説明

マスキング用キャップ、それを用いて製造された被覆層およびそれを用いて製造された被覆層の製造方法

【課題】本発明の目的は塗布工程、特にディップによる塗布において、塗料を付着させたくない部分を手軽な方法で、特別高精度な寸法を必要とせず、多少の必要進入量の差があったとしても、安定して塗工液から防護することができ、さらには取り付け、取り外しが容易なマスキング及びこれを使った塗工方法を提供することである。
【解決手段】 本発明に従って、導電性支持体とその外周に形成された弾性層及び被覆層を有する導電性部材において、少なくとも一方の導電性支持体の露出部にそれぞれ設けられる塗工時装着のマスキング用キャップを有し、前記マスキングキャップを構成する一部または全ての材質が磁力を持つ材料で形成されているマスキング用キャップを用いて前記被覆層を形成したことを特徴とする導電性部材と、導電性部材の製造方法が提供される。
【選択図】 図3


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造過程に塗布工程を有する製品すべてにおいて有効である。特記するならば電子写真、複写機などの画像形成装置に用いる現像、帯電、転写、定着、加圧、クリーニング、除電等に用いる導電性部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等のOA機器は近年高速化が進んでおり、それに伴い感光体上の静電潜像をトナーにより可視化する現像プロセスでは、現像剤担持部材に弾性体を用いることで感光体に均一に圧接して現像を行う接触現像方式が提案されている。
【0003】
図1及び図2は、接触現像方式で用いられるトナー供給ローラの断面を示す概略図である。図1は、トナー供給ローラを弾性体層cの長尺方向に垂直方向の断面図で、図2は、トナー供給ローラを弾性体層cの長尺方向に平行方向の断面図である。図1および2で、トナー供給ローラは、導電性支持体a上に弾性体bが形成されている。
【0004】
接触現像方式では、電圧を印加してトナー像を感光体上に形成するので現像坦持部材は感光体への均一な圧接幅を確保するための弾性とともに均一な導電性や耐リーク性が求められる。このため、現像剤担持部材は、導電性支持体a上に電子導電剤やイオン導電剤を分散し、所望の抵抗値に調整した弾性層bを形成し、更にその外周に耐磨耗性やトナー帯電性、トナー搬送性を得るためにナイロン、ウレタン等の樹脂に、適宣表面粗さを確保するための粗し粒子や、導電性を確保するための導電剤を添加した表面層を設ける場合が多い。また現像剤担持部材の抵抗安定化のために弾性層bと表面層の間に抵抗調整層(中間層)を設ける場合もある。
【0005】
接触現像方式の場合、現像剤担持部材の最外層表面はトナーや感光体と接触するため、均一な面であることが要求される。例えば、表面層に膜厚ムラ(塗工ムラ)や気泡、スジ等があると、膜厚のムラや、気泡、スジ等の跡が画像不良として現れてしまう場合がある。
【0006】
一般に、耐磨耗性やトナー帯電性、トナー搬送性を得るために設けられる表面層を作成する方法としては塗工(コーティング)が用いられる。具体的にはディップ塗工やロールコート、スプレー塗布等の方法が用いられ数ミクロン〜数十ミクロンの膜が形成されるが、中でも均一な被覆層を形成することに優れているディップ塗工が用いられることが多い。
【0007】
その際、塗料を付着させたくない場所にはマスキングを行うのが一般的である。通常マスキングの装着方法といえば、塗工対象物が板金のようなものであればシートを貼って防汚し、またローラのようなものは軸端部等にチューブやキャップを被せて塗工を行う方法がとられる(特許文献1および2参照)。
【0008】
特許文献1には、導電性支持体にマスキングチューブを被着すると塗布中或いは乾燥中に、マスキングチューブと導電性支持体の間、或いはマスキングチューブと弾性体端部の間に僅かに存在する空気が、ローラ端部部分の被覆に染み出して泡を生じ、この部分にピンホールを発生し易く、また被覆層が切れ易いという問題も解決するとある。
【0009】
しかしながら、ローラを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ塗工で、チューブ形状のマスキングキャップを用いると、被覆層表面に欠陥を生じさせてしまう。詳しくはチューブ形状のマスキング用キャップが装着されたローラを垂直状態で塗工液中に降下していくとき、最初はチューブ中央の空洞部分に塗工液が入らず空気が溜まる。そしてローラが降下していき時間が経過すると、チューブ中央に溜まった空気に塗料中の揮発性のガスも加わる。更にローラが上昇に転じた場合、この空洞部のガスにかかっていた液圧がローラ上昇と共に小さくなるため、ガスが体積膨張し最終的に気泡が発生する。また別な気泡の発生の仕方としては、マスキングチューブと導電性支持体の間、或いはマスキングチューブとローラ端部との間に隙間があると、ローラを垂直状態で塗工液中に降下していくとき、隙間にわずかに存在する空気が、液圧によって染み出して気泡を発生する。
【0010】
上記のようなかたちで発生した気泡は、塗工液面まで上昇するが、ローラと液面の表面張力の関係でローラ側に付着する。更に、ローラは降下、上昇するため、気泡は液面でローラ表面を擦るようなかたちになり、この跡が乾燥後もローラの長手方向にスジ状の凹欠陥となって残ってしまう。
【0011】
これにたいし、特許文献2のように、ローラのマスキングにキャップ形状を採用した場合、マスキングキャップを導電性支持体に固定する方法として、キャップの空洞部内径を軸外径より僅かに広めに設定し、圧入して固定する方法がある。
【0012】
キャップの材質が柔らかく伸縮性があるものならばキャップの空洞部内径を軸外径と同等もしくはやや狭く設定しても圧入は可能である。更に、圧入以外にも、キャップの空洞部の底面部分にリブを設置し、軸端部をつまむようにして固定する方法や、キャップ空洞部の内壁に1箇所以上の出っ張りを設け、この出っ張りを潰しながら挿入することでキャップを軸に固定するといった方法もある(図5参照)。
【0013】
しかしながら、圧入による固定は材質が柔らかいものであるならばともかく、硬い部材の場合にはキャップ空洞部内径の寸法精度を厳しくせざるを得ず、また軸側の外径精度も重要になり、もし軸外径とキャップ空洞部内径とのギャップが小さすぎる場合にはキャップを挿入することが出来ず、仮に挿入できたとしても取り外すのにかなりの力を要することになるし、ギャップが大きすぎる場合には塗布中に抜け落ちてしまい防汚の役目を果たさない場合がある。
【0014】
圧入タイプの他の問題として、キャップをはめ込んだ時にキャップ内部に閉じ込められた空気が挿入時に圧縮を受け、この圧縮されて高圧になった空気が塗布中にキャップを押し戻してしまい、その結果キャップと弾性体端部との間に隙間を作り、導電性支持体を塗工液で汚染してしまうといったことが起こる。
【0015】
圧入方法では挿入時の進入量が問題になる。進入量が小さい場合にはキャップと弾性体端部との間に隙間が出来てしまうため導電性支持体を汚染してしまうわけだが、進入量が大きい場合は、キャップが突き当たったところの部材(弾性体)がキャップより柔らかい場合には、この部材に傷をつける場合がある。
【0016】
塗工する製品の寸法が均一であり、進入量を常に一定に設定しておけば良いというのであれば上記の点をクリアすることは可能であるが、ローラには個体差があり導電支持体の露出部の長さにバラつきがあるので調整は大変困難である。
【0017】
挿入時の直進性も問題である。キャップ上部(開口部)が中心軸と垂直に位置している場合、キャップがローラの軸と平行に挿入されなければ周の一部に被覆されない部分が存在することになるため、その部分から塗工液がキャップ内部に浸入し、導電性支持体を汚染することになる。さらにそのとき、キャップ内部の空気が染み出し気泡を発生させるため、上述してきたような欠陥が発生することになる。
【0018】
気泡起因の欠陥に対する防止策として、ローラの液面浸入速度を遅くする方法や、塗工液中にシリコーンオイル等の消泡剤を添加する方法等が考えられるが、液面浸入速度に関しては塗布時間が長くなり、添加剤に関しては塗工液さらには製品に対する弊害もあり満足する結果は得られない。
【特許文献1】特開平10−177290号公報
【特許文献2】特開2002−282767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
現像剤担持部材は、画像不良を防止するために、最外層表面に膜厚のムラや、気泡、スジ等の跡がないものが要求されるので、ディップ塗工時の塗布工程におけるマスキングは、非常に重要な工程である。しかしながら、従来のチューブやキャップを被せて塗工を行った場合、上述したように、現像剤担持部材の最外層表面に膜厚のムラや、気泡、スジ等の跡が発生する問題を完全に解決することはできなかった。
【0020】
本発明の目的は塗布工程で、塗料を付着させたくない部分を手軽な方法で、特別高精度な寸法を必要とせず、多少の必要進入量の差があったとしても、安定して塗工液から防護することができ、さらには取り付け、取り外しが容易なマスキング及びこれを使った塗工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、被覆層を塗工する際に塗工を行わない部分をマスキングするマスキング用のキャップであって、記塗工を行わない部分が磁性体から形成され、塗工を行わない部分の端部と対向するマスキング用キャップの部位に磁力を持つ材料が配されていることを特徴とするマスキング用キャップである。
【0022】
更に本発明は、被覆層を塗工する際に、塗工を行わない部分が磁性体から形成され、塗工を行わない部分を少なくとも一部に磁力を持つ材料を配したマスキング用キャップで覆って被覆層を製造したことを特徴とする被覆層である。
【0023】
また、本発明は、被覆層を塗工する際に、磁性材料から形成された被覆膜を形成しない部分に少なくとも一部に磁力を持つ材料を配したマスキング用キャップを装着する工程と、の後、塗工法で前記弾性体層表面に被覆層を形成する工程とを有することを特とする被覆層の形成方法である。
【発明の効果】
【0024】
ローラを垂直状態で塗工液中に浸漬するディップ法で被覆層を形成する場合、導電性支持体の露出部に本発明のマスキングキャップをつけることによって、手軽な方法で、特別高精度な寸法を必要とせず、多少の必要進入量の差があったとしても、導電性支持体を安定して塗工液から防護することが出来るようになり、画像不良が発生しない均一な面が得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、塗工時にマスキング部をマスキングキャップで覆うことでマスキング部に被服膜が形成されることを防止するマスキングキャップに関するものである。弾性層に被服膜を形成する際、弾性層から露出する導電性支持体をマスキングキャップで覆う場合、マスキングキャップがマスキング部となる導電性支持体とが互いにひきつけあうことでマスキングキャップの弾性層と対向する面が弾性層に押し付けられ塗工時にマスキング部に被覆膜が形成されるのを防止することができる。マスキングキャップとマスキング部の端部とをバネ等の弾性体で結合する、マスキング部とマスキングキャップとに互いに対向する面が異なった極性の磁石にする、あるいは、いずれか一方を磁石とし他方を磁性体で構成することで実現することができる。最低限、塗工時に磁化していれば良いので、磁石は永久磁石であっても電磁石であっても良いことは言うまでもない。
【0026】
図3(a)は、本発明のマスキングキャップと導電性支持体との構成の原理を説明するための概略図である。
【0027】
導電性支持体b上に形成された弾性層aと弾性層aから露出する導電性支持体bの露出部(マスキング)がキャップcで覆われている。キャップcは、弾性層aと接触する端面を弾性層aに押し付けるようになっているのが好ましい。このためには、キャップcと導電性支持体端部とが互いに引きつけ合うような機能構造dを導電性支持体の端部と該端部と対向するマスキングキャップとの間に形成する。機能構造dは、マスキング部の端部と該端部と対向するキャップとをバネ等の弾性層で結合することで得られるが、図3(b)に示すように非磁性部材c2で構成されたマスキングキャップcの導電性支持体bの端部と対向する位置に磁石c1を配しても良い。この場合、導電性支持体bは磁性体である必要がある。導電性と磁性とを有する材料としては鉄・鉄の合金・ニッケル等を用いることができる。導電性支持体aを磁石として、マスキングキャップに配した磁石を磁性体としても同等の効果が得られることは言うまでもない。更に上述の磁石は、永久磁石を用いても、塗工の時だけ電流を流す電磁石であっても良いことは言うまでもない。更に、導電性支持体を磁石としキャップの該導電性支持体端部と磁石を配しても良い。この場合互いに対向する部位が逆極性であることは言うまでも無い。機能構造体dを、少なくともいずれか一方に磁石を用いて構成する場合、マスキング部端部とキャップに配した磁石あるいは磁性体とは間隙を介していることが好ましい。
【0028】
マスキングキャップは図3(c)に示すように、導電性支持体と勘合する部分を非磁性体で構成し、残りの部分を磁性体あるいは磁石で構成することができることは言うまでもない。
【0029】
図3(a)〜(c)のように、マスキングキャップを非磁性体と磁石あるいは磁性体とで構成する場合、非磁性体の材料としアルミニウム、銅等の非磁性金属を用いても良いが、弾性のある樹脂を用いても良い。樹脂を用いる場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、弗素樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1以上の樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
更に、マスキングキャップを図4に示すように磁石のみで構成することもできる。この場合、キャップでマスキング部を覆うことを考慮すると、通常の鉄等の強磁性体で構成された磁石であっても特に問題はないが、樹脂に強磁性体を混入して作られた磁石のほうがより好ましい。
【0031】
この場合、マスキングキャップの入り口と導電性支持体の端部が引きつけられるため、マスキングキャップを完全に装着させるためには、この磁力に逆らって導電性支持体を挿入する必要がある。またマスキングキャップの長さ及び磁力によっては導電性支持体を奥まで挿入できないもしくは挿入できでもこの位置では不安定となることがある。このような事態から、磁性体と非磁性体の2種類の構成としたほうが安定して本発明の効果を得ることができる。
【0032】
本発明のマスキング用キャップは、塗工を行わない部分(マスキング部)が円筒形あるいは角柱形の様形状をしていることが好ましい。
【0033】
以下では主にローラ形状のものをディップ法により塗工する場合の例を挙げるが、本発明のマスキングキャップは、被塗工対象の形状がローラ形状以外、あるいはディップ法以外の塗工方法にも適用できることはいうまでもない。
【0034】
マスキングキャップの材質としては、塗工液を汚染しないもの、塗工液によって腐食されないものであれば特に限定されない。例を挙げるとすれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、弗素樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びポリアセタール樹脂等が挙げられる。
【0035】
図3は、本発明のマスキング用キャップの実施の形態を示す断面図である。
【0036】
図3(b)に示すように導電性支持体aの端部とマスキング用キャップcの非磁性部c2の底部に形成された磁力を有する部材c1との間には間隙が形成されている。
【0037】
導電性支持体aの端部とマスキング用キャップcの非磁性部c2の底部に形成された磁力を有する部材c1との間には間隙があっても磁力によって導電性支持体aとマスキング用キャップとを固定できていれば問題ないので、弾性層bから露出する導電性支持体の長さのバラつきとマスキング用キャップの磁力を持った部材(磁石)c1までの深さにバラつきがあっても、導電性支持体aとc1とが接触しないように設計することは簡単に行える。
【0038】
導電性支持体aは、磁石に引き寄せられることが必須であるので、導電体であると同時に磁性体である必要がある。材料としては、鉄や鉄を主成分とする合金等が良く知られている。磁石と磁性体との端部は図3に示されるように均一な間隙が形成されることが好ましいが、磁石の磁力が十分に強ければ必ずしもマスキング部の端部と相似形をしている必要はない。
【0039】
マスキング用キャップcの内径が導電性支持体aの太さに対して狭すぎると導電性支持体aをマスキング用キャップに挿入する際に変形し、図7に示すような間隙eが弾性層との間に生じてしまう。一方、広すぎると、塗工時に間隙から塗工液が浸入してしまうので、導電性支持体aとマスキング用キャップの内径との寸法は導電性支持体の直径と等しいもしくは広くなるように設計していれば問題はないが、取り扱いのし易さを考慮すると最大+1mm以下、最小で+0.1mmとすることが好ましい。通常の圧入もしくはリブタイプの場合、キャップ内径は勿論のこと、キャップを装着する相手(導電性支持体)も寸法交差は±0.05mm以内の高い寸法精度が要求されが、本発明のマスキング用キャップの場合ゆるい交差で設計・製造できるので非常に容易に作成することができる。
【0040】
図3では磁力を有する材料は、磁性体からなる磁石を用いても、樹脂中に磁性体を配し磁力を付与した磁石を用いても良い。
【0041】
この場合、樹脂中に磁性体を配した樹脂磁石に用いる樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、弗素樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1以上の樹脂を用いることが好ましく、樹脂中に配する磁性体は、フェライト系磁性粉末、ネオジム−鉄−ホウ素系あるいはサマリウム−鉄−窒素系等の希土類磁性粉末等の異方性磁石粉末が好ましく用いられる。
【0042】
図4は、マスキングキャップcを、磁力を有する材料のみで形成した場合の例である。この場合マスキングキャップcは、通常の樹脂中に磁性体を配し磁力を付与した弾性のある材料であることが好ましい。
【0043】
樹脂中に磁性体を配し磁力を付与した弾性のあるマスキングキャップには、樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、弗素樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1以上の樹脂を用いることが好ましく、樹脂中に配する磁性体は、フェライト系磁性粉末、ネオジム−鉄−ホウ素系あるいはサマリウム−鉄−窒素系等の希土類磁性粉末等の異方性磁石粉末が好ましく用いられる。
【0044】
尚、樹脂中に配した異方性磁石粉末を所望の方向に磁石化する方法は、例えば特開2004−87644号公報等に記載されている通常の方法を用いることができることは言うまでもない。
【0045】
マスキングキャップの外径については、特に規制はしていない。しかしながらマスキングを装着する目的である被覆層表面欠陥、ローラ端部の塗工ムラを防止するという観点からすればマスキングキャップの径はローラの径より小さいことが好ましい。マスキングの径がローラの径と等しいもしくは大きい場合には、マスキングの取り外し時に弾性層端部の被覆層を引っ張ってしまい、被覆層のバリや、弾性層の露出が発生する場合がある。
【0046】
マスキングキャップの先端形状は、浸漬時に泡を巻き込みにくい形状であることが好ましい。具体的には中心部が突き出したような凸形状(槍型)が挙げられる。逆に先端が水平や凹状の場合には液浸入時に泡が立ち易く、ピンホールやローラ長手方向のスジ状の凹欠陥が発生する可能性が高くなる。
【0047】
本発明に用いられる導電性支持体(a)は、導電体であり且つ磁性体であることが必須であり、鉄、ステンレス等の金属材料の丸棒を用いることができる。さらにこれらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わないが、導電性を損なわないことが必要である。
【0048】
弾性層bの材料としては、例えば天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、及びクロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、更にはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂等も挙げられる。これら弾性材料中にカーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を適宣添加し所望の抵抗に調整するのが一般的である。
被覆層(表面層)となる樹脂塗料には、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が用いられる。
【0049】
これらの樹脂に静摩擦係数を小さくする目的でグラファイト、雲母、二硫化モリブデン及びフッ素樹脂粉末等の固体潤滑材、或いはフッ素系界面活性剤、ワックスまたはシリコーンオイル等を添加する場合もある。
【0050】
また、被覆層に導電性を持たせるためには各種導電剤(導電性カーボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉及び金属酸化物である導電性酸化錫や導電性チタン等)が用いられる。さらに、耐磨耗性やトナー搬送性を得るために粗し粒子が加えられることが多く、この粗し粒子はポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン等の材質によって構成された球形状樹脂粒子であることが多い。このとき、球形状粗し粒子は使用する溶剤により膨潤や溶解が起こらないことが要求される。これらの材料を塗工できる状態とするため、各種有機溶剤や水等が加わり、分散され、塗工に適した粘度に調整される。浸漬塗工により被覆層を形成する場合には塗料粘度を1〜250mPa・sの範囲にすることが好ましいが、粘度は膜厚に大きく影響するため、特には5〜25mPa・sの範囲に調整することが好ましい。この液(d)を弾性層上に塗工し、乾燥、硬化工程を経て被覆層(表面層)を得る。なお、被覆層は1層であっても良いし、2層以上の多層構造であっても良い。
【実施例】
【0051】
以下に具体的な実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
下記の要領で現像ローラを作製した。
【0053】
<導電性部材の作製>
φ8±0.01mmの鉄製軸(導電性支持体)を内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、弾性層として液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製 体積固有抵抗1×107Ωcm品)を注型後、130℃のオーブンに入れ20分加熱成型し、脱型後、200℃のオーブンで4時間二次加硫を行い、弾性層厚み4mm、ゴム部長さ240mmのローラを得た。但し製法、装置の都合上、ゴム部端部から鉄製軸端部までの長さには個体差があり、最大と最小の差は約1mm存在した。
<被覆層用塗料の作製>
ウレタン塗料(ニッポランN5033 日本ポリウレタン社製)を固形分濃度10%となるように、メチルエチルケトンで希釈し、導電剤としてカーボンブラック(#7360SB 東海カーボン製、平均粒子径28nm)を固形分に対し50重量部、絶縁性粒子として平均粒径14μmのウレタン粒子(アートパールC400根上工業製)を固形分に対し6重量部添加した後、十分に分散したものに硬化剤(コロネートL 日本ポリウレタン社製)をウレタン塗料に対し10重量部添加し、さらに攪拌し塗料を得た。
【0054】
このときの塗料の粘度は15mPa・sであった。
【0055】
<被覆層の形成(塗工)>
鉄製軸(導電性支持体)の一方の露出端に、図3に示した形状のマスキング用キャップを装填した。マスキング用キャップは、ポリアセタール樹脂で構成され、内径φ8.2±0.1mmの開孔が形成され、内部に磁石(磁石の磁力の大きさを補充ください:(株)ミスミ製 吸着力3.9N、表面磁束密度2,000G)が配されている。また、鉄製軸(導電性支持体)の一方の露出端にマスキング用キャップを装着した際に、鉄製軸端面と磁石との間隔が1mmとなるようなマスキング用キャップの設計とした。
【0056】
キャップを装着したほうが下側になるよう塗料の入った槽に対して垂直に保持し(図6参照)、そこからローラを液面に向かって真っ直ぐ降下、浸漬させた後引き上げた。その後キャップを外し風乾、熱硬化の工程を経て現像ローラを得た。なお塗工はゴム部端部から鉄製軸端部までの長さが長いものや短いものを含む10本について実施した。このときの状況、詳しくは、キャップを装着したほうが下側になるよう塗料の入った槽に対して垂直に吊るした時にキャップが落下せず軸端部に保持されているか(キャップ装着の可否)、軸への塗料の付着はないか、ローラ表面(弾性層上に形成された被覆層)に欠陥はないか、これらの状況を調べた。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
実施例1で使用したキャップの構成は磁性体とポリアセタール樹脂を組み合わせたものであるが、実施例2ではマスキング用キャップ全体を磁性体とした。マスキング用キャップを用いた。キャップ全体を磁性体とする方法は、例えば、樹脂中に磁性体を混入した磁性体樹脂あるいは、磁性材料の削り出し部材を作製し、磁化する、あるいは、下端に永久磁石を接触させることで実現することができる。本実施例では、SK材の削り出し、実施例1と同じ、内径φ8.2±0.1mmの削り出し部材の下端部に磁石を配置したものを用いた。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例)
実施例2の形状のまま、キャップ全体をポリアセタール樹脂とした。寸法は同様に内径φ8.2±0.1mmである。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
比較例において、キャップ装着が不可(キャップを軸端部に保持させることが出来なかった)のものについては実際のディップ塗工は行わなかった。
【0061】
実施例1及び実施例2は本発明に従いキャップの一部もしくは全体が磁性体によって構成されているため、キャップの密着度が高く、ゴム部端部から鉄製軸端部の長さが長いものに合わせて設計していたため、前記長さが長いものは勿論のこと、短いものでも磁力によってキャップが充分保持され、軸への塗工液付着は無かった。弾性層上に形成された被覆層も均一な面を得ることができた。またキャップ内径は鉄製軸外径に対して大きいため、キャップの脱着が容易であった。
これに対して比較例ではキャップが鉄製軸端部に固定できないものが多く、装着できたものについても浸漬中にキャップが外れ、軸端部に塗工液が付着した。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】現像ローラの概念的断面図である。
【図2】現像ローラの概念的側面断面図である。
【図3】本発明に係る第1の実施例のマスキングキャップを導電性部材に被せたときの部分拡大断面図である。
【図4】本発明に係る第2の実施例のマスキングキャップを導電性部材に被せたときの部分拡大断面図である。
【図5】従来技術によるマスキングキャップを導電性部材に被せたときの部分拡大断面図である。
【図6】本発明及び従来技術によるマスキングキャップを導電性部材に被せたときの製造方法を示す断面図である。
【図7】マスキングキャップが変形した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0063】
a:導電性支持体
b:弾性層
c:マスキングキャップ
c1:磁性部材
c2:非磁性部材
d:塗工液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料からなる導電性支持体上に形成された弾性層表面に被服膜を塗工法により形成するに際し、前記弾性層から露出したマスキング部となる前記導電性支持体を覆い前記マスキング部に前記被覆膜が塗工されるのを防止するマスキングキャップであって、
前記マスキングキャップが前記マスキング部の端部をひきつけることで前記マスキングキャップの前記弾性層と対向する面を前記弾性層に押し付けることで塗工時に前記マスキング部に被覆膜が形成されるのを防止することを特徴とするマスキング用キャップ。
【請求項2】
前記マスキングキャップの前記マスキング部の端部に対向する位置に磁石を配したことを特徴とする請求項1に記載のマスキングキャップ。
【請求項3】
前記マスキングキャップの材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、弗素樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1以上の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のマスキング用キャップ。
【請求項4】
前記マスキングキャップが磁力を持つ材料のみからなることを特徴とする請求項1に記載のマスキング用キャップ。
【請求項5】
部材の表面のマスキング部を請求項1に記載のマスキングキャップで覆う工程と、
その後、部材の表面を塗工する工程とを有する被覆層の形成方法。
【請求項6】
部材の表面のマスキング部を請求項1に記載のマスキングキャップで覆った後塗工法で形成したことを特徴とする被覆膜。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−159113(P2006−159113A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355723(P2004−355723)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】