説明

レジスト材料及びパターン形成方法

【解決手段】(A)一般式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、(B)ラクトン環及び/又は水酸基及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物、(D)有機溶剤を含有するレジスト材料。


【効果】本発明のレジスト材料は、波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、樹脂構造の選択により液浸リソグラフィーにおける各種性能の調整が可能で、入手及び取り扱いが容易な原料からの製造が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子などの製造工程における微細加工のためのフォトリソグラフィー、例えば波長193nmのArFエキシマレーザーを光源とし、投影レンズと基板との間に液体(例えば水)を挿入して露光を行う液浸フォトリソグラフィーにおいて、好適なレジスト材料及び該レジスト材料を用いたパターン形成方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。その背景には露光光源の短波長化があり、例えば水銀灯のi線(365nm)からKrFエキシマレーザー(248nm)への短波長化により64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)のDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の量産が可能になった。更に集積度256M及び1G以上のDRAM製造を実現するため、ArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーが本格的に検討されており、高NAのレンズ(NA≧0.9)と組み合わせることにより65nmノードのデバイスの検討が行われている。その次の45nmノードのデバイス製作には波長157nmのF2レーザーの利用が候補に挙げられたが、コスト面でのデメリットに加え、レジストの性能不足等に代表される多くの問題により適用が先送りされた。そして、F2リソグラフィーの代替として提案されたのがArF液浸リソグラフィーであり、現在その早期導入に向けて開発が進められている(非特許文献1:Proc.SPIE.Vol.4690、xxix(2002)参照)。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーでは投影レンズとウエハーの間に水を含浸させ、水を介してArFエキシマレーザーを照射する。193nmにおける水の屈折率は1.44であるため、NAが1.0以上のレンズを使用したパターン形成が可能になり、理論上はNAを1.44にまで上げることができる。NAの向上分だけ解像力が向上し、NAが1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示唆されている(非特許文献2:Proc.SPIE.Vol.5040、p724(2003)参照)。
【0004】
しかし、レジスト膜上に水が存在した状態で露光を行うと、レジスト膜内で発生した酸やレジスト材料に添加されている塩基性化合物の一部が水層に溶出し(リーチング)、その結果としてパターンの形状変化やパターン倒れが発生する可能性がある。また、レジスト膜上に残った微量の水滴がレジスト膜中に染み込むことにより欠陥が発生する可能性も指摘されている。
【0005】
これらの欠点を改善するため、ArF液浸リソグラフィーではレジスト膜と水の間に保護膜を設け、レジスト成分の溶出とレジスト膜内への水の浸透を抑える方法が提案されている(非特許文献3:2nd Immersion Work Shop:Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography(2003)参照)。
【0006】
フォトレジスト膜の保護膜材料としてはARCOR法(antireflective coating on resist;例えば、特許文献1〜3:特開昭62−62520号公報、特開昭62−62521号公報、特開昭60−38821号公報参照)に代表されるパーフルオロアルキルポリエーテルやパーフルオロアルキルアミンなどの低屈折率材料が知られている。しかし、これらの含フッ素化合物は有機物との相溶性が低く、保護膜の塗布・剥離にフロン系の溶剤を用いるため、環境面及びコスト面でのデメリットが大きい。
【0007】
それ以外のレジスト保護膜材料としては、水溶性又はアルカリ溶解性の材料の適用が検討されている(特許文献4,5:特開平6−273926号公報、特許第2803549号公報、非特許文献4:J.Photopolymer.Sci. and Technol.Vol.18、No.5、p615(2005)参照)。このうち、アルカリ可溶なレジスト保護膜材料はアルカリ現像液で剥離できるため、剥離装置の増設が不要であり、コスト面でのメリットが大きい。そのため、例えば側鎖に含フッ素アルコール、カルボキシル基、スルホ基などのアルカリ溶解性基を有する樹脂を用いた非水溶性レジスト保護膜材料の開発が進められている(特許文献6〜10:国際公開第2005/42453号パンフレット、国際公開第2005/69676号パンフレット、特開2005−264131号公報、特開2006−133716号公報、特開2006−91798号公報参照)。
【0008】
一方、保護膜材料を使わずにレジスト成分の溶出とレジスト膜内への水の浸透を抑える方法として、アルカリ可溶な疎水性高分子化合物を界面活性剤としてレジストに添加する手法が提案されている(特許文献11〜13:特開2006−48029号公報、特開2006−309245号公報、特開2007−187887号公報参照)。この方法では、添加した疎水性化合物がレジスト製膜時にレジスト表面に局在化するため、レジスト保護膜材料を使用したときと同様の効果が期待できるだけでなく、保護膜の製膜と除去にかかる工程が不要である点でコスト的にも有利である。
【0009】
アルカリ可溶型界面活性剤又はレジスト保護膜材料のいずれを使う場合でも、スキャン後にレジスト膜又はレジスト保護膜の上に水滴が残ると、パターン形成不良(欠陥)を誘発すると考えられている。現在までに上市されているArF液浸露光装置はレンズ−ウエハー間に部分的に水を保持しつつ、ウエハーの載ったステージを300〜550(nm/s)の速度で走査しながら露光を行う。このような高速スキャンを行う場合、レジスト又はレジスト保護膜の性能が十分でないと、投影レンズ−ウエハー間に水を保持することができず、走査後のレジスト膜又はレジスト保護膜表面に水滴が残ってしまう。そして、その水滴が欠陥の要因となる可能性が高い。
【0010】
このような水滴残りによる欠陥を解消するには、これらの塗布膜上での水の動き易さ(滑水性)や撥水性を改善する必要がある。特に、レジスト膜又はレジスト保護膜の水に対する後退接触角を高くすることが有効であることが示されている(非特許文献5:2nd International Symposium on Immersion Lithograpgy、 12−15/Sept.,2005,Defectivity data taken with a full−field immersion exposure tool, Nakano et. al.参照)。
【0011】
塗布膜の撥水性を向上するには、ベース樹脂へのフッ素の導入が有効である。また、滑水性の向上には、異種の撥水性基の組み合わせによるミクロドメイン構造の形成が効果的であることが報告されている(例えば、非特許文献6,7:XXIV FATIPEC Congress Book、Vol.B、p15(1997)、Progress in Organic Coatings、31、p97(1997)参照)。これらの報告によると、水分子はメチル基、トリフルオロメチル基と相互作用する際、それぞれ水分子の酸素原子、水素原子を介して配向し、しかも水−メチル基間の配向距離の方が長い。そのため、樹脂中に高撥水性の含フッ素ユニットを導入するだけでなく、フルオロアルキル基とアルキル基を共存させた方が水の配向距離が長くなり、樹脂の滑水性を向上させることができる。
【0012】
撥水性及び滑水性に優れた材料の具体例としては、α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルとノルボルネン誘導体の共重合体が挙げられる(非特許文献8:Proc.SPIE.Vol.4690、p18(2002))。この高分子化合物は元々はF2(157nm)レジスト用の高透明材料として開発された経緯があるが、高撥水性のα−トリフルオロメチルアクリル酸エステルとノルボルネン誘導体が2対1の割合で規則的に配列することが特徴である。そして、この特徴的な配列により樹脂に対する水の配向距離が長くなり、滑水性能が向上する。実際、このポリマーを液浸用保護膜のベースポリマーとして用いると、滑水性が飛躍的に向上することが報告されている(特許文献14:特開2007−140446号公報参照)。
【0013】
また、側鎖にヘキサフルオロアルコール基を有する含フッ素閉環重合ポリマーも高撥水性かつ高滑水性材料の具体例として挙げることができる。このポリマーは側鎖の水酸基を酸不安定基で保護することにより、滑水性能が更に向上することが報告されている(非特許文献9:Proc.SPIE.Vol.6519、p651905(2007)参照)。
【0014】
滑水性の高い材料は、欠陥以外の観点、例えば、生産性向上の観点からも必要とされている。液浸露光では、これまで以上に高いスループットが求められているが、その実現のためには露光時間の短縮が必要である。そのためにはステージの高速スキャン動作が必須であり、レンズの下に水を保持しながら高速でステージを移動させるためには、より滑水性能の高いレジスト材料又はレジスト保護膜が求められる。
【0015】
以上で述べた高撥水性及び高滑水性材料はArF液浸リソグラフィーにとどまらず、マスクブランクス用レジスト材料への応用も期待されている。マスクブランクスの露光では、真空中で長時間の露光を行う際の感度変動や塗布後の安定性が問題視されている。このうち、真空中での感度変動を抑えるための手段としては、酸不安定基のアセタールと三級エステルの組み合わせによる改善方法が提案されている(特許文献15:米国特許第6869744号明細書)。また、塗布後の感度や形状の変化は、レジスト塗布後にアミン成分がレジスト膜表面に吸着することによると考えられるため、レジスト膜の表面改質などによりアミンがレジスト膜へ吸着するのを防止する方法が考案されている。
【0016】
【非特許文献1】Proc.SPIE.Vol.4690、xxix(2002)
【非特許文献2】Proc.SPIE.Vol.5040、p724(2003)
【非特許文献3】2nd Immersion Work Shop:Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography(2003)
【非特許文献4】J.Photopolymer.Sci. and Technol.Vol.18、No.5、p615(2005)
【非特許文献5】2nd International Symposium on Immersion Lithograpgy、 12−15/Sept.,2005,Defectivity data taken with a full−field immersion exposure tool, Nakano et. al.
【非特許文献6】XXIV FATIPEC Congress Book、Vol.B、p15(1997)
【非特許文献7】Progress in Organic Coatings、31、p97(1997)
【非特許文献8】Proc.SPIE.Vol.4690、p18(2002)
【非特許文献9】Proc.SPIE.Vol.6519、p651905(2007)
【特許文献1】特開昭62−62520号公報
【特許文献2】特開昭62−62521号公報
【特許文献3】特開昭60−38821号公報
【特許文献4】特開平6−273926号公報
【特許文献5】特許第2803549号公報
【特許文献6】国際公開第2005/42453号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/69676号パンフレット
【特許文献8】特開2005−264131号公報
【特許文献9】特開2006−133716号公報
【特許文献10】特開2006−91798号公報
【特許文献11】特開2006−48029号公報
【特許文献12】特開2006−309245号公報
【特許文献13】特開2007−187887号公報
【特許文献14】特開2007−140446号公報
【特許文献15】米国特許第6869744号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、撥水性と滑水性に優れ、現像欠陥が少なく、現像後のレジストパターン形状が良好な液浸リソグラフィー用レジスト材料の添加剤を用いたレジスト材料、更にはこの材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。本発明で用いる添加剤は波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、樹脂の構造の選択により撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性など各種性能の調整が可能であり、かつ入手及び取り扱いが容易な原料からの製造が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、後述の方法により、含フッ素アルコールをアシル基で保護した構造(下記一般式(1))を有する新規な高分子化合物が優れた撥水性と滑水性を有すると共に、構造の選択により性能の調整が可能であることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0019】
即ち、本発明は下記のレジスト材料及びパターン形成方法を提供する。
請求項1:
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、(B)ラクトン環及び/又は水酸基及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物、(D)有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
【化1】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R2a及びR2bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R2aとR2bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成することもできる。R3は単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基である。R4は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基であり、−O−又は−C(=O)−を含んでもよい。)
請求項2:
(A)請求項1記載の一般式(1)で表される繰り返し単位に加えて、下記一般式(2a)〜(2f)で表される繰り返し単位のうちの1つ又は2つ以上を有する高分子化合物、(B)ラクトン環及び/又は水酸基及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物、(D)有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
【化2】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R2a及びR2bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R2aとR2bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成することもできる。R5は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基、又は酸不安定基である。R6は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化アルキル基である。R7は酸不安定基である。)
請求項3:
更に、(E)塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレジスト材料。
請求項4:
更に、(F)溶解阻止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレジスト材料。
請求項5:
(1)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項6:
(1)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、投影レンズとウエハーの間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項7:
(1)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)フォトレジスト膜の上に保護膜層を形成する工程と、(3)加熱処理後、投影レンズとウエハーの間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(4)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項8:
前記露光工程において、投影レンズと基板の間に挿入する液体が水であることを特徴とする請求項6又は7に記載のパターン形成方法。
請求項9:
露光光源として波長180〜250nmの範囲の高エネルギー線を用いることを特徴とする請求項7乃至8に記載のパターン形成方法。
請求項10:
(1)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料をマスクブランクス上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、真空中電子ビームで露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、含フッ素アルコールをアシル基で保護した構造を有する新規高分子添加剤を用いたレジスト材料が提供される。この高分子材料は波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、樹脂の構造の選択により撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性など各種性能の調整が可能であり、かつ入手及び取り扱いが容易な原料からの製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[レジスト添加剤用高分子化合物の構成]
本発明のレジスト用添加剤として用いる高分子化合物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【化3】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R2a及びR2bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R2aとR2bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成することもできる。R3は単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基である。R4は炭素数1〜20、特に1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基であり、−O−又は−C(=O)−を含んでもよい。)
【0022】
上記式(1)において、R2a、R2bの炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、R4の炭素数1〜20、特に1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、アダマンチル基等が用いられる。
2a及びR2bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成することもできるが、その場合、R2a及びR2bはアルキレン基であり、上記で例示したアルキル基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられ、該環としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
3の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の具体例としては、上記で例示したアルキル基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のものが用いられる。
4の炭素数1〜20、特に1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化アルキル基の具体例としては、上記のアルキル基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換した形式のものが用いられ、具体例としてはトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピル基、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル基、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル基、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基などが例示できる。
【0023】
上記式(1)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これに限定はされない。
【化4】

【0024】
【化5】

(式中、R1は前述と同様である。)
【0025】
本発明のレジスト用添加剤として用いる高分子化合物において、一般式(1)で表される繰り返し単位は撥水性や滑水性に優れた性能を発揮する。一般式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物においては、一般式(1)中のR4の炭素鎖長、分岐度、フッ素数などの構造制御が容易であり、レジスト添加剤として必要な撥水性能及び滑水性能に応じた高分子化合物の製造が可能である。
【0026】
これらの高分子化合物においては、必要に応じてアルカリ加水分解性を付与することが可能である。フルオロアルコールの水酸基はアルコール水酸基に比べて酸性度が高いが、上記式(1)中のエステル結合は、隣接炭素に6つのフッ素原子が結合することにより更に酸性度が高くなったフルオロアルコールの水酸基とカルボン酸とのエステル、いわば混合酸無水物であるため、通常のアルコールとカルボン酸のエステルに比べて、大幅にアルカリ加水分解を受け易くなっており、例えばアルカリ現像液等により容易に加水分解されるものと考えられる。
【0027】
上記式(1)中のエステル結合が加水分解された場合、親水性が高く、アルカリ溶解性の高いフルオロアルコール構造を生じるため、ポリマー表面の接触角、特に現像後の接触角が低下し、ブロブ欠陥の低減に寄与する。
【0028】
本発明のレジスト用添加剤として用いる高分子化合物では、一般式(1)で表される繰り返し単位に加えて、下記一般式(2a)〜(2f)の繰り返し単位の1つ又は2つ以上を共存させることにより、撥水性、滑水性、アルカリ溶解性、現像後接触角に更に優れた高分子化合物が実現できる。
【化6】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R2a及びR2bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R2aとR2bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成することもできる。R5は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基、又は酸不安定基である。R6は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化アルキル基である。R7は酸不安定基である。)
【0029】
2a及びR2bの炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基あるいは環の形成については上述の通りであり、R5の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基も同様のものが用いられる。
5及びR6の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化アルキル基については、一般式(1)のR4で説明したものと同様のものが用いられる。
【0030】
次に、R6及びR7の酸不安定基について説明する。
酸不安定基としては種々のものを用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【化7】

(式中、RL01及びRL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。RL03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。RL04は炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示す。RL05は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。RL06は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基である。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の非置換又は置換炭化水素基を示す。yは0〜6の整数である。mは0又は1、nは0〜3の整数であり、2m+n=2又は3である。なお、破線は結合手を示す。)
【0031】
式(L1)において、RL01及びRL02の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。
L03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【0032】
【化8】

【0033】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0034】
式(L2)において、RL04の三級アルキル基の具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。また、トリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基の具体例としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。
【0035】
式(L3)において、RL05の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示できる。また、炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。
【0036】
式(L4)において、RL06の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、RL05と同様のもの等が例示できる。
L07〜RL16において、炭素数1〜15の一価の炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。
L07〜RL16は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合には環の形成に関与する基は炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15等)。
【0037】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化9】

【0038】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0039】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0040】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0041】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化10】

(式中、RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。破線は結合位置及び結合方向を示す。)
【0042】
上記式(L4−1)〜(L4−4)中、RL41の一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0043】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0044】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)と(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化11】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0045】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化12】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0046】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0047】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【0048】
【化13】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0049】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化14】

【0050】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはRL04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0051】
上記式(2a)〜(2f)の繰り返し単位の具体例としては下記のものが例示されるが、これに限定はされない。
【化15】

【0052】
【化16】

(式中、R1は前述と同様である。)
【0053】
本発明のレジスト用添加剤として用いる高分子化合物は、上記式(1)及び(2a)〜(2f)で表される繰り返し単位の組み合わせだけでも十分な性能を発揮できるが、更なる撥水性や滑水性の付与、アルカリ溶解性や現像液親和性のコントロールのため、更に下記一般式(6a)〜(6e)、(7a)〜(7e)、(8a)〜(8c)、(9a)〜(9c)で表される繰り返し単位の1つ又は2つ以上を組み合わせて構成することも可能である。
【0054】
【化17】

(式中、R8は炭素数1〜15のアルキル基又はフッ素化アルキル基である。R9は密着性基である。R10は酸不安定基である。R11は単結合又は炭素数1〜15の2価の有機基である。R12及びR13は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【0055】
8の炭素数1〜15のアルキル基としては、一般式(1)のR2a及びR2bで説明したものと同様のものが、また、炭素数1〜15のフッ素化アルキル基としては、一般式(1)のR4で説明したものと同様のものが用いられる。
【0056】
9の密着性基としては種々選定されるが、特に下記式で例示される基等であることが好ましい。
【0057】
【化18】

【0058】
【化19】

(上記式中、鎖線は結合手を示す。)
【0059】
10の酸不安定基としては、R6及びR7で説明したものと同様のものが用いられる。
11の炭素数1〜15の2価の有機基としては、一般式(1)のR2a及びR2bとして既に例示したアルキル基中の1個の水素原子を引き抜いた形式のもの(例えば、メチレン基やエチレン基)が用いられるほか、下記式で例示される基等も用いることができる。
【0060】
【化20】

(上記式中、鎖線は結合手を示す。)
【0061】
[重合性単量体化合物の合成]
本発明のレジスト用添加剤として用いる高分子化合物は、上記式(1)で表される繰り返し単位を必須単位として含むことを特徴とする。この繰り返し単位に対応する重合性単量体化合物(1’)は公知文献(例えば、特開2007−204385号公報参照)に記載の方法で合成することができる。
【0062】
上記式(1)に対応するモノマー(1’)は、例えば、下記反応式に示した工程により得ることができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
【化21】

(式中、R1、R2a、R2b、R3及びR4は上記と同様である。Rm1は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。M1は置換されていてもよいLi、Na、K、Mg、Zn、Al、B、Siの1種又は2種以上を示す。)
【0064】
第一工程では、原料の3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシプロピオン酸誘導体(I)を還元剤又は有機金属試薬(R2a1及びR2b1)と反応させることによりフッ素アルコール化合物(II)を得る。
【0065】
ここでRm1の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が例示できる。
【0066】
ここで用いられる還元剤又は有機金属試薬(R2a1及びR2b1)の具体例としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化アルミニウムナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素リチウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素カリウム等の錯水素化塩類(Complex hydride)やそれらのアルコキシあるいはアルキル誘導体、メチルリチウム、n−ブチルリチウム等の有機リチウム試薬、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムクロライド、1,4−ビス(クロロマグネシオ)ブタン等のGrignard試薬、ジメチル亜鉛等の有機亜鉛試薬、トリエチルシラン等を例示できる。
【0067】
還元剤又は有機金属試薬の使用量は、条件により種々異なるが、例えば、原料のフッ素化合物(I)1モルに対して、2.0〜5.0モル、特に2.0〜3.0モルとすることが望ましい。
【0068】
溶媒としてテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒類が好ましく、これらの溶媒を単独もしくは混合して使用することができる。
【0069】
反応温度、反応時間は、条件により種々異なるが、例えば、有機金属試薬としてGrignard試薬を用いる場合は、反応温度を0〜100℃、好ましくは20〜70℃で行う。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜10時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりフッ素アルコール化合物(II)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0070】
第二工程では、得られたフッ素アルコール化合物(II)をエステル化して一般式(III)で示される化合物を得る。
【0071】
反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤としては、酸クロリド、カルボン酸又は酸無水物が好ましい。
酸クロリドを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、アルコール(II)、メタクリル酸クロリド、α−トリフルオロメチルアクリル酸クロリド等の対応する酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱する等して行うのがよい。
カルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、アルコール(II)、メタクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸等の対応するカルボン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を加え、加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除く等して行う方法、もしくは無溶媒又はトルエン、ヘキサン等の溶媒中、アルコール(II)、メタンスルホニルクロライドなどの脂肪族スルホニルクロライド、p−トルエンスルホン酸クロライド等の芳香族スルホニルクロライド、無水酢酸、トリフルオロ無水酢酸等の酸無水物、必要に応じて、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱する等して行うのがよい。
酸無水物を用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、アルコール(II)、メタクリル酸無水物、α−トリフルオロメチルアクリル酸無水物などの対応する酸無水物、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸又はトリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱する等して行うのがよい。
なお、酸無水物を用いる場合、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸、フェノール、p−ニトロフェノール等のフェノール類等との混合酸無水物を用いてもよい。
【0072】
第三工程では、得られたメタクリル酸エステル化合物(III)の水酸基をエステル化して本発明で用いるモノマー(1)を得る。このエステル化反応も第二工程と同様の手法が用いられる。
【0073】
[高分子化合物の合成]
以下では、上記式(1)及び(2a)〜(2f)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を高分子化合物(P1)と呼ぶことにする。
【0074】
高分子化合物(P1)を合成する場合、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記)等の開始剤を用いるラジカル重合、アルキルリチウム等を用いるイオン重合(アニオン重合)等の一般的重合手法を用いることが可能であり、これらの重合はその常法に従って実施することができる。このうち、高分子化合物(P1)の合成はラジカル重合により製造を行うことが好ましい。この場合、重合条件は開始剤の種類と添加量、温度、圧力、濃度、溶媒、添加物等によって支配される。
【0075】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてAIBN、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物、tert−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート等の過酸化物系化合物、過硫酸カリウムのような水溶性重合開始剤、更には過硫酸カリウムや過酸化水素等の過酸化物と亜硫酸ナトリウムのような還元剤の組み合わせからなるレドックス系開始剤等が例示される。重合開始剤の使用量は種類や重合条件等に応じて適宜変更可能であるが、通常は重合させるべき単量体全量に対して0.001〜10モル%、特に0.01〜6モル%が採用される。
【0076】
高分子化合物(P1)を合成する場合、分子量の調整のためにドデシルメルカプタンや2−メルカプトエタノールのような公知の連鎖移動剤を併用してもよい。その場合、これらの連鎖移動剤の添加量は重合させる単量体の総モル数に対して0.01〜10モル%であることが好ましい。
【0077】
高分子化合物(P1)を合成する場合、一般式(1)、(2a)〜(2f)、(6a)〜(6e)、(7a)〜(7e)、(8a)〜(8c)、(9a)〜(9c)で表される繰り返し単位に対応する重合性モノマーを混合し、上述の開始剤や連鎖移動剤を添加して重合を行う。
【0078】
高分子化合物(P1)において、
一般式(1)の単位に対応するモノマーの総モル数をU11、
一般式(2a)〜(2f)の単位に対応するモノマーの総モル数をU12、
一般式(6a)〜(6e)、(7a)〜(7e)、(8a)〜(8c)、(9a)〜(9c)の単位に対応するモノマーの総モル数をU13、
U11+U12+U13=U1(=100モル%)
とした場合、
0<U11/U1<1、より好ましくは0.1≦U11/U1≦0.7、更に好ましくは0.2≦U11/U1≦0.6、
0≦U12/U1<1、より好ましくは0.3≦U12/U1≦0.9、更に好ましくは0.4≦U12/U1A≦0.8、
0≦U13/U1<1、より好ましくは0≦U13/U1≦0.5、更に好ましくは0≦U13/U1≦0.3
である。
【0079】
重合を行う際には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては重合反応を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤が使用できる。これらの溶剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。重合溶媒の使用量は、目標となる重合度(分子量)、開始剤の添加量、重合温度等の重合条件に応じて適宜変更可能であり、通常は重合させる単量体の濃度が0.1〜95質量%、特に5〜90質量%になるように溶媒を添加する。
【0080】
重合反応の反応温度は、重合開始剤の種類あるいは溶媒の沸点により適宜変更されるが、通常は20〜200℃が好ましく、特に50〜140℃が好ましい。かかる重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。
【0081】
このようにして得られた重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈澱濾過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0082】
高分子化合物(P1)の場合、重量平均分子量(Mw)が小さすぎるとレジスト材料とのミキシングや水への溶解が起こり易くなる。また、重量平均分子量が大きすぎるとスピンコート後の成膜性に問題が生じたり、アルカリ溶解性が低下したりすることがある。その観点から、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量において1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000であることが望ましい。
【0083】
高分子化合物(P1)において、一般式(2a)、(2b)、(2f)のR5、一般式(6c)及び(7c)のR10については、後保護化反応により導入することも可能である。即ち、予めR5及びR10が水素のモノマーを重合して高分子化合物を合成後、下式に示すような後保護化反応により得られたポリマーの水酸基の一部又は全部をR5及びR10で置換する。
【化22】

(式中、R5及びR10は前記と同様である。)
【0084】
後保護化反応では、水酸基の置換率目標値に対し1〜2当量の塩基を高分子化合物と反応させた後、塩基に対し1〜2当量のR−X(Rは先述のR5及びR10、Xは塩素、臭素、ヨウ素)と反応させることにより、目的の後保護化高分子化合物を得ることができる。
【0085】
後保護化反応の際に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類から選択して単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。また、塩基としては、水素化ナトリウム、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0086】
本発明で用いる高分子化合物(P1)をレジスト材料に添加する場合、添加する高分子化合物(P1)の合計質量は、レジスト材料のベース樹脂(B)100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜10質量部が好ましい。添加量が0.1質量部以上であればフォトレジスト膜表面と水との後退接触角が十分に向上し、50質量部以下であればフォトレジスト膜のアルカリ現像液への溶解速度が小さく、形成した微細パターンの高さが十分に保たれる。
【0087】
[レジスト材料の構成]
本発明のレジスト材料において、高分子化合物(P1)は一般式(1)の繰り返し単位内にヘキサフルオロアルコールの水酸基が保護された構造を含むため、樹脂の構造の選択により撥水性、滑水性、脂溶性、酸分解性、加水分解性、アルカリ溶解性など各種性能の調整が可能である。
【0088】
高分子化合物(P1)を後述するベース樹脂(B)と混合して用いると、両者はスピンコート時に層分離を起こし、高分子化合物(P1)はレジスト膜の上層に局在化する。その結果、レジスト表面の撥水性と滑水性能が向上すると共に、レジスト材料中の水溶性化合物のリーチングを抑制することができる。
【0089】
本発明のレジスト材料は、(B)ラクトン環及び/又は水酸基及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物(ベース樹脂)を含む。ベース樹脂(B)を構成する高分子化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル系、(α−トリフルオロメチル)アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合系、シクロオレフィンと無水マレイン酸との交互共重合系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン開環メタセシス重合系、シクロオレフィン開環メタセシス重合体の水素添加系ポリマー等が用いられ、その具体例は特開2008−111103号公報の段落[0072]〜[0120]に記載されている。なお、上記ベース樹脂(B)を構成する高分子化合物は1種に限らず、2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0090】
具体的には、ベース樹脂として、下記一般式(R1)及び/又は下記一般式(R2)で示されるGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは3,000〜30,000の高分子化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
【化23】

【0092】
上記式中、R001は、水素原子、メチル基又は−CH2CO2003を示す。
002は、水素原子、メチル基又は−CO2003を示す。
003は、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基等を例示できる。
【0093】
004は、水素原子、又は炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上を含有する1価の炭化水素基を示し、具体的には水素原子、カルボキシエチル、カルボキシブチル、カルボキシシクロペンチル、カルボキシシクロヘキシル、カルボキシノルボルニル、カルボキシアダマンチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシシクロペンチル、ヒドロキシシクロヘキシル、ヒドロキシノルボルニル、ヒドロキシアダマンチル、ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピルシクロヘキシル、ジ(ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)シクロヘキシル等が例示できる。
【0094】
005〜R008の少なくとも1個は炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上を含有する1価の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上を含有する1価の炭化水素基としては、具体的にはカルボキシ、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシブチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシブチル、2−カルボキシエトキシカルボニル、4−カルボキシブトキシカルボニル、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、4−ヒドロキシブトキシカルボニル、カルボキシシクロペンチルオキシカルボニル、カルボキシシクロヘキシルオキシカルボニル、カルボキシノルボルニルオキシカルボニル、カルボキシアダマンチルオキシカルボニル、ヒドロキシシクロペンチルオキシカルボニル、ヒドロキシシクロヘキシルオキシカルボニル、ヒドロキシノルボルニルオキシカルボニル、ヒドロキシアダマンチルオキシカルボニル、ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピルシクロヘキシルオキシカルボニル、ジ(ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)シクロヘキシルオキシカルボニル等が例示できる。
炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては、具体的にはR003で例示したものと同様のものが例示できる。
【0095】
005〜R008はのうち2個(例えばR005とR006、R006とR007)は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与するR005〜R008の少なくとも1個は炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上を含有する2価の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ独立に単結合又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。炭素数1〜15の含フッ素置換基、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上を含有する2価の炭化水素基としては、具体的には上記含フッ素置換基、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上を含有する1価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等を例示できる。炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基としては、具体的にはR003で例示したものから水素原子を1個除いたもの等を例示できる。
【0096】
009は、炭素数3〜15の−CO2−部分構造を含有する1価の炭化水素基を示し、具体的には2−オキソオキソラン−3−イル、4,4−ジメチル−2−オキソオキソラン−3−イル、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル等を例示できる。
【0097】
010〜R013の少なくとも1個は炭素数2〜15の−CO2−部分構造を含有する1価の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。炭素数2〜15の−CO2−部分構造を含有する1価の炭化水素基としては、具体的には2−オキソオキソラン−3−イルオキシカルボニル、4,4−ジメチル−2−オキソオキソラン−3−イルオキシカルボニル、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イルオキシカルボニル、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメチルオキシカルボニル、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イルオキシカルボニル等を例示できる。炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては、具体的にはR003で例示したものと同様のものが例示できる。
【0098】
010〜R013のうち2個(例えばR010とR011、R011とR012)は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与するR010〜R013の少なくとも1個は炭素数1〜15の−CO2−部分構造を含有する2価の炭化水素基を示し、残りはそれぞれ独立に単結合又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。炭素数1〜15の−CO2−部分構造を含有する2価の炭化水素基としては、具体的には1−オキソ−2−オキサプロパン−1,3−ジイル、1,3−ジオキソ−2−オキサプロパン−1,3−ジイル、1−オキソ−2−オキサブタン−1,4−ジイル、1,3−ジオキソ−2−オキサブタン−1,4−ジイル等の他、上記−CO2−部分構造を含有する1価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等を例示できる。炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基としては、具体的にはR003で例示したものから水素原子を1個除いたもの等を例示できる。
【0099】
014は、炭素数7〜15の多環式炭化水素基又は多環式炭化水素基を含有するアルキル基を示し、具体的にはノルボルニル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル、アダマンチル、エチルアダマンチル、ブチルアダマンチル、ノルボルニルメチル、アダマンチルメチル等を例示できる。
【0100】
015は、酸不安定基を示し、具体例については上述した通りである。
Xは、−CH2又は酸素原子を示す。
kは、0又は1である。
【0101】
前記(R2)中、R016は水素原子又はメチル基を示す。R017は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。
【0102】
前記(R1)において、a1’、a2’、a3’、b1’、b2’、b3’、c1’、c2’、c3’、d1’、d2’、d3’、e’は0以上1未満の数であり、a1’+a2’+a3’+b1’+b2’+b3’+c1’+c2’+c3’+d1’+d2’+d3’+e’=1を満足する。前記(R2)において、f’、g’、h’、i’、j’は0以上1未満の数であり、f’+g’+h’+i’+j’=1を満足する。x’、y’、z’は0〜3の整数であり、1≦x’+y’+z’≦5、1≦y’+z’≦3を満足する。
【0103】
本発明のレジスト材料は化学増幅ポジ型レジスト材料として機能するため、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含んでもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わないが、好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等が挙げられ、その具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0123]〜[0138]に記載されている。
【0104】
光酸発生剤としては、特に下記一般式(C)−1で示されるものが好適に用いられる。
【化24】

(式中、R405、R406、R407はそれぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基、特にアルキル基又はアルコキシ基を示す。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【0105】
405、R406、R407のヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基、及びこれらの基の任意の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−等のヘテロ原子団が挿入された基、任意の水素原子が−OH、−NH2、−CHO、−CO2H等の官能基に置換された基を例示することができる。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示し、具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
【化25】

【0107】
【化26】

【0108】
(C)−1で示されるもの酸発生剤の具体例としては、以下のものが例示できるが、これに限定はされない。
【化27】

【0109】
【化28】

【0110】
本発明の化学増幅型レジスト材料における(C)成分として添加する光酸発生剤の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部である。(C)成分の光酸発生剤の割合が多すぎる場合には、解像性の劣化や、現像/レジスト剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。上記(C)成分の光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0111】
なお、光酸発生剤を2種以上混合して用い、一方の光酸発生剤がいわゆる弱酸を発生するオニウム塩である場合、酸拡散制御の機能を持たせることもできる。即ち、強酸(例えばフッ素置換されたスルホン酸)を発生する光酸発生剤と弱酸(例えばフッ素置換されていないスルホン酸もしくはカルボン酸)を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出し強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0112】
ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合には上記のように高エネルギー線照射により生じた強酸が弱酸に交換することはできるが、高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできない。これらはオニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いとの現象に起因する。
【0113】
光酸発生剤の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂(B)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。光酸発生剤が20質量部以下であれば、フォトレジスト膜の透過率が十分大きく、解像性能の劣化が起こるおそれが少ない。上記光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0114】
本発明のレジスト材料は、更に、(D)有機溶剤、(E)塩基性化合物、(F)溶解阻止剤、(G)界面活性剤、(H)アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
【0115】
本発明のレジスト材料に用いる(D)有機溶剤は、高分子化合物(P1)、レジストのベース樹脂(B)、酸発生剤(C)、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよく、具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]に記載されている。有機溶剤としては単独でも2種以上を混合して使用することもできる。有機溶剤の使用量は、レジスト材料中のベース樹脂(B)100質量部に対して200〜3,000質量部、特に400〜2,500質量部が好適である。本発明では、レジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0116】
本発明のレジスト材料に用いる(E)塩基性化合物は、含窒素有機化合物が好適であり、1種又は2種以上の含窒素有機化合物を配合して用いることができる。含窒素有機化合物としては、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。含窒素有機化合物の配合により、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制できる他、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0117】
このような含窒素有機化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられ、その具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0149]〜[0163]に記載されている。塩基性化合物の使用量は、ベース樹脂(B)100質量部に対して0.001〜2質量部、特に0.01〜1質量部が好適である。配合量が0.001質量部以上であれば十分な配合効果が得られ、2質量部以下であれば感度が低下するおそれが少ない。
【0118】
特に好ましく用いられる塩基性化合物は第三級アミンであり、具体的にはトリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−へキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス(2−メトキシエトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−ベンゾイルオキシエチル)アミン、トリス[2−(4−メトキシベンゾイルオキシ)エチル]アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンが例示される。
【0119】
更に、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピロリジン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(メトキシメトキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]イミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]モルホリン、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]イミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]ベンズイミダゾール、1−[2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル]−2−フェニルベンズイミダゾール、4−[2−{2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル]モルホリン、酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、酢酸2−ピペリジノエチル、酢酸2−モルホリノエチル、酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、モルホリノ酢酸2−メトキシエチル、2−メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−メトキシ酢酸2−ピペリジノエチル、2−メトキシ酢酸2−モルホリノエチル、2−メトキシ酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−メトキシ酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−メトキシ酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−ピペリジノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−モルホリノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−ピペリジノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−モルホリノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、酪酸2−モルホリノエチル、ヘキサン酸2−モルホリノエチル、オクタン酸2−モルホリノエチル、デカン酸2−モルホリノエチル、ラウリン酸2−モルホリノエチル、ミリスチン酸2−モルホリノエチル、パルミチン酸2−モルホリノエチル、ステアリン酸2−モルホリノエチル、ベヘン酸2−モルホリノエチル、コール酸2−モルホリノエチル、トリス(O−アセチル)コール酸2−モルホリノエチル、トリス(O−ホルミル)コール酸2−モルホリノエチル、デヒドロコール酸2−モルホリノエチル、シクロペンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、シクロヘキサンカルボン酸2−モルホリノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−ピペリジノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−モルホリノエチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、アダマンタンカルボン酸2−モルホリノエチル、ギ酸2−(1−ピロリジニル)エチル、プロピオン酸2−ピペリジノエチル、アセトキシ酢酸2−モルホリノエチル、メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、安息香酸2−ピペリジノエチル、安息香酸2−モルホリノエチル、安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−ピペリジノエチル、4−メトキシ安息香酸2−モルホリノエチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−メトキシ安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−フェニル安息香酸2−ピペリジノエチル、4−フェニル安息香酸2−モルホリノエチル、4−フェニル安息香酸2−(1−イミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−フェニル安息香酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−ピペリジノエチル、1−ナフタレンカルボン酸2−モルホリノエチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、1−ナフタレンカルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−ピロリジニル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−ピペリジノエチル、2−ナフタレンカルボン酸2−モルホリノエチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−イミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(1−ベンズイミダゾリル)エチル、2−ナフタレンカルボン酸2−(2−フェニル−1−ベンズイミダゾリル)エチル、4−[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(t−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(2−メトキシエトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−ピペリジノプロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸メチル、3−(チオモルホリノ)プロピオン酸メチル、2−メチル−3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸エチル、3−ピペリジノプロピオン酸メトキシカルボニルメチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−ヒドロキシエチル、3−モルホリノプロピオン酸2−アセトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、3−モルホリノプロピオン酸テトラヒドロフルフリル、3−ピペリジノプロピオン酸グリシジル、3−モルホリノプロピオン酸2−メトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、3−モルホリノプロピオン酸ブチル、3−ピペリジノプロピオン酸シクロヘキシル、α−(1−ピロリジニル)メチル−γ−ブチロラクトン、β−ピペリジノ−γ−ブチロラクトン、β−モルホリノ−δ−バレロラクトン、1−ピロリジニル酢酸メチル、ピペリジノ酢酸メチル、モルホリノ酢酸メチル、チオモルホリノ酢酸メチル、1−ピロリジニル酢酸エチルなどが例示される。
【0120】
本発明のレジスト材料に用いる(F)溶解阻止剤としては、分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物のフェノール性水酸基を酸不安定基で保護した化合物、又は分子内にカルボキシ基を有する化合物のカルボキシ基を酸不安定基で保護した化合物が用いられ、その具体例としては、特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]に記載されている。
【0121】
本発明のレジスト材料には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤(G)を添加することができる。界面活性剤(G)の具体例は、特開2008−111103号公報の段落[0166]に記載されている。
【0122】
本発明のレジスト材料には、必要に応じて任意成分としてアセチレンアルコール誘導体(H)を添加してもよい。アセチレンアルコール誘導体(H)の具体例は、特開2008−122932号公報の段落[0180]〜[0181]に記載されている。
【0123】
[パターン形成方法]
次に、本発明のレジスト材料を用いたパターン形成方法について説明する。本発明におけるパターン形成方法では公知のリソグラフィー技術を用いることができるが、少なくとも基板上にフォトレジスト膜を形成する工程と、高エネルギー線を露光する工程と、現像液を用いて現像する工程を含むことが好ましい。
【0124】
シリコンウエハー等の基板上にフォトレジスト膜を形成する場合、例えば、スピンコーティング等の手法で膜厚が0.1〜2.0μmとなるようにレジスト材料を塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークしてフォトレジスト膜を形成する。なお、スピンコーティング時に基板表面を予めレジスト溶媒又はレジスト溶媒と混和する溶液で濡らした状態でレジスト溶液を塗布するとレジスト材料のディスペンス量を削減することができる(特開平9−246173号公報参照)。
【0125】
露光工程では、目的のパターンを形成するためのマスクを上記のフォトレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。この際に使用する高エネルギー線は波長180〜250nmの範囲のものが好ましい。
【0126】
露光は空気下又は窒素雰囲気下のドライ露光の他、投影レンズとフォトレジスト膜との間を水等で浸漬する液浸(Immersion)法を用いることも可能であり、EBやEUVなどの真空中の露光でもよい。
【0127】
液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に純水やその他の液体を挿入することによりNAが1.0以上のレンズ設計が可能となるため、更に微細なパターン形成が可能になり、ArFリソグラフィーを45nmノード以降まで延命させることが可能になる。ここで用いられる液体としては、純水の他、アルカンなどの屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。
【0128】
本発明のレジスト材料を用いて形成したフォトレジスト膜は、水に対する良好なバリアー性能を有し、フォトレジスト材料の水への溶出を抑制するため、液浸リソグラフィーにおいて保護膜を必要とせず、保護膜の形成等に要するコストを削減できる。また、上記フォトレジスト膜は、水に対して高い後退接触角を有するため、液浸露光の走査後にフォトレジスト膜の表面に液滴が残りにくく、膜表面に残存する液滴が誘発するパターン形成不良を低減することができる。
【0129】
一方、レジスト膜の上層に保護膜を設けて液浸露光を行うこともできる。レジスト保護膜は溶媒剥離型と現像液可溶型とがあるが、本発明のレジスト材料のようにフォトレジストの現像時に剥離できる現像液可溶型の方がプロセスの簡略性という面で有利である。
【0130】
液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜としては、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基、カルボキシル基、スルホ基などの酸性ユニットを含有し、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好適に用いられるが、これらに限定はされない。
【0131】
レジスト保護膜を形成する方法としては、プリベーク後のフォトレジスト膜上にトップコート溶液をスピンコートし、ホットプレート上で50〜150℃、1〜10分間、好ましくは70〜140℃、1〜5分間プリベークして保護膜を形成する。膜厚は10〜500nmの範囲が好ましい。レジスト材料の場合と同様、レジスト保護膜のスピンコーティングの際にもレジスト膜表面を予め溶媒で濡らした後にレジスト保護膜を塗布することで保護膜材料のディスペンス量を減らすことができる。
【0132】
上述の高エネルギー線を用いてフォトマスクを介して露光を行った後、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行う。
【0133】
レジスト保護膜を使用する場合、保護膜上に水が残った状態でPEBを行うと、PEB中に水が保護膜を通過する可能性がある。その結果、レジスト中の酸が吸い出されてパターン形成ができなくなることを避けるため、PEB前に保護膜上の水を完全に除去する必要がある。その方法としては、スピンドライによる方法、乾燥空気や窒素による保護膜表面のパージによる方法、ステージ上の水回収ノズルの形状や水回収プロセスの最適化などが挙げられる。
【0134】
露光後は、更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、10〜300秒間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。アルカリ現像液は2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に広く用いられている。
【0135】
本発明で用いられる高分子化合物(A)をマスクブランクス用レジスト材料の添加剤として用いる場合、ベース樹脂に本発明で用いられる高分子化合物(A)を添加してレジスト溶液を調整後、SiO2、Cr、CrO、CrN、MoSi等のマスクブランクス基板上にフォトレジストを塗布する。フォトレジストとブランクス基板の間にSOG膜と有機下層膜を形成し、三層構造を形成してもよい。
【0136】
マスクブランクス用レジストのベース樹脂としてはノボラックやヒドロキシスチレンが主に用いられる。これらの樹脂中のアルカリ溶解性水酸基を酸不安定基で置換されたものがポジ型として、また架橋剤を添加したものがネガ型として用いられる。具体的には、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル誘導体、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ヒドロキシビニルナフタレン、ヒドロキシビニルアントラセン、インデン、ヒドロキシインデン、アセナフチレン、ノルボルナジエン類を共重合した高分子化合物が好ましく用いられる。
【0137】
レジスト膜を形成後、電子ビーム描画機を用いて真空中電子ビームで露光する。露光後、ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、アルカリ現像液で10〜300秒間現像を行い、パターン形成を行う。
【実施例】
【0138】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例中における“GPC”はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーのことであり、得られた高分子化合物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はGPCによりポリスチレン換算値として測定した。また、下記例中Meはメチル基を示す。
【0139】
[モノマー合成例1]Monomer1の合成
【化29】

【0140】
[合成例1−1]1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−3−メチル−2,3−ブタンジオールの合成
1Mメチルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液1,260mlをフラスコに収め、50℃以下にて、2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピオン酸メチル73.0gを滴下した。室温で1時間撹拌した後、塩化アンモニウム水溶液を加え、通常の後処理操作を行った。n−ヘプタンより再結晶を行い、目的物59.1gを得た(収率81%)。
融点:48℃(36℃開始 昇温1℃/分)
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6):δ=1.31(6H,s),5.25(1H,s),7.43(1H,s)ppm
【0141】
[合成例1−2]メタクリル酸3−ヒドロキシ−2−メチル−4,4,4−トリフルオロ−3−トリフルオロメチルブタン−2−イルの合成
[1−1]で得たアルコール55.0g及びトリエチルアミン32.0gをトルエン300mlに溶解した。10℃にてメタクリル酸クロリド26.7gを加え、そのままの温度で3時間撹拌した。水100mlを30℃以下で加え、通常の後処理操作を行った。減圧蒸留を行い、目的物57.2gを得た(収率80%)。
沸点:54−55℃/500Pa
IR(薄膜):ν=3255,3039,3014,2966,2935,1697,1635,1475,1456,1338,1315,1257,1238,1226,1193,1170,1153,1137,987,946,904cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6):δ=1.72(6H,s),1.81(3H,s),5.67(1H,t様),5.97(1H,t様),8.41(1H,s)ppm
19F−NMR(565MHz in DMSO−d6、トリフルオロ酢酸標準):δ=−70.1(6F,s)ppm
【0142】
[合成例1−3]Monomer1の合成
[1−2]で得たメタクリル酸エステル89.1g及びピリジン31.2gをアセトニトリル300mlに溶解した。10℃にてイソ酪酸クロリド40.3gを加え、そのままの温度で3時間撹拌した。水100mlを30℃以下で加え、通常の後処理操作を行った。減圧蒸留を行い、目的物103gを得た(収率94%)。
沸点:69−70℃/20Pa
IR(薄膜):ν=2981,2940,2833,1795,1725,1639,1471,1394,1376,1324,1265,1226,1145,1095,1064,1022,985,973cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6):δ=1.14(6H,d),1.80(6H,s),1.83(3H,s),2.81(1H,sept),5.71(1H,m),5.97(1H,s)ppm
【0143】
[モノマー合成例2]Monomer2の合成
【化30】

【0144】
[1−2]で得たメタクリル酸エステル99.3g及びピリジン35.1gをアセトニトリル300mlに溶解した。10℃にてイソ吉草酸クロリド49.7gを加え、そのままの温度で3時間撹拌した。水100mlを30℃以下で加え、通常の後処理操作を行った。減圧蒸留を行い、目的物117gを得た(収率97%)。
沸点:63−67℃/13Pa
IR(薄膜):ν=3020,2966,2935,2877,1797,1725,1639,1467,1394,1375,1324,1265,1240,1222,1143,1091,1022,983,960cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6):δ=0.92(6H,d),1.79(6H,s),1.82(3H,s),1.99(1H,sept),2.45(2H,d),5.70(1H,t様),5.97(1H,s)ppm
19F−NMR(565MHz in DMSO−d6、トリフルオロ酢酸標準):δ=−64.8(6F,s)ppm
【0145】
[ポリマー合成例]
下記にポリマー合成例で使用した重合性単量体(Monomer1〜13)の構造式を示す。
【化31】

【0146】
[ポリマー合成例1]Monomer1及びMonomer6の共重合(20/80)
窒素雰囲気下のフラスコに23.41gのMonomer1、77.11gのMonomer6、3.75gの2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、100.1gのメチルエチルケトンを投入して単量体溶液を調製し、溶液温度を20〜25℃とした。窒素雰囲気下の別のフラスコに50.1gのメチルエチルケトンを投入し、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、熟成終了後に室温まで冷却した。フラスコに200gのトルエンを投入後、エバポレーターを用いて反応混合物の総質量が250gになるまで濃縮を行った。この濃縮液を1,500gのヘキサン中に滴下し、析出した共重合体を分離後、600gのヘキサンで洗浄し、白色固体を分離した。白色固体を50℃で20時間真空乾燥させることにより、目的の高分子化合物(Polymer2)69.3gを得た。樹脂の組成を1H−NMRで分析した結果、共重合体中のMonomer1とMonomer6の組成比は81/19モル%であった。
【0147】
[ポリマー合成例2〜19]
表1〜5に示す組成で上述の重合性単量体(Monomer1〜13)を仕込み、Polymer2の合成と同様の処方を用いてPolymer1〜19の合成を行った。
【0148】
【表1】

【0149】
【化32】

【0150】
【表2】

【0151】
【化33】

【0152】
【表3】

【0153】
【化34】

【0154】
【表4】

【0155】
【化35】

【0156】
【表5】

【0157】
【化36】

【0158】
[比較ポリマー合成例1]Monomer6のホモポリマー合成
窒素雰囲気下のフラスコに100.0gのMonomer6、3.91gの2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、100.0gのイソプロピルアルコールを投入して単量体溶液を調製し、溶液温度を20〜25℃とした。窒素雰囲気下の別のフラスコに50.0gのイソプロピルアルコールを投入し、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま3時間撹拌を続け、熟成終了後に室温まで冷却した。得られた重合液を2,000gの水中に滴下し、析出した共重合体を濾別した。得られた共重合体を600gのヘキサン/イソプロピルエーテル(9/1)混合溶液で4回洗浄し、白色固体を分離した。白色固体を50℃で20時間真空乾燥させることにより、目的の高分子化合物(比較Polymer1)92.8gを得た。得られた共重合体のGPC測定を行った結果、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で7,800、分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
【0159】
[レジスト評価実施例]
下記Resist Polymerを5g、上記Polymer8〜19及び比較Polymer1を0.25g、PAG1を0.25g、Quencher1を0.05g用い、これらを75gのプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ、0.2μmサイズのポリプロピレンフィルターで濾過し、レジスト溶液を作製した。また、比較例として、上記Polymer8〜19、比較Polymer1を添加しないレジスト溶液も調製した。
【0160】
【化37】

【0161】
シリコン基板上に反射防止膜ARC−29A(日産化学工業(株)製)を成膜後(膜厚:87nm)、その上に上記レジスト溶液を塗布し、120℃で60秒間ベークして膜厚150nmのレジスト膜を作製した。
【0162】
上記方法でレジスト膜を形成したウエハーを水平に保ち、その上に50μLの純水を滴下して水玉を形成後、傾斜法接触角計Drop Master 500(協和界面科学(株)製)を用いてウエハーを徐々に傾斜させ、水玉が転落し始めるウエハーの角度(転落角)と後退接触角を求めた。その結果を表6に示す。
【0163】
【表6】

【0164】
表6において転落角が低いほどレジスト膜上の水は流動し易く、後退接触角が高いほど高速のスキャン露光でも液滴が残りにくい。本発明の高分子化合物を配合したレジスト溶液から形成されたフォトレジスト膜は、配合しないフォトレジスト膜と比較して後退接触角を飛躍的に向上させることができ、かつ転落角は悪化させないことが確認できた。
【0165】
更に、上記方法でレジスト膜を形成したウエハーをArFスキャナーS305B((株)ニコン製)を用いてオープンフレームにて50mJ/cm2のエネルギーを照射した。次いで、このレジスト膜上に内径10cmの真円状のテフロン(登録商標)リングを置き、その中に10mlの純水を注意深く注いで、室温にて60秒間レジスト膜と純水を接触させた。その後、純水を回収し、純水中の光酸発生剤(PAG1)の陰イオン成分濃度をLC−MS分析装置(アジレント・テクノロジー(株)製)にて測定した。その結果を表6に示す。
表6から明らかなように、本発明による高分子化合物を配合したレジスト溶液から形成されたフォトレジスト膜では、フォトレジスト膜から水への光酸発生剤成分の溶出を抑制する効果が認められた。
【0166】
次に、上記方法でレジスト膜を形成したウエハーをArFスキャナーS307E((株)ニコン製、NA0.85、σ0.93、4/5輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光を行い、純水をかけながら5分間リンスを行い、110℃で60秒間ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH水溶液で60秒間現像を行った。得られたウエハーを割断し、75nmライン・アンド・スペースのパターン形状、感度を比較した。その結果を表6に示す。
表6の結果から、露光後に純水リンスを行った場合、本発明の高分子化合物を配合しないレジスト溶液ではパターン形状がT−トップ形状になった。これに対し、本発明の高分子化合物を配合したレジスト溶液を使った場合は矩形形状になることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、(B)ラクトン環及び/又は水酸基及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物、(D)有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
【化1】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R2a及びR2bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R2aとR2bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成することもできる。R3は単結合、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基である。R4は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基であり、−O−又は−C(=O)−を含んでもよい。)
【請求項2】
(A)請求項1記載の一般式(1)で表される繰り返し単位に加えて、下記一般式(2a)〜(2f)で表される繰り返し単位のうちの1つ又は2つ以上を有する高分子化合物、(B)ラクトン環及び/又は水酸基及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物、(C)高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物、(D)有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
【化2】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R2a及びR2bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R2aとR2bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成することもできる。R5は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基、又は酸不安定基である。R6は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化アルキル基である。R7は酸不安定基である。)
【請求項3】
更に、(E)塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレジスト材料。
【請求項4】
更に、(F)溶解阻止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレジスト材料。
【請求項5】
(1)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
(1)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、投影レンズとウエハーの間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
(1)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)フォトレジスト膜の上に保護膜層を形成する工程と、(3)加熱処理後、投影レンズとウエハーの間に液体を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(4)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
前記露光工程において、投影レンズと基板の間に挿入する液体が水であることを特徴とする請求項6又は7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
露光光源として波長180〜250nmの範囲の高エネルギー線を用いることを特徴とする請求項7乃至8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
(1)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料をマスクブランクス上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、真空中電子ビームで露光する工程と、(3)現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−134012(P2010−134012A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307213(P2008−307213)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】