説明

二重に作用するチオフェン、ピロール、チアゾールおよびフラン抗高血圧症薬

1つの局面において、本発明は、式:


を有する化合物、またはその薬学的に受容可能な塩に関し、この式において:Ar、Z、R、RおよびRは、本明細書中で定義されるとおりである。これらの化合物は、ATレセプターアンタゴニスト活性およびネプリライシン阻害活性を有する。別の局面において、本発明は、このような化合物を含有する薬学的組成物;このような化合物を使用する方法;ならびにこのような化合物を調製するためのプロセスおよび中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、アンジオテンシンII 1型(AT)レセプターアンタゴニスト活性およびネプリライシン(neprilysin)阻害活性を有する新規な化合物に関する。本発明は、そうした化合物を含む薬学的組成物、そうした化合物を調製するためのプロセスおよび中間体、および高血圧症などの疾患を処置するためにそうした化合物の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
(技術水準)
降圧治療の目的は血圧を低下させ、心筋梗塞症、脳梗塞および腎疾患などの高血圧症関連の合併症を予防することである。併発症を伴わない(すなわち、危険因子、標的器官損傷または循環器疾患がない)高血圧症を有する患者のためには、血圧を低下させることが、同じ患者において原発性状態と同時に存在する状態である、心臓血管および腎臓の併存症の発症を予防することになることが望まれる。既存の危険因子または併存症を有するそうした患者のための治療目的は、合併している疾患の進行を遅らせ、死亡率を低下させることである。
【0003】
食生活および/またはライフスタイルの変更では十分にその血圧をコントロールできない患者のために、医師は通常薬理学的治療を処方する。一般に用いられる治療の種類は、利尿、アドレナリン阻害または血管拡張を促進するように作用するものである。どんな併存症があるかに応じて、しばしば薬物の組み合わせたものが処方される。
【0004】
高血圧症を処置するのに用いられる一般的な薬物には、5つの種類、すなわち、チアジドおよびヒドロクロロチアジドなどのチアジド様利尿薬、フロセミドなどのループ利尿薬ならびにトリアムテレンなどのカリウム保持性利尿薬を含む利尿薬;コハク酸メトプロロールおよびカルベジロールなどのβアドレナリン作用性レセプター遮断薬;アムロジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬;カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、エナラプリラート、リシノプリル、キナプリルおよびラミプリルなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター;ならびに、カンデサルタンシレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタンメドキソミル、テルミサルタンおよびバルサルタンなどのアンジオテンシンII 1型レセプター遮断薬(ARB)としても公知のATレセプターアンタゴニストがある。これらの薬物の組み合わせ、例えば、カルシウムチャネル遮断薬(アムロジピン)とACEインヒビター(ベナゼプリル)、または利尿薬(ヒドロクロロチアジド)とACEインヒビター(エナラプリル)も投与される。適切に使用されれば、これらの薬物はすべて、高血圧症の処置に有効である。それでも、高血圧症を目的とする新規な薬物においては、効能と耐性の両方についてさらなる改善がなされなければならない。多くの処置選択肢が可能であるにもかかわらず、最近の国民健康栄養調査(National Health And Nutrition Examination Survey)(NHANES)によれば、高血圧症をもつすべての処置患者の約50%でのみ、十分な血圧コントロールが達成されていることが示されている。さらに、利用可能な処置に伴う忍容性の問題に起因する患者の薬剤服用順守が不十分であることが処置の成功をさらに難しくしている。
【0005】
さらに、主な種類の血圧降下薬はそれぞれ何らかの欠点を有している。利尿薬は、脂質やグルコース代謝に悪影響を及ぼす恐れがあり、起立性低血圧症、低カリウム血症、および高尿酸血症を含む他の副作用を伴う。β遮断薬は疲労、不眠症およびインポテンスを引き起こす恐れがあり、いくつかのβ遮断薬は、心拍出量の低下や徐脈も引き起こす恐れがあり、これはある種の患者群においては望ましくないものであり得る。カルシウムチャネル遮断薬は広く用いられているが、他の種類の薬物と比べて、これらの薬物が致死性および非致死性心イベントをどれだけ効果的に低減させるかについては異論のあるところである。ACEインヒビターは、咳嗽を引き起こす恐れがあり、よりまれではあるが、発疹、血管性浮腫、高カリウム血症および腎機能障害などの副作用を起こす可能性がある。ATレセプターアンタゴニストは、ACEインヒビターと同等に効果的であり、咳の発生はそれほどひどくない。
【0006】
ネプリライシン(中性エンドペプチダーゼ、EC3.4.24.11)(NEP)は、脳、腎臓、肺、胃腸管、心臓および末梢血管系を含む多くの組織中に見られる内皮膜結合Zn2+メタロペプチダーゼである。NEPは、循環ブラジキニンおよびアンジオテンシンペプチドなどのいくつかの血管作動性ペプチドならびにナトリウム利尿ペプチド(後者のペプチドは血管拡張および利尿を含むいくつかの影響を及ぼす)の分解および不活性化に関係している。したがって、NEPは血圧の恒常性において重要な役割を果たす。NEPインヒビターは、潜在的な治療剤として研究されており、それらにはチオルファン、カンドキサトリルおよびカンドキサトリラートが含まれる。さらに、NEPとACEの両方を阻害する化合物も設計されており、それらにはオマパトリラト、ジェムパトリラト(gempatrilat)およびサムパトリラット(sampatrilat)が含まれる。バソペプチダーゼインヒビターと称される、この部類の化合物は非特許文献1に記載されている。
【0007】
Darrowらの特許文献1(Schering Corporation);Ksanderらの特許文献2;PuらのCanadian Cardiovascular Congress(2004年10月)で示されている要約;および非特許文献2;およびGlasspoolらの特許文献3(Novartis AG)に記載されているATレセプターアンタゴニスト/NEPインヒビターの組み合わせからも明らかなように、ATレセプター拮抗とNEP阻害を組み合わせると血圧降下の効能を増進させる機会があり得る。
【0008】
最近、Fengらの特許文献4(Novartis AG)は、ATレセプターアンタゴニスト化合物がNEPインヒビター化合物と非共有的に結合しているか、またはアンタゴニスト化合物が陽イオンによってインヒビター化合物と連結されているATレセプターアンタゴニストとNEPインヒビターの複合体を記載している。
【0009】
当技術分野での進歩にもかかわらず、現在は併用療法によってのみしか達成されない、血圧レベルのコントロールをもたらす多重作用機序を有する高い効能の単剤療法が依然として必要である。したがって、様々な高血圧用の薬剤が公知であり、様々な組み合わせで投与されているが、同一分子でATレセプターアンタゴニスト活性とNEP阻害活性の両方を有する化合物を提供することが非常に望ましい。これらの両方の活性を有する化合物は、それらが単一分子薬物動態を有するが2つの独立した作用方式によって降圧活性を示すことになるので、治療剤として特に有用であると期待される。
【0010】
さらに、そうした二重作用化合物は、ATレセプターをアンタゴナイズするか、かつ/またはNEP酵素を阻害することによって処置できる他の様々な疾患を処置するのにも有用であると期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第9213564号
【特許文献2】米国特許出願公開第20030144215号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/045663号
【特許文献4】国際公開第2007/056546号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Roblら、(1999年)Exp.Opin.Ther.Patents9巻(12号):1665〜1677頁
【非特許文献2】Gardinerら、(2006年)JPET319巻:340〜348頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、ATレセプターアンタゴニスト活性およびネプリライシン(NEP)酵素阻害活性を有することが分かった新規な化合物を提供する。したがって、本発明の化合物は、高血圧症および心不全などの状態を治療するための治療剤として有用かつ有利であると期待される。
【0014】
本発明の1つの局面は、式I:
【0015】
【化1】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関し、式Iにおいて:
Zは:
【0016】
【化2】

から選択されるチオフェン、ピロール、チアゾール、またはフランであり;
Arは:
【0017】
【化3】

から選択され;
R1は、-SO2NHC(O)R1a、テトラゾリル、-COOR1b
【0018】
【化4】

から選択され;
ここでR1aは、-C1〜6アルキル、-C0〜6アルキレン-OR、-C3〜7シクロアルキル、-C0〜5アルキレン-NR1bR1b、ピリジル、イソオキサゾリル、メチルイソオキサゾリル、ピロリジニル、モルホリニル、またはハロで置換されたフェニルであり;そして各R1bは独立して、Hおよび-C1〜6アルキルから選択され;
aは、0、1、または2であり;R2はFであり;
R3は、-C2〜5アルキルおよび-O-C1〜5アルキルから選択され;
R4は、-CH2-SR4a、-CH2-N(OH)C(O)H、-CH(R4b)C(O)NH(OR4d)、および-CH(R4b)COOR4cから選択され;ここでR4aは、Hまたは-C(O)-C1〜6アルキルであり;R4bは、Hまたは-OHであり;そしてR4cはH、-C1〜6アルキル、-C0〜6アルキレンモルホリン、-CH2OC(O)O-C1〜6アルキル、-CH(CH3)OC(O)O-C1〜6アルキル、-CH(CH3)OC(O)O-C3〜7シクロアルキル、または:
【0019】
【化5】

【0020】
であり;
R4dは、Hまたは-C(O)-R4eであり;そしてR4eは、-C1〜6アルキル、-C1〜6アルキル-NH2またはアリールであり;そして
R5は、-C1〜6アルキル、-CH2-フラニル、-CH2-チオフェニル、ベンジル、および1つ以上のハロ基、-CH3基、または-CF3基で置換されたベンジルから選択され;
ここでArの各環は、-OH、-C1〜6アルキル、-C2〜4アルケニル、-C2〜4アルキニル、-CN、ハロ、-O-C1〜6アルキル、-S-C1〜6アルキル、-S(O)-C1〜6アルキル、-S(O)2-C1〜4アルキル、フェニル、-NO2、-NH2、-NH-C1〜6アルキルおよび-N(C1〜6アルキル)2から独立して選択される1個〜3個の置換基で必要に応じて置換されており、ここで各アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、1個〜5個のフルオロ原子で必要に応じて置換されている。
【0021】
本発明の別の局面は、薬学的に受容可能なキャリアおよび本発明の化合物を含む薬学的組成物に関する。そうした組成物は、利尿薬、βアドレナリン作用性レセプター遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素インヒビター、ATレセプターアンタゴニスト、ネプリライシンインヒビター、非ステロイド系抗炎症薬、プロスタグランジン、抗脂質薬、抗糖尿病薬、抗血栓剤、レニンインヒビター、エンドセリンレセプターアンタゴニスト、エンドセリン変換酵素インヒビター、アルドステロンアンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシンインヒビター、バソプレシンレセプターアンタゴニストおよびその組み合わせなどの他の治療剤を必要に応じて含むことができる。したがって、本発明のさらに別の局面では、薬学的組成物は、本発明の化合物、第2の治療剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む。本発明の別の局面は、本発明の化合物および第2の治療剤を含む活性薬剤の組み合わせに関する。本発明の化合物は、追加の薬剤と一緒かまたはそれと別個に処方することができる。別個に処方する場合、薬学的に受容可能なキャリアを、追加の薬剤と一緒にすることができる。したがって、本発明のさらに別の局面は、本発明の化合物および第1の薬学的に受容可能なキャリアを含む第1の薬学的組成物と;第2の治療剤および第2の薬学的に受容可能なキャリアを含む第2の薬学的組成物を含む、薬学的組成物の組み合わせに関する。別の局面では、本発明は、例えば、第1の薬学的組成物と第2の薬学的組成物が別々の薬学的組成物である、そうした薬学的組成物(複数)を含むキットに関する。
【0022】
本発明の化合物は、ATレセプターアンタゴニスト活性とNEP酵素阻害活性の両方を有しており、したがって、ATレセプターをアンタゴナイズし、かつ/またはNEP酵素を阻害することによって処置される、疾患または障害に罹患した患者を処置するための治療剤として有用であると期待される。したがって、本発明の1つの局面は、ATレセプターをアンタゴナイズし、かつ/またはNEP酵素を阻害することによって処置される、疾患または障害に罹患した患者を処置する方法であって、患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。本発明の別の局面は、高血圧症または心不全を治療する方法であって、患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。本発明のさらに別の局面は、哺乳動物においてATレセプターをアンタゴナイズする方法であって、哺乳動物に、ATレセプターアンタゴナイズ量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。本発明のさらに別の局面は、哺乳動物においてNEP酵素を阻害する方法であって、哺乳動物にNEP酵素阻害量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0023】
特に興味のある本発明の化合物には、ATレセプターとの結合について約5.0以上の阻害定数(pK)を有する化合物;特に約6.0以上のpKを有する化合物;1つの実施形態では、約7.0以上のpKを有する化合物;特に約8.0以上のpKを有する化合物;さらに別の実施形態では、約8.0〜10.0の範囲のpKを有する化合物が含まれる。特に興味のある本発明の化合物には、約5.0以上のNEP酵素阻害濃度(pIC50)を有する化合物;1つの実施形態では、約6.0以上のpIC50を有する化合物;特に約7.0以上のpIC50を有する化合物;特に約7.0〜10.0の範囲のpIC50を有する化合物も含まれる。さらに興味のある化合物には、ATレセプターとの結合について約7.5以上のpKと約7.0以上のNEP酵素pIC50を有する化合物が含まれる。
【0024】
本発明の化合物はATレセプターアンタゴニスト活性およびNEP阻害活性をもつため、そうした化合物は研究用のツールとしても有用である。したがって、本発明の1つの局面は、研究用のツールとして本発明の化合物を用いる方法であって、本発明の化合物を用いて生物学的アッセイを実施することを含む方法に関する。本発明の化合物は、新規な化合物を評価するためにも使用することができる。したがって、本発明の別の局面は、生物学的アッセイで試験化合物を評価する方法であって、(a)試験化合物で生物学的アッセイを実施して第1のアッセイ値を得る工程と、(b)本発明の化合物で生物学的アッセイを実施して第2のアッセイ値を得る工程と(工程(a)は、工程(b)の前か、その後かまたはそれと同時に実施する);(c)工程(a)からの第1のアッセイ値と工程(b)からの第2のアッセイ値を比較する工程とを含む方法に関する。生物学的アッセイの例には、ATレセプター結合アッセイおよびNEP酵素阻害アッセイが含まれる。本発明のさらに別の局面は、ATレセプター、NEP酵素またはその両方を含む生物学的系またはサンプルを試験する方法であって、(a)生物学的系またはサンプルを本発明の化合物と接触させる工程と、(b)その化合物によって引き起こされた生物学的系またはサンプルに対する効果を判定する工程とを含む方法に関する。
【0025】
本発明のさらに別の局面は、本発明の化合物を調製するのに有用なプロセスおよび中間体に関する。したがって、本発明の別の局面は、本発明の化合物を調製するプロセスに関し、このプロセスは、式1の化合物と式2の化合物とをカップリングさせる工程であって:
【0026】
【化6】

【0027】
ここで:Ar*はAr-R1*を表わし、ここでR1*は、R1または保護形態のR1であり;そしてR4*は、R4または保護形態のR4を表わす、工程;および必要に応じて、R1*が保護形態のR1であり、そして/またはR4*が保護形態のR4である場合、その生成物を脱保護する工程を包含する。本発明の別の局面は、式Iの化合物の薬学的に受容可能な塩を調製するプロセスに関し、このプロセスは、遊離酸または遊離塩基の形態にある式Iの化合物を、薬学的に受容可能な塩基または酸と接触させる工程を包含する。他の局面において、本発明は、本明細書中に記載されるプロセスのうちのいずれかにより調製される生成物、およびこのようなプロセスにおいて使用される新規中間体に関する。本発明の1つの局面において、新規中間体は、本明細書中で定義されるような、式V、式VIまたは式VIIを有する。
【0028】
本発明のさらに別の局面は、医薬品の製造、特に血圧症または心不全を治療するのに有用な医薬品の製造のための式Iの化合物または薬学的に受容可能なその塩の使用に関する。本発明の別の局面は、哺乳動物におけるATレセプターをアンタゴナイズするかまたはNEP酵素を阻害するための本発明の化合物の使用に関する。本発明のさらに別の局面は、研究用のツールとしての本発明の化合物の使用に関する。本発明の別の局面および実施形態を本明細書で開示する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
1つの局面において、本発明は、式Iの化合物:
【0030】
【化7】

または薬学的に受容可能なその塩に関する。
【0031】
本明細書で用いる「本発明の化合物」という用語は、式II、式III、式IVおよび式Vで表わされる種などの式Iによって包含されるすべての化合物を含む。さらに、本発明の化合物はいくつかの塩基性基または酸性基(例えば、アミノ基またはカルボキシル基)も含むことができ、したがって、そうした化合物は、遊離塩基、遊離酸としてまたは種々の塩形態で存在することができる。そうしたすべての塩形態は本発明の範囲内にある。したがって、本発明の化合物は、プロドラッグとしても存在することができる。したがって、当業者は、本明細書でのある化合物への参照、例えば「本発明の化合物」または「式Iの化合物」への参照は、別段の指示のない限り、式Iの化合物ならびにその化合物の薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグを含むことを理解されよう。さらに、「または薬学的に受容可能なその塩および/またはプロドラッグ」という用語は、プロドラッグの薬学的に受容可能な塩などの塩およびプロドラッグを並べ替えたものすべてを含むものとする。さらに、式Iの化合物の溶媒和物も本発明の範囲内にある。
【0032】
式Iの化合物は1つまたは複数のキラル中心を含むことができ、したがって、これらの化合物は、様々な立体異性体として調製し、使用することができる。したがって、本発明は、別段の指示のない限り、ラセミ混合物、純粋な立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマー)、立体異性体を富化された混合物などに関する。本明細書において化学構造が、立体化学を含まず表わされている場合、可能なすべての立体異性体がそうした構造に含まれると理解されたい。したがって、例えば「式Iの化合物」という用語は、その化合物の可能なすべての立体異性体を含むものとする。同様に、本明細書において特定の立体異性体が示されるかまたは名前をつけられている場合、当業者は、別段の指示のない限り、本発明の組成物中に少量の他の立体異性体が存在している可能性があることを理解されよう。ただし、そうした他の異性体の存在によって、その組成物の全体としての有用性が排除されないという前提である。個々の鏡像異性体は、適切なキラル固定相もしくは支持体を用いたキラルクロマトグラフィー、または、それらを化学的にジアステレオマーに変換させ、クロマトグラフィーまたは再結晶化などの慣用的な手段でジアステレオマーを分離し、元の鏡像異性体を再生成させることを含む、当技術分野で周知の多くの方法によって得ることができる。さらに、適用できる場合、別段の指定のない限り、本発明の化合物のすべてのシス−トランスまたはE/Z異性体(幾何異性体)、互変異性体およびトポ異性体(topoisomeric form)は本発明の範囲に包含される。
【0033】
1つの可能なキラル中心は、R5が-C1〜6アルキルなどの基(例えば、-CH2CH(CH3)2)である場合に、-CHR4R5基の炭素に存在し得る。このキラル中心は、記号*によって示される炭素原子に存在する:
【0034】
【化8】

【0035】
本発明の1つの実施形態において、記号*によって識別される炭素原子は、(R)立体配置を有する。この実施形態において、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子において(R)立体配置を有するか、またはこの炭素原子において(R)立体配置を有する立体異性体形態が富化されている。別の実施形態において、記号*によって識別される炭素原子は、(S)立体配置を有する。この実施形態において、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子において(S)立体配置を有するか、またはこの炭素原子において(S)立体配置を有する立体異性体形態が富化されている。
【0036】
本発明の化合物はまた、例えば、R4が-CH(OH)COOHであってR5がベンジルである場合、-CHR4R5基に2つのキラル中心を有し得る。これらのキラル中心は、記号*によって識別される炭素原子および**によって識別される炭素原子に存在する:
【0037】
【化9】

【0038】
このような場合、4つの可能なジアステレオマーが存在し得る。例えば、両方の炭素原子が(R)立体配置を有し得、そしてこのような実施形態において、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子および**によって識別される炭素原子において(R)立体配置を有するか、またはこれらの原子において(R,R)立体配置を有する立体異性体形態が富化されている。別の実施形態において、両方の炭素原子が(S)立体配置を有し得、そしてこのような実施形態において、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子および**によって識別される炭素原子において(S,S)立体配置を有するか、またはこれらの原子において(S)立体配置を有する立体異性体形態が富化されている。なお別の実施形態において、記号*によって識別される炭素原子が(S)立体配置を有し得、そして記号**によって識別される炭素原子が(R)立体配置を有し得、そしてこのような実施形態において、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子および**によって識別される炭素原子において(S,R)立体配置を有するか、またはこれらの原子において(S,R)立体配置を有する立体異性体形態が富化されている。さらに別の実施形態において、記号*によって識別される炭素原子が(R)立体配置を有し得、そして記号**によって識別される炭素原子が(S)立体配置立体配置を有し得、そしてこのような実施形態において、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子および**によって識別される炭素原子において(R,S)立体配置を有するか、またはこれらの原子において(R,S)立体配置を有する立体異性体形態が富化されている。
【0039】
いくつかのケースでは、例えば高血圧用の薬剤として、本発明の化合物の治療活性を最適化するために、記号*によって識別される炭素原子および/または**で特定される炭素原子が特定の(R)立体配置、(S)立体配置、(R,R)立体配置、(S,S)立体配置、(S,R)立体配置、または(R,S)立体配置を有することが望ましくあり得る。
【0040】
本発明の化合物ならびにその合成において使用される化合物は、同位体で標識された化合物、すなわち、1つまたは複数の原子が自然界で支配的に見られる原子質量と異なる原子質量を有する原子を富化された化合物も含むことができる。式Iの化合物に組み込むことができる同位体の例には、例えばこれらに限定されないが、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、36Clおよび18Fが含まれる。
【0041】
式Iの化合物は、ATレセプターアンタゴナイズ活性およびNEP酵素阻害活性を有することが分かった。いくつかある特徴の中で特に、そうした化合物は、高血圧症などの疾患を処置するための治療剤として有用であると期待される。単一化合物中に二重の活性を組み込むことによって2つの治療を実施することができる、すなわち、単一活性成分を用いてATレセプターアンタゴニスト活性およびNEP酵素阻害活性を得ることができる。1つの活性成分を含む薬学的組成物は一般に、2つの活性成分を含む組成物より簡単に処方されるので、そうした単一成分組成物は、2つの活性成分を含む組成物より、顕著な利点を提供する。さらに、本発明の特定の化合物は、アンジオテンシンII 2型(AT)レセプターの阻害に対してよりATレセプターの阻害に対して、より選択性があることも分かった。これは治療上の利点をもつことができる特性である。
【0042】
本発明の化合物を呼ぶのに本明細書で使用する命名法を、本明細書の実施例で示す。この命名法は、市販のAutoNomソフトウェア(MDL、San Leandro、California)を用いて得られたものである。
【0043】
(代表的な実施形態)
以下の置換基および値は、本発明の様々な態様および実施形態の代表例を提供しようとするものである。これらの代表値は、そうした態様および実施形態をさらに定義し例示しようとするものであり、別の実施形態を排除しようとする、または本発明の範囲を限定しようとするものではない。この点に関して、特定の値または置換基が好ましいという表現は、特に示されていない限り、本発明から他の値または置換基を排除しようとするものでは決してない。
【0044】
1つの局面において、本発明は、式Iの化合物:
【0045】
【化10】

に関し、Zは:
【0046】
【化11】

から選択されるチオフェン、ピロール、チアゾール、またはフランを表わす。
【0047】
従って、本発明の化合物は、式II〜XI:
【0048】
【化12】

のようにも描かれ得る。
【0049】
Arは、:
【0050】
【化13】

から選択されるアリール基を表す。
【0051】
整数「a」は、0、1、または2であり、そしてR2基はフルオロである。例示的なフルオロ置換Ar部分としては:
【0052】
【化14】

が挙げられる。
【0053】
Arにおける各環はまた、-OH、-C1〜6アルキル、-C2〜4アルケニル、-C2〜4アルキニル、-CN、ハロ、-O-C1〜6アルキル、-S-C1〜6アルキル、-S(O)-C1〜6アルキル、-S(O)2-C1〜4アルキル、-フェニル、-NO2、-NH2、-NH-C1〜6アルキルおよび-N(C1〜6アルキル)2から独立して選択される、1個〜3個の置換基で置換され得、ここで各アルキル、アルケニルおよびアルキニルは必要に応じて、1個〜5個のフルオロ原子で必要に応じて置換される。
【0054】
1つの実施形態において、Arは:
【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

から選択されるアリール基を表す。
【0057】
1つの特定の実施形態において、これらの化合物は、式II〜XIを有する。
【0058】
R1は、-SO2NHC(O)R1a、テトラゾリル、-COOR1b
【0059】
【化17】

から選択される。
【0060】
R1a部分は、-C1〜6アルキル、-C0〜6アルキレン-OR、-C3〜7シクロアルキル、-C0〜5アルキレン-NRR、ピリジル、イソオキサゾリル、メチルイソオキサゾリル、ピロリジニル、モルホリニル、またはハロで置換されたフェニルである。各R1bは独立して、Hおよび-C1〜6アルキルから選択される。
【0061】
1つの特定の実施形態において、R1は、R1aが-C1〜6アルキルである-SO2NHC(O)R1aである。この実施形態の例としては、-SO2NHC(O)CH3およびSO2NHC(O)CH2CH3が挙げられる。1つの特定の実施形態において、R1は、1H-テトラゾール-5-イルまたは5H-テトラゾール-5-イルなどのテトラゾリルである。
【0062】
1つの特定の実施形態において、R1は、R1aが-C0〜6アルキレン-ORである-SO2NHC(O)R1aである。この実施形態の例としては、-SO2NHC(O)OCH3、-SO2NHC(O)OCH2CH3、-SO2NHC(O)CH2OCH3、-SO2NHC(O)CH2OH、-SO2NHC(O)CH(CH3)OH、-SO2NHC(O)C(CH3)2OH、-SO2NHC(O)CH2OCH3、および-SO2NHC(O)(CH2)2OCH3が挙げられる。
【0063】
別の特定の実施形態において、R1は、R1aが-C3〜7シクロアルキルである-SO2NHC(O)R1aである。この実施形態の例としては、-SO2NHC(O)-シクロプロピルが挙げられる。別の特定の実施形態において、R1は、R1aが-C0〜5アルキレン-NR1bR1bである-SO2NHC(O)R1aである。この実施形態の例としては、SO2NHC(O)NH(CH3)、-SO2NHC(O)N(CH3)2、-SO2NHC(O)NH(CH2CH3)、および-SO2NHC(O)C(CH3)2NH2が挙げられる。
【0064】
別の特定の実施形態において、R1は、R1aがピリジルである-SO2NHC(O)R1aであり、例えば、-SO2NHC(O)-2-ピリジル、-SO2NHC(O)-3-ピリジル、または-SO2NHC(O)-4-ピリジルである。「ピリジル」という用語は、式:
【0065】
【化18】

【0066】
の複素環式化合物を意味し、この化合物は、任意の利用可能な結合点に結合され、そして:
【0067】
【化19】

が挙げられる。
【0068】
別の特定の実施形態において、R1は、R1aがイソオキサゾリルである-SO2NHC(O)R1aであり、例えば、-SO2NHC(O)-3-イソオキサゾリル、-SO2NHC(O)-4-イソオキサゾリル、および-SO2NHC(O)-5-イソオキサゾリルである。「イソオキサゾリル」という用語は、式:
【0069】
【化20】

【0070】
の複素環式化合物を意味し、この化合物は、任意の利用可能な結合点に結合され、そして:
【0071】
【化21】

が挙げられる。
【0072】
1つの特定の実施形態において、R1は、R1aがメチルイソオキサゾリルである-SO2NHC(O)R1aであり、例えば、-SO2NHC(O)-3-イソオキサゾリル-5-メチルまたは-SO2NHC(O)-5-イソオキサゾリル-3-メチルである。「メチルイソオキサゾリル」という用語は、式:
【0073】
【化22】

【0074】
の複素環式化合物を意味し、この化合物は、任意の利用可能な結合点に結合され、そして:
【0075】
【化23】

が挙げられる。
【0076】
別の特定の実施形態において、R1は、R1aがピロリジニルである-SO2NHC(O)R1aであり、例えば、-SO2NHC(O)-1-ピロリジル、-SO2NHC(O)-2-ピロリジル、および-SO2NHC(O)-3-ピロリジルである。「ピロリジニル」という用語は、式:
【0077】
【化24】

【0078】
の複素環式化合物を意味し、この化合物は、任意の利用可能な結合点に結合され、そして:
【0079】
【化25】

が挙げられる。
【0080】
1つの特定の実施形態において、R1は、R1aがモルホリニルである-SO2NHC(O)R1aであり、例えば、-SO2NHC(O)-4-モルホリニルである。「モルホリニル」という用語は、式:
【0081】
【化26】

【0082】
の複素環式化合物を意味し、この化合物は、任意の利用可能な結合点に結合され、そして:
【0083】
【化27】

【0084】
が挙げられる。
【0085】
なお別の特定の実施形態において、R1は、R1aが必要に応じてハロで置換されたフェニルである-SO2NHC(O)R1aである。1つの実施形態において、このフェニル基は置換されておらず、そしてR1は-SO2NHC(O)フェニルである。別の実施形態において、このフェニル基は、1個または2個のハロ原子で置換されている。なお別の実施形態において、これらのハロ原子は、フルオロ原子である。この実施形態の例としては、-SO2NHC(O)-2-フルオロフェニルが挙げられる。
【0086】
さらに別の特定の実施形態において、R1は、1H-テトラゾール-5-イルである。別の特定の実施形態において、R1は、-COOR1b(例えば、-COOH、-COOCH2、および-COOC(CH3)3)である。なお別の実施形態において、R1は:
【0087】
【化28】

【0088】
である。
【0089】
そしてなお別の実施形態において、R1は:
【0090】
【化29】

【0091】
である。
【0092】
1つの実施形態において、R1は、-SO2NHC(O)CH3、-SO2NHC(O)CH2CH3、-SO2NHC(O)OCH3、-SO2NHC(O)OCH2CH3、-SO2NHC(O)CH2OCH3、-SO2NHC(O)CH2OH、-SO2NHC(O)CH(CH3)OH、-SO2NHC(O)C(CH3)2OH、-SO2NHC(O)CH2OCH3、-SO2NHC(O)(CH2)2OCH3、-SO2NHC(O)-シクロプロピル、-SO2NHC(O)NH(CH3)、-SO2NHC(O)N(CH3)2、-SO2NHC(O)NH(CH2CH3)、-SO2NHC(O)C(CH3)2NH2、-SO2NHC(O)-2-ピリジル、-SO2NHC(O)-4-ピリジル、-SO2NHC(O)-5-イソオキサゾリル、-SO2NHC(O)-3-イソオキサゾリル-5-メチル、-SO2NHC(O)-1-ピロリジル、-SO2NHC(O)-4-モルホリニル、-SO2NHC(O)フェニル、-SO2NHC(O)-2-フルオロフェニル、1H-テトラゾール-5-イル、-COOH、-C(O)OCH3
【0093】
【化30】

である。
【0094】
1つの特定の実施形態において、これらの化合物は、式II〜XIを有する。
【0095】
R3は、-C2〜5アルキルおよび-O-C1〜5アルキルから選択される。-C2〜5アルキルの例としては、-CH2CH3、-(CH2)2CH3、-CH(CH3)2、-(CH2)3CH3、-CH2CH(CH3)2、-C(CH3)3、-CH(CH3)-CH2CH3、および-(CH2)4CH3が挙げられる。1つの実施形態において、R3は、プロピル、エチル、またはブチルである。-O-C1〜5アルキルの例としては、-OCH3、-OCH2CH3、および-OCH(CH3)2が挙げられる。1つの実施形態において、R3はエトキシである。
【0096】
1つの実施形態において、R3は、プロピル、エチル、ブチル、またはエトキシである。1つの特定の実施形態において、これらの化合物は、式II〜XIを有する。
【0097】
R4は、-CH2-SR4a、-CH2-N(OH)C(O)H、-CH(R4b)C(O)NH(OR4d)、および-CH(R4b)COOR4cから選択される。R4a部分は、Hまたは-C(O)-C1〜6アルキルである。R4b部分は、Hまたは-OHである。R4c部分は、H、-C1〜6アルキル、-C0〜6アルキレンモルホリン、-CH2OC(O)O-C1〜6アルキル、-CH(CH3)OC(O)O-C1〜6アルキル、-CH(CH3)OC(O)O-C3〜7シクロアルキル、または:
【0098】
【化31】

【0099】
である。
【0100】
R4d部分は、Hまたは-C(O)-R4eであり、そしてR4eは、-C1〜6アルキル、-C1〜6アルキル-NH2またはアリールである。
【0101】
1つの特定の実施形態において、R4は-CH2-SR4aである。この実施形態の例としては、-CH2SHおよび-CH2-S-C(O)CH3が挙げられる。
【0102】
別の実施形態において、R4は-CH2N(OH)C(O)Hである。1つの特定の実施形態において、R4は、R4d部分がHである-CH(R4b)C(O)NH(OR4d)であり、例えば、-CH2C(O)NH(OH)または-CH(OH)C(O)NH(OH)である。別の特定の実施形態において、R4は、R4d部分が-C(O)-R4eである-CH(R4b)C(O)NH(OR4d)であり、例えば、-CH2C(O)NH-OC(O)CH3、-CH2C(O)NH-OC(O)-フェニル、および-CH2C(O)NH-OC(O)-CH(NH2)[CH(CH3)2]である。
【0103】
1つの実施形態において、R4は、R4bとR4cとの両方がHである-CH(R4b)COOR4cであり、すなわち、R4は-CH2COOHである。別の実施形態において、R4は、R4bが-OHでありかつR4cがHまたは-C1〜6アルキルである-CH(R4b)COOR4cであり、これらの例としては、-CH(OH)COOH、および-CH(OH)COOCH3が挙げられる。別の実施形態において、R4は、R4bがHでありかつR4cが-C1〜6アルキルである-CH(R4b)C(O)OR4cである。R4のこのような例としては、-CH2C(O)OCH3、-CH2C(O)OCH2CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)2、-CH2C(O)O(CH2)2CH3、-CH2C(O)O(CH2)3CH3、および-CH2C(O)O(CH2)4CH3が挙げられる。
【0104】
別の実施形態において、R4は、R4bがHでありかつR4cが-C0〜6アルキレンモルホリンである-CH(R4b)C(O)OR4cであり、例えば、R4は:
【0105】
【化32】

【0106】
であり得る。
【0107】
別の実施形態において、R4は、R4bがHでありかつR4cが-CH2OC(O)O-C1〜6アルキルまたは-CH(CH3)OC(O)O-C1〜6アルキルである、-CH(R4b)COOR4cである。このようなR4基の例としては、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)OCH2CH3および-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)OCH(CH3)2が挙げられる。別の実施形態において、R4は、R4bがHでありかつR4cが-CH(CH3)OC(O)O-C3〜7シクロアルキルである-CH(R4b)COOR4cである。このようなR4基の例としては、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)O-シクロヘキシルが挙げられる。別の実施形態において、R4は、R4bがHでありかつR4cが:
【0108】
【化33】

【0109】
である-CH(R4b)C(O)OR4cである。例えば、R4は:
【0110】
【化34】

【0111】
であり得る。
【0112】
1つの実施形態において、R4は、-CH2-SR4a、-CH2-N(OH)C(O)H、-CH(R4b)C(O)NH(OR4d)、および-CH(R4b)COOR4cから選択され;ここでR4a、R4c、およびR4dはHであり;そしてR4bは、式Iについて定義されるとおりである。このようなR4基としては、-CH2SH、-CH2N(OH)C(O)H、-CH2C(O)NH(OH)、-CH(OH)C(O)NH(OH)、-CH(OH)COOH、および-CH2COOHが挙げられる。別の局面において、これらの実施形態は、式II〜XIを有する。
【0113】
なお別の実施形態において、R4は、-CH2-SR4a、-CH(R4b)C(O)NH(OR4d)、および-CH(R4b)COOR4cから選択され;ここでR4aは-C(O)-C1〜6アルキルであり;R4cは、-C1〜6アルキル、-C0〜6アルキレンモルホリン、-CH2OC(O)O-C1〜6アルキル、-CH(CH3)OC(O)O-C1〜6アルキル、-CH(CH3)OC(O)O-C3〜7シクロアルキル、または:
【0114】
【化35】

【0115】
であり;
R4d部分は-C(O)-R4eであり;そしてR4bおよびR4eは、式Iについて定義されるとおりである。このようなR4基としては、-CH2-S-C(O)CH3、-CH2C(O)NH-OC(O)CH3、-CH2C(O)NH-OC(O)-フェニル、-CH2C(O)NH-OC(O)-CH(NH2)[CH(CH3)2]、-CH(OH)C(O)OCH3、-CH2C(O)OCH3、-CH2C(O)OCH2CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)2、-CH2C(O)O(CH2)2CH3、-CH2C(O)O(CH2)3CH3、-CH2C(O)O(CH2)4CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)OCH2CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)OCH(CH3)2、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)O-シクロヘキシル、
【0116】
【化36】

が挙げられる。
【0117】
本発明の1つの局面において、これらの化合物は、プロドラッグとして、または本明細書中に記載される合成手順における中間体として、特定の有用性を見出し得る。別の局面において、これらの実施形態は、式II〜XIを有する。
【0118】
R5は、-C1〜6アルキル、-CH2-フラニル、-CH2-チオフェニル、ベンジル、および1つ以上のハロ基、-CH3基、または-CF3基で置換されたベンジルから選択される。1つの特定の実施形態において、R5は-C1〜6アルキルである。この実施形態の例としては、i-ブチルが挙げられる。別の実施形態において、R5は、-CH2-フラン-2-イルまたは-CH2-フラン-3-イルなどの-CH2-フラニルである。1つの特定の実施形態において、R5は、-CH2-チオフェン-2-イルまたは-CH2-チオフェン-3-イルなどの-CH2-チオフェニルである。なお別の特定の実施形態において、R5はベンジルである。さらに別の実施形態において、R5は、1つ以上のハロ基、-CH3基、または-CF3基で置換されたベンジルである。この実施形態の例としては、2-ブロモベンジル、2-クロロベンジル、2-フルオロベンジル、3-フルオロベンジル、4-フルオロベンジル、2-メチルベンジル、および2-トリフルオロメチルベンジルが挙げられる。
【0119】
1つの実施形態において、R5は、1つ以上のハロ基、-CH3基、または-CF3基で置換されたベンジルであり、そしてR4は、R4bがHである-CH(R4b)COOR4cである。
【0120】
1つの実施形態において、R5は、i-ブチル、-CH2-フラン-2-イル、-CH2-チオフェン-3-イル、ベンジル、2-ブロモベンジル、2-クロロベンジル、2-フルオロベンジル、3-フルオロベンジル、4-フルオロベンジル、2-メチルベンジル、または2-トリフルオロメチルベンジルである。1つの特定の実施形態において、これらの化合物は、式II〜XIを有する。
【0121】
本発明の1つの実施形態において、II〜XIの化合物は、Arが:
【0122】
【化37】

であり;
R1が、-SO2NHC(O)CH3、-SO2NHC(O)CH2CH3、-SO2NHC(O)OCH3、-SO2NHC(O)OCH2CH3、-SO2NHC(O)CH2OCH3、-SO2NHC(O)CH2OH、-SO2NHC(O)CH(CH3)OH、-SO2NHC(O)C(CH3)2OH、-SO2NHC(O)CH2OCH3、-SO2NHC(O)(CH2)2OCH3、-SO2NHC(O)-シクロプロピル、-SO2NHC(O)NH(CH3)、-SO2NHC(O)N(CH3)2、-SO2NHC(O)NH(CH2CH3)、-SO2NHC(O)C(CH3)2NH2、-SO2NHC(O)-2-ピリジル、-SO2NHC(O)-4-ピリジル、-SO2NHC(O)-5-イソオキサゾリル、-SO2NHC(O)-3-イソオキサゾリル-5-メチル、-SO2NHC(O)-1-ピロリジル、-SO2NHC(O)-4-モルホリニル、-SO2NHC(O)フェニル、-SO2NHC(O)-2-フルオロフェニル、1H-テトラゾール-5-イル、-COOH、-C(O)OCH3
【0123】
【化38】

であり;
R3が、プロピル、エチル、ブチル、またはエトキシであり;
R4が、-CH2SH、-CH2-S-C(O)CH3、-CH2N(OH)C(O)H、-CH2C(O)NH(OH)、-CH2C(O)NH-OC(O)CH3、-CH2C(O)NH-OC(O)-フェニル、-CH2C(O)NH-OC(O)-CH(NH2)[CH(CH3)2]、-CH(OH)C(O)NH(OH)、-CH(OH)COOH、CH(OH)COOCH3、-CH2COOH、-CH2COOCH3、-CH2C(O)OCH2CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)2、-CH2C(O)O(CH2)2CH3、-CH2C(O)O(CH2)3CH3、-CH2C(O)O(CH2)4CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)OCH2CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)OCH(CH3)2、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)O-シクロヘキシル、
【0124】
【化39】

であり;
R5が、i-ブチル、-CH2-フラン-2-イル、-CH2-チオフェン-3-イル、ベンジル、2-ブロモベンジル、2-クロロベンジル、2-フルオロベンジル、3-フルオロベンジル、4-フルオロベンジル、2-メチルベンジル、または2-トリフルオロメチルベンジルである、
種、あるいはその薬学的に受容可能な塩である。
【0125】
さらに、興味のある特定の式Iの化合物には、以下の実施例で示すものならびにその薬学的に受容可能な塩が含まれる。
【0126】
(定義)
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを説明する場合、以下の用語は、別段の表示のない限り、以下の意味を有する。さらに、本明細書で用いる、単数形の「a」、「an」および「the」は、使用の文脈で明らかな別の表示がない限り、対応する複数形を含む。「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」という用語は包含的なものであり、そこで挙げた要素以外の追加の要素があり得ることを意味する。本明細書で使用する成分の量、分子量などの特性、反応条件その他を表すすべての数字は、別段の表示のない限り、すべての場合、「約」という用語で修飾されているものと理解されたい。したがって、本明細書で示す数字は、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を限定しようとするものではないが、各数字は少なくとも、報告される有効数字に照らし、かつ、通常の端数を丸める手法を適用して解釈されるべきである。
【0127】
「アルキル」という用語は、直鎖状であっても分岐状であってもよい一価の飽和炭化水素基を意味する。別段の定義のない限り、そうしたアルキル基は1〜10個の炭素原子を一般に含み、それらには、例えば、−C1〜4アルキル、-C1〜5アルキル、-C2〜5アルキル、-C1〜6アルキル、および−C1〜10アルキルが含まれる。代表的なアルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが含まれる。
【0128】
本明細書で使用する特定の用語について特定の炭素原子数を意図しようとする場合、その炭素原子数をその用語の前に下付き文字として示す。例えば、ぞれぞれ、「−C1〜6アルキル」という用語は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、「-C3〜7シクロアルキル」という用語は、3個〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味し、ここでその炭素原子は受容される任意の立体配置にある。
【0129】
「アルキレン」という用語は、直鎖状であっても分岐状であってもよい二価の飽和炭化水素基を意味する。別段の定義のない限り、そうしたアルキレン基は一般に0〜10個の炭素原子を含み、それらには、例えば−C0〜1アルキレン、−C0〜2アルキレン、−C0〜3アルキレン、−C0〜5アルキレン、−C0〜6アルキレン、−C1〜2アルキレン−および−C1〜12アルキレン−が含まれる。代表的なアルキレン基には、例えばメチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが含まれる。アルキレンという用語が、-C0〜5アルキレン-または-C0〜6アルキレン-などのゼロ個の炭素を含む場合、そうした用語は、炭素原子が存在しないことを含むこと、すなわち、アルキレンという用語で分離されている基(複数)を連結する共有結合以外にそのアルキレン基が存在しないこととすることを理解されたい。
【0130】
「アルコキシ」という用語は、アルキルが本明細書で定義する通りである式−O−アルキルの一価の基を意味する。別段の定義のない限り、そうしたアルコキシ基は一般に1〜10個の炭素原子を含み、それらには、例えば−O−C1〜4アルキルおよび-O-C1〜5アルキルが含まれる。代表的なアルコキシ基には、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシなどが含まれる。
【0131】
「シクロアルキル」という用語は一価の飽和炭素環炭化水素基を意味する。別段の定義のない限り、そうしたシクロアルキル基は一般に3〜10個の炭素原子を含み、それらには、例えば−C3〜5シクロアルキル、−C3〜6シクロアルキルおよびC3〜7シクロアルキルが含まれる。代表的なシクロアルキル基には、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。「シクロアルキレン」という用語は、−C4〜8シクロアルキレンなどの二価のアリール基を意味する。
【0132】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0133】
本明細書で用いる「式を有する」または「構造を有する」という語句は、限定しようとするものではなく、「含む(comprising)」という用語が通常用いられるのと同じ仕方で用いられる。
【0134】
「必要に応じて置換された」という用語は、対象の基が、置換されていなくても、1〜3回または1〜5回などの1回または複数回置換されていてもよいことを意味する。例えば、ハロ原子で「必要に応じて置換された」フェニル基は、置換されていなくても、1、2、3、4または5個のハロ原子を含んでもよい。
【0135】
「薬学的に受容可能な」という用語は、本発明で用いる場合、生物学的にもそれ以外も受容されないものではない物質を指す。例えば、「薬学的に受容可能なキャリア」という用語は、組成物中に混ぜ込むことができ、受容されない生物学的作用を引き起こすことも受容されない仕方でその組成物の他の成分と相互作用をすることもなく、患者に投与することができる物質を指す。そうした薬学的に受容可能な物質は一般に、毒物学的試験および製造試験で必要な基準に適合しており、それらには、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug administration)によって適切な不活性成分であると認定されている物質が含まれる。
【0136】
「薬学的に受容可能な塩」という用語は、哺乳動物などの患者に投与するのに受容される塩基または酸から調製される塩(例えば、所与の投与形態で受容される哺乳動物安全性を有する塩)を意味する。しかし、患者への投与を目的としていない中間体の塩などの本発明に包含される塩は、薬学的に受容可能な塩である必要はないことを理解されたい。薬学的に受容可能な塩は、薬学的に受容可能な無機または有機の塩基および薬学的に受容可能な無機または有機の酸から誘導することができる。さらに、式Iの化合物がアミン、ピリジンまたはイミダゾールなどの塩基性部分とカルボン酸またはテトラゾールなどの酸性部分の両方を含む場合、両性イオンが形成され、それらは、本明細書で用いる「塩」という用語に含まれる。薬学的に受容可能な無機塩基から誘導される塩には、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜マンガン、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛の塩などが含まれる。薬学的に受容可能な有機塩基から誘導される塩には、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどを含む第1、第2および第3アミンの塩が含まれる。薬学的に受容可能な無機酸から誘導される塩には、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩が含まれる。薬学的に受容可能な有機酸から誘導される塩には、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸および3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルクロン酸(glucoronic)、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロチン酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸(camphosulfonic acid)、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸)、キシナホ酸などの塩が含まれる。
【0137】
「その保護(された)誘導体」という用語は、その化合物の1つまたは複数の官能基が、保護または封鎖基によって、望ましくない反応を受けることから保護または封鎖されている、指定された化合物の誘導体を意味する。保護され得る官能基の例には、例えばカルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基が含まれる、などである。カルボキシ基のための代表的な保護基には、エステル(p−メトキシベンジルエステルなど)、アミドおよびヒドラジドが含まれ;アミノ基のためには、カルバメート化(t−ブトキシカルボニルなど)およびアミド;ヒドロキシル基のためには、エーテルおよびエステル;チオール基のためには、チオエーテルおよびチオエステル;カルボニル基のためには、アセタールおよびケタールなどが含まれる。そうした保護基は当業者に周知であり、例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第4版、Wiley、New York、2006年、およびそこに引用された文献に記載されている。
【0138】
本明細書で用いる「プロドラッグ」という用語は、生理学的条件下、例えば正常な代謝過程によって体内でその活性な形態に変換される、薬物の不活性な(または著しく活性が低い)前駆体を意味するものとする。この用語は、最終脱保護段階より前に作ることができる式Iの化合物の特定の保護誘導体も含むものとする。そうした化合物は、ATおよび/またはNEPで薬理学的活性をもたないかもしれないが、経口または非経口で投与し、その後、体内で代謝されて、ATおよび/またはNEPで薬理学的に活性な本発明の化合物を生成することができる。したがって、式Iの化合物のすべての保護誘導体およびプロドラッグは本発明の範囲に含まれる。遊離のカルボキシル基、スルフヒドリル基またはヒドロキシ基を有する式Iの化合物のプロドラッグは、当技術分野で周知の技術によって容易に合成することができる。次いで、これらのプロドラッグ誘導体は、加溶媒分解によるかまたは生理学的条件下で変換されて遊離のカルボキシル化合物、スルフヒドリル化合物および/またはヒドロキシ化合物となる。プロドラッグの例には、C1〜6アルキルエステルおよびアリール−C1〜6アルキルエステル、炭酸エステル、ヘミエステル、リン酸エステル、ニトロエステル、硫酸エステルを含むエステル、スルホキシド、アミド、カルバメート、アゾ化合物、ホスファミド、グリコシド、エーテル、アセタール、ケタールおよびジスルフィドが含まれる。1つの実施形態では式Iの化合物は遊離のスルフヒドリルまたは遊離のカルボキシルを有し、プロドラッグはそのエステル誘導体である、すなわち、プロドラッグは、−SC(O)CHなどのチオエステルまたは−C(O)OCHなどのエステルである。
【0139】
「溶媒和物」という用語は、溶質、例えば式Iの化合物または薬学的に受容可能なその塩の1つまたは複数の分子と、溶媒の1つまたは複数の分子によって形成される複合体または凝集体を意味する。そうした溶媒和物は一般に、実質的に一定の溶質と溶媒のモル比を有する結晶性固体である。代表的な溶媒の例には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが含まれる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0140】
「治療有効量」という用語は、それを必要とする患者に投与したとき処置を達成するのに十分な量、すなわち、所望の治療効果を得るのに必要な薬物の量を意味する。例えば、高血圧症を処置するための治療有効量は、例えば、高血圧症の症状を低減、抑制、排除または防止するか、あるいは高血圧症の元にある原因を処置するのに必要な化合物の量である。1つの実施形態では、治療有効量は、血圧を低下させるのに必要なその薬物の量、または正常な血圧を維持するのに必要な薬物の量である。他方、「有効量」という用語は、望ましい結果を得るのに十分な量を意味し、その結果は必ずしも治療結果である必要はない。例えば、ATレセプターを含む系を検討する場合、「有効量」は、そのレセプターをアンタゴナイズするのに必要な量であってよい。
【0141】
本明細書で用いる「治療する(treating)」または「治療(treatment)」という用語は、以下の:(a)疾患または医学的状態(medical condition)が生じることを防止すること、すなわち患者の予防処置;(b)患者の疾患または医学的状態を排除するかまたはその退縮をもたらすことなどにより、その疾患または医学的状態を改善すること;(c)患者の疾患または医学的状態の進行を遅延させるかまたはその進行を止めることなどにより、疾患または医学的状態を抑制すること;あるいは、(d)患者の疾患または医学的状態の症状を緩和させることの1つまたは複数を含む、哺乳動物(特にヒト)などの患者における疾患または医学的状態(高血圧症など)を処置することまたは処置を意味する。例えば、「高血圧症を処置する」という用語は、高血圧症を発症するのを予防し、高血圧症を改善し、高血圧症を抑制し、高血圧症の症状を緩和する(例えば、血圧を低下させる)ことを含む。「患者」という用語は、処置もしくは疾患予防を必要としているか、または特定の疾患もしくは医学的状態の疾患予防もしくは処置を現在施されているヒトなどの哺乳動物、ならびに、本発明の化合物が、アッセイ、例えば動物モデルで評価されるかまたは使用されている試験対象を含むものとする。
【0142】
本明細書で使用するすべての他の用語は、それに属する技術分野の技術者によって理解されているようなその通常の意味を有するものとする。
【0143】
(一般的な合成手順)
本発明の化合物は、以下の一般的方法、実施例で示す手順を用いる、または当業者に公知の他の方法、試薬および出発物質を用いることによって、市場の供給者(例えば、Sigma-Aldrich、およびFluka Riedel-de Haenなど)から購入される容易に入手可能な出発物質から調製することができる。以下の手順は本発明の特定の実施形態を例示し得るが、本発明の別の実施形態は、同じかもしくは同様の方法を用いるか、または当業者に公知の他の方法、試薬および出発物質を用いて同様に調製することができることを理解されたい。典型的または好ましいプロセス条件(例えば、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられている場合、別段の言及のない限り、他のプロセス条件も用いることができることも理解されよう。最適の反応条件は、具体的な反応物、溶媒および使用する量などの種々の反応パラメーターに応じて一般に変わることになるが、当業者は、慣用的な最適化手法を用いて適切な反応条件を容易に決定することができる。
【0144】
さらに、当業者に明らかなように、特定の官能基が望ましくない反応を受けることを阻止するために、慣用的な保護基が必要とされ得るか、またはそれが望ましくあり得る。特定の官能基に適した保護基、ならびに、そうした官能基の保護および脱保護に適した条件および試薬の選択は当該分野において周知である。望むなら、本明細書で説明する手順で例示されるもの以外の保護基を用いることができる。例えば、多くの保護基、ならびにその導入および除去が、T.W.Greene and G.M.Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第4版、Wiley、New York、2006年、およびそこに引用された文献に記載されている。より具体的には、以下の略語および試薬を以下に示すスキームにおいて使用する。
【0145】
は「アミノ保護基」を表し、これは、アミノ基での望ましくない反応を阻止するのに適した保護基を意味するために本明細書で使用する用語である。代表的なアミノ保護基には、これらに限定されないが、t−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)などが含まれる。P基を除去するために標準的な脱保護の手法が用いられる。例えば、BOC基は、DCM中のTFAまたは1,4−ジオキサン中のHClなどの酸性試薬を用いて除去することができ、一方でCbz基は、アルコール性溶媒中、H(1気圧)、10%Pd/Cなどの接触水素化条件(「H/Pd/C」)を用いることによって除去することができる。
【0146】
は「カルボキシ保護基」を表し、これは、カルボキシ基での望ましくない反応を阻止するのに適した保護基を意味するために本明細書で使用する用語である。代表的なカルボキシ保護基には、これらに限定されないが、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などが含まれる。P基を除去するために標準的な脱保護の手法および試薬が用いられ、それは、どの基を使用するかによって変わり得る。例えば、Pがメチルまたはエチルである場合には水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムが一般に使用され、Pがt−ブチルである場合にはTFAまたはHClなどの酸が一般に使用され、Pがベンジルである場合H/Pd/Cが使用され得る。
【0147】
は「チオール保護基」を表し、これは、チオール基での望ましくない反応を阻止するのに適した保護基を意味するために本明細書で使用する用語である。代表的なチオール保護基には、これらに限定されないが、エーテル、−C(O)CHなどのエステルなどが含まれる。P基を除去するために標準的な脱保護の手法、ならびにNaOH、第一アルキルアミンおよびヒドラジンなどの試薬が用いられる。
【0148】
は「テトラゾール保護基」を表し、これは、テトラゾール基での望ましくない反応を阻止するのに適した保護基を意味するために本明細書で使用する用語である。代表的なテトラゾール保護基には、これらに限定されないが、トリチルおよびジフェニルメチルが含まれる。標準的な脱保護の手法、およびDCM中のTFAまたは1,4−ジオキサン中のHClなどの試薬を用いてP基を除去することができる。
【0149】
は「ヒドロキシル保護基」を表し、これは、ヒドロキシル基での望ましくない反応を阻止するのに適した保護基を意味するために本明細書で使用する用語である。代表的なヒドロキシル保護基には、これらに限定されないが、C1〜6アルキル;トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)およびtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)などのトリC1〜6アルキルシリル基を含むシリル基;ホルミル、アセチルおよびピバロイルなどのC1〜6アルカノイル基ならびにベンゾイルなどの芳香族アシル基を含むエステル(アシル基);ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)およびジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などのアリールメチル基などが含まれる。標準的な脱保護の手法および試薬を用いてP基を除去することができ、それは、どの基を使用するかによって変わり得る。例えば、Pがベンジルである場合にはH/Pd/Cが一般に使用されるが、Pがアシル基である場合にはNaOHが一般に使用される。
【0150】
は「スルホンアミド保護基」を表し、これは、スルホンアミド基での望ましくない反応を阻止するのに適した保護基を意味するために本明細書で使用する用語である。代表的なスルホンアミド保護基には、これらに限定されないが、t−ブチルおよびアシル基が含まれる。アシル基の例には、ホルミル基、アセチル基、フェニルアセチル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基およびピバロイル基などの脂肪族低級アシル基、ならびにベンゾイルおよび4−アセトキシベンゾイルなどの芳香族アシル基が含まれる。標準的な脱保護の手法および試薬を用いてP基が除去され、それは、どの基を使用するかによって変わり得る。例えば、Pがt−ブチルである場合にはHClが一般に使用されるが、Pがアシル基である場合にはNaOHが一般に使用される。
【0151】
さらに、Lは「離脱基」を表わすために用いられ、これは、求核置換反応などの置換反応において、別の官能基または原子に置き換わることができる官能基または原子を意味するために本明細書で使用する用語である。例を挙げると、代表的な離脱基には、クロロ基、ブロモ基およびヨード基;メシレート、トリフレート、トシレート、ブロシレート、ノシレートなどのスルホン酸エステル基;ならびにアセトキシ、トリフルオロアセトキシなどのアシルオキシ基が含まれる。
【0152】
これらのスキームで使用するのに適した塩基には、例示のためであってこれらに限定されないが、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン(Et3N)、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム(KOH)、カリウムt−ブトキシドおよび金属水素化物が含まれる。
【0153】
これらのスキームで使用するのに適した不活性希釈剤または溶媒には、例示のためであってこれらに限定されないが、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、1,4−ジオキサン、メタノール、エタノール、水などが含まれる。
【0154】
すべての反応は、約−78℃〜110℃の範囲内の温度、例えば室温で一般に実施され、そして他に記載されない限り、窒素雰囲気下で実施される。反応はそれが完了するまで、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(anal.HPLC)および/または液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)を用いてモニターすることができる。反応は数分で終わることもあるが、数時間、一般に1〜2時間、最大で48時間かかり得る。
【0155】
反応が完了したら、所望の生成物を得るために、得られた混合物または反応生成物をさらに処理することができる(例えば、抽出ならびに他の精製法(例えば、温度依存性結晶化、溶媒依存性結晶化、および沈殿)によって、精製され得る)。より具体的には、得られた混合物または反応生成物を以下の手順:濃縮および分配(例えば、EtOAcと水との間、またはEtOAc中の5%THFと1Mリン酸との間で);抽出(例えば、EtOAc、CHCl、DCM、クロロホルムを用いて);洗浄(例えば、NaCl飽和水溶液、NaHCO飽和水溶液、NaCO(5%)、CHClまたは1M NaOHを用いて);乾燥(例えば、MgSOもしくはNaSOを用いて、または減圧下で);濾過;結晶化(例えば、EtOAcやヘキサンから);濃縮(例えば、減圧下で);および/または精製(例えば、シリカゲルクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、分取HPLC、逆相HPLCまたは結晶化)のうちの1つまたは複数にかけることができる。
【0156】
例示として、式Iの化合物、ならびにそれらの塩、溶媒和物、およびプロドラッグは、化合物(1)を化合物(2)とカップリングさせることにより調製され得る:
【0157】
【化40】

Ar*は、Ar-R1*を表し、ここでR1*は、R1または保護形態のR1である。例えば、-テトラゾリル-BOCであるか、または-CNなどの、引き続いてテトラゾリルに転換されるR1の前駆体である。R4*は、R4または保護形態のR4を表す。従って、R1*がR1を表し、そしてR4*がR4を表わす場合、この反応は、このカップリング工程後に完了する。他方、R1*が保護形態のRを表し、かつ/またはR4*が保護形態のRを表わす場合、続く一括または逐次での脱保護工程によって非保護化合物が得られる。同様に、R1*がRの前駆体を表わす場合、続く転換工程によって所望の化合物が得られる。
【0158】
適切なカルボン酸/アミンカップリング試薬には、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)などが含まれる。カップリング反応は、DIPEAなどの塩基の存在下、不活性希釈剤中で行い、慣用的なアミド結合形成条件下で実施する。必要であれば、標準的な脱保護技術および試薬を引き続いて使用して、あらゆる保護基を除去する(これらは使用される保護基の性質と共に変わる)。したがって、本発明の化合物を調製する1つの方法は、化合物(1)と化合物(2)とをカップリングさせ、R1*が保護形態のRでありかつ/またはR4*が保護形態のRである場合、必要に応じて脱保護する工程を実施し、これによって式Iの化合物または薬学的に受容可能なその塩を形成させることを含む。
【0159】
代表的に、化合物(1)(1当量)、DIPEA(5〜6当量)およびHATU(1当量)のDMF中の溶液が撹拌されて、その酸を予備活性化させる。次いで、化合物(2)(1当量)が添加され、そしてこの混合物が、その反応が完了するまで撹拌される。この反応はまた、1NのHClを添加することによりクエンチされ得る。
【0160】
化合物(1)を調製する種々の方法が、以下に記載される。これらのスキームは、特定のAr基およびR1〜5基を図示し得るが、これらは説明の目的のみであり、そして他のAr基およびR1〜5基を有する化合物(1)が、適切な試薬を代わりに用いること、および/または当業者に公知であるようにプロセスを改変することによって、類似の様式で調製され得ることが理解される。
【0161】
(化合物(1))
式IIについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0162】
【化41】

【0163】
エチニルトリメチルシランおよび適切な臭素化アリール基(Ar-Br)を、Cheら(2000)JACS 122(46):11380-11392に記載されるように、例えば、触媒(例えば、ヨウ化銅(I)と組み合わせたジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II))および塩基(例えば、トリエチルアミン)を使用して、カップリングさせる。次いで、Al-Hassan(1990)Journal of Organometallic Chemistry 395(2):227-229に記載されるように、KOHを添加する。次いで、得られた化合物を、Freeman(1994)JOC 59:4350-54に記載されるように、ブロモプロピオン酸エチルエステルとカップリングさせる。次いで、この生成物を所望のチオール(R3-SH)と、水酸化カリウムおよびジメチルスルホキシドの存在下で反応させて(これもFreeman(前出)に記載されるように)、チオフェンを形成させ、続いてそのカルボキシレートの脱保護を行う。
【0164】
式IIIについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0165】
【化42】

所望のチオフェン(R3-チオフェン)を、アルキルリチウム試薬(例えば、n-ブチルリチウム)とジエチルエーテル中で反応させ、続いてDMFで処理する(Nakayamaらに対する米国特許出願公開第2003/0092720号を参照のこと)。得られたアルデヒドを、Nishidaらに対する米国特許出願公開第2009/0156642号に記載されるように臭素化する。次いで、ジオキソラン化合物を、p-トルエンスルホン酸とのエタンジオール中での反応により形成させる。臭化亜鉛アリール基(Ar-ZnBr)を、Kailaらに対する米国特許出願公開第2005/0101569号に記載されるように、対応する臭素化アリール基(Ar-Br)を塩化亜鉛で処理することにより、形成する。次いで、このジオキソランを、臭化亜鉛アリール基と、パラジウムで触媒されるNegishiカップリング反応で、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)を使用してカップリングさせる(例えば、Brandishら、米国特許出願公開第2009/0306169号を参照のこと)。次いで、このジオキソランを、Egbertsonら(1999)JMC 42(13):2409-2421)に記載されるように、カルボキシレートに転換させる。
【0166】
式IVについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0167】
【化43】

4-プロピオニル-1H-ピロール-2-カルボン酸を所望のシラン((R3)3-Si-H)と、TFAなどの適切な溶媒中で反応させ、そして得られた化合物を臭素化する(Fangらに対する米国特許出願公開第2005/0143443号を参照のこと)。次いで、硫酸中でのメタノールとの反応によりエステルを形成させ、次いで所望の臭化亜鉛アリール基と、パラジウムで触媒されるNegishiカップリング反応で反応させ、続いて式IIIについての化合物(1)の合成に記載されるように、このジオキソランをカルボキシレートに転換する。
【0168】
式Vについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0169】
【化44】

N-(トシルメチル)ホルムアミドを、Barendseの米国特許第4,922,016号に記載されるように、p-トリルスルフィン酸ナトリウムから調製し、次いでトリエチルアミンなどの塩基中で塩化ホスホリルで処理して、メチレン(トルエン-4-スルホニルメチル)アミンを得る(van Leusenら(1977)JOC 42(7):1153-1159を参照のこと)。次いで、このアミンを、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド、1-ブチルヨージド、ジクロロメタンおよび水酸化ナトリウムの溶液で処理して、2-(トルエン-4-スルホニル)ヘキサンニトリルを得、これをアクリル酸エチルエステルと、カリウムt-ブトキシドの存在下で反応させて、所望のピロールを得る(Kajinoらに対する米国特許出願公開第2008/0139639号を参照のこと)。次いで、1当量ずつのピロールおよび所望のAr*-CH1-L基を、2当量のK2CO3と、DMFなどの溶媒中で室温で合わせて、保護された中間体を形成する。次いで、カルボキシレートの脱保護は、所望の化合物を与える。Ar*-CH1-Lの例としては、5-(4’-ブロモメチル-ビフェニル-2-イル)-1-トリチル-1H-テトラゾールおよび4'-ブロモメチルビフェニル-2-スルホン酸1-ジメチルアミノメタ-(E)-イリデンアミドが挙げられる。これらの化合物の合成は、実施例の節に記載されており、そして本発明の範囲内である他のバリエーションは、当業者によって容易に調製され得る。
【0170】
式VIについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0171】
【化45】

1H-ピロール-2-カルボン酸メチルエステルは、Murakamiら(1988)Heterocycles 27(8):1855-1860に記載されるように、4-ブロモ-2-フルオロベンゾイルクロリドでのアシル化をAlCl3の存在下で受ける。得られたアリールブロミドは、フェニルボロン酸と、二相のトルエン/エタノール/水性炭酸ナトリウム溶媒系中で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどの適切なパラジウム触媒を用いて反応する(Subasingheらに対する米国特許出願公開第2004/0009995号を参照のこと)。次いで、このビアリール生成物は、Balsaminiら(1998)JMC 41(6):808-820に記載されるように、N-ブロモスクシンイミドでクロロホルムなどの溶媒中で臭素化される。次いで、この生成物は、Ohtaら、(1990)Heterocycles 30(2):875-884)に記載されるように、テトラn-プロピルスズでのアルキル化を起こし、続いてTFAなどの適切な溶媒中で、トリエチルシランで処理される(Fangらに対する米国特許出願公開第2005/0143443号を参照のこと)。
【0172】
式VIIについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0173】
【化46】

1H-ピロール-3-カルボン酸メチルエステルは、臭化カリウムおよびDMFなどの溶媒の存在下で、n-プロピルブロミドでアルキル化される。次いで、この生成物は、Friedel-Crafts反応の条件下で、4-ブロモ-2-フルオロベンゾイルクロリドでのアシル化を受ける(Laforestらに対する米国特許第4,194,003号を参照のこと)。得られたアリールブロミドは、式VIについての化合物(1)の合成に記載されるように、フェニルボロン酸と反応する。次いで、このビアリール生成物は、式VIについての化合物(1)の合成に記載されるように、トリエチルシランで処理される。
【0174】
式VIIIについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0175】
【化47】

4-プロピルチアゾール-2-カルボン酸メチルエステルを、Neurogen Corp.に対するWO2006/89076に記載されるように臭素化する。次いで、このチアゾールを、式IIIについての化合物(1)の合成に記載されるように、所望の臭化亜鉛アリール基と、パラジウムで触媒されるNegishiカップリング反応でカップリングさせる。
【0176】
式IXについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0177】
【化48】

4-ブロモチアゾール-2-カルボン酸メチルエステルを、式IIIについての化合物(1)の合成に記載されるように、所望の臭化亜鉛アリール基と、パラジウムで触媒されるNegishiカップリング反応でカップリングさせる。次いで、この生成物を、Neurogen Corp.に対するWO2006/89076に記載されるように臭素化し、続いて式VIについての化合物(1)の合成に記載されるようにアルキル化する。
【0178】
式Xについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0179】
【化49】

4-ブロモフラン-2-カルボン酸メチルエステルを、式IIIについての化合物(1)の合成に記載されるように、所望の臭化亜鉛アリール基と、パラジウムで触媒されるNegishiカップリング反応でカップリングさせる。次いで、この生成物を、Fujiiらに対する米国特許第7,514,452号に記載されるように臭素化し、続いて式VIについての化合物(1)の合成に記載されるように、アルキル化する。
【0180】
式XIについての化合物(1)は、以下のスキームによって調製され得る:
【0181】
【化50】

4-ブロモフラン-2-カルボン酸メチルエステルを、式VIについての化合物(1)の合成において記載されたようにアルキル化する。次いで、この生成物を、Fujiiらに対する米国特許第7,514,452号に記載されるように臭素化し、続いて式IIIについての化合物(1)の合成に記載されるように、所望の臭化亜鉛アリール基と、パラジウムで触媒されるNegishiカップリング反応でカップリングさせる。
【0182】
(化合物(2))
化合物(2)は、文献(例えば、Neustadtら(1994)J.Med.Chem.37:2461-2476およびMoreeら(1995)J.Org.Chem.60:5157-69)に記載される技術に従うことによって、容易に合成される。このような化合物の例およびその合成はまた、Choiらに対する米国特許出願公開第2008/0188533号、Allegrettiらに対する米国特許出願公開第2008/0269305号、Allegrettiらに対する米国特許出願公開第2008/0318951号、Choiらに対する米国特許出願公開第2009/0093417号、Choiらに対する米国特許出願公開第2009/0149521号、およびAllegrettiらに対する米国特許出願公開第2009/0023228号に記載されている。これらの全開示は、本明細書中に参考として援用される。化合物(2)の他の例としては、(2R,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニル酪酸;3-アミノ-4-フェニル酪酸;(R)-3-アミノ-4-(2-クロロフェニル)ブタン酸;および(R)-3-アミノ-4-(2-トリフルオロメチルフェニル)ブタン酸;(R)-3-アミノ-4-(2-フルオロフェニル)ブタン酸が挙げられる。これらの全ては、塩酸塩であり得る。
【0183】
本明細書で説明する特定の中間体は新規であると考えられ、したがって、このような化合物は、本発明のさらなる局面として提供され、例えば、式V、式VIおよびの化合物VIIまたはその塩が挙げられ:
【0184】
【化51】

式Vにおいて、Ar*はAr-R1*であり;Ar、Z、R3、R4、およびR5は、式Iについて定義されたとおりであり;そしてR1*は、-SO2NH-P6またはテトラゾリル-P4であり;ここでP4はテトラゾール保護基であり、そしてP6はスルホンアミド保護基であり;
【0185】
【化52】

式VIにおいて、Ar、Z、R3、およびR5は、式Iについて定義されたとおりであり;R4*は、-CH2-S-P3、-CH2-N(O-P5)-C(O)H、-CH(R4b)C(O)NH(O-P5)、または-CH(R4b)COO-P2であり;そしてR4bは式Iについて定義されたとおりであり;ここでP2はカルボキシ保護基であり、P3はチオール保護基であり、P5はヒドロキシル保護基であり;そして
【0186】
【化53】

式VIIにおいて、Ar*はAr-R1*であり;Ar、Z、R3、およびR5は、式Iについて定義されたとおりであり;R1*は、-SO2NH-P6またはテトラゾリル-P4であり;R4*は、-CH2-S-P3、-CH2-N(O-P5)-C(O)H、-CH(R4b)C(O)NH(O-P5)、または-CH(R4b)COO-P2であり;そしてR4bは式Iについて定義されたとおりであり;ここでP2はカルボキシ保護基であり、P3はチオール保護基であり、P4はテトラゾール保護基であり、P5はヒドロキシル保護基であり、そしてP6はスルホンアミド保護基である。従って、本発明の化合物を調製する別の方法は、式V、式VI、または式VIIの化合物を脱保護する工程を包含する。
【0187】
代表的な本発明の化合物またはその中間体を調製するための具体的な反応条件および他の手順に関するさらなる詳細は、以下に示す実施例において説明する。
【0188】
(有用性)
本発明の化合物はアンジオテンシンII 1型(AT)レセプターアンタゴニスト活性を有する。1つの実施形態では本発明の化合物は、ATレセプターの阻害に対してより、ATレセプターの阻害に対してより選択的である。本発明の化合物はネプリライシン(NEP)阻害活性も有する、すなわち、本発明の化合物は酵素基質活性を阻害することができる。別の実施形態では、本発明の化合物はアンジオテンシン変換酵素の阻害活性はそれほど示さない。式Iの化合物は、活性薬物であってもプロドラッグであってもよい。したがって、本発明の化合物の活性を論じる場合、そうした任意のプロドラッグは、代謝されると期待された活性を有することを理解されたい。
【0189】
ATレセプターについての化合物の親和性の1つの尺度は、ATレセプターと結合するための阻害定数(K)である。pK値は、Kの負の常用対数である。化合物がNEP活性を阻害する能力の1つの尺度は阻害濃度(IC50)である。これは、NEP酵素による、基質変換の最大半量阻害をもたらす化合物濃度である。pIC50値はIC50の負の常用対数である。ATレセプターアンタゴナイズ活性とNEP酵素阻害活性の両方を有する本発明の化合物は特に興味のあるものであり、それらには、ATレセプターで約5.0以上のpKを示し、NEPについて約5.0以上のpIC50を示すものが含まれる。
【0190】
1つの実施形態では、興味ある化合物は、ATレセプターで≧約6.0のpK、ATレセプターで≧約7.0のpKまたはATレセプターで≧約8.0のpKを有する。興味ある化合物は、NEPについて≧約6.0のpIC50またはNEPについて≧約7.0のpIC50を有するものも含む。別の実施形態では、興味ある化合物は、ATレセプターで約8.0〜10.0の範囲のpKを有し、NEPについて約7.0〜10.0の範囲のpIC50を有する。
【0191】
別の実施形態では、特に興味のある本発明の化合物は、ATレセプターと結合するための約7.5以上のpKおよび約7.0以上のNEP酵素pIC50を有する。別の実施形態では、興味ある化合物は約8.0以上のpKおよび約8.0以上のpIC50を有する。
【0192】
いくつかのケースでは、本発明の化合物は、二重活性を有してはいても、弱いATレセプターアンタゴニスト活性かまたは弱いNEP阻害活性のいずれかを有することができることに留意されたい。これらのケースでは、当業者は、これらの化合物がそれでも、それぞれ主にNEPインヒビターかまたはATレセプターアンタゴニストとしての有用性を有する、あるいは研究用のツールとしての有用性を有することを理解されよう。
【0193】
ATレセプター結合および/またはNEP阻害活性などの本発明の化合物の特性を判定するための例示的アッセイを実施例において説明するが、それには、例示のためであってこれらに限定されないが、ATおよびAT結合(アッセイ1で説明する)ならびにNEP阻害を測定するアッセイ(アッセイ2で説明する)が含まれる。有用な二次的アッセイには、ACE阻害(これもアッセイ2で説明する)およびアミノペプチダーゼP(APP)阻害(Sulpizioら、(2005年)JPET315巻:1306〜1313頁に記載されている)を測定するアッセイが含まれる。麻酔をかけたラットにおけるACE、ATおよびNEPについてのインビボでの阻害能力を評価するための薬力学的アッセイを、アッセイ3で説明する(Seymourら、(1985年)Hypertension7(補遺I):I−35〜I−42およびWigleら、(1992年)Can.J.Physiol.Pharmacol.70巻:1525〜1528頁も参照されたい)。ここで、AT阻害をアンジオテンシンII昇圧反応の阻害率%として測定し、ACE阻害をアンジオテンシンI昇圧反応の阻害率%として測定し、NEP阻害を尿中の環状グアノシン3’,5’−一リン酸(cGMP)出力の増大として測定する。有用なインビボでのアッセイには、ATレセプター遮断を測定するのに有用なレニン依存性高血圧症モデルである覚醒自然発生高血圧ラット(SHR)モデル(アッセイ4で説明する;Intenganら、(1999年)Circulation100巻(22号):2267〜2275頁およびBadyalら、(2003年)Indian Journal of Pharmacology 35巻:349〜362頁も参照されたい)、およびNEP活性を測定するのに有用な容積依存的高血圧症モデルである覚醒デスオキシコルチコステロン酢酸塩(DOCA塩)ラットモデル(アッセイ5で説明する;Trapaniら、(1989年)J.Cardiovasc.Pharmacol.14巻:419〜424頁、Intenganら、(1999年)Hypertension34巻(4号):907〜913頁およびBadyalら、(2003年)(前出)も参照されたい)が含まれる。SHRモデルとDOCA塩モデルはどちらも、試験化合物が血圧を低下させる能力を評価するのに有用である。DOCA塩モデルは、血圧の上昇を防止するまたは遅延させる試験化合物の能力を測定するのにも有用である。本発明の化合物は、上記したアッセイまたは似たような性質のアッセイのいずれかで、ATレセプターをアンタゴナイズし、かつ/またはNEP酵素を阻害することが期待される。したがって、上記アッセイは、本発明の化合物の治療的有用性、例えば、血圧降下薬としての有用性を判定するのに有用である。本発明の化合物の他の特性および有用性は、当業者に周知の他のインビトロおよびインビボでのアッセイを用いて実証することができる。
【0194】
本発明の化合物は、ATレセプター拮抗および/またはNEP阻害に応答する医学的状態を処置および/または予防するのに有用であると期待される。したがって、ATレセプターをアンタゴナイズするかつ/またはNEP酵素を阻害することによって処置される疾患または障害に罹患した患者を、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって処置できると期待される。例えば、ATレセプターをアンタゴナイズする、したがってアンジオテンシンIIのそのレセプターに対する作用を妨害することによって、これらの化合物は、強力な昇圧物質であるアンジオテンシンIIによってもたらされる血圧の上昇を阻止するのに有用性を見出すことが期待される。さらに、NEPを阻害することによって、これらの化合物は、ナトリウム利尿ペプチド、ボンベシン、ブラジキニン、カルシトニン、エンドセリン、エンケファリン、ニューロテンシン、サブスタンスPおよび血管作動性の腸内ペプチドなどの、NEPによって代謝される内因性ペプチドの生物学的作用を増進することも期待される。例えば、ナトリウム利尿ペプチドの効果を増進することによって、本発明の化合物は、緑内障を治療するのに有用であると期待される。これらの化合物は、例えば、腎臓系、中枢神経系、生殖器系および胃腸系に対する他の生理的作用も有すると期待される。
【0195】
本発明の化合物は、心臓血管および腎疾患などの医学的状態を処置および/または予防するのに有用性を見出すことが期待される。特に興味のある循環器疾患には、うっ血性心不全、急性心不全、慢性心不全ならびに急性および慢性非代償性心不全などの心不全が含まれる。特に興味のある腎疾患には、糖尿病性ネフロパシーおよび慢性腎臓疾患が含まれる。本発明の1つの実施形態は、高血圧症を処置する方法であって、患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。一般に、治療有効量は患者の血圧を低下させるのに十分な量である。1つの実施形態ではその化合物を経口剤形で投与する。
【0196】
本発明の別の実施形態は、心不全を処置する方法であって、患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。一般に、治療有効量は、血圧を低下させるかつ/または腎機能を改善するのに十分な量である。1つの実施形態では、化合物は静脈内投薬形態で投与される。心不全を治療するのに用いる場合、化合物を、利尿薬、ナトリウム利尿ペプチドおよびアデノシンレセプターアンタゴニストなどの他の治療剤と併用して投与することができる。
【0197】
本発明の化合物は、予防的治療、例えば、心筋梗塞症後の心不全の進行を予防し、血管形成術後の動脈再狭窄を予防し、血管手術後の血管壁の肥厚を予防し、アテローム性動脈硬化症を予防し、糖尿病性血管症を予防するのにも有用であると期待される。
【0198】
さらに、NEPインヒビターとして、本発明の化合物はエンケファリナーゼを阻害することが期待され、これは内因性エンケファリンの分解を阻害する。したがって、そうした化合物は、鎮痛剤としての有用性も見出すことができる。そのNEP阻害特性のため、本発明の化合物は、鎮咳薬および下痢止め薬(例えば、水様下痢の処置用)として有用であり、また、生理不順、早期陣痛、子癇前症、子宮内膜症、繁殖障害(例えば、男性および女性の不妊症、多嚢胞性卵巣症候群、着床不全)ならびに男性の勃起機能不全および女性の性的興奮障害を含む男性および女性の性的機能不全の処置でも有用性が見出されることも期待される。より具体的には、本発明の化合物は、性的表現において満足を見出すことへの女性患者の困難性またはそれができないこととしてしばしば定義される、女性の性的機能不全を処置するのに有用であると期待される。これには、例示のためであってこれらに限定されないが、性的欲求低下障害、性的興奮障害、オルガスム障害および性的疼痛性障害を含む様々で多様な女性の性的障害が包含される。そうした疾患、特に女性の性的機能不全を処置するために使用する場合、本発明の化合物を、以下の二次的薬剤:PDE5インヒビター、ドーパミンアゴニスト、エストロゲンレセプターアゴニストおよび/またはアンタゴニスト、アンドロゲンおよびエストロゲンの1つまたは複数と併用することができる。
【0199】
用量当たりに投与される本発明の化合物の量または一日当たりに投与されるその全量は、予め決め得るか、あるいは、患者の状態の特徴および重篤度、処置を受ける状態、患者の年齢、体重および全体的な健康、その活性薬剤に対する患者の耐性、投与経路、その化合物の活性、効能、薬物動態学および毒物学的プロファイルなどの薬理学的考慮事項ならびに投与される任意の二次的薬剤などを含む多くの要素を考慮して個々の患者ベースで決定することができる。疾患または医学的状態(高血圧症など)に罹患した患者の処置は、所定の投薬量または担当医によって決められる投薬量で開始され得、その疾患または医学的状態の症状を予防、改善、抑制または軽減するのに必要な期間続行される。そうした処置を受ける患者は一般に、治療効果を判断するために定常的なベースでモニターされる。例えば、高血圧症の処置において、血圧測定により処置効果を判断することができる。本明細書で説明する他の疾患および状態のための同様の指標は周知であり、担当医はこれを容易に利用することができる。医師による継続的なモニタリングは、最適量の本発明の化合物を所与の任意の時間に投与し、また、処置期間の判断を容易にするのを確実にする。二次的薬剤も投与する場合、その選択、投薬量および処置期間も調節する必要があり得るので、そうしたモニタリングは特に有益である。このようにして、所望の有効性を示す最少量の活性薬剤が投与され、さらに、疾患または医学的状態を首尾よく処置するのに必要な限りにおいてのみ投与が続行されるように、処置レジメンおよび投薬スケジュールを治療の過程で調節することができる。
【0200】
本発明の化合物は、ATレセプターアンタゴニスト活性および/またはNEP酵素阻害活性を有するので、そうした化合物は、例えば、ATレセプターまたはNEP酵素が役割を果たす疾患を試験するために、ATレセプターまたはNEP酵素を有する生物学的系またはサンプルを研究または試験する研究用のツールとしても有用である。ATレセプターおよび/またはNEP酵素を有する任意の適切な生物学的系またはサンプルを、インビトロでもインビボでも実施できるそうした試験において使用することができる。そうした試験に適した代表的な生物学的系またはサンプルには、これらに限定されないが、細胞、細胞抽出物、原形質膜、組織サンプル、摘出臓器、哺乳動物(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒトなど)などが含まれる。哺乳動物が特に関心のあるものである。本発明の1つの特定の実施形態では、哺乳動物におけるATレセプターは、ATアンタゴナイズ量の本発明の化合物を投与することによってアンタゴナイズされる。他の特定の実施形態では、哺乳動物におけるNEP酵素活性は、NEP阻害量の本発明の化合物を投与することによって阻害される。本発明の化合物は、そうした化合物を用いた生物学的アッセイを実施することにより、研究用のツールとしても使用することができる。
【0201】
研究用のツールとして使用する場合、ATレセプターおよび/またはNEP酵素を含む生物学的系またはサンプルを、一般に、ATレセプターアンタゴナイズ量またはNEP酵素阻害量の本発明の化合物と接触させる。生物学的系またはサンプルをその化合物に曝露した後、結合アッセイでレセプター結合を測定するか、または機能的アッセイでリガンド媒介変化を測定するなどの慣用的手順および装置を用いて、ATレセプターをアンタゴナイズし、かつ/またはNEP酵素を阻害する効果を測定する。曝露ということは、細胞または組織をその化合物と接触させること、その化合物を、例えば腹腔内(i.p.)投与、静脈内(i.v.)投与または皮下(s.c.)投与により哺乳動物に投与することなどを含む。この測定工程は、応答を測定すること(定量分析)を含むことができ、または、観察をすること(定性分析)を含むことができる。応答の測定には、例えば、放射性リガンド結合アッセイなどの慣用的手順および装置を用いて生物学的系またはサンプルに対する化合物の効果を測定すること、および機能的アッセイでリガンド媒介変化を測定することが含まれる。アッセイ結果を用いて、活性レベルならびに望ましい結果を達成するのに必要な化合物量、すなわちATレセプターアンタゴナイズおよび/またはNEP酵素阻害量を決定することができる。一般に、測定工程は、ATレセプターリガンド媒介の効果を決定し、かつ/またはNEP酵素を阻害する効果を決定することを含む。
【0202】
さらに、本発明の化合物を他の化合物を評価するための研究用のツールとして使用することができ、したがって、例えば、ATレセプターアンタゴナイズ活性および/またはNEP阻害活性を有する新規な化合物を発見するためのスクリーニングアッセイにも有用である。この仕方で、本発明の化合物をアッセイにおける標準品として使用して、試験化合物と本発明の化合物で得られた結果を比較し、もしあれば、おおよそ同等かまたはそれより優れた活性を有する試験化合物を特定することができる。例えば、1つの試験化合物または一群の試験化合物についてのKデータ(例えば結合アッセイで測定して)を、本発明の化合物についてのKデータと比較して、所望の特性を有する試験化合物、例えば、もしあれば、おおよそ同等かまたはそれより優れたK値を有する試験化合物を特定する。本発明のこの態様は、別の実施形態として、比較データの作成(適切なアッセイを用いて)と興味ある試験化合物を特定するための試験データの分析の両方を含む。したがって、試験化合物を、生物学的アッセイにおいて、(a)試験化合物で生物学的アッセイを実施して第1のアッセイ値を得る工程と、(b)本発明の化合物で生物学的アッセイを実施して第2のアッセイ値を得る工程(工程(a)は工程(b)の前か、後かまたはそれと同時に実施する)と;(c)工程(a)からの第1のアッセイ値を工程(b)からの第2のアッセイ値と比較する工程とを含む方法で評価することができる。生物学的アッセイの例には、ATレセプター結合アッセイおよびNEP酵素阻害アッセイが含まれる。
【0203】
(薬学的組成物および処方物)
本発明の化合物は一般に、薬学的組成物または処方物の形態で患者に投与される。そうした薬学的組成物は、これらに限定されないが、経口、経直腸、経膣、経鼻、吸入、局所(経皮を含む)、眼内および非経口の投与方式を含む受容される任意の投与経路で患者に投与することができる。さらに、本発明の化合物は、例えば経口で、1日複数用量(例えば、日に2、3または4回)、1日1回用量または週1回用量などで投与することができる。特定の投与方式に適した任意の形態の本発明の化合物(すなわち、遊離塩基、遊離酸、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物等)を、本明細書で論じる薬学的組成物で使用できることを理解されよう。
【0204】
したがって、1つの実施形態では、本発明は薬学的に受容可能なキャリアおよび本発明の化合物を含む薬学的組成物に関する。これらの組成物は、必要なら、他の治療剤および/または処方剤を含むことができる。組成物について論じる場合、「本発明の化合物」は、本明細書では、キャリアなどの処方物の他の成分と区別されるように「活性薬剤」とも称される。したがって、「活性薬剤」という用語は、式Iの化合物ならびにその化合物の薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物およびプロドラッグを含むことを理解されたい。
【0205】
本発明の薬学的組成物は一般に治療有効量の本発明の化合物を含む。しかし、当業者は、その薬学的組成物が、治療有効量を超える量(例えばバルク組成物)または治療有効量より少ない量(すなわち、複数回投与が治療有効量を達成するように設計された個別の単位用量)を含むことができることを理解されよう。一般に、組成物は、約0.01〜30重量%、例えば約0.01〜10重量%が挙げられる約0.01〜95重量%の活性薬剤を含むが、実際の量は、処方物自体、投与経路、投薬頻度などによって変わる。1つの実施形態では、経口剤形に適した組成物は、例えば約5〜70重量%または約10〜60重量%の活性薬剤を含むことができる。
【0206】
任意の慣用的なキャリアまたは賦形剤を本発明の薬学的組成物で用いることができる。具体的なキャリアもしくは賦形剤またはキャリアもしくは賦形剤の組み合わせの選択は、特定の患者または型の医学的状態もしくは病状を処置するのに用いられる投与方式に依存する。これに関して、特定の投与方式に適した組成物の製剤は、十分に製薬技術分野の技術者の知識の範囲内である。さらに、そうした組成物で使用されるキャリアまたは賦形剤は市販されている。さらに例を挙げると、慣用的な処方技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(2000年);およびH.C.Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)に記載されている。
【0207】
薬学的に受容可能なキャリアとして働くことができる物質の代表例には、これらに限定されないが、以下のもの、すなわち、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;トウモロコシでんぷんおよびジャガイモでんぷんなどのでんぷん;微結晶性セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど;トラガカント粉末;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐薬用ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイルおよび大豆油などの油類;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;クロロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンなどの圧縮噴射ガス;ならびに薬学的組成物に使用される他の非毒性の適合物質が含まれる。
【0208】
薬学的組成物は一般に、活性薬剤を薬学的に受容可能なキャリアおよび1つまたは複数の必要に応じた成分と完全にかつ密に混合またはブレンドして調製する。次いで得られた均一ブレンド混合物を、慣用的手順および装置を用いて錠剤、カプセル剤、丸薬、キャニスター、カートリッジ、ディスペンサーなどに成形するかまたは詰めることができる。
【0209】
本発明の化合物がチオール基を含む処方物では、チオールが酸化してジスルフィドを生成することを最少化するまたは排除するためにさらなる考慮を加えることができる。固体処方物では、これを、乾燥時間を短縮し、処方物の水分含量を減少させ、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムなどの物質、ならびに、ラクトースと微結晶性セルロースの混合物などの物質を含有させることによって遂行することができる。液体処方物では、チオールの安定性を、アミノ酸、酸化防止剤またはエデト酸二ナトリウムとアスコルビン酸の組み合わせを加えて改善することができる。
【0210】
1つの実施形態では、この薬学的組成物は経口投与に適している。経口投与に適した組成物は、それぞれ所定量の活性薬剤を含む、カプセル剤、錠剤、丸薬、トローチ剤、カシェ剤、糖衣錠、粉剤、顆粒剤;水系もしくは非水系液体中の液剤または懸濁剤;水中油型もしくは油中水型乳剤;エリキシル剤またはシロップ剤などの形態であってよい。
【0211】
固体剤形で(カプセル剤、錠剤、丸薬など)経口投与しようとする場合、その組成物は一般に、活性薬剤、およびクエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムなどの1つまたは複数の薬学的に受容可能なキャリアを含む。固体剤形は、でんぷん、微結晶性セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充てん剤または増量剤;カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤;グリセロールなどの保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカでんぷん、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および/または炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶解遅延剤(solution retarding agent);四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;セチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤;カオリンおよび/またはベントナイト粘土などの吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/またはその混合物などの滑剤;着色剤;ならびに緩衝剤も含むことができる。
【0212】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、矯味矯臭剤および香料、防腐剤および酸化防止剤も薬学的組成物中に存在してよい。錠剤、カプセル剤、丸薬等のためのコーティング剤の例には、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、セルロースアセテートトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなどの腸溶コーティングに用いられるものが含まれる。薬学的に受容可能な酸化防止剤の例には、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロールなどの油溶性酸化防止剤;およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤などが含まれる。
【0213】
組成物は、例えば、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、活性薬剤の遅延放出もしくは制御放出を提供するように処方することもできる。さらに、本発明の薬学的組成物は乳白剤を含むことができ、それらが活性薬剤だけを放出するか、胃腸管の特定の部分で優先的に、必要に応じて遅延した形で放出するように処方することができる。使用できる埋め込み型組成物の例には、重合物質およびワックスが含まれる。活性薬剤は、必要に応じて、上記賦形剤の1つまたは複数を用いてマイクロカプセル化した形態であってもよい。
【0214】
経口投与のための適切な液体剤形には、例示すると、薬学的に受容可能な乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は一般に、活性薬剤、ならびに不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにその混合物を含む。懸濁剤は、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにその混合物などの懸濁化剤を含むことができる。
【0215】
経口投与しようとする場合、本発明の薬学的組成物を単位剤形にパッケージ化することができる。「単位剤形」という用語は患者に投薬するのに適した物理的に離散した単位を指す。すなわち、各単位は単独か、または1つもしくは複数の追加の単位と併用して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性薬剤を含む。例えば、各単位剤形はカプセル剤、錠剤、丸薬などであってよい。
【0216】
別の実施形態では、本発明の組成物は吸入投与に適しており、一般にエアロゾルまたは粉末の形態である。そうした組成物は通常噴霧器、乾燥粉末または定量吸入器などの周知の送達装置を用いて投与される。噴霧装置は、組成物を、患者の気道中に運ばれるミストとして噴霧する、高速の空気流を発生させる。例となる噴霧器処方物は、キャリア中に溶解されて溶液を形成しているか、微細化され、キャリアと一緒にされて吸い込み可能なサイズの微細化粒子の懸濁液を形成する活性薬剤を含む。乾燥粉末吸入器は、活性薬剤を、患者の吸気の際に気流中に分散される自由流動性粉末として投与する。例となる乾燥粉末処方物は、ラクトース、でんぷん、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸、ポリラクチド−co−グリコリドおよびその組み合わせなどの賦形剤とドライブレンドされた活性薬剤を含む。定量吸入器は、圧縮噴射剤ガスを用いて一定量の活性薬剤を放出する。定量吸入器用処方物の例には、クロロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロアルカンなどの液化した噴射剤中の活性薬剤の溶液または懸濁液を含む。そうした処方物の必要に応じた成分には、エタノールまたはペンタンなどの共溶媒ならびにトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチン、グリセリンおよびラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤が含まれる。そうした組成物は一般に、活性薬剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を入れた適切な容器に冷却または加圧したハイドロフルオロアルカンを加えることによって調製される。懸濁剤を作るためには、活性薬剤を微粉化し、次いで噴射剤と混合する。あるいは、懸濁剤処方物は、噴霧乾燥して活性薬剤の微粒子上に界面活性剤のコーティング物を施すことによって調製することができる。次いで、処方物を、吸入器の一部を形成するエアロゾルキャニスター中に詰め込む。
【0217】
本発明の化合物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内注射によって)で投与することもできる。そうした投与のためには、活性薬剤は滅菌液剤、懸濁剤または乳剤で提供される。そうした処方物を調製するための溶媒の例には、水、生理食塩水、プロピレングリコールなどの低分子量アルコール、ポリエチレングリコール、油類、ゼラチン、オレイン酸エチルなどの脂肪酸エステルなどが含まれる。非経口処方物は、1つまたは複数の酸化防止剤、可溶化剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤も含むことができる。界面活性剤、追加の安定剤またはpH調整剤(酸、塩基または緩衝液)および酸化防止剤は、処方物に安定性を提供するため、例えば、エステル結合およびアミド結合の加水分解または化合物中に存在する可能性のあるチオールの二量体化を最少化するかまたはそれを回避するために特に有用である。これらの処方物は、滅菌した注射用媒体、滅菌剤、濾過、照射または熱を用いて滅菌することができる。1つの特定の実施形態では、非経口処方物は、薬学的に受容可能なキャリアとしてシクロデキストリン水溶液を含む。適切なシクロデキストリンには、アミラーゼ、β−シクロデキストリンまたはシクロヘプタアミロースなどのような結合により1,4位で結合した6つ以上のα−D−グルコピラノース単位を含む環状分子が含まれる。シクロデキストリンの例には、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルシクロデキストリン、例えばヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン誘導体が含まれる。そうした処方物のための緩衝溶液の例には、クエン酸、乳酸およびマレイン酸緩衝液などのカルボン酸をベースとした緩衝液が含まれる。
【0218】
本発明の化合物は、公知の経皮送達系および賦形剤を用いて経皮投与することもできる。例えば、化合物を、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オンなどの透過促進剤と混合し、パッチまたは同様の送達系中に組み込むことができる。望むなら、そうした経皮組成物中に、ゲル化剤、乳化剤および緩衝剤を含む追加の賦形剤を使用することができる。
【0219】
望むなら、本発明の化合物を、1つまたは複数の他の治療剤と併用して投与することができる。したがって、1つの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物と同時投与される他の薬物を含む。例えば、組成物は、利尿薬、βアドレナリン作用性レセプター遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素インヒビター、ATレセプターアンタゴニスト、ネプリライシンインヒビター、非ステロイド系抗炎症薬、プロスタグランジン、抗脂質薬、抗糖尿病薬、抗血栓剤、レニンインヒビター、エンドセリンレセプターアンタゴニスト、エンドセリン変換酵素インヒビター、アルドステロンアンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシンインヒビターおよびその組み合わせの群から選択される1つまたは複数の薬物(「二次的薬剤」とも称される)をさらに含むことができる。そうした治療剤は当技術分野で周知であり、具体的な例は本明細書に記載されている。本発明の化合物を二次的薬剤と組み合わせることによって、2つの活性成分だけを用いて、3つの治療、すなわち;ATレセプターアンタゴニスト活性、NEP阻害活性、および二次的薬剤(例えば、βアドレナリン作用性レセプター遮断薬)に伴う活性を実現することができる。2つの活性成分を含む組成物は一般に、3つの活性成分を含む組成物より処方が容易であるため、そうした2成分組成物は、3つの活性成分を含む組成物より著しい利点を提供する。したがって、本発明のさらに別の局面では、薬学的組成物は、本発明の化合物、第2の活性薬剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む。第3、第4等の活性薬剤も組成物中に含めることができる。併用療法では、投与する本発明の化合物の量ならびに二次的薬剤の量は、単剤療法において通常投与される量より少なくすることができる。
【0220】
本発明の化合物を、第2の活性薬剤と物理的に混合して両方の薬剤を含む組成物を形成させるか;あるいは、各薬剤を別々の区別できる組成物として存在させ、これを患者に同時または別々の時間で投与することもできる。例えば、本発明の化合物を、慣用的手順および装置を用いて第2の活性薬剤と一緒にして、本発明の化合物および第2の活性薬剤を含む活性薬剤の組み合わせを形成させることができる。さらに、活性薬剤を、薬学的に受容可能なキャリアと一緒にして、本発明の化合物、第2の活性薬剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を形成させることができる。この実施形態では、一般にその組成物の成分を混合するかまたはブレンドして物理的混合物を作製する。次いでその物理的混合物を、本明細書で説明する経路のいずれかを用いて治療有効量で投与する。
【0221】
あるいは、活性薬剤を、患者に投与する前に、別々の区別できる状態にしておくことができる。この実施形態では、投与前に薬剤を物理的に一緒に混合はせず、同時かまたは別々の時間に別個の組成物として投与する。そうした組成物は、別々にパッケージ化し得るか、またはキット中で一緒にパッケージ化することができる。別々の時間に投与する場合、二次的薬剤は一般に、本発明の化合物の投与後24時間以内に本発明の化合物の投与と同時〜投与後約24時間までのどこかの範囲で投与される。これは逐次投与とも称される。したがって、本発明の化合物は、各活性薬剤について1つの錠剤で、他の活性薬剤と同時かまたは逐次的に経口で2つの錠剤を用いて投与することができる。ここで、逐次的とは、本発明の化合物の投与の後直ちにか、またはある所定時間後(例えば、1時間または3時間後)に投与することを意味し得る。あるいは、その併用薬を異なる投与経路、すなわち、一方を経口で他方を吸入により投与することができる。
【0222】
1つの実施形態では、キットは、本発明の化合物を含む第1の剤形、および本明細書で示す二次的薬剤の1つまたは複数を含む少なくとも1つの追加の剤形を、本発明の方法を実行するのに十分な量で含む。第1の剤形と第2(または第3等)の剤形は、患者における疾患または医学的状態を処置または予防するための治療有効量の活性薬剤を一緒に構成する。
【0223】
含まれる場合、二次的薬剤は治療有効量で存在する、したがって、それらは一般に、本発明の化合物と同時投与されたとき治療的に有利な効果をもたらす量で投与される。二次的薬剤は、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物の形態であってよく、また必要に応じて純粋な立体異性体などであってもよい。二次的薬剤は、プロドラッグ、例えば、エステル化されたカルボン酸基を有する化合物の形態であってもよい。したがって、本明細書で示す二次的薬剤はそうしたすべての形態を含むものとし、これらは市販されているか、または慣用的手順および試薬を用いて調製することができる。
【0224】
1つの実施形態では、本発明の化合物は、利尿薬と併用して投与される。代表的な利尿薬には、これらに限定されないが、アセタゾールアミドおよびジクロフェナミドなどの炭酸脱水酵素インヒビター;アセタゾールアミド、アンブシド、アゾセミド(azosernide)、ブメタニド、ブタゾールアミド(ブタゾラミド)、クロラミノフェナミド、クロフェナミド、クロパミド、クロレキソロン、ジスルファミド、エトクスゾラミド(ethoxolamide)、フロセミド、メフルシド、メタゾラミド、ピレタニド、トルセミド、トリパミドおよびキシパミドなどのスルホンアミド誘導体、ならびに、エタクリン酸などの非スルホンアミド利尿薬およびチエニル酸、インダクリノンおよびキンカルバートなどの他のフェノキシ酢酸化合物を含むループ利尿薬;マンニトールなどの浸透圧利尿薬;スピロノラクトンなどのアルドステロンアンタゴニストおよびアミロリドおよびトリアムテレンなどのNaチャネルインヒビターを含むカリウム保持性利尿薬;アルチアジド、ベンドロフルメチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ベンズチアジド、ブチアジド、クロルタリドン、クロロチアジド、シクロペンチアジド、シクロチアジド、エピチアジド、エチアジド、フェンキゾン、フルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、メチルクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチアジド、キネタゾン、テクロチアジドおよびトリクロロメチアジドなどのチアジドおよびチアジド様利尿薬;およびその組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、その利尿薬は、アミロリド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、ジクロフェナミド、エタクリン酸、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、メチルクロチアジド、メトラゾン、トルセミド、トリアムテレンおよびその組み合わせから選択される。利尿薬は、一日当たり約5〜50mg、より典型的には一日当たり6〜25mgを提供するのに十分な量で投与される。一般的な投与量は一日当たり6.25mg、12.5mgまたは25mgである。
【0225】
本発明の化合物は、βアドレナリン作用性レセプター遮断薬と併用して投与することもできる。代表的なβアドレナリン作用性レセプター遮断薬には、これらに限定されないが、アセブトロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブシンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフラロール、ブニトロロール、ブプラノロール、ブブリジン、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、エスモロール、インデノロール、ラベテロール(labetolol)、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール,コハク酸メトプロロールおよび酒石酸メトプロロールなどのメトプロロール、モプロロール(moprolol)、ナドロール、ナドキソロール、ネビバロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ペルブトロール、ピンドロール、プラクトロール、プロネタロール、プロプラノロール、ソタロール、スフィナロール、タリンドール、テルタトロール、チリソロール、チモロール、トリプロロール、キシベノロールおよびその組み合わせが含まれる。1つの特定の実施形態では、そのβアドレナリン作用性レセプター遮断薬は、アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロールおよびその組み合わせから選択される。
【0226】
1つの実施形態では、本発明の化合物は、カルシウムチャネル遮断薬と併用して投与される。代表的なカルシウムチャネル遮断薬には、これらに限定されないが、アムロジピン、アニパミル、アラニピン、バルニジピン、ベンシクラン、ベニジピン、ベプリジル、クレンチアゼム、シルニジピン、シンナリジン、ジルチアゼム、エホニジピン、エルゴジピン、エタフェノン、フェロジピン、フェンジリン、フルナリジン、ガロパミル、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、リドフラジン、ロメリジン、マニジピン、ミベフラジル、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニバルジピン、ペルヘキシリン、プレニラミン、リョシジン(ryosidine)、セモチアジル、テロジリン、チアパミル、ベラパミルおよびその組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、そのカルシウムチャネル遮断薬は、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、リョシジン、ベラパミルおよびその組み合わせから選択される。
【0227】
本発明の化合物は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビターと併用して投与することもできる。代表的なACEインヒビターには、これらに限定されないが、アキュプリル、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セラナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラート、ホシノプリル、ホシノプリラート、イミダプリル、リシノプリル、モエキシプリル、モノプリル、モベルトプリル、ペントプリル、ペリンドプリル、キナプリル、キナプリラート、ラミプリル、ラミプリラート、酢酸サララシン、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、ゾフェノプリルおよびその組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、そのACEインヒビターは、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリルおよびその組み合わせから選択される。
【0228】
1つの実施形態では、本発明の化合物は、アンジオテンシンII 1型レセプター遮断薬(ARB)としても公知のATレセプターアンタゴニストと併用して投与される。代表的なARBには、これらに限定されないが、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、エリサルタン、エンブサルタン、エノールタソサルタン、エプロサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、イルベサルタン、イソテオリン、ロサルタン、メドキシミル(medoximil)、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタンおよびその組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、そのARBは、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタンおよびその組み合わせから選択される。塩の例には、エプロサルタンメシレート、ロサルタンカリウム塩およびオルメサルタンメドキソミルが含まれる。一般に、ARBは、用量当たり約4〜600mgを提供するのに十分な量で投与される。1日投与量の例は一日当たり20〜320mgの範囲である。
【0229】
別の実施形態では、本発明の化合物は、ネプリライシン(NEP)インヒビターと併用して投与される。代表的なNEPインヒビターには、これらに限定されないが、カンドキサトリル;カンドキサトリラート;デキセカドトリル((+)−N−[2(R)−(アセチルチオメチル)−3−フェニルプロピオニル]グリシンベンジルエステル);CGS−24128(3−[3−(ビフェニル−4−イル)−2−(ホスホノメチルアミノ)プロピオンアミド]プロピオン酸);CGS−24592((S)−3−[3−(ビフェニル−4−イル)−2−(ホスホノメチルアミノ)プロピオンアミド]プロピオン酸);CGS−25155(N−[9(R)−(アセチルチオメチル)−10−オキソ−1−アザシクロデカン−2(S)−イルカルボニル]−4(R)−ヒドロキシ−L−プロリンベンジルエステル);Hepworthら(Pfizer Inc.)のWO2006/027680に記載されている3−(1−カルバモイルシクロヘキシル)プロピオン酸誘導体;JMV−390−1(2(R)−ベンジル−3−(N−ヒドロキシカルバモイル)プロピオニル−L−イソロイシル−L−ロイシン);エカドトリル;ホスホラミドン;レトロチオルファン;RU−42827(2−(メルカプトメチル)−N−(4−ピリジニル)ベンゼンプロピオンアミド);RU−44004(N−(4−モルホリニル)−3−フェニル−2−(スルファニルメチル)プロピオンアミド);SCH−32615((S)−N−[N−(1−カルボキシ−2−フェニルエチル)−L−フェニルアラニル]−β−アラニン)およびそのプロドラッグであるSCH−34826((S)−N−[N−[1−[[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メトキシ]カルボニル]−2−フェニルエチル]−L−フェニルアラニル]−β−アラニン);シアロルフィン;SCH−42495(N−[2(S)−(アセチルスルファニルメチル)−3−(2−メチルフェニル)プロピオニル]−L−メチオニンエチルエステル);スピノルフィン;SQ−28132(N−[2−(メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]ロイシン);SQ−28603(N−[2−(メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−β−アラニン);SQ−29072(7−[[2−(メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]アミノ]ヘプタン酸);チオルファンおよびそのプロドラッグであるラセカドトリル;UK−69578(シス−4−[[[1−[2−カルボキシ−3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]シクロペンチル]カルボニル]アミノ]シクロヘキサンカルボン酸);UK−447,841(2−{1−[3−(4−クロロフェニル)プロピルカルバモイル]−シクロペンチルメチル}−4−メトキシ酪酸);UK−505,749((R)−2−メチル−3−{1−[3−(2−メチルベンゾチアゾール−6−イル)プロピルカルバモイル]シクロペンチル}プロピオン酸);5−ビフェニル−4−イル−4−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸および5−ビフェニル−4−イル−4−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル(親であるAHU-377酸、およびプロドラッグであるAHU-377エステル;WO2007/056546);Khderら(Novartis AG)のWO2007/106708に記載されているダグルトリル[(3S,2’R)−3−{1−[2’−(エトキシカルボニル)−4’−フェニルブチル]−シクロペンタン−1−カルボニルアミノ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−2−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢酸];およびその組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、そのNEPインヒビターは、カンドキサトリル、カンドキサトリラート、CGS−24128、ホスホラミドン、SCH−32615、SCH−34826、SQ−28603、チオルファン、AHU-377(親またはプロドラッグ)、およびその組み合わせから選択される。NEPインヒビターは、一日当たり約20〜800mgを提供するのに十分な量で投与される。一般的な1日投与量は、一日当たり50〜700mg、より一般的には一日当たり100〜600または100mg〜300mgの範囲である。
【0230】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)と併用して投与される。代表的なNSAIDには、これらに限定されないが、アセメタシン、アセチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アンフェナク、アミプリロース、アモキシプリン、アニロラク、アパゾン、アザプロパゾン、ベノリラート、ベノキサプロフェン、ベズピペリロン、ブロペラモール、ブクロキシ酸、カルプロフェン、クリダナク、ジクロフェナク、ジフルニサル、ジフタロン、エノリカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェノプロフェン、フェンチアザク、フェプラゾン、フルフェナム酸、フルフェニサル、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フロフェナック、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、ケトロラク、ロフェミゾール、ロルノキシカム、メクロフェナメート、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メサラミン、ミロプロフェン、モフェブタゾン、ナブメトン、ナプロキセン、ニフルム酸、オキサプロジン、オクスピナク、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、サルサラート、スドキシカム、スルファサラジン、スリンダク、スプロフェン、テノキシカム、チオピナク、チアプロフェン酸、オキサプロフェン、トルフェナム酸、トルメチン、トリフルミダート、ジドメタシン、ゾメピラクおよびその組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、そのNSAIDは、エトドラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メロキシカム、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカムおよびその組み合わせから選択される。
【0231】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物は抗脂質薬と併用して投与される。代表的な抗脂質薬には、これらに限定されないが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンなどのスタチン;コレステリルエステル転送タンパク質(CETP);ならびにその組み合わせが含まれる。
【0232】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物は抗糖尿病薬と併用して投与される。代表的な抗糖尿病薬には、注入用薬物および経口で有効な薬物ならびにその組み合わせが含まれる。注入用薬物の例には、これらに限定されないが、インスリンおよびインスリン誘導体が含まれる。経口で有効な薬物の例には、これらに限定されないが、メトホルミン;グルカゴンアンタゴニストなどのビグアニド;アカルボースおよびミグリトールなどのα−グルコシダーゼインヒビター;レパグリニドなどのメグリチニド;オキサジアゾリジンジオン;クロルプロパミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリドおよびトラザミドなどのスルホニル尿素;ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオン;ならびにその組み合わせが含まれる。
【0233】
1つの実施形態では、本発明の化合物は抗血栓剤と併用して投与される。代表的な抗血栓剤には、これらに限定されないが、アスピリン、抗血小板薬、ヘパリンおよびその組み合わせが含まれる。本発明の化合物は、レニンインヒビターと併用して投与することもでき、その例には、これらに限定されないが、アリスキレン、エナルキレン、レミキレンおよびその組み合わせが含まれる。別の実施形態では、本発明の化合物はエンドセリンレセプターアンタゴニストと併用して投与され、その代表例には、これらに限定されないが、ボセンタン、ダルセンタン、テゾセンタンおよびその組み合わせが含まれる。本発明の化合物はエンドセリン変換酵素インヒビターと併用して投与することもでき、その例には、これらに限定されないが、ホスホラミドン、CGS26303およびその組み合わせが含まれる。さらに別の実施形態では、本発明の化合物はアルドステロンアンタゴニストと併用して投与され、その代表例には、これらに限定されないが、エプレレノン、スピロノラクトンおよびその組み合わせが含まれる。
【0234】
併用治療剤は、本発明の化合物とのさらなる併用療法にも役に立つことができる。例えば、Vaseretic(登録商標)という名称で市販されているACEインヒビターであるエナラプリル(マレイン酸塩の形態で)と利尿薬であるヒドロクロロチアジドの併用薬、またはカルシウムチャネル遮断薬であるアムロジピン(ベシレート塩の形態で)とARBであるオルメサルタン(メドキソミルプロドラッグの形態で)の併用薬、またはカルシウムチャネル遮断薬とスタチンの併用薬もやはりすべて、本発明の化合物と一緒に用いることができる。二重作用剤もやはり本発明の化合物を用いた併用療法に役に立つことができる。例えば、AVE−0848((4S,7S,12bR)−7−[3−メチル−2(S)−スルファニルブチルアミド]−6−オキソ−1,2,3,4,6,7,8,12b−オクタヒドロピリド[2,1−a][2]ベンズアゼピン−4−カルボン酸);AVE−7688(イレパトリル)およびその親化合物;BMS−182657(2−[2−オキソ−3(S)−[3−フェニル−2(S)−スルファニルプロピオンアミド]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−1−イル]酢酸);CGS−26303([N−[2−(ビフェニル−4−イル)−1(S)−(1H−テトラゾール−5−イル)エチル]アミノ]メチルホスホン酸);CGS−35601(N−[1−[4−メチル−2(S)−スルファニルペンタンアミド]シクロペンチルカルボニル]−L−トリプトファン);ファシドトリル;ファシドトリレート;エナラプリラート;ER−32935((3R,6S,9aR)−6−[3(S)−メチル−2(S)−スルファニルペンタンアミド]−5−オキソペルヒドロチアゾロ[3,2−a]アゼピン−3−カルボン酸);ジェムパトリラト;MDL−101264((4S,7S,12bR)−7−[2(S)−(2−モルホリノアセチルチオ)−3−フェニルプロピオンアミド]−6−オキソ−1,2,3,4,6,7,8,12b−オクタヒドロピリド[2,1−a][2]ベンズアゼピン−4−カルボン酸);MDL−101287([4S−[4α,7α(R),12bβ]]−7−[2−(カルボキシメチル)−3−フェニルプロピオンアミド]−6−オキソ−1,2,3,4,6,7,8,12b−オクタヒドロピリド[2,1−a][2]ベンズアゼピン−4−カルボン酸);オマパトリラト;RB−105(N−[2(S)−(メルカプトメチル)−3(R)−フェニルブチル]−L−アラニン);サンパトリラト;SA−898((2R,4R)−N−[2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(3−メルカプトプロピオニル)チアゾリジン−4−イルカルボニル]−L−フェニルアラニン);Sch−50690(N−[1(S)−カルボキシ−2−[N2−(メタンスルホニル)−L−リシルアミノ]エチル]−L−バリル−L−チロシン);およびその組み合わせなどのアンジオテンシン変換酵素/ネプリライシン(ACE/NEP)インヒビターも含めることができる。1つの特定の実施形態では、そのACE/NEPインヒビターは、AVE−7688、エナラプリラート、ファシドトリル、ファシドトリレート、オマパトリラト、サンパトリラトおよびその組み合わせから選択される。
【0235】
α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストおよびバソプレシンレセプターアンタゴニストなどの他の治療剤も併用療法に役に立つことができる。α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストの例には、クロニジン、デクスメデトミジンおよびグアンファシンが含まれる。バソプレシンレセプターアンタゴニストの例には、トルバプタンが含まれる。
【0236】
以下の処方物は本発明の代表的な薬学的組成物を例示するものである。
【0237】
(経口投与のための例示的な硬ゼラチンカプセル剤)
本発明の化合物(50g)、440gのスプレー乾燥したラクトースおよび10gステアリン酸マグネシウムを十分にブレンドする。次いで得られた組成物を硬ゼラチンカプセル中に詰める(1つのカプセル当たり500mgの組成物)。あるいは、本発明の化合物(20mg)を、でんぷん(89mg)、微結晶性セルロース(89mg)およびステアリン酸マグネシウム(2mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を45番メッシュの米国標準篩(No.45 mesh U.S.sieve)にかけ、これを硬ゼラチンカプセル中に詰める(1つのカプセル当たり200mgの組成物)。
【0238】
(経口投与のための例示的なゼラチンカプセル剤処方物)
本発明の化合物(100mg)を、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(50mg)およびでんぷん粉末(250mg)と十分にブレンドする。次いで混合物をゼラチンカプセルに詰める(1つのカプセル当たり300mgの組成物)。
【0239】
あるいは、本発明の化合物(40mg)を、微結晶性セルロース(Avicel PH103;260mg)およびステアリン酸マグネシウム(0.8mg)と十分にブレンドする。次いで混合物をゼラチンカプセルに詰める(サイズ番号1、白色、不透明)(1つのカプセル当たり300mgの組成物)。
【0240】
(経口投与のための例示的な錠剤処方物)
本発明の化合物(10mg)、でんぷん(45mg)および微結晶性セルロース(35mg)を20番メッシュの米国標準篩にかけ、十分に混合する。このように製造された顆粒を50〜60℃で乾燥し、16番メッシュの米国標準篩にかける。ポリビニルピロリドンの溶液(4mg、滅菌水中10%溶液として)を、カルボキシメチルスターチナトリウム(4.5mg)、ステアリン酸マグネシウム(0.5mg)およびタルク(1mg)と混合し、次いでこの混合物を16メッシュの米国標準篩にかける。次いでカルボキシメチルスターチナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを顆粒に加える。混合した後、混合物を錠剤機で圧縮して100mgの重量の錠剤を得る。
【0241】
あるいは、本発明の化合物(250mg)を、微結晶性セルロース(400mg)、二酸化ケイ素(ヒュームド)(10mg)およびステアリン酸(5mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を圧縮して錠剤(1つの錠剤当たり665mgの組成物)を形成する。
【0242】
あるいは、本発明の化合物(400mg)を、トウモロコシでんぷん(50mg)、クロスカルメロースナトリウム(25mg)、ラクトース(120mg)およびステアリン酸マグネシウム(5mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を圧縮して単一の割線を有する錠剤(1つの錠剤当たり600mgの組成物)にする。
【0243】
あるいは、本発明の化合物(100mg)を、ゼラチン(20mg)の水溶液でトウモロコシでんぷん(100mg)と十分にブレンドする。混合物を乾燥し、粉砕して微粉にする。次いで微結晶性セルロース(50mg)およびステアリン酸マグネシウム(5mg)をゼラチン処方物と混合し、顆粒化し、得られた混合物を圧縮して錠剤(1つの錠剤当たり100mgの本発明の化合物)にする。
【0244】
(経口投与のための例示的な懸濁剤処方物)
以下の成分を混合して懸濁液10mL当たり100mgの本発明の化合物を含む懸濁剤を得る。
【0245】
【表1】

(経口投与のための例示的な液体処方物)
適切な液体処方物は、クエン酸、乳酸およびマレイン酸緩衝液などのカルボン酸をベースとした緩衝液を用いたものである。例えば、本発明の化合物(DMSOと事前混合されていてよい)を100mMクエン酸アンモニウム緩衝液とブレンドしpHをpH5に調整するか、100mMクエン酸溶液とブレンドしpHをpH2に調整する。そうした溶液にはシクロデキストリンなどの可溶化賦形剤を含めることもできる。例えば、その溶液は、10重量%のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含むことができる。
【0246】
他の適切な処方物には、シクロデキストリンを含むか含まない、5%NaHCO溶液が含まれる。
【0247】
(注入による投与のための例示的な注入可能処方物)
本発明の化合物(0.2g)を0.4M酢酸ナトリウム緩衝液(2.0mL)とブレンドする。必要に応じて、得られた溶液のpHを0.5N塩酸水溶液または0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4に調整し、次いで十分な注入用水を加えて20mLの合計体積を得る。次いで混合物を滅菌用フィルター(0.22ミクロン)で濾過して注入による投与に適した滅菌溶液を得る。
【0248】
(吸入による投与のための例示的な組成物)
本発明の化合物(0.2mg)を微粉化し、次いでラクトース(25mg)とブレンドする。次いでこのブレンド混合物をゼラチン吸入カートリッジに充てんする。カートリッジの内容物を、例えば乾燥粉末吸入器を用いて投与する。
【0249】
あるいは、微粉化された本発明の化合物(10g)を、レシチン(0.2g)を脱塩水(200mL)中に溶解して調製した溶液中に分散させる。得られた懸濁液をスプレー乾燥し、次いで微粉化して約1.5μm未満の平均径を有する粒子を含む微粉化組成物を得る。次いで微粉化組成物を、吸入器で投与したとき用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で、加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む定量吸入器カートリッジに充てんする。
【0250】
あるいは、本発明の化合物(25mg)をクエン酸塩緩衝化(pH5)等張食塩水(125mL)に溶解する。化合物が溶解するまで、混合物を撹拌し超音波処理する。溶液のpHをチェックし、必要なら、1NのNaOH水溶液を徐々に加えてpH5に調整する。溶液を、用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供する噴霧装置を用いて投与する。
【実施例】
【0251】
本発明の具体的な実施形態を例示するために以下の調製例および実施例を提供する。しかし、これらの具体的実施形態は、特に指示のない限り、本発明の範囲を限定しようとするものでは全くない。
【0252】
以下の略語は、別段の指示のない限り、以下の意味を有し、本明細書で使用するが定義されていない他の任意の略語は、その標準的な一般に受け入れられている意味を有する。
AcOH 酢酸
DCM ジクロロメタンまたは塩化メチレン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EtOH エタノール
EtOAc 酢酸エチル
MeCN アセトニトリル
NBS N−ブロモスクシンイミド
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン。
【0253】
別段の言及のない限り、試薬、出発物質および溶媒などのすべての材料は、市場の供給者(Sigma−Aldrich、Fluka Riedel−de Haeunなど)から購入したものであり、これらをさらなる精製は行わないで使用した。
【0254】
別段の記載のない限り、反応は窒素雰囲気下で実施した。反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)および質量分析でモニターし、その詳細を具体的な実施例で示す。分析用HPLCで用いた溶媒は以下の通りである。溶媒Aは、98%HO/2%MeCN/1.0mL/L TFAであり;溶媒Bは、90%MeCN/10%HO/1.0mL/L TFAであった。
【0255】
反応は、それぞれ調製例および実施例において具体的に説明したようにして実施した。一般に反応混合物は、抽出、温度および溶媒依存性結晶化、ならびに沈殿などの他の精製を用いて精製した。さらに、反応混合物は、一般にMicrosorb C18およびMicrosorb BDSカラム充てん剤および慣用的な溶離液を用いて、分取HPLCにより慣行的に精製した。反応の進行を、代表的に、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)により測定した。異性体の特徴付けを、核オーバーハウザー効果分光法(NOE)により行った。反応生成物の特性評価は、質量分析およびH−NMR分析により慣行的に実施した。NMR測定のために、サンプルを重水素化溶媒(CDOD、CDClまたはDMSO−d)に溶解し、H−NMRスペクトルは、Varian Gemini 2000装置(400MHz)を用いて標準的な観察条件下で得た。化合物の質量分光学的な同定は一般に、エレクトロスプレーイオン化法(ESMS)により、Applied Biosystems(Foster City、CA)モデルAPI 150EX装置またはAgilent(Palo Alto、CA)モデル1200 LC/MSD装置を用いて実施した。
【0256】
(調製1)
5-(4’-ブロモメチルビフェニル-2-イル)-1-トリチル-1H-テトラゾール
【0257】
【化54】

【0258】
DCM中のN-トリフェニルメチル-5-[4’-メチルビフェニル-2-イル]テトラゾール(10g,20.9mmol)の、窒素で飽和させた懸濁物に、NBS(3.7g,20.9mmol)および触媒量の過酸化ベンゾイル(60mg,0.24mmol)を添加した。この混合物を還流しながら15時間撹拌した。室温まで冷却した後に、その沈殿物を濾過し、そしてその有機溶液を減圧中で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン)により、表題化合物を白色固体として得た。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 4.61 (s, 2H), 6.80 (d, 6H), 7.01 (d, 2H), 7.24 (d, 2H), 7.28-7.35 (m, 9H), 7.43-7.45 (dd, 1H), 7.50-7.56 (td, 1H), 7.58-7.60 (td, 1H), 7.77-7.79 (dd, 1H)。
【0259】
(例示的な合成1)
【0260】
【化55】

【0261】
化合物(3)(1当量)、5-(4'-ブロモメチルビフェニル-2-イル)-1-トリチル-1H-テトラゾール(1当量)、および炭酸カリウム(2当量)をDMF(94当量)に溶解させ、そして得られた混合物を、その反応が完了するまで室温で撹拌する。その生成物(1当量)を精製し、そしてTHFに溶解させる。次いで、そのカルボキシ保護基を、LiOH一水和物(5当量)の水溶液での処理により除去する。
【0262】
(調製2)
4'-ブロモメチルビフェニル-2-スルホン酸1-ジメチルアミノメタ-(E)-イリデンアミド
【0263】
【化56】

【0264】
1,1-ジメトキシ-N,N-ジメチルメタンアミン(14.6mL,104mmol)を、2-ブロモベンゼン-1-スルホンアミド(20.4g,86.4mmol)のDMF(56mL,720mmol)中の溶液に添加し、そして得られた溶液を室温で90分間撹拌した。硫酸水素ナトリウム(1.7g,14mmol)の水(170mL,9.4mol)中の溶液を0℃で冷却し、次いでこの反応混合物に添加した。その沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させて、2-ブロモ-N-[1-ジメチルアミノメタ-(E)-イリデン]ベンゼンスルホンアミド(24.3g)を白色固体として得た。
【0265】
2-ブロモ-N-[1-ジメチルアミノメタ-(E)-イリデン]-ベンゼンスルホンアミド(5.4g,18.4mmol)、4-メチルフェニルボロン酸(5.0g,36.8mmol)および炭酸カリウム(5.1g,36.8mmol)を、水(19.7mL,1090mmol)、EtOH(49.2mL,842mmol)およびトルエン(98.3mL,923mmol)に溶解した。得られた混合物を窒素下で撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.4g,1.2mmol)を添加した。この混合物を60℃で115分間、70℃で30分間加熱し、次いで室温まで冷却した。水(100mL)およびEtOAc(100mL)を添加した。この混合物を飽和水性NaClで洗浄し、EtOAcで抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、赤色固体を得た。この生成物を1:1のEtOAc:ヘキサンで粉砕し、濾過し、そしてヘキサンですすいで、赤みがかった褐色の固体を得た。この生成物をEtOAcで粉砕し、濾過し、そしてEtOAcですすいで、4'-メチルビフェニル-2-スルホン酸1-ジメチルアミノメタ-(E)-イリデンアミド(4.6g)を淡褐色固体として得た。
【0266】
4’-メチルビフェニル-2-スルホン酸1-ジメチルアミノメタ-(E)-イリデンアミド(540.0mg,1786μmol)、NBS(318mg,1.8mmol)、および過酸化ベンゾイル(4.3mg,17.8μmol)をクロロベンゼン(7.0mL,69mmol)に溶解し、そして得られた溶液を100℃で90分間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、そして水を添加した。この混合物をDCMで抽出し、飽和NaHCO3および飽和水性NaClで洗浄し、DCMで再度抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。その粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(40g,0%〜100% ヘキサン中EtOAc)により精製し、次いでEtOAc(4.5mL)およびDCM(1.5mL)に溶解した。さらなるDCM(3.0mL)を添加し、そしてこの混合物を60℃で加熱した。この混合物をフリーザー中で一晩冷却し、次いで濃縮した。この物質をDCM(2mL)に溶解し、EtOAc(6mL)を添加し、そして得られた溶液をフリーザーに入れた。沈殿物が形成されたので濾過して、表題化合物(279mg)を白色固体として得た。
【0267】
(例示的な合成2)
【0268】
【化57】

【0269】
化合物(3)(1当量)、4'-ブロモメチルビフェニル-2-スルホン酸1-ジメチルアミノメタ-(E)-イリデンアミド(1当量)および炭酸カリウム(2当量)をDMF(90当量)に溶解し、そして得られた混合物を、その反応が完了するまで室温で撹拌する。その生成物を精製し、そして水中12MのHClで処理して、スルホンアミドを得、これを次いで、塩化メチレンに溶解させる。過剰なDIPEAおよび無水酢酸を添加して、置換されたスルホンアミドを形成させる。次いで、そのカルボキシ保護基を、水中0.20MのLiOHでの処理により除去する。
【0270】
(調製3)
N-t-ブチル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼンスルホンアミド
【0271】
【化58】

【0272】
2-ブロモベンゼンスルホニルクロリド(100.9g,394.9mmol)をDCM(500mL,8.0mol)に溶解し、そして0℃で冷却した。t-ブチルアミン(41.3mL,395mmol)を、約1分間かけて3回にわけて添加した。DIPEA(75.7mL,434mmol)を即座に、約1分間かけて3回にわけて添加した。この混合物を室温まで温め、そして一晩撹拌した。その生成物を1MのH3PO4(2回)、飽和NaHCO3、および飽和水性NaClで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、2-ブロモ-N-t-ブチル-ベンゼンスルホンアミド(112g)を淡褐色固体として得た。
【0273】
2-ブロモ-N-t-ブチル-ベンゼンスルホンアミド(10.0g,34.2mmol)を酢酸パラジウム(0.768g,3.42mmol)と混合した。酢酸カリウム(13.4g,137mmol)を添加し、続いてビス(ピナコラト)ジボロン(10.4g,41.1mmol)、次いでDMF(265mL,3420mmol)を添加した。得られた混合物を窒素下で撹拌し、2時間加熱還流し、次いで70℃で48時間加熱した。この混合物を氷上に注ぎ、EtOAc(200mL)で分配し、その有機物を飽和水性NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。その生成物をヘキサン:EtOAc 0%〜75%中でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物(6.3g)を得た。
【0274】
(例示的な合成3)
【0275】
【化59】

【0276】
化合物(3)(1当量)、4-ブロモ-ベンジルブロミド(1当量)、および炭酸カリウム(1当量)をDMFに溶解させ、そして得られた混合物を、その反応が完了するまで室温で撹拌する。次いで、その中間体(1当量)およびN-t-ブチル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼンスルホンアミド(1.2当量)を、トルエンおよびEtOHと合わせる。炭酸カリウム(2当量)を水に溶解させ、そしてこの混合物に添加する。この反応混合物を撹拌し、そしてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1当量)を迅速に添加し、そしてこの混合物を、この反応が完了するまで100℃で加熱する。その生成物を単離し、次いでニートなTFAと合わせてスルホンアミドを形成させ、次いでこれを単離する。次いで、このスルホンアミド(1当量)をDCMに溶解させる。次いで、クロロギ酸メチル(1.2当量)をDIPEAと一緒に添加する。この混合物を、この反応が完了するまで室温で撹拌した。次いで、そのカルボキシ保護基を、水中1MのLiOHでの処理により除去する。
【0277】
(調製4)
2-ブロモ-5-ブロモメチルピリジン
【0278】
【化60】

【0279】
2-ブロモ-5-メチルピリジン((3.1g,17.4mmol,1当量)の四塩化炭素(40mL,400mmol)中の溶液に、過酸化ベンゾイル(230mg,950μmol)およびNBS(3.4g,19.2mmol,1.1当量)を添加した。得られた混合物を一晩加熱還流した。その混合物を0℃で冷却し、そして濾過した。その濾液を濃縮して2-ブロモ-5-ブロモメチルピリジン(4.6g)を得、これをさらに精製せずに使用した。
【0280】
(調製5)
(テトラゾール-5-イル)フェニルボロン酸
【0281】
【化61】

【0282】
ベンゾニトリル(60.0g,581.9mmol,1.0当量)のDMF(無水)(600mL)中の溶液を、パージして窒素の不活性雰囲気で維持されたフラスコに入れた。塩化アンモニウム(40.5g,757.2mmol,1.3当量)を添加し、続いて塩化リチウム(2.0g,47.2mmol,0.1当量)を添加した。この混合物にアジ化ナトリウム(49.4g,756.8mmol,1.3当量)を添加した。得られた溶液を、その温度を100℃で維持しながら一晩撹拌した。その固体を濾別し、そしてEtOAcで洗浄した。その濾液を合わせ、そして減圧中で濃縮した。その残渣を10% NaOH水溶液(350ml)に溶解させた。得られた溶液をEtOAc(100mL)で抽出し、そしてその水層を合わせた。その溶液のpH値を、濃HClで2に調整した。その固体を濾別し、そして減圧下で乾燥させて、5-フェニル-1H-テトラゾール(78.0g)を白色固体として得た。ES m/z: [M+H]+ calcd for C7H6N4, 147.1; found 147.1。
【0283】
5-フェニル-1H-テトラゾール(50.0g,342.1mmol,1.0当量)のDCM(乾燥)(150mL)中の溶液を、パージして窒素の不活性雰囲気下で維持したフラスコに入れた。トリエチルアミン(45.0g,444.7mmol,1.30当量)を0℃でこの混合物に添加し、続いてクロロトリフェニルメタン(100.0g,358.7mmol,1.1当量)を数バッチで0℃で添加した。得られた溶液を室温で3時間撹拌した。その固体を濾過により集め、そしてそのフィルターケーキを冷EtOAc(1×100mL)および水(3×300mL)で洗浄した。その固体を減圧下で乾燥させて、5-フェニル-1-トリチル-1H-テトラゾール(125g)を白色固体として得た。ES m/z: [M+H]+ calcd for C26H20N4, 389.1, found 389.1。
【0284】
5-フェニル-1-トリチル-1H-テトラゾール(70.0g,180.2mmol,1.0当量)のTHF(乾燥)(560mL)中の溶液を、パージして窒素の不活性雰囲気で維持されたフラスコに入れた。この混合物を-25℃まで冷却した。ブチルリチウムを添加して、この混合物の色が少なくとも5分間赤色のままになるまで、この反応混合物中の微量の水をクエンチした。次いで、ブチルリチウム(80.0mL,2.5mol/L)をこの混合物に、約40分間にわたって、-25℃未満の温度で滴下により添加した。この混合物の温度を-5℃まで上昇させ、そしてこの混合物を-5℃で3時間撹拌した。次いで、この混合物を-25℃まで冷却し、そしてホウ酸トリイソプロピル(50.8g,270.1mmol,1.5当量)を滴下により添加した。この混合物を、25℃〜35℃の範囲の温度まで温め、そして2時間撹拌した。この混合物を再度0℃〜5℃の範囲に冷却し、そして3%水性AcOH(470mL)を30分〜40分かけてゆっくりと添加した。この混合物を30分間〜40分間撹拌し、次いで濾過した。その粗製生成物を水で洗浄し(2×300mL)、そして減圧下で乾燥させた。次いで、この粗製生成物を、EtOAc(1g/15ml)からの再結晶により精製して、2-(1-トリチル-1H-テトラゾール-5-イル)フェニルボロン酸(54g)を白色固体として得た。ES m/z: [M+H]+ calcd for C26H21BN4O2, 433.1,found 433.1。
【0285】
1H-NMR (400 MHz, DMSO, 400 ppm): δ(ppm) = 7.96 (br, 2H), 7.84-7.86 (m, 1H), 7.51-7.53 (m, 1H), 7.44-7.47 (m, 2H), 7.39-7.41(m, 9H), 7.08-7.10 (m, 6H)。
【0286】
2-(1-トリチル-1H-テトラゾール-5-イル)フェニルボロン酸(11.5g,26.6mmol)を、1,4-ジオキサン(41.5mL,532.1mmol)および1,4-ジオキサン中4MのHCl(13.3mL,53.2mmol)と合わせた。この混合物を2時間撹拌した。EtOAc(100mL)を添加した。10MのNaOHを、pHが約9になるまで、絶えず撹拌しながら添加した。その有機層を抽出して処分した。その水層をpH約2まで酸性化した。その生成物を砕いて濾過し、そして乾燥させて、表題化合物(3.5g)を白色固体として得た。
【0287】
(例示的な合成4)
【0288】
【化62】

【0289】
化合物(3)(1当量)、2-ブロモ-5-ブロモメチルピリジン(1当量)、および炭酸カリウム(1.4当量)をDMFに溶解させ、そして得られた混合物を、その反応が完了するまで室温で撹拌する。次いで、この中間体を、N-t-ブチル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼンスルホンアミド、炭酸カリウム、およびパラジウム触媒と、上記のように合わせる。この中間体をまた、(テトラゾール-5-イル)フェニルボロン酸(1.2当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.5当量)、水中1MのNaOH(4当量)およびMeOHと合わせて、この反応が完了するまで加熱してもよい。次いで、この生成物を単離し得、そしてそのカルボキシ保護基を、1NのNaOHでの処理により除去し得る。
【0290】
(実施例1)
本明細書中に記載される手順に従って、適切な出発物質および試薬を代わりに用いて、式IIa〜XIaを有する化合物1-1〜1-98もまた調製され得る:
【0291】
【化63−1】

【0292】
【化63−2】

【0293】
【化63−3】

【0294】
【化63−4】

【0295】
【化63−5】

(実施例2)
本明細書中に記載される手順に従って、適切な出発物質および試薬を代わりに用いて、式IIb〜XIbを有する化合物2-1〜2-19もまた調製され得る:
【0296】
【化64−1】

【0297】
【化64−2】

【0298】
【化64−3】

(実施例3)
本明細書中に記載される手順に従って、適切な出発物質および試薬を代わりに用いて、式IIc〜XIcを有する化合物3-1〜3-4もまた調製され得る:
【0299】
【化65−1】

【0300】
【化65−2】

(実施例4)
本明細書中に記載される手順に従って、適切な出発物質および試薬を代わりに用いて、式IId〜XIdを有する化合物4-1〜4-6もまた調製され得る:
【0301】
【化66−1】

【0302】
【化66−2】

(実施例5)
本明細書中に記載される手順に従って、適切な出発物質および試薬を代わりに用いて、式IIe〜XIeを有する化合物5-1もまた調製され得る:
【0303】
【化67−1】

【0304】
【化67−2】

(アッセイ1)
ATおよびAT放射性リガンド結合アッセイ
これらのインビトロアッセイを、アンジオテンシンII 1型(AT)レセプターおよびアンジオテンシンII 2型(AT)レセプターと結合する試験化合物の能力を評価するために用いる。
【0305】
ヒトATレセプターまたはヒトATレセプターを発現する細胞からの膜調製
クローン化したヒトATまたはATレセプターをそれぞれ安定的に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO−K1)由来の細胞系を、5%CO、37℃の加湿したインキュベーター中、10%ウシ胎仔血清、10μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンおよび500μg/mlゲネティシン(geneticin)を含むHAM’s−F12培地中で成長させる。100nM PD123,319(ATアンタゴニスト)をさらに加えて、ATレセプター発現細胞を成長させる。培養液が80〜95%コンフルエンスに達したら、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水中で十分に洗浄し、5mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)でリフトする。細胞を遠心分離にかけてペレット化し、メタノール−ドライアイス中でスナップ冷凍し(snap frozen)、使用するときまで−80℃で保存する。
【0306】
膜調製のために、細胞ペレットを、溶解緩衝液(25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)/HCl pH7.5(4℃で)、1mM EDTA、1錠の完全プロテアーゼインヒビターカクテル錠剤、50mL緩衝液当たり2mMのEDTA(Rocheカタログ番号1697498、Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、IN))中に再懸濁し、氷上でタイトフィットしたDounceガラス製ホモジナイザー(10ストローク)を用いてホモジナイズする。ホモジネートを1000×gで遠心分離にかけ、上澄みを収集し、20,000×gで遠心分離にかける。最終のペレットを膜緩衝液(75mM Tris/HCl pH7.5、12.5mM MgCl、0.3mM EDTA、1mMエチレングリコール四酢酸、250mM スクロース(4℃))中に再懸濁し、20G標準規格注射針(gauge needle)で押し出してホモジナイズする。膜懸濁液のタンパク質濃度を、Bradford(1976年)Anal Biochem.72巻:248〜54頁に記載の方法で測定する。膜をメタノール−ドライアイス中でスナップ冷凍し、使用するときまで−80℃で保存する。
【0307】
ヒトATおよびATアンジオテンシンレセプターに対する化合物の親和力を測定するためのリガンド結合アッセイ
結合アッセイを、96ウェルAcrowellフィルタープレート(Pall Inc.、カタログ番号5020)を用いて、アッセイ緩衝液(50mM Tris/HCl pH7.5(20℃で)、5mM MgCl、25μM EDTA、0.025%ウシ血清アルブミン(BSA))中、ヒトATレセプターを含む膜について0.2μg膜タンパク質、またはヒトATレセプターを含む膜について2μg膜タンパク質を含む100μLの合計アッセイ体積で実施する。リガンドのK値を測定するための飽和結合試験を、N末端をユウロピウム標識したアンジオテンシン−II([Eu]AngII、H−(Eu−N)−Ahx−Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−OH;PerkinElmer、Boston、MA)を用いて0.1nM〜30nMの範囲の8つの異なる濃度で実施する。試験化合物のpK値の測定のための置換アッセイを、[Eu]AngIIを2nMで用いて、1pM〜10μMの範囲の11つの異なる薬物濃度で実施する。薬物をジメチルスルホキシド中に1mMの濃度で溶解し、そこからアッセイ緩衝液中に連続的に希釈する。非特異的結合を10μM非標識化アンジオテンシン−IIの存在下で測定する。アッセイ物を、暗所で、室温または37℃で120分間インキュベートし、Acrowellフィルタープレートで迅速濾過して結合反応を終了させ、続いてWaters濾過マニホールドを用いて200μL氷冷洗浄緩衝液(50mM Tris/HCl pH7.5(4℃で)、5mM MgCl)で3回洗浄する。プレートをタッピング乾燥(tapped dry)し、振とう機を用いて50μl DELFIAエンハンスメント溶液(PerkinElmerカタログ番号4001−0010)で、室温で5分間インキュベートする。フィルターに結合した[Eu]AngIIを、時間分解蛍光(TRF)法を用いてFusionプレートリーダー(PerkinElmer)で直ちに定量化する。結合データを、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)で、一部位競合(one−site competition)のための3パラメーターモデルを用いて非線形回帰分析法により分析する。BOTTOM(曲線最小値)を、10μMアンジオテンシンIIの存在下で測定した非特異的結合についての値に当てはめる。薬物についてのK値を、Chengら、(1973年)Biochem Pharmacol.22巻(23号):3099〜108頁に記載されているチェン−プラソフ式により、[Eu]AngIIの観察されたIC50値およびK値から算出する。ATレセプターについてのATレセプターに対する試験化合物の選択性を、AT/ATの比として算出する。試験化合物の結合親和力はK値の負の常用対数(pK)で表す。
【0308】
このアッセイで、より高いpK値は、試験化合物が、試験レセプターに対してより強い結合親和力を有していることを示す。本発明の化合物は、AT1レセプターにおいて、約7.0以上のpKiを有すると予測される。
【0309】
(アッセイ2)
ヒトNEPおよびラットNEPならびにヒトACEでのインヒビター効力(IC50)の定量化のためのインビトロアッセイ
ヒトおよびラットネプリライシン(EC 3.4.24.11’NEP)ならびにヒトアンギオテンシン変換酵素(ACE)での化合物の阻害活性を、以下に示すインビトロアッセイを用いて測定する。
【0310】
ラット腎臓からのNEP活性の抽出
ラットNEPを、成体SDラットの腎臓から調製する。全腎臓を冷却リン酸緩衝化生理食塩水中で洗浄し、氷冷溶解緩衝液(1%Triton X−114、150mM NaCl、50mMトリス pH7.5;Bordier(1981年)J.Biol.Chem.256巻:1604〜1607頁)で腎臓1グラム当たり5mLの緩衝液の比となるように調製する。サンプルを、polytron手持ち式組織グラインダーを用いて氷上でホモジナイズする。ホモジネートを、旋回式バケットローター(swinging bucket rotor)を用いて1000×g、3℃で5分間遠心分離にかける。ペレットを、20mLの氷冷溶解緩衝液中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートする。次いでサンプル(15〜20mL)を、25mLの氷冷クッション緩衝液(6重量/体積%スクロース、50mM pH7.5トリス、150mM NaCl、0.06%、Triton X−114)上で層状にし、37℃で3〜5分間加熱し、旋回式バケットローターを用いて1000×g、室温で3分間遠心分離にかける。2つの上層を吸引除去し、濃縮された膜画分を含む粘性の高い油状沈殿物が残る。グリセロールを加えて50%の濃度にし、サンプルを−20℃で保存する。タンパク質濃度を、標準物質としてBSAを用いてBCA検出装置で定量化する。
【0311】
酵素阻害アッセイ
組み換えヒトNEPおよび組み換えヒトACEを市場から得る(R&D Systems、Minneapolis、MN、それぞれカタログ番号1182−ZNおよび929−ZN)。ヒトNEPおよびACEアッセイでは蛍光発生ペプチド基質Mca−BK2(Mca−Arg−Pro−Pro−Gly−Phe−Ser−Ala−Phe−Lys(Dnp)−OH;Johnsonら、(2000年)Anal.Biochem.286巻:112〜118頁)を使用し、ラットNEPアッセイではMca−RRL(Mca−DArg−Arg−Leu−(Dnp)−OH;Medeirosら、(1997年)Braz.J.Med.Biol.Res.30巻:1157〜1162頁)を使用する(どちらもAnaspec、San Jose、CAから)。
【0312】
アッセイを、アッセイ緩衝液(50mM Tris/HCl、25℃で、100mM NaCl、0.01%ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(Tween−20)、1μM Zn、0.025%BSA)中に10μMの濃度でそれぞれの蛍光発生ペプチドを用いて、384ウェル白色不透明プレートで、室温で実施する。ヒトNEPおよびヒトACEを、室温で20分間以内に5μMのMca−BK2の定量的なタンパク質分解をもたらす濃度で用いる。ラットNEP酵素調製物を、室温で20分間以内に3μMのMca−RRLの定量的なタンパク質分解をもたらす濃度で用いる。
【0313】
試験化合物を、アッセイ緩衝液中、10μM〜20pMの12段階の濃度で希釈する。アッセイを、25μLの酵素を12段階の濃度のそれぞれで12.5μLの試験化合物に加えて開始させる。試験化合物を酵素と10分間平衡化させ、続いて12.5μLの蛍光発生基質を加えて反応を開始させる。インキュベーションの20分後に、10μLの3.6%氷酢酸を加えて反応を停止させる。
【0314】
スルフヒドリル含有試験化合物については、試験化合物を、400μMの濃度のトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩を含むアッセイ緩衝液(Thermo Scientific、Rockford、IL)(TCEP)中に希釈し得る。次いで、試験化合物を室温で40分間還元し、続いて酵素を加える。次いで、試験化合物を酵素で20分間平衡化させ、続いて蛍光発生基質を加える。上記と同様にして反応を停止させる。
【0315】
プレートを、それぞれ320nmおよび405nmに設定した励起波長および発光波長で蛍光光度計を用いて読み取る。生データ(相対的蛍光単位)を、3つの標準的なNEPインヒビターおよびACEインヒビターをそれぞれ用いて、平均最高読取り値(average high reading)(阻害なし、100%酵素活性)および平均最低読取り値(完全阻害、最高インヒビター濃度、0%酵素活性)から活性%に正規化する。正規化したデータの非線形回帰を、一部位競合モデル(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用いて実施する。データはpIC50値として示す。
【0316】
本発明の化合物は、プロドラッグである化合物を除いて、NEP酵素について、約6.0以上のpIC50を有すると予測される。
【0317】
(アッセイ3)
麻酔ラットにおける、ACE、ATおよびNEP活性についての薬力学的(PD)アッセイ
オスの正常血圧SDラットを120mg/kg(i.p.)のイナクチンで麻酔をかける。麻酔がかかったら、頸静脈、頸動脈(PE50管)および膀胱(URI−1尿用シリコーンカテーテル)にカニューレを挿入し、気管切開を行って(テフロン(登録商標)針、サイズ14ゲージ)自発呼吸し易いようにする。次いでこれらの動物を60分間の安定化(stablization)期間で保持し、5mL/kg/hで生理食塩水(0.9%)を連続的に注入し続けて水分補給し、尿の産生を確実にする。実験期間を通して加温パッドで体温を保持する。60分間の安定化期間の最後の時点でこれらの動物に、2用量のアンジオテンシン(ACEインヒビター活性についてAngI、1.0μg/kg;ATレセプターアンタゴニスト活性についてAngII、0.1μg/kg)を、間隔を15分間空けて静脈内に(i.v.)投与する。アンジオテンシン(AngIまたはAngII)の2回目の投与の15分後に、これらの動物をビヒクルまたは試験化合物で処置する。5分後、これらの動物を、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP;30μg/kg)をボーラス静脈内注入してさらに処置する。ANP処置後直ちに採尿(予め計量したエッペンドルフ管中に)を開始し、60分間続行する。採尿中、30分および60分でこれらの動物をアンジオテンシン(AngIまたはAngII)に再曝露する。Notocord装置(Kalamazoo、MI)で血圧測定を行う。cGMPアッセイに使用するときまで、尿サンプルを−20℃で凍結させておく。尿のcGMP濃度を、市販のキット(Assay Designs、Ann Arbor、Michigan、カタログ番号901−013)を用いて酵素イムノアッセイにより測定する。尿体積を重量測定法で測定する。尿のcGMP排出量を、尿排出量と尿のcGMP濃度との積として算出する。ACE阻害またはAT拮抗を、それぞれAngIまたはAngIIに対する昇圧反応の阻害率%を定量化することによって評価する。NEP阻害は、尿のcGMP排出量のANP誘発上昇の相乗作用を定量化することによって評価する。
【0318】
(アッセイ4)
高血圧症の意識下SHRモデルにおけるインビボでの降圧効果の評価
自然発生高血圧ラット(SHR、14〜20週齢)を、実験場に到着して最低で48時間順化させる。試験の7日前に、これらの動物を、ナトリウム欠乏SHR(SD−SHR)については0.1%のナトリウムを含む制限付き低塩食で飼育するか、または、ナトリウム充足(sodium repleted)SHR(SR−SHR)については正常食で飼育する。試験の2日前に、これらの動物を、PE10ポリエチレン管を介して、血圧測定用および試験化合物送達用にそれぞれ、選択されたシリコーン管(サイズ0.020ID×0.037OD×0.008壁)と連結された頸動脈および頸静脈(PE50ポリエチレン管)中にカテーテルを入れて外科的に処置する。これらの動物を、適切な術後ケアにより回復させる。実験当日、これらの動物をそのケージに入れ、スイベルを介してカテーテルを目盛り付き圧力トランスデューサーに連結する。1時間順化させた後、少なくとも5分間にわたって基線を確保する。次いでこれらの動物に、60分毎に増大蓄積用量でビヒクルまたは試験化合物を静脈内で投与し、続いて各投与後に、0.3mL生理食塩水を投与してカテーテルをきれいにする。Notocordソフトウェア(Kalamazoo、MI)を用いて試験期間中連続的にデータを記録し、電子デジタル信号として保存する。いくつかの試験では、単一の静脈内または経口(強制飼養)投与の効果を、投与後少なくとも6時間モニターする。測定したパラメーターは、血圧(収縮期、拡張期および平均動脈圧)と心拍数である。
【0319】
(アッセイ5)
高血圧症の意識下DOCA塩ラットモデルにおけるインビボでの降圧効果の評価
CDラット(オス、成体、200〜300g、Charles River Laboratory、USA)を、実験場に到着して最低で48時間順化させ、続いてそれらを高塩分食で飼育する。高塩分食を開始して1週間後、DOCA塩ペレット(100mg、21日間の放出時間、Innovative Research of America、Sarasota、FL)を皮下に埋め込み、片側腎摘出を行う。酢酸デオキシコルチコステロン塩(DOCA塩)ペレット埋め込み後16日または17日目に動物に、PE50ポリエチレン管で頸動脈および頸静脈中にカテーテルを外科的に埋め込み、次にこれを、PE10ポリエチレン管を介して、血圧測定用および試験化合物送達用にそれぞれ、選択されたシリコーン管(サイズ0.020ID×0.037OD×0.008壁)と連結した。これらの動物を、適切な術後ケアにより回復させる。
【0320】
実験当日、各ラットをそのケージに入れ、スイベルを介して目盛り付き圧力トランスデューサーに連結する。1時間順化させた後、少なくとも5分間にわたって基線を確保する。次いでこれらの動物に、60分毎に増大蓄積用量でビヒクルまたは試験化合物を静脈内で投与し、続いて各投与後に、0.3mL生理食塩水を投与してカテーテルをフラッシュする。いくつかの試験では、単一の静脈内または経口(強制飼養)投与の効果を試験し、これを投与後少なくとも6時間モニターする。Notocordソフトウェア(Kalamazoo、MI)を用いて試験期間中連続的にデータを記録し、電子デジタル信号として保存する。測定したパラメーターは、血圧(収縮期、拡張期および平均動脈圧)と心拍数である。蓄積用量および単一用量について、アッセイ4で説明したようにして、平均動脈圧(MAP、mmHg)または心拍数(HR、bpm)の変化%を測定する。
【0321】
本発明を、その特定の態様または実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えるか、または同等物を置き換えることができることを理解されよう。さらに、適用される特許法および規則によって受容される範囲で、本明細書で引用したすべての出版物、特許および特許出願を、各文献が個別に参照により本明細書に組み込まれているかのように、全体として参照により本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化68】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、式Iにおいて:
Zは:
【化69】

から選択されるチオフェン、ピロール、チアゾール、またはフランを表わし;
Arは:
【化70】

から選択され;
R1は、-SO2NHC(O)R1a、テトラゾリル、-COOR1b
【化71】

から選択され;
ここでR1aは、-C1〜6アルキル、-C0〜6アルキレン-OR、-C3〜7シクロアルキル、-C0〜5アルキレン-NR1bR1b、ピリジル、イソオキサゾリル、メチルイソオキサゾリル、ピロリジニル、モルホリニル、またはハロで置換されたフェニルであり;ここで各R1bは独立して、Hおよび-C1〜6アルキルから選択され;
aは、0、1、または2であり;R2はFであり;
R3は、-C2〜5アルキルおよび-O-C1〜5アルキルから選択され;
R4は、-CH2-SR4a、-CH2-N(OH)C(O)H、-CH(R4b)C(O)NH(OR4d)、および-CH(R4b)COOR4cから選択され;ここでR4aは、Hまたは-C(O)-C1〜6アルキルであり;R4bは、Hまたは-OHであり;そしてR4cは、H、-C1〜6アルキル、-C0〜6アルキレンモルホリン、-CH2OC(O)O-C1〜6アルキル、-CH(CH3)OC(O)O-C1〜6アルキル、-CH(CH3)OC(O)O-C3〜7シクロアルキル、または:
【化72】


であり;
R4dは、Hまたは-C(O)-R4eであり;そしてR4eは、-C1〜6アルキル、-C1〜6アルキル-NH2またはアリールであり;そして
R5は、-C1〜6アルキル、-CH2-フラニル、-CH2-チオフェニル、ベンジル、および1つ以上のハロ基、-CH3基、または-CF3基で置換されたベンジルから選択され;
ここでArにおける各環は、-OH、-C1〜6アルキル、-C2〜4アルケニル、-C2〜4アルキニル、-CN、ハロ、-O-C1〜6アルキル、-S-C1〜6アルキル、-S(O)-C1〜6アルキル、-S(O)2-C1〜4アルキル、フェニル、-NO2、-NH2、-NH-C1〜6アルキルおよび-N(C1〜6アルキル)2から独立して選択される1個〜3個の置換基で必要に応じて置換されており、ここで各アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、1個〜5個のフルオロ原子で必要に応じて置換されている、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
Arが:
【化73】

【化74】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が、-SO2NHC(O)CH3、-SO2NHC(O)CH2CH3、-SO2NHC(O)OCH3、-SO2NHC(O)OCH2CH3、-SO2NHC(O)CH2OCH3、-SO2NHC(O)CH2OH、-SO2NHC(O)CH(CH3)OH、-SO2NHC(O)C(CH3)2OH、-SO2NHC(O)CH2OCH3、-SO2NHC(O)(CH2)2OCH3、-SO2NHC(O)-シクロプロピル、-SO2NHC(O)NH(CH3)、-SO2NHC(O)N(CH3)2、-SO2NHC(O)NH(CH2CH3)、-SO2NHC(O)C(CH3)2NH2、-SO2NHC(O)-2-ピリジル、-SO2NHC(O)-4-ピリジル、-SO2NHC(O)-5-イソオキサゾリル、-SO2NHC(O)-3-イソオキサゾリル-5-メチル、-SO2NHC(O)-1-ピロリジル、-SO2NHC(O)-4-モルホリニル、-SO2NHC(O)フェニル、-SO2NHC(O)-2-フルオロフェニル、1H-テトラゾール-5-イル、-COOH、-C(O)OCH3
【化75】

である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
R3が、プロピル、エチル、ブチル、またはエトキシである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R4が、-CH2SH、-CH2N(OH)C(O)H、-CH2C(O)NH(OH)、-CH(OH)C(O)NH(OH)、-CH(OH)COOH、または-CH2COOHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R4が、-CH2-S-C(O)CH3、-CH2C(O)NH-OC(O)CH3、-CH2C(O)NH-OC(O)-フェニル、-CH2C(O)NH-OC(O)-CH(NH2)[CH(CH3)2]、-CH(OH)C(O)OCH3、-CH2C(O)OCH3、-CH2C(O)OCH2CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)2、-CH2C(O)O(CH2)2CH3、-CH2C(O)O(CH2)3CH3、-CH2C(O)O(CH2)4CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)OCH2CH3、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)OCH(CH3)2、-CH2C(O)OCH(CH3)OC(O)O-シクロヘキシル、
【化76】

である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R5が、i-ブチル、-CH2-フラン-2-イル、-CH2-チオフェン-3-イル、ベンジル、2-ブロモベンジル、2-クロロベンジル、2-フルオロベンジル、3-フルオロベンジル、4-フルオロベンジル、2-メチルベンジル、または2-トリフルオロメチルベンジルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項9】
利尿薬、βアドレナリン作用性レセプター遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素インヒビター、ATレセプターアンタゴニスト、ネプリライシンインヒビター、非ステロイド系抗炎症薬、プロスタグランジン、抗脂質薬、抗糖尿病薬、抗血栓剤、レニンインヒビター、エンドセリンレセプターアンタゴニスト、エンドセリン変換酵素インヒビター、アルドステロンアンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシンインヒビター、バソプレシンレセプターアンタゴニストおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される治療剤をさらに含む、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物を調製するためのプロセスであって:
(a)式1の化合物を式2の化合物とカップリングさせて:
【化77】


式:
【化78】


を有する化合物を生成する工程であって、ここで:Ar*はAr-R1*を表わし、ここでR1*は、R1または保護形態のR1であり;そしてR4*は、R4または保護形態のR4を表わす、工程;および必要に応じて、R1*が保護形態のR1でありかつ/またはR4*が保護形態のR4である場合、該生成物を脱保護する工程;
(b)R1*が保護形態のR1でありかつ/またはR4*が保護形態のR4である場合、工程(a)の生成物を脱保護して、式Iの化合物を生成する工程
を包含する、プロセス。
【請求項11】
【化79】

からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の合成において有用な中間体またはその塩であって、
ここで:Ar*はAr-R1*であり;R1*は、-SO2NH-P6またはテトラゾリル-P4であり;R4*は、-CH2-S-P3、-CH2-N(O-P5)-C(O)H、-CH(R4b)C(O)NH(O-P5)、または-CH(R4b)COO-P2であり;P2はカルボキシ保護基であり;P3はチオール保護基であり;P4はテトラゾール保護基であり;P5はヒドロキシル保護基であり;そしてP6はスルホンアミド保護基である、中間体。
【請求項12】
治療において使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
高血圧症または心不全の治療において使用するための、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
高血圧症または心不全の治療のための医薬の製造のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2013−517295(P2013−517295A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549148(P2012−549148)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/021514
【国際公開番号】WO2011/090929
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】