説明

下痢型過敏性腸症候群の治療方法

本発明は、下痢型過敏性腸症候群を治療する方法であって、それを必要とする患者に、塩化物イオン輸送阻害剤を下痢型過敏性腸症候群(d−IBS)の治療に十分な量で投与することを含む方法を提供する。d−IBSの治療には、d−IBSの下痢成分並びにd−IBSに伴う疼痛、腹部不快及び他の症状の治療が含まれる。一実施形態では、塩化物イオン輸送阻害剤はクロフェレマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年5月1日に出願の米国特許仮出願第60/797,074号及び2006年8月24日に出願の米国特許非仮出願11/510,152号の優先権利を主張し、それぞれの内容は本明細書で参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
過敏性腸症候群(IBS、irritable bowel syndrome)は、生活の質に対する明白な影響を有する腸の一般的な機能障害である。IBSの確定的な特性は、腹部の不快又は疼痛である。IBSに関するRome II診断基準(症状に基づいて胃腸機能障害を診断するためのシステム)は、以下の通りである。先行する12カ月間内の、連続する必要はないが少なくとも12週間以上の、以下の特徴のうちの少なくとも2つを伴う腹部の不快又は疼痛:(1)排便によって軽減され、及び/又は(2)開始が便通の頻度の変化に伴い、及び/又は(3)開始が大便の形状(外観)の変化に伴う。
【0003】
IBSの診断を裏づける他の症状には、疼痛;異常な大便通過(力み、切迫又は不完全排便の感覚);粘液の通過;及び、鼓脹又は腹部膨満感が含まれる。患者は、彼らの根底にある下記の腸習性によって再分割することができる。(i)下痢型IBS、(ii)便秘型IBS及び(ii)下痢と交代で起こる便秘(交代型IBS)。
【0004】
IBSの病態生理は、英国の国民の約1/4がその症状を示すという事実、及び約15パーセントの米国成人がIBSの診断と一貫する症状を報告するという事実にもかかわらず、十分に理解されていない。IBS患者の25パーセントだけが診察を受けると推定される。さらに、IBSと診断される患者は、他の胃腸以外の機能障害、例えば線維筋痛及び間質性膀胱炎の危険が高い。
【0005】
IBSは米国で胃腸病専門医による最も一般的な診断であって、プライマリーケアプロバイダーへの訪問の12パーセントを占める。直接的な医療費で約8,000,000,000ドル及び間接費で25,000,000,000ドルが、IBSの診断及び治療のために毎年米国で費やされる。このように、IBSは米国で年間のヘルスケア費用の大きな割合を占める。
【0006】
IBSの一次治療は、カウンセリング及び食事の変更を含む。個々の症状に向けられる場合、薬物療法は有益であると考えられる。下痢型症例では、下痢を治療するが腹痛を治療しないロペラミドなどの止瀉薬を用いることができる。腹痛はIBSを規定する特性の1つであるので、止瀉薬ではIBSが十分に治療されない(Jailwala et al., 2000, Ann Intern Med. 2000;133:136-147;Cremonini et al., 2004, Minerva Med 95:427-441)。便秘型症例では、食物繊維を増加させるためにしばしばオオバコが用いられる。患者が主症状として疼痛及び膨満を有する場合、抗鎮痙薬が通常用いられる。そのような場合、メベベリン及びハッカ油がしばしば用いられる。IBSを治療するために試みられた他の剤には、β遮断薬、ナロキソン、オンダンセトロン、カルシウムチャネル遮断薬、シメチコン、ロイプロレリン、オクトレオチド及びコレシストキニンアンタゴニストが含まれ、様々な結果が得られた(Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 31st Edition (1996) p. 1197)。
【0007】
塩酸アロセトロン、Lotronex(登録商標)(GlaxoSmithKline社製、Reserarch Triangle Park、NC)は選択的な5−ヒドロキシトリプタミン3(5−HT3)アンタゴニストであり、重度の下痢型過敏性腸症候群(d−IBS)の女性を治療するために承認された現在唯一の薬剤である。虚血性大腸炎及び重度の生命を脅かす便秘を含む安全性への懸念のために、この1つの薬剤でさえ、重度のd−IBSを有する女性だけでの使用が承認される。下痢の治療のために他の薬剤(例えばロペラミド、ジフェノキシレート)があるが、そのような薬剤は、疼痛及び腹部不快を含むd−IBSの複数の症状に対処せず、したがって長期の選択肢でない(Wood, 2003, AJJ. NEMJ 349: 2136-2146を参照)。疼痛及び腹部の不快を含むd−IBSの複数の症状に対処する、dIBSの治療のための改善された治療法の必要がある。
【0008】
Tempestaへの米国特許第5211944号及び5494661号には、ウイルス性感染症の治療のための、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離されたプロアントシアニジン重合組成物の使用が開示される。Rozhonらは、米国特許出願公開第2005/0019389号で、分泌性又は旅行者下痢症の治療のための、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離されたプロアントシアニジン重合組成物の使用を開示する。国際公開第00/47062号として公表されている国際出願PCT/US00/02687には、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離されたプロアントシアニジン重合組成物の製造方法が開示される。Di Cesare et al., 2002, Am J Gastroenterol 10:2585-2588には、プラセボと比較した旅行者下痢症の治療薬としてのクロフェレマー(crofelemer)の治験が開示される。この研究で用いられた投薬量は、500mg/日(125を1日4回)、1000mg/日(250mgを1日4回)、及び2000mg/日(500mgを1日4回)を2日間であった。研究は、組成物が、旅行者下痢症患者で排便回数及び胃腸症状の改善のために有用であることを示した。
【0009】
本出願のこのセクション又は他のいかなるセクションでのいかなる参考文献の引用又は特定も、そのような参考文献が本出願の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されてはならない。
【特許文献1】米国特許第5211944号明細書
【特許文献2】米国特許第5494661号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0019389号明細書
【特許文献4】国際公開第00/47062号パンフレット
【特許文献5】国際出願PCT/US00/02687パンフレット
【非特許文献1】Jailwala et al., 2000, Ann Intern Med. 2000;133:136-147
【非特許文献2】Cremonini et al., 2004, Minerva Med 95:427-441
【非特許文献3】Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 31st Edition (1996) p. 1197
【非特許文献4】Wood, 2003, AJJ. NEMJ 349: 2136-2146
【非特許文献5】Di Cesareet al., 2002, Am J Gastroenterol 10:2585-2588
【発明の開示】
【0010】
本発明は、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)を投与することによって、下痢型過敏性腸症候群(d−IBS)の少なくとも1つの症状を治療する方法に関する。例示的な阻害分子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子塩化物イオンチャネル(CFTR)を通して塩化物イオンの分泌を阻害するものである。他の例示的な阻害分子には、カリウムイオンチャネルオープナーが含まれる。d−IBSの例示的な症状には、疼痛、腹部不快、下痢、異常な排便回数、異常な大便粘稠度及び切迫の存在が含まれる。したがって、一実施形態では、本発明は、d−IBSの1つ又は複数の症状を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)の前記d−IBSの1つ又は複数の症状の治療に有効な量を投与することを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、阻害分子の投薬量は、約50mg/日〜約750mg/日の投薬量の経口投与腸溶性コーティングクロフェレマーと生物学的に同等である。一実施形態では、生物学的同等性は、特定の投薬量の他の阻害分子、例えば約50mg/日〜約750mg/日の投薬量のクロフェレマーで見られるような、類似した治療効果を生じるのに十分な阻害分子用量である。他の実施形態では、生物学的同等性は、米国食品医薬品局によって定義されるもの、又は、米国食品医薬品局によって承認された方法に従って決められるものである。特定の実施形態では、阻害分子はCOX−2を阻害する化合物、好ましくはCOX−1以上に選択的にCOX−2を阻害する化合物であって、好ましくは全身に吸収されない化合物と同時投与される。そのような化合物には、5−ASA、スルファサラジン、メサラミン、APAZA、並びに他の市販のCOX−2阻害剤、例えばセレコキシブ及びロフェコキシブが含まれる。
【0011】
特定の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う疼痛及び下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う疼痛及び下痢の治療に有効な量を投与することを含む方法を目的とする。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う腹部不快及び下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う腹部不快及び下痢の治療に有効な量を投与することを含む方法を目的とする。他の特定の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う疼痛を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う疼痛の治療に有効な量を投与することを含む方法を目的とする。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う腹部不快を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う腹部不快の治療に有効な量を投与することを含む方法を目的とする。鎮痛又は抗炎症剤を、阻害分子と同時投与してもよい。詳細には、そのような剤は全身に吸収されないように製剤化又は修飾される。
【0012】
他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量を投与することを含み、前記阻害分子はクロトン属の種及びカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物ではなく、又は、前記阻害分子はクロフェレマーではない方法を目的とする。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量を投与することを含み、前記阻害分子はクロトン属の種及びカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物ではなく、又は、前記阻害分子はクロフェレマーではない方法を目的とする。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、腸溶性保護クロフェレマー(CAS 148465-45-6)をd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量を経口投与することを含み、前記量が約50mg/日〜約750mg/日である方法を目的とする。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、腸溶性保護クロフェレマーをd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量を経口投与することを含み、前記量は約50mg/日〜約750mg/日である方法を目的とする。クロフェレマーが他の方法で、例えば徐放製剤(非腸溶性保護)で製剤化されるある実施形態では、投与されるクロフェレマーの投薬量が、約50mg/日〜約750mg/日の投薬量の経口投与腸溶性保護クロフェレマーと生物学的に同等である。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロトン属の種及びカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物のd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量を投与することを含み、前記量がクロフェレマーの約50mg/日〜約750mg/日の経口投与用量と生物学的に同等である方法を目的とする。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロトン属の種及びカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物のd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量を投与することを含み、前記量がクロフェレマーの約50mg/日〜約750mg/日の経口投与用量と生物学的に同等である方法を目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)を投与することによって、下痢型過敏性腸症候群(d−IBS)の少なくとも1つの症状を治療する方法に関する。例示的な阻害分子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子塩化物イオンチャネル(CFTR)を通して塩化物イオンの分泌を阻害するものである。他の例示的な阻害分子には、カリウムイオンチャネルオープナーが含まれる。d−IBSの例示的な症状には、疼痛、腹部不快、下痢、異常な排便回数、異常な大便粘稠度及び切迫の存在が含まれる。したがって、一実施形態では、本発明は、d−IBSの1つ又は複数の症状を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)の前記d−IBSの1つ又は複数の症状の治療に有効な量を投与することを含む方法を提供する。
【0016】
本発明は、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物、例えばクロフェレマーが、d−IBSに伴う疼痛及び腹部不快を軽減するという発見に一部基づく。さらに、本発明は、例えば嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子塩化物イオンチャネル(CFTR)を通した上皮細胞内の塩化物イオンの輸送が、分泌性(急性)下痢だけでなく、予想外にも、下痢型過敏性腸症候群(d−IBS)の病因にも関係しているという発見に一部基づく。さらに、本発明は、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物、例えばクロフェレマーが、分泌性下痢の治療のためにこれまで用いられてきたものよりも有意に低い投薬量でd−IBSの下痢性の症状、例えば異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を軽減するという発見に一部基づく。例えば、これまで分泌性下痢を治療するのに有効であると教示されてきた投薬量は、2日間にわたって経口投与される5,500mgの腸溶性保護クロフェレマーを含んでいたが、本発明の例示的な投薬量は約50mg〜約750mg/日の経口投与腸溶性保護クロフェレマーを含む。
【0017】
塩化物イオンの輸送は、いくつかのメカニズムで阻害することができる。例えば、塩化物イオンの分泌は、塩化物イオンの輸送が阻害されるように嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子塩化物イオンチャネル(MR)の機能に影響を及ぼすことによって阻害することができる。塩化物イオンの分泌は、細胞内のカリウムイオンチャネルを開放することによって阻害することもできる。塩化物イオンの分泌は、cAMPの上方調節を遮断することによって阻害することもできる。
【0018】
嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子塩化物イオンチャネル(CFTR)は1480個のアミノ酸タンパク質であり、様々な真核生物細胞型における塩化物コンダクタンスの発現と関連づけされている。Rommens et al., 1989, Science 245:1059;Riorden et al., 1989, Science 245:1066;Kerem et al., 1989, Science 245:1073;Drumm et al., 1991, Cell 64:681;Kartner et al., 1991, Cell 64:681;Gregory et al., 1990, Nature 347:382;Rich et al., 1990, Nature 347:358及びRommens et al., 1991, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 88:7500を参照。CFTRの欠陥は、cAMP媒介性のアゴニストに応じて塩化物イオンを分泌する気道、汗腺、膵臓及び他の組織の上皮細胞の能力を無効にするか低減し、cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)による頂端膜チャネルの活性化を損なう。Frizell et al., 1987, Trends Neurosci 10:190;Welsh, 1990, FASEB J. 4:2718を参照。
【0019】
CFTRのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はクローニングされており(Riordan et al., 1989, Science 245:1066-1073)、それぞれ、GenBankにおいてアクセッション番号M28668で、SwissProtにおいてアクセッション番号P13569でアクセス可能である。
【0020】
本発明の方法で有用な阻害分子には、例えばCFTRの機能を阻害するか、カリウムイオンチャネルを開放するか又はcAMPの上方調節を阻害し、そのように塩化物イオンチャネルの開放を阻害することによって塩化物イオンの分泌を阻害する任意の分子が含まれる。特定の実施形態では、本発明の阻害分子には、全身への吸収を制限するために高分子上に固定化されるように製剤化される小分子、並びに、単離された天然のCFTR阻害剤、カリウムイオンチャネルオープナー、cAMPブロッカー/阻害剤及びそれらの合成若しくは半合成の形態が含まれる。本発明の阻害剤のアナログ、誘導体及び修飾形態も企図される。
【0021】
本発明の方法で有用な多くの分子が当技術分野で公知である。例えば、CFTR機能を阻害する例示的な分子には、スパルテイン(米国特許第5100647号);チアゾリジノン化合物、例えば、米国特許出願公開第2004−0063695号及び2004−0235800号などに記載のもの、例えば2−チオキソ−4−チアゾリジノン化合物及びThiagarjah et al., 2004, Gastroenterology 126:511-519(図7を参照)に記載の3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、又は他の、その2−チオキソ−4−チアゾリジノンアナログ及び誘導体;N−(2−ナフタレニル)−[(3,5−ジブロモ−2,4ジヒドロキシフェニル)メチレン]グリシンヒドラジド又はその、他のグリシンヒドラジドアナログ若しくは誘導体(図7を参照);マロン酸ジヒドラジド、又はそのアナログ若しくは誘導体(図7を参照);スルホニル尿素、例えばトルブタミド、グリベンクラミド及び、例えば米国特許第5234922号に記載の関連アナログ;フルオレセイン又はその誘導体、例えば、米国特許出願公開第20040092578号などに記載のもの;並びに、CFTR機能を活性化するよりも阻害するcAMP若しくはcGMPの加水分解抵抗性アナログ、例えば、8−ブロモ−cAMP、8−(4−クロロフェニルチオ)(CPT)−cAMP及び8−ブロモcGMP、CPT−cGMPが含まれる。
【0022】
他の例示的な阻害分子には、それらに限定されないが、ベラパミル;ニフェジピン;ジルチアゼム;ジスルホン酸スチルベン化合物;アリールアミノ安息香酸又はそのアナログ若しくは誘導体、例えば、ジフェニルアミン−2−カルボン酸(DPC)又は5−ニトロ−2(3−フェニルプロピルアミノ)ベンゾアート(NPPB)又はアントラセン−9−カルボン酸(9−AC);フルフェナム酸(FFA);9−(テトラヒドロ−2−フリル)アデニン(SQ22536);2’,5’−ジデオキシアデノシン(DDA);ロペラミド;ラセカドトリル;塩酸リダミジン;ロニダミン;バナジン酸塩;ブメタニド;pp2a;PP1;PP2B;次サリチル酸ビスマス;塩酸ジフェノキシラート;及びスパルテインが含まれる。上記の化合物に関するさらなる議論及び情報は、Fedorak et al., 1987, Digestive Disease and Sciences 32(2): 195-205; Farthing, 2004, Expert Opin. Investig. Drugs 13(7): 777-785; Suzuki et al., 2003, J. Physiol. 546(3): 751-763; Sullivan et al., 1996, Kidney International 49:1586-1591; Galietta et al., 2004, Curr. Opin. Pharmacol. 4:497-503で見いだすことができる。塩素チャネル阻害剤のさらなる議論及び例は、Greger, 1990, Methods in Enzymology 191:793-810で開示されている。前述の特許及び非特許文献の全ては、その全体が本明細書で参照により組み込まれる。
【0023】
本発明の阻害分子には、ジアゾキシド、レマカリム及び硫酸ミノキシジルなどのカリウムイオンチャネルオープナー、並びに、例えば米国特許第5234922号に記載のものなどの関連アナログも含まれる。
【0024】
さらなる例示的な阻害分子には、天然のCFTR阻害剤及びその合成若しくは半合成の形態、例えば、それらに限定されないが、Schuier et al., 2005, J. Nutr. 135:2320-2325に記載のカカオ豆から単離されるココア関連のフラボノイドを含むフラボノイド;それらに限定されないがアラキドン酸、リノール酸、オレイン酸、エライジン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、リゾホスファチジン酸及びニフルム酸を含む脂肪酸;フラボノール;ポリフェノール;プロアントシアニジン;オリゴメリックプロアントシアニジン(OPC);プロシアニドリックオリゴマー(PCO);タンニン;縮合タンニン;ロイコシナニジン;アントシアニジン;プロシアニジン(例えば、B1〜B5及びC1〜C2);シアニジン;プロデルフィニジン;デルフィニジン;カテキン;エピカテキン;ガロカテキン;エピガロカテキン;没食子酸エピガロカテキン;没食子酸エピカテキン;没食子酸カテキン;没食子酸ガロカテキン;ケルセチン;セスキテルペン;ジテルペン;テルペン及びテルペノイド誘導体;アルカロイド;サポニン;モリン;ルテオリン;バイカレイン;及びアピゲニン;並びに、上のいずれかのオリゴマー、重合体、共重合体及び誘導体が含まれる。
【0025】
好ましい一実施形態では、阻害分子はプロアントシアニジン重合体組成物である。他の実施形態では、プロアントシアニジン重合体組成物は、水溶性プロアントシアニジン重合体組成物である。他の好ましい実施形態では、本発明の阻害分子は、経口投与される場合、全身に吸収されないか、又は全身に吸収されないように修飾される。
【0026】
プロアントシアニジンは、一群の縮合タンニンである。タンニンは多種多様な植物で見られ、加水分解型又は縮合型に分類される。下痢の治療法又は予防処置として伝統医学で用いられる多くの植物が、タンニン、特にプロアントシアニジンを含むことが見いだされた(例えば、Yoshida et al., 1993, Phytochemistry32:1033; Yoshida et al., 1992, Chem. Pharm. Bull., 40:1997; Tamaka et al., 1992, Chem. Pharm. Bull. 40:2092を参照)。薬草、例えばPycanthus angolenis及びBaphia nitidaからの粗抽出物は、動物実験で下痢止めの性質を有することが明らかになった(Onwukaeme and Anuforo, 1993, Discovery and Innovation, 5:317;Onwukaeme and Lot, 1991, Phytotherapy Res., 5:254)。タンニンを含有する粗抽出物、特にイナゴマメの莢及びヨーロッパグリの木材からの抽出物が、下痢の治療薬又は予防薬として提案されている(米国特許第5043160号、欧州特許第481396号)。
【0027】
プロアントシアニジンは、同じか異なるモノマー構造であることができる、少なくとも2個以上のモノマー単位を含む。モノマー単位(一般に、「ロイコアントシアニジン」と呼ばれる)は、一般に、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、ガロエピカテキン、フラバノール、フラボノール及びフラバン−3,4−ジオール、ロイコシナニジン及びアントシアニジンを含むモノマーフラボノイドである。したがって、重合鎖は異なる構造単位に基づき、それは多様な重合プロアントシアニジン及び多数の可能な異性体を形成する(Hemingway et al., 1982, J.C.S. Perkin, 1:1217)。フラボノイド3−オール単位のより大きな重合体がほとんどの植物で支配的であり、平均分子量は2,000ダルトンより上で、6個以上の単位を含む(Newman et al., 1987, Mag. Res. Chem., 25:118)。
【0028】
プロアントシアニジン重合体は多種多様な植物、特に木のような成長習性を有するもの(例えば、クロトン属の種及びカロフィルム属の種)で見いだされる。南米で見いだされる、クロトン・サクタリス(Croton sakutaris)、クロトン・ゴシピフォリウス(Croton gossypifolius)、クロトン・パラノスティマ(Croton palanostima)、クロトン・レクレリ、クロトン・エリスロキルス(Croton erythrochilus)及びクロトン・ドラコノイデス(Croton draconoides)を含むいくつかの異なるクロトン属樹種は、サングレ・デ・ドラーゴ(Sangre de Drago)又は「キリン血」と呼ばれる赤い粘性ラテックス樹液を産する。この赤い、粘性ラテックスは、その薬理作用が広く知られている。例えば、米国特許第5211944号には、クロトン属の種からの水溶性プロアントシアニジン重合体組成物の単離及び抗ウイルス薬としての組成物の使用が最初に記載された(Ubillas et al., 1994, Phytomedicine, 1:77も参照のこと)。プロアントシアニジン重合体組成物は、呼吸器合胞体(RS)、インフルエンザ、パラインフルエンザ及びヘルペスウイルスを含む様々なウイルスに対して、抗ウイルス活性を有することが明らかにされた。米国特許第5211944号は、カロフィルム・イノフィルム(Calophyllum inophylum)からの水溶性プロアントシアニジン重合体組成物の単離、及びこの組成物の抗ウイルス薬としての使用も開示する。
【0029】
本発明で有用な例示的なプロアントシアニジン重合体組成物は、好ましくは、当技術分野で公知の任意の方法によってクロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される。例えば、プロアントシアニジン重合体組成物は、下の実施例2で開示される方法又は米国特許第5211944号若しくはUbillas et al., 1994, Phytomedicine 1: 77-106で開示される方法によって、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離することができる。
【0030】
好ましい一実施形態では、本発明のプロアントシアニジン重合体組成物は、クロフェレマーである。クロフェレマー(CAS 148465-45-6)は、トウダイグサ科のクロトン・レクレリロアントシアニジンである。クロフェレマーの平均分子量は、約1900ダルトン〜約2700ダルトンである。クロフェレマーを構成するモノマーには、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン及びエピガロカテキンが含まれる。クロフェレマーの鎖長は約3〜約30単位の範囲であり、平均鎖長は約8単位である。クロフェレマーの構造を下に示す。
【0031】
【化1】

平均でn=6である。
【0032】
クロフェレマーを単離するための他の実例となる方法は、米国特許公開第200510019389号で見られ、その内容は本明細書で明示的に組み込まれる。
【0033】
本発明の他の実施形態では、特に重合プロアントシアニジン組成物ではないクロトン属の種若しくはカロフィルム属の種から得られる生ラテックス、又はクロトン属の種若しくはカロフィルム属の種から得られる抽出物は、本発明の方法で有用である。例示的な抽出物は、Persinos et al., 1979, J. Pharma. Sci. 68:124及びSethi, 1.977, Canadian J. Pharm. Sci. 12:7に記載されている。
【0034】
特定の実施形態では、本発明の方法で有用な本発明の阻害分子は、CFTRの発現を阻害するCFTRヌクレオチド配列のアンチセンスオリゴヌクレオチドである。本発明の方法で有用なそのようなアンチセンス核酸は、二本鎖又は一本鎖のRNA又はDNA又はその変更形態若しくは誘導体であるオリゴヌクレオチドであり、それらは直接投与することができるか、又は外来性の、導入配列の転写によって細胞内で生産することができる。CFTRの発現を阻害することによりCFTR機能を阻害するそれらの能力を確認するために、アンチセンス核酸を公知の方法によって試験することができる。
【0035】
ある実施形態では、CFTRアンチセンス核酸は少なくとも6個のヌクレオチドであることができ、好ましくは、オリゴヌクレオチド(6個〜約50個のオリゴヌクレオチド)であることができる。具体的な態様では、オリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも100個のヌクレオチド又は少なくとも200個のヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、DNA又はRNA又はそのキメラ混合物若しくは誘導体若しくは変更版、一本鎖又は二本鎖であることができる。オリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の技術を用いて、塩基部分、糖残基又はリン酸骨格の部位で修飾することができる。オリゴヌクレオチドは、他の付加基、例えばペプチド、又は、特に経口投与するときの全身吸収を阻害する他の化合物を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、その構造上の任意の位置で、当技術分野で一般に公知である置換基で修飾することができる。
【0036】
RNA干渉(RNAi)分子は、CFTRの発現を減少させることによって、CFTR機能の阻害剤として用いることができる。RNAiは、それ自身の配列に対応する遺伝子の発現を抑制する、二本鎖RNA(dsRNA)の能力と定義される。RNAiは、転写後遺伝子抑制又はPTGSとも呼ばれる。細胞の細胞質内に通常見いだされる唯一のRNA分子は一本鎖mRNAの分子であるので、細胞は、二本鎖dsRNAを認識して、21〜25個の塩基対(約2回転の二重螺旋)を含む断片に切断する酵素を有する。断片のアンチセンス鎖は、それが内因性の細胞内mRNA(例えば、ヒトCFTR)の分子上の相補的なセンス配列とハイブリダイズするように、センス鎖から十分離れている。このハイブリダイゼーションは二本鎖領域でmRNAの切断を起こし、こうしてポリペプチドに翻訳されるその能力を無効にする。したがって、特定の遺伝子に対応するdsRNAの導入は、特定の組織での及び/又は選択された時間での、その遺伝子の細胞自身の発現をノックアウトする。
【0037】
他の実施形態では、CFTRの機能又は発現の阻害剤は、CFTRのアプタマーであることができる。当技術分野で公知のように、アプタマーは特異的な分子標的(例えば、CFTR)に強く結合する核酸(例えば、RNA、DNA)で構成される巨大分子である。特定のアプタマーは線状のヌクレオチド配列によって記載することができ、一般的に長さは約15〜60個のヌクレオチドである。高い特異性に加えて、アプタマーはそれらの標的に対して非常に高い親和性を有する(例えば、タンパク質に対してピコモルから低いナノモルの範囲の親和性)。CFTR又はその断片と結合することができるアプタマーの選択は、当技術分野で公知の方法を通して達成することができる。例えば、アプタマーは指数関数的な強化によるリガンドの系統進化(SELEX、Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)法(Tuerk and Gold, 199.0, Science 249:505-510)を用いて選択することができる。
【0038】
ある実施形態では、CFTRと結合する抗体を、本発明の方法で用いることができる。CFTRに対する例示的な抗体は国際公開第95/06066号に記載され、その開示は本明細書で参照により完全に組み込まれる。好ましい一実施形態では、CFTRに対する抗体は、CFTRの細胞外部分に結合する。CFTR又はCFTRの免疫原性断片、好ましくは細胞外断片に対する抗体の作製方法は、当技術分野で公知である。抗体が作製されると、CFTR機能、例えば塩化物イオン輸送を阻害するその効果を判定するために、前掲の公知の方法を用いてそれをスクリーニングすることができる。
【0039】
本発明に従い、CFTR、その断片又は他の誘導体若しくはアナログを免疫原として用いて、本発明の方法で用いるためのそのような免疫原を認識する抗体を作製することができる。そのような抗体には、それらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単一鎖、Fabフラグメント及びFab発現ライブラリが含まれる。一実施形態では、細胞の外側に露出する一部のCFTRに対する抗体が作製される。
【0040】
CFTRのイディオタイプを含む抗体断片は、公知の技術によって作製することができる。例えば、そのような断片には、それらに限定されないが、抗体分子のペプシン消化によって作製することができるF(ab’)2フラグメント;F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製することができるFab’フラグメント;及び、抗体分子をパパイン及び還元剤で処理することによって作製することができるFabフラグメントが含まれる。抗体作製では、所望の抗体のスクリーニングは、当技術分野で公知の技術、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA、enzyme-linked immunosorbent assay)によって達成することができる。
【0041】
候補分子が塩化物イオン輸送を阻害することができるかどうか試験するために、塩化物イオン輸送を測定する当技術分野で公知の任意の方法を用いることができるか又は適切に修正することができる。例えば、塩化物イオン輸送は、候補分子をCFTR機能に及ぼすその影響について試験するために用いることができる。候補化合物がCFTR機能を阻害するかどうかを試験するための例示的な方法は、米国特許第5234922号で記載されている。簡潔には、候補分子を、CFTRを(内因的に又は組換えで)発現する細胞と、任意選択でcAMPアゴニスト(例えば、CPTcAMP、db−cAMP、フォルスコリン、IBMX、コレラトキシン、大腸菌リポポリサッカライド)などのCFTR活性化物質と接触させ、全細胞膜電流を測定する。候補分子と接触させない細胞と比較して候補分子の存在下で電流がより低い場合、その分子はCFTR機能を阻害する。塩化物媒介性の電流を測定するためにUssingチャンバーを用いる他の例示的なスクリーニング法は、Schuier et al., 2005, J. Nutr. 135:2320-2325に記載されている。類似した方法が、Fischer et al., 2004, J. Ethnophann. 93:351-357に記載されている。CFTR機能の阻害剤のスクリーニングのための特定のハイスループット方法が、Galietta et al., 2004, Curr. Opin. Pharmacol. 4:497-503に記載されている。
【0042】
一実施形態では、本方法は、候補化合物及びCFTR機能の活性化物質をCFTR発現細胞と接触させること、細胞によって生成される塩化物イオン依存性電流を測定すること、及び、接触させた細胞によって生成される電流をCFTR機能の活性化物質だけと接触させた第2の細胞によって生成される電流と比較することを含み、第2の細胞によって生成される電流レベルと比較したときの候補分子と接触させた細胞によって生成されるより低いレベルの電流は、候補分子がCFTR機能の阻害剤であることを示す。この実施形態の一態様では、CFTR機能の活性化物質は、cAMPアゴニストである。他の態様において、CFTRは細胞内で組換えにより発現される。
【0043】
本発明の他の実施形態では、塩化物イオン輸送を阻害する剤、例えばCFTR機能を阻害する剤を特定するために、コンビナトリアルケミストリーを用いることができる。コンビナトリアルケミストリーでは、それらの多くは構造的に類似している何十万もの化合物を含むライブラリを作成することが可能である。ハイスループットスクリーニングプログラムは既知の標的との親和性についてこれらの巨大なライブラリをスクリーニングすることが可能であるが、より小さな寸法のライブラリを達成するものの最大の化学的多様性を提供する新しい手法が開発された。(例えば、Matter, 1997, Journal of Medicinal Chemistry 40:1219-1229を参照)。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明の方法で用いる阻害分子は、経口投与される場合、実質的に全身に吸収されない。経口送達されると全身に吸収される小分子及び他の薬剤は、全身への吸収を阻害するために修飾することができる。そのような修飾は、当技術分野で公知である。例えば、小分子阻害剤などの本発明の阻害分子は、消化管で実質的に不活性で阻害分子の機能と干渉しない非全身吸収性化合物に共有結合することができる。そのような非全身吸収性化合物には、様々な重合体が含まれる。本発明の阻害分子と一緒に好ましく用いられる重合体は胃腸系での分解及び吸収に抵抗性であり、すなわち、それらの重合体は、胃及び腸内の生理条件下で、身体組織によって吸収されやすい断片に実質的に分解しない。消化管で遭遇する条件下で実質的に不活性である加水分解抵抗性骨格を有する重合体が好ましい。好ましくはそのような重合体は、胃腸管から体の他の部分への吸収に部分的に、又は完全に抵抗するのに十分に高い分子量を有する。重合体は、約500ダルトン〜約500,000ダルトン、好ましくは約2,000ダルトン〜約150,000ダルトンの分子量を有することができる。適当な重合体の例には、それらに限定されないが、多糖、ポリエチレングリコール重合体、セルロース重合体、ポリスチレン重合体、ポリアクリラート重合体及びポリアミド重合体が含まれる。
【0045】
全身吸収性ではなく、トルブタミド、グリベンクラミド、ジアゾキシド、レマカリム、硫酸ミノキシジル、エピカテキン、カテキン、ケルセチン、モリン、ルテオリン、バイカレイン、アピゲニン、フルオレセイン、3[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3−カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、ベラパミル、ニフェジピン、ジルチアゼム、ロペラミド、ジフェニルアミン−2−カルボキシレート(DPC)、5−ニトロ−2(3−フェニルプロピルアミノ)ベンゾアート(NPPB)、アントラセン−9−カルボン酸(9−AC)、フルフェナム酸(FFA)、9−(テトラヒドロ−2−フリル)アデニン(SQ22536)、2’,5’−ジデオキシアデノシン、スパルテイン並びに、それらの誘導体、断片及び/又はアナログの1つ又は複数で置換されるクロフェレマー及び他のプロアントシアニジン重合体分子を、CFTR機能の阻害活性についてスクリーニングすることができる。
【0046】
本発明は、ヒトの男女を含む温血動物で下痢型過敏性腸症候群(dIBS)に伴う1つ又は複数の症状を治療及び/又は予防する方法を包含し、それらの症状には、非限定的ながら、疼痛、腹部の不快、下痢、切迫の存在、異常な排便回数及び異常な大便粘稠度が含まれる。本発明の方法は、d−IBS治療が必要な対象に、本発明に従う塩化物イオン輸送の阻害剤を投与することを一般に含む。好ましい一実施形態では、阻害剤は経口投与され、全身に吸収されない。好ましくは、患者はヒトの女性である。
【0047】
一実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う疼痛及び下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)のd−IBSに伴う疼痛及び下痢の治療に有効な量を投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う腹部不快及び下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)のd−IBSに伴う腹部不快及び下痢の治療に有効な量を投与することを含む方法を提供する。ある実施形態では、阻害分子はCOX−2を阻害する化合物、好ましくはCOX−1以上にCOX−2を阻害する化合物などの、鎮痛性及び/又は抗炎症性の化合物と同時投与される。
【0048】
一実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う疼痛を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)のd−IBSに伴う疼痛の治療に有効な量を投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う腹部不快を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)のd−IBSに伴う腹部不快の治療に有効な量を投与することを含む方法を提供する。ある実施形態では、阻害分子はCOX−2を阻害する化合物、好ましくはCOX−1以上にCOX−2を阻害する化合物などの、鎮痛性及び/又は抗炎症性の化合物と同時投与される。
【0049】
本発明の阻害分子は、単回投与又は1日に1回、2回、3回若しくは4回からの分割薬量で投与することができる。特定の実施形態では、阻害分子は1日2回投与される。他の実施形態では、阻害分子は少なくとも2日間連続で1日2回投与される。他の実施形態では、阻害分子は少なくとも24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、1カ月、2カ月及び3カ月からなる群から選択される期間投与される。d−IBSが慢性状態のある実施形態では、阻害分子は無期限に服用される。
【0050】
疼痛及び不快は、当技術分野で公知の任意の方法で、例えば患者が疼痛又は不快のレベルを、0は疼痛又は不快がなく5は最高レベルの疼痛又は不快が割り当てられる、0〜5のスケールに割り当てる疼痛又は不快のスケールで測定することができる。ある実施形態では、疼痛又は不快の緩和は、疼痛又は不快の平均レベルの低下、疼痛又は不快のない日数の増加で測定される。ある実施形態では、疼痛又は不快がない日数は、治療前と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%又は少なくとも50%増加する。他の実施形態では、疼痛又は不快のレベルは、治療前と比較して少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4又は少なくとも0.5単位減少した。
【0051】
他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)のd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量を投与することを含み、前記阻害分子はクロトン属の種及びカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物ではなく、又は前記阻害分子はクロフェレマーではない方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)のd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量を投与することを含み、前記阻害分子はクロトン属の種及びカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物ではなく、又は、前記阻害分子はクロフェレマーではない方法を提供する。
【0052】
特定の実施形態では、排便回数は治療前と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%減少する。他の実施形態では、排便回数は治療前と比較して1日につき少なくとも1回減少する。他の実施形態では、大便の粘稠度が増加し、すなわち、治療前と比較して少なくとも10%、20%、25%、30%、40%又は50%、大便中の水量が減少する。他の実施形態では、切迫の存在は治療前と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%又は少なくとも50%減少する。
【0053】
他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、腸溶性保護クロフェレマー(CAS 148465-45-6)のd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量を経口投与することを含み、前記量は約50mg/日〜約750mg/日である方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、腸溶性保護クロフェレマーのd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量を経口投与することを含み、前記量は約50mg/日〜約750mg/日である方法を提供する。
【0054】
他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロフェレマー(CAS 148465-45-6)をd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量を経口投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロフェレマーをd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量を経口投与することを含む方法を提供する。クロフェレマーが他の方法(非腸溶性保護)で製剤化されるそのような実施形態では、投与されるクロフェレマーの投薬量は、約50mg/日〜約750mg/日の投薬量の経口投与腸溶性保護クロフェレマーと生物学的に同等である。そのような製剤の一例は、徐放性製剤である。
【0055】
他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物をd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量を投与することを含み、前記量がクロフェレマーの約50mg/日〜約750mg/日の経口投与用量と生物学的に同等である方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物をd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量を投与することを含み、前記量がクロフェレマーの約50mg/日〜約750mg/日の経口投与用量と生物学的に同等である方法を提供する。
【0056】
塩化物イオン輸送の阻害剤を投与する方法には、それらに限定されないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)並びに粘膜投与(例えば、鼻腔及び経口経路)が含まれる。具体的な実施形態では、阻害分子は筋肉内、静脈内又は皮下に投与される。阻害分子を含む組成物は、任意の都合のよい経路、例えば注入若しくはボーラス注射によって、上皮若しくは皮膚粘膜ライニング(例えば口腔粘膜、直腸及び腸の粘膜、その他)を通した吸収によって投与することができ、他の生理活性剤とともに投与することもできる。投与は、全身投与でも局所投与でもよい。好ましくは、阻害分子は経口投与される。
【0057】
本発明のある好ましい実施形態では、阻害分子はクロフェレマー(CAS 14846545-6)である。他の好ましい実施形態では、阻害分子は経口投与される。他の好ましい実施形態では、阻害分子は、胃の環境から、すなわち胃で見られる酸性環境及び消化タンパク質からその組成物を保護するように製剤化される。好ましい実施形態では、投与は経口経路により、阻害分子は腸溶性保護クロフェレマーである。
【0058】
ある好ましい実施形態では、クロフェレマーは腸溶性保護剤形(腸溶性コーティング)で、約750mg/日以下の総量で経口投与される。本明細書で用いるように、約は誤差限界内であることを意味する。具体的な実施形態では、腸溶性コーティングクロフェレマーは、約50mg/日〜750mg/日の量で対象へ経口投与される。他の実施形態では、腸溶性コーティングクロフェレマーは、約500mg/日以下の総量で対象へ経口投与される。具体的な実施形態では、腸溶性コーティングクロフェレマーは、約50mg/日〜500mg/日の量で対象へ経口投与される。他の実施形態では、腸溶性コーティングクロフェレマーは、腸溶性コーティングクロフェレマーの量が約700mg/日、約650mg/日、約600mg/日、約550mg/日、約500mg/日、約450mg/日、約400mg/日、約350mg/日、約300mg/日、約250mg/日、約200mg/日、約150mg/日又は約100mg/日以下で、対象へ経口投与される。他の実施形態では、腸溶性コーティングクロフェレマーは、約100mg/日〜750mg/日の量で対象へ経口投与される。他の実施形態では、腸溶性コーティングクロフェレマーは、約125mg/日〜約500mg/日、約250mg/日〜約500mg/日、約250mg/日〜約450mg/日、約250mg/日〜約400mg/日、約250mg/日〜約350mg/日又は約250mg/日〜約300mg/日の量で、対象へ経口投与される。他の特定の実施形態では、対象へ経口投与される腸溶性コーティングクロフェレマーの総投薬量は、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、約250mg、約255mg、約260mg、約265mg、約270mg、約275mg、約280mg、約285mg、約290mg、約295mg、約300mg、約305mg、約310mg、約315mg、約320mg、約325mg、約330mg、約335mg、約340mg、約345mg、約350mg、約355mg、約360mg、約365mg、約370mg、約375mg、約380mg、約385mg、約390mg、約395mg、約400mg、約405mg、約410mg、約415mg、約420mg、約425mg、約430mg、約435mg、約440mg、約445mg、約450mg、約455mg、約460mg、約465mg、約470mg、約475mg、約480mg、約485mg、約490mg、約495mg、又は、約500mgを1日に1回、2回又は3回である。
【0059】
本発明の他の実施形態では、阻害分子は、プロアントシアニジン重合体組成物であろうがCFTR機能の阻害剤であろうが、好ましくは、約50mg/日〜約750mg/日の投薬量又は前掲の用量のいずれかの経口投与腸溶性コーティングクロフェレマーと生物学的に同等である投薬量で投与される。一実施形態では、生物学的同等性は、特定の投薬量の他の阻害分子、例えば約50mg/日〜約750mg/日の投薬量のクロフェレマーで見られるような、類似した治療効果を生じるのに十分な阻害分子の用量である。他の実施形態では、生物学的同等性は、米国食品医薬品局によって定義されるもの、又は、米国食品医薬品局によって承認された方法に従って決められるものである。
【0060】
好ましい実施形態では、クロフェレマーは胃の酸性条件による分解及び/又は胃に存在するペプシンなどのタンパク質との相互作用から保護されるように腸溶性コーティングされている、すなわち、腸溶性保護製剤である。具体的な実施形態では、クロフェレマーは錠剤の形態である。他の具体的な実施形態では、錠剤は腸溶性コーティング、例えばEUDRAGIT(登録商標)である。好ましい実施形態では、クロフェレマーは腸溶性コーティングビーズ又は腸溶性コーティングカプセルシェル内の顆粒剤として製剤化される。他の実施形態では、クロフェレマーは遅延放出組成物、例えばMerck GEM、Alza OROS、ワックスマトリックスに製剤化される(放出は主に、製剤が胃から腸に通過するまで遅延される)。
【0061】
ある実施形態では、阻害分子は胃酸を中和する1つ又は複数の化合物と製剤化される。代わりに、阻害分子を含む医薬組成物は、胃酸を中和する医薬組成物と同時に、又はその後に、又はその投与の後に投与される。胃酸を中和するために有用である制酸剤などの化合物には、それらに限定されないが、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、次硝酸ビスマス、次サリチル酸ビスマス、炭酸カルシウム、ジヒドロキシアルミニウム炭酸ナトリウム、マガルドレート、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム及びそれらの混合物が含まれる。胃酸の分泌を低減すること及び/又は胃液の酸性度を低くすることができる化合物は当技術分野で公知であり、例としては、それらに限定されないが、制酸剤(水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、グリシン酸アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム)、胃酸ブロッカー(シメチジン(Tagamet(商標))、ファモチジン(Mylanta(商標)、Pepcid(商標))、ニザチジン(Axid(商標))、ラニチジン(Zantac(商標))、オメプラゾール(Zegerid(商標)))及び上記のいずれかの組合せがある。一般に、関連する政府機関によって販売が承認され、胃酸の生産を低減すること及び/又は胃液の酸性度を低くすることができる任意の薬剤は、本発明の方法に従ってクロフェレマーなどの阻害分子と一緒に投与することができる。
【0062】
他の実施形態では、阻害分子は、下痢又は疼痛の治療に有用である他の化合物と投与される。そのような化合物には、それらに限定されないが、5−ASA、スルファサラジン、メサラミン、APAZAなどのCOX−2阻害剤、並びに他の市販のCOX−2阻害剤、例えばセレコキシブ及びロフェコキシブが含まれる。好ましくは、そのような化合物は全身吸収性ではなく、又は、全身吸収性でないように修飾される。
【0063】
クロフェレマーが腸溶性コーティングでない特定の実施形態では、クロフェレマーは、胃酸の分泌を低減すること及び/又は胃液の酸性度を低くすることができる1つ又は複数の化合物と製剤化される。好ましくは、この製剤で投与されるクロフェレマーの投薬量は、約50mg/日〜約750mg/日の投薬量の経口投与腸溶性コーティングクロフェレマーと生物学的に同等である投薬量である。例示的な実施形態では、クロフェレマーは徐放(遅延放出)組成物に製剤化される。
【0064】
他の実施形態では、本発明の阻害分子は、鎮痛性又は抗炎症性の剤と一緒に投与することができる。好ましい実施形態では、鎮痛性又は抗炎症性の剤は、それが実質的に全身吸収性でないように、すなわち、投与薬量のわずか20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%又は0.5%が吸収されるように製剤化又は修飾される。
【0065】
本発明は、薬学的に許容される媒体とともに、d−IBSに伴う1つ又は複数の症状の処置及び/又は改善に治療上有効な用量の阻害分子を含む本発明の塩化物イオン輸送阻害剤(阻害分子)の医薬製剤も提供する。一実施形態では、任意選択でそれには限定されないが例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑剤と一緒に錠剤に圧縮される、直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物(すなわち、賦形剤なしで薬学的に許容される硬度及び破砕性の錠剤に直接圧縮することができるもの)は、腸溶性コーティングである。他の実施形態では、本発明の阻害分子を含む医薬組成物は、代わりに、胃酸及び/若しくは酵素を中和するか又は胃酸の分泌を予防する活性がある1つ又は複数の物質を含む。これらの製剤は当技術分野で公知の方法によって調製することができ、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., ed. Alfonso R. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に記載の方法を参照のこと。
【0066】
他の好ましい実施形態では、医薬組成物はクロトン属の種から調製されるプロアントシアニジン重合体組成物を含み、その投薬量は750mg/日を超えず、好ましくは250mg/日未満である。好ましい実施形態では、本発明のプロアントシアニジン重合体組成物は、クロフェレマー(CAS 148465-45-6)である。
【0067】
阻害分子は、任意の治療上許容される薬剤形態で提供することができる。医薬組成物は、経口投与のために、例えば、それらに限定されないが、医薬散剤、結晶、顆粒剤、小粒子(マイクロメートル単位のサイズの粒子、例えばマイクロスフェア及びマイクロカプセルを含む)、粒子(ミリメートル単位のサイズの粒子を含む)、ビーズ、マイクロビーズ、ペレット、ピル、マイクロ錠剤、圧縮錠剤若しくは錠剤粉末、成形錠剤若しくは錠剤粉末、及び、硬質若しくは軟質であって、粉末、粒子、ビーズ、溶液若しくは懸濁液として組成物を含むカプセルとして製剤化することができる。医薬組成物は、経口投与のために、水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、ゲルカプセルに取り込まれた液体として、又は、投与のために便利な他の任意の製剤として、或いは、直腸投与のために坐薬、浣腸若しくは他の便利な形態として製剤化することもできる。本発明の阻害分子は、徐放系として提供することもできる(例えば、Langer, 1990, Science 249: 1527-1533を参照)。
【0068】
医薬製剤は、任意の種類の薬学的に許容される賦形剤、添加剤又は媒体を含むこともできる。例えば、それらに限定されないが、希釈液又は充填剤、例えばデキストラート(dextrate)、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、ソルビトール、ショ糖、イノシトール、粉糖、ベントナイト、微結晶性セルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを、組成物の嵩を増加させるために阻害分子へ加えることができる。また、結合剤、例えば、それらに限定されないが、デンプン、ゼラチン、ショ糖、グルコース、ブドウ糖、糖蜜、ラクトース、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイルランドコケの抽出物、パンワー(panwar)ゴム、ガッチ(ghatti)ゴム、イサプゴール(isapgol)殻、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビーガム(Veegum)及びデンプンアラボガラクタン(arabogalactan)、の粘質物、ポリエチレングリコール、エチルセルロース及びワックスを、その粘着性を増加させるために製剤へ加えることができる。さらに、滑剤、例えば、それらに限定されないが、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水素化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、カーボワックス、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸マグネシウムを、製剤へ加えることができる。また、流動促進剤、例えば、それらに限定されないが、コロイド状二酸化ケイ素又はタルクを、粉末製剤の流動特性を改善するために加えることができる。最後に、崩壊剤、例えば、それらに限定されないが、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ゴム、架橋重合体(例えば、クロスカルメロース(croscarmelose)、クロスポビドン及びデンプングリコール酸ナトリウム)、ビーガム、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、セルロース及び木材生成物、天然スポンジ、カチオン交換樹脂、アルギン酸、グアーガム、柑橘類のパルプ、カルボキシメチルセルロース又はデンプンを含むラウリル硫酸ナトリウムを、腸内での製剤の崩壊を促進するために加えることもできる。
【0069】
この実施形態の一態様では、クロフェレマーは経口投与のために製剤化される。他の態様では、医薬剤形は、阻害分子、例えばクロフェレマーを、胃の酸性条件による分解及び胃に存在するペプシンなどのタンパク質との相互作用から保護されるように製剤化される。したがって、好ましい態様において、製剤は腸溶性コーティングである。例えば、腸溶性コーティング製剤は、腸溶性コーティングの錠剤、ビーズ又は顆粒剤であり、それらは、例えばそれに限定されないが、ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤を含んでもよい。腸溶性コーティング製剤には、カプセル内の腸溶性コーティングビーズ、カプセル内の腸溶性コーティングマイクロスフェア、懸濁液で提供されるか若しくは食物と混合される腸溶性コーティングマイクロスフェア及び腸溶性コーティング錠剤が含まれ、懸濁液は特に小児科の投与に便利である。カプセルは、硬質シェルのゼラチンカプセル又はセルロースカプセルであることができる。特に、医薬組成物は腸溶性コーティングカプセルに製剤化される。具体的な一態様では、プロアントシアニジン重合体組成物は錠剤の形態で投与され、錠剤は微結晶性セルロースで埋め戻されてもよい。
【0070】
一実施形態では、阻害分子は直接圧縮され、すなわち、阻害分子は任意の賦形剤と一緒に又はそれなしに、薬学的に許容される硬度及び破砕性を有する錠剤又は他の医薬製剤に圧縮することができる。好ましくは、直接圧縮可能な医薬組成物は、4kp(キロポンド)を超える硬度、好ましくは8〜14kpの硬度、より好ましくは10〜13kpの硬度を有する錠剤に圧縮することができる。直接圧縮可能な組成物は、1%以下の重量減、好ましくは0.8%未満の重量減、より好ましくは0.5%未満の重量減の破砕性を有する錠剤に圧縮することができる。
【0071】
好ましい実施形態では、直接圧縮可能な製剤は、99.93%クロフェレマー及び0.07%ステアリン酸マグネシウムからなり、メタクリル酸共重合体でコーティングされる。他の好ましい実施形態では、医薬製剤は直接圧縮可能な阻害分子を含むが、腸溶性コーティング以外の賦形剤、添加剤及び媒体は含まない。しかし、製剤は、それに限定されないが例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑剤を含むことができる。好ましくは、直接圧縮プロアントシアニジン重合組成物製剤は、薬学的に許容される硬度(4kpを超える、好ましくは8〜14kp、より好ましくは10〜13kp)及び破砕性(1%以下の重量減、好ましくは0.8%未満の重量減、より好ましくは0.5%未満の重量減)の錠剤として製剤化される。
【0072】
より好ましい実施形態では、阻害分子は腸溶性コーティングである。腸溶性コーティングは胃の中では元のままであるが、それが小腸に到達すると溶解して、剤形内容物を放出するコーティングである。多数の腸溶性コーティングは酸性基を有する成分で調製され、その結果、胃に存在するかなり低いpH、すなわちpH1.5〜2.5でも酸性基はイオン化されず、コーティングは未解離の不溶性形態のままである。例えば腸の環境中など、より高いpHレベルでは、腸溶性コーティングはイオン化形態へ変換され、それは溶解して阻害分子を放出することができる。他の腸溶性コーティングは、それらが小腸内で酵素によって分解されるまで元のままであり、他のものは既定の湿気への曝露の後に分解し、したがって、コーティングは小腸内を通過するまで元のままである。
【0073】
腸溶性コーティングの調製のために有用である重合体には、それらに限定されないが、シェラック、酢酸フタル酸デンプン及びアミロース、スチレン−マレイン酸共重合体、酢酸コハク酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース(CAP、cellulose acetate phthalate)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP、polyvinyl acetate phthalate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(グレードHP-50及びHP-55)、エチルセルロース、脂肪、ステアリン酸ブチル、及び酸性イオン性基を有するメタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体(「ACRYLEZE(登録商標)」及び「EUDRAGIT(登録商標)」を含む)、例えば「EUDRAGIT(登録商標)L 30D」、「EUDRAGIT(登録商標)RL 30D」、「EUDRAGIT(登録商標)RS 30D」、「EUDRAGIT(登録商標)L 100-55」及び「EUDRAGIT(登録商標)L 30D-55」が含まれる。好ましい実施形態では、医薬組成物は、塩化物イオン輸送の阻害剤、例えばプロアントシアニジン重合組成物、及び腸溶性コーティング重合体「EUDRAGIT(登録商標)L 30D」、平均分子量が250,000ダルトンのメタクリル酸及びアクリル酸メチルのアニオン性共重合体を含む。他の好ましい実施形態では、腸溶性コーティング重合体は、「EUDRAGIT(登録商標)L 30D-55」である。
【0074】
腸溶性コーティングの崩壊は、用いるコーティングの種類に従い、腸の酵素による加水分解によって、又は、胆汁酸塩による乳化及び分散によって起こる。例えば、ブタノールが溶解し、ステアリン酸が医薬からはがれるので、エステラーゼはエステルステアリン酸ブチルをブタノール及びステアリン酸へ加水分解する。さらに、胆汁酸塩は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、脂肪及び脂肪誘導体を乳化、分散させる。他の種類のコーティングは湿気との接触時間に従い除去され、例えば、粉末カルナバワックス、ステアリン酸並びに寒天及びニレ樹皮の植物繊維から調製されたコーティングは、植物繊維が湿気を吸収して膨脹した後に破裂する。崩壊のために必要な時間は、コーティングの厚さ及びワックスに対する植物繊維の比に依存する。
【0075】
本発明の阻害分子への腸溶性コーティングの塗布は、腸溶性コーティングを塗布するための当技術分野で公知の任意の方法によって達成することができる。例えば、それに限定されないが、腸溶性重合体は、スプレー塗布のための重量比5〜10%の重合体及びパンコーティングのための重量比最高30%の重合体を含んでいる有機溶媒ベースの溶液を用いて塗布することができる。通常使用される溶媒には、それらに限定されないが、アセトン、アセトン/酢酸エチル混合物、塩化メチレン/メタノール混合物及びこれらの溶媒を含む第三混合物が含まれる。一部の腸溶性重合体、例えば、メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体は、分散剤として水を用いて塗布することができる。溶媒系の揮発性は、粘着性による粘着を予防するように、及び、溶媒が蒸発するので早すぎるスプレー乾燥又は重合体の沈殿によるコーティングの高い有孔率を予防するように調整されなければならない。
【0076】
さらに、塗膜のひび割れを予防するために、可塑剤を腸溶性コーティングへ加えることができる。適当な可塑剤には、低分子量のフタル酸エステル、例えばフタル酸ジエチル、アセチル化モノグリセリド、トリエチルシトレート、ポリエチル(polyethyl)グリコールトリブチルシトレート及びトリアセチンが含まれる。通常、可塑剤は、腸溶性コーティング重合体重量の10重量%の濃度で加えられる。コーティングの強度及び平滑度を改善するために、他の添加剤、例えば乳化剤、例えば界面活性剤及びシメチコン、並びに粉体、例えばタルクをコーティングに加えることができる。さらに、医薬製剤を着色するために、色素をコーティングに加えることができる。
【0077】
好ましい実施形態では、阻害分子の医薬組成物は、硬質シェルのゼラチンカプセル中の腸溶性コーティングビーズとして提供される。好ましい実施形態では、プロアントシアニジン重合体ビーズは、プロアントシアニジン重合体組成物をヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合し、混合物をノンパレイユシード(砂糖粒)上に重層することによって調製される。より好ましい実施形態では、腸溶性コーティング以外の賦形剤、添加剤及び媒体なしで直接圧縮可能であるクロフェレマーを粉にして、ビーズに細分する(すなわち、ノンパレイユ砂糖シードを含まないビーズとして)。ビーズは、Opadry Clear(水と混合)のシールコートで覆ってもよい。ビーズの好ましい腸溶性コーティングは、乳化剤として0.7%ラウリル硫酸ナトリウムNF(SLS)及び2.3%ポリソルベート80NF(Tween(商標)20)と供給される、重量比20%〜30%の乾燥重合物質を含む水性分散液として塗布される「EUDRAGIT(商標)L 30D」又は「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」であり、それに対しては、コーティングの弾力性を改善するためにポリエチレングリコール及び/又はクエン酸エステルなどの可塑剤が加えられ、塗布過程で腸溶性コーティング重合体が凝集する傾向を低減し、フィルムコーティングの平滑度を高めるためにタルクを加えてもよい。
【0078】
好ましい製剤では、ノンパレイユシードを含む腸溶性コーティングプロアントシアニジン重合体組成物ビーズの最終組成は、重量比17.3%のノンパレイユシード、重量比64.5%のプロアントシアニジン重合体組成物、重量比1.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、重量比0.5%のOpadry Clear、重量比14.5%の「EUDRAGIT(商標)L 30D」、重量比1.45%のトリエチルシトレート及び重量比0.25%のモノステアリン酸グリセリンである。この医薬製剤は、当技術分野で公知の任意の方法、又は下の実施例1で記載の方法によって調製することができる。
【0079】
ノンパレイユシードを含まないプロアントシアニジン重合体組成物ビーズの好ましい製剤は、重量比78%の直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物(例えば、実施例で記載の方法によって単離されるもの)、重量比0.76%のOpadry Clear、重量比19%の「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」、1.9%トリエチルシトレート及び重量比0.34%のモノステアリン酸グリセリンである。この医薬製剤は、当技術分野で公知の任意の方法、又は下の実施例2で記載の方法によって調製することができる。
【0080】
他の好ましい製剤は、重量比54.58%のプロアントシアニジン重合組成物ビーズ(ノンパレイユシードなしで、直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合組成物で形成)、重量比1.78%のOpadry Clear、重量比39%の「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」、3.9%トリエチルシトレート及び重量比0.74%のモノステアリン酸グリセリンを含む。
【0081】
他の実施形態では、本発明の阻害分子を含む医薬組成物は、硬質シェルのゼラチンカプセルで提供されるか又は小児科投与のための経口液剤に懸濁される、腸溶性コーティング顆粒剤又は散剤(直径300〜500pのマイクロスフェア)として製剤化される。腸溶性コーティング散剤又は顆粒剤は、特に小児科の投与のために、食物と混合することもできる。この製剤は、当技術分野で公知の技術、例えば下の実施例1Cで記載の方法を用いて調製することができる。
【0082】
一般に、顆粒剤及び散剤は、当技術分野で公知である任意の方法、例えばそれらに限定されないが、結晶化、噴霧乾燥又は任意の粉砕方法で、好ましくは高速混合機/造粒機を用いて調製することができる。高速混合機/造粒機の例には、「LITTLEFORD LODIGE(商標)」混合機、「LITTLEFORD LODIGE(商標)」MGT混合機/造粒機及び「GRAL(商標)」混合機/造粒機が含まれる。高剪断粉末混合の間、結合剤と呼ばれる造粒剤の溶液を粉末の上へスプレーして粉末粒子を凝集させ、このようにより大きな粒子又は顆粒を形成する。顆粒剤の調製に有用である造粒剤には、それらに限定されないが、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びエチルセルロースを含む)、ゼラチン、グルコース、ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプンのり、ソルビトール、ショ糖、ブドウ糖、糖蜜、ラクトース、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイルランドコケの抽出物、パンワーゴム、ガッチゴム、イサポール殻、ビーガム及びカラマツアラボガラクタンの粘質物、ポリエチレングリコール並びにワックスが含まれる。造粒剤は、粒子又は顆粒の質量の1〜30%の濃度で加えることができる。
【0083】
好ましくは、散剤又は顆粒剤は、流動床装置を用いてコーティングされる。次に、顆粒剤又は散剤を、Opadry Clear(水と混合)のシールコートで覆ってもよい。好ましい腸溶性コーティングは、乳化剤として0.7%ラウリル硫酸ナトリウムNF(SLS)及び2.3%ポリソルベート80NF(Tween(商標)20)と供給される、重量比30%の乾燥重合物質を含む水性分散液として塗布される「EUDRAGIT(商標)L 30D」であり、それに対しては、コーティングの弾力性を改善するためにポリエチレングリコール及びクエン酸エステルなどの可塑剤が加えられ、塗布過程で腸溶性コーティング重合体が凝集する傾向を低減し、フィルムコーティングの平滑度を高めるためにタルクが加えられる。好ましい実施形態では、腸溶性コーティング散剤の最終組成は、重量比81.8%のプロアントシアニジン重合体組成物、重量比1.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、重量比0.5%のOpadry Clear、重量比14.5%の「EUDRAGIT(商標)L 30D」、重量比1.45%のトリエチルシトレート及び重量比0.25%のモノステアリン酸グリセリンである。腸溶性コーティング顆粒剤の最終組成は、重量比81.8%のプロアントシアニジン重合体組成物、10%のポリビニルピロリドン、重量比1.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、重量比0.5%のOpadry Clear、重量比14.5%の「EUDRAGIT(商標)L 30D」、重量比1.45%のトリエチルシトレート及び重量比0.25%のモノステアリン酸グリセリンである。
【0084】
腸溶性コーティング顆粒又は粉粒子は、特に小児科投与のために、さらに経口投与用溶液に懸濁することができる。懸濁液は、被覆粉粒子又は顆粒の急速な沈降を予防するために溶液の粘度を高くするために、増粘剤及び保護コロイドを加えた水溶液から調製することができる。分子相互作用を通して懸濁粒子のまわりに形成される水和層の強度を増加させ、阻害分子と薬学的に適合する任意の材料、例えばそれらに限定されないが、ゼラチン、天然ゴム(例えば、トラガカンタ、キサンタン、グアー、アカシア、パンワー、ガッチ、など)及びセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、など)を増粘剤として用いることができる。増粘剤の作用を改善するために、Tween(商標)などの界面活性剤を加えてもよい。好ましい懸濁溶液は、0.2%Tween(商標)を含む水に対して重量比2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液である。
【0085】
阻害分子は、腸溶錠として製剤化することもできる。好ましい一実施形態では、プロアントシアニジン重合体組成物は、顆粒剤を調製するための上記方法によって、任意の薬学的に許容される希釈液(例えば上記のもの)で粒状化される。次に、顆粒は当技術分野で公知の任意の方法、例えばそれらに限定されないが、湿式造粒法、乾式造粒法又は直接圧縮法を用いて錠剤に圧縮される。好ましい希釈液には、それらに限定されないが、微結晶性セルロース(「AVICEL(商標)PH 200/300」)及びデキストレート(「EMDEX(商標)」)が含まれる。さらに、崩壊剤、例えば上記のもの、及び滑剤、例えば上記のものを、錠剤製剤へ加えることもできる。好ましい錠剤製剤は、250mgプロアントシアニジン重合体組成物、7mgの崩壊剤「AC-DI-SOL(商標)」(架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、1.75mgの滑剤ステアリン酸マグネシウム及び混合物を350mgにするのに必要な重量の「AVICEL(商標)PH 200/300」を含む。錠剤は、250グラムの「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」、7.5グラムのトリエチルシトレート、37.5グラムのタルク及び205グラムの水から調製される腸溶性コーティング混合物でコーティングされる。この製剤は、当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。
【0086】
好ましい実施形態では、直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物は、粉砕(例えば、上記のもの)によって顆粒にし、滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウムと混合する。次に、平滑顆粒は当技術分野で公知の任意の方法、例えばそれに限定されないが、直接圧縮法を用いて錠剤に圧縮される。好ましくは、各錠剤は、重量比99.6%の直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物及び重量比0.40%のステアリン酸マグネシウムを含む125mgである。次に、錠剤は、好ましくは、100グラムの錠剤につき、「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」の30%懸濁液(22.22g中6.66g)、0.67gのトリエチルシトレート、1.67gのタルク及び20.44gの精製水の腸溶性コーティング混合物でコーティングされる。錠剤は、当技術分野で公知の任意の方法、又は下の実施例1Eで記載の方法によって調製することができる。
【0087】
より好ましい実施形態では、直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物は、重量比99.6%の直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物及び重量比0.40%のステアリン酸マグネシウムを含む、125mg、250mg又は500mgの核錠に製剤化される。次に錠剤は、好ましくは、腸溶性コーティング混合物でコーティングされる。錠剤の最終組成は、重量比86.6%の直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物、0.4%ステアリン酸マグネシウム、6.5%「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」、0.9%トリエチルシトレート、2.87%タルク及び2.74%白色分散である。錠剤は当技術分野で公知の任意の方法、例えばそれに限定されないが、下記方法によって調製することができる。
【0088】
小粒子(マイクロメートルサイズの粒子、例えばマイクロスフェア及びマイクロカプセルを含む)、粒子(ミリメートルサイズの粒子を含む)、薬剤結晶、ペレット、ピル及びミクロビーズに形成される組成物は、流動床法を用いてコーティングすることができる。この方法は、組成物核が下から導入される気流によって密閉円筒容器内で巻き挙げられ、流動時間の間核の上へそれをスプレー乾燥することによって腸溶性コーティングが形成される流動床装置、例えば「GLATT(商標)」、「AEROMATIC(商標)」、「WURSTER(商標)」又は他によって供給されるものを用いる。錠剤又はカプセルをコーティングするために、Accela-Cotaコーティング装置(「MANESTY(商標)」)を用いることができる。この方法により、錠剤又はカプセルを、有孔ジャケットを有する回転円筒形のコーティングパン内に置き、スプレーユニットをパン内に設置し、回転する錠剤又はカプセルを通して乾燥空気を吸引する。他のいかなる種類のコーティングパンも、例えば「COMPU-LAB(商標)」パン、Hi-coates「GLATT(商標)」immersion sword法、「DRIAM(商標)」Dricoater、「STEINBERG(商標)」装置、「PELLEGRINI(商標)」装置又は「WALTHER(商標)」装置も、用いることができる。
【0089】
本発明の医薬製剤は、ヒト以外の動物、特に飼育動物で、例えばそれらに限定されないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、家禽(例えばニワトリ)及びウマ、及びイヌ及びネコなどの他の家畜動物でdlBSを治療するために用いることもできる。詳細には、本発明の医薬製剤は、本発明の医薬組成物を動物飼料に組み入れることによって、ヒト以外の動物、特に食用動物、例えばウシ、ヒツジ及びブタでd−IBS疾患を治療するために用いることができる。
【0090】
本発明の方法によると、本発明の塩化物イオン輸送阻害剤(阻害分子)を含む医薬組成物は、750mg/日以下の経口投与腸溶性保護クロフェレマーと生物学的に同等の総量で、対象に投与される。具体的な実施形態では、クロフェレマーを含む医薬組成物は、約50mg/日〜約250mg/日の量で、対象に投与される。
【0091】
対象が下痢型IBSを有するかどうかの判定では、対象を診断するための当技術分野の任意の方法、例えばそれに限定されないが、過敏性腸症候群の診断のためのRome II基準を用いることができる(Thompson et al., 1999, Gut 45 (Suppl II): Ih43-1147)。簡潔には、Rome II診断基準は、先行する12カ月間内の、連続する必要はないが少なくとも12週間の、以下の3つの特徴のうちの2つを伴う腹部の不快又は疼痛と述べる。(1)排便による軽減、及び/又は(2)便通頻度の変化に伴う開始、及び/又は(3)大便の形態(外観)の変化に伴う開始。以下の症状は、BIBSの診断を累積的に裏づける。(i)異常な、例えば1日3回を超える排便回数、(ii)異常な大便の形態、例えばゆるい/水様の大便、(iii)切迫の存在(排便のために急ぐ必要があること)。
【0092】
定義
他に定義されていない場合、本明細書で用いる技術用語、記法及び他の科学用語若しくは専門用語は、本発明が関係する当業者によって通常理解される意味を有するものとする。一部の場合、通常理解される意味を有する用語は、明確性及び/又は即時参照のために本明細書で定義されており、そのような定義を本明細書に含めることは、当技術分野で通常理解されるものからの実質的な差を表すものと必ずしも解釈されるべきではない。本発明の実施には、特に明記しない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学及び免疫学の従来の技術を使用するが、これらは当分野の技術の範囲内である。そのような技術は、例えば以下の文献で完全に説明される。Current Protocols in Immunology(J. E. Coligan et al., eds., 1999、2001年までの補遺を含む);Current Protocols in Molecular Biology(F. M. Ausubel et al., eds., 1987、2001年までの補遺を含む);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, third edition(Sambrook and Russel, 2001);PCR: The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al., eds., 1994);The Immunoassay Handbook(D. Wild, ed., Stockton Press NY, 1994);Bioconjugate Techniques(Greg T. Hermanson, ed., Academic Press, 1996);Methods of Immunological Analysis(R. Masseyeff, W. H. Albert, and N. A. Staines, eds., Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH, 1993)、Harlow and Lane Using Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999;及び、Beaucage et al. eds., Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry John Wiley & Sons, Inc., New York, 2000)。
【0093】
本明細書で使用するように、ポリペプチド又はタンパク質との関連で用語「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失又は付加の導入によって変更されたアミノ酸配列を含むポリペプチド又はタンパク質を指す。本明細書で用いられる用語「誘導体」は、修飾された、すなわちポリペプチド又はタンパク質への任意の種類の分子の共有結合によって修飾されたポリペプチド又はタンパク質も指す。例えば、それに限定するものではないが、抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結、その他によって修飾することができる。誘導体ポリペプチド又はタンパク質は、それらに限定されないが特異的化学開裂、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成、その他を含む当分野の技術者に公知の技術を使用した化学修飾によって生成することができる。さらに、誘導体ポリペプチド又はタンパク質誘導体は、それが由来するポリペプチド又はタンパク質と類似又は同一の少なくとも1つの生物学的機能を保有する。
【0094】
本明細書で使用するように、非タンパク性誘導体との関連で用語「誘導体」は、第1の有機又は無機の分子の構造に基づいて形成される第2の有機又は無機の分子を指す。有機分子の誘導体としては、それらに限定されないが、例えば、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、カルボキシル基、アミン基の付加若しくは削除、エステル化、アルキル化若しくはリン酸化、重合体の固定化若しくは付加によって修飾される分子がある。
【0095】
本明細書で用いるように、用語「重合体」は、同じであるか異なることができる3つ以上の単量体単位を含む化合物を指す。したがって、「重合体」は、高分子量及び/又は不溶性重合体並びに低分子量及び/又は可溶性オリゴマーを指す。
【0096】
本明細書で用いるように、用語「断片」は、少なくとも5つの連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、ペプチド又はポリペプチドを指す。一実施形態では、ポリペプチドの断片は、ポリペプチドの少なくとも1つの機能を保持する。
【0097】
本明細書で用いるように、用語「CFTR機能を阻害する」は、それらに限定されないが、塩化物イオン輸送を阻害すること及びCFTR分子の発現を阻害することを含む任意の手段によって、CFTR分子の任意の機能を阻害することを指す。
【0098】
本明細書で用いるように、用語「核酸」及び「ヌクレオチド配列」には、DNA分子(例えば、cDNA若しくはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、DNA及びRNA分子の組合せ若しくはハイブリッドDNA/RNA分子、及びDNA若しくはRNA分子のアナログが含まれる。
【0099】
本明細書で用いるように、用語「対象」及び「患者」は互換的に使用される。本明細書で用いるように、用語「対象」及び「複数の対象」は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット及びマウス)並びに霊長類(例えば、カニクイザルなどのサル及びヒト)を含む哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。好ましい実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、用語「対象」からは、分泌性(急性)下痢を起こしているか又はそれと診断された対象は排除される。
【0100】
本明細書で用いるように、用語「治療する」、「治療」及び「治療すること」は、d−IBSの症状又は合併症の予防、軽減、改善又は消失を指す。本発明との関連で用語「d−IBSの症状の予防、軽減、改善又は消失」は、以下のうちの少なくとも1つを指す。例えば、過去にd−IBSを起こしたが現在は寛解期間にある患者における、それが起こる前のd−IBSの予防;確立されたd−IBSの消失(例えば、正常な排便回数の復活で判定される);d−IBSに伴う疼痛の消失;d−IBSの既存の状態の重症度の低下によって明らかにされる、疾患の好ましくない症状の軽減;対象の治療で用いる1つ又は複数の医薬品の削除又は減少。好ましくない症状の軽減は、例えば、治療前と比較した場合の排便回数の測定、大便粘稠度の判定、切迫の存在の判定、d−IBSに伴う疼痛の判定によって判定することができる。一部の症状がより低く、より許容されるレベルに維持される(「管理」)場合でも、症状の重症度のいかなる程度の減少も、本明細書で定義される用語に包含される。そのような改善は、排便回数の減少、大便粘稠度の増加、切迫の存在の減少、疼痛の軽減から明白となろう。
【0101】
d−IBSには他の非下痢関連の症状、例えば腹部の不快、疼痛、鼓脹、疲労、睡眠障害、性的機能不全、頭痛、線維筋痛(筋肉痛)、消化不良(上腹部の不快若しくは疼痛)、胸部痛、泌尿科若しくは婦人科の症状、不安及び抑うつ症が常に伴うので、これらの症状のうちの少なくとも1つの軽減も、用語「d−IBSの症状又は合併症の予防、軽減、管理又は消失」に包含される。
【0102】
本明細書で用いるように、用語「治療的有効量」は、d−IBSの治療をもたらすこと、d−IBSの進行を予防すること、d−IBSの退行をもたらすこと、又はd−IBSを治療又は予防するために投与される他の治療薬の治療効果を強化又は改善することに十分な治療薬の量を指す。
【0103】
以下の一連の実施例は例示目的のために提示され、本発明の範囲の制限のためではない。
[実施例]
【実施例1】
【0104】
医薬製剤の調製
本発明による、クロトン・レクレリからのプロアントシアニジン重合体組成物の異なる好ましい医薬製剤の製造及び包装のための例示的な方法を、以下に記す。
【0105】
1A.カプセル化された腸溶性コーティングビーズ
砂糖粒をベースにした、カプセル化された腸溶性コーティングプロアントシアニジン重合体組成物ビーズ製剤を調製するために用いたバッチ処方及び方法の詳細な説明を、下で提供する。各硬質シェルのゼラチンカプセルは、250mgプロアントシアニジン重合体組成物腸溶性コーティングビーズを含有した。カプセルは、それぞれ16個の250mgカプセルを含むHDPEボトルに梱包した。腸溶性コーティングプロアントシアニジン重合体組成物ビーズの製剤は、17.3%(w/w)ノンパレイユシード(40/60メッシュの砂糖粒、Paulaur社製、ロット#60084060)、64.5%のクロトン・レクレリからのプロアントシアニジン重合体組成物、1.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel E5 Premium、Dow Chemical社製、ロット#MM9410162E)、0.5%Opadry Clear(Colorcon社製、ロット#S83563)、14.5%「EUDRAGIT(商標)L 30D」(Rohm Tech.社製、ロット#1250514132)、1.45%トリエチルシトレート(Morflex社製、ロット#N5X291)、モノステアリン酸グリセリン(Imwitor-900、Rohm Tech社製、ロット#502-229)及び精製水(USP)を含んでいた。
【0106】
プロアントシアニジン重合体組成物を含む重層コーティング溶液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びプロアントシアニジン重合体組成物を精製水(USP)に加え、溶解するまで混合することによって調製した。ノンパレイユシードは、流動床プロセッサー(NiorPrecisionCoater)の生成物ボウルへ加えた。次に、ポリマー溶液は、30〜35℃の目標床温で流動化されたノンパレイユシードの上へ溶液をスプレーすることによって、ノンパレイユシードの上に重層した。プロアントシアニジン重合体の重層が完了したならば、Opadry Clear(Opadry Clearを精製水USPで混合することによって調製)を用いたシールコートを30〜35℃の目標床温で塗布した。シールコートを塗布した後、ペレットを排出して1000μ及び425μのスクリーンを通してふるい分けし、425μより大きく1000μより小さい層形成粒は流動床プロセッサーに戻した。一方、腸溶性コーティング溶液は、トリエチルシトレート及びモノステアリン酸グリセリンを65℃に加熱した水と混合し、次に、この溶液を「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」と混合することによって調製した。次に、得られた腸溶性コーティング溶液を、全ての腸溶性コーティング溶液がビーズ上に重層されるまで、30〜35℃の床温の流動床プロセッサー内の層形成粒の上へスプレーした。プロアントシアニジン重合体組成物が52.9%の濃度で存在したことを示すHPLCアッセイの結果に基づき、250mg投薬量を提供するために腸溶性コーティングビーズをサイズ#0の硬質シェルゼラチンカプセルに手で詰め、その後、適当な熱誘導裏打ちキャップを有するHDPEボトルに詰めた。
【0107】
【表1】

【0108】
1B.カプセル化された腸溶性コーティングビーズ
ノンパレイユ砂糖粒を含まないカプセル化腸溶性コーティングビーズ製剤を調製するために用いた処方及び方法を、以下に記す。一製剤は、重量比83.3%のプロアントシアニジン重合体組成物、重量比0.5%のOpadry Clear、重量比14.5%の「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」、重量比1.9%のトリエチルシトレート及び0.34%のモノステアリン酸グリセリンを含む。
【0109】
ビーズは、先ず、50mmWursterカラムを有する16リットルのaerornatic MP-1流動床プロセッサー内で、Opadry clearの5%溶液でシールコーティングした。シールコーティングの塗布のコーティングパラメータは、50℃〜60℃の入口温度、25℃〜40℃の出口温度、30〜40CMHの空気量、毎分6〜12グラムのスプレー速度及び2.5バールの気圧であった。シールコートを塗布した後、ビーズを排出して、425μより大きく1000μより小さいビーズをふるい分けした。次に、腸溶性コーティングのために、適当な大きさのビーズを流動層工程に戻した。プロアントシアニジン重合体組成物ビーズの各1000グラムにつき、811.97グラムの「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」、24.36グラムのトリエチルシトレート、4.36グラムのモノステアリン酸グリセリン及び248.55グラムの精製水から腸溶性コーティング懸濁液を調製した。この懸濁液は、「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」懸濁液を連続的に静かに撹拌し、別の容器の精製水中でトリエチルシトレート及びタルクを懸濁、均質化することによって調製した。次に、トリエチルシトレート/タルク混合物を「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」懸濁液へ加え、得られたコーティング分散液は、沈殿を避けるためにスプレー工程の間撹拌した。次に、流動床プロセッサー内で、以下のパラメータでビーズをコーティングした。入口温度は42℃〜47℃であり、出口温度は28℃〜34℃であり、空気量は30〜40CMHであり、スプレー速度は612グラム/分であり、気圧は2.5バールであった。得られた腸溶性コーティングビーズは、次に、サイズ#0の硬質シェルゼラチンカプセルに詰めた。
【0110】
1C.腸溶性コーティング顆粒剤及び粉粒子
プロアントシアニジン重合体組成物を、硬質シェルのゼラチンカプセル内の又は経口液剤に懸濁させた腸溶性コーティング顆粒剤又は散剤(直径300500μのマイクロスフェア)として製剤化する方法を下に記載する。プロアントシアニジン重合体組成物粉粒子は、高速混合機/造粒機内でのプロアントシアニジン重合体組成物及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの高剪断粉末混合によって調製する。プロアントシアニジン重合体組成物顆粒剤は、粉粒子が凝集してより大きな顆粒を形成するように、高速混合機/造粒機内でポリビニルピロリドンを粉体にスプレーすることによって調製する。流動床装置を用いて、次に顆粒又は粉体をOpadry Clear(水と混合)のシールコートで覆い、その後、乳化剤として0.7%ラウリル硫酸ナトリウムNF(SLS)及び2.3%ポリソルベート80NF(Tween(商標)20)と供給される、重量比30%の乾燥メタクリル酸重合物質を含む水性分散液として塗布される腸溶性コーティング「EUDRAGIT(商標)L 30D」で塗布し、それに対しては、コーティングの弾力性を改善するために可塑剤のトリエチルシトレート及びモノステアリン酸グリセリンを加える。腸溶性コーティング散剤の最終組成は、重量比81.8%のプロアントシアニジン重合体組成物、重量比1.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、重量比0.5%のOpadry clear、重量比14.5%の「EUDRAGIT(商標)L 30D」、重量比1.45%のトリエチルシトレート及び重量比0.25%のモノステアリン酸グリセリンである。腸溶性コーティング顆粒剤の最終組成は、重量比81.8%のプロアントシアニジン重合体組成物、10%のポリビニルピロリドン、重量比1.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、重量比0.5%のOpadry clear、重量比14.5%の「EUDRAGIT(商標)L 30D」、重量比1.45%のトリエチルシトレート及び重量比0.25%のモノステアリン酸グリセリンである。
【0111】
腸溶性コーティングプロアントシアニジン重合体組成物顆粒又は粒子は、適当な投薬量を提供する量で、硬質シェルゼラチンカプセルに詰めることができる。
【0112】
腸溶性コーティングプロアントシアニジン重合体組成物顆粒又は粉粒子は、特に小児科投与のために、経口投与用溶液に懸濁することもできる。懸濁溶液は、97.8ml蒸留水及び0.2グラムのTween(商標)80中で2グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロースを濡らし、超音波処理し、溶液を40℃に加熱し、3時間撹拌することによってこの調製物を均一に混合し、その後、腸溶性コーティングプロアントシアニジン重合体組成物粉粒子又は顆粒を均一溶液に加えることによって調製する。
【0113】
1D.腸溶性コーティング圧縮錠剤
腸溶性コーティング錠剤としてプロアントシアニジン重合体組成物を希釈液で製剤化する方法を、以下に記す。各350mg錠剤につき、250mgプロアントシアニジン重合体組成物を、7mgの架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(「AC-DI-SOL(商標)」)及び総量を350mgにするのに十分な質量の微結晶性セルロース(「AVICEL(商標)PH 200/300」)で粒状化する。これらの成分を、Vブレンダーで20〜30分間混合する。20〜30分間混合した後に、1.75mgのステアリン酸マグネシウムを加え、混合物をさらに4〜5分間混合する。得られた顆粒を、5/16インチの標準の凹状パンチを用いて回転タブレット成形機で圧縮する。錠剤は、250グラムの「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」、7.5グラムのトリエチルシトレート、37.5グラムのタルク及び205グラムの水から調製される腸溶性コーティング混合物でコーティングする。次に、錠剤を有孔のパン塗工機(例えば「ACCELACOTA(商標)」システム)に入れ、40℃で15rpmで回転させる。腸溶性コーティング製剤を、以下の条件を用いてスプレーする。44℃〜48℃の吸気温度、29℃〜32℃の排気温度、26℃〜30℃の生成物温度、1mmのスプレーノズル、30〜32rpmのパン速度、30〜32CFMの空気流量及び20PSIのスプレー圧。最終的に、パンが60℃の吸気温度で15rpmで回転するときに、錠剤を30分間硬化し、次に、熱を遮断した後、錠剤が室温に冷却するまで錠剤を15rpmで回転させる。
【0114】
1E.腸溶性コーティング直接圧縮錠剤
腸溶性コーティング錠剤としてプロアントシアニジン重合体組成物を希釈液なしで製剤化する方法を、下記の通りに実施した。直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物を、下の実施例1Fに記載の方法によって生成した。125mgの錠剤は、重量比99.6%の直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物を重量比0.40%のステアリン酸マグネシウムと2分間混ぜ合わせ、次に、直径1/4インチの丸い標準の凹状パンチを用いて、ロータリプレスで材料を直接4〜10Kpの錠剤硬度へ圧縮して125mg錠剤にすることによって調製した。
【0115】
核錠を試験し、平均硬度(n=10)が4〜10Kp、破砕性(n=20)が0.7%未満、平均錠重量(n=10)が125mg±7mg、平均厚さ(n=10)が3.9〜4.1mm、崩壊時間(n=6)が20分以下であることが見いだされた。
【0116】
コーティング分散液は、100グラムの錠剤につき、均質になるまで混合した0.67グラムのトリエチルシトレート、1.67グラムのタルク及び20.44グラムの精製水の混合物と静かに撹拌し続けた、重量比30%の「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」懸濁液の22.22グラムを混合することによって調製した。コーティング分散液は、沈殿を避けるために絶えず撹拌した。
【0117】
錠剤(100,000個のバッチ)は、Compu-Lab24インチ/30Lのパン内で、コーティング分散液でコーティングした。錠剤はパン内で3〜5rpmの速度で振とうし、35℃〜40℃の温度に予備加温した。次に、錠剤は、以下のパラメータで6%〜8%の重量増加まで、腸溶性コーティング分散液でコーティングした。45℃〜65℃の入口温度;27℃〜34℃の排気温度;28℃〜32℃の生成物温度;8〜14rpmのパン速度;180〜240CHMの気流量;10〜20psi(平方インチあたりのポンド)の空気スプレー圧;3〜4グラム/分/kgの初期スプレー速度;及び、4〜8グラム/分/kgの最終スプレー速度。次に、45℃〜50℃の入口温度及び3〜5rpmのパン速度で、錠剤をパン内で30分間硬化させた。最後に、3〜5rpmのパン速度で、パン内で錠剤を室温に放冷させた。次に、125mg錠剤の4個を、サイズ0の不透明なスウェーデンオレンジ色のゼラチンカプセルに詰めた。
【0118】
腸溶性コーティングプロアントシアニジン重合体組成物錠剤を、含量均一性、薬物放出、微生物学的試験及び安定性について試験し、一部の分析的製造過程試験も実施した。安定性研究では、プロアントシアニジン重合体組成物は、室温で6カ月間の保管の後、並びに、加速温湿度条件の下でも安定していた。最後に、核錠を試験し、平均硬度(n=10)が4〜10Kp、破砕性(n=20)が0.7%未満、平均錠重量(n=10)が125mg±7mg、平均厚さ(n=10)が3.9〜4.1mm、崩壊時間(n=6)が20分以下であることが見いだされた。
【0119】
1F.腸溶性コーティング直接圧縮錠剤
腸溶性コーティング錠剤としてのプロアントシアニジン重合体組成物の希釈液を使用しない製剤化を、下記の通りに実施した。直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物を、下の実施例2に記載の通りに単離した。核錠は、024R(30メッシュ)のスクリーンを有するQuadro Comil内で1錠につき250mgのプロアントシアニジン重合体組成物(合計約16kg)を粉にし、次に、粉にした組成物をPatterson Kelleyの2立方フィートツインシェルブレンダーで混合することによって調製した。次に、1錠につき1mgのステアリン酸マグネシウム(Spectrum Quality Products社製、New Brunswick、N.J)をブレンダー内の組成物へ加え、2分間混合した。次に、混合物を回転タブレット成形機で8〜15Kpの錠剤硬度及び0.5%未満の破砕性に圧縮して、251mg錠剤(250mgのプロアントシアニジン重合体組成物を含む)にした。
【0120】
コーティング分散液は、先ず第1の容器で、25g(固体7.5g)の「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」(Huls America社製、Somerset、N.J.)(重量は115グラムのコーティング錠についてのもの)分散液を混合することによって調製した。色素分散液は、第2の容器で、39.59gの精製水、3.30グラムのタルク(Alphafil(商標)500)(Whittaker, Clark & Daniels社製、South Plainfield、N.J.)、6.06g(固体3.15g)の白色分散液(色素)(Warner-Jenkinson社製、St. Louis、Mo.)及び1.05gのトリエチルシトレート(Morflex社製、Greensboro、N.C.)を常時撹拌しながら順番に加えることによって調製した。次に、混合物を15分間、又は均質になるまで均質化した。ゆっくりと撹拌しながら、色素分散液を「EUDRAGIT(商標)L 30D-55」分散液に加え、次に30分間撹拌した後スプレーした。沈殿を避けるために、スプレー過程でも撹拌を維持した。
【0121】
錠剤は、以下の設定により、Compu-Lab24インチ/30Lのパン内で、50,000個のバッチでコーティングした。10〜20psiの噴霧気圧;35℃〜60℃のパン吸気温度;5〜6インチのノズルチップ−錠剤ベッド間距離;及び、4/2バッフル/ノズル。錠剤をパンへ加えた後に、パンを3〜5rpmの速度で軽く振とうし、40℃に加熱した。次に、以下のパラメータにより、11〜13%の重量増加まで錠剤にスプレーした。27℃〜33℃の目標排気温度(10分間のスプレーの間に達成する);8〜12rpmのパン速度;180〜240CFMの気流量;及び、2〜5グラム/分/kgのスプレー速度。所望の重量増加を達成した後に、熱を遮断し、錠剤が30℃以下に冷やされるまでパンを3〜5rpmで軽く振とうした。
【0122】
錠剤は、サイズAAの不透明なスウェーデンオレンジ色のDBゼラチンカプセル(Capsugel社製、Greenwood、S.C.)に封入した。
【0123】
コーティングが8〜10%の重量増加まで25,000個の錠剤のバッチで実施されたことを除いて、500mg錠剤も前記のように作製した。
【実施例2】
【0124】
直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物の単離
直接圧縮可能なプロアントシアニジン重合体組成物(上の実施例1E及び1Fで製剤を調製するために用いたもの)を、以下の通りにクロトン・レクレリ(Croton lechleri)植物のラテックスから単離した。
【0125】
460リットルのクロトン・レクレリラテックスを、940リットルの精製水と10分間混合し、その後4℃で一晩(12時間)静置した。赤い上清を貯蔵タンクに送り、残りは廃棄した。次に、10分間混合し、次に相を分離させることによって、上清を200リットルのn−ブタノールで抽出した。n−ブタノール相を廃棄し、水相を各200リットルのn−ブタノールでさらに2回抽出した。抽出後、1kDカットオフ膜(低タンパク結合セルロース膜)を用いて水相を限外濾過によって濃縮し、次に、約37℃(±2℃)で濃縮水を箱形乾燥器で乾燥させた。
【0126】
カラムクロマトグラフィーによる精製のために、乾燥抽出物の6kgを75リットルの精製水に溶解し、90分間撹拌した。溶解物質は、直列に接続した35リットルCM-セファロースカラム(弱い陽イオン交換樹脂)及び70リットルLH-20カラム(サイズ排除樹脂)からなる2カラムクロマトグラフィーシステムでクロマト分離した。材料をCM-セファロースカラムに加え、140リットル精製水で洗浄し、次に、375リットルの30%アセトンでLH-20カラムの上へ溶出させた。この時点で2つのカラムを切り離し、プロアントシアニジン重合体組成物を250リットルの45%アセトンでLH-20カラムから溶出させた。分画を10リットルボトルに収集し、UV検出器により460nmで観察した。460nmで検出可能な吸光度を有する材料を含む分画をプールし、1kDカットオフ膜(低タンパク結合セルロース膜)を用いて限外濾過によって濃縮した。約37℃(±2℃)の水浴内で回転乾燥機を用いて、濃縮水を乾燥させた。
【0127】
プロアントシアニジン重合体組成物を、直接圧縮性について試験した。プロアントシアニジン重合体組成物の250mg部分を結合剤及び賦形剤の非存在下でタブレットマシンに入れ、次に、様々な厚みの錠剤に圧縮した(すなわち、錠剤へ成形するために組成物へ加える圧力がより大きいほど、生じる錠剤は薄い)。次に、従来の硬度試験機で錠剤の硬度を測定した。8〜15kpの硬度を有する錠剤の破砕性を、USP23<1216>で記載される通りに測定した。破砕性は、0.5%未満の重量減少であった。
【実施例3】
【0128】
医療品の成分、組成及び製造
3A.医療品
医療品クロフェレマーは、サイズ00の不透明なスウェーデンオレンジゼラチンカプセルに封入され、微結晶性セルロースで埋め戻された、腸溶性コーティング125mg錠剤からなる。各カプセルは、1、2又は4個の腸溶性コーティング錠剤を含む。錠剤核は、99.93%のクロフェレマー及び0.07%のステアリン酸マグネシウムからなり、メタクリル酸共重合体でコーティングされる。
【0129】
3B.医療品の成分
クロフェレマーはNapo Pharmaceuticals社によって供給され、現行の医薬品製造品質管理基準(cGMP)の下で製造される。ステアリン酸マグネシウムはMallinckrodt社(又は、同等体)によって製造され、27USP/NFに記載のステアリン酸マグネシウムの仕様を満たす。ステアリン酸マグネシウムは、製造業者によって、植物源に由来することが保証される。微結晶性セルロースはFMC社(又は、同等体)によって製造され、27USP/NFに記載の微結晶性セルロースの仕様を満たす。高密度及び低密度の微結晶性セルロースが使用される。メタクリル酸共重合体はDeGussa社によって製造されるtinder商品名Eudragit(登録商標)(L 30-D55)であり、27USP/NFに記載のメタクリル酸共重合体タイプCの仕様を満たす。トリエチルシトレートはMorflex社(又は、同等体)によって製造され、27USP/NFに記載のトリエチルシトレートの仕様を満たす。タルクはWhittaker, Clark and Daniels社(又は、同等体)によって製造され、27USP/NFに記載のタルクの仕様を満たす。精製水は医療品製造業者によって供給され、27USP/NFに記載の精製水の仕様を満たす。スウェーデンオレンジ色の不透明なサイズ00の硬質ゼラチンカプセル本体及びキャップは、Capsugel社(Greenwood、SC)によって供給される。製造業者は、カプセルが、cGMPの下で現行の国民医薬品集(NF)のゼラチンの要件を満たすゼラチンから作製されることを保証する。
【0130】
3C.医療品の組成
錠剤核及び腸溶性コーティング錠剤の組成を、それぞれ表2及び表3に記載する。クロフェレマー及びステアリン酸マグネシウムの量は、クロフェレマーの含水量について補正する薬剤物質の無水力価に基づいて調節される。コーティング後の重量増加量は、約10%である。臨床用のバッチサイズは、腸溶性コーティング錠剤100,000〜150,000個である。その後、1、2又は4個の腸溶性コーティング錠剤をサイズ00カプセルに入れ、各カプセル力価及びプラセボの重量を一致させるために、微結晶性セルロースで埋め戻す。
【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
3D.医療品の製造方法
I.錠剤核の製造
水分を調整する無水ベースでのクロフェレマーの力価に基づき、十分な量のクロフェレマー及びステアリン酸マグネシウムを、製造前に秤量する。クロフェレマーをブレンダーへ加え、ステアリン酸マグネシウムをふるい分けしてクロフェレマーに加える。クロフェレマー及びステアリン酸マグネシウムを混合し、代表的な混合試料を採取して収率を判定する。収率は、100±3%でなければならない。混合物は99.9%活性であるので、混合均一性は必要な場合を除いて判定しない。混合物を、1/aインチの丸い凹状パンチを用いて回転タブレット成形機で直接圧縮する。完成した錠剤核を除塵し、コーティングまで容器に入れておく。生産運転の開始前に、目標の錠剤核重量、厚み及び硬度を満たすために、本番前運転を実施して圧縮の速度及び与圧を調節する。さらに、破砕性及び崩壊を測定する。生産運転の間、錠剤核試料を定期間隔で採取し、錠剤が目標の錠剤重量、厚み及び硬度を満たしていることを確認する。硬度、厚み、重量、破砕性及び崩壊のさらなる試験のために、本番運転の初期、中間及び終期に代表的な錠剤核を採取する。平均錠剤核重量は、目標とする錠剤核重量の±5%内でなければならない。錠剤核、試料錠剤核、廃棄錠剤核及び混合廃棄物の数を照合して、アカウンタビリティ率を計算する。アカウンタビリティ率は、95%未満であってはならず、103%を超えてはならない。錠剤核製造工程の概略図を、下に示す。
【0134】
【表4】

【0135】
II.錠剤核のコーティング
10%の名目錠剤核重量増加に基づいて、Eudragit(登録商標)、トリエチルシトレート、タルク及び精製水の量を計算し、秤量する。高剪断混合機を備えた適当な容器に精製水を加える。トリエチルシトレート及びタルクを容器に加え、均質になるまで混合する。プロペラミキサーを備えた別の容器に、Eudragit(著作権)分散液を加えて混合する。トリエチルシトレート及びタルク分散液をEudragit(登録商標)分散液に加え、スプレー工程を通して連続的に撹拌する。パン塗工機械パラメータを適宜調節し、ラインにコーティング分散液を加える。錠剤核をコーティングパンに加え、コーティングパンを軽く振とうしながら35〜40℃に暖める。温度に達すると、錠剤核の平均重量を記録し、目的のコーティング錠重量を計算する。その後、目標とする重量増加が満たされるまで、錠剤核にスプレーし、重量を定期的に検査する。目標とするスプレー速度(4〜8グラム/分/kg錠剤核)、目標とする排気温度(35〜40℃)及び入口温度を、頻繁に監視する。錠剤を45〜50℃で30分間硬化し、次に冷ます。代表的な腸溶性コーティング試料を、試験のために採取する。平均腸溶性コーティング錠剤重量は、目標とする腸溶性コーティング錠剤重量の±5%内でなければならない。
【0136】
腸溶性コーティング錠剤、腸溶性コーティング錠剤試料の重量及び腸溶性コーティング錠剤の理論量を判定し、説明可能な収率を計算する。説明可能な収率は、95%未満であってはならず、103%を超えてはならない。錠剤核スプレーコーティング工程を、下に図示する。
【0137】
【表5】

【0138】
III.カプセル化腸溶性コーティング錠剤の製造
各カプセル力価のカプセル封入のために、腸溶性コーティング錠剤及び微結晶性セルロースを別々に秤量する。正確な剤形(125mg、250mg又は500mg)に従い、名目で600〜800mgのカプセル重量を達成するために、カプセル化する微結晶性セルロースの量を計算する。100個のカプセルの平均に基づくカプセルの平均重量を計算する。カプセルは、サイズ00の交換部品を備え、適当な量の錠剤及び微結晶性セルロースを送達するように調節された、半自動のカプセル封入機械を用いて充填する。目標の総カプセル重量(カプセルシェルと錠剤及び微結晶性セルロースとの合計)を満たすために、本番前運転を実施してトレイ充填重量、タンパー上の回転数及び突き固め回数を調節する。各トレイは、カプセルトレイにカプセル本体を置くことによって調製する。各カプセル本体に、目標の量の錠剤及び微晶質セルロースを詰めて、目標とする充填を達成する。キャップを本体上に置き、密閉する。カプセルをトレイから取り出し、除塵する。各トレイからのカプセル複合体を収集し、工程内試験及び出荷試験のために秤量する。平均カプセル重量は、目標とするカプセル重量の±5%内である。次に、所望の数のカプセルを充填するまで、工程を繰り返す。損傷を受けたカプセル、腸溶性コーティング錠剤廃棄物及び微結晶性セルロース廃棄物を、最終製品照合のために収集する。完成したカプセルの混合体を、出荷試験に送る。完成したカプセル、サンプルカプセル、損傷カプセル及び薬剤物質廃棄物の数を照合し、アカウンタビリティ率を計算する。アカウンタビリティ率は、95%未満であってはならず、103%を超えてはならない。腸溶性コーティング錠剤のカプセル封入の概略図を、下に示す。
【0139】
【表6】

【実施例4】
【0140】
下痢型過敏性腸症候群を起こしている患者に及ぼす腸溶性コーティングプロアントシアニジン重合体組成物の影響
4A.治療
試験は、下痢型過敏性腸症候群(dIBS)の対象における、16週多施設第2相無作為化二重盲検プラセボ比較試験であった。IBSの診断のためのRome II基準によって支持されるd−IBSの定義を満たす246名の対象を、4群に無作為化した。プラセボ、125mg1日2回、250mg1日2回及び500mg1日2回。試験は、2週間の無治療スクリーニング期間、12週間の盲目治療期間、続いて2週間の無治療経過観察期間からなった。
【0141】
2週間のスクリーニング期間中、対象は彼らのd−IBS症状の状態についての情報を、タッチトーン電話日記により毎日自己申告した。これには、腹痛及び不快、排便回数、粘稠度及び切迫に関する情報が含まれた。対象がスクリーニング期間の終わりに試験対象患者基準を満たし、スクリーニング期間中の日記で掴んだ情報が、彼らが活性d−IBS[平均日排便回数≧2;疼痛スコア≧1;大便粘稠度≧3(疼痛及び粘稠度のための5ポイントLickertスケール)]を有することを示した場合は、コンピュータ生成中央ランダム化スキーマーに従って対象を4群の1つに無作為化した。
【0142】
12週二重盲検治療期間中、対象は指示された通りに、タッチトーン電話日記システムによって毎日及び毎週の評価を記録し続けた。対象は試験評価検査訪問のために治療期間中4週ごとに現れ、その時にさらなる試験医薬品を受け取った。
【0143】
2週無治療経過観察期間中、対象は毎日及び毎週の評価を記録し続けた。
【0144】
結果:
薬剤関連の重大な有害事象はなかった。有害事象発生率は、表4に示すように全ての用量群にわたって同程度であった。便秘において、薬剤及び用量に関連した差はなかった。
【0145】
【表7】

【0146】
一般に、1日2回のクロフェレマー125mgは、表5で示すように女性のほとんどの評価項目で一貫した応答を示した。男性では、ほとんど効力がないようであった。しかし、群の大きさは、別々に分析するにはあまりに小さかった(13〜16名/群)。クロフェレマーは便秘を起こさなかったので、大便粘稠度スコアは正常に近く、プラセボと差はなかった。他の全ての評価項目(頻度、切迫、十分な軽減及び疼痛)では、各連続した月で活性の向上が見られ、2週無治療経過観察期間の間に、症状は予想通りにベースラインレベルに近づき始めた。1日2回のクロフェレマー500mgは、疼痛に対しても統計学的に有意な効果を示した(疼痛スコアの0.48の低下;無疼痛日の22.44%の増加)。この試験で用いたd−IBS集団を代表しない、5名の女性の疾患外れ値(彼女らはベースライン時に>9回の排便/日があり、全ての無作為化女性対象の平均排便回数から>3の標準偏差であった)があり、それらはこの概要で示す全ての分析から除外した。
【0147】
表6で示すように、250mg及び500mgを1日2回のクロフェレマーは、プラセボ群よりも頻度及び粘稠度に対する影響は少なかった。1日2回クロフェレマー500mgで治療した対象は、プラセボと比較して排便回数の日排便平均増加の半分より大きい増加を示した。平均大便粘稠度は、プラセボと比較して0.22ポイント高かった(軟便により近い)。
【0148】
【表8】

【0149】
【表9】

【0150】
図4で見られるように、1日2回クロフェレマー125mgで治療した女性対象は、排便回数の臨床的に有意な減少を示した。クロフェレマーの使用は、1日につき1回より多い排便回数の減少をもたらした。排便回数の月から月への改善は、2カ月目に減少し、値がベースラインに近づき始めたプラセボ効果と対照的であった。無治療期間が3カ月目の終わりから始まったとき、対象はクロフェレマーの服用を停止し、効果は予想通りに消え始めた。
【0151】
図5で見られるように、クロフェレマーは無切迫日の増加をもたらした。3カ月目、プラセボ群で無切迫日の23.9%の増加が観察されたのに対して、クロフェレマー群では無切迫日の35.1%の増加があった。通常見られるように、月から月への改善があった。プラセボ効果は2カ月目にピークに達してから急減し、値はベースラインへ近づき始めた。無治療期間が3カ月目の終わりから始まったとき、対象はクロフェレマーの服用を停止し、効果は予想通りに消え始めた。
【0152】
図6で見られるように、クロフェレマーの投与は、d−IBS症状の十分な軽減を報告する対象の割合の増加をもたらした。d−IBSは一群の症状を含むので、十分な軽減の評価項目は、治療が彼らのd−IBS症状にどのくらい効果的に対処しているかということについての、患者による全体的な評価である。クロフェレマー125mgの1日2回投与は、プラセボ群と比較して、d−IBS症状の十分な軽減の16%増をもたらした。観察された分析によると、クロフェレマー活性の月から月への改善があり、すなわち、患者がより長くクロフェレマーを服用するほど症状の軽減は大きかった。前に他の評価項目で見られたように、プラセボ効果は2カ月目にピークに達し、その後減少した。
【0153】
下痢型IBSは、疼痛と腸習性の変化との密接な関連性によって、多くの機能的腸疾患と区別される。IBSの診断のRome II基準によって定義されるように、疼痛は異常な腸習性に伴っていなければならず、腸習性の改善は疼痛の改善に伴うはずである。この試験では、0が無で5が重度である5ポイントスケールで疼痛スコアを測定し、及び、無疼痛日の存在を測定した。図4及び図5で示すように、クロフェレマー(125及び500mg1日2回)で治療した女性対象は、疼痛スコア及び無疼痛日の臨床的及び統計学的に有意な(p<0.05)減少を示した。図6に示す毎週の疼痛スコア結果で観察されるように、効果は全く一貫している。疼痛寛解に対するこの効果は、予想外で驚きであった。
【0154】
結論として、クロフェレマー125mgの1日2回投与は安全であり、その投与は、女性対象で疼痛、十分な軽減、頻度及び切迫の効力評価項目で改善をもたらした。クロフェレマー250及び500mgの1日2回投与は安全であり、プラセボと比較して、粘稠度及び頻度の下痢症状を悪化させるようであった。クロフェレマー125及び500mgの1日2回投与は、d−IBSの女性対象で、疼痛スコア及び無疼痛日の統計学的に有意な減少をもたらした。
【実施例5】
【0155】
クロフェレマー作用機構の調査
クロフェレマーの作用機構をさらに調査するために、選択した一群の細胞性サイトカイン放出アッセイ(IL1α;TNF−α誘導及びIL−1誘導のPGE2放出;IFN−γ;IL−2、IL−4;IL−5;IL−6;IL−8;IL10及びTNF−α)及び分子アッセイ(COX−1及びCOX−2酵素アッセイ、並びにグルココルチコイド、セロトニン5HT3、δ−オピオイド、κ−オピオイド、μ−オピオイド及び非選択的オピオイド受容体結合アッセイで、10及び100μg/mLのクロフェレマーを評価した。クロフェレマーは、ConA−及びLPS誘導サイトカイン放出アッセイに対応する細胞傷害アッセイ、並びに、TNF−α及びIL−1誘導PGE放出アッセイに対応するアッセイでも試験した。
【0156】
クロフェレマーは、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10及びTNF−αサイトカイン放出アッセイ、並びにTNF−α誘導及びIL−1誘導のPGE2放出アッセイにおいて、10及び100μg/mLで有意な(>50%)阻害を示した(すなわち、IL−5を除く全てのサイトカイン放出アッセイ)。クロフェレマーはConA及びIL−1誘導性のPGE2細胞傷害性アッセイでも有意な細胞傷害活性を示し、ConA媒介性のサイトカイン放出アッセイ(IFN−γ、IL−2、IL−4及びIL−10)及びIL−1誘導PGE2放出アッセイは、一般の細胞傷害性による可能性が示唆された。
【0157】
さらに、10及び100μg/mLで、クロフェレマーはCOX1及びCOX2酵素アッセイでそれぞれ73%及び100%の阻害を引き起こした。
【0158】
本発明には、その精神及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変更を加えることができることは、当業者には明らかになろう。本明細書で記載されている具体的な実施形態は例示として提供されているにすぎず、本発明は添付の請求項の各条項とそのような請求項が権利を有する等価物の全範囲によってのみ限定されるものとする。そのような修正は、添付の請求項の適用範囲に入るものとする。
【0159】
本明細書で引用した特許及び非特許の全ての参考文献は、個々の出版物又は特許若しくは特許出願が具体的、及び個々に全ての目的のために完全に参照により組み込まれることが示されるがごとく、参照により完全に、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】女性での排便回数に及ぼす1日2回のクロフェレマー125mgの影響を図示するグラフである。
【図2】女性での切迫に及ぼす1日2回のクロフェレマー125mgの影響を図示するグラフである。
【図3】女性でのIBS症状の十分な軽減に及ぼすクロフェレマーの影響を図示するグラフである。
【図4】女性での疼痛スコアに及ぼすクロフェレマーの影響を図示するグラフである。
【図5】女性での無疼痛日の割合に及ぼすクロフェレマーの影響を図示するグラフである。
【図6】女性での疼痛スコアに及ぼすクロフェレマーの影響を図示するグラフである。
【図7A】本発明の方法で有用な例示的なCFTR阻害分子を示す図である。図7Aは、3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノンであり、図7B及び7Fはグリシンヒドラジドであり、図7C、7D、7E、7G及び7Hはマロン酸ヒドラジドである。下で議論されるように、これらの分子は、腸で吸収されないようにするためにPEG化してもよい。
【図7B】本発明の方法で有用な例示的なCFTR阻害分子を示す図である。図7Aは、3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノンであり、図7B及び7Fはグリシンヒドラジドであり、図7C、7D、7E、7G及び7Hはマロン酸ヒドラジドである。下で議論されるように、これらの分子は、腸で吸収されないようにするためにPEG化してもよい。
【図7C】本発明の方法で有用な例示的なCFTR阻害分子を示す図である。図7Aは、3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノンであり、図7B及び7Fはグリシンヒドラジドであり、図7C、7D、7E、7G及び7Hはマロン酸ヒドラジドである。下で議論されるように、これらの分子は、腸で吸収されないようにするためにPEG化してもよい。
【図7D】本発明の方法で有用な例示的なCFTR阻害分子を示す図である。図7Aは、3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノンであり、図7B及び7Fはグリシンヒドラジドであり、図7C、7D、7E、7G及び7Hはマロン酸ヒドラジドである。下で議論されるように、これらの分子は、腸で吸収されないようにするためにPEG化してもよい。
【図7E】本発明の方法で有用な例示的なCFTR阻害分子を示す図である。図7Aは、3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノンであり、図7B及び7Fはグリシンヒドラジドであり、図7C、7D、7E、7G及び7Hはマロン酸ヒドラジドである。下で議論されるように、これらの分子は、腸で吸収されないようにするためにPEG化してもよい。
【図7F】本発明の方法で有用な例示的なCFTR阻害分子を示す図である。図7Aは、3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノンであり、図7B及び7Fはグリシンヒドラジドであり、図7C、7D、7E、7G及び7Hはマロン酸ヒドラジドである。下で議論されるように、これらの分子は、腸で吸収されないようにするためにPEG化してもよい。
【図7G】本発明の方法で有用な例示的なCFTR阻害分子を示す図である。図7Aは、3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノンであり、図7B及び7Fはグリシンヒドラジドであり、図7C、7D、7E、7G及び7Hはマロン酸ヒドラジドである。下で議論されるように、これらの分子は、腸で吸収されないようにするためにPEG化してもよい。
【図7H】本発明の方法で有用な例示的なCFTR阻害分子を示す図である。図7Aは、3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノンであり、図7B及び7Fはグリシンヒドラジドであり、図7C、7D、7E、7G及び7Hはマロン酸ヒドラジドである。下で議論されるように、これらの分子は、腸で吸収されないようにするためにPEG化してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
d−IBSに伴う疼痛及び下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う疼痛及び下痢の治療に有効な量投与することを含む方法。
【請求項2】
d−IBSに伴う腹部不快及び下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う腹部不快及び下痢の治療に有効な量投与することを含む方法。
【請求項3】
d−IBSに伴う疼痛を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う疼痛の治療に有効な量投与することを含む方法。
【請求項4】
d−IBSに伴う腹部不快を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う腹部不快の治療に有効な量投与することを含む方法。
【請求項5】
阻害剤がクロトン属の種又はカロフィルム属の種からの抽出物である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
阻害剤がクロトン属の種又はカロフィルム属の種からのラテックスである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
阻害剤がCFTR機能の阻害剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
CFTR機能の阻害剤が、2−チオキソ−4−チアゾリジノン化合物及び3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3−カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、トルブタミド、グリベンクラミド及びフルオレセイン又はその誘導体、ジアゾキシド、レマカリム、硫酸ミノキシジル及びそのアナログ;8−ブロモ−cAMP、8−(4−クロロフェニルチオ)(CPT)−cAMP及び8−ブロモ−cGMP、CPT−cGMP;ベラパミル、ニフェジピン、ジルチアゼム、ジスルホン酸スチルベン化合物、ジフェニルアミン−2−カルボン酸(DPC)又は5−ニトロ−2(3−フェニルプロピルアミノ)ベンゾアート(NPPB);アントラセン−9−カルボン酸(9−AC);3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3−カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン;N−(2−ナフタレニル)−[3,5−ジブロモ−2,4−ジヒドロキシフェニル]メチレン]グリシンヒドラジド(GlyH−101)又はその誘導体;マロン酸ジヒドラジド又はその誘導体;ロペラミド;ラセカドトリル;塩酸リダミジン;ロニダミン;バナジン酸塩;ブメタミド;pp2a;PP1;PP2B;次サリチル酸ビスマス;塩酸ジフェノキシラート;並びにスパルテインからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
阻害剤が合成又は天然の重合体組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
重合体組成物が、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン及びエピガロカテキンからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
阻害剤がプロアントシアニジン重合体組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
重合体組成物がクロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
阻害剤がクロフェレマーである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
クロフェレマーが腸溶性コーティングされ、約50mg/日〜約750mg/日の量で経口投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
クロフェレマーが約250mg/日の量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
疼痛又は不快のない日が少なくとも10%増加する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
阻害剤が全身吸収されない、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量投与することを含み、前記阻害分子がクロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物ではなく、又は前記阻害分子はクロフェレマーではない方法。
【請求項19】
d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、細胞からの塩化物イオンの分泌を阻害する分子(阻害分子)をd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量を投与することを含み、前記阻害分子がクロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物ではなく、又は、前記阻害分子はクロフェレマーではない方法。
【請求項20】
鎮痛薬又は抗炎症剤を投与することをさらに含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
阻害剤がCFTRの小分子阻害剤である、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
阻害剤が、単離された天然のCFTR阻害剤又は天然のCFTR阻害剤の合成若しくは半合成の形態である、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
CFTRの小分子阻害剤が、2−チオキソ−4−チアゾリジノン化合物及び3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3−カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジノン、トルブタミド、グリベンクラミド及びフルオレセイン又はその誘導体、ジアゾキシド、レマカリム、硫酸ミノキシジル及びそのアナログ;8−ブロモ−cAMP、8−(4−クロロフェニルチオ)(CPT)−cAMP及び8−ブロモ−cGMP、CPT−cGMP;ベラパミル、ニフェジピン、ジルチアゼム、ジスルホン酸スチルベン化合物、ジフェニルアミン−2−カルボン酸(DPC)又は5−ニトロ−2(3−フェニルプロピルアミン)ベンゾアート(NPPB);アントラセン−9−カルボン酸(9−AC);3−[(3−トリフルオロメチル)フェニル]−5−[(3,5−カルボキシフェニル)メチレン]−2−チオキソ−4−チアゾリジネン;N−(2−ナフタレニル)−[3,5−ジブロモ−2,4−ジヒドロキシフェニル]メチレン]グリシンヒドラジド(GlyH−101)又はその誘導体;マロン酸ジヒドラジド又はその誘導体;ロペラミド;ラセカドトリル;塩酸リダミジン;ロニダミン;バナジン酸塩;ブメタニド;pp2a;PP1;PP2B;次サリチル酸ビスマス;塩酸ジフェノキシラート;並びにスパルテインからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
阻害剤が、アラキドン酸、リノール酸;オレイン酸、エライジン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、リゾホスファチジン酸及びニフルム酸;フラボノイド、フラボノール、ポリフェノール、プロアントシアニジン、オリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)、プロシアニドリックオリゴマー(PCO)、縮合タンニン、ロイコシナニジン、アントシアニジン、プロシアニジン、シアニジン、プロデルフィニジン、デルフィニジン、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸カテキン、没食子酸ガロカテキン、ケルセチン、セスキテルペン、ジテルペン、テルペン及びテルペノイド誘導体、タンニン、アルカロイド、サポニン、モリン及びルテオリンから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、腸溶性保護クロフェレマー(CAS 148465-45-6)をd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量経口投与することを含み、前記量が約50mg/日〜約750mg/日である方法。
【請求項26】
d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、腸溶性保護クロフェレマーをd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量経口投与することを含み、前記量が約50mg/日〜約750mg/日である方法。
【請求項27】
d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロフェレマー(CAS 148465-45-6)をd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量経口投与することを含み、前記クロフェレマーは腸溶性コーティング以外の製剤で胃から保護されるように製剤化され、前記量が約50mg/日〜約750mg/日の投薬量の腸溶性コーティングクロフェレマーと生物学的に同等である方法。
【請求項28】
d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロフェレマーをd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量経口投与することを含み、前記クロフェレマーは腸溶性コーティング以外の製剤で胃から保護されるように製剤化され、前記量が約50mg/日〜約750mg/日の投薬量の腸溶性コーティングクロフェレマーと生物学的に同等である方法。
【請求項29】
d−IBSに伴う下痢を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物をd−IBSに伴う下痢の治療に有効な量投与することを含み、前記量はクロフェレマーの約50mg/日〜約750mg/日の経口投与用量と生物学的に同等である方法。
【請求項30】
d−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、クロトン属の種又はカロフィルム属の種から単離される重合プロアントシアニジン組成物をd−IBSに伴う異常な排便回数、異常な大便粘稠度又は切迫の存在の治療に有効な量投与することを含み、前記量はクロフェレマーの約50mg/日〜約750mg/日の経口投与用量と生物学的に同等である方法。
【請求項31】
患者がヒト女性である、請求項1〜4、18、19又は25〜30のいずれかに記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【公表番号】特表2009−535417(P2009−535417A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509982(P2009−509982)
【出願日】平成19年4月30日(2007.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/067725
【国際公開番号】WO2007/130882
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508314755)ナポ ファーマシューティカルズ インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】NAPO PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】