説明

交流モータの制御装置

【課題】交流モータを駆動するシステムにおいて、交流モータの各相の電流を検出するために設けられた電流センサの出力特性バラツキを補正する。
【解決手段】交流モータの非駆動時に、交流モータを制御するインバータのスイッチング素子のオン/オフを制御して、交流モータの2相に直流電流が流れるように制御し、そのときに、2相電流を検出するために設けられた電流センサの出力に基づいて、各電流センサの出力を補正するための補正値を算出する。そして、交流モータの駆動時に、補正値を用いて補正した電流センサの出力に基づいてインバータを制御して、交流モータを駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相からなる交流モータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交流モータを動力としたシステムが種々提案されている。このようなシステムでは、直流電源(二次電池)の電圧を昇圧コンバータで昇圧した直流電圧を電源ラインに発生させ、この電源ラインに、インバータを介して交流モータを接続し、昇圧コンバータで昇圧した直流電圧をインバータで交流電圧に変換して交流モータを駆動したり、交流モータで発電した交流電圧をインバータで直流電圧に変換して、この直流電圧を昇圧コンバータで降圧してバッテリに回収させたりしている。
【0003】
ここで、上記のように交流モータ等を用いたシステムでは、モータに流れる電流を電流センサにより計測し、該計測電流に基づいてモータの駆動制御が行われている。例えば、特許文献1には、モータ制御による制御精度を向上させるために、電流センサのゼロ点における温度ドリフトによる影響を排除する技術が開示されている。具体的には、車両のイグニッションスイッチが切り替わった後、モータが駆動されていない時点において、電流センサの出力値(計測電流)と電流センサ近傍の温度との関係に基づいて、電流センサのゼロ点の温度特性を学習し、その後、電流センサの出力に反映させることで、電流センサのゼロ点における温度ドリフトの影響を排除して、モータの制御精度の向上を図っている。
【特許文献1】特開2005−20877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、交流モータを用いた制御の場合には、交流モータに流れる三相(U相、V相、W相)の電流のうち二相(例えば、U相、W相)に流れる電流をそれぞれ電流センサにて計測して、交流モータを制御している。この場合、各電流センサにおいて、実際の電流値に対する電流センサの出力値(電流センサの出力特性)が異なる場合には、交流モータの各相に流れる電流等を精度良く制御することができないため、モータの制御精度が低下することが懸念される。
【0005】
また、上記特許文献1に開示された技術では、電流センサのゼロ点を補正する技術が開示されているに過ぎないため、各電流センサの出力特性の違いについては補正することが出来なかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、各電流センサの出力特性の違いによる交流モータの制御精度の低下を抑制することが可能な交流モータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本願の請求項1に係る発明では、三相からなる交流モータと、電源ラインに接続され、交流モータに流れる電流を制御するインバータと、交流モータの三相のうち一相(以下、「第1の相」と表記する)に流れる電流を検出する第1の電流センサと、交流モータの三相のうち第1の相とは別の一相(以下、「第2の相」と表記する)に流れる電流を検出する第2の電流センサと、第1の電流センサと第2の電流センサとの出力に基づいてインバータを制御して交流モータを駆動制御する制御手段とを備えた交流モータの制御装置において、交流モータの非駆動時に、第1の相および第2の相の巻線に直流電流が流れるようにインバータのスイッチング素子をオン/オフ制御しているときに、第1の電流センサと第2の電流センサとの出力に基づいて、補正の対象となる電流センサ(以下、「補正対象電流センサ」と表記する)の出力を補正するための補正値を算出する補正値算出手段を備え、制御手段は、交流モータの駆動時に、補正値算出手段により算出された補正値を用いて補正対象電流センサの出力を補正して、該補正された補正対象電流センサの出力に基づいてインバータを制御して、交流モータの駆動制御する。
【0008】
このように、交流モータの非駆動時に、交流モータの各相の巻線に直流電流を流すようにすることで、各相に流れる電流を検出する各電流センサの出力(出力特性)の違いを補正するための補正値を算出することができ、交流モータの駆動時に、該補正値を用いてインバータを制御することで、精度良く交流モータの駆動制御を行うことが可能となる。
【0009】
この場合、請求項2に係る発明のように、補正値算出手段は、交流モータの非駆動時に、第1の相および第2の相の巻線に直流電流が流れるようにインバータのスイッチング素子をオン/オフ制御しているときに、第1の電流センサと第2の電流センサとの出力に基づいて、各電流センサの出力の差が小さくなるように補正対象電流センサの出力の補正値を算出すると良い。これにより、各交流モータの出力の相対的な違いを補正することが可能となる。
【0010】
また、請求項3に係る発明のように、補正対象電流センサは、第1の電流センサと第2の電流センサの少なくともいずれか1つを補正すると良い。
【0011】
また、請求項4に係る発明のように、三相からなる交流モータと、電源ラインに接続され、交流モータに流れる電流を制御するインバータと、交流モータの三相のうち一相(以下、「第1の相」という)に流れる電流を検出する第1の電流センサと、交流モータの三相のうち第1の相とは別の一相(以下、「第2の相」)に流れる電流を検出する第2の電流センサと、第1の電流センサと第2の電流センサとの出力に基づいてインバータを制御して交流モータを駆動制御する制御手段とを備えた交流モータの制御装置において、前記電源ラインの電力供給源となる第1の二次電池と、この第1の二次電池に流れる電流を検出する第3の電流センサと、交流モータの非駆動時に、第1の相および第2の相の巻線に直流電流が流れるようにインバータのスイッチング素子をオン/オフ制御しているときに、第1の電流センサと第2の電流センサと第3の電流センサとの出力に基づいて、補正の対象となる電流センサ(以下、「補正対象電流センサ」という)の出力を補正するための補正値を算出する補正値算出手段とを備え、制御手段は、交流モータの駆動時に、補正値算出手段により算出された補正値を用いて補正対象電流センサの出力を補正して、該補正された補正対象電流の出力に基づいてインバータを制御して、交流モータの駆動制御する。 このように、交流モータの非駆動時に、交流モータの各相の巻線に直流電流を流すようにすることで、各相に流れる電流を検出する各電流センサの出力(出力特性)の違いを補正するための補正値を算出することができ、交流モータの駆動時に、該補正値を用いてインバータを制御することで、精度良く交流モータの駆動制御を行うことが可能となる。また、このとき、第1の二次電池に流れる電流を検出する第3の電流センサを考慮することで、交流モータ駆動システム全体の電流センサの出力の相対的なバラツキを補正することが可能となる。
【0012】
また、請求項5に係る発明のように、補正値算出手段は、交流モータの非駆動時に、第1の相および第2の相の巻線に直流電流が流れるようにインバータのスイッチング素子をオン/オフ制御しているときに、第1の電流センサと第2の電流センサと第3の電流センサとの出力に基づいて、各電流センサの出力の差が小さくなるように補正対象電流センサの出力の補正値を算出すると良い。これにより、各交流モータの出力の相対的な違いを補正することが可能となる。
【0013】
また、請求項6に係る発明のように、補正対象電流センサは、第1の電流センサと第2の電流センサと第3の電流センサとの少なくともいずれか2つとすると良い。
【0014】
また、請求項7に係る発明のように、電源ラインの電力供給源となる第1の二次電池と、第1の二次電池から電源ラインへの電力の供給をオン/オフするスイッチとを備え、スイッチをオンすることで、第1の二次電池から前記電源ラインに電力を供給しているときに、第1の相および第2の相の巻線に直流電流が流れるようにインバータのスイッチング素子をオン/オフ制御すると良い。このようにすれば、交流モータの非駆動時に、電源ラインの電力供給源となる第1の二次電池を電源として使用して、交流モータの各相の巻線に直流電流を流すことができる。
【0015】
また、請求項8に係る発明のように、第1の二次電池から電源ラインに電力を供給する際に、抵抗を介した回路に切り替える切替手段を備え、切替手段により抵抗を介した回路に切り替えた状態で、第1の二次電池から電源ラインに電力を供給しているときに、第1の相および第2の相の巻線に直流電流が流れるようにインバータのスイッチング素子をオン/オフ制御すると良い。これにより、複数の箇所で電流センサの出力(出力特性)の違いを補正することが可能となるため、精度良く電流センサの出力の違いを補正することが可能となる。
【0016】
また、請求項9に係る発明のように、電源ラインに電圧を印加する第2の二次電池と、第2の二次電池から電源ラインに印加する電圧を調整するコンバータとを備え、コンバータにより第2の二次電池の電圧を調整して電源ラインに電圧を印加しているときに、第1の相および第2の相の巻線に直流電流が流れるようにインバータのスイッチング素子をオン/オフ制御すると良い。このように、コンバータにより第2の二次電池の電圧を調整して電源ラインに電圧を印加して、これを直流電源として交流モータの各相の巻線に直流電流を流すようにしても良く、この場合、交流モータに印加する電圧をコンバータにより調整することが可能となるため、交流モータの各相の巻線に直流電流を流すときの電流値を可変に設定することが可能となる。
【0017】
また、請求項10に係る発明のように、インバータのスイッチング素子のオン/オフの制御量を可変に設定することで、第1の相および第2の相の巻線に流れる直流電流を調整すると良い。このように、インバータのスイッチング素子のオン/オフを制御することでも、交流モータの各相の巻線に直流電流を流すときの電流値を可変に設定することが可能となる。
【0018】
また、請求項11に係る発明のように、交流モータは、車両の駆動源として車両に搭載され、該車両の自動変速機のシフト位置を検出するシフト位置検出手段を備え、補正値算出手段は、シフト位置検出手段により自動変速機のシフト位置がパーキングレンジに位置していると検出されたときに、第1の相および第2の相の巻線に直流電流が流れるようにインバータのスイッチング素子のオン/オフを制御すると良い。
【0019】
このように、シフト位置がパーキングに位置していれば、交流モータの各相の巻線に直流電流を流したときに、その直流電流により交流モータが不用意に動いた場合でも、車両が動き出すことを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[本実施形態(1)]
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいて交流モータを用いたシステム全体の概略構成を説明する。
二次電池等からなる直流電源20(第1の二次電池)には昇圧コンバータ21が接続され、この昇圧コンバータ21は、直流電源20の直流電圧を昇圧してシステム電源ライン22とアースライン23との間に直流のシステム電圧を発生させたり、このシステム電圧を降圧して直流電源20に電力を戻す機能を持つ。システム電源ライン22とアースライン23との間には、システム電圧を平滑化する平滑コンデンサ24や、システム電圧を検出する電圧センサ25が接続され、電流センサ26によってシステム電源ライン22に流れる電流が検出される。更に、システム電源ライン22とアースライン23との間には、電圧制御型の三相の第1のインバータ27が接続され、第1のインバータ27で第1の交流モータ11が駆動される。
【0021】
ここで、交流モータ11を車両の駆動源として用いた場合や、交流モータ11を車両の発電機として用いた場合について説明する。このような場合、第1及び第2の交流モータ11や昇圧コンバータ21の運転を制御するモータ制御装置37と、その他に車両全体を総合的に制御するメイン制御装置(図示せず)とを設け、このメイン制御装置によりアクセル操作量(アクセルペダルの操作量)を検出するアクセルセンサ、車両の前進運転や後退運転やパーキング或はニュートラルなどのシフト操作を検出するシフトスイッチ、ブレーキ操作を検出するブレーキスイッチ、車速を検出する車速センサ等の各種センサやスイッチの出力信号を読み込んで車両の運転状態を検出する。このメイン制御装置は、モータ制御装置19との間で制御信号やデータ信号を送受信し、制御装置19によって車両の運転状態に応じて交流モータ13の運転を制御する。
【0022】
また、内燃機関(エンジン)と交流モータとを動力とするハイブリッド車の場合には、上記システムに、更にエンジンの運転を制御するエンジン制御装置を設け、メイン制御装置は、エンジンの運転を制御するエンジン制御装置と、交流モータ13の運転を制御するモータ制御装置19との間で制御信号やデータ信号を送受信し、各制御装置によって車両の運転状態に応じてエンジン、交流モータ13の運転を制御する。近年、交流モータを2つ設け、それぞれ車両の駆動源或は発電機として用いるシステムが考案されている。
【0023】
尚、交流モータ13は、インバータ16で負のトルクで駆動されるときには発電機として機能する。例えば、負のトルクで駆動されるときに第1の交流モータ17で発電した交流電力がインバータ16で直流電力に変換されて二次電池10に充電される。ハイブリッド車の場合には、エンジンの動力の一部がプラネタリギヤを介して第1の交流モータ17に伝達されて第1の交流モータ17で発電し、その発電電力が第1の交流モータ17とは別に設けられた第2の交流モータ(図示せず)に供給されて第2の交流モータが電動機として機能する。また、エンジンの動力が遊星ギヤ機構で分割されてリングギヤに伝達されるトルクが車両走行に要求されるトルクより大きくなる状態では、第1の交流モータ17が電動機として機能し、この場合、第2の交流モータが発電機として機能して、その発電電力が第1の交流モータ17に供給される。
【0024】
次に、図1に基づいて交流モータ11および昇圧コンバータ21の制御系について説明する。複数の交流モータ12、第2のインバータ28を設けた場合においても、第1の交流モータ11、第1のインバータ27と実質的に同じ構成であるため、複数の交流モータとインバータとを設けた場合の説明については省略する。
【0025】
第1の交流モータ11は、三相永久磁石式同期モータで、永久磁石が内装されたものであり、ロータの回転位置を検出するロータ回転位置センサ56が搭載されている。昇圧コンバータ21は、入力コンデンサ38とリアクトル39と、2つのスイッチング素子40、41が設けられ、各スイッチング素子40、41にそれぞれ還流ダイオード42、43が並列に接続されている。また、電圧制御型の三相の第1のインバータ27は、6つのスイッチング素子44〜49(上アームの各相の3つのスイッチング素子44、46、48と下アームの各相の3つのスイッチング素子45、47、49)が設けられ、各スイッチング素子44〜49にそれぞれ還流ダイオード50〜55が並列に接続されている。
【0026】
この第1のインバータ27は、モータ制御装置37から出力される三相の6アーム電圧指令信号UU1 、LU1 、UV1 、LV1 、UW1 、LW1 に基づいて、システム電源ライン22の直流電圧(昇圧コンバータ21によって昇圧されたシステム電圧)を三相の交流電圧U1 、V1 、W1 に変換して第1の交流モータ11を駆動する。第1の交流モータ11のU相電流iU1 とW相電流iW1 が、それぞれ電流センサ57、58(第1の電流センサ、第2の電流センサ)によって検出される。
【0027】
その際、モータ制御装置37は、昇圧制御部59でシステム電圧VHが目標電圧VH* となるように昇圧コンバータ21を制御する“電圧制御”を実行すると共に、第1のトルク制御部60で、第1の交流モータ11の出力トルクT1 が目標トルクT1*となるように第1のインバータ27を制御して、第1の交流モータ11に印加する交流電圧を調整する“トルク制御”を実行する。
【0028】
モータ制御装置37は、第1の交流モータ11をトルク制御する場合には、メイン制御装置から出力されるトルク指令値(目標トルク)T1*と、第1の交流モータ13のU相電流iU1 とW相電流iW1 (電流センサ57、58の出力信号)と、第1の交流モータ13のロータ回転位置θ1 (ロータ回転位置センサの出力信号)に基づいて、例えば、正弦波PWM制御方式で三相電圧指令信号UU1 、UV1 、UW1 を生成する。
【0029】
まず、第1の交流モータ11のロータ回転位置θ1 (ロータ回転位置センサ56の出力信号)に基づいて、第1の交流モータ11の回転速度N1 を演算する。この後、第1の交流モータ11のロータの回転座標として設定したd−q座標系において、d軸トルク制御電流id1とq軸トルク制御電流iq1をそれぞれ独立に電流フィードバック制御するために、第1の交流モータ13のトルク指令値T1*と回転速度N1 とに応じたトルク制御電流ベクトルit1* (d軸トルク制御電流idt1*、q軸トルク制御電流iqt1*)をマップ又は数式等により演算する。
【0030】
この後、第1の交流モータ11のU相、W相の電流iU1 、iW1 (電流センサ57、58の出力信号)と第1の交流モータ13のロータ回転位置θ1 (ロータ回転位置センサ56の出力信号)に基づいて実際の電流ベクトルi1 (d軸トルク制御電流id1とq軸トルク制御電流iq1)を演算し、d軸トルク制御電流idt1*と実際のd軸トルク制御電流id1との偏差Δid1が小さくなるようにPI制御によりd軸指令電圧Vd1* を演算すると共に、q軸トルク制御電流iqt1*と実際のq軸トルク制御電流iq1との偏差Δiq1が小さくなるようにPI制御によりq軸指令電圧Vq1* を演算する。そして、d軸指令電圧Vd1* とq軸指令電圧Vq1* を三相電圧指令信号UU1 、UV1 、UW1 に変換し、これらの三相電圧指令信号UU1 、UV1 、UW1 を第1のインバータ27に出力する。このとき、三相電圧指令信号UU1 、UV1 、UW1 に基づいて三相の6アーム電圧指令信号UU1 、LU1 、UV1 、LV1 、UW1 、LW1 を算出する。
【0031】
ここで、交流モータ11の各相の電流を検出する電流センサ57、58において、実際の電流値に対する電流センサの出力値(電流センサの出力特性)がそれぞれ異なる場合、例えば、図2のように、各相(U相、W相)の電流センサ57、58の出力特性の傾きが異なると、各相(U相、W相)に流れる実際の電流が同じであるにもかかわらず、それぞれ異なる値が出力されることになる。この場合、交流モータ11を駆動制御する際に、各電流センサ57、58の出力値に基づいて交流モータ11が制御されることになり、交流モータ11の制御精度の低下を招く虞れがある。
【0032】
そこで、本実施形態(1)では、交流モータ11が駆動されない非駆動時に、電流センサ57、58にて電流を検出することができる二相(U相、W相)に直流電流が流れるように制御し、このときの電流センサ57、58の出力に基づいてそれぞれの電流センサ57、58の出力を補正することで、交流モータ11が駆動されている駆動時の交流モータ11の制御を精度良く行うようにしている。
【0033】
以下、図3を用いて、電流センサの出力を補正する補正プログラムについて説明する。 図3の補正プログラムは、モータ制御装置37によって所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう補正値算出手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、ステップS101にて、補正実行条件が成立しているか否かを判定する。ここで、補正実行条件は、交流モータ11が駆動されない非駆動時であるか否かを判定する。交流モータ11が駆動されない非駆動時は、交流モータ11の駆動制御システムが起動される起動時か、或は、交流モータ11の駆動制御システムが停止される停止時とすると良い。例えば、交流モータ11の駆動制御システムが起動される起動時であるか否かは、図1において直流電源20と昇圧コンバータ21との間に設けられたスイッチ(図示せず)がオフからオンに切り替わったか否かで判定すると良い。なお、このスイッチは、直流電源20から電源ライン22(昇圧コンバータ21)に電源電圧を供給するか否かを切り替えることができる。また、交流モータ11の駆動制御システムが停止される停止時であるか否かは、例えば、交流モータ11を用いた車両で、イグニッションスイッチがオンからオフと切り替わることを検出してから所定時間遅れて交流モータ11の駆動制御システムを停止させる場合などでは、該イグニッションスイッチがオフに切り替わってから上記システムが停止されるまでは、交流モータ11を駆動する必要がなく交流モータ11が駆動されない非駆動時となるため、イグニッションスイッチがオフに切り替わったか否かで判定すると良い。
【0034】
また、本プログラムにおいて、交流モータ11に直流電流が流れると、交流モータ11が少し駆動されて駆動トルクが発生する虞れがあるため、本実施形態(1)のように、交流モータ11を車両の駆動源として用いる場合には、自動変速機のシフト位置がパーキングに位置しているときに、本プログラムを実行するようにすれば良い。
【0035】
上記ステップS101で、補正実行条件が成立していないと判定された場合には、本プログラムを終了する。ステップS101で、補正実行条件が成立していると判定された場合には、電流センサ57、58にて電流を検出できる二相(U相、W相)に直流電流が流れるようにインバータ27のスイッチング素子を制御する。具体的には、ステップS102において、U相の上アームのスイッチング素子44をオンに切り替える。そして、ステップS103に進み、W相の下アームのスイッチング素子49をオンに切り替える。なお、電流センサ57、58にて電流が検出できる二相(U相、W相)に直流電流が流れるように制御すると良いため、U相の下アームのスイッチング素子45と、W相の下アームのスイッチング素子48とをオンに切り替えても良い。
【0036】
これら処理が進むと、ステップS104に進み、電流センサ57、58の少なくとも一方の出力を補正する。例えば、U相の電流センサ57の出力をW相の電流センサ58の出力に合わせる場合について説明すると、二相(U相、W相)に直流電流が流れる状態のときに検出した各電流センサ57、58の出力を比較して、U相の電流センサ57の出力がW相の電流センサ58の出力と等しくなるように補正する。具体的には、二相(U相、W相)に直流電流が流れる状態のときに、U相の電流センサ57の出力をUi、W相の電流センサ58の出力をWi、補正量(補正係数)をKとしたとき、以下の式(1)のような関係となる。
Wi=K×Ui (式1)
【0037】
ここで、図2に示すように、U相の電流センサ57の出力に上記の式(1)で算出した補正量Kを乗算することで、U相の電流センサ57の出力をW相の電流センサ58の出力に合わせこむことができる。そして、交流モータ11の駆動時において、補正されたU相の電流センサ57の出力とW相の電流センサ58の出力とに基づいてインバータ27を制御し、交流モータ11の駆動制御を行う。この機能が特許請求の範囲でいう制御手段に相当する。
【0038】
具体的には、U相の電流センサ57の出力に対して補正量Kを乗算して補正し、該補正されたU相の電流センサ57の出力とW相の電流センサ58の出力と、メイン制御装置から出力されるトルク指令値(目標トルク)T1*と、第1の交流モータ11のロータ回転位置θ1 (ロータ回転位置センサ56の出力信号)とに基づいて、例えば、正弦波PWM制御方式で三相電圧指令信号UU1 、UV1 、UW1 を生成する。そして、これら信号(三相電圧指令信号UU1 、UV1 、UW1 )に基づいて、インバータ27を制御して交流モータ11の駆動制御を行う。
【0039】
なお、ステップS104における補正は、各電流センサ57、58のゼロ点が補正されているとき、つまり図2に示すように合わせ込まれているときに精度良く行うことができるため、各電流センサ57、58のゼロ点が補正された後に行うようにしても良い。なお、各電流センサ57、58のゼロ点補正は、従来技術(例えば、特開2005−20877号公報)を用いると良い。
【0040】
以上説明した図3の補正プログラムが実行されることで、各電流センサ57、58の出力(出力特性)の相対的なバラツキが小さくなるように補正することが可能となるため、各電流センサ57、58に基づく、交流モータ11の制御性を向上させることが可能となる。つまり、各電流センサ57、58の出力(出力特性)のバラツキがほとんどない状態で、交流モータ11を駆動制御することができるため、交流モータ11の各相に流れる電流が最適となるように制御することができて、交流モータ11の制御精度を向上させることが可能となる。
【0041】
また、交流モータ11を車両の駆動源として用いる場合には、交流モータ11に直流電流が流れると、交流モータ11が少し駆動されて駆動トルクが発生する虞れがあるため、自動変速機のシフト位置がパーキングに位置しているときに、上記プログラムを実行するようにすることで、運転者の意思に反して車両が駆動されることを防止することが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態(1)のステップS104では、U相の電流センサ57の出力をW相の電流センサ58の出力に合わせる例について説明したが、W相の電流センサ58の出力をU相の電流センサ57の出力に合わせるようにしても良い。この場合、U相の電流センサ57の出力をUi、W相の電流センサ58の出力をWi、補正量(補正係数)をK1としたとき、以下の式(2)のような関係となる。
Ui=K1×Wi (式2)
そして、この補正量K1を用いて、W相の電流センサ58の出力がU相の電流センサ57の出力と等しくなるように補正する。
【0043】
また、ステップS104において、U相の電流センサ57の出力とW相の電流センサ58の出力とをそれぞれ所定の出力となるように合わせ込むようにしても良い。この場合、U相の電流センサ57の出力をUi、W相の電流センサ58の出力をWi、補正量(補正係数)をK2、K3としたとき、以下の式(3)のような関係となる。
K2×Ui=K3×Wi (式3)
そして、この補正量K2、K3を用いて、U相の電流センサ57の出力とW相の電流センサ58の出力とが同じ出力となるように補正する。
【0044】
ここで、直流電源20と昇圧コンバータ21との間、或は、電源ライン22に第3の電流センサ61(図1に二点鎖線で示す)を設ける場合においては、二相(U相、W相)に直流電流が流れる状態のときに検出した各電流センサ57、58、61の出力を比較して、各電流センサ57、58、61の出力を補正するようにしても良い。
【0045】
例えば、第3の電流センサ61に検出精度が高い電流センサを設けている場合には、U相、W相の電流センサ57、58の出力を第3の電流センサ61に合わせるように補正すると良い。具体的には、U相の電流センサ57の出力をUi、W相の電流センサ58の出力をWi、第3の電流センサ61の出力をZi、補正量(補正係数)をK4、K5としたとき、以下の式(4)のような関係となる。
Zi=K4×Ui=K5×Wi (式4)
【0046】
そして、この補正量K4、K5を用いて、U相の電流センサ57の出力とW相の電流センサ58の出力とが同じ出力となるように補正する。なお、上記方法に限らず、電流センサ57、58、61のいずか一つの出力に合わせるようにしても良いし、電流センサ57、58、61の出力を所定出力となるように補正しても良い。また、少なくとも各電流センサ57、58の出力が同じとなるように補正しても良い。このように、第3の電流センサ61の出力を考慮することで、システム全体の電流センサの出力の相対的なバラツキを補正することが可能となり、ひいてはシステム全体の制御性を向上させることができる。但し、第3の電流センサ61は必ずしも設ける必要はないことは言うまでもない。
【0047】
なお、上記プログラムにおいて、電流センサの出力(出力特性)の相対的なばらつきを補正するために、電流センサの出力特性に対して乗算する補正量を算出するようにしたが、加算、減算、または除算することで、電流センサの出力(出力特性)の相対的なばらつきを補正する補正値を算出するようにしても良い。
【0048】
また、上記プログラムにおいて、ステップS102において、U相の上アームのスイッチング素子44をオンに切り替え、ステップS103に進み、W相の下アームのスイッチング素子49をオンに切り替えるようにしたが、この時、U相の上アームのスイッチング素子44、W相の下アームのスイッチング素子49の制御デューティを可変に設定しても良い。これにより、交流モータ11のU相、W相の巻線に直流電流が流れるときの電流量を可変に設定することができるため、上記ステップS104の電流センサの出力補正を行うときに、数点(2点以上)で上記補正を行うことができるため、精度を向上させることが可能となる。なお、U相の上アームのスイッチング素子44、W相の下アームのスイッチング素子49の制御デューティは固定としても良いことは言うまでもない。
【0049】
[本実施形態(2)]
実施形態(1)では、交流モータ11が駆動されない非駆動時、つまり、システムが起動される起動時か、或いはシステムが停止される停止時に、電流センサにて電流を検出できる交流モータの各相の巻線に直流電流が流れるようにして、電流センサの出力の補正を行うようにしたが、本実施形態(2)では、モータ制御を開始する前に、図1の平滑コンデンサ24に電荷を蓄積するプリチャージ中に、電流センサの出力の補正を行うようにする。
【0050】
ここで、交流モータ駆動システムの起動時(メイン制御装置やモータ制御装置37の起動時)には、システムはシャットダウンされた状態(モータ制御等が停止された状態)であり、図1の平滑コンデンサ24には電荷がほとんど蓄積されていないため、モータ制御を開始する前に平滑コンデンサ24に電荷を蓄積するプリチャージを行ってシステム電圧を目標値まで上昇させる必要がある。
【0051】
しかしながら、交流モータ駆動システムを起動させてプリチャージを行うために、図4の直流電源20の両端子に接続されたスイッチ62、63をオンさせると、システムに過大な電流が流れ、スイッチ62、63にアーク放電が生じて溶着する虞れがある。そこで、交流モータ駆動システムの起動時において、プリチャージを行う際には、スイッチ63をオフにして、スイッチ62、64をオンにすることで、抵抗65を介して電流が流れるように回路を切り替えてシステムに流れる電流を抑制している。これにより、スイッチ62、63の溶着を防ぐことができる。上記抵抗65を介して電流が流れるように回路を切り替える手段が、特許請求の範囲でいう切替手段に相当する。
【0052】
つまり、プリチャージ中には、交流モータ駆動システムに流れる電流が、抵抗65を介して流れることで小さくなることに着目して、本実施形態(2)では、プリチャージ中に、電流センサ67、68にて電流が検出できる交流モータ11の各相の巻線に直流電流が流れるようにして、電流センサ67、68の少なくとも一方の出力の補正を行うようにしている。
【0053】
以下、実施形態(2)との相違点のみ説明する。
本実施形態(2)では、図3のプログラムにおいて、プリチャージ中においても実行するように変更する。具体的に一例を挙げて説明すると、図3のプログラムのステップS101において、プリチャージ中であるか否かを判定する。この場合、交流モータ11が駆動されない非駆動時であれば、プリチャージ中でなくても電流センサ57、58にて電流が検出することができる交流モータ11の各相(U相、W相)に直流電流が流れるようにして、電流センサ57、58の少なくとも一方の出力の補正を行うようにすれば良いため、プリチャージ中であるか否かを判定することを補正実行条件の1つとして設定すると良い。このステップS101の補正実行条件が成立すると、図3においてステップS102以降のプログラムを実行する。
【0054】
このように、本実施形態(2)では、プリチャージ中に、電流センサ57、58が備えられている交流モータ11の各相の巻線に直流電流が流れるようにして、電流センサ57、58の出力の補正を行うようにしている。この場合、電流センサ57、58の出力補正を行うときに、交流モータ11の各相に流れる電流値が異なる数点(例えば、プリチャージ中とプリチャージ以外)で電流センサ57、58の出力の補正を行うことができるため、各電流センサ57、58の出力(出力特性)の違いを補正する精度を向上させることが可能となる。
【0055】
具体的には、例えば、プレチャージ中に補正プログラムを実行したときに算出した電流センサ57、58の出力の補正量と、プレチャージ以外で補正プログラムを実行したときに算出した電流センサ57、58の出力補正量との平均値を求め、該補正量の平均値を用いて、各電流センサ57、58の出力(出力特性)を補正する。これにより、1点のみで電流センサ57、58の補正を行う場合に比べ、ノイズ等の影響を少なくすることができるため、各電流センサ57、58の出力(出力特性)の相対的なバラツキを精度良く補正することが可能となる。
【0056】
[本実施形態(3)]
実施形態(1)(2)では、直流電源20(第1の二次電池)を用いて、交流モータ11の非駆動時に直流電流が流れるようにしたが、本実施形態(3)では、直流電源20とは別に設けられた第2の二次電池(例えば12Vバッテリ)67を用いて、交流モータ11の非駆動時に直流電流が流れるようにする。
【0057】
本実施形態(3)の概略構成について、図1のシステム全体の概略構成との相違点のみを図5を用いて説明する。まず、図5において、直流電源20(第1の二次電池)とは別に、直流電源20と昇圧コンバータ21との間にとDCDCコンバータ66と第2の二次電池67とを設ける。例えば、電気自動車、ハイブリッド車においては、第2の二次電池20は、直流電源20からDCDCコンバータ66を介して充電される。DCDCコンバータ66は、高電圧(直流電源20による電圧)を低電圧(12Vバッテリの電圧)に降圧して第2の二次電池67に充電する。このとき、高電圧と低電圧間は絶縁されている。なお、交流モータ11の非駆動時には、第2の二次電池67からDCDCコンバータ66を介して交流モータ11に直流電流が流れるように制御することもできる。
【0058】
以下、本実施形態(3)について、実施形態(1)との相違点のみ説明する。
本実施形態(3)では、図3のステップS101の補正実行条件において、交流モータ11が駆動されない非駆動時であるか否かを判定する。交流モータ11が駆動されない非駆動時は、交流モータ11の駆動制御システムが起動されているか否かで判定すると良い。この場合、直流電源20と昇圧コンバータ21との間に設けられたスイッチ(図示せず)がオフであるか否かで判定すると良い。なお、第2の二次電池67を用いた場合、直流電源20を用いずに、交流モータ11に直流電流が流れるように制御することができるため、交流モータ11の駆動制御システムが起動されていないと判定されると、第2の二次電池67を用いて、電源ライン22に電圧を印加するようにする。このとき、DCDCコンバータ66は、電圧を可変に調整できるため、交流モータ11に印加する電圧を変更するようにしても良い。この場合、数点で電流センサ57、58の出力の補正を行うことができるため、精度を向上させることが可能となる。なお、印加する電圧は固定値としても良い。
【0059】
以上、説明した本実施形態(3)では、直流電源20とは別に設けられた第2の二次電池(12Vバッテリ)67を電源として、交流モータ11の非駆動時に直流電流が流れるようにしている。また、DCDCコンバータ66により、電圧を可変に調整することで、交流モータ11に流れる電流値が異なる数点で、電流センサ57、58の出力(出力特性)の補正を行うことができるため、各電流センサ57、58の出力(出力特性)の相対的なバラツキを精度良く補正することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態(1)乃至(3)では、電流センサ57、58をU相とW相にそれぞれ設けた実施形態について説明したが、これに限らずV相とW相に設ける場合や、U相とV相に設けるようにしても良いことは言うまでもない。この場合、電流センサが設けられた各相のインバータの上アームと下アームとのスイッチング素子をオンに切り替えることで、それぞれの相に電流が流れるようにすれば良い。
【0061】
その他、本発明の交流モータの制御装置は、車両の駆動源となる交流モータに限定されず、様々な車載機器等の駆動源となる交流モータの制御装置に広く適用して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態(1)における交流モータ駆動システムの概略構成を示す構成図である。
【図2】各電流センサの出力特性のばらつきを説明した図である。
【図3】本発明の実施形態(1)の補正プログラムの一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態(2)の概略構成を説明する主要部の回路図である。
【図5】本発明の実施形態(3)の概略構成を説明する主要部の回路図である。
【符号の説明】
【0063】
11…交流モータ
20…直流電源(第1の二次電池)
21…昇圧コンバータ
22…システム電源ライン
27…インバータ
37…モータ制御装置(制御手段、補正値算出手段)
57…U相の電流センサ(第1の電流センサ)
58…W相の電流センサ(第2の電流センサ)
61…第3の電流センサ
62…スイッチ
63…スイッチ
64…スイッチ
65…抵抗
66…DCDCコンバータ
67…第2の二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相からなる交流モータと、
電源ラインに接続され、前記交流モータに流れる電流を制御するインバータと、
前記交流モータの三相のうち一相(以下、「第1の相」という)に流れる電流を検出する第1の電流センサと、
前記交流モータの三相のうち前記第1の相とは別の一相(以下、「第2の相」)に流れる電流を検出する第2の電流センサと、
前記第1の電流センサと前記第2の電流センサとの出力に基づいて前記インバータを制御して前記交流モータを駆動制御する制御手段と
を備えた交流モータの制御装置において、
前記交流モータの非駆動時に、前記第1の相および前記第2の相の巻線に直流電流が流れるように前記インバータのスイッチング素子をオン/オフ制御しているときに、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサとの出力に基づいて、補正の対象となる電流センサ(以下、「補正対象電流センサ」という)の出力を補正するための補正値を算出する補正値算出手段を備え、
前記制御手段は、前記交流モータの駆動時に、前記補正値算出手段により算出された補正値を用いて前記補正対象電流センサの出力を補正して、該補正された前記補正対象電流センサの出力に基づいて前記インバータを制御して前記交流モータの駆動制御することを特徴とする交流モータの制御装置。
【請求項2】
前記補正値算出手段は、前記交流モータの非駆動時に、前記第1の相および前記第2の相の巻線に直流電流が流れるように前記インバータのスイッチング素子をオン/オフ制御しているときに、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサとの出力に基づいて、両電流センサの出力の差が小さくなるように、前記補正対象電流センサの出力の補正値を算出することを特徴とする請求項1に記載の交流モータの制御装置。
【請求項3】
前記補正対象電流センサは、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の交流モータの制御装置。
【請求項4】
三相からなる交流モータと、
電源ラインに接続され、前記交流モータに流れる電流を制御するインバータと、
前記交流モータの三相のうち一相(以下、「第1の相」という)に流れる電流を検出する第1の電流センサと、
前記交流モータの三相のうち前記第1の相とは別の一相(以下、「第2の相」)に流れる電流を検出する第2の電流センサと、
前記第1の電流センサと前記第2の電流センサとの出力に基づいて前記インバータを制御して前記交流モータを駆動制御する制御手段と
を備えた交流モータの制御装置において、
前記電源ラインの電力供給源となる第1の二次電池と、
前記第1の二次電池に流れる電流を検出する第3の電流センサと、
前記交流モータの非駆動時に、前記第1の相および前記第2の相の巻線に直流電流が流れるように前記インバータのスイッチング素子をオン/オフ制御しているときに、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサと前記第3の電流センサとの出力に基づいて、補正の対象となる電流センサ(以下、「補正対象電流センサ」という)の出力を補正するための補正値を算出する補正値算出手段とを備え、
前記制御手段は、前記交流モータの駆動時に、前記補正値算出手段により算出された補正値を用いて前記補正対象電流センサの出力を補正して、該補正された前記補正対象電流センサの出力に基づいて前記インバータを制御して前記交流モータの駆動制御することを特徴とする交流モータの制御装置。
【請求項5】
前記補正値算出手段は、前記交流モータの非駆動時に、前記第1の相および前記第2の相の巻線に直流電流が流れるように前記インバータのスイッチング素子をオン/オフ制御しているときに、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサと前記第3の電流センサとの出力に基づいて、各電流センサの出力の差が小さくなるように前記補正対象電流センサの出力の補正値を算出することを特徴とする請求項4に記載の交流モータの制御装置。
【請求項6】
前記補正対象電流センサは、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサと前記第3の電流センサとの少なくともいずれか2つであることを特徴とする請求項5に記載の交流モータ制御装置。
【請求項7】
前記電源ラインに電力を供給する第1の二次電池と、
前記第1の二次電池から前記電源ラインへの電力の供給をオン/オフするスイッチとを備え、
前記補正値算出手段は、前記スイッチをオンすることで、前記第1の二次電池から前記電源ラインに電力を供給しているときに、前記第1の相および前記第2の相の巻線に直流電流が流れるように前記インバータのスイッチング素子をオン/オフ制御する手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の交流モータの制御装置。
【請求項8】
前記第1の二次電池から前記電源ラインに電力を供給する際に、抵抗を介した回路に切り替える切替手段を備え、
前記補正値算出手段は、前記切替手段により前記抵抗を介した回路に切り替えた状態で、前記第1の二次電池から前記電源ラインに電力を供給しているときに、前記第1の相および前記第2の相の巻線に直流電流が流れるように前記インバータのスイッチング素子をオン/オフ制御する手段を備えていることを特徴とする請求項7に記載の交流モータの制御装置。
【請求項9】
前記電源ラインに電圧を印加する第2の二次電池と、
前記第2の二次電池から前記電源ラインに印加する電圧を調整するコンバータとを備え、
前記補正値算出手段は、前記コンバータにより前記第2の二次電池の電圧を調整して前記電源ラインに電圧を印加しているときに、前記第1の相および前記第2の相の巻線に直流電流が流れるように前記インバータのスイッチング素子をオン/オフ制御する手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の交流モータの制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記インバータのスイッチング素子のオン/オフの制御量を可変に設定することで、前記第1の相および前記第2の相の巻線に流れる直流電流を調整することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の交流モータの制御装置。
【請求項11】
前記交流モータは、車両の駆動源として車両に搭載され、
前記車両の自動変速機のシフト位置を検出するシフト位置検出手段を備え、
前記補正値算出手段は、前記シフト位置検出手段により前記自動変速機のシフト位置がパーキングレンジに位置していると検出されたときに、前記第1の相および前記第2の相の巻線に直流電流が流れるように前記インバータのスイッチング素子のオン/オフを制御する手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の交流モータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−22162(P2010−22162A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182039(P2008−182039)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】