説明

位置特定装置、コンピュータプログラム及び位置特定方法

【課題】歩行者による煩雑な操作を必要とせず、歩行者の位置を特定する特定精度の向上を計ることができる位置特定装置、位置特定装置を実現するコンピュータプログラム及び位置特定方法を提供する。
【解決手段】歩行者の位置を測位し、測位結果に基づいて歩行者の位置を特定する位置特定装置において、測位結果に基づいて歩行者の位置を地図上で推定する。推定した推定位置を含む誤差範囲に含まれる建物又は交差点などの特徴地点に係る識別情報を取得する。そして、取得した識別情報に係る位置情報を取得する。その後、特徴地点に位置した又は通過した歩行者による操作を受け付け、操作を受け付けたタイミングで、歩行者の位置を、取得した位置情報に対応する位置と特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の位置を特定する位置特定装置、該位置特定装置を実現するコンピュータプログラム及び位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広く利用されている車両の位置を検出するカーナビゲーション装置は、GPS(Global Positioning System)を用いる衛星航法、距離センサ、方位センサ又は角速度センサ等を用いた自立航法、自立航法による走行軌跡と道路地図との整合性(マッチング)を考慮して車両の位置を検出する地図マッチング法、及び衛星航法と地図マッチング法とを組み合わせたハイブリッド航法等を用いている。
【0003】
例えば、地図マッチング法は、自立航法による軌跡と、道路地図データとを比較して相関をとりながら、走行していると考えられる複数の道路候補の中から、最も確からしい道路を選定してゆく(特許文献1参照)。そして、候補となる道路が1本に限定された時点で、自立航法により得られた車両の走行軌跡を道路に合致させる。
【0004】
また、ハイブリッド航法は、衛星航法と地図マッチング法とを組み合わせたものであり、自立航法と衛星航法の誤差を勘案しながら、合理的に車両の位置を推定し、走行している道路を特定するものである(特許文献2参照)。ハイブリッド航法では、例えば、通常時には、地図マッチング法を用いて車両の位置を検出する。地図マッチング法で車両の位置が検出不能に陥った場合、衛星航法により車両の位置、方位を検出して車両の位置を推定し、道路地図データとの整合性を考慮して車両の位置を検出するものである。これら道路方向の車両位置は、平均的には10m前後の誤差を有し、車両が長い距離を走行した場合には、車両位置の誤差が累積するとともに、高架下の道路、トンネル内の道路、建物に挟まれた道路、山道、又は街路樹等で覆われた道路を走行した場合には、GPS衛星との通信が不能になり、車両位置の精度が一時的に悪化するときがある。
【0005】
また、上述の検出位置を補正する方法として、光ビーコン、電波ビーコン又は磁気ネール等の路上設備と交信し、あるいは超音波感知器などの路上設備を感知して、その時点で一時的に位置を精度良く修正する(例えば、感知範囲が4mの場合、通信した時点での位置誤差は、無駄時間がなければ2シグマで2m程度となる)方法がある。
【0006】
一方、カーナビゲーション装置に用いられる上述の各航法は、歩行者の位置を検出する場合にも採用されている。例えば、GPS及び基地局との通信を用いて、歩行者の位置を検出する位置検出装置がある。この位置検出装置は、歩行者により携帯され、衛星の受信状態が良い場合には、10〜20m程度の誤差で歩行者の位置を検出できる。しかしながら、都心でのビル等の建造物の谷間又は高架道路の下方では、位置が全く得られないこと、又は、マルチパス等のために誤差が数百mという不正確な位置が得られることが多い。特に、歩行者は、建造物に沿って歩く傾向にあるため、GPSの受信レベルが悪い。さらに歩行者が建造物の中に入った場合には、GPSが機能しないため、基地局との通信が可能でなければ位置検出は不能となる。あるいは、基地局との通信が可能であればこれにより位置を割り出す方法があるが、位置検出の精度は悪い。
【0007】
このため、歩行者が駅又は主要な交差点等に来たときに、駅又は交差点等に予め割り当てられた位置コードを入力することにより、位置コードから地図上の位置を検索し、検索した位置を歩行者の位置として検出する位置検出装置がある(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭63−294215号公報
【特許文献2】特開平1−096741号公報
【特許文献3】特開平9−89584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3では、歩行者が駅又は交差点等に割り当てられた位置コードを歩行者自身が記憶しておくか、若しくは、場所と位置コードとを表にした対応表を紙などに書いて持ち歩く必要があり、現実的でないという問題がある。また、このような入力は、歩行者にとって煩雑な操作となる問題がある。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歩行者による煩雑な操作を必要とせず、歩行者の位置の特定精度の向上を計ることができる位置特定装置、位置特定装置を実現するコンピュータプログラム及び位置特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る位置特定装置は、歩行者の位置を測位し、測位結果に基づいて歩行者の位置を特定する位置特定装置において、測位結果に基づいて歩行者の位置を地図上で推定する推定手段と、該推定手段で推定した推定位置を含む所定範囲に含まれる識別情報を取得する識別情報取得手段と、該識別情報取得手段が取得した識別情報に係る位置情報を取得する位置情報取得手段と、操作を受け付ける操作受付手段と、該操作受付手段が操作を受け付けた時点における歩行者の位置を、前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて特定する特定手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る位置特定装置は、第1発明において、前記識別情報取得手段は、複数の識別情報を取得する構成としてあり、前記識別情報取得手段が取得した複数の識別情報から識別情報を指定する指定手段をさらに備え、前記特定手段は、前記指定手段が指定した識別情報に係る位置情報に基づいて特定する構成としてあることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る位置特定装置は、第1又は第2発明において、前記識別情報取得手段は、複数の識別情報を取得する構成としてあり、前記識別情報取得手段が取得した複数の識別情報からの選択を受け付ける選択手段をさらに備え、前記特定手段は、前記選択手段が受け付けた識別情報に係る位置情報に基づいて歩行者の位置を特定する構成としてあることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記推定手段が推定した推定位置の誤差範囲を算出する誤差範囲算出手段をさらに備え、前記特定手段は、前記誤差範囲算出手段で算出した誤差範囲内の識別情報に係る位置情報に基づいて歩行者の位置を特定する構成としてあることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記識別情報取得手段は、前記識別情報に係る信号を受信する構成としてあり、前記信号を受信可能な範囲を特定する受信可能範囲特定手段をさらに備え、前記特定手段は、前記受信可能範囲特定手段で特定した受信可能な範囲内にある信号に基づいて歩行者の位置を特定するように構成してあることを特徴とする。
【0015】
第6発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記識別情報取得手段が複数の識別情報を取得し、前記位置情報取得手段が、前記識別情報取得手段が取得した識別情報に基づいて、複数の位置情報を取得した場合において、前記特定手段は、前記位置情報取得手段が取得した複数の位置情報に基づいて複数の歩行者の位置を特定できる構成としてあり、前記特定手段が歩行者の位置を複数の位置と特定した場合に、前記複数の位置の選択を受け付ける選択手段をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
第7発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第6発明のいずれか1つにおいて、前記特定手段が特定した歩行者の位置を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
第8発明に係る位置特定装置は、第7発明において、前記特定手段で特定した位置の確からしさを評価するための評価係数を算出する算出手段と、前記特定手段で特定した位置が複数ある場合、前記算出手段で算出した評価係数に応じて1つの位置を選択する位置選択手段と、該位置選択手段で選択した位置を前記表示手段に表示する表示制御手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0018】
第9発明に係るコンピュータプログラムは、自身の位置が測位された測位結果を取得し、該測位結果に基づいて自身の位置を特定するコンピュータで実行するコンピュータプログラムにおいて、コンピュータを、取得した測位結果に基づいて自身の位置を地図上で推定する推定手段、該推定手段で推定した推定位置を含む所定範囲に含まれる識別情報を取得する識別情報取得手段、該識別情報取得手段が取得した識別情報に係る位置情報を取得する位置情報取得手段、及び、操作を受け付けた場合に、前記操作を受け付けた時点における自身の位置を、前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて特定する特定手段として機能させることを特徴とする。
【0019】
第10発明に係る位置特定方法は、歩行者の位置を測位し、測位結果に基づいて歩行者の位置を特定する位置特定装置で実行する位置特定方法において、測位結果に基づいて歩行者の位置を地図上で推定するステップと、推定した推定位置を含む所定範囲に含まれる識別情報を取得するステップと、取得した前記識別情報に係る位置情報を取得するステップと、操作を受け付けるステップと、操作を受け付けた場合に、前記操作を受け付けた時点における歩行者の位置を、取得した前記位置情報に基づいて特定するステップとを備えることを特徴とする。
【0020】
第1発明、第9発明及び第10発明にあっては、歩行者の位置を測位し、測位結果に基づいて歩行者の位置を地図上で推定する。位置を測位する方法は、例えば、自立航法、衛星航法、地図マッチング法、又はハイブリッド航法などである。推定した推定位置を含む所定範囲内に含まれる識別情報を取得する。識別情報は、建造物、交差点又は踏切の名称、略称、住所あるいは位置コードなどでもよい。また、識別情報は、外部から信号を受信することで、取得されるようにしてもよい。取得した識別情報に係る位置情報を取得し、受付手段が操作を受け付けたタイミングで、歩行者の位置を位置情報に対応する位置と特定する。操作は、ボタンの押し操作であってもよいし、外部から信号を受信させるための操作でもよい。
【0021】
これにより、歩行者が自身の周囲にある分かり易い地点に係る識別情報を取得でき、取得した識別情報に係る位置付近で操作することで、歩行者の現在いる位置を識別情報に対応する位置と特定できる。また、識別情報が外部からの信号により取得された場合には、煩雑な操作を必要とせず、受け付けた識別情報に係る位置付近で操作するだけで、簡単に現在位置を特定することができる。また、識別情報は、歩行者の推定位置を含む所定範囲内から取得されるため、歩行者は、入力するために識別情報を覚える必要がなくなる。
【0022】
第2発明にあっては、地図情報から識別情報を指定し、指定された識別情報に係る位置情報に基づいて歩行者の位置を特定することで、歩行者は自分で識別情報を入力する必要がなく、歩行者の位置を特定することができる。
【0023】
第3発明にあっては、複数の識別情報を取得し、取得した複数の識別情報からの選択を受け付ける。これにより、歩行者は、複数の識別情報から、自身が識別し易い位置の識別情報を選択することができる。そして、選択された識別情報に対応する位置を、歩行者の位置と特定できる。即ち、識別情報を選択するという簡単な操作で、位置特定を行うことができる。
【0024】
第4発明にあっては、誤差範囲を含む歩行者の推定位置から、識別情報を取得することで、より精度の高い位置特定を行うことができる。
【0025】
第5発明にあっては、識別情報に係る信号を受信可能な範囲を特定し、特定した受信可能な範囲内にある信号に基づいて歩行者の位置を特定する。外部の通信装置等から信号を受信する場合、受信可能な範囲は、通信装置との通信可能範囲とすることができ、例えば、無線LAN等の中域通信の通信範囲である。信号の受信可能な範囲内に限定することにより、受信可能な範囲外にある識別情報は除外して位置検出(特定)のための不要な処理を省き、処理労力を低減して短時間で位置を検出することができる。
【0026】
第6発明にあっては、位置情報が複数あり、歩行者の位置を複数の位置と特定した場合に、それら複数の位置を選択できる。これにより、歩行者自身により、歩行者の位置をより精度よく特定することができる。
【0027】
第7発明にあっては、設定した歩行者の位置を表示することで、視覚的に位置を確認できる。
【0028】
第8発明にあっては、歩行者の位置を特定した複数の位置それぞれと、推定した歩行者の位置との位置ずれを算出し、算出結果に基づいて、歩行者の位置に特定した複数の位置を表示する。例えば、推定した歩行者の位置との位置ずれが小さい位置を表示することで、歩行者の位置に特定された位置の表示に対する信頼度の向上を計ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明にあっては、歩行者が自身の周囲にある分かり易い地点に係る識別情報を取得でき、取得した識別情報に係る位置付近で操作することで、歩行者の現在いる位置を識別情報に対応する位置と特定できる。また、識別情報が外部からの信号により取得された場合には、煩雑な操作を必要とせず、受け付けた識別情報に係る位置付近で操作するだけで、簡単に現在位置を特定することができる。また、識別情報は、歩行者の推定位置を含む所定範囲内から取得されるため、歩行者は、入力するために識別情報を覚える必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る搬送装置の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
【0031】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る位置検出装置10の構成の一例を示すブロック図である。本発明に係る位置検出装置10は、自身(歩行者)の位置を時系列に測位し、測位して得られた測位データに基づいて自身の位置を推定し、推定した位置を歩行者の位置として検出するとともに表示する。また、位置検出装置10は、歩行者による操作と、後述する道路上の特徴地点に係る地点情報とを関連付けて、歩行者の位置を特定することにより、歩行者の位置を補正し、特定(補正)した位置を歩行者の位置として検出するとともに表示する。この場合、自身の位置を特定するとは、測位精度の誤差の大きさにかかわらず、高精度に自身の位置を検出することを意味する。
【0032】
位置検出装置10は、歩行者(自転車で走行する歩行者も含む)が携帯可能であって、装置全体を制御する制御部11、通信部12、測位部13、地図データベース14、記憶部15、操作部16、位置検出処理部17、表示部18、音声出力部19などを備える。また、測位部13は、GPS131、距離センサ132、方位センサ133などを備える。また、位置検出処理部17は、位置推定部171、誤差算出部172、地図情報取得部173、識別情報取得部174、位置特定部175、評価部176などの一つ以上を備える。
【0033】
通信部12は、光ビーコン、電波ビーコン、RFID若しくはDSRC等の路上装置との間で通信を行う狭域通信機能、UHF帯若しくはVHF帯などの無線LAN等の中域通信機能、又は携帯電話、PHS、多重FM放送若しくはインターネット通信などの広域通信機能を備える。通信部12は、例えば、道路上の特徴地点としての、横断歩道を有する交差点、あるいは、警報機を有する踏切等の周辺を範囲とした無線LAN等の中域通信を利用し、路上装置間の路路間通信、路上装置と車両との路車間通信、又は車々間通信で通信された地図情報、地点情報(例えば、交差点情報及び踏切情報等)などを取得する。路上装置は、例えば、超音波感知器、光ビーコン若しくは画像感知器等の交通情報収集装置、交通情報を文字又は図形で提供する情報板装置、信号制御装置、信号機及び警報機等がある。また、通信部12は、携帯電話等の広域通信を利用することにより、情報処理センタ又は交通管制センタ等のセンタ装置から歩行者の周辺の地図情報、交差点の交差点情報又は踏切の踏切情報などを取得することもできる。
【0034】
地点情報としての交差点情報は、例えば、交差点を識別するための識別子、交差点の横断歩道の位置、交差点に設置された信号機の信号情報などである。また、地点情報としての踏切情報は、例えば、踏切を識別する識別子、踏切の位置、警報情報などである。
【0035】
通信部12は、基地局との間で通信を行う通信機能を備え、複数の基地局からの電波を受信し、受信結果を測位部13へ出力する。また、通信部12は、路上装置との狭域通信により得られた通信地点の位置情報を測位部13へ出力する。
【0036】
測位部13は、歩行者の位置を時々刻々(例えば、0.5秒、1秒等の経過の都度、1m、2m等の移動の都度など)測位し(測位位置を求め)、歩行者の移動距離及び移動方位(測位方位)を時刻とともに歩行者の歩行軌跡として記憶部15に記憶する。
【0037】
GPS131は、複数のGPS衛星から電波を受信し、歩行者の位置を測位する。なお、GPS131に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPS131で求めた測位位置のずれを補正することができ、歩行者の位置の精度を向上させることができる。
【0038】
距離センサ132は、非常に短い時間での速度、移動距離を検出することができる加速度センサ、比較的長い移動距離を検出することができる歩数センサなどを備えている。これにより、自立航法において歩行者の位置を短時間かつ短距離の歩行毎に検出することができる。
【0039】
方位センサ133は、角速度センサ又は角加速度センサ(相対方位センサ)、地磁気センサ(絶対方位センサ)などを備えている。これにより、自立航法において歩行者の移動方位を短時間かつ短距離の歩行毎に検出することができる。
【0040】
測位部13は、測位した測位データ、通信部12を経由して得られた基地局からの電波の受信結果、又は路上装置との狭域通信により得られた通信地点の位置情報などに基づいて、測位位置及び測位位置の誤差を算出する。以下、測位位置及びその誤差の算出方法について説明する。
【0041】
図2は測位位置の誤差範囲の例を示す説明図である。直交座標系(x方向及びy方向)において、GPS、基地局又は路上装置との狭域通信により検出された位置の誤差範囲を、一例として、矩形領域(x方向の長さが4a、y方向の長さが4b)として設定する。すなわち、測位位置は、矩形領域の中心位置であり、誤差範囲は、中心位置からx方向に±2aの範囲だけ広がり、y方向に±2bの範囲だけ広がる。例えば、2aを2シグマと設定した場合、x方向の分散はa2 となり、標準偏差はaと設定することができる。また、2bを2シグマと設定した場合、y方向の分散はb2 となり、標準偏差はb2と設定することができる。
【0042】
歩行者の位置を測位する際にGPSを利用する場合、誤差範囲は、環境条件、より具体的には、GPSの受信レベル、捕捉衛星数、2次元又は3次元測位の別、あるいは、CEP(Circular Error Probability)等により時間的に変化する。また基地局通信の場合には、誤差範囲は、基地局との通信レベル、基地局の通信範囲等で時間的に変化する。誤差範囲を予め大きめに設定した所定の定数、場所又は時間に応じて予め決定した定数等を用いてもよい。また、誤差範囲の形状は、矩形形状に限らず、円形、楕円形等任意の形状でもよい。例えば、GPSのみで測位する場合、環境条件が良好なときには、誤差範囲として10〜20m程度を設定することができる。
【0043】
以下、歩行者の測位位置の算出方法について説明する。なお、測位位置は、直交座標系における二次元ベクトルで表現するが、3次元では、高度情報を加えるだけであり、容易に拡張可能である。また、以下の説明では、時刻で定式化しているが、実際の処理においては、単位時間の経過の都度の処理の代わりに単位走行距離の都度処理を行ってもよい。また、以下、大文字のアルファベットはベクトル又は行列とする。
【0044】
時刻tにおける歩行者の位置P(t)を式(1)とした場合、時刻t+1(時刻t、t+1の間隔は、所定時間であり、例えば、1秒、0.5秒などである)における歩行者の位置P(t+1)は、式(2)で表すことができる。あるいは、時刻tから歩行者が所定の走行距離(例えば、1m、2mなど)を走行した時刻を時刻t+1とすることもできる。なお、ベクトルに付した「T」は転置を意味する。また、式(2)は、歩行者の動特性を示すものである。なお、時刻tにおける歩行者の位置P(t)は、歩行者の真の位置(実際の位置)であり、観測不可能な位置である。すなわち、歩行者の測位位置は、真の位置P(t)に対する最適な推定位置を求めるものである。
【0045】
【数1】

【0046】
ここで、D(t)は、式(3)で表され、d(t)は、時刻tから時刻t+1までに歩行者が移動(歩行)した距離、θ(t)は、直交座標系に対する歩行者の移動(歩行)の方位角である。また、E(t)は、式(4)で表され、e(t)は、移動距離d(t)の誤差である。また、誤差E(t)の分散Q(t)は、式(5)で表され、qは、単位距離移動での誤差分散であり、一定値とすることができる。
【0047】
また、時刻tにおいて、GPS、基地局通信又は路上装置との通信により検出された位置S(t)は、式(6)で表すことができる。ここで、G(t)は、位置S(t)の誤差であり、誤差G(t)の共分散行列R(t)は、式(7)で表すことができる。式(7)において、a、bそれぞれは、図2で示した誤差範囲である矩形領域のx方向及びy方向の長さの4分の1である。すなわち、共分散行列R(t)は、2a、2bを2シグマとした場合のx方向及びy方向の分散で構成されている。なお、E(t)、G(t)の平均値は0としても一般性は失わない。
【0048】
時刻tにおける歩行者の位置P(t)の最適な推定位置H(t)は、カルマンフィルタにより式(8)のような漸化式で表される。
【0049】
【数2】

【0050】
ここで、Γ(t)は、推定位置H(t)の推定誤差の分散であり、式(9)のような漸化式で表すことができる。また、行列に付した「-1」は、その行列の逆行列を意味する。また、初期時刻0における推定位置H(0)、その推定誤差の分散Γ(0)は、それぞれ式(10)、式(11)で表すことができる。ここで、Mは、歩行者の最初の位置の先験情報であり、Σは、その誤差分散である。仮に先験情報がない場合、M=0、Σ-1=0となり、初期時刻0における推定位置H(0)、その推定誤差の分散Γ(0)は、それぞれ式(12)、式(13)で表される。
【0051】
なお、式(6)は、GPS、基地局通信又は路上装置との通信により位置が検出された場合に得られるので、GPS、基地局通信又は路上装置との通信が行われない間は、式(7)における誤差a、bが十分大きな値と考えることにより、式(8)において、R-1(t)=0とすれば、式(8)をそのまま用いて推定位置を繰り返し算出することができる。
【0052】
地図データベース14は、広範囲の地図情報を記憶してある。なお、歩行者の位置に応じて、その付近の地図情報をセンタ装置又は路上装置などの外部から通信で取得して記憶しておくこともできる。
【0053】
図3は地図情報の一例を示す模式図である。歩行者の位置を検出する場合には、車両の位置を検出する場合に比較して複雑かつ困難になる。すなわち、車両の場合には、推定した位置と地図上の車道との地図マッチングにより、車両の位置を検出することができるのに対し、歩行者の場合には、歩行者用の歩道以外に歩行者が歩行可能な領域は種々存在する。また、屋外のみならず屋内であっても歩行者の位置検出を行う必要性が高い。従って、歩行者の位置を検出する場合、歩道と車道との分離等、きめ細かな地図マッチングが必要となるため、地図情報としても詳細のデータが必要になる。ただし、広範囲な地図情報を位置検出装置10の記憶部15に記憶しておく必要はなく、歩行者の位置に合わせて適宜、情報センタ装置又は路上装置等の外部から通信で取得しても良い。
【0054】
地図上には、歩行者専用道路(歩道)、車道、横断歩道、ビル、小売店、公園、池、陸橋など、種々の領域が存在する。そこで、ビル、地下道、駅舎、店舗、小売店、家屋、工場、地下街、建造物内部などの屋内領域には、その中に歩行通路(道路)を設定することができる。
【0055】
図4は地図上の道路の設定の一例を示す説明図である。図4の例は、道路上の特徴地点としての交差点の周辺の道路の設定例を示す。図4に示すように、歩道と車道とが分離されているような幹線道路の場合には、歩行者道路(歩道)及び横断歩道を道路として設定することができる。図4の例では、道路を二次元で示し、道路の幅を設定してある。
【0056】
図5は地図上の道路の設定の他の例を示す説明図である。図5の例も、道路上の特徴地点としての交差点の周辺の道路の設定例を示す。図5に示すように、歩道と車道とが分離されているような幹線道路の場合には、歩行者道路(歩道)及び横断歩道を道路として設定することができる。図5の例では、道路を一次元で示し、道路を線分として設定してある。なお、この場合、道路の幅を設定しておくこともできる。
【0057】
記憶部15は、通信部12を介して受信した各種情報、測位部13で測位した測位データ、位置検出処理部17で処理した処理結果などを記憶する。なお、制御部11、位置検出処理部17などをCPU、RAMなどで構成する場合、制御部11、位置検出処理部17の処理手順を定めたコンピュータプログラムを記憶することもできる。
【0058】
操作部16は、各種操作ボタンを備え、歩行者と位置検出装置10とのユーザインタフェースとして機能する。操作部16は、位置検出装置10における各種選択及び操作を受け付ける。例えば、操作部16は、識別情報の入力又は選択、識別情報に対応する交差点又は踏切などの特徴地点の通過に合わせた入力を受け付ける。
【0059】
識別情報は、例えば、建造物、交差点又は踏切など、地図上の特徴地点に係る名称、略称、住所あるいは位置コードなどである。識別情報は、外部から取得する地点情報に含まれていてもよいし、位置推定部171で算出した推定位置の誤差範囲内の地図情報から取得されてもよい。
【0060】
位置検出処理部17は、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。
【0061】
位置推定部171は、測位部13で算出した測位位置の軌跡(測位軌跡)に基づいて、地図上での歩行者の推定位置及び歩行軌跡を算出する。
【0062】
誤差算出部172は、測位部13で算出した測位位置の誤差範囲に基づいて、位置推定部171で算出した推定位置の誤差範囲を算出する。例えば、推定位置の誤差範囲を測位位置の誤差範囲(例えば、20〜200mであって、測位軌跡の長さに応じて変動)とすることができる。また、位置特定部175で歩行者の位置を特定した場合、特定位置の誤差範囲を設定する。歩行者の位置を特定した場合の誤差範囲は、例えば、最小の誤差(例えば、横断歩道の長さ程度の範囲、踏切の長さ程度の範囲など)とすることができる。
【0063】
誤差算出部172は、歩行者の位置が特定された後は、特定された位置からの歩行者の移動距離又は移動方向に応じて、測位誤差が大きくなることを考慮して、歩行者の移動距離又は移動方向に応じた値(例えば、測位誤差の増加分)を加算して誤差範囲を算出する。なお、歩行者の移動距離又は移動方向に関わらず、誤差範囲を常に適当な所定の一定値(例えば、100m)とすることもできる。
【0064】
地図情報取得部173は、誤差算出部172で算出した推定位置の誤差範囲に含まれる地図情報を取得する。地図情報取得部173で取得された地図情報は、例えば表示部18に表示される。
【0065】
識別情報取得部174は、地図情報取得部173で取得された地図情報から識別情報を取得する。識別情報を、地図情報取得部173で取得された地図情報から取得することで、歩行者の周囲にある特徴地点に係る識別情報が取得できる。ここで取得される識別情報は、予め設定された種類(例えば、交差点)に関する情報であってもよいし、取得するタイミング毎の任意な情報であってもよい。
【0066】
また、識別情報取得部174は、通信部12で受信した地点情報から識別情報を取得する。地点情報を受信できる範囲を特定した場合、歩行者の周囲にある特徴地点に係る識別情報を取得することができる。なお、地点情報を受信できる範囲を特定しない場合、識別情報取得部174は、識別情報が、地図情報取得部173が取得した地図情報に含まれるか否かを判定する。地図情報に識別情報が含まれるとは、例えば、識別情報が交差点の名称である場合、斯かる交差点名称が地図情報に含まれることを言う。
【0067】
なお、識別情報取得部174は、外部から地点情報を受信しない場合に、地図情報から識別情報を取得するようにしてもよいし、歩行者の選択により、地点情報又は地図情報の一方から識別情報を取得するようにしてもよい。
【0068】
位置特定部175は、識別情報取得部174が取得した識別情報、及び、歩行者による操作部16の操作タイミングを関連付けて歩行者の位置を特定する。操作部16の操作タイミングとは、歩行者が操作部16からボタンの押操作、外部から信号を受信する操作などのタイミングである。即ち、位置特定部175は、操作部16から入力を受け付けたタイミングで、自身(歩行者)の位置を識別情報に対応する特徴地点(例えば、交差点の横断歩道付近又は踏切)の位置に特定する。なお、歩行者の位置を特定するための操作は、地点情報を受信した場合に表示部18に表示される操作画面に従って行うものでもよく、専用ボタンから入力するものであってもよい。以下、歩行者の位置の特定方法について説明する。
【0069】
位置特定部175は、操作部16が操作されたタイミングで、歩行者の位置を識別情報に係る位置に特定する。即ち、特徴地点を交差点又は踏切とした場合、歩行者が、識別情報取得部174が取得した識別情報に係る交差点又は踏切に位置した(又は通過した)とき、歩行者による操作部16から入力を受け付け、位置特定部175は、斯かる入力を受け付けたとき、歩行者の位置を、交差点の横断歩道付近又は踏切付近に特定する。
【0070】
これにより、前回又は直近に検出した歩行者の位置の精度が低く、歩行者の位置が正確でない場合、以降の位置検出の誤差は大きくなり、誤った位置を検出するおそれがあるときでも、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0071】
上述の例で、交差点又は踏切に代えて、他の特徴地点を用いることもできる。例えば、コンビニエンスストア、ガススタンド及び、土地の目印又は象徴になるようなランドマークを特徴地点として用いることもできる。
【0072】
さらに、識別情報は、外部から受信した地点情報に複数含まれる場合、又は、地図情報から複数取得した場合、歩行者により選択されてもよい。例えば、複数の識別情報を選択可能に表示部18に表示し、歩行者が、自身の周囲から認識し易い識別情報を選択し、選択した位置を歩行者の位置に特定することもできる。なお、取得される複数の識別情報は、任意の識別情報であってもよいし、予め設定されたジャンル(例えば、建物、店、交差点など)に属する識別情報であってもよい。
【0073】
位置特定部175は、歩行者の位置を特定する場合、誤差算出部172で算出した誤差範囲内にある特徴地点(例えば、交差点、踏切等)の地点情報に基づいて歩行者の位置を特定する。特徴地点を誤差範囲内に限定することにより、誤差範囲外にある特徴地点の地点情報は除外して位置検出(特定)のための不要な処理を省き、処理労力を低減して短時間で位置を検出することができる。
【0074】
また、位置特定部175は、通信部12で地点情報を受信することができる範囲を特定し、特定した範囲内にある特徴地点の地点情報に基づいて歩行者の位置を特定する。受信可能な範囲は、例えば、無線LAN等の中域通信の通信範囲である。特徴地点を受信可能な範囲内に限定することにより、受信可能な範囲外にある特徴地点の地点情報は除外して位置検出(特定)のための不要な処理を省き、処理労力を低減して短時間で位置を検出することができる。
【0075】
評価部176は、位置特定部175で特定した位置の確からしさを評価するための評価係数を算出する。評価係数は、歩行者の位置の確からしさを評価するための係数であり、例えば、評価係数が小さいほど位置の確からしさ(確率)が大きいとすることができる。評価係数は、例えば、位置を特定する前の歩行者の歩行軌跡と、地図上の道路との位置ずれに応じて算出することができる。あるいは、評価係数の他の例として、直近に検出した歩行者の位置と特定した位置との距離に応じて算出することもできる。これにより、例えば、特定した位置が交差点の横断歩道付近である場合、評価係数に基づいて、歩行者の位置が交差点のどの横断歩道かを特定することができる。
【0076】
表示部18は、例えば、液晶表示パネルであって、歩行者の位置を地図上に表示する。
【0077】
音声出力部19は、歩行者の位置を表示部18で表示する際に、歩行者に所要の情報を通知するため、又は注意を促すため音声又は音響を出力する。
【0078】
次に特徴地点を交差点として、位置検出装置10の位置検出処理について説明する。
【0079】
位置特定部175は、操作部16の操作タイミングで、歩行者の位置を横断歩道付近に特定する。このとき、前回又は直近に検出した歩行者の位置の誤差範囲内に複数の交差点が含まれるときがあり、位置特定部175は、複数の交差点の中から歩行者がいる可能性が最も高い交差点を特定する。
【0080】
図6は誤差範囲内の交差点を特定する一例を示す説明図である。図6において、交差点A、交差点Bは、直前の検出位置Xの誤差範囲内又は通信可能(地点情報を受信することができる)範囲内、若しくは、誤差範囲内で、かつ通信可能範囲内にある交差点であり、歩行者がその交差点付近にいる可能性がある。一方、交差点Cは、直前の検出位置Xの誤差範囲外又は通信可能(地点情報を受信することができる)範囲外にある交差点であり、対象外となる。
【0081】
次に横断歩道の特定方法について説明する。図7は横断歩道を特定する一例を示す説明図である。図7に示すように、2つの道路が交差する交差点に4つの横断歩道a、b、c、dが設けられている。横断歩道a、cと、横断歩道b、dとは、それぞれ地図上の向きが異なる。従って、方位センサ133により、歩行者の移動方位を検出することで、横断歩道a及び横断歩道cか、又は横断歩道b及び横断歩道dのいずれか一方に特定することができる。図7の例では、例えば、横断歩道a、cを特定し、横断歩道b、dを除外することができる。また、横断歩道での歩行方向は、青信号で歩行を開始した方向から容易に判定することができる。図7の例では、例えば、位置P、Rを特定することができ、位置Q、Sを除外することができる。以上より、歩行者の位置は、位置P、Rに特定することができる。
【0082】
地図マッチングによる位置検出の場合、位置を特定した以降は、歩行者の歩行に応じて位置検出が行われ、特定した位置が複数あるような場合には、正しい特定位置以外のものは、歩行者の歩行につれて棄却される。従って、両方の地点P、Rを候補として通常の位置検出を続行することもできる。
【0083】
また、横断歩道を特定したときに、それまでの歩行者の歩行軌跡と、道路地図とを比較して、評価係数(マッチング具合の評価点であり、位置の確からしさを表す)の優劣を設定しておき、優劣に応じて位置を1つ特定することもできる。この場合、評価係数が小さいほど位置の確からしさは高い。
【0084】
例えば、図7の例において、実際には歩行者が位置Pから横断歩道aを歩行した場合、仮に歩行者が位置Pから横断歩道d、位置R、横断歩道cの順に歩行した場合、道路の接続部において、歩行方位が不安定となる。従って、位置Pから横断歩道d、位置R、横断歩道cの順の歩行に対しては、評価係数を大きくすることができる。あるいは、位置Pから横断歩道d、位置R、横断歩道cの順の歩行軌跡を棄却することもできる。
【0085】
評価係数の一例として、直前の検出位置Xと、特定位置P、Rとの近さ(距離)を基準として、その距離に反比例した数値を用いることができる。例えば、位置Xと位置Pの距離の逆数をmpとし、位置Xと位置Rとの距離の逆数をmrとし、位置P、Rの評価係数Ep、Erをそれぞれmp/(mp+mr)、mr/(mp+mr)とすることができる。
【0086】
図8は歩行者の位置を特定する直前の位置の誤差範囲の一例を示す説明図である。図8に示すように、過去の走行軌跡に応じて測位位置の測位誤差が累加するため、直前の検出位置Xの誤差範囲は、比較的広くなる。特に、歩行者が携帯する携帯機器において、歩行者の位置を検出するために使用される距離センサは、歩行者の歩数を計数するもの、あるいは、加速度センサなどであり、車両の場合に使用される距離センサに比べて検出精度は低い。さらに、歩行者の歩行に合わせて姿勢が変動する場合には、携帯機器の位置又は傾きも変動するため、さらに検出精度が低下するときがある。従って、歩行者の検出位置Xの精度は高くない。
【0087】
図9は歩行者の位置を特定した後の特定位置の誤差範囲の一例を示す説明図である。上述のように、操作部16の操作タイミングと交差点情報とを関連付けることにより、横断歩道付近(例えば、横断歩道の歩行方向の上流側付近、あるいは、下流側付近など)に歩行者の位置を特定することができる。特定位置の誤差範囲は、例えば、横断歩道の長さ、幅程度の範囲に絞り込むことができ、図8の例で示した検出位置Xを正確な位置に補正することができる。これにより、従来の自立航法、地図マッチング法、衛星航法、あるいは、ハイブリッド航法等では、歩行者の位置を精度良く検出することが困難であったという課題を解決することができ、さらに、リアルタイム、かつ歩行者による簡単な操作により自動的に歩行者の位置を高精度な位置へ補正することが可能となり、それ以降の歩行者の位置検出の精度も向上させることができる。
【0088】
図10は歩行者の位置を特定する直前の位置の誤差範囲の他の例を示す説明図である。図10の例では、特徴地点が交差点の代わりに踏切の場合の例を示す。なお、検出位置Xの誤差範囲は、図8の例と同様であるので説明は省略する。
【0089】
図11は歩行者の位置を特定した後の特定位置の誤差範囲の他の例を示す説明図である。上述のように、歩行者の歩行挙動と踏切情報とを関連付けることにより、踏切付近に歩行者の位置を特定することができる。特定位置の誤差範囲は、例えば、踏切の長さ程度の範囲に絞り込むことができ、図10の例で示した検出位置Xを正確な位置に補正することができる。これにより、図9の例の場合と同様、従来の自立航法、地図マッチング法、衛星航法、あるいは、ハイブリッド航法等では、歩行者の位置を精度良く検出することが困難であったという課題を解決することができ、さらに、リアルタイム、かつ歩行者による簡単な操作により自動的に歩行者の位置を高精度な位置へ補正することが可能となり、それ以降の歩行者の位置検出の精度も向上させることができる。
【0090】
次に、歩行者の位置を地図上で表示する表示例について説明する。なお、以下、表示例は交差点の場合を示すが、踏切の場合も同様である。
【0091】
図12は歩行者の位置の表示の一例を示す説明図である。特定位置が1つの場合、その位置を地図上に表示した上で、表示した特定位置の誤差範囲も同時に表示する。なお、特定位置が複数ある場合には、評価係数の最も小さい特定位置を1つ表示することもできる。
【0092】
図13は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。特定位置が複数存在する場合、複数の特定位置を包含する領域を特定位置として表示する。この場合、各特定位置の誤差範囲を含むような範囲を表示してもよく、あるいは、各特定位置の誤差範囲をその特定位置の評価係数に応じて拡大又は縮小した上で、各特定位置の拡大又は縮小した誤差範囲を含む範囲を表示することもできる。また、複数の特定位置の重心位置を表示してもよい。
【0093】
図14は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。特定位置が複数存在する場合、各特定位置を表示した上で、各特定位置の誤差範囲又は確からしさの順位などを同時に表示する。図14では、第1候補の特定位置が最も確率の高い歩行者の位置であり、第2候補の特定位置は、その次に確率が高い歩行者の位置を示す。これにより、歩行者は、自身の位置を容易に判断することができるとともに、最も確からしい位置のみならず、可能性のある位置も知ることができる。
【0094】
図15は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。図15では、表示部18の表示面が小さく、地図情報を詳細に表示することができないような場合(例えば、地図の縮尺を大きくできない場合)には、道路を線分で表示した上で、歩行者の位置を1つの点で表示することもできる。
【0095】
なお、図14に示すように、各特定位置を表示した場合、歩行者が特定位置を選択できるようにしてもよい。以下、歩行者の位置が地図上で複数表示された場合に、歩行者により特定位置を選択するときの表示部18の表示例について説明する。なお、表示例は交差点の場合について説明するが、踏切の場合も同様である。
【0096】
図16は、特定位置を選択する際の表示例を示す説明図である。表示部18において、画面下部に複数ある各特定位置と、画面上部に各特定位置から見える風景を表示する。風景は、位置検出装置10のデータベースから取得されてもよいし、外部から通信で取得されてもよい。また、風景は、実際の撮影画像でもよく、CG化された画像、あるいは、特徴のある建物を強調して描写した画像でもよい。また、特定位置から見える風景は、方位センサ133から歩行者の進行方向(図中矢印)を取得し、斯かる進行方向に対する画像であってもよいし、予め決められた方向の画像でもよい。そして、複数ある特定位置それぞれの風景を自動又は手動で順番に(例えば、評価係数の順)、あるいは、同時に表示する。これにより、歩行者は、自身が見える実際の風景と表示された風景との一致性を判断することができ、所定の操作(例えば、削除ボタンの選択、特定位置を決定する決定ボタンの選択)により、容易に特定位置を選択できる。
【0097】
次に、識別情報が複数取得された場合、識別情報を選択する場合について説明する。図17は、識別情報を選択する際の表示例を示す説明図である。
【0098】
識別情報が、外部から受信した地点情報に複数含まれる場合、又は、地図情報から複数取得した場合、表示部18において、各識別情報の名称が選択可能に表示される。例えば、歩行者が自身の周囲に、交差点、コンビニエンスストア、及び郵便局がある場合、地図情報取得部173で取得された地図情報には、交差点等の識別情報が含まれる。そして、これらの各名称を表示部18に表示する。これにより、歩行者は、自身の周囲にある分かり易い地点に係る識別情報を選択することで、歩行者の位置を選択した識別情報に係る位置に特定することができる。
【0099】
次に位置検出処理の手順について説明する。図18及び図19は位置検出処理の手順を示すフローチャートである。制御部11は、位置検出装置10内の各部と協働して位置検出処理を行う。制御部11は、歩行者の位置を測位し(S11)、測位して得られた測位データに基づいて歩行者の位置を推定する(S12)。制御部11は、推定位置の誤差範囲を測位誤差に基づいて算出し(S13)、推定位置を歩行者の検出位置として表示する(S14)。
【0100】
制御部11は、外部から地点情報を受信したか否かを判定し(S15)、受信した場合(S15でYES)、地点情報を記憶し(S16)、記憶部15に記憶してある情報のうち、誤差範囲外の地点情報を削除する(S17)。そして、制御部11は、地点情報に含まれる識別情報を取得し、記憶する(S18)。その後、制御部11は、処理をS21に移す。
【0101】
地点情報を受信していない場合(S15でNO)、制御部11は、識別情報を取得したか否かを判定する(S19)。ここで識別情報の取得とは、地図情報取得部173で取得された地図情報から識別情報を取得することを言う。識別情報を取得していない場合(S19でNO)、制御部11は、S11以降の処理を続ける。この場合、歩行者により識別情報を入力させるようにしてもよい。識別情報を取得した場合(S19でYES)、制御部11は、取得した識別情報を記憶する(S20)。その後、制御部11は、処理をS21に移す。
【0102】
制御部11は、識別情報が複数取得されたか否かを判定し(S21)、複数なければ(S21でNO)、S23の処理を行う。識別情報が複数ある場合(S21でYES)、制御部11は、識別情報の選択処理を行う(S22)。即ち、図17で説明した画面を表示部18に表示し、歩行者に識別情報を選択させる。
【0103】
次に、制御部11は、操作部16から操作を受け付けたか否かを判定する(S23)。操作を受け付けていなければ(S23でNO)、制御部11は、S11以降の処理を行う。このとき、所定時間操作を受け付けていない場合に、S11以降の処理を行うようにしてもよい。操作を受け付けた場合(S23でYES)、制御部11は、当該特徴地点(例えば、交差点又は踏切)に歩行者の位置を特定する(S24)。なお、この場合、誤差範囲内に交差点又は踏切が複数ある場合には、歩行者がいる可能性が最も高い交差点又は踏切を特定する。
【0104】
制御部11は、特定した位置の誤差範囲、評価係数を設定し(S25)、特定位置が複数あるか否かを判定する(S26)。特定位置が複数ある場合(S26でYES)、図16で説明したように、複数の特定位置の選択を行う(S27)。特定位置が複数でない場合(S26でNO)、制御部11は、ステップS27の処理を行わずに後述のステップS28の処理を行う。
【0105】
制御部11は、特定位置を検出位置として表示部18に表示する(S28)。制御部11は、処理終了指示の有無を判定し(S29)、処理終了指示がない場合(S29でNO)、特定した位置、設定した誤差範囲、評価係数を以降の位置検出の初期値とし(S30)、ステップS11以降の処理を続ける。処理終了指示がある場合(S29でYES)、制御部11は、処理を終了する。
【0106】
以上説明したように、本発明によれば、従来の自立航法、地図マッチング法、衛星航法、あるいは、ハイブリッド航法等では、歩行者の位置を精度良く検出することが困難であった場合に、地図上の識別情報と操作部16の操作タイミングとを関連付けることで歩行者の位置を精度よく特定することができ、さらに、リアルタイム、かつ歩行者の簡単な操作により歩行者の位置を高精度な位置へ補正することが可能となり、それ以降の歩行者の位置検出の精度も向上させることができる。
【0107】
上述の位置検出装置は、例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS、ノート型パーソナルコンピュータ、音楽プレーヤ、携帯型ゲーム装置等の情報端末装置又は携帯端末装置などに適用することができる。
【0108】
上述の実施の形態において、位置検出装置に傾斜角センサを備えることもできる。これにより、歩行者の歩行、取り出し、操作等に伴う位置検出装置の振動又は姿勢変化で位置検出装置が傾いた場合、方位センサ又は距離センサの種類によっては機能が停止し、あるいは、性能が劣化することがある。従って、傾斜角センサにより傾斜角を検出し、方位センサ又は距離センサを補正することもできる。
【0109】
上記の例では、歩行者が、通常歩行時又は自転車走行時に位置検出装置を身に付けているとしているが、これに限定されず、歩行者が位置検出装置を直接身につけず、かばん、車輪付き旅行ケース、荷車、乳母車、車椅子等に仮設置又は仮置きし、歩行者がこれらを持ち歩いたり、これらの車を押したり引いたり、あるいは、手で車輪を回転したりして、歩行者の通行できる領域を通行している場合であってもよい。
【0110】
上述の実施の形態で示した歩行者の位置を推定するための数式は、一例であって、これらに限定されるものではなく、適宜変形した数式を用いることもできる。
【0111】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係る位置検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】測位位置の誤差範囲の例を示す説明図である。
【図3】地図情報の一例を示す模式図である。
【図4】地図上の道路の設定の一例を示す説明図である。
【図5】地図上の道路の設定の他の例を示す説明図である。
【図6】誤差範囲内の交差点を特定する一例を示す説明図である。
【図7】横断歩道を特定する一例を示す説明図である。
【図8】歩行者の位置を特定する直前の位置の誤差範囲の一例を示す説明図である。
【図9】歩行者の位置を特定した後の特定位置の誤差範囲の一例を示す説明図である。
【図10】歩行者の位置を特定する直前の位置の誤差範囲の他の例を示す説明図である。
【図11】歩行者の位置を特定した後の特定位置の誤差範囲の他の例を示す説明図である。
【図12】歩行者の位置の表示の一例を示す説明図である。
【図13】歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。
【図14】歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。
【図15】歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。
【図16】特定位置を選択する際の表示例を示す説明図である。
【図17】識別情報を選択する際の表示例を示す説明図である。
【図18】位置検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】位置検出処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0113】
10 位置検出装置
11 制御部
12 通信部
13 測位部
14 地図データベース
15 記憶部
16 操作部
17 位置検出処理部
18 表示部
19 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の位置を測位し、測位結果に基づいて歩行者の位置を特定する位置特定装置において、
測位結果に基づいて歩行者の位置を地図上で推定する推定手段と、
該推定手段で推定した推定位置を含む所定範囲に含まれる識別情報を取得する識別情報取得手段と、
該識別情報取得手段が取得した識別情報に係る位置情報を取得する位置情報取得手段と、
操作を受け付ける操作受付手段と、
該操作受付手段が操作を受け付けた時点における歩行者の位置を、前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて特定する特定手段と
を備えることを特徴とする位置特定装置。
【請求項2】
前記識別情報取得手段は、
複数の識別情報を取得する構成としてあり、
前記識別情報取得手段が取得した複数の識別情報から識別情報を指定する指定手段
をさらに備え、
前記特定手段は、
前記指定手段が指定した識別情報に係る位置情報に基づいて特定する構成としてある
ことを特徴とする請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項3】
前記識別情報取得手段は、
複数の識別情報を取得する構成としてあり、
前記識別情報取得手段が取得した複数の識別情報からの選択を受け付ける選択手段をさらに備え、
前記特定手段は、
前記選択手段が受け付けた識別情報に係る位置情報に基づいて歩行者の位置を特定する構成としてある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置特定装置。
【請求項4】
前記推定手段が推定した推定位置の誤差範囲を算出する誤差範囲算出手段をさらに備え、
前記特定手段は、
前記誤差範囲算出手段で算出した誤差範囲内の識別情報に係る位置情報に基づいて歩行者の位置を特定する構成としてある
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の位置特定装置。
【請求項5】
前記識別情報取得手段は、
前記識別情報に係る信号を受信する構成としてあり、
前記信号を受信可能な範囲を特定する受信可能範囲特定手段をさらに備え、
前記特定手段は、
前記受信可能範囲特定手段で特定した受信可能な範囲内にある信号に基づいて歩行者の位置を特定するように構成してある
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の位置特定装置。
【請求項6】
前記識別情報取得手段が複数の識別情報を取得し、前記位置情報取得手段が、前記識別情報取得手段が取得した識別情報に基づいて、複数の位置情報を取得した場合において、
前記特定手段は、
前記位置情報取得手段が取得した複数の位置情報に基づいて複数の歩行者の位置を特定できる構成としてあり、
前記特定手段が歩行者の位置を複数の位置と特定した場合に、前記複数の位置の選択を受け付ける選択手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の位置特定装置。
【請求項7】
前記特定手段が特定した歩行者の位置を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の位置特定装置。
【請求項8】
前記特定手段で特定した位置の確からしさを評価するための評価係数を算出する算出手段と、
前記特定手段で特定した位置が複数ある場合、前記算出手段で算出した評価係数に応じて1つの位置を選択する位置選択手段と、
該位置選択手段で選択した位置を前記表示手段に表示する表示制御手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の位置特定装置。
【請求項9】
自身の位置が測位された測位結果を取得し、該測位結果に基づいて自身の位置を特定するコンピュータで実行するコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータを、
取得した測位結果に基づいて自身の位置を地図上で推定する推定手段、
該推定手段で推定した推定位置を含む所定範囲に含まれる識別情報を取得する識別情報取得手段、
該識別情報取得手段が取得した識別情報に係る位置情報を取得する位置情報取得手段、及び、
操作を受け付けた場合に、前記操作を受け付けた時点における自身の位置を、前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて特定する特定手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
歩行者の位置を測位し、測位結果に基づいて歩行者の位置を特定する位置特定装置で実行する位置特定方法において、
測位結果に基づいて歩行者の位置を地図上で推定するステップと、
推定した推定位置を含む所定範囲に含まれる識別情報を取得するステップと、
取得した前記識別情報に係る位置情報を取得するステップと、
操作を受け付けるステップと、
操作を受け付けた場合に、前記操作を受け付けた時点における歩行者の位置を、取得した前記位置情報に基づいて特定するステップと
を備えることを特徴とする位置特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−162582(P2009−162582A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341013(P2007−341013)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】