説明

レーザアニール方法及びレーザアニール装置

【課題】搬送される基板の動きに追従してマイクロレンズアレイを移動してレーザ光の照射位置精度を向上する。
【解決手段】マトリクス状に設定されたTFT形成領域の縦横いずれか一方の配列方向に基板を搬送しながら撮像手段により基板表面を撮像し、該撮像画像に基づいて基板表面に予め設定されたアライメントの基準位置を検出し、複数のTFT形成領域に対応して基板の搬送方向と交差する方向に複数のレンズを配置した少なくとも一列のレンズアレイを基板の搬送方向と交差方向に移動して、レンズアレイのレンズと基板のTFT形成領域とをアライメント基準位置を基準にして位置合わせし、基板が移動してTFT形成領域がレンズアレイの対応レンズの真下に到達したときにレンズアレイにレーザ光を照射し、複数のレンズによりレーザ光を集光して各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜をアニール処理する。
【選択図】図6


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイによりレーザ光を集光してアモルファスシリコン膜の薄膜トランジスタ形成領域のみをアニールするレーザアニール方法に関し、詳しくは、搬送される基板の動きに追従してマイクロレンズアレイを移動し、レーザ光の照射位置精度を向上しようとするレーザアニール方法及びレーザアニール装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザアニール方法は、マイクロレンズアレイにより複数のレーザビームを形成すると共に、ビーム毎に焦点を形成し、該ビームの各焦点をアモルファスシリコン膜面側に転写して結像させ、アモルファスシリコン膜面に対するビーム照射によりレーザ処理を施して、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」という)形成領域のアモルファスシリコン膜をポリシリコン化するようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−311906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のレーザアニール方法においては、マイクロレンズアレイによりレーザ光を集光して複数のTFT形成領域のアモルファスシリコン膜のみをアニール処理するものであるため、レーザ光の利用効率が高くなる利点を有しているが、蛇行しながら搬送される基板の動きに追従してマイクロレンズアレイを移動させ、マイクロレンズアレイの各レンズを各TFT形成領域に位置付けてレーザ光を照射することに関しては開示されていない。したがって、一辺が1m以上の大型基板を搬送しながらアニールする際に、搬送機構の機械精度により基板が蛇行しながら搬送された場合に、各TFT形成領域のみを確実にアニール処理することができないおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、搬送される基板の動きに追従してマイクロレンズアレイを移動し、レーザ光の照射位置精度を向上しようとするレーザアニール方法及びレーザアニール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によるレーザアニール方法は、基板上に所定の配列ピッチでマトリクス状に設定された複数の薄膜トランジスタ(以下、「TFT」という)形成領域にレンズアレイの複数のレンズによりレーザ光を集光して、前記各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜をアニール処理するレーザアニール方法であって、前記マトリクス状に設定されたTFT形成領域の縦横いずれか一方の配列方向に前記基板を搬送しながら撮像手段により前記基板表面を撮像し、該撮像画像に基づいて基板表面に予め設定されたアライメントの基準位置を検出し、前記複数のTFT形成領域に対応して前記基板の搬送方向と交差する方向に複数のレンズを配置した少なくとも一列のレンズアレイを前記基板の搬送方向と交差方向に移動して、前記レンズアレイのレンズと前記基板のTFT形成領域とを前記アライメント基準位置を基準にして位置合わせし、前記基板が移動して前記TFT形成領域が前記レンズアレイの対応レンズの真下に到達したときに前記レンズアレイに前記レーザ光を照射するものである。
【0007】
このような構成により、マトリクス状に設定されたTFT形成領域の縦横いずれか一方の配列方向に基板を搬送しながら撮像手段により基板表面を撮像し、該撮像画像に基づいて基板表面に予め設定されたアライメントの基準位置を検出し、複数のTFT形成領域に対応して基板の搬送方向と交差する方向に複数のレンズを配置した少なくとも一列のレンズアレイを基板の搬送方向と交差方向に移動して、レンズアレイのレンズと基板のTFT形成領域とをアライメント基準位置を基準にして位置合わせし、基板が移動してTFT形成領域がレンズアレイの対応レンズの真下に到達したときにレンズアレイにレーザ光を照射し、複数のレンズによりレーザ光を集光して各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜をアニール処理する。
【0008】
また、前記レンズアレイは、前記基板の搬送方向と交差する方向に、同方向の前記TFT形成領域の配列ピッチの2以上の整数倍のピッチでレンズを並設した複数列のレンズ列から成り、前記基板の搬送方向先頭側に位置する前記レンズ列の各レンズ間を補完するように後続のレンズ列を前記複数のレンズの前記並設方向に所定寸法だけずらして形成されたものである。これにより、基板の搬送方向と交差する方向に、同方向のTFT形成領域の配列ピッチの2以上の整数倍のピッチでレンズを並設した複数列のレンズ列から成り、基板の搬送方向先頭側に位置するレンズ列の各レンズ間を補完するように後続のレンズ列を複数のレンズの並設方向に所定寸法だけずらして形成されたレンズアレイでレーザ光を各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜上に集光する。
【0009】
さらに、前記基板は、縦横に配線が形成され、該縦横の配線の交差部に前記TFT形成領域が設定されたTFT基板であり、前記アライメント基準位置は、前記TFT基板の搬送方向に平行な配線の縁部に設定されたものである。これにより、縦横の配線の交差部に前記TFT形成領域が設定されたTFT基板の搬送方向に平行な配線の縁部に設定されたアライメント基準位置を基準にして、レンズアレイのレンズとTFT基板のTFT形成領域との位置合わせをする。
【0010】
また、本発明によるレーザアニール装置は、基板上に所定の配列ピッチでマトリクス状に設定された複数のTFT形成領域にレンズアレイの複数のレンズによりレーザ光を集光し、前記各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜をアニール処理するレーザアニール装置であって、前記マトリクス状に設定されたTFT形成領域の縦横いずれか一方の配列方向に前記基板を一定速度で搬送する搬送手段と、前記レーザ光を放射するレーザ光源と、前記基板面に平行な面内にて前記基板の搬送方向と交差する方向に、同方向の前記複数のTFT形成領域に対応させて並設された少なくとも一列の複数の集光レンズから成るレンズアレイと、前記レンズアレイによるレーザ光の集光位置に対して前記基板の搬送方向手前側を撮像位置とし前記基板表面を撮像する撮像手段と、前記レンズアレイを前記基板の搬送方向と交差する方向に移動させて前記レンズアレイのレンズと前記基板のTFT形成領域との位置合わせをするアライメント手段と、前記各構成要素を駆動制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、搬送中の前記基板表面を撮像して前記撮像手段から逐次入力する画像を処理して前記基板表面に予め設定されたアライメントの基準位置を検出し、該アライメント基準位置を基準にして前記レンズアレイのレンズと前記基板のTFT形成領域との位置合わせをさせ、前記基板が移動して前記TFT形成領域が前記レンズアレイの対応レンズの真下に到達したときに前記レーザ光源から前記レンズアレイに向けてレーザ光を放射させるように制御するものである。
【0011】
このような構成により、制御手段で、搬送中の前記基板表面を撮像して撮像手段から逐次入力する画像を処理して基板表面に予め設定されたアライメントの基準位置を検出し、アライメント手段を駆動制御してレンズアレイを基板の搬送方向と交差する方向に移動させ、アライメント基準位置を基準にしてレンズアレイのレンズと基板のTFT形成領域との位置合わせをさせ、搬送手段により基板が移動されてTFT形成領域がレンズアレイの対応レンズの真下に到達したときにレーザ光源からレンズアレイに向けてレーザ光を放射させるように制御し、基板上に所定の配列ピッチでマトリクス状に設定された複数のTFT形成領域にレンズアレイの複数のレンズによりレーザ光を集光し、各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜をアニール処理する。
【0012】
さらに、前記レンズアレイは、前記基板の搬送方向と交差する方向に、同方向の前記TFT形成領域の配列ピッチの2以上の整数倍のピッチでレンズを並設した複数列のレンズ列から成り、前記基板の搬送方向先頭側に位置する前記レンズ列の各レンズ間を補完するように後続のレンズ列を前記複数のレンズの前記並設方向に所定寸法だけずらして形成されたものである。これにより、基板の搬送方向と交差する方向に、同方向のTFT形成領域の配列ピッチの2以上の整数倍のピッチでレンズを並設した複数列のレンズ列から成り、基板の搬送方向先頭側に位置するレンズ列の各レンズ間を補完するように後続のレンズ列を複数のレンズの並設方向に所定寸法だけずらして形成されたレンズアレイでレーザ光を各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜上に集光する。
【0013】
そして、前記基板は、縦横に複数の配線が形成され、該複数の配線の交差部に前記TFT形成領域が設定されたTFT基板であり、前記アライメント基準位置は、前記TFT基板の搬送方向に平行な配線の一方の縁部に設定されたものである。これにより、縦横の配線の交差部に前記TFT形成領域が設定されたTFT基板の搬送方向に平行な配線の縁部に設定されたアライメント基準位置を基準にして、レンズアレイのレンズとTFT基板のTFT形成領域との位置合わせをする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1又は4に係る発明によれば、搬送される基板の動きに追従してマイクロレンズアレイを移動することができ、レーザ光の照射位置精度を向上することができる。したがって、一辺が1m以上の大型基板を搬送しながらアニールする際に、搬送機構の機械精度により基板が蛇行しながら搬送された場合にも、各TFT形成領域のみを確実にアニール処理することができる。
【0015】
また、請求項2又は5に係る発明によれば、レンズアレイの各レンズの形状を大きくしてレーザ光の取り込み量を大きくし、アモルファスシリコン膜へのレーザ光の照射エネルギーを大きくすることができる。したがって、レーザ光を放射するレーザ光源に対する負担を軽減することができ、装置の信頼性を向上することができる。
【0016】
そして、請求項3又は6に係る発明によれば、基板を搬送しながら、液晶表示パネルや有機EL表示パネルのTFT基板に設けられた基板搬送方向に連続して延びる配線の縁部を基準にレンズとTFT形成領域との位置合わせを常時実行することができ、レンズとTFT形成領域との位置合わせ精度をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるレーザアニール装置の実施形態を示す概要図である。
【図2】本発明によるレーザアニール装置に使用するTFT基板を示す平面図である。
【図3】本発明によるレーザアニール装置を構成するマイクロレンズアレイの一構成例を示し、撮像手段との位置関係を示す説明図である。
【図4】本発明によるレーザアニール装置を構成する制御手段の一構成例を示すブロック図である。
【図5】上記TFT基板のゲート線の縁部の検出について示す説明図である。
【図6】本発明によるレーザアニール方法を示すフローチャートである。
【図7】上記TFT基板の全TFT形成領域がマイクロレンズアレイにより順次レーザアニールされる様子を示す説明図である。
【図8】上記マイクロレンズアレイによるTFT基板のTFT形成領域のアニール処理について説明する断面図である。
【図9】本発明のレーザアニール方法によりアニールして形成されたポリシリコン膜を所定形状にエッチングする工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明によるレーザアニール装置の実施形態を示す概要図である。このレーザアニール装置は、マイクロレンズアレイによりレーザ光を集光して、基板上に成膜されたアモルファスシリコン膜のTFT形成領域のみをアニールするもので、搬送手段1と、レーザ光源2と、マイクロレンズアレイ3と、撮像手段4と、アライメント手段5と、制御手段6とを備えてなる。
【0019】
ここで、上記基板は、図2に示すように、縦横に複数のデータ線7及びゲート線8が形成され、該データ線7とゲート線8との交差部にてゲート電極30(図6参照)上にTFT形成領域9が設定されたTFT基板10であり、複数のTFT形成領域9が画素11の配列ピッチと同じ配列ピッチ(横がW、縦がL)でマトリクス状に設定されている。そして、TFT基板10には、TFT形成領域9と後述のマイクロレンズアレイ3のマイクロレンズ15との位置合わせの基準となるアライメント基準位置が基板搬送方向(矢印A方向)に平行な例えばデータ線7の縁部に設定されている。具体的には、本実施形態においては、上記アライメント基準位置は、基板搬送方向に向かって左端に位置するデータ線7の右側縁部に設定されている。このとき、データ線7の右側縁部とTFT形成領域9の中心との間の水平距離は、設計値によって決まる。
【0020】
上記搬送手段1は、上面にTFT基板10を載置して上記TFT形成領域9の縦横いずれか一方の配列方向、例えば図2に示す矢印A方向に一定速度で搬送するものであり、上面に気体を噴出する多数の噴出孔と気体を吸引する多数の吸引孔とを有した複数の単位ステージ12をTFT基板10の搬送方向(以下、「基板搬送方向」という)に並設し、気体の噴出と吸引とのバランスによりTFT基板10を複数の単位ステージ12上に所定量だけ浮かせた状態で、搬送ローラ13によりTFT基板10の両端縁部を支持して搬送するようになっている。
【0021】
上記搬送手段1の上方には、レーザ光源2が設けられている。このレーザ光源2は、例えば波長が308nm又は353nmのレーザ光14を例えば50Hzの繰り返し周期で放射するエキシマレーザである。
【0022】
上記レーザ光源2から放射されるレーザ光14の光路上には、マイクロレンズアレイ3が設けられている。このマイクロレンズアレイ3は、レーザ光14をTFT基板10上に設定された複数のTFT形成領域9に集光するものであり、図3(a)に示すようにTFT基板10面に平行な面内にて基板搬送方向(図2に示す矢印A方向)に交差して複数設定されたTFT形成領域9の配列ピッチWの2以上の整数倍のピッチ(図3においては2Wで示す)でマイクロレンズ15を並設した例えば6列のレンズ列を互いに距離Lだけ離して平行に配置した構成を有し、基板搬送方向先頭側に位置する3列のレンズ列(以下、「第1のレンズ群16」という)の各レンズ間を補完するように後続の3列のレンズ列(以下、「第2のレンズ群17」という)をマイクロレンズ15の並設方向に所定寸法(図3においてはWで示す)だけずらして形成されている。
【0023】
マイクロレンズアレイ3の具体的構成例は、図3(b)に示すように、透明な基板34の一面に複数のマイクロレンズ15が形成され、他面には、マイクロレンズ15に対応して開口部を有した不透明な遮光膜35が形成されている。さらに、遮光膜35には、第2のレンズ群17の基板搬送方向手前側に所定距離はなれてレンズ列に平行な細長状の開口窓36が形成されている。そして、この開口窓36内には、N字状のアライメントマーク37が設けられている。このアライメントマーク37は、TFT基板10との位置合わせをするためのものであり、斜めの細線37aの基板搬送方向に平行な中心線を第1又は第2のレンズ群16,17のいずれかのマイクロレンズ15の中心に合致させ、左右の平行な細線37bを基板搬送方向に平行にして配置されている。これにより、マイクロレンズアレイ3の各マイクロレンズ15は、アライメントマーク37の中心に対して所定の位置関係をなすことになる。即ち、各マイクロレンズ15は、アライメントマーク37の中心に対する基板搬送方向と直交方向の水平距離がnW(nは1以上の整数)の関係をなす。
【0024】
上記搬送手段1の隣接する単位ステージ12の間には、上記マイクロレンズアレイ3の開口窓36に対応して撮像手段4が設けられている。この撮像手段4は、マイクロレンズアレイ3によるレーザ光14の集光位置に対して基板搬送方向手前側を撮像位置としてTFT基板10の裏面側から基板を透して表面に形成された配線パターン及びマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37を同時に撮像するもので、図3において矢印Aで示す基板搬送方向に交差して複数の受光素子を一直線状に並べて有するラインカメラ(ラインCCD)であり、ライン状の受光面の長軸の中心線をマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37の基板搬送方向に交差する中心線と合致させると共に、マイクロレンズアレイ3の例えば第2のレンズ群17の基板搬送方向先頭側に位置するレンズ列17aに対して距離Dだけ隔てて設けられている。
【0025】
上記マイクロレンズアレイ3を基板搬送方向に交差する方向に移動可能にアライメント手段5が設けられている。このアライメント手段5は、TFT基板10のデータ線7に予め設定されたアライメント基準位置(以下、「基板側アライメント基準位置」という)とマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37の斜め細線37aの中心位置(以下、「レンズ側アライメント基準位置」という)との間の距離が所定値となるようにマイクロレンズアレイ3を移動して、マイクロレンズアレイ3の各マイクロレンズ15と、TFT基板10のTFT形成領域9との位置合わせをするものであり、例えばマイクロレンズアレイ3を基板搬送方向(矢印A方向)に交差する方向に移動させるステージ及びモータを備えている。また、必要に応じて、マイクロレンズアレイ3をその光軸を中心に所定の角度範囲内を回転させる別のモータを備えてもよい。
【0026】
なお、図1において符号18は、レーザ光源2から放射されたレーザ光14の横断面内強度分布を均一化するホモジナイザーであり、符号19は、レーザ光14を平行光にしてマイクロレンズアレイ3に照射させるコンデンサーレンズである。また、符号20は、撮像手段4の撮像位置を照明する照明用光源である。
【0027】
上記搬送手段1、レーザ光源2、撮像手段4、及びアライメント手段5に結線して制御手段6が設けられている。この制御手段6は、撮像手段4により同時に撮像された基板表面及びマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37の一次元画像をリアルタイム処理してTFT基板10のデータ線7に設定された基板側アライメント基準位置及びマイクロレンズアレイ3のレンズ側アライメント基準位置を検出し、両者間の距離が所定値となるようにアライメント手段5を駆動してマイクロレンズアレイ3を基板搬送方向に交差する方向に移動し、マイクロレンズアレイ3の各マイクロレンズ15とTFT基板10のTFT形成領域9との位置合わせをし、撮像手段4の撮像画像に基づいてTFT基板10のゲート線8の縁部がアライメントマーク37の中心に合致したことが検知されてからTFT基板10が所定距離移動して、又は所定時間経過してTFT形成領域9がマイクロレンズアレイ3の対応レンズの真下に到達したときに、レーザ光源2を所定時間点灯してレーザ光14をマイクロレンズアレイ3に照射させるように制御するものであり、図4に示すように、画像処理部21と、メモリ22と、演算部23と、搬送手段駆動コントローラ24と、アライメント手段駆動コントローラ25と、レーザ光源駆動コントローラ26と、制御部27と、を備えている。
【0028】
ここで、画像処理部21は、撮像手段4により撮像された一次元画像をリアルタイム処理して撮像手段4の複数の受光素子の並び方向(長軸方向)における輝度変化を検出して、TFT基板10のデータ線7に設定された基板側アライメント基準位置及びマイクロレンズアレイ3のレンズ側アライメント基準位置を検出すると共に、撮像手段4の撮像画像に基づいてTFT基板10のゲート線8の縁部がアライメントマーク37の中心に合致したことを検知するものである。
【0029】
また、メモリ22は、例えばマイクロレンズアレイ3の第2のレンズ群17の基板搬送方向先頭側に位置するレンズ列17aと撮像手段4との間の距離D、マイクロレンズアレイ3の第1のレンズ群16及び第2のレンズ群17の夫々基板搬送方向先頭側に位置するレンズ列16a,17a間の距離(例えば、図3においては3L)、TFT基板10とマイクロレンズアレイ3を位置合わせするためのアライメント基準値、及びTFT基板10のゲート線8の縁部が検出されてからレーザ光源2を点灯させるまでにTFT基板10が移動する距離又は経過時間等を記憶するものである。
【0030】
さらに、演算部23は、画像処理部21で検出されたTFT基板10の基板側アライメント基準位置とマイクロレンズアレイ3のレンズ側アライメント基準位置との間の位置ずれ量を演算するものである。
【0031】
そして、搬送手段駆動コントローラ24は、TFT基板10が所定速度で搬送されるように所定周期のパルスにより搬送手段の駆動を制御するものである。
【0032】
また、アライメント手段駆動コントローラ25は、演算部23で演算されたTFT基板10の基板側アライメント基準位置とマイクロレンズアレイ3のレンズ側アライメント基準位置との間の位置ずれ量をメモリ22から読み出したアライメント基準値と比較し、両者が合致するようにアライメント手段5を駆動してマイクロレンズアレイ3を基板搬送方向と交差する方向に移動させるものである。
【0033】
さらに、レーザ光源駆動コントローラ26は、レーザ光源2の点灯及び消灯を制御するものである。そして、制御部27は、上記各構成要素が適切に動作するように全体を統合して制御するものである。
【0034】
次に、このように構成されたレーザアニール装置の動作について説明する。
先ず、テンキー等の入力手段を操作して、マイクロレンズアレイ3の第2のレンズ群17の基板搬送方向先頭側に位置するレンズ列17aと撮像手段4との間の距離D、マイクロレンズアレイ3の第1のレンズ群16及び第2のレンズ群17の夫々基板搬送方向先頭側に位置するレンズ列16a,17a間の距離3L、TFT基板10とマイクロレンズアレイ3を位置合わせするためのアライメント基準値、及びTFT基板10のゲート線8の縁部が検出されてからレーザ光源2を点灯させるまでにTFT基板10が移動する距離又は経過時間等をメモリ22に記憶する。
【0035】
次に、表面全面を覆ってアモルファスシリコン膜が成膜されたTFT基板10を、アモルファスシリコン膜を上にし、データ線7が搬送方向と平行となるように位置決めして搬送手段1の上面に載置する。
【0036】
そして、起動スイッチがオン起動されると、TFT基板10を搬送手段1の上面に所定量だけ浮上させた状態で、搬送手段駆動コントローラ24により搬送手段1をパルス制御してTFT基板10を図1に示す矢印A方向に一定速度で搬送する。
【0037】
続いて、TFT基板10が撮像手段4の上方に達すると、撮像手段4によりTFT基板10を透してTFT基板10表面に形成されたデータ線7及びゲート線8並びにマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37が同時に撮像される。そして、撮像手段4で撮像されて逐次入力する一次元画像を画像処理部21でリアルタイム処理し、図5に示すようにTFT基板10のゲート線8の縁部8aがマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37の中心に合致したことを検知すると、該検知時刻を基準にして例えば搬送手段駆動コントローラ24のパルスをカウントしてTFT基板10の移動距離の計測を開始し、又は上記検知時刻を基準にして経過時間の計時を開始する。
【0038】
ここで、TFT基板10のゲート線8の縁部8aとマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37の中心との合致は、図5に示すように、アライメントマーク37の両側の平行な細線37b間におけるゲート線8の縁部8aが、斜めの細線37aによって分断されて得られた基板搬送方向に向かって左右の寸法8b,8cが等しくなった瞬間をとらえて検知することができる。
【0039】
以下、本発明のレーザアニール方法を図6のフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップS1においては、撮像手段4で撮像された一次元画像を画像処理部21でリアルタイム処理し、撮像手段4の複数の受光素子の並び方向(長軸方向)における輝度変化により複数のデータ線7の基板搬送方向に向かって右側縁部の位置、及びマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37の斜めの細線37の中心位置(レンズ側アライメント基準位置)を検出する。そして、検出された複数のデータ線7の右側縁部のうちから、例えば基板搬送方向に向かって左端のデータ線7の右側縁部の位置を基板側アライメント基準位置として特定する。
【0040】
ステップS2においては、上記特定された基板側アライメント基準位置と上記レンズ側アライメント基準位置との間の位置ずれ量を演算部23で演算し、該位置ずれ量とメモリ22に記憶されたアライメント基準値とを比較する。そして、両者が合致するようにアライメント手段駆動コントローラ25によりアライメント手段5を駆動し、マイクロレンズアレイ3を基板搬送方向と交差する方向に移動してマイクロレンズ15とTFT形成領域9との位置合わせをする。
【0041】
ステップS3においては、搬送方向先頭側に位置するゲート線8の縁部8aがアライメントマーク37の中心に合致したことが検出されてから、TFT基板10が所定距離移動し又は所定時間経過して、図7(a)に示すように搬送方向先頭側に位置する一列のTFT形成領域9がマイクロレンズアレイ3の第2のレンズ群17の搬送方向先頭側のレンズ列17aの真下に到達すると、レーザ光源駆動コントローラ26が駆動してレーザ光源2が所定時間点灯し、レーザ光14がマイクロレンズアレイ3に照射され、第2のレンズ群17に対応したTFT形成領域9のアモルファスシリコン膜がアニールされる。具体的には、図8(a)に示すように、レーザ光14は、マイクロレンズ15によりゲート電極30上のTFT形成領域9に集光され、TFT形成領域9のアモルファスシリコン膜28をアニールする。即ち、レーザ光14の照射により、図8(b)に示すようにTFT形成領域9のアモルファスシリコン膜28が溶融し、その後レーザ光源2の消灯と共に溶融したアモルファスシリコン膜28aが急速に冷却されて再結晶し、ポリシリコン膜が形成される。このとき、第1のレンズ群16によるレーザ光14の照射位置は、画素11の形成領域外であり、いわゆる空打ちとなる。なお、図8において、符号29はガラス基板であり、符号31はSiN絶縁膜である。
【0042】
ステップS4においては、搬送手段駆動コントローラ24により搬送手段1がパルス制御されてTFT基板10がマイクロレンズアレイ3の第1のレンズ群16及び第2のレンズ群17の夫々基板搬送方向先頭側に位置するレンズ列16a,17a間の距離3Lと等しい距離だけ移動される毎にレーザ光源駆動コントローラ26によりレーザ光源2が所定時間だけ点灯駆動される。これにより、TFT基板10上に設定された全TFT形成領域9が順次アニールされてポリシリコン化され、ポリシリコン膜32が形成される。なお、図7(b)は、同図(a)の状態からTFT基板10が距離3Lだけ移動した状態を示し、第2のレンズ群17に対応したTFT形成領域9間のTFT形成領域9が第1のレンズ群16でアニールされた状態を示している。
【0043】
本実施形態においては、上記ステップS3におけるマイクロレンズアレイ3のマイクロレンズ15とTFT基板10のTFT形成領域9との位置合わせは、TFT基板10の搬送中も常時実行される。したがって、TFT基板10が左右に振れながら搬送されても基板の動きに追従してマイクロレンズ15をTFT形成領域9上に位置付けることができる。これにより、TFT形成領域9のアモルファスシリコン膜28のみを確実にアニールしてポリシリコン膜32を形成することができる。
【0044】
TFT基板10のアニールが終了すると、図9(a)に示すように、ゲート電極30上のポリシリコン膜32上に所定形状のレジストマスク33が形成された後、同図(b)に示すようにレジストマスク33の周辺のアモルファスシリコン膜28及びポリシリコン膜32並びにそれらの下に形成されたSiN絶縁膜31が公知のエッチング技術によりエッチングして除去される。そして、レジストマスク33を除去することにより、同図(c)に示すようにゲート電極30上に所定形状のポリシリコン膜32が形成されたTFT基板10が出来上がる。その後、ポリシリコン膜32上にソース電極及びドレイン電極を形成すれば低温ポリシリコン薄膜トランジスタ基板が完成する。
【0045】
なお、上記実施形態においては、全面にアモルファスシリコン膜28を形成したTFT基板10のTFT形成領域9をアニールしてポリシリコン化した後、TFT形成領域9の所定形状のポリシリコン膜32を残してその周辺の不要な膜をエッチングする場合について述べたが、本発明はこれに限られず、TFT形成領域9の所定形状のアモルファスシリコン膜28を残してその周辺の不要な膜を除去した後に、上記残ったアモルファスシリコン膜28をアニールしてポリシリコン化してもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、撮像手段4を搬送手段側に設け、TFT基板10の裏面側から基板を透かして基板表面のデータ線7及びゲート線8並びにマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37を撮像する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、撮像手段4は搬送手段1の上方に設け、上方から基板表面のデータ線7及びゲート線8並びにマイクロレンズアレイ3のアライメントマーク37を撮像するようにしてもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態においては、マイクロレンズアレイ3が基板搬送方向と交差する方向に、同方向のTFT形成領域9の配列ピッチWの2倍のピッチ(2W)でマイクロレンズ15を並設した複数列のレンズ列から成り、基板搬送方向先頭側に位置するレンズ列の各マイクロレンズ15間を補完するように後続のレンズ列を複数のマイクロレンズ15の上記並設方向にWだけずらして形成した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、基板搬送方向と交差する方向に、同方向のTFT形成領域9の配列ピッチWと同じピッチWで複数のマイクロレンズ15を並設した少なくとも一列のレンズ列で構成したものであってもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、アライメント手段5がマイクロレンズアレイ3を基板搬送方向と交差する方向に移動する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、マイクロレンズアレイ3と撮像手段4とを一体的に移動してもよい。
【0049】
さらに、上記実施形態においては、マイクロレンズアレイ3が基板搬送方向に交差するTFT基板10の全幅と略同じ長さの単位マイクロレンズアレイ3で形成された場合について説明したが、本発明はこれに限られず、マイクロレンズアレイ3は、TFT基板10の上記幅よりも長さの短い複数の単位レンズアレイを互い違いに並べて上記幅と略同じ長さに形成したものであってもよい。この場合、各単位レンズアレイに対応して夫々一つ撮像手段4を設けるとよい。
【0050】
そして、以上の説明においては、基板がTFT基板10である場合について述べたが、本発明はこれに限られず、半導体基板であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…搬送手段
2…レーザ光源
3…マイクロレンズアレイ
4…撮像手段
5…アライメント手段
6…制御手段
7…データ線
8…ゲート線
9…TFT形成領域
10…TFT基板
14…レーザ光
15…マイクロレンズ
28…アモルファスシリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に所定の配列ピッチでマトリクス状に設定された複数の薄膜トランジスタ(以下、「TFT」という)形成領域にレンズアレイの複数のレンズによりレーザ光を集光して、前記各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜をアニール処理するレーザアニール方法であって、
前記マトリクス状に設定されたTFT形成領域の縦横いずれか一方の配列方向に前記基板を搬送しながら撮像手段により前記基板表面を撮像し、該撮像画像に基づいて基板表面に予め設定されたアライメントの基準位置を検出し、
前記複数のTFT形成領域に対応して前記基板の搬送方向と交差する方向に複数のレンズを配置した少なくとも一列のレンズアレイを前記基板の搬送方向と交差方向に移動して、前記レンズアレイのレンズと前記基板のTFT形成領域とを前記アライメント基準位置を基準にして位置合わせし、
前記基板が移動して前記TFT形成領域が前記レンズアレイの対応レンズの真下に到達したときに前記レンズアレイに前記レーザ光を照射する、
ことを特徴とするレーザアニール方法。
【請求項2】
前記レンズアレイは、前記基板の搬送方向と交差する方向に、同方向の前記TFT形成領域の配列ピッチの2以上の整数倍のピッチでレンズを並設した複数列のレンズ列から成り、前記基板の搬送方向先頭側に位置する前記レンズ列の各レンズ間を補完するように後続のレンズ列を前記複数のレンズの前記並設方向に所定寸法だけずらして形成されたことを特徴とする請求項1記載のレーザアニール方法。
【請求項3】
前記基板は、縦横に配線が形成され、該縦横の配線の交差部に前記TFT形成領域が設定されたTFT基板であり、
前記アライメント基準位置は、前記TFT基板の搬送方向に平行な配線の縁部に設定されたことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザアニール方法。
【請求項4】
基板上に所定の配列ピッチでマトリクス状に設定された複数のTFT形成領域にレンズアレイの複数のレンズによりレーザ光を集光し、前記各TFT形成領域のアモルファスシリコン膜をアニール処理するレーザアニール装置であって、
前記マトリクス状に設定されたTFT形成領域の縦横いずれか一方の配列方向に前記基板を一定速度で搬送する搬送手段と、
前記レーザ光を放射するレーザ光源と、
前記基板面に平行な面内にて前記基板の搬送方向と交差する方向に、同方向の前記複数のTFT形成領域に対応させて並設された少なくとも一列の複数の集光レンズから成るレンズアレイと、
前記レンズアレイによるレーザ光の集光位置に対して前記基板の搬送方向手前側を撮像位置とし前記基板表面を撮像する撮像手段と、
前記レンズアレイを前記基板の搬送方向と交差する方向に移動させて前記レンズアレイのレンズと前記基板のTFT形成領域との位置合わせをするアライメント手段と、
前記各構成要素を駆動制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、搬送中の前記基板表面を撮像して前記撮像手段から逐次入力する画像を処理して前記基板表面に予め設定されたアライメントの基準位置を検出し、該アライメント基準位置を基準にして前記レンズアレイのレンズと前記基板のTFT形成領域との位置合わせをさせ、前記基板が移動して前記TFT形成領域が前記レンズアレイの対応レンズの真下に到達したときに前記レーザ光源から前記レンズアレイに向けてレーザ光を放射させるように制御することを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項5】
前記レンズアレイは、前記基板の搬送方向と交差する方向に、同方向の前記TFT形成領域の配列ピッチの2以上の整数倍のピッチでレンズを並設した複数列のレンズ列から成り、前記基板の搬送方向先頭側に位置する前記レンズ列の各レンズ間を補完するように後続のレンズ列を前記複数のレンズの前記並設方向に所定寸法だけずらして形成されたことを特徴とする請求項4記載のレーザアニール装置。
【請求項6】
前記基板は、縦横に複数の配線が形成され、該複数の配線の交差部に前記TFT形成領域が設定されたTFT基板であり、
前記アライメント基準位置は、前記TFT基板の搬送方向に平行な配線の一方の縁部に設定されたことを特徴とする請求項4又は5記載のレーザアニール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−283073(P2010−283073A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134181(P2009−134181)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】