説明

低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法

【課題】構造誘導体物質として環状シロキサン系モノマーを使用する、誘電率が低く且つ諸般物性に優れた低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】環状シロキサン系モノマー、有機溶媒、酸または塩基、および水を混合してコーティング液を準備する第1段階と、前段階で得たコーティング液を基板上に塗布した後、熱硬化させてメソポーラス薄膜を得る第2段階とを含む、低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法に係り、より詳しくは、構造誘導体(structure−directing agent)物質として環状シロキサン系モノマーを使用する、誘電率が低く且つ諸物性に優れた低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術の発達に伴い、半導体素子の大きさは小型化しつつあり、素子の集積度は急激に増加しつつある。半導体の集積度が増加する場合、金属導線間の相互干渉現象によって信号伝達が遅延する可能性があるため、半導体の集積度が増加するにつれて、素子の性能は配線を通過する信号の移動速度に左右される。金属導線における抵抗と充電容量を少なくするためには、半導体層間絶縁膜の充電容量を低めることが要求される。
【0003】
従来は、半導体層間絶縁膜として誘電率4.0程度のシリコン酸化膜が使用されてきたが、上述したような半導体の集積度の向上に伴って、これと同程度の誘電率を有する絶縁膜が機能上限界に達したので、絶縁膜の誘電率を低めるための試みが行われている。一例として、特許文献1〜4では、SOD(Spin on Deposition)が可能な誘電率2.5〜3.1程度のポリシルセスキオキサンを使用する半導体層間絶縁膜の製造方法が開示されている。
【0004】
半導体層間絶縁膜の誘電率を3.0以下に低めるための代案として、シロキサン系樹脂に気孔形成物質(porogen)を配合し、250〜350℃の高温で気孔形成物質を熱分解させて除去するポロゲン−テンプレート(porogen−template)方式が提案された。
【0005】
特許文献5および特許文献6では、構造誘導体としてイオン性界面活性剤を用いて製造されるメソポーラス分子篩(mesoporous molecular sieve)物質が開示されている。メソポーラス物質は、孔径がメソポア(mesopore)の範囲(2〜50nm)であり、表面積が大きくて原子または分子の吸着特性に優れるうえ、孔径が一定であって分子篩に応用することができるとともに、誘電率3.0以下の層間絶縁膜、伝導性材料、ディスプレイ材料、化学センサ、精密化学および生体触媒、絶縁体、並びにパッケージング材料への応用が多く期待されている。
【0006】
特許文献7では、シランモノマー、溶媒、水、界面活性剤および疎水性ポリマーを混合して基板上に塗布した後、溶媒の一部を蒸発させて薄膜を形成し、その後薄膜を加熱する段階を含む多孔性界面活性剤−テンプレート薄膜の製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献8では、シランモノマーであるシリカ前駆体を水性溶媒、触媒および界面活性剤と混合して前駆体溶液を形成した後、膜にスピンコーティングを行い、水性溶媒を除去する過程を含むメソポーラス薄膜の製造方法が開示されている。
【0008】
特許文献9では、前駆体ゾル(precursor sol)、溶媒、界面活性剤および間隙化合物を混合してシリカゾルを製造した後、シリカゾルから溶媒の一部を蒸発させてメソポーラス物質を製造する方法が開示されている。
【0009】
ところが、以上の界面活性剤をテンプレートとして用いるメソポーラス薄膜の製造方法は、シランモノマー、水および酸を用いる方式であって、製造工程中に吸湿が発生して目標の低誘電率が得られず、誘電率を測定することができない程度に薄膜の品質が著しく低下するという問題点がある。したがって、このような吸湿による問題を克服するため、従来は、焼成(calcinations)以後にヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)などで処理していた。しかしながら、このような従来の方法では、別途の吸湿防止工程および重合工程によって全体工程が複雑になり、これにより製造コストが上昇するという問題点がある。
【特許文献1】米国特許第3,615,272号明細書
【特許文献2】米国特許第4,399,266号明細書
【特許文献3】米国特許第4,756,977号明細書
【特許文献4】米国特許第4,999,397号明細書
【特許文献5】米国特許第5,057,296号明細書
【特許文献6】米国特許第5,102,643号明細書
【特許文献7】米国特許第6,270,846号明細書
【特許文献8】米国特許第6,329,017号明細書
【特許文献9】米国特許第6,387,453号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、環状シロキサン系モノマーでオーダリング(ordering)し、メソポーラス薄膜製造の後に吸湿が殆ど発生しないため薄膜の誘電率(k)が2.5以下に十分低く、かつ、モジュラスや軽度などの機械的物性に優れた薄膜を得ることが可能な、低誘電率メソポーラス薄膜の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、別途の吸湿防止工程およびシロキサン系モノマーの重合工程を経ることなく薄膜を製造して工程単純化による製造コストの節減を図ることが可能な、低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一観点によれば、環状シロキサン系モノマー、有機溶媒、酸または塩基、および水を混合してコーティング液を準備する第1段階と、前段階で得たコーティング液を基板上に塗布した後、熱硬化させてメソポーラス薄膜を得る第2段階とを含むことを特徴とする、低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の低誘電性メソポーラス薄膜は、モノマー水準で吸湿がなく且つ品質に優れた薄膜を製造することができるため、重合段階および吸湿除去工程で発生しうるコストを節減することができるという利点がある。
【0014】
また、界面活性剤を使用すると、オーダリングされ構造を形成することができるため、さらに強度に優れた薄膜形成および規則的構造が必要ないろいろの応用が可能である。
【0015】
また、本発明によって製造されるメソポーラス薄膜は、誘電率が低いうえ、モジュラスや強度などの機械的物性に優れて半導体工程に対する適用性が優秀であるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0017】
一般に、モノマーを用いて薄膜を製造すると、薄膜の品質が低下し、吸湿が誘発されるため、高分子重合過程を経て薄膜製造をするが、本発明では、このような吸湿の問題を克服することができる。これはモノマーの構造的な特徴から起因するものと推定されるが、本発明に使用される環状シロキサンモノマーの場合、商用化されたモノマーと比較して分子量が大きく、末端基に存在する反応性−OH基が相対的に少ないため、吸湿問題を解決することができるものと考えられる。
【0018】
本発明は、下記化学式1、下記化学式2および下記化学式3で表されるモノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種の環状シロキサン系モノマー、有機溶媒、酸または塩基、および水を混合してコーティング液を製造する過程を含む低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法を提供する。環状シロキサン系モノマーは、下記化学式1、2または3のモノマーのいずれか一つのみを単独で使用し、あるいは下記化学式1、2および3のモノマーを2種以上混合して使用することができる。しかも、薄膜内の気孔形成のために気候形成物質を添加することも可能であるが、気孔形成物質の中でも特に界面活性剤を用いると、オーダリングされた構造を作ることができる。
【0019】
結局、前述した物質を混合してコーティング液を準備し、次いで得られたコーティング液を基板上に塗布した後、熱硬化させてメソポーラス薄膜を得る。
【0020】
本発明で使用可能な環状シロキサン系モノマーは、下記化学式1、2または3の環状シロキサン系モノマーである。
【0021】
【化1】

【0022】
前記化学式1において、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基またはC〜C15のアリール基であり、Rは水素原子、C〜C10のアルキル基またはSiXであり、X、X、およびXはそれぞれ独立に水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜C10のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、pは3〜8の整数である。
【0023】
【化2】

【0024】
前記化学式2において、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基またはC〜C15のアリール基であり、X、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜C10のアルコキシ基またはハロゲン原子であって、X、XおよびXの中の少なくとも一つは加水分解可能な作用基であり、mは0〜10の整数であり、pは3〜8の整数である。
【0025】
【化3】

【0026】
前記化学式3において、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基、R’CO(この際、R’は炭素数1〜3のアルキルである)、ハロゲン原子、またはSiX(この際、X、X、およびXはそれぞれ独立に水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜C10のアルコキシ基又はハロゲン原子であって、X、XおよびXの中の少なくとも一つは加水分解可能な作用基である)であり、pは3〜8の整数である。
【0027】
本発明において、コーティング液を製造する際には前記化学式1、2または3のモノマー以外に下記化学式4の有機ブリッジを有するSi単量体または下記化学式5の非環式アルコキシシラン単量体を単独で或いは混合して添加することができる。
【0028】
【化4】

【0029】
前記化学式4において、X、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜C10のアルコキシ基またはハロゲン原子であって、X、XおよびXの中の少なくとも一つは加水分解可能な作用基であり、Mは単一結合あるいはC〜C10のアルキレン基であり、またはC〜C15のアリーレン基である。
【0030】
(RSi(OR-4−n (5)
前記化学式5において、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基、ハロゲン基またはC〜C15のアリール基であり、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基またはC〜C15のアリール基であって、RおよびORの中の少なくとも一つは加水分解可能な作用基であり、nは0〜3の整数である。
【0031】
本発明に係る前記化学式1の環状シロキサン系モノマーの好ましい例は、前記化学式1において、Rはメチルであり、RはSi(OCHであり、pは4である下記化学式6の化合物(TS−T4Q4);Rはメチルであり、Rは水素であり、pは4である下記化学式7の化合物(TS−T4(OH));RおよびR2-がメチルであり、pは4である化学式8の化合物(TS−T4(OMe));およびR-1はメチルであり、R-2はSi(CH(OCHであり、pは4である下記化学式9の化合物(TS−T4T4);Rはメチルであり、RはSi(CH(OCH)であり、pは4である下記化学式10の化合物;またはRがメチルであり、RはSi(CHであり、pは4である下記化学式11の化合物を含む。
【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
または
【0038】
【化10】

【0039】
また、本発明に係る前記化学式2の環状シロキサン系モノマーの好ましい例は、下記化学式12の化合物を含む。
【0040】
【化11】

【0041】
また、本発明に係る前記化学式3の環状シロキサン系モノマーの好ましい例は、前記化学式3においてRはメチルであり、pは4である下記化学式13の化合物を含む。
【0042】
【化12】

【0043】
また、本発明に係る前記化学式4の有機ブリッジを有するSi単量体の好ましい例は、下記化学式14または15の化合物を含む。
【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
また、本発明に係る前記化学式5の非環式アルコキシシラン単量体の好ましい例は、下記化学式16、17または18の化合物を含む。
【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
本発明で使用可能な気孔形成物質は、多孔性絶縁膜の形成のために使用される全ての公知の気孔形成物質を含む。具体的には、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンを含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0051】
本発明において、気孔形成物質としては界面活性剤を使用してもよいが、界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性および非イオン性またはブロック共重合体が全て使用できる。陰イオン性界面活性剤としては、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸を挙げることができ、陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム塩、ジェミニ界面活性剤、セチルエチルピペリジウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムを挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、1級アミン、ポリ(オキシエチレン)オキシド、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテルおよびブロック共重合体よりなる群から選ばれるものを含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。気孔形成物質は、コーティング液中のシロキサン系モノマーと気孔形成物質の総質量を基準として0.01〜70質量%の量で存在することが好ましいが、これらに制限されるものではない。このような界面活性剤の好ましい例は、Brij系界面活性剤、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール三元ブロック共重合体、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、オクチルフェノキシポリエトキシ(9〜10)エタノール(Triton X−100)、エチレンジアミンアルコキシレートブロック共重合体よりなる群から選ばれるものを含むことができる。
【0052】
本発明において、気孔形成物質として界面活性剤を使用する場合、コーティング液の基板上への塗布後に起こる溶媒蒸発は、界面活性剤のミセル化を誘導し、焼成処理によって継続的な自己組織化(self−assembly)が行われるので、モノマー−界面活性剤間のハイブリッドメソフェーズ(hybrid mosephase)が形成される。このような過程によってロングレンジまたはショットレンジオーダリングされたフィルムを得ることができる。
【0053】
本発明で使用される有機溶媒は、特に制限されず、好ましくはヘキサン(hexane)、ヘプタン(heptane)などの脂肪族炭化水素溶媒(aliphatic hydrocarbon solvent);アニソール(anisol)、メシチレン(mesitylene)、キシレン(xylene)などの芳香族系炭化水素溶媒(aromatic hydrocarbon solvent);メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)、1−メチル−2−ピロリジノン(1−methyl−2−pyrrolidinone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、アセトン(aetone)などのケトン系溶媒(ketone−based solvent);テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒;エチルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶媒;イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;シリコン系溶媒;またはこれらの混合物を使用することができる。
【0054】
コーティング液中の固形分の含量は、特に制限されないが、総組成物の質量を基準として5〜70質量%となるようにする。
【0055】
一方、本発明で使用可能な酸、塩基触媒の例は、ポリシルセスキオキサンの製造に使用される全ての公知の酸触媒を含み、特に制限されない。酸触媒の場合、好ましくは塩酸(hydrochloric acid)、硝酸(nitric acid)、ベンゼンスルホン酸(benzene sulfonic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、またはギ酸(formic acid)を使用する。本発明に使用可能な塩基触媒の例は、ポリシルセスキオキサンの製造に使用される全ての公知の塩基触媒を含み、特に制限されないが、好ましくは、水酸化カリウム(potassium hydroxide)、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)、トリエチルアミン(triethylamine)、炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、またはピリジン(pyridine)を使用する。
【0056】
基板は、本発明の目的を阻害しない限り、特に制限されず、熱硬化条件に耐えられる全ての基板、例えばガラス基板、シリコンウェーハ、プラスチック基板などを用途に応じて選択して使用することができる。本発明で使用可能なコーティング液を塗布する方法の例は、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、スプレーコーティング(spray coating)、流れコーティング(flow coating)およびスクリーン印刷(screen printing)を含むが、これらに制限されない。便宜性および均一性の面で最も好ましい塗布方法はスピンコーティングである。スピンコーティングを行う場合、スピン速度は800〜5,000rpmの範囲内で調節することが好ましい。
【0057】
塗布完了の後、必要に応じて溶媒を蒸発させてフィルムを乾燥させる過程を含むことができる。フィルム乾燥過程は、単に周囲環境に晒すか、あるいは硬化工程の初期段階で真空を適用するか、あるいは200℃以下の比較的低い温度で加熱して行うことができる。
【0058】
次いで、前記フィルムを1分〜24時間、25℃〜600℃の温度で熱硬化させて亀裂のない不溶性皮膜を形成させる。「亀裂のない皮膜」とは、1000倍率の光学顕微鏡で観察するとき、肉眼で見られる任意の亀裂が観察されない皮膜を意味し、「不溶性皮膜」とは、シロキサン系重合体を沈着させて膜を形成させる溶媒または樹脂を塗布させるに有用なものと記述された溶媒に本質的に溶解されない皮膜をいう。
【0059】
気孔形成物質を含む場合、気孔形成物質の分解温度を考慮して熱硬化温度を定める。特に、前述した界面活性剤を用いて、オーダリングされた構造を形成する場合、熱硬化の際に低温で時間が長くなるほど、さらにオーダリングされた効果が大きくなる可能性がある。薄膜形成の際に基本的に溶媒蒸発温度以上で急激な温度上昇がある場合、オーダリングが現われていた薄膜でオーダリングが現われない可能性もある。
【0060】
本発明によって製造されるメソポーラス薄膜は、オーダリングされた単分散性気孔分布を示す。オーダリングされたフィルムは、図1のTEMイメージから分かるように、二次元的な規則性を示す。
【0061】
図2は本発明によって製造されたメソポーラス薄膜のX回折ピークを示す。図2に示すように、オーダリングされたフィルムは2θ=0.3−10°において1つのピークまたは多重ピークを示す。本発明によって製造される低誘電性メソポーラス薄膜は、低誘電率の半導体層間絶縁膜として応用できるうえ、伝導性材料、ディスプレイ材料、化学センサ、生体触媒、絶縁体、パッケージング材料などとして広範囲に利用できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明の好適な具現例をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は説明するためのもので、本発明を制限するものではない。
【0063】
(多反応性環状シロキサン単量体の合成)
(合成例1.単量体(化学式6)の合成)
2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−シクロテトラシロキサン(2,4,6,8−tetramethyl−2,4,6,8−cyclotetrasiloxane)41.6mmoL(10.00g)をフラスコに投入し、テトラヒドロフラン100mLを仕込んで希釈させた後、10wt%Pd/C(palladium/charcol)を700mg添加した。次いで、蒸留水177.8mmoL(3.20mL)を添加し、このとき発生する水素ガスを除去した。常温で5時間反応を行った後、反応液をセライト(celite)とMgSOによって濾過し、濾液を0.1torr程度の減圧下に置いて揮発性物質を除去することにより、下記化学式7を有する無色の液状単量体を合成した。
【0064】
【化18】

【0065】
前記化学式7の化合物41.6mmoL(12.6g)を200mLのTHF(テトラヒドロフラン)で希釈した溶液にトリエチルアミン177.8mmoL(13.83g)を添加した。前記溶液の温度を0℃に降温した後、クロロトリメトキシシラン177.8mmoLを徐々に加えて温度をゆっくり常温まで昇温して12時間反応を行った。反応液はセライトを用いて濾過し、濾液を0.1torr程度の減圧下に置いて揮発性物質を除去して濃縮し、下記化学式6の化合物を合成した。
【0066】
【化19】

【0067】
合成された単量体のH−NMR(アセトン−d溶液, 300MHz)測定結果は、次のとおりである:δ 0.092(s, 12H, 4×[−CH]), 3.58 (s, 36H, 4×[−OCH)。
【0068】
(合成例2.単量体(化学式12)の合成)
2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン(2,4,6,8−tetramethyl−2,4,6,8−tetravinylcyclotetrasiloxane)29.01mmoL(10.0g)およびプラチナム(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン化合物配位体のキシレン溶液(platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane complex solution in xylenes)0.164gが溶解している溶液をフラスコに仕込み、ジエチルエーテル300mLを仕込んで希釈した。反応液の温度を−78℃に降温した後、トリクロロシラン127.66mmoL(17.29g)をゆっくり加え、温度を徐々に常温まで昇温した後、40時間反応を行なった。反応液を0.1torr程度の減圧下に置いて揮発性物質を除去して濃縮し、前記濃縮液にヘキサン100mLを加え、1時間攪拌した後、セライトを用いて濾過し、その後濾液をさらに0.1torr程度の減圧下に置いてヘキサンを除去して液状反応生成物を得た。
【0069】
得られた液状反応生成物11.56mmoL(10.0g)を50mLのTHF(テトラヒドロフラン)で希釈し、138.71mmoLのトリエチルアミン(13.83g)を添加した後、反応温度を−78℃に降温し、メチルアルコール136.71mmoL(4.38g)をゆっくり添加した後、反応温度を徐々に常温まで昇温して15時間反応を行った。反応液はセライトを用いて濾過し、濾液を0.1torr程度の減圧下に置いて揮発性物質を除去して濃縮した。前記濃縮液にヘキサン100mLを加えて1時間攪拌した後、セライトを用いて再び濾過し、濾液にさらに活性炭5gを加えて10時間攪拌した後、セライトを用いて濾過した。濾液を0.1torr程度の減圧下に置いてヘキサンを除去することにより、下記化学式12の無色の液状単量体を合成した。
【0070】
【化20】

【0071】
合成された前記単量体のH−NMR(300MHz)の測定結果(アセトン−d溶液)は、次のとおりである:δ 0.09(s, 12H, 4×[−CH]), 0.52〜0.64(m, 16H, 4×[−CHCH−]), 3.58(s, 36H, 4×[−OCH)。
【0072】
(絶縁膜の製造例1)
まず、0.5gのBrij56をエタノール10gに仕込んで溶解させ、その後前記合成例1で得られた単量体(化学式6)を仕込んだ後さらに溶解させる。最後に、0.1Mで希釈されたHCl水溶液を0.86g仕込んで完全に溶けるまで攪拌してメソポーラス薄膜製造のためのコーティングを製造した。
【0073】
前記コーティング液を3000rpmにて30秒間シリコンウェーハ上にスピンコーティングし、窒素雰囲気のホットプレート上で、83℃で1分、250℃で1分間予備加熱して乾燥させることにより、フィルムを製造した。前記フィルムを真空雰囲気中、400℃(昇温速度:3℃/min)で1時間熱処理して絶縁膜を製造した。
【0074】
製造された絶縁膜の厚さ(thickness)、誘電率(dielectric constant)、硬度(hardness)およびモジュラス(modulus)の測定結果とXRD(X−Ray Diffraction)上におけるピーク(Peak)発生有無を確認し、その結果を下記表2に示す。
【0075】
(絶縁膜の製造例2〜21)
シロキサンモノマー、気孔形成物質、溶媒種類、予備加熱条件および焼成処理条件を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様にして薄膜を製造し、その物性を評価して下記表2に共に示す。
【0076】
[物性評価方法]
本実施例で得られた絶縁膜の物性は、次の方法によって評価した。
【0077】
1)厚さおよび誘電率の測定
硼素ドープされたp型のシリコンウェーハ上に、シリコン熱酸化膜を3000Åに塗布し、金属蒸着器(metal evaporator)でチタニウム100Å、アルミニウム2000Å、チタニウム100Åを蒸着した後、その上に測定対象絶縁膜を形成した。前記絶縁膜上に、電極直径が1mmに設計されたハードマスクを用いて直径1mmの円形のチタニウム100Åおよびアルミニウム薄膜5000Åを蒸着してMIM(metal−insulator−metal)構造の誘電率測定用低誘電薄膜を形成した。
【0078】
形成した薄膜をプローブステーション (micromanipulator 6200 probe station)付きPRECISION LCR METER(HP4284A)を用いて約10kHz、100kHzおよび1MHzの周波数で静電容量(capacitance)を測定し、プリズムカプラーを用いて薄膜の厚さを測定した後、下記式によって誘電率を求める:
k=C×d/ε×A
(前記数式1において、kは誘電率(relative permittivity)であり、Cは静電容量(capacitance)であり、εは真空の誘電定数(dielectric constant、ε=8.8542×10−12Fm−1)であり、dは絶縁膜の厚さであり、Aは電極の接触断面積である。)。
【0079】
2)硬度(hardness)およびモジュラス(elastic modulus)
製造された薄膜の硬度とモジュラスの測定は、MTS社のナノインデンタ(nanoindenter)IIを用いて定量的に分析した。薄膜をナノインデンタで押し込み(indent)、押し込み深さが厚さの10%のとき、薄膜の硬度およびモジュラスを測定した。
【0080】
薄膜の厚さは、プリズムカプラー(prism coupler)を用いて測定した。実施例および比較例では、信頼度を確保するために、絶縁膜上の6箇所を押し込んで平均値からそれぞれの硬度およびモジュラスを求めた。
【0081】
【表1】

【0082】
*前記シロキサン系モノマー欄の番号は、化学式番号を示す。
【0083】
*Brij−56:ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル
*tCD:ヘプタキス(2,3,6−トリ−0−メチル)−β−シクロデキストリン
*Triton:4−オクチルフェノールエトキシレート(4−octylphenol ethoxylate)
*PGMEA:プロピレングリコールメチルエーテル
【0084】
【表2】

【0085】
表2からは、実施例によって調製されたメソポーラス薄膜は低誘電性を有し、モジュラスと硬度を含む優れた機械的な特性を有することがわかる。
【0086】
(製造された薄膜の吸湿特性分析)
実施例1、11および13で製造された薄膜とこのような薄膜を水に浸漬(dip)させて1時間程度放置した後、−OHピークの発生有無から、吸湿が発生するかどうかをフーリエ変換赤外線分光計(FTIR)で測定し、その結果を図3に示す。
【0087】
図3から確認されるように、本発明によって製造されるメソポーラス薄膜は、水に1時間浸漬した以後にも、薄膜製造の際と同様に−OHピークが現われないことからみて、吸湿が発生しないことを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施例によって製造された、オーダリングされたメソポーラス薄膜のTEMイメージ図である。
【図2】本発明の方法によって製造されたメソポーラス薄膜のX線回折パターン(X−ray diffraction)を示す図である。
【図3】本発明の実施例で製造された薄膜の吸湿性能を評価するためにフーリエ変換赤外線分光計で測定した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1、下記化学式2および下記化学式3で表わされるモノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種の環状シロキサン系モノマー、有機溶媒、酸または塩基および水を混合してコーティング液を準備する第1段階と、
前段階で得たコーティング液を基板上に塗布した後、熱硬化させて薄膜を得る第2段階とを含むことを特徴とする、低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法:
【化1】

(前記化学式1において、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基またはC〜C15のアリール基であり、Rは水素原子、C〜C10のアルキル基またはSiXであり、X、X、およびXはそれぞれ独立に水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜C10のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、pは3〜8の整数である。)
【化2】

(前記化学式2において、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基またはC〜C15のアリール基であり、X、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜C10のアルコキシ基またはハロゲン原子であって、X、XおよびXの中の少なくとも一つは加水分解可能な作用基であり、mは0〜10の整数であり、pは3〜8の整数である。)
【化3】

(前記化学式3において、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基、R’CO(この際、R’は炭素数1〜3のアルキルである)、ハロゲン原子、またはSiX(この際、X、X、およびXはそれぞれ独立に水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜C10のアルコキシ基又はハロゲン原子であって、X、XおよびXの中の少なくとも一つは加水分解可能な作用基である)であり、pは3〜8の整数である。)。
【請求項2】
前記方法は、コーティング液の製造の際に気孔形成物質を添加することを特徴とする、請求項1に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記方法は、コーティング液に下記記化学式4または化学式5の化合物を単独でまたは共に添加してコーティング液を製造することを特徴とする、請求項1に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法:
【化4】

(前記化学式4において、X、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜C10のアルコキシ基またはハロゲン原子であって、X、XおよびXの中の少なくとも一つは加水分解可能な作用基であり、Mは単一結合あるいはC〜C10のアルキレン基であり、またはC〜C15のアリーレン基である。)
(RSi(OR-4−n (5)
(前記化学式5において、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基、ハロゲン基またはC〜C15のアリール基であり、Rは水素原子、C〜Cのアルキル基またはC〜C15のアリール基であって、RおよびORの中の少なくとも一つは加水分解可能な作用基であり、nは0〜3の整数である。)。
【請求項4】
前記化学式1の環状シロキサン系モノマーは、下記化学式6〜化学式11で表わされる化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであり、前記化学式2のシロキサン系モノマーは、下記化学式12で表される化合物であり、前記化学式3のシロキサン系モノマーは、下記化学式13で表わされる化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法:
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【請求項5】
前記化学式4のシロキサン単量体は、下記化学式14または15で表される化合物であり、前記化学式5のシロキサン単量体は、下記化学式16、17および18で表わされる単量体よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法:
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【請求項6】
前記気孔形成物質は、ポリカプロラクトン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記気孔形成物質は、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸、アルキルアンモニウム塩、ジェミニ界面活性剤、セチルエチルピペリジウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム、1級アミン、ポリ(オキシエチレン)オキシド、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテルおよびブロック共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であることを特徴とする、請求項2に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。
【請求項8】
形成されたメソポーラス薄膜が、2θ=0.3−10°の範囲でX線回折ピークを有することを特徴とする、請求項5に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記酸触媒は、塩酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸およびこれらの混合物よりなる群から選ばる少なくとも1種であり、前記塩基触媒は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム、ピリジンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒は、ヘキサンまたはヘプタンの脂肪族炭化水素溶媒;アニソール、メシチレンまたはキシレンの芳香族系炭化水素溶媒;メチルイソブチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、シクロヘキサノンまたはアセトンのケトン系溶媒;テトラヒドロフランまたはイソプロピルエーテルのエーテル系溶媒;エチルアセテート、ブチルアセテートまたはプロピレングリコールメチルエーテルアセテートのアセテート系溶媒;イソプロピルアルコールまたはブチルアルコールのアルコール系溶媒;ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミドのアミド系溶媒;シリコン系溶媒;および前記溶媒らの混合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記気孔形成物質は、コーティング液中の固形分の総質量を基準として0.01〜70質量%の範囲で使用することを特徴とする、請求項2に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記コーティング液の固形分の含量は、コーティン液の総質量を基準として5〜70質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の低誘電性メソポーラス薄膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−165540(P2006−165540A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334535(P2005−334535)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(504275513)三星コーニング株式会社 (40)
【Fターム(参考)】