説明

仮想車線表示装置

【課題】視界が悪い場合に、運転者にとってより的確に仮想車線を表示する。
【解決手段】車両外部の撮像画像を画像解析することで、視認性が良くない状態を判断し、更に、運転者にとって、視認性が良くないことが原因で運転操作がしにくい状況か否かを判断するために、運転操作の変化と運転者の生体情報の変化を検出する。
そして、視認性が悪く、それが原因で運転操作に影響が出ると共に生体情報が異常になっている場合に、仮想車線を表示する。
表示した仮想車線は、生体情報が正常に戻った時点で消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想車線表示装置に係り、車両前方の視認性に応じて仮想車線を表示する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前方の視認性が悪い場合に、視認性を向上させる技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、車線の形状を記憶しておきヘッドアップディスプレイに表示することで、降雨時や積雪時等であっても車線認識を可能にする技術が提案されている。
この特許文献1記載技術では常に車線形状が表示されるのに対して、特許文献2では、走路形状が運転者によって視認可能であると判定された場合には、車両のフロントガラスへの走路形状の表示を非表示にする技術、すなわち、視認不可能な場合にのみ走路形状を表示する技術について提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−211452号公報
【特許文献1】特開2005−170323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2記載技術では、視認性が悪い場合に常に車線や走路形状がフロントガラスに表示されている。
しかし、視認性が悪いことが必ずしも運転者にとって車線表示が必要であるとは限らない。すなわち、視認性の悪さが運転者の運転操作に影響を与えないのであれば、車線の表示は運転者にとって過剰な情報の提示となり、逆に運転操作の支障となる可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、運転者にとってより的確な状況において仮想車線を表示することが可能な仮想車線表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1に記載した発明では、車両外部の環境情報を取得する車外情報取得手段と、前記取得した環境情報から、車両前方の視認性の良否を判定する視認性判定手段と、運転者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記取得した生体情報が所定の閾値を越えているか否かを判定する生体情報判定手段と、車両が現在走行している道路形状を認識する道路形状認識手段と、前記視認性が良くないと判断され、かつ、前記生体情報が所定の閾値を越えていると判断された場合に、前記認識した道路形状に合わせて仮想の車線を表示する仮想車線表示手段と、を仮想車線表示装置に具備させて前記目的を達成する。
(2)請求項2に記載した発明では、車両外部の環境情報を取得する車外情報取得手段と、前記取得した環境情報から、車両前方の視認性の良否を判定する視認性判定手段と、運転者の運転操作を検出する運転操作検出手段と、前記検出した運転操作が、視認性が良くない場合の運転操作として予め規定された異常操作に該当するか否かを判断する異常操作判断手段と、車両が現在走行している道路形状を認識する道路形状認識手段と、前記視認性が良くないと判断され、かつ、前記異常運転操作に該当すると判断された場合に、前記認識した道路形状に合わせて仮想の車線を表示する仮想車線表示手段と、を仮想車線表示装置に具備させて前記目的を達成する。
(3)請求項3に記載した発明では、請求項1又は請求項2に記載の仮想車線表示装置において、前記仮想車線表示手段は、道路上又はフロントガラスに仮想車線を表示する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮想車線表示装置。
(4)請求項4に記載した発明では、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の仮想車線表示装置において、車両前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段を備え、前記仮想車線表示手段は、前記検出した障害物を避ける仮想車線を表示する、ことを特徴とする。
(5)請求項5に記載した発明では、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の仮想車線表示装置において、車両前方に存在する他の走行車両、及び障害物を検出する前方存在物検出手段を備え、前記検出した他の走行車両又は障害物に応じてその存在を警告する警告手段と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、視認性が良くないと判断されただけではなく、更に、生体情報が所定の閾値を越えている場合に、仮想の車線を表示するようにしたので、運転者にとってより的確に仮想車線を表示することができる。
請求項2に記載した発明によれば、視認性が良くないと判断されただけではなく、更に、視認性が良くない場合の運転操作として予め規定された異常操作に該当する運転操作が検出された場合に、仮想の車線を表示するようにしたので、運転者にとってより的確に仮想車線を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の仮想車線表示装置における好適な実施の形態について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態の仮想車線表示装置では、車両外部を撮像するカメラの撮像画像を画像解析することで、視認性が良くない状態か否かを判断する。例えば、夜で雨の場合や逆光で車両前方の視界が悪い場合や車線が見にくい(全く見えない場合を含む)場合、霧で車両前方の視界が悪い場合等を視認性が良くない場合として認識する。
【0009】
更に、運転者にとって、視認性が良くないことが原因で運転操作がしにくい状況か否かを判断するために、運転操作の変化と運転者の生体情報の変化を検出する。
すなわち、運転操作の変化として、アクセル操作が極端に弱くなった場合やブレーキ回数が増えた場合等の視認性が良くない場合の運転操作を異常運転操作として予め規定しておき、運転操作が異常操作に該当するか否かを判断する。
また、心拍数、発汗量、瞳孔が開いている状態(瞳孔の大きさ)、脳波等の自律神経系の情報のうち少なくとも1つの情報を生体情報として検出し、通常走行時における平均値と比較して所定値以上変化しているか否か(例えば心拍数が30以上変化した場合)や、予め決められた所定の閾値を越えているか否か(例えば、心拍数が100を越えている場合)を判断する。
【0010】
そして、視認性が良くない状況において、運転操作が予め規定された異常操作に該当し、且つ、生体情報が所定の閾値を越えている場合には、視認性が良くないことが原因である可能性が高いので、そのような場合において、仮想車線を表示する。
仮想車線は、車両の現在位置を特定して現在走行している道路形状を道路地図データーベースを使用して認識し、認識した道路形状に合わせて、ヘッドアップディスプレイにより車両のフロントガラスに表示する。
なお、レーザ光をスキャンさせることで、仮想車線を道路上に直接表示するようにしてもよい。この場合の照射範囲(仮想車線表示範囲)は前方車両を照射しない範囲とする。
【0011】
仮想車線は、道路形状がカーブしている場合には該カーブに合わせて表示される。
また、ミリ波レーダにより車両前方に障害物が検出される場合には、該障害物を避けるように仮想車線が表示される。
更に、走行中の車両が前方にある場合には、走行車両の存在を示す画像を表示するようにしてもよい。
また、障害物や前方走行車両が存在する場合には、その旨を音声で警告する。
【0012】
(2)実施形態の詳細
以下、本発明の仮想車線表示装置における好適な実施の形態について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態における仮想車線表示装置の構成を表したものである。
この図1に示すように、仮想車線表示装置は、各種プログラムやデータに従って仮想車線表示装置全体を制御するECU(電子制御装置)10を備えており、ECU10には現在位置検出装置11、生体情報センサ12、車外環境取得部13、運転操作検出部14、表示装置15、データ記憶部16、プログラム記憶部17、音声出力装置18、その他の装置(通信手段として外部の情報センタやインターネットと接続するための通信制御装置等)が接続されている。
【0013】
現在位置検出装置11は、仮想車線表示装置が搭載される車両の現在位置(緯度、経度からなる絶対座標値)を検出するためのものであり、人工衛星を利用して車両の位置を測定するGPS(Global Positioning System)受信装置111、地磁気を検出して車両の方位を求める地磁気センサ112、ジャイロセンサ113、車速センサ114等の1又は複数が使用される。
【0014】
生体情報センサ12は、運転者の生体情報を取得するセンサとして、心拍センサ121、発汗センサ122、血圧センサ123を備えている。
車両が走行を開始すると、所定時間間隔で心拍数と発汗量を検出してECU10に供給するようになっている。
【0015】
心拍センサ121は、運転者の心拍数を検出するセンサで、運転者の脈拍数から心拍数を検出する。本実施形態における心拍センサ121は、ステアリングに配置された電極により、運転中の運転者の手から心拍信号を採取することで心拍数を検出するようになっている。なお、心拍センサ121は、専用のセンサを手首等の運転者の身体に配置するようにしてもよい。
【0016】
発汗センサ122は、ステアリングに配置され、発汗状態によって流れる電流値の変化から発汗状態を検出する。
【0017】
血圧センサ123は、運転者の血圧を検出するセンサである。
本実施形態において、血圧センサ123は、例えば、人体において心臓の収縮に伴う血液の脈波が心臓から指先に到達するまでの脈波伝播時間(PWTT:Pulse Wave Transmit Time)と血圧との相関関係を利用して血圧測定を行うものである。
血圧センサ123は、心臓の拍動時に発生する電位変化を検知して心臓の収縮タイミングを検知するための電極センサと、指先の血流量の変化を赤外線により検知して脈波が指先に到達したタイミング(脈拍)を捉えるための赤外線センサを備えており、これらセンサにより検知した脈波伝播時間に基づいた演算により血圧を測定する。
なお、特開2000−107141号公報に記載されるように、心臓からの距離の差を利用して、脈拍を計測する脈拍センサを両センサ部に配置するようにしてもよい。
【0018】
車外環境取得部13は、カメラ131、ミリ波レーダ132、ワイパーセンサ133、ヘッドランプセンサ134を備えている。
【0019】
カメラ131は、車両前方に配置され、車両外前方を撮像する。カメラ131による撮像画像は画像認識処理により、運転者の視界が悪い状態か否かを判断する。
運転者の視界が悪い場合として、例えば、後述する道路地図データーベースによると現在走行している道路には車線が存在しているにもかかわらず、撮像画像からは車線(白線や黄線)を認識できない場合に視界が悪いと判断される。
また、ミリ波レーダ132で検出される車両を撮像画像から認識することができない場合にも、霧や雨等により視界が悪いと判断される。
本実施形態においてカメラ131は、CCDカメラで構成されている。
【0020】
カメラ131による撮像画像は車両外の明るさを検出するのにも使用されるが、カメラの撮像画像に代えて、又は加えて、明るさを検出する各種センサ(フォトダイオード等)を使用してもよい。
【0021】
ミリ波レーダ132は、車両前方をミリ波によりスキャンすることで、前方に存在する車両や障害物等を検出し、存在する場合には前方車両や障害物との距離を検出する
ミリ波レーダ132は、ミリ波帯の電波を用いた電波レーダで、本実施形態のミリ波レーダとしては、ミリ波FMCWレーダ装置が使用されている。
FMCWレーダ装置は、変調用三角波によってFM変調された連続波を送信波として前方に位置する自動車などの障害物に向けて送信して、障害物によって反射されて戻ってきた反射波を受信波として取り入れ、その時の送信波と受信波をミキシングして得られるビート信号をFFT等の周波数解析手法によって信号処理することで障害物との距離、及び相対速度を算出するようになっている。
【0022】
なお、本実施形態において車両前方の車両や障害物などを検出するためにミリ波レーダ132を使用するが、これに代えて又は加えて赤外線レーザレーダ等のレーザレーダを使用するようにしてもよい。
【0023】
ワイパーセンサ133、ヘッドランプセンサ134は、それぞれワイパー及びヘッドランプがオンされている状態を検出する。
本実施形態では、ワイパーセンサ133及びヘッドランプセンサ134の双方がオン状態を検出した場合には、夜間に雨が降っている場合なので視界が悪いと判断される。
【0024】
運転操作検出部14は、アクセルセンサ141、ブレーキセンサ142、及びハンドルセンサ143を備えている。
アクセルセンサ141は、アクセルを踏み込む速度や、踏力、踏む回数等を検出する。
ブレーキセンサ142は、ブレーキを踏み込む速度や、踏力、踏む回数等を検出する。
ハンドルセンサ143は、ハンドル操作の緩急及びハンドルを握る圧力を検出する。なお、ハンドルにはハンドルセンサ143の他に、上述した生体情報センサとしての発汗センサ122も配設されている。
【0025】
なお、運転操作検出部14としては明示していないが、車両制御装置は平均速度検出部を備えており、車速センサ114で検出した車速から平均車速が検出されるようになっている。
【0026】
表示装置15は、本実施形態における仮想車線を表示する装置である。
本実施形態における表示装置15は、ヘッドアップディスプレイで構成され、ECU10から供給される仮想車線の画像を車両のフロントガラスに投影して表示するようになっている。
なお、表示装置15は、ヘッドアップディスプレイの他、走行中の路面上に所定色のレーザー光等の照射光により仮想車線をライン表示する光照射装置により構成するようにしてもよい。この場合、前方に車両や人が車外環境取得部13で検出されるときには、検出した車両等を照射光の照射範囲から除外するようになっている。
【0027】
データ記憶部16と、プログラム記憶部17には、ROM、RAMの他、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、メモリチップやICカード等の半導体記録媒体、CD−ROMやMO、PD(相変化書換型光ディスク)等の光学的に情報が読み取られる記録媒体、その他各種方法でデータやコンピュータプログラムが記録される記録媒体が含まれる。
記録媒体には、記録内容に応じて異なる媒体を使用するようにしてもよい。
【0028】
データ記憶部16は、道路地図データベース161、車外環境判定データ162、運転操作判定データ163、生体情報判定データ164、履歴データ165、車両データ166等の本実施形態において使用される各種データが格納されている。
【0029】
道路地図データーベース161は、ナビゲーション機能で使用されるデータが使用され、車両の現在地周辺や目的地周辺等の各種地図や道路を表示装置に表示するための地図情報や、目的地までの経路探索に使用される道路情報、各施設に対する情報が格納された施設情報(POI情報)等の各種地図や道路に関するデータが格納されたデータベースである。
【0030】
本実施形態において道路地図データベース161は、現在位置検出手段11で検出した車両の現在位置と、道路データとのマップマッチングにより、現在走行している道路上の位置を検出するために使用される。
検出した道路上の位置は、道路データに基づき走行中の道路形状を特定し、特定した道路形状と車両前方の障害物等に応じた仮想車線の形状(仮想車線画像)を決定するために使用される。
【0031】
車外環境判定データ162は、車外環境が認識不可とされる場合、すなわち、運転者の視界が悪いとされる場合について規定したデータである。
運転操作判定データ163は、視界が悪くなったことにより、運転行動(運転操作)が変化したとされる場合について規定したデータである。
生体情報判定データ164は、視界が悪く、運転操作が変化したことで、生体情報に異常がでたと判断される場合について規定したデータである。
【0032】
図2は、車外環境取得部13、運転操作検出部14、生体情報センサ12のそれぞれで検出される状態の区分を例示したものである。
そして、これらの各検出状態と、車外環境判定データ162、運転操作判定データ163、生体情報判定データ164に規定される判断基準に基づいて、車外環境、運転操作、生体情報の各々についてECU10で判断される。
【0033】
図2(a)は、車外環境の状態区分を例示したものである。
車外環境の「車線」は、車線の「なし」(認識できず)と「あり」(認識可能)に区分され、カメラ131の撮像画像から認識処理される。
「天気」は、「雨」、「曇」、「雪」、「晴」、「霧」に区分される。この「天気」は、撮像画像の認識処理及びワイパーセンサ133の検出結果から判断される。ワイパーセンサ133がオンを検出している場合には雨、雪、霧のいずれかと判断され、ワイパーセンサ133がオフを検出している場合には、曇か晴れと判断される。
そして、カメラ131の撮像画像から画像処理により、雨、雪、霧、又は曇、晴れのいずれかが判断される。
【0034】
「明るさ」は、「暗」と「明」に区分される。「明るさ」は、カメラ131の撮像画像から画像処理によって判断される。なお、照度センサを使用して「暗」と「明」を判断するようにしてもよい。
「障害物」は、「多」、「少」、「なし」に区分される。「障害物」は、ミリ波レーダ132で検出される。
「周辺車両」は、「多」、「少」、「なし」に区分される。「周辺車両」は、ミリ波レーダ132及び撮像画像の画像処理によって検出される。
【0035】
そして、車外環境認識不可とされる車外環境判定データ162には、図2(a)に示される車外環境の状態区分のうち、次の各場合が規定されている。
(1)ミリ波レーダ132により障害物が検知されても撮像画像の画像処理からは当該障害物を認識できない場合。
(2)撮像画像の画像処理により、認識した車線が自車両から5m以下である場合、すなわち、車両の前方5mよりも先の車線を認識できない場合。
(3)雨が降っていて、車両の周囲が暗い場合。
(4)雪が降っている場合。
(5)狭路や障害物が多い場所での対向車とのすれ違いの場合。
【0036】
図2(b)は、運転操作の状態区分を例示したものである。
運転操作の「アクセル操作」は「強」、「中」、「弱」に区分される。「アクセル操作」は、アクセルセンサ141により検出される。
「ブレーキ回数」は、「多」、「中」、「少」に区分される。「ブレーキ回数」はブレーキセンサ142により検出される。
「ハンドル」は、「強」、「中」、「弱」に区分される。「ハンドル」は、ハンドルセンサ143により検出される。
「挙動」は「あり」、「なし」に区分され、ハンドルセンサ143により「ハンドル操作量」として検出される。
【0037】
そして、運転行動が変化したと判断される運転操作判定データ163には、図2(b)に示される運転操作の状態区分のうち、次の各場合が規定されている。
(1)アクセル操作が極端に弱くなった場合。
(2)ブレーキ回数が増えた場合。
(3)急なハンドル操作(強の場合)が増えた場合。
(4)ハンドル操作が増える挙動がでた場合。
【0038】
図2(c)は、生体情報の状態区分を例示したものである。
生体情報の「心拍」は、「高」、「中」、「低」に区分される。「心拍」は、心拍センサ121により検出される。
「発汗」は、「多」、「少」、「なし」に区分される。「発汗」は、発汗センサ122により検出される。
「血圧」は、「高」、「中」、「低」に区分される。「血圧」は、血圧センサ123で検出される。
【0039】
そして、生体情報が異常であると判断される生体情報判定データ164は、図2(c)に示される生体情報の区分のうち、次の各場合が規定されている。すなわち、心拍数や発汗量が交感神経系優位の状態であると判断される次の場合が規定されている。
(1)心拍数が上昇した場合
(2)心拍数が急に減少した場合
(3)発汗量が増えた場合
(4)血圧が急上昇した場合
(5)血圧が急下降した場合
【0040】
図1において、データ記憶部16の履歴データ165には、運転操作検出部14で検出される運転者の各種運転操作、及び生体情報センサ12で検出される運転者の生体情報が格納される。
履歴データ165は、仮想車線表示処理プログラム171において、運転操作が変化したか否か、及び、生体情報が異常か否かを判断するために使用される。RAMの所定領域に格納される。
【0041】
履歴データ165には、アクセルセンサ141、ブレーキセンサ142、ハンドルセンサ143からの出力信号が格納される。
車両データ166は、仮想車線表示装置が搭載される車両について、車両寸法、カメラ131の配置位置(高さ等)などのデータが格納されている。
【0042】
プログラム記憶部17には、仮想車線表示プログラム171、運転操作収集プログラム172、生体情報収集プログラム173、その他のプログラム174が格納されている。
【0043】
仮想車線表示プログラム171では、車外環境検出、視界判定、運転操作検出、運転行動変化判定、生体情報検出、生体情報チェック、車両位置検出、他車両検出、道路形状算出、仮想車線表示等の各種機能を実行することで、運転者にとってより必要性が高い場合における仮想車線を表示するプログラムである。
【0044】
運転操作収集プログラム172は、運転操作検出部14で検出した各種運転操作を所定時間間隔毎に取得し、履歴データ165に格納するプログラムである。
生体情報収集プログラム173は、生体情報センサ12で検出した生体情報(心拍数、発汗状態、血圧)を所定時間間隔毎に取得し、履歴データ165に格納するプログラムである。
履歴データ165に格納した運転操作及び生体情報は、所定時間、例えば、2分間分保存され、最も古い情報が削除されて最新の情報が保存されるようになっている。なお、生体情報は、所定時間分ではなくて所定数分保存するようにしてもよい。
【0045】
運転操作収集プログラム172及び生体情報収集プログラム173は、車両走行中において常時実行されるプログラムであり、仮想車線表示プログラム171等の他のプログラムとは独立して実行されるようになっている。
【0046】
音声出力装置18は、車内に配置された複数のスピーカで構成され、音声制御部で制御された音声、例えば、本実施形態の仮想車線表示処理において車両前方に障害物が存在すことを警告する音声が出力されるようになっている。
この音声出力装置18は、オーディオ用のスピーカと兼用するようにしてもよい。
【0047】
次に、以上のように構成された仮想車線表示装置における仮想車線表示処理について、図3のフローチャートに従って説明する。
この仮想車線表示処理は、車両の走行開始、又はイグニッションオンにより実行される。
【0048】
まずECU10は、車外環境取得部13による検出結果により車外環境を検出する(ステップ11)。
すなわち、ECU10は、カメラ131、ミリ波レーダ132、ワイパーセンサ133、ヘッドランプセンサ134による撮像画像や検出から、車外環境(車線、天気、明るさ、障害物、周辺車両(図2(a)参照))を認識及び検出(判断)する。
【0049】
そして、ECU10は、認識及び検出した車外環境が、視界が悪い場合を規定した、車外環境判定データ162を満足するか否か、すなわち、視界が悪いか否かを判断する(ステップ12)。
視界が悪くないと判断された場合(ステップ12;N)には、仮想車線の表示は不要なので、ステップ11に戻って、車外環境の検出と視界の判定を継続する。
【0050】
一方、視界が悪いと判断された場合(ステップ12;Y)、ECU10は、運転操作検出部14で検出され、運転操作収集プログラム172に従って履歴データ165に格納されている運転操作履歴から、アクセル操作、ブレーキ回数、ハンドル操作、挙動等(図2(b)参照)の運転動作が変化したか否か、について判断する(ステップ13、14)。 すなわち、ECU10は、視界が悪くなったことが原因で、アクセル操作や平均車速が変化したか否かを、運転操作判定データ163に基づいて判断する。
【0051】
運転行動に変化がない場合(ステップ14;N)、視界が悪くなったとしても運転操作に影響が出ていないので、運転者に仮想車線の表示は不要であるとの判断のもと、ECU10はステップ11に戻って処理を継続する。
【0052】
一方、運転行動に変換が有った場合(ステップ14;Y)、ECU10は、生体情報センサ12で検出され、生体情報収集プログラム173に従って履歴データ165に格納されている生体情報履歴から、心拍、発汗、血圧等(図2(c)参照)の生体情報が異常か否か、について判断する(ステップ15、16)。
すなわち、ECU10は、視界が悪く、運転操作が変化したことで、生体情報に異常があるか否かを、生体情報判定データ164に基づいて判断する。
生体情報に異常がない場合(ステップ16;N)、視界が悪くなり運転操作に変化が現れても、運転者は精神的に不安な状態には至っていず、仮想車線の表示は不要であるとの判断のもと、ECU10は、ステップ11に戻って処理を継続する。
【0053】
生体情報が異常である場合(ステップ16;Y)、すなわち、視界が悪く、運転操作が変化したことで、生体情報に異常が発生している場合、ECU10は、仮想車線を表示する(ステップ17)。
【0054】
すなわち、ECU10は、まず仮想車線を表示する道路の形状を、地図データから特定する。この場合、ECU10は、現在位置検出手段11で検出した車両の現在位置に対応する道路をマップマッチングにより特定し、地図データから現在走行している道路の形状を取得する。
【0055】
ついで、ECU10は、カメラ131による車両前方の撮像画像の画像認識結果や、ミリ波レーダ132の検出データから、道路形状を補正する。
さらに、撮像画像やミリ波レーダの検出値から、車両前方に存在する障害物(停車中の車両を含む)や、走行中の他車両を認識する。
そして、ECU10は、補正した道路形状及と障害物に対応した仮想車線の仮想車線画像を生成し、表示装置15により仮想車線をフロントガラスに表示する。
ここで、仮想車線画像は、車両データ168に格納されている車幅+α(例えば、左右50cm)の幅の仮想車線画像2本が生成され、障害物が存在する場合には該障害物を避けた形状の仮想車線画像が生成される。
【0056】
なお、現在走行中の道路がカーブである場合には、カーブ曲率を計算して仮想車線画像を生成する。
カーブ曲率については、道路データから取得するようにしてもよい。
【0057】
ついで、ECU10は、仮想車線表示後の生体情報が異常状態がまだ継続しているか否かについて判断する(ステップ18、19)。
なお、ステップ18、19の処理はステップ15、16と同様である。
【0058】
生体情報の異常が継続している場合(ステップ19;Y)、ECU10は、ステップ17に戻って、仮想車線の表示と生体情報異常状態の監視を継続する。
【0059】
一方、生体情報の異常状態が正常に戻った場合(ステップ19;N)、ECU10は、表示している仮想車線を消去(表示を終了)し(ステップ20)、ステップ11に戻って戻って、車外環境の検出と視界の判定を継続する。
【0060】
図4、図5は、本実施形態による仮想車線の表示状態を表したものである。
図4(a)は、カメラ131の撮像画像と、ミリ波レーダ132の検出値から作成した3D画像データである。この画像の場合、車両から車線の認識が5m未満しか認識できない状態なので、視界が悪いと判断される。
一方、図4(b)に示すように地図データから、道路形状が認識される。
そして、ECU10は、図4(c)に示されるように、車幅+αの幅で仮想車線151をフロントガラスに表示する。この、図4(c)は、運転者の視界を説明のための図であり、フロントガラスに仮想車線151が表示されることで、運転者とっての視界状態が表されている。
【0061】
なお、図4(c)に示されるように、仮想車線151は、運転者にとって見えている道路の形状に合わせて表示されるため、直線道路であっても平行線が表示されるわけではなく、遠方の道路幅が狭くなるように表示されるようになっている。
【0062】
図5は、車両前方に障害物(停車車両)が存在する場合(a)、狭くて車線のないカーブ(b)における仮想車線の表示状態を表したものである。
なお、図5(a)、(b)は、運転者にとって見える状態を表した図4とは異なり、仮想車線の形状を説明するために、上部からみた状態を表している。従って、仮想車線以外についても明瞭に表示しているが、実際に仮想車線が表示される場合には視界が悪い状態である。
【0063】
図5(a)に示されるように、自車両Aの前方に障害物(路上駐車等)152が検出された場合、検出した障害物152を避けるための軌跡を仮想車線で表示する。
そして、図5(a)に示されるように、対抗車線を走行する車両153、154が存在する等の理由で、障害物を避けて表示した仮想車線通りに走行することができない場合、仮想車線を薄く表示、又は表示しないようにすると共に、視界が悪い状態なので、その旨を音声により警告する。
音声による警告としては、例えば、「今、左前方に存在する障害物を避けて通過すると、対向車に接触する可能性があります。」等の音声で警告する。
【0064】
なお、対向車の有無にかかわらず、車線をまたぐ(対向車線にはみ出して走行する)場合は、自動でウィンカーを作動させるようにしてもよい。
【0065】
一方、図5(b)に示されるように、車線が無く、狭いカーブを走行する場合には、上述したようにカーブ曲率に基づいて認識した道路形状に合わせた仮想車線が表示されるとともに、対抗車両が存在する場合には、その旨の警告をするようにしてもよい。
【0066】
以上、本発明の仮想車線表示装置における1実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、説明した実施形態では、検出する生体情報として、脈拍数と発汗情報を検出するようにしたが、他の生体情報として瞳孔や脳波などの自律神経系の他の情報を検出し、その変化から交感神経系優位状態の場合に生体情報異常と判断するようにしてもよい。
【0067】
説明した実施形態では、仮想車線の表示(ステップ17)の後、生体情報が正常に戻った場合(ステップ19;N)に、表示中の仮想車線を消去する(ステップ20)ようにしたが、視界が良くない状況において仮想車線が表示されて安心したために生体情報の異常が解消した場合も考えられる。
そこで、生体異常の解消(正常化)と、運転行動の変化が解消した場合の両条件を満たした場合に、仮想車線を消去(ステップ20)するようにしてもよい。
また、ステップ17、18の処理に代えて、視界が良くなったか否かの判断(ステップ11、12の処理)を行い、視界が良くなったことを条件として仮想車線を消去(ステップ20)するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の1実施形態における仮想車線表示装置の構成図である。
【図2】車外環境取得部、運転操作検出部、生体情報センサのそれぞれで検出される状態の区分を例示した説明図である。
【図3】仮想車線表示処理の内容を表したフローチャートである。
【図4】本実施形態による仮想車線の表示状態を表した説明図である。
【図5】本実施形態による仮想車線の他の表示状態を表した説明図である。
【符号の説明】
【0069】
10 ECU
11 現在位置検出装置
12 生体情報センサ
121 心拍センサ
122 発汗センサ
123 血圧センサ
13 車外環境取得部
131 カメラ
132 ミリ波レーダ
133 ワイパーセンサ
134 ヘッドランプセンサ
14 運転操作検出部
141 アクセルセンサ
142 ブレーキセンサ
143 ハンドルセンサ
15 表示装置
16 データ記憶部
17 プログラム記憶部
18 音声出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の環境情報を取得する車外情報取得手段と、
前記取得した環境情報から、車両前方の視認性の良否を判定する視認性判定手段と、
運転者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記取得した生体情報が所定の閾値を越えているか否かを判定する生体情報判定手段と、
車両が現在走行している道路形状を認識する道路形状認識手段と、
前記視認性が良くないと判断され、かつ、前記生体情報が所定の閾値を越えていると判断された場合に、前記認識した道路形状に合わせて仮想の車線を表示する仮想車線表示手段と、
を具備したことを特徴とする仮想車線表示装置。
【請求項2】
車両外部の環境情報を取得する車外情報取得手段と、
前記取得した環境情報から、車両前方の視認性の良否を判定する視認性判定手段と、
運転者の運転操作を検出する運転操作検出手段と、
前記検出した運転操作が、視認性が良くない場合の運転操作として予め規定された異常操作に該当するか否かを判断する異常操作判断手段と、
車両が現在走行している道路形状を認識する道路形状認識手段と、
前記視認性が良くないと判断され、かつ、前記異常運転操作に該当すると判断された場合に、前記認識した道路形状に合わせて仮想の車線を表示する仮想車線表示手段と、
を具備したことを特徴とする仮想車線表示装置。
【請求項3】
前記仮想車線表示手段は、道路上又はフロントガラスに仮想車線を表示する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮想車線表示装置。
【請求項4】
車両前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段を備え、
前記仮想車線表示手段は、前記検出した障害物を避ける仮想車線を表示する、ことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の仮想車線表示装置。
【請求項5】
車両前方に存在する他の走行車両、及び障害物を検出する前方存在物検出手段を備え、
前記検出した他の走行車両又は障害物に応じてその存在を警告する警告手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の仮想車線表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−122578(P2007−122578A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316478(P2005−316478)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】