説明

ミラー構造体及びその製造方法

【課題】高精度で、しかも、高い量産性、高い歩留りにて、補強部が備えられたミラー本体部を有するミラー構造体を提供する。
【解決手段】ミラー構造体10は、(A)ミラー本体部22、及び、該ミラー本体部22の表面に設けられた光反射層21を備えたミラー20、(B)ミラー20を支持するミラー支持部27、並びに、(C)ミラー支持部27を保持する保持部40から成り、ミラー本体部22の裏面には、貼合せ層104を介して補強部30が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー構造体及びその製造方法に関し、より具体的には、所謂MEMS技術を応用したミラー構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造技術を応用した微細加工技術であるマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(Micro Electro Mechanical System,MEMS)を用いたミラー構造体の開発が盛んに進められている。このようなミラー構造体は、基板上に一括して作製することができ、大きさが微小であり、低コストでの製造、高速動作が可能であり、例えば、表示装置やプロジェクターへの応用が進められている。
【0003】
ミラー構造体は、例えば、ミラー、ミラーを支持するミラー支持部、及び、ミラー支持部を保持する保持部から構成されている。ここで、ミラーは、ミラー本体部、及び、このミラー本体部の表面に設けられた光反射層を備えている。ミラー支持部は、例えば、仮想直線上に配置された2本の梁から成り、ミラーの両端は各梁によって支持されている。そして、ミラーは、梁を捻り回動軸として回動運動する構造となっている。それ故、ミラーには、軽量化が求められるだけでなく、高い剛性も求められる。
【0004】
このような要求に対処するための技術が、例えば、特開2003−172897や特開2007−310342に開示されている。具体的には、ミラー本体部の裏面にリブあるいは補強部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−172897
【特許文献2】特開2007−310342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、これらの特許公開公報に開示された技術にあっては、リブあるいは補強部は、ミラー本体部と一体に設けられている。そして、リブあるいは補強部が備えられたミラー本体部を有するミラー構造体を製造するためには、通常、先ず、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、シリコン基板に凹部を形成する。凹部を囲むシリコン基板の厚い領域によって保持部が構成される。次いで、凹部の底面に露出したシリコン基板の部分に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術(例えば、深堀りRIE法)に基づき、リブあるいは補強部が備えられたミラー、及び、ミラー支持部を形成する。
【0007】
一般に、保持部の厚さは0.4mm乃至0.6mm程度である。また、リブあるいは補強部が備えられたミラーの厚さは0.1mm程度である。従って、深さ0.3mm乃至0.5mm程度の凹部をシリコン基板に形成した後、凹部の底面において、リブあるいは補強部が備えられたミラー及びミラー支持部を形成するためのシリコン基板の加工を行う必要がある。しかしながら、このような加工を、高精度で、しかも、高い量産性、高い歩留りにて行うことは非常に困難である。
【0008】
従って、本発明の目的は、高精度で、しかも、高い量産性、高い歩留りにて、補強部が備えられたミラー本体部を有するミラー構造体を製造するためのミラー構造体の製造方法、及び、このミラー構造体の製造方法によって得られたミラー構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明のミラー構造体の製造方法は、
(A)ミラー本体部、及び、該ミラー本体部の表面に設けられた光反射層を備えたミラー、
(B)ミラーを支持するミラー支持部、並びに、
(C)ミラー支持部を保持する保持部、
から成るミラー構造体の製造方法であって、
(a)貼合せ層、第2活性層、絶縁層及び支持基板が積層されて成る積層基材をパターニングすることで、保持部形成領域及び補強部形成領域を設け、次いで、
(b)貼合せ層に第1活性層を貼り合わせ、その後、
(c)保持部形成領域以外の支持基板及び絶縁層を除去する、
各工程を少なくとも備え、以て、
第1活性層、貼合せ層、第2活性層、絶縁層、及び、支持基板が積層された構造を有する保持部、
第1活性層から成るミラー本体部及びミラー支持部、並びに、
第2活性層から成り、ミラー本体部の裏面に貼合せ層を介して設けられた補強部、
を得る。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明のミラー構造体は、
(A)ミラー本体部、及び、該ミラー本体部の表面に設けられた光反射層を備えたミラー、
(B)ミラーを支持するミラー支持部、並びに、
(C)ミラー支持部を保持する保持部、
から成り、
ミラー本体部の裏面には、貼合せ層を介して補強部が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のミラー構造体の製造方法にあっては、積層基材をパターニングすることで保持部形成領域及び補強部形成領域を積層基材に設け、次いで、貼合せ層に第1活性層を貼り合わせ、その後、保持部形成領域以外の支持基板及び絶縁層を除去する各工程を少なくとも備えている。従って、凹部をシリコン基板に形成した後、凹部の底面において、リブあるいは補強部が備えられたミラー及びミラー支持部を形成するためのシリコン基板の加工を行うといった工程が不要である。それ故、ミラー及びミラー支持部を、高精度で、しかも、高い量産性、高い歩留りにて加工することができる。しかも、本発明のミラー構造体及びその製造方法にあっては、ミラー本体部の裏面には貼合せ層を介して補強部が設けられているので、ミラーに軽量化、高剛性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、図3の矢印A−Aに沿った実施例1のミラー構造体の模式的な一部断面図である。
【図2】図2は、図3の矢印B−Bに沿った実施例1のミラー構造体の模式的な一部断面図である。
【図3】図3は、実施例1のミラー構造体を上方から眺めた模式図である。
【図4】図4は、実施例1のミラー構造体を裏面から眺めた模式図である。
【図5】図5は、本発明のミラー構造体を適用した表示装置の概念図である。
【図6】図6は、実施例3における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図である。
【図7】図7は、実施例3における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図である。
【図8】図8は、実施例3における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図である。
【図9】図9は、実施例3における頭部装着型ディスプレイを観察者の頭部に装着した状態を上方から眺めた図(但し、画像表示装置のみを示し、フレームの図示は省略)である。
【図10】図10は、実施例3における頭部装着型ディスプレイに組み込まれた画像表示装置の概念図である。
【図11】図11の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例4における頭部装着型ディスプレイに組み込まれた画像表示装置の概念図、及び、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【図12】図12は、実施例5における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図である。
【図13】図13は、実施例5における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図である。
【図14】図14は、実施例5における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図である。
【図15】図15は、実施例6における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図である。
【図16】図16は、実施例6における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図である。
【図17】図17は、実施例6における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図である。
【図18】図18は、実施例1のミラー構造体の製造方法を説明するための支持基板等の模式的な一部断面図である。
【図19】図19は、図18に引き続き、実施例1のミラー構造体の製造方法を説明するための支持基板等の模式的な一部断面図である。
【図20】図20は、図19に引き続き、実施例1のミラー構造体の製造方法を説明するための支持基板等の模式的な一部断面図である。
【図21】図21は、図20に引き続き、実施例1のミラー構造体の製造方法を説明するための支持基板等の模式的な一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明のミラー構造体及びその製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明のミラー構造体及びその製造方法)
3.実施例2(本発明のミラー構造体を適用した表示装置)
4.実施例3(本発明のミラー構造体を適用した頭部装着型ディスプレイ)
5.実施例4(実施例3の変形)
6.実施例5(実施例3の別の変形)
7.実施例6(実施例3の更に別の変形)、その他
【0014】
本発明のミラー構造体あるいは本発明のミラー構造体の製造方法(以下、これらを総称して、単に、『本発明』と呼ぶ場合がある)において、限定するものではないが、
ミラー支持部は、仮想直線上に配置された2本の梁から成り、
ミラーの両端は各梁によって支持されており、
ミラーは、梁を捻り回動軸として回動運動する形態とすることができる。そして、この場合、補強部は、この仮想直線と直交する方向に延びる部分を有する形態とすることができる。より具体的には、補強部の平面形状として、開口が、三角形を有する鱗模様形状や、正方形、長方形、平行四辺形、菱形等の矩形形状を有する井桁形状、開口が正六角形を含む六角形を有するハニカム形状を例示することができる。尚、補強部は、ミラー本体部の裏面に、均等に、即ち、一定の配列ピッチにて設けられていてもよいし、不均一に、例えば、仮想直線からの距離に依存して設けられていてもよい。
【0015】
以上に説明した好ましい形態を含む本発明において、補強部と補強部との間に位置するミラー本体部の部分の厚さ(t1A)は、補強部と貼合せ層を介して接するミラー本体部の部分の厚さ(t1B)よりも薄い形態とすることができる。ここで、t1Aとt1Bの関係として、0.1≦t1A/t1B≦0.5、好ましくは、0.2≦t1A/t1B≦0.4を挙げることができる。
【0016】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本発明において、貼合せ層はSiO2から成る形態とすることができる。
【0017】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本発明のミラー構造体において、
保持部は、光反射層側から、第1活性層、貼合せ層、第2活性層、絶縁層、及び、支持基板が積層された構造を有し、
ミラー本体部及びミラー支持部は第1活性層から成り、
補強部は第2活性層から成る形態とすることができる。
【0018】
そして、このような本発明のミラー構造体の好ましい形態において、また、以上に説明した好ましい形態を含む本発明のミラー構造体の製造方法において、第2活性層の厚さをt2、第2活性層、絶縁層及び支持基板の総厚をt0としたとき、0.05≦t2/t0≦0.3、好ましくは、0.1≦t2/t0≦0.2を満足することが望ましい。
【0019】
以上に説明した好ましい形態を含む本発明において、例えば、第1活性層及び第2活性層をシリコン層から構成することができるし、支持基板(ハンドル層とも呼ばれる)をシリコン基板から構成することができるし、絶縁層(ボックス層とも呼ばれる)をSiO2から構成することができる。より具体的には、第2活性層、絶縁層(ボックス層)及び支持基板(ハンドル層)が積層された構造(積層基材の一部)として、所謂SOI基板を例示することができる。尚、SOI基板の表面を酸化することで第2活性層の表面に貼合せ層を形成することができ、積層基材を得ることができる。
【0020】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明において、ミラーを変位させ、あるいは又、梁を捻り回動軸としてミラーを回動運動させるために、ミラー構造体には変位手段が設けられている。ここで、変位手段を、ミラー支持部と保持部との間に配設された、バイモルフ型、ユニモルフ型、モノモルフ型又は積層型(マルチモルフ型)の圧電アクチュエータから構成することができるが、これに限定するものではなく、その他、静電駆動アクチュエータ、熱駆動アクチュエータ、磁界を印加したときに形状が変化するジュール効果を有する磁歪材料から構成された電磁駆動アクチュエータ、磁気トルクを利用した電磁駆動アクチュエータ、あるいは、高分子ゲルから構成された電気化学駆動アクチュエータから構成することもできる。変位手段は、片持ち梁構造(板バネ構造、カンチレバー構造)を有する構成とすることができるし、あるいは又、ミアンダ構造を有する構成とすることができる。あるいは又、変位手段を、前記仮想直線と平行に延びるミラー本体部の端部、及び、これらの端部と面する保持部の部分に配設してもよい。ミラーの高速での回動を共振に基づき行い、低速での回動を非共振に基づき行う形態とすることができるが、これに限定するものではない。
【0021】
ユニモルフ型の圧電アクチュエータは、例えば、長さ方向に伸縮する1枚の圧電材料薄膜が変位手段を構成する基層(支持構造体)上に形成された構造を有する。また、バイモルフ型の圧電アクチュエータは、例えば、長さ方向に伸縮する2枚の圧電材料薄膜が変位手段を構成する基層(支持構造体)を介して積層された構造を有し、一方の圧電材料薄膜が伸びたとき、他方の圧電材料薄膜が縮む。尚、2枚の圧電材料薄膜を、分極方向を対称に配置した形式(シリーズ・タイプ)と、分極方向を非対称に(同一方向に)配置した形式(パラレル・タイプ)とがある。積層型の圧電アクチュエータは、例えば、長さ方向に伸縮する多数の圧電材料薄膜と基層とが積層された構造を有する。そして、これらの構造を有する変位手段にあっては、長さ方向に伸縮する圧電材料薄膜の動きによって、その一端部が駆動(上下動)され、これによって、ミラーに変位が生じ、また、梁を捻り回動軸としてミラーが回動運動する。基層(支持構造体)は、例えば、シリコン層、あるいは、酸化シリコン層、あるいは、シリコン層と酸化シリコン層との積層構造から構成することができる。圧電アクチュエータの構造に依っては、基層を第1活性層から構成することができる。
【0022】
圧電材料薄膜を構成する材料として、PbZrO3とPbTiO3の固溶体であるPZT[ジルコン酸チタン酸鉛、Pb(Zr,Ti)O3];PZTにNb、Co、Mnを添加したPZT系セラミックス材料;PZTにペロブスカイトABO3を加えた3成分系のPZT系セラミックス材料;PbTiO3系セラミックス材料;LiNbO3系セラミックス材料;BaTiO3−SiO2−Al23やBaTiO3−Nb25といったBaTiO3系セラミックス材料;マグネシウム・ニオブ酸鉛[Pb(Mg,Nb)O3]系セラミックス材料;ZnO;AlNを例示することができる。
【0023】
圧電材料薄膜は、例えば、
(1)RFマグネトロンスパッタリング法等を含むスパッタリング法や、エキシマレーザ等を用いたレーザアブレーション法といった各種物理的気相成長法(PVD法)
(2)原料として、例えば、Pb(C254、Zr(DPM)4、Ti(i−C37O)4等の有機金属化合物を用いたMOCVD法
(3)例えば、酢酸鉛[Pb(CH3COOH)2]、チタンイソプロポキシド[Ti(OCH(CH324]、及び、ジルコンイソプロポキシド[Zr(OCH2CH2CH34]を金属原料として用い、係る原料溶液をスピンコーティング法等で成膜し、熱処理することによって緻密化、結晶化させて圧電材料薄膜を得るゾル・ゲル法
(4)PZT系セラミックス材料粉末をスラリー化し、スピンコーティング法等に基づき圧電材料薄膜を成膜するコンポジット法を含む、スピンコーティング法
(5)スクリーン印刷法
(6)メッキ法、
(7)ジルコニウム、チタン等の水溶液を圧力容器内に入れ、加熱、加圧することで圧電材料薄膜を成膜する水熱合成法
(8)サブミクロンサイズの原料粉末を合すと混合してエアロゾルとし、吹き付けることで圧電材料薄膜を成膜するエアロゾルデポジッション法
等によって成膜することができる。
【0024】
変位手段を構成する基層(支持構造体)と圧電材料薄膜との間に下部電極を設け、圧電材料薄膜の上に上部電極を設ける。下部電極として、Pt/Ti積層構造を挙げることができる。尚、Ti層が基層と接し、Ti層は密着層として機能する。また、上部電極を構成する材料として、白金(Pt)、金(Au)、酸化ルテニウム(RuOX)、酸化イリジウム(IrOX)、又は、酸化イリジウム−ハフニウム(Ir−Hf−O系材料)、Ru、Ru2/Ruの積層構造、Ir、IrO2/Irの積層構造、Pt、Pd、Pt/Tiの積層構造、Pt/Taの積層構造、Pt/Ti/Taの積層構造、La0.5Sr0.5CoO3(LSCO)、Pt/LSCOの積層構造、YBa2Cu37を例示することができる。電極の成膜は、スパッタリング法やパルスレーザアブレーション法にて行うことができる。電極のパターニングは、例えばイオンミーリング法やRIE法にて行うことができる。
【0025】
変位手段を静電駆動アクチュエータから構成する場合、ミラー本体部の端部に可動電極を設け、ミラー本体部の端部と面する保持部に駆動電極を設け、可動電極と駆動電極との間に生じる静電力によって、ミラーを変位・駆動・回動させばよい。
【0026】
変位部材を熱駆動アクチュエータから構成する場合、熱膨張係数の異なる2種類の材料層(例えば、Si層とAu層の積層構造、Si層とAl層の積層構造、熱膨張係数の異なるポリイミド層の積層構造)を積層した熱バイモルフ型とし、これらの2種類の材料層に例えば電流を流すことで温度変化を生じさせる。その結果、変位手段が撓み、これによって、ミラーを変位・駆動・回動させることができる。あるいは、厚さの異なる2本の梁を先端で結合したU字型とし、電流を流すと、細い梁構造の方が太い梁構造よりも抵抗値が高いので発熱量が多く、その結果、太い梁構造に向かって曲がり、ミラーを変位・駆動・回動させることができる。あるいは又、変位手段を、例えばTiとNiの合金から成る形状記憶合金から構成してもよい。
【0027】
ミラーを構成する光反射層は、ミラー本体部の表面(おもてめん)に形成された金属膜あるいは合金膜から構成することができ、例えば、各種の物理的気相成長法(PVD法)や各種の化学的気相成長法(CVD法)にて形成することができる。光反射層を構成する材料として、具体的には、金(Au)、銀(Au)、アルミニウム(Al)を例示することができる。ミラー本体部は、具体的には、上述したとおり、シリコン層(第1活性層)から構成することができる。ミラー本体部の外形形状は、円形、楕円形、長円形(半円と2本の線分が組み合わされた形状)、正方形、長方形、台形等を含む矩形等、本質的に任意の形状とすることができる。また、光反射層の外形形状も、円形、楕円形、長円形、正方形、長方形、台形等を含む矩形等、本質的に任意の形状とすることができる。ミラー本体部と光反射層とを、同じ、あるいは、類似、あるいは、相似した外形形状としてもよいし、異なる外形形状としてもよい。更には、ミラー本体部と光反射層とを同じ大きさとしてもよいし、光反射層よりもミラー本体部を大きくしてもよい。
【実施例1】
【0028】
実施例1は、本発明のミラー構造体(MEMSスキャナ)及びその製造方法に関する。図3の矢印A−Aに沿った実施例1のミラー構造体の模式的な一部断面図を図1に示し、図3の矢印B−Bに沿った実施例1のミラー構造体の模式的な一部断面図を図2に示し、実施例1のミラー構造体を上方から眺めた模式図を図3に示し、実施例1のミラー構造体を裏面から眺めた模式図を図4に示す。
【0029】
実施例1のミラー構造体10は、
(A)ミラー本体部22、及び、このミラー本体部22の表面に設けられた光反射層21を備えたミラー20、
(B)ミラー20を支持するミラー支持部27、並びに、
(C)ミラー支持部27を保持する保持部40、
から成り、
ミラー本体部22の裏面26には、貼合せ層104を介して補強部30が設けられている。
【0030】
ここで、ミラー本体部22は、額縁状のフレーム部(枠部)23、フレーム部23の内側にフレーム部23と離間して設けられた光反射層形成部24、及び、フレーム部23と光反射層形成部24とを連結する2本の連結部25から構成されている。ミラー支持部27は、仮想直線IL上に配置された2本の梁(トーションバー)28A,28Bから成る。ミラー20の両端は各梁28A,28Bによって支持されている。そして、ミラー20は、梁28A,28B(仮想直線IL)を捻り回動軸として回動運動する。具体的には、フレーム部23の両端は各梁28A,28Bによって支持されている。また、連結部25は、仮想直線ILと垂直な方向に延びている。尚、図3及び図4において、梁28A,28Bを明確化するために、これらに斜線を付した。同様に、後述する変位手段50を明確化するために、これらにも斜線を付した。
【0031】
補強部(リブあるいはリブ構造、凹凸部)30は、仮想直線ILと直交する方向に延びる部分を有する。具体的には、補強部30の平面形状は、開口31が正方形を有する井桁形状であり、正方形の各辺は、仮想直線ILと平行な方向、及び、直交する方向に延びている。
【0032】
実施例1にあっては、貼合せ層104はSiO2から成る。また、保持部40は、光反射層21の側から、第1活性層105、貼合せ層104、第2活性層103、絶縁層102、及び、支持基板101が積層された構造を有する。更には、ミラー本体部22及びミラー支持部27は第1活性層105から成り、補強部30は第2活性層103から成る。ここで、第1活性層105及び第2活性層103はシリコン層から構成されており、支持基板(ハンドル層)101はシリコン基板から構成されており、絶縁層(ボックス層)102はSiO2から構成されている。第2活性層103、絶縁層(ボックス層)102及び支持基板(ハンドル層)101が積層された構造(積層基材100の一部)は、より具体的には、SOI基板から構成されており、SOI基板の表面を酸化することで第2活性層103の表面に貼合せ層104が形成されている。ミラー20を構成する光反射層21は、ミラー本体部22の表面(おもてめん)に形成された金属膜、具体的には、アルミニウム(Al)薄膜から成る。ミラー本体部22の外形形状は、四隅が切り欠かれた正方形であり、光反射層21の外形形状も、四隅が切り欠かれた正方形であり、光反射層21よりもミラー本体部22は大きい。
【0033】
ミラー20を変位させ、あるいは又、梁28A,28Bを捻り回動軸としてミラー20を回動運動させるために、ミラー構造体10には変位手段50が設けられている。尚、図1にあっては、変位手段50の図示を省略している。変位手段50は、実施例1にあっては、ミラー支持部27と保持部40との間に配設された、ユニモルフ型の圧電アクチュエータから構成されている。具体的には、この変位手段50の一端は保持部40から延び、他端はミラー支持部27から延びている。ユニモルフ型の圧電アクチュエータは、長さ方向に伸縮する1枚の圧電材料薄膜から構成されている。そして、このような長さ方向に伸縮する圧電材料薄膜の動きによって、その他端が駆動(上下動)され、これによって、ミラー20に変位が生じ、また、梁28A,28Bを捻り回動軸としてミラー20が回動運動する。圧電材料薄膜は、PbZrO3とPbTiO3の固溶体であるPZT[ジルコン酸チタン酸鉛、Pb(Zr,Ti)O3]から成る。
【0034】
ミラー本体部22の軽量化を図るために、補強部30と補強部30との間に位置するミラー本体部22の部分は、補強部30と貼合せ層104を介して接するミラー本体部22の部分の厚さ(t1B)よりも薄い。また、貼合せ層104の厚さtBL、補強部30の高さ(第2活性層103の厚さt2)、補強部30の厚さ(仮想直線ILと平行な方向及び垂直な方向に沿った長さ)t、仮想直線ILと平行な方向に沿った補強部30の形成ピッチP1、仮想直線ILと垂直な方向に沿った補強部30の形成ピッチP2を以下のとおりとした。更には、第2活性層103、絶縁層102及び支持基板101の総厚t0を以下のとおりとした。また、ミラー本体部22を構成するフレーム部23の仮想直線ILと平行な方向に沿った長さL11、及び、垂直な方向に沿った長さL12、ミラー本体部22を構成する光反射層形成部24の仮想直線ILと平行な方向に沿った長さL21、及び、垂直な方向に沿った長さL12を以下のとおりとした。尚、
0.05≦t2/t0≦0.3
0.1≦t1A/t1B≦0.5
を満足している。
【0035】
[表1]
1A=15μm
1B=45μm
BL=1μm
2 =120μm
t =10μm
1 =100μm
2 =100μm
0 =400μm
11=1.3mm
12=1.5mm
21=1.1mm
22=1.3mm
【0036】
以下、実施例1のミラー構造体の製造方法を、図18、図19、図20、図21の支持基板等の模式的な一部断面図を参照して、説明する。
【0037】
[工程−100]
先ず、第2活性層103、絶縁層(ボックス層)102及び支持基板(ハンドル層)101が積層されたSOI基板の表面を熱酸化することで第2活性層103の表面に貼合せ層104を形成する。これによって、貼合せ層104、第2活性層103、絶縁層102及び支持基板101が積層されて成る積層基材100を得る(図18参照)。一方、シリコン基板110の一部(補強部30と補強部30との間に位置するミラー本体部22の部分となる部分)にRIE法に基づき凹部22Aを形成しておく(図18参照)。尚、このシリコン基板110が、最終的に第1活性層105となる。
【0038】
[工程−110]
次いで、深堀りRIE法に基づき、積層基材100を貼合せ層104の側からエッチングすることで、積層基材100から成る保持部形成領域100A及び補強部形成領域100Bを設けることができる(図19参照)。
【0039】
[工程−120]
その後、貼合せ層104に第1活性層105を貼り合わせる。具体的には、貼合せ層104と、凹部22Aが形成されたシリコン基板110の面を重ね合わせ、熱圧着することで、積層基材100とシリコン基板110とを積層することができる。その後、シリコン基板110を研磨・エッチングすることで、シリコン基板110を薄くし、第1活性層105を得る(図20参照)。
【0040】
[工程−130]
次いで、周知のエッチング技術に基づき、保持部形成領域100A以外の支持基板101及び絶縁層102を除去する(図21参照)。支持基板101の除去の際には、絶縁層102がエッチングストップ層として機能する。
【0041】
[工程−140]
その後、第1活性層105上に、周知のスパッタリング法に基づきアルミニウム層を形成する。次いで、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、アルミニウム層、第1活性層105をパターニングすることで、光反射層21及びミラー本体部22から構成されたミラー20を得ることができる(図1〜図4参照)。
【0042】
以上の工程によって、
第1活性層105、貼合せ層104、第2活性層103、絶縁層102、及び、支持基板101が積層された構造を有する保持部40、
第1活性層105から成るミラー本体部22及びミラー支持部27、並びに、
第2活性層103から成り、ミラー本体部22の裏面26に貼合せ層104を介して設けられた補強部30、
を得ることができる。
【0043】
[工程−150]
次いで、周知の方法で、第1活性層105の上に、Pt層/Ti層の積層構造を有する下部電極、圧電材料薄膜、白金(Pt)から成る上部電極を周知の方法で、順次、成膜し、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、上部電極、圧電材料薄膜、下部電極をパターニングすることで、変位手段50を設けることができる。変位手段50の一部は、一種の配線として第1活性層105の上を延在している。
【0044】
尚、以上に説明したミラー構造体の製造方法の工程の順序は、適宜、変更することができる。
【0045】
実施例1のミラー構造体の製造方法にあっては、積層基材100をパターニングすることで、保持部形成領域100A及び補強部形成領域100Bを積層基材100に設け、次いで、貼合せ層104に第1活性層105を貼り合わせ、その後、保持部形成領域100A以外の支持基板101及び絶縁層102を除去する。従って、凹部をシリコン基板に形成した後、凹部の底面において、補強部が備えられたミラー及びミラー支持部を形成するためのシリコン基板の加工を行う必要が無く、ミラー20及びミラー支持部27を、高精度で、しかも、高い量産性、高い歩留りにて加工することができる。加えて、ミラー本体部22の裏面には貼合せ層104を介して補強部(リブあるいはリブ構造)30が設けられているので、ミラー20の軽量化、高剛性化を図ることができる。
【0046】
実施例1のミラー構造体10において、共振駆動時のミラー20の振り角±8.1度、共振周波数20.6kHzにおける仮想直線ILと平行な方向における撓み量(『平行方向撓み量』と呼ぶ)、及び、仮想直線ILと垂直な方向における撓み量(『垂直方向撓み量』と呼ぶ)をシミュレーションにて求めた。その結果を表2に示す。また、補強部30が設けられていない点を除き、実施例1のミラー構造体10と同じ構造を有するミラー構造体(比較例1のミラー構造体)、補強部30が設けられておらず、ミラー本体部22の厚さを45μm、一定とし、しかも、フレーム部と光反射層形成部とが分離されていない点を除き、実施例1のミラー構造体10と同じ構造を有するミラー構造体(比較例2のミラー構造体)についても、平行方向撓み量及び垂直方向撓み量をシミュレーションにて求めた。その結果を表2に示す。
【0047】
[表2]
平行方向撓み量 垂直方向撓み量
実施例1 0.08μm 0.04μm
比較例1 0.30μm 0.30μm
比較例2 0.83μm 0.57μm
【0048】
表2からも明らかなとおり、実施例1のミラー構造体10における平行方向撓み量及び垂直方向撓み量は、比較例1、比較例2のミラー構造体における平行方向撓み量及び垂直方向撓み量よりも格段に減少している。一般に、ミラー構造体における平行方向撓み量及び垂直方向撓み量は、入射光の波長をλとしたとき、(λ/4)以下であることが望ましく、この観点からも、実施例1のミラー構造体10における平行方向撓み量及び垂直方向撓み量は、極めて好ましい値である。
【実施例2】
【0049】
実施例2は、実施例1にて説明したミラー構造体を適用した表示装置、より具体的には、画像表示装置に関する。図5に実施例2の表示装置の概念図を示す。実施例2の表示装置は、例えば、半導体レーザ素子から成る光源、光源から出射された光を平行光とし、コリメートするレンズ群(図5では、1枚のレンズで示す)、レンズ群から出射された平行光が入射され、この平行光をX方向及びY方向にラスタースキャンする実施例1にて説明したミラー構造体(MEMSスキャナ)10A,10B、及び、ミラー構造体10Bから出射された光が衝突し、最終的に画像が表示されるスクリーンから構成された画像表示装置、具体的には、画像表示用のプロジェクターである。場合によっては、ミラー構造体10A,10Bのいずれか一方のみを実施例1にて説明したミラー構造体から構成してもよい。
【0050】
表示装置における画素の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、640×480、854×480、1024×768、1920×1080を例示することができる。ミラー構造体の数は、例えば、1である。
【0051】
表示装置においてカラー表示を行う場合、光源は、赤色を出射する赤色発光半導体レーザ素子、緑色を出射する緑色発光固体レーザ、青色を出射する青色発光半導体レーザ素子、これらの半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を1本のレーザ光に纏めるためのダイクロイックプリズムから構成されていてもよい。あるいは又、光源を、白色光を出射する1つの半導体レーザ素子から構成し、この半導体レーザ素子から出射された白色光を、赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを、逐次、通過させ、赤色、緑色、青色の光の三原色を取り出す構成とすることもできる。あるいは又、光源を、白色光を出射する1つの半導体レーザ素子、ダイクロイックプリズム及び波長選択を行う狭帯域フィルタから構成することで、赤色、緑色、青色の光の三原色を取り出す構成とすることもできる。但し、カラー表示の方法は、以上に説明した方法に限定するものではなく、本質的に任意の方法とすることができる。また、光源として、その他、有機EL(Electro Luminescence)発光素子、無機EL発光素子、発光ダイオード(LED)を用いることもできる。
【0052】
ラスタースキャンを行う場合、高速でのZ軸周りのミラーの回動を共振に基づき行い、低速でのX軸周りのミラーの回動を非共振に基づき行うことが好ましい。そして、この場合には、低速でのX軸周りのミラーの回動によって表示装置の垂直方向のスキャンが行われ、高速でのZ軸周りのミラーの回動によって表示装置の水平方向のスキャンが行われる。尚、表示装置、それ自体の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0053】
実施例3も、実施例1にて説明したミラー構造体を適用した表示装置であるが、より具体的には、頭部装着型ディスプレイ(HMD,Head Mounted Display)に関する。
【0054】
実施例3における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図を図6に示し、頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図を図7に示す。また、頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図を図8に示し、頭部装着型ディスプレイを観察者240の頭部に装着した状態を上方から眺めた図を図9に示す。更には、実施例3における頭部装着型ディスプレイに組み込まれた画像表示装置の概念図を図10に示す。尚、図9においては、便宜上、画像表示装置のみを示し、フレームの図示は省略している。
【0055】
頭部装着型ディスプレイにおける画素の数は、頭部装着型ディスプレイに要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、640×480、854×480、1024×768、1920×1080を例示することができる。ミラー構造体の数は、例えば、1である。
【0056】
実施例3における頭部装着型ディスプレイは、
(A)観察者240の頭部に装着される眼鏡型のフレーム210、及び、
(B)2つの画像表示装置300、
を備えている。
【0057】
ここで、各画像表示装置300は、
(イ)光源351、
(ロ)光源351から出射された光を平行光とするコリメート光学系352、
(ハ)コリメート光学系352から出射された平行光を走査する走査手段353、及び、
(ニ)走査手段353によって走査された平行光をリレーし、出射するリレー光学系354、
から構成されている。尚、画像生成装置310全体が筐体313(図10では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体313には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介してリレー光学系354から光が出射される。そして、各筐体313が、結合部材220の端部分に、ビスあるいは接着剤(図示せず)を用いて取り付けられている。また、筐体313に、導光手段320が取り付けられている。
【0058】
光源351は、赤色を発光する赤色発光素子351R、緑色を発光する緑色発光素子351G、青色を発光する青色発光素子351Bから構成されており、各発光素子は半導体レーザ素子から成る。光源351から出射された3原色の光は、クロスプリズム355を通過することで色合成が行われ、光路が一本化され、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系352に入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー356で反射され、入射した平行光を2次元的に走査する実施例1のミラー構造体10A,10B(実施例2も参照)から成る走査手段353(1つのミラー構造体のみを図示した)によって水平走査及び垂直走査が行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系354を通過し、平行光とされた光束が導光手段320に入射する。
【0059】
画像生成装置において、コリメート光学系352にて複数の平行光とされた光を導光板に入射させるが、このような、平行光であることの要請は、これらの光が導光板へ入射したときの光波面情報が、第1偏向手段と第2偏向手段を介して導光板から出射された後も保存される必要があることに基づく。尚、複数の平行光を生成させるためには、具体的には、コリメート光学系352における焦点距離の所(位置)に、例えば、クロスプリズム355における光射出部を位置させればよい。コリメート光学系352は、画素の位置情報を導光手段の光学系における角度情報に変換する機能を有する。コリメート光学系352として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。
【0060】
頭部装着型ディスプレイは、上述したとおり、2つの画像表示装置300を結合する結合部材220を有している。結合部材220は、観察者240の2つの瞳241の間に位置するフレーム210の中央部分210Cの観察者に面する側に(即ち、観察者240とフレーム210との間に)、例えば、ビス(図示せず)を用いて取り付けられている。更には、結合部材220の射影像は、フレーム210の射影像内に含まれる。即ち、観察者240の正面から頭部装着型ディスプレイを眺めたとき、結合部材220はフレーム210によって隠されており、結合部材220は視認されない。
【0061】
具体的には、一方の画像生成装置310Aの取付部中心310ACとフレーム210の一端部(一方の智)210Aとの間の距離をα、結合部材220の中心220Cからフレームの一端部(一方の智)210Aまでの距離をβ、他方の画像生成装置310Bの取付部中心310BCとフレームの一端部(一方の智)210Aとの間の距離をγ、フレームの長さをLとしたとき、
α=0.1×L
β=0.5×L
γ=0.9×L
である。尚、0.01×L≦α≦0.30×L、好ましくは、0.05×L≦α≦0.25×L、0.35×L≦β≦0.65×L、好ましくは、0.45×L≦β≦0.55×L、0.70×L≦γ≦0.99×L、好ましくは、0.75×L≦γ≦0.95×Lを満足することが望ましい。
【0062】
そして、結合部材220によって2つの画像表示装置300が結合されているが、具体的には、結合部材220の各端部に、画像生成装置310A,310Bが、取付け状態調整可能に取り付けられている。各画像生成装置310A,310Bは、観察者240の瞳241よりも外側に位置している。
【0063】
結合部材220の各端部への画像生成装置(具体的には、画像生成装置310A,310B)の取付けは、具体的には、例えば、結合部材の各端部の3箇所に貫通孔(図示せず)を設け、貫通孔に対応したタップ付きの孔部(螺合部。図示せず)を画像生成装置310A,310Bに設け、各貫通孔にビス(図示せず)を通し、画像生成装置310A,310Bに設けられた孔部に螺合させる。ビスと孔部との間にはバネを挿入しておく。こうして、ビスの締め付け状態によって、画像生成装置の取付け状態(結合部材に対する画像生成装置の傾き)を調整することができる。取付け後、蓋(図示せず)によってビスを隠す。尚、図7、図13、図16において、結合部材220,230を明示するために、結合部材220,230に斜線を付した。
【0064】
フレーム210は、観察者240の正面に配置されるフロント部210Bと、フロント部210Bの両端に蝶番211を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部212と、各テンプル部212の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)213から成り、結合部材220は、観察者240の2つの瞳241の間に位置するフロント部210Bの中央部分210C(通常の眼鏡におけるブリッジの部分に相当する)に取り付けられている。そして、結合部材220の観察者240に面する側にノーズパッド214が取り付けられている。尚、図8、図14あるいは図17においては、ノーズパッド214の図示を省略している。フレーム210及び結合部材220は金属や合金、プラスチック、あるいは、これらの組合せから作製されており、結合部材220の形状は湾曲した棒状である。尚、結合部材220の形状は、結合部材220の射影像がフレーム210の射影像内に含まれる限りにおいて、本質的に任意であり、例えば、棒状の他、細長い板状を例示することができる。
【0065】
更には、一方の画像生成装置310Aから延びる配線(信号線や電源線等)215が、テンプル部212、及び、モダン部213の内部を介して、モダン部213の先端部から外部に延びており、図示しない外部回路(制御回路)に接続されている。更には、各画像生成装置310A,310Bはヘッドホン部216を備えており、各画像生成装置310A,310Bから延びるヘッドホン部用配線217が、テンプル部212、及び、モダン部213の内部を介して、モダン部213の先端部からヘッドホン部216へと延びている。ヘッドホン部用配線217は、より具体的には、モダン部213の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部216へと延びている。このような構成にすることで、ヘッドホン部216やヘッドホン部用配線217が乱雑に配置されているといった印象を与えることがなく、すっきりとした頭部装着型ディスプレイとすることができる。
【0066】
また、フロント部210Bの中央部分210Cには、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズ(これらは図示せず)とから構成された撮像装置218が取り付けられている。具体的には、中央部分210Cには貫通孔が設けられており、中央部分210Cに設けられた貫通孔と対向する結合部材220の部分には凹部が設けられており、この凹部内に撮像装置218が配置されている。中央部分210Cに設けられた貫通孔から入射した光が、レンズによって固体撮像素子に集光される。固体撮像素子からの信号は、撮像装置218から延びる配線(図示せず)を介して、画像生成装置310Aに送出される。尚、配線は、結合部材220とフロント部210Bとの間を通り、一方の画像生成装置310Aに接続されている。このような構成にすることで、撮像装置が頭部装着型ディスプレイに組み込まれていることを、視認させ難くすることができる。
【0067】
実施例3にあっては、図10に示すように、リレー光学系354にて平行光とされた光束が入射され、導光され、出射される導光手段320は、
(a)全体として画像生成装置310よりも観察者240の顔の中心側に配置され、画像生成装置310から出射された光が入射され、導光され、観察者240の瞳241に向かって出射される導光板321、
(b)導光板321に入射された光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射された光を偏向させる第1偏向手段330、及び、
(c)導光板321の内部を全反射により伝播した光を導光板321から出射させるために、導光板321の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段340、
から構成されている。尚、「全反射」という用語は、内部全反射、あるいは、導光板内部における全反射を意味する。以下においても同様である。
【0068】
第1偏向手段330及び第2偏向手段340は導光板321の内部に配設されている。そして、第1偏向手段330は、導光板321に入射された光を反射し、第2偏向手段340は、導光板321の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。即ち、第1偏向手段330は反射鏡として機能し、第2偏向手段340は半透過鏡として機能する。より具体的には、導光板321の内部に設けられた第1偏向手段330は、アルミニウムから成り、導光板321に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)から構成されている。一方、導光板321の内部に設けられた第2偏向手段340は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体から構成されている。誘電体積層膜は、例えば、高誘電率材料としてのTiO2膜、及び、低誘電率材料としてのSiO2膜から構成されている。誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体に関しては、特表2005−521099に開示されている。図面においては6層の誘電体積層膜を図示しているが、これに限定するものではない。誘電体積層膜と誘電体積層膜との間には、導光板321を構成する材料と同じ材料から成る薄片が挟まれている。尚、第1偏向手段330においては、導光板321に入射された平行光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射された平行光が反射(又は回折)される。一方、第2偏向手段340においては、導光板321の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射(又は回折)され、導光板321から平行光の状態で出射される。
【0069】
第1偏向手段330は、導光板321の第1偏向手段330を設ける部分324を切り出すことで、導光板321に第1偏向手段330を形成すべき斜面を設け、係る斜面に光反射膜を真空蒸着した後、導光板321の切り出した部分324を第1偏向手段330に接着すればよい。また、第2偏向手段340は、導光板321を構成する材料と同じ材料(例えば、ガラス)と誘電体積層膜(例えば、真空蒸着法にて成膜することができる)とが多数積層された多層積層構造体を作製し、導光板321の第2偏向手段340を設ける部分325を切り出して斜面を形成し、係る斜面に多層積層構造体を接着し、研磨等を行って、外形を整えればよい。こうして、導光板321の内部に第1偏向手段330及び第2偏向手段340が設けられた導光手段320を得ることができる。
【0070】
尚、第1偏向手段330は、例えば、上述したとおり、合金を含む金属から構成され、導光板に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、導光板に入射された光を回折させる回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。また、第2偏向手段340は、上述したとおり、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体や、ハーフミラー、偏光ビームスプリッター、ホログラム回折格子膜から構成することができる。
【0071】
導光板321は、導光板321の軸線と平行に延びる2つの平行面(第1面322及び第2面323)を有している。第1面322と第2面323とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面322から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面322から出射される。尚、導光板321は導光板の軸線(y方向)と平行に延びる2つの平行面(第1面及び第2面)を有しているが、光が入射する導光板321の面を導光板入射面、光が出射する導光板321の面を導光板出射面としたとき、第1面によって導光板入射面及び導光板出射面が構成されていてもよいし、第1面によって導光板入射面が構成され、第2面によって導光板出射面が構成されていてもよい。導光板321を構成する材料として、石英ガラスやBK7等の光学ガラスを含むガラスや、プラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)を挙げることができる。導光板の形状は、平板に限定するものではなく、湾曲した形状を有していてもよい。
【0072】
このように、実施例3における頭部装着型ディスプレイ(HMD)にあっては、結合部材220が2つの画像表示装置300を結合しており、この結合部材220は、観察者240の2つの瞳241の間に位置するフレーム210の中央部分210Cに取り付けられている。即ち、各画像表示装置300は、フレーム210に、直接、取り付けられた構造とはなっていない。従って、観察者240がフレーム210を頭部に装着したとき、テンプル部212が外側に向かって広がった状態となり、その結果、フレーム210が変形したとしても、このようなフレーム210の変形によって、画像生成装置310A,310Bの変位(位置変化)が生じないか、生じたとしても、極僅かである。それ故、左右の画像の輻輳角が変化してしまうことを確実に防止することができる。しかも、フレーム210のフロント部210Bの剛性を高める必要がないので、フレーム210の重量増加、デザイン性の低下、コストの増加を招くことがない。また、画像表示装置300は、眼鏡型のフレーム210に、直接、取り付けられていないので、観察者の嗜好によってフレーム210のデザインや色等を自由に選択することが可能であるし、フレーム210のデザインが受ける制約も少なく、デザイン上の自由度が高い。加えて、観察者の正面から頭部装着型ディスプレイを眺めたとき、結合部材220はフレーム210に隠れている。従って、高いデザイン性、意匠性を頭部装着型ディスプレイに与えることができる。
【実施例4】
【0073】
実施例4は実施例3の変形である。実施例4における頭部装着型ディスプレイに組み込まれた画像表示装置400の概念図を図11の(A)に示す。また、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図を図11の(B)に示す。実施例4にあっては、画像生成装置310は、実施例3と同様の構成、構造を有する。また、導光手段420は、第1偏向手段及び第2偏向手段の構成、構造が異なる点を除き、基本的な構成、構造、即ち、
(a)全体として画像生成装置310よりも観察者240の顔の中心側に配置され、画像生成装置310から出射された光が入射され、導光され、観察者240の瞳241に向かって出射される導光板421、
(b)導光板421に入射された光が導光板421の内部で全反射されるように、導光板421に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
(c)導光板421の内部を全反射により伝播した光を導光板421から出射させるために、導光板421の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段、
から構成されている点は、実施例3の導光手段320と同じである。
【0074】
実施例4にあっては、第1偏向手段及び第2偏向手段は導光板421の表面(具体的には、導光板421の第2面423)に配設されている。そして、第1偏向手段は、導光板421に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板421の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する。ここで、第1偏向手段及び第2偏向手段は、回折格子素子、具体的には反射型回折格子素子、より具体的には反射型体積ホログラム回折格子から成る。以下の説明において、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材430』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材440』と呼ぶ。
【0075】
そして、実施例4にあっては、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440を、異なるP種類(具体的には、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層が積層されて成る構成としている。尚、フォトポリマー材料から成る各回折格子層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、従来の方法で作製されている。より具体的には、赤色の光を回折反射する回折格子層と、緑色の光を回折反射する回折格子層と、青色の光を回折反射する回折格子層とが積層された構造を、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440は有する。回折格子層(回折光学素子)に形成された干渉縞のピッチは一定であり、干渉縞は直線状であり、z軸方向に平行である。尚、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440の軸線方向をy軸方向、法線方向をx軸方向とする。ここで、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440のy軸方向はミラーのX軸の方向に相当し、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440のz軸方向はミラーのY軸の方向に相当する。図11の(A)及び(B)においては、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440を1層で示した。このような構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。
【0076】
第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440を構成する材料として、上述したとおり、フォトポリマー材料を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440の構成材料や基本的な構造は、従来の反射型体積ホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。反射型体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440を、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。
【0077】
図11の(B)に反射型体積ホログラム回折格子の拡大した模式的な一部断面図を示す。反射型体積ホログラム回折格子には、傾斜角φを有する干渉縞が形成されている。ここで、傾斜角φとは、反射型体積ホログラム回折格子の表面と干渉縞の成す角度を指す。干渉縞は、反射型体積ホログラム回折格子の内部から表面に亙り、形成されている。干渉縞は、ブラッグ条件を満たしている。ここで、ブラッグ条件とは、以下の式(A)を満足する条件を指す。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の、Θ、傾斜角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりである。
【0078】
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°−(φ+ψ) (B)
【0079】
第1回折格子部材430は、上述したとおり、導光板421の第2面423に配設(接着)されており、第1面422から導光板421に入射されたこの平行光が導光板421の内部で全反射されるように、導光板421に入射されたこの平行光を回折反射する。更には、第2回折格子部材440は、導光板421の第2面423に配設(接着)されており、導光板421の内部を全反射により伝播したこの平行光を、複数回、回折反射し、導光板421から平行光のまま第1面422から出射する。
【0080】
そして、導光板421にあっても、赤色、緑色及び青色の3色の平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板421が薄く導光板421の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材440に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板421に入射する平行光のうち、第2回折格子部材440に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材440から離れる方向の角度をもって導光板421に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材430において回折反射される平行光であって、第2回折格子部材440に近づく方向の角度をもって導光板421に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板421に入射する平行光よりも、導光板421の内部を伝播していく光が導光板421の内面と衝突するときの導光板421の法線と成す角度が小さくなるからである。また、第2回折格子部材440の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材430の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板421の軸線に垂直な仮想面に対して対称な関係にある。
【0081】
実施例4における頭部装着型ディスプレイは、上述したとおり、導光手段420が異なる点を除き、実質的に、実施例3における頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例5】
【0082】
実施例5も、実施例3の変形である。実施例5における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図を図12に示し、実施例5における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図を図13に示す。また、実施例5における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図を図14に示す。
【0083】
実施例5にあっては、導光手段は、画像生成装置310A,310Bよりも観察者240の顔の中心側に配置され、画像生成装置310A,310Bから出射された光が入射され、観察者240の瞳241に向かって出射される半透過ミラー520から構成されている。尚、実施例5にあっては、画像生成装置310A,310Bから出射された光は、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材521の内部を伝播して半透過ミラー520に入射する構造としているが、空気中を伝播して半透過ミラー520に入射する構造としてもよい。
【0084】
各画像生成装置310A,310Bは、結合部材220の両端部分に、例えば、ビスを用いて取り付けられている。また、部材521が各画像生成装置310A,310Bに取り付けられ、半透過ミラー520が部材521に取り付けられている。実施例5における頭部装着型ディスプレイは、以上の相違点を除き、実質的に、実施例3における頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例6】
【0085】
実施例6も、実施例3の変形である。実施例3における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図を図15に示し、実施例6における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図を図16に示す。また、実施例6における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図を図17に示す。
【0086】
実施例6における頭部装着型ディスプレイにあっては、棒状の結合部材230が、実施例3と異なり、2つの画像生成装置310A,310Bを結合する代わりに、2つの導光手段320を結合している。尚、2つの導光手段320を一体的に作製し、係る一体的に作製された導光手段320に結合部材230が取り付けられている形態とすることもできる。
【0087】
ここで、実施例6における頭部装着型ディスプレイにあっても、結合部材230は、観察者240の2つの瞳241の間に位置するフレーム210の中央部分210Cに、例えば、ビスを用いて取り付けられており、各画像生成装置310は、観察者240の瞳241よりも外側に位置している。尚、各画像生成装置310は、導光手段320の端部に取り付けられている。結合部材230の中心230Cからフレーム210の一端部までの距離をβ、フレーム210の長さをLとしたとき、β=0.5×Lを満足している。尚、実施例6においても、α’の値、γ’の値は、実施例3のαの値、γの値と同じ値である。
【0088】
実施例6にあっては、フレーム210、各画像表示装置300、画像生成装置310、導光手段320は、実施例3において説明したフレーム210、画像表示装置300、画像生成装置310、導光手段320と同じ構成、構造を有する。それ故、これらの詳細な説明は省略する。また、実施例6における頭部装着型ディスプレイも、以上の相違点を除き、実質的に、実施例3における頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【0089】
また、実施例6における棒状の結合部材230が2つの導光手段320を結合している構成、構造を、実施例4〜実施例5において説明した頭部装着型ディスプレイに適用することができる。
【0090】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明したミラー構造体、表示装置の構成、構造、各部の形状、使用した材料、製造方法は例示であり、適宜変更することができる。実施例3〜実施例7に説明した頭部装着型ディスプレイにおいて、場合によっては、テンプル部等のフレームに筐体を直接取り付けてもよい。本発明のミラー構造体は、上述した頭部装着型ディスプレイの他、プロジェクターやレーダ、内視鏡、レーザプリンター、バーコードリーダ等に組み込み、あるいは又、適用することができる。
【0091】
実施例3〜実施例6に説明した頭部装着型ディスプレイにおいて、例えば、導光板に表面レリーフ型ホログラム(米国特許第20040062505A1参照)を配置してもよい。実施例6の導光手段320にあっては、回折格子素子を透過型回折格子素子から構成することもできるし、あるいは又、第1偏向手段及び第2偏向手段の内のいずれか一方を反射型回折格子素子から構成し、他方を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる。あるいは又、回折格子素子を、反射型ブレーズド回折格子素子とすることもできる。また、実施例にあっては、専ら、画像表示装置を2つ備えた両眼型としたが、画像表示装置を1つ備えた片眼型としてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10・・・ミラー構造体、20・・・ミラー、21・・・光反射層、22・・・ミラー本体部、22A・・・凹部、23・・・フレーム部、24・・・光反射層形成部、25・・・連結部、26・・・ミラー本体部の裏面、27・・・ミラー支持部、28A,28B・・・梁(トーションバー)、30・・・補強部、31・・・開口、40・・・保持部、50・・・変位手段、100・・・積層基材、100A・・・保持部形成領域、100B・・・補強部形成領域、101・・・支持基板(ハンドル層)、102・・・絶縁層(ボックス層)、103・・・第2活性層、104・・・貼合せ層、105・・・第1活性層、110・・・シリコン基板、210・・・フレーム、210A・・・フレームの一端部、210B・・・フロント部、210C・・・フレームの中央部分、211・・・蝶番、212・・・テンプル部、313・・・モダン部、214・・・ノーズパッド、215・・・配線(信号線や電源線等)、216・・・ヘッドホン部、217・・・ヘッドホン部用配線、218・・・撮像装置、220,230・・・結合部材、240・・・観察者、241・・・瞳、300,400・・・画像表示装置、310・・・画像生成装置、313・・・筐体、320,420・・・導光手段、321,421・・・導光板、322,422・・・導光板の第1面、323,423・・・導光板の第2面、324,325・・・導光板の一部分、330・・・第1偏向手段、340・・・第2偏向手段、430・・・第1偏向手段(第1回折格子部材)、440・・・第2偏向手段(第2回折格子部材)、352・・・コリメート光学系、353・・・走査手段、354・・・リレー光学系、355・・・クロスプリズム、356・・・全反射ミラー、520・・・半透過ミラー、521・・・部材、IL・・・仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ミラー本体部、及び、該ミラー本体部の表面に設けられた光反射層を備えたミラー、
(B)ミラーを支持するミラー支持部、並びに、
(C)ミラー支持部を保持する保持部、
から成るミラー構造体の製造方法であって、
(a)貼合せ層、第2活性層、絶縁層及び支持基板が積層されて成る積層基材をパターニングすることで、保持部形成領域及び補強部形成領域を設け、次いで、
(b)貼合せ層に第1活性層を貼り合わせ、その後、
(c)保持部形成領域以外の支持基板及び絶縁層を除去する、
各工程を少なくとも備え、以て、
第1活性層、貼合せ層、第2活性層、絶縁層、及び、支持基板が積層された構造を有する保持部、
第1活性層から成るミラー本体部及びミラー支持部、並びに、
第2活性層から成り、ミラー本体部の裏面に貼合せ層を介して設けられた補強部、
を得るミラー構造体の製造方法。
【請求項2】
ミラー支持部は、仮想直線上に配置された2本の梁から成り、
ミラーの両端は各梁によって支持されており、
ミラーは、梁を捻り回動軸として回動運動する請求項1に記載のミラー構造体の製造方法。
【請求項3】
補強部は、前記仮想直線と直交する方向に延びる部分を有する請求項2に記載のミラー構造体の製造方法。
【請求項4】
補強部と補強部との間に位置するミラー本体部の部分の厚さは、補強部と貼合せ層を介して接するミラー本体部の部分の厚さよりも薄い請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のミラー構造体の製造方法。
【請求項5】
貼合せ層はSiO2から成る請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のミラー構造体の製造方法。
【請求項6】
第2活性層の厚さをt2、第2活性層、絶縁層及び支持基板の総厚をt0としたとき、
0.05≦t2/t0≦0.3
を満足する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のミラー構造体の製造方法。
【請求項7】
(A)ミラー本体部、及び、該ミラー本体部の表面に設けられた光反射層を備えたミラー、
(B)ミラーを支持するミラー支持部、並びに、
(C)ミラー支持部を保持する保持部、
から成り、
ミラー本体部の裏面には、貼合せ層を介して補強部が設けられているミラー構造体。
【請求項8】
ミラー支持部は、仮想直線上に配置された2本の梁から成り、
ミラーの両端は各梁によって支持されており、
ミラーは、梁を捻り回動軸として回動運動する請求項7に記載のミラー構造体。
【請求項9】
補強部は、前記仮想直線と直交する方向に延びる部分を有する請求項8に記載のミラー構造体。
【請求項10】
補強部と補強部との間に位置するミラー本体部の部分の厚さは、補強部と貼合せ層を介して接するミラー本体部の部分の厚さよりも薄い請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載のミラー構造体。
【請求項11】
貼合せ層はSiO2から成る請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載のミラー構造体。
【請求項12】
保持部は、光反射層側から、第1活性層、貼合せ層、第2活性層、絶縁層、及び、支持基板が積層された構造を有し、
ミラー本体部及びミラー支持部は第1活性層から成り、
補強部は第2活性層から成る請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載のミラー構造体。
【請求項13】
第2活性層の厚さをt2、第2活性層、絶縁層及び支持基板の総厚をt0としたとき、
0.05≦t2/t0≦0.3
を満足する請求項12に記載のミラー構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−8357(P2012−8357A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144454(P2010−144454)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】