説明

中空糸膜モジュールの検査方法および検査装置

【課題】
本発明は、中空糸膜モジュールの不通糸欠陥の有無およびその発生の程度を中空糸膜モジュールを劣化させることなく非接触の方法によって判断することが可能であり、良否の判定を従来の方法よりも正確に行うことができる方法およびその装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
中空糸膜モジュールのポッティング端面に光源による光を照射し、前記端面からの反射光を撮像し、前記撮像によって得られた画像と予め定めるモデル画像との相関をとって中空部分が空洞になっている中空糸膜を検出し、前記中空部分が空洞になっている中空糸膜をマスクし、前記撮像画像について前記中空部分が閉塞している中空糸膜部分と樹脂部分との2値化処理を行い、前記2値化処理画像から中空部分が閉塞している中空糸膜を検出し、前記中空部分が閉塞している中空糸膜の本数が予め定める閾値を上回る場合は中空糸膜モジュールを不良品と判定する検査方法およびかかる手段を有する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析器、下排水処理装置、浄水器等に用いることができる中空糸膜モジュール検査装置および中空糸膜モジュールの検査方法、もしくは中空糸膜モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜モジュールは、よく知られているように、たとえば、両端または片端が開放された容器に両端が開放された中空糸膜(中空の半透膜)の糸束を収容し、糸束の両端部において容器と中空糸膜との隙間を樹脂で封止したものである。樹脂による封止は、容器と糸束との間の空間に樹脂を流し込み(ポッティング)、ポッティング樹脂をケース内における各中空糸膜の周りの空間に浸透させることによって行うが、その際、中空糸膜の内部にポッティング樹脂が入り込んだり、中空糸膜がその他何らかの理由でつぶれたりして、閉塞されることがある。閉塞された中空糸膜は、いわゆる不通糸となるが、そのような不通糸が存在すると、たとえば人工透析器の場合、中空糸膜内に流入した血液が中空糸膜内に残留し、透析性能が低下して、著しい場合には十分な人工透析が行えなくなってしまう。そのため、不通糸が一定数以上存在するような中空糸膜モジュールは、不良品として製造ラインから除去する必要がある。
【0003】
さて、従来、不通糸の発生が関わる中空糸膜モジュールの良否の判定は、中空糸膜モジュールの両端または片端のポッティング樹脂端面(以下、ポッティング端面という。)に入射光を照射し、前記端面での散乱光をCCDカメラで撮像し、撮像した画像から中空糸膜の中空部分の輝度の平均値を求め、その輝度平均値が予め定める閾値より高ければ、不通糸有りと判定することで検査を行う方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、ポッティング端面が反りもしくは傾きを有し、反射光の角度が変化する場合(図4の右側参照)には、照射光の光源として通常の光を使用すると、反射光の角度が変化し、撮像装置で受光することができなくなることがあり、精度よく不通糸を判定することが不可能である。そこで、特許文献1においては、照射光として紫外線を用いることによって、ポッティング端面が反りもしくは傾きを有し、反射光の角度が変化する場合(図4の右側参照)であっても、散乱光を撮像することで精度よく不通糸の判定を行うことが可能である旨が開示されている。
【0005】
しかし、紫外線を照射された中空糸膜モジュールは、良く知られている紫外線による光化学反応により黄変劣化するため、中空糸膜モジュールを劣化させることなく検査する事ができず、また、散乱光を受光した場合でも、不通糸を見逃したり正常な中空糸膜を不通糸と判定したりと判定の精度は低い、という種々の問題点があったため、特許文献2においては、平面型光源を用いて中空糸膜モジュール端面に発生する欠陥を検出する旨が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、いずれも、欠陥の判定方法は前記端面における樹脂部領域の平均輝度値あるいは輝度標準偏差値に基づいて異常を判定することを特徴とするものであったため、中空糸膜モジュールに発生する不通糸欠陥を1本単位で高精度に検出することはできなかった。
【特許文献1】特開2004−113894号公報
【特許文献2】特開2006−091007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、中空糸膜モジュールの不通糸欠陥の有無およびその発生の程度を中空糸膜モジュールを劣化させることなく非接触の方法によって判断することが可能であり、良否の判定を従来の方法よりも正確に行うことができる方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、中空糸膜モジュールのポッティング端面に光源による光を照射し、前記端面からの反射光を撮像し、前記撮像によって得られた画像と予め定めるモデル画像との相関をとって中空部分が空洞になっている中空糸膜を検出し、前記中空部分が空洞になっている中空糸膜をマスクし、前記撮像画像を前記中空部分が閉塞している中空糸膜部分と樹脂部分とで2値化処理し、前記2値化処理画像の前記マスク群以外の領域から中空部分が閉塞している中空糸膜を検出し、前記中空部分が閉塞している中空糸膜の本数が予め定める閾値を上回る場合は、中空糸膜モジュールを不良品と判定することを特徴とする中空糸膜モジュールの検査方法およびかかる検査方法を用いることを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法を提供する。ここで、本発明において、中空部分について「空洞である」もしくは「空洞状態である」とは、樹脂による閉塞がどの程度の状態であるかという具体的な基準はなく、本発明の検査方法によって予め定めるモデル画像との関係によって定まる、言い換えれば任意に設定するものである。ここで、ポッティング端面に光を照射する光源は平面型光源であることが好ましい。
【0009】
また、この際、前記モデル画像が中空部分が空洞状態の中空糸膜によるモデル画像であり、かかるモデル画像の画素群と前記撮像によって得られた画像の各画素を中心とした前記モデル画像に対応する領域を有する前記画像内の画素群との正規化相関によって算出された相関度が、予め定める相関度閾値より高い場合に、中空部分が空洞状態の中空糸膜として検出することが好ましい。
【0010】
また、前記マスクが、検出位置を中心とした予め定める領域をマークし、前記マーク群に対して予め定める距離で膨張収縮処理を行ったものであることが好ましい。
【0011】
また、前記2値化処理画像が、マスク部分を樹脂部分と同じ明るさで塗りつぶし、フィルタ処理により中空糸膜部分を強調し、中空糸膜部分と樹脂部分とで2値化したものであることが好ましい。
【0012】
また、2値化処理画像からの中空部分が閉塞している中空糸膜の検出方法が、独立した背景領域を検出するものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記目的を達成するために、中空糸膜モジュールのポッティング端面に平面型光源による光を照射する手段と、前記端面からの反射光を撮像する手段と、前記撮像によって得られた画像と予め定めるモデル画像との相関をとって中空部分が空洞になっている中空糸膜を検出する手段と、前記検出位置をマスクする手段と、前記撮像画像を中空部分が閉塞している中空糸膜部分と樹脂部分とで2値化処理する手段と、前記2値化処理画像の前記マスク群の領域外から中空部分が閉塞している中空糸膜を検出する手段と、前記中空部分が閉塞している中空糸膜の本数が予め定める閾値を上回る場合は、中空糸膜モジュールを不良品と判定する手段とを備えていることを特徴とする中空糸膜モジュールの検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る中空糸膜モジュール検査装置および中空糸膜モジュールの検査方法、または中空糸膜モジュールの製造方法によれば、次のような種々の効果が得られる。
(1)予め定めるモデル画像との相関をとって中空部分が空洞になっている中空糸膜を検出し、前記中空部分が空洞になっている中空糸膜をマスクすることで、正常な中空糸膜領域を検査範囲から除外することができるので誤検出なく不通糸欠陥を検出することができる。
(2)撮像画像とモデル画像との比較の手段として正規化相関を用いることによって、照明から照射される光の光量の変動などの影響を受けることなく、正常な中空糸膜を高精度に検出することができる。
(3)中空部分が空洞になっている中空糸膜の検出位置を中心とした予め定める領域をマークし、前記マーク群に対して予め定める距離の膨張収縮処理を行うことによって検査範囲を絞り込み、正常な中空糸膜群に囲まれた、形状および面積が樹脂で閉塞した中空糸膜の中空部分に似た樹脂領域による誤検出を減らすことができる。
(4)前記2値化処理画像が、マスク部分を樹脂部分と同じ明るさで塗りつぶし、フィルタ処理により中空糸膜部分を強調し、中空糸膜部分と樹脂部分とで2値化することで、中空糸膜部分を精度良く認識することができる。
(5)前記2値化処理画像から独立した背景領域を検出することで、中空部分の空洞が樹脂で閉塞した不通糸を検出することができる。
(6)前記2値化処理画像からの前景領域を検出することで、中空糸膜がつぶれて閉塞状態となった不通糸を検出することができる。
(7)判定結果に基づいて中空糸膜モジュールの選別を行うので、不良品流出の防止と、生産性の向上を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態における中空糸膜モジュール検査装置の全体構成を示している。図1において、Mは中空糸膜モジュール、1はモジュール移載装置、2はモジュール支持装置、3は光照射装置、4は撮像装置、5は中空糸膜検出装置、6は欠陥判定装置、7は操作指令装置、8は表示装置、9はモジュール排出装置をそれぞれ示している。なお、中空糸膜モジュールMはこの形態では1本ずつ検査する構成となっているが、複数を同時に載置・検査する構成でもよい。
以下、これら各部の構成をその作用と共に詳細に説明する。
<モジュール移載装置>
モジュール移載装置1は前工程から移送されてくる中空糸膜モジュールMを後述するモジュール支持装置2上に載置するものである。
<モジュール支持装置>
モジュール支持装置2は前記移載装置1により載置された中空糸膜モジュールMを支持するものである。なお、中空糸膜モジュールMのポッティング端面と後述する撮像装置4間との距離を一定に保つために当て止め治具によりポッティング端面の位置を調整してもよい。また、測長器を設置してポッティング端面と測長器間の距離を測定し、後述する撮像装置4の下部に設けたスライダを光軸方向に前後させてポッティング端面と撮像装置4間とを一定距離に保つ方法でもよい。なお、この実施形態においては後述する撮像装置4にラインセンサカメラを用いていることから、モジュール支持機構2a上に載置した中空糸膜モジュールMをモジュール走査機構2bにより所定の速度で水平方向に移動させることができるようにしている。
<光照射装置>
光照射装置3は光源3aと電源3bとを備えており、本発明においては、特に限定されるものではないが、図4に示す如く、光源3aは平面型光源であることが好ましい。この実施形態においては、光源3aにはハロゲンランプによる白色光を照射する平面型光源を用いる。ここで平面型光源とは、平面光源ともいい、一般的に平面型光源、平面光源とされる光源を含むものであり、発光面がLEDや電球などの点状の点光源や棒状蛍光灯などの1次元的広がりを持つ線状の線光源とは異なる、2次元的広がりを持つ平面型の形状を有した光源を含むものである。ただし、光源自体の形状が平面型ではなく、点状、線状であったとしても、例えば拡散板等の手段によって光が平面状に照射される様な構造を有したものも含むものである。より具体的には、測定対象である中空糸膜モジュールのポッティング端面全体の反射光が撮像され得る程度の大きさに光を平面状に照射し得るものであればよい。光の拡散手段を有するものが一般的に好ましく、また、1辺の長さあるいは直径がポッティング端面の一辺の長さあるいは直径の2〜3倍程度、具体的にはポッティング端面の一辺の長さあるいは直径が45mmの場合、90〜135mm程度の形状を有する光源であることがより好ましい。光の拡散手段としては、シート状物に照射した光を透過させることにより拡散光を得る手段や、シート状物に照射した光を反射させることにより拡散光を得る手段が好ましい。そして前記光源3aからの入射光のモジュールMのポッティング端面に対する入射角θiと後述する撮像装置4に対するモジュールMのポッティング端面からの反射光の反射角θoとが等しくなるようにしてポッティング端面からの正反射光を得る。なお、中空糸膜モジュールMのポッティング端面に角度θの反りもしくは傾きがあるとすると(角度θについては、図4を参照)、正反射光の向きはθi−2θの角度を有する方向となるため、前記した1次元的広がりを持つ光源を使用した場合、図4の左側に示すように、正反射光を後述する撮像装置4で受光することができなくなることがある。このような箇所は暗い状態で撮像されるため、後述する中空糸膜検出装置による誤検出や見逃しの要因となる。
【0016】
しかし、2次元的広がりを持つ平面型光源を用いた実施形態とすると、図4の右側に示すように、前記角度θの反りもしくは傾きを有するポッティング端面に対してθi+2θの角度を有する入斜光を照射することが可能となるため、前記反射角θoで設置した後述する撮像装置4による正反射光の受光が可能となる。この際、平面型光源の寸法が縦、横ともにH、平面型光源の光軸中心位置と中空糸膜モジュールのポッティング端面との距離がDであった場合、受光可能な反りもしくは傾きによる角度θの範囲は図4に示す数式1にて求められる。
【0017】
この実施の形態においては、θは±10(°)であるが、Hは90(mm)、Dは110(mm)であるので、θの許容範囲は−10(°)から10(°)となり、中空糸膜モジュールMにポッティング端面に反りもしくは傾きがあった場合でも、光源3aからの照射光を後述する撮像装置4により受光することが可能で、見逃しや誤検出を防止することができる。
【0018】
電源3bは、後述する操作指令装置7からの指令によって光源3aのオン・オフおよび光量の調節を行う。
<撮像装置>
撮像装置4は、モジュール支持装置2上の中空糸膜モジュールMのポッティング端面を撮像して画像を得るためのもので、この実施形態では2048画素のラインセンサカメラを用いている。
【0019】
また、この実施形態においては、図3に示す、中空糸膜モジュールMのポッティング端面は、平坦な樹脂部分10は高輝度に、中空糸膜部分11や空洞となっている正常な中空糸膜の中空糸中空部分12は低輝度に撮像される。なお、不通糸欠陥は、中空糸中空部分12に樹脂が詰まっているため、前記樹脂部分10と同じように高輝度で撮像される。
<中空糸膜検出装置>
中空糸膜検出装置5は、前記撮像装置4によって得られた撮像画像と予め定めるモデル画像との相関をとって中空糸中空部分12が空洞になっている中空糸膜を検出し、前記中空部分が空洞になっている中空糸膜をマスクすることで中空部分が空洞になっている中空糸膜を欠陥検査対象から除外し、前記撮像画像について中空部分が閉塞している中空糸膜部分と樹脂部分との2値化処理を行うことで中空部分が閉塞している中空糸膜部分を前景、樹脂部分を背景として分類し、前記2値化処理画像から中空部分が閉塞している中空糸膜を検出し、その本数を測定する。この中空糸膜検出装置5の処理の流れは、図5に示すようになっている。ここでいうマスクとは、画像の一部を一様な輝度値で塗りつぶして隠すことであり、塗りつぶして隠した領域を検査範囲としないことを意味するものである。
【0020】
図5において、前記撮像装置4によって得られた画像と予め定めるモデル画像との相関をとる方法は、中空部分が空洞になっている中空糸膜をモデルにして予め作成したモデル画像の画素群と、撮像によって得られた画像の各画素を中心とした前記モデル画像に対応する領域を有する前記撮像画像内の画素群との正規化相関によって算出された相関度Rが、予め定める相関度閾値Rtより高い場合は中空部分が空洞になっている中空糸膜として検出するものである。ここで正規化相関とは、入力する画像の輝度値の大きさで相関度を正規化したものである。モデル画像の画素群をf、前記撮像画像の画素群をgとしたとき、相関度Rは図7に示す数式2にて求められる。なお、相関をとる方法には、相関法、ベクトル相関法などがあるが、光源3aから照射される光の光量の変動などによる前記撮像画像の輝度変化を吸収でき、かつ雑音に対する耐性の高い正規化相関法が望ましい。
【0021】
図5において選出された画素群に対してマスクを実施する方法は、選出された画素郡の各座標を中心とする、あらかじめ定められた領域、この実施形態の例では直径が中空糸膜の外径設計値Tdである円形のマーク領域を一様な輝度値で塗りつぶすものである。
【0022】
なお、前記マーク領域で囲まれた独立した樹脂領域が、樹脂で閉塞した中空糸膜の中空部分に形状が似ている場合、前記樹脂領域を樹脂で閉塞した中空糸膜の中空部分と誤検出することがある。これを中空部分が閉塞している中空糸膜本数に加算すると、実際よりも中空糸膜の本数を多く数えるため、実際は良品である中空糸膜モジュールMを欠陥品と誤判定する可能性がある。図8に示すように中空部分が空洞で正常な中空糸膜13に囲まれた領域14において、正常な中空糸膜間の距離Doと中空糸膜外径設計値Tdとで以下の関係
Do<Td
が成立すれば、正常な中空糸膜13に囲まれた領域には中空部分が樹脂で閉塞した中空糸膜15が存在しえない。そのため、図9に示すように正常な中空糸膜間の距離Doと中空糸膜外径設計値Tdとで以下の関係
Do≧Td
が成立する場合のみ、正常な中空糸膜13に囲まれた領域14には中空部分が樹脂で閉塞した中空糸膜15が存在する可能性がある。そのため、前記マーク領域に対して下記に定義する距離Dm
Dm=Td/2
で膨張・収縮処理を実施すると、正常な中空糸膜間の距離Doが中空糸膜外径設計値Tdよりも小さい領域は、隣り合うまたは向かい合うマークが正常な中空糸膜に囲まれた領域で結合してマークの一部となるため、前記独立した樹脂領域を中空部分が閉塞した中空糸膜として誤検出しない。
【0023】
また、前記マスクを一様な輝度値で塗りつぶす際、塗りつぶす輝度値を樹脂部分と同じ明るさ、この実施形態においては撮像画像のポッティング端面領域のうち前記マークと重ならない領域での輝度の最頻値、すなわち樹脂部分の輝度の最頻値とすることで、前記マーク領域と前記マーク領域で囲まれた独立した樹脂領域の境界で輝度差がなくなるため、前記独立した樹脂領域を不通糸として誤検出しなくなる。
【0024】
図5において、2値化処理を実施する方法は、中空部分が閉塞している中空糸膜部分を前景もしくは明領域に、樹脂部分を背景もしくは暗領域に分類するものである。この際、樹脂部分に輝度ムラなどが存在すると、一様な閾値による2値化処理を実施しても、中空部分が閉塞している中空糸膜部分と樹脂部分とを正確に分類できない場合がある。そこで、中空糸膜の膜厚部分のみを強調するバンドバスフィルタをかけることにより、中空糸膜の膜厚と比較して低周波成分である輝度ムラを除去することができるので、この画像に対して2値化処理を実施すると、中空糸膜の膜厚部分を前景領域もしくは明領域に、樹脂部分を背景もしくは暗領域に分類できる。
【0025】
図5において、中空部分が樹脂で閉塞した状態の中空糸膜の検出は、膜厚部分が前景領域もおしくは明領域、中空部分が背景領域もしくは暗領域に分類されていることから、中空部分に相当する面積を有する、背景領域もしくは暗領域を中空糸膜として検出する。
【0026】
図5において、中空糸膜がつぶれることによって閉塞している中空糸膜の検出は、中空糸膜の膜厚部分に相当する、前景領域もしくは明領域を中空糸膜として検出する。
<欠陥判定装置>
欠陥判定装置6は、前記中空糸膜検出装置5により得られた中空糸膜本数Nと予め定める中空糸膜本数閾値Ntとを比較し、中空糸膜本数Nが前記閾値Ntを上回れば前記中空糸膜モジュールMを欠陥品と判定する。この欠陥判定装置6の処理の流れは、図10に示すようになっている。
<操作指令装置>
操作指令装置7は、測定する中空糸膜モジュールMの外径、中空糸膜の外径および内径、モジュールの組み立て方法等の違いに対応し、中空糸膜検出装置5および欠陥判定装置6に指令を送り、中空糸膜モジュールMに適したモデル画像や相関度閾値Rt、マスクの直径Td、マスクの膨張収縮距離Dm、などを設定するとともに、光照射装置の電源3bに指令を送り、光源3aのオン・オフや光量の調節を行う。また、中空糸膜モジュールMの移動が撮像装置4による撮像に適した速度で行われるようにモジュール支持装置2に指令を送る。
<表示装置>
表示装置8は検査結果の表示、また不通糸部分にマーク15をプロットした画像の表示に用いられる。
<モジュール排出装置>
モジュール排出装置9は、前記欠陥判定装置6での判定に従い、良品の中空糸膜モジュールMのみを次工程へ排出する。
【0027】
本発明における中空糸モジュールの製造方法は、上記検査装置および方法を用いて端面の検査を行う工程を有するものであり、上記検査による不良品排除により、生産効率に優れたものである。また、本発明における中空糸モジュールは、かかる製造方法によって製造された、品質に優れたことを特徴とするものである。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
図2は光源(ここではモリテックス社製光ファイバライトガイドMPP90−1500S−2)と電源(ここではモリテックス社製ハロゲンランプ光源MHAB−150W−D−100V)から構成される光源照射装置3により中空糸膜モジュールMのポッティング端面に対して照射された光を撮像装置4(ここではNED社製ラインセンサカメラNSUF2014)によって8ビットモノクロ画像で撮影した、中空糸膜モジュールMのポッティング端面で、中空糸膜の本数はおよそ10000本である。この画像について、中空糸膜検出装置5にて図6に示すモデル画像により正規化相関処理を行うと、相関度Rが相関度閾値Rt(この例では0.5)を上回る中空糸膜候補の画素の座標情報が得られた。この座標群に対してそれぞれの座標を中心とする直径Td(ここでは14画素)の円を描画した図11に示すマーカ群画像を生成し、このマーカ群画像に対し、図12に示すようにあらかじめ定める距離Dm(ここでは中空糸膜直径の半分に相当する7画素)だけ膨張・収縮処理を実施した。そして、前記撮像画像のマーカに対応する部分を一様な輝度値(ここでは撮像画像から求められた輝度最頻値である162)で塗りつぶした図13の塗りつぶし画像を生成し、膜厚部分の太さ(ここでは2画素)を最も強調するように設定されたバンドパスフィルタにより中空糸膜の膜厚部分を強調し、2値化処理(ここでは閾値1)を実施すると、図14の2値化画像が得られる。この2値化画像から、図15に示すように独立した暗領域を中空部分が樹脂で閉塞した中空糸膜として検出し、図16に示すように独立した明領域を中空部分がつぶれた中空糸膜として検出し、その総数を検出本数Nとして測定した。この実施例では中空糸膜検出本数Nは12本であった。
【0030】
最後に、この中空糸膜検出本数Nと、中空糸膜モジュールMの中空糸膜本数閾値Nt(この例では11本)とを比較した結果、前記中空糸膜検出本数Nがかかる閾値Ntを上回ったため、表示装置8に中空糸膜検出結果をマーキングした図17、図18に示す画像が表示される(図18に示す画像は、図17に示す画像の拡大図である。)と共に、モジュールMは欠陥品と判定され、製造工程から除外された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態における装置の全体構成図である。
【図2】図1によって示した装置で撮像した画像である。
【図3】図2に示す画像の一部を拡大したものである。
【図4】図1に示した装置において、種々の光源3aからの光の入射およびポッティング端面の反りもしくは傾きがある場合の正反射の状態を示すための模式図である。
【図5】図1に示した中空糸膜検出装置5における処理の流れである。
【図6】図4に示した正規化相関処理において使用する正常糸のモデル画像である。
【図7】正規化相関による相関度Rの算出式を示したものである。
【図8】図4に示したマスク処理において中空部分が空洞の正常な中空糸膜に囲まれた領域に、中空部分が閉塞した中空糸膜が存在していないケースをモデル化した例である。
【図9】図4に示したマスク処理において中空部分が空洞の正常な中空糸膜に囲まれた領域に、中空部分が閉塞した中空糸膜が存在しているケースをモデル化した例である。
【図10】図1に示した欠陥判定装置6における処理の流れである。
【図11】図3に示した画像について正規化相関により検出した中空部分が空洞の正常な中空糸膜の検出位置に直径Tdの円を描画したマーカ群画像である。
【図12】図11に示したマーカ群画像に対して距離Dmの膨張・収縮処理を実施した結果である。
【図13】図3に示した画像に対し、図12に示した膨張・収縮画像に対応する領域を輝度最頻値で塗りつぶした画像である。
【図14】図13に示した画像に対し、バンドパスフィルタをかけた後に2値化処理を実施した画像である。
【図15】図14に示した画像から中空部分が樹脂で閉塞した中空糸膜として、独立した暗領域を検出した画像である。
【図16】図14に示した画像から、つぶれた中空糸膜として、独立した明領域を検出した画像である。
【図17】中空糸膜検出装置5による中空糸膜検出結果を、図2に示した画像に対してマーキングして表示した画像である。
【図18】図17に示す検出結果画像の一部を拡大したものである。
【符号の説明】
【0032】
M:中空糸膜モジュール
1:モジュール移載装置
2:モジュール支持装置
2a:モジュール支持機構
2b:モジュール走査機構
3:光照射装置
3a:光源
3b:電源
4:撮像装置
5:中空糸膜検出装置
6:欠陥判定装置
7:操作指令装置
8:表示装置
9:モジュール排出装置
10:樹脂部分
11:中空糸膜部分
12:中空糸中空部分
13:中空部分が空洞の正常な中空糸膜
14:中空部分が空洞の正常な中空糸膜に囲まれた独立した樹脂領域
15:中空部分が樹脂で閉塞した中空糸膜
R:正規化相関による相関度
Rt:相関度閾値
θ:ポッティング端面の反り、傾きの角度
θi:光源3aからポッティング端面への照射光の入射角
θo:ポッティング端面から撮像装置4への正反射光の出射角
D:光源3aに用いる平面型光源の光軸中心と中空糸膜モジュールMのポッティング端面との間の距離
Td:中空糸膜の外径設計値
Do:中空部分が空洞の正常な中空糸膜間の距離
Dm:マーカの膨張収縮距離
N:中空糸膜検出本数
Nt:中空糸膜本数閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜モジュールのポッティング端面に光源による光を照射し、前記端面からの反射光を撮像し、前記撮像によって得られた画像と中空部分が空洞状態の中空糸膜によるモデル画像との相関をとって中空部分が空洞になっている中空糸膜を検出し、前記中空部分が空洞になっている中空糸膜をマスクし、前記撮像画像について中空部分が閉塞している中空糸膜部分と樹脂部分との2値化処理を行い、前記2値化処理画像から前記中空部分が閉塞している中空糸膜を検出し、前記中空部分が閉塞している中空糸膜の本数が予め定める閾値を上回る場合は中空糸膜モジュールを不良品と判定することを特徴とする中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項2】
前記光源が平面型光源であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項3】
前記モデル画像の画素群と前記撮像によって得られた画像の各画素を中心とした前記モデル画像に対応する領域を有する前記画像内の画素群との正規化相関によって算出された相関度が、予め定める相関度閾値より高い場合に、中空部分が空洞状態の中空糸膜として検出することを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項4】
前記マスクにおいて、中空部分が空洞になっている中空糸膜の検出位置を中心とした予め定める領域をマークし、前記マーク群に対して予め定める距離の膨張収縮処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項5】
前記2値化処理画像が、マスク部分に対応する領域を樹脂部分と同じ輝度値で塗りつぶし、フィルタ処理により中空糸膜部分を強調し、中空糸膜部分と樹脂部分との2値化処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項6】
前記2値化処理画像から中空部分が閉塞した中空糸膜を検出する検査において、独立した背景領域もしくは暗領域を該中空部分の空洞が樹脂で閉塞した中空糸膜として検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項7】
前記2値化処理画像から中空部分が閉塞した中空糸膜を検出する検査において、前景領域もしくは明領域を中空糸膜がつぶれて閉塞状態となった中空糸膜として検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項8】
中空糸膜モジュールのポッティング端面に平面型光源による光を照射する手段と、前記端面からの反射光を撮像する手段と、前記撮像によって得られた画像と予め定めるモデル画像との相関をとって中空部分が空洞になっている中空糸膜を検出する手段と、前記中空部分が空洞になっている中空糸膜をマスクする手段と、前記撮像画像について中空部分が閉塞している中空糸膜部分と樹脂部分との2値化処理を行う手段と、前記2値化処理画像から前記中空部分が閉塞している中空糸膜を検出する手段と、前記中空部分が閉塞している中空糸膜の本数が予め定める閾値を上回る場合は中空糸膜モジュールを不良品と判定する手段とを備えていることを特徴とする中空糸膜モジュールの検査装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の検査方法を用いて不良品を除外することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法を用いて製造された中空糸膜モジュール。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−32601(P2008−32601A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207787(P2006−207787)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】