説明

リソグラフィー用洗浄液及び配線形成方法

【課題】ILD材料に対する腐食抑制機能に優れ、かつ、レジスト膜及び下層反射防止膜の除去性能にも優れたリソグラフィー用洗浄液、及びこのリソグラフィー用洗浄液を用いた配線形成方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るリソグラフィー用洗浄液は、4級アンモニウム水酸化物と、水溶性有機溶剤と、水と、無機塩基とを含有する。水溶性有機溶剤は、双極子モーメントが3.0D以上である高極性溶剤と、グリコールエーテル系溶剤と、多価アルコールとを含み、上記高極性溶剤とグリコールエーテル系溶剤との合計含有量が、全量に対して30質量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィー用洗浄液に関し、より詳細には、低誘電体材料等の易腐食性材料を腐食することなく、レジスト膜及び下層反射防止膜を効果的に除去可能なリソグラフィー用洗浄液に関する。さらに本発明は、上記リソグラフィー用洗浄液を用いた配線形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、シリコンウェーハ等の基板上に金属配線層、低誘電体層、絶縁層等を積層して形成されるものであり、このような半導体デバイスは、レジストパターンをマスクとしてエッチング処理を施すリソグラフィー法により、上記各層を加工して製造されている。
【0003】
上記リソグラフィー法において用いられるレジスト膜、一時的積層膜(犠牲膜ともいう)、さらにはエッチング工程において生じた金属配線層や低誘電体層由来の残渣物は、半導体デバイスの支障とならないよう、また、次工程の妨げとならないよう、洗浄液を用いて除去される。
【0004】
また、近年では、半導体デバイスの高密度化、高集積化に伴い、ダマシン法を用いた配線形成方法が採用されている。このような配線形成方法においては、半導体デバイスの金属配線層を構成する金属配線材料として腐食の発生しやすい銅が採用され、さらには、低誘電体層を構成する低誘電体材料(ILD材料ともいう)についても、ますます低誘電率化が進み、腐食の発生しやすいILD材料が採用されるようになっている。したがって、基板の洗浄時に、これらの易腐食性材料に対して腐食を発生しない洗浄液の開発が求められてきた。
【0005】
また、ダマシン法を用いた配線形成方法においては、エッチング処理時の犠牲膜として利用される材料とILD材料との構成が酷似しており、このような酷似した材料の一方(ILD材料)に対して腐食を発生させずデバイス上に残し、他方(犠牲膜)を効率よく除去し得る洗浄液の開発が求められてきた。
【0006】
さらに、従来のアルミニウム配線の形成方法においては、酸素プラズマアッシング処理工程を経て薬液による洗浄処理が行われていたため、洗浄液に対してそれ程高い洗浄能力は求められていなかったが、ILD材料等の易腐食性材料を有する基板の洗浄においては、このような酸素プラズマアッシング処理を用いることができない。したがって、このような酸素プラズマアッシング処理工程を経なくても、前述の各種残渣物を完全に除去できる高い洗浄能力を有する洗浄液の開発が求められてきた。
【0007】
従来、このような半導体デバイス製造工程において使用されるリソグラフィー用洗浄液として、4級アンモニウム水酸化物、水溶性有機溶剤、水、及び防食剤を含有する洗浄液が提案されている(例えば特許文献1,2を参照)。このようなリソグラフィー用洗浄液は、それ以前の洗浄液に比べて、各種残渣物に対して除去性能が大きく改善され、易腐食性材料に対する腐食抑制機能に優れたものであった。
また、4級アンモニウム水酸化物、水溶性有機溶剤、水、及び防食剤を含有し、さらに全量に対して1質量%以下の水酸化カリウムを添加したリソグラフィー用洗浄液も提案されている(特許文献3を参照)。このように水酸化カリウムを添加したリソグラフィー用洗浄液は、ILD材料等の易腐食性材料を腐食することなく、除去性能をより高い水準に保つことができるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−357908号公報
【特許文献2】特開2004−103771号公報
【特許文献3】特表2006−527783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えばレジストパターンをマスクとして低誘電体層にエッチング処理を施す場合、レジスト膜の下層に下層反射防止膜(BARC)が形成されることがある。この場合、レジスト膜及び下層反射防止膜は、次工程の妨げとならないよう、エッチング工程後に洗浄液を用いて除去する必要がある。しかし、エッチングにより変質したレジスト膜や架橋密度の高い下層反射防止膜は除去が困難である一方、低誘電体層を構成するILD材料は腐食の発生しやすいものである。したがって、上述した各特許文献に記載のリソグラフィー用洗浄液では、ILD材料の腐食を抑えながら、レジスト膜及び下層反射防止膜を効果的に除去することは困難であった。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、ILD材料に対する腐食抑制機能に優れ、かつ、レジスト膜及び下層反射防止膜の除去性能にも優れたリソグラフィー用洗浄液、及びこのリソグラフィー用洗浄液を用いた配線形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、リソグラフィー用洗浄液に含有される水溶性有機溶剤を特定の組成とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
本発明の第一の態様は、4級アンモニウム水酸化物と、水溶性有機溶剤と、水と、無機塩基とを含有し、上記水溶性有機溶剤が、双極子モーメントが3.0D以上である高極性溶剤と、グリコールエーテル系溶剤と、多価アルコールとを含み、上記高極性溶剤と上記グリコールエーテル系溶剤との合計含有量が、全量に対して30質量%以上であるリソグラフィー用洗浄液である。
【0013】
本発明の第二の態様は、レジスト膜を用いて半導体多層積層体の誘電体層に形成したエッチング空間に金属を埋め込むことによって金属配線層を形成する配線形成方法において、上記エッチング空間の形成後に、本発明に係るリソグラフィー用洗浄液を用いて少なくとも上記レジスト膜を除去する配線形成方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ILD材料に対する腐食抑制機能に優れ、かつ、レジスト膜及び下層反射防止膜の除去性能にも優れたリソグラフィー用洗浄液、及びこのリソグラフィー用洗浄液を用いた配線形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<リソグラフィー用洗浄液>
本発明に係るリソグラフィー用洗浄液は、4級アンモニウム水酸化物と、水溶性有機溶剤と、水と、無機塩基とを含有する。以下、本発明を詳細に説明するが、各材料については特に断らない限りは市販のものを用いることができる。
【0016】
[4級アンモニウム水酸化物]
4級アンモニウム水酸化物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0017】
【化1】

【0018】
上記一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。
【0019】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、テトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、テトラブチルアンモニウム水酸化物、メチルトリプロピルアンモニウム水酸化物、メチルトリブチルアンモニウム水酸化物、及び(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、入手しやすさの点から特に好ましい。さらに、テトラメチルアンモニウム水酸化物及び/又はテトラエチルアンモニウム水酸化物が、犠牲膜に対する溶解性が高い点から好ましい。
【0020】
4級アンモニウム水酸化物の含有量は、リソグラフィー用洗浄液全量に対し、5〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。このような含有量とすることにより、ILD材料等の腐食を抑えながら、レジスト膜、下層反射防止膜、犠牲膜、さらにはエッチング工程において生じた金属配線層や低誘電体層由来の残渣物を効果的に除去することができる。
【0021】
[水溶性有機溶剤]
本発明に係るリソグラフィー用洗浄液は、水溶性有機溶剤として、双極子モーメントが3.0D以上である高極性溶剤と、グリコールエーテル系溶剤と、多価アルコールとを含む。
【0022】
双極子モーメントが3.0D以上である高極性溶剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)(双極子モーメント:4.6D)等のスルホキシド類;ジメチルスルホン(双極子モーメント:5.1D)、ジエチルスルホン(双極子モーメント:4.7D)、テトラメチレンスルホン(双極子モーメント:5.0D)等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(双極子モーメント:4.5D)、N−メチルホルムアミド(双極子モーメント:4.6D)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(双極子モーメント:4.6D)、N−メチルアセトアミド(双極子モーメント:4.3D)、N,N−ジエチルアセトアミド(双極子モーメント:4.7D)等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(双極子モーメント:4.6D)、N−エチル−2−ピロリドン(双極子モーメント:4.7D)、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン(双極子モーメント:3.1D)、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン(双極子モーメント:6.1D)等のラクタム類;β−プロピオラクトン(双極子モーメント:4.6D)、γ−ブチロラクトン(BGL)(双極子モーメント:5.1D)、γ−バレロラクトン(双極子モーメント:5.3D)、δ−バレロラクトン(双極子モーメント:5.4D)、γ−カプロラクトン(双極子モーメント:5.2D)、ε−カプロラクトン(双極子モーメント:5.5D)等のラクトン類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)(双極子モーメント:4.5D)、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン(双極子モーメント:4.5D)、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン(双極子モーメント:4.3D)等のイミダゾリジノン類;の中から選ばれる1種以上であることが好ましい。
これらの中でも、双極子モーメントが3.5〜7.0Dである高極性溶剤が好ましく、双極子モーメントが4.0〜6.0Dである高極性溶剤がより好ましい。特に、アルカリ性薬液での安定性等の観点から、ジメチルスルホキシド(双極子モーメント:4.6D)及びN−メチル−2−ピロリドン(双極子モーメント:4.6D)が好ましい。
【0023】
グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)等を挙げることができる。
これらの中でも、水溶性、レジスト膜の除去性能、引火性等の観点から、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)が好ましい。
【0024】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができる。これらの中でも、安全性、粘度等の観点から、プロピレングリコールが好ましい。
【0025】
水溶性有機溶剤の含有量は、リソグラフィー用洗浄液全量に対し、35〜80質量%であることが好ましく、45〜70質量%であることがより好ましい。
また、上記高極性溶剤の含有量は、リソグラフィー用洗浄液全量に対し、5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、20〜30質量%であることがさらに好ましい。高極性溶剤の含有量を5質量%以上とすることにより、下層反射防止膜の除去性能を向上させることができる。
上記グリコールエーテル系溶剤の含有量は、リソグラフィー用洗浄液全量に対し、5〜55質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。グリコールエーテル系溶剤の含有量を5質量%以上とすることにより、レジスト膜の除去性能を向上させることができる。
上記多価アルコールの含有量は、リソグラフィー用洗浄液全量に対し、5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることがさらに好ましい。多価アルコールの含有量を5質量%以上とすることにより、ILD材料に対する腐食抑制機能を向上させることができる。
特に、本発明に係るリソグラフィー用洗浄液においては、上記高極性溶剤と上記グリコールエーテル系溶剤との合計含有量が、リソグラフィー用洗浄液全量に対して30質量%以上、より好ましくは40質量%以上とされる。
水溶性有機溶剤を前述のような組成とすることにより、ILD材料等の腐食を抑えながら、レジスト膜及び下層反射防止膜を効果的に除去することができる。
【0026】
[水]
水の含有量は、リソグラフィー用洗浄液全量に対し、15〜35質量%であることが好ましく、25〜32質量%であることがより好ましい。このような含有量とすることにより、ILD材料等の腐食を抑えながら、レジスト膜、下層反射防止膜、犠牲膜、さらにはエッチング工程において生じた金属配線層や低誘電体層由来の残渣物を効果的に除去することができる。
【0027】
[無機塩基]
無機塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化カリウムがより好ましい。無機塩基の含有量は、リソグラフィー用洗浄液全量に対し、0.1質量ppm〜1質量%であることが好ましく、1質量ppm〜0.5質量%であることがより好ましい。このような含有量とすることにより、ILD材料等の腐食を抑えながら、犠牲膜に対する除去性能を高めることができる。
【0028】
[防食剤]
本発明に係るリソグラフィー用洗浄液は、ベンゾトリアゾール系化合物及びメルカプト基含有化合物の中から選ばれる少なくとも1種の防食剤をさらに含有していてもよい。
【0029】
上記ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0030】
【化2】

【0031】
上記一般式(2)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ホルミル基、スルホニルアルキル基、又はスルホ基を示し、Qは水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14の炭化水素基(但し、当該炭化水素基はアミド結合又はエステル結合で中断されていてもよい)、又は下記一般式(3)で表される基を示す。
【0032】
【化3】

【0033】
上記一般式(3)中、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、水酸基、又は炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基若しくはアルコキシアルキル基を示す。
【0034】
なお、上記一般式(2)において、R、R、Qの各定義中、炭化水素基は、芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基のいずれでもよく、不飽和結合を有していてもよく、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、p−トリル基等が挙げられる。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、n−プロピル基、ビニル基等が挙げられる。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、例えばイソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。環状の脂肪族炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。置換基を有する炭化水素基としては、例えばヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基等を挙げることができる。
【0035】
また、上記一般式(2)において、Qとしては、上記一般式(3)で表される基であることが好ましい。特に上記一般式(3)で表される基の中でも、R、Rがそれぞれ独立に炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基である基を選択することが好ましい。
【0036】
さらに、Qは、上記一般式(2)で表される化合物が水溶性を示すように選択されることが好ましい。具体的には、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基(すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、水酸基等が好ましい。
【0037】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、具体的には、例えばベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−メチルベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、1−フェニルベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシメチルベンゾトリアゾール、1−ベンゾトリアゾールカルボン酸メチル、5−ベンゾトリアゾールカルボン酸、1−メトキシ−ベンゾトリアゾール、1−(2,2−ジヒドロキシエチル)−ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール;「IRGAMET」シリーズとしてチバスペシャリティーケミカルズ社より市販されている、2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、2,2’−{[(5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタン、2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスプロパン等を挙げることができる。これらの中でも、1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−ベンゾトリアゾール、2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、2,2’−{[(5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール等が好ましく用いられる。これらのベンゾトリアゾール化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記メルカプト基含有化合物としては、メルカプト基に結合する炭素原子のα位、β位の少なくとも一方に、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が好ましい。このような化合物として、具体的には1−チオグリセロール、3−(2−アミノフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロピルメルカプタン、3−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−ヒドロキシプロピルメルカプタン、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸等を挙げることができる。これらの中でも、1−チオグリセロールを用いることが特に好ましい。
【0039】
[界面活性剤]
本発明に係るリソグラフィー用洗浄液は、必要に応じて界面活性剤を含有していてもよい。このような界面活性剤としては、アセチレンアルコール系界面活性剤等を好ましく用いることができる。界面活性剤の含有量は、リソグラフィー用洗浄液全量に対し、0.5質量%未満であることが好ましい。
【0040】
<配線形成方法>
本発明に係る配線形成方法は、レジスト膜を用いて半導体多層積層体の誘電体層に形成したエッチング空間に金属を埋め込むことによって金属配線層を形成する、ダマシン法を用いた配線形成方法において、上記エッチング空間の形成後に、本発明に係るリソグラフィー用洗浄液を用いて少なくとも上記レジスト膜を除去するものである。
ダマシン法を用いた配線形成方法は、より具体的には、半導体多層積層体の低誘電体層上に形成したレジストパターンをマスクとして、上記低誘電体層をエッチング処理してエッチング空間を形成し、このエッチング空間に金属を埋め込むことによって金属配線を形成するものである。なお、レジスト膜の下層には下層反射防止膜(BARC)が形成される場合がある。また、エッチング空間には、一時的に犠牲膜が埋め込まれる場合がある。
【0041】
本発明に係るリソグラフィー用洗浄液は、上記エッチング処理後の少なくともレジスト膜を、さらにはエッチング工程において生じた金属配線層や低誘電体層由来の残渣物を除去する際に用いられる。特に、本発明に係るリソグラフィー用洗浄液は、ILD材料の腐食を抑えながら、レジスト膜及び下層反射防止膜を効果的に除去することが可能であるため、レジスト膜及び下層反射防止膜を用いて低誘電体層にエッチング空間を形成した後、少なくともレジスト膜及び下層反射防止膜を除去する際に好適に用いられる。
【0042】
レジスト膜、下層反射防止膜等の除去方法は、通常行われる除去方法であれば特に限定されない。具体的には、例えば浸漬法、パドル法、シャワー法等を用いて、本発明に係るリソグラフィー用洗浄液を基板に1〜40分間接触させることにより処理される。除去効果を高めるため、通常は室温であるところ、リソグラフィー用洗浄液を85℃程度まで昇温させて除去処理を行ってもよい。
【0043】
ここで、上記レジスト膜を形成する材料としては、(KrF、ArF、F、EUV)エキシマレーザー、あるいは電子線用に慣用されているレジスト材料を、常法により用いることができる。
また、上記下層反射防止膜を形成する材料としては、慣用されている無機系又は有機系の下層反射防止膜材料を、常法により用いることができる。
【0044】
このような慣用のレジスト材料、下層反射防止膜材料を用いて、層間絶縁層あるいはその上層のバリア層上にレジスト膜、下層反射防止膜が形成され、マスクを介したパターン露光の後、現像処理してレジストパターンが形成される。次いで、このレジストパターンをマスクとしてエッチングが行われた後のレジストパターン残渣物は、その他の、下層反射防止膜由来、犠牲膜由来、及びエッチング工程において生じた金属配線層や低誘電体層由来の残渣物とともに、本発明に係るリソグラフィー用洗浄液により除去される。
【0045】
上記低誘電体層としては、具体的には、例えばカーボンドープオキサイド(SiOC)系、メチルシルセスキオキサン(MSQ)系、ヒドロキシシルセスキオキサン(HSQ)系の材料により形成される層である。金属配線層の電気的特性に影響を与えないため、好ましくは誘電率(k)が3.0以下の低誘電体層である。
【0046】
これら低誘電体層は、上記金属配線層上に形成してもよく、金属配線層上にバリア層を形成した上に形成してもよい。低誘電体層の焼成温度は、通常350℃以上の高温で行われる。
【0047】
このような低誘電体層を形成する材料、すなわち低誘電体材料(ILD材料)としては、具体的には、上記カーボンドープオキサイド系のブラックダイアモンド(商品名:Apllied Materials社製)、コーラル(商品名:Novelus Systems社製)、Aurora(商品名:日本ASM社製)、上記メチルシルセスキオキサン系のOCL T−31、OCL T−37、OCL T−39(いずれも商品名:東京応化工業製)、ヒドロキシシルセスキオキサン系のOCD T−12、OCL T−32(いずれも商品名:東京応化工業社製)、等が挙げられる。
【0048】
また、上記バリア層としては、例えばSiC、SiN、SiCN、Ta、TaN等が挙げられる。このようなバリア層は、低誘電体層と低誘電体層との間に形成してもよい。
【0049】
また、ダマシン法において用いられる金属配線層を形成する金属材料としては、主にCuであるが、Cu以外のAl、Ti、W等の導電体材料も同一基板上に積層されている。本発明に係るリソグラフィー用洗浄液によれば、洗浄液がこれら金属材料と接触した場合であっても、腐食を効果的に抑制することができる。
【0050】
本発明に係るリソグラフィー用洗浄液は、ダマシン法の中でも、特に、形成されたエッチング空間内に一時的に犠牲膜を設けるダマシン法による配線形成方法において有用であるが、このような犠牲膜を形成する材料(埋め込み材)としては、具体的には、縮合反応により得られるスピンオングラス材料が好適である。
【0051】
上記犠牲膜を形成するスピンオングラス材料としては、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を、水の存在下で酸の作用により加水分解させた化合物が好適である。
【0052】
【化4】

【0053】
上記一般式(4)〜(6)中、R10〜R13、R15〜R17、R20、R21は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示し、R14、R18、R19は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0054】
上記一般式(4)で表される化合物の中でも、テトラメトキシシラン若しくはテトラエトキシシラン、又はそれらのオリゴマーが好ましい。また、上記一般式(5)で表される化合物の中でも、トリメトキシシラン若しくはトリエトキシシラン、又はそれらのオリゴマーが好ましい。さらに、上記一般式(6)で表される化合物の中でも、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、若しくはメチルジメトキシシラン、又はそれらのオリゴマーが好ましい。なお、これらのスピンオングラス材料は、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0055】
さらに、上記一般式(4)〜(6)で表される化合物に、高吸収性物質を適宜配合してもよい。このような高吸収性物質としては、上記スピンオングラス材料と縮合し得る置換基をその構造中に有するものであって、上記レジスト材料中の感光性成分の感光特性波長域における光に対して高い吸収能を有し、基板からの反射光によって生じる定在波や基板表面の段差による乱反射を妨げるものであればよく、特に制限はない。例えば水酸基及び/又はカルボキシル基の置換した、スルホン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アントラセン系化合物、ナフタレン系化合物等が挙げられる。特に、少なくとも2個の水酸基を有するビスフェニルスルホン系化合物及びベンゾフェノン系化合物、少なくとも1個の水酸基及び/又はヒドロキシアルキル基を有するアントラセン系化合物、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するアントラセン系化合物、少なくとも1個のカルボキシル基及び/又は水酸基が置換したナフタレン系化合物が好ましい。
【0056】
上記高吸収性物質の含有量は、スピンオングラス材料中、SiO換算の固形分濃度で10〜50重量%であることが好ましく、15〜40重量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例を示し、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0058】
(リソグラフィー用洗浄液の調製)
下記表1,2に示す組成及び配合量に基づき、リソグラフィー用洗浄液を調製した。なお、各試薬については、特に記載の無いものに関しては、一般に市販されている試薬を用いた。また、表中の数値は、特に断りの無い限り、質量%の単位で示されるものである。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
上記表1,2中の略称は下記のとおりである。
TMAH:テトラメチルアンモニウム水酸化物
TEAH:テトラエチルアンモニウム水酸化物
DMSO:ジメチルスルホキシド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
GBL:γ−ブチロラクトン
EDG:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
MDG:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
PG:プロピレングリコール
EG:エチレングリコール
【0062】
(レジスト膜の剥離性)
20cmシリコンウェーハに、ArFレジスト材料「TArF−P6111」(東京応化工業社製)を塗布し、90℃で90秒、180℃で90秒加熱して、膜厚350nmのレジスト膜を形成した。レジスト膜を形成したウェーハを表1,2に示すリソグラフィー用洗浄液に25℃にて5分間浸漬処理を行った後、純水でリンス処理した。このときのレジスト膜の剥離状態を、膜厚を測定することにより評価した。結果を表3に示す。
【0063】
(下層反射防止膜の剥離性)
20cmシリコンウェーハに、有機系下層反射防止膜材料「ARC−160」(日産化学工業社製)を塗布し、90℃で90秒、205℃で60秒間加熱して、膜厚90nmの下層反射防止膜を形成した。下層反射防止膜を形成したウェーハを表1,2に示すリソグラフィー用洗浄液に25℃にて5分間浸漬処理を行った後、純水でリンス処理した。このときの下層反射防止膜の剥離状態を、膜厚を測定することにより評価した。結果を表3に示す。
【0064】
(埋め込み材剥離性)
スピンオングラス材料からなる埋め込み材(ハネウェル社製)を成膜した基板を表1,2に示すリソグラフィー用洗浄液に50℃にて1分間浸漬処理を行った後、純水でリンス処理した。このときの埋め込み材の剥離状態を、膜厚を測定することにより評価した。結果を表3に示す。
【0065】
(Low−k材腐食抑制)
低誘電体層(誘電体は、2.7〜2.8の誘電率でCVD蒸着した)を形成した基板上にリソグラフィー法により形成したトレンチレジストパターンをマスクとして、低誘電体層をドライエッチングし、トレンチパターンを形成した。この基板を表1,2に示すリソグラフィー用洗浄液に50℃にて10分間浸漬処理を行った後、純水でリンス処理した。このときのLow−k材の腐食状態を、SEM(走査型電子顕微鏡)を観察することにより評価した。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
表3中、各評価結果において、「◎」及び「○」は良好な剥離性又は腐食抑制が見られたものを示し、そのうち「◎」は特に良好な剥離性又は腐食抑制が見られたものを示す。一方、「×」は剥離性又は腐食抑制が不十分であったものを示す。
【0068】
表3から分かるように、水溶性有機溶剤として双極子モーメントが3.0D以上である高極性溶剤、グリコールエーテル系溶剤、及び多価アルコールの全てを含み、かつ、上記高極性溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の合計含有量が全量に対して30質量%以上であるリソグラフィー用洗浄液を用いた場合には、ILD材料の腐食を抑えながら、レジスト膜及び下層反射防止膜を効果的に除去することができた(実施例1〜13)。
一方、上記高極性溶剤、グリコールエーテル系溶剤、多価アルコールの少なくとも1種類が含まれていない場合には、ILD材料の腐食抑制機能、又はレジスト膜若しくは下層反射防止膜の除去効果が悪かった(比較例1〜6)。また、水溶性有機溶剤として上記高極性溶剤、グリコールエーテル系溶剤、及び多価アルコールの全てを含んでいる場合であっても、上記高極性溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の合計含有量が少ない場合には、レジスト膜及び下層反射防止膜の除去効果が悪かった(比較例7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4級アンモニウム水酸化物と、水溶性有機溶剤と、水と、無機塩基とを含有し、
前記水溶性有機溶剤が、双極子モーメントが3.0D以上である高極性溶剤と、グリコールエーテル系溶剤と、多価アルコールとを含み、
前記高極性溶剤と前記グリコールエーテル系溶剤との合計含有量が、全量に対して30質量%以上であるリソグラフィー用洗浄液。
【請求項2】
前記高極性溶剤が、スルホキシド類、スルホン類、アミド類、ラクタム類、ラクトン類、及びイミダゾリジノン類の中から選ばれる1種以上である請求項1記載のリソグラフィー用洗浄液。
【請求項3】
前記水溶性有機溶剤中の前記高極性溶剤の割合が5〜60質量%であり、前記グリコールエーテル系溶剤の割合が5〜55質量%であり、前記多価アルコールの割合が5〜30質量%である請求項1又は2記載のリソグラフィー用洗浄液。
【請求項4】
前記4級アンモニウム水酸化物が下記一般式(1)で表される化合物である請求項1から3のいずれか1項記載のリソグラフィー用洗浄液。
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。)
【請求項5】
レジスト膜を用いて半導体多層積層体の誘電体層に形成したエッチング空間に金属を埋め込むことによって金属配線層を形成する配線形成方法において、
前記エッチング空間の形成後に、請求項1から4のいずれか1項記載のリソグラフィー用洗浄液を用いて少なくとも前記レジスト膜を除去する配線形成方法。
【請求項6】
前記レジスト膜の下層に反射防止膜が設けられており、
前記エッチング空間の形成後に、前記リソグラフィー用洗浄液を用いて少なくとも前記レジスト膜及び前記反射防止膜を除去する請求項5記載の配線形成方法。

【公開番号】特開2011−164293(P2011−164293A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25817(P2010−25817)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】