作動ガス循環型水素エンジン
【課題】 燃焼室にて生成される比熱比の小さい生成物(例えば、二酸化炭素)を循環ガスから除去することにより、高い熱効率にて運転することが可能な作動ガス循環型水素エンジンを提供すること。
【解決手段】 水素エンジン10は、燃焼室21に水素、酸素及び作動ガスとしてのアルゴンからなるガスを供給して水素を燃焼させる。燃焼室21から排出された循環ガス中に含まれるH2Oは凝縮器66により分離・排出される。更に、循環ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度が所定濃度以上となったとき、三方弁72を切り換えることにより、循環ガスが生成物除去部70(二酸化炭素吸収機71)を通過するようにせしめる。これにより、循環ガス中の二酸化炭素が循環ガスから分離・除去される。
【解決手段】 水素エンジン10は、燃焼室21に水素、酸素及び作動ガスとしてのアルゴンからなるガスを供給して水素を燃焼させる。燃焼室21から排出された循環ガス中に含まれるH2Oは凝縮器66により分離・排出される。更に、循環ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度が所定濃度以上となったとき、三方弁72を切り換えることにより、循環ガスが生成物除去部70(二酸化炭素吸収機71)を通過するようにせしめる。これにより、循環ガス中の二酸化炭素が循環ガスから分離・除去される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に水素と、酸素と、単原子ガスからなる作動ガスと、を供給して同水素を燃焼させるとともに、同燃焼室から排出された排ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環(再供給)する作動ガス循環型水素エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃焼室に水素と酸素と作動ガスとしての単原子ガスであるアルゴンガスとを供給して同水素を燃焼させるとともに、同燃焼室から排出された排ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環経路を通して循環させる作動ガス循環型水素エンジンが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。アルゴンガスは、比熱比が非常に大きい不活性ガスである。従って、上記従来のエンジンは、比熱比が小さいガスを作動ガスとして用いるエンジンよりも高い熱効率で運転され得る。このようなエンジンの排ガス中には、H2O(水蒸気)とアルゴンガスとが含まれる。従って、上記エンジンは排ガスからH2Oを分離・除去し、H2Oが除去されたガスを燃焼室に再供給している。
【特許文献1】特開平11−93681号公報(請求項1、段落番号0021乃至0029、図1)
【0003】
しかしながら、上記エンジンの排ガスには、アルゴンガス及び燃焼室にて発生したH2O以外の生成物が含まれることがある。このような生成物の一例は、二酸化炭素(CO2)、窒素感化物(Nox)及び炭化水素(HC)等である。例えば、二酸化炭素は、燃焼室内において潤滑油が燃焼する(化学的変化を起こす)ことにより生成される。より具体的には、シリンダライナーに滞留する潤滑油の一部が燃焼したり、吸気バルブ又は排気バルブのオイルシール部から燃焼室内に漏洩した潤滑油が燃焼したりすることにより、二酸化炭素は不可避的に排ガス中に含まれる。
【0004】
ところで、二酸化炭素は3原子ガスである。この二酸化炭素を含み、燃焼室において生成される生成物(窒素酸化物及び炭化水素等)は、2原子以上からなるガス(以下、便宜上、「複数原子ガス」と称呼する。)である。複数原子ガスは、単原子ガスよりも比熱比が小さい。従って、燃焼室にて生成された生成物の循環されるガス中の濃度が増大すると、エンジンの熱効率が低下するという問題がある。
【発明の開示】
【0005】
上記課題に対処するために為された本発明による水素エンジンは、
燃焼室に水素と、酸素と、単原子ガスからなる作動ガスと、を供給して同水素を燃焼させるとともに、同燃焼室から排出された排ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環経路を通して循環させる作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記循環経路内に前記燃焼室にて発生したH2O(水蒸気)以外の生成物を除去する生成物除去手段を備えている。
【0006】
単原子ガスは一般に比熱比が大きい。これに対し、燃焼室にて生成されるH2O以外の生成物は複数原子ガスであるので、比熱比が単原子ガスより一般に小さい。従って、上記構成によれば、燃焼室にて生成されるH2O以外の生成物(比熱比が作動ガスよりも小さい生成物)が、生成物除去手段により循環されるガス(循環ガス)から除去されるので、水素エンジンは常に高い熱効率にて運転され得る。
【0007】
この場合、前記生成物除去手段は、前記燃焼室にて発生したH2O以外の生成物としての二酸化炭素を除去するように構成されることが好適である。
【0008】
一般にエンジンには潤滑油が用いられるので、上述した理由により比熱比が比較的大きい二酸化炭素が燃焼室において不可避的に生成される。このため、上記構成より、循環ガスから二酸化炭素を除去すれば、常に高い熱効率にて運転することが可能な水素エンジンが提供され得る。
【0009】
この場合、
前記二酸化炭素を除去する生成物除去手段は、
前記循環経路の一部を構成する流路を備える容器と、
前記容器の流路に収容されたモノエタノールアミン溶液又はゼオライト系吸着剤と、
を備えることが好適である。
【0010】
モノエタノールアミン(MEA)溶液は二酸化炭素を高い溶解度をもって溶解することができる。ゼオライト系吸着剤は、二酸化炭素を高い効率をもって吸着することができる。従って、上記構成によって、これらの物質を収容した流路に排ガスを通流させることにより、循環ガス中の二酸化炭素を高い効率をもって吸収・分離・除去することができる。
【0011】
また、上記水素エンジンは、
前記循環経路は主経路と同主経路から分岐点にて分岐し且つ同分岐点より下流側の合流点にて同主経路に合流するバイパス経路とを含み、
前記生成物除去手段は前記バイパス経路に配設され、
前記分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスを同分岐点から前記合流点までの間において同主経路を通過させるか前記バイパス経路を通過させるかの何れかに切り換える経路切換手段を備えることが好適である。
【0012】
これによれば、必要に応じて、循環ガスが流れる前記分岐点から前記合流点までの間の経路が経路切換手段によってバイパス経路に設定され、これにより、バイパス経路に配設された生成物除去手段によって循環ガス中に含まれる生成物が除去される。この結果、循環ガス中の生成物の濃度を小さくすることができる。一方、循環ガスが流れる前記分岐点から前記合流点までの間の経路が経路切換手段によって主経路に設定された場合には、生成物除去手段を循環ガスが通過しない。この結果、循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路及び生成物除去手段を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0013】
更に、前記水素エンジンにおいて、
生成物除去手段は、
前記生成物を吸収する吸収物質と、
前記吸収物質に吸収された生成物を同吸収物質から離脱させるように同吸収物質に物理的作用を加える離脱促進手段と、
前記離脱促進手段により離脱させられた生成物を前記循環経路外へ排出する排出口と、
を備えることが好適である。
【0014】
これによれば、吸収物質に吸収された生成物が離脱促進手段により吸収物質から離脱させられる。従って、吸収物質が生成物を吸収する能力を回復することができる。この結果、生成物除去手段を取り替える必要がなく、一つの生成物除去手段を長期に渡って使用することができる。
【0015】
上記離脱促進手段を備えた水素エンジンにおいて、
前記吸収物質は前記生成物としての二酸化炭素を溶解して吸収するモノエタノールアミン溶液又は同二酸化炭素を吸着して吸収するゼオライト系吸着剤であり、
前記離脱促進手段は前記吸収物質を加熱する加熱手段であることが望ましい。
【0016】
モノエタノールアミン溶液は、その温度が上昇するに従って二酸化炭素の溶解度が急激に低下する性質を有する。ゼオライト系吸着剤は、その温度が上昇するに従って二酸化炭素の吸着率が急激に低下する性質を有する。従って、上記構成のように、加熱手段によりモノエタノールアミン溶液又はゼオライト系吸着剤を加熱することにより、これらに吸収(溶解又は吸着)されている二酸化炭素をこれらから容易に離脱させることができる。この結果、モノエタノールアミン溶液又はゼオライト系吸着剤の二酸化炭素吸収能力を回復することができる。
【0017】
また、上述した生成物除去手段が配設されたバイパス経路を備えるとともに、主経路とバイパス経路との何れかを循環ガスの経路とすることができる経路切換手段を備えた水素エンジンにあっては、
前記の主経路(例えば、前記分岐点よりも上流側の主経路又は前記合流点よりも下流側主経路であってもよい)を流れるガスに含まれる二酸化炭素の濃度を取得する二酸化炭素濃度取得手段と、
前記取得された二酸化炭素の濃度が所定濃度以上であるとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
を備えることが好適である。
【0018】
これによれば、前記取得された二酸化炭素の循環ガス中の濃度が所定濃度以上となって、エンジンの熱効率が許容できない程度まで低下したとき、循環ガスがバイパス経路を通過する。従って、循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段により除去されるので、エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路と生成物除去手段とを通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0019】
この場合、前記二酸化炭素濃度取得手段は、
二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサであってもよく、
水素エンジンの運転時間の積算時間に基づいて二酸化炭素濃度を推定する二酸化炭素濃度推定手段であってもよい。水素エンジンの運転時間の積算時間に基づいて二酸化炭素濃度を推定すれば、高価な二酸化炭素濃度センサを採用する必要がないので、エンジンを廉価に提供することができる。
【0020】
一方、上記水素エンジンは、
前記エンジンのクランク角が圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの前記燃焼室内の圧力である筒内圧を取得する筒内圧取得手段と、
前記取得された筒内圧が所定圧力より小さいとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
を備えることもできる。
【0021】
前述したように、二酸化炭素は3原子ガスであって単原子ガスである作動ガスよりも比熱比が小さい。このため、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど、圧縮行程終了時近傍における筒内圧が小さくなる。従って、エンジンのクランク角が圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの筒内圧が所定圧力より小さくなったということは、循環ガス中の二酸化炭素濃度が増大したことを意味する。そこで、上記構成のように、圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの筒内圧が所定圧力より小さくなったとき、循環ガスがバイパス経路を通過するように循環ガスの経路を設定する。これにより、循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段により除去されるので、エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0022】
他方、上記水素エンジンは、
前記エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値を取得する燃焼状態指標値取得手段と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
を備えることもできる。
【0023】
前述したように、二酸化炭素は3原子ガスであって単原子ガスである作動ガスよりも比熱比が小さい。
このため、水素エンジンが高温・高圧の圧縮ガス中に水素を噴射して拡散燃焼させるタイプのエンジンであれば、二酸化炭素濃度が上昇するほど燃焼速度が低下するので、燃焼状態のサイクル間変動が大きくなるか、或いは、着火時期が遅れる。従って、燃焼状態を表す燃焼状態指標値として、図示平均有効圧の変動率、着火時期、又は着火時期の変動率を採用すると、その指標値に基づいて二酸化炭素濃度が許容濃度以上になったか否かを判定することができる。
【0024】
更に、水素エンジンが火花点火によって水素を火炎伝播燃焼させるタイプのエンジンであれば、二酸化炭素濃度が上昇するほど火炎伝播速度が低下するので、爆発(燃焼)行程中の筒内圧は緩慢に変化するようになる。従って、燃焼状態を表す燃焼状態指標値として、例えば、筒内圧の変化速度を採用すると、その指標値に基づいて二酸化炭素濃度が許容濃度以上になったか否かを判定することができる。
【0025】
加えて、どのような燃焼形式のエンジンであれ、二酸化炭素濃度が上昇するほど熱効率が低下する。従って、図示熱効率を燃焼状態指標値として採用すると、その図示熱効率に基づいて二酸化炭素濃度が許容濃度以上になったか否かを判定することができる。なお、図示熱効率は、例えば、筒内圧と燃焼室の体積とから図示仕事Q1を求めるとともに、水素供給量(水素噴射量)に基づいてエンジンに付与されたエネルギーQ0を求めれば、それらの比(例えば、Q1/Q0)として取得することができる。
【0026】
以上のことから、上記構成のように、燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように切換手段を切り換えれば、循環ガス中の二酸化炭素濃度が過大となることを回避でき、エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路及び生成物除去手段を通過しないようにすることができるので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明による作動ガス循環型水素エンジン(多気筒エンジン)の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンを含むシステムの概略図である。
【0028】
このシステムは、作動ガス循環型水素エンジン10、水素供給部40、酸素供給部50、作動ガス循環通路部60、生成物除去部70及び電気制御装置80を備えている。水素エンジン10は、燃焼室に酸素及び作動ガスとしてのアルゴンからなるガスを供給し、このガスを圧縮させることにより高圧となったガス中に水素を噴射することにより水素を拡散燃焼させる形式のエンジンである。なお、図1は、水素エンジン10の特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
【0029】
水素エンジン10は、シリンダヘッド部が形成するシリンダヘッド11と、シリンダブロック部が形成するシリンダ12と、シリンダ12内において往復運動するピストン13と、クランク軸14と、ピストン13とクランク軸14とを連結しピストン13の往復運動をクランク軸14の回転運動に変換するためのコネクティングロッド15と、シリンダブロックに連接されたオイルパン16とを備えるピストン往復動型エンジンである。ピストン13の側面にはピストンリング13aが配設されている。
【0030】
シリンダヘッド11、シリンダ12及びオイルパン16から形成される空間は、ピストン13により、ピストン13の頂面側の燃焼室21と、クランク軸14を収容するクランクケース22と、に区画されている。
【0031】
シリンダヘッド11には、燃焼室21に連通した吸気ポート31と、燃焼室21に連通した排気ポート32と、が形成されている。吸気ポート31には吸気ポート31を開閉する吸気弁33が配設され、排気ポート32には排気ポート32を開閉する排気弁34が配設されている。更に、シリンダヘッド11には、水素(水素ガス)を燃焼室21内に直接噴射する水素噴射弁35が配設されている。
【0032】
水素供給部40は、水素タンク(水素ガスタンク)41、水素ガス通路42、水素ガス圧レギュレータ43、水素ガス流量計44及びサージタンク45を備えている。
【0033】
水素タンク41は燃料としての水素ガスを10乃至70MPaの高圧状態にて貯蔵している。水素ガス通路42は、水素タンク41と水素噴射弁35とを連通する通路(管)である。水素ガス通路42には、水素タンク41から水素噴射弁35に向かう順に水素ガス圧レギュレータ43、水素ガス流量計44及びサージタンク45が介装されている。
【0034】
水素ガス圧レギュレータ43は、周知のプレッシャレギュレータであり、水素ガス圧レギュレータ43よりも下流(サージタンク45側)における水素ガス通路42内の圧力を一定圧力に調整するようになっている。水素ガス流量計44は、水素ガス通路42を流れる水素ガスの量(水素ガス流量)を計測し、同水素ガス流量を表す信号FH2を発生するようになっている。サージタンク45は、水素ガス噴射時に水素ガス通路42内に発生する脈動を低減するようになっている。
【0035】
酸素供給部50は、酸素タンク(酸素ガスタンク)51、酸素ガス通路52、酸素ガス圧レギュレータ53、酸素ガス流量計54及び酸素ガスミキサ55を備えている。
【0036】
酸素タンク51は酸素ガスを所定の圧力にて貯蔵するタンクである。酸素ガス通路52は、酸素タンク51と酸素ガスミキサ55とを連通する通路(管)である。酸素ガス通路52には、酸素タンク51から酸素ガスミキサ55に向かう順に酸素ガス圧レギュレータ53及び酸素ガス流量計54が介装されている。
【0037】
酸素ガス圧レギュレータ53は、周知の調整圧可変型プレッシャレギュレータである。即ち、酸素ガス圧レギュレータ53は、酸素ガス圧レギュレータ53よりも下流(酸素ガスミキサ55側)における酸素ガス通路52内の圧力を指示信号に応じた目標調整圧力RO2tgtに調整できるようになっている。換言すると、酸素ガス圧レギュレータ53は、指示信号に応答して酸素ガス通路52を流れる酸素ガス量を制御することができるようになっている。
【0038】
酸素ガス流量計54は、酸素ガス通路52を流れる酸素ガスの量(酸素ガス流量)を計測し、同酸素ガス流量FO2を表す信号を発生するようになっている。酸素ガスミキサ55は、後述する作動ガス循環通路部60の第5経路65に介装されている。酸素ガスミキサ55は、酸素ガス通路52を介して供給された酸素と、第5経路65を介して入口部に供給されるガスとを混合し、その混合したガスを出口部から排出するようになっている。
【0039】
作動ガス循環通路部60は、第1〜5経路(第1〜第5流路形成管)61〜65、凝縮器66及びアルゴンガス流量計67を備えている。
【0040】
第1経路61は排気ポート32と凝縮器66の入口部とを接続している。第2経路62は凝縮器66の出口部と後述する三方弁(経路切換手段)72の入口部とを接続している。第3経路63は三方弁72の出口部の一つと後述する合流点PGとを接続している。第4経路64は合流点PGとアルゴンガス流量計67の入口部とを接続している。第5経路65は、アルゴンガス流量計67の出口部と吸気ポート31とを接続している。第5経路65には酸素ガスミキサ55が介装されている。
【0041】
凝縮器66は、燃焼室21から排出された排ガスを第1経路61及び凝縮器66の入口部を経由して導入するようになっている。凝縮器66は、入口部から導入した排ガスを冷却水Wにより冷却することにより、排ガスに含まれる水蒸気(H2O)を凝縮液化するようになっている。これにより、凝縮器66は、排ガスに含まれる水蒸気を非凝縮ガスと分離して水となし、その水を外部に排出するようになっている。更に、凝縮器66は、前記分離した非凝縮ガスをその出口部から第2経路62に供給するようになっている。
【0042】
アルゴンガス流量計67は、第4経路64及び第5経路65を流れるアルゴンガスの量(アルゴンガス流量)を計測し、同アルゴンガス流量FArを表す信号を発生するようになっている。
【0043】
生成物除去部70は、二酸化炭素吸収機(CO2吸収機)71、三方弁(経路切換手段)72、バイパス上流経路73及びバイパス下流経路74を備えている。
【0044】
二酸化炭素吸収機71は、容器71aとモノエタノールアミン溶液71bとからなっている。容器71aは中空円筒形状又は中空の直方体形状を有する筐体であって、内部に流路を形成している。容器71aは、内部の流路にモノエタノールアミン溶液71bを収容している。モノエタノールアミン溶液は、MEA溶液とも称呼され、二酸化炭素を選択的且つ多量に溶解させることにより、二酸化炭素を効率良く吸収するができる。容器71aは、底面に入口部を備えるとともに、上面に出口部を備えている。容器71aは、水素エンジン10を搭載した車両に対して着脱可能に固定されている。
【0045】
三方弁72は、一つの入口部と二つの出口部とを有している。三方弁72は、駆動信号に応答して一つの入口部と二つの出口部の何れか一つとを連通するようになっている。前述したように、三方弁72の入口部は第2経路62を介して凝縮器66の出口部と接続されている。三方弁72の出口部の一つはバイパス上流経路73を通して容器71aの入口部に接続されている。三方弁72の出口部の他の一つは第3経路63に接続されている(合流点PGにて第4経路64に接続されている。)。バイパス下流経路74の一端は容器71aの出口部に接続され、他端は第4経路64(合流点PG)に接続されている。
【0046】
なお、便宜上、三方弁72の配設位置は「第2経路62、第3経路63及び第4経路64(実際には、第1経路61乃至第5経路65)を含んでなる主経路」と「バイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路」との分岐点PBと称呼される。また、前述したように、第4経路64とバイパス下流経路74とが接続された位置は合流点PGと称呼される。上記「主経路」は作動ガスの循環経路を構成している。上記「バイパス経路」は作動ガス循環経路の一部を構成している。
【0047】
電気制御装置80は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子装置である。電気制御装置80には、水素ガス流量計44、酸素ガス流量計54、アルゴンガス流量計67、アクセルペダル操作量センサ81、エンジン回転速度センサ82、酸素濃度センサ83、水素濃度センサ84、二酸化炭素濃度センサ85及びサージタンク圧力センサ86が接続されている。電気制御装置80は、これらから各測定信号(検出信号)を入力するようになっている。
【0048】
アクセルペダル操作量センサ81は、アクセルペダルAPの操作量を検出し、同アクセルペダルAPの操作量を表す信号Accpを出力するようになっている。エンジン回転速度センサ82は、クランク軸14の回転速度に基づいてエンジン回転速度を表す信号NEとクランク角度を表す信号とを発生するようになっている。
【0049】
酸素濃度センサ83、水素濃度センサ84及び二酸化炭素濃度センサ85は、第4経路64(合流点PGとアルゴンガス流量計67との間)に配設されている。酸素濃度センサ83は、配設部位(第4経路64)を流れるガスの酸素濃度を検出し、酸素濃度を表す信号Voxを発生するようになっている。水素濃度センサ84は、配設部位(第4経路64)を流れるガスの水素濃度を検出し、水素濃度を表す信号VH2を発生するようになっている。
【0050】
二酸化炭素濃度センサ85は、配設部位(第4経路64)を流れるガスの二酸化炭素濃度(二酸化炭素濃度)を検出し、二酸化炭素濃度を表す信号DenCO2を発生するようになっている。サージタンク圧力センサ86は、サージタンク45内の水素ガスの圧力を検出し、サージタンク内の圧力(サージタンク圧力、即ち、噴射水素ガス圧力)Psgを表す信号を発生するようになっている。
【0051】
更に、電気制御装置80は、各気筒の水素噴射弁35、酸素ガス圧レギュレータ53及び三方弁72と接続されていて、これらに指示信号又は駆動信号を送出するようになっている。
【0052】
次に、上記のように構成された作動ガス循環型水素エンジン10を含むシステムの作動について図2乃至図4を参照しながら説明する。
【0053】
電気制御装置80のCPUは、エンジン10のクランク角度が所定のクランク角度(例えば、各気筒の圧縮上死点前90度)に一致する毎に図2にフローチャートにより示した噴射制御ルーチンを実行するようになっている。従って、エンジン10のクランク角度が前記所定のクランク角度に一致すると、CPUはこのルーチンの処理をステップ200から開始してステップ205に進み、要求水素量SH2を現時点にて検出されているアクセルペダル操作量Accp(負荷)及び現時点にて検出されているエンジン回転速度NEと関数f1とに基づいて求める。関数f1は、アクセルペダル操作量Accp及びエンジン回転速度NEにより定まる運転要求トルクに応じた要求水素量SH2を求めるための予め定められた関数(例えば、ルックアップテーブル)である。
【0054】
次いで、CPUはステップ210に進み、上記要求水素量SH2、現時点で検出されているサージタンク圧力Psg及び現時点で検出されているエンジン回転速度NEと、予め定められた関数f2(例えば、ルックアップテーブル)と、に基づいて要求水素量SH2を水素噴射弁35の開弁時間である水素噴射時間TAUに変換する。そして、CPUはステップ215に進んで水素噴射時間TAUの時間だけ圧縮上死点前90度のクランク角度となっている気筒の水素噴射弁35を開弁する駆動信号を水素噴射弁35に送出し、ステップ295に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、要求されたトルクを発生するのに必要な量の水素が燃焼室21内に供給される。
【0055】
更に、CPUは、所定時間の経過毎に図3にフローチャートにより示したレギュレータ制御ルーチンを実行するようになっている。従って、CPUは、所定のタイミングになるとこのルーチンの処理をステップ300から開始してステップ305に進み、現時点における要求水素量SH2の単位時間あたりの平均値SH2aveを算出する。この算出は、前述した図2のステップ205により求められる要求水素量SH2を単位時間に渡って積算することにより行われる。次いで、CPUはステップ310に進んで上記のようにして求められた平均値SH2aveと予め定められた関数f3(例えば、ルックアップテーブル)とに基づいて目標酸素ガス流量FO2tgtを求める。
【0056】
前述したように、エンジン10は水素を燃料として燃焼させる。従って、水素の燃焼により水のみを生成するためには、水素2モルに対して酸素1モルを供給する必要がある。このため、関数f3は、平均値SH2aveにより表される水素のモル数の半分のモル数の酸素(実際には、同半分のモル数の酸素量に余裕量を加えた量の酸素)が燃焼室21に供給されるように、目標酸素ガス流量FO2tgtを決定するようになっている。
【0057】
次いで、CPUはステップ315に進み、現時点にて検出されている酸素ガス流量FO2が上記目標酸素ガス流量FO2tgt以上であるか否かを判定する。そして、CPUは、現時点にて検出されている酸素ガス流量FO2が上記目標酸素ガス流量FO2tgt以上であると判定したとき、ステップ320に進んで酸素ガス圧レギュレータ53の目標調整圧力RO2tgtを正の一定値aだけ減少させる。これにより、酸素ガスミキサ55に供給される酸素ガス量が減少する。
【0058】
一方、CPUは、ステップ315にて現時点にて検出されている酸素ガス流量FO2が上記目標酸素ガス流量FO2tgtより小さいと判定したとき、ステップ325に進んで酸素ガス圧レギュレータ53の目標調整圧力RO2tgtを正の一定値bだけ増大させる。これにより、酸素ガスミキサ55に供給される酸素ガス量が増大する。以上により、必要十分な量の酸素が酸素ガスミキサ55を介して燃焼室21に供給される。次いで、CPUはステップ395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0059】
更に、CPUは、所定時間の経過毎に図4にフローチャートにより示した三方弁制御ルーチン(経路切換制御ルーチン)を実行するようになっている。先ず、循環経路を流れる還流ガス(第1経路61乃至第5経路65からなる主経路を流れる還流ガスであって、特に、分岐点PBより上流の主経路である第2経路62を流れる還流ガス又は合流点PGより下流の主経路を構成する第4経路64を流れる還流ガス)の二酸化炭素濃度DenCO2が高側所定濃度(高側閾値、所定値)DenCO2thHより小さく、かつ、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の分離・除去が行われていない状態にある場合から説明を開始する。なお、高側所定濃度DenCO2thHは、二酸化炭素が循環ガス中に多量に含まれていることによって水素エンジン10の熱効率の低下が問題となるレベルに選択されている。
【0060】
CPUは、所定のタイミングになると図4に示したルーチンの処理をステップ400から開始し、ステップ405に進んで二酸化炭素濃度センサ85から二酸化炭素濃度DenCO2を取得する。次いで、CPUはステップ410に進み、二酸化炭素濃度DenCO2が高側所定濃度DenCO2thH以上であるか否かを判定する。
【0061】
前述の仮定に従えば、二酸化炭素濃度DenCO2は高側所定濃度DenCO2thHより小さいから、CPUはステップ410にて「No」と判定してステップ415に進み、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であるか否かを判定する。後述するように、二酸化炭素分離実行フラグFの値は、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の分離・除去が行われているときに「1」に設定される。また、二酸化炭素分離実行フラグFの値は、図示しないイグニッション・キー・スイッチをオフからオンへと変更した際に実行されるイニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。
【0062】
前述の仮定に従えば、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の分離・除去は行われていない。従って、二酸化炭素分離実行フラグFの値は「0」であるから、CPUはステップ415にて「No」と判定してステップ495に進み本ルーチンを一旦終了する。この結果、燃焼室21から排出された排ガス(循環ガス)は、第1経路61、第2経路62、第3経路63、第4経路64及び第5経路65からなる主経路を通って循環される。換言すると、燃焼室21から排出された排ガスは、二酸化炭素吸収機71を通過しない。
【0063】
次に、このような運転が繰り返されることにより、オイル上がり又はオイル下がり等により燃焼室21に流入した潤滑油が燃焼室21において燃焼して二酸化炭素が生成され、主経路内の二酸化炭素濃度DenCO2が高側所定濃度DenCO2thH以上となった場合について説明する。
【0064】
この場合、CPUはステップ405に続くステップ410にて「Yes」と判定してステップ420に進み、三方弁72の入口部がバイパス上流経路73に接続されている三方弁72の出口部の一つと連通するように、三方弁72を切り換える。換言すると、第2経路62を流れる還流ガス(H2O分離後の排ガス)の総てが、分岐点PGから合流点PGまでの間、二酸化炭素吸収機71が介装されたバイパス経路(バイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び二酸化炭素吸収機71の容器71aが形成する流路からなるバイパス経路)を通過するように、三方弁72が切り換えられる。
【0065】
この結果、第2経路62を流れる還流ガスは、第3経路63を流れず、二酸化炭素吸収機71(二酸化炭素吸収機71内の流路に収容されたモノエタノールアミン溶液71b)を通過する。従って、還流ガス中に含まれる二酸化炭素がモノエタノールアミン溶液71bに吸収され、還流ガスから分離される。そして、二酸化炭素が分離された還流ガスは、容器71aの出口部及びバイパス下流経路74を通して合流点PGから第4経路64に供給される。その後、CPUはステップ425に進んで二酸化炭素分離実行フラグFの値を「1」に設定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0066】
この状態が継続すると、主経路内の二酸化炭素濃度DenCO2が次第に低下し、高側所定濃度DenCO2thHより小さく且つ低側所定濃度DenCO2thLより大きい値となる。低側所定濃度DenCO2thLは、高側所定濃度DenCO2thHより小さい値であって、二酸化炭素が循環ガス中に含まれていることによるエンジン10の熱効率の低下が問題とならないレベルに選択されている。
【0067】
この場合、CPUはステップ405に続くステップ410にて「No」と判定するとともにステップ415にて「Yes」と判定してステップ430に進み、主経路を流れる循環ガスの二酸化炭素濃度DenCO2が低側所定濃度DenCO2thL以下となったか否かを判定する。この時点では、二酸化炭素濃度DenCO2は低側所定濃度DenCO2thLより大きいので、CPUはステップ430にて「No」と判定してステップ495に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、三方弁72は切り換えられないから、第2経路62を流れる還流ガスは二酸化炭素吸収機71を通過し続ける。従って、還流ガス中に含まれる二酸化炭素が更に還流ガスから分離・除去される。
【0068】
この状態が更に継続すると、主経路内の二酸化炭素濃度DenCO2は低側所定濃度DenCO2thL以下となる。この場合、CPUはステップ405、ステップ410及びステップ415に続くステップ430にて「Yes」と判定してステップ435に進み、三方弁72の入口部が第3経路63に接続されている三方弁72の出口部の他の一つと連通するように、三方弁72を切り換える。換言すると、第2経路62を流れる還流ガスの総てが、分岐点PGから合流点PGまでの間、二酸化炭素吸収機71が介装されたバイパス経路を通過せず、第3経路63を通過するように三方弁72が切り換えられる。これにより、燃焼室21から排出された排ガスは、再び、第1経路61乃至第5経路65からなる主経路を通って循環され始める。その後、CPUはステップ440にて二酸化炭素分離実行フラグFの値を「0」に設定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0069】
以上、説明したように、本発明の第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、燃焼室21に水素と酸素と単原子ガスからなる作動ガス(アルゴンガス)とを供給して同水素を燃焼させるとともに、燃焼室21から排出された排ガス中の作動ガスを燃焼室21に循環経路(主経路及びバイパス経路の何れか)を通して循環させる作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記循環経路(バイパス経路)内に燃焼室21にて発生したH2O以外の生成物である二酸化炭素を除去する生成物除去手段(二酸化炭素吸収機71)を備えた水素エンジンである。
【0070】
従って、燃焼室にて生成されるH2O以外の生成物(比熱比が作動ガスであるアルゴンよりも小さい生成物である二酸化炭素)が、生成物除去手段により循環ガスから除去されるので、水素エンジンは常に高い熱効率にて運転され得るようになっている。
【0071】
更に、この水素エンジンは、
分岐点PBよりも上流側の主経路(第2経路62)又は合流点PGよりも下流側の主経路(第4経路64)を流れるガスに含まれる二酸化炭素の濃度を取得する二酸化炭素濃度取得手段(二酸化炭素濃度センサ85)と、
取得された二酸化炭素の濃度DenCO2が所定の高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上であるとき、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路である第2経路62内を流れるガスが上記バイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ410、420等)と、
を備えている。
【0072】
従って、二酸化炭素の循環ガス中の濃度を小さくすることができる。一方、循環ガスが流れる分岐点PBから合流点PGまでの間の経路が経路切換手段によって主経路(第3経路63)に設定された場合には、二酸化炭素吸収機71を循環ガスが通過しない。この結果、循環ガスが流路抵抗の高いバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び二酸化炭素吸収機71を通過しないので、水素エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0073】
更に、二酸化炭素吸収機71は車両に対して着脱可能に構成されているので、モノエタノールアミン溶液71bが二酸化炭素を十分に吸収した時点にて、新品の二酸化炭素吸収機71と交換することができる。或いは、二酸化炭素吸収機71を車両から取り外し、二酸化炭素を吸収したモノエタノールアミン溶液71bを新たなモノエタノールアミン溶液又は加熱により溶解している二酸化炭素を分離・除去したモノエタノールアミン溶液に入れ替えた後、再度、車両に固定することができる。
【0074】
<第1実施形態の変形例>
この変形例に係る作動ガス循環型水素エンジンは、上記第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンの二酸化炭素吸収機71に、モノエタノールアミン溶液71bに代わるゼオライト系吸着剤を充填した点のみにおいて、同第1実施形態の水素エンジンと相違している。ゼオライト系吸着剤は、固体であるが、二酸化炭素を効率良く吸着することができる。
【0075】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、上記第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンの生成物除去部70を、図5に示したように、生成物除去部90に置換した点のみにおいて、同第1実施形態の水素エンジンと相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0076】
生成物除去部90は、二酸化炭素吸収機91、三方弁(経路切換手段)92、バイパス上流経路93、バイパス下流経路94、二酸化炭素排出経路95、作動ガスリターン弁96及び排出弁97を備えている。
【0077】
二酸化炭素吸収機91は、二酸化炭素吸収機71と同様に、容器91aとモノエタノールアミン溶液91bとを備えるとともに、ヒータ(加熱ヒータ)91cを備えている。容器91aは容器71aと同一構造を備えていて、水素エンジン10を搭載した車両に対して着脱可能に固定されている。容器91aは、内部の流路にモノエタノールアミン溶液91bを収容している。ヒータ91cは、容器91aの周囲に配設されていて、駆動信号に応答して発熱し、モノエタノールアミン溶液91bを加熱するようになっている。
【0078】
三方弁92、バイパス上流経路93及びバイパス下流経路94は、三方弁72、バイパス上流経路73及びバイパス下流経路74のそれぞれと同一構造であって同一の態様にて接続・配置されている。二酸化炭素排出経路95の一端は容器71aの上面に形成された排出口に接続されている。
【0079】
作動ガスリターン弁96は、バイパス下流経路94に配設されている。作動ガスリターン弁96は、駆動信号に応答してバイパス下流経路94を連通及び遮断の何れかの状態に維持するようになっている。
排出弁97は、二酸化炭素排出経路95に配設されている。排出弁97は、駆動信号に応答して二酸化炭素排出経路95を連通及び遮断の何れかの状態に維持するようになっている。
【0080】
次に、上記のように構成された第2実施形態に係るシステムの作動について説明する。第2実施形態のCPUは、図2乃至図4に示したルーチンに加え、図6及び図7に示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行するようになっている。図6は二酸化炭素吸収機91のメンテナンスを実行するためのルーチンであり、図7は二酸化炭素吸収機91のメンテナンスの実行を許可するか否かの判定を行うためのルーチンである。
【0081】
なお、第2実施形態のCPUが図4のステップ420の処理を行う場合、三方弁72の入口部がバイパス上流経路73に接続されている三方弁72の出口部の一つと連通するように三方弁72を切り換えるとともに、作動ガスリターン弁96を開けることによってバイパス下流経路94を連通し、且つ、排出弁97を閉じることによって二酸化炭素排出経路95を遮断する。更に、第2実施形態のCPUが図4のステップ435の処理を行う場合、三方弁72の入口部が第3経路63に接続されている三方弁72の出口部の他の一つと連通するように三方弁72を切り換えるとともに、作動ガスリターン弁96を閉じることによってバイパス下流経路94を遮断し、且つ、排出弁97を閉じることによって二酸化炭素排出経路95を遮断する
【0082】
いま、二酸化炭素吸収機91のメンテナンス実行を許可する後述の条件が成立し、図7のルーチンの実行によりメンテナンス許可フラグXMTの値が「0」から「1」に設定された直後であるとして説明を続ける。この場合、CPUは所定のタイミングにて図6のステップ600から処理を開始すると、メンテナンス許可フラグXMTの値が「1」であるか否かを判定するステップ605に進んだとき同ステップ605にて「Yes」と判定してステップ610に進み、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」であるか否かを判定する。即ち、現時点において、還流ガスが二酸化炭素吸収機91を通過しているか否か(二酸化炭素が二酸化炭素吸収機91によって吸収されているか否か)を判定する。
【0083】
このとき、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であれば、CPUはステップ610にて「No」と判定し、ステップ615にてヒータ91cへの通電を停止するとともに、ステップ620にて排出弁97を閉じることによって二酸化炭素排出経路95を遮断し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0084】
このように、還流ガスが二酸化炭素吸収機91を通過していて、二酸化炭素が分離された還流ガスが二酸化炭素吸収機91から第4経路64に戻されている場合、ヒータ91cへの通電は行われず(ヒータ91cは発熱せず)、且つ、二酸化炭素排出経路95は遮断される。
【0085】
一方、CPUがステップ610に進んだとき、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」に設定されていると(即ち、現時点において、還流ガスが二酸化炭素吸収機91を通過していない場合)、CPUはステップ610にて「Yes」と判定してステップ625に進み、ヒータ91cへの通電を開始する。次いで、CPUはステップ630に進み、排出弁97を開弁することにより、二酸化炭素排出経路95を連通せしめる。
【0086】
この結果、モノエタノールアミン溶液91bが加熱される。モノエタノールアミン溶液91bは、その温度が高くなるほど二酸化炭素の溶解度が顕著に低下する性質を有する。従って、ヒータ91cへの通電により、モノエタノールアミン溶液91bに吸収されていた二酸化炭素が同溶液から離脱してガス化し、そのガス化した二酸化炭素は二酸化炭素排出経路95及び排出弁97を通して大気に排出される。この結果、モノエタノールアミン溶液91bの二酸化炭素吸収能力が回復され始める。
【0087】
次に、CPUはステップ635に進んでタイマー(ヒータオン継続タイマー)Tの値を「1」だけ増加し、ステップ640にてタイマーTの値が所定の閾値Tth以上であるか否かを判定する。現時点は、ヒータへの通電が開始されることによりタイマーTの値が増大され始めた直後である。従って、CPUはステップ640にて「No」と判定し、ステップ695にて本ルーチンを一旦終了する。なお、タイマーTの値は、図示しないイニシャルルーチンにて「0」に設定されている。
【0088】
その後、この状態が継続すると、ステップ635の処理が繰り返される。従って、タイマーTの値は所定の閾値Tth以上となる。この時点でCPUがステップ640の処理を実行すると、CPUはステップ640にて「Yes」と判定し、ステップ645にてヒータ91cへの通電を停止するとともに、ステップ650にて排出弁97を閉じることによって二酸化炭素排出経路95を遮断する。これにより、モノエタノールアミン溶液91bの二酸化炭素吸収能力を回復させる動作、即ち、メンテナンス動作が終了する。
【0089】
次いで、CPUはステップ655にてメンテナンス許可フラグXMTの値を「0」に設定し、ステップ660にてタイマーTの値を「0」に設定した後、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0090】
また、CPUが本ルーチンの処理を開始した時点において、メンテナンス許可フラグXMTの値が「0」に設定されていると、CPUはステップ605にて「No」と判定してステップ615及びステップ620の処理を行い、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上が、二酸化炭素吸収機91のメンテナンスを実行する際の作動である。
【0091】
次に、CPUがメンテナンス許可フラグXMTの値を「1」に設定する際の作動について図7を参照しながら説明する。メンテナンス許可フラグXMTの値は、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された回数(二酸化炭素吸収回数カウンタ)CNが所定回数CNth以上となったときに「1」に設定される。換言すると、メンテナンス許可フラグXMTの値は、還流ガス中の二酸化炭素濃度DenCO2が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上となることにより二酸化炭素吸収機91を使用した二酸化炭素の分離・除去が行われた回数CNが所定回数CNth以上となってモノエタノールアミン溶液91bが多量の二酸化炭素を吸収した状態となっているために、モノエタノールアミン溶液91bの二酸化炭素吸収能力を回復する必要があると判断されるときに「1」に設定される。
【0092】
より具体的には、CPUは所定のタイミングにてステップ700から処理を開始し、ステップ705に進んで二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された直後であるか否かを判定する。このとき、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された直後でなければ、CPUはステップ705にて「No」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値は変更されない。
【0093】
一方、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された直後である場合、CPUはステップ705にて「Yes」と判定してステップ710に進み、二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値を「1」だけ増大する。この二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値は、バックアップラムに記憶される。次いで、CPUはステップ715にて二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値が所定回数CNth以上であるか否かを判定する。このとき、二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値が所定回数CNthより小さければ、CPUはステップ715にて「No」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、メンテナンス許可フラグXMTの値は「0」に維持される。
【0094】
その後、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された回数が増大すると、二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値は所定回数CNth以上となる。この場合、CPUはステップ715に進んだとき、同ステップ715にて「Yes」と判定してステップ720に進み、メンテナンス許可フラグXMTの値を「1」に設定する。次いで、CPUはステップ725に進み、二酸化炭素吸収回数カウンタCNのを「0」に設定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0095】
以上、説明したように、第2実施形態に係る水素エンジンは、第1実施形態に係る水素エンジンと同様、生成物除去手段(二酸化炭素吸収機91を含む生成物除去部90)により二酸化炭素が循環ガスから除去されるので、常に高い熱効率にて運転され得るようになっている。
【0096】
また、第2実施形態に係る水素エンジンは、
生成物除去手段(生成物除去部90)が、
生成物(二酸化炭素)を吸収する吸収物質(MEA溶液91b)と、
MEA溶液91bに吸収された二酸化炭素をMEA溶液91bから離脱させるようにMEA溶液91bに物理的作用(熱)を加える離脱促進手段であるヒータ91cと、
ヒータ91cにより離脱させられた二酸化炭素を循環経路(バイパス経路を含む循環経路)外へ排出する排出口及び二酸化炭素排出経路95と、
二酸化炭素排出経路95を連通及び遮断のいずれかの状態とする排出弁97とを備えている。
【0097】
従って、吸収物質であるMEA溶液91bに吸収された生成物(二酸化炭素)が離脱促進手段であるヒータ91cによりMEA溶液91bから離脱させられる。これにより、MEA溶液91bが二酸化炭素を吸収する能力を回復することができる。この結果、二酸化炭素吸収機91を取り替える必要がなく、一つの二酸化炭素吸収機91(生成物除去手段)を長期に渡って使用することができる。
【0098】
なお、上記実施形態において、ステップ705乃至ステップ715は、吸収物質であるMEA溶液91bが所定量以上の二酸化炭素を吸収したか否かを判定する判定手段を構成している。この判定手段は、ヒータ91cを通電して吸収物質の二酸化炭素吸収能力を回復してから(前回のメンテナンス動作を実行後)の水素エンジンの運転時間の積算時間が所定時間以上となったか否かを判定する手段に置換することもでき、前回のメンテナンス動作を実行後の水素エンジンに供給された水素量の積算値が所定値以上となったか否かを判定する手段に置換することもできる。
【0099】
<第2実施形態の変形例>
この変形例に係る作動ガス循環型水素エンジンは、上記第2実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンの二酸化炭素吸収機91に、モノエタノールアミン溶液91bに代わるゼオライト系吸着剤を充填した点のみにおいて、同第2実施形態の水素エンジンと相違している。ゼオライト系吸着剤も、モノエタノールアミン溶液91bと同様、加熱により温度が上昇したときに吸着している二酸化炭素を放出する。従って、上記メンテナンス動作により、ゼオライト系吸着剤の二酸化炭素吸着能力が回復する。
【0100】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代わる図8にフローチャートにより示した三方弁制御ルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85を備えていない点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0101】
第3実施形態に係る水素エンジンは、循環ガス中の二酸化炭素濃度を水素エンジンの運転時間の積算時間に基づいて推定し、その積算時間が所定時間以上となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。
【0102】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に図8に示したルーチンの処理をステップ800から開始し、ステップ805にて水素エンジンの運転時間の積算時間を表す運転積算時間タイマーTDの値を「1」だけ増大する。運転積算時間タイマーTDはバックアップラムに格納される。次いで、CPUはステップ810に進み、運転積算時間タイマーTDの値が所定時間(運転継続閾値時間)TDth以上となったか否かを判定する。
【0103】
いま、運転積算時間タイマーTDの値が所定時間TDthより小さく、且つ、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の分離・除去が行われていない状態(二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」の状態)であると仮定して説明を続けると、CPUはステップ810にて「No」と判定するとともに、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であるか否かを判定するステップ815にても「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0104】
この結果、燃焼室21から排出された排ガス(循環ガス)は、第1経路61、第2経路62、第3経路63、第4経路64及び第5経路65からなる主経路を通って循環される。換言すると、燃焼室21から排出された排ガスは、二酸化炭素吸収機71を通過しない。
【0105】
その後、水素エンジンの運転が行われると、ステップ805の処理により運転積算時間タイマーTDの値が次第に増大し、やがて所定時間TDth以上となる。この場合、CPUはステップ805に続くステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、三方弁72の入口部がバイパス上流経路73に接続されている三方弁72の出口部の一つと連通するように、三方弁72を切り換える。
【0106】
この結果、第2経路62を流れる還流ガスは、第3経路63を流れず、二酸化炭素吸収機71(二酸化炭素吸収機71内の流路に収容されたモノエタノールアミン溶液71b)を通過する。従って、還流ガス中に含まれる二酸化炭素がモノエタノールアミン溶液71bに吸収され、還流ガスから分離される。そして、二酸化炭素が分離された還流ガスは、容器71aの出口部及びバイパス下流経路74を通して合流点PGから第4経路64に供給される。その後、CPUはステップ825に進んで二酸化炭素分離実行フラグFの値を「1」に設定するとともに、ステップ830にて運転積算時間タイマーTDの値を「0」に設定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0107】
この状態において、CPUが再び図8のステップ800から処理を開始すると、CPUはステップ805を経由してステップ810に進む。この場合、先のステップ830にて運転積算時間タイマーTDの値は「0」に戻された直後であるから、所定時間TDthよりも十分に小さい。従って、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ815に進み、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であるか否かを判定する。
【0108】
現時点においては、先のステップ825によって二酸化炭素分離実行フラグFの値は「1」に設定されている。従って、CPUはステップ815にて「Yes」と判定してステップ835に進み、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変化した後に所定時間(二酸化炭素分離継続時間)TSthが継続したか否かを判定する。但し、時間TSthは時間TDthより十分に短い。現時点では、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変化した後に所定時間TSthが経過していない。従って、CPUはステップ835にて「No」と判定してステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0109】
二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変化した後に所定時間TSthが経過するすると、主経路内の二酸化炭素濃度DenCO2は上述した低側所定濃度DenCO2thL以下になると予想される。この場合、CPUはステップ800〜ステップ815に続くステップ835にて「Yes」と判定してステップ840に進み、三方弁72の入口部が第3経路63に接続されている三方弁72の出口部の他の一つと連通するように、三方弁72を切り換える。これにより、燃焼室21から排出された排ガスは、再び、第1経路61乃至第5経路65からなる主経路を通って循環され始める。その後、CPUはステップ845にて二酸化炭素分離実行フラグFの値を「0」に設定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0110】
以上、説明したように、第3実施形態に係る水素エンジンは、水素エンジンの運転時間の積算時間TDに基づいて二酸化炭素濃度を推定する二酸化炭素濃度推定手段(ステップ805に相当)を備え、水素エンジンの運転時間の積算時間TDが所定時間TDth以上となったとき、二酸化炭素濃度が過大となったと判定して、二酸化炭素を二酸化炭素吸収機71によって循環ガスから分離している。従って、第1実施形態のように、高価な二酸化炭素濃度センサ85を採用する必要がないので、水素エンジンを廉価に提供することができる。
【0111】
なお、第3実施形態においても、二酸化炭素吸収機71に収容されているモノエタノールアミン溶液71bを、ゼオライト系吸着剤に置換してもよい。また、第2実施形態のように、ヒータ91cを容器71aの周囲に配置し、第2実施形態と同様に発熱させることにより、モノエタノールアミン溶液71b又はゼオライト系吸着剤の二酸化炭素吸収能力を適宜回復してもよい。
【0112】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代え、図9及び図10にフローチャートにより示したルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85に代えて特定気筒の燃焼室21内の圧力(筒内圧)を測定する筒内圧センサを備えている点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0113】
第4実施形態に係る水素エンジンは、循環ガス中の二酸化炭素濃度を、特定気筒のクランク角が圧縮上死点近傍の所定クランク角度(特定気筒の圧縮上死点前At度)であるときの筒内圧に基づいて推定し、その筒内圧(以下、「特定筒内圧」と称呼する。)が所定値以下となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。換言すると、この水素エンジンは、特定筒内圧が所定圧力以下となったとき、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上になったと判定する。
【0114】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始するようになっている。なお、図9に示したステップにおいて図4に示したステップと同一のステップには同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0115】
CPUは、ステップ900からステップ905に進み、二酸化炭素濃度指標値INDを取得する。本実施形態において二酸化炭素濃度指標値INDは、特定気筒のクランク角が圧縮上死点前At度となったときの筒内圧(特定筒内圧)であり、後述する図10に示したルーチンにより取得されている。
【0116】
次いで、CPUはステップ910に進み、二酸化炭素濃度指標値INDにより示される二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度以上となっているか否かを判定する。より具体的に述べると、CPUはステップ910において、特定筒内圧Pcyl(=IND)が所定筒内圧Pcylth以下であるか否かを判定する。
【0117】
二酸化炭素は3原子ガスであって単原子ガスである作動ガスのアルゴンガスよりも比熱比が小さい。このため、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど、圧縮行程終了時近傍(圧縮上死点近傍の所定クランク角)における筒内圧が小さくなる。従って、特定筒内圧Pcylが所定筒内圧Pcylth以下であることは、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度以上となったことを意味する。換言すると、所定筒内圧Pcylthは、高側所定濃度DenCO2thHに相当する値に選択されている。
【0118】
そして、二酸化炭素濃度指標値INDにより示される二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度以上となっていれば、CPUはステップ420及びステップ425の処理を行う。この結果、第2経路62を流れる還流ガスは、第3経路63を流れず、二酸化炭素吸収機71を通過する。従って、還流ガス中に含まれる二酸化炭素がモノエタノールアミン溶液71bに吸収され、還流ガスから分離される。
【0119】
他方、CPUがステップ910を処理するとき、二酸化炭素濃度指標値INDにより示される二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度以上となっていなければ、CPUはステップ910からステップ415に進んで二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であるか否かを確認する。このとき、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であり、且つ、ステップ915にて二酸化炭素濃度指標値INDにより示される二酸化炭素濃度が上述した低側所定濃度DenCO2thLに相当する濃度以下となったことが確認されると、CPUはステップ435及びステップ440の処理を行う。
【0120】
この結果、二酸化炭素吸収機71による二酸化炭素の分離・吸収が停止され、燃焼室21から排出された排ガスは、再び、第1経路61乃至第5経路65からなる主経路を通って循環され始める。
【0121】
更に、CPUは図10に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、特定気筒のクランク角がその気筒の圧縮上死点近傍且つ圧縮上死点前の所定クランク角度(At度)であるか否かを判定する。このクランク角度(BTDC At度)は、水素噴射弁35から水素が噴射される噴射タイミングより前のクランク角となるように設定されている。
【0122】
そして、特定気筒のクランク角がその気筒の圧縮上死点前の所定クランク角度(At度)であるとき、CPUはステップ1020に進んで筒内圧Pcylを特定筒内圧(二酸化炭素濃度指標値)INDとして取り込み、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、特定気筒のクランク角がその気筒の圧縮上死点前の所定クランク角度(At度)でないとき、CPUはステップ1010からステップ1095に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0123】
以上、説明したように、第4実施形態に係る水素エンジンは、
水素エンジンのクランク角(特定気筒のクランク角)が圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの特定気筒の燃焼室内の圧力である筒内圧Pcylを取得する筒内圧取得手段(筒内圧センサ及び図10に示したルーチン)と、
前記取得された筒内圧Pcyl(=IND)が所定圧力Pcylthより小さいとき、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路(第2経路62)内を流れるガスがバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ420等)と、
を備えている。
【0124】
これにより、循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段としての二酸化炭素吸収機71により除去されるので、水素エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機71)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0125】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代え、図9及び図11にフローチャートにより示したルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85に代えて特定気筒の燃焼室21内の圧力(筒内圧)を測定する筒内圧センサを備えている点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0126】
第5実施形態に係る水素エンジンは他の実施形態の水素エンジンと同様、高温・高圧の圧縮ガス中に水素を噴射して拡散燃焼させるタイプのエンジンである。従って、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど燃焼速度が低下するから、着火時期が遅れる。そこで、この水素エンジンは、筒内圧に基づいて着火時期を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。そして、水素エンジンは、取得された着火時期が基準着火時期よりも遅角側となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。換言すると、この水素エンジンは、着火時期が基準着火時期よりも遅角側となったとき、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上になったと判定する。
【0127】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に上述した図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始するようになっている。この実施形態は、ステップ905及びステップ910において着火時期を二酸化炭素濃度指標値INDとして使用し、その着火時期が基準着火時期よりも遅角側となっているか否かを判定する。着火時期は、図11に示したルーチンにより取得される。基準着火時期は、二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度となったときの着火時期に相当する値に設定されている。
【0128】
更に、ステップ915においては、着火時期が二酸化炭素濃度指標値INDとして使用され、その着火時期が基準着火時期より所定クランク角度だけ進角側の進角側基準着火時期よりも進角側となっているか否かが判定される。進角側基準着火時期は、二酸化炭素濃度が上述した低側所定濃度DenCO2thLに相当する濃度となったときの着火時期に相当する値に設定されている。図9に示したルーチンの他の点は、上述の第4実施形態にて説明したとおりであるから詳細な説明を省略する。
【0129】
図11のルーチンは、クランク角度により表される着火時期を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得するためのルーチンである。CPUは、このルーチンを所定時間の経過毎にステップ1100から開始し、ステップ1110にて特定気筒のクランク角がその特定気筒の圧縮上死点から膨張下死点までの間であるか否かを判定する。このとき、特定気筒のクランク角がその特定気筒の圧縮上死点から膨張下死点までの間でなければ、CPUはステップ1110にて「No」と判定してステップ1195に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0130】
一方、ステップ1110の判定時において、特定気筒のクランク角がその特定気筒の圧縮上死点から膨張下死点までの間であれば、CPUはステップ1120乃至ステップ1140の以下に述べる処理によって、筒内圧が最大となったときのクランク角θを着火時期(即ち、二酸化炭素濃度指標値IND)として取得する。
【0131】
ステップ1120:CPUは、現時点の筒内圧Pcyl(now)が、本ルーチンを前回実行した時点(所定時間前)の筒内圧Pcyl(−1)以下であるか否かを判定する。CPUは、筒内圧Pcyl(now)が前回の筒内圧Pcyl(−1)以下であればステップ1130に進み、そうでなければステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0132】
ステップ1130:CPUは、前回の筒内圧Pcyl(−1)が本ルーチンを2回前に実行した時点(所定時間の2倍の時間前)の筒内圧Pcyl(−2)より大きいか否かを判定する。CPUは、前回の筒内圧Pcyl(−1)が前々回の筒内圧Pcyl(−2)より大きければステップ1140に進み、そうでなければステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0133】
ステップ1110乃至ステップ1130の総てのステップにおいて「Yes」と判定されるということは、現時点が特定気筒の圧縮上死点から膨張下死点までの間であって、且つ、筒内圧が最大値をとった時点であるということを意味する。そこで、CPUはステップ1140にて、現時点のクランク角θを二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。この取得されたクランク角θが着火時期又は着火時期に相当する時期であるとして、図9のルーチンにおいて二酸化炭素濃度指標値INDとして使用される。
【0134】
以上、説明したように、着火時期は二酸化炭素濃度指標値であって水素エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値である。第5実施形態に係る水素エンジンは、この燃焼状態指標値(着火時期)を取得する燃焼状態指標値取得手段(筒内圧センサ及び図11のルーチン等)と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、即ち、着火時期が二酸化炭素濃度が過大となっているために所定時期(基準着火時期)よりも遅角側となったとき、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路(第2経路62)内を流れるガスがバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ420等)と、
を備えている。
【0135】
これにより、燃焼状態の悪化をもたらす循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段としての二酸化炭素吸収機71により除去されるので、水素エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機71)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0136】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代え、図9及び図12にフローチャートにより示したルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85に代えて特定気筒の燃焼室21内の圧力(筒内圧)を測定する筒内圧センサを備えている点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0137】
第6実施形態に係る水素エンジンは他の実施形態の水素エンジンと同様、高温・高圧の圧縮ガス中に水素を噴射して拡散燃焼させるタイプのエンジンである。従って、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど燃焼速度が低下することに起因して、後述する燃焼変動率が大きくなる。
【0138】
そこで、この水素エンジンは、筒内圧に基づいて燃焼変動率を求め、この燃焼変動率を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。そして、水素エンジンは、取得された燃焼変動率が基準燃焼変動率以上となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。換言すると、この水素エンジンは、燃焼変動率が基準燃焼変動率以上となったとき、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上になったと判定する。
【0139】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に上述した図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始するようになっている。この実施形態は、ステップ905及びステップ910において燃焼変動率を二酸化炭素濃度指標値INDとして使用し、その燃焼変動率が基準燃焼変動率以上となっているか否かを判定する。燃焼変動率は、図12に示したルーチンにより取得される。基準燃焼変動率は、二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度となったときの燃焼変動率に相当する値に設定されている。
【0140】
更に、ステップ915においては、燃焼変動率が二酸化炭素濃度指標値INDとして使用され、その燃焼変動率が前記基準燃焼変動率より小さい安定燃焼変動率以下となっているか否かが判定される。安定燃焼変動率は、二酸化炭素濃度が上述した低側所定濃度DenCO2thLに相当する濃度となったときの燃焼変動率に相当する値に設定されている。図9に示したルーチンの他の点は、上述の第4実施形態にて説明したとおりであるから詳細な説明を省略する。
【0141】
図12のルーチンは、燃焼変動率を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得するためのルーチンである。CPUは、このルーチンを所定時間の経過毎にステップ1200から開始し、ステップ1210にてサンプル数カウンタNの値を「1」だけ増大する。次いで、CPUはステップ1220にてサンプル数カウンタNの値が所定値Nth以上となったか否かを判定する。このとき、サンプル数カウンタNの値が所定値Nth以上となっていなければ、CPUはステップ1220にて「No」と判定してステップ1295に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0142】
一方、ステップ1220の判定時において、サンプル数カウンタNの値が所定値Nth以上となっていれば、CPUはステップ1230乃至ステップ1250の以下に述べる処理によって、燃焼変動率(σPmi/PmiAve)を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。
【0143】
ステップ1230:CPUは、過去N個分の図示平均有効圧Pmiの平均値をPmiAveとして算出する。図示平均有効圧Pmiは、周知の手法によって、特定気筒のサイクル毎に筒内圧センサの出力値とクランク角とに基づいて別途計算されている。
ステップ1240:CPUは、図12のステップ1240内に示した式に従って図示平均有効圧変動値σPmiを算出する。即ち、過去N個分のそれぞれの図示平均有効圧Pmiと平均値PmiAveとの差の2乗の平方根をとり、それらの総和を図示平均有効圧変動値σPmiとして求める。
【0144】
ステップ1250:CPUは求められた図示平均有効圧変動値σPmiを図示平均有効圧Pmiの平均値PmiAveで除して得られる値である燃焼変動率(σPmi/PmiAve)を、二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。この取得された燃焼変動率(σPmi/PmiAve)が図9のルーチンにおいて二酸化炭素濃度指標値INDとして使用される。
【0145】
以上、説明したように、燃焼変動率(σPmi/PmiAve)は二酸化炭素濃度指標値であって水素エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値である。第6実施形態に係る水素エンジンは、この燃焼状態指標値(燃焼変動率)を取得する燃焼状態指標値取得手段(筒内圧センサ及び図12のルーチン等)と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、即ち、燃焼変動率(σPmi/PmiAve)が二酸化炭素濃度が過大となっているために基準燃焼変動率以上となったときに、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路(第2経路62)内を流れるガスがバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ420等)と、
を備えている。
【0146】
これにより、燃焼状態の悪化をもたらす循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段としての二酸化炭素吸収機71により除去されるので、水素エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機71)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0147】
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代え、図9及び図13にフローチャートにより示したルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85に代えて特定気筒の燃焼室21内の圧力(筒内圧)を測定する筒内圧センサを備えている点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0148】
前述したように、二酸化炭素ガスはアルゴンガスより比熱比が小さいので、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど水素エンジンの熱効率は低下する。そこで、この水素エンジンは、水素エンジンの図示熱効率を算出し、その図示熱効率を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。そして、水素エンジンは、取得された図示熱効率が基準図示熱効率以下となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。換言すると、この水素エンジンは、図示熱効率が基準図示熱効率以下となったとき、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上になったと判定する。
【0149】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に上述した図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始するようになっている。この実施形態は、ステップ905及びステップ910において図示熱効率を二酸化炭素濃度指標値INDとして使用し、その図示熱効率が基準図示熱効率以下となっているか否かを判定する。図示熱効率は、図13に示したルーチンにより取得される。基準図示熱効率は、二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度となったときの図示熱効率に相当する値に設定されている。
【0150】
更に、ステップ915においては、図示熱効率が二酸化炭素濃度指標値INDとして使用され、その図示熱効率が前記基準図示熱効率より大きい高側図示熱効率以上となっているか否かが判定される。高側図示熱効率は、二酸化炭素濃度が上述した低側所定濃度DenCO2thLに相当する濃度となったときの図示熱効率に相当する値に設定されている。図9に示したルーチンの他の点は、上述の第4実施形態にて説明したとおりであるから詳細な説明を省略する。
【0151】
図13のルーチンは、図示熱効率を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得するためのルーチンである。CPUは、このルーチンを水素エンジンの1サイクル経過毎にステップ1300から開始し、ステップ1310にて特定気筒の筒内圧(筒内圧センサ出力)P及びその気筒のクランク角により求められる燃焼室体積Vから描かれるP−V線図から図示仕事Q1を算出する。次いで、CPUはステップ1320にて、図示仕事Q1を求めたサイクルにおいて特定気筒に噴射された水素の噴射量を要求水素量SH2又は水素噴射時間TAUに基づいて算出し、その水素の噴射量から特定気筒に与えられたエネルギーQ0を算出する。
【0152】
次に、CPUはステップ1330に進み、求められた図示仕事Q1をエネルギーQ0で除して得られる値である図示熱効率(Q1/Q0)を、二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。この取得された図示熱効率(Q1/Q0)が図9のルーチンにおいて二酸化炭素濃度指標値INDとして使用される。
【0153】
以上、説明したように、図示熱効率(Q1/Q0)は二酸化炭素濃度指標値であって水素エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値である。第7実施形態に係る水素エンジンは、この燃焼状態指標値(図示熱効率)を取得する燃焼状態指標値取得手段(筒内圧センサ及び図13のルーチン等)と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、即ち、図示熱効率(Q1/Q0)が二酸化炭素濃度が過大となっているために基準図示熱効率以下となったときに、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路(第2経路62)内を流れるガスがバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ420等)と、
を備えている。
【0154】
これにより、燃焼状態の悪化をもたらす循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段としての二酸化炭素吸収機71により除去されるので、水素エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機71)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0155】
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジン及びシステムは、不可避的に発生する循環ガス中の二酸化炭素を分離・除去するので、常に高い熱効率をもって運転することが可能となっている。
【0156】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記エンジン10は水素を拡散燃焼させていたが、自着火燃焼運転又は燃焼室21に配設された点火プラグからの火花による火炎伝播燃焼運転を行ってもよい。
【0157】
更に、上記各エンジンは、気筒内に水素ガスを直接噴射していたが、水素ガスを吸気ポート31に噴射するように水素噴射弁35を配置してもよい。また、上記各実施形態においては、作動ガスとしてアルゴンガスが使用されていたが、アルゴン以外の少なくとも二酸化炭素よりも高い比熱比を有する単原子ガス(例えば、He等のアルゴン以外の不活性ガス)であってもよい。
【0158】
また、上記各実施形態においては、燃焼室にて生成されるH2O生成物としての二酸化炭素を循環ガスから除去していたが、他の生成物(例えば、Nox及びHC)を同様に除去するように構成されていてもよい。また、二酸化炭素の吸収物質として、MEA溶液又はゼオライト系吸着剤が使用されていたが、これらに代え、二酸化炭素等の吸着・分離したい生成物を選択的に吸着する他の吸着物質を用いてもよい。
【0159】
更に、上記二酸化炭素濃度指標値IND又は上記燃焼状態指標値として、着火時期の変動率を採用してもよい。また、水素エンジンが火花点火によって水素を火炎伝播燃焼させるタイプのエンジンであれば、二酸化炭素濃度が上昇するほど火炎伝播速度が低下するので、爆発(燃焼)行程中の筒内圧は緩慢に変化するようになる。従って、二酸化炭素濃度指標値IND又は燃焼状態指標値として、例えば、燃焼行程における筒内圧の変化速度や変化の仕方を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンを含むシステムの概略図である。
【図2】図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図3】図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図4】図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンを含むシステムの概略図である。
【図6】図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】本発明の第4乃至第7実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図10】本発明の第4実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】本発明の第5実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図12】本発明の第6実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図13】本発明の第7実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0161】
10…作動ガス循環型水素エンジン、11…シリンダヘッド、12…シリンダ、13…ピストン、14…クランク軸、15…コネクティングロッド、21…燃焼室、31…吸気ポート、32…排気ポート、35…水素噴射弁、40…水素供給部、41…水素タンク、50…酸素供給部、51…酸素タンク、53…酸素ガス圧レギュレータ、55…酸素ガスミキサ、60…作動ガス循環通路部、61…第1経路、62…第2経路、63…第3経路、64…第4経路、65…第5経路、66…凝縮器、70…生成物除去部、71…二酸化炭素吸収機、71a…容器、71b…モノエタノールアミン溶液、72…三方弁、73…バイパス上流経路、74…バイパス下流経路、80…電気制御装置、85…二酸化炭素濃度センサ、90…生成物除去部、91…二酸化炭素吸収機、91a…容器、91b…モノエタノールアミン溶液、91c…ヒータ、92…三方弁、93…バイパス上流経路、94…バイパス下流経路、95…二酸化炭素排出経路、96…作動ガスリターン弁、97…排出弁。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に水素と、酸素と、単原子ガスからなる作動ガスと、を供給して同水素を燃焼させるとともに、同燃焼室から排出された排ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環(再供給)する作動ガス循環型水素エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃焼室に水素と酸素と作動ガスとしての単原子ガスであるアルゴンガスとを供給して同水素を燃焼させるとともに、同燃焼室から排出された排ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環経路を通して循環させる作動ガス循環型水素エンジンが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。アルゴンガスは、比熱比が非常に大きい不活性ガスである。従って、上記従来のエンジンは、比熱比が小さいガスを作動ガスとして用いるエンジンよりも高い熱効率で運転され得る。このようなエンジンの排ガス中には、H2O(水蒸気)とアルゴンガスとが含まれる。従って、上記エンジンは排ガスからH2Oを分離・除去し、H2Oが除去されたガスを燃焼室に再供給している。
【特許文献1】特開平11−93681号公報(請求項1、段落番号0021乃至0029、図1)
【0003】
しかしながら、上記エンジンの排ガスには、アルゴンガス及び燃焼室にて発生したH2O以外の生成物が含まれることがある。このような生成物の一例は、二酸化炭素(CO2)、窒素感化物(Nox)及び炭化水素(HC)等である。例えば、二酸化炭素は、燃焼室内において潤滑油が燃焼する(化学的変化を起こす)ことにより生成される。より具体的には、シリンダライナーに滞留する潤滑油の一部が燃焼したり、吸気バルブ又は排気バルブのオイルシール部から燃焼室内に漏洩した潤滑油が燃焼したりすることにより、二酸化炭素は不可避的に排ガス中に含まれる。
【0004】
ところで、二酸化炭素は3原子ガスである。この二酸化炭素を含み、燃焼室において生成される生成物(窒素酸化物及び炭化水素等)は、2原子以上からなるガス(以下、便宜上、「複数原子ガス」と称呼する。)である。複数原子ガスは、単原子ガスよりも比熱比が小さい。従って、燃焼室にて生成された生成物の循環されるガス中の濃度が増大すると、エンジンの熱効率が低下するという問題がある。
【発明の開示】
【0005】
上記課題に対処するために為された本発明による水素エンジンは、
燃焼室に水素と、酸素と、単原子ガスからなる作動ガスと、を供給して同水素を燃焼させるとともに、同燃焼室から排出された排ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環経路を通して循環させる作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記循環経路内に前記燃焼室にて発生したH2O(水蒸気)以外の生成物を除去する生成物除去手段を備えている。
【0006】
単原子ガスは一般に比熱比が大きい。これに対し、燃焼室にて生成されるH2O以外の生成物は複数原子ガスであるので、比熱比が単原子ガスより一般に小さい。従って、上記構成によれば、燃焼室にて生成されるH2O以外の生成物(比熱比が作動ガスよりも小さい生成物)が、生成物除去手段により循環されるガス(循環ガス)から除去されるので、水素エンジンは常に高い熱効率にて運転され得る。
【0007】
この場合、前記生成物除去手段は、前記燃焼室にて発生したH2O以外の生成物としての二酸化炭素を除去するように構成されることが好適である。
【0008】
一般にエンジンには潤滑油が用いられるので、上述した理由により比熱比が比較的大きい二酸化炭素が燃焼室において不可避的に生成される。このため、上記構成より、循環ガスから二酸化炭素を除去すれば、常に高い熱効率にて運転することが可能な水素エンジンが提供され得る。
【0009】
この場合、
前記二酸化炭素を除去する生成物除去手段は、
前記循環経路の一部を構成する流路を備える容器と、
前記容器の流路に収容されたモノエタノールアミン溶液又はゼオライト系吸着剤と、
を備えることが好適である。
【0010】
モノエタノールアミン(MEA)溶液は二酸化炭素を高い溶解度をもって溶解することができる。ゼオライト系吸着剤は、二酸化炭素を高い効率をもって吸着することができる。従って、上記構成によって、これらの物質を収容した流路に排ガスを通流させることにより、循環ガス中の二酸化炭素を高い効率をもって吸収・分離・除去することができる。
【0011】
また、上記水素エンジンは、
前記循環経路は主経路と同主経路から分岐点にて分岐し且つ同分岐点より下流側の合流点にて同主経路に合流するバイパス経路とを含み、
前記生成物除去手段は前記バイパス経路に配設され、
前記分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスを同分岐点から前記合流点までの間において同主経路を通過させるか前記バイパス経路を通過させるかの何れかに切り換える経路切換手段を備えることが好適である。
【0012】
これによれば、必要に応じて、循環ガスが流れる前記分岐点から前記合流点までの間の経路が経路切換手段によってバイパス経路に設定され、これにより、バイパス経路に配設された生成物除去手段によって循環ガス中に含まれる生成物が除去される。この結果、循環ガス中の生成物の濃度を小さくすることができる。一方、循環ガスが流れる前記分岐点から前記合流点までの間の経路が経路切換手段によって主経路に設定された場合には、生成物除去手段を循環ガスが通過しない。この結果、循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路及び生成物除去手段を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0013】
更に、前記水素エンジンにおいて、
生成物除去手段は、
前記生成物を吸収する吸収物質と、
前記吸収物質に吸収された生成物を同吸収物質から離脱させるように同吸収物質に物理的作用を加える離脱促進手段と、
前記離脱促進手段により離脱させられた生成物を前記循環経路外へ排出する排出口と、
を備えることが好適である。
【0014】
これによれば、吸収物質に吸収された生成物が離脱促進手段により吸収物質から離脱させられる。従って、吸収物質が生成物を吸収する能力を回復することができる。この結果、生成物除去手段を取り替える必要がなく、一つの生成物除去手段を長期に渡って使用することができる。
【0015】
上記離脱促進手段を備えた水素エンジンにおいて、
前記吸収物質は前記生成物としての二酸化炭素を溶解して吸収するモノエタノールアミン溶液又は同二酸化炭素を吸着して吸収するゼオライト系吸着剤であり、
前記離脱促進手段は前記吸収物質を加熱する加熱手段であることが望ましい。
【0016】
モノエタノールアミン溶液は、その温度が上昇するに従って二酸化炭素の溶解度が急激に低下する性質を有する。ゼオライト系吸着剤は、その温度が上昇するに従って二酸化炭素の吸着率が急激に低下する性質を有する。従って、上記構成のように、加熱手段によりモノエタノールアミン溶液又はゼオライト系吸着剤を加熱することにより、これらに吸収(溶解又は吸着)されている二酸化炭素をこれらから容易に離脱させることができる。この結果、モノエタノールアミン溶液又はゼオライト系吸着剤の二酸化炭素吸収能力を回復することができる。
【0017】
また、上述した生成物除去手段が配設されたバイパス経路を備えるとともに、主経路とバイパス経路との何れかを循環ガスの経路とすることができる経路切換手段を備えた水素エンジンにあっては、
前記の主経路(例えば、前記分岐点よりも上流側の主経路又は前記合流点よりも下流側主経路であってもよい)を流れるガスに含まれる二酸化炭素の濃度を取得する二酸化炭素濃度取得手段と、
前記取得された二酸化炭素の濃度が所定濃度以上であるとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
を備えることが好適である。
【0018】
これによれば、前記取得された二酸化炭素の循環ガス中の濃度が所定濃度以上となって、エンジンの熱効率が許容できない程度まで低下したとき、循環ガスがバイパス経路を通過する。従って、循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段により除去されるので、エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路と生成物除去手段とを通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0019】
この場合、前記二酸化炭素濃度取得手段は、
二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサであってもよく、
水素エンジンの運転時間の積算時間に基づいて二酸化炭素濃度を推定する二酸化炭素濃度推定手段であってもよい。水素エンジンの運転時間の積算時間に基づいて二酸化炭素濃度を推定すれば、高価な二酸化炭素濃度センサを採用する必要がないので、エンジンを廉価に提供することができる。
【0020】
一方、上記水素エンジンは、
前記エンジンのクランク角が圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの前記燃焼室内の圧力である筒内圧を取得する筒内圧取得手段と、
前記取得された筒内圧が所定圧力より小さいとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
を備えることもできる。
【0021】
前述したように、二酸化炭素は3原子ガスであって単原子ガスである作動ガスよりも比熱比が小さい。このため、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど、圧縮行程終了時近傍における筒内圧が小さくなる。従って、エンジンのクランク角が圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの筒内圧が所定圧力より小さくなったということは、循環ガス中の二酸化炭素濃度が増大したことを意味する。そこで、上記構成のように、圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの筒内圧が所定圧力より小さくなったとき、循環ガスがバイパス経路を通過するように循環ガスの経路を設定する。これにより、循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段により除去されるので、エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0022】
他方、上記水素エンジンは、
前記エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値を取得する燃焼状態指標値取得手段と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
を備えることもできる。
【0023】
前述したように、二酸化炭素は3原子ガスであって単原子ガスである作動ガスよりも比熱比が小さい。
このため、水素エンジンが高温・高圧の圧縮ガス中に水素を噴射して拡散燃焼させるタイプのエンジンであれば、二酸化炭素濃度が上昇するほど燃焼速度が低下するので、燃焼状態のサイクル間変動が大きくなるか、或いは、着火時期が遅れる。従って、燃焼状態を表す燃焼状態指標値として、図示平均有効圧の変動率、着火時期、又は着火時期の変動率を採用すると、その指標値に基づいて二酸化炭素濃度が許容濃度以上になったか否かを判定することができる。
【0024】
更に、水素エンジンが火花点火によって水素を火炎伝播燃焼させるタイプのエンジンであれば、二酸化炭素濃度が上昇するほど火炎伝播速度が低下するので、爆発(燃焼)行程中の筒内圧は緩慢に変化するようになる。従って、燃焼状態を表す燃焼状態指標値として、例えば、筒内圧の変化速度を採用すると、その指標値に基づいて二酸化炭素濃度が許容濃度以上になったか否かを判定することができる。
【0025】
加えて、どのような燃焼形式のエンジンであれ、二酸化炭素濃度が上昇するほど熱効率が低下する。従って、図示熱効率を燃焼状態指標値として採用すると、その図示熱効率に基づいて二酸化炭素濃度が許容濃度以上になったか否かを判定することができる。なお、図示熱効率は、例えば、筒内圧と燃焼室の体積とから図示仕事Q1を求めるとともに、水素供給量(水素噴射量)に基づいてエンジンに付与されたエネルギーQ0を求めれば、それらの比(例えば、Q1/Q0)として取得することができる。
【0026】
以上のことから、上記構成のように、燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように切換手段を切り換えれば、循環ガス中の二酸化炭素濃度が過大となることを回避でき、エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路及び生成物除去手段を通過しないようにすることができるので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明による作動ガス循環型水素エンジン(多気筒エンジン)の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンを含むシステムの概略図である。
【0028】
このシステムは、作動ガス循環型水素エンジン10、水素供給部40、酸素供給部50、作動ガス循環通路部60、生成物除去部70及び電気制御装置80を備えている。水素エンジン10は、燃焼室に酸素及び作動ガスとしてのアルゴンからなるガスを供給し、このガスを圧縮させることにより高圧となったガス中に水素を噴射することにより水素を拡散燃焼させる形式のエンジンである。なお、図1は、水素エンジン10の特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
【0029】
水素エンジン10は、シリンダヘッド部が形成するシリンダヘッド11と、シリンダブロック部が形成するシリンダ12と、シリンダ12内において往復運動するピストン13と、クランク軸14と、ピストン13とクランク軸14とを連結しピストン13の往復運動をクランク軸14の回転運動に変換するためのコネクティングロッド15と、シリンダブロックに連接されたオイルパン16とを備えるピストン往復動型エンジンである。ピストン13の側面にはピストンリング13aが配設されている。
【0030】
シリンダヘッド11、シリンダ12及びオイルパン16から形成される空間は、ピストン13により、ピストン13の頂面側の燃焼室21と、クランク軸14を収容するクランクケース22と、に区画されている。
【0031】
シリンダヘッド11には、燃焼室21に連通した吸気ポート31と、燃焼室21に連通した排気ポート32と、が形成されている。吸気ポート31には吸気ポート31を開閉する吸気弁33が配設され、排気ポート32には排気ポート32を開閉する排気弁34が配設されている。更に、シリンダヘッド11には、水素(水素ガス)を燃焼室21内に直接噴射する水素噴射弁35が配設されている。
【0032】
水素供給部40は、水素タンク(水素ガスタンク)41、水素ガス通路42、水素ガス圧レギュレータ43、水素ガス流量計44及びサージタンク45を備えている。
【0033】
水素タンク41は燃料としての水素ガスを10乃至70MPaの高圧状態にて貯蔵している。水素ガス通路42は、水素タンク41と水素噴射弁35とを連通する通路(管)である。水素ガス通路42には、水素タンク41から水素噴射弁35に向かう順に水素ガス圧レギュレータ43、水素ガス流量計44及びサージタンク45が介装されている。
【0034】
水素ガス圧レギュレータ43は、周知のプレッシャレギュレータであり、水素ガス圧レギュレータ43よりも下流(サージタンク45側)における水素ガス通路42内の圧力を一定圧力に調整するようになっている。水素ガス流量計44は、水素ガス通路42を流れる水素ガスの量(水素ガス流量)を計測し、同水素ガス流量を表す信号FH2を発生するようになっている。サージタンク45は、水素ガス噴射時に水素ガス通路42内に発生する脈動を低減するようになっている。
【0035】
酸素供給部50は、酸素タンク(酸素ガスタンク)51、酸素ガス通路52、酸素ガス圧レギュレータ53、酸素ガス流量計54及び酸素ガスミキサ55を備えている。
【0036】
酸素タンク51は酸素ガスを所定の圧力にて貯蔵するタンクである。酸素ガス通路52は、酸素タンク51と酸素ガスミキサ55とを連通する通路(管)である。酸素ガス通路52には、酸素タンク51から酸素ガスミキサ55に向かう順に酸素ガス圧レギュレータ53及び酸素ガス流量計54が介装されている。
【0037】
酸素ガス圧レギュレータ53は、周知の調整圧可変型プレッシャレギュレータである。即ち、酸素ガス圧レギュレータ53は、酸素ガス圧レギュレータ53よりも下流(酸素ガスミキサ55側)における酸素ガス通路52内の圧力を指示信号に応じた目標調整圧力RO2tgtに調整できるようになっている。換言すると、酸素ガス圧レギュレータ53は、指示信号に応答して酸素ガス通路52を流れる酸素ガス量を制御することができるようになっている。
【0038】
酸素ガス流量計54は、酸素ガス通路52を流れる酸素ガスの量(酸素ガス流量)を計測し、同酸素ガス流量FO2を表す信号を発生するようになっている。酸素ガスミキサ55は、後述する作動ガス循環通路部60の第5経路65に介装されている。酸素ガスミキサ55は、酸素ガス通路52を介して供給された酸素と、第5経路65を介して入口部に供給されるガスとを混合し、その混合したガスを出口部から排出するようになっている。
【0039】
作動ガス循環通路部60は、第1〜5経路(第1〜第5流路形成管)61〜65、凝縮器66及びアルゴンガス流量計67を備えている。
【0040】
第1経路61は排気ポート32と凝縮器66の入口部とを接続している。第2経路62は凝縮器66の出口部と後述する三方弁(経路切換手段)72の入口部とを接続している。第3経路63は三方弁72の出口部の一つと後述する合流点PGとを接続している。第4経路64は合流点PGとアルゴンガス流量計67の入口部とを接続している。第5経路65は、アルゴンガス流量計67の出口部と吸気ポート31とを接続している。第5経路65には酸素ガスミキサ55が介装されている。
【0041】
凝縮器66は、燃焼室21から排出された排ガスを第1経路61及び凝縮器66の入口部を経由して導入するようになっている。凝縮器66は、入口部から導入した排ガスを冷却水Wにより冷却することにより、排ガスに含まれる水蒸気(H2O)を凝縮液化するようになっている。これにより、凝縮器66は、排ガスに含まれる水蒸気を非凝縮ガスと分離して水となし、その水を外部に排出するようになっている。更に、凝縮器66は、前記分離した非凝縮ガスをその出口部から第2経路62に供給するようになっている。
【0042】
アルゴンガス流量計67は、第4経路64及び第5経路65を流れるアルゴンガスの量(アルゴンガス流量)を計測し、同アルゴンガス流量FArを表す信号を発生するようになっている。
【0043】
生成物除去部70は、二酸化炭素吸収機(CO2吸収機)71、三方弁(経路切換手段)72、バイパス上流経路73及びバイパス下流経路74を備えている。
【0044】
二酸化炭素吸収機71は、容器71aとモノエタノールアミン溶液71bとからなっている。容器71aは中空円筒形状又は中空の直方体形状を有する筐体であって、内部に流路を形成している。容器71aは、内部の流路にモノエタノールアミン溶液71bを収容している。モノエタノールアミン溶液は、MEA溶液とも称呼され、二酸化炭素を選択的且つ多量に溶解させることにより、二酸化炭素を効率良く吸収するができる。容器71aは、底面に入口部を備えるとともに、上面に出口部を備えている。容器71aは、水素エンジン10を搭載した車両に対して着脱可能に固定されている。
【0045】
三方弁72は、一つの入口部と二つの出口部とを有している。三方弁72は、駆動信号に応答して一つの入口部と二つの出口部の何れか一つとを連通するようになっている。前述したように、三方弁72の入口部は第2経路62を介して凝縮器66の出口部と接続されている。三方弁72の出口部の一つはバイパス上流経路73を通して容器71aの入口部に接続されている。三方弁72の出口部の他の一つは第3経路63に接続されている(合流点PGにて第4経路64に接続されている。)。バイパス下流経路74の一端は容器71aの出口部に接続され、他端は第4経路64(合流点PG)に接続されている。
【0046】
なお、便宜上、三方弁72の配設位置は「第2経路62、第3経路63及び第4経路64(実際には、第1経路61乃至第5経路65)を含んでなる主経路」と「バイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路」との分岐点PBと称呼される。また、前述したように、第4経路64とバイパス下流経路74とが接続された位置は合流点PGと称呼される。上記「主経路」は作動ガスの循環経路を構成している。上記「バイパス経路」は作動ガス循環経路の一部を構成している。
【0047】
電気制御装置80は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子装置である。電気制御装置80には、水素ガス流量計44、酸素ガス流量計54、アルゴンガス流量計67、アクセルペダル操作量センサ81、エンジン回転速度センサ82、酸素濃度センサ83、水素濃度センサ84、二酸化炭素濃度センサ85及びサージタンク圧力センサ86が接続されている。電気制御装置80は、これらから各測定信号(検出信号)を入力するようになっている。
【0048】
アクセルペダル操作量センサ81は、アクセルペダルAPの操作量を検出し、同アクセルペダルAPの操作量を表す信号Accpを出力するようになっている。エンジン回転速度センサ82は、クランク軸14の回転速度に基づいてエンジン回転速度を表す信号NEとクランク角度を表す信号とを発生するようになっている。
【0049】
酸素濃度センサ83、水素濃度センサ84及び二酸化炭素濃度センサ85は、第4経路64(合流点PGとアルゴンガス流量計67との間)に配設されている。酸素濃度センサ83は、配設部位(第4経路64)を流れるガスの酸素濃度を検出し、酸素濃度を表す信号Voxを発生するようになっている。水素濃度センサ84は、配設部位(第4経路64)を流れるガスの水素濃度を検出し、水素濃度を表す信号VH2を発生するようになっている。
【0050】
二酸化炭素濃度センサ85は、配設部位(第4経路64)を流れるガスの二酸化炭素濃度(二酸化炭素濃度)を検出し、二酸化炭素濃度を表す信号DenCO2を発生するようになっている。サージタンク圧力センサ86は、サージタンク45内の水素ガスの圧力を検出し、サージタンク内の圧力(サージタンク圧力、即ち、噴射水素ガス圧力)Psgを表す信号を発生するようになっている。
【0051】
更に、電気制御装置80は、各気筒の水素噴射弁35、酸素ガス圧レギュレータ53及び三方弁72と接続されていて、これらに指示信号又は駆動信号を送出するようになっている。
【0052】
次に、上記のように構成された作動ガス循環型水素エンジン10を含むシステムの作動について図2乃至図4を参照しながら説明する。
【0053】
電気制御装置80のCPUは、エンジン10のクランク角度が所定のクランク角度(例えば、各気筒の圧縮上死点前90度)に一致する毎に図2にフローチャートにより示した噴射制御ルーチンを実行するようになっている。従って、エンジン10のクランク角度が前記所定のクランク角度に一致すると、CPUはこのルーチンの処理をステップ200から開始してステップ205に進み、要求水素量SH2を現時点にて検出されているアクセルペダル操作量Accp(負荷)及び現時点にて検出されているエンジン回転速度NEと関数f1とに基づいて求める。関数f1は、アクセルペダル操作量Accp及びエンジン回転速度NEにより定まる運転要求トルクに応じた要求水素量SH2を求めるための予め定められた関数(例えば、ルックアップテーブル)である。
【0054】
次いで、CPUはステップ210に進み、上記要求水素量SH2、現時点で検出されているサージタンク圧力Psg及び現時点で検出されているエンジン回転速度NEと、予め定められた関数f2(例えば、ルックアップテーブル)と、に基づいて要求水素量SH2を水素噴射弁35の開弁時間である水素噴射時間TAUに変換する。そして、CPUはステップ215に進んで水素噴射時間TAUの時間だけ圧縮上死点前90度のクランク角度となっている気筒の水素噴射弁35を開弁する駆動信号を水素噴射弁35に送出し、ステップ295に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、要求されたトルクを発生するのに必要な量の水素が燃焼室21内に供給される。
【0055】
更に、CPUは、所定時間の経過毎に図3にフローチャートにより示したレギュレータ制御ルーチンを実行するようになっている。従って、CPUは、所定のタイミングになるとこのルーチンの処理をステップ300から開始してステップ305に進み、現時点における要求水素量SH2の単位時間あたりの平均値SH2aveを算出する。この算出は、前述した図2のステップ205により求められる要求水素量SH2を単位時間に渡って積算することにより行われる。次いで、CPUはステップ310に進んで上記のようにして求められた平均値SH2aveと予め定められた関数f3(例えば、ルックアップテーブル)とに基づいて目標酸素ガス流量FO2tgtを求める。
【0056】
前述したように、エンジン10は水素を燃料として燃焼させる。従って、水素の燃焼により水のみを生成するためには、水素2モルに対して酸素1モルを供給する必要がある。このため、関数f3は、平均値SH2aveにより表される水素のモル数の半分のモル数の酸素(実際には、同半分のモル数の酸素量に余裕量を加えた量の酸素)が燃焼室21に供給されるように、目標酸素ガス流量FO2tgtを決定するようになっている。
【0057】
次いで、CPUはステップ315に進み、現時点にて検出されている酸素ガス流量FO2が上記目標酸素ガス流量FO2tgt以上であるか否かを判定する。そして、CPUは、現時点にて検出されている酸素ガス流量FO2が上記目標酸素ガス流量FO2tgt以上であると判定したとき、ステップ320に進んで酸素ガス圧レギュレータ53の目標調整圧力RO2tgtを正の一定値aだけ減少させる。これにより、酸素ガスミキサ55に供給される酸素ガス量が減少する。
【0058】
一方、CPUは、ステップ315にて現時点にて検出されている酸素ガス流量FO2が上記目標酸素ガス流量FO2tgtより小さいと判定したとき、ステップ325に進んで酸素ガス圧レギュレータ53の目標調整圧力RO2tgtを正の一定値bだけ増大させる。これにより、酸素ガスミキサ55に供給される酸素ガス量が増大する。以上により、必要十分な量の酸素が酸素ガスミキサ55を介して燃焼室21に供給される。次いで、CPUはステップ395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0059】
更に、CPUは、所定時間の経過毎に図4にフローチャートにより示した三方弁制御ルーチン(経路切換制御ルーチン)を実行するようになっている。先ず、循環経路を流れる還流ガス(第1経路61乃至第5経路65からなる主経路を流れる還流ガスであって、特に、分岐点PBより上流の主経路である第2経路62を流れる還流ガス又は合流点PGより下流の主経路を構成する第4経路64を流れる還流ガス)の二酸化炭素濃度DenCO2が高側所定濃度(高側閾値、所定値)DenCO2thHより小さく、かつ、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の分離・除去が行われていない状態にある場合から説明を開始する。なお、高側所定濃度DenCO2thHは、二酸化炭素が循環ガス中に多量に含まれていることによって水素エンジン10の熱効率の低下が問題となるレベルに選択されている。
【0060】
CPUは、所定のタイミングになると図4に示したルーチンの処理をステップ400から開始し、ステップ405に進んで二酸化炭素濃度センサ85から二酸化炭素濃度DenCO2を取得する。次いで、CPUはステップ410に進み、二酸化炭素濃度DenCO2が高側所定濃度DenCO2thH以上であるか否かを判定する。
【0061】
前述の仮定に従えば、二酸化炭素濃度DenCO2は高側所定濃度DenCO2thHより小さいから、CPUはステップ410にて「No」と判定してステップ415に進み、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であるか否かを判定する。後述するように、二酸化炭素分離実行フラグFの値は、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の分離・除去が行われているときに「1」に設定される。また、二酸化炭素分離実行フラグFの値は、図示しないイグニッション・キー・スイッチをオフからオンへと変更した際に実行されるイニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。
【0062】
前述の仮定に従えば、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の分離・除去は行われていない。従って、二酸化炭素分離実行フラグFの値は「0」であるから、CPUはステップ415にて「No」と判定してステップ495に進み本ルーチンを一旦終了する。この結果、燃焼室21から排出された排ガス(循環ガス)は、第1経路61、第2経路62、第3経路63、第4経路64及び第5経路65からなる主経路を通って循環される。換言すると、燃焼室21から排出された排ガスは、二酸化炭素吸収機71を通過しない。
【0063】
次に、このような運転が繰り返されることにより、オイル上がり又はオイル下がり等により燃焼室21に流入した潤滑油が燃焼室21において燃焼して二酸化炭素が生成され、主経路内の二酸化炭素濃度DenCO2が高側所定濃度DenCO2thH以上となった場合について説明する。
【0064】
この場合、CPUはステップ405に続くステップ410にて「Yes」と判定してステップ420に進み、三方弁72の入口部がバイパス上流経路73に接続されている三方弁72の出口部の一つと連通するように、三方弁72を切り換える。換言すると、第2経路62を流れる還流ガス(H2O分離後の排ガス)の総てが、分岐点PGから合流点PGまでの間、二酸化炭素吸収機71が介装されたバイパス経路(バイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び二酸化炭素吸収機71の容器71aが形成する流路からなるバイパス経路)を通過するように、三方弁72が切り換えられる。
【0065】
この結果、第2経路62を流れる還流ガスは、第3経路63を流れず、二酸化炭素吸収機71(二酸化炭素吸収機71内の流路に収容されたモノエタノールアミン溶液71b)を通過する。従って、還流ガス中に含まれる二酸化炭素がモノエタノールアミン溶液71bに吸収され、還流ガスから分離される。そして、二酸化炭素が分離された還流ガスは、容器71aの出口部及びバイパス下流経路74を通して合流点PGから第4経路64に供給される。その後、CPUはステップ425に進んで二酸化炭素分離実行フラグFの値を「1」に設定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0066】
この状態が継続すると、主経路内の二酸化炭素濃度DenCO2が次第に低下し、高側所定濃度DenCO2thHより小さく且つ低側所定濃度DenCO2thLより大きい値となる。低側所定濃度DenCO2thLは、高側所定濃度DenCO2thHより小さい値であって、二酸化炭素が循環ガス中に含まれていることによるエンジン10の熱効率の低下が問題とならないレベルに選択されている。
【0067】
この場合、CPUはステップ405に続くステップ410にて「No」と判定するとともにステップ415にて「Yes」と判定してステップ430に進み、主経路を流れる循環ガスの二酸化炭素濃度DenCO2が低側所定濃度DenCO2thL以下となったか否かを判定する。この時点では、二酸化炭素濃度DenCO2は低側所定濃度DenCO2thLより大きいので、CPUはステップ430にて「No」と判定してステップ495に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、三方弁72は切り換えられないから、第2経路62を流れる還流ガスは二酸化炭素吸収機71を通過し続ける。従って、還流ガス中に含まれる二酸化炭素が更に還流ガスから分離・除去される。
【0068】
この状態が更に継続すると、主経路内の二酸化炭素濃度DenCO2は低側所定濃度DenCO2thL以下となる。この場合、CPUはステップ405、ステップ410及びステップ415に続くステップ430にて「Yes」と判定してステップ435に進み、三方弁72の入口部が第3経路63に接続されている三方弁72の出口部の他の一つと連通するように、三方弁72を切り換える。換言すると、第2経路62を流れる還流ガスの総てが、分岐点PGから合流点PGまでの間、二酸化炭素吸収機71が介装されたバイパス経路を通過せず、第3経路63を通過するように三方弁72が切り換えられる。これにより、燃焼室21から排出された排ガスは、再び、第1経路61乃至第5経路65からなる主経路を通って循環され始める。その後、CPUはステップ440にて二酸化炭素分離実行フラグFの値を「0」に設定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0069】
以上、説明したように、本発明の第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、燃焼室21に水素と酸素と単原子ガスからなる作動ガス(アルゴンガス)とを供給して同水素を燃焼させるとともに、燃焼室21から排出された排ガス中の作動ガスを燃焼室21に循環経路(主経路及びバイパス経路の何れか)を通して循環させる作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記循環経路(バイパス経路)内に燃焼室21にて発生したH2O以外の生成物である二酸化炭素を除去する生成物除去手段(二酸化炭素吸収機71)を備えた水素エンジンである。
【0070】
従って、燃焼室にて生成されるH2O以外の生成物(比熱比が作動ガスであるアルゴンよりも小さい生成物である二酸化炭素)が、生成物除去手段により循環ガスから除去されるので、水素エンジンは常に高い熱効率にて運転され得るようになっている。
【0071】
更に、この水素エンジンは、
分岐点PBよりも上流側の主経路(第2経路62)又は合流点PGよりも下流側の主経路(第4経路64)を流れるガスに含まれる二酸化炭素の濃度を取得する二酸化炭素濃度取得手段(二酸化炭素濃度センサ85)と、
取得された二酸化炭素の濃度DenCO2が所定の高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上であるとき、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路である第2経路62内を流れるガスが上記バイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ410、420等)と、
を備えている。
【0072】
従って、二酸化炭素の循環ガス中の濃度を小さくすることができる。一方、循環ガスが流れる分岐点PBから合流点PGまでの間の経路が経路切換手段によって主経路(第3経路63)に設定された場合には、二酸化炭素吸収機71を循環ガスが通過しない。この結果、循環ガスが流路抵抗の高いバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び二酸化炭素吸収機71を通過しないので、水素エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0073】
更に、二酸化炭素吸収機71は車両に対して着脱可能に構成されているので、モノエタノールアミン溶液71bが二酸化炭素を十分に吸収した時点にて、新品の二酸化炭素吸収機71と交換することができる。或いは、二酸化炭素吸収機71を車両から取り外し、二酸化炭素を吸収したモノエタノールアミン溶液71bを新たなモノエタノールアミン溶液又は加熱により溶解している二酸化炭素を分離・除去したモノエタノールアミン溶液に入れ替えた後、再度、車両に固定することができる。
【0074】
<第1実施形態の変形例>
この変形例に係る作動ガス循環型水素エンジンは、上記第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンの二酸化炭素吸収機71に、モノエタノールアミン溶液71bに代わるゼオライト系吸着剤を充填した点のみにおいて、同第1実施形態の水素エンジンと相違している。ゼオライト系吸着剤は、固体であるが、二酸化炭素を効率良く吸着することができる。
【0075】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、上記第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンの生成物除去部70を、図5に示したように、生成物除去部90に置換した点のみにおいて、同第1実施形態の水素エンジンと相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0076】
生成物除去部90は、二酸化炭素吸収機91、三方弁(経路切換手段)92、バイパス上流経路93、バイパス下流経路94、二酸化炭素排出経路95、作動ガスリターン弁96及び排出弁97を備えている。
【0077】
二酸化炭素吸収機91は、二酸化炭素吸収機71と同様に、容器91aとモノエタノールアミン溶液91bとを備えるとともに、ヒータ(加熱ヒータ)91cを備えている。容器91aは容器71aと同一構造を備えていて、水素エンジン10を搭載した車両に対して着脱可能に固定されている。容器91aは、内部の流路にモノエタノールアミン溶液91bを収容している。ヒータ91cは、容器91aの周囲に配設されていて、駆動信号に応答して発熱し、モノエタノールアミン溶液91bを加熱するようになっている。
【0078】
三方弁92、バイパス上流経路93及びバイパス下流経路94は、三方弁72、バイパス上流経路73及びバイパス下流経路74のそれぞれと同一構造であって同一の態様にて接続・配置されている。二酸化炭素排出経路95の一端は容器71aの上面に形成された排出口に接続されている。
【0079】
作動ガスリターン弁96は、バイパス下流経路94に配設されている。作動ガスリターン弁96は、駆動信号に応答してバイパス下流経路94を連通及び遮断の何れかの状態に維持するようになっている。
排出弁97は、二酸化炭素排出経路95に配設されている。排出弁97は、駆動信号に応答して二酸化炭素排出経路95を連通及び遮断の何れかの状態に維持するようになっている。
【0080】
次に、上記のように構成された第2実施形態に係るシステムの作動について説明する。第2実施形態のCPUは、図2乃至図4に示したルーチンに加え、図6及び図7に示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行するようになっている。図6は二酸化炭素吸収機91のメンテナンスを実行するためのルーチンであり、図7は二酸化炭素吸収機91のメンテナンスの実行を許可するか否かの判定を行うためのルーチンである。
【0081】
なお、第2実施形態のCPUが図4のステップ420の処理を行う場合、三方弁72の入口部がバイパス上流経路73に接続されている三方弁72の出口部の一つと連通するように三方弁72を切り換えるとともに、作動ガスリターン弁96を開けることによってバイパス下流経路94を連通し、且つ、排出弁97を閉じることによって二酸化炭素排出経路95を遮断する。更に、第2実施形態のCPUが図4のステップ435の処理を行う場合、三方弁72の入口部が第3経路63に接続されている三方弁72の出口部の他の一つと連通するように三方弁72を切り換えるとともに、作動ガスリターン弁96を閉じることによってバイパス下流経路94を遮断し、且つ、排出弁97を閉じることによって二酸化炭素排出経路95を遮断する
【0082】
いま、二酸化炭素吸収機91のメンテナンス実行を許可する後述の条件が成立し、図7のルーチンの実行によりメンテナンス許可フラグXMTの値が「0」から「1」に設定された直後であるとして説明を続ける。この場合、CPUは所定のタイミングにて図6のステップ600から処理を開始すると、メンテナンス許可フラグXMTの値が「1」であるか否かを判定するステップ605に進んだとき同ステップ605にて「Yes」と判定してステップ610に進み、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」であるか否かを判定する。即ち、現時点において、還流ガスが二酸化炭素吸収機91を通過しているか否か(二酸化炭素が二酸化炭素吸収機91によって吸収されているか否か)を判定する。
【0083】
このとき、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であれば、CPUはステップ610にて「No」と判定し、ステップ615にてヒータ91cへの通電を停止するとともに、ステップ620にて排出弁97を閉じることによって二酸化炭素排出経路95を遮断し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0084】
このように、還流ガスが二酸化炭素吸収機91を通過していて、二酸化炭素が分離された還流ガスが二酸化炭素吸収機91から第4経路64に戻されている場合、ヒータ91cへの通電は行われず(ヒータ91cは発熱せず)、且つ、二酸化炭素排出経路95は遮断される。
【0085】
一方、CPUがステップ610に進んだとき、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」に設定されていると(即ち、現時点において、還流ガスが二酸化炭素吸収機91を通過していない場合)、CPUはステップ610にて「Yes」と判定してステップ625に進み、ヒータ91cへの通電を開始する。次いで、CPUはステップ630に進み、排出弁97を開弁することにより、二酸化炭素排出経路95を連通せしめる。
【0086】
この結果、モノエタノールアミン溶液91bが加熱される。モノエタノールアミン溶液91bは、その温度が高くなるほど二酸化炭素の溶解度が顕著に低下する性質を有する。従って、ヒータ91cへの通電により、モノエタノールアミン溶液91bに吸収されていた二酸化炭素が同溶液から離脱してガス化し、そのガス化した二酸化炭素は二酸化炭素排出経路95及び排出弁97を通して大気に排出される。この結果、モノエタノールアミン溶液91bの二酸化炭素吸収能力が回復され始める。
【0087】
次に、CPUはステップ635に進んでタイマー(ヒータオン継続タイマー)Tの値を「1」だけ増加し、ステップ640にてタイマーTの値が所定の閾値Tth以上であるか否かを判定する。現時点は、ヒータへの通電が開始されることによりタイマーTの値が増大され始めた直後である。従って、CPUはステップ640にて「No」と判定し、ステップ695にて本ルーチンを一旦終了する。なお、タイマーTの値は、図示しないイニシャルルーチンにて「0」に設定されている。
【0088】
その後、この状態が継続すると、ステップ635の処理が繰り返される。従って、タイマーTの値は所定の閾値Tth以上となる。この時点でCPUがステップ640の処理を実行すると、CPUはステップ640にて「Yes」と判定し、ステップ645にてヒータ91cへの通電を停止するとともに、ステップ650にて排出弁97を閉じることによって二酸化炭素排出経路95を遮断する。これにより、モノエタノールアミン溶液91bの二酸化炭素吸収能力を回復させる動作、即ち、メンテナンス動作が終了する。
【0089】
次いで、CPUはステップ655にてメンテナンス許可フラグXMTの値を「0」に設定し、ステップ660にてタイマーTの値を「0」に設定した後、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0090】
また、CPUが本ルーチンの処理を開始した時点において、メンテナンス許可フラグXMTの値が「0」に設定されていると、CPUはステップ605にて「No」と判定してステップ615及びステップ620の処理を行い、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上が、二酸化炭素吸収機91のメンテナンスを実行する際の作動である。
【0091】
次に、CPUがメンテナンス許可フラグXMTの値を「1」に設定する際の作動について図7を参照しながら説明する。メンテナンス許可フラグXMTの値は、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された回数(二酸化炭素吸収回数カウンタ)CNが所定回数CNth以上となったときに「1」に設定される。換言すると、メンテナンス許可フラグXMTの値は、還流ガス中の二酸化炭素濃度DenCO2が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上となることにより二酸化炭素吸収機91を使用した二酸化炭素の分離・除去が行われた回数CNが所定回数CNth以上となってモノエタノールアミン溶液91bが多量の二酸化炭素を吸収した状態となっているために、モノエタノールアミン溶液91bの二酸化炭素吸収能力を回復する必要があると判断されるときに「1」に設定される。
【0092】
より具体的には、CPUは所定のタイミングにてステップ700から処理を開始し、ステップ705に進んで二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された直後であるか否かを判定する。このとき、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された直後でなければ、CPUはステップ705にて「No」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値は変更されない。
【0093】
一方、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された直後である場合、CPUはステップ705にて「Yes」と判定してステップ710に進み、二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値を「1」だけ増大する。この二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値は、バックアップラムに記憶される。次いで、CPUはステップ715にて二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値が所定回数CNth以上であるか否かを判定する。このとき、二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値が所定回数CNthより小さければ、CPUはステップ715にて「No」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、メンテナンス許可フラグXMTの値は「0」に維持される。
【0094】
その後、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変更された回数が増大すると、二酸化炭素吸収回数カウンタCNの値は所定回数CNth以上となる。この場合、CPUはステップ715に進んだとき、同ステップ715にて「Yes」と判定してステップ720に進み、メンテナンス許可フラグXMTの値を「1」に設定する。次いで、CPUはステップ725に進み、二酸化炭素吸収回数カウンタCNのを「0」に設定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0095】
以上、説明したように、第2実施形態に係る水素エンジンは、第1実施形態に係る水素エンジンと同様、生成物除去手段(二酸化炭素吸収機91を含む生成物除去部90)により二酸化炭素が循環ガスから除去されるので、常に高い熱効率にて運転され得るようになっている。
【0096】
また、第2実施形態に係る水素エンジンは、
生成物除去手段(生成物除去部90)が、
生成物(二酸化炭素)を吸収する吸収物質(MEA溶液91b)と、
MEA溶液91bに吸収された二酸化炭素をMEA溶液91bから離脱させるようにMEA溶液91bに物理的作用(熱)を加える離脱促進手段であるヒータ91cと、
ヒータ91cにより離脱させられた二酸化炭素を循環経路(バイパス経路を含む循環経路)外へ排出する排出口及び二酸化炭素排出経路95と、
二酸化炭素排出経路95を連通及び遮断のいずれかの状態とする排出弁97とを備えている。
【0097】
従って、吸収物質であるMEA溶液91bに吸収された生成物(二酸化炭素)が離脱促進手段であるヒータ91cによりMEA溶液91bから離脱させられる。これにより、MEA溶液91bが二酸化炭素を吸収する能力を回復することができる。この結果、二酸化炭素吸収機91を取り替える必要がなく、一つの二酸化炭素吸収機91(生成物除去手段)を長期に渡って使用することができる。
【0098】
なお、上記実施形態において、ステップ705乃至ステップ715は、吸収物質であるMEA溶液91bが所定量以上の二酸化炭素を吸収したか否かを判定する判定手段を構成している。この判定手段は、ヒータ91cを通電して吸収物質の二酸化炭素吸収能力を回復してから(前回のメンテナンス動作を実行後)の水素エンジンの運転時間の積算時間が所定時間以上となったか否かを判定する手段に置換することもでき、前回のメンテナンス動作を実行後の水素エンジンに供給された水素量の積算値が所定値以上となったか否かを判定する手段に置換することもできる。
【0099】
<第2実施形態の変形例>
この変形例に係る作動ガス循環型水素エンジンは、上記第2実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンの二酸化炭素吸収機91に、モノエタノールアミン溶液91bに代わるゼオライト系吸着剤を充填した点のみにおいて、同第2実施形態の水素エンジンと相違している。ゼオライト系吸着剤も、モノエタノールアミン溶液91bと同様、加熱により温度が上昇したときに吸着している二酸化炭素を放出する。従って、上記メンテナンス動作により、ゼオライト系吸着剤の二酸化炭素吸着能力が回復する。
【0100】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代わる図8にフローチャートにより示した三方弁制御ルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85を備えていない点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0101】
第3実施形態に係る水素エンジンは、循環ガス中の二酸化炭素濃度を水素エンジンの運転時間の積算時間に基づいて推定し、その積算時間が所定時間以上となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。
【0102】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に図8に示したルーチンの処理をステップ800から開始し、ステップ805にて水素エンジンの運転時間の積算時間を表す運転積算時間タイマーTDの値を「1」だけ増大する。運転積算時間タイマーTDはバックアップラムに格納される。次いで、CPUはステップ810に進み、運転積算時間タイマーTDの値が所定時間(運転継続閾値時間)TDth以上となったか否かを判定する。
【0103】
いま、運転積算時間タイマーTDの値が所定時間TDthより小さく、且つ、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の分離・除去が行われていない状態(二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」の状態)であると仮定して説明を続けると、CPUはステップ810にて「No」と判定するとともに、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であるか否かを判定するステップ815にても「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0104】
この結果、燃焼室21から排出された排ガス(循環ガス)は、第1経路61、第2経路62、第3経路63、第4経路64及び第5経路65からなる主経路を通って循環される。換言すると、燃焼室21から排出された排ガスは、二酸化炭素吸収機71を通過しない。
【0105】
その後、水素エンジンの運転が行われると、ステップ805の処理により運転積算時間タイマーTDの値が次第に増大し、やがて所定時間TDth以上となる。この場合、CPUはステップ805に続くステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、三方弁72の入口部がバイパス上流経路73に接続されている三方弁72の出口部の一つと連通するように、三方弁72を切り換える。
【0106】
この結果、第2経路62を流れる還流ガスは、第3経路63を流れず、二酸化炭素吸収機71(二酸化炭素吸収機71内の流路に収容されたモノエタノールアミン溶液71b)を通過する。従って、還流ガス中に含まれる二酸化炭素がモノエタノールアミン溶液71bに吸収され、還流ガスから分離される。そして、二酸化炭素が分離された還流ガスは、容器71aの出口部及びバイパス下流経路74を通して合流点PGから第4経路64に供給される。その後、CPUはステップ825に進んで二酸化炭素分離実行フラグFの値を「1」に設定するとともに、ステップ830にて運転積算時間タイマーTDの値を「0」に設定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0107】
この状態において、CPUが再び図8のステップ800から処理を開始すると、CPUはステップ805を経由してステップ810に進む。この場合、先のステップ830にて運転積算時間タイマーTDの値は「0」に戻された直後であるから、所定時間TDthよりも十分に小さい。従って、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ815に進み、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であるか否かを判定する。
【0108】
現時点においては、先のステップ825によって二酸化炭素分離実行フラグFの値は「1」に設定されている。従って、CPUはステップ815にて「Yes」と判定してステップ835に進み、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変化した後に所定時間(二酸化炭素分離継続時間)TSthが継続したか否かを判定する。但し、時間TSthは時間TDthより十分に短い。現時点では、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変化した後に所定時間TSthが経過していない。従って、CPUはステップ835にて「No」と判定してステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0109】
二酸化炭素分離実行フラグFの値が「0」から「1」へと変化した後に所定時間TSthが経過するすると、主経路内の二酸化炭素濃度DenCO2は上述した低側所定濃度DenCO2thL以下になると予想される。この場合、CPUはステップ800〜ステップ815に続くステップ835にて「Yes」と判定してステップ840に進み、三方弁72の入口部が第3経路63に接続されている三方弁72の出口部の他の一つと連通するように、三方弁72を切り換える。これにより、燃焼室21から排出された排ガスは、再び、第1経路61乃至第5経路65からなる主経路を通って循環され始める。その後、CPUはステップ845にて二酸化炭素分離実行フラグFの値を「0」に設定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0110】
以上、説明したように、第3実施形態に係る水素エンジンは、水素エンジンの運転時間の積算時間TDに基づいて二酸化炭素濃度を推定する二酸化炭素濃度推定手段(ステップ805に相当)を備え、水素エンジンの運転時間の積算時間TDが所定時間TDth以上となったとき、二酸化炭素濃度が過大となったと判定して、二酸化炭素を二酸化炭素吸収機71によって循環ガスから分離している。従って、第1実施形態のように、高価な二酸化炭素濃度センサ85を採用する必要がないので、水素エンジンを廉価に提供することができる。
【0111】
なお、第3実施形態においても、二酸化炭素吸収機71に収容されているモノエタノールアミン溶液71bを、ゼオライト系吸着剤に置換してもよい。また、第2実施形態のように、ヒータ91cを容器71aの周囲に配置し、第2実施形態と同様に発熱させることにより、モノエタノールアミン溶液71b又はゼオライト系吸着剤の二酸化炭素吸収能力を適宜回復してもよい。
【0112】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代え、図9及び図10にフローチャートにより示したルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85に代えて特定気筒の燃焼室21内の圧力(筒内圧)を測定する筒内圧センサを備えている点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0113】
第4実施形態に係る水素エンジンは、循環ガス中の二酸化炭素濃度を、特定気筒のクランク角が圧縮上死点近傍の所定クランク角度(特定気筒の圧縮上死点前At度)であるときの筒内圧に基づいて推定し、その筒内圧(以下、「特定筒内圧」と称呼する。)が所定値以下となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。換言すると、この水素エンジンは、特定筒内圧が所定圧力以下となったとき、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上になったと判定する。
【0114】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始するようになっている。なお、図9に示したステップにおいて図4に示したステップと同一のステップには同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0115】
CPUは、ステップ900からステップ905に進み、二酸化炭素濃度指標値INDを取得する。本実施形態において二酸化炭素濃度指標値INDは、特定気筒のクランク角が圧縮上死点前At度となったときの筒内圧(特定筒内圧)であり、後述する図10に示したルーチンにより取得されている。
【0116】
次いで、CPUはステップ910に進み、二酸化炭素濃度指標値INDにより示される二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度以上となっているか否かを判定する。より具体的に述べると、CPUはステップ910において、特定筒内圧Pcyl(=IND)が所定筒内圧Pcylth以下であるか否かを判定する。
【0117】
二酸化炭素は3原子ガスであって単原子ガスである作動ガスのアルゴンガスよりも比熱比が小さい。このため、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど、圧縮行程終了時近傍(圧縮上死点近傍の所定クランク角)における筒内圧が小さくなる。従って、特定筒内圧Pcylが所定筒内圧Pcylth以下であることは、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度以上となったことを意味する。換言すると、所定筒内圧Pcylthは、高側所定濃度DenCO2thHに相当する値に選択されている。
【0118】
そして、二酸化炭素濃度指標値INDにより示される二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度以上となっていれば、CPUはステップ420及びステップ425の処理を行う。この結果、第2経路62を流れる還流ガスは、第3経路63を流れず、二酸化炭素吸収機71を通過する。従って、還流ガス中に含まれる二酸化炭素がモノエタノールアミン溶液71bに吸収され、還流ガスから分離される。
【0119】
他方、CPUがステップ910を処理するとき、二酸化炭素濃度指標値INDにより示される二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度以上となっていなければ、CPUはステップ910からステップ415に進んで二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であるか否かを確認する。このとき、二酸化炭素分離実行フラグFの値が「1」であり、且つ、ステップ915にて二酸化炭素濃度指標値INDにより示される二酸化炭素濃度が上述した低側所定濃度DenCO2thLに相当する濃度以下となったことが確認されると、CPUはステップ435及びステップ440の処理を行う。
【0120】
この結果、二酸化炭素吸収機71による二酸化炭素の分離・吸収が停止され、燃焼室21から排出された排ガスは、再び、第1経路61乃至第5経路65からなる主経路を通って循環され始める。
【0121】
更に、CPUは図10に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、特定気筒のクランク角がその気筒の圧縮上死点近傍且つ圧縮上死点前の所定クランク角度(At度)であるか否かを判定する。このクランク角度(BTDC At度)は、水素噴射弁35から水素が噴射される噴射タイミングより前のクランク角となるように設定されている。
【0122】
そして、特定気筒のクランク角がその気筒の圧縮上死点前の所定クランク角度(At度)であるとき、CPUはステップ1020に進んで筒内圧Pcylを特定筒内圧(二酸化炭素濃度指標値)INDとして取り込み、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、特定気筒のクランク角がその気筒の圧縮上死点前の所定クランク角度(At度)でないとき、CPUはステップ1010からステップ1095に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0123】
以上、説明したように、第4実施形態に係る水素エンジンは、
水素エンジンのクランク角(特定気筒のクランク角)が圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの特定気筒の燃焼室内の圧力である筒内圧Pcylを取得する筒内圧取得手段(筒内圧センサ及び図10に示したルーチン)と、
前記取得された筒内圧Pcyl(=IND)が所定圧力Pcylthより小さいとき、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路(第2経路62)内を流れるガスがバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ420等)と、
を備えている。
【0124】
これにより、循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段としての二酸化炭素吸収機71により除去されるので、水素エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機71)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0125】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代え、図9及び図11にフローチャートにより示したルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85に代えて特定気筒の燃焼室21内の圧力(筒内圧)を測定する筒内圧センサを備えている点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0126】
第5実施形態に係る水素エンジンは他の実施形態の水素エンジンと同様、高温・高圧の圧縮ガス中に水素を噴射して拡散燃焼させるタイプのエンジンである。従って、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど燃焼速度が低下するから、着火時期が遅れる。そこで、この水素エンジンは、筒内圧に基づいて着火時期を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。そして、水素エンジンは、取得された着火時期が基準着火時期よりも遅角側となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。換言すると、この水素エンジンは、着火時期が基準着火時期よりも遅角側となったとき、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上になったと判定する。
【0127】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に上述した図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始するようになっている。この実施形態は、ステップ905及びステップ910において着火時期を二酸化炭素濃度指標値INDとして使用し、その着火時期が基準着火時期よりも遅角側となっているか否かを判定する。着火時期は、図11に示したルーチンにより取得される。基準着火時期は、二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度となったときの着火時期に相当する値に設定されている。
【0128】
更に、ステップ915においては、着火時期が二酸化炭素濃度指標値INDとして使用され、その着火時期が基準着火時期より所定クランク角度だけ進角側の進角側基準着火時期よりも進角側となっているか否かが判定される。進角側基準着火時期は、二酸化炭素濃度が上述した低側所定濃度DenCO2thLに相当する濃度となったときの着火時期に相当する値に設定されている。図9に示したルーチンの他の点は、上述の第4実施形態にて説明したとおりであるから詳細な説明を省略する。
【0129】
図11のルーチンは、クランク角度により表される着火時期を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得するためのルーチンである。CPUは、このルーチンを所定時間の経過毎にステップ1100から開始し、ステップ1110にて特定気筒のクランク角がその特定気筒の圧縮上死点から膨張下死点までの間であるか否かを判定する。このとき、特定気筒のクランク角がその特定気筒の圧縮上死点から膨張下死点までの間でなければ、CPUはステップ1110にて「No」と判定してステップ1195に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0130】
一方、ステップ1110の判定時において、特定気筒のクランク角がその特定気筒の圧縮上死点から膨張下死点までの間であれば、CPUはステップ1120乃至ステップ1140の以下に述べる処理によって、筒内圧が最大となったときのクランク角θを着火時期(即ち、二酸化炭素濃度指標値IND)として取得する。
【0131】
ステップ1120:CPUは、現時点の筒内圧Pcyl(now)が、本ルーチンを前回実行した時点(所定時間前)の筒内圧Pcyl(−1)以下であるか否かを判定する。CPUは、筒内圧Pcyl(now)が前回の筒内圧Pcyl(−1)以下であればステップ1130に進み、そうでなければステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0132】
ステップ1130:CPUは、前回の筒内圧Pcyl(−1)が本ルーチンを2回前に実行した時点(所定時間の2倍の時間前)の筒内圧Pcyl(−2)より大きいか否かを判定する。CPUは、前回の筒内圧Pcyl(−1)が前々回の筒内圧Pcyl(−2)より大きければステップ1140に進み、そうでなければステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0133】
ステップ1110乃至ステップ1130の総てのステップにおいて「Yes」と判定されるということは、現時点が特定気筒の圧縮上死点から膨張下死点までの間であって、且つ、筒内圧が最大値をとった時点であるということを意味する。そこで、CPUはステップ1140にて、現時点のクランク角θを二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。この取得されたクランク角θが着火時期又は着火時期に相当する時期であるとして、図9のルーチンにおいて二酸化炭素濃度指標値INDとして使用される。
【0134】
以上、説明したように、着火時期は二酸化炭素濃度指標値であって水素エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値である。第5実施形態に係る水素エンジンは、この燃焼状態指標値(着火時期)を取得する燃焼状態指標値取得手段(筒内圧センサ及び図11のルーチン等)と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、即ち、着火時期が二酸化炭素濃度が過大となっているために所定時期(基準着火時期)よりも遅角側となったとき、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路(第2経路62)内を流れるガスがバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ420等)と、
を備えている。
【0135】
これにより、燃焼状態の悪化をもたらす循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段としての二酸化炭素吸収機71により除去されるので、水素エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機71)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0136】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代え、図9及び図12にフローチャートにより示したルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85に代えて特定気筒の燃焼室21内の圧力(筒内圧)を測定する筒内圧センサを備えている点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0137】
第6実施形態に係る水素エンジンは他の実施形態の水素エンジンと同様、高温・高圧の圧縮ガス中に水素を噴射して拡散燃焼させるタイプのエンジンである。従って、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど燃焼速度が低下することに起因して、後述する燃焼変動率が大きくなる。
【0138】
そこで、この水素エンジンは、筒内圧に基づいて燃焼変動率を求め、この燃焼変動率を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。そして、水素エンジンは、取得された燃焼変動率が基準燃焼変動率以上となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。換言すると、この水素エンジンは、燃焼変動率が基準燃焼変動率以上となったとき、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上になったと判定する。
【0139】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に上述した図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始するようになっている。この実施形態は、ステップ905及びステップ910において燃焼変動率を二酸化炭素濃度指標値INDとして使用し、その燃焼変動率が基準燃焼変動率以上となっているか否かを判定する。燃焼変動率は、図12に示したルーチンにより取得される。基準燃焼変動率は、二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度となったときの燃焼変動率に相当する値に設定されている。
【0140】
更に、ステップ915においては、燃焼変動率が二酸化炭素濃度指標値INDとして使用され、その燃焼変動率が前記基準燃焼変動率より小さい安定燃焼変動率以下となっているか否かが判定される。安定燃焼変動率は、二酸化炭素濃度が上述した低側所定濃度DenCO2thLに相当する濃度となったときの燃焼変動率に相当する値に設定されている。図9に示したルーチンの他の点は、上述の第4実施形態にて説明したとおりであるから詳細な説明を省略する。
【0141】
図12のルーチンは、燃焼変動率を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得するためのルーチンである。CPUは、このルーチンを所定時間の経過毎にステップ1200から開始し、ステップ1210にてサンプル数カウンタNの値を「1」だけ増大する。次いで、CPUはステップ1220にてサンプル数カウンタNの値が所定値Nth以上となったか否かを判定する。このとき、サンプル数カウンタNの値が所定値Nth以上となっていなければ、CPUはステップ1220にて「No」と判定してステップ1295に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0142】
一方、ステップ1220の判定時において、サンプル数カウンタNの値が所定値Nth以上となっていれば、CPUはステップ1230乃至ステップ1250の以下に述べる処理によって、燃焼変動率(σPmi/PmiAve)を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。
【0143】
ステップ1230:CPUは、過去N個分の図示平均有効圧Pmiの平均値をPmiAveとして算出する。図示平均有効圧Pmiは、周知の手法によって、特定気筒のサイクル毎に筒内圧センサの出力値とクランク角とに基づいて別途計算されている。
ステップ1240:CPUは、図12のステップ1240内に示した式に従って図示平均有効圧変動値σPmiを算出する。即ち、過去N個分のそれぞれの図示平均有効圧Pmiと平均値PmiAveとの差の2乗の平方根をとり、それらの総和を図示平均有効圧変動値σPmiとして求める。
【0144】
ステップ1250:CPUは求められた図示平均有効圧変動値σPmiを図示平均有効圧Pmiの平均値PmiAveで除して得られる値である燃焼変動率(σPmi/PmiAve)を、二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。この取得された燃焼変動率(σPmi/PmiAve)が図9のルーチンにおいて二酸化炭素濃度指標値INDとして使用される。
【0145】
以上、説明したように、燃焼変動率(σPmi/PmiAve)は二酸化炭素濃度指標値であって水素エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値である。第6実施形態に係る水素エンジンは、この燃焼状態指標値(燃焼変動率)を取得する燃焼状態指標値取得手段(筒内圧センサ及び図12のルーチン等)と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、即ち、燃焼変動率(σPmi/PmiAve)が二酸化炭素濃度が過大となっているために基準燃焼変動率以上となったときに、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路(第2経路62)内を流れるガスがバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ420等)と、
を備えている。
【0146】
これにより、燃焼状態の悪化をもたらす循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段としての二酸化炭素吸収機71により除去されるので、水素エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機71)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0147】
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンは、CPUが上記第1(又は第2実施形態)のCPUが実行する図4の三方弁制御ルーチンに代え、図9及び図13にフローチャートにより示したルーチンを実行する点、及び、二酸化炭素濃度センサ85に代えて特定気筒の燃焼室21内の圧力(筒内圧)を測定する筒内圧センサを備えている点においてのみ、同第1実施形態と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として説明する。
【0148】
前述したように、二酸化炭素ガスはアルゴンガスより比熱比が小さいので、循環ガス中の二酸化炭素濃度が上昇するほど水素エンジンの熱効率は低下する。そこで、この水素エンジンは、水素エンジンの図示熱効率を算出し、その図示熱効率を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。そして、水素エンジンは、取得された図示熱効率が基準図示熱効率以下となったときに、二酸化炭素吸収機71を使用した二酸化炭素の吸収・分離を行う。換言すると、この水素エンジンは、図示熱効率が基準図示熱効率以下となったとき、循環ガス中の二酸化炭素濃度が高側所定濃度(高側閾値)DenCO2thH以上になったと判定する。
【0149】
より具体的に述べると、CPUは所定時間の経過毎に上述した図9に示したルーチンの処理をステップ900から開始するようになっている。この実施形態は、ステップ905及びステップ910において図示熱効率を二酸化炭素濃度指標値INDとして使用し、その図示熱効率が基準図示熱効率以下となっているか否かを判定する。図示熱効率は、図13に示したルーチンにより取得される。基準図示熱効率は、二酸化炭素濃度が上述した高側所定濃度DenCO2thHに相当する濃度となったときの図示熱効率に相当する値に設定されている。
【0150】
更に、ステップ915においては、図示熱効率が二酸化炭素濃度指標値INDとして使用され、その図示熱効率が前記基準図示熱効率より大きい高側図示熱効率以上となっているか否かが判定される。高側図示熱効率は、二酸化炭素濃度が上述した低側所定濃度DenCO2thLに相当する濃度となったときの図示熱効率に相当する値に設定されている。図9に示したルーチンの他の点は、上述の第4実施形態にて説明したとおりであるから詳細な説明を省略する。
【0151】
図13のルーチンは、図示熱効率を二酸化炭素濃度指標値INDとして取得するためのルーチンである。CPUは、このルーチンを水素エンジンの1サイクル経過毎にステップ1300から開始し、ステップ1310にて特定気筒の筒内圧(筒内圧センサ出力)P及びその気筒のクランク角により求められる燃焼室体積Vから描かれるP−V線図から図示仕事Q1を算出する。次いで、CPUはステップ1320にて、図示仕事Q1を求めたサイクルにおいて特定気筒に噴射された水素の噴射量を要求水素量SH2又は水素噴射時間TAUに基づいて算出し、その水素の噴射量から特定気筒に与えられたエネルギーQ0を算出する。
【0152】
次に、CPUはステップ1330に進み、求められた図示仕事Q1をエネルギーQ0で除して得られる値である図示熱効率(Q1/Q0)を、二酸化炭素濃度指標値INDとして取得する。この取得された図示熱効率(Q1/Q0)が図9のルーチンにおいて二酸化炭素濃度指標値INDとして使用される。
【0153】
以上、説明したように、図示熱効率(Q1/Q0)は二酸化炭素濃度指標値であって水素エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値である。第7実施形態に係る水素エンジンは、この燃焼状態指標値(図示熱効率)を取得する燃焼状態指標値取得手段(筒内圧センサ及び図13のルーチン等)と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、即ち、図示熱効率(Q1/Q0)が二酸化炭素濃度が過大となっているために基準図示熱効率以下となったときに、分岐点PBから合流点PGまでの間、分岐点PBよりも上流の主経路(第2経路62)内を流れるガスがバイパス上流経路73、バイパス下流経路74及び容器71aにより形成された流路を含んでなるバイパス経路を通過するように経路切換手段(三方弁72)を切り換える切換制御手段(ステップ420等)と、
を備えている。
【0154】
これにより、燃焼状態の悪化をもたらす循環ガス中の二酸化炭素が生成物除去手段としての二酸化炭素吸収機71により除去されるので、水素エンジンの熱効率の低下を防止することができる。また、必要時以外に循環ガスが流路抵抗の高いバイパス経路(二酸化炭素吸収機71)を通過しないので、エンジンの効率が低下することを防止することもできる。
【0155】
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジン及びシステムは、不可避的に発生する循環ガス中の二酸化炭素を分離・除去するので、常に高い熱効率をもって運転することが可能となっている。
【0156】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記エンジン10は水素を拡散燃焼させていたが、自着火燃焼運転又は燃焼室21に配設された点火プラグからの火花による火炎伝播燃焼運転を行ってもよい。
【0157】
更に、上記各エンジンは、気筒内に水素ガスを直接噴射していたが、水素ガスを吸気ポート31に噴射するように水素噴射弁35を配置してもよい。また、上記各実施形態においては、作動ガスとしてアルゴンガスが使用されていたが、アルゴン以外の少なくとも二酸化炭素よりも高い比熱比を有する単原子ガス(例えば、He等のアルゴン以外の不活性ガス)であってもよい。
【0158】
また、上記各実施形態においては、燃焼室にて生成されるH2O生成物としての二酸化炭素を循環ガスから除去していたが、他の生成物(例えば、Nox及びHC)を同様に除去するように構成されていてもよい。また、二酸化炭素の吸収物質として、MEA溶液又はゼオライト系吸着剤が使用されていたが、これらに代え、二酸化炭素等の吸着・分離したい生成物を選択的に吸着する他の吸着物質を用いてもよい。
【0159】
更に、上記二酸化炭素濃度指標値IND又は上記燃焼状態指標値として、着火時期の変動率を採用してもよい。また、水素エンジンが火花点火によって水素を火炎伝播燃焼させるタイプのエンジンであれば、二酸化炭素濃度が上昇するほど火炎伝播速度が低下するので、爆発(燃焼)行程中の筒内圧は緩慢に変化するようになる。従って、二酸化炭素濃度指標値IND又は燃焼状態指標値として、例えば、燃焼行程における筒内圧の変化速度や変化の仕方を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の第1実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンを含むシステムの概略図である。
【図2】図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図3】図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図4】図1に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンを含むシステムの概略図である。
【図6】図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図5に示した電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】本発明の第4乃至第7実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図10】本発明の第4実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】本発明の第5実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図12】本発明の第6実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図13】本発明の第7実施形態に係る作動ガス循環型水素エンジンが備える電気制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0161】
10…作動ガス循環型水素エンジン、11…シリンダヘッド、12…シリンダ、13…ピストン、14…クランク軸、15…コネクティングロッド、21…燃焼室、31…吸気ポート、32…排気ポート、35…水素噴射弁、40…水素供給部、41…水素タンク、50…酸素供給部、51…酸素タンク、53…酸素ガス圧レギュレータ、55…酸素ガスミキサ、60…作動ガス循環通路部、61…第1経路、62…第2経路、63…第3経路、64…第4経路、65…第5経路、66…凝縮器、70…生成物除去部、71…二酸化炭素吸収機、71a…容器、71b…モノエタノールアミン溶液、72…三方弁、73…バイパス上流経路、74…バイパス下流経路、80…電気制御装置、85…二酸化炭素濃度センサ、90…生成物除去部、91…二酸化炭素吸収機、91a…容器、91b…モノエタノールアミン溶液、91c…ヒータ、92…三方弁、93…バイパス上流経路、94…バイパス下流経路、95…二酸化炭素排出経路、96…作動ガスリターン弁、97…排出弁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に水素と酸素と単原子ガスからなる作動ガスとを供給して同水素を燃焼させるとともに、同燃焼室から排出された排ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環経路を通して循環させる作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記循環経路内に前記燃焼室にて発生したH2O以外の生成物を除去する生成物除去手段を備えた水素エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記生成物除去手段は、前記燃焼室にて発生したH2O以外の生成物としての二酸化炭素を除去するように構成されてなる水素エンジン。
【請求項3】
請求項2に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記生成物除去手段は、
前記循環経路の一部を構成する流路を備える容器と、
前記容器の流路に収容されたモノエタノールアミン溶液又はゼオライト系吸着剤と、
を備える水素エンジン。
【請求項4】
請求項2に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記循環経路は主経路と同主経路から分岐点にて分岐し且つ同分岐点より下流側の合流点にて同主経路に合流するバイパス経路とを含み、
前記生成物除去手段は前記バイパス経路に配設され、
前記分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスを同分岐点から前記合流点までの間において同主経路を通過させるか前記バイパス経路を通過させるかの何れかに切り換える経路切換手段を備えた水素エンジン。
【請求項5】
請求項1に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記生成物除去手段は、
前記生成物を吸収する吸収物質と、
前記吸収物質に吸収された生成物を同吸収物質から離脱させるように同吸収物質に物理的作用を加える離脱促進手段と、
前記離脱促進手段により離脱させられた生成物を前記循環経路外へ排出する排出口と、
を備えた水素エンジン。
【請求項6】
請求項5に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記吸収物質は前記生成物としての二酸化炭素を溶解して吸収するモノエタノールアミン溶液又は同二酸化炭素を吸着して吸収するゼオライト系吸着剤であり、
前記離脱促進手段は前記吸収物質を加熱する加熱手段である水素エンジン。
【請求項7】
請求項4に記載の作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記主経路を流れるガスに含まれる二酸化炭素の濃度を取得する二酸化炭素濃度取得手段と、
前記取得された二酸化炭素の濃度が所定濃度以上であるとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
備えた水素エンジン。
【請求項8】
請求項7に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記二酸化炭素濃度取得手段は、二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサである水素エンジン。
【請求項9】
請求項7に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記二酸化炭素濃度取得手段は、前記水素エンジンの運転時間の積算時間に基づいて前記二酸化炭素濃度を推定する二酸化炭素濃度推定手段である水素エンジン。
【請求項10】
請求項4に記載の作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記エンジンのクランク角が圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの前記燃焼室内の圧力である筒内圧を取得する筒内圧取得手段と、
前記取得された筒内圧が所定圧力より小さいとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
備えた水素エンジン。
【請求項11】
請求項4に記載の作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値を取得する燃焼状態指標値取得手段と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
備えた水素エンジン。
【請求項1】
燃焼室に水素と酸素と単原子ガスからなる作動ガスとを供給して同水素を燃焼させるとともに、同燃焼室から排出された排ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環経路を通して循環させる作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記循環経路内に前記燃焼室にて発生したH2O以外の生成物を除去する生成物除去手段を備えた水素エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記生成物除去手段は、前記燃焼室にて発生したH2O以外の生成物としての二酸化炭素を除去するように構成されてなる水素エンジン。
【請求項3】
請求項2に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記生成物除去手段は、
前記循環経路の一部を構成する流路を備える容器と、
前記容器の流路に収容されたモノエタノールアミン溶液又はゼオライト系吸着剤と、
を備える水素エンジン。
【請求項4】
請求項2に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記循環経路は主経路と同主経路から分岐点にて分岐し且つ同分岐点より下流側の合流点にて同主経路に合流するバイパス経路とを含み、
前記生成物除去手段は前記バイパス経路に配設され、
前記分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスを同分岐点から前記合流点までの間において同主経路を通過させるか前記バイパス経路を通過させるかの何れかに切り換える経路切換手段を備えた水素エンジン。
【請求項5】
請求項1に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記生成物除去手段は、
前記生成物を吸収する吸収物質と、
前記吸収物質に吸収された生成物を同吸収物質から離脱させるように同吸収物質に物理的作用を加える離脱促進手段と、
前記離脱促進手段により離脱させられた生成物を前記循環経路外へ排出する排出口と、
を備えた水素エンジン。
【請求項6】
請求項5に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記吸収物質は前記生成物としての二酸化炭素を溶解して吸収するモノエタノールアミン溶液又は同二酸化炭素を吸着して吸収するゼオライト系吸着剤であり、
前記離脱促進手段は前記吸収物質を加熱する加熱手段である水素エンジン。
【請求項7】
請求項4に記載の作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記主経路を流れるガスに含まれる二酸化炭素の濃度を取得する二酸化炭素濃度取得手段と、
前記取得された二酸化炭素の濃度が所定濃度以上であるとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
備えた水素エンジン。
【請求項8】
請求項7に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記二酸化炭素濃度取得手段は、二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサである水素エンジン。
【請求項9】
請求項7に記載の作動ガス循環型水素エンジンにおいて、
前記二酸化炭素濃度取得手段は、前記水素エンジンの運転時間の積算時間に基づいて前記二酸化炭素濃度を推定する二酸化炭素濃度推定手段である水素エンジン。
【請求項10】
請求項4に記載の作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記エンジンのクランク角が圧縮上死点近傍の所定クランク角度であるときの前記燃焼室内の圧力である筒内圧を取得する筒内圧取得手段と、
前記取得された筒内圧が所定圧力より小さいとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
備えた水素エンジン。
【請求項11】
請求項4に記載の作動ガス循環型水素エンジンであって、
前記エンジンの燃焼状態を表す燃焼状態指標値を取得する燃焼状態指標値取得手段と、
前記取得された燃焼状態指標値が所定の燃焼状態よりも悪化した状態であることを示したとき、前記分岐点から前記合流点までの間、同分岐点よりも上流の主経路内を流れるガスが前記バイパス経路を通過するように前記経路切換手段を切り換える切換制御手段と、
備えた水素エンジン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−224846(P2007−224846A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48707(P2006−48707)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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