾燥と接触させることを含む。任意選択的な前処理前(a)および後処理(c)の条件には、約20〜約70℃、より好ましくは約40〜約50℃の温度で、約5〜約45分の時間、硫酸、およびテトラグリムまたはガンマ−ブチロラクトンなどの溶媒を使用することが含まれる。使用する場合、硫酸の濃度は、好ましくは約80%〜約100%の範囲である。セリウム含有溶液(b)による処理と関連する条件は、本明細書に記載されており、当業者は容易に決定することができる。例えば、セリウム含有処理には、約15〜約90分間、約60〜約80℃の範囲の温度で、約15〜約25重量%のセリウム化合物濃度(例えば、約15〜約25重量%のCAN)を有する溶液を使用することが含まれる。希釈SC−1処理には、約1〜20分間、好ましくは約1〜約2分間の範囲の時間、約室温〜約50℃の範囲の温度が含まれる。希釈SC−1の例は、体積比で、濃アンモニア、濃HおよびDI水の1:1:40溶液である。各水リンスは、好ましくは、1〜10回のリンスサイクル、好ましくは、約3〜約5回のリンスサイクルを含む。
【0099】
単一ウエハツールまたはスプレーバッチツールに関して、流速、ジェット圧および機械力のような変数を使用して、剥離プロセスの速度を高めることができる。例えば、バッチ法に関して提供されたものと同じプロセスに従って、時間枠は下方端、またはより低くに設定され、例えば、任意選択的な前処理および後処理工程に関しては約0.5〜約1分、セリウム含有溶液処理に関しては約1分、希釈SC−1処理に関しては約0.5分とする。
【0100】
実施例C
次式に従って、強酸溶液中、Mn(II)は、十分に撹拌された溶液中でCe(IV)と非常に迅速に反応して、過マンガン酸塩Mn(VII)を形成する。
Mn(NO・4HO+5(NHCe(NO
10NHNO+4Ce(NO+Ce(NO(MnO)+8NHO
【0101】
反応した過マンガン酸塩は、有利には、Ce(IV)イオンによって再生するようである。
【0102】
注入エネルギー25keVで、1×1016/cmの線量でAsが注入されたレジスト試料を、20分間、65℃で調合物A〜Dと接触させ、続いて、室温で15分間、硫酸リンスを行う実験を実行した。特に、前処理工程は含まれなかったため、Mnの添加が影響を有するかどうかを観察するのは容易であろう。前処理工程は本明細書に考えられている。
調合物A:20重量%のCAN、3重量%の濃HNO、77重量%のDI水
調合物B:20重量%のCAN、3重量%の濃HNO、0.1重量%のMn(NO・4HO(約200ppm Mn)、76.9重量%のDI水
調合物C:20重量%のCAN、3重量%の濃HNO、0.3重量%のMn(NO・4HO、76.7重量%のDI水
調合物D:20重量%のCAN、3重量%の濃HNO、1重量%のMn(NO・4HO、76重量%のDI水
【0103】
マンガンの存在は、濃度に関係なく、特に調合物A単独では除去が困難なより大きい特徴のイオン注入されたレジストの剥離を改善することがわかった。実際に、調合物A中のわずか20ppmのマンガンでは、高密度注入レジストの剥離することに対して有利な効果を有するが、(光学的顕微鏡検査分析法に基づく)レジストの実質的に完全な除去を保証するためには、調合物A中少なくとも約60ppmのMnが好まれる。重要なことに、調合物A中60ppmのMnでのTiNエッチング速度は、Mnがない場合と同様であり、実験誤差範囲内であった。
【0104】
独自の高線量注入レジスト試料を、70℃で30〜60分間、調合物E〜Gと接触させ、続いて、40℃で10分間の硫酸リンスを行う、もう一組の実験を実行した。特に、前処理工程は含まれなかったため、Mnの添加が影響を有するかどうかを観察することは容易であろう。前処理工程は本明細書では考えられている。
調合物E:20重量%のCAN、4重量%のATFA、76重量%のDI水
調合物F:20重量%のCAN、4重量%のATFA、20ppmの、Mn(NO・4HOからのMn、残りはDI水
調合物G:20重量%のCAN、4重量%のATFA、60ppmの、Mn(NO・4HOからのMn、残りはDI水
【0105】
それぞれの場合、Mnを含む調合物は、Mnを含まない調合物もより効果的に残留物を除去した。
【0106】
実施例D
注入エネルギー25keVで、1×1016/cmの線量でAsが注入されたレジスト試料を、10分間、40℃で硫酸前処理と接触させ、続いて、50分間、70℃で調合物HおよびIと接触させ、続いて、10分間、40℃で硫酸リンスを行う実験を実行した。
調合物H:20重量%のCAN、6重量%のATFA、73重量%のDI水
調合物I:20重量%のCAN、6重量%のATFA、50ppmの、Mn(NO・4HOからのMn、残りはDI水
【0107】
試験領域は、クリーニングプロトコルに続いて光学的に画像化され、そして具体的な試験マスク位置のグレーディングに基づき、結果を報告した。各位置は異なる特性、例えば、間隔、厚さ、領域などを有する。結果を数値的に報告し、「10」は完全なクリーニングを意味し、「0」はクリーニングがないことを意味する。結果は図6に見ることができる。調合物Hが有効ではなかった位置で、調合物Iのマンガンの存在がウエハのクリーニングを実質的に改善したことがわかる。
【0108】
いくつかの補助酸化剤の予想外の副効用は、プロセス温度(70〜80℃)でのプロセス溶液の、沈殿に対する安定性の増加であった。様々なCAN+ATFA調合物に硝酸マンガン四水和物として添加された、50〜100ppmのMnの使用によって、最初の観察可能な混濁までの時間が10〜30%延長された。同様に、調合物Eへの200〜2000ppmの範囲のオルトペルヨウ素酸(HIO)の添加によって、最初の観察された混濁までの時間が、それぞれ、約10〜40%延長された。
【0109】
実施例E
驚くべきことに、より高濃度のCANが、沈殿に対する安定性を改善するということが発見され、例えば、20%のCANに関する70℃で約30分から、50%のCANに関する27時間まで改善されるが、濃度および沈殿に対する安定性が高いほど、剥離有効性は低い。妥協案として、約2〜4重量%ATFAを20〜25重量%のCANに添加することができ、70℃での浴寿命は8時間より長い時間まで増加した。不利なほどに、この温度および濃度において、適度の高線量注入レジスト(3.5E15As、25keV)の完全な剥離を達成するためには、湿潤ベンチ環境では2時間を超えるプロセスが必要であった。これによって所有のコストが非常に高くなる。
【0110】
これらの考慮すべき問題に基づき、いずれの安定剤も用いずに、1%、3%および5重量%の一連のCAN水溶液を調製し、そしてオープンフラスコ中で90〜95℃まで加熱した。1%および3%の溶液は、約70分後に沈殿を示さなかったが、5%の溶液では約20分後に沈殿が開始した。より制御された実験では、250mlエルレンマイアーフラスコ中で、撹拌された沸騰DI水に固体CANを添加することによって、安定剤を含まない5重量%CAN溶液を調製した。溶液を約20分間沸騰させ(約100℃)、沈殿物がないままであった。
【0111】
追加的な一連の実験において、248nmのレジストでパターン化されて、3.5E15As、25keVで注入されたクーポンは、以下の通りに処理された。
1.50℃、HSO中で2分
2.90〜95℃、0、1重量%、3重量%、または5重量%のCANを含有する溶液、ならびに15分間沸騰することによって調製された5重量%CAN溶液(「5b」と呼ばれる)中で15分
3.50℃、HSO中で20分
クーポンを視覚的に検査したところ、明らかに、5%CANに関して、そしておそらく3%CANに関して、パッド上のクリーニング性能は、60分後さえも、70℃において20〜25%CAN溶液で典型的に見られるものよりも良好であった(図7を参照されたい)。興味深いことには、5%の熱CAN溶液によって、AおよびCの大きなレジストパッドは、最終的なHSO処理の前およびちょうど5〜7分後にクリーンであるように見えた。より微細な特徴も一般にクリーンであるように見えたが、それらの多くは最終的なHSOリンスを必要とする。
【0112】
理論に縛られることを望まないが、これらの実験の結果は、最適なCAN濃度があることを暗示し、例えば、最適なCAN濃度は約<10重量%未満のCANであり、これは安定剤を使わずに、高い剥離活性と、合理的な安定性とを組み合わせる。
【0113】
実施例F
この実験は、アンモニアおよびTFA濃度を、中央(2%ATFA)値前後+/−15%で変更して、その場でATFAを形成することを伴った。驚くべきことに、TFAと比較して非常に高いアンモニア濃度(例えば、1:1より高い、好ましくは、2:1〜3:1より高いモル比)を有する溶液は、NH対TFAのモル比1:1を有する溶液(8〜9時間)と比較して、70℃で、沈殿に対して非常により高い安定性を有する(例えば>13時間)ことがわかった。最初は混合時に形成する一時的な沈殿は、強力な攪拌の数分後になくなる。
【0114】
ATFAがマスキング材料の剥離に役立たないため、ATFA形成が排除されたさらなる実験を設計した。アンモニアおよびCANを含む試料を、15mLプラスチック遠心分離機チューブで混合した。5分未満の攪拌では、全ての溶液は透明であった。他に特記されない限り、浴温度は81〜81.5℃であり、試験管中の温度は75〜76℃であった。沈殿は、吸光度測定を使用して決定された。NH/CAN約1.61:1(モル)では、25%CAN溶液は75℃で9.7時間、約95℃でさらに7時間存続したことが決定された。面白いことに、安定性の増加は、高い濃度CAN溶液に限定されていなかった。NH/CAN>1:1(モル)を含む25重量%CAN溶液を、最終5%CANまでDI水で5倍希釈した場合、希釈溶液は透明のままであり、その後、約95℃で5時間は沈殿を生じなかった。安定性試験の結果を表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
高濃度アンモニア溶液を調製し、そして以下の通り、マスキング材料剥離を実施した。マスキング材料を含む基板を、54℃で10分間、HSOと接触させた。次いで、基板を70℃で1時間、それぞれの溶液と接触させた。次いで、基板を54℃で10分間、HSOで後リンスした。輝点が残存するフォトレジストを構成する輝点画像を得た。結果を図8および9に示す。図8および9は、それぞれ、1.002:1および3.826:1のNH対TFAのモル比を有する溶液との接触に相当する。各画像はF20プレート上でのウェル位置を表し、そしてそのように、各溶液の結果を4組で示す。
【0117】
本明細書に記載され、図に示される本発明に従って形成された集積回路および集積回路アセンブリが、用途、ハードウェアおよび/または電子機器システム、例えば、関連メモリを備えた1種またはそれ以上のデジタルコンピュータ、実装時固有な集積回路、機能回路などで使用されてもよいことは認識されるであろう。本発明の構成要素を含むか、または使用する他の適切なハードウェアおよびシステムには、限定されないが、パソコン、コミュニケーションネットワーク、電子商取引システム、携帯型通信装置(例えば、携帯電話)、および固体状態媒体記憶装置が含まれる。そのような集積回路を組み込むシステムおよびハードウェアは、本発明の一部であると考えられる。本明細書に提供される本発明の教示によって、当業者は、本発明の技術の他の機能および用途を考えることが可能であろう。
【0118】
なお本発明の実施形態は、イオン注入されていないか、または少なくとも重イオン注入されていないフォトレジストの除去および剥離することためにも適用可能であることが指摘される。そのようなフォトレジストには、従来の有機溶媒に可溶性ではないフォトレジスト、例えば、架橋ポリマーのため、従来の有機溶媒に可溶性ではないネガ型フォトレジストが含まれる。そのようなフォトレジストは、本発明の技術を使用して除去されても剥離されてもよい。
【0119】
上記の本発明の典型的な実施形態は、多くの異なる様式で実施可能であることは認識され、理解されるべきである。本明細書に提供される本発明の教示によって、当業者は、本発明の他の機能を考えることができる。実際に、添付の図面を参照して、本発明の具体的な実施例が本明細書に記載されているが、本発明は、まさにそれらの実施形態に限定されないこと、そして本発明の範囲または精神から逸脱することなく、当業者はさまざまな他の変更および修正を実施することができることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスキング材料を除去するための方法であって、前記マスキング材料を、セリウム化合物、水および任意選択的に少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む溶液と接触させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記セリウムが塩または配位錯体中に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩が硝酸セリウムアンモニウムCe(NH(NO(CAN)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩が、硝酸セリウム、硫酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウム、重硫酸セリウム、過塩素酸セリウム、メタンスルホン酸セリウム、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム、塩化セリウム、水酸化セリウム、カルボン酸セリウム、セリウムβ−ジケトン、トリフルオロ酢酸セリウムおよび酢酸セリウムの少なくとも1種である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液が少なくとも1種の安定剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の安定剤が、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、重硫酸アンモニウム、カルボン酸アンモニウム、アンモニウムβ−ジケトネート、酢酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、トリフルオロ酢酸アンモニウム、メタンスルホン酸アンモニウム、およびトリフルオロメタンスルホン酸アンモニウムからなる群から選択されるアンモニウム塩を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の安定剤がトリフルオロ酢酸アンモニウムを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記トリフルオロ酢酸アンモニウムが、アンモニアとトリフルオロ酢酸とを組み合わせることによって生じる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アンモニア対トリフルオロ酢酸のモル比が約0.8:1〜約5:1の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液がCANおよびアンモニアを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アンモニア対CANのモル比が約1:1〜約2:1の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の安定剤が、過塩素酸、氷酢酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過ヨウ素酸、トリフルオロ酢酸、塩酸およびポリスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液が、前記溶液の全重量に基づき、約0.01〜約70重量%のCANを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が、前記溶液の全重量に基づき、約20〜約30重量%のCANを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶液が、前記溶液の全重量に基づき、約1〜約8重量%のCANを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
マンガン、ルテニウム、オスミウム、イリジウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
RuO、OsO、KMnO、NHMnO、RuCl、OsCl、Ru(NO、Os(NO、Mn(NO・xHO、MnCO、MnSO・xHO、Mn(C・xHO、MnCl、MnBr、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
Mn(NO・xHOを含む前記少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記溶液がマスキング材料と接触している時に、前記溶液の温度が摂氏約35度および約90度の間である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マスキング材料と前記溶液とを接触させる前に、前記マスキング材料が、(i)1平方センチメートルあたり約5×1014より多いイオン、および(ii)前記イオンが前記マスキング材料に衝突する前に約5000電子ボルトより高い(>5keV)平均エネルギーを有するイオンの少なくとも1種でイオン注入されている、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記基板が窒化チタンを含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
マスキング材料を、セリウム、水および任意選択的に少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む溶液と接触させて、前記マスキング材料を除去することによって形成される電子デバイス。
【請求項23】
前記セリウムが塩または配位錯体中に含まれる、請求項22に記載の電子デバイス。
【請求項24】
前記塩が硝酸セリウムアンモニウムCe(NH(NOである、請求項23に記載の電子デバイス。
【請求項25】
前記塩が、硝酸セリウム、硫酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウム、重硫酸セリウム、過塩素酸セリウム、メタンスルホン酸セリウム、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム、塩化セリウム、水酸化セリウム、カルボン酸セリウム、セリウムβ−ジケトン、トリフルオロ酢酸セリウムおよび酢酸セリウムの少なくとも1種である、請求項23に記載の電子デバイス。
【請求項26】
マンガン、ルテニウム、オスミウム、イリジウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む、請求項22〜25のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項27】
RuO、OsO、KMnO、NHMnO、RuCl、OsCl、Ru(NO、Os(NO、Mn(NO・xHO、MnCO、MnSO・xHO、Mn(C・xHO、MnCl、MnBr、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む、請求項22〜25のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項28】
集積回路を備える、請求項22〜27のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項29】
(i)トランジスタ、(ii)金属ゲートを含むトランジスタ、(iii)窒化チタンを含むトランジスタ、(iv)集積回路、および(v)微小電気機械デバイスの少なくとも1つを備える、請求項22〜28のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項30】
(i)シリコンの層、および二酸化ケイ素(SiO)の層、(ii)窒化チタン(TiN)の層、(iii)ドーパントでイオン注入されたトランジスタのソース領域、(iv)ドーパントでイオン注入されたトランジスタのドレイン領域、ならびに(v)ドーパントでイオン注入されたトランジスタのチャネル領域の少なくとも1つを備える、請求項22〜29のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項31】
電子デバイスを形成する方法であって、
窒化チタンを含む基板を形成する工程と、
(i)1平方センチメートルあたり約5×1014より多いイオン、および(ii)前記イオンがフォトレジストに衝突する前に約5000電子ボルトより高い(>5keV)平均エネルギーを有するイオンの少なくとも1種でフォトレジストをイオン注入する工程と、
前記フォトレジストを、セリウム、水および任意選択的に少なくとも1種の追加的な酸化剤を含む溶液と接触させる工程と
を含む方法。
【請求項32】
前記電子デバイスが、(i)トランジスタ、(ii)金属ゲートを含むトランジスタ、(iii)窒化チタンを含むトランジスタ、(iv)集積回路、および(v)微小電気機械デバイスの少なくとも1つを備える、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記セリウムが塩または配位錯体中に含まれる、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記塩が硝酸セリウムアンモニウムCe(NH(NOである、請求項31または請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−513824(P2013−513824A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543300(P2012−543300)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059800
【国際公開番号】WO2011/072188
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【出願人】(512025573)インターナショナル ビジネス マシーンズ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】