説明

付着式ピンセット用移載システム

【課題】付着式ピンセットに対して好適な新規の移載システムを提供する。
【解決手段】
微細部品を付着するための粘着材、この粘着材を先端に導くための導出パイプ、この導出パイプ先端に粘着材を送り出す手段、導出パイプ先端より突出及び後退して、付着した微細部品を離脱するスライドパイプからなる付着式ピンセット1を搭載するキャリア5と、このキャリア5を水平方向に走行案内する走行レール2,3と、キャリア5を上下方向に昇降案内する昇降レール4と、キャリア5を走行及び昇降レール2,3,4に沿って駆動する手段20,30,40と、スライドパイプを前進及び後退する手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の微細部品を付着して保持、離脱することのできる付着式ピンセットを搭載する付着式ピンセット用移載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、電気、電子機器を製造する際に、半導体素子等の微細部品に対して特性や品質に影響を及ぼすことなく保持、離脱することが可能な付着式ピンセットを提供した(特許文献1参照)。そして、半導体チップ等の微細部品を移載する様々な移載装置も提供されてはいるが、上記の付着式ピンセットに好適な移載装置は提案されていない。
【特許文献1】特開2005−186264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記した付着式ピンセットに対して好適で新規な付着式ピンセット用移載システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る付着式ピンセット用移載システムは、微細部品を付着するための粘着材、この粘着材を先端に導く導出パイプ、この導出パイプ先端に粘着材を送り出す手段、導出パイプ先端より突出及び後退して、付着した微細部品を離脱する手段からなる付着式ピンセットを搭載するキャリアと、このキャリアを水平方向に走行案内する走行レールと、キャリアを上下方向に昇降案内する昇降レールと、キャリアを走行レール及び昇降レールに沿って駆動する手段と、離脱手段をスライド駆動する手段とを備えている。
【0005】
好ましくは、送出し手段を駆動する送出し駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0006】
更に好ましくは、導出パイプ先端の粘着材の突出量を検出する検出手段を備え、この検出手段の検出結果に応じて送出し駆動手段の駆動を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
更に好ましくは、送出し手段が、粘着材を導出パイプ先端から押し出す押圧部材を備えており、検出手段が所定の粘着材突出量を検出した際、制御手段が押圧部材を粘着材から離間するよう送出し駆動手段を制御することを特徴とする。
【0008】
好ましくは、付着式ピンセット内の粘着材の残量を検出する手段を備えている。
【0009】
導出パイプ先端の粘着材をカットして新たな粘着面を露出する手段を備えることもできる。
【0010】
本発明に係る付着式ピンセット用移載システムは、微細部品を磁力で付着して保持するパイプ、このパイプ先端より突出及び後退して、付着した微細部品を離脱する手段からなる付着式ピンセットを搭載するキャリアと、このキャリアを水平方向に走行案内する走行レールと、キャリアを上下方向に昇降案内する昇降レールと、キャリアを走行及び昇降レールに沿って駆動する手段と、離脱手段をスライド駆動する手段とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る付着式ピンセット用移載システムは、上記のように構成されているので、付着式ピンセットをキャリアと共にXYZ方向に走行、昇降し、この付着式ピンセットで微細部品を把持、移送して、さらにスライド駆動手段で離脱手段をスライドすることによって、所定の場所で微細部品を正確に把持及び離脱することができる。この移載システムにより、付着式ピンセットを用いて正確且つ迅速に微細部品をピックアップし移載することができるので、搬送効率をより一層向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る付着式ピンセット用移載システムについて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る付着式ピンセット用移載システムを示す概略斜視図である。図2は、付着式ピンセット用移載システムを示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。図1及び図2の如く、本発明の付着式ピンセット用移載システムは、X方向(水平方向)に延設されたX走行レール2と、Y方向(水平方向)に延設されたY走行レール3と、Z方向(上下方向)に延設されたZ走行レール(昇降レール)4とを備えている。そして、X走行レール2はX走行スライダ21を、Y走行レール3はY走行スライダ31を、Z走行レール4はZ走行スライダ41を、各走行レール2,3,4(XYZ方向)に沿って摺動、移動可能に備えている。
【0014】
この移載システムは、ボールネジ方式の移載装置である。即ち、各走行レール2,3,4は、レール方向に延びる不図示のボールネジを回転可能に軸支している。各スライダ21,31,41は、各走行レール2,3,4に沿って移動可能に嵌合されており、前記のボールネジに螺着されるナット(不図示)が設けられている。そして、各走行レール2,3,4に接続された駆動用パルスモータ20,30,40が、それぞれのボールネジを正逆回転駆動することにより、各スライダ21,31,41をレール方向(矢印XYZ方向)に沿って前進及び後退するように構成されている。尚、リニアモータ方式等の移載装置であってもよい。
【0015】
そして、付着式ピンセット1を搭載するキャリア5が、Z走行スライダ41を介してZ方向に移動可能に構成されている。付着式ピンセット1は、軸方向がZ方向になるようキャリア5に搭載されている。キャリア5は、回転用パルスモータ52を備えている。この回転用パルスモータ52は、付着式ピンセット1に接続されている。そして、回転用パルスモータ52の駆動によって、付着式ピンセット1を、軸方向(Z方向)を中心として任意の角度θだけ回転することができる。
【0016】
各駆動用パルスモータ20,30,40はコントロール部6に接続されている。このコントロール部6に記憶された制御プログラムによって、各パルスモータ20,30,40の回転駆動を制御し、各スライダ21,31,41を所定位置へ前後方向に移動することができる。X走行レール2がY走行スライダ31を介してY方向に移動可能に、Z走行レール4がX走行スライダ21を介してX方向に移動可能になっている。これにより、付着式ピンセット1は、コントロール部6によって、XYZ方向の所定位置へ移動可能に構成されている。
【0017】
又、回転用パルスモータ52もコントロール部6に接続されている。そして、前記と同様に、コントロール部6の制御プログラムによって回転用パルスモータ52をコントロールして、付着式ピンセット1が把持した被保持物Wを所定の角度θだけ回転する。キャリア5は、イメージセンサ(例えばCCDカメラ)54を備えている。イメージセンサ54はコントロール部6に接続されている。イメージセンサ54によって、付着式ピンセット1が把持した被保持物Wの角度(方向)を認識し、この認識した角度に応じてコントロール部6が回転用パルスモータ52を制御して、被保持物Wを所定の角度θだけ回転するようなってる。
【0018】
更に、移載システムは、コントロール部6に接続された画像処理部60を備えている。画像処理部60は、イメージセンサ54が取得した画像を撮像する。そして、使用者は、画像処理部60に撮像された被保持物Wのイメージに基づいて、コントロール部6を操作して、各駆動パルスモータ20,30,40や回転用パルスモータ52を駆動し、被保持物Wを任意の場所や角度に配置、整列することもできる。又画像処理部60が取得した被保持物Wの撮像データを基に、コントロール部6が被保持物Wが所定基準に適合しない不合格品か否かを判別し、不合格品の被保持物Wを廃棄場所へ移動するようにしてもよい。
【0019】
図3は、付着式ピンセットを搭載したキャリアの要部を示しており、(a)は一部断面図、(b)は(a)の一部拡大図である。図4は、分解した状態の付着式ピンセットを示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。図5は、微小部品を付着、離脱する状態を説明するための付着式ピンセットを示す一部拡大断面図である。
【0020】
図3の如く、キャリア5は、付着式ピンセット1を着脱可能に搭載できるよう構成されており、送出し駆動手段50及びスライド駆動手段51を備えている。送出し駆動手段50及びスライド駆動手段51は、コントロール部6が接続されており、このコントロール部6によって駆動が制御されるようになっている。後述で詳細説明するように、送出し駆動手段50は、付着式ピンセット1の粘着材15を送り出す手段120を駆動するために備えられ、スライド駆動手段51は、付着式ピンセット1のスライドパイプ14を駆動するために備えられている。
【0021】
送出し駆動手段50は、パルスモータ500、このパルスモータ500によって正逆回転する回転部501、この回転部501と共に回転する回転伝達部502、この回転伝達部502の頭部に設けられた頭部ナット502a、回転伝達部502を下方へ付勢する圧縮バネ504、を備えている。パルスモータ500は、コントロール部6に接続されており、コントロール部6の制御信号に応じて、回転部501を正逆回転するようになっている。
【0022】
図3(b)の如く、回転部501は、同心の長さ方向に沿って空間部501aが設けられている。頭部ナット502aは、回転伝達部502の上端部に設けられ、断面六角形状をなしている。空間部501aの断面形状は、頭部ナット502aの断面と略同じ形状の六角形をなしている。これにより、回転部501の正逆回転に連動して、空間部501aに嵌合された頭部ナット503と共に回転伝達部502を正逆回転できるように構成されている。
【0023】
実施例の付着式ピンセット1は、ペンシル状に構成されており、下方側の第一本体部10と上方側の第二本体部11とを分割、連結可能になっている。付着式ピンセット1は、内部に、微細部品(被付着物)を付着するための粘着材15、この粘着材15を下方へ導く導出パイプ13、この導出パイプ13の先端に粘着材15を押し出すように送り出すプランジャ(押圧部材)120を備えている。
【0024】
図3(a)のように、付着式ピンセット1は、内部にカートリッジタンク121を有している。そして、図3(b)の如く、粘着材15は、カートリッジタンク121に形成された収納部121a内に収納されている。この収納部121aは、導出パイプ13に接続されている。収納部121aは、その内周面に螺旋溝121bが設けられている。プランジャ120は、その外周面に螺旋溝120bが形成された円筒状になっている。プランジャ120とカートリッジタンク121は、各螺旋溝120b,121bを介して螺合されており、プランジャ120は、正逆回転によってカートリッジタンク121に対して上下移動する。
【0025】
回転伝達部502は、断面六角形状に構成されている。プランジャ120は、上端に頭部120aを有している。この頭部120aは、回転伝達部502断面と略同じ断面六角形状の凹部を備えており、この凹部に回転伝達部502を嵌め込むことにより、回転伝達部502の回転に応じてプランジャ120が回転するようになっている。そして、圧縮バネ504が、回転伝達部502を下方へ付勢することにより、プランジャ120が上下移動しても、プランジャ頭部120aと回転伝達部502とが常時、嵌合するように構成されている。又、プランジャ頭部120aと回転伝達部502とは、連結されずに単に嵌め込まれているだけなので、後述するように、カートリッジ12を交換する際に、簡単にプランジャ120と回転伝達部502とを分離することができる。
【0026】
53は付着ピンセット1内にある粘着材15の残量を検出するための検出センサである。この検出センサ53はフォトセンサからなっている。検出センサ53は、第二本体部11に設けられた窓部11aを介してプランジャ頭部102aの位置を検出することにより、粘着材15の残量を把握できるようになっている。そして、この検出センサ53によって、粘着材15の残量が少なくなったことを検知した際に、報知手段(例えばブザーやランプ等)が作動して使用者に知らせるようになっている。
【0027】
スライド駆動手段51は、圧電アクチュエータ510、この圧電アクチュエータ510とスライドパイプ14とを連結するための連結部511、この連結部511を上方へ付勢するための圧縮バネ512、を備えている。尚、510はソレノイドアクチュエータ等でもよい。後述するように、スライドパイプ14は、導出パイプ13の軸方向にスライド可能に嵌め込まれており、第一本体部10に設けられたキー部材141の動作によって、上下移動するようになっている。
【0028】
圧電アクチュエータ510は、コントロール部6に接続されており、コントロール部6によって駆動制御される。連結部511は、圧電アクチュエータ510の駆動によって動作し、付着式ピンセット1のキー部材141に接続されている。導出パイプ13先端に付着した微細部品を離脱する際、圧電アクチュエータ510が連結部511を下方へ駆動することにより、スライドパイプ14を下方移動する。そして、圧縮バネ512の弾発力によって、連結部511を介してスライドパイプ14を上方移動して元の位置に戻るようになっている。
【0029】
図4に示すように、付着式ピンセット1は、内部にカートリッジ12を備えており、第一本体部10と第二本体部11とを分割することにより、カートリッジ12を交換可能になっている。第一本体部10の上方側には雄ネジ部10aが、第二本体部11の下方側には雌ネジ部11aが設けられており、各ネジ部10a,11aを介して、第一及び第二本体部10,11を分離、一体することができる。カートリッジ12は、カートリッジタンク121を備えており、このカートリッジタンク121の下方側に導出パイプ13が、上方側にプランジャ120が設けられている。カートリッジタンク121の中心には、粘着材15及びプランジャ120を収容するための収容部121aが形成されており、この収容部121aの下方側に粘着材15が充填され、上方側にプランジャ120が挿入されている。
【0030】
粘着材15は、半導体素子等の微細部品(被保持物)を粘着保持すると共に、導出パイプ13の先端から一定量突き出すことができる程度の流動性を有していればよく、本実施例ではペースト状のポリ酢酸ビニル樹脂に、溶剤としてアルコールを用いて構成されている。導出パイプ13は、カートリッジタンク12の収容部121aに通じている。従って、プランジャ120を下方側へ移動することによって、粘着材15が押圧されて導出パイプ13内を通じ導出パイプ13の先端部から突き出される。そして、粘着材15を使い切った際には、第一及び第二本体部10,11を分解してカートリッジ12ごと交換する。
【0031】
第一本体部10は、内部に上下方向に移動可能なスライド部材140を備えている。スライド部材140は、第一本体部10の下方へ突出するスライドパイプ14が固着されている。そして、スライド部材140に連結されたキー部材141を、第一本体部10に形成されたガイド溝10に沿って上下方向に移動することにより、スライドパイプ14がスライドするようになっている。付着式ピンセット1を組み立てる際、カードリッジ12の導出パイプ13を、スライドパイプ14に挿入するように配置する。カードリッジ12は、突出する回転防止ピン121cを有しており、第一本体10に設けた溝に、この回転防止ピン121cを配して、プランジャ120を回転する際に、カートリッジ12が供回りしないようになっている。
【0032】
図5に示すように、第1本体部10内には、スライド部材140が挿入して配置されている。スライド部材140は、先端にスライドパイプ14が取り付けられている。第1本体部10には、ガイド溝10bが設けられており、このガイド溝10bに沿ってキー部材141がスライドする。キー部材141に設けられた凹部141aとスライド部材140に設けられた凸部140aとが嵌合しているので、キー部材141のスライドに追随して、スライド部材140及びスライドパイプ14が前進及び後退する。
【0033】
図5(a)の如く、粘着材15を、導出パイプ13の先端から若干突き出した状態にし、この突き出た粘着材15で、被保持物Wを付着して保持する。そして、図5(b)の如く、スライド駆動手段51の連結部511を介して、キー部材141を下方へスライドさせることにより、スライドパイプ14を、導出パイプ13の先端より突出させる。これにより、被保持物Wは、スライドパイプ14に突き押されて先端の粘着材15から離脱する。離脱後、スライド駆動手段51の圧縮バネ512によって、連結部511を介してキー部材141及びスライドパイプ14が元の位置へ戻る。
【0034】
次に、粘着力が低下した際に、付着式ピンセット1先端の粘着材15をカットするためのカッター7(図2(a)参照)について説明する。図6は、カッターを説明するための図であって、(a)は断面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0035】
図6(a)の如く、カッター7は、ケース本体71を備えており、このケース本体71の上部に、付着式ピンセット1の先端を挿入可能な挿入孔71aが設けられている。ケース本体71の内部には、巻取り軸74及び供給軸75が設けられており、供給軸75に保持された粘着式のテープ72が、巻取り軸74によって巻取り可能なように架け渡されている。そして、テープ72は、巻取り軸74及び供給軸75の中間に配されたガイド体73の上面に支持されている。ガイド体73は、挿入孔71aの略直下に配置されている。テープ72は、粘着面が上方、即ち挿入孔71aに向くように配されている。
【0036】
図6(b)及び(c)に示すように、カッター7の巻取り軸74は、ラチェットギア76が取り付けられている。カッター7はレバー76を備えており、レバー76には、ラチェットギア76と噛み合うラチェット爪77が設けられている。ラチェット爪77は、コイルバネ77aによって、ラチェットギア76に押し付けられている。レバー76は、引張バネ78によって図6(a)の時計方向へ引き寄せれらている。そして、レバー76を反時計方向へ回転させることにより、ラチェット爪77及びラチェットギア76を介して巻取り軸74を回転できるようになっている。
【0037】
付着式ピンセット1の粘着材15の付着力(粘着力)が低下した際、キャリア5を介して付着式ピンセット1をカッター7へ移動させる。そして、付着式ピンセット1の先端を挿入孔71aの略直上へ移動、配置することにより、キャリア5がレバー76を押して反時計方向へ回転するようになっている。これにより、巻取り軸74が反時計回転して、テープ72が巻き取られ、テープ72の新たな粘着面がガイド体73に配置される。その後、付着ピンセット1の先端を、カッター7の挿入孔71aに挿入するように下降する。これにより、付着式ピンセット1の導出パイプ13の先端から突き出た粘着材15が、ガイド体73の上面に載置されたテープ72の粘着面に突き当てられ、粘着材15をテープ72の粘着面に付着させる。
【0038】
その状態で、付着式ピンセット1を上方へ移動させて、カッター7から離すことにより、導出パイプ13の先端から突き出た粘着材15を切断する。その後、送出し駆動手段50によってプランジャ120を正回転させて、粘着力の高い新たな粘着面を有する粘着材15を、導出パイプ13の先端から突き出す。この突き出た粘着材15は、検出センサ79によって位置検出される。検出センサ79は、コントロール部6に接続されている。そして、検出センサ79によって、粘着材15が所定量だけ突き出されたことを検出した際、送出し駆動手段50が、プランジャ120を若干、逆回転する。
【0039】
これは、粘着材15の粘性度が比較的高い場合、プランジャ120の回転を止めても、粘着材15自身の弾性力によって導出パイプ13から突き出てしまうので、プランジャ120を逆回転することにより、粘着材15とプランジャ120との間に空間を設け、粘着材15を上方へ移動させて、導出パイプ13から余分な粘着材15が突き出ないようにするためである。これにより、所定量の粘着材15を、正確に導出パイプ13から突き出るようにすることができる。そして、キャリア5をレバー76から離間させることにより、引張バネ78でレバー76が反時計方向に回転して元の状態に戻る。
【0040】
図7は、移載システムに搭載された付着式ピンセットの変形例を説明するための側面図である。被保持物Wの上方に障害物Bがある場合、上記で説明した実施例では、障害物Bが付着式ピンセット1’の移動を妨害して被保持物Wを把持することはできない。そこで、本例の付着式ピンセット1’は、下記のように構成されている。図7の如く、この例の付着式ピンセット1’は、軸方向が水平になるようキャリア5に搭載されている。そして、導出パイプ13’は、先端側が下方に直角方向に緩やかに曲がっている。これにより、下面Lと障害物Bとの間に、付着式ピンセット1’や導出パイプ13’を配置して、導出パイプ13先端の粘着材15で被保持物Wを保持することができる。
【0041】
導出パイプ13’の外周には、スプリング14’が嵌め込まれている。スプリング14’は、前記のスライドパイプ14に代わるものである。スプリング14’を導出パイプ13’に沿って前進又は後退するようにスライドさせて、導出パイプ13’先端に保持された被保持物Wを離脱することができる。スプリング14’は軸方向に対して柔軟性を有し、導出パイプ13の屈曲に追随してスライド移動可能なものである。尚、14’は柔軟性のあるゴム製のスライドパイプでもよい。
【0042】
上記実施例の付着式ピンセット1は、粘着材15が微細部品Wを付着する手段であるが、被付着物(微細部品)Wが鉄製等である場合、パイプ13を磁石とするマグネット吸着方式にすることができる。このとき、粘着材15を送り出すことはないので、本発明の付着式ピンセット用移載システムに送出し駆動手段50が備えられていない。又、導出パイプ13は円筒形に限らない。上記のカッター7は、キャリア5によって巻取り軸74を回転してテープ72を送るラチェット方式であるが、巻取り軸74をパルスモータで回転して、このパルスモータをコントロール部6で制御するようにすることもできる。
【0043】
スライドパイプ14は、導出パイプ13と略同心の円筒形であるが、要は導出パイプ13に付着した微細部品Wを離脱することができればよく、一対の爪等で離脱するようにしてもよい。又、回転用パルスモータ52は、Z方向を中心として付着式ピンセット1を回転させるものであるが、これに加えて又は単独に、Z方向に直交する方向を中心として、ピンセット1を回転するモータを備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る付着式ピンセット用移載システムの要部を示す概略斜視図。
【図2】付着式ピンセット用移載システムを示しており、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図3】付着式ピンセットを搭載したキャリアの要部を示しており、(a)は一部断面図、(b)は(a)の一部拡大図。
【図4】分解した状態の付着式ピンセットを示し、(a)は斜視図、(b)は断面図。
【図5】微小部品を付着、離脱する状態を説明するための付着式ピンセットを示す一部拡大断面図。
【図6】カッターを説明するための図であって、(a)は断面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図7】移載システムに搭載された変形例の付着式ピンセットを説明するための側面図。
【符号の説明】
【0045】
1 付着式ピンセット
2 X走行レール
3 Y走行レール
4 Z走行レール(昇降レール)
5 キャリア
6 コントロール部
7 カッター
13 導出パイプ
14 スライドパイプ(離脱手段)
15 粘着材
20,30,40 駆動用パルスモータ
21,31,41 XYZ走行スライダ
50 送出し駆動手段
51 スライド駆動手段
52 回転用パルスモータ
53 フォトセンサ(粘着材残量検出手段)
54 イメージセンサ
60 画像処理部
79 検出センサ(粘着材突出量検出手段)
120 プランジャ(送り出し手段)
121 カートリッジタンク
W 微細部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細部品を付着するための粘着材、この粘着材を先端に導くための導出パイプ、この導出パイプ先端に前記粘着材を送り出す手段、前記導出パイプ先端より突出及び後退して、付着した微細部品を離脱する手段からなる付着式ピンセットを搭載するキャリアと、このキャリアを水平方向に走行案内する走行レールと、前記キャリアを上下方向に昇降案内する昇降レールと、前記キャリアを前記走行及び昇降レールに沿って駆動する手段と、前記離脱手段をスライド駆動する手段とを備えたことを特徴とする付着式ピンセット用移載システム。
【請求項2】
前記送出し手段を駆動するための送出し駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の付着式ピンセット用移載システム。
【請求項3】
前記導出パイプ先端からの粘着材の突出量を検出する検出手段を備え、この検出手段の検出結果に応じて前記送出し駆動手段の駆動を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の付着式ピンセット用移載システム。
【請求項4】
前記送出し手段が、前記粘着材を前記導出パイプ先端から押し出す押圧部材を備えており、前記検出手段が所定の粘着材突出量を検出した際、前記制御手段が前記押圧部材を前記粘着材から離間するように前記送出し駆動手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の付着式ピンセット用移載システム。
【請求項5】
前記付着式ピンセット内の粘着材の残量を検出する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の付着式ピンセット用移載システム。
【請求項6】
前記導出パイプ先端の粘着材をカットして新たな粘着面を露出する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の付着式ピンセット用移載システム。
【請求項7】
微細部品を磁力で付着して保持するパイプ、このパイプ先端より突出及び後退して、付着した微細部品を離脱する手段からなる付着式ピンセットを搭載するキャリアと、このキャリアを水平方向に走行案内する走行レールと、前記キャリアを上下方向に昇降案内する昇降レールと、前記キャリアを前記走行及び昇降レールに沿って駆動する手段と、前記離脱手段をスライド駆動する手段とを備えたことを特徴とする付着式ピンセット用移載システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−210081(P2007−210081A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34921(P2006−34921)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(301059743)有限会社シバタシステムサービス (1)
【Fターム(参考)】